(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ハイドロゲル材料
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20231012BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231012BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231012BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231012BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231012BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231012BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231012BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K3/36
A61K9/06
A61K47/34
A61K9/48
A61K45/00
A61P37/02
A61K39/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519017
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 FI2021050641
(87)【国際公開番号】W WO2022069799
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523106148
【氏名又は名称】スタンダード ミロックス ファーマスーティカルス オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100145849
【氏名又は名称】井澤 眞樹子
(72)【発明者】
【氏名】ミカ ヨキネン
(72)【発明者】
【氏名】アラー カルユキビ
(72)【発明者】
【氏名】アリ ロスリング
(72)【発明者】
【氏名】タトゥ アスムス
(72)【発明者】
【氏名】ベスナ ブラゼヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ベサ ハイトネン
(72)【発明者】
【氏名】オリ ライティネン
(72)【発明者】
【氏名】スヴィ ヘイニマーキ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4J002
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA53
4C076AA95
4C076CC07
4C076DD37
4C076EE27A
4C084AA17
4C084MA28
4C084MA37
4C084NA05
4C084ZB07
4C085AA38
4C085EE06
4C085FF11
4J002CF181
4J002CF182
4J002CH021
4J002CH022
4J002DJ016
4J002DJ017
4J002EX038
4J002FB146
4J002FB147
(57)【要約】
本発明は、下記式(1)を有する官能化トリブロック分子を0.15~21重量%含む第1のハイドロゲルを含むハイドロゲル材料に関し、
【化1】
(1)
ここで、第1のハイドロゲルの総重量を基にしてnは4~680であり、mは1~10である。
第1のハイドロゲルは第1のハイドロゲルの総重量を基にして0.85~3.3重量%のシリカと、第1のハイドロゲルの総重量を基にして75~99重量%の水性液体とを含む。シリカの-Si-OH基は、前記式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)
3-基と-Si-O-Si-結合を形成する。
【選択図】
【
図3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハイドロゲルを含むハイドロゲル材料であって、該第1のハイドロゲルは、
-0.15重量%~21重量%の下記式(1)の構造を有する官能化トリブロック分子と、
【化1】
(1)
ここで、第1のハイドロゲルの総重量を基にしてnは4~680であり、mは1~10である、
- 前記第1のハイドロゲルの総重量を基にして0.85~4.0重量%のシリカと、及び
- 前記第1のハイドロゲルの総重量を基にして75~99重量%の水性液体と、を含み、
前記シリカの-Si-OH基は、前記式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)
3-基と-Si-O-Si-結合を形成する、ハイドロゲル材料。
【請求項2】
前記式(1)の官能化トリブロック分子及びシリカがコロイド粒子を形成し、
前記粒子のネットワークが連続固体相を形成し、その中で水性液体相が均一に分布し、前記固体相及び水性液体相は、単一のハイドロゲルエンティティ中にある請求項1に記載のハイドロゲル材料。
【請求項3】
第2のハイドロゲルをさらに含み、該第2のハイドロゲルは、
- 前記第2のハイドロゲルの総重量を基にして0.15~21重量%の前記式(1)の官能化トリブロック分子と、
- 前記第2のハイドロゲルの総重量を基にして0.85~4.0重量%のシリカと、
- 前記第2のハイドロゲルの総重量を基にして75~99重量%の水性液体とを、含み
ここで、シリカの-Si-OH基は、第2のハイドロゲルの前記式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)
3-基と-Si-O-Si-結合を形成し、及び、
ここで、前記第2のハイドロゲルは、前記第1のハイドロゲル内に分散された均一に分布した粒子の形態であり、第1のハイドロゲルは連続相を形成し、
ただし、前記第2のハイドロゲル中ではシリカ及び前記式(1)を有する官能化トリブロック分子の総量は、前記第1のハイドロゲル中のシリカ及び前記式(1)を有する官能化トリブロック分子の総量よりも多い、請求項1又は2に記載のハイドロゲル材料。
【請求項4】
- 前記式(1)の官能化トリブロック分子及び水性液体の第1の部分は、前記式(1)の官能化トリブロック分子及び水性液体のハイドロゲルを、水性液体の第2の部分の混合によって得られるシリカゾル中に分散した粒子に分解することによって得られる粒子の形態をとり、及び、
- 前記シリカの-Si-OH基は、前記式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)
3-基と-Si-O-Si-結合を形成し、したがってハイドロゲル材料を形成する、請求項1に記載のハイドロゲル材料。
【請求項5】
前記シリカは、アルコキシシラン由来のシリカ、好ましくは、テトラエトキシシラン由来のシリカである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のハイドロゲル材料。
【請求項6】
前記第1のハイドロゲル及び前記第2のハイドロゲルの前記水性液体は、
水、水とエタノールの混合物、及び、生物学的に適合するバッファーの中から独立して選択される請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハイドロゲル材料。
【請求項7】
前記水性液体は、50~95重量%の水を含み、残りがエタノールである水とエタノールの混合物である請求項6に記載のハイドロゲル材料。
【請求項8】
前記第1のハイドロゲル中に、少なくとも1のカプセル化された生物学的活性剤をさらに含む、請求項2、5、6又は7に記載のハイドロゲル材料。
【請求項9】
前記第1のハイドロゲル及び前記第2のハイドロゲルの少なくとも1つの中に、少なくとも1のカプセル化された生物学的活性剤をさらに含む、請求項3、5、6又は7に記載のハイドロゲル材料。
【請求項10】
前記式(1)の官能化トリブロック分子のハイドロゲル中に、少なくとも1のカプセル化された生物学的活性剤をさらに含む、請求項4乃至7のいずれか1項に記載のハイドロゲル材料。
【請求項11】
前記生物学的活性剤が、免疫調節剤及び治療活性剤からなる群から選択される、請求項7乃至10のいずれかに記載のハイドロゲル材料。
【請求項12】
前記請求項1乃至11のいずれか1項に記載のハイドロゲル材料の、生物学的活性剤のコントロールドデリバリのための使用。
【請求項13】
前記請求項1乃至11のいずれか1項に記載のハイドロゲル材料の、生物学的活性剤の保護カプセル化のための使用。
【請求項14】
前記生物学的活性剤は安定性確保のためにカプセル化されている請求項13に記載の使用。
【請求項15】
生物学的活性剤を用いた免疫化においてアジュバント効果を引き起こすための、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のハイドロゲル材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイドロゲル材料に関する。本ハイドロゲル材料は、生物学的活性剤のコントロールドデリバリに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは、通常、連続固体相として、ポリマー鎖又は凝集コロイドのネットワークを含み、分散液体相として水を含む。三次元固体は、親水性ポリマー鎖が架橋によって共にホールドされることに起因するか、又は、コロイド、例えば、凝集によるコロイド粒子から形成される。ハイドロゲルは、液体相が水の、天然又は合成の高分子ネットワークである。それらは、組織工学の足場(スキャフォールド)として、薬物又は細胞のキャリアとして、又は徐放性薬物のドラックデリバリシステムとして使用可能である。
【0003】
本明細書において、以下の用語は以下の意味で使用される。
【0004】
ゾルは、少なくとも1つの液体相と1つの固体相の流動的で均一な混合物、つまりコロイド分散液であり、液体相は、例えば、水、エタノール、前駆体の残留物などであって連続相であり、固体相は、例えば、ここではトリブロック分子、官能化されたトリブロック及びシリカなどであって、コロイド粒子又は高分子の形態であり、前記液体相に均一に分散している。
【0005】
ゲルは、少なくとも1つの固体相と1つの液体相の非流動性の均質な混合物、すなわちコロイド分散液であって、ここで、トリブロック分子、官能化トリブロック、及びシリカなどの固体相は連続固体相を形成し、水、エタノール、固体相前駆体の残留物などの液体は、連続固体相中に均一的に分散されている。
固体相は、典型的には、化学反応により(例えば、重縮合などの重合により)形成されるか、又はナノスケール粒子などのコロイドの凝集により形成される凝集又は架橋分子構造である。
ゲル中では、凝集及び/又は架橋された固体相が、定義された空間全体に連続したネットワークを形成し、液体相が連続固体ネットワーク中に均一に分散されている。
【0006】
ゾル-ゲル転移とは、ゾルがゲルに変化するプロセスを指す用語である。ゾル-ゲル転移は、典型的には、コロイド粒子及び/又は高分子が凝集し、凝集体のサイズが大きくなり、最終的にゾルがゲルに変わる場合に生じ、そこで凝集体は、液体相の相分離のない系の容積全体にわたって連続固体相を形成し、すなわち、液体相は連続固体相に均一に分散したままである。
【0007】
ハイドロゲルは、液体相が水又は50重量%を超える水を含む水ベースであるゲルである。連続ハイドロゲルは、1つの三次元構造におけるハイドロゲルである。分散ハイドロゲルは、連続三次元ハイドロゲルをより小さいハイドロゲル粒子に分解することによって形成されるハイドロゲル粒子のセットであり、典型的な場合、前記ハイドロゲル粒子は別の連続ハイドロゲルと混合される。
【0008】
本発明の文脈において流動混合物とは、材料、例えば固体相及び液体相による粘弾性特性を有するが、流動液体相が固体相より優勢であるゾルを指す。
本発明の文脈において、非流動混合物とは粘弾性材料、例えば、固体相が液体相よりも優勢であるため、静止時に流動特性を持たないハイドロゲルを指す。
流動混合物の場合、粘性特性(レオロジー法によって決定されるG''で示される粘性/損失弾性率)が弾性特性(G'で示される弾性率/貯蔵弾性率)よりも優勢である。
同様に、非流動混合物では、弾性特性(G')が粘性特性(G'')よりも優勢である。
G’及びG''は、小角振動せん断下の線形粘弾性領域内で、例えば、コーンプレート又はプレート-プレート ジオメトリを備えたレオメータを使用した振動測定で測定しうる。
【0009】
本発明の文脈において、ハイブリッド材料は、例えば、トリブロック分子及びシリカ等の2つ以上の成分を含み、成分間に化学結合がある材料である。
さらに、本明細書において、ハイブリッドという用語が使用される場合、それは、ハイドロゲル中で共に固体相を形成する少なくとも2つの成分を含む固体相を指す。
【0010】
Vol-%は体積パーセントを表し、wt-%は重量パーセントを表す。
【0011】
ナノ粒子(典型的には1~100nmのサイズを有する)及びコロイド(典型的には1~1000nmのサイズを有する)は、1~100nmの範囲で重複する値の範囲を有する。しかしながら、それらは、異なる化学的及び物理的性質を有する。ナノ粒子は通常、同じ材料(つまり、まったく同じ化学組成を持つ材料)と比較して、より大きな値で異なる材料特性を有し、例えば、表面特性が異なる可能性があり、それは、疎水性や導電率に関して異なる特性につながる可能性がある。100~1000nmのサイズのコロイドは、重力がブラウン運動よりも未だ弱いため、ナノ粒子の特殊な化学的性質を失い始める。
したがって、ブラウン運動は、ゲル、懸濁液、エマルジョン、泡などのさまざまな分散液を製造する際に大きな影響を与え、安定した分散液を得ることが目的となる。
疎液コロイドは、コロイドが熱力学的に安定していない場合(但し、15年又は100年でさえも安定している可能性がある)のコロイド分散液に使用される用語である。
親液コロイドは熱力学的に安定しているが、ほとんど使用されない。
【0012】
ナノ粒子又は疎液コロイドとは、通常、ある種の分子クラスターが、周囲の液体に実際に溶けないサイズと化学構造に達した状態を指す。
ただし、ナノ粒子又はコロイドはサイズが非常に小さいため、その密度が液体の密度よりも高い場合でも、周囲の液体に均一に分散されたままになる。
これは、ブラウン運動が重力よりも強いためである。したがって、ナノ粒子とコロイドは、液体中を移動すると、互いに衝突し、より大きな構造を形成しうる。例えば、それらは凝集でき、時にはそれらが重合するとさえ言える。
従って、コロイド粒子は、化学結合、及び、より弱い相互作用(ファンデルワールス相互作用など)を介して形成される凝集体であり、一方、本明細書の粒子は、三次元ゲルが機械的に分解されて粒子を形成するときに形成され、従って、その中に凝集されたコロイド粒子を含む。
【0013】
文献「Radiopaque Organic-Inorganic Hybrids Based on Poly(D,L-lactide)”, Mazzocchetti et al., Biomacromolecules 2007, 8, 672-678」は、α,ω-トリエトキシシラン末端ポリ(D、L乳酸)から調製されたハイブリッド有機-無機ナノ複合体を開示しており、医療機器用の潜在的な放射線不透過性生体適合性コーティングとして使用されうる。
複合材の成分及び複合材自体がすべて水溶性というわけではない。さらに、この刊行物においては、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)が系に直接添加される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Radiopaque Organic-Inorganic Hybrids Based on Poly(D,L-lactide)”, Mazzocchetti et al., Biomacromolecules 2007, 8, 672-678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(目的と概要)
生物学的活性剤のコントロールドデリバリに適しており、特に様々な生物学的活性剤の保護カプセル化に有用なハイドロゲルを提供することを目的とする。
特定の目標の1つは、生物学的活性剤の熱安定性を確保するためのカプセル化である。
他の特定の目標は、注射可能でありながら生物学的活性剤をカプセル化できるハイドロゲル材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書は、以下のようなハイドロゲル材料に関する。
第1のハイドロゲルを含むハイドロゲル材料であって、該第1のハイドロゲルは、
-0.15重量%~21重量%の下記式(1)の構造を有する官能化トリブロック分子と、
【化1】
(1)
ここで、第1のハイドロゲルの総重量を基にしてnは4~680であり、mは1~10である、
- 前記第1のハイドロゲルの総重量を基にして0.85~4.0重量%のシリカと、及び
- 前記第1のハイドロゲルの総重量を基にして75~99重量%の水性液体と、を含み、
前記シリカの-Si-OH基は、前記式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)
3-基と-Si-O-Si-結合を形成する、ハイドロゲル材料。
【0017】
本明細書はまた、生物学的活性剤のコントロールドデリバリ及び生物学的活性剤の保護カプセル化のためのハイドロゲル材料の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は官能化されたトリブロック分子の構造を模式的に示す。
【
図2】
図2は、シリカゾル中のシリカナノ粒子凝集体を模式的に示す。
【
図3】
図3は、一実施形態による、シリカと官能化トリブロック分子との間の反応生成物の構造を概略的に示す。
【
図4】
図4は、一実施形態によるハイドロゲル材料の構造を示す。
【
図5A】
図5Aは、別の実施形態によるハイドロゲル材料の構造を示す。
【
図5B】
図5Bは、別の実施形態によるハイドロゲル材料の構造を示す。
【
図6A】
図6Aは、連続ハイブリッド/複合ハイドロゲルR217-02及び2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2A 及び R217-0.2/R40-0.2B)についての、室温(25℃)で保存後4日目及び330日目における、抗原(ノロウイルスP-粒子)の累積放出を示す。
【
図7】
図7は、抗原(ノロウイルスP-粒子)の累積放出及び2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2Cのシリカの溶解を示す。
【
図8】
図8は、抗原(ノロウイルスP-粒子)の累積放出及び2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2Dのシリカの溶解を示す。
【
図9】
図9は、eGFPの累積放出及び100μlのハイドロゲル中の10μgのeGFPと共にある連続ハイブリッド/複合体R217-0.2用のシリカの溶解を示す。
【
図10】
図10は、eGFPの累積放出及び100μlのハイドロゲル中の20μgのeGFPと共にある連続ハイブリッド/複合体R217-0.2用のシリカの溶解を示す。
【
図11】
図11は、ハイドロゲル濃度10μg/100μlのeGFPと共にある連続ハイブリッド/複合体R217-0.2からのeGFPの累積拡散を示す。
【
図12】
図12は、ハイドロゲル濃度20μg/100μlのeGFPと共にある連続ハイブリッド/複合体R217-0.2からのeGFPの累積拡散を示す。
【
図13】
図13は、連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2についての、及び、2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2)についての、室温(25℃)でアルミホイルバッグに入れられたシリンジ中で保管後4日目及び28日目の減衰係数(G''/G')を示す。
【
図14】
図14は、連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2についての、及び、2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2)についての、室温(25℃)で保存後360日目の減衰係数(G''/G')を示す。
【
図15】
図15は、連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2についての、及び、2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2)についての、室温(25℃)で保存後4日目の動的粘度を示す。
【
図16】
図16は、連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2についての、及び、2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2)についての、室温でアルミホイルバッグに封されて保管後1日目の動的粘度を示す。
【
図17A】
図17Aは、動的光散乱(DLS)で測定された、異なる温度での16nm粒子の割合のノロウイルスP粒子の熱安定性を示す。
【
図17B】
図17Bは、50℃と55℃で測定されたP-粒子についての分布容積の違いを示す。
【
図18A】
図18Aは、DLSで決定された表示温度における溶液中に保たれた連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2から放出されたノロウイルスP-粒子の16nm集合体の総体積を示す。
【
図18B】
図18Bは、DLSで決定された表示温度における溶液中に保たれた制御された粒子から放出されたノロウイルスP-粒子の16nm集合体の総体積を示す。
【
図19】
図19は、ハイドロゲルから溶解されたノロウイルスP-粒子のTEM画像を示す。
【
図20A】
図20Aは、10μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の2回投与で、又は、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルを処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgG抗体の動態を示す。
【
図20B】
図20Bは、20μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の1回投与で、又は、2相ハイブリット/複合体#1 R217-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgG抗体の動態を示す。
【
図21A】
図21Aは、10μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の2回投与で、又は、連続ハイブリッド/複合体 R217-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgGの終点滴定を示す。
【
図21B】
図21Bは、20μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の1回投与で、又は、2相ハイブリット/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgGの終点滴定を示す。
【
図22A】
図22Aは、10μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の2回投与で、又は、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgG1の終点滴定を示す。
【
図22B】
図22Bは、20μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の1回投与で、又は、2相ハイブリット/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgG1の終点滴定を示す。
【
図23A】
図23Aは、10μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の2回投与で、又は、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgG2aの終点滴定を示す。
【
図23B】
図23Bは、20μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の1回投与で、又は、2相ハイブリット/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgG2の終点滴定を示す。
【
図24A】
図24Aは、10μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の2回投与で、又は、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgG抗体のアビディティを示す。
【
図24B】
図24Bは、20μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の1回投与で、又は、2相ハイブリット/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける血清IgG抗体のアビディティを示す。
【
図25A】
図25Aは、10μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の2回投与で、又は、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける異種NoV VLPに対する交差反応性血清IgG反応を示す。
【
図25B】
図25Bは、20μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の1回投与で、又は、2相ハイブリット/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける異種NoV VLPに対する交差反応性血清IgG反応を示す。
【
図26A】
図26Aは、10μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の2回投与で、又は、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスの血清抗体によるHBGA受容体へのGII.4 VLP結合の相同遮断を示す。
【
図26B】
図26Bは、20μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の1回投与で、又は、2相ハイブリット/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスの血清抗体によるHBGA受容体へのGII.4 VLP結合の相同遮断を示す。
【
図27A】
図27Aは、10μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の2回投与で、又は、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける糞便IgG抗体の終点滴定を示す。
【
図27B】
図27Bは、20μgのノロウイルスP-粒子(pp)単独の1回投与で、又は、2相ハイブリット/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルで処方されて、免疫付与した後のマウスにおける糞便IgG抗体の終点滴定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書は、以下のような第1のハイドロゲルを含むハイドロゲル材料に関する。該第1のハイドロゲルは、
- 0.15重量%~21重量%の下記式(1)の構造を有する官能化トリブロック分子と、
【化1】
(1)
ここで、第1のハイドロゲルの総重量を基にしてnは4~680であり、mは1~10である、
- 前記第1のハイドロゲルの総重量を基にして0.85~4.0重量%のシリカと、及び
- 前記第1のハイドロゲルの総重量を基にして75~99重量%の水性液体と、を含み、
前記シリカの-Si-OH基は、前記式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)
3-基と-Si-O-Si-結合を形成する。
【0020】
本ハイドロゲル材料は、さまざまな分野でいくつかの有用な特性を持っている。それは生物学的活性剤のコントロールドデリバリに非常に適していることが知られている。本ハイドロゲル材料と共に使用できるいくつかの特に適切な生物学的活性剤は、ワクチン抗原及び医薬品有効成分である。ハイドロゲル材料は、その投与を容易にする注射可能な形態にすることもできる。
従って、ハイドロゲル材料のレオロジー特性を広範囲に調整することができ、その注入性の調整が可能になりうる。注射可能とは、例えば、25~27G針、又は23~30G針、最も典型的には25~30G針などの細い針を通して注射できる生成物を意味する。
本ハイドロゲルは、その中の水性液体の量に関係なく、静止時、例えば貯蔵時には、非流動性である。しかしながら、水性液体の量が十分に多い場合、例えば96~99重量%の場合、例えば注射器のピストンによって圧力が加えられると、ハイドロゲルは針の中を流れて注入可能になる。従って、そのようなハイドロゲルはシアシニングとなる。
【0021】
本材料及びそのすべての成分は水溶性である。本ハイドロゲル中の液体は水性であり、これは特に免疫調節剤及び治療活性剤の投与にとって重要である。実際、そのような使用では、最終生成物(the end product)の製造中だけでなく、完成生成物(the final product)においても薬剤の生物学的活性が保持されることが必要である。
さらに、体内での薬剤のデリバリ中、薬剤の放出は、ハイドロゲル材料の生物学的分解によって主に制御される。この生物学的分解は、主に組織液の水相への溶解によって生じる。本ハイドロゲルのすべての成分は、組織液の水相に溶解する。ポリマーは酵素反応によっても分解し、酵素は水相でも活性である。
特に興味深い利点は、本ハイドロゲル材料内に生物学的活性剤をカプセル化することにより、貯蔵時間及び温度の機能として、それらの熱安定性が保証され、すなわち、それらの生物学的活性が長期間維持されうることである。
ハイドロゲル材料は、投与されると生物学的活性剤の一定の放出速度を可能にもする。
【0022】
官能化されたトリブロック分子は、ハイブリッド、オリゴマー、又はポリマーと呼ばれることもある。それは、シリカでエンドキャップされている。
シリカの-Si-OH基と、式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)3-基との間の-Si-O-Si-結合は化学結合である。
本明細書では、材料の一部はハイブリッドであり、他の材料は複合体の形態であるため、材料は一般にハイブリッド/複合体とも言われる。
【0023】
ハイドロゲル材料は、1つの連続ハイドロゲルであるか、又は連続ハイドロゲル内に均一に分散された分散ハイドロゲル粒子から構成され得る。
【0024】
上記式(1)において、nは4~680であり、及び、mは1~10である。
nの値は(mの値によるが)、例えば、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、120、135、150、200、225、270、300、350、400、450、500、550又は600から、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、120、135、150、200、225、270、300、350、400、450、500、550、600又は680まで、である。
mの値は(nの値によるが)、例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8から2、3、4、5、6、7、8、9又は10まで、である。
【0025】
したがって、本ハイドロゲル材料は、以下の表1に要約される様々な形態を有する。本明細書では、表1に示す型名を使用する。
【0026】
さまざまな種類のハイドロゲル材料について、以下に詳細を説明する。
【0027】
【0028】
一実施形態によれば、式(1)の官能化トリブロック分子及びシリカはコロイド粒子を形成し、前記粒子のネットワークは連続固体相を形成し、その中に水性液体相が均一に分布し、前記固体相及び水性液体相は、単一のハイドロゲルエンティティ中にある。これは、表1の連続ハイブリッド/複合体である。
【0029】
この実施形態では、従って、ハイドロゲルは、固体粒子凝集体(コロイド粒子から形成されたコロイド凝集体)と水性液体との均一な混合物である。シリカは、少なくとも部分的にコロイド粒子及びコロイド凝集体の形態であり、トリブロック分子と化学結合を形成し、ハイブリッド材料を作る。コロイダルシリカ粒子は、分子の球状クラスターから形成され、その表面の原子は、トリブロック分子だけでなく他のコロイダルシリカ粒子を含む、材料内の他の化合物と化学結合を形成しうる。
【0030】
官能化トリブロック分子とシリカはどちらもナノスケールの構造である。官能化トリブロック分子は、水性液体に、可溶性な分子、又は部分的に可溶性であり、シリカはナノ粒子の形態をとる。
ハイブリッド/複合体は、シリカのSi-OH-基が官能化トリブロック分子の末端においてSi-O-基と-Si-O-Si-結合を形成する場合に形成される。1つの官能化トリブロック分子は、これらの結合を使用して別の官能化トリブロック分子と、ネットワークを従って形成しながら連結することもできる。
典型的には、各-Si-(O)3-基は、0~3個の官能化トリブロック分子又は0~3個のシリカ分子に結合してもよい。
【0031】
さらに、シリカナノ粒子は、互いに結合(又は、凝集(aggregate)或いは弱い相互作用による集塊(agglomerate))することもできる。
シリカナノ粒子はまた、より大きな凝集体を形成することもあるが、ナノ粒子の少なくとも一部は、少なくとも1つの官能化トリブロック分子に結合している。
【0032】
これらのハイドロゲル材料中のシリカは、コロイド又はナノ粒子又は凝集したナノ粒子(コロイドでもある)の形態をとる。シリカの4つの酸素は、別の分子、たとえば別のシリコンに結合する。シリカは環状構造を形成する傾向があり、環状(つまり球状)のシリカ分子は非常に急速に成長して、周囲の液体に溶けなくなるほどの大きさになるため、ナノ粒子又はコロイドと呼ぶことができる。
確かに、それは周囲の液体の中で独自の固体相を形成するが、液体中で安定した状態を維持するには、及び、可溶性分子と同じようにブラウン運動によって動き回るには、あまりにも小さい。
粒子の表面には多数の遊離Si-OH-基があり、官能化トリブロック分子と反応して化学結合を形成し、ハイブリッド/複合体を形成する。
【0033】
この最初のタイプの材料では、ナノ構造、つまり官能化トリブロック分子とシリカナノ粒子が凝集(又は重合)し、凝集が十分に進行すると、水性液体と非流動性のハイドロゲルを形成する。
ハイドロゲル材料が別の分子を封入するために使用される場合、この分子は非流動性ハイドロゲルが形成される前に混合物に加えられる。
【0034】
他の実施形態によれば、ハイドロゲル材料は、以下のような第2のハイドロゲルをさらに含む。該第2のハイドロゲルは、
- 前記第2のハイドロゲルの総重量を基にして0.15~0.8重量%の前記式(1)の官能化トリブロック分子と、
- 前記第2のハイドロゲルの総重量を基にして0.85~3.3重量%のシリカと、及び、
- 前記第2のハイドロゲルの総重量を基にして75~99重量%の水性液体とを、含み
ここで、シリカの-Si-OH基は、第2のハイドロゲルの前記式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)3-基と-Si-O-Si-結合を形成し、及び、
ここで、前記第2のハイドロゲルは、前記第1のハイドロゲル内に分散された均一な分散粒子の形態であり、第1のハイドロゲルは連続相を形成し、
ただし、前記第2のハイドロゲル中ではシリカ及び前記式(1)を有する官能化トリブロック分子の総量は、前記第1のハイドロゲル中のシリカ及び前記式(1)を有する官能化トリブロック分子の総量よりも多い。
【0035】
このハイドロゲル材料は、表1の2相ハイブリッド/複合体#1である。
このハイドロゲル材料は、従って、同じ成分からなるが、異なる量で構成される2つの異なるハイドロゲルを有する。
最初のハイドロゲルは、ハイブリッド/複合体#1の連続相を形成する。
第2のハイドロゲルは、まず非流動性ハイドロゲルを形成し、その後、第2のハイドロゲルの物理的構造が機械的に破壊されて粒子を形成する。次いで、これらの粒子は、第1のハイドロゲルがまだ流動可能である間に、第1のハイドロゲルの連続相に混合される。通常、第2のハイドロゲル(すなわち分散相)は、第1のハイドロゲルよりも少ない水性液体を含む。
【0036】
一実施形態によれば、シリカ及び式(1)を有する官能化トリブロック分子の総量は、第1のハイドロゲルにおけるシリカ及び式(1)を有する官能化トリブロック分子の総量よりも、第2のハイドロゲルにおいて少なくとも20%多い。
【0037】
生物学的活性剤又はその類似物がこのハイブリッド/複合体#1内にカプセル化される場合、まだ流動可能な第2のハイドロゲル、又はまだ流動可能な第1のハイドロゲルのどちらかと、又はその両方と混合される。
より遅いデリバリが目的である場合、薬剤は、完成生成物において粒子である第2のハイドロゲルと混合される。
従って、このハイドロゲル材料は、ハイドロゲル材料の成分内の位置に応じて、2つの異なる速度で薬剤をデリバリできる可能性があるため、2つの異なる放出プロファイルを目的としている場合に特に適している。
【0038】
他の実施形態によれば、ハイドロゲルにおいて、
- 式(1)の官能化トリブロック分子及び水性液体の第1の部分は、
式(1)の官能化トリブロック分子及び水性液体のハイドロゲルを、粒子へ分解することによって得られる粒子の形態であって、
水性液体の第2の部分を混合することによって得られるシリカゾル内に分散され、及び、
- シリカの-Si-OH基は、式(1)の官能化トリブロック分子の-Si-(O)3-基と-Si-O-Si-結合を形成し、従ってハイドロゲル材料を形成する。
【0039】
このハイドロゲル材料は、表1の2相ハイブリッド/複合体#2である。ハイドロゲル材料は、上記のハイドロゲル材料と同じ化学成分を有するが、2つの異なる部分を有する。
この実施形態において、連続相は、シリカ及び水性液体によって形成され、分散相は、官能化トリブロック分子を水性液体と最初に混合することによって形成され、それは、非流動性ハイドロゲルを形成することを可能とし、及び得られたハイドロゲルは機械的に粒子に分解される。
これらの粒子は連続相に混合され、結果としてハイドロゲル材料が得られる。
生物学的活性剤又は類似物をハイドロゲルに添加する場合、官能化トリブロック分子と水性液体との混合物がまだ流動可能な状態で薬剤を添加することによって添加が行われる。
シリカゲルが連続相を形成するため、このタイプのハイブリッド/複合体#2は注射可能に形成されうる。
【0040】
この実施形態では、最終のハイドロゲル材料は、第1のハイドロゲルと同じ方法で形成され、すなわち、化学反応はコロイドをもたらし、コロイドは凝集し、化学結合は第1のハイドロゲルと最終ハイドロゲル材料において同じタイプである。
【0041】
第1及び第2のハイドロゲルにおいて、成分は同じ、すなわち、式(1)の官能化トリブロック分子、シリカ及び水性液体である。
以下に示す量は、必要な変更を加えて、第1のハイドロゲル及び第2のハイドロゲルに適用される。
【0042】
式(1)の官能化トリブロック分子の量は、ハイドロゲルの総重量に基づいて、0.15~21.0重量%である。
従って、式(1)の官能化トリブロック分子の量は、例えば、ハイドロゲルの総重量に基づいて、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、15.0、18.5、又は19.5重量%、から、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、15.0、18.0、19.5又は21.0重量%まで、を取りうる。
【0043】
シリカの量は、ハイドロゲルの総重量に基づいて、0.85~4.0重量%である。
従って、シリカの量は、例えば、ハイドロゲル総重量に基づいて、0.85,1.0,1.2,1.5,1.8,2.0,2.2,2.5,2.7,2.9,3.0,3.1,3.2,3.3.,3.4,3.5,3.6又は3.7重量%、から、1.0、1.5、1.8、2.0、2.2、2.5、2.7、2.9、3.0、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9又は4.0重量%までを取りうる。
【0044】
水性液体の量は、ハイドロゲルの総重量に基づいて、75~99重量%である。従って、水性液体の量は、例えば、ハイドロゲル総重量に基づいて、75、78、80、82、85、88、90、92又は95重量%から80、82、85、88、90、92、94、94、95、96、97、98又は99重量%までを取りうる。
【0045】
本実施形態では、ハイドロゲルの一つは粒子の形態をとり、第2のハイドロゲル又は第1のハイドロゲルの粒子サイズは1mm未満である。実際に最も典型的な粒子径は、例えば、25~27Gの針を通過するような材料の流動性を維持するために、数十マイクロメートルである。好ましくは、粒子サイズは0.3mm未満である。
粒子サイズは、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、150、200、250、300、350、300、350、500、550、600、650、700、750、800又は850μmから、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、150、200、250、300、350、300、350、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950又は1000μm、までを取りうる。
【0046】
本ハイドロゲル材料において、シリカは、好ましくはアルコキシシラン由来シリカ、より好ましくはテトラエトキシシラン由来シリカである。
【0047】
第1のハイドロゲル及び第2のハイドロゲルの水性液体は、好ましくは、水、水とエタノールの混合物、及び生物学的に適合するバッファーから独立して選択される。
そのような生物学的に適合するバッファーの例は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、及びそれらの混合物である。
【0048】
好ましい実施形態によれば、水性液体は、50~95重量%の水を含み、残りがエタノールである、水とエタノールの混合物である。
従って、混合物は、例えば60重量%から93重量%までの水を含み、残りはエタノールであってもよい。
従って、水の量は、水性液体の総重量の50、55、60、65、70、75、80又は85重量%、から、60、65、70、75、80、85、90又は95重量%まで、を取りうる。水性液体は水のみであってもよい。
【0049】
本ハイドロゲル材料は、その中にカプセル化された少なくとも1つの生物学的活性剤をさらに含み得る。
生物学的活性剤は、その構造及びハイドロゲル材料の使用目的に応じて、ハイドロゲルの異なる部分にカプセル化することができる。
実際、生物学的活性剤は、第1のハイドロゲル内、第1のハイドロゲル及び第2のハイドロゲルの少なくとも1つ内、及び/又は式(1)の官能化トリブロック分子のゲル内にカプセル化され得る。
【0050】
一実施形態によれば、生物学的活性剤は、免疫調節剤及び治療活性剤からなる群から選択される。
【0051】
生物学的活性剤のカプセル化は、デリバリ(例えば、経口又は非経口デリバリ)、投与、脱感作又は生物学的活性剤の保護(例えば、熱に対する)などの様々な用途のためであり得る。
【0052】
従って、生物学的活性剤は、例えば、ワクチン及びアレルギーに対する減感作剤などの免疫調節剤であり得る。いくつかの例は、抗原、ウイルス、特定の抗原、及びウイルス様粒子(VLP)である。
薬物とも呼ばれる治療活性剤のいくつかの例としては、ペプチド、タンパク質、生物学的薬物、バイオ医薬品、バイオシミラー薬物、バイオベター薬物、核酸ベースの薬物、細胞及びウイルスベクターなど、さまざまなサイズの薬物分子である。
ワクチンでは、抗原が本ハイドロゲル材料にカプセル化されている場合、追加のアジュバント(ワクチンで通常使用されるような)なしで抗原を投与できることがin vivo試験で観察されている。
【0053】
本明細書はまた、生物学的活性剤のコントロールドデリバリのための、上記で説明したハイドロゲル材料の使用に関する。
また、生物学的活性剤の保護的カプセル化のためのそのようなハイドロゲル材料の使用にも関する。
保護的なカプセル化は、例えば、生物学的活性剤の安定性を確保するため、及び/又は制御的な放出までの保護のためであり得る。
【0054】
1つの特定の実施形態では、保護的なカプセル化は、生物学的活性剤の熱安定性を確保するためのものである。
熱安定性とは、生物学的活性剤を含む生成物が典型的な冷蔵保存温度(4~8℃)を超える温度にさらされた場合に、生物学的活性剤がいかなる形でも破壊、変性又は変化しないことをカプセル化が保証することを意味する。
それはまた、周囲温度(20~25℃)又は高温(>25℃、例えば35~50℃)での長期又は短期保存中に生物学的活性剤を保護することもできうる。
【0055】
さらに、本ハイドロゲルは、生物学的活性剤を使用する免疫においてアジュバント効果を引き起こすために使用することができ、これは、抗原とともにデリバリされるハイドロゲルが、抗原単独の投与と比較して増強された免疫反応を引き起こすことを意味する。
【0056】
本ハイドロゲル材料は、様々な方法で製造することができる。
官能化トリブロック分子を製造するための1つの可能な方法は、以下のステップを含む。
- L-ラクチドと分子量200~30000g/molのポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールのL-ラクチドに対するモル比2:1~20:1で第1触媒の存在下で反応させて、トリブロック分子を得て、
- 得られたトリブロック分子を第2の触媒の存在下、イソシアネートプロピルトリエトキシシランと、トリブロック分子のイソシアネートプロピルトリエトキシシランに対するモル比1:2で反応させて、官能化トリブロック分子を得る。
【0057】
第2のハイドロゲルは、同じ成分を有するが相対量が異なる第2のハイドロゲルを得るために、使用量が異なることを除いて、上記の第1のハイドロゲルと同じ方法で調製される。
どちらの場合も、目的は、ポリエチレングリコール分子の両末端基に等しい数のL-ラクチド基を有するようにすることであり、従って、モル比は上記の範囲内の任意の偶数になる。
【0058】
シリカゾルは、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)をpH2、撹拌下で加水分解することによって調製することができる。水対TEOSのモル比(R)は、例えば98(R98)とすることができる。加水分解後、シリカゾルを室温で、例えば115分間熟成させ、その後、0.1M NaOHを使用してpHをpH7.2~7.4に調整する。
【0059】
TEOSは、反応中に部分的にエタノールに変換される。水の量がTEOSと比較して過剰な場合(たとえば、R200~R400)、得られるハイドロゲル材料はより流動的であり、通常は細い針を使用して注入できる。
尚、得られたシリカゾルにはTEOSは含まれていない。
【0060】
単相ハイドロゲル材料は、官能化トリブロック分子を水溶液に溶解し、この混合物をシリカゾルに添加することによって調製することができる。その後、混合物を熟成させてハイドロゲル材料を形成する。
【0061】
2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル材料#1(上記の表1で説明した)は、細い針を通して注入することによってせん断力を導入することにより、第2のハイドロゲル材料をゲル粒子に分散させて調製することができる。
【0062】
2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル材料#2を調製するために、官能化トリブロック分子を含むハイドロゲル材料を非流動ハイドロゲルに形成し、次いでこのハイドロゲルを粒子に分解する。この粒子は、混合しながら作りたてのシリカゾルに添加される。
【0063】
ハイドロゲルを粒子にするための他の選択は以下を含む。
- ゲルをプレスする等してゲルに圧力をかける;これにより、ペースト状の生成物が得られる。
- ゲルに横方向のせん断力を加える;これにより、ペースト状の生成物又は液体生成物が得られる。
- ゲルを混合し、これは本質的に、横方向のせん断力を加えるのと似ている;低い回転速度を使用するとペースト状の生成物になり、高い回転速度を使用すると流動性ゲルが得られる。
- ボルテックスを用いて攪拌する等してゲルに振動を加える;元の均質なゲルが小さな断片に分解され、形成された断片はペースト状になる。
- Turraxミキシングを使用して高速分解を行う;ゲルは小さな成分に分解されるが、成分が受容器の壁と接触すると、ゲルはペースト状に戻る。
- 鋭利な道具でゲルを切る;ペースト状のゲルはほとんど形成されず、体積が増加し、材料には静電気が帯電する。
- ゲルの細断;ペースト状のゲルは形成されず、体積が増加し、材料には静電気が帯電する。
- ゲルをふるいに押しとおすことによってゲルを粉砕する(ゲルは、例えば3日以上、十分に熟成させる必要がある);これにより、多孔質でふわふわしたゲルになり、体積が4倍に増加し、材料には静電気が帯電する。
- 例えば、乳鉢と乳棒、又はボールミル又は他のタイプのミルによる、ゲルへの機械的粉砕の適用。
【0064】
[図面の詳細な説明]
図1~5Aは、様々な中間生成物及び最終ハイドロゲル材料の構造を模式的に示す。ナノスケールでの正確な三次元構造は正確に知られていないため、それらはスケール上又は構造の正確な複製であると解釈されるべきではない。
【0065】
図1は、官能化トリブロック分子の構造を模式的に示す。この図において、LA1はラクチドを表し、PEGはポリエチレングリコールを表す。この図では、Rはプロピルである。
【0066】
図2は、シリカゾル中のシリカナノ粒子凝集体を模式的に示す。シリカゾルは、さまざまな構造1、つまりシリカ粒子でできた凝集体を含み、そのうちの1つが拡大
図2として示されている。
【0067】
図3は、一実施形態による、シリカと官能化トリブロック分子との間の反応生成物の構造を概略的に示す。
図2中のシリカ粒子は、官能化トリブロック分子の末端に結合していることが示されている。参照番号3で示される概略図は、生成物の様々な部分の相対的なサイズを示す。
【0068】
図4は、一実施形態によるハイドロゲル材料の構造を示す。ハイドロゲル材料はネットワーク構造を形成することが示される。
【0069】
図5Aは、別の実施形態によるハイドロゲル材料、すなわち上記2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1の構造を示す。
拡大
図4は、ハイドロゲル#1のサブ構造を示す。
図5Bは、さらに別の実施形態によるハイドロゲル材料、すなわち上記2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2の構造を示し、拡大
図5はハイドロゲル#2の部分構造を示す。
【0070】
図6~
図27Bは、実施例の部分でより詳細に議論される実験の結果を示す。
【実施例】
【0071】
材料及び方法
ハイドロゲルの調整
上記の表1で示したような、3つの異なるタイプのハイドロゲル材料を調製した。
【0072】
ハイドロゲル材料の調製は、いくつかのステップで構成される。最初のステップは、最初にリンカー分子を調製し、続いて一次トリブロックを調製し、及び、イソシアネートプロピルトリエトキシシランでトリブロックシリカを官能化することによる官能化トリブロック分子の調製である。
この官能化トリブロック分子は、式(1)及び
図1に示すとおりである。
【0073】
一方、シリカゾルは、
図2に示すような、シリカゾルの調製剤である(
図4を参照)。
その後、シリカゾルと官能化トリブロックから
図3に示すようなハイブリッド/複合体を調製し、ハイブリッド/複合体ハイドロゲルを形成させる。(
図4に示す)。
【0074】
2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1及び#2は、
図5A及び5Bに示すように、他のハイドロゲルを粒子に分散させた後、分散したハイドロゲル粒子を連続相として機能する別のハイドロゲルに混合することによって調製された。
【0075】
(連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルの調製と、ノロウイルスP-粒子/タンパク質埋め込み)
トリブロックの形成は、L-ラクチド(Sigma Aldrich)から、2-エチルヘキサン酸スズ(II)によって触媒されるポリエチレングリコール(PEG, Sigma Aldrich)、(イニシエーターとしても機能する)への開環重合(ROP)様反応を実行してリンカー分子(PEGの両末端がL-ラクチドでエンドキャップされている)を調製することによって開始された。
操作は、N2の不活性雰囲気のシュレンク ライン システム内で無溶剤のバルク重合として行われた。
中間ブロック(ポリエチレングリコール、PEG、200g/mol)の必要量は、モル比2:1(PLA:PEG)に従って計算された。
PEGを添加し、その後穏やかに攪拌しながら温度を160℃に上げた。
内容物が溶けるまで混合物を加熱した。モル比0.05(触媒:PEG)のスズ(II)2-エチルヘキサノエート(Sigma Aldrich)を溶融物にピペットで入れ、容器を密封した。
反応を160℃で90分間進行させた。反応後、生成物を周囲温度まで冷却した。
生成物は、クロロホルムとヘキサンの2溶媒系(Sigma Aldrich)で精製された。
ヘキサンの上澄みをデカントし、クロロホルムを2段階で蒸発させた。
まず、クロロホルムをロータリーエバポレーター(IKA RV10)で真空度450mbar、40℃で15分間蒸発させた。2番目のステップでは、最後の微量の溶媒を真空ポンプで蒸発させた。
得られたトリブロックを水浴で+60℃に加温し、圧力を拡散ポンプ(Vacuubrand RZ 2.5)でp<0.1mbarに下げた。
蒸発する物質は、液体窒素N2に浸した溶媒トラップに捕捉された。この手順は、溶融物上に気泡が形成されなくなるまで続けられた。
【0076】
次いで、調製したトリブロックをイソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTS、Sigma Aldrich)と反応させて、官能化トリブロック分子を生成した。これは、トリブロック、IPTS、及びジブチル錫ジラウレート(触媒、Alfa Aesar)をテトラハイドロフラン(THF、Sigma Aldrich)にモル比1:2:0.05で溶解することによって行った。
上記トリブロック調製ステップで説明したように、シュレンク ライン システムを使用して、混合物を不活性雰囲気下で60℃に加熱した。反応は1時間進行させた。
ロータリーエバポレーター(IKA RV10)を使用して、357mbarの真空で40℃、10分間、THFを蒸発させ。次に、得られた官能化トリブロック分子を、ヘキサンとクロロホルムの2溶媒系に溶解した。官能化トリブロック分子のさらなる精製ステップは、トリブロック調製セクションで上記したとおり、正確に実行された。
【0077】
次に、ハイブリッド/複合体ハイドロゲルの調製プロセスにおけるその他のステップの典型的な例を説明する。
ポリマーの分子量(すなわち、ポリエチレングリコールの分子量)及びP-粒子、官能化トリブロック分子、水、及びシリカの量は変え、調製プロセスは、混合、エイジング及びゲル化時間だけわずかに変えた以外は同じにして、いくつかの異なる配合物を調製した。
【0078】
官能化されたトリブロック分子の合成後の次のステップは、シリカゾルの調製であった。オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、Sigma Aldrich)はシリカ前駆体として使用された。TEOSは、pH2(0.1M HCl、Merck Titripurを使用して調整)で攪拌されながら加水分解された。水対TEOSのモル比(R)は98(R98)であった。加水分解後、シリカゾルを室温で115分間熟成させ、その後0.1M NaOH(Merck Titripur)を使用してpHをpH7.2~7.4に調整した。得られたシリカゾルは滅菌された0.45μmPES膜シリンジフィルターで濾過された。
【0079】
200mgの官能化トリブロック分子(PEG 200g/molを含む)を、濃度200マイクログラム/ml(200ppm)のノロウイルスP-粒子を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma Aldrich)50mlに溶解した。
次いで、この混合物を50mlのR98シリカゾル(pH7.2~7.4で約3分間熟成)に添加して、得られたゾル中のP-粒子濃度を100ppmとした。
ゾル(総量約100ml)が非流動ゲルに変化する前(ゲル化時間は処方の詳細に応じて変化する)、2~5分以内にゾル(1ml)を注射器に移した。
水溶液(水とエタノール)の蒸発は、容器をプラスチックフィルムで覆うことによって、調製及びpH調整の段階で最小限に抑えられた。
得られた水対TEOS比(R)は217(R217)であり、最終ハイドロゲル材料中のシリカの1.5重量%に相当する。官能化トリブロック分子の最終濃度は0.2重量%であり、P-粒子濃度は100ppm、すなわち最終ハイドロゲル材料1ml中0.1mgであった。
上記の例では、ハイドロゲル材料の最終コードはR217-0.2であり、最終材料のシリカと官能化トリブロック分子の両方の含有量を示す。R217-0.2ハイドロゲルの組成を表2に詳しく示す。
【0080】
【0081】
実際のハイドロゲルは、官能化トリブロック分子、シリカ、水、及びエタノールで構成され、抗原がカプセル化されていた。それに加えて、ハイドロゲルは、構造内にカプセル化された残留物、すなわちNaClを含む場合がある。
異なる成分濃度に対応する異なるハイドロゲル材料を調整した(R217-0.15、R328-0.2、R328-0.4、R328-0.8、R40-0.2)。
より高いモル質量のPEG(2000g/mol及び6000g/mol)も、R217の連続ハイブリッド/複合体についてテストされたが、しかし、それらの注入特性は最適ではなかったため、ハイブリッド/複合体に関するより広範な研究は、トリブロック中の200g/molのPEGのみで実施された。
ただし、そのような材料(すなわち、モル質量が高いPEG)は、それらの特性がそれ以外の点では、以下のように調整及びテストされたものと類似しているため、非注射用途のデリバリの目的には有用である。
【0082】
(2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲルの調製及びノロウイルスP-粒子/タンパク質埋め込み)
上記の官能化トリブロック分子は、2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1及び#2(上記の表1に記載)の一部である。
2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1では、分散したハイドロゲルの断片は連続相と同じ固体相で構成されているが、水の量は異なる。
2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2では、連続ハイドロゲルは無機シリカゲルであり、分散成分は有機ハイドロゲルである。2相ハイドロゲルの一般的な構造を
図5A及び5Bに示す。
実際のハイドロゲルは、官能化トリブロック分子、シリカ、水、及びエタノールで構成され、抗原がカプセル化されている。それに加えて、ハイドロロゲルは、構造内にカプセル化された残留物、すなわちNaClを含む場合がある。
【0083】
2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(表3)では、両方の成分が同じタイプであり、アルコキシシラン-官能化トリブロック分子-シリカ ハイブリッド/複合体(有機-無機ハイブリッド/複合体)を含み、唯一の違いはハイドロゲルで使用される水の量である。
水対TEOSのモル比(R40、R217及びR328)と官能化トリブロック分子含有量(R217には0.15及び0.2重量%、R328には0.2、0.4及び0.8重量%及びR40には0.2重量%)を有する異なる2相ハイドロゲルが調整されたが、R217-0.2/R40-0.2が、優れたレオロジー特性と注入性によって、より厳密な特性評価のために選択された。
前者の成分(ここではR217-0.2)は連続ハイドロゲル相を示し、後者の成分(ここではR40-0.2)は連続ハイドロゲル相に分散されたハイドロゲルである。
ノロウイルスP-粒子は、分散ハイドロゲルのみに、又は分散ハイドロゲルと連続ハイドロゲルの両方に、上記の対応する方法で埋め込まれた。
加えて、単量体緑色蛍光タンパク質(eGFP)は、R217-0.2の別のカプセル化剤として使用された。
分散ハイドロゲルR40-0.2は、この系に最初に非流動性ゲルを形成させる(P-粒子の効果的な埋め込みを保証する)ことによって調製された。
ハイドロゲル形成直後、非流動性のR40-02は、細い針(18G)の注入によりせん断力を導入することによって、ゲル粒子に分散された。
水性液体(水及びエタノール)が系から蒸発するのを避けるために、この工程は急速に(1~2分以内に)行われた。
連続ハイドロゲルの主な機能は、注入マトリックスとして機能することであり、つまり、2相の系に細い針への注入に適したレオロジー特性を提供するが、例えば2相放出のような、異なる放出率を達成するための制御放出系の一部としても使用できる。
【0084】
表3は、カプセル化された抗原及び残留物を含む2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2)の組成を示す(A:質量比25:75のR217とR40の両方中の抗原、及び、B:R40のみの中の抗原)。
【0085】
【0086】
2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2では、連続成分はシリカハイドロゲルであり、分散成分はアルコシキシラン-官能化トリブロック分子と水から構成されるハイドロゲルであった。シリカ、シロキサン官能化トリブロック分子、及び水の重量比が異なる4つの異なるハイドロゲル配合物を調製した(表4)。
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、Sigma Aldrich)をシリカ前駆体として使用した。TEOSは、撹拌下、pH2(0.1M HClを使用して調整)で加水分解された。
水対TEOSのモル比(R)は、各配合について220(R220)であった。シリカ、官能化トリブロック分子及び水との均一な系を確立するために、追加のエタノールを水溶液中に使用した(TEOSからのシリカゾルの形成は、副生成物であるエタノールの形成をもたらす)。
得られたシリカのpHを(0.1M NaOHを使用して)pH5~6に調整した後、シロキサン官能化トリブロック分子及び水を含む有機ハイドロゲル部を添加した。
分散有機ハイドロゲルの調製は、この系に最初に非流動ハイドロゲルを形成させる(P-粒子の効果的な埋め込みを保証する)ことによって開始された。ハイドロゲル形成後、ハイドロゲルをハイドロゲル粒子に粉砕することにより、構造を粒子に分散させた。
水の分離を避けるために、分散した有機ハイドロゲル粒子の新しく作製したシリカゾルへの添加を1~2分ですばやく行い、系全体をUltra-Turrax T25(ステーターS25N-18G付き)を使用して均質化した。
有機ハイドロゲルを分散させる方法は、2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1の場合とは異なるが、これは、2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2の固形分の相違する量がより多いためである。
シリカゲルと有機ハイドロゲルの粒子の混合物は、約30分で非流動ハイドロゲルに変わり、有機ハイドロゲル部の沈降を避けるために、ハイドロゲル形成に先だって混合が行われる。
【0087】
表4は、カプセル化された抗原と残留物を含む2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2のさまざまな組成を示す。
【0088】
【0089】
ノロウイルスP-粒子は、上記のように2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2に埋め込まれたが(つまり、P-粒子溶液は、ハイドロゲル形成に先立ち流動する液体のような構造をまだ持っている間に系に追加された)、この場合においては、分散されたのは有機ハイドロゲルの中のみである。必要に応じて、ここでもP-粒子又は他の生物学的活性剤を、分散及び連続ハイドロゲルの両方の中に埋め込むことができる。
【0090】
(eGFPの産生と特性)
単量体緑色蛍光タンパク質(eGFP)は、産生生物として遺伝子組み換え大腸菌(単量体緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を大腸菌に形質転換した)を使用して産生された。タンパク質は、分子生物学の標準的な方法を使用して精製された。
【0091】
ハイドロゲル中へのeGFPの埋め込みは、以下のような手順が使用された。実験では2017年製、-20℃で保管されたタンパク質ストックが使用された。
上記の実験の前に、タンパク質含有量をμBCA(マイクロBCAタンパク質アッセイキット、マイクロプレート手順、Thermo ScientificTM)で測定した。濃度は2.2mg/mlであった。eGFPのモル質量は、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)で約40kDaであると決定された。
【0092】
溶解実験
(P粒子とeGFPの放出とハイブリッド/複合体ハイドロゲルの生分解)
溶解実験、すなわちP-粒子の放出とハイブリッド/複合体ハイドロゲル(R217-0.2及びR217-0.2-R40-0.2)の溶解は、PBS中又は約pH7.4に緩衝化されたトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)中のいずれかで37℃の振とう浴中で行われた。
P-粒子の放出にはPBSが使用され、無機有機ハイブリッド/複合体の溶解にはTRISが使用された。
溶解実験は、実際にはハイブリッド/複合体ハイドロゲルの無機部分(非晶質シリカ)のシンク条件を意味するシンク条件(溶解生成物による溶解速度を妨げることなく自由な溶解を確実にするための)で実施された。
溶解媒体は、すべてのサンプリング時点で定期的にリフレッシュされ、シンク内の状態が維持された(溶解した非晶質シリカの濃度が30ppm未満)。各時点で3つの複製が収集された。
【0093】
P-粒子とeGFPの放出は、分光光度計(Hidex Sense Microplate Reader)による562nmでの比色検出用のマイクロBCAタンパク質アッセイキット(Microplate Procedure、Thermo ScientificTM)で総タンパク質分析法により分析した。
ハイブリッド/複合体ハイドロゲル(連続ハイブリッド/複合体及び2相ハイブリッド/複合体#1)の溶解速度は、GF-AAS(Shimadzu 6650F、GFA-EX7)によるシリカの溶解を時間の関数として測定することによって推定され、それは、ハイブリッド/複合体ハイドロゲルの総固形分3.5%(2相ハイブリッド/複合ハイドロゲル #2-Dの)-82.5%(2相ハイブリッド/複合ハイドロゲル #1-Bの)に相当する。
分析に先立ち、P-粒子を含む液体サンプルを濃縮した。溶解測定が(シリカに関する)シンク条件で実施され、その結果非常に希釈されたサンプルが得られたため、濃縮が実行された(及び、放出における生分解及び拡散関連成分の両方を考慮に入れて放出の実際のメカニズムを見つけるために、また異なる材料バージョン間の実際の違いを観察するために、シンク条件が使用された。)。
シリカの沈下限界は約30ppmであったため、カプセル化された物質の最大濃度は、充填率に応じて同じ限界に相関する。
シリカの総質量に対する充填率が1%の場合、カプセル化された物質の溶解サンプル中の最大濃度はわずか0.3ppmである。
サンプルの濃縮は、遠心膜濾過(Eppendorf Centrifuge 5810 R、8000~10000G、15~30分間、Amicon(登録商標)Ultra-15 遠心フィルター Ultracel(登録商標)-3K を使用)又は凍結乾燥(Christ Epsilon 1-6D、-35℃での負荷及び最大凍結温度、続く主乾燥で-15℃まで温度を徐々に上昇させ、最終乾燥は-10℃で23分間、20℃で20分間)のいずれかによって行われ、その後、凍結乾燥したP-粒子をより少ない体積の液体体に再分散させる。
【0094】
(粒子組成と整合性の研究のためのハイドロゲルR217からのP-粒子の溶解)
放出された抗原がさまざまな温度に保たれた後に無傷であったかどうかを調べるために、0.5mg/mlのP-粒子を含むハイドロゲルを10kDaカットオフ透析カセット(Slide-A-Lyzer、ThermoFisher)に溶解した。
まず、ハイドロゲルを注射器から取り出し、重さを量り、透析カセットに移した。カセットは、室温で1週間にわたって5回交換された0.8LのPBS中で透析された。
次に、カセットにゲルの残留物が存在しないことを確認した後、カセットからの溶液をマイクロ遠心チューブに移し、分注し、分析のために-20℃で保存した。
【0095】
(放出メカニズム実験)
P-粒子の放出メカニズムは、シリカ飽和PBSで又は約pH7.4に緩衝されたトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)で、37℃の振とう浴中で調べられた。シリカ飽和媒体は、シリカの飽和レベル(約130ppm)に達するまで、非晶質ゾル-ゲル誘導シリカ片を媒体に溶解することによって調製した。ハイブリッド/複合体ハイドロゲルの大部分(シリカ)の溶解が防止された場合、P-粒子は主に拡散によってのみ放出される。
次に、拡散の結果を、マトリックスの生分解と拡散の両方が同時に発生する可能性があるシンク条件で実施された放出実験と比較した。
R217ベースのカプセル化されたP-粒子を含む連続ハイブリッド/複合体とeGFPの放出メカニズムが調べられた。
【0096】
レオロジー測定と注入実験
レオロジー測定は、モジュラーレオメーター(Anton Paar MCR 104)を使用して実施された。試料は、1ml注射器(Becton Dickinson)から25G針(Becton Dickinson Microlance)を通しジオメトリ(20mmプレート-プレート)上に注入された。振幅スイープ測定は、一定の6.28rad/s角周波数で0.01~10%のひずみ値で実施された。周波数スイープは、振幅スイープ測定によって定義された一定のひずみにおいて周波数0.01~100rad/sで実施された。
【0097】
調製したハイブリッド/複合体ハイドロゲル材料の注入性能を調べた。試験は、連続ハイブリッド/複合体及び2相ハイブリッド/複合体#1ハイドロゲルに対して行った。
材料は、1ml注射器(BectonDickinson)から25G針(BectonDickinsonMicrolance)を介して通常の力で注入された。ハイドロゲルのラインをプラスチック製トレイに注入し、結果を視覚的に検査した。
注入の滑らかさ、相分離の兆候、見かけの均一性、及び溶解緩衝液との適合性が記録され、評価された。
【0098】
2.4 ノロウイルスP-粒子の製造及び精製
Hisタグ付きノロウイルスP-粒子は、Koho et al.に記載されているように、大腸菌BL21スター細胞で生成された(Journal of Virological Methods 179(2012)1-7)。ペレット化した細菌細胞をEmulsiFlex(登録商標)-C3-ホモジナイザー(AvestinInc.)で溶解バッファー(50mM NaH2PO4、600mM NaCl、10mMイミダゾール、pH8.0)に溶解した後、細胞溶解物を10000Xgで、4℃で30分間清澄化し、清澄化したライセートを、ニッケル荷電セファロース(Merck、HisTrap FF Crude)を使用したアフィニティー精製に使用した。精製されたP-粒子は、PBSに対して透析され、その後、分析及びさらなる使用のために無菌濾過された。P-粒子の濃度は、BCAアッセイ(Pierce)で測定した。
【0099】
動的光散乱解析
P-粒子の動的光散乱(DLS)分析は、Zetasizer Nano ZS機器(Malvern Instruments Ltd.、ウスターシャー、英国)を用いて行った。
流体力学的直径は、PBS中、25℃で3つの10×10秒のデータセットを使用して決定された。Koho et al.(Antiviral Research 104 (2014) 93-101)に記載されているように、試料を段階的な加熱にもかけた。つまり、25℃から開始して、各サンプルを5℃ずつ昇温し、分析前に各温度で5分間平衡化した。サンプルは90℃の最終温度まで加熱され、その後25℃まで冷却された。連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2からPBSに溶解したP-粒子の整合性と組成を調べるために、25℃でDLSを使用して分析した。
【0100】
エンドトキシン測定
精製された抗原からエンドトキシンが除去されていることを確認するために、ToxinSensorTM Gel Clot Endotoxin Assay Kit(GenScript)を製造元の指示に従って使用して、P-粒子のエンドトキシンレベルを測定した。
【0101】
ノロウイルスVLPの製造と精製
GII.4(1999, acc. no. AF080551)、GII.4 New Orleans(NO; 2010, acc. no. GU445325)、GII.4 Sydney(Syd;2012、acc.no.AFV08795.1)、GII.12(1998、acc.no.AJ277618)、及びGII.17(2015, acc. no.BAR42289)由来のノロウイルス(NoV)GIIカプシッドウイルス様粒子(VLP)は、他の文献(Huhti et al Arch Virol 2010 155; Blazevic et al. Vaccine 2011 29; Malm et al. Clinical and vaccine immunology 2015 22)で詳細に説明されているように、Bac-to-Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen、Carlsbad、CA)によってSf9昆虫細胞で産生され、ショ糖勾配超遠心分離により精製された。
これらのVLPは、in vitro免疫原性アッセイの抗原として使用された。
【0102】
動物の免疫化
無菌の雌性6週齢のBALB/c OlaHsd マウス(Envigo、Horst、オランダ)を無作為に8つのグループ(Gr I-VIII、3又は5匹のマウス/実験グループ)に分け、特定の制御条件下で実験開始までの1週間順応させた。
動物は、10μg用量で2回、又は20μg用量で1回の無菌PBS(Lonza、Verviers、Belgium)で希釈されたNoV P-粒子で、又は連続ハイブリッド/複合体R217-0.2又は2相ハイブリッド/複合体#1R217-0.2/R40-0.2(A及びB、表3)ハイドロゲルが処方されて免疫化された。
被験物質は、研究週0及び3週目に右脇腹への皮下(s.c.)注射(100μl容量)によって投与された。表5は、使用したワクチン製剤、注射用量、及び免疫法を示す。
対照群には、R217-0.2又はR217-0.2/R40-0.2ハイドロゲル、又はAl(OH)3(Alhydrogel;InvivoGen、カリフォルニア州サンディエゴ)を配合したP-粒子のみを投与した。免疫化は、イソフルラン(Attane vet, Vet Medic Animal Health Oy)の吸入による全身麻酔下で行った。
【0103】
血清抗体反応の動態を試験するために、研究週0(採血前、非免疫血清)及び研究週3週目に、尾から採血し、血液サンプルを採取した。
全血と糞便は屠殺時(5又は6週目)に採取され、公知の手順に従って処理された("Norovirus VLPs and rotavirus VP6 protein as combined vaccine for childhood gastroenteritis" Blazevic et al, Vaccine Oct 19;29(45):8126-33.; "A comparison of immunogenicity of norovirus GII-4 virus-like particles and P-particles", Tamminen et al., Immunology 2012 Jan;135(1):89-99)。
実験手順は、フィンランド国立実験委員会の規則とガイドラインに従って実施された(許可番号 ESAVI/10800/04.10.07/2016)。動物の苦しみを最小限に抑えるためにあらゆる努力が払われた。研究期間中、動物福祉が監視された。
【0104】
表5に、抗原の組成、注射量及び免疫法を示す。
【0105】
【0106】
抗原-特異的抗体反応
P-粒子に対して生じた抗体反応は、ELISAによって個々のマウスの血清サンプル中のIgG及びIgGサブタイプレベルを測定して決定された。採用されたELISAの手順は、以前我々の研究室によって公知にされたものと類似しており(Blazevic et al. Vaccine 2011 29; Tamminen et al. Immunology. 2012 135(1):89-99)、従って、以下に手短な概略のみ示す。
ハーフエリア ポリスチレンプレート(Corning Inc.、Corning、NY)を1ウェルあたり50ngのNoV P-粒子でコーティングした。
1:200希釈又は連続2倍希釈の血清中の抗原-特異的抗体は、HRP結合抗マウス IgG(Sigma-Aldrich)、IgG1(Invitrogen)又はIgG2a(Invitrogen)とSIGMA FAST OPD基質(Sigma-Aldrich)の組み合わせで検出された。
エンドポイント力価は、カットオフ値を超えるOD490(>0.1 OD490単位)での最高サンプル希釈の逆数として定義された。
【0107】
抗体アビディティ
NoV GII.4型特異的IgG抗体のアビディティは、上記1.5に記載されたELISA法(Tamminen et al.Immunology. 2012 135(1):89-99)に従って、1:200希釈血清中で評価したが、アビディティの低い抗体を除去するために追加の尿素処理を行った。
プレートを50ngのNoV GII.4 VLPでコーティングした。結果はアビディティ指数:(尿素を含むOD490/尿素を含まないOD490)×100%、として表した
【0108】
交差反応性抗体
交差反応性のNoV特異的IgG抗体は、上記のようにELISAで検出された。但し、プレートは、1ウェルあたりGII.4 NO、GII.4 Sydney、GII.12、及びGII.17 VLPを含む50ngの異種NoV VLPでコーティングされていた。1:200の血清希釈をアッセイに使用した。
【0109】
ブロッキング抗体
NoV VLPのHBGA受容体への結合を防止する誘導抗体の能力は、すでに公知の手順(Malm et al. Clin Exp Immunol 2017;189(3):331-41)に従って、PGMタイプ III(Sigma Chemicals)をHBGAソース(Lindesmith et al. J Virol 2012; 86:873-83)として使用するブロッキングアッセイで評価された。
すなわち、プレインキュベートしたGII.4 VLPと段階希釈した血清の混合物を、PGMでコーティングしたマイクロウェルプレートに加えた。
結合したVLPは、1.2で上述した受容体結合アッセイに従って、ヒトNoV GII.4抗血清及びHRP結合抗ヒトIgGの組み合わせで検出された。結果はブロッキング指数:100%-[(OD490サンプル/OD490最大結合)×100%]として表した。
【0110】
粘膜IgG反応
粘膜IgG抗体の検出のために、段階希釈した10%糞便懸濁液を、上記1.5で説明したELISA法で検査した。プレートを50ngのNoV GII.4 VLPでコーティングした。
【0111】
結果と考察
In vitroでの溶解及び抗原放出
抗原(P-粒子)放出速度及び異なるハイブリッド/複合体ハイドロゲルのシリカの溶解速度のin vitro溶解結果を
図6~8に示す。
アルミホイルバッグに入れられた注射器に入れ、室温(25℃)で4日間及び330日間保管した後の、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2及び2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1の2つのバリエーション;R217-0.2/R40-0.2A(R217-0.2及びR40-0.2ハイドロゲルの両方にある抗原(AG))及びR217-0.2/R40-0.2B(R40-0.2ハイドロゲルのみにある抗原(AG))についての抗原(P-粒子)放出率を
図6Aに示す。
図6Bは、同じ条件でのシリカの累積放出を示す。
【0112】
図7は、2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#2Cについての、抗原(P-粒子)の累積放出とシリカの溶解を示す。
異なる時点でのシリカとP-粒子の放出量の重量比は、右側の第2Y軸に示されている。
【0113】
図8は、2相ハイブリッド/複合ハイドロゲル#2Dの抗原(P-粒子)の累積放出とシリカの溶解を示す。異なる時点でのシリカとP-粒子の放出量の重量比は、右側の第2Y軸に示されている。
【0114】
カプセル化されたeGFPを含むR217-0.2の放出結果は、シリカの溶解とeGFPの放出が全く同時に起こることを示しているが、カプセル化されたeGFPの量には多少の違いがある。
100μlのR217-0.2中の20μgのeGFPの場合、最初はeGFPの放出速度とシリカの溶解速度の両方が少し遅くなるが、ほぼ同時に約100%に達する。
【0115】
図9は、100μlのハイドロゲル中の10μgのeGFPを加えたR217-0.2のeGFPの累積放出とシリカの溶解を示す。異なる時点でのシリカとeGFPの放出量の重量比は、右側の第2Y軸に示す。
【0116】
図10は、100μlのハイドロゲルに20μgのeGFPを加えたR217-0.2のeGFPの累積放出とシリカの溶解を示す。異なる時点でのシリカとeGFPの放出量の重量比は、右側の第2Y軸に示す。
【0117】
材料のカプセル化効率を調べるために、ハイドロゲル100μlあたり10μg及び20μgのeGFPを含むR217-0.2からのシリカ飽和溶解媒体からのeGFPの累積放出を測定した。
図9と10に示すように、最初の5時間でeGFPがハイドロゲルから拡散した速度はシンク条件下よりも約50%遅かった。
放出率は24時間後にわずかに遅くなり、10μg/100μlの材料では25%、20μg/100μのバージョンでは35%で横ばいになった。
【0118】
図11は、10μg/ハイドロゲル100μlのeGFP濃度でのR217-0.2からのeGFPの累積拡散を示す。
【0119】
図12は、20μg/ハイドロゲル100μlのeGFP濃度でのR217-0.2からのeGFPの累積拡散を示す。
【0120】
24時間又は25時間でのeGFPの濃度は、タンパク質のストック濃度の0.5%未満であるため、飽和に関して、eGFPが、それ自体の放出を妨げる可能性は低い。
さらに、拡散測定中、サンプル量が10μg/100μlの場合、eGFPの放出速度は24時間後にプラトーに達し、ある程度安定したままであるが、20μg/100μlのバージョンでも同様に観察され、それはまだ安定しているようにみえる。
シンク内の溶解との比較すると、いくらかの拡散が発生する一方で、材料の分解が起こらない限り、全eGFPペイロードが効果的に放出されないことを示唆している。
【0121】
レオロジー
図13は、室温(25℃)でアルミホイルバッグに囲まれた注射器に保管した後4日目及び28日目の、連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2について及び2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2)についての減衰係数(G'’/G')を示す。
【0122】
図14は、室温(25℃)で保管後360日目の連続ハイブリッド/複合ハイドロゲルR217-0.2及び2相ハイブリッド/複合ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2)についての減衰係数(G''/G')を示す。注射器は、アルミホイルバッグに隔離されている。
サンプルは、最初のステップが周波数スイープ、続いて回転測定(せん断速度ランプ:shear rate ramp 1-100 1/s)、及び、再び周波数スイープ測定の3部構成の測定を受けた。
【0123】
図15は、室温(25℃)で保存後4日目の連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2及び2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1(R217-0.2/R40-0.2)の動的粘度を示す。
【0124】
図16は、室温で密封されたアルミホイルバッグに保管した後360日目の連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2及び2相ハイブリッド/複合体#1(R217-0.2/R40-0.2)の動的粘度を示す。
【0125】
レオロジー測定は、調査されたハイブリッド/複合体ハイドロゲルが、25℃のアルミホイルバッグに入れられた注射器で28日間保管した後でも、レオロジー特性を非常によく保持することを示している。
減衰係数(損失正接又は損失係数とも呼ばれる)は、損失弾性率と貯蔵弾性率(G''/G')の比率であり、静止時(例:注射器内)のハイブリッド/複合ハイドロゲルの粘弾性特性を示す。
減衰係数の結果は、ハイドロゲルが保管中にその構造を保持し、25℃で28日間保管した後も特性に大きな変化がないことを示している(
図13)。
動的粘度(
図16)は注射器からの注入をシミュレートしており、調査したどちらのハイドロゲルも、25℃で4日間保存した後、明らかにシアシニングしていた。特性は1年間で比較的変化していない(
図14及び17)。
違いは、主に動的粘度で発生する。全体として、小さなせん断速度での最小粘度は大幅に低下し、材料がシアシニングする速度はD4及びD28のケースと比較して遅くなる。全体的な動作は変化せず、この材料は、保管中にそのレオロジー特性を保持することができた。
【0126】
注入性
レオロジー測定に加えて、ハイブリッド/複合体ハイドロゲルの注入性と安定性が、1ml注射器から25G針を通して材料を注入することによって評価された。
注入性又は相分離の可能性の評価は、室温(25℃)でアルミホイルバッグに入れられたシリンジ中で保存された後4、28、180、及び330日後の、P-粒子 R217-0.2(AG)が埋め込まれた連続ハイブリッド/複合ハイドロゲル、及び、P-粒子 R217-0.2(AG)及びP-粒子(R217-0.2-R40-0.2(AG)及びR217-0.2(AG)-R40-0.2(AG))が埋め込まれた2つのバリエーションの2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1を0から5の基準に従って評価した(表6)。注入の滑らかさの基準は次のように定義される。
5=非常に滑らか、4=ほとんど滑らか、3=かなり滑らか、2=部分的に滑らか、1=不均一、まったく滑らかではない、0=注入できない。
相分離の基準は次のように定義される。
5=相分離なし、4=最小限の相分離、3=相分離はあるが注入後は可逆、2=相分離、注入後は不可逆、1=明らかな相分離、0=まったくゲルではない。
【0127】
表6は、25℃で保存した後のさまざまな時点での注入の滑らかさと相分離に関する注入実験を示す。スコアは3回の反復注入の平均である。
【0128】
【0129】
注入実験は、4日目に観察された滑らかさは保存中に変化しないことを示しており、連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルと2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1の間で観察された小さな変化は、構造の違い、つまり2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1の両バージョンに存在する個別のゲル粒子に由来する。
それらはすべて注入可能であるが、結果は、連続相と分散相の両方にカプセル化されたP-粒子を含むR217-0.2(AG)-R40-0.2(AG)は本質的にやや不均一であるが、それでも注入可能であることを示唆している。
カプセル化された抗原の量は非常に少ないため、それがそのような影響を与える可能性は低く、むしろ調製プロセスのわずかな違い(R217-0.2でのP-粒子の追加)であって、それらは、厳密な準備プロセスの制御の必要性を強調する。
観察された最小又は公正な相分離は、注入を開始するときに最初に出てくる少量の水、又は注入に関連するハイドロゲルの塊の観察に関連している。しかしながら、ゲルの塊は、注入後に再び統合されたハイドロゲルの成形体を形成する。
【0130】
P-粒子の高温溶液中での凝集体形成
以前に示したように(Journal of Virological Methods 179 (2012) 1-7)、ノロウイルスP-粒子は、DLSで分析すると、溶液中でおよそ15~17nmの直径を持つ(図示せず)。
P-粒子の熱安定性を調べるために、最初に、溶液中でそれらが凝集する温度を決定した。この分析によると、急激な温度誘起凝集が50℃を超える温度で発生し、すべてのP-粒子が55℃で300~830nmの範囲の凝集体を形成することがわかった(
図17)。
これらの結果に基づいて、次の温度を使用して長期保存及び溶解実験を行った:RT、37℃、及び50℃。
【0131】
図17は、DLSで測定されたP-粒子の熱安定性を示す。
図17Aでは、異なる温度での16nm粒子の割合を示し、
図17Bでは、50℃と55℃で測定したP-粒子の体積分布の差を示す。
図17A及び17Bはいずれも、3回の個別の測定の平均を示す。
【0132】
溶解後の粒子の整合性
ハイドロゲルから溶解した粒子の整合性をDLSで調べた。28週間のフォローアップ中、室温に保たれたハイドロゲルから放出された実質的にすべての粒子は予想されるサイズのままであり、37℃に保たれたハイドロゲルから放出された粒子は19週間まで予想された半径15~17nmの範囲であった(
図18)。
RTで保存された溶液中の対照サンプルは無傷のままであったが、37℃で保存されたものは6週間後に破壊され始め、16週間以内に完全に破壊された。さらに、50℃に保たれたハイドロゲルと溶液サンプルの両方はそれぞれ4週間又は2週間以内に破壊された。
【0133】
図18は、連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2(
図18A)から、又はDLSで決定された温度を示す溶液中に保たれた対照粒子(
図18B)から放出されたP-粒子の16nm集合体の総体積を示す。
【0134】
TEM画像
透過型電子顕微鏡画像は、ハイドロゲルが37℃において、溶液中で同じ温度に保たれた対照粒子よりも長くP-粒子を保護することを示す。
【0135】
TEMは、対照P-粒子が典型的な形状を持ち、約17~20nmの予想されるサイズであることを示している(
図19、上のパネル)。
P-粒子は、溶液中で20週間、RTで安定した状態を保つ(
図19、左下パネル)が、溶液中で37℃、12週間保持すると消失するようである(
図19、中央パネル)。RT及び37℃で保存した後にハイドロゲルから溶解したP-粒子は、19週間後も無傷のようである(
図19、中央下パネル)。
【0136】
エンドトキシンレベル
エンドトキシンレベルを決定して、抗原からのエンドトキシンの除去を確認した。抗原には細菌性エンドトキシンが含まれていなかったため(<0.012EU/10μgタンパク質)、精製されたP-粒子には残留不純物は検出されなかった。
【0137】
血清IgG抗体の発生
本ハイドロゲルがアジュバント/デリバリシステムとして機能する可能性を調べるために、マウスを2回の10μg用量のP-粒子単独で、又は連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルに埋め込んで、又は、1回の20μg用量のP-粒子単独で、又は、2相ハイブリッド/複合体#1R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルに埋め込んで、免疫化した。
比較のため、実験グループの1つにAl(OH)
3を配合したP-粒子を投与した。
図20は、研究週0、3及び5又は6週でのP-粒子に対する血清IgG抗体の発生を示す。
結果によると、P-粒子の1回の投与による免疫は、抗原がR217-0.2ハイドロゲル又はR217-0.2/R40-0.2Aハイドロゲル(25wt-%、R217-0.2中の抗原)との共投与である場合には、非常に強力な免疫反応のみを誘発した。
これは、単独免疫後3週目の抗体反応の増加が、R40-0.2ではなくR217-0.2成分に由来することを示す。R217-0.2ハイドロゲルを含むP-粒子の2回目の投与は、すでに誘導された反応を著しく上昇させた。
【0138】
図20は、2回の10μg用量のP-粒子(pp)単独で、又はR217-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図20A)、又は1回の20μg用量のP-粒子単独で、又はR217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルと処方されて免疫化された後のマウスにおける血清IgG抗体の動態を示す(
図20B)。
対照マウスには、Al(OH)
3を含むP-粒子又は抗原を含まないハイドロゲルを投与した。
示された研究週における尾の血液サンプルと最終血清のグループ平均OD値が示されている。免疫ポイントは矢印で示す。
【0139】
さらに、幾何平均力価は、R217-0.2又はR217-0.2/R40-0.2Aハイドロゲル(R217-0.2中、25重量%の抗原)を含むP-粒子、を投与されたマウスのグループでかなり高く(逆数力価>4.2log
10)、同時投与によりP-粒子単独で観察されたレベルより18倍又は10倍高いレベルが得られた(
図21)。
これは、R217-0.2が抗原特異的IgG反応の大きさを増加させることを示している。しかし、P-粒子に対するR217-0.2の観察された効果は、Al(OH)
3ハイドロゲルの効果と同様である(
図21及び22)。ネガティブコントロールマウスは、P-粒子に対して反応がなかった。
【0140】
図21A及び21Bは、2回の10μg用量のP粒子(pp)を単独で、又はR217-0.2ハイドロゲルを処方されて(
図21A)、又は1回の20μg用量のP-粒子単独で、又はR217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルを処方されて(
図21B)免疫化されたマウスにおける血清IgGの終点滴定を示す。対照マウスには、Al(OH)
3を含むP-粒子又は抗原を含まないハイドロゲルを投与した。示されているのはグループの平均ODである。
【0141】
血清抗原特異的IgG1及びIgG2aサブタイプ
抗原特異的IgGサブタイプ、IgG1(Th2反応の特質)及びIgG2a(Th1反応の特質)は、連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2又はAl(OH)
3で処方されたP-粒子のみが、混合免疫反応、すなわちTh2型及びTh1型を誘導することが分析によって示された(
図22及び23)。
各P-粒子製剤がTh2免疫反応を誘発したにもかかわらず、P-粒子と、R217-0.2、又は2相ハイブリッド/複合体#1R217-0.2/R40-0.2Aハイドロゲル(R217-0.2中の25質量%の抗原)、又はAl(OH)
3との共投与は、P粒子のみの投与と比較して、より高いレベルのIgG1を生成した(
図22)。
むしろ、R217-0.2ハイドロゲル又はAl(OH)
3と同時投与されたP-粒子によってのみ、中程度のTh1免疫反応が誘導された(
図23)。
これらの結果は、R217-0.2が免疫反応の質を改善し、好ましくは、Al(OH)
3と同様のTh2アジュバントとして機能することを示唆している。
【0142】
図22は、2回の10μg用量のP-粒子(pp)を単独で、又はR217-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図22A)、又は1回の20μg用量のP-粒子単独で、又はR217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図22B)免疫化された後のマウスにおける血清IgG1の終点滴定を示す。
対照マウスには、Al(OH)
3を含むP-粒子又は抗原を含まないハイドロゲルを投与した。示されているのは、グループの平均ODである。
【0143】
図23は、2回の10μg用量のP-粒子(pp)を単独で、又はR217-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図23A)、又は、1回の20μg用量のP-粒子単独で、又は、R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図23B)、免疫化後のマウスにおける血清IgG2aの終点滴定を示す。
対照マウスには、Al(OH)
3を含むP-粒子又は抗原を含まないハイドロゲルを投与した。示されているのはグループの平均ODである。
【0144】
抗体アビディティ
抗GII.4 IgG抗体のアビディティに関する個々の免疫血清の評価(
図24)は、P-粒子単独での免疫化は、P-粒子と連続ハイブリッド/複合体ハイドロゲルR217-0.2、又は2相ハイブリッド/複合体ハイドロゲル#1R217-0.2/R40-0.2Aハイドロゲル(R217-0.2中、25重量%の抗原)の組み合わせで誘導された抗体と比較して(アビディティ指数>60%)、かなり低いアビディティを持つ抗体(アビディティ指数<10%)を誘導したことを示した。
略同じレベルが、Al(OH)
3を配合したP-粒子によって誘発された。この分析によるとR217-0.2は抗体の親和性を向上させる。
【0145】
図24は、2回の10μg用量のP-粒子(pp)を単独で、又はR217-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図24A)、又は1回の20μg用量のP-粒子単独で、又はR217-0.2/R40-20ハイドロゲルと処方されて(
図24B)免疫化されたマウスにおける血清IgG抗体のアビディティを示す。
対照マウスには、Al(OH)
3を含むP-粒子又は抗原を含まないハイドロゲルを投与した。グループの平均アビディティ指数(%)が示される。
【0146】
交差反応性血清IgG反応
血清抗体の交差反応性は、遺伝子群II由来の4つの異種NoV VLP(GII.4 NO、GII.4 Sydney、GII.12、及びGII.17)に対して測定された。
P-粒子単独での免疫後に交差反応性IgG抗体は検出されなかったが、R217-0.2ハイドロゲル又はAl(OH)
3を含む製剤では、かなり広い交差反応性を持つ抗体が得られた(
図25)。
結果は、交差反応性抗体反応の増加はR217-0.2に由来するが、R40-0.2に由来しないことを示唆している。
【0147】
図25は、2回の10μg用量のP-粒子(pp)単独で、又は連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図25A)、又は1回の20μg用量のP-粒子単独で、又は2相ハイブリッド/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図25B)免疫化されたマウスにおける、異種NoV VLPに対する交差反応性血清IgG反応を示す。対照マウスには、Al(OH)
3を含むP-粒子又は抗原を含まないハイドロゲルを投与した。示されているのはグループの平均ODである。
【0148】
中和抗体
誘導された抗体の中和能力は、PGMベースのブロッキングアッセイを使用して、相同なGII.4 VLPに対するブロッキング活性を測定することで調べられた。
10μg用量のP粒子製剤又は20μg用量の2相ハイブリッド/複合体#1 R217-0.2/R40-0.2A(R217-0.2中、25重量%の抗原)で処方されたもの、を受けた実験群は、検出可能なブロッキングアビリティを持つ抗体を生成し、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲル又はAl(OH)
3と抗原の共投与(
図26)で活性を有意に上昇させた。
R217-0.2ハイドロゲル又はAl(OH)
3を配合したP-粒子のみが、VLP結合を50%以上ブロックできる抗体を誘導した。分析に基づくと、ブロッキング抗体の大幅な増加は、R217-0.2とAl(OH)
3を含む処方に由来する。
【0149】
図26は、2回の10μg用量のP-粒子(pp)単独で又はR217-0.2ハイドロゲルと共に処方されて(
図26A)、又は1回の20μg用量のP-粒子単独で、又はR217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルと共に処方されて(
図26B)免疫化されたマウスの血清抗体によるHBGA受容体へのGII.4 VLP結合の相同遮断を示す。
対照マウスには、Al(OH)
3を含むP-粒子又は抗原を含まないハイドロゲルを投与した。表示されているのはグループの平均ブロッキングインデックス(%)である。
【0150】
粘膜抗体
粘膜抗体分析は、P-粒子のみによる免疫化は糞便抗体のレベルが非常に低い(又は陰性である)ことを示したが、連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲル又はAl(OH)
3による抗原の処方は粘膜抗体の規模を増加させた(
図27)。
【0151】
図27は、2回の10μg用量のP-粒子(pp)を単独で又はR217-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図27A)、又は1回の20μg用量のP-粒子単独で、又は2相ハイブリッド/複合体R217-0.2/R40-0.2ハイドロゲルと処方されて(
図27B)免疫化されたマウスにおける糞便IgG抗体の終点滴定を示す。
対照マウスには、Al(OH)
3を含むP-粒子又は抗原を含まないハイドロゲルを投与した。
表示されているのはグループの平均ブロッキングインデックス(%)である。表示されているのはグループの平均ODである。
【0152】
結論
連続ハイブリッド/複合体R217-0.2ハイドロゲルは、血清及び粘膜免疫反応の大きさを増加させるための、及び、抗体アビディティ、交差反応性、中和抗体の観点から免疫反応の質と機能を改善するための、アジュバントとして機能する。
【0153】
R217-0.2の観察されたアジュバント効果は、Al(OH)3ハイドロゲルの効果に匹敵する。ハイドロゲルから放出されたタンパク質は、DLSによるとオリジナルのP-粒子に似ている。さらに、DLSによると、P-粒子は55℃以上の温度で凝集する。
【0154】
また、16nm粒子は、室温及び37℃での保存後にハイドロゲルから放出される可能性があるが、50℃での保存後では放出されず、及び、放出された粒子の濃度は時間の経過とともに減少するようであることも示された。
溶液中の保存と比較して、本ハイドロゲルは、保存期間が5週間を超えた後、37℃で15nm粒子の割合が増加しているように見え、ハイドロゲル中のP-粒子の安定化が示唆される。
【国際調査報告】