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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】摩擦調整剤システム
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20231011BHJP
   C10M 133/38 20060101ALN20231011BHJP
   C10M 135/18 20060101ALN20231011BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20231011BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20231011BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20231011BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20231011BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20231011BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M133/38
C10M135/18
C10M137/10 A
C10M139/00 Z
C10N10:12
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520451
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 IB2021059104
(87)【国際公開番号】W WO2022074547
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/087,617
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】久保 浩一
(72)【発明者】
【氏名】リューエ、ジュニア、ウィリアム レイモンド
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BE26C
4H104BG10C
4H104BH06C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104FA06
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA41
(57)【要約】
本開示では、潤滑剤添加剤について説明する。添加剤は、モリブデン含有化合物と、以下の構造(I)を有する第三級アミン含有組成物とを含む摩擦調整剤であり、
【化I】

ここで、各R及びRは独立に、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各R、R、及びRは独立に水素、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各mは独立に0~4であり、各pは独立に0~4であり、各環状部分に対して、m+pは2~4であり、各nは独立に1~6である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物であって、
a)多量の基油と、
b)少量の相乗的摩擦調整剤組成物と、を含み、前記相乗的摩擦調整剤組成物は、
i)モリブデン含有化合物と、
ii)以下の構造を有する第三級アミン含有化合物と、を含み、
【化III】

ここで、各R及びRは独立に、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各R、R、及びRは独立に水素、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各mは独立に0~4であり、各pは独立に0~4であり、各環状部分に対して、m+pは2~4であり、各nは独立に1~6である、前記潤滑油組成物。
【請求項2】
前記直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基は、分岐C12~C20のアルケニル基である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基は、分岐C18~C20のアルケニル基である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記第三級アミン含有添加剤は、前記潤滑油組成物の重量により約0.1~2wt%で存在する請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記モリブデン含有化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンカルボキシレート、モリブデンエステル、モリブデンアミン、またはモリブデンアミドである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記モリブデンジチオカルバメートは、以下の構造によって与えられ、
【化IV】

ここで、R、R、R10、及びR11はそれぞれ独立に、水素または炭化水素基、たとえば、一例として、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、及びシクロアルケニル基であり、ならびにX、X、X、及びXはそれぞれ独立に、硫黄または酸素である請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記モリブデン含有化合物は、前記潤滑油組成物中に、約50~約1500ppmの範囲の濃度で存在する請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
潤滑油によってエンジンを潤滑することを含む摩擦を変更する方法であって、前記潤滑油は、
a)多量の基油と、
b)少量の相乗的摩擦調整剤組成物と、を含み、前記相乗的摩擦調整剤組成物は、
i)モリブデン含有化合物と、
ii)以下の構造を有する第三級アミン含有添加剤と、を含み、
【化III】

ここで、各R及びRは独立に、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各R、R、及びRは独立に水素、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各mは独立に0~4であり、各pは独立に0~4であり、各環状部分に対して、m+pは2~4であり、各nは独立に1~6である前記方法。
【請求項9】
前記直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基は、分岐C12~C20のアルケニル基である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基は、分岐C18~C20のアルケニル基である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第三級アミン含有添加剤は、前記潤滑油組成物の重量により約0.1~2wt%で存在する請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記モリブデン含有化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンカルボキシレート、モリブデンエステル、モリブデンアミン、またはモリブデンアミドである請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記モリブデンジチオカルバメートは、以下の構造によって与えられ、
【化IV】

ここで、R、R、R10、及びR11はそれぞれ独立に、水素または炭化水素基、たとえば、一例として、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、及びシクロアルケニル基であり、ならびにX、X、X、及びXはそれぞれ独立に、硫黄または酸素である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モリブデン含有化合物は、前記潤滑油組成物中に、約50~約1500ppmの範囲の濃度で存在する請求項8に記載の方法。
【請求項15】
潤滑油組成物であって、
a)多量の基油と、
b)モリブデン含有化合物と、
c)反応の生成物であって、
i)以下の構造によって表されるヒドロカルビル置換無水コハク酸であって、
【化I】

ここで、Rは、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基である、前記ヒドロカルビル置換無水コハク酸と、
ii)以下の構造によって表される環状ポリアミンであって、
【化II】

ここで、Rは水素、または1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、mは0~4であり、pは0~4であり、m+pは2~4であり、nは1~6である前記環状ポリアミンと、を含み、
前記ヒドロカルビル置換無水コハク酸と環状ポリアミンとの比は、約1.5:1~約1.6:1である前記反応の生成物と、を含む前記潤滑油組成物。
【請求項16】
前記環状アミンは、アミノエチルピペラジン、アミノプロピルピペラジン、アミノブチルピペラジン、アミノエチルジアゼパン、またはアミノエチルジアゾカンである請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
前記モリブデン含有化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンカルボキシレート、モリブデンエステル、モリブデンアミン、またはモリブデンアミドである請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
前記モリブデンジチオカルバメートは、以下の構造によって与えられ、
【化IV】

ここで、R、R、R10、及びR11はそれぞれ独立に、水素または炭化水素基、たとえば、一例として、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、及びシクロアルケニル基であり、ならびにX、X、X、及びXはそれぞれ独立に、硫黄または酸素である請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
前記モリブデン含有化合物は、前記潤滑油組成物中に、約50~約1500ppmの範囲の濃度で存在する請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
各R、R、R10、及びR11は独立に、6~18の炭素原子を含む請求項18に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、潤滑剤添加剤及び潤滑剤添加剤を含有する潤滑油組成物に関する。より具体的には、本開示は、燃料効率を改善することができる摩擦調整剤組成物について説明する。
【背景技術】
【0002】
背景
摩擦によるエネルギー損失を減らすために、摩擦調整剤、耐摩耗剤、及び酸化防止剤などの潤滑剤添加剤(後者は前述の添加剤の効果を延ばす傾向がある)をエンジン油内にブレンドする場合がある。
【0003】
さらに、エンジンのピストン/シリンダ内の流体力学的摩擦を減らすために、エンジン油の粘性は下げられている。この結果、新しい境界層領域を相殺する摩擦調整剤の重要性が増している。そのため、油粘度と種々の摩擦調整剤との相互作用は、燃費を改善するために詳細に研究されている。
【発明の概要】
【0004】
要約
一態様では、潤滑油組成物であって、
a)多量の基油と、b)少量の相乗的摩擦調整剤組成物と、を含み、相乗的摩擦調整剤組成物は、i)モリブデン含有化合物と、ii)以下の構造を有する第三級アミン含有化合物と、を含み、
【化III】

ここで、各R及びRは独立に、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各R、R、及びRは独立に水素、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各mは独立に0~4であり、各pは独立に0~4であり、各環状部分に対して、m+pは2~4であり、各nは独立に1~6である、潤滑油組成物が提供される。
【0005】
ヒドロカルビル基における炭素原子の数は、分子の油溶性に大きい影響を与える可能性がある。したがって、ヒドロカルビル基における炭素原子の数は、摩擦調整剤が油溶性になるのに十分な数でなければならない。
【0006】
別の態様では、潤滑油によってエンジンを潤滑することを含む摩擦を変更する方法であって、潤滑油は、a)多量の基油と、b)少量の相乗的摩擦調整剤組成物と、を含み、相乗的摩擦調整剤組成物は、i)モリブデン含有化合物と、ii)以下の構造を有する第三級アミン含有化合物と、を含み、
【化III】

ここで、各R及びRは独立に、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各R、R、及びRは独立に水素、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各mは独立に0~4であり、各pは独立に0~4であり、各環状部分に対して、m+pは2~4であり、各nは独立に1~6である方法が提供される。
【0007】
さらに別の態様では、潤滑油組成物であって、a)多量の基油と、b)モリブデン含有化合物と、c)反応の生成物であって、i)以下の構造によって表されるヒドロカルビル置換無水コハク酸であって、
【化I】

ここで、Rは、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基である、ヒドロカルビル置換無水コハク酸と、ii)以下の構造によって表される環状ポリアミンであって、
【化II】

ここで、Rは水素、または1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、mは0~4であり、pは0~4であり、m+pは2~4であり、nは1~6である環状ポリアミンと、を含み、ヒドロカルビル置換無水コハク酸と環状ポリアミンとの比は、約1.5:1~約1.6:1である反応の生成物と、を含む潤滑油組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な記述
定義
用語「ヒドロカルビル」は、飽和及び不飽和炭化水素を含む炭化水素に由来する化学基または部分を指す。ヒドロカルビル基の例としては、アルケニル、アルキル、ポリアルケニル、ポリアルキル、フェニルなどが挙げられる。
【0009】
用語「油溶性」または「油分散性」は、本明細書で用いる場合、化合物または添加剤が、すべての割合で油中に可溶性、溶解性、混和性、または懸濁可能であることを、必ずしも示すものではない。しかし、これらは、たとえば、油が用いられる環境においてその意図した影響を及ぼすのに十分な程度まで、油中に可溶性であるかまたは安定して分散性であることを意味する。また、必要に応じて、他の添加剤をさらに組み込むことによって、より高いレベルの特定の添加剤の組み込みも可能になり得る。
【0010】
要素の組み合わせ、サブセット、グループなどが開示されている場合(たとえば、組成物中の成分の組み合わせ、または方法におけるステップの組み合わせ)、これらの要素の種々の個別及び集合的な組み合わせ及び並べ換えのそれぞれに対する具体的な参照が明示的に開示されていない場合があるが、それぞれが具体的に意図され、本明細書に記載されていると理解される。
【0011】
本発明は、潤滑油中で摩擦調整剤として用いることができる添加剤組成物に関する。本発明の摩擦調整剤は少なくとも2つの相乗成分を含む。第1の成分は、ヒドロカルビル置換無水コハク酸と環状ポリアミンとを伴う反応の生成物(複数可)を含む。生成物は第三級アミン含有化合物である。第2の成分はモリブデン含有化合物である。
【0012】
第三級アミン含有化合物
摩擦調整剤組成物の第1の成分は、米国特許出願公開第20180034635号及び米国特許第7,091,306号に記載されるものなどの任意の既知の適合する方法によって合成し得る。なおこれらの文献は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0013】
反応は種々の条件下で進行し得る。全般的に、ヒドロカルビル置換無水コハク酸を環状ポリアミンと、約130℃~220℃(たとえば、140℃~200℃、145℃~175℃など)の温度で反応させる。より好ましくは、温度は約160℃~215℃の範囲であり得る。全般的に、イミド化工程は、より低い温度(たとえば、150℃~170℃)で行い得るが、より高い温度(たとえば、200℃~220℃)が、アミド化工程を完了するのに必要であり得る。
【0014】
反応は、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことができる。全般的に、ヒドロカルビル置換無水コハク酸の環状ポリアミンに対する好適なモル充填は、約1.4:1~約1.7:1、より好ましくは、約1.5:1~約1.6:1である。いくつかの実施形態では、任意の未反応の第二級アミンと反応させるために、ヒドロカルビル置換無水コハク酸の環状ポリアミンに対する充填モル比(CMR)は約1.55:1またはそれよりもわずかに高いことが望ましい場合があり得る。第二級アミンはシールに対してより攻撃であると考えられる。充填モル比は重要である。なぜならば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸が多すぎると、モノアミド/酸構造となる可能性があり、少なすぎると、第二級アミンを含有するモノスクシンイミド生成物となる可能性があるからである。いくつかの実施形態では、反応は、異なるヒドロカルビル基を有するヒドロカルビル置換無水コハク酸の混合物を用いて進行し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、反応は複数のステップで進み得る。ヒドロカルビル置換無水コハク酸の環状ポリアミンまたは環状ポリアミン生成物に対する総CMRは、約1.4:1~約1.7:1、より好ましくは、約1.5:1~約1.6:1である。たとえば、第1のステップには、ヒドロカルビル置換無水コハク酸と環状ポリアミンとを1:1充填モル比で反応させて、イミド構造を生成することが含まれ得る。第2のステップでは、イミド構造をヒドロカルビル置換無水コハク酸と約0.5充填モル比(無水コハク酸対イミド生成物)において反応させる。2つのステップの総CMRは1.5:1である。第1のステップにおけるヒドロカルビル置換無水コハク酸と、第2のステップにおけるヒドロカルビル置換無水コハク酸とは、ヒドロカルビル基が同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0016】
実施形態によれば、ヒドロカルビル置換は無水コハク酸構造Iによって与えられる。
【化I】

ここで、Rは、1~約20の炭素原子、たとえば、10~20の炭素原子、12~20の炭素原子、及び14~20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基である。いくつかの実施形態では、炭素の平均数は約14以上である。Rは環状または非環状であってもよい。いくつかの実施形態では、Rは飽和している。他の実施形態では、Rは不飽和である。
【0017】
ヒドロカルビル基の正確な構造は多くの要因に依存し得る。油中への溶解性は重要な考慮事項である。全般的に、ヒドロカルビル基が長いほど、油中への溶解度は高い。
【0018】
ヒドロカルビル置換無水コハク酸は商業的に容易に入手可能である。例えば、アルケニルコハク酸無水物は、紙のサイズ処理に広く使用されている。反対に、本発明のヒドロカルビル置換コハク酸無水物は、十分に確立された方法により合成することができる。従来の合成の1つでは、無水マレイン酸をオレフィンと高温(約200℃)で反応させることが含まれる。
【0019】
実施形態によれば、環状ポリアミンは構造IIによって表される。
【化II】

ここで、Rは水素、または1~約20の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、mは0~4であり、pは0~4であり、m+pは2~4であり、nは1~6である。Rは環状または非環状であってもよい。いくつかの実施形態では、Rは飽和している。他の実施形態では、Rは不飽和である。環状ポリアミンは塩基性第三級アミン供給源として機能する。
【0020】
本発明での使用に適したポリアミンの多くが市販されており、他のものは、当該技術分野で良く知られた方法によって調製され得る。たとえば、アミンを調製するための方法及びそれらの反応は、以下に詳述されている。Sidgewick's “The Organic Chemistry of Nitrogen”, Clarendon Press, Oxford, 1966; Noller's “Chemistry of Organic Compounds”, Saunders, Philadelphia, 2nd Ed., 1957; and Kirk-Othmer's “Encyclopedia of Chemical Technology”, 2nd Ed., 特に、Volume 2, pp. 99 116。
【0021】
環状ポリアミンの好適な例としては、たとえば、アミノエチルピペラジン、アミノプロピルピペラジン、アミノブチルピペラジン、アミノエチルジアゼパン、アミノエチルジアゾカン、それらの好適な誘導体などが挙げられる。
【0022】
反応生成物の1つのクラスは構造IIIによって表され得る。
【化III】

ここで、各R及びRは独立に、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各R、R、及びRは独立に水素、1~約20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価のヒドロカルビル基であり、各mは独立に0~4であり、各pは独立に0~4であり、各環状部分に対して、m+pは2~4であり、各nは独立に1~6である。
【0023】
モリブデン含有化合物
モリブデン含有化合物は、モリブデン、炭素及び水素原子を含む有機モリブデン化合物であるが、硫黄、リン、窒素及び/または酸素原子を含有してもよい。好適な有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、及び種々の有機モリブデン錯体、たとえば、モリブデンカルボキシレート、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミドなどが挙げられ、これらは、酸化モリブデンまたはモリブデン酸アンモニウムを、脂肪、グリセリド、または脂肪酸、または脂肪酸誘導体(たとえば、エステル、アミン、アミド)と反応させることによって得ることができる。用語「脂肪質」は、8~22の炭素原子を有する炭素鎖、通常は直鎖炭素鎖を意味する。
【0024】
好適なモリブデンジチオカルバメートには、潤滑油に対する添加剤として用いることができる任意のモリブデンジチオカルバメートが含まれる。本明細書で用いるモリブデンジチオカルバメートの1つのクラスは、構造IVによって表される。
【化IV】

ここで、R、R、R10、及びR11はそれぞれ独立に、水素または炭化水素基、たとえば、一例として、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、及びシクロアルケニル基であり、ならびにX、X、X及びXはそれぞれ独立に、硫黄または酸素である。いくつかの実施形態では、各R、R、R10、及びR11は独立に、6~18の炭素原子を含む。
【0025】
好適なアルキル基としては以下が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二級ブチル、第三級ブチル、ペンチル、イソペンチル、第二級ペンチル、ネオペンチル、第三級ペンチル、ヘキシル、第二級ヘキシル、ヘプチル、第二級ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、第二級オクチル、ノニル、第二級ノニル、デシル、第二級デシル、ウンデシル、第二級ウンデシル、ドデシル、第二級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、第二級トリデシル、テトラデシル、第二級テトラデシル、ヘキサデシル、第二級ヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-ブチルオクチル、2-ブチルデシル、2-ヘキシルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-オクチルデシル、2-ヘキシルドデシル、2-オクチルドデシル、2-デシルテトラデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-ヘキサデシルオクタデシル、2-テトラデシルオクタデシル、モノメチル分岐イソステアリルなど。
【0026】
好適なアルケニル基としては以下が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。ビニール、アリル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイルなど。
【0027】
好適なアリール基としては以下が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、ビフェニル、ベンジルフェニル、スチレン化フェニル、p-クミルフェニル、アルファ-ナフチル、ベータ-ナフチル基など。
【0028】
好適なシクロアルキル基及びシクロアルケニル基としては以下が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基など。
【0029】
構造IVにおいて、X~Xは独立に、硫黄または酸素原子から選択され、及びX~Xはすべて、硫黄原子もしくは酸素原子、または硫黄原子及び酸素原子の混合物であってもよい。摩擦低減効果と腐食性との間のバランスを考慮すると、硫黄原子(複数可)/酸素原子(複数可)のモル比(数比)は、約1/3~約3/1の範囲が特に好ましいはずである。
【0030】
構造IVの油溶性または分散油安定性モリブデン化合物のいくつかは市販されている。たとえば、製品として、X及びXがOで、X及びXがSで、R~R11がC1327脂肪族ヒドロカルビル基で、モリブデンが酸化状態Vであるものが、商標Molyvan(登録商標)807及びMolyvan(登録商標)822の下で、酸化防止剤及び減摩添加剤として、R.T. Vanderbilt Company Inc. (Norwalk, Conn. USA)から販売されている.これらのモリブデン化合物は、米国特許第3,356,702号に記載の方法によって調製してもよい。ここでは、MoOを可溶性モリブデン酸塩に変換することを、アルカリ金属水酸化物溶液において溶解し、酸を加えることによって中和し、続いて第二級アミン及び二硫化炭素を加えることによって行う。別の態様では、X~XがOまたはSである構造IVのモリブデン化合物は、たとえば、米国特許第4,098,705号及び第5,631,213号などの当該技術分野で知られた多くの方法によって調製してもよい。
【0031】
全般的に、構造IVによって表される硫化オキシモリブデンジチオカルバメートは、三酸化モリブデンまたはモリブデン酸塩をアルカリ硫化物またはアルカリ水硫化物と反応させ、続いて、二硫化炭素及び第二級アミンを反応性混合物に加え、得られた混合物を適切な温度で反応させることによって調製することができる。不斉硫化オキシモリブデンジチオカルバメートを調製するためには、異なる炭化水素基を有する第二級アミンを用いるか、または上記プロセスにおいて2つ以上の異なる第二級アミンを用いれば十分である。対称硫化オキシモリブデンジチオカルバメートも同様の方法で調製できるが、たった1つの第二級アミンを用いる。
【0032】
好適なモリブデンジチオカルバメート化合物の例としては、以下が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。硫化モリブデンジエチルジチオカルバメート、硫化モリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化モリブデンジブチルジチオカルバメート、硫化モリブデンジペンチルジチオカルバメート、硫化モリブデンジヘキシルジチオカルバメート、硫化モリブデンジオクチルジチオカルバメート、硫化モリブデンジデシルジチオカルバメート、硫化モリブデンジドデシルジチオカルバメート、硫化モリブデンジトリデシルジチオカルバメート、硫化モリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカルバメート、硫化モリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジエチルジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジブチルジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジペンチルジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジヘキシルジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジオクチルジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジデシルジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジドデシルジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジトリデシルジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカルバメート(これらはすべて、アルキル基が直鎖または分枝鎖であってもよい)等、及びこれらの混合物。
【0033】
三核モリブデンジアルキルジチオカルバメートも、米国特許第5,888,945号及び第6,010,987号によって教示されるように、当該技術分野で知られている。なおこれらの文献は参照により本明細書に組み込まれている。三核モリブデン化合物は好ましくは、式Mo(dtc)及びMo(dtc)を有するもの、及びこれらの混合物である。ここで、dtcは、独立に選択された有機基を含有する独立に選択されたジオルガノジチオカルバメート配位子を表し、配位子は、化合物の配位子のすべての有機基の中に十分な数の炭素原子を有して、化合物を潤滑油中に可溶または分散可能にする。
【0034】
US4,889,647及びUS6,806,241 B2に開示される方法によって調製されるモリブデン酸塩エステル。市販例は、R. T. Vanderbilt Company, Inc.によって製造されるMOLYVAN(登録商標)855添加剤である。
【0035】
モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)は、以下の構造Vによって表される有機モリブデン化合物である。
【化V】

ここで、R12、R13、R14、及びR15は、互いに独立に、4~18の炭素原子(たとえば、8~13の炭素原子)を有する直鎖または分岐のアルキル基である。
【0036】
モリブデンカルボキシレートは、米国特許第RE38,929号、及び米国特許第6,174,842号に記載されており、したがって、参照により本明細書に組み込まれている。モリブデンカルボキシレートは、任意の油溶性カルボン酸から誘導することができる。典型的なカルボン酸には、ナフテン酸、2-エチルヘキサン酸、及びリノレン酸が含まれる。モリブデン化合物の好適な例には、R. T. Vanderbilt Co., Ltd.からのMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000、Molyvan(登録商標)807及びMolyvan(登録商標)855T、ならびにAdeka Corporationから販売されるSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商品名で販売される市販材料、ならびにこれらの混合物が含まれる。好適なモリブデン成分は、米国特許第5,650,381、RE37,363 E1、RE38,929 E1、及びRE40,595 E1に記載されている。これらの文献は、その全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0037】
モリブデン酸アンモニウムは、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、及びチオモリブデン酸アンモニウムなどの酸性モリブデン源と油溶性アミンとの酸塩基反応によって、任意選択で、いくつか例を挙げると硫黄、無機硫化物及び多硫化物、ならびに二硫化炭素などの硫黄源の存在下で、調製される。好ましいアミン化合物は、広く用いられるエンジン油組成物であるポリアミン分散剤である。そのような分散剤の例はスクシンイミド及びマンニッヒタイプである。これらの製剤への言及は、米国特許第4,259,194号、第4,259,195号、第4,265,773号、第4,265,843号、第4,727,387号、第4,283,295号、及び第4,285,822号である。
【0038】
一実施形態では、モリブデンアミンはモリブデン-スクシンイミド錯体である。好適なモリブデン-スクシンイミド錯体は、たとえば、米国特許第8,076,275号に記載されている。これらの錯体は、酸性モリブデン化合物を、構造VIもしくはVIIのポリアミンまたはそれらの混合物のアルキルまたはアルケニルスクシンイミドと反応させることを含むプロセスによって調製される。
【化VI】

【化VII】

ここで、Rは、C24~C350(たとえば、C70~C128)アルキルまたはアルケニル基であり、R’は、2~3の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、xは1~11であり、yは1~10である。
【0039】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物または酸性モリブデン化合物の塩である。「酸性」は、ASTM D664またはD2896によって測定されるように、モリブデン化合物が塩基性窒素化合物と反応することを意味する。一般に、酸性モリブデン化合物は六価である。好適なモリブデン化合物の典型例としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属モリブデン酸塩、ならびに他のモリブデン塩、たとえば、水素塩、(たとえば、モリブデン酸水素ナトリウム)、MoOCl、MoOBr2、MoClなどが挙げられる。
【0040】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用できるスクシンイミドは、多くの参考文献に開示され、当該技術分野において良く知られている。専門用語「スクシンイミド」によって包含されるスクシンイミド及び関連材料の特定の基本的タイプは、米国特許第3,172,892号、第3,219,666号、及び第3,272,746号に教示されている。用語「スクシンイミド」は、当該技術分野では、やはり形成され得るアミド、イミド、及びアミジン種の多くを含むと理解されている。しかし、主な生成物はスクシンイミドであり、この用語は一般に、アルキルもしくはアルケニル置換コハク酸または無水物と、窒素含有化合物との反応の生成物を意味するものとして受け入れられている。好ましいスクシンイミドは、約70~128の炭素原子のポリイソブテニル無水コハク酸を、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びこれらの混合物から選択されるポリアルキレンポリアミンと反応させることによって調製されるものである。
【0041】
一実施形態では、モリブデン含有化合物には硫黄が無い。
【0042】
モリブデン-スクシンイミド錯体を、好適な圧力及び120℃を超えない温度において硫黄源によって後処理して、硫化モリブデン-スクシンイミド錯体を得てもよい。硫化工程は、約0.5~5時間(たとえば、0.5~2時間)の間、行ってもよい。好適な硫黄源としては、元素硫黄、硫化水素、五硫化リン、式Rの有機ポリスルフィド(Rは、ヒドロカルビル(たとえば、C~C10アルキル)で、xは少なくとも3である)、C~C10メルカプタン、無機硫化物及びポリスルフィド、チオアセタミド、及びチオ尿素が挙げられる。
【0043】
潤滑油
潤滑剤添加剤として用いる場合、本発明の第三級アミン含有化合物は通常、潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001~約20wt%(限定することなく、0.01~5wt%、0.2~4wt%、0.5~3wt%、1~2wt%などを含む)の範囲の濃度で存在する。
【0044】
潤滑剤添加剤として用いられる場合、本発明のモリブデン含有化合物は通常、潤滑油組成物中に、約50~約1500ppm(限定することなく、200~1400ppm、250~1250ppm、500~1000ppm、500~750ppmなどを含む)の範囲の濃度で存在する。
【0045】
基油として使用される油を、所望の最終用途及び完成した油中の添加剤に応じて選択またはブレンドして、所望のグレードのエンジン油、たとえば、0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、または15W-40の自動車技術会(SAE)粘性グレードを有する潤滑油組成物を与える。
【0046】
潤滑粘度の油(しばしば、「ベースストック」または「基油」と言われる)は、潤滑剤の一次液体成分であり、その中へ、添加剤及び可能性として他の油をブレンドして、たとえば、最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を生成する。濃縮物を作るために、ならびにそこから潤滑油組成物を作るために有用な基油は、天然(植物性、動物性、または鉱物性)及び合成潤滑油ならびにそれらの混合物から選択してもよい。
【0047】
本開示におけるベースストック及び基油に対する定義は、American Petroleum Institute (API) Publication 1509 Annex E (“API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils,” December 2016)に見られるものと同じである。グループIのベースストックは、表E-1に特定する試験方法を用いて、90%未満の飽和硫黄及び/または0.03%超の硫黄を含有し、粘度指数は80以上で120未満である。グループIIのベースストックは、表E-1に特定する試験方法を用いて、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、粘度指数は80以上で120未満である。グループIIIのベースストックは、表E-1に特定する試験方法を用いて、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、粘度指数は120以上である。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックには、グループI、II、III、またはIVに含まれない他のすべてのベースストックが含まれる。
【0048】
天然油としては、動物油、植物油(たとえば、ヒマシ油及びラード油)、及び鉱物油が挙げられる。好ましい熱酸化安定性を有する動物油及び植物油を、用いることができる。天然油のうち、鉱物油が好ましい。鉱物油は、その原油源に関して、たとえば、それが、パラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン系-ナフテン系であるか否かに関して、大きく変わる。石炭または頁岩に由来する油も有用である。天然油は、それらの生成及び精製用に使用される方法、たとえば、その蒸留範囲、ならびにそれが直留または分解か、水素化精製されているか、または抽出された溶媒であるか否かによっても異なる。
【0049】
合成油としては炭化水素油が挙げられる。炭化水素油としては、重合及び共重合オレフィン(たとえば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレンオレフィンコポリマー、及びエチレンアルファオレフィンコポリマー)などの油が挙げられる。ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックが、広く用いられる合成炭化水素油である。一例として、C~C14オレフィン、たとえば、C、C10、C12、C14オレフィン、またはそれらの混合物に由来するPAOを用いてもよい。
【0050】
基油として用いるための他の有用な流体としては、高性能特性を得るために好ましくは触媒作用的に処理されたかまたは合成された、従来にないまたは非従来型のベースストックが挙げられる。
【0051】
従来にないまたは非従来型のベースストック/基油としては、1つ以上のガスツーリキッド(GTL)材料に由来するベースストック(複数可)、ならびに天然ワックスまたはワックス状供給原材料に由来する異性化/イソ脱ロウ体ベースストック(複数可)、鉱物及びまたは非鉱物油ワックス状供給原料、たとえば、スラックワックス、天然ワックス、ならびにワックスストック、たとえば、ガスオイル、ワックス質燃料ハイドロクラッカーボトム、ワックス状ラフィネート、ハイドロクラッケート、熱クラッケート、または他の鉱物、鉱油、またはさらには非石油由来のワックス状材料、たとえば、石炭液化またはシェールオイルから受け取ったワックス状材料、ならびにそのようなベースストックの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。他の基油には、コールツーリキッド(CTL)生成物及びアルキルナフタレンが含まれる。
【0052】
本開示の潤滑油組成物において用いる基油は、APIのグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油、及びこれらの混合物、好ましくはAPIのグループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油、及びこれらの混合物、より好ましくは、その並外れた揮発性、安定性、粘度測定及び清浄度特徴により、グループIII~グループVの基油に対応する種々の油のうちのいずれかである。
【0053】
通常、基油は、100℃における動粘度(ASTM D445)が、1.5~35mm/s(たとえば、1.5~25mm/s、2.0~20mm/s、または2.0~15mm/s)の範囲である。
【0054】
本潤滑油組成物はまた、補助機能を付与するための従来の潤滑剤添加剤を含有して、これらの添加剤が分散または溶解された完成した潤滑油組成物を与えてもよい。たとえば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、無灰分散剤、耐摩耗剤、洗浄剤、たとえば金属洗浄剤、防錆剤、脱霞剤、解乳化剤、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、粘度調整剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食防止剤、染料、極圧剤など、及びこれらの混合物とブレンドすることができる。種々の添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤、またはそれらの類似化合物は、通常のブレンディング手順によって本発明の潤滑油組成物の調製に対して用いることができる。
【0055】
前述の添加剤はそれぞれ、使用されるとき、潤滑剤に所望の特性を付与するために機能的に有効な量で使用される。したがって、たとえば、添加剤が無灰分散剤である場合、この無灰分散剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の分散特徴を付与するのに十分な量である。全般的に、これらの添加剤の使用時の各濃度は、特に指示がない限り、約0.001~約20wt%、たとえば、約0.01~約10wt%の範囲であり得る。
【0056】
以下の非限定的な例は本発明を例示している。例がどのように準備されたかについての簡単な説明を示す。
【0057】

比較例A
比較例Aは、合計で14.1wt%のスクシンイミド分散剤、カルシウム洗浄剤、第二ZnDTP、フェノール系酸化防止剤、発泡防止剤、及びポリメタクリレートベースの粘度調整剤を含有するベースライン0W-16潤滑油である。比較例Aは、MoDTCからの700ppmモリブデンも含有する。
【0058】
比較例B
比較例Bは、比較例Aのベースライン0W-16潤滑油、及び0.3wt%のグリセロールモノオレエートを含む。
【0059】
比較例C
比較例Cは、比較例Aの潤滑油、0.3wt%のグリセロールモノオレエート、及びMoDTCからの700ppmのモリブデンを含む。
【0060】
比較例D
比較例Dは、比較例Aのベースライン0W-16潤滑油、0.3wt%のC16/18 1,2-ヒドロキシアルカン摩擦調整剤、及びMoDTCからの700ppmモリブデンを含む。
【0061】
比較例E
比較例Eは、比較例Aのベースライン0W-16潤滑油、0.3wt%のアルキルジアミン摩擦調整剤、及びMoDTCからの700ppmモリブデンを含む。
【0062】
比較例F
比較例Fは、比較例Aのベースライン0W-16潤滑油、及び分岐C18無水コハク酸とアミノエチルピペラジンとの反応生成物0.3wt%を含む。無水コハク酸とアミノエチルピペラジンとの充填モル比(CMR)は、1.6:1である。
【0063】
例1
例1は、比較例Aのベースライン0W-16潤滑油、分岐C18無水コハク酸とアミノエチルピペラジンとの反応生成物0.3wt%(無水コハク酸とアミノエチルピペラジンとの充填モル比は1.6:1)、及びMoDTCからの700ppmのモリブデンを含む。
【0064】
例2
例2は、比較例Aのベースライン0W-16潤滑油、分岐C18無水コハク酸とアミノエチルピペラジンとの反応生成物0.1wt%(無水コハク酸とアミノエチルピペラジンとのCMRは1.6:1)、及びMoDTCからの700ppmモリブデンを含む。
【0065】
例3
例3は、比較例Aのベースライン0W-16潤滑油、分岐C18無水コハク酸とアミノエチルピペラジンとの反応生成物1.0wt%(無水コハク酸とアミノエチルピペラジンとのCMR1.6:1)、及びMoDTCからの700ppmモリブデンを含む。
【0066】
MTM摩擦試験
ミニトラクションマシン(MTM)を用いて、摩擦性能を評価した。MTMは、滑り速度と転がり速度を別個に制御することで、広範囲の滑り-転がり条件下で潤滑剤の摩擦特性を測定することができるボールオンディスク型のトライボマシンである。テスト試料は、硬度720~780VPNの52100鋼鉄で形成された19.05mm径のボールと46mm径のディスクである。
【0067】
すべての摩擦係数は、エントレインメント速度100mm/s、温度60℃、荷重37N(最大ヘルツ接触圧力1.02GPa)、及びSRR(滑り率)50%で2時間摩擦した後に測定した。
【0068】
2時間摩擦した後、37Nの負荷を加え、SRR(滑り率)50%で、ストライベック測定に対するエントレインメント速度を3000mm/sから始めて、2mm/sまで減少させて摩擦係数の測定を行い、36のデータ点から構成された。表1に結果を示す。
【0069】
最終的な境界摩擦の結果は、以下の式を用いてエントレインメント速度2~10mmで計算した累積面積/sに従って得られた。
境界摩擦=
Σ((CoFi+CoFi+1)/2)×(Log(エントレインメント速度i+1)- Log(エントレインメント速度i))
【表1】
【0070】
本明細書に記載のすべての文献は、参照により本明細書に組み込まれており、本文と矛盾しない限り、任意の優先権書類及び/または試験手順が含まれる。前述の概要及び特定の実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されているが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の変更を施すことができる。したがって、本開示がそれによって限定されることは意図されていない。
【0071】
簡単にするために、本明細書では特定の範囲のみを明示的に開示している。しかし、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙してもよく、同様に、任意の下限からの範囲を任意の他の下限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙してもよく、同様に、任意の上限からの範囲を任意の他の上限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙してもよい。さらに、範囲には、たとえ明示的に列挙されていなくても、その端点間のすべての点または個々の値が含まれる。したがって、すべての点または個々の値は、任意の他の点もしくは個々の値または任意の他の下限もしくは上限と組み合わせた独自の下限または上限として機能して、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得る。
【0072】
同様に、用語「含む(comprising)」は、用語「含む(including)」と同義語であると考えられる。同様に、構成、要素、または要素のグループの前に、移行句「含む(comprising)」がある場合はいつも、移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、または「である」を伴う同じ構成または要素のグループが、構成、要素、または要素(複数)の列挙の前にあることが意図され、逆もまた同様であることが理解される。
【0073】
用語「a」及び「the」を本明細書で用いる場合、単数形とともに複数形を包含すると理解される。
【0074】
種々の用語について上記で定義した。請求項において使用される用語が上記で定義されていない限り、少なくとも1つの出版物または交付済み特許に反映されているように、当業者がその用語に与えた最も広い定義が与えられるべきである。さらに、本出願において引用されたすべての特許、試験手順、及び他の文献は、そのような開示が本出願と矛盾しない限り、組み込みが許可されているすべての法域に対して、参照により完全に組み込まれている。
【0075】
本開示の前述の説明により、本開示は例示及び説明されている。さらに、本開示は好ましい実施形態のみを図示及び説明しているが、前述したように、当然のことながら、本開示は、他の種々の組み合わせ、変更、及び環境において用いることができ、また本明細書で表される考え方の範囲内で変更または修正することができる。本明細書で表される考え方は、前述の教示及び/または当該技術分野の技量もしくは知識に見合うものである。上記は本開示の実施形態に向けられているが、本開示の他の及びさらなる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考え出され得て、その範囲は以下の請求項によって決定される。
【0076】
要素の組み合わせ、サブセット、グループなどが開示されている場合(たとえば、組成物中の成分の組み合わせ、または方法におけるステップの組み合わせ)、これらの要素の種々の個別及び集合的な組み合わせ及び並べ換えのそれぞれに対する具体的な参照が明示的に開示されていない場合があるが、それぞれが具体的に意図され、本明細書に記載されていると理解される。
【0077】
前述した実施形態はさらに、本発明を実施する既知の最良の形態を説明すること、また他の当業者が、特定の応用例または用途に要求される種々の変更を伴って、当該または他の実施形態において本開示を使用できるようにすることが意図されている。したがって、この説明は、本明細書で開示した形態に限定することは意図されていない。また添付の特許請求の範囲は、代替的な実施形態を含むと解釈すべきことが意図されている。
【国際調査報告】