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特表2023-544084イオン性単元推進剤を用いて低圧で点火する高温ガス発生装置
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  • 特表-イオン性単元推進剤を用いて低圧で点火する高温ガス発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】イオン性単元推進剤を用いて低圧で点火する高温ガス発生装置
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/40 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B64G1/40 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023513383
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2021073394
(87)【国際公開番号】W WO2022043327
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】102020122337.4
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523063922
【氏名又は名称】ラボルビタル ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523063944
【氏名又は名称】ノッベ サベリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ノッベ サベリオ
(57)【要約】
推進剤を反応させる高温ガス発生装置が、燃焼室と、燃焼室の上流に構成され燃焼室側で推進剤に対して閉鎖できる少なくとも1つのインジェクタと、上記インジェクタに組み込まれた電極(5、6)と、推進剤の少なくとも1つの供給ラインとを含む。この背景で、推進剤は、単元推進剤であり、かつ蒸気圧が低い実質的に無水のイオン性製溶液であり、好ましくは残留含水量が5質量%未満で、所与の燃焼室圧力での自立燃焼が可能であり、電極(5、6)は、少なくとも2つの反対極性の電極を有し、電極は、この推進剤が反対極性の電極間を通過するときに、推進剤を通る電流によって推進剤を電気で点火するのに適している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進剤を反応させる高温ガス発生装置であって、
燃焼室(2)と、
前記燃焼室(2)の前に配置された少なくとも1つのインジェクタであって、前記インジェクタは、前記燃焼室(2)に対する前記推進剤の供給を遮断でき、前記インジェクタには電極(5、6)が組み込まれている、インジェクタと、
前記推進剤の少なくとも1つの供給ライン(1)と、
を含み、
前記推進剤は、単元推進剤であり、かつ蒸気圧が低い実質的に無水のイオン性溶液であり、好ましくは残留含水量が5質量%未満で、所与の燃焼室圧力での自立燃焼能力を有し、
前記電極(5、6)は、少なくとも2つの反対極性の電極を有し、前記電極は、前記推進剤が反対極性の前記電極間を通過するときに、前記推進剤を通る電流によって前記推進剤を電気点火する、
高温ガス発生装置。
【請求項2】
前記推進剤は、極性の異なる前記電極間を通過するときにイオン性溶液として存在し、
前記流れるイオン性溶液の前記電気点火は、前記インジェクタの出口領域で行われ、
前記推進剤の分解温度は、局所的に超過する、
請求項1に記載の高温ガス発生装置。
【請求項3】
前記燃焼室側の前記インジェクタを閉鎖するために、前記燃焼室(2)と前記インジェクタとの間に自動密閉するインジェクタヘッド(5)があり、前記インジェクタヘッド(5)は、前記インジェクタの入口圧力がクラッキング圧力よりも高く、前記燃焼室圧力に対する超過圧力を表している場合のみに前記推進剤を通過させ、それによって、前記燃焼室圧力が前記インジェクタの入口圧力からクラッキング圧力を差し引いた圧力を超える場合に、シール効果が達成される、
請求項1または2に記載の高温ガス発生装置。
【請求項4】
前記インジェクタを開閉するアクチュエータであって、前記インジェクタは、前記燃焼室(2)に対する前記推進剤の供給を遮断できる、アクチュエータをさらに含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項5】
前記推進剤を受動的に冷却するためのヒートパイプであって、前記ヒートパイプは前記燃焼室(2)の上流に構成される、ヒートパイプをさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項6】
前記電極(5、6)は、触媒活性表面を有し、好ましくは貴金属でコーティングすることによって実現され、さらに好ましくは銅、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムおよびレニウムでコーティングすることによって実現される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項7】
前記電極間に3~1000ボルト、好ましくは10~120ボルトの範囲の電位を印加して前記推進剤に電気点火する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項8】
前記推進剤を推進剤タンクから前記インジェクタに送給するための電動ポンプ、および/または
前記推進剤を供給するための1つ以上の繊維タンクをさらに含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項9】
蒸気圧が低い実質的に無水のイオン性溶液を含み、好ましくは残留含水量が5質量%未満で、所与の圧力での自立燃焼が可能な単元推進剤であって、
前記実質的に無水のイオン性溶液は、硝酸塩、ジニトラミド、過塩素酸塩および/またはニトロホルメートアニオン、ならびに(置換)アンモニウムカチオン、特に(モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-)メチルアンモニウム、(モノ-、ジ-、トリ-)エチルアンモニウム、n-プロピルアンモニウム、アリルアンモニウム、プロパルギルアンモニウム、エチレンジアンモニウム、プロピレンジアンモニウム、ヒドラジニウム、グアニジニウム、アミノグアニジニウム、5-アミノテトラゾレートカチオンを含有する
ことを特徴とする、単元推進剤。
【請求項10】
前記実質的に無水のイオン性溶液は、金属塩または錯体の形態で存在し得る1つ以上の遷移金属を基盤とする溶解触媒を含む、
請求項9に記載の単元推進剤。
【請求項11】
前記実質的に無水のイオン性溶液は、濃度が最大15質量パーセントで、1バールでの沸点が150℃を超える非揮発性の非イオン性添加剤を含み、前記添加剤は、融点を下げる役割を果たし、好ましくは尿素、グアニジン、ホルムアミド、イミダゾール、トリアゾールまたはテトラゾールの化合物クラスに属する、
請求項9または10に記載の単元推進剤。
【請求項12】
前記実質的に無水のイオン性溶液は、懸濁燃料、好ましくは平均粒径100μm未満の粉末、さらに好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ホウ素および亜鉛でできた懸濁燃料を含む、
請求項9、10または11のいずれか一項に記載の単元推進剤。
【請求項13】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置を使用して請求項9、10、11または12のいずれか一項に記載の単元推進剤に点火する方法であって、前記方法は、
前記単元推進剤の質量流を前記少なくとも2つの反対極性の電極間に通過させること、
前記点火過程で前記反対極性の電極の電界内で前記質量流の前記推進剤を分解すること
を含む、方法。
【請求項14】
前記高温ガス発生装置の推進剤の最大質量流の50%までが前記反対極性の電極間を通過する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記単元推進剤を点火前に少なくとも20℃まで加熱すること
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特に航空宇宙用途向けに最適で、イオン性液体推進剤の点火と安定燃焼の両方を可能にする高温ガス発生装置を提案する。推進剤は、本質的に揮発性溶媒(例えば水)を含まず、蒸気圧が低いため、真空状態であっても点火できる。点火は、インジェクタにある電極に低電圧を一時的に印加することで達成される。セルフシールのインジェクタの特別な設計により、噴射ヘッド上流の火炎前面の逆火が防止される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、単元推進剤である低蒸気圧のイオン性液体推進剤の電気点火を伴う高温ガス発生装置およびその点火方法を含むものである。液体の単元推進剤を基盤とする高温ガス発生装置は、ロケット工学の初期の頃から使用されており、通常は排気温度が低いことや比較的単純であることが、二元推進剤の高温ガス発生装置と比較して有利な点である。最も初期の用途例の1つは、ロケットエンジンのターボポンプ、タービンを基盤とする発電機(APU)、および油圧パワーユニットの運転に見られる。その一方で、衛星技術が主な応用分野として注目を集めており、この場合、単元推進剤の高温ガス発生装置が低推力および中推力の衛星エンジンの作動媒体となっている。この状況で使用される単元推進剤はほぼ例外なくヒドラジンだが、ヒドラジンは発癌性があり、汚染物質に対して極めて反応しやすい。衛星エンジンは、触媒によって活性化される、例えばイリジウムでコーティングした支持材料を必要とするガス発生用の充填床反応器を使用するものである。典型的には、電磁的に作動する弁がエンジンの推力段階を開始し、液体ヒドラジンが予熱された反応器に注入される。ヒドラジンを分解すると、最高1300Kの温度が生じ、いくらかのアンモニアのほかに窒素と水素が発生する。同様の操作方式で過酸化水素も過去に使用されていたが、貯蔵できる可能性は一層困難であると考えられている。高温および温度勾配、ならびに副産物(触媒毒)は、触媒の寿命だけでなく、コールドスタート能力も制限する。現在の衛星エンジンでは、触媒変換率の低下、およびそれに伴いエンジン性能の低下は、運用寿命の間は黙認されている。充填床反応器は、固体堆積物に対しても反応しやすい。そのため、金属化したり、すすが生じたり、酸素欠乏となったりする可能性があるためによりハードウェアに優しい高性能の推進剤を使用することはできない。
【0003】
したがって、米国特許第3,651,644A号(特許文献1)にすでに述べたように、2つの固定電極間の間隙内のヒドラジンを電解加熱することによる熱分解を標的とした触媒分解の代替法を研究した。記載した装置の操作性には、とりわけ真空状態で問題がある。なぜなら、ヒドラジンは、電気伝導率が低い気相として蒸気圧以下でのみ存在し、液体であっても限られた量の可動イオンしか生成しないからである。また、ヒドラジンおよびその他の一般的な単元推進剤の蒸気圧が高ければ、液相の存在に必然的に頼らざるを得ない方法では分解温度に到達できないということである。これは、電解、抵抗、または放射(レーザーを参照)による加熱および点火に特に当てはまることである。
【0004】
米国特許第3,651,644A号(特許文献1)では、固定電極の間隔、およびインジェクタと電解反応チャンバの燃焼室に対する恒久的な開口部は、安全上の重大なリスクを抱えている。なぜなら、とりわけ運転中または推進剤供給停止後に圧力が変動した場合、インジェクタの上流で反応が進行するのを防ぐことは不可能だからである。同じ問題が米国特許第3,861,137A号(特許文献2)で確認でき、この場合は、2つの電極の一定の間隙での不特定の単元推進剤の電解分解も点火に利用される。米国特許第3,651,644A号(特許文献1)とは対照的に、両電極および両者の間の間隙は、多孔質で透過性の材料で作製される。多孔性および表面積の増大により単元推進剤の点火が速くなり、熱伝達が多くなるために燃焼がさらに安定するが、充填床触媒反応器の問題の一部は、多孔性である故に残ったままである。例えば、燃焼室から断熱されていない多孔質媒体は、高温の排気ガスの影響を受け、表面積が大きいために、特に焼結のリスク、またはすすを形成する分解プロセスによる目詰まりのリスクにさらされている。細孔電極では、金属被覆した推進剤を使用することもできない。
【0005】
米国特許第8,375,697B2号(特許文献3)に概説されているさらに最近の発明では、二元推進剤のロケットエンジン用の電解点火装置が記載されており、点火のみを目的として少なくとも2つの電極間の必然的に大きい間隙で導電性溶液が加熱され、この電極の少なくとも一方が燃焼室内のインジェクタの下流に位置している。使用されている電解質は、低エネルギーのイオン性液体と(純粋な)化学物質か、水性の単元推進剤のいずれかである。前者の場合、蒸気圧が低いため電解質をその分解温度まで加熱することが可能だが、その分解温度は通常500℃未満である。発熱反応によって分解生成物がそれ以上この温度を超えて加熱されることはないため、追加された二元推進剤の点火は非常に困難である。蒸気圧が低くない状態での水性単元推進剤による点火は、上記にすでに述べた理由により適用不可能である。また、電解質インジェクタの上流で火炎前面の逆火を防止する対策は、米国特許第8,375,697B2号(特許文献3)にも示されていない。電解質の噴流は、酸化剤と燃料の注入ゾーンを横切らなければならないため、数ミリメートルの範囲の電極距離が必要になる。このような条件では、導電加熱経路を途切れることなく構築することが、二元推進剤の交差する噴流によって困難になるだけでなく、高電圧の印加も必要になる。
【0006】
冒頭で述べた2つの一般的な単元推進剤であるヒドラジンと過酸化水素に加えて、研究の焦点は近年2つの「環境に優しい」代替物に移っている。1つは硝酸ヒドロキシルアンモニウム(HAN)系の液体推進剤で、もう1つはアンモニウムジニトラミド(ADN)系の液体推進剤である。両者は水溶液であり、最初に述べた酸化剤のほかに有機燃料(メタノールなど)を含んでいる。例えば、国際特許公報第2012/166046A2号(特許文献4)には、ADN系の液体推進剤が記載されているが、真空状態での貯蔵または蒸気圧が高いため電気点火には適していない。これは、例えばRHEFORMプロジェクトで得られた結果で証明されており(Negri et al.,“New technologies for ammonium dinitramide based monopropellant thrusters-The project RHEFORM”,Acta Astronautica,2018,vol.143,105-117)(非特許文献1)、このプロジェクトでは、LMP-103SまたはFLP-106などの水性ADN推進剤は、電気パルスを最大約350ボルトDCまで受けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,651,644A号
【特許文献2】米国特許第3,861,137A号
【特許文献3】米国特許第8,375,697B2号
【特許文献4】国際特許公報第2012/166046A2号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Negri et al.,“New technologies for ammonium dinitramide based monopropellant thrusters-The project RHEFORM”,Acta Astronautica,2018,vol.143,105-117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでの電解による点火構想の上記の欠点を解消するためには、電極を再構成し、燃焼室近くに逆止弁機能を取り入れることと併せて、極めて低蒸気圧の新たな単元推進剤を導入する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、極めて低蒸気圧の単元推進剤として実質的に無水のイオン性溶液を提案する。エチルアミンとn-プロピルアミンの硝酸塩は、室温で液体であり、これらの溶液の例示的な基剤として機能することができ、この溶液には、酸素バランスを高めて凝固点を下げるために、必ずしも20℃未満で融解するとは限らない他の塩が溶解している。酸素バランスを高めて凝固点を下げるのに好ましい塩として、硝酸アンモニウム(AN)、硝酸メチルアンモニウム(MAN)、二硝酸エチレンジアンモニウム(EDDN)、硝酸ヒドラジニウム(HN)、硝酸グアニジニウム(GN)、硝酸アミノグアニジニウム(AGN)およびアンモニウムジニトラミド(ADN)が挙げられる。パルスモードを適用するには(例えば位置制御)高温ガス発生装置の反応時間が極めて短いことが求められる可能性があるため、点火の過渡期を短縮するために低エネルギーの推進剤と可溶性触媒との組み合わせを適応させることが可能である。適切な可溶性触媒として、遷移金属、特に鉄化合物、コバルト化合物、銅化合物および銀化合物の塩および錯体が挙げられる。また、電極表面は、不均一触媒として機能でき、電極間隙での点火および分解を補佐できる。例えば銅、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムおよびレニウムを用いた表面コーティングがこの目的に適している。なぜなら、貴金属は、陽極の酸化または陰極の水素脆化による腐食を受けにくく、結合して反応種を形成することによって分解の加速に加担できるからである。単元推進剤の導電率および融点は、非揮発性(沸点:1バールで>150℃)かつ非イオン性の添加剤によって、最大15質量パーセントの濃度で調整可能である。非イオン性添加剤が低蒸気圧であることは、点火過程での蒸発熱損失を避けるために必要である。尿素、グアニジン、ホルムアミド、イミダゾール、トリアゾールおよびテトラゾールなどの化合物クラスは、融点を下げるのに特に適している。懸濁燃料を単元推進剤に添加して、燃焼効率、比推力、および燃焼温度を上げることができる。適切な燃料として、アルミニウム、亜鉛、ホウ素、マグネシウム、およびこれらの金属の合金の粉末など、比較的沸点が低く燃焼熱が高い微細な金属粉末ほか、ヘキサメチレンテトラミンなどの炭素燃料が挙げられる。懸濁燃料は、インジェクタの目詰まりを防ぎ、完全燃焼を達成するために、粒子サイズが100μm未満である必要がある。
【0011】
前述のイオン性推進剤は、ほとんどの場合、毒性が微々たる程度で、潜在的に毒性のある添加剤(例えば硝酸ヒドラジン)が混在していても気相を生成しない。防護服、特別な換気システム、または呼吸フィルタが必要ないため、有毒な蒸気がないことで取り扱いが容易である。この点は、ヒドラジン、メチルヒドラジン(MMH、UDMH)、四酸化二窒素、硝酸、過酸化水素、さらにはいわゆる「環境に優しい」ADN推進剤(LMP-103S)などの一般的な貯蔵可能な推進剤とは異なる特徴である。さらに、推進剤の特性は、飛行任務特有の要件に適合させることができる。なぜなら、室温のイオン性液体が触媒および酸素に富む塩を広い範囲内で溶解できるからである。
【0012】
記載した推進剤のイオン性特性により、密度も増大し、機械的刺激および熱的刺激に対する感度が最小限に抑えられる。なぜなら、負に帯電した酸化剤(硝酸塩、ジニトラミド、過塩素酸塩など)および正に帯電した還元剤(ヒドラジニウムなど)は通常、対応する中性の類似体よりも安定しているからである。そのため、推進剤は、約1.2g/ml~1.6g/mlの密度、およびBAMドロップハンマー試験によれば少なくとも30Nm、しばしば50Nmを超える衝撃感度を達成することができる。最低分解温度は、300℃と高くなる可能性があり、これにより再生冷却の用途が可能になる。
【0013】
低エネルギーの単元推進剤として使用した場合、イオン性溶液は、今日のヒドラジンロケットエンジンのレベルでの比推力を達成するが、必要に応じて触媒は燃料と一緒に一定の濃度で供給されるため、触媒の老化による性能低下の欠点はない。ジニトラミド、ニトロホルメートまたは過塩素酸塩を含むエネルギーの高い変種は、ヒドラジンの比推力を上回り、貯蔵可能な二元推進剤の性能に匹敵する可能性がある。したがって、いずれにせよ、高密度により、現在使用されているシステムと比較して、容積測定の比推力が大幅に増加する。
【0014】
構想対象のイオン性単元推進剤は、外部触媒がなくても分子間の燃焼反応を維持するのに十分な酸素を含んでいる(ヒドラジンまたは過酸化水素に見られる主に分子内の分解反応とは対照的である)。燃焼は、触媒分解とは異なり、準安定の化学結合を利用しないため、提案したイオン性成分から化学的安定性が優れている推進剤を得ることができる。同時に、提案した単元推進剤の相対的な不活性には、触媒による点火をなくすことも必要であり、新たな点火方法の導入が必要である。
【0015】
本発明に記載の点火方法は、イオン性単元推進剤の良好な導電率を利用して、低電圧かつ短時間の高電流で推進剤の電解分解を開始するものである。現在の知識によれば、決定的な要因は、陰イオン固有の分解電圧(組成に応じて約5ボルト)を超えたときに陽極で反応性の酸化種が形成されることである。高温ガス発生装置のほとんどの用途では、航空機、ロケット、衛星の搭載電源から得られるか電気化学セルによって得られるような、通常10~約120ボルトの超低電圧を供給すれば十分である。低電圧では、電気技術能力に関する労力が最小限に抑えられるだけでなく、部分真空での放電のリスクも最小限に抑えられる。この態様に関して本発明は、水素ロケットエンジン、ガスタービンまたはジェットエンジンに広く使用されているようないわゆる(増強された)火花点火器などの火花点火を伴うシステムよりも優れている。また、動作中に流れる推進剤に囲まれた電極を特徴とする設計では、火花点火システムの取り扱いで問題となることが多い燃焼残留物の堆積も防ぐ。
【0016】
格別に短いパルスモードでの動作では、点火の過渡期を短くするために、低電圧範囲の上限まで、つまり約1000ボルトまでの電圧を使用してよい。点火は、直流電流と低周波交流の両方で可能である。
【0017】
点火は、前述のイオン性単元推進剤を低い質量流量で開始するのが最適である。これによって必要な電気点火の電力を軽減することが可能になるからである。用途によっては、質量流量を一時的に公称質量流量の50%をはるかに下回るように絞り込むことが可能であり、最低の相対質量流量は、高温ガス発生装置の高圧バージョンで達成される。その理由は、圧力が単元推進剤に由来する液滴の燃焼率に左右されるからである。反応領域は、燃焼室の圧力が上昇すると収縮し、霧化領域への熱流束は増加する。これはまた、点火が真空状態で達成される場合、いわゆる圧力爆燃限界(PDL)を超える燃焼室圧力が、電極間隙で最初の単元推進剤分解に基づいて生じなければならないことを意味する。通常は、追加の電気エネルギー供給なしに安定した自立燃焼が約1~5バールのチャンバ圧力から可能である。臨界チャンバ圧力に達すると、電気点火回路を停止でき、通常の動作を開始できる。燃焼室の圧力は、質量流量を増加させることによって電気点火過程ですでに徐々に増加させることができる。
【0018】
粘度および分解温度に応じて、噴射前に推進剤を加熱することでインジェクタによる点火と噴霧を改善できる。熱安定性の低い低粘度の噴推進剤の場合、通常は20~40℃に予熱すれば十分である。粘度が高く分解温度が高い推進剤の場合、100~200℃に予熱すると、点火の過渡期を短縮するのに役立ち得る。
【0019】
高温ガス発生装置を電動ポンプユニットに繋げることにより、バルブによる能動的な制御を省略してよく、市販のシステムよりも軽量化を実現できる。一例として、ポンプは、質量流量の正確かつ迅速な調整を可能にするギアポンプであってよい。本発明で提示しているイオン性単元推進剤は、他の既存の単元推進剤とは異なり、あらゆる従来のシール材料と適合性があり、蒸気圧が低いためにキャビテーション傾向が見られないため、特にポンピングに適している。適度な粘度と、高い熱容量と熱安定性が組み合わせられると、ポンプユニットの冷却剤および潤滑剤としてイオン性単元推進剤を使用する機会もある。高出力バージョンの高温ガス発生装置の場合に最も顕著なことは、ポンプをガスタービンのシャフトを介して駆動することもでき、ガスタービンでも説明したのと同じ低蒸気圧イオン性推進剤を使用する。
【0020】
高温ガス発生装置の安全な作動のために、本発明は、燃焼室に対して閉鎖できるインジェクタを提案する。そのため原則として、インジェクタは、インジェクタヘッドに組み込まれたバネ搭載式かつ/または外部作動式の逆止弁として機能する。特に、本発明は、インジェクタの圧力降下が最も高い部分、およびインジェクタの出口と燃焼室との境界に逆止弁機能を組み込んだ設計を含む。インジェクタの入口圧力が燃焼室の圧力よりもいくらか高い場合、自動閉鎖により燃焼室の下流に誘導する推進剤の供給を行う。クラッキング圧力と呼ばれる量は、用途に合わせて調整する必要があり、通常は約1~10バールである。燃焼室の圧力がインジェクタの入口圧力からクラッキング圧力を差し引いた圧力を超えると、自動閉鎖機構が燃焼室に対する推進剤の供給を遮断し、高温ガスと未反応の単元推進剤との接続を中断する。推進剤の供給が遮断されると、燃焼室の圧力が低下し、インジェクタ、供給ラインおよびタンクでの単元推進剤の点火が物理的に防止される。この物理的な分離は、高温ガス発生装置の停止中などの過渡的な動作段階では特に重要である。なぜならこの場合、インジェクタの入口圧力は、燃焼室の公称圧力を下回るからである。物理的な分離がなければ、単元推進剤がそれぞれの温度および圧力での推進剤の線形燃焼速度に対応する流速に達したとき、反応領域がインジェクタ内に伝播する。
【0021】
高温ガス発生装置を外部冷却なしで長時間作動させると、作動終了後にインジェクタヘッドが過熱する危険性がある。なぜなら、電極は、入ってくる推進剤によって冷却されることができなくなるが、高温の燃焼室は、熱伝導によって正の熱流束を引き続きもたらすからである。本発明は、2つの再生手法を用いることによってこの問題を回避する。第一に、燃焼室に面するインジェクタの構成要素を、ヒートパイプを使用してヒートシンクに接続できる。第二に、イオン性推進剤は、高温ガス発生装置の停止後に、ヒートシンクを含む二次回路内を循環することもできる。地上用途向けのヒートシンクの選択肢として、冷却水回路および高熱容量の熱伝導体が挙げられる。航空用途では、周囲空気または抽気を冷却に利用できる。大気圏外では、ラジエーターが熱を広範囲に放射したり、推進剤タンクがヒートシンクとして機能したりできる。
【0022】
イオン性単元推進剤の蒸気圧が低いため、極めて軽量で柔軟なタンクでの貯蔵が可能である。イオン性推進剤は材料適合性に優れているため、Dyneema-PET混合物など、すでに開発されている防水繊維をこの目的に使用できる。真空環境であっても、本質的に無加圧の貯蔵を実現でき、それによって構造レベルでの大幅な軽量化が可能になる。
【0023】
本発明の実施例
本発明による高温ガス発生装置の2つの可能な実施形態を以下に提示するが、記載した特許請求の範囲は、他の実施形態の実現も明示的に提供するものである。第1の実施形態は、単一の円錐形インジェクタを基盤とするものであり、図1図5に示されている。第2の実施形態は、多角形の形状の2つの対向するインジェクタを組み合わせたものであり、図6図9に示されている。個々の図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】シングルインジェクタおよび拡張ノズルを有する高温ガス発生装置の斜視図、ならびに電源の概略図である。
図2】シングルインジェクタおよび拡張ノズルを有する高温ガス発生装置の上面図、ならびに断面図の平面A-Aの図である。
図3図2の平面A-Aを表す断面図である。
図4】インジェクタが閉じている図3に示した断面図から取ったインジェクタユニットの詳細図である。
図5】インジェクタが開いている図3に示した断面図から取ったインジェクタユニットの詳細図であり、矢印は推進剤が流れる方向を指す。
図6】ダブルインジェクタおよび拡張ノズルを有する高温ガス発生装置の斜視図である。
図7】ダブルインジェクタおよび拡張ノズルを有する高温ガス発生装置の上面図、ならびに断面図の平面A-Aの図である。
図8図7の平面A-Aを表す断面図、ならびに電源の概略図である。
図9】インジェクタの一方が閉じて一方が開いている図8に示した断面図から取ったインジェクタユニットの詳細図である。この例では、逆に開いている状態は、インジェクタが採り得る状態を示すためのものであるにすぎず、実際の操作方式を説明するものではない。矢印は、開いているインジェクタで推進剤が流れる方向を指す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のいずれの実施形態でも、実質的に無水のイオン性単元推進剤が、中央の推進剤供給ライン1を通して軸方向に供給される。推進剤供給ライン1は、インジェクタハウジング4と連通していて、記載した単元推進剤は、インジェクタハウジングから燃焼室2に噴射される。この実施例では、インジェクタハウジング4および燃焼室2はフランジで接続され、フランジは、例えば可撓性グラファイトで作製された耐熱性燃焼室シール11を収容している。低負荷では、燃焼室2をニッケルベースの合金で作製できる。負荷が高くなると、セラミック複合材料、炭素繊維強化フェノール複合材料などのアブレーション材料、またはIr-Reなどの貴金属合金を使用することが賢明である。いずれの実施形態でも、燃焼中に生成したガスは、ドラバルノズルを通って超音速で燃焼室2から出る。それによって得られる推進力は、航空機および宇宙船を加速するために使用できる。推進力の生成に使用する以外に、燃焼ガスは、ターボ機械およびピストン機械を駆動するため、または点火を目的として、ドラバルノズルを必要とせずに使用することもできる。
【0026】
そのため、図1の高温ガス発生装置は、反動エンジンの高温ガス源として、反動エンジンの点火器として、ターボ機械の点火器として、またはピストン機械の点火器として使用でき、あるいはターボ機械またはピストン機械に作動ガスを供給するために使用できる。
【0027】
いずれの実施形態でも、燃焼室2およびインジェクタハウジング4は、互いに電気接触し、電源14の一方の極と電気接触している。反対側の極は、電気接点3と電気的に導通し、電気接点は、インジェクタソケット12(シングルインジェクタを特徴とする実施形態にのみ図示)、インジェクタスクリュー9およびインジェクタ電極5への継続的な電気接続部を有する。電池、燃料電池、太陽光発電システムなどの定極性電流源を電源14として使用できる。同じように、例えば回転オルタネータまたはリニアオルタネータから代替電圧を供給することも可能である。電源は、電気スイッチ15によって電極から切り離すことができる。
【0028】
閉じた状態では、インジェクタ電極5は、対応する対向電極6と接触してシールされ、それによって推進剤供給部1の方向に上流へ燃焼室2から高温ガスが逆流するのを防止する。開いた状態では(図5および図9)、対向電極6とインジェクタ電極5との間の電極間隙に推進剤があることで、電気化学セルの形成が起こる。電流が印加されると、電極間隙内の推進剤を加熱でき、点火できる。インジェクタ電極5および対向電極6は、断面が環状(図1図5を参照)、長方形(図6図9を参照)または多角形の電極間隙を形成できる。シングルインジェクタ(図1図5ではいわゆるピントル型インジェクタ)およびダブルインジェクタ(図6図9ではいわゆるシート衝突)に加えて、他の種類の衝突インジェクタまたは複数のインジェクタ要素も燃焼室2に組み入れることもできる。インジェクタ電極5および対向電極6の材料の選択は、それに対応する単元推進剤によって異なり、銅、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムおよびレニウムなどの貴金属をコンパクトな基盤材料またはコーティングとして使用して、推進剤に対する耐食性および触媒活性を向上させることができる。
【0029】
開いた状態では、インジェクタ電極5は、電極間隙の上流で絶縁材7によってインジェクタハウジング4から電気的に分離されている。絶縁材7は、例えば過フッ素化炭化水素(PTFE、PCTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、またはポリアリールエーテルケトン(PEEK)などの高性能ポリマークラスを含む、適度な温度耐性がある非導電性材料で作製できる。高分子材料は、繊維強化されていることがある。別の構想可能な選択肢は、耐熱性を高めた熱伝導性絶縁材7であり、これは、セラミック材料またはポリマーコーティングされた金属材料で作製できる。絶縁材に関する熱要件のレベルを下げることは、インジェクタハウジング4を冷却することによってのみ達成できる。低負荷かつ短時間の用途に関しては、インジェクタハウジング4は、ヒートシンク冷却を利用してよいため、本明細書に図示した実施形態で示したように、銅、銀、またはアルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されてよい。高負荷の場合、追加のラジアルヒートパイプをインジェクタハウジング4に組み込むことができる。熱は、インジェクタハウジング4から始まって周囲の空気、冷却回路に放散されるか、周囲環境への放射伝達によって放出されることが可能である。推進剤の熱安定性が良好なため、冷却剤回路も推進剤の貯蔵部に熱的に接続されていることがある。
【0030】
例えば実施形態に示したように、燃焼室2に対する推進剤の超過圧力が不十分な場合にインジェクタ電極5および対向電極6を閉じることは、圧縮ばね8を用いて補佐される。圧縮ばね8のストロークは、インジェクタスクリュー9およびインジェクタソケット12によって制限するか、インジェクタ電極5および回転しないように固定されているインジェクタナット13によって直接制限することができる。圧縮ばね8の代替または補完として、インジェクタの開閉の制御を可能にするアクチュエータを取り付けることができる。この場合、推進剤の超過圧力が不十分な場合の自動閉鎖は、推進剤供給部および燃焼室にあるセンサーを利用する高速制御回路によっても実現できる。
【0031】
インジェクタハウジング4および推進剤と接触している全部品は、インジェクタシール10によって周囲環境からシールされている。低負荷の状況では熱的に安定したエラストマー(例えばFKM、FFKM)で作製されたOリングを使用でき、そうではない高負荷では金属製のCリングを使用してよい。
【0032】
可能性のある推進剤の実施形態として、例えば、以下の組成のイオン性単元推進剤がある。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【符号の説明】
【0035】
1 推進剤供給ライン
2 燃焼室
3 電気接点
4 インジェクタハウジング
5 インジェクタ電極
6 対向電極
7 絶縁材
8 圧縮ばね
9 インジェクタスクリュー
10 インジェクタシール
11 燃焼室シール
12 インジェクタソケット
13 インジェクタナット(圧縮ばねのエンドストップ)
14 電源
15 電気スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進剤を反応させる高温ガス発生装置であって、
燃焼室(2)と、
前記燃焼室(2)の前に配置された少なくとも1つのインジェクタであって、前記インジェクタは、前記燃焼室(2)に対する前記推進剤の供給を遮断でき、前記インジェクタには電極(5、6)が組み込まれている、インジェクタと、
前記推進剤の少なくとも1つの供給ライン(1)と、
を含み、
前記推進剤は、単元推進剤であり、かつ蒸気圧が極めて低い実質的に無水のイオン性溶液であり、残留含水量が5質量%未満で、所与の燃焼室圧力での自立燃焼能力を有し、
前記電極(5、6)は、少なくとも2つの反対極性の電極を有し、前記電極は、前記推進剤が反対極性の前記電極間を通過するときに、前記推進剤を通る電流によって前記推進剤を電気点火し、
前記燃焼室(2)に対する前記推進剤の供給を遮断するために、前記燃焼室(2)と前記インジェクタとの間に自動密閉するインジェクタヘッド(5)があり、前記インジェクタヘッド(5)は、前記インジェクタの入口圧力がクラッキング圧力よりも高く、前記燃焼室圧力に対する超過圧力を表している場合のみに前記推進剤を通過させ、それによって、前記燃焼室圧力が前記インジェクタの入口圧力からクラッキング圧力を差し引いた圧力を超える場合に、シール効果が達成される
温ガス発生装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのインジェクタヘッド(5)は、前記電極の少なくとも一方を組み入れ、
前記インジェクタヘッドが閉じた状態では、前記反対極性の電極(5、6)は、電気接触していてシール接触している、
請求項1に記載の高温ガス発生装置。
【請求項3】
前記推進剤は、極性の異なる前記電極間を通過するときにイオン性溶液として存在し、
前記流れるイオン性溶液の前記電気点火は、前記インジェクタの出口領域で行われ、
前記推進剤の分解温度は、局所的に超過する、
請求項1または2に記載の高温ガス発生装置。
【請求項4】
前記インジェクタを開閉するアクチュエータであって、前記インジェクタは、前記燃焼室(2)に対する前記推進剤の供給を遮断できる、アクチュエータをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項5】
前記推進剤を受動的に冷却するためのヒートパイプであって、前記ヒートパイプは前記燃焼室(2)の上流に構成される、ヒートパイプをさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項6】
前記電極(5、6)は、触媒活性表面を有し、好ましくは貴金属でコーティングすることによって実現され、さらに好ましくは銅、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムおよびレニウムでコーティングすることによって実現される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項7】
前記電極間に3~1000ボルト、好ましくは10~120ボルトの範囲の電位を印加して前記推進剤に点火する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項8】
前記推進剤を推進剤タンクから前記インジェクタに送給するための電動ポンプ、および/または
前記推進剤を供給するための1つ以上の繊維タンクをさらに含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項9】
少なくとも1つの可溶性触媒を含み、蒸気圧が極めて低く、実質的に無水のイオン性溶液を含み、残留含水量が5質量%未満で、所与の圧力での自立燃焼が可能な単元推進剤であって、
前記可溶性触媒は、遷移金属の塩および/または錯体であり、前記実質的に無水のイオン性溶液は、(置換)アンモニウムカチオン、特に(モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-)メチルアンモニウム、(モノ-、ジ-、トリ-)エチルアンモニウム、n-プロピルアンモニウム、アリルアンモニウム、プロパルギルアンモニウム、エチレンジアンモニウム、プロピレンジアンモニウム、ヒドラジニウム、グアニジニウム、アミノグアニジニウム、5-アミノテトラゾレートカチオン、ならびに硝酸塩、ジニトラミド、過塩素酸塩および/またはニトロホルメートアニオンを基盤とする
ことを特徴とする、単元推進剤。
【請求項10】
前記実質的に無水のイオン性溶液は、濃度が最大15質量パーセントで、1バールでの沸点が150℃を超える非揮発性の非イオン性添加剤を含み、前記添加剤は、融点を下げる役割を果たし、好ましくは尿素、グアニジン、ホルムアミド、イミダゾール、トリアゾールまたはテトラゾールの化合物クラスに属する、
請求項9に記載の単元推進剤。
【請求項11】
前記実質的に無水のイオン性溶液は、懸濁燃料、好ましくは平均粒径100μm未満の粉末、さらに好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ホウ素および亜鉛でできた懸濁燃料を含む、
請求項9または10に記載の単元推進剤。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれか一項に記載の高温ガス発生装置を使用して請求項9、10または11のいずれか一項に記載の単元推進剤に点火する方法であって、前記方法は、
前記単元推進剤の質量流を前記少なくとも2つの反対極性の電極間に通過させること、
前記点火過程で前記反対極性の電極の電界内で前記質量流の前記推進剤を分解すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記高温ガス発生装置の推進剤の最大質量流の50%までが前記反対極性の電極間を通過する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記単元推進剤を点火前に少なくとも20℃まで加熱することをさらに含む、
請求項13に記載の方法。
【国際調査報告】