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特表2023-543924チアジアゾロン誘導体と、それらの糖尿病および関連疾患の治療のためのAMPKアゴニストとしての使用
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  • 特表-チアジアゾロン誘導体と、それらの糖尿病および関連疾患の治療のためのAMPKアゴニストとしての使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】チアジアゾロン誘導体と、それらの糖尿病および関連疾患の治療のためのAMPKアゴニストとしての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 285/08 20060101AFI20231011BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231011BHJP
   C07F 9/09 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C07D285/08 CSP
A61K31/433
A61K31/675
A61K9/28
A61P43/00 111
A61P9/00
A61P3/10
A61P13/12
A61P3/06
A61P1/16
A61P25/04
A61P3/04
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P19/10
A61K47/02
C07F9/09 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520459
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 GB2021052535
(87)【国際公開番号】W WO2022069894
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】2015585.9
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523120823
【氏名又は名称】ベタゲノン ビオ アーベー
【氏名又は名称原語表記】Betagenon Bio AB
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エドランド トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェストマン ジェイコブ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C076AA45
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD25
4C076DD29
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC86
4C086DA34
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA97
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZC19
4C086ZC33
4C086ZC35
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】
本発明は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物に関し、それらの化合物は、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療、特にプロドラッグとして有用である。
【化1】
ここで、Rは、明細書に定義されている通りである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物。
【化1】
ここで、Rは、-C(O)-C-COHおよび-POからなる群から選択される。
【請求項2】
式Iの化合物が、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
式Iの化合物が、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【化3】
【請求項4】
前記薬学的に許容される塩が、式Iの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または第四アンモニウム塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記薬学的に許容される塩が式Iの化合物のナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物と、薬学的に許容される医薬添加剤とを含む、医薬製剤。
【請求項7】
前記薬学的に許容される医薬添加剤が塩基性添加剤である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記薬学的に許容される医薬添加剤が、酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、および炭酸カルシウムからなる群から選択される、請求項6または請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記製剤がさらに腸溶性コーティングを含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
薬剤用である、請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、または、請求項6~9のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療用である、請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、または、請求項6~9のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療用医薬の製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、または、請求項6~9のいずれか1項に記載の医薬製剤の使用。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、または、請求項6~9のいずれか1項に記載の医薬製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療方法。
【請求項14】
前記AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態が、心血管疾患(心不全等)、糖尿病性腎疾患、2型糖尿病、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、疼痛、オピオイド依存症、肥満、がん、炎症(慢性炎症性疾患を含む)、自己免疫疾患、骨粗鬆症、および腸疾患からなる群から選択される、請求項11に記載の用途のための化合物、請求項12に記載の使用、または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態が、肥満および心血管疾患からなる群から選択される高インスリン血症に関連する状態である、請求項11に記載の用途のための化合物、請求項12に記載の使用、または請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、経口で、皮下に、または筋肉内に投与される、請求項11~15のいずれか1項に記載の用途のための化合物、使用、または方法。
【請求項17】
以下の工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
(i)式Vの化合物と、適切な酸または酸無水物との反応。
【化4】
または、
(ii)式VIの化合物と、適切な酸または適切な酸塩との反応。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、および、薬剤におけるそのような化合物の使用に関する。特に、本発明は、AMP活性化プロテインキナーゼの活性化によって改善される病気または健康状態の治療に有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、3つのプロテインサブユニットから構成されるプロテインキナーゼ酵素であり、細胞のエネルギー状態(例えば、グルコース欠乏)を低下させるホルモン、サイトカイン、エクササイズ、およびストレスによって活性化される。AMPKの活性化は、アデノシン5'-三リン酸(ATP)を生成するプロセス(例えば、脂肪酸酸化)を増加させ、ATPを消費するが、生存に必須ではない脂肪酸、グリセロ脂質、およびタンパク質の合成等の他のプロセスを抑制する。逆に、細胞に持続的に過剰なグルコースが存在すると、AMPK活性は低下し、脂肪酸、グリセロ脂質、およびタンパク質の合成が促進される。このように、AMPKは細胞のエネルギー恒常性に重要な役割を果たすプロテインキナーゼ酵素である。そのため、AMPKの活性化はグルコース低下作用と共役し、コレステロール合成、脂質生成、トリグリセリド合成の阻害、および高インスリン血症の減少等の他のいくつかの生物学的作用を引き起こす。
【0003】
以上のことから、AMPKはメタボリックシンドローム、特に2型糖尿病の治療において好ましい標的である。AMPKはまた、多くの異なる疾患に重要な多くの経路に関与している(例えば、AMPKはまた、中枢神経系障害、線維症、骨粗鬆症、心不全、および性機能障害に重要な多くの経路に関与している)。
【0004】
AMPKはまた、癌に重要な多くの経路に関与している。いくつかの腫瘍抑制因子はAMPK経路の一部である。AMPKは、細胞の成長と増殖の重要な調節因子である哺乳類のTOR(mTOR)とEF2経路の負の調節因子として作用する。したがって、この調節解除は癌等の疾患(および糖尿病)と関連している可能性がある。そのため、AMPK活性化剤は抗癌剤として有用である可能性がある。
【0005】
AMPK活性化剤(例えば、メトホルミンおよび4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、以下の式IIの化合物))は、疼痛の治療に有効であることが示されている。Dasと共同研究者は、腰椎椎間板穿刺の後、AMPK活性化剤によるマウスの損傷後治療は、機械的過敏症を減少させると報告している(Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-5. doi:10.1136/rapm-2019-100839)。同様に、Dasと共同研究者はまた、AMPK活性化剤による早期治療は、マウスの術後疼痛モデルにおいて機械的過敏症を減少させると報告している(Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-6. doi:10.1136/rapm-2019-100651)。これらの薬剤はまた、後根神経節のAMPK経路を正常化する。そのため、AMPK活性化剤は、疼痛、特に術後疼痛の治療に使用できる。
【0006】
また、脂肪肝はAMPKによって調節できることが示されている(Zhao et al. J. Biol. Chem. 2020 295: 12279- 12289)。AMPKの活性化は、肝臓での脂肪酸酸化(β酸化)を促進する一方で、新たな脂質生成を阻害する。AMPKの活性化はまた、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出を減少させ、脂肪肝を予防する。肝臓におけるAMPKの薬理学的活性化は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の複数の側面に対して有益な作用を促進することが報告されている。例えば、AMPKの活性化は、マウスと猿の動物モデルの両方で非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を改善することが見出された。したがって、AMPK活性化剤はNAFLDとNASHの治療に有用である可能性がある。
【0007】
AMPK活性化剤の1つの例は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、式IIの化合物)であり、最初に国際公開第2011/004162号に開示された。
【0008】
【化1】
【0009】
式IIの化合物は、AMPKアゴニスト(すなわちAMPK活性化剤)として、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療に有用である。このような化合物は、心血管疾患(心不全等)、糖尿病性腎疾患、2型糖尿病、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、疼痛、オピオイド依存症、肥満、癌、炎症(慢性炎症性疾患を含む)、自己免疫疾患、骨粗鬆症、および腸疾患の治療に有用である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2011/004162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多くのAMPK活性化剤が知られているが、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療のための新規化合物の開発が依然として求められている。本発明者らは、生体内で代謝されて既知のAMPK活性化剤を形成し、そのAMPK活性化剤の生物学的利用能が驚くほど増大である新規化合物を見出した。上記化合物はまた、AMPKを活性化することが分かった。
【0012】
本明細書において、明らかに先行公開された文献の一覧または議論は、必ずしもその文献が最新技術の一部または一般常識であることの認容として受け取られるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の図面は、本発明の概念の様々な態様を説明するために提供されたものであり、ここに明記されていない限り、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
図1】化合物3および5が用量依存的にAMPKのリン酸化を増加させることを示すウェスタンブロット像を示す。
図2】化合物1および化合物3を用いた経口薬物動態試験の比較結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様において、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物が提供される。
【化2】
ここで、Rは、-C(O)-C-COHおよび-POからなる群から選択される。
これらの化合物は、その薬学的に許容される塩および溶媒和物を含め、ここでは「本発明の化合物」と称すことができる。
【0015】
本発明の化合物は、生体内で代謝され、AMPK活性化剤であることが知られている4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(以下、式IIの化合物と称す)を形成することが見出されている。この点に関して、本発明の化合物は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのプロドラッグであると考えることができる。
【0016】
薬学的に許容される塩として、塩基塩が挙げられる。このような塩は、通常の手段、例えば、本発明の化合物の遊離酸またはホスフェートの形態と1つ以上の当量の適切な塩基とを、任意で塩が不溶性である溶媒または媒体中で、反応させ、その後、標準的な技術を用いて(例えば、真空中で、凍結乾燥によって、またはろ過によって)、上記の溶媒または媒体を除去することで、生成することができる。塩はまた、例えば適切なイオン交換樹脂を用いて、塩形態の本発明の化合物の対イオンを別の対イオンと交換する等、当業者に知られた技術を用いて調製することができる。
【0017】
実用可能性のある薬学的に許容される塩として、J. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977)において、Bergeらによって議論されているものが挙げられる。いくつかの実施形態において、塩は、本発明の化合物の最終的な単離および/または精製中にその場で、または別途、遊離酸官能基と適切な無機または有機の塩基との反応によって、調製することができる。上記塩の適切な対イオンとしては特に制限されないが、ナトリウム、カリウム、およびカルシウム等の金属、または、トリエチルアンモニウムおよびリジン等のアミンが挙げられる。特に列挙できる薬学的に許容される付加塩としては、式Iの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または第四アンモニウム塩が挙げられる。
【0018】
「アルカリ金属」は、周期表のI族に水素とともに挙げられる金属で、特にリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムが挙げられる。したがって、「アルカリ金属塩」は、1つ以上のアルカリ金属カチオンと1つ以上の関連アニオンとの組合せからなる化学化合物であると理解されるであろう。
【0019】
「アルカリ土類金属」は、周期表の第II族に挙げられる金属であり、特に、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムが挙げられる。したがって、「アルカリ土類金属塩」は、1つ以上のアルカリ土類金属カチオンと1つ以上の関連アニオンとの組合せからなる化学化合物であると理解されるであろう。
【0020】
「第四アンモニウム」カチオンは、[NR構造の正電荷イオンであり、ここで、各Rはそれぞれ独立に、H、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、またはアリール基を表すことができる。代替的に、「第四アンモニウム」カチオンは、正電荷側鎖を持つアミノ酸(例えばリジン、ヒスチジン、またはアルギニン)等のアミノ酸のカチオン形態(特にプロトン形態)である。したがって、「第四アンモニウム塩」は、1つ以上の第四アンモニウムカチオンと1つ以上の関連アニオンとの組合せからなる化学化合物であると理解されるであろう。
【0021】
特に明記しない限り、ここで定義されるアルキル基は、直鎖状であってもよいし、充分な数(すなわち、必要に応じて最低2つまたは3つ)の炭素原子が存在する場合は、分岐鎖状および/または環状(すなわち、シクロアルキル基を形成する)であってもよい。充分な数(すなわち、最低4つ)の炭素原子が存在する場合、そのような基はまた、部分環状(すなわち、部分シクロアルキル基を形成する)であってもよい。列挙できるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。同様に、列挙できる部分環状アルキル基(「部分シクロアルキル」基とも言う)としては、シクロプロピルメチルが挙げられる。
【0022】
特に明記しない限り、ここで定義されるアルケニル基は、直鎖状であってもよいし、充分な数(すなわち、最低3つ)の炭素原子が存在する場合は、分岐鎖状であってもよい。疑義を避けるために、特に列挙できるアルケニル基としては、直鎖状(すなわち、分岐鎖状ではない)アルケニル基が挙げられる。
【0023】
特に明記しない限り、ここで定義されるアルキニル基は、直鎖状であってもよいし、充分な数(すなわち、最低4つ)の炭素原子が存在する場合は、分岐鎖状であってもよい。疑義を避けるために、特に列挙できるアルキニル基としては、直鎖状(すなわち、分岐鎖状ではない)アルキニル基が挙げられる。
【0024】
疑義を避けるため、特に明記しない限り、ここで、「アルキル」、「アルケニル」、および/または「アルキニル」と呼ばれる基は、そのような基に存在する結合における最も高い不飽和度に関連して、それとみなされる。例えば、炭素-炭素二重結合を持ち、同じ基の中で炭素-炭素三重結合を持つそのような基は、「アルキニル」と呼ばれる。
【0025】
ここで使用される場合があるように、アリールという用語は、芳香族基を指すことができる。そのような基は単環式または二環式であり、二環式の場合は全体または一部が芳香族である。列挙できるアリール基としては、C6-10アリール基、特に、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、およびインダニル等が挙げられる(例えば、フェニルやナフチル)。疑義を避けるために、アリール基上の置換基の結合点は、環構造の任意の適切な炭素原子を介することができる。
【0026】
したがって、式Iの化合物の、「アルカリ金属塩」、「アルカリ土類金属塩」、または「第四アンモニウム塩」は、1つ以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属、または第四アンモニウムカチオン(例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、特にナトリウムとカリウム)と、1つ以上の式Iの化合物のアニオンとを含む化合物を指す。
【0027】
特に列挙できる式Iの化合物のアルカリ金属、アルカリ土類金属、および第四アンモニウム塩としては、式IIIの化合物および式IVの化合物が挙げられる。
【化3】
【化4】
ここで、Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または第四アンモニウム(例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、特にナトリウムとカリウム)カチオンを表し、イオンの電荷を考慮して適切な化学量論的調整が行われている。
【0028】
当業者は、適切な溶媒(例えば水)に溶解すると、式Iの化合物の薬学的に許容される塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または第四アンモニウム塩等)がそのアニオン性およびカチオン性成分に解離する可能性があることを認識するであろう。
【0029】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、当業者によく知られた技術に従って調製することができる。例えば、式Iの化合物を適切なアルカリ金属水酸化物または代替アルカリ金属塩基化合物と反応させることができる。塩の切替技術を使用して、ある塩を別の塩に変換することができる。
【0030】
特定の実施形態において、薬学的に許容される塩は、式Iの化合物のナトリウムまたはカリウムの塩である。好ましくは、薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩である。
【0031】
本開示の化合物は、溶媒和されていない形態で存在していてもよいし、水およびエタノール等の薬学的に許容される溶媒と溶媒和された形態で存在していてもよく、本発明は、本発明の化合物の溶媒和された形態と溶媒和されていない形態の両方を包含することを意図している。
【0032】
「溶媒和された」という用語は、溶質と溶媒によって形成される可変化学量論の複合物を指す。本発明の目的のためのこのような溶媒は、溶質の生物活性を妨げてはならない。適切な溶媒の例は特に制限されないが、水、メタノール、エタノール、および酢酸が挙げられる。水が溶媒分子である溶媒和物は、典型的には水和物と呼ばれる。水和物には、化学量論量の水を含む組成だけでなく、様々な量の水を含む組成も挙げられる。
【0033】
式Iの化合物は二重結合を含み、したがって個々の二重結合について、E体(entgegen)およびZ体(zusammen)の幾何異性体として存在する可能性がある。このような異性体およびその混合物はすべて、本発明の範囲内に含まれる。
式Iの化合物は位置異性体として存在し、互変異性を示すこともある。すべての互変異性体およびその混合物は、本発明の範囲に含まれる。
【0034】
本発明はまた、ここに記載されているものと同一であるが、1つ以上の原子が、通常自然界に存在する原子質量または質量数(または自然界に存在する最も豊富な原子)とは異なる原子質量または質量数を持つ原子によって置換されているという事実のために、式Iの同位体と標識される化合物を包含する。ここに記載の特定の原子または元素のすべての同位体は、本発明の範囲内で考慮される。したがって、式Iの化合物はまた、重水素化化合物、すなわち1つ以上の水素原子が水素同位体重水素に置換された式Iの化合物を含む。
【0035】
本明細書を通して、構造は化学名で示される場合も示されない場合もある。命名法に関して疑問が生じた場合は、構造が優先される。化合物が互変異性体として(例えば、別の共鳴の形態で)存在する可能性がある場合、示されている構造は可能性のある互変異性体の1つを表しており、実際に観察される互変異性体は、溶媒、温度、またはpH等の環境要因によって異なる可能性がある。すべての互変異性(および共鳴)の形態およびその混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0036】
特に明記しない限り、ここで使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって理解される一般的な意味を有する。
疑義を回避するために、当業者は、本発明の特定の態様(本発明の第1の態様等)に対するここでの言及は、すべての実施形態およびその特定の特徴への言及を含み、これらの実施形態および特定の特徴は、本発明のさらなる実施形態および特徴を構築するために組み合わせて使用できることを理解するであろう。
【0037】
特定の実施形態において、式Iの化合物は、化合物3、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物である。化合物3は、4-({(5Z)-5-[(4-クロロベンゾイル)イミノ]-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル}メトキシ)-4-オキソブタン酸として知られている。さらなる一実施形態において、この本発明の化合物は、化合物3のナトリウム塩である。
【化5】
化合物3
【0038】
他の実施形態において、式Iの化合物は、化合物5A、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物である。化合物5Aは、{(5Z)-5-[(4-クロロベンゾイル)イミノ]-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル}メチルリン酸として知られている。さらなる一実施形態において、本発明の化合物は、化合物5Aのナトリウム塩、特に{(5Z)-5-[(4-クロロベンゾイル)イミノ]-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル}メチルリン酸二ナトリウム(ここでは、化合物5と称す)である。
【化6】
化合物5A
【0039】
本発明の化合物は、生体内で分解されて、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを生成することが見出されているので、そのプロドラッグであると考えることができる。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、式IIの化合物として表すことができる。
【化7】
【0040】
「プロドラッグ」という用語は、経口投与または非経口投与後、生体内で代謝され、実験的に検出可能な量で、所定の時間内(例えば、投与間隔が6から24時間以内(すなわち1日に1から4回))に薬理活性化合物を生成する化合物を指す。疑義を避けるために、「非経口」投与という用語は、経口投与以外のすべての形態の投与を含む。プロドラッグに関する一般的な情報は、例えばBundegaard, H. “Design of Prodrugs” p. l-92, Elsevier, New York-Oxford (1985)に記載されている。
【0041】
本発明の化合物の投与は、驚くべきことに、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与後に観察される生物学的利用能および全身曝露と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの生物学的利用能および全身曝露の有意な増加をもたらすことが見出された。
【0042】
薬物の生物学的利用能は、その薬物形態で体循環に達する投与量である。充分な生物学的利用能は、作用部位で治療活性濃度を達成するために重要である。生物学的利用能の向上(すなわち増加)は、化合物(またはその医薬製剤)を対象に投与した後に、その対象の血中のCmaxまたは曲線下面積(AUC)を測定することによって表すことができる。本発明の化合物および製剤は、本明細書に記載されている治療において、そのような治療を必要とする対象において、有用である。列挙できる対象としては、哺乳類等の動物が挙げられる。特に、哺乳類としては、例えば、霊長類(例えば、人間、男性、または女性)、牛、馬、犬、および猫が挙げられる。対象は、好ましくは人間である。
【0043】
「Cmax」および「AUC」という用語は、本文脈において、それぞれ、(例えば人間の患者に対する)投与後の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのピーク血漿中濃度、および、本発明の化合物(またはその製剤)の投与後のその物質の濃度/時間曲線の積分を指すことは、当業者には充分理解されるであろう。
【0044】
実施例のデータによって証明されているように、本発明の化合物の投与は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの生体内での特に増強された生物学的利用能をもたらすことが、見出されている。これらのデータは、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与後に観察される血漿曝露と比較して、上記化合物を哺乳類の対象に投与した場合に、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの血漿曝露が増加することを示す。
【0045】
したがって、本発明の化合物の投与は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの生物学的利用能を増加させることができる。これに関連して、「生物学的利用能を増加させる」という語句は、本発明の化合物の投与が、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与と比較して、生体内で4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身的に利用可能な比率をより大きくすることを意味する。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身的に利用可能な比率の増加は、少なくとも約10%、(少なくとも)約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%(すなわち2倍)、約150%、約200%(すなわち3倍)、約250%、約300%(すなわち4倍)、約350%、または約400%(すなわち5倍)であることができる。
【0046】
本発明の化合物により得られる生物学的利用能の向上は、当該技術分野で公知の適切な方法を用いて示すことができる。例えば、生物学的利用能の向上は、本発明の化合物を投与された対象の薬物動態データ(例えば、AUCデータ)と、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを投与された対象の対応するデータとを比較することにより、示すことができる。
【0047】
実施例に示されているように、本発明の化合物は、弱塩基性溶液(例えば、pH7.4)において、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドに匹敵する安定性を有する。したがって、本発明の化合物は、対象に投与する医薬製剤に調製するのに適している。ただし、本発明の化合物および式IIの化合物はいずれも、酸性条件下で安定性の低下を示すため、経口投与される製剤に充分な保護が提供されない限り、胃の環境での分解が起こりやすい。
【0048】
本発明の化合物はまた、実施例のデータに示されるように、AMPKを活性化するのに驚くほど有効であることが見出されている。本発明の化合物は、AMPK活性化剤(すなわち、AMPKアゴニスト)として、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療に有用である可能性がある。したがって、このような化合物は、ここに記載されている特定の疾患の治療に有用である可能性がある。
【0049】
本発明の化合物は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドから調製することができる。一方、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、当業者に公知の技術に従って調製することができる。例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、国際公開第2011/004162号に記載されている技術に従って製造することができ、その内容はすべて、参照によりここに組み込まれる。
【0050】
ここに記載されているような本発明の化合物は、以下に示す実施例に記載されているような当業者に公知の技術に従って調製することができる。
式Iの化合物は、文献で公知のプロセスの類似によって、または通常の合成手順によって、標準的な技術に従って、適切な試薬と反応条件を用いて、入手可能な出発物質から得ることができる。この点に関して、当業者は、特に、“Comprehensive Organic Synthesis” by B. M. Trost and I. Fleming, Pergamon Press, 1991を参照することができる。
【0051】
一例として、以下の工程を含む、上記で特定された本発明の化合物の製造プロセスが提供される。
(i)式Vの化合物と、適切な酸または酸無水物(例えば、無水コハク酸)とを、適切な塩基(例えば、4-ジメチルアミノピリジン)および適切な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)の存在下で、当業者に公知の手順に従って、反応させる工程。
【化8】
または
(ii)式VIの化合物と、適切な酸または適切な酸塩(例えばリン酸、任意でリン酸二水素アンモニウムとして提供される)とを、適切な塩基(例えば、4-トリブチルアミン)および適切な溶媒(例えば、ジクロロメタン)の存在下で、当業者に公知の手順に従って、反応させる工程。
【化9】
【0052】
式Vの化合物は、通常の合成手順によって、標準的な技術に従って、適切な試薬と反応条件を用いて、入手可能な出発物質から得ることができる。例えば、式Vの化合物は、式IIの化合物とホルムアルデヒドとを、適切な塩基(例えば、トリエチルアミン)および適切な溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)の存在下で、当業者に公知の手順に従って、反応させることで、調製することができる。
【化10】
【0053】
同様に、式VIの化合物は、通常の合成手順によって、標準的な技術に従って、適切な試薬と反応条件を用いて、入手可能な出発物質から、得ることができる。例えば、式VIの化合物は、当業者に公知の手順に従って、式Vの化合物と塩素化剤(例えば、塩化チオニル)との反応によって、調製することができる。
【0054】
同様に、式IIの化合物(すなわち、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド、実施例では化合物1と称す)は、当業者に公知の技術、例えば、国際公開第2011/004162号に記載されている技術に従って調製することができる。
【0055】
本発明の化合物は、その反応混合物から単離され、必要に応じて、当業者に公知の通常の技術を用いて精製することができる。したがって、本明細書に記載されている本発明の化合物の製造プロセスは、最終工程として、本発明の化合物の単離および任意で精製を含むことができる。
【0056】
医薬製剤
ここに示されているように、本発明の化合物は、様々な医学的病気または健康状態を治療するための治療剤として有用である。通常、本発明の化合物は、医薬製剤の形態で、それを必要とする対象に投与される。
【0057】
本発明の第2の態様によれば、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)を含む医薬製剤が提供される。このような製剤を、本発明の製剤と称す。本発明の第1の態様に関してここに記述されているすべての実施形態およびその特定の特徴は、本発明の第2の態様に関してここに開示される。
本発明の第2の態様の医薬製剤は、標準的および/または一般に認められた医薬慣行に従って調製することができる。
【0058】
本発明の第2の態様の一実施形態において、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)は、製剤中に存在する唯一の医薬有効成分である。本発明の第2の態様のさらなる一実施形態において、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)は、1つ以上の他の医薬有効成分と共に製剤中に存在するか、または1つ以上の他の医薬有効成分との併用療法の一部として投与することができる。
【0059】
本発明の第2の態様の製剤は、一般的に、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)と、1つ以上の薬学的に許容される医薬添加剤とを含む混合物として提供される。1つ以上の薬学的に許容される医薬添加剤は、標準的な医薬慣行に従って、意図された投与経路を考慮して選択することができる。このような薬学的に許容される医薬添加剤は、活性化合物に対して化学的に不活性であることが好ましく、使用条件下で有害な副作用または毒性を持たないことが好ましい。適切な製剤は、例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy, 19th ed., Mack Printing Company, Easton, Pennsylvania (1995)に記載されている。薬物送達の方法に関する簡単なレビューはまた、例えば、Langer, Science 249, 1527 (1990)に記載されている。
【0060】
pH改質添加剤は、本発明の製剤において特に有利であることが見出されている。pH改質添加剤とは、この添加剤を含まない以外は同じ製剤の水溶液のpHと比較して、製剤の水溶液のpHを実質的に変化させるものである。pH改質添加剤は、製剤の水溶液のpHを、この添加剤を含まない以外は同じ製剤の水溶液と比較して、(例えば、pH8以上に)上昇(または低下)させることができる。このような添加剤は、製剤中の本発明の化合物の水溶性および/または安定性を増加(すなわち向上)させるのに有用であり得る。
【0061】
本発明の製剤において、塩基性添加剤は、本発明の化合物、特に化合物5およびその他の塩との組合せにおいて、有用であり、化合物の溶解性の向上をもたらすことが見出されている。したがって、本発明の第2の態様の特定の実施形態において、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤は、塩基性添加剤である。
【0062】
ここで使用される「塩基性添加剤」という用語は、製剤の微小環境pHを増加させる薬学的に許容される添加剤を指す。製剤の微小環境pHの調整は、製剤中の有効成分の溶解を向上させ、有効成分の経口吸収の強化につながる可能性があることが見出されている。特に列挙できる塩基性添加剤として、酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、および炭酸カルシウムが挙げられる。特定の実施形態において、塩基性添加剤は酸化マグネシウムである。
【0063】
(上記の塩基性添加剤に加えて、またはそのような添加剤が存在しない場合に、)他の薬学的に許容される医薬添加剤もまた、本発明の製剤中に存在することができる。例えば、本発明の製剤は、潤滑剤、結合剤、充填剤、界面活性剤、希釈剤、抗付着剤、コーティング、香料、着色剤、滑剤、防腐剤、甘味料、崩壊剤、吸着剤、緩衝剤、酸化防止剤、キレート剤、溶解促進剤、溶解遅延剤、および/または、湿潤剤を含むことができる。
【0064】
特に列挙できる薬学的に許容される医薬添加剤としては、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、コロイダル二酸化ケイ素、無水ラクトース、リン酸二カルシウム、マンニトール、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプグリコール酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー188、ポロキサマー407、プロピレングリコール、二酸化チタン、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル共重合体、オパドライ(登録商標) I、オパドライ(登録商標) IIが挙げられる。
【0065】
経口投与のための本発明の化合物の医薬製剤の調製において、本発明の化合物は、一緒にまたは別々に、上記の1つ以上の医薬添加剤(塩基性添加剤を含む)と混合することができる。
本発明の化合物と1つ以上の薬学的に許容される医薬添加剤との混合物は、ペレットまたは顆粒に加工してもよいし、圧縮して錠剤にしてもよい。したがって、本発明の医薬製剤としては、経口投与用の錠剤、ミニ錠剤、ブロック、ペレット、粒子、顆粒、または粉末の形態で提供される製剤が挙げられる。本発明の化合物と1つ以上の薬学的に許容される医薬添加剤との混合物はまた、注射液または投与前に適切な流体中での再構成に適した凍結乾燥粉末等の、皮下または筋肉内への送達に適した形態で提供することができる。
【0066】
当業者は、ここに記載された製剤が全身的に作用でき、したがって当業者に公知の適切な技術を用いてそれに応じて投与できることを理解するであろう。ここに記載された製剤は、通常、適切な薬学的に許容される剤形で、経口で、皮下に、または筋肉内に投与されるであろう。本発明の第2の態様の医薬製剤は、好ましくは、経口医薬製剤である。
【0067】
本発明の製剤は、カプセルの形態で経口投与用に調製することができる。例えば、ソフトゼラチンカプセル等のカプセルは、本発明の化合物のみ(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)を含有し、任意で植物油、脂肪等の適切な媒体と共に、調製することができる。同様に、ハードゼラチンカプセルは、本発明の化合物のみ(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)を、単独で、または、二糖類(例えば、ラクトースまたはサッカロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトールまたはマンニトール)、植物性デンプン(例えば、片栗粉またはコーンスターチ)、多糖類(例えば、アミロペクチンまたはセルロース誘導体)、またはゲル化剤(例えば、ゼラチン)等の固体粉末成分と組み合わせて、含有することができる。
【0068】
特に列挙できる本発明の医薬製剤としては、例えば経口投与のためにカプセルまたは錠剤の形態で提供される製剤が挙げられる。
経口投与を目的とする製剤は、胃内環境における溶解または崩壊を防止または最小化するために、さらに腸溶性コーティングを含むことができる。そうした腸溶性コーティングでコーティングされた経口製剤(例えば、カプセル剤または錠剤)は、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)のみを小腸内で標的放出させることができる。例えば、腸溶性コーティングは、製剤の表面(例えば、錠剤またはカプセルの表面)に存在することができる。したがって、特定の実施形態において、製剤はさらに腸溶性コーティングを含む。
【0069】
カプセルまたは錠剤(および同様のもの)の胃内環境での溶解または崩壊を最小限に抑えること、および/または、小腸における有効成分の標的放出を提供することが好ましい場合がある。したがって、特定の実施形態において、腸溶性コーティングは、上記のカプセルまたは錠剤上に存在する。例えば、上記コーティングは、上記のカプセルまたは錠剤上の外層として提供されてもよい。
【0070】
「腸溶性コーティング」という用語は、経口薬に取り込まれ(例えば、錠剤またはカプセルの表面に塗布され)、胃の環境で薬剤の溶解または崩壊を阻害する物質(例えば、ポリマー)を指す。腸溶性コーティングは通常、胃内に見られる高い酸性pHでは安定であるが、小腸の高いpHでは急速に分解される。そのため、腸溶性コーティングは小腸に到達するまで薬剤の有効成分の放出を防ぐ。
【0071】
当業者に公知の任意の腸溶性コーティングを本発明で使用することができる。特に列挙できる腸溶性コーティング材料としては、蜜蝋、シェラック、アルキルセルロースポリマー樹脂(例えば、エチルセルロースポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、またはアクリルポリマー樹脂(例えば、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体、メチルメタクリレート共重合体、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、メタクリレート共重合体、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)共重合体、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(メタクリル酸無水物)、グリシジルメタクリレート共重合体)、セルロースアセテートフタレート、およびポリビニルアセテートフタレートからなる群から選択される物質を含むものが挙げられる。特に列挙できるポリアクリル樹脂としては、ポリアクリル樹脂HB-50が挙げられる。
【0072】
列挙できる医薬製剤としては、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)が総量で、製剤の重量で少なくとも1%(または少なくとも10%、少なくとも30%、または少なくとも50%)、製剤の重量で最大で99%、存在する製剤が挙げられる。
医薬製剤の全成分(すなわち、本発明の化合物、およびすべての医薬添加剤、例えば、補助剤、希釈剤および担体)に対する本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)の重量比は、少なくとも1:99(または少なくとも10:90、少なくとも30:70、または少なくとも50:50)であり、最大で99:1である。
【0073】
ここで使用される「治療上有効な量」、「有効な量」、および「用量」は、治療のおよび/または有益な効果であることができる所望の臨床効果を生じさせるのに充分な本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)の量を指す。有効な量または用量は、対象(例えば、人間)の年齢または一般的な状態、治療される状態の重篤度、投与される特定の薬剤、治療の期間、同時治療の性質、使用される薬学的に許容される医薬添加剤、および当業者の知識および専門知識内の同様の要因によって異なるであろう。必要に応じて、個々のケースにおける「治療上有効な量」、「有効な量」、または「用量」は、関連する文書および文献を参照して、および/または、慣例の実験を使用することによって、当業者によって決定することができる。当業者は、対象に何らかの利益が提供される限り、治療効果は完全または治癒的である必要がないことを理解するであろう。
【0074】
当業者は、本発明の化合物およびその製剤は、(例えば、本明細書に記載されている1つ以上の製剤によって、)様々な用量で投与することができ、適切な用量は当業者が容易に決定できることを理解するであろう。本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)の、それを必要としている対象に投与される総用量は、1日当たり約0.01mg(mg/日)から約3000mg/日、約0.1mg/日から約2000mg/日、または約1mg/日から約1000mg/日(例えば、約10mg/日から約500mg/日)の範囲であることができる。そのような用量は、例えば、本発明の第2の態様の製剤の経口投与量であることができる。本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物)が筋肉内または皮下に投与される場合、当業者は、それに応じて用量を調整すべきであると認識するであろう。
【0075】
経口投与するとき、そのような製剤による治療は、約0.01mgから約3000mgの本発明の化合物、例えば、約0.1mgから約2000mg、または約1mgから約1000mg(例えば、約10mgから約500mg)の本発明の化合物を含む単位用量製剤の投与を含むことができる。有利に、治療は、(例えば、上記製剤を含む1つ以上のカプセルの形態で、)1日1回の用量を使用した本発明の化合物の投与を含むことができる。代替的に、本発明の化合物の1日の総用量を1日に2回、3回、または4回に分割して投与する(例えば、100mg、250mg、500mg、または1000mgの用量を1日2回投与する等、ここに記載されている用量を基準として1日2回投与する)ことができる。専門医は、用量が対象によって異なることを認識するであろう。
【0076】
特定の実施形態において、対象に投与される本発明の化合物の1日用量は、約1から約3000mg、好ましくは約1から約1000mgの範囲内である。
ここで、化合物の量、用量、時間、および温度等の測定可能な値を言及して使用される「約」という用語は、特定量の20%、10%、5%、1%、0.5%、または0.1%の変動を意味する。それぞれの変動例において、このような用語は、「±10%」等の表記に、(または、該当値に基づいて計算される特定量の変動を示すことによって)置き換えられると考えられる。また、それぞれの変動例において、このような用語は削除できると考えられる。
【0077】
疑義を回避するために、本発明の文脈において、対象、特に人間の患者に投与される用量は、妥当な期間にわたって対象に治療反応をもたらすのに充分であるべきであろう。当業者であれば、正確な用量と組成および最も適切な投与レジメンの選択がまた、特に、製剤の薬理学的特性、治療される状態の性質と重篤度、および受容者の身体状態と精神的鋭敏性、並びに特定の化合物の効力、治療される対象の年齢、状態、体重、性別、および反応、並びに疾患のステージ/重篤度によって影響されるであろうことを認識するであろう。
【0078】
いずれにせよ、医療従事者またはその他の熟練者は、個々の対象に最も適した実際の投与量を慣例的に決定することができるであろう。上記の用量は平均的なケースの例である。もちろん、より高いまたはより低い用量の範囲が好適な個々の例が存在する可能性があり、それらも本発明の範囲内である。
【0079】
組合せと複数のパーツのキット
当業者は、発明の化合物を用いた治療が、さらに、同じ状態に対するさらなる治療を含むことができる(すなわち、と組み合わせることができる)ことを理解するであろう。
特に、本発明の化合物はまた、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療に有用な1つ以上の他の(すなわち異なる)治療薬(すなわち、発明の化合物ではない薬剤)と組み合わせることができる。1つ以上の他の治療薬と組み合わせて本発明の化合物の投与を提供するこのような組合せ製品は、少なくとも1つが本発明の化合物を含み、少なくとも1つが他の治療薬を含む分離された複数の製剤として存在するか、または、組合せ製剤として存在する(すなわち、処方される)(すなわち、本発明の化合物および1つ以上の他の治療薬を含む単一の製剤として存在する)ことができる。
【0080】
したがって、本発明の第3の態様によれば、以下を含む組合せ製品が提供される。
(I)上記で特定された(すなわち、本発明の第1の態様において、すべての実施形態とその特徴を含む)本発明の化合物;および
(II)AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態(例えば、心血管疾患(心不全等)、糖尿病性腎臓病、およびここに記載されているのと同様のもの)の治療に有用な1つ以上の他の治療薬。
ここで、成分(I)および(II)はそれぞれ、任意で1つ以上の薬学的に許容される医薬添加剤との混合物で処方される。
【0081】
本発明の第4の態様において、以下を含む複数のパーツのキットが提供される。
(a)上記で(すなわち、本発明の第2の態様において)特定された医薬製剤;および
(b)AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態(例えば、心血管疾患(心不全等)、糖尿病性腎臓病、およびここに記載されているのと同様のもの)の治療に有用な1つ以上の他の治療薬。任意で1つ以上の薬学的に許容される塩添加剤との混合物。
ここで、構成要素(a)および(b)はそれぞれ、投与に適した形態で、他方と組み合わされて(すなわち、一体的にまたは別々に)提供される。
【0082】
ここで記載の複数のパーツのキットに関して、「との組合せの投与」(および同様に「と組み合わせて投与される」)ことは、関連する状態の治療に向けられた医療行為の一部として、それぞれの製剤が順次、別々に、または同時に投与されることを含む。
【0083】
したがって、本発明に関連して、「との組合せの投与」(および同様に「と組み合わせて投与される」)という用語は、2つの有効成分(すなわち、本発明の化合物、およびAMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療のためのさらなる薬剤またはそれを含む組成物)が一緒に、または時間的に充分に近く、(任意で繰り返して)投与され、それによって、対象が、関連する状態の治療の過程で、いずれかの薬剤が単独で、他の成分を使用せずに、(任意で繰り返して)同じ治療の過程で投与されるよりも大きい有益な効果を得ることができることを含む。組合せが、特定の状態の治療に関して、およびその過程で、より大きな有益な効果を提供するかどうかの決定は、治療される状態によるが、当業者によって慣例的に行うことができる。
【0084】
さらに、本発明の文脈において、「と組み合わせて」という用語は、2つの製剤のうちの一方または他方が、他の成分の投与の前、後、および/または同時に、(任意で繰り返して)投与され得ることを含む。この文脈において使用されるとき、「同時に投与される」および「と同時に投与される」という用語は、本発明の化合物およびAMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療のための追加の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩の個々の服用が、互いに、48時間以内(例えば、24時間以内、12時間以内、6時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内、または10分以内)に投与される場合を含む。
【0085】
AMPK(心不全、糖尿病性腎臓病、およびここに記載されているのと同様のもの)の活性化によって改善される病気または健康状態の治療に有用な他の治療薬は、当業者には公知であろう。好ましくは、他の治療薬は、ビグアナイド系血糖降下薬およびナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害薬(およびそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物)からなる群から選択されるであろう。
【0086】
列挙できるビグアナイド系血糖降下薬としては、フェンホルミン、ブホルミン、特にメトホルミン(およびその薬学的に許容される塩)が挙げられる。したがって、一実施形態において、本発明の化合物は、ここに開示される疾患のいずれかを治療するために、メトホルミン(またはその薬学的に許容される塩)と組み合わせて提供されることができる。
【0087】
当業者は、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤が、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2の1つ以上の機能の低下を誘発する物質または薬剤であり、「ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2の機能の低下」は、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2の1つ以上の機能の停止、または特定の機能の速度の低下を含むことを理解するであろう。完全にまたは部分的に阻害される特定の機能は、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2がグルコーストランスポーターとして作用する性能である。
【0088】
特定の実施形態において、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤は、グリフロジンである。グリフロジンは、低分子のナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害薬の1種であることが知られている。近年、Hawleyら(Diabetes, 2016, 65, 2784-2794)およびVillaniら(Molecular Metabolism, 2016, 5, 1048-1056)は、あるグリフロジンの作用メカニズムの可能性について議論している。特に列挙できるグリフロジンとしては、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジン(セルグリフロジンエタボネート等)、レモグリフロジン(レモグリフロジンエタボネート等)、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、およびそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物が挙げられる。
【0089】
医療用途
ここに示すように、本発明の化合物は、医薬として有用である。本発明の化合物は、薬理活性を有し、かつ/または、経口または非経口投与後に体内で代謝され、薬理活性を有する化合物を生成するため、有用である。
【0090】
したがって、本発明の第5の態様によれば、薬剤用途のための、上記で特定された本発明の化合物(すなわち、本発明の第1の態様で特定された化合物)、または、本発明の第2、第3、および第4の態様に関して特定された医薬製剤、組合せ製品、または複数のパーツのキットが提供される。疑義を避けるために、本発明の第1の態様で特定された化合物への言及は、式Iの化合物(そのすべての実施形態を含む)、およびその薬学的に許容される塩および溶媒和物への言及を含む。
【0091】
本発明の化合物(すなわち、本発明の第1の態様で特定された化合物)、並びにそれを含有する医薬製剤、組合せ製品、または複数のパーツのキットは、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化によって改善される病気または健康状態の治療において特に有用であると考えられる。したがって、本発明の第6の態様において、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療に使用するための、本発明の化合物、またはその化合物を含む製剤が提供される。
【0092】
同様に、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療のための医薬の製造における、本発明の化合物、またはその化合物を含む製剤の使用が提供される。本発明のさらに別の第6の態様において、本発明の化合物(またはその化合物を含む製剤)を、それを必要とする対象(例えば、人間)に投与することを含む、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態の治療方法が提供される。
【0093】
「AMPKを活性化する」とは、AMPK-α(AMPK-アルファ)サブユニットのThr-172部分のリン酸化の定常状態レベルが、式Iの化合物またはその活性代謝物(例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド)が存在しない場合のリン酸化の定常状態レベルに比べて増加することを意味する。代替的または追加的に、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)等のAMPKの下流にある他のタンパク質のリン酸化の定常状態レベルがより高いことを意味する。
【0094】
当業者には、「AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態」という用語は、心血管疾患(心不全等)、糖尿病性腎疾患、糖尿病(2型糖尿病等)、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、疼痛、オピオイド依存症、肥満、癌、炎症(慢性炎症性疾患を含む)、自己免疫疾患、骨粗鬆症、および腸疾患を含むことが理解されるであろう。AMPKの活性化によって改善される可能性のある他の病気または健康状態としては、高インスリン血症および関連する状態、線維症が役割を果たす健康状態/病気、性機能障害、および神経変性疾患が挙げられる。
【0095】
当業者には、「癌」という用語は、細胞の制御されていない分裂と、これらの細胞が侵襲、増殖を介して隣接組織内で直接成長するか、または転移によって離れた部位に着床することによって、他の組織に侵襲する性能を特徴とする種類の病気のうちの1つ以上の病気を含むことが理解されるであろう。「増殖」は、癌細胞の数および/またはサイズの増加を含む。「転移」とは、患者の体内の原発腫瘍部位から、患者の体内の1つ以上の他の領域への癌細胞の移動または移行(例えば、侵襲)(ここで、細胞は二次腫瘍を形成できる)を意味する。
【0096】
したがって、本発明の化合物は、すべての腫瘍(非固形腫瘍および好ましくは固形腫瘍、臓器に関係なく、癌腫、腺腫、腺癌、血液癌等)を含む、あらゆる種類の癌の治療における使用に適している可能性がある。例えば、癌細胞は、乳房、胆管、脳、結腸、胃、生殖器、甲状腺、造血系、肺および気道、皮膚、胆嚢、肝臓、鼻咽頭、神経細胞、腎臓、前立腺、リンパ腺、および消化管の癌細胞からなる群から選択することができる。好ましくは、癌は、結腸癌(結腸腺腫を含む)、乳癌(例えば、閉経後乳癌)、子宮内膜癌、造血系の癌(例えば、白血病、リンパ腫等)、甲状腺癌、腎臓癌、食道腺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、および子宮頸癌からなる群から選択されることができる。より好ましくは、癌は、結腸癌、前立腺癌、および特に乳癌からなる群から選択される。癌が非固形腫瘍であるとき、それは好ましくは白血病等の造血器腫瘍である(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、または慢性リンパ性白血病(CLL))。好ましくは、癌細胞は乳癌細胞である。
【0097】
当業者には、「糖尿病」(すなわち真性糖尿病)という用語は、1型(インスリン依存性)糖尿病と2型(インスリン非依存性)糖尿病の両方を指し、いずれもグルコースホメオスタシスの機能不全を伴うことが理解されるであろう。本発明の化合物およびその製剤は、特に、1型糖尿病および/または2型糖尿病の治療における使用に適している可能性がある。本発明の化合物は、特に、2型糖尿病の治療に適している。
【0098】
本発明の化合物は、糖尿病の治療に有用であるだけでなく、糖尿病性腎臓病(糖尿病性腎症)の治療にも適している。「糖尿病性腎臓病」とは、糖尿病によって引き起こされる腎障害を指し、1型糖尿病および2型糖尿病の重篤な合併症である。糖尿病性腎臓病は、尿として排出される血液から老廃物を除去する腎臓の性能に影響を与え、腎不全を引き起こす可能性がある。
【0099】
さらに、本発明の化合物はまた、2型糖尿病がない場合の慢性腎臓病を含む慢性腎臓病の治療に適している。「慢性腎臓病」とは、時間の経過とともに腎臓の機能が徐々に失われることを特徴とする状態である。慢性腎臓病は通常、高血圧、糖尿病、高コレステロール、腎臓感染症、糸球体腎炎、多発性嚢胞腎、尿の流れの中での尿路閉塞、長期的な薬物使用等、腎臓に影響を及ぼす1つ以上の他の病気または健康状態の結果として発生する。
【0100】
当業者には、「高インスリン血症または関連する状態」という用語は、高インスリン血症、2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、脂質異常症、小児期の高インスリン血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、脂肪肝疾患、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳卒中等の脳血管疾患、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病等の神経変性疾患、および多嚢胞性卵巣症候群を含むことが理解されるであろう。その他の病態としては、慢性腎不全等の進行性腎疾患が挙げられる。
特に、本発明の化合物およびその製剤は、高インスリン血症に伴う肥満および/または高インスリン血症に伴う心血管疾患の治療における使用に適している可能性がある。
【0101】
本発明の化合物およびその製剤はまた、高インスリン血症とは関連しない、心不全等の心血管疾患の治療における使用に適している可能性がある。同様に、本発明の化合物およびその製剤はまた、高インスリン血症と関連しない肥満の治療における使用に適している可能性がある。疑義を避けるために、AMPKの活性化が有益である可能性がある肥満および/または心血管疾患(心不全等)の治療は、本発明の範囲内に含まれる。
【0102】
線維症が関与する健康状態/病気としては(特に制限されないが)、瘢痕治癒、ケロイド、強皮症、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、腎性全身性線維症、および心血管線維症(心内膜心筋線維症を含む)、全身性硬化症、肝硬変、眼黄斑変性症、網膜および硝子体網膜症、クローン病/炎症性腸疾患、手術後瘢痕組織形成、放射線および化学療法薬による線維症、および心血管線維症が挙げられる。
【0103】
本発明の化合物はまた、性機能障害の治療(例えば、勃起障害の治療)において有用である可能性がある。本発明の化合物はまた、炎症の治療に有用である可能性がある。
【0104】
列挙できる神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄および球性筋萎縮症(SBMA)等のポリグルタミン障害、歯状核赤核および淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、および多くの脊髄小脳失調症(SCA)が挙げられる。
【0105】
本発明の化合物は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療に有用である可能性がある。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝臓におけるトリグリセリドの形態での過剰な脂肪蓄積(脂肪肝)によって定義される(組織学的に肝細胞の5%を超える蓄積として示される)。それは、先進国では最も一般的な肝障害であり(例えば、米国の成人の約30%が罹患している)、ほとんどの患者は無症状である。治療せずに放置すると、病状は次第に悪化し、最終的に肝硬変に至る可能性がある。NAFLDは特に肥満患者に多く、約80%がこの疾患を有すると考えられている。
NAFLDは、患者のアルコール摂取が主な原因因子とは考えられない場合に診断されることがある。脂肪性肝疾患を「アルコール非関連」と診断するための典型的な閾値は、1日の摂取量が女性患者では20g未満、男性患者では30g未満である。
【0106】
NAFLDに関連する特定の病気または健康状態としては、糖尿病、高血圧、肥満、脂質異常症、無βリポ蛋白血症、糖原病、ウェーバー・クリスチャン病、妊娠中の急性脂肪肝、および脂肪異栄養症等の代謝状態が挙げられる。脂肪肝疾患に関連する他の非アルコール関連因子としては、栄養失調、完全静脈栄養、重度の体重減少、再摂食症候群、空回腸バイパス、胃バイパス、多嚢胞性卵巣症候群、および憩室症が挙げられる。
【0107】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、NAFLDの中で最も強力な型であり、過度の脂肪蓄積(脂肪肝)が肝臓の炎症を伴う状態である。NASHが進行すると、肝臓に瘢痕組織(線維症)が発生し、最終的に肝硬変に至る可能性がある。上記のように、本発明の化合物は、NAFLDおよび炎症の治療に有用であることが見出されている。本発明の化合物はまた、NASHの治療に有用であるということになる。したがって、さらなる一実施形態において、治療は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療である。
【0108】
AMPK活性化化合物(4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、式IIの化合物)等)は、疼痛を治療できることが示されており(Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-5. doi:10.1136/rapm-2019-100839、および、Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-6. doi:10.1136/rapm-2019-100651)、そのような化合物は鎮痛剤であると考えることができる。したがって、本発明の化合物はAMPKを活性化することができるか、または生体内で代謝されて既知のAMPK活性化化合物を生成するため、本発明の化合物は疼痛の治療に有用である可能性があるということになる。特に、本発明の化合物は、重度の疼痛、慢性疼痛の患者の治療に有用であるか、または手術後の疼痛の管理に有用である可能性がある。
【0109】
オピオイド鎮痛薬等のオピオイドベースの治療法は、重度の慢性癌性疼痛、急性疼痛(例えば、手術からの回復期または突出痛)の治療に使用され、それらの使用は慢性の非悪性の疼痛の管理において増加している。しかしながら、疼痛治療のためのオピオイドベースの治療法の使用の増加は、オピオイド依存の増加をもたらしている(例えば、オピオイド依存症)。AMPK活性化剤として、本発明の化合物は、当業者に公知のように、オピオイドベースの治療法の代わりに疼痛治療に使用することができる。したがって、本発明の化合物は、オピオイド依存症の治療に有用である可能性がある。
【0110】
当業者に公知の特定の自己免疫疾患としては、クローン病/炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、および1型糖尿病が挙げられる。
特に言及すべき腸疾患としては、クローン病/炎症性腸疾患、および消化管癌が挙げられる。
【0111】
当業者は、特定の状態の「治療」(または、同様に、その状態を「治療」する)への言及は、医学分野における通常の意味を持つことを理解するであろう。特に、これらの用語は、その状態に関連する1つ以上の臨床症状の重篤度および/または発生頻度の低減を達成することを意味することができ、そのような症状を有する、またはそのような症状にかかりやすい患者に付き添う医師によって判断される。
【0112】
当業者は、そのような治療または予防は、それを必要とする患者において行われることを理解するであろう。患者のそのような治療または予防の必要性は、当業者が通常の技術を用いて評価することができる。本発明の文脈において、本発明の化合物を「必要としている患者」は、AMPKの活性化によって改善される病気または健康状態にある患者を含む。ここで使用されるように、「病気(disease)」および「障害(disorder)」という用語(および同様に、健康状態(condition)、病気(illness)、医学的問題等の用語)は、同じ意味で使用されることがある。
【0113】
理論に縛られることを望まないが、本発明の化合物の投与は、体循環において4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの生物学的利用能を高めると信じられる。本発明の化合物を含む製剤の投与は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを含む製剤の投与と比較して、特定の条件下で4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの血漿中濃度を約2倍増加させることが示されている。
【0114】
本発明の化合物(およびその製剤)は、上記の適応症での使用であるか否かを問わず、先行技術で公知の他の治療法よりも、有効である、毒性が低い、作用が長い、作用が強い、副作用が少ない、吸収されやすいという利点を有する、および/または、より良い薬物動態プロファイルを有する(例えば、経口生物学的利用能が高い、および/または、クリアランスが低い)、および/または、他の有用な薬理学的、物理的、または化学的特性を有することができる。特に、本発明の化合物は、生体内で、より有効である、および/または、有利な特性を示すという利点を有することができる。
【実施例
【0115】
以下の非限定的な実施例で本発明をより詳細に説明する。
以下に説明する反応スキームは、本発明の化合物の製造に用いられる方法の一般的な説明を提供することを意図している。ここで提供される実施例は、本発明の化合物、並びに、そのような化合物および中間体の調製を例示するためのものであるが、限定するものではない。
本発明の化合物を合成するために利用されるすべての出発物質、構成成分、試薬、酸、塩基、脱水剤、溶媒、および触媒は、市販されているか、または、文献、例えば、Houben-Weyl “Science of Synthesis” volumes 1-48, Georg Thieme Verlag、およびその後続の改訂版に記載されている手順によって、慣例的に調製することができる。
【0116】
反応は、適切な溶媒、または希釈剤、またはそれらの混合物の存在下で、有機合成技術の当業者に公知の方法で行うことができる。反応はまた、必要に応じて、酸または塩基の存在下で、例えば約-30℃から約150℃の温度範囲で、冷却または加熱しながら行うことができる。いくつかの実施形態において、反応は、約0℃から約100℃の温度範囲、特に、室温から約80℃の温度範囲で、開放または閉鎖された反応容器内、および/または、不活性ガス、例えば窒素の雰囲気中で行う。
【0117】
略称
ここで使用される略称は当業者には周知であろう。ここでは、特に、以下の略称を使用することができる。
AUC: 濃度-時間曲線下面積
aq: 水性
b.w.: 体重
max: ピーク血漿濃度
d: 二重線
DCM: ジクロロメタン
DMF: ジメチルホルムアミド
DMAP: 4-ジメチルアミノピリジン
DMSO: ジメチルスルホキシド
ESI: エレクトロスプレーイオン化
EtN: トリエチルアミン
EtOH: エタノール
g: グラム
h: 時間
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
LC: 液体クロマトグラフィー
LCMS: 液体クロマトグラフィー-質量分析
LC-MS/MS: 液体クロマトグラフィー-(タンデム)質量分析
LLOQ: 定量下限
m: 多重線
MeOD: メタノール-d
Min: 分
mL: ミリリットル
MRT: 平均滞留時間
nBuN: トリブチルアミン
ND: 検出されない
NMR: 核磁気共鳴
RT: 室温
s: 一重線
1/2: 半減期
max: 最高血漿中濃度到達時間
THF: テトラヒドロフラン
TLC: 薄層クロマトグラフィー
【0118】
計測条件
LCパラメータ
カラム:Agilent Zorbax SB-C8、50×4.6mm、350μm
移動相:5mM酢酸アンモニウム:0.1%ギ酸を含むメタノール(15:85v/v)
分離モード:イソクラティック
流量:0.800mL/min
注入量:2μL
オートサンプラー温度:4℃
カラムオーブン温度:40℃
LC-MS/MS:Shimadzu LCMS-8045
発生源:ESI
極性:正
分析物(化合物1)のm/z:379.800>89.100
内標準物質(ワルファリン)のm/z:309.100>251.100
【0119】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:4-({(5Z)-5-[(4-クロロベンゾイル)イミノ]-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル}メトキシ)-4-オキソブタン酸の調製
【化11】
【0120】
化合物1:4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド
化合物1は、国際公開第2011/004162号に記載された手順に従って調製した。
【0121】
化合物2:4-クロロ-N-{2-[(4-クロロフェニル)メチル]-4-(ヒドロキシメチル)-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-5-イリデン}ベンズアミド
撹拌状態のDMF(200mL)中の化合物1(10g、0.026モル)の溶液に、EtN(15mL、0.105モル)と37%ホルムアルデヒド(8.5mL、0.105モル)を加えた。反応混合物をRTで12から14時間撹拌した。
次に、反応混合物を濃縮してDMFを除去した。得られた粗物質を水(100mL)中で30分間スラリー化した。スラリーをろ過し、室温で乾燥させて、白色固体の化合物2を得た(9.6g、収率90.5%)。
【0122】
化合物3:4-({(5Z)-5-[(4-クロロベンゾイル)イミノ]-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル}メトキシ)-4-オキソブタン酸
撹拌状態のTHF(200mL)中の化合物2(10g、0.024モル)の溶液に、DMAP(0.44g、0.004モル)と無水コハク酸(7.29g、0.072モル)とを加えた。反応混合物をRTで12時間撹拌した。
完了後(TLCによって確認された)、反応混合物を濃縮してTHFを除去した。得られた粗物質をTHF(100mL)で希釈し、RTで1時間撹拌し、ろ過して、白色固体の化合物3を得た(7.3g、収率59%)。
1H NMR (300 MHz, MeOD) δ (ppm): 2.61 (m, 4H), 4.72 (s, 2H), 6.10 (s, 2H), 7.29 (dd, 4H), 7.41 (d, 2H), 8.12 (d, 2H).
LCMS : 510.4 [M+H].
HPLC: >98% 純度、13.6分で.
【0123】
実施例2:{(5Z)-5-[(4-クロロベンゾイル)イミノ]-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル}メチルリン酸二ナトリウムの調製
【化12】
【0124】
化合物2:4-クロロ-N-{2-[(4-クロロフェニル)メチル]-4-(ヒドロキシメチル)-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-5-イリデン}ベンズアミド
化合物2は、実施例1の手順に従って調製した。
【0125】
化合物4:4-クロロ-N-{4-(クロロメチル)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-5-イリデン}ベンズアミド
化合物2(10g、0.0243モル)と塩化チオニル(60mL)との混合物を75℃で3時間以上加熱した。
完了後(TLCによって確認された)、反応混合物を濃縮し、粗生成物をジエチルエーテル(3×100mL)で洗浄し、白色固体の化合物4を得た(9.5g、収率90%)。
【0126】
化合物5:{(5Z)-5-[(4-クロロベンゾイル)イミノ]-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル}メチルリン酸二ナトリウム
撹拌状態のエタノール(60mL)中のリン酸(85%、15.1g、0.154モル)の溶液に、室温でトリブチルアミン(83mL、0.35モル)を加えた。蒸発によって溶媒を除去し、残留物をDCM(60mL)中に溶解させた。このDCM溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、脱水して、リン酸二水素ジ-トリブチルアンモニウムを得た。
【0127】
化合物4(3.0g、0.007モル)と上記で調製したリン酸二水素トリブチルアンモニウムとの混合物をDCM(60mL)中に取り込み、10分間撹拌した。反応混合物を40℃で蒸留し、得られた残留物を60℃のウオーターバス上で10から15分間加熱した。残留物をDCM(6mL)中に再溶解させ、DCMを蒸留除去し、得られた残留物を60℃のウオーターバス上で10から15分間加熱した。以上の操作を4回繰り返した。
【0128】
完了後(TLCによって確認された)、残留物をDCM(4mL)中に溶解させ、水(3×4mL)で洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。脱水後に得られた粗生成物を水中に取り込み、0.2M水酸化ナトリウムで塩基化した(pH9から9.5)。塩基化後、混合物をろ過し、ろ液を凍結乾燥して白色固体の化合物5を得た(0.6g、収率17.5%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-D6) δ (ppm): 4.78 (s, 2H), 5.55 (s, 2H), 7.40 (dd, 4H), 7.55 (d, 2H), 8.19 (d, 2H).
LCMS: 490.1 [M+H].
HPLC: >98% 純度、8.2分で.
【0129】
実施例3-異なるpHでの化合物の溶解性
方法
各試験化合物(化合物1および5)約5mgを2回に分けて計量し、計量した各試料を各緩衝液5mLを入れた別の遠心管に移した。すべての管にしっかりと栓をし、オービタルシェーカーを用いて、30±1℃で一定速度で撹拌した。
24時間後、各緩衝液の管を1つずつシェーカーから取り出した。取り出したそれぞれの管から50μLの緩衝液を10mLの管に移し、マークまで希釈剤を入れた。次に、それぞれの管の上清2.5mLを50mLの管に移し、25mLにした。
各50mL管内の溶液の公称濃度は5μg/mLであった。
40ng/mLから10000ng/mLの溶液を直線的にプロットした。
【0130】
結果
溶解性実験の結果を、以下の表1と表2に作表する。
結果は、化合物5は化合物1と比較して、塩基性溶液(すなわちpH>7)および弱酸性条件において、より高い溶解性を有することを示す。特に、化合物5は化合物1と比較して、塩基性溶液への溶解性が最大30倍高い。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
実施例4-化合物の安定性
5mMのDMSO原液を用いて、USP緩衝液(pH:7.40)中の5μMの化合物1、3、および5の溶液を調製した。この溶液を、サーモミキサーを用いて、400rpmで振盪しながら、37℃で120分間保温した。
0分後、15分後、30分後、60分後、および120分後に、充分な量の化合物溶液を一定量取り出し、最終濃度まで希釈して分析した。
【0134】
結果
安定性実験の結果を、以下の表3に作表する。
結果は、化合物3と5は、弱塩基性溶液(すなわち、pH=7.4)において化合物1と同等の安定性を有することを示す。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例5-AMPKの活性化
INS-1Eインスリノーマ細胞の培養と化合物処理
INS-1E細胞は、Steneberg et al., JCI Insight. 2018;3(12):e99114. https://doi.org/10.1172/jci.insight.99114に記載されているように培養した。培養皿に撒く際には、10%のウシ胎児血清の代わりに5%を使用した。
化合物3をDMSO中に10mMで溶解させ、-20℃で凍結した。
化合物5を50:50の水/DMSO混合物中に10mMで溶解させ、超音波浴(VWR超音波洗浄器)中、室温で15分間インキュベートし、室温で保存した。
INS-1E細胞は、Steneberg et al., JCI Insight. 2018;3(12):e99114. https://doi.org/10.1172/jci.insight.99114に記載されている方法に従って、無血清培地中で化合物3および5の用量をそれぞれ増加させて、4時間および16時間処理した。
【0137】
ウェスタンブロット解析
INS-1E細胞のウェスタンブロット解析は、Steneberg et. al., JCI Insight. 2018;3(12):e99114. https://doi.org/10.1172/jci.insight.99114に記載されているように実施した。細胞溶解液を30ゲージ針に~8回通し、+4℃、14000rpmで10分間遠心した。AMPKαとリン酸化-T172 AMPKαの定量値は、β-アクチンの定量値に対して、標準化した。
【0138】
結果
ウェスタンブロット解析の結果を、以下の表3に作表し、図1に図示する。
結果は、化合物3および5が、培養INS-1E細胞において、用量依存的にリン酸化-T172 AMPKを増加させることを示す。したがって、化合物3および5はAMPKのアゴニストである。
【0139】
【表4】
【0140】
実施例6-スプラーグドーリーラットにおける化合物1および3の単一用量の経口薬物動態の研究
化合物1の製剤
リン酸緩衝液(pH7.5)中の2%w/vメチルセルロースの溶液10.0mLを2mmガラスビーズ1gと共に100mLの三角フラスコに加えた。この溶液をマグネチックスターラー上で激しく撹拌した。100mgの化合物1をこの溶液にゆっくりと加え、この溶液を約1時間激しく撹拌した。製剤のpHは7.49と測定された。各製剤は動物に投与する前に新鮮に調製された。製剤中の化合物1の最終濃度は10mg/mLであった。製剤は5mL/kg体重で投与された。
【0141】
化合物3の製剤
リン酸緩衝液(pH7.5)中の2%w/vメチルセルロースの溶液10.0mLを2mmガラスビーズ1gと共に100mLの三角フラスコに加えた。この溶液をマグネチックスターラー上で激しく撹拌した。134mgの化合物3をこの溶液にゆっくりと加え、この溶液を約1時間激しく撹拌した。製剤のpHは7.44と測定された。各製剤は動物に投与する前に新鮮に調製された。製剤中の化合物3の最終濃度は13.4mg/mLであり、これは化合物1の10mg/mLに相当する。製剤は5mL/kg体重で投与された。
【0142】
用量の選択と選択の理由
化合物1および化合物3についてそれぞれ、等モル用量の比較のために、50mg/kgおよび67mg/kgb.w.の用量を選択した。
【0143】
用量の投与
9から11週齢の成体の健康な雄のスプラーグドーリーラットを、最低3日の順化後に実験に使用した。えさを与えられた状態の動物に、化合物1または化合物3の製剤をそれぞれ、50mg/kgまたは67mg/kg体重の用量で経管経口投与した。
【0144】
血液サンプリング
軽度のイソフルラン麻酔下で、投与後72時間以内に、表6に詳細に示すように、抗凝血剤(KEDTA:2mg/mL血液)を含むラベル済みの管に、キャピラリーチューブを用いて、後眼窩穿刺法により血液サンプルを採取した。複数の時点での血液採取のために、右目と左目を交互に使用した。採取した血液サンプルを6000rpm、4℃で10分間遠心分離し、血漿サンプルを分離し、分析まで-80℃で保存した。
【0145】
結果
ラットにおける単一用量の経口薬物動態試験の結果を、以下の表4および表5に作表し、図2に図示する。表4において、Cmax、max、AUClast、AUCinf、AUCextrap、T1/2、およびMRTlastの値は、化合物1および3のいずれも、その投与後に検出された4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(化合物1)の値である。
【0146】
結果は、化合物3を投与するとき、化合物1と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露が驚くことに2倍増加することを示している。したがって、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露は、本発明の化合物の投与によって増加する。
【0147】
【表5】
【0148】
【表6】
【0149】
実施例7-スプラーグドーリーラットにおける化合物5の単一用量の経口薬物動態の研究
化合物5の製剤
リン酸緩衝液(pH7.5)中の2%w/vメチルセルロースの溶液6.0mLを2mmガラスビーズ1gと共に100mLの三角フラスコに加えた。この溶液をマグネチックスターラー上で激しく撹拌した。77mgの化合物5をこの溶液にゆっくりと加え、この溶液を約1時間激しく撹拌した。製剤のpHは7.43と測定された。製剤は動物に投与する前に新鮮に調製された。
【0150】
用量の投与
9から11週齢の成体の健康な雄のスプラーグドーリーラットを、最低3日の順化後に実験に使用した。えさを与えられた状態の動物に、化合物5の製剤を、64mg/kg体重(投与体積5mL/kg)の用量で経管経口投与した。
【0151】
血液サンプリング
軽度のイソフルラン麻酔下で、投与後72時間以内に、抗凝血剤(KEDTA:2mg/mL血液)を含むラベル済みの管に、キャピラリーチューブを用いて、後眼窩穿刺法により血液サンプルを採取した。複数の時点での血液採取のために、右目と左目を交互に使用した。採取した血液サンプルを6000rpm、4℃で10分間遠心分離し、血漿サンプルを分離し、分析まで-80℃で保存した。
【0152】
結果
ラットにおける単一用量の経口投与薬物動態試験の結果を、以下の表7および表8に作表する。表7において、Cmax、max、AUClast、AUCinf、AUCextrap、T1/2、およびMRTlastの値は、化合物5の投与後に検出された4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(化合物1)の値である。したがって、化合物5は化合物1のプロドラッグとして作用する。
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
図1
図2
【国際調査報告】