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特表2023-544025ウイルス及び細菌感染症の迅速検査システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ウイルス及び細菌感染症の迅速検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20231012BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20231012BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20231012BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20231012BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20231012BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20231012BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231012BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20231012BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/569 L
G01N37/00 101
G01N35/10 A
C12Q1/06
C12Q1/70
C12M1/00 A
C12M1/26
C12M1/34 D
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519624
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 US2021052499
(87)【国際公開番号】W WO2022072391
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/085,404
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】500064708
【氏名又は名称】ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンス デヴィッド ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】フライシュマン アーロン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】リン フェン
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058CC09
2G058DA09
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB02
4B029BB13
4B029CC01
4B029DG08
4B029FA01
4B029FA11
4B029GB05
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ06
4B063QQ10
4B063QS10
4B063QX02
(57)【要約】
ウイルス性又は細菌性の病原体を検出するための方法を、開示する。前記方法は、収集機を介して病原性の可能性があるサンプルを収集すること、病原性の可能性があるサンプルの第1の部分を磁性粒子上の第1のコーティングを介して磁性粒子に結合すること、病原性の可能性があるサンプルの第2の部分を蛍光性標識粒子上の第2のコーティングを介して蛍光標識粒子に結合し、病原性の可能性があるサンプル、磁性粒子及び蛍光性標識粒子を含む凝集体を形成すること、集合体を磁気的に分離すること、分離した凝集体の蛍光を検出すること、及び検出した蛍光に基づいて病原体の量を推定することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集機を介して病原性の可能性があるサンプルを回収する工程、
病原性の可能性があるサンプルの第1の部分を、磁性粒子上の第1のコーティングを介して磁性粒子と結合させる工程、
病原性の可能性があるサンプルの第2の部分を、蛍光性標識粒子上の第2のコーティングを介して蛍光性標識粒子と結合させ、病原性の可能性があるサンプル、磁性粒子、及び蛍光性標識粒子を含む凝集体を形成する工程、
凝集体を磁気的に分離する工程、
分離された凝集体の蛍光を検出する工程、及び
検出された蛍光に基づき、病原体の量を推定する工程、を含む、ウイルス性及び細菌性病原体を検出する方法。
【請求項2】
前記収集機が、呼気分析器であり、
前記収集が、前記呼気分析器を介して患者の呼気から前記病原性の可能性があるサンプルを採取することを含み、
前記病原体が、コロナウイルスであり、
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2であり、
第1のコーティングが結合する前記SARS-CoV-2の第1の部分及び第2のコーティングが結合する前記SARS-CoV-2の第2の部分が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の異なるエピトープであり、
前記第2のコーティングが、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を含み、及び
前記分離が、前記凝集体の磁気双極子モーメントに従ってマイクロ流体分離機を介してそれらを分離することを含む、うちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離が、以下:
マイクロ流体磁気分離機における、凝集体が移動した距離、
マイクロ流体磁気分離機における、凝集体の移動時間、及び
マイクロ流体磁気分離機における、凝集体の流れの少なくとも1つに従う、請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
検出された蛍光に基づく病原体の量を推定することが、マイクロ流体磁気分離機において検出された蛍光の空間分布に基づく量を推定することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出された蛍光の空間分布が、前記分離に起因する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
分離された凝集体の蛍光を検出することが、
前記凝集体を照射すること、及び
照射により励起された蛍光性標識粒子の蛍光の量を検出することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記蛍光が、凝集体中の蛍光性標識粒子の蛍光である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
推定された病原体の量に基づいて、患者におけるウイルス量を推定することをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
マウスピース、
注入チューブ、
前記注入チューブを介してマウスピースと繋げられた収集タンク、前記収集タンクが以下:
病原体の第1の部分と結合する第1のコーティングで被覆された磁性粒子、及び
病原体の第2の部分と結合する第2のコーティングで被覆された蛍光性標識粒子を含み、並びに
前記収集タンクと、マイクロ流体磁気分離機の一部を形成するマイクロ流体チャネルとを接続する排出チューブ、
を含む、病原性の可能性があるサンプルを捕捉するための呼気捕捉部、を含む、ウイルス性又は細菌性の呼気病原体を検出するための装置。
【請求項10】
前記呼気捕捉部が、前記マイクロ流体チャネルから前記呼気捕捉部の外側に蛍光を通すように構成された窓をさらに含み、及び
前記窓を、呼気捕捉部の外側からの光がマイクロ流体チャネルを照射することを可能にするようにも構成する、うちの少なくとも1つである、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
窓を通して、マイクロ流体チャネルにおける蛍光性標識粒子の移動の範囲にわたる蛍光を検出するように、及び
窓を通して、マイクロ流体チャネルに光を供給するように、構成された検出システムをさらに含む、請求項9及び請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記検出システムが、前記蛍光性標識粒子をLED光で照射するLED検出システムを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2であり、及び
第1のコーティングが結合する前記SARS-CoV-2の第1の部分及び第2のコーティングが結合するSARS-CoV-2の第2の部分が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の異なるエピトープである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2のコーティングが、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
注入チューブ及び排出チューブの少なくとも1つの表面が、疎水性であり、
前記装置が、前記病原性の可能性があるサンプルから破片を除去するように配置されたフィルターを含み、並びに
前記装置が、当該装置から排出される蒸気から病原体を除去する排気フィルターを含む、うちの少なくとも1つである、請求項9~14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記呼気捕捉部の少なくとも一部が、使い捨てである、請求項9~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記使い捨て部分が、前記マウスピースであり、
前記マウスピースが、前記呼気捕捉部から取り外し可能であり、及び
前記呼気捕捉部全体が、使い捨てである、うちの少なくとも1つである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
呼気捕捉部の少なくとも一部を物理的に収容するためのインターフェース、
前記呼気捕捉部から蛍光データを取得するように構成された電子機器、及び
蛍光データに基づく通信を行うための通信ポートを、含む、呼気捕捉部とは別にベースをさらに含む、請求項9~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記電子機器が、前記蛍光データを検出するための検出システムを含み、
前記電子機器が、ビデオカメラ及び光センサーの少なくとも1つを含み、
当該ビデオカメラ及び光センサーの少なくとも1つを、マイクロ流体チャネル内の蛍光性標識粒子の移動の範囲にわたって蛍光を検出するように配置し、
前記電子機器を、前記蛍光の画像を分析するためにソフトウェアを実行するように構成し、
前記通信ポートが、イーサネットポート、Bluetooth接続、WiFi接続、携帯電話接続、バーコードリーダー又は患者及び呼気サンプルを関連付ける他の方法、及びベース上の光学ディスプレイの少なくとも1つを含み、
前記ベースが、呼気捕捉部の一部と機械的に連通するように配置されたピストンをさらに含み、
前記ピストンと機械的に連通する前記呼気捕捉部の一部が、前記呼気捕捉部内に前記病原性の可能性があるサンプルを移動させるように構成されたプランジャーを含み、
前記ピストンが、プランジャーを作動させ、前記呼気捕捉部内に前記病原性の可能性があるサンプルを移動させるように構成され、
前記ベースが、ピストンを作動させるように構成されたモーターをさらに含み、並びに
前記マイクロ流体磁気分離機が、高勾配磁気分離(HGMS)構成を有する、うちの少なくとも1つである、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記マイクロ流体磁気分離機が、開放勾配磁気分離(OGMS)構成を有する、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年9月30日に出願され、及び“Rapid Test System for Viral and Bacterial Infections”と題された米国仮特許出願第63/085,404号の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、ウイルス及び最近感染症の検査、特に、呼気分析システムを用いた迅速検査に関する。また、病原体の同定及び定量化のためのシステム及び方法、特に蛍光及び磁気標識並びに微小電気機械システム(MEMS)を使用するものにも関する。
【背景技術】
【0003】
COVID-19を含む最近の世界的なパンデミックは、感染に対する個人の迅速な検査及びスクリーニングの必要性を示している。病気の蔓延を防止又は遅らせるには、感染した個人が他の人に感染させる前に、彼らを確実に特定し、及び隔離することが必要である。これは、感染者が、COVID-19の場合のように、無症状の可能性がある場合、特に困難となり得る。
【0004】
現在、SARS-CoV-2ウイルス及び他の病原体に対する迅速、正確及び低コストの診断検査を欠いている。研究所は、ウイルス検出のために定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)測定を展開している。しかしながら、患者のスクリーニング及び診断にかかるqRT-PCRの検査所要時間は、数時間から数日まで及び得る。これらの検査は、高価であり、熟練した技術者も必要です。関連する技術の不足も、処理の障壁につながり得る。
【0005】
現在、主要なヘルスケア企業により開発されている検査のほとんどは、実験室環境での迅速なスクリーニング診断に焦点が当てられ、及びその結果、ポイントオブケア(POC)への適用には不向きである。これらのアプローチは、リアルタイムPCR、ドロップレットデジタルPCR、及び免疫学的分析を用いた分子検査を含む。POCと称される多くの検査は、患者の鼻咽頭、鼻、中鼻甲介、又は口腔咽頭の部位をスワビングすることによりサンプルを採取するため、医療機関で今もなお実施する必要がある。これは、医療従事者にとって困難であり、及び患者にとって不快である。本稿執筆の時点では、そのようなサンプル1が、家庭でのサンプル収集のためにFDAから緊急使用許可(EUA)を受けているだけである。自己採取のための鼻腔ぬぐい液及び生理用食塩水を含む前記検査キットを、分析のために臨床検査室に返送する必要があり、及びその結果迅速ではない。スワブサンプルは、得ることが困難であり、及び検査の感度を低下させ、偽陰性の結果の原因となり得る。患者が検査場所にいる間に完了でき、専門的な機器を必要とせず、実施及び処理でき、経済的に恵まれない地域や国でも使用できるほど費用対効果の高いPOC検査、特にSARS-CoV-2に対する検査が、急務となっている。
【0006】
病原体を同定及び定量化するためのより高速なツールは、存在するが、主に実験室環境に限定されている。例えば、蛍光分子又は粒子を、病原体に結合できる抗体と結合し得る。これが、病原体を蛍光マーカーで標識するので、それらを、検出及び定量化できるようになる。同様に、磁性粒子を、抗原を介して細胞に結合することができる。次いで、前記粒子を、分離し、及び磁場及び/又は蛍光イメージングを介して分析することができる。
【0007】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Fleischmanらの米国特許第6,623,894号でより詳細に説明されるように、標識粒子を、シリコン及び他の物質上で高精度の微視的構造を作成するMEMS技術を使用して操作及び定量化し得る。MEMS技術を通して、センサー、アクチュエーター、電子機器及び、その他の構成要素を統合する、比較的低コストで大容量な電気機械システムを、ミニチュアスケールで実現し得る。関連するテクノロジーは、MEMSマイクロ流体磁気分離機検査を用いて、マラリア感染した赤血球を検出することができた。P.A.Zimmerman、J.M.Thomson、H.Fujioka、W.E.Collins、及びM.Zborowskiの、“Diagnosis of malaria by magnetic deposition microscopy"、Am.J.Trop.Me.dHyg.の第74巻、ページ568~72、2006年4月を参照する。前記テクノロジーは、上記のように、磁気マーカーで標識したものよりはるかに弱い磁気特性を示す細胞及び粒子を分離することに成功した。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Zborowskiらの米国特許第5,968,820号は、細胞を細分化したフローストリームに磁気的に分離するための方法及び装置について記載している。フローコンパートメント及び1つ以上の磁場の組み合わせを通じて、異種細胞のフローストリームを、細胞の磁気双極子モーメントに基づく細分化したフローストリームに分離し、及び分析する。しかし、現在まで、これら及び関連する技術は、病原体自体に対して、便利で、費用対効果が高く、及び迅速なスクリーニング検査にまだ統合されていない。
【0008】
少なくとも上記の理由のため、現在、迅速なウイルス又は病原体のスクリーニング試験が必要とされている。有利に、そのような試験は、患者の呼気をサンプリングし、比較的迅速に及び最小の侵襲性で収集することができる。理想的には、前記検査を、比較的少量の病原体に敏感であり、及び大規模な実験室分析を使用せず、比較的迅速に結果を供給する。MEMSテクノロジーを使用し、単一の使い捨てパッケージを診断に組み込む。
【発明の概要】
【0009】
本明細書は、ウイルス性又は細菌性の病原体を検出するための方法を開示する。前記方法は、収集機を介して病原性の可能性があるサンプルを収集すること、磁性粒子上の第1のコーティングを介して、病原性の可能性があるサンプルの第1の部分を磁性粒子に結合すること、蛍光性標識粒子上の第2のコーティングのコーティングを介して病原性の可能性があるサンプルの第2の部分を蛍光性標識粒子と結合し、潜在的に前記病原性のあるサンプル、磁性粒子、及び蛍光性標識粒子を含む凝集体を作成すること、前記凝集体を磁気的に分離すること、前記分離された凝集体の蛍光を検出すること、並びに前記検出された蛍光に基づき病原体の量を推定することを含む。
【0010】
前記分離は、マイクロ流体磁気分離機における前記凝集体による移動距離、マイクロ流体磁気分離機における前記凝集体の移動時間、及びマイクロ流体磁気分離機における前記凝集体の流量のうち少なくとも1つに従い得る。
前記検出された蛍光に基づいて病原体の量を推定することは、マイクロ流体磁気分離機において検出された蛍光の空間分布に基づく量を推定することを含み得る。
前記検出された蛍光の空間分布は、前記分離に起因し得る。
前記分離された凝集物の蛍光を検出することは、前記凝集体に光を当て、照射により励起された蛍光性標識粒子の蛍光の量を検出することを含み得る。
前記蛍光は、前記凝集体において蛍光性標識粒子の蛍光であり得る。前記方法は、前記推定された病原体の量に基づいて、患者におけるウイルスの量を推定することを含み得る。
【0011】
また、本明細書は、ウイルス性又は細菌性の呼吸器病原体を検出するための装置を開示する。前記装置は、病原性の可能性があるサンプルを捕捉するための呼気捕捉部を含む。前記呼気捕捉部は、マウスピース、注入チューブ、及び注入チューブを介してマウスピースに繋げられた収集タンクを含む。前記収集タンクは、病原体の第1の部分に結合する第1のコーティングに被覆された磁性粒子、及び病原体の第2の部分に結合する第2のコーティングに被覆された蛍光性標識粒子を含む。前記装置は、さらに収集タンクをマイクロ流体チャネルへ繋げる排出チューブを含み、当該マイクロ流体チャネルは、マイクロ流体磁気分離機の一部を形成する。
【0012】
前記呼気捕捉部の少なくとも1つは、マイクロ流体チャネルから当該呼気捕捉部の外側に蛍光を通すように構成された窓を含むことができ、及び当該窓を、前記呼気捕捉部の外側からの光がマイクロ流体チャネルを照射するように構成し得る。
【0013】
前記装置は、窓を通じて、マイクロ流体チャネル中の蛍光性標識粒子の移動の範囲にわたって蛍光を検出するように構成された検出システムを含むことができ、及び窓を通じて、マイクロ流体チャネルへ光を供給し得る。前記検出システムは、蛍光性標識粒子をLED光で照射するLED検出システムを含み得る。前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2であることができ、並びに第1のコーティングが結合するSARS-CoV-2の第1の部分及び第2のコーティングが結合するSARS-CoV-2の第2の部分は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の異なるエピトープであり得る。前記第2のコーティングは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を含み得る。
【0014】
前記注入チューブ及び排出チューブの少なくとも1つの表面は、疎水性であってもよく、前記装置は、病原性の可能性があるサンプルから破片を除去するように配置されたフィルターを含むことができ、前記装置は、当該装置から排出された蒸気から病原体を除去する排気フィルターを含み得る。前記呼気捕捉部の一部は、使い捨てである。使い捨ての部分の少なくとも1つは、マウスピースであってもよく、当該マウスピースは、前記呼気捕捉部から取り外し可能であり、及び当該呼気捕捉部全体が使い捨てであってもよい。
【0015】
前記装置は、前記呼気捕捉部の少なくとも一部を物理的に収容するためのインターフェース、前記呼気捕捉部から蛍光データを得るために構成された電子機器、及び蛍光データに基づいて通信を送信するための通信ポートを含み、前記呼気捕捉部とは別のベースを含み得る。
【0016】
前記電子機器の少なくとも1つは、蛍光データを検出するための検出システムを含むことができ、当該電子機器は、ビデオカメラ及び光センサーの少なくとも1つを含み、当該ビデオカメラ及び光センサーの少なくとも1つを、マイクロ流体チャネル内の蛍光性標識粒子の移動の範囲にわたって蛍光を検出するために設置することができ、当該電子機器を、前記蛍光の画像を分析するためのソフトウェアを実行するように構成し、前記通信ポートは、イーサネットポート、Bluetooth接続、WiFi接続、携帯電話接続、バーコードリーダー又は患者と呼気サンプルとを関連付けるような他の方法、及びベース上の光学ディスプレイの少なくとも1つを含み、当該ベースは、前記呼気捕捉部の一部と機械的に連通するように配置されたピストンをさらに含み、当該ピストンと機械的に連通する呼気捕捉部の一部は、呼気捕捉部内の病原性の可能性があるサンプルを移動させるように構成されたプランジャーを含み、当該ピストンは、プランジャーを作動させ、呼気捕捉部内の病原性の可能性があるサンプルを移動させるように構成され、前記ベースは、ピストンを作動させるために構成されたモーターをさらに含み、並びに前記マイクロ流体磁気分離機は、高勾配磁気分離(HGMS)構成を持つ。
【0017】
前記マイクロ流体磁気分離機は、開放勾配磁気分離(OGMS)構成を持ち得る。
開示される装置及び方法の利点は、それらが、現在までの唯一の呼気ベースSARS-CoV-2検査、及び免疫検査及びマイクロ流体の利点を組み合わせる唯一のそのような検査を提供することを含む。その呼気分析に基づく検査は、現在開発されている検査より経済的、より迅速、消費者にとってより快適、及びより簡単に実施できる。収集されるサンプルは、より均一な品質である。分析は、実験室での検査がほとんど必要とせず、及びPOCで実質的に自動的に完了し得る。さらに、前記装置の一部(例えば、呼気分析計部分)は、使い捨てであり、衛生、効率、及び迅速性が向上する。前記装置の一部を、ラミネート、射出成形、及び/又は3D印刷などの技術を使用して簡単及び安価に製造し得る。また、前記装置の所要電力は、バッテリー駆動が可能なほど十分に低い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示の態様による病原体収集及び分析システム100を示す。
図2A図2Aは、分析器又はベース110のインターフェース又はアコモドメーター112から取り外されるシステム100のサンプル収集部分150を示す。
図2B図2Bは、部分150の内部に位置する例示的なチャネル168及び磁石170のセットアップ600を示す。
図3図3は、システム100と組み合わせて使用され得る、例示的な病原体ラベリングシステム300を示す。
図4図4は、システム100と組み合わせて使用され得る、別の病原体ラベリングシステム400を示す。
図5A図5Aは、標識病原体510を試験するラベリングのためにシステム500において組み合わされるシステム300及び400を示す。
図5B図5Bは、集合体520の概略図を示し、磁性粒子310及び蛍光性標識粒子410が、病原体510上のスパイクタンパク質の異なるサブユニットS1及びS2それぞれと結合している。
【0019】
図6A図6Aは、1つの変形例における、システム100のマイクロ流体チャネル168及び磁石170部分の概略図を示す。
図6B図6Bは、マイクロ流体磁気分離機650として、図6Bのマイクロ流体チャネル168及び磁石170の実際の実施の写真を示す。
図7A図7Aは、システム100と連動した例示的なマイクロ流体磁気分離機構成700の操作の概略図を示す。
図7B図7B~Dは、システム100と連動した別の例示的なマイクロ流体磁気分離機構成750の操作を示す。
図7C図7B~Dは、システム100と連動した別の例示的なマイクロ流体磁気分離機構成750の操作を示す。
図7D図7B~Dは、システム100と連動した別の例示的なマイクロ流体磁気分離機構成750の操作を示す。
図8図8は、システム100と連動した別の例示的なマイクロ流体磁気分離機構成800の操作の概略図を示す。
図9A図9A及び図9Bは、患者における病原体を検出するようにシステム100を使用するための方法のフローチャートである。
図9B図9A及び図9Bは、患者における病原体を検出するようにシステム100を使用するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
いくつかの例示的実施態様を、本開示は、一般的な発明概念を単に例示するものであることを理解の下、詳細に記載する。一般的な発明概念を含む実施態様は、様々な形態をとることができ、及び一般的な発明概念は、本明細書に記載される特定の実施態様に限定することは意図していない。
【0021】
検査システムの概要
図1は、本開示の態様による病原体収集及び分析システム100を示す。前記システム100を、分析器ベース110及びサンプル収集部分150の2つの主要部分に分割することができる。前記サンプル収集部分150を、患者(例えば、患者の呼気又は唾液を介して)からサンプルを取得するために構成し得る。次いで、前記分析器ベース110は、収集されるサンプルを病原体について分析し、及び結果を報告し得る。図1に示すように、前記収集部分150及び前記分析器ベース110は、別の構成要素であり得る。この場合、1つ以上の部分(例えば、前記収集部分150)を、使い捨てのために設計することができ、及び使い捨てであり得る。他の部分(例えば、分析器ベース110)を、異なる収集部分150を有する複数の用途のために設計し得る。しかし、そのような構成は、単に例示的なものであることを理解されたい。収集部分150及び分析器ベース110を、同じハウジング内に収容し得る。両方、使い捨てであり得る。
【0022】
図1に示すように、前記分析器ベース110は、前記サンプル収集部分150を収容するためのインターフェース又はアコモドメーター112を含み得る。前記インターフェース又はアコモドメーター112は、前記サンプル収集部分150とインターフェースするための電気的及び/又は機械的接続(図示せず)を含み得る。前記電気的接続は、例えば、収集部分150の一部分に電力を供給することができ、及び/又は収集部分150からデータを取得し得る。それは、前記収集部分150においてバッテリー(図示せず)を充電し得る。前記インターフェース又はアコモドメーター112は、当該インターフェース又はアコモドメーター112の一部でもあるピストン116を駆動し得るモーター又はアクチュエーター114も含み得る。前記ピストン116は、以下でより詳細に説明されるように、サンプル収集部分150でサンプルを駆動するために、サンプル収集部分150上でプランジャー152とインターフェースし得る。
【0023】
分析器ベース110は、118のように象徴的に表される電子機器(例えば、電力調整電子機器、通信電子機器、通信及び/又はデータ処理の例示的な目的のための特定用途向け集積回路(ASICs))をさらに含み得る。電子機器118は、ピストン116及びモーター114の起動、磁石170又は磁石801により作られる磁場の強さ、及び任意の測定装置の機能などの機能を駆動し得る。それは、部分150又はベース110装置において、過熱装置又は冷却装置を稼働させることができ、及び/又は前記収集部分150上のバッテリーを充電し得る。電子機器118は、中央処理装置(CPUs)及び本明細書に記載するデータ分析を実行することができる他のソフトウェアを含み得る。加えて又は代わりに、ベース110を、コンピューター又は他の装置と直接データを共有するように接続し得る。分析器ベース110は、Bluetooth可能とすることができ、及び/又はイーサネット、WiFi及び/又は携帯電話通信システムを介して結果を通信することができる。電子機器118は、患者のデータの収集及び相関のためにバーコードリーダー機能も含み得る。
【0024】
図1にも示すように、サンプル収集部分150は、分析(例えば、呼気分析)のために患者サンプルを抽出するためのサンプル抽出器154を含み得る。例えば、患者は、彼又は彼女の唇をサンプル抽出器154の端に置くことができ、及び注入チューブ156に息を吹き込み得る。前記サンプル抽出器154は、チューブ、穴、ノズル、又はマウスピースなどの任意の適切な種類の容器であり得る。呼気吸入部分150はまた、又は代わりに、他の形態において患者からサンプルを得るように構成され得る。例えば、呼気吸入部分150を、患者から唾液又は粘液ベースサンプルを取得するように構成し得る。呼気吸入部分150を、他の体液及び/又は物質からサンプルを得るようにも構成し得る。前記サンプル収集部分150の一部が、使い捨てでない場合、前記サンプル抽出器154は、それ自体が着脱可能及び使い捨てであり得る。
【0025】
部分150は、収集タンク160の両側に設置され、注入チューブ156及び排出チューブ158などの一連のチューブをさらに含み得る。前記チューブ156及び158は、前記サンプルからの破片をろ過するためのフィルターを含み得る。チューブ156及び158は、流れを遅らせ又は止めるためにバルブ及び/又はバッフルも含み得る。チューブ156及び158の両方は、水性の呼気、又は他のサンプルの部分150全体への流れを容易にするために、疎水性(例えば、それらの内壁を、疎水性コーティングで被覆してもよく、及び/又は前記チューブ自体を、完全に疎水性物質で作ってもよい)であり得る。チューブ156及び158は、呼気サンプルを収集する際、さらなる効率のために比表面積を増加し得る。部分150は、サンプル抽出器154から注入チューブ156を通して呼気サンプルを押し出すための生理食塩水、他の液体、及び/又はガスを放出する放出装置(例えば、ポーチ)162をさらに含み得る。任意の適切な推進薬のタイプを、放出装置162と組み合わせて使用し得る。適切な推進薬のタイプは、一般的に、様々な測定技術の精度(例えば、以下でより詳細に説明される磁気及び/又は蛍光測定技術)を実質的に、妨害、混同、又は低下させないものである。
【0026】
収集タンク160は、一般的に、以下により詳細に説明されるように、磁気的及び/又は蛍光性標識抗体及び/又は粒子を潜在的に含む、試薬164を保持する。試薬164は、多くの目的を有することができ、1つは、サンプル抽出器154により提供される患者サンプルからの病原体サンプルの収集及び分析を容易にすることである。収集タンク160は、使用前に様々な試薬を安定化及び/又は保存する化学物質も含み得る。収集部分150を複数回使用することができる変形例において、収集タンク160における前記化学物質は、使用する間、試薬を安定化及び/又は保存し得る。試薬を、粉末又は他の固体形態(例えば、凍結乾燥粉末として)保存することができ、及び前記収集部分150の使用時にサンプル又は他の運搬液に注入又は放出し得る。試薬を、また、液体(例えば、水性)形態でも保管し得る。特定の試薬を、ガスとして保管及び/又は供給し得る。
【0027】
収集タンク160は、ペルチェ冷却器などの冷却器を含み得る、又は隣接し得る。他の冷却器も、使用することができ、様々な電気冷却器、ドライアイス、液体窒素、“ブルーアイスゲル”(典型的に、予備冷却又は予備凍結)及び/又はこれらの要素の1つ以上を有する使い捨て冷却器カートリッジを含む。前記冷却器を、ベース110に配置してもよく、及びタンク160と熱的に連通してもよく、又はそれを、部分150の上に配置し得る。前記冷却器は、試薬の保存、及び前記呼気サンプルの凝縮又は圧密し得る。前記冷却器の機能の1つは、呼気サンプルを呼気の凝縮液に凝縮させることである。とりわけ、これは、収集部分150が正確な検査のために十分な呼気サンプルの量を得るのを促進し得る。
【0028】
患者が、サンプル抽出器154に息を吹き込むか、さもなければサンプルをサンプル抽出器154に供給する後に、当該サンプルは、注入チューブ156に入る。前記サンプルは、重力及び/又は圧力の力をうけて、前記収集タンク160に据えられる。前記サンプルはまた、又は代わりに、以下でより詳細に記載されるように、放出装置162により収集タンク160に押し出され得る。前記サンプルは、前記収集タンク160に入ると、それは、後で識別するために試薬164と結合し得る。それをまた、前述の冷却器により凝集することができ、測定感度及び検出を改善するために、呼気凝集液(EBC)を形成し得る。
【0029】
収集タンク160に収集されない前記サンプルの部分を、排出チューブ158を通して移行し得る。このように流れる前記呼気サンプルの部分は、捕捉されていないサンプル部分である。前記捕捉されていないサンプル部分を、排気フィルター166によりろ過し得る。排気フィルター166は、前記収集タンク部分150の外側の周囲環境に病原体(例えば、ウイルス)を放出する前に、捕捉されていないサンプル部分における、それらを除去し得る。排気フィルター166を、任意の適切なフィルター物質で構成することができ、エアロゾル化した呼吸器病原体の蔓延を阻止又は回避することができるHEPAタイプのフィルターを含むが、これに限定されるものではない。
【0030】
ベース110内のピストン116は、前記収集部分150のプランジャー152を作動させ、呼気サンプルの捕捉部分を、前記収集タンク160を通し、及びマイクロ流体チャネル168に推し進め得る。部分116及び152は、機械的に連通し得るが、プランジャー152のみが、患者から採取される呼気サンプルを潜在的に含むチューブ156内の内容物と流体連通し得る。ピストン116及びプランジャー152の作用は、凝集される(又は他の)呼気サンプルを収集タンク160からマイクロ流体チャネル168を通って分析システム(例えば、本明細書で説明される様々なマイクロ流体磁気分離機)の付近まで押し出し得る。具体的に、プランジャー152は、マイクロ流体チャネル168内の“流れ(Flow)”と付される経路に沿って、サンプルの流れを上方へ及び重力に逆らって作動することができる。このようにして、前記サンプルは、システム100の底から上方へ流れることができる。
【0031】
プランジャー152を、マイクロ流体チャネル168と連通するシステム100の部分(例えば、分析部分)を“プライムする(prime)”ためにも使用し得る。例えば、プランジャー152は、チャネル168又は装置100の他の場所に形成し得るガス(例えば、空気)及び又はガスバブルを置換するために、前記サンプルを加える前、及び/又は分析を実施する前に、流体をチャネル168に推し進め得る。前記ガスを、例えば、排気口166又はいくつかの他の出口機構から排出し得る。チャネル168内の気泡を除去することは、多く場合、有利である。気泡は、流体の流れを妨げ又は妨害し得る。それらはまた、ある種の測定を混乱させ得る。従って、気泡を除去又は排出するためにシステムをプライムすることは、多く場合、有用である。プランジャー152以外の機構を、システムをプライムし、及びこの方法で気泡を除去するために使用できることを理解されたい。プライミングのための任意の適切な構成は、本開示の範囲内である(例えば、ポンプシステム又は流体の流れを作動し得る他のシステム)。
【0032】
図1は、プランジャー152の作用による一方向の流れ(“流れ(Flow)”)を示しているが、実際は、この流れの方向を、反転し得る。例えば、サンプルは、重力により、ラベル付けされた“流れ(Flow)”の反対方向に、下向きに流れ得る。また、プランジャー152を引き出すと、液体が引き出しされ及び “流れ(Flow)”の反対方向に流体の流れを作り出し得る。この逆流を、故意に起こし得る。ある場合に、チャネル168内にサンプルの循環的な流れを作るために、プランジャー152を周期的に伸縮することは、有利である。そうすることで、以下でさらに説明されるシステム100の分析部分におけるサンプルの収集及び蓄積を助け得る。それは、サンプルと任意のキャリア流体又は本明細書に記載のシステムの他の構成要素との良好な混合も可能にし得る。前記循環は、システム100の分析部分にさらされるサンプルの量をさらに改善し、及びその結果、前記測定の信号対雑音比を増加又は増大させ得る。この循環プロセスを、システム100の上部付近のサンプルを収集するために、システム100の上部に向かって(例えば、フィルター166の近く)配置され得るサンプル収集部分又はリザーバ(図示せず)により、支援し得る。この収集部分又はリザーバは、前述のフロー循環のためにサンプルを提供することができる。さらに、前記収集部分又はリザーバは、さらなる分析(例えば、複数の分析技術が有利である状況及び/又は繰り返し分析のため)のためにシステム100から後で除去するため、及び/又は保管のためにサンプルを単に保持できる。
【0033】
図1に示すように、マイクロ流体チャネル168を、以下でより詳細に説明されるように、磁気分離及び検出のために、磁石170又は801と並べ得る。流れの矢印171は、図1で示されるように、マイクロ流体チャネル168内のサンプルの流れの例示的な方向を与える。検出の方法の1つは、ベース110上に配置され得る検出システム172を使用することを含む。代替的な構成において、検出システム172を、部分150上に配置し得る。システム172は、蛍光性標識抗体、分子、及び/又は合成粒子若しくは他の粒子の蛍光を介して、粒子を検出し得る。図1は、検出システム172の例示的な位置を示す。前記検出システム172を、ベース110上に位置する場合、前記収集部分150の隣接部分は、前記検査システム172と前記チャネル168との間で光を伝達し得るように、窓(図示せず)を持ち得る。
【0034】
前記収集部分150を、複数回使用することができる場合、その後、その態様を、入れ替え及び交換し得る。上述したように、前記サンプル抽出器154を複数回使用するために、入れ替え及び交換し得る。さらに、前記収集タンク160及び試薬164を、前記排気フィルター166と同様に、交換し得る。これら構成要素の一部(例えば、前記収集タンク160及び試薬164)を、モジュール形式又はカートリッジ形式で交換し得る。交換の間、前記収集部分150の露出される部分を、当該部分150の内部を汚染しないように、使い捨てのカバーで覆い得る。
【0035】
図2Aは、分析器又はベース110のインターフェース又はアコモドメーター112から取り外されるサンプル収集部分150を示す。特に、図2Aは、サンプル収集部分150のプランジャー152の外側のハウジングを示す。外側のハウジング174は、プランジャー152上に液密のシールを形成し、プランジャー152を外部要素から遮断し得る。ハウジング174は、従って、部分150の内部(例えば、注入チューブ156及び/又は収集タンク160内のサンプル)において、サンプル及び試薬164の汚染を防止することになる。外部のハウジング174を、上述したように、部分150内の流体の流れを作動させるために、プランジャー152と移動し得る。外部のハウジング174が、プランジャー152と共に移動する場合、部分150の内部を前記要素からの遮断すること、及び部分150の内容物からピストン116を遮断するように維持し得る。前記後者は、使い捨てでなくてもよいピストン116を、収集部分150の内部の呼気サンプルで汚染することから防止する。図2Aは、磁石170の外側ハウジング176及び部分150のマイクロ流体チャネル168をさらに示す。
【0036】
挿入図2Bは、部分150の内部に位置する例示的なチャネル168及び磁石170の構成600を示し、本明細書では、“マイクロ流体磁気分離機(microfluidic magnetic separator)”を意味する。図2Bに示される前記分離機の構成600を、図6Aにより詳細に示し、及び以下により詳細に説明される。他の分離機の構成(例えば、図8の文脈に後述する構成800)を、図2Bに示される構成600の代わりに、システム100と組み合わせて使用し得ることに留意すべきである。外側ハウジング176は、前記収集部分150のマイクロ流体チャネル168及び前記検出システム172の間の光の伝達を可能にする前述の窓(図示せず)を含み得る。
【0037】
図2Aに戻ると、ベース110は、出力報告機能120及び122を含む。例示的な出力報告器120は、システム100の状態(例えば、電源オン、準備完了、内部温度、詰まり又は異常が部分150又は110に存在するかどうか)示し得る“インジケーター(indicators)”を報告する。出力報告器122は、単純な陽性/陰性報告も示し得る。病原体感染を示す陽性報告を、例えば、赤色LEDを照射することにより示し得る。病原体感染がないことを示す陰性報告を、緑色LEDを照射することにより示し得る。前記色及び指標は、単なる例示に過ぎないことを理解されたい。他の構成は、可能であり及び本開示の範囲内である。例えば、タッチスクリーン又は他のディスプレイを、提供してもよい。
【0038】
試薬及びラベリングシステム
図3は、本開示及びシステム100と共に使用され得る例示的な病原体標識システム300を提示する。図3は、抗体320で被覆された磁性粒子310を示す。前記被覆された磁性粒子310を、図1に示すように、前記収集タンク160に隣接する試薬164の中に含み得る。患者サンプルは、当該サンプルを前記収集タンク160に導入する場合、以下に記載するように、前記被覆された粒子310に結合又は付着する。以下により詳細に記載されるように、前記サンプル及び前記磁性粒子310の間の取り付ける手段は、コーティング320である。
【0039】
コーティング320は、システム100により標識される検査の対象である既知の病原体上の既知の部位に好ましく結合する抗体など、任意の関連する抗体を含み得る。例えば、コーティング320は、SARS-CoV-2又は他のコロナウイルスに結合し得る。コーティング320は、そのようなコロナウイルス、又は他の病原体のスパイクタンパク質又は他のタンパク質に向けられる単クローン性の抗体を含み得る。しかし、他の抗体のような薬剤が、アプタマーなどの用途に応じて可能であることを理解されたい。加えて、又は代替的に、要素320は、短鎖可変領域フラグメント(ScFvs)などの他の分子を含み得る。抗体320は、コロナウイルス以外の病原体(例えば、結核又はマラリア、又は様々な細菌)と結合し得る。抗体320を、執筆時点で未知の又は本明細書で特に説明されていないようなウイルス又は他の病原体と結合するそれらに改変、置換、変更し得る。図3は、磁性粒子310に関してコーティング320のほぼ均一な分布を示すが、これは単なる例示であることを理解されたい。そのような均一な分布は、システム300の例の1つに過ぎず、及びシステム100を開示されるように操作するために必要ではない。
【0040】
システム300は、磁性粒子310を含む、任意の適切な免疫磁気ラベルを含み得る。そのような粒子310は、例えば、磁性ナノ粒子を含み得る。原則的に、様々なサイズの磁性粒子を、採用することができるが、結合に影響を及ぼし得るそのような粒子の特性(例えば、立体障害)を、考慮する必要がある。それらは、磁鉄鉱でドープされる単分散のポリスチレンビーズであるDynabead M450も含み得る。磁性粒子310の他の例示的な形態は、磁鉄鉱でドープされるデキストラン粒子であるMACS粒子などのコロイド状磁気ラベルを含む。分子磁性ラベルも、使用し得る。これらは、鉄貯蔵タンパク質のフェリチンを含む。免疫磁気ラベルは、典型的に、例えば、常磁性化合物又は一次抗体若しくは二次抗体いずれかに結合される分子を含む。ラベリングを、標識病原体(すなわち、システム100により検査される病原体)上の目的のマーカーに抗体を付着させることにより実行する。任意の適切な磁性物質を、コバルト、鉄、ニッケル、ネオジウム、磁鉄鉱などを含有する物質を含む、磁性粒子310のために使用し得る。前記磁性物質は、非磁性部分(例えば、ポリマー又はガラスなどの非磁性マトリックスに磁性物質を埋め込むこと)を含み得る。
【0041】
図4は、検査システム100においてシステム300と組み合わせて使用され得る別の病原体ラベリングシステム400を示す。図4に示すように、システム400は、コーティング320とは異なる検査対象病原体の態様に特異的な抗体を含み得る、別のコーティング420に被覆された蛍光性標識粒子410(“マイクロ粒子(microparticles)”を含む粒子は、本明細書で使用されるときに、“マイクロビーズ(maicrobeads)”と同等に意味し得る)を、含み得る。コーティング320の文脈で上述するように、コーティング420は、抗原ではない分子(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE2)、アプタマー、及びScFvs)、又は検査対象病原体に結合し得る別の生体高分子を含み得る。コーティング420は、コーティング320と異なるSARS-CoV-2又は他のコロナウイルスのスパイクタンパク質のエピトープに特異的な抗体も含み得る。
【0042】
蛍光性標識粒子410は、多数の異なるサイズであり得る。いくつかの変形例において、粒子410は、ナノ粒子又はマイクロ粒子であり得る。いずれにせよ、粒子410のサイズを、後述するマイクロ流体測定及び磁気測定における、いくつかの実施上の配慮点のバランス(例えば、磁気分離機/フェログラフ構成の磁場勾配における常磁性タグ/双極子モーメントにより引き起こされる電気泳動移動度が粒子の半径に比例する粘性抵抗力より大きいかどうか)をとるように選択する必要がある。磁力が小さい場合に、大きな抗力は避けるべきである。しかし、粒子410はまた、検出システム172により容易に観察されるように十分な大きさであるべきである。
【0043】
図4には示されないが、蛍光性標識粒子410は、好ましくは、免疫蛍光検査で一般に使用される任意の蛍光色素分子などの蛍光物質を含む。蛍光物質は、蛍光タンパク質、非タンパク質有機蛍光色素、及び特定の染料を含み得る。一般的な蛍光色素は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミン(TRITC)又はAlexa Flour(登録商標)色素を含む。そのような蛍光物質は、蛍光性標的粒子410及びそれらが付着した病原体の検出を、比較的迅速かつ容易にし得る。蛍光性標識粒子410は、ガラス、ポリマー、又は蛍光物質を収容できるいくつかの他の適切な構造材料を含み得る。代替的な変形例において、蛍光性標識粒子410は、光学的、放射線学的、磁気的、化学的、又は電気的手段によって検出され得る他の物質を含む。さらに、システム400は、任意の適切な免疫蛍光性標識を含み得る。免疫蛍光性標識は、典型的に、例えば、抗体に結合される蛍光性分子を含む。システム400はまた、染色される粒子410も組み込み得る。これは、粒子410を蛍光性色素よりも顕著に明るくする利点を持ち得る。
【0044】
図5Aは、標識病原体510の標識検査のために、システム500に組み合わされるシステム300及び400を示す。システム500において、病原体510は、コーティング320及びコーティング420の両方に結合し、凝集体520を形成する。前記用語“凝集体(aggregate)”を、粒子の凝集を意味するために、本明細書で使用することに留意する。前記凝集体自体を、本開示と一致して、“粒子(particle)”とも呼び得る。上述のように、抗体320及び420を、磁性粒子310及び蛍光性標識粒子410が同じ病原性たんぱく質の異なるサブユニットと結合するように選択し得る。図5Bは、この場合を示している。より具体的には、図5Bは、凝集体520の概略図を示し、前記磁性粒子310及び蛍光性標識粒子410は、病原体510上のスパイクタンパク質の異なるサブユニットS1及びS2とそれぞれ結合し、病原体510は、コロナウイルスである。そのような抗体は、現在、SARS-Cov-2について市販されている。SARS-CoV-2Sタンパク質は、SARS-CoVSタンパク質と~76%の相同性を持ち、及び他の一般的なコロナウイルスからのSタンパク質より低い同意性を持つことが知られており、高い親和性及び最小限の望ましくない相互相関性(cross-relativities)を持つ標的タンパク質を認識できる抗体検査システムを開発することが重要である。
【0045】
磁気的にタグ付けされる病原体510及び蛍光性標識粒子410の凝集体520は、懸濁液中(例えば、収集タンク160内)で形成し、各凝集体520の磁気双極子を形成する。この結合は、凝集体510に潜在的に磁気マーカー(310)及び蛍光マーカー(410)の両方を与え、検出又は識別の2つの相補的手段(すなわち、磁気及び蛍光)を容易にする。この標識の相補性は、有利である。例えば、それは、呼気サンプルにおいて、期待する病原体シグナルの比較的低レベルの増幅を提供することができる。これは、蛍光性色素410を磁性粒子310と共に、病原体510に結合するサンドイッチ分析(例えば、システム500)を用いると、粒子310又は410いずれかによる複数の部位を結合することを可能にし得るからである。言い換えれば、各病原体510を、磁場により引き起こされる単一の病原体510での磁気効果を効果的に2倍又は3倍(又はそれ以上)にする複数のマーカーで標識することができる。これは、転移型分離機のための磁気泳動移動度及び結合分離機のための付着力を増加させる。研究は、呼気飛沫は、他のより侵襲的な方法(例えば、スワビング)から得られたサンプルよりも、比較的低いレベルの病原体(例えば、SARS-CoV-2)を含むことを示した。前述の2段階濃縮プロセス(すなわち、最初に病原体を磁性粒子310でタグ付けし、次いで磁気的にタグ付けされた病原体を蛍光性標識粒子410でタグ付けする)は、懸濁液中の磁気的及び蛍光性標識病原体の凝集体520をもたらす。
【0046】
図5Aに戻ると、凝集体520は、同一であるように表されるが、これは常にそうであるとは限らないことを理解する。凝集体520は、付着される病原体510の量、蛍光性標識粒子410、及び重要なことに付着される磁性粒子310の数において異なり得る。特に、病原体510に付着する磁性粒子310の違いは、異なる磁気双極子モーメントを有する凝集体520を作成し得る。以下により詳細に説明されるように、磁気双極子モーメントにおけるこれらの違いを、異なる粒子を分離し、及び病原体量などの量を推定するために使用することができる。
【0047】
磁気分離及び分析
磁性粒子の基本原理は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Zborowskiらによる米国特許第5,968,820号においてより詳細に説明されている。簡単に、マイクロ流体チャネル168のような導管内の磁気標識粒子(例えば、磁性粒子310又は凝集体520)の流れは、チャネル168内の変化する磁場に応答して方向を変化する。対照的に、非磁性粒子の流れは、磁場の変化により変化しない。従って、マイクロ流体チャネル168に磁場の変化を導入することで、磁気標識粒子、又は凝集体を磁性標識のない粒子から区別することができる。さらに、磁場変化に応じた流れの変化は、凝集体520に付着した病原体の量の把握を与えることができる。磁気的にタグ付けされる粒子の流れ(凝集体520)は、磁束密度の勾配の2乗である、∇B2によって決まり、とりわけ、付着した磁性粒子の密度(α)により重みづけされる。米国特許第5,968,820号の式1及び2を参照されたい。システム500の場合、凝集体520の付着した磁性粒子の密度(α)は、コーティング420(及び、病原体510)を介してその表面に結合する磁性粒子310の量によって決まる。従って、磁気標識される患者のサンプルを変化する磁場を通すことは、それらの磁性付着密度に基づいて凝集体520の分離をすることができる。この文脈では、磁性粒子の数は、病原体510の付着に依存するので、粒子のこの分離は、付着される病原体の数にも関連する。
【0048】
原則として、粒子520を区別するために磁性粒子の付着の密度効果(以下、双極子モーメントと呼ぶ)を利用する任意の適切な構成を、システム100で病原体を検出するために使用することができる。すなわち、米国特許第5,968,820に開示される双極子分離機システムのいずれか(例えば、システム200又は図4の双極子分別機)を、システム100に採用し得る。検査システム100と組み合わせて使用され得るいくつかの特定のシステムの説明が、続く。しかし、本明細書に記載される前記システムは、検査システム100と使用され得るそのようなシステムの排他的又は網羅的なリストを表していないことを理解されたい。検査システム100及び本開示を、本明細書に明示的に開示されているか、参照により本明細書に開示されるか、又はそうでないかにかかわらず、任意の適切な磁気分離システムと使用し得る。
【0049】
図6Aは、1つの例示的変形例600における、システム100のマイクロ流体チャネル168及び磁石170部分の内部の概略図を示す。図6Aに示す前記構成は、一般的に、高勾配磁気分離(HGMS)と呼び、及び“フェログラフ(ferrograph)”又は“マイクロフェログラフ(microferrograph)”と呼ぶことができる。その中において、前記磁気170は、凝集体520の磁気特性に基づいてそれらを捕捉する傾向があるチャネル168において、高磁場勾配のいくつかの領域を形成する。
【0050】
マイクロ流体チャネル168及び磁気170は、一緒に、マイクロ流体磁気分離機600を形成する。図6Aに示すように、チャネル168を、封入されるマイクロチャネルアセンブリ610の内部に作製する(例えば、微細加工又はMEMSを介して)。前記チャネル168を、磁石170の極間ギャップに押し付け得る。前記磁石170は、永久磁石(例えば、コバルト、鉄、レアアース、NdFeB)又は他の磁石を含む磁気マニホールドを含み得る。図6Aにおける例では、前記磁石170は、直列又はアレイ状に設置される4つの台形状の磁気素子170a~170dを含む。前記磁気素子170a~170dを、非磁性物質620(例えば、低炭素鋼などの鋼)を用いて互いに隣接し得る。この構成において、台形の2つの平行な辺のより小さい方は、磁性素子170bの場合に示すように、極間磁気ギャップN/Sを形成する。要素630は、磁石170が置く任意のベースである。要素630は、例えば、図2に示される外側ハウジング176の一部であり得る。
【0051】
磁石170により、提供される磁場勾配を最大化するために、前記磁気素子170a~170bを、交互の極性(すなわち、図6Aに示される170a N/S、170b S/N、170c N/S、及び170c S/N)に配置される。前記チャネル168及び磁石の寸法は、異なってもよく、及び特定の用途に応じて(例えば、使用される粒子/凝集体310/410/520の種類、質量、及び体積、及びそれらの磁気双極子モーメント、並びに凝集体520上の予想される病原性の付着、及びキャリア流体の特性(例えば、粘性)に応じて)設定する必要がある。チャネル168の壁の例示的な厚さは、400μmであり、及び直径は、250μmである。磁気素子170a~170dの高さ及び幅は、例えば、mmのオーダーであり得る。この構成において、例示的な磁気ギャップ幅(すなわち、磁気素子170aにおけるN及びSの間の距離)は、1mmのオーダーであり得る。
【0052】
図6Aは、チャネル168に隣接する例示的な配置における、検出システム172の概略図も示す。検出システム172は、粒子410(従って、凝集体520)が蛍光を発するように光を提供し得る。検出システム172を、ベース110上に配置する場合、それは、前記収集タンク150の外側ハウジング176内の前述の窓を通して、光を通信し得る。システム172は、チャネル168に沿った距離に対する検出された蛍光を決定する。この場合、検出された蛍光は、凝集体520の数に相関がある。以下により詳細に説明されるように、チャネルに沿った距離との蛍光の相関は、とりわけ、サンプルを提供した患者におけるウイルス量を明らかにすることができる。前記マイクロチャネルアセンブリ610は、最後に透明であってもよく、チャネルにおける粒子410の蛍光からの光が検出システム172に到達することを可能にする。前記マイクロチャネルアセンブリ610全体は、透明あり得る。代わりに、前記アセンブリ610の部分(例えば、検出システム172又は上述の窓に隣接する部分)は、透明であり得る。
【0053】
図6Bは、マイクロ流体磁気分離機650のような、図6Bのマイクロ流体チャネル168及び磁石170の実際の実装の写真を示す。ペニー601は、遠近感のために含まれている。マイクロ流体磁気分離機650における構成要素の寸法は、上記のマイクロ流体磁気分離機600の文脈で説明される例示的な寸法に対応する。
【0054】
図7Aは、システム100と組み合わせた例示的なHGMSマイクロ流体磁気分離機構成700(例えば、マイクロ流体磁気分離機600又は650を介して実施される)の操作の概略図を示す。図7Aに示されるように、マイクロ流体磁気分離機700は、磁石アレイ170及びマイクロ流体チャネル168(システム100について図1にも示される)を含む。図7A中の凝集体フロー710の方向、同様にマイクロ流体チャネル168の方向を、図1中の流れ171及びマイクロ流体チャネル168の方向から回転する。これは、単に説明のためであり、及び設計又は構成の違いを意味しない。
【0055】
図1の文脈で上述したように、チャネル168における流れ710の方向を、反転し得る(例えば、プランジャー152を引き出することにより)。流れ710を、何回も循環し得る(例えば、順流し、次いで逆流する、順流し、次いで逆流する、など)。図1の文脈において説明されるように、そのような循環は、サンプルがマイクロ流体磁気分離機700上に蓄積するのを助け、キャリア流体と混合し、及び信号対雑音比を増加させるのに有用であり得る。図7Aに示されていないが、収集タンクを、チャネル168の一方又は両方の端(又はチャネル168の他の場所)に配置し、循環的な流れのために、又は貯蔵のためにサンプルを収集し得る。循環的な流れ、流れ方向の反転、及び流体貯蔵のこれらの原理を、本明細書に記載される変形例のいずれにも適用し得る。
【0056】
説明のために、図7Aは、磁気双極子モーメントの点で異なる凝集体520の4つの異なるタイプ(図5A)、すなわち凝集体タイプ720a~720dを示す。凝集体720a~720dは、患者サンプル(サンプル抽出器154を介して採取された)とサンプル収集部150の収集タンク160内の試薬164とを強制的に接触させることから形成された凝集体520である。複数の磁気素子(例えば、図7Aのような4つ)の使用は、より多くの素子を採用することにより、凝集体が堆積するより多くの時間を与えるため、凝集体720a~720dの収集効率を増加し得る。チャネル168における凝集体720a~720dの流量を、場合によって、感度を失うことなく増加することができる。任意の適切な磁性素子の数を、磁石720において使用することができ、及びそれでも本開示と一致し得ることを理解されたい。場合によって、単一の磁気素子のみを、使用し得る。
【0057】
マイクロ流体チャネル168を通って流れる間、凝集体720a~720dは、磁気素子170a~170dから発される変化する磁場Bを受ける。それらは、素子170a~170dに引き寄せられ、及び前記チャネル168の静止表面168aの上に捕捉される。前記引力は、前記凝集体の双極子モーメント次第であるため、前記捕捉は、磁気双極子モーメントに従って凝集体720a~720dを効率的に区別する。凝集体520を、捕捉した後、データを、収集及び/又は分析することができる(例えば、前記凝集体520内の蛍光性標識粒子410の蛍光を測定することにより)。
【0058】
凝集体720aは、最も大きい磁気双極子モーメントを有し、及び黒色に着色される。凝集体720aは、比較的多数の付着した病原体510に相関する比較的多くの付着した磁性粒子310を有するため、それらは、最も大きい磁気双極子モーメントを有し得る。最も小さい磁気双極子モーメントを有する凝集体を、720dと名付け、及びオレンジ色に着色した。凝集体720dは、比較的少数の付着した病原体に起因して、比較的少数の付着した磁性粒子310を有するため、それらは、最も小さい磁気双極子モーメントを有し得る。中間の磁気双極子モーメントを有する凝集体を、それぞれ、720b及び720cと名付け、及び茶色及び緑色に着色した。前記凝集体720a~720dの異なる磁気双極子モーメントは、上述のように、付着した病原体の数が異なるため、各凝集体に付着した磁性粒子310の数が異なることに相関する。
【0059】
図7Aに示すように、最も大きい磁気双極子モーメントを有する凝集体720aは、経路730aを横断し、最終的に、磁気素子170aの近くに集まる。凝集体720aは、マイクロ流体チャネル168の開始Sから最小の平均距離740aを横断する。上述のように、これらの凝集体は、付着した病原体510の数がより多いことによって、磁性粒子310の付着が増加しているため、より大きな双極子モーメントと有し得る。対照的に、凝集体720dは、マイクロ流体チャネル168の開始点Sから経路730dに沿って、最大の距離740dを横断する。これは、凝集体720dが、最も小さい磁気双極子モーメントを有するためであり、磁性粒子310との付着が少ないことに起因し得る。中間の凝集体720b及び720cは、磁性粒子310の付着の中間レベル及び病原体の付着の中間レベルに起因して、それぞれ、中間の距離730b及び730cを移動し得る。
【0060】
磁気素子170a~170dを、図6において同様であるように図解しているが、それらは、そうである必要はないことを理解されたい。磁気素子170a~170dは、磁場起源(例えば、永久磁石又は電磁石)、磁場強度、及び/又は他の特性の点で異なり得る。さらに、4つの磁気素子を、示すが、他の適切な磁気素子の数を、使用してもよい。いくつかの場合は、1つの磁気要素のみを必要とし得る。
【0061】
凝集体720a~720dは、磁気素子の近くに集まると、それらを、効果的に選別した。次に、それらの相対的な分布を、光学的又は他の分析技術を使用し評価し得る。上述したように、1つのそのような技術は、マイクロ流体チャネル168に沿った様々な位置で凝集体520中の蛍光性標識粒子410から蛍光データを収集することである。チャネル開始Sからより短い距離(例えば、740a又は740b)における凝集体のより高い濃度は、患者においてより多い病原体量を示し得る。チャネル開始Sからより長い距離(例えば、740c又は740d)における凝集体のより高い濃度は、患者においてより少ない病原体量を示し得る。凝集体720a~720dにおける蛍光性標識粒子410の蛍光を、LED光を使用するなどの任意の適切な方法(例えば、図1及び図6Aにおける検出システム172を使用することによる)により励起し得る。しかしながら、LED光は、単に例示的なものである。他の照明源を、例えば、蛍光性標識粒子410に蛍光を発させるために、本開示の文脈において使用し得る。例えば、蛍光データを、UV照射、レーザーライト、及び/又は任意の他の適切な放射のタイプを使用して、蛍光性標識粒子410を照明することにより取得し得る。
【0062】
チャネル168内の様々な位置における蛍光強度を、カメラ(例えば、デジタル画像処理用)、光センサー、又は巨大磁気抵抗、ホールセンサー、共振センサー及び磁気抵抗などのセンシングモダリティを含むがこれらに限定されない任意の他の適切な方法を介して収集し得る。磁性素子170a~170dの1つ以上の近い領域内の収集した凝集体の分布のさらなる分析のために、それらのデジタル画像を得ることは有利であり得る。例えば、前記データは、凝集体が、蛍光性標識粒子410への付着に関して単分散であるかどうかを明らかにし得る。このデータを、システム診断又は上述の装置及び工程の微調整のために使用し得る(例えば、チャネル168の領域上の磁場変動が、その領域内の変動を作り出すかどうかを決定するため)。代わりに、各収集領域を、前記収集された蛍光強度に基づく単一の平均輝度を割り当て得る。この後者のアプローチは、1つ以上の部分(例えば、収集部分150)が簡略化された、及び/又は使い捨てであるシステム100のバージョンにおいて有用であり得る。単一の評価された平均蛍光測定値は、迅速な陽性/陰性検査も可能にし得る。
【0063】
蛍光強度データを取得すると、システム100により(例えば、ベース110に含まれる電子機器118により)収集及び分析し得る。例えば、デジタル画像処理は、上述のように、蛍光強度画像に対して実行し得る。前記デジタル画像処理を、任意の適切なソフトウェアプラットフォーム、例えば、Image Pro Plusにより実施し得る。使用され得る画像処理の例は、個々の凝集体/粒子/細胞/他の収集された物体を区別するためのエッジ分析、ノイズを除去及び画像強度を閾値化するためのフィルタリング(例えば、凝集体又は粒子サイズと一致しない破片及び大きな物体を除去する)、及びバックグラウンドからそれらを分離するための凝集体のバイナリマップの生成を含む。後者の技術は、凝集体のより定量化、例えば、凝集体集計アルゴリズムを介したより正確な凝集体集計を促進し得る。検査中の凝集体としてカウントするには大きすぎる、又は小さすぎる画像内の物体(例えば、破片)を特定することにより、データの精度をさらに高め得る。
【0064】
図7B~7Dは、他の磁気分離機構成750を示す。構成750において、磁気特性の異なる凝集体720e及び720fの少なくとも2種類が存在する。第1種類の凝集体720eは、相当な数の付着した磁性粒子310を有するので、それらは、かなりの磁気双極子モーメントを有する(例えば、図5Aの凝集体520のように)。これは、おそらく、凝集体720eが、実質的な病原体510の付着物を有することを示す(図5A参照)。凝集体720eを、オレンジ色に着色する。第2の種類の凝集体720fは、付着した磁性粒子310の実質的な数を不足しているため、それらは十分な双極子モーメントを有さない。凝集体720fを、青色に着色する。凝集体720fは、おそらく、凝集体720eよりも低い病原体510の含有量を有する。
【0065】
図7Bに示すように、凝集体720e及び720fの両方を、751で一緒にチャネル168に導入する。一般に、凝集体720e及び720fの両方は、チャネル168を下る752の方向に流れる。流れ752を、プランジャー152の移動(図1)により作動し得る。しかしながら、凝集体720e及び720fは、また、チャネル内でそれらを作用する力との相互作用により、チャネル表面168aに据え得る。これらの作用する力は、図7Bで示すように重力Gを含み得る。それらは、凝集体720eの双極子モーメントを介して凝集体720eにより受ける磁石170eへの効果的な引力をさらに含み得る。この配置において、G及び磁気相互作用の両方は、凝集体を表面168aの方へ引き寄せる傾向がある。磁石170eは、図7Aにおける磁気素子170a~170dの台形形態を含む、任意の適切な形態を持ち得る。
【0066】
図7Cに示されるように、凝集体720e及び720fの両方は、入口751から磁石170eの付近までの平均経路753を辿る。凝集体720e及び720fが辿る前記正確な経路は、異なる力を受け得るため、それらは少し異なり得る。いずれにせよ、図7Cに示されるように、凝集体720e及び720fの両方は、位置755aで磁石170eの近くのチャネル表面168aに据える。
【0067】
図7Dに示されるように、磁石170eを、次いで、方向760に沿って第2の位置755bへ移動し得る。磁石170eのこの移動は、方向760に沿った磁性凝集体720eの流れを引き起こし得る。凝集体720eは、それらの双極子モーメントを介した効果的な引力のため、磁石170eと共に移動する傾向がある。凝集体720eは、磁石170eの新しい位置(すなわち、755b)でチャネル表面168aに再び据える。その反面、凝集体720fは、磁石170eの移動にもかかわらず、位置755aにとどまる。これは、凝集体720fが、実質的な双極子モーメントを不足しており、及びその結果、磁石170eに対する有効な引力が不足するためである。
【0068】
図5の文脈で上述したように、凝集体720eは、病原体510を介して磁性粒子310に付着しているため、それらは、実質的に双極子モーメントを有する。従って、磁石170eとの双極子相互作用に応答する凝集体720eの移動(図7D)は、病原体510の付着に基づく凝集体720fからそれらを効果的に区別する。言い換えれば、磁石170eの移動に対する応答は、実質的な病原体の付着がある凝集体(すなわち、磁性凝集体720e)を実質的な病原体の付着がないもの(すなわち、非磁性凝集体720f)から効果的に分離又は選別する。この分離を、患者が病原体510に対して陽性反応を示すかどうかを検出するために、蛍光検出(例えば、検出システム172を使用)と組み合わせて使用することができる。上述したように、凝集体のこのような分離を、患者における病原体510の量を推定するためにも使用することができる。構成700との関連で上述した検出方法のいずれもが、構成750と共に使用され得る。
【0069】
図8は、システム100と組み合わせて別の例示的なマイクロ流体磁気分離機構成800(例えば、マイクロ流体分離機600又は650を介して実施される)の操作の概略図を示す。前記構成800を、HGMS構成600、650、700、及び750とは対照的に、一般に開放勾配磁気分離(OGMS)と呼ぶ。図8に示されるように、マイクロ流体磁気分離機800は、図1に示される磁石801及びマイクロ流体チャネル168を含む。構成800の1つの例示的な利点は、バイナリ(binary)(陽性又は陰性)ではなく、ウイルス発現のレベルを決定するためにより容易に使用できる可能性があるということである。
【0070】
図8の磁石801は、磁石801が、高磁場勾配の領域を与える固有の極(unique poles)(例えば、170a~170d;例えば、図6参照)をそれぞれ有する目立たない磁気素子を含まない点で、HGMS構成(600、650、700、及び750)における磁石170とは異なる。その代わりに、磁石801を、P1及びP2と標識される2つの極(N/S)が、チャネル168の両側にあるように、配置する。このように、磁石801は、チャネル168の全体にわたって適度な磁場勾配、又は等磁場(isodynamic field)を提供する。以下により詳細に説明されるように、磁石801により与えられる適度な磁場勾配は、チャネル168の表面168b上に凝集体520を捕捉するのではなく、流れの中で流れる凝集体520の偏向を引き起こす(例えば、図7Aに示されるように)。前記偏向の量は、凝集体520の磁気双極子モーメント及びそのジオメトリーの関数である。構成800の1つの利点は、より多くの凝集体520を、シグナルを強めるためにこの方法で収集し得ることである。凝集体を、病原体510の量に関連する磁気泳動移動度によって区別し得る。これを、患者の呼気当たりの全量(単一の呼吸サンプルと仮定する)及び患者に関連する感染性を決定するために使用し得る。このデータを、ゲノム解析などの後に来る解析のために収集、測定及び放出することができる。
【0071】
構成800における磁石801の配置は、凝集体を変化する磁束を受ける領域800aを作り出す。構成800の別の領域である、収集領域800bがあり、そこは、前記凝集体820a~820gを変化する磁束から遮断される。後者を、以下でより詳細に説明する。
【0072】
構成700などで、図8に示される流れ810の前記方向を、図1における流れ171の方向に対して回転する。これは、単に例示のためであり、及び設計又は構成の相違を示さない。構成700及び800の両方を、システム100と組み合わせて使用することができる。それらのチャネルを、図2Bに示されるような部分150に対して、すなわち、集合体が、矢印171の方向に流れるように向かわせ得る。
【0073】
説明のために、図8は、7つの異なる凝集体520のタイプ(図5A)、すなわち、凝集体タイプ820a~820gを示す。凝集体820a~820gは、磁気双極子モーメントの点で異なる。それらは、患者のサンプルとサンプル収集部分150の収集タンク160内の試薬164とを強制的に接触させることから形成される凝集体520である。凝集体820a~820gは、チャネル吸入口168aを介して前記チャネル168に入る。しかし、凝集体820a~820gがチャネル168を出る方法は、磁石170がチャネル内の軌道にどのように影響するかによって決まる。
【0074】
最も小さい磁気双極子モーメントを有するオレンジ色の凝集体820aは、領域800a全体にわたって、磁石170によってほとんど影響を受けない。それらは、実質的に偏向することなく、ポート168cを通して、チャネル168を出る(すなわち、チャネル168を横切る本質的にまっすぐな経路を辿る)。この構成において、ポート168を介して収集又は測定される凝集体820aを、検査の標識病原体に関して陰性と判断し得る。なぜなら、それらが構成800によって実施されるマイクロ流体磁気分離機試験により影響を受けるにはあまりにも少ない磁性粒子310を収集しており、それらが、病原体510の付着がほとんどないことを示しているからである。チャネル168における全ての他の凝集体820b~820gの軌道は、ある程度影響を受け、及びその結果、陽性の結果を表している。それらの偏向は、凝集体820b~820gが有意な磁気双極子モーメントを有し、有意な病原体付着と相関することを示すという意味で陽性である。
【0075】
収集領域800bにおいて、凝集体820b~820gを、それらの様々な偏向に従って分離及び収集し得る。より具体的には、陽性の凝集体820b~820gを、分析器830内のチャネル830b~830gの1つに導く(チャネルラベル830aは、チャネルラベルのアルファベット部分が凝集体ラベルと一致するように、便宜上省略されていることに留意する)。図8に示すように、例えば、凝集体800bを、分析器830内の他の凝集体から分離する出力チャネル830bを介して収集する。同様に、凝集体820c~820gを、それぞれの出力チャネル830c~830gに分離し、及びチャネル化する。分析器830の出力チャネルとして示されていないが、病原体陰性な凝集体820aを収集する出力168gも、分析のために分析器830に供給し得る。
【0076】
凝集体820a~820gを、構成800又は750に従って磁気的に分離すると、それらの相対分布を、構成700の文脈で詳細に説明されるように、蛍光技術を使用して評価する。構成700又は750の文脈で上述した技術のいずれも、構成800からデータを収集及び分析するために使用し得る。
【0077】
操作方法
図9A及び9Bは、潜在的な病原体を検出するためにシステム100を使用する例示的な方法示すフローチャートを提示する。
【0078】
図9Aから始めて、工程902において、サンプル収集部分150を、患者からサンプルを収集するために使用する。上述したように、前記サンプルを、サンプル抽出器154をマウスピースとして使用することを含む、様々な方法で収集することができる。この場合、前記患者は、呼気が注入チューブ156に入るように、サンプル抽出器154に呼気を吹き込み得る。前記患者の呼気は、標的病原体、及びフィルターによって後に除去され得る破片を含み得る。
【0079】
工程904において、前記サンプルを、注入チューブ156を通じて、前記収集タンク160に下向きに押し出す。これを、重力によって達成し得る。例示的な場合、注入チューブの156の内部は、前記サンプル(典型的に水を含む)が内部に付着しないように、疎水性である。その代わりに、前記サンプルは、前記収集タンク160が配置され得るチューブ156の底部に向かって沈降する(図1)。ある場合において、前記サンプルは、放出装置162を介して注入チューブ156を押し出され得る。例えば、放出装置162は、生理食塩水を放出し(例えば、スプレーとして)、サンプルを収集タンク160に向かって注入チューブ156を洗浄し得る。この工程において、前記サンプルを、ろ過し、破片を除去し得る。
【0080】
工程906において、前記サンプルは、収集タンク160にある。前記タンク160にある間、前記サンプルを、磁性粒子310及び蛍光性標識粒子410にさらし得る。前記磁性粒子310は、コーティング320を介してサンプル中の病原体510と結合する。前記蛍光性標識粒子410は、コーティング420を介してサンプル中の病原体510と結合する。上述したように、抗体320及び420を、病原体510上の異なる部位に結合するように選択し得る。例えば、病原体がSARS-CoV-2である場合、抗体320及び420は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の異なるエピトープと結合し得る。コーティング420は、この目的のためにACE2を含み得る。ACE2を使用する追加の利点は、SARS-CoV-2を含む多くの抗体検査が他のSARS型ウイルスと交差反応するという文献に記載される問題を克服することである。他の変形例において、コロナウイルスのSタンパク質の異なる部分に結合する2つのモノクローナル抗体を、使用し得る。モノクローナル抗体の親和性は、コロナウイルスのSタンパク質に対するACE2の親和性よりも高くなり得るため、後者の変形例は、特定の状況下で有利になり得る。
いずれにせよ、収集タンク160内の病原体の異なる部位の結合は、磁性粒子310及び蛍光性標識粒子410を含む凝集体520を形成し得る。従って、結合は、病原体510を磁気的及び蛍光的に標識する。病原体の濃度が高い場合、凝集体520は、病原体510を介して磁性粒子310への結合が増加し、及びその結果、磁気双極子モーメントがより大きくなり得る。この性質は、以下の工程912及び914の文脈でより詳細に説明されるように、磁気分離を可能にする。
【0081】
工程908において、前記サンプルを、収集タンク160から流し出し得る。図に示されていないが、排出チャネル158又はマイクロ流体チャネル168のいずれかに入ることから試薬164を阻止するためのバルブが、あってもよい。フラッシングの1つの手段は、プランジャー152を使用し、サンプルを物理的に押し出す。プランジャー152を、ベース110のインターフェース部分112に位置するピストン116によって作動し得る。ベース110上のモーター又はアクチュエーター114は、ピストン116を作動させ、プランジャー152を作動させ得る。この動作は、また、サンプルの未捕捉部分を排出チューブ158に押し出し、及びフィルター166を通過させ得る。それは、さらに、未捕捉部分を部分150からフィルター166を通じて排出させ得る。フィルター166は、病原体を周囲環境に放出しないように、前記未捕捉部分から病原体を除去し得る。
【0082】
工程910において、前記サンプルは、マイクロ流体磁気分離機(例えば、図2B、6A、及び6Bに示される)の一部であり得るマイクロ流体チャネル168に流れ得る。排出チューブ158からマイクロ流体チャネル168へのサンプルの移動は、プランジャー152の運動により、作動し得る。この移動の一部として、前記サンプルの未捕捉部分を、収集部分150から周囲環境へ排出される前に、排気フィルター166を通過させ得る。
【0083】
図9Bの方を見ると、工程912において、前記サンプルの凝集体520を、マイクロ流体チャネル168内で変化する磁場に暴露する。暴露セットアップは、本明細書で説明されるマイクロ流体磁気分離機の任意の適切な構成(例えば、600、650、700、750、又は800)、及び参照により本明細書に組み込まれるマイクロ流体分離機の他の構成に適合し得る。さらに、本開示に明示的に組み込まれていない既知のマイクロ流体分離機の他の形態は、本開示の範囲内であり、及びシステム100と使用され得る。
【0084】
工程914において、変化する磁場への暴露(工程912)は、凝集体520の磁気双極子モーメントに基づいてそれらを分離するはずである。凝集体520の磁気双極子モーメントは、病原体510を介した磁性粒子310の付着に従うので、分離は、凝集体520に付着した病原体510の量も反映するはずである。この工程において、前記分離された凝集体520は、図7A及び7Dに示されるように、それらの双極子モーメントに基づいてチャネル168の異なる部分に集まる。それらを、また、それらの磁気偏向に基づき異なるチャネル(例えば、図8のチャネル830b~830g)に導き得る。凝集体520を分離する他の適切な方法は、可能であり、及び本開示の範囲内であることを理解されたい。
【0085】
工程916では、次いで、マイクロ流体チャネル168内の凝集体520の空間分布を、決定する。この空間分布を、様々な方法で評価することができる。例えば、前記空間分布を、上述されるように、前記蛍光性標識粒子410部分の蛍光を使用することにより、取得し得る。簡単に、検出システム(LED、UV、又は別の方法)は、凝集体520を照射し、それらを蛍光発光させ得る。前記蛍光を、例えば、前記収集タンク150に配置された検出システム172を介して、検出し得る。それは、また、ベース110上に配置される検出システム(図示せず)により、検出され得る。いずれにしても、前記検出システムは、チャネル168における凝集体520の空間分布全体にわたって蛍光を記録できるように配置されたカメラ及び/又は光センターを含み得る。凝集体520の空間分布を決定する別の手段は、単に、様々な間隔の収集チャネル(例えば、図8中のチャネル830b~830g)内で凝集体を数えることである。凝集体520のカウントの任意の適切な方法を、使用することができ、上述のように、蛍光を介した凝集体総数を測定することを含み得る。他の例は、コールターカウンターを使用することを含む。
【0086】
工程918において、患者における病原体量(例えば、病原体がウイルスである場合、ウイルス量)を、工程916において評価されたように、チャネル168における凝集体520の空間分布に基づいて評価し得る。前記空間分布は、上述したように、病原体510の付着と相関するため、病原体量を示すと理解され得る。例えば、磁気素子170a(図7A及び7D)の付近における凝集体520のより高い濃度は、より高い病原体量を示し得る。なぜなら、前記結果は、病原体510の付着の程度がより高いことに対応する、凝集体520における磁気双極子モーメントの程度がより大きいことを示すはずである。同様に、チャネル820b(図8)における凝集体520のより高い濃度又は総数は、より大きな偏向及び双極子モーメントを示し、従って、より大きな病原体510の付着の程度を示すであろう。これは、患者におけるより高い病原体量にも相関し得る。
【0087】
特定の場合において、閾値の病原体量は、陽性結果を示し得る。例えば、ある場合には、50%以上の凝集体520が、最大病原体量を示す距離(図7Aの距離740a、図7Dの距離755b、又は図8の距離840d)で検出された場合、これは、患者が病原体に対して検査で陽性と出ることを示し得る。そうでなければ、前記患者は、病原体に対して検査で陰性と反応を示す。前記閾値は、病原体及び実験のセットアップの他の側面(例えば、粒子320及び420の特徴、磁石170及び810の強さなど)に応じて変化し得る。閾値は、また、表面168a上又はチャネル820b~820g内の粒子の前記分布のより複雑な関数であり得る。任意のそのような適切な閾値は、本開示の範囲内であることを理解されたい。特定の定量化可能な閾値は、実験的な仕様によって変化し得る。関連するパラメータは、前記フェログラフ構成(例えば、構成700、750、又は800)、チャネル168の寸法、及びチャネル168のどこに凝集体520を、注入するかを含む。有効な磁気引力及び他の力(例えば、チャネル168の寸法に対する粒径に関連するシアストレス(sheer stress))の間のバランスも、重要であり得る。
【0088】
工程920において、前記検査の結果を、報告する。結果を報告する任意の適切な方法を、使用し得る。例えば、前記ベース110は、患者が、決定されたウイルス量に基づいて病原体510に対して検査で陽性又は陰性と出ることを示す簡単なディスプレイ(図2Aの素子122のようなLED、又は別の方法)を介して結果を報告し得る。生データ又は処理されたデータ(例えば、蛍光データ、画像データ、処理画像データ)を、また、任意の適切な方法により報告し得る。適切な方法は、イーサネット、Bluetooth、WiFi、携帯電話ネットワーク、磁気ディスク、フラッシュドライブ、又は他の記憶媒体を介して報告することを含む。
【0089】
本発明の様々な発明の態様、概念及び特徴を、例示的な特徴において組み合わせて具体化されるように、本明細書に記載及び説明し得るが、これらの様々な態様、概念及び特徴を、多くの代替的実施態様において、個別に又はそれらの様々な組み合わせ及びサブコンビネーションにおいて、使用し得る。本明細書で明白に除外しない限り、全てのそのような組み合わせ及びサブコンビネーションは、本発明の範囲内にあることが意図される。さらに、本発明の様々な態様、概念及び特徴に関する様々な代替的実施態様、例えば代替の物質、構造、構成、方法、回路、デバイス及び構成要素、ソフトウェア、ハードウェア、制御論理、形態、適合及び機能に関する代替などは、本明細書に記載され得るが、そのような記述は、現在知られている又は後に開発されるかどうかにかかわらず、利用できる代替的実施態様の完全な又は網羅的なリストであることを意図するものではない。当業者は、そのような実施態様が明確に本明細書に開示されていなくても、本発明の態様、概念又は特徴の1つ以上を本発明の範囲内の追加の実施態様及び用途を容易に採用できる。さらに、本発明のいくつかの特徴、概念又は態様を、好ましい配置又は方法であるように本明細書に記載されることがあっても、そのような記載は、明示的にそのように記載されない限り、そのような特徴が必須であるか又は必要であることを示唆することを意図しない。さらに、例示的又は代表的な値及び範囲を、本開示を理解することを助けるために含むが、そのような値及び範囲は、限定的な意味で解釈されるものではなく、及び明示的にそのように記載されている場合のみ、限界値又は限界範囲であることが意図される。さらに、例示的又は代表的な値及び範囲を、本開示を理解することを助けるために含むが、そのような値及び範囲は、限定的な意味で解釈されるものではなく、及び明示的にそのように記載されている場合のみ、限界値又は限界範囲であることが意図される。指定された値の“およそ(approximate)”又は“約(about)”として特定されたパラメータは、明示的に別段の定めをした場合を除き、指定された値及び指定された値の10%以内の値の両方を含むことを意図する。さらに、本願に添付する図面は、縮尺通りであり得るが、そうである必要はなく、及びその結果、図面において明らかな様々な比率及び割合を教示するものとして分かり得ることが理解されたい。さらに、様々な態様、特徴及び概念を、発明的であるか又は発明の一部を形成するとして本明細書に明示的に特定し得るが、そのような特定は、排他的であることを意図するものではなく、むしろ、そのように又は特定の発明の一部として明示的に特定されることなく、本明細書に完全に記載される発明的態様、概念及び特徴が存在し、その代わりに発明が添付の特許請求の範囲に記載されている。例示的な方法又は工程の説明は、全ての場合に必要であるとして全ての工程を含めることに限定されず、前記工程を提示する順序は、明示的に記載されていない限り、必須又は必要であるとして解釈されるわけではない。
図1
図2A
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】