(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-19
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20231012BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231012BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231012BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520511
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 KR2022011673
(87)【国際公開番号】W WO2023018118
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0106413
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・チョル・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】サン・ジン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ボン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ブン・アン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017BB16
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H050AA02
5H050AA14
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA03
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池用負極およびその製造方法に関するものであって、上記リチウム二次電池用負極は、負極集電体の表面を常圧プラズマ処理して、負極集電体表面の水に対する静的接触角と負極集電体に対して負極合材層の端部が成す角度(すなわち、接触角度)を特定の範囲に制御することによって、負極集電体と負極合材層間の接着力を向上させることができるのみならず、電極組立体の端部で正極と負極のN/Pの割合の逆転などが誘導されるのを防止し、負極合材層の未圧延が発生するのを予防することができるので、これを含むリチウム二次電池の安全性と性能低下を改善するという効果に優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、前記負極集電体上に形成され、負極活物質を含有する負極合材層と、を具備し、
前記負極集電体は、水に対する静的接触角が60°~100°である、リチウム二次電池用負極。
【請求項2】
前記負極集電体は、炭素数1~6のアルキル基で表面処理したものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
前記負極合材層は、前記負極集電体を基準として端部が成す角度が60°以上である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
前記リチウム二次電池用負極は、ASTM D903に基づく前記負極集電体に対する前記負極合材層の剥離強度が10gf/cm~50gf/cmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
負極集電体を常圧プラズマ処理する表面処理段階と、
表面処理した前記負極集電体の表面に負極活物質を含有するスラリーを塗布および乾燥して負極合材層を形成する段階と、を含み、
前記常圧プラズマ処理は、不活性ガスおよび炭化水素ガスの混合ガス条件下で行われる、リチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項6】
前記混合ガスは、0.1~10%の分圧で炭化水素ガスを含む、請求項5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項7】
前記炭化水素ガスは、メタン(CH
4)ガスおよびエタン(C
2H
6)ガスのうちいずれか1つ以上を含む、請求項5または6に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項8】
前記常圧プラズマ処理は、0.1MHz~50MHz周波数のRF電源を用いる、請求項5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
前記常圧プラズマ処理は、0.05秒~1時間の間行われる、請求項5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項10】
前記負極集電体は、ステンレススチール、銅、ニッケル、カーボン、焼成炭素、チタニウムまたはアルミニウム-カドミウム合金のうちいずれか1つで形成される、請求項5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極およびその製造方法に関するものである。
【0002】
本出願は、2021年8月12日付の韓国特許出願第10-2021-0106413号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、正極と負極においてリチウムイオンの挿入と脱離を繰り返すことで電池作用をする。これらの電極の間に、リチウムイオンは移動するが、電子は移動しないリチウム塩含有電解質と、正極と負極を当接しないように分離して、これらの接触による電極間の短絡を防止する機能を行う分離膜が備えられる。
【0004】
このようなリチウム二次電池は、高容量化、高密度化の観点から多くの研究が行われており、最近では、寿命と安全性の向上のための研究が多角的に行われている。具体的には、リチウム二次電池に使用される電極は、一般的に集電体上に電極スラリーを一定の厚さでコートし、乾燥して、合材層を形成することによって製造されるが、このように形成された合材層は、スラリーが乾燥するとき、液状のバインダー溶剤が気相で乾燥して固体状に変化し、粒子間、集電体と粒子の間に固体状のバインダーで存在して接着力を有する。このとき、粒子と集電体間の接着力が低減されると、粒子から集電体への電子移動に抵抗を受けることとなり、電子伝導速度が減少するので、電池の充放電速度特性およびサイクル特性が低下する問題がある。また、電池に外力が加えられる場合、集電体と合材層の分離が発生しやすいので、安全性が低下する限界もある。
【0005】
このような問題を改善するために、電極合材層と集電体間の接着力を向上させるために、合材層のバインダー含有量を増加させたり、集電体の表面構造を改質したりまたは接着力を向上させるためのプライマー層を形成する技術が開発されている。しかしながら、電極合材層のバインダー含有量が増加すると、合材層内の電極活物質および導電材の含有量が相対的に減少して電極抵抗が増加し、導電性が低くなって電池の性能が減少する限界がある。また、集電体の表面構造を改質したり、プライマー層などを形成したりすると、電極が負極である場合、負極合材層の端部と集電体との成す接触角度が低くなって正極と負極のN/Pの割合が逆転することがあるので、内部短絡などの安全性問題と電池の容量浪費が発生することがある。したがって、電極合材層と集電体間の接着力を増加させて電池の安全性および性能を共に向上させることができる技術の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2016-0033482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これより、本発明の目的は、電極合材層と電極集電体間の接着力を向上させ、正極と負極のN/Pの割合の逆転などによる電池の安全性や性能低下問題を改善できる電極、特にリチウム二次電池用負極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のような問題を解決するために、
本発明は、一実施形態において、
負極集電体と、上記負極集電体上に形成され、負極活物質を含有する負極合材層と、を具備し、
上記負極集電体は、水に対する静的接触角が60°~100°であるリチウム二次電池用負極を提供する。
【0009】
このとき、上記負極集電体は、炭素数1~6のアルキル基で表面処理したものであってもよい。
【0010】
また、上記負極合材層は、負極集電体を基準として端部が成す角度が60°以上であってもよく、負極集電体に対する負極合材層の剥離強度(ASTM D903基準)が10 gf/cm~50gf/cmであってもよい。
【0011】
また、本発明は、一実施形態において、
負極集電体を常圧プラズマ処理する表面処理段階と、
表面処理した負極集電体の表面に負極活物質を含有するスラリーを塗布および乾燥して負極合材層を形成する段階と、を含み、
上記常圧プラズマ処理は、不活性ガスおよび炭化水素ガスの混合ガス条件下で行われるリチウム二次電池用負極の製造方法を提供する。
【0012】
ここで、上記表面処理段階において、常圧プラズマ処理は、0.1MHz~50MHz周波数のRF電源を用いて0.05秒~1時間の間行われ得る。
【0013】
また、上記常圧プラズマ処理は、不活性ガスおよび炭化水素ガスの混合ガス条件下で行われ、かつ、上記混合ガスは、0.1~10%の分圧で炭化水素ガスを含んでもよい。
【0014】
また、上記炭化水素ガスは、メタン(CH4)ガスおよびエタン(C2H6)ガスのうちいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0015】
また、上記負極集電体は、ステンレススチール、銅、ニッケル、カーボン、焼成炭素、チタニウムまたはアルミニウム-カドミウム合金のうちいずれか1つで形成され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるリチウム二次電池用負極は、負極集電体の表面を常圧プラズマ処理して、負極集電体の表面の水に対する静的接触角と負極集電体に対して負極合材層の端部が成す角度(すなわち、接触角度)を特定の範囲に制御することによって、負極集電体と負極合材層間の接着力を向上させることができるだけでなく、電極組立体の端部で正極と負極のN/Pの割合の逆転などが誘導されるのを防止し、負極合材層の未圧延が発生するのを予防することができるので、これを含むリチウム二次電池の安全性と性能低下を改善する効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】負極集電体の静的水接触角の測定結果を示すイメージである。
【
図2】負極集電体に対する負極スラリーの接触角度の測定結果を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有していてもよいところ、特定の実施形態を詳細に説明しようとする。
【0019】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0020】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0021】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部だけでなく、下部に配置される場合も含んでもよい。
【0022】
また、本発明において、「主成分」とは、組成物または特定成分の全重量に対して50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上または97.5重量%以上であることを意味し、場合によっては、組成物または特定成分全体を構成する場合、すなわち100重量%を意味する。
【0023】
また、本発明において、「合材層の固形分」とは、合材層の製造時に使用される負極スラリーにおいて溶媒を除去した残留成分を意味する。
【0024】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
<リチウム二次電池用負極>
本発明は、一実施形態において、
負極集電体と、上記負極集電体上に形成され、負極活物質を含有する負極合材層と、を具備し、
上記負極集電体は、水に対する静的接触角が60°~100°であるリチウム二次電池用負極を提供する。
【0026】
本発明によるリチウム二次電池用負極は、負極集電体上に負極活物質を含有する負極合材層を含む構成を有する。
【0027】
このとき、上記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、ステンレススチール、銅、ニッケル、カーボン、焼成炭素、チタニウムまたはアルミニウム-カドミウム合金のうちいずれか1つで形成されたものを使用することができる。一例として、上記負極集電体は、銅集電体を使用することができる。
【0028】
また、上記負極集電体は、負極合材層が形成される表面が表面処理され、水に対する親和力が低いながらも、負極合材層に対する高い接着力を示すことができる。従来、一般的に電極集電体に適用されるプラズマ処理、電解処理などの表面処理法は、集電体の表面を親水化して電極合材層に対する接着力を向上させることを目的で行われた。しかしながら、このような方法をリチウム二次電池の負極集電体に適用すると、負極合材層に対する接着力は向上するが、負極集電体に対する負極合材層の端部の接触角度(例えば、負極合材層の「スライディング角度」)が低くなって、正極と負極の端部でのN/Pの割合が逆転することがある。それだけでなく、負極集電体に対する負極端部の接触角度が低ければ、負極合材層の端部での未圧延が発生して合材層の脱離を誘発することがある。
【0029】
これより、本発明は、負極集電体の表面を不活性ガスと炭化水素ガスの混合ガス存在下で常圧プラズマで処理することによって、負極集電体の表面に炭素数1~6のアルキル基が導入された構造を含んでもよい。このとき、上記炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基(CH3-)、エチル基(CH3CH2-)、n-プロピル基(CH3CH2CH2-)およびn-ブチル基(CH3CH2CH2CH2-)のうち1種以上を含んでもよい。
【0030】
一例として、上記負極集電体は、メチル基(CH3-)およびエチル基(CH3CH2-)のうち1種以上のアルキル基で表面が処理されたものであってもよい。
【0031】
また、上記アルキル基は、負極集電体の表面に一定の割合で導入され、負極集電体に対する電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析を通した炭素原子マッピング時に、炭素原子が全原子の1~40原子%であることを確認することができ、具体的には、炭素原子が全原子の1~30原子%、1~20原子%、1~15原子%、10~40原子%、20~40原子%、10~30原子%、20~30原子%、10~20原子%、または5~15原子%であることを確認することができる。
【0032】
また、上記負極集電体は、表面にアルキル基が導入されることによって、負極合材層の製造時にスラリーに含有された溶媒に対する反発力を高めて、負極合材層の端部と成す接触角度を高く具現し、同時に、負極合材層に対する接着力を高く付与することができる。
【0033】
具体的には、本発明による負極集電体は、表面に一定量のアルキル基が導入され、負極スラリーに含有された溶媒に対する反発力が増加するので、負極スラリーが集電体上に塗布される場合、塗布された負極スラリーの端部が負極集電体と成す角度(すなわち、負極集電体の負極スラリーに対する接触角)を高く具現することができる。また、上記負極集電体に対する負極スラリーの接触角は、負極スラリーから溶媒だけを除去して形成される負極合材層が負極集電体と成す角度(例えば、負極合材層のスライディング角度)と同一であってもよく、場合によっては、±5%以内の偏差を有していてもよい。
【0034】
一例として、本発明による負極においては、負極集電体に対する負極スラリーの接触角は、60°以上であってもよく、より具体的には、70°以上、80°以上、90°以上、100°以上、60~100°、60~80°、60~75°、65~95°、60~95°、70~99°、65~89°、65~84°、または65~78°であってもよい。
【0035】
本発明は、負極集電体の静的水接触角と負極集電体上に形成された負極合材層の端部が負極集電体と成す角度を上述した範囲を満たすように制御することによって、負極合材層の未圧延を防止し、かつ、端部での正極合材層と負極合材層のN/Pの割合が逆転するのを予防することができる。
【0036】
また、本発明による負極集電体は、表面に一定量のアルキル基が導入され、表面エネルギーが増加するので、上述したように、負極集電体の静的水接触角が特定範囲を満たすように調節されるだけでなく、負極合材層を構成する成分、例えば、負極活物質、バインダー、導電剤などの合材層の固形分に対する高い接着力を具現することができる。
【0037】
一例として、本発明による負極は、静的水接触角(static water contact angle)が60°~100°の負極集電体を含んでもよい。具体的には、上記負極は、静的水接触角が60~90°、60~80°、65~95°、65~80°、60~70°、70~80°、または64~79°の負極集電体を具備することができる。
【0038】
他の一例として、本発明による負極においては、ASTM D903に基づく、負極集電体に対する負極合材層の剥離強度が、10gf/cm~50gf/cmであってもよく、具体的には、負極集電体に対する負極合材層の剥離強度が、10gf/cm~40gf/cm、10gf/cm~30gf/cm、10gf/cm~20gf/cm、20gf/cm~50gf/cm、30gf/cm~50gf/cm、20gf/cm~40gf/cm、または15gf/cm~43gf/cmであってもよい。
【0039】
一方、上記負極合材層は、負極活物質を含み、電池に電気的活性を付与する層であり、負極活物質、導電材、バインダー、添加剤などを含んでもよい。
【0040】
上記負極活物質は、例えば、炭素物質とシリコン物質を含んでもよい。上記炭素物質は、炭素原子を主成分とする炭素物質を意味し、このような炭素物質としては、天然黒鉛のように完全な層状結晶構造を有するグラファイト、低結晶性層状結晶構造(graphene structure;炭素の6角形ハニカム形状平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブなどを含んでもよいし、好ましくは、天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0041】
また、上記シリコン物質は、金属成分としてケイ素(Si)を主成分として含む粒子であり、ケイ素(Si)粒子および酸化ケイ素(SiOX、0.8≦X≦2.2)粒子のうち1種以上を含んでもよい。一例として、上記シリコン物質は、ケイ素(Si)粒子、一酸化ケイ素(SiO)粒子、二酸化ケイ素(SiO2)粒子、またはこれらの粒子が混合されたものを含んでもよい。
【0042】
また、上記シリコン物質は、結晶質粒子と非結晶質粒子が混合された形態を有していてもよく、上記非結晶質粒子の割合は、シリコン物質全体100重量部に対して50~100重量部、具体的には、50~90重量部、60~80重量部または85~100重量部であってもよい。本発明は、シリコン物質に含まれた非結晶質粒子の割合を上記のような範囲に制御することによって、電極の電気的物性を低下させない範囲で熱的安定性と柔軟性を向上させることができる。
【0043】
また、上記負極活物質は、炭素物質とシリコン物質を含み、かつ、 上記シリコン物質は、負極合材層100重量部に対して1~20重量部で含まれ得、具体的には、負極合材層100重量部に対して5~20重量部、3~10重量部、8~15重量部、13~18重量部、または2~7重量部で含まれ得る。
【0044】
本発明は、負極活物質に含まれた炭素物質とシリコン物質の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時のリチウム消耗量と非可逆容量損失を低減し、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0045】
また、上記バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド(PVC)、カルボキシル化ポリビニルクロリド(C-PVC)、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリレートスチレン-ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができる。一例として、上記バインダーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)のうち1種以上を使用することができる。
【0046】
また、上記バインダーは、負極合材層全体100重量部に対して、1~10重量部で含まれてもよいし、具体的には、2~8重量部、または1~5重量部で含まれてもよい。
【0047】
また、上記負極合材層は、100μm~200μmの平均厚さを有していてもよく、具体的には、100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μmまたは140μm~160μmの平均厚さを有していてもよい。
【0048】
本発明によるリチウム二次電池用負極は、上述したような構成を有することによって、負極集電体と負極合材層間の接着力を増加させることができるだけでなく、上記接着力とトレードオフ(trade-off)関係を有する、負極集電体に対する合材層の端部の接触角度を高く具現することができるので、電池の安全性にさらに優れ、性能に優れた効果を示すことができる。
【0049】
<リチウム二次電池用負極の製造方法>
また、本発明は、一実施形態において、
負極集電体を常圧プラズマ処理する表面処理段階と、
表面処理した負極集電体の表面に負極活物質を含有するスラリーを塗布および乾燥して、負極合材層を形成する段階と、を含み、
上記常圧プラズマ処理は、不活性ガスおよび炭化水素ガスの混合ガス条件下で行われるリチウム二次電池用負極の製造方法を提供する。
【0050】
本発明によるリチウム二次電池用負極の製造方法は、負極集電体の表面に負極合材層のためのスラリーを塗布する前に、負極スラリーが塗布される領域を常圧プラズマで表面処理する段階を行い、その後、表面処理した領域に負極活物質を含有する負極スラリーを塗布および乾燥して、負極合材層を形成する段階を行うことによって、リチウム二次電池用負極を製造することができる。
【0051】
ここで、上記表面処理段階は、負極集電体の表面を全体的にまたは負極合材層が形成される領域だけを部分的に常圧プラズマ処理して行われ得る。また、上記製造方法は、常圧プラズマ処理時に不活性ガスとともに炭化水素ガスを含有する混合ガスを使用することによって、負極集電体の表面に炭素数1~6のアルキル基を導入することができる。
【0052】
具体的には、常圧プラズマは、互いに対向する電極の間に交流電場を印加して、電場によって電子が反応器の内部で高いエネルギーで加速され、このように加速化した電子は、反応器に供給されたガス(例えば、不活性ガスと炭化水素ガスの混合ガス)と衝突して原子イオンに分離するが、このように分離したイオンは、周囲の電子と結合してラジカルを形成し、ラジカルは、再度、電子と衝突して、ラジカルに分解される。このような過程を繰り返して生成されたラジカルを被処理物である負極集電体の表面に噴出させて有機物を除去し、集電体の表面にアルキル基が結合されて表面の特性を変えることができる。
【0053】
ここで、上記炭化水素ガスは、炭素数1~6のアルキル基を提供できるガスであれば、特に限定されずに使用され得るが、具体的には、メタンガス(CH4)、エタンガス(CH3CH3)、n-プロパンガス(CH3CH2CH3)、n-ブタンガス(CH3CH2CH2CH3)などを使用することができる。
【0054】
また、これによって、表面処理した負極集電体は、表面に炭素数1~6のアルキル基が導入されることができ、上記炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基(CH3-)、エチル基(CH3CH2-)、n-プロピル基(CH3CH2CH2-)およびn-ブチル基(CH3CH2CH2CH2-)のうち1種以上を含んでもよい。
【0055】
一例として、上記負極集電体は、常圧プラズマの処理時にメタンガス(CH4)およびエタンガス(CH3CH3)のうち1種以上のガスを使用して、メチル基(CH3-)およびエチル基(CH3CH2-)のうち1種以上のアルキル基で表面が処理されたものであってもよい。
【0056】
本発明は、負極集電体の表面に導入されるアルキル基の種類を上記のように限定することによって、炭化水素の鎖長が長くなって集電体の表面の疎水性が顕著に増加するのを防止することができる。
【0057】
また、上記負極集電体では、表面に一定の割合のアルキル基が導入されることができ、このために、常圧プラズマを行うとき、混合ガスに含まれた炭化水素ガスの分圧、混合ガスの流速、電源の周波数条件などを特定の範囲に制御することができる。
【0058】
具体的には、本発明によるリチウム二次電池用負極の製造方法は、常圧プラズマ処理時に混合ガスに含有された炭化水素ガスの分圧を0.1~10%に調節することができ、より具体的には、炭化水素ガスの分圧を0.1~8%、0.1~5%、0.1~3%、0.5~5%、1~7%、5~9%、3~7%、2~8%、または1~5%に調節することができる。
【0059】
一例として、本発明によるリチウム二次電池用負極の製造方法は、常圧プラズマ処理時に、混合ガスとして、不活性ガスと炭化水素ガスを混合したガスを使用し、かつ、上記炭化水素ガスの分圧は、全体ガスの3~5%であってもよい。
【0060】
また、上記常圧プラズマ処理は、上述した混合ガスを0.1~40L/minの流速で供給し、好ましくは、1~10L/minの流速で供給し、流速が0.1L/min未満の場合、工程時間が増加する問題があり、40L/minを超過する場合、安定性が減少する問題がある。
【0061】
また、上記常圧プラズマ処理は、0.1MHz~50MHz周波数のRF電源を用いて0.05秒~1時間の間行われ得る。具体的には、上記常圧プラズマ処理は、0.1MHz~20MHz、0.1MHz~10MHz、1MHz~50MHz、5MHz~30MHz、10MHz~30MHz、20MHz~40MHz、または1MHz~10MHzの周波数のRF電源を用いて0.05秒~30分、0.05秒~20分、0.05秒~10分、0.05秒~5分、0.05秒~1分、0.05秒~10秒、または0.05秒~2秒間行われ得る。
【0062】
一方、上記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、ステンレススチール、銅、ニッケル、カーボン、焼成炭素、チタニウムまたはアルミニウム-カドミウム合金のうちいずれか1つで形成されたものを使用することができる。一例として、上記負極集電体は、銅集電体を使用することができる。
【0063】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0064】
ただし、下記実施例および実験例は、本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0065】
<実施例1~3および比較例1~7.リチウム二次電池用負極の製造>
移送路を通じて提供される銅(Cu)集電体の全面に、RF電源を用いて形成された常圧プラズマを0.05~1秒間処理した。このとき、常圧プラズマの処理時に、混合ガスは、5±0.1L/minの流速で供給し、上記混合ガスの組成および分圧とRF電源の周波数は、下記表1に示したように調節した。
【0066】
また、表面処理した各負極集電体を対象に電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析を通した炭素原子マッピングを行い、負極集電体の表面の全原子に対する炭素原子の割合を測定して、下記表1に示した。
【0067】
次に、常圧プラズマ処理した銅集電体の表面に固形分を基準として負極活物質として黒鉛83重量%および酸化ケイ素(SiO2)15重量%とバインダーであるSBR 2重量%を含む負極スラリー(溶媒:水)を塗布し、100℃で乾燥した後、圧延して、リチウム二次電池用負極を製造した。ここで、負極合材層の圧延時に、負極合材層の端部が負極集電体と成す角度が低くて未圧延されるかどうかを確認し、その結果を下記表1に示した。
【0068】
【0069】
<実験例>
本発明によるリチウム二次電池用負極を評価するために、下記のような実験を行った。
【0070】
イ)負極集電体の静的水接触角の測定
実施例1~3および比較例1~7に提示された方法と同一に行って、負極集電体の表面を常圧プラズマ処理した。常圧プラズマ処理した各負極集電体を対象に、接触角測定機(モデル名:SmartDrop、製造社:Femtofab Co.Ltd)を用いて静的水接触角(static water contact angle,static WCA)を測定した。このとき、各測定は、測定時ごとに10μlの水またはオイルの一滴を表面に滴下して行い、3回ずつ繰り返し行うことで、その平均値を導き出した。その結果を
図1と表2に示した。
【0071】
ロ)負極集電体に対する負極スラリーの接触角度の測定
実施例1~3および比較例1~7に提示された方法と同一に行って、負極集電体の表面を常圧プラズマ処理した。その後、常圧プラズマ処理した各負極集電体の表面に負極スラリーを3滴ずつ滴下し、表面に液滴を形成した負極スラリーが負極集電体と成す角度(すなわち、接触角度)を接触角測定機(モデル名:SmartDrop、製造社:Femtofab Co.Ltd)を用いて測定した。
【0072】
このとき、上記負極スラリーは、固形分を基準として負極活物質として黒鉛83重量%および酸化ケイ素(SiO
2)15重量%とバインダーであるSBR 2重量%を含み、溶媒である水は、全体固形分の重量に対して10重量%で混合された。測定した結果を
図2と表2に示した。
【0073】
ハ)負極集電体と負極合材層の接着力の測定
実施例1~3および比較例1~7で製造された負極を対象に負極合材層に対する180°剥離強度(180°peel strength)をASTM D903に準拠して測定し、その結果を下記表2に示した。
【0074】
【0075】
図1および
図2と表2に示されたように、本発明によるリチウム二次電池用負極は、負極集電体と負極合材層間の接着力に優れ、負極集電体に対する負極合材層の端部での接触角度が高いことが分かる。
【0076】
具体的には、実施例のリチウム二次電池用負極は、66~95°の静的水接触角を示し、負極集電体に対して負極合材層の端部が成す接触角度が60~90°であることが示された。これは、負極集電体の表面にアルキル基が一定の割合(具体的には、一定の原子割合)で導入され、負極合材層の製造時に、負極スラリーに含有された溶媒、具体的には、水に対する反発力が誘導されて、負極集電体と負極合材層の端部との成す接触角度が高く具現されることを意味する。
【0077】
また、実施例のリチウム二次電池用負極は、負極集電体と負極合材層の剥離強度が10~40gf/cmであることが確認された。これは、負極集電体と負極合材層の接着力が共に向上することを意味する。
【0078】
このような結果から、本発明によるリチウム二次電池用負極は、負極集電体の表面を常圧プラズマ処理して、負極集電体の表面の水に対する静的接触角と負極集電体に対して負極合材層の端部が成す角度(すなわち、接触角度)を特定の範囲に制御することができ、これを通じて、負極集電体と負極合材層間の接着力を向上させることができるのみならず、電極組立体の端部で正極と負極のN/Pの割合の逆転などが誘導され、負極合材層の未圧延が発生するのを防止できることが分かる。
【0079】
以上では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0080】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【国際調査報告】