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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/14 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H01B7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520407
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021077630
(87)【国際公開番号】W WO2022074086
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20200413.1
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ガランテ,フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】サイトガリーフ,アイダー
(72)【発明者】
【氏名】スメードベルイ,アニカ
【テーマコード(参考)】
5G311
【Fターム(参考)】
5G311FA01
(57)【要約】
塩水環境における、例えば海中又は海底における、ケーブル、例えば送電用ケーブル、の使用方法であって、前記ケーブルが、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含み、ここで、前記絶縁層が、(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、及び(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%を含む、前記使用方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩水環境における、例えば海中又は海底における、ケーブル、例えば送電用ケーブル、の使用方法であって、
前記ケーブルが、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含み、
ここで、前記絶縁層が、
(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、及び
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%
を含む、前記使用方法。
【請求項2】
少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含む、架橋性ケーブルなどのケーブルであって、
ここで、前記絶縁層が、
(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、及び
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%
を含み、及び
前記内側半導電層及び外側半導電層が夫々独立して、
(a)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマー、及び
(b)カーボンブラック
を含む、前記ケーブル。
【請求項3】
前記内側半導電層が、前記外側半導電層と同一の化学組成を有する、請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記内側半導電層及び/又は外側半導電層が、エチレンアルキルアクリレートコポリマー又はエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項2又は3に記載のケーブル。
【請求項5】
前記絶縁層の成分(ii)が、エチレンアルキルアクリレートコポリマーである、請求項2~4のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項6】
前記エチレンアルキルアクリレートコポリマーが、エチレンメチルアクリレート、エチレンエチルアクリレート又はエチレンブチルアクリレートである、請求項4又は5に記載のケーブル。
【請求項7】
前記低密度ポリエチレン(LDPE)コポリマー成分(i)の多不飽和コモノマーが、少なくとも8個の炭素原子を有し、且つ非共役二重結合の間に少なくとも4個の炭素を有する直鎖炭素鎖であり、該二重結合のうちの少なくとも1つが前記直鎖炭素鎖の末端にある、請求項2~5のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項8】
前記低密度ポリエチレン(LDPE)コポリマー成分(i)の多不飽和コモノマーが、好ましくは1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、又はそれらの組み合わせから選ばれるC-からC14-の非共役ジエンである、請求項2~7のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項9】
前記絶縁層、内側半導電層及び外側半導電層が、過酸化物を含む、請求項2~8のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項10】
前記導体がアルミニウムを含む、請求項2~9のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項11】
ウェットデザインケーブルである、請求項2~10のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項12】
少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含む、請求項2~11のいずれか一項に記載のケーブルであって、
ここで、前記内側半導電層及び/又は外側半導電層が夫々独立して、
(a)アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される極性コモノマーを有するLDPEコポリマーの少なくとも50重量%、
(b)25~48重量%のカーボンブラック、及び
(c)0.1~2.5重量%の過酸化物
を含み、及び
前記絶縁層が、
(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%、及び
(iii)0.1~2.5重量%の過酸化物
を含む、前記ケーブル。
【請求項13】
請求項2~12のいずれか一項に記載のケーブルの架橋により得ることができる架橋ケーブル。
【請求項14】
ワイブルEb値が、「測定方法」において述べられたような20kVケーブルにおいて測定されたとき1年後に55kV/mm以上である、請求項13に記載の架橋ケーブル。
【請求項15】
AC電源ケーブルである、請求項13又は14に記載の架橋ケーブル。
【請求項16】
塩水環境における、請求項2~12のいずれか一項に記載のケーブル又は請求項13~15のいずれか一項に記載の架橋ケーブルの使用方法、例えば、塩水環境における送電用ケーブルの使用方法。
【請求項17】
請求項2~12のいずれか一項に記載のケーブル若しくは請求項13~15のいずれか一項に記載の架橋ケーブルを海中に埋設することを含む方法、又は、請求項2~12のいずれか一項に記載のケーブル若しくは請求項13~15のいずれか一項に記載の架橋ケーブルを海底に敷設することを含む方法。
【請求項18】
前記ケーブルが、海中又は海底にある、請求項1又は16に記載の使用方法。
【請求項19】
塩水環境において、例えば海中又は海底において、使用されるケーブルにおける絶縁破壊を最小限度に抑える、エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの使用方法であって、
前記ケーブルが、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含み、
ここで、前記絶縁層が、
(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、及び
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%
を含む、前記使用方法。
【請求項20】
(A)風力タービンなどの洋上発電機、
(B)前記洋上発電機を、海底を経て陸上及び/又は洋上に位置する変電所に接続する請求項2~15のいずれか一項に記載のケーブル
を備えている発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水環境用のウェットデザインケーブル、特に塩水環境用のウェットデザイン電力ケーブル、であって、ポリマー水トリー遅延剤(polymer water tree retarder)を用いて水トリー遅延がもたらされる絶縁層を含むケーブルに関する。特に、本発明のケーブルの絶縁層は、LDPEホモポリマー又はLDPEコポリマーとポリマー水トリー遅延剤との組み合わせを含む。本発明は更に、そのようなケーブルの製造方法及び塩水環境におけるそのようなケーブルの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な電力ケーブルは、内側半導電層(導体シールドとも称される)、絶縁層及び外側半導電層(絶縁シールドとも称される)によりこの順序で囲まれている導体を備えている。該ケーブルはまた、当該技術分野において周知である追加の層、例えばジャケット層、を備えられていてもよい。
【0003】
ケーブルが水中で使用され又は地中に埋設されるところにおいて、水バリア層(水分不透過層)、典型的には金属製の水バリア層、でケーブルを被覆して、水の侵入により生ずる問題からケーブルを保護することが知られている。
【0004】
これはドライケーブルデザインと称される。それ故に、ドライケーブル構造又はドライケーブルデザインとは、水分不透過層が、ケーブルコア(該コアは、導体、内側半導電層、絶縁層、外側半導電層と定義される)の周囲に存在するケーブルデザインを云う。任意的に、他の層、例えば、スクリーン層がまた、ケーブルコアの外側に存在することがある。水分不透過層(moisture impervious layer)とは、水が浸透することができない層である。
【0005】
長期間の現場経験から、押出成形された金属シース、例えば押出成形された鉛/鉛合金シース、は、水分不透過層として機能することが示されている。 ケーブルデザインが、押出成形された金属シースとは異なる水バリア層を含むとき、該構造が乾燥しているか否かを評価する為の試験は、Cigre TB722において見つけることができる。それ故に、水分不透過層は、好ましくは金属性である。
【0006】
いわゆるウェットデザイン又はウェット構造は、水分不透過層が存在しないケーブル構造として定義される。それ故に、そのようなデザインは、水分不透過層、例えば、押出成形された金属質の水分不透過層を有していない。
【0007】
それ故に、ドライケーブルデザインにおいては、水分不透過層がケーブルへの水の浸入を防ぐが、ケーブルの原材料費が大幅に増加し、且つまた、使用するにもコストがかかる。また、従来の水分不透過層は、重大な環境への影響を有する鉛から作られていることが多い。
【0008】
「ウェット」デザインのケーブルにおいて使用されうるケーブル材料システム(すなわち、ケーブルの絶縁層及び半導電層用材料)を明らかにする必要がある。ウェットデザインにおいては、外側半導電層は、カバーを有しないか、又は最外層としてスクリーン若しくはジャケット層が存在しうる。そのようなケーブルは、原材料費と製造費の点で有利であるが、水バリア層(水分不透過層)のないケーブルは、ケーブルが十分な耐水性を示すことを実証するために厳格に試験されなければならない。
【0009】
それ故に、ウェットデザインケーブルにおいて、ケーブルの絶縁層における水トリー遅延(WTR)特性を最大限に引き出すように考慮されなければならない。
【0010】
ポリエチレンの限界は、水の存在下及び電界の作用下において、ブッシュ状欠陥、いわゆる水トリーを形成され易く、これが絶縁破壊強度を低下させ、そして電気的故障をもたらしうることである。この傾向は、物質中の不均一性、微小空洞及び不純物の存在によって影響を受ける。
【0011】
電気的に歪んだポリマー材料においては、水の存在にさらされる、「水トリー化」として特徴づけられる作用が発生しうる。絶縁ケーブルは、ポリマーが、例えば、地中又は高湿度の場所などの水にさらされる環境に設置されるとき、耐用年数が短くなることが知られている。
【0012】
原則として、下記の2種類の水トリーを区別することができる:すなわち、半導電スクリーンの表面上に起点を有し、そして、ケーブルの絶縁層へと延在する「ベンテッドトリー」(Vented trees)、及び、ケーブルの絶縁層内で開始する「ボウタイ状トリー」(Bow-tie trees)である。
【0013】
水トリー構造は局所的な損傷を引き起こし、低下した絶縁耐力をもたらす。
【0014】
種々の水トリー遅延剤が当技術分野において周知である。水トリーを最小限に抑えるためにケーブルに水トリー遅延剤を添加することに関する多くの文献の開示がある。欧州特許第1731566号明細書において、特定のビニル含有量を持つ不飽和ポリオレフィンと極性コポリマーとの組み合わせが、ウェットエージング特性(wet ageing properties)を改善することを教示している。
【0015】
国際公開第2010/112333号パンフレットは、半導電層と絶縁層とにより囲まれた導体を含むケーブルを開示しており、ここで、該半導電層が、極性コポリマー(a)とカーボンブラックとを含む組成物(A)から成り、及び該絶縁層が、該極性コポリマー(a)の融点と該極性コポリマー(b2)の融点Tm(b2)との差が25℃未満である極性コポリマーを含む組成物(B)から成る。
【0016】
国際公開第85/05216号号パンフレットは、ポリエチレンと、10~40重量%の(メタ)アクリレートポリマー、例えばエチレンブチルアクリレート、とから成る絶縁組成物を開示している。
【0017】
特開平08-319381号公報は、エチレンメチルアクリレートとLDPEに基づいた幾つかのブレンドと、非常に濃い食塩水(2mol/L)中において水トリー試験を受ける、それから作った試験用シートを例示している。
【0018】
本発明者等は特に、塩水、特に海水、中でのウェットエイジング(wet aging)に特に関心がある。塩水はケーブルの水トリー化の問題を悪化させる傾向がある故、塩水にさらされる可能性のあるケーブル設計は難題である。
【0019】
塩水は、塩化ナトリウムのほか、なかんずく、マグネシウム、カルシウム、カリウム及び硫酸イオンを含みうる。これらの溶存塩類は、ウェットデザインケーブルにおいて水トリー化に影響を与えうる。塩水、例えば、海水は、例えば、淡水と比べてより攻撃的な環境である。淡水環境中で機能しうる物質が、海水への曝露に耐えうるとは限らない。
【0020】
本発明者等は、今、塩水環境に適したウェットデザインケーブルの絶縁層が、LDPEホモポリマー又は多不飽和コモノマーを持つLDPEコポリマーと、極性コモノマーを持つLDPEコポリマーとの組み合わせを含みうることを見出した。当該極性コモノマーを持つLDPEコポリマーは、高分子水トリー遅延剤として作用する。
【0021】
ウェットデザインケーブルは、「Johansson et al 8th International Conference on Insulated Power Cables, Influence of subsea conditions on the long term performance of AC XLPE cables,Jicable’11&#8211;19&#8211;23 June 2011,Versailles&#8211;France.The tested cables use a high performance water tree retardant,copolymer XLPE」に開示されている。試験されたケーブルは、高性能水トリー遅延剤、コポリマーXLPEを使用している。
【0022】
Jicable’19,Paris 23-27 June 2019において、Featherstone et al.”Full scale wet age testing of XLPE insulated power cables in salt water”」は、ウェットデザインのXLPEケーブルの塩水試験について報告している。
【0023】
しかしながら、本明細書において定義された、絶縁及び半導電層における特定のポリマーの組み合わせ並びに塩水環境における絶縁破壊を阻止するこれらの能力は新規である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
一つの観点から見ると、本発明は、塩水環境における、例えば海中又は海底における、ケーブルの使用方法、例えば送電用ケーブルの使用方法、を提供し、
該ケーブルが、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含み、
ここで、該絶縁層が、
(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、及び
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%
を含む。
【0025】
他の観点から見ると、本発明は、塩水環境、例えば、海中又は海底におけるケーブルの使用方法、例えば、送電用ケーブルの使用方法を提供し、
該ケーブルが、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含み、
ここで、該絶縁層が、
(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%;及び
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%
を含み、及び
該内側半導電層及び外側半導電層が夫々独立して、
(a)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマー、及び
(b)カーボンブラック
を含む。
【0026】
一つの観点から見ると、本発明は、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含むケーブルを提供し、
ここで、該絶縁層が、
(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、及び
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%
を含み、及び
該内側半導電層及び外側半導電層が夫々独立して、
(c)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマー、及び
(d)カーボンブラック
を含む。
【0027】
本発明のケーブルは、理想的にはウェットデザインケーブルである。
【0028】
本発明のケーブルは、架橋可能(架橋性)であるか、又は架橋されている。それ故に、更なる実施態様において、絶縁層は、過酸化物を含み、且つ架橋可能である。更なる実施態様において、内側半導電層及び/又は外側半導電層は、過酸化物を含み、且つ架橋可能である。更なる実施態様において、絶縁層、内側半導電層及び外側半導電層は、過酸化物を含み、且つ架橋可能である。架橋条件下に置かれると、架橋可能なケーブルは架橋されうる。過酸化物は分解してフリーラジカルを生成し、組成物中で架橋反応を開始させる。
【0029】
他の観点から見ると、本発明は、前に定義された架橋性ケーブルの架橋によって得られうる架橋ケーブルを提供する。他の観点から見ると、本発明は、塩水環境、例えば、海中又は海底における、例えば、送電用の、前に定義された架橋ケーブルの使用方法を提供する。
【0030】
他の観点から見ると、本発明は、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含むケーブルを製造する方法を提供し、
ここで、該方法が、
内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層を、導体上に押し出す工程、例えば共押出する工程、及び
該内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層のうちの1以上を架橋する工程
を含み、
ここで、該絶縁層が、
(i)低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、及び
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%
を含み、及び
該内側半導電層及び/又は外側半導電層が夫々独立して、
(a)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマー、及び
(b)カーボンブラック
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、塩水環境下で使用するケーブル、例えば架橋性ケーブル又は架橋ケーブル、例えば架橋性又は架橋電力ケーブル、であって、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層で囲まれている導体を含むケーブルを提供する。本発明はまた、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層により囲まれている導体を含む架橋ケーブルに関する。
【0032】
本明細書において使用される語「塩水」又は「塩水環境」とは、水の合計量に対して1.0重量%以上、好ましくは2.0重量%以上、より好ましくは3.0重量%以上及び最大10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下のNaCl含有量を有する溶解された塩化ナトリウム(NaCl)を含む水を云う。
【0033】
本発明のケーブルは、好ましくは、前に定義したようなウェットデザインである。理想的には、該ケーブルは、水の浸入を防止する水分不透過層、例えば、金属性の水バリア層を含まない。本発明のケーブルは、そのウェットデザインにもかかわらず、塩水環境における水トリー化に対する優れた耐性を提供する。このことは、塩水中におけるウェットエージング後の電気絶縁破壊強度の分析を経て実証されている。それ故に、代わりになるべきものとして見ると、本発明は、塩水環境における改善された電気絶縁破壊強度を持つケーブルを提供する。
【0034】
何人かの専門家は、ジャケット層が水蒸気侵入速度を制限する故に、外側の半導電層を覆う高分子ジャケットの存在を「セミウェット」デザインとみなしている。我々は、ジャケット層が水又は湿気を通さない故に、そのような解決策を本明細書においてウェットデザインとみなしている。
【0035】
絶縁層
本発明のケーブルは、低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、及び
エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%を含む。
【0036】
低密度ポリエチレンホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよいコポリマー
絶縁層の成分(i)は、LDPEホモポリマー又は、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ任意的に1以上の更なるコモノマーを有していてもよいLDPEコポリマーである。これを本明細書においてはLDPEポリマー成分(i)と呼ぶ。
【0037】
語「LDPE」は低密度ポリエチレンの略称であるけれども、該語は密度の範囲を限定するものでなく、LDPE様の高圧(HP)ポリエチレンを包含するものと理解される。語「LDPE」は、オレフィン重合触媒の存在下で製造されるポリエチレンと比較して、典型的な特徴、例えば異なる分岐構造、を持つHPポリエチレンの性質のみを述べ且つ区別する。
【0038】
語「LDPEホモポリマー」は、通常、本質的にエチレンモノマーから成る低密度ポリエチレンポリマーを云うと認識される。従って、理想的にはLDPEホモポリマーは、コモノマーを含まない。しかしながら、LDPEの性質に実質的に影響を及ぼさない、エチレンとは異なる少量のコモノマーは、そのまま物質が本質的になおホモポリマーであることを許容されうる。この点に関して、少量のコモノマーは、3重量%未満、例えば1重量%未満、0.5重量%未満又は0.1重量%未満、のエチレンとは異なる非極性又は極性コモノマーと理解されうる。
【0039】
LDPEポリマー成分(i)が、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを持つLDPEコポリマーであることが好ましい。
【0040】
1つの実施態様において、絶縁層の、少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、及び1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される、5重量%未満の極性コモノマーを含む。1つの実施態様において、絶縁層のLDPEコポリマー成分(i)は、3.0重量%未満、好ましくは2.0重量%未満、特に1.0重量%未満、のそのような極性コモノマーを含む。
【0041】
好ましくは、LDPEコポリマー成分(i)は、エチレンと1つの多不飽和コモノマーのみの二成分コポリマーである。
【0042】
多不飽和コモノマーは好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を有し、且つ非共役二重結合の間に少なくとも4個の炭素を有する直鎖炭素鎖から成り、該二重結合のうちの少なくとも1つが該直鎖炭素鎖の末端にある。多不飽和コモノマーは、好ましくはジエン、例えば、少なくとも8個の炭素原子を含み、第1の炭素-炭素二重結合が末端にあり、且つ第2の炭素-炭素二重結合が第1の二重結合に対して非共役であるジエン、であり、例えば、C-からC14-の非共役ジエン又はそれらの組み合わせから選ばれるジエン、例えば、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、又はそれらの組み合わせから選ばれるジエンであり、例えば、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、又はそれらの組み合わせから選ばれるジエン、である。
【0043】
他のコモノマーが存在する場合には、これはCからC10のα-オレフィンでありうる。
【0044】
LDPEコポリマー成分(i)は好ましくは、合計(すなわち、全てのコモノマー)で、0.001~40重量%、好ましくは0.05~40重量%、より好ましくは0.05~30重量%、更により好ましくは1.0~30重量%、より一層好ましくは1.0~20重量%の、1以上のコモノマーを含む。1つの実施態様において、LDPEコポリマーは、合計で0.05~20重量%、好ましくは0.05~15重量%、例えば1.0~10重量%、特に0.05~5.0重量%、例えば1.0~5.0重量%、より特には0.05~3.0重量%、例えば1.0~3.0重量%、のコモノマーを含む。
【0045】
多不飽和コモノマー含有量は、好ましくは0.001~10重量%、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.01~5.0重量%、更により好ましくは0.01~3.0重量%、特には0.01~2.0重量%、より特には0.1~2.0重量%、である。幾つかの実施態様において、存在する唯一のコモノマーは、多不飽和コモノマーである。
【0046】
LDPEポリマー成分(i)は、好ましくは不飽和である。それは好ましくは、0.4/1000個超の炭素原子、好ましくは0.5/1000個超の炭素原子、例えば0.6/1000個超の炭素原子、特に0.7/1000個超の炭素原子、例えば、0.8/1000個超の炭素原子、の炭素-炭素二重結合の合計量を有する。ポリオレフィン中に存在する炭素-炭素二重結合の量の上限は、限定されず、且つ好ましくは5.0/1000個未満の炭素原子、好ましくは3.0/1000個未満の炭素原子、でありうる。
【0047】
幾つかの実施態様において、LDPEポリマー成分(i)中に、もし存在する場合には、ビニル基、ビニリデン基及びトランス-ビニレン基に由来する炭素-炭素二重結合の合計量は、0.40/1000個超の炭素原子、好ましくは0.50/1000個超の炭素原子、より好ましくは0.60/1000個超の炭素原子、更により好ましくは0.70/1000個超の炭素原子、更により一層好ましくは0.75/1000個の炭素原子、特には0.8/1000個の炭素原子、である。好ましくは、ビニル基、ビニリデン基及びトランスビニレン基に由来する炭素-炭素二重結合の合計量は、5.0/1000個未満の炭素原子、好ましくは3.0/1000個未満の炭素原子、である。
【0048】
幾つかの実施態様において、LDPEポリマー成分(i)は、少なくともビニル基を含み、及びビニル基の合計量は、好ましくは0.05/1000個超の炭素原子、より好ましくは0.08/1000個超の炭素原子、及び最も好ましくは0.11/1000個超の炭素原子、である。
【0049】
幾つかの実施態様において、LDPEポリマー成分(i)は、少なくともビニル基を含み、及びビニル基の合計量は、好ましくは0.15/1000個超の炭素原子、例えば0.20/1000個超の炭素原子、より好ましくは0.25/1000個超の炭素原子、特には0.3/1000個超の炭素原子、より特には0.35/1000個超の炭素原子、最も特には0.40/1000個超の炭素原子、例えば0.45/1000個又は0.50/1000個超の炭素原子、である。
【0050】
好ましくは、ビニル基の合計量は、4.0/1000個未満の炭素原子である。より好ましくは、架橋前のLDPEポリマー成分(i)は、0.20/1000個超の炭素原子、更により好ましくは0.30/1000個超の炭素原子、及び最も好ましくは0.40ビニル/1000炭素原子超の炭素原子、例えば0.45ビニル/1000炭素原子超の炭素原子、特には0.50/1000個超の炭素原子、の合計量でビニル基を含む。
【0051】
好ましくは、LDPEポリマー成分(i)は、0.1~50g/10分、好ましくは0.3~20g/10分、より好ましくは0.3~15g/10分、更により好ましくは0.50~15g/10分、又は0.60~10g/10分のメルトフローレートMFR2.16/190℃を有する。幾つかの実施態様において、MFRは、0.50~8.0g/10分、例えば0.60~6.0g/10分、好ましくは0.70~5.5g/10分、例えば0.80~5.0g/10分、より好ましくは0.90~4.75g/10分、更により好ましくは1.0~4.5g/10分、なお更より好ましくは1.1~4.25g/10分、最も好ましくは1.2~4.0g/10分、例えば1.2~3.0g/10分、である。
【0052】
任意のLDPEポリマー成分(i)は、905~935kg/m、好ましくは910~935kg/m、例えば910~928kg/m、の密度を有しうる。
【0053】
絶縁層は好ましくは、カーボンブラックを含まない。
【0054】
絶縁層は、LDPEポリマー成分(i)の少なくとも60重量%、例えば、少なくとも60~90重量%、特には70~85重量%を含みうる。成分(i)として、LDPEポリマーのブレンドを使用することができる。LDPEポリマーのブレンドが使用されるところにおいて、このパーセンテージは、存在するLDPEポリマーの合計を云う。
【0055】
LDPEポリマー成分(i)は通常、他の成分が計算されると層の差し引き残高になる。
【0056】
ポリマー水トリー遅延剤:エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマー
絶縁層はまた、エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマー(成分ii)を含む。この成分は、ポリマー水トリー遅延剤と云われる。そのような化合物の組み合わせを使用することが可能である。
【0057】
ポリマー水トリー遅延剤としての、エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーは、内側半導電層及び外側半導電層において使用される、エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーと同一であっても異なっていてもよい。通常、内側半導電層及び外側半導電層の文脈において以下に提供される、エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの定義は、絶縁層のポリマー水トリー遅延剤成分(ii)に当てはまる。
【0058】
エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの極性コモノマーは、好ましくは、C-~C-アルキルアクリレート、C-~C-アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから選ばれる。更に好ましくは、使用されるLDPEコポリマーは、エチレンと、C-~C-アルキルアクリレート、例えば、メチル、エチル、プロピル若しくはブチルアクリレート、又は酢酸ビニルとのコポリマーである。
【0059】
エチレンメチルアクリレート(EMA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)コポリマー、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンエチルメタクリレート(EEMA)コポリマー、エチレンブチルメタクリレート(EBMA)コポリマー、エチレンブチルアクリレート(EBA)コポリマー又はエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーの使用が好ましい。
【0060】
エチレンメチルアクリレート(EMA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)又はエチレンエチルアクリレート(EEA)の使用が特に好ましい。
【0061】
絶縁層の、エチレンと少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーは、好ましくは0.001~40重量%、より好ましくは0.05~40重量%、更により好ましくは1~30重量%、の1つ以上のコモノマーを含む。極性コモノマー含有量は、より好ましくは5~30重量%、5~25重量%、5~20重量%、例えば7~25重量%、特には7~20重量%、10~25重量%又は10~30重量%、である。
【0062】
好ましくは、絶縁層の、エチレンと少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーは、0.1~50g/10分、より好ましくは1.0~30g/10分、更により好ましくは2.0~25g/10分、最も好ましくは2.0~22g/10分のメルトフローレートMFR2.16/190℃を有する。幾つかの実施態様において、絶縁層の、エチレンと少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーは、0.1~20g/10分、より好ましくは0.5~12g/10分のメルトフローレートMFR2.16/190℃を有する。なお更に好ましい選択肢において、絶縁層の、エチレンと少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーは、2.0~20.0g/10分、例えば2.0~17.0g/10分、好ましくは2.0~15g/10分、例えば2.0~13.5g/10分、2.0~13.0g/10分、2.5~12.5g/10分、又は2.5~12.0g/10分のMFR2.16/190℃を有する。
【0063】
LDPEコポリマーは、910~940kg/m、好ましくは915~940kg/m、例えば920~940kg/m、の密度を有しうる。
【0064】
絶縁層は、エチレンと少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマー(ii)の10~35重量%、例えば、10~30重量%又は12~35重量%、特には15~30重量%、を含みうる。これらのポリマーのブレンドが成分(ii)に使用されるところにおいて、このパーセンテージは、存在する、エチレンと少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレンコポリマーの合計を云う。
【0065】
過酸化物-絶縁層
絶縁層は、架橋可能であってもよく、又は架橋されていてもよい。そのような架橋可能な実施態様において、架橋可能な絶縁層が過酸化物を含むことが好ましい。ケーブルコア構造が一旦形成されると、架橋可能な絶縁層が過酸化物を含むことがより好ましい。過酸化物の組み合わせが使用されうる。
【0066】
好ましい架橋剤は、有機過酸化物である。限定されるものではないが、有機過酸化物、例えば、ジ-tert-アミルペルオキシド、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。好ましくは、過酸化物は、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、又はそれらの組み合わせ、から選ばれる。最も好ましくは、過酸化物はジクミルペルオキシドである。
【0067】
過酸化物は、絶縁層の重量に基づいて、好ましくは3.0重量%未満、より好ましくは0.1~2.5重量%、更に好ましくは0.3~2.5重量%、の量で絶縁層中に存在する。過酸化物のブレンドが使用されるところにおいて、このパーセンテージは、存在する過酸化物の合計を云う。
【0068】
内側半導電層及び外側半導電層
内側半導電層及び外側半導電層は、同一であってもよく又は異なっていてもよく、好ましくは同一である。ここで同一とは、架橋前に、内側半導電層及び外側半導電層の化学組成が同一であることを意味する。内側半導電層及び外側半導電層は絶縁層とは異なる。
【0069】
半導電層の半導電性は、半導電層内に含まれる導電性成分、すなわちカーボンブラック、に起因する。
【0070】
内側半導電層及び外側半導電層の両方が、エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとのLDPEコポリマー、及びカーボンブラックを含むことが好ましい。内側半導電層及び外側半導電層の両方が、エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとのLDPEコポリマー、カーボンブラック、過酸化物及び任意的に酸化防止剤含むことが好ましい。続く議論は、半導電層のいずれか一方又は両方に当てはまりうる。
【0071】
エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマーとの低密度ポリエチレン(LDPE)コポリマー
前記の内側半導電層及び/又は外側半導電層のLDPEコポリマーは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート若しくは酢酸ビニル、又はそれらの組み合わせの群から選ばれる極性コモノマーを含む。そのようなLDPEコポリマーの組み合わせを使用することがまた可能である。
【0072】
更に好ましくは、該極性コモノマーは、C-~C-アルキルアクリレート、C-~C-アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから選ばれる。更により好ましくは、内側半導電層及び/又は外側半導電層に使用されるLDPEコポリマーは、エチレンと、C-~C-アルキルアクリレート、例えば、メチル、エチル、プロピル若しくはブチルアクリレート、又は酢酸ビニルとのコポリマーである。
【0073】
エチレンメチルアクリレート(EMA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)コポリマー、エチレンエチルメタクリレート(EEMA)コポリマー、エチレンブチルメタクリレート(EBMA)コポリマー、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンブチルアクリレート(EBA)コポリマー又はエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーの使用が好ましい。
【0074】
エチレンメチルアクリレート(EMA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)又はエチレンエチルアクリレート(EEA)の使用が、特に好ましい。
【0075】
内側半導電層及び/又は外側半導電層のLDPEコポリマーは、好ましくは0.001~40重量%、より好ましくは0.05~40重量%、更により好ましくは1~30重量%、の1つ以上のコモノマーを含む。極性コモノマー含有量は、より好ましくは5~30重量%、5~25重量%、5~20重量%、例えば7~20重量%、である。
【0076】
好ましくは、内側半導電層及び/又は外側半導電層のLDPEコポリマーは、0.1~50g/10分、より好ましくは1.0~30g/10分、更により好ましくは2.0~25g/10分、例えば3.0~20g/10分又は4.0~20g/10分、及び、最も好ましくは4.0~22g/10分、例えば5.0~20g/10分、のメルトフローレートMFR2.16/190℃を有する。
【0077】
LDPEコポリマーは、910~940kg/m、好ましくは915~940kg/m、例えば920~940kg/m、の密度を有しうる。
【0078】
内側半導電層及び/又は外側半導電層は、少なくとも50重量%のLDPEコポリマー、例えば、少なくとも55重量%を含みうる。LDPEコポリマーのブレンドが使用されるところにおいて、このパーセンテージは、存在するLDPEコポリマーの合計を云う。
【0079】
幾つかの実施態様において、内側半導電層及び/又は外側半導電層に、少なくとも60重量%のLDPEコポリマーがある。LDPEは、通常、半導電層の他の成分が選ばれると層の差し引き残高となる。内側半導電層及び/又は外側半導電層は、好ましくは90重量%以下のLDPEコポリマーを含む。
【0080】
本発明において記載された任意のLDPEホモポリマー又はコポリマーは、任意の慣用の重合方法によって製造されうる。好ましくは、ラジカル重合、例えば、高圧ラジカル重合によって製造される。高圧重合は、管状反応器又はオートクレーブ反応器中で遂げられうる。管状反応器が好ましい。通常、圧力は、1200~3500バールであり得、及び温度は150℃~350℃でありうる。高圧ラジカル重合に関する更なる詳細は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.6 (1986),pp 383-410 and Encyclopedia of Materials: Science and Technology,Elsevier Science Ltd.: “Polyethylene:High-pressure,R.Klimesch,D.Littmann and F.-O.Mahling pp.7181-7184.2001に与えられており、それは参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0081】
例えば、プロピレンがコモノマー若しくは連鎖移動剤(CTA)として、又はその両方として使用され得、それによってC-C二重結合の合計量、好ましくはビニル基の合計量に寄与しうることは周知である。本発明の目的のために、コモノマーとしても作用しうる化合物、例えばプロピレンが、二重結合を与える為のCTAとして重合中に使用されるとき、該共重合可能なコモノマーは、コモノマー含有量に計算されない。
【0082】
カーボンブラック
本発明に従うと、内側半導電層及び外側半導電層は、更にカーボンブラックを含む。
【0083】
半導電性は、添加されたカーボンブラックに起因する。従って、カーボンブラックの量は、少なくとも半導電層が得られる量である。好ましくは、内側半導電層及び/又は外側半導電層は、10~60重量%、好ましくは15~48重量%のカーボンブラックを含む。他の好ましい実施態様において、カーボンブラックの量は、半導電層の重量に基づいて、10~45重量%、例えば20~45重量%、好ましくは25~45重量%、より好ましくは25~40重量%、又は特には30~41重量%、である。
【0084】
導電性である任意のカーボンブラックが使用されうる。適切なカーボンブラックの例としては、ファーネスブラック及びアセチレンブラックが含まれる。また、組み合わせがまた使用されうる。カーボンブラックのブレンドが使用される場合に、このパーセンテージは、存在するカーボンブラックの合計を云う。
【0085】
カーボンブラックは、ASTM D3037-93に準拠して測定されたとき、5~400m/g、例えば10~300m/g、例えば30~200m/gの窒素表面積(BET)を有していてもよい。更に、カーボンブラックは、以下の特性、すなわち、
i)ASTM D3849-95aに準拠した数平均粒子径として定義される、少なくとも5nmの一次粒子寸法、
ii)ASTM D-1510に準拠して測定された、少なくとも10mg/g、例えば10~300mg/g、例えば30~200mg/gのヨウ素吸着数(IAN)、
及び/又は、
iii)ASTM D-2414に準拠して測定された、少なくとも30cm/100g、例えば60~300cm/100g、例えば70~250cm/100g、例えば80~200cm/100g、例えば90~180cm/100g、のDBP(フタル酸ジブチル)吸収数(=油価)
のうちの1以上を有しうる。
【0086】
更に、カーボンブラックは、以下の特性、すなわち、
a)ASTM D3849-95aに準拠した数平均粒子径として定義される、少なくとも5nmの一次粒子寸法
b)ASTM D1510に準拠する、少なくとも30mg/gのヨウ素吸着量
c)ASTM D2414に準拠して測定された、少なくとも30ml/100gのオイル吸収量
のうちの1以上を有しうる。
【0087】
適切なファーネスブラックの一群は、28nm以下の平均一次粒子寸法を有する。平均一次粒子寸法は、ASTM D3849-95aに準拠して測定された数平均粒子径として定義される。このカテゴリーの特に適切なファーネスブラックは、ASTM D1510に準拠する60~300mg/gの間のヨウ素価を有しうる。(このカテゴリーの)オイル吸収量は、50~225ml/100g、例えば50~200ml/100gであることが更に適切であり、そして、これはASTM D2414に準拠して測定される。
【0088】
同様に適切なファーネスブラックの他の群は、28nmよりも大きい平均一次粒子寸法を有する。平均一次粒子寸法は、ASTM D3849-95aに準拠する数平均粒子径として定義される。このカテゴリーの適切なファーネスブラックは、ASTM D1510に準拠する30~200mg/gのヨウ素価を有する。更に(このカテゴリーの)オイル吸収量は、例えば、ASTM D2414に準拠して測定されて80~300ml/100gである。
【0089】
他の適切なカーボンブラックは、任意の他の方法によって製造されることができ、又は更に処理されることができる。
【0090】
半導電ケーブル層のために適したカーボンブラックは、その奇麗さによって適切に特徴付けられる。それ故に、適切なカーボンブラックは、ASTM D1506に準拠して測定された0.2重量%未満の灰分含有量を有し、ASTM D1514に準拠した30ppm未満の325メッシュのふるい残留物を有し、且つASTM D1619に準拠した1重量%未満の総硫黄を有する。
【0091】
ファーネスカーボンブラックは、ファーネス型反応器において製造される周知のカーボンブラックタイプのために通常認められた語である。カーボンブラック、その製造方法及び反応器の例として、特に、Cabotの欧州特許出願公開第0629222号明細書、米国特許第4,391,789号明細書、米国特許第3,922,335号明細書及び米国特許第3,401,020号明細書を参照することができる。ASTM D1765-98bに記載された市販のファーネスカーボンブラックの例として、特に、N351、N293及びN55を挙げることができる。ファーネスカーボンブラックは、半導電層に適した他のカーボンブラックタイプであるアセチレンカーボンブラックと慣用的に区別されている。アセチレンカーボンブラックは、アセチレンと不飽和炭化水素との反応により、例えば米国特許第4,340,577号明細書に記載されているようなアセチレンブラック法において製造される。
【0092】
特に、アセチレンブラックは、20nmよりも大きい、例えば20~80nmの平均粒子寸法を有しうる。平均一次粒子寸法は、ASTM D3849-95aに準拠した数平均粒径として定義される。このカテゴリーの適切なアセチレンブラックは、ASTM D1510に準拠した30~300mg/g、例えば30~150mg/gのヨウ素価を有する。更に、(このカテゴリーの)オイル吸収量は、例えば80~300ml/100g、例えば100~280ml/100g、であり、そして、これはASTM D2414に準拠して測定される。アセチレンブラックは、通常、承認された語であり、且つ周知であり、且つ例えば、Denka社により供給されている。
【0093】
本発明に従う更なる実施態様は、半導電層を開示し、ここで、導電成分は、導電性カーボンブラック、例えば、以下の性質、すなわち、
ASTM D3849-95aに準拠した数平均粒子径として定義される、少なくとも5nmの一次粒子寸法、
ASTM D-1510に準拠して測定された、少なくとも10mg/g、例えば10~300mg/gのヨウ素吸着量(IAN)、又は
ASTM D2414に準拠して測定された、少なくとも30cm/100g、例えば60~300cm/100gのDBP(フタル酸ジブチル)吸収量(=オイル吸収量)
のうちの1以上、例えば全て、を有するカーボンブラックを含む。
【0094】
過酸化物
内側半導電層及び/又は外側半導電層は、架橋可能または架橋されている。過酸化物は、好ましくは、半導電層の重量に基づいて、3.0重量%未満、より好ましくは0.1~2.5重量%、更により好ましくは0.3~2.5重量%、の量で架橋可能な内側半導電層及び/又は外側半導電層中に存在する。幾つかの実施態様において、過酸化物は、半導電層の重量に基づいて0.4~2.5重量%、好ましくは0.4~2.0重量%で存在する。過酸化物のブレンドが使用されるところにおいて、このパーセンテージは、存在する過酸化物の合計量を云う。
【0095】
好ましい架橋剤は、有機過酸化物である。限定されるものではないが、有機過酸化物としては、例えば、ジ-tert-アミルペルオキシド、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、又はこれらの任意の混合物が挙げられる。好ましくは、過酸化物は、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、又はそれらの組み合わせから選ばれる。最も好ましくは、過酸化物はビス(tertブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンである。
【0096】
酸化防止剤
ケーブルのいずれかの層は、酸化防止剤を含みうる。酸化防止剤として、立体障害又は半立体障害フェノール、芳香族アミン、脂肪族立体障害アミン、有機リン酸エステル、チオ化合物、重合された2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン及びそれらの組み合わせが挙げられうる。
【0097】
より好ましくは、酸化防止剤は、4,4‘-ビス(1,1’ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、パラ-配向されたスチレン化ジフェニルアミン、4,4’-チオビス(2-tert.ブチル-5-メチルフェノール)、重合された2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン又はそれらの誘導体の群から選ばれる。
【0098】
より好ましくは、酸化防止剤は、4,4’-ビス(1,1’ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、パラ配向されたスチレン化ジフェニルアミン、4,4’-チオビス(2-tert.ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-tert.ブチル-4-メチルフェノール)、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2’-チオ-ジエチル-ビス-(3-(3,5-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル))プロピオネート、重合された2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、又はこれらの誘導体の群から(限定されるものではないが)選ばれる。勿論、上述された酸化防止剤は1つだけでなく、それらの任意の組み合わせがまた使用されうる。
【0099】
酸化防止剤の量、任意的に2つ以上の酸化防止剤の組み合わせの量は、半導電層の重量に基づいて、0.005~2.5重量%、例えば0.01~2.5重量%、好ましくは0.01~2.0重量%、より好ましくは0.03~2.0重量%、特に0.03~1.5重量%、より特には0.05~1.5重量%、又は0.1~1.5重量%、でありうる。
【0100】
幾つかの実施態様において、酸化防止剤の量は、絶縁層の重量に基づいて、0.05~1.5重量%、好ましくは0.05~1.0重量%、より好ましくは0.05~0.8重量%、特に0.05~0.6重量%、より特には0.05~0.5重量%、である。
【0101】
その他の成分
内側及び/若しくは外側半導電層又は絶縁層は、更に添加剤を含んでいてもよい。在りうる添加剤として、スコーチ防止剤、架橋促進剤、安定剤、加工助剤、難燃性添加剤、酸捕捉剤、無機充填剤、電圧安定剤、又はそれらの組み合わせが挙げられうる。
【0102】
「スコーチ防止剤」は、押出し中の早められた架橋、すなわち、スコーチ形成を減じる化合物と定義される。スコーチ防止剤は、スコーチ防止特性に加えて、同時に、更なる促進効果、すなわち、架橋性能を高めるような更なる効果をもたらしうる。絶縁層におけるスコーチ防止剤の使用は特に好ましい。
【0103】
有用なスコーチ防止剤は、置換若しくは非置換のジフェニルエチレン、キノン誘導体、ヒドロキノン誘導体、例えば2,5-ditert.ブチルヒドロキノン、一官能性ビニル含有エステル及びエーテル、又はそれらの組み合わせから選ばれうる。より好ましくは、スコーチ防止剤は、置換若しくは非置換のジフェニルエチレン、又はそれらの組み合わせから選ばれる。非常に好ましい選択は、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンである。
【0104】
好ましくは、スコーチ防止剤の量は、当該層の重量に基づいて、0.005~1.0重量%の範囲内、より好ましくは0.01~0.8重量%、である。更に好ましい範囲は、当該層の重量に基づいて、0.03~0.75重量%、0.05~0.50重量%、0.05~0.70重量%及び0.10~0.50重量%、である。
【0105】
架橋促進剤は、不飽和基、例えば、脂肪族若しくは芳香族化合物、エステル、エーテル、アミン、又はケトンを少なくとも二つ含む化合物であり得、不飽和基、例えば、シアヌレート、イソシアヌレート、リン酸エステル、オルトギ酸エステル、脂肪族若しくは芳香族エーテル、又はベンゼントリカルボン酸のアリルエステルを少なくとも二つ含む化合物でありうる。エステル、エーテル、アミン及びケトンの例としては、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラ-オキサスピロ[5,5]-ウンデカン(DVS)、トリアリルトリメリテート(TATM)又はN,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサアリル-1,3,5,-トリアジン-2,4,6-トリアミン(HATATA)、又はこれらの任意の組み合わせの総体的な群から選ばれる化合物が挙げられる。架橋促進剤は、ポリマー組成物の重量に基づいて又は当該層の重量に基づいて、2.0重量%未満、例えば1.5重量%未満、例えば1.0重量%未満、例えば0.75重量%未満、例えば0.5重量%未満、及び、その下限が、例えば0.05重量%以上、例えば0.1重量%以上、のそのような架橋剤の量で加えられうる。
【0106】
本発明の更なる実施形態においては、絶縁層は、本明細書で議論されたポリマー水トリー遅延剤以外の水トリー遅延剤を含まない。
【0107】
導体
本発明のケーブルは、導体を含む。該導体は、任意の適切な導電性金属、例えば、銅又はアルミニウムから作られうる。
【0108】
ケーブル
電力ケーブルとは、任意の電圧で操作する、典型的には1kV超の電圧で操作するエネルギーを伝達するケーブルと定義される。電力ケーブルに印加される電圧は、交流(AC)、直流(DC)、又はトランジェント(インパルス)であることができる。更に、ケーブルは、非常に有利には、AC電力ケーブル、例えば、1~525kV、6~525kV、6~275kV、6~220kV、6~150kV、6~72kV又は6~60kV、の電力ケーブル(rms電圧、3相ケーブル中の任意の2つの導体間の電圧)の電圧において操作するケーブルである。幾つかの実施態様において、該ケーブルは、1kVよりも高い電圧、好ましくは6kVよりも高い電圧で操作するAC電力ケーブルである。幾つかの実施態様において、ケーブルは、525kV未満、好ましくは400kV未満、より好ましくは380kV未満、特に275kV未満、220kV未満、の電圧、又は150kVよりもさらに低い電圧で操作するAC電力ケーブルである。
【0109】
周知であるように、ケーブルは、更なる層、例えば外側半導電層、例えばジャケット層、を取り囲む層を任意的に含みうる。水の浸入を防止する水分不透過層の存在は、好ましくは回避され、すなわち、ケーブルはウェットデザインケーブルである。
【0110】
ケーブルは、
工程(a)
内側半導電層用の架橋性第1半導電組成物の提供及び混合、例えば、押出機中での溶融混錬、
絶縁層用の架橋性絶縁組成物の提供及び混合、例えば、押出機中での溶融混錬、
外側半導電層用の第2半導電組成物の提供及び混合、例えば、押出機中での溶融混錬、
工程(b)例えば、共押出しによる導体上への施与
工程(a)から得られた第1半導電組成物を溶融混練する内側半導電層の形成、
工程(a)から得られた絶縁層組成物を溶融混練する絶縁層の形成、及び
工程(a)から得られた第2半導電組成物を溶融混練する外側半導電層の形成、並びに、
工程(c)任意的に、得られたケーブルの絶縁層、内側半導電層及び外側半導電層のうちの1以上の架橋条件下での架橋
の工程を含む方法によって製造されうる。
【0111】
ケーブルの層の製造に過酸化物が使用される場合、そのような層が架橋されることが好ましい。それ故に、該ケーブルは架橋性である。
【0112】
内側半導電層用の第1半導電組成物、絶縁層用の架橋性絶縁組成物、及び外側半導電層用の第2半導電組成物は、ケーブルのそれぞれの内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層を形成するために必要な成分を含む。
【0113】
必要なポリマー組成物は、幾つかの異なる製造技術、例えば、Banbury若しくはBollingのようなインターナルミキサー、BUSSのような連続シングルスクリュー、又はFarrel若しくはWerner&Pfleidererのような連続ツインスクリューを使用する幾つかの手段、によって得られうる。半導電化合物の調製の為のミキサーのタイプ及び選ばれた操作条件は、溶融品質に直接影響を与え、且つ最終的な化合物の性質、例えばメルトフローレート、体積抵抗及び表面平滑性、に影響を与えるであろう。特に有用なのは、コ-ニーダー技術(BUSS、X-compounds)である。半導電層の製造において、導電性フィラーが、製造温度の完全制御と共に溶融状態においてポリマーに添加されることができる。この技術により、十分に進化した分散及び分配混合を伴うブレンドが、当業者によって達成されうる。
【0114】
全ての層が架橋されていることが好ましい。それ故に、本発明は、本明細書において定義されるケーブルを架橋することによって得られる架橋ケーブルを更に提供する。
【0115】
架橋手順は、高められた温度、例えば150℃以上、例えば160~350℃、で実行されうる。
【0116】
溶融混錬とは、得られた混合物を少なくとも主要なポリマー成分の融点を超える温度で混錬することを意味し、且つ典型的には、1以上のポリマー成分の融点又は軟化点よりも少なくとも10~15℃高い温度で実施される。
【0117】
語「共押出」は、本明細書において、1つ以上の押出ヘッドを用いて、1以上の層の全部又は一部が同時に形成されることを意味する。例えば、3つの層を形成するために3重押出しが使用されうる。
【0118】
本発明のなお更なる実施態様において、本発明の架橋ケーブルは、下記の測定方法の項目で説明されるように、55kV/mm以上、例えば、55~75kV/mmの、塩水中で1年間のウェットエージング後に20kVケーブル(公称絶縁厚5.5mm)で測定されたワイブル(Weibull)Ebを有する。
【0119】
更に、該第1及び第2の半導電組成物は例えば、同一であってもよい。
【0120】
電力ケーブル、例えばACケーブルの絶縁層の厚さは、ケーブルの絶縁層の断面から測定したとき、典型的には2mm以上、例えば少なくとも2.5mm、少なくとも3mm、例えば少なくとも3.5~50mm、例えば4~50mm、好ましくは少なくとも4.5~35mm、例えば5~30mm、である。
【0121】
電力ケーブルの内側半導電層及び/又は外側半導電層の厚さは典型的には、層の断面から測定したとき、0.5mm以上、例えば0.7mm~5.0mm、とすることができる。
【0122】
別の側面から見ると、本発明は、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によりこの順序で囲まれている導体を含むケーブルを提供し、
ここで、該内側半導電層及び/又は外側半導電層が夫々独立して、
アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される極性コモノマーを有するLDPEコポリマーの少なくとも50重量%、
25~48重量%のカーボンブラック、及び
0.1~2.5重量%の過酸化物
を含み、及び
該絶縁層が、
(i)少なくとも1つの多不飽和コモノマーを有し、且つ1以上の更なるコモノマーを有していてもよい低密度ポリエチレンコポリマーの少なくとも60重量%、
(ii)エチレンと、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから成る群から選択される少なくとも1つの極性コモノマー、好ましくは、アルキルアクリレートとの低密度ポリエチレンコポリマーの10~35重量%、及び
(iii)0.1~2.5重量%の過酸化物
を含む。
【0123】
用途
本発明のケーブルは特に、塩水環境における使用に適合しているものである。従って、該ケーブルは、海中に埋設されていてもよく、又は、海中若しくは海底に配置されていてもよい。陸地に埋設されているが海岸に近いケーブルはまた、地下で塩水環境にさらされることもある。潮の満ち引きの激しい河口で使用されるケーブルがまた塩水にさらされる。また、本発明のケーブルが例えば、そのような水域中又はそのような水域下で有用性を有する塩水湖及び塩水海がある。本発明のケーブルは、あらゆる塩水環境での使用に適している。
【0124】
1つの実施態様において、本発明は、本明細書において前に定義されたようなケーブルを海中に埋設することを含む方法に関する。
【0125】
1つの実施態様において、本発明は、本明細書において定義されたようなケーブルを海底に敷設することを含む方法に関する。従って、そのようなケーブルは、スプールから払い出されうる。そのような方法は、ケーブル敷設船を含みうる。
【0126】
1つの実施態様において、本発明のケーブルは、沖合の発電システムを海岸に接続するために使用され、ケーブルは従って海底に横たわる。それ故に、他の側面から見ると、本発明は、
(A)洋上発電機、例えば、風力タービン、
(B)該洋上発電機を、海底を経由して陸上及び/又は沖合に位置する変電所に接続する、本明細書においてクレームされたケーブル
を含む発電システムを提供する。
【0127】
洋上風力発タービンは通常、洋上プラットフォーム上に設置され、且つ別のプラットフォーム上に設置された洋上変電所及び/又は陸上変電所にケーブルで接続されている。これらのケーブルは海底ケーブルであり、そしてそれ故に、海水の存在下で別格に機能する本発明のケーブルは、この用途に理想的に適している。
【0128】
従って、通常、本発明のケーブルは、洋上装置を陸上装置又は他の洋上装置と接続することができる。従って、本発明のケーブルは、海底を経てこれらの装置を接続することができる。
【0129】
1つの実施態様において、本発明のケーブルは、洋上発電システムにおいて発生した電力を分配し、且つ海底を経て、洋上及び/又は陸上にある変電所又は集電システムに該システムを接続するために使用されうる。
【0130】
本発明は今、限定するものではない次の実施例を参照して説明される。
【0131】
測定方法
発明の詳細な説明又は実験部分に特記されない限り、下記の方法が、性質の測定のために使用された。
wt%:重量%
【0132】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に準拠して測定され、且つg/10分で表示される。MFRは、ポリマーの流動性、従って、加工性の指標である。メルトフローレートが高くなればなるほど、ポリマーの粘度は低くなる。MFRはポリエチレンに関して190℃で測定され、且つ異なる荷重、例えば2.16kg(MFR)又は21.6kg(MFR21)、で測定されうる。
【0133】
密度
密度はISO 1183-1/方法Aに準拠して測定された。サンプル調製はISO 17855-2:2016に準拠して圧縮成型により実行された。
【0134】
コモノマー含有量
a)NMR分光法による低密度ポリエチレン中のα-オレフィン含有量の定量化
コモノマー含有量は、塩基性割り当て後に定量的13C核磁気共鳴(NMR)分光法により測定された(J.Randall JMS-Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3),201-317 (1989))。実験パラメータは、この特定の課題の為の定量的スペクトルの測定を確実にするために調整された。
【0135】
特に、溶液状態NMR分光法が、Bruker AvanceIII 400 spectrometerを用いて採用された。均質なサンプルが、約0.200gのポリマーを2.5mlの重水素化テトラクロロエテンに溶解し、140℃のヒートブロックと回転チューブオーブンを用いて10mmのサンプル管中に調製された。(出力制御された)NOEを伴うプロトンデカップリングされた13C単一パルスNMRスペクトルが、次の取得パラメータ、すなわち、フリップアングル90度、ダミースキャン4回、トランジェント4096回、観測時間1.6秒、スペクトル幅20kHz、温度125℃、2元準位WALTZプロトンデカップリング方式及び遅延時間3.0秒を使用して記録された。得られたFIDは、以下の処理パラメータ、すなわち、32kデータポイントへのゼロフィリングとガウス窓関数を使用するアポディゼーション、ゼロ次と1次の自動位相補正及び関心領域に限定された5次の多項式を用いた自動ベースライン補正を使用して処理された。
【0136】
量は、当技術分野において周知の方法に基づいて、代表的な部位の信号積分値の単純な補正比を用いて計算された。
【0137】
b)低密度ポリエチレン中の極性コモノマーのコモノマー含有量の測定
コモノマー含有量(重量%)は、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法で較正されたフーリエ変換赤外分光法(FTIR:Fourier transform infrared spectroscopy)測定に基づき、既知の方法で測定された。
【0138】
フィルムは、Specac社製フィルムプレスを用いて、150℃、約5トン、1~2分間で圧縮され、そして次いで、冷水を用いて制御することなしに冷却した。得られたフィルムサンプルの正確な厚みが測定された。
【0139】
FTIRで分析した後、吸光度モードのベースラインが、分析されるべきピークに関して描かれた。コモノマーの吸光度ピークは、ポリエチレンの吸光度ピークにより正規化された。FTIRのピーク高さ比は、NMRによって測定された参照物質による極性コモノマー含有量と相関された。NMR分光法の較正手順は、文献に明確に証明されている慣用的な様式で実施された。
【0140】
NMR分光法によるポリマー中の極性コモノマー含有量の定量化
極性コモノマー含有量は、塩基性割り当て後の定量的核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定された(例えば、“NMR Spectra of Polymers and Polymer Additives”,A.J.Brandolini and D.D.Hills,2000,Marcel Dekker,Inc.New York)。実験パラメータは、この特定の課題に関する定量的なスペクトルの測定を確実にするために調整された(例えば、“200 and More NMR Experiments:A Practical Course”,S.Berger and S.Braun,2004,Wiley-VCH,Weinheim)。量は、当該技術分野において公知の方法で、代表的な部位の信号積分値の単純な補正比を用いて計算された。
【0141】
以下に、エチレンエチルアクリレート、エチレンブチルアクリレート及びエチレンメチルアクリレートの極性コモノマー含有量の測定が例示されている。重量%は計算によりモル%に変換されうる。このことは文献において明確に証明されている。
【0142】
(1)ブチルアクリレートを含むエチレン系コポリマー
ポリマーのフィルムサンプルが、FTIR測定用に調製された。すなわち、0.5~0.7mm厚のフィルムが、エチレンブチルアクリレート含有量>6重量%のブチルアクリレート含有量のために使用され、及び0.05~0.12mm厚のフィルムが、エチレンブチルアクリレート含有量<6重量%のブチルアクリレート含有量のために使用された。FT-IR分析後、3450cm-1の、6重量%超のブチルアクリレートのピークの最大吸光度が、3510cm-1のベースラインの吸光度値で差し引かれた(Aブチルアクリレート-A3510)。次に、2020cm-1のポリエチレンピークの最大吸光度ピークが、2120cm-1のベースラインの吸光度値で差し引かれた(A2020-A2120)。次に(Aブチルアクリレート-A3510)と(A2020-A2120)との比が、文献において明確に証明されている慣用的な様式で計算された。
【0143】
1165cm-1における6重量%未満のブチルアクリレートコモノマーの為のピークの最大吸光度が、1865cm-1におけるベースラインの吸光度値で差し引かれた(Aブチルアクリレート-A1865)。次に、2660cm-1におけるポリエチレンピークの為の最大吸光度ピークが、1865cm-1におけるベースラインの為の吸光度値で差し引かれた(A2660-A1865)。(Aブチルアクリレート-A1865)と(A2660-A1865)との比が次いで算出された。
【0144】
(2)エチルアクリレートを含むエチレン系コポリマー
ポリマーのフィルムサンプルが、FTIR測定用に調製された。すなわち、0.5mm厚が、エチレンエチルアクリレートのために使用された。
【0145】
FT-IR分析後、約3205~3295cm-1で線形ベースライン補正を適用した、3450cm-1にあるエチルアクリレートの為のピークの最大吸光度(Aエチルアクリレート)が、測定された。次に、約1975~2120cm-1で線形ベースライン補正を適用した、2020cm-1のポリエチレンピークの為の最大吸光度ピークが測定された(A2020)。次に、(Aエチルアクリレート)と(A2020))との比が、文献において明確に証明されている慣用的な様式で計算された。
【0146】
(3)メチルアクリレートを含むエチレン系コポリマー
ポリマーのフィルムサンプルが、FTIR測定用に調製された。すなわち、0.1mm厚が、エチレンメチルアクリレート含有量>8重量%のメチルアクリレート含有量のために使用され、及び0.05mm厚が、エチレンメチルアクリレート含有量<8重量%のメチルアクリレート含有量のために使用された。
【0147】
分析後、3455cm-1にある、8重量%超のメチルアクリレートの為のピークの最大吸光度が、3510cm-1にあるベースラインの為の吸光度値で差し引かれた(Aメチルアクリレート-A3510)。次いで、2675cm-1のポリエチレンピークの為の最大吸光度ピークが、2450cm-1のベースラインの為の吸光度値で差し引かれた(A2675-A2450)。次に、(Aメチルアクリレート-A3510)と(A2675-A2450)との比が、文献において明確に証明されている慣用的な様式で計算された。
【0148】
1164cm-1における8重量%未満のメチルアクリレートコモノマーの為のピークの最大吸光度が、1850cm-1におけるベースラインの吸光度値で差し引かれた(Aメチルアクリレート-A1850)。次いで、2665cm-1におけるポリエチレンピークの為の最大吸光度ピークが、1850cm-1におけるベースラインの為の吸光度値で差し引かれた(A2665-A1850)。次に、(Aメチルアクリレート-A1850)と(A2665-A1850)との比が計算された。
【0149】
ポリマー、すなわち、ポリエチレン中の二重結合の量を測定する為のASTM D3124-98法、及び、ASTM D6248-98法、
ASTM D3124-98及びASTM D6248-98法がLDPE成分(i)中の二重結合の測定のために適用される。この方法の説明におけるLDPE成分(i)は、「ポリマー」と称される。
【0150】
ASTM D3124-98法及びASTM D6248-98法は、一方ではASTM D3124-98法に基づく二重結合量/1000C-原子の測定の為の手順を含む。ASTM D3124-98法において、ビニリデン基/1000C-原子の測定の為の詳細な説明が、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンに基づいて与えられている。ASTM D6248-98法において、ビニル基及びトランス-ビニレン基/1000C-原子の測定の為の詳細な説明が、夫々、1-オクテン及びトランス-3-ヘキセンに基づいて与えられている。そこに記載されているサンプル調製手順は、ここでは、本発明におけるビニル基/1000C-原子、ビニリデン基/1000C-原子及びトランス-ビニレン基/1000C-原子の測定に適用された。ASTM D6248-98法は、ASTM D3124-98法の臭素化手順を含める可能性を示唆するが、本発明に関するサンプルは臭素化されなかった。これら3タイプの二重結合の為の吸光係数の測定のために、次の3つの化合物、すなわち、ビニルのために1-デセン、ビニリデンのために2-メチル-1-ヘプテン及びトランス-ビニレンのためにトランス-4-デセンか使用され、及びASTM D3124-98及びASTM-D6248-98に記載された手順が、上記例外を伴って続けられた。
【0151】
「ポリマー」のビニル結合、ビニリデン結合及びトランス-ビニレン二重結合の合計量が、IR分光法で分析され、そして、炭素原子1000個あたりのビニル結合、ビニリデン結合及びトランス-ビニレン結合の量として与えられた。
【0152】
分析されるべきポリマーは、厚さ0.5~1.0mm厚を持つ薄膜に圧縮された。実際の厚みが測定された。FT-IR分析は、PerkinElmer Spectrum Oneで実施された。2回のスキャンが、4cm-1の分解能で記録された。
【0153】
1)ポリエチレンホモポリマー及びコポリマーを含むポリマー組成物、又は、ポリエチレンホモポリマー及びコポリマー(但し、0.4重量%超の極性コモノマーを有するポリエチレンコポリマーを除く)。
ポリエチレンに関しては、3タイプのC=C含有官能基が、夫々、特徴的な吸収により定量され、且つ異なるモデル化合物、すなわち、
・ビニル(R-CH=CH)、1-デセン[dec-1-ene]に基づいた910cm-1を介してE=13.13L・mol-1・mm-1を与える
・ビニリデン(RR’C=CH)、2-メチル-1-ヘプテン[2-methyhept-1-ene]に基づいた888cm-1を介してE=18.24L・mol-1・mm-1を与える
・トランス-ビニレン(R-CH=CH-R’)、トランス-4-デセン[(E)-dec-4-ene]に基づいた965cm-1を介してE=15.14L・mol-1・mm-1を与える
に対して夫々較正されて、個々の吸光係数に帰着した
【0154】
ポリエチレンホモポリマー又は0.4重量%未満の極性コモノマーを持つポリエチレンコポリマーに関しては、線形ベースライン補正が、約980~840cm-1で適用された。
【0155】
2)ポリエチレンコポリマー又は0.4重量%超の極性コモノマーを有するポリエチレンコポリマーを含むポリマー組成物
0.4重%超の極性コモノマーを持つポリエチレンコポリマーに関しては、2タイプのC=C含有官能基が、夫々、特徴的な吸収により定量され、且つ異なるモデル化合物、すなわち、
・ビニル(R-CH=CH)、1-デセン[dec-1-ene]に基づいた910cm-1を介してE=13.13L・mol-1・mm-1を与える
・ビニリデン(RR‘C=CH)、2-メチル-1-ヘプテン[2-methyhept-1-ene]に基づいた888cm-1を介してE=18.24L・mol-1・mm-1を与える
に対して夫々較正されて、個々の吸光係数に帰着した。
【0156】
EBA、すなわち、
ポリ(エチレン-コ-ブチルアクリレート)(EBA)系に関しては、線形ベースライン補正が、約920~870cm-1で適用された。
【0157】
EEA、すなわち、
ポリ(エチレン-コ-エチルアクリレート)(EEA)系に関しては、線形ベースライン補正が、約920~825cm-1で適用された。
【0158】
EMA、すなわち、
ポリ(エチレン-コ-メチルアクリレート)(EMA)系に関しては、線形ベースライン補正が、約930~870cm-1で適用された。
【0159】
ASTM D3124-98及びASTM D6248-98法は、一方でまたモル吸光係数を測定する手順を含む。二硫化炭素(CS)中の0.18mol・L-1溶液が少なくとも3回使用され、そして、モル吸光係数の平均値が使用された。
【0160】
炭素原子1000個あたりの多不飽和コモノマーに由来するビニル基の量が測定され、そして、下記のように計算された。すなわち、
【0161】
分析対象ポリマーと参照用ポリマーは、基本的に同一の条件、すなわち、同様のピーク温度、圧力及び生産速度を用いて同じ反応器で製造されたが、唯一の相違は、多不飽和コモノマーが分析対象ポリマーに添加され、且つ参照用ポリマーには添加されないことである。各ポリマーのビニル基の合計量は、本明細書において記載されたように、FT-IR測定によって測定された。次いで、ビニル基、すなわち、該方法により形成されたビニル基及び(存在する場合には)ビニル基を生ずる連鎖移動剤から形成されたビニル基のベースレベルは、参照ポリマーと分析対象ポリマーで同一であると仮定され、分析対象ポリマーにおいては多不飽和コモノマーも反応器に添加されるという唯一の例外がある。次いで、このベースレベルは、分析対象ポリマー中のビニル基の測定量から差し引かれ、それにより、多不飽和コモノマーに起因するビニル基の量/1000C-原子が得られる。
【0162】
塩水中でのウェットエージング試験
塩水中でのケーブルのウェットエージング特性は、2018年4月に発行されたCigreの技術パンフレット722「6kV(Um=7.2kV)から60kV(Um=72.5kV)までの海底ケーブルの為の追加試験に関する推奨事項」に記載されたレジームA手順を使用して評価される。
【0163】
プレコンディショニング:
ケーブルは、温度55℃で500時間水槽中に浸漬される。水の塩化ナトリウム含有量は3.5重量%である。
【0164】
エージング:
ケーブルは水槽の中で電気的にエージングされる。水温は40℃であり、及び50Hzの印加電圧は38.5kVであり、9.1kV/mmの導体応力に相当する。水中の塩化ナトリウム含有量は3.5重量%である。
【0165】
AC絶縁破壊試験
1年エージング後のAC絶縁破壊試験は、Cigreの技術パンフレット722の3.6.4.1項目及びHD6055.4.15.3.4(b)に準拠して実施された。このようにして、ケーブルは、(末端に加えて)有効長10mの6つの試験サンプルに切断された。これらのサンプルは、エージングタンクから取り出した後72時間以内に、以下の手順、すなわち、
-5分間、36kVで開始し、
-絶縁破壊が発生するまで、5分毎に12kVずつ電圧を上昇させる
に従って50HzACステップ試験により絶縁破壊まで試験した。
6個の絶縁破壊値からなるデータセットのワイブルパラメータの計算は、IEC62539(2007)に記載されている最小二乗回帰法に従っている。
【0166】
実験部分
これらの実施例においては、以下の材料が使用された。すなわち、
EEA 1は、高圧法で製造された、エチレンと15重量%のエチルアクリレートコモノマー(すなわち、極性コモノマー)とのLDPEコポリマーである。MFRは、約7g/10分である。
LDPE1は、ビニル含有量約0.55ビニル/1000C及びMFR約2g/10分を有する、高圧法で製造された、エチレンと1,7-オクタジエンコモノマー(すなわち、多不飽和コモノマー)とのLDPEコポリマーである。
DCP:ジクミルパーオキサイド
【0167】
(後述される)以下の寸法を有する2本の20kVケーブルが、パイロットCCVラインにおいて、加熱ゾーンにおけるライン速度2.79m/分及び次の温度、すなわち、加硫チューブ内で460/400/385/375℃を使用して押出され、そして次いで、ケーブルコアは水で冷却される。同一の半導電層が、本発明の実施例と比較例との両方で2本の20kVケーブル(絶縁厚さ約5.5mm)に使用された。
【0168】
内側半導電層及び外側半導電層は、(カーボンブラックと過酸化物を含む)Borealis社製LE0595を含む。ケーブルは、以下の寸法を有する。
150mmAl導体
内部半導電層:約1mm厚
絶縁層:5.5~5.6mm厚
外側半導電層:約0.8mm厚
【0169】
【表1】
【0170】
比較例の絶縁層は、Borealis社製架橋性添加物WTR遅延材であるLE4212である。電気絶縁破壊強度は、本発明及び比較例の20kVケーブルについて、上記のような塩水中での1年間のウェットエージング後に測定された。
【0171】
Eb試験後の1年間の試験結果において、添加物WTRを含むポリマー組成物よりも、ポリマーWTRを含むポリマー組成物を使用することに明確な利点があることが理解されうる。ポリマーWTR絶縁ケーブルにおいて、1年間のウェットエージング後のワイブルEb(63.2%)値は64.1kV/mmである。
【0172】
添加物WTR絶縁ケーブルにおいては、ウェットエージング1年後のワイブルEb(63.2%)値は51.2kV/mmである。これらの絶縁破壊強度値は、絶縁破壊が発生したときの導体応力における電気応力を示す。これは、塩水環境における長期ウェットエージング試験において試験されたとき、ポリマーWTR組成物の利点を明確に示している。下記の表2は、測定されたEb値の要約である。
【0173】
【表2】
【国際調査報告】