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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ロボットレーザ
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20231011BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20231011BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20231011BHJP
   B23K 9/167 20060101ALI20231011BHJP
   B23K 9/173 20060101ALI20231011BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20231011BHJP
   B23K 9/20 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B25J17/02 A
B23K26/08 H
B23K9/12 331H
B23K9/167 A
B23K9/173 A
B23K26/21 W
B23K9/20 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543261
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2020088046
(87)【国際公開番号】W WO2022069067
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/084,737
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】523114796
【氏名又は名称】アイピージー・レーザー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク-エム・ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】パウル・シュモック
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マンスケ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ペルトラー
【テーマコード(参考)】
3C707
4E001
4E168
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS12
3C707CV08
3C707CW08
3C707CY12
3C707CY36
3C707MT02
4E001BB07
4E001BB08
4E001BB12
4E001CA03
4E001CB04
4E001QA03
4E168BA42
4E168BA86
4E168BA87
4E168CB04
4E168CB08
4E168EA17
4E168FA00
4E168FB01
4E168GA03
(57)【要約】
多軸ロボットが複数のアームを含む。ワークピースに最も近接している最終アームは、該ロボットの第6軸を中心として回転可能なエンドオブアームツーリング(EOAT)を受容するように構成されている先端部または手首部を有する。レーザヘッドアセンブリがロボットの第6軸を中心として回転しないように、レーザヘッドアセンブリを支持するためのマウントが該手首部に連結されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸ロボット(30、90)であって、
先端部を有する手首部(48)と、
前記手首部(48)の前記先端部に連結され、その結果、中空ハンド(20)が前記ロボット(30、90)の最終軸の隣のもの(例えば、図1の「軸5」または図8の軸「V-V」参照)を中心として揺動することができるようになっている中空ハンド(20)であって、前記ロボット(30)の最終軸(例えば、図1の「軸6」または図8の軸「VI-VI」参照)を中心として回転可能なインサート(60)を受容する、中空ハンド(20)と、
レーザビーム(68)を出力するように配置されているレーザヘッドアセンブリ(40)と
を含む、多軸ロボット(30、90)であって、
前記レーザヘッドアセンブリ(40)が前記インサート(60)から回転に関して切り離されるように、前記レーザヘッドアセンブリ(40)は、ワークピースの反対側の、前記中空ハンドアーム(20)の端部に取り付けられており、前記レーザヘッドアセンブリ(40)は、前記レーザビームが前記ワークピース上に入射するように、前記中空ハンド(20)を通して誘導される前記レーザビーム(68)を出力する
ことを特徴とする、多軸ロボット(30、90)。
【請求項2】
前記多軸ロボット(30、90)は6軸ロボットであり、前記最終軸の隣のものは前記多軸ロボット(30、90)の前記第5軸であり、前記最終軸は前記多軸ロボット(30、90)の前記第6軸である、請求項1に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項3】
前記レーザヘッドアセンブリ(40)はマウント(50)により前記中空ハンド(20)に取り付けられており、前記マウント(50)は前記中空ハンド(20)の一部としてかつ/または前記中空ハンド(20)に取り付けられている外部要素として実装されており、前記レーザヘッドアセンブリ(40)は前記ロボット(30、90)の前記最終軸を中心とした回転運動から切り離される、請求項1または2に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項4】
前記ロボット(30、90)に取外し可能に取付け可能な少なくとも1つのエンドエフェクタを含むエンドオブアームツーリング(EOAT、25)をさらに含み、前記少なくとも1つのエンドエフェクタは前記ロボット(30、90)の前記最終軸を中心として回転可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタは、
センサアセンブリ(72)、および/または
冷線繰出しアセンブリ(74)、および/または
ガス供給アセンブリ(76)、および/または
タングステン不活性ガス(TIG)アセンブリ(82)、および/または
金属不活性ガス(MIG)または金属アーク活性ガス(MAG)アセンブリ、および/または
スタッド溶接アセンブリ(80)
である、請求項4に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項6】
前記中空ハンドアーム(20)は、前記ロボット(30、90)の前記最終軸を中心として回転可能な中空フランジ付きシャフト(60)を受容する中空ハウジング(58)を有し、前記中空フランジ付きシャフト(60)は、前記レーザヘッドアセンブリ(40)を支持する前記マウント(50)の端部の反対側の前記マウント(50)の端部を越えて延在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項7】
前記ロボット(30)は、前記レーザヘッドアセンブリ(40)から横を向く前記中空フランジ付きシャフト(60)のフランジの表面に連結されている支持プレート(70)をさらに含み、前記支持プレート(70)は、前記支持プレート(70)に取外し可能に取り付けられている前記エンドエフェクタ(72、74、76、80、82)のうちの1つまたはそれらの組合せを支持するようになされている、請求項6に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項8】
前記TIGアセンブリ(82)は、前記レーザヘッドアセンブリ(40)と同時にまたはそこから独立して動作する、請求項5、6または7のいずれか一項に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項9】
前記ガス供給アセンブリ(76)は、中空内部を備えて構成されているガスノズル(78)を含み、前記レーザヘッドアセンブリ(40)は、前記ガスノズル(78)の前記中空内部を横断する前記レーザビーム(68)を出力する、請求項5、6または7のいずれか一項に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項10】
前記マウント(50)は前記ハンド(20)に取外し可能に連結されているフレームを含む、請求項3から9のいずれか一項に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項11】
最終軸の隣のもの(例えば、図1の「軸5」または図8の軸「V-V」参照)を中心として揺動可能な中空ハンド(20)と、
前記中空ハンド(20)の内部内に受容され、かつ前記最終軸の隣のもの(例えば、図1の「軸5」または図8の軸「V-V」参照)の横に伸びる最終軸(例えば、図1の「軸6」または図8の軸「VI-VI」参照)を中心として回転可能な中空インサート(60)と、
前記中空ハンド(20)に取り付けられ、その結果、レーザヘッドアセンブリ(40)が前記最終軸(例えば、図1の「軸6」または図8の軸「VI-VI」参照)に対して固定されているようになっているレーザヘッドアセンブリ(40)であって、前記インサート(60)を通して誘導されかつ照射されるワークピース上に入射するレーザビーム(68)を出力する、レーザヘッドアセンブリ(40)と
を含む、多軸ロボット(30、90)。
【請求項12】
前記中空ハンド(20)上に設けられており、かつ前記レーザヘッドアセンブリが前記インサート(60)と同軸であるがそこから回転に関して切り離されるように、前記レーザヘッドアセンブリ(40)を支持するように構成されているマウント(50)と、
前記ワークピースの反対側の、前記インサート(60)の端部に連結され、前記インサート(60)と共に回転可能である工具交換装置(47)であって、前記中空ハンド(20)は、中空ハウジング(58)および前記ハウジング(58)内に受容されかつ前記最終軸(例えば、図1の「軸6」または図8の「VI-VI」参照)を中心として回転可能な中空フランジ付きシャフト(60)を含む、工具交換装置(47)と
をさらに含む、請求項11に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項13】
前記工具交換装置(47)は、前記フランジ(60)に連結されている支持プレート(70)と、各々が前記支持プレート(70)に取外し可能に取り付けられている複数のエンドエフェクタ(72、74、76、80、82)とを備えて構成されており、前記支持プレート(70)は前記エンドエフェクタ(72、74、76、80、82)の1つまたは組合せを支持する、請求項12に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項14】
前記エンドエフェクタ(72、74、76、80、82)はセンサアセンブリ(72)、冷線繰出しアセンブリ(74)、ガス供給アセンブリ(78)、タングステン不活性ガス(TIG)アセンブリ(82)、金属不活性ガス(MIG)または金属アーク活性ガス(MAG)アセンブリ、スタッド溶接アセンブリ(80)、およびこれらアセンブリの組合せから成る群から選択された工具を含む、請求項13に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項15】
前記タングステン不活性ガス(TIG)アセンブリ(82)は、前記レーザヘッドアセンブリ(40)と同時にまたはそこから独立して動作し、一方、前記レーザヘッドアセンブリ(40)は前記中空ハンド上に依然として取り付けられている、請求項14に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項16】
前記ガス供給アセンブリ(76)は、中空内部を備えて構成されているガスノズル(78)を含み、前記レーザヘッドアセンブリ(40)は、前記ガスノズル(78)の前記中空内部を移動する前記レーザビーム(68)を出力する、請求項14に記載の多軸ロボット(30、90)。
【請求項17】
連結されて6軸ロボット構造体(10、30、90)をもたらす複数のアーム(14、16、18、20)をさらに含み、前記最終軸(VI-VI)は前記ロボット構造体(10、30、90)の第6軸である、請求項10に記載の多軸ロボット(30、90)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はレーザヘッドを装備したロボットに関する。より詳細には、本開示は、多軸ロボットの最終軸を中心とした、例えば6軸ロボットの第6軸を中心とした、レーザヘッドの変位を防止するように構成されている改良型マウントを備えた多軸ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
World Robotics 2020 Industrial Robotsの新レポートには、世界中の工場内で動作する270万の産業用ロボットの記録が示されている。産業用ロボットアームはエンドエフェクタを配置する部分である。ロボットアームを用いて、肩部、肘部、および処理アームは動き、回転して、エンドエフェクタを正確な適地に位置決めする。これら関節の各々は、直後に説明されるように、ロボットに違った程度の自由を与える。
【0003】
レーザとロボットとは、必然のパートナーであり、ロボットが溶接、切削、マーキングおよび他のプロセスにおいて一般的にレーザを誘導するのに役立つ。ロボットはオープンアーキテクチャを有し、会社が自身のプラグインおよびソフトウェアモジュールを設計して、ロボットとレーザシステムとの間をインターフェースで接続することを高速化することを可能にしかつ直接ロボットペンダント上でのカスタマイズを可能にすることが有利である。レーザ処理自動化プロセスにおいて、通例、レーザ源はロボットアームから少し離して配置されている。しかし、レーザヘッド(単一筐体内に組み立てられているビーム誘導/ビーム成形光学部品の組合せ)がロボット前腕の遠位端に取り付けられており、レーザを装備したロボットのドレスパックまたはエンドオブアームツーリング(EOAT)の一部である。該EOATは、機能を果たすロボットフランジに取り付けられているエンドエフェクタと呼ばれることが多いロボットアクセサリの組合せである。これは、レーザヘッド、工具交換装置、力/トルク検出システム衝突センサ、ガスノズル、スキャナ、ならびに当然、指定エンドエフェクタにそれぞれの媒体を送る複数の電気、ガスおよび光のケーブルを含むが、これらに限定されない。
【0004】
例えば、図1は、ロボット10の残りの部分と共に、基部12に対して第1軸を中心として回転する第1アーム14を支持する基部12を含む、典型的な6軸産業用ロボット10を示す。また、該第1アーム14は、前後に動くすなわち第2軸を中心として枢動するように構成されている。第1アーム14の遠位端は、第2アーム16が例えば上下に動くように第3軸を中心として揺動する下方または第2アーム16を支持する。次に、該第2アーム16は、第3軸に対して垂直に伸びる第4軸を中心として回転するように動作可能な第3アーム18に接続されている。第5軸を中心として回転可能な最終の第4アーム20が、第3アーム18の遠位端に取り付けられている。第4アーム20は、第6または最終軸を中心として回転する、フランジが支持するEOAT 25を有する。人体構造との類似性を表現して、第3アーム18が手首部とさらに呼ばれ、第4アーム20はハンドと言われる。
【0005】
ドイツの会社トルンプ(TRUMPF)により製造された新規の「TruLaser Weld 5000」レーザ溶接システムを示す図2を参照すると、ハンド20が、レーザヘッド自体ばかりでなくレーザヘッド、工具交換装置、該工具交換装置に取り付けられるエンドエフェクタ、ケーブルおよび他の部品の任意の組合せを含み得るEOAT 25を支持し得る。レーザビームはプロセス空間内の任意の所望の位置に向けられ得る。現代の傾向に従って、レーザヘッドは、平行光学系および合焦光学系に加えて、通常、スキャナを含む。該スキャナは、その全体が参照により本明細書に援用されている特許文献1(米国特許第10,413,995(B2)号)において開示されているように、互いに対して変位可能な一対の鏡を含み得るか、または外部スキャナを有し得る。該鏡はレーザスポットの揺れ動きをもたらす。レーザ処理されるワークピースの外形を辿って、レーザヘッドを含むEOAT 25全体は、最終軸を中心として、例えば典型的な6軸産業用ロボット10の第6軸を中心として、回転することが多い。線材フィーダ、ガスノズルなどの補助工具が、継ぎ目の外形を辿って必然的に回転する。
【0006】
ロボット工学の当業者が、最終軸、例えば第6軸、を中心としたレーザヘッドの回転に関連するいくつかの欠点に関してよく分かっている。回転可能なレーザヘッドは、ロボットの動態および速度を含んでいる可能性があり、工具中心制御(TCP: tool center control)長を増大させ得る。レーザヘッドの回転運動は慣性の原因となる可能性があり、したがってロボットによって生み出された位置決め誤差および所望の経路からの逸脱をもたらす可能性がある。さらに、YASAKAWA(図3A)、FANUC(図3B)、ABB、KUKA(図3C)を含むがこれに限定されない様々な産業用ロボットが、ロボットの下方/第2アームおよび回転可能なレーザヘッドを支持する手首部/第3アームの周囲にロボットの巨大な複雑なケーブルおよびホース束を必要とする。いくつかのケーブル束が、例えば下方/第2アーム、手首部/第3アーム、およびハンド/第4アームの中心を通して送られ得る、中空アームロボットの導入によっても、不要な鞭打ち動作などの機械的ハザードからのレーザヘッドの保護は依然として問題である。また、レーザヘッドは、作業スペースが小さ過ぎることが多くロボットの効果的な操縦性を制限するので著しい欠点であり得る、EOAT 25の占有面積を増大させる。同ロボットをかなりの頻度で使用して、レーザ源から、アーク、ドローンアーク、コンデンサ放電等のような異なる種類の電源へ切り替え、かつ/または1つまたは複数のエンドエフェクタを交換し/追加する必要がある。例えば、頻繁に、レーザ溶接およびろう付けのプロセスが、フィラ線またはいわゆる冷線の使用を必要とする。いくつかの金属、例えばチタン、の大気気体の酸素水素などに対する高い親和性は、強力なガスシールドを必要とする。レーザヘッドの存在は、EOAT 25の所望の交換または再構成を複雑にし、機械遊休時間を増加させ、最終製品のコストを上昇させる可能性がある。
【0007】
前段で検討されている問題は6軸ロボットに限られない。軸数に関わらず、回転可能なレーザヘッドと共に動作するようになされている、ハンド様構成要素20を設けられている任意のロボットが、同じ問題を経験する。図3Cはそのようなロボットの例を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第10,413,995号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、レーザヘッドがEOATの残りの部分から回転に関して切り離され、したがって処理アームのコンパクトな占有面積に寄与し、ロボットが引き起こす位置決め誤差を最小限にし、また処理アームの動作速度を上げることを可能にする、レーザ関連の工業プロセスにおいて動作するための多軸ロボットの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この必要性は、本発明のコンセプトに従って、ハンドまたは最終アームに取り付けられるレーザヘッドに関して改良された多軸産業用ロボットによって満たされる。詳細には、本発明の構造は、最終軸を中心として回転可能なEOATの残りの部分からレーザヘッドが回転に関して切り離されるように、ハンド上に取り付けられているレーザヘッドを含む。ここで留意すべきは、次の説明が6軸ロボットによって例示されていることである。しかし、本発明のコンセプトは、回転可能なレーザヘッドを設けられている任意のロボットに関する。
【0011】
本発明の6軸ロボットは、第3軸(A3)を中心として互いに対して角度変位可能な第1アームおよび第2アームを備えて構成されている。該第2アームは該第1アームに対して第4軸(A4)を中心として変位可能である。第2アームの先端部は、軸A4に対して直角に伸びる軸A5を中心として処理アームに対して枢動する手首部に連結されている。
【0012】
手首部は、中空円筒またはハウジングとして構成されているハウジングと、該ハウジングと同軸にその中に取り付けられておりフランジを設けられている中空シャフトとの組合せを含むハンドに連結されている。ハウジングは、第5軸を中心としてアームと共に枢動するが、第6または最終軸を中心として回転可能でない。該シャフトは、第5軸を中心とした変位に加えて、第6軸を中心として回転可能である。ハウジングおよびシャフトと同軸にハウジング端部上に取り付けられているレーザヘッドは、レーザビームがシャフトを通って目標に向かって自由に伝搬することを可能にする。既知の先行技術と対照的に、レーザヘッドは第6軸または最終軸を中心として回転可能でない。換言すれば、レーザヘッドがシャフトから回転に関して切り離され、以下に検討されているように多数の利点をもたらす構造である。
【0013】
フランジは、レーザヘッドを支持しているハウジング端部の反対側のハウジングの端部を越えて延在し、該端部と同一平面で終端する。フランジは様々なエンドエフェクタを受容するように機械加工されており、したがって工具交換装置として機能する。シャフト、工具交換装置、およびエンドエフェクタはEOATの一部である。通常、レーザヘッドはハンドの一部であると考えられ、したがって第6軸を中心として回転する。本発明の構造は、シャフトと一緒のレーザヘッドの回転の必要を無くすことおよびこれに関連するいくつかの利点、とりわけロボット構造の不活性を低減することおよびロボットの動きの精度を向上させること、を実現することにより、ロボットの構造を簡単化する。
【0014】
様々なエンドエフェクタは、通常、フランジに直接取り付けられているか、またはフランジに連結されておりかつこれらのエフェクタを受容し支持するように構成されているプレートに取り付けられているかのどちらかである。該エンドエフェクタの中で、様々なセンサの使用が考慮される可能性がある。該様々なセンサに加えてまたはそれらの代案として、線材繰出し機構が、単独でまたは他のエンドエフェクタとの様々な組合せで、該プレートに取外し可能に連結され得る。また、ガス送出機構が、単独でまたはエンドエフェクタの全部もしくはいくつかとの組合せで取り付けられ得る。EOATの残りの部分から回転に関して切り離されるレーザヘッドの位置は、レーザ関連作業以外の異なる電源を備えたロボットの使用を促進する。レーザヘッドがロボットから取り外されることが多い確立された実践と対照的に、本発明の構造は、改造ロボットがレーザ作業以外に加わる間、レーザヘッドが取り付けられたままであることを可能にする。当然、任意の所定の動作がレーザヘッドの使用を必要としない場合、レーザヘッドの位置を再調節する必要がないので、例えばタングステン不活性ガス(TIG)溶接または例えばスタッド溶接などの様々な溶接技術とレーザ溶接との組合せは、もっぱら、本発明のコンセプトから利益を得る。
【0015】
開示されているロボットの上記のかつ他の特徴および利点は、次の図面を伴う本発明の発明を実施するための形態から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例示的6軸ロボットの図である。
図2】既知の6軸ロボット内にレーザヘッドを設けられている処理アームの図である。
図3A】レーザ関連作業に頻繁に使用されかつ本発明の構造から利益を得るように設計されている例示的産業用ロボットの図である。
図3B】レーザ関連作業に頻繁に使用されかつ本発明の構造から利益を得るように設計されている例示的産業用ロボットの図である。
図3C】レーザ関連作業に頻繁に使用されかつ本発明の構造から利益を得るように設計されている例示的産業用ロボットの図である。
図4】既知の6軸ロボットを利用する例示的溶接システムの図である。
図5】本発明のコンセプトに従って再構成されている図4の6軸ロボットの拡大図である。
図6】本発明のロボットの図である。
図7図6の本発明のロボットのハンドの底面図である。
図8図6のロボットの手首部/ハンド組合せの拡大図である。
図9A】レーザヘッドおよびセンサを備え付けられている、図6の手首部/ハンドの斜視図である。
図9B】レーザヘッドおよびセンサを備え付けられている、図6の手首部/ハンドの側面図である。
図10】レーザヘッド、センサ、および冷線繰出し機構を設けられている、図6の手首部/ハンドの側面図である。
図11】レーザヘッド、センサ、およびガス供給ノズルを設けられている、図6の手首部/ハンドの側面図である。
図12】レーザヘッド、センサ、冷線繰出し機構、およびガスノズルを設けられている、図6の手首部/ハンドの側面図である。
図13】スタッド溶接作業を実現するように構成されている、図6の手首部/ハンドの側面図である。
図14A】TIG作業のために構成されている、図6の手首部/ハンドの側面図である。
図14B】TIGおよび冷線繰出し機構を備えた、図6の手首部/ハンドの側面図である。
図15A】本発明の手首部を設けられている、別の既知のロボットの側面図である。
図15B図15Aの手首部/ハンドの拡大斜視図である。
図15C図15Aの手首部/ハンドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図4は、ガントリシステム22上に吊り下げられている既知の6軸ロボット10を組み込んでいる例示的システムの一部を示す。該図示のガントリシステム22は、様々な物体を組み立てるために利用される。該様々な物体の例として、システム22は、事業用厨房装置を組み立てるのに使用される。しかし、ロボット10は、ガントリ台を必要としない様々な他の作業において使用され得る。例えば、図1図3A図3Bおよび図3Cに示されているように、ロボット10は独立型ユニットとして使用されることが多い。
【0018】
図5は、この場合、図4のロボット10と類似して構成されており、かつとりわけ、本例における6軸ロボットに典型的な既知の方法で互いに連結されている第1アーム42と、第2または下方アーム44と、第3アームまたは手首部48と、第4アームまたはハンド20とを含む6軸ロボット30である、本発明の多軸ロボットの例を示す。本発明のコンセプトに従って、ロボット30の中空ハンド20に対するレーザヘッドアセンブリ40の位置が、特に該レーザヘッドアセンブリが、最終ロボット軸すなわち本例における第6軸6を中心として回転しないように固定されているように、レーザヘッドアセンブリ40が中空ハンド20上に取り付けられている。図5に示されているように、ワークピースの反対側の中空ハンド20の端部にレーザヘッドアセンブリ40が取り付けられていることが好適である。換言すれば、中空ハンド20を通してレーザヘッドアセンブリ40により出力されるレーザビームは、ロボット30の最終第6軸に対して回転に関して固定されている。
【0019】
図6および図7を参照すると、本発明のコンセプトの例が、手首部/第3アーム48の先端部に取り付けられておりかつ手首部48に対して第5軸を中心として揺動可能なハンド20の基部52上に支持されているマウント50により実現されている。該基部52は、ハンド20のハウジング58とフランジ付きシャフト60とを含む工具交換アセンブリ47を受容するように成形されており、かつそのような寸法に合わせられているチャネル54を設けられている。該ハウジング58と該フランジ付きシャフト60とは同軸であり、最終第6軸の中心に置かれており、フランジ付きシャフト60がこの最終軸を中心として回転可能である。マウント50は中空ハンド20の一部および中空ハンド20に取り付けられている外部要素として、または上記代案の組合せとして、実装され得ることが、一般に言及されるべきである。
【0020】
レーザヘッドアセンブリ40を支持するマウント50を見ると、機械加工の当業者は、その構造が無限の設計を対象とすることを容易に理解する。マウント50の決定的なことは、レーザヘッドアセンブリ40が工具交換アセンブリ47から回転に関して切り離されるように、すなわち工具交換装置47がフランジ付きシャフト60と共に最終第6軸を中心として回転している間、レーザヘッドアセンブリが固定されているように、ロボット30上へのその位置決めを含む。
【0021】
図6および図7に示されている例示的構造において、マウント50は、基部52に沿ってかつそれを跨いで延在する複数のU形レール56を含むフレームを含む。該レール56は、例えば、基部52にボルトで留められることが可能であるが、任意の他のマウントの構造および連結は、基部とマウント50との間の確実な接続を条件として当業者により利用され得る。マウント50は、工具交換装置47に連結されているフランジ付きシャフト60に関連する一方の端部66(図6)と、レーザヘッドアセンブリ40を支持する反対側端部64(図7)とを有する。あるいは、また、レーザヘッドアセンブリ40はアーム20に直接取り付けられ得る、例えば直接ねじで留められ得る。
【0022】
図6によりよく示されているように、レーザヘッドアセンブリ40がどれくらい巨大になり得るのかが容易に分かる。工具交換アセンブリ47と同じ基部52の端部66に取り付けられかつそれと共に回転可能である場合、レーザヘッド/工具交換アセンブリは、単にあまりに扱いにくいと考えられる。むしろ典型的である、作業スペースがどれくらい小さくなり得るかを考慮すると、主として工具交換装置/レーザヘッド構造の大占有面積のために、ロボット30、特にその手首部48の操縦性は非常に制限されると考えられる。さらに、ロボット30が中空アームを有するとしても、それぞれの図6および図7に示されているように、光送達ファイバを含む緩いケーブル62、64、可撓管、冷却剤を送達するホース、またはセンサおよび他の指定機器用の電気ケーブルが依然として存在し得ると考えられる。確かに、緩いケーブルは操縦性を助けず、実際、レーザヘッドアセンブリおよびフランジ60に連結されている他のエンドエフェクタには危険である可能性がある。本発明の構造は占有面積を減少させ、このケーブルが原因の危険を排除する。
【0023】
図8を参照すると、例示的ロボット30の手首部48が、第5軸V-Vに沿って離間されている2つの指部66を特徴とする遠位分割部またはフォーク状先端部と、ハンド20およびハンド20に連結されているマウント50の側面基部52とを有する。レーザヘッドアセンブリ40は、照射される目標上に焦点を合わせられるビーム68が、基部52が中心に置かれている最終軸VI-VIと共に常に共線的にかつそれと同軸に伝搬するように、マウント50に連結されている。明らかに、マウント50の端部66は、第6軸VI-VIに沿って伝搬するビーム68に干渉しない構造を有する。
【0024】
図9Aおよび図9Bが、工具交換装置47のフランジ60(図7)に連結されておりかつそれと共に回転可能なプレート70を含むEOATを示す。次に、該プレート70は、様々なエンドエフェクタのための支持体を提供する。例えば、センサ72はプレート70に連結されている。本発明のコンセプトに基づいて、センサ72を備えたプレート70が、レーザヘッドアセンブリ40から発射されるビーム68がそれに沿って伝搬する第6軸VI-VIを中心として回転することが可能であり、一方、レーザヘッドアセンブリ40はマウント50上に取り付けられており、回転しない。
【0025】
図10は、第6軸VI-VIを中心として回転するためにプレート70に連結されている追加エンドエフェクタを示す。詳細には、線材が、ビーム68により照射される溶接領域へ繰り出されるように、冷線繰出し機構74がプレート70により支持されている。該冷線は、レーザ溶接またはろう付けにおいて必要とされることが多い。ここに示されているように、プレート70がセンサ72と線材繰出し機構74の両方を支持するが、全エンドエフェクタが容易に取外し可能であるため、任意の個々のエンドエフェクタがプレート70から迅速に除去されるか、またはそれに追加され得る。
【0026】
図11は、エンドエフェクタの別の組合せを示す。ステンレス鋼、チタンなどの多くの金属のレーザ処理が、酸化の結果としての色の形成と頻繁に関連する。この理由および他の理由で、EOATは、プレート70に取り付けられておりかつガスノズル78を設けらているガス供給機構76を含み得る。該ガスノズル78は、平行にまたは同軸に、ノズル内でノズル78の出口に向かって誘導されるレーザビーム68とガス流の両方により横断される中空内部を有する。これは、ノズルが第6軸VI-VIの中心に置かれるように、ノズル78を取り付けることにより実現される。
【0027】
図12を参照すると、ガス供給機構76が、全ての他のエンドエフェクタと同様に、単独でまたはセンサ72などの他のエンドエフェクタと組み合わせて、プレート70に連結され得る。したがって、ここで示されているように、ノズル78を備えたガス供給機構は、線供給機構74とセンサ72とを備えたプレート70に、共に取り付けられる。該取り付けられたエンドエフェクタは第6軸VI-VIを中心として回転可能である一方、レーザヘッドアセンブリ40はこの軸に対して固定されている。
【0028】
図13は、レーザヘッドアセンブリ40がEOATの残りの部分から回転に関して切り離される本発明の構造の別の利点を示す。レーザ溶接単独では、そのレーザ処理段階を含む全体のプロセスの一部である任意の所定の作業に不十分であるかまたは単に不必要である可能性があることが多い。工具交換装置47から回転に関して切り離されるレーザヘッドアセンブリ40に関して、別の種類の材料処理が必要な場合、該レーザヘッドをロボット30から除去する必要がない。例えば、ここに示されているように、スタッド溶接アセンブリ80がプレート70に取り付けられており、一方、レーザヘッドアセンブリ40はそのまま残っている。基本的に、プレート70の一方の端部がレーザヘッドアセンブリ40を支持する一方、反対側のプレートの端部はスタッド溶接アセンブリ80を、単独でまたはセンサ72などの他のエンドエフェクタと組み合わせて支持する。スタッド溶接は、金属スタッドが、両部分をアークで加熱することにより、金属ワークピースに接合されるプロセスである。したがって、レーザ溶接技術と異なるが、離間されて工具交換装置47から回転に関して切り離されるレーザヘッドの開示されている位置に因り、スタッド溶接アセンブリ80がレーザヘッドアセンブリ40と共にロボット30上に取り付けられることを妨げるものは何もない。必要に応じて、レーザおよびスタッド溶接の両プロセスは、本発明の構造を利用して、同時に使用され得る。
【0029】
図14Aおよび図14Bは、別の代替的材料処理方法、TIGアセンブリ82によってこれらの図に示されているタングステン不活性ガス(TIG)溶接としても知られているガスタングステンアーク溶接(GTAW)、で使用される本発明のロボット30を示す。該TIG法は、溶接される金属を加熱するタングステン電極を含む。この技術は、接合部を酸素汚染から保護するアルゴンなどの不活性ガスの使用で知られている。プレート70に取り付けられているTIGアセンブリ82は、レーザヘッドアセンブリ40なしで、単独で利用され得る。しかし、TIGとレーザプロセスとを組み合わせることは珍しいことではない。また、不活性ガスは、図14Aに示されているガスノズル78内へ供給される。さらに、図14Bは線材供給機構74を示す。このレーザ/TIGハイブリッド溶接は、レーザおよびTIG溶接の単独の場合と比較して、より速いプロセスであり得る。それにより、より高い継ぎ目品質が生み出される。レーザ法とTIG溶接法との組合せは、接合取付け(joint fit-up)に対する接合部の耐性を改善させる。
【0030】
図15A図15Cは、本発明のコンセプトに従って構成されている構造を設けらている別のタイプのレーザを示す。図5図14に示されているロボット30が安川電機(Yaskawa)によって製造される一方、図15A図15Cは、ファナック株式会社(Fanuc)によって製造されるロボット90を示す。しかし、概念上、図15A図15Cの構成は本発明のコンセプトを実施する。詳細には、手首部48の先端部は、その一方の端部にレーザヘッドアセンブリ40、他方の端部に工具交換装置47を支持するハンド20に連結されている。レーザヘッド40は、工具交換装置47から回転に関して独立しており、最終軸6に対して回転に関して固定されているようにハンド20上に取り付けられている。
【0031】
全ての図4図15Cを参照すると、当然、一定の構造的変更が、図示のロボット30および90を含む多種多様なロボットに導入され得る。前段で開示されているように、レーザヘッドアセンブリ40はハンド92の一方の端部に取り付けられている。しかし、レーザヘッドアセンブリ40は、該ハンドに連結されている手首部の先端部の反対側の手首部の近位端に取り付けられてもよい。しかし、そのような変更は追加のビーム誘導光学系を必要とする。
【0032】
本発明の原理を本明細書において説明したが、当業者には、この説明は例として作成されているに過ぎず、本発明の範囲に関する制限として作成されていないことを理解されるべきである。本明細書において示し、説明した例示的実施形態に加えて、他の実施形態が本発明の範囲内で検討される。当業者による変更および置換が、次の特許請求の範囲による場合を除いて制限されるべきでない本発明の範囲内にあると考えられる。
【符号の説明】
【0033】
10 6軸産業用ロボット、ロボット、6軸ロボット、6軸ロボット構造体
12 基部
14、42 第1アーム
16 第2アーム
18、48 第3アーム、手首部
20 第4アーム、ハンド、中空ハンド
22 ガントリシステム
25 EOAT
30 6軸ロボット、ロボット、多軸ロボット、6軸ロボット構造体
40 レーザヘッドアセンブリ
44 第2アーム、下方アーム
47 工具交換装置、工具交換アセンブリ
50 マウント
52 基部、側面基部
54 チャネル
56 u形レール
58 ハウジング、中空ハウジング
60 フランジ付きシャフト、フランジ、中空フランジ付きシャフト、インサート、中空インサート
62、64 緩いケーブル
64 (マウントの)反対側端部
66 指部、(マウントの)端部
68 ビーム、レーザビーム
70 プレート、支持プレート
72 センサ、センサアセンブリ、エンドエフェクタ
74 冷線繰出し機構、線材繰出し機構、線材供給機構、エンドエフェクタ
76 ガス供給機構、エンドエフェクタ
78 ガスノズル、ノズル
80 スタッド溶接アセンブリ、エンドエフェクタ
82 タングステン不活性ガス(TIG)アセンブリ、エンドエフェクタ
90 ロボット、多軸ロボット、6軸ロボット構造体
92 ハンド
A3 第3軸
A4 第4軸、軸
A5
V-V 第5軸
VI-VI 最終軸、第6軸
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
【国際調査報告】