(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】TiO2を含まない顔料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20231013BHJP
A61Q 3/00 20060101ALI20231013BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20231013BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20231013BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20231013BHJP
A61Q 1/08 20060101ALI20231013BHJP
A61Q 1/06 20060101ALI20231013BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20231013BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20231013BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q3/00
A61Q3/02
A61Q1/12
A61Q1/10
A61Q1/08
A61Q1/06
A61Q1/00
A61K8/24
A61K8/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023514773
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 US2021050382
(87)【国際公開番号】W WO2022060779
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ドール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー ベネット
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB171
4C083AB221
4C083AB232
4C083AB291
4C083AB292
4C083AB311
4C083AB332
4C083AB431
4C083AB432
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC011
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC251
4C083AC312
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC521
4C083AC531
4C083AC581
4C083AC621
4C083AC711
4C083AC811
4C083AC911
4C083AD151
4C083AD211
4C083AD241
4C083AD301
4C083AD321
4C083AD411
4C083AD571
4C083AD631
4C083AD662
4C083BB23
4C083BB26
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083CC28
4C083DD05
4C083DD17
4C083DD31
4C083EE07
(57)【要約】
多孔質の鉱物基質と、多孔質の鉱物シェルとを含む、層状顔料組成物について説明している。このような組成物は、化粧品、パーソナルケア製品、印刷用インク及びコーティング剤、並びにプラスチックに有用であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物基質と、多孔質の鉱物シェルとを含む、層状顔料系。
【請求項2】
前記鉱物基質が多孔質である、請求項1に記載の層状顔料系。
【請求項3】
前記鉱物基質が2~100μmのd50を有する粒子である、請求項1に記載の層状顔料系。
【請求項4】
前記鉱物基質が0.5~35μmのd50を有する粒子である、請求項1に記載の層状顔料系。
【請求項5】
前記多孔質の鉱物基質が、結晶質、非晶質、又はこれらの組合せである、請求項2に記載の層状顔料系。
【請求項6】
前記多孔質の鉱物基質が、シリカ、パーライト、珪藻土、カオリン、マイカ、カオリナイト、セリサイト、粘土、タルク、珪藻岩、珪藻土、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ゼオライト、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の層状顔料系。
【請求項7】
前記多孔質の鉱物基質が珪藻土である、請求項6に記載の層状顔料系。
【請求項8】
前記多孔質の鉱物シェルがリン酸カルシウム鉱物である、請求項7に記載の層状顔料系。
【請求項9】
前記リン酸カルシウム鉱物が、リン酸カルシウム、リン酸一カルシウム、リン酸一カルシウム一水和物、リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム一水和物、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、二リン酸二カルシウム、三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、モネタイト、ブルシャイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、シリカ、二酸化チタン、アナターゼ、ルチル、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の層状顔料系。
【請求項10】
前記リン酸カルシウム鉱物がヒドロキシアパタイトである、請求項9に記載の層状顔料系。
【請求項11】
1つ以上の添加剤とともにブレンド又は処理されている、請求項1に記載の層状顔料系。
【請求項12】
前記添加剤が、メチコン、ジメチコン、トリフルオロプロピルジメチコン、レシチン、卵レシチン、植物レシチン、水素化レシチン、ガラクトースアラビナン糖、デンプン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、キトサン、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸亜鉛、グリセロリン酸ナトリウム、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、プロリン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、タウリン、シトルリン、オルニチン、テアニン、ジペプチド、トリペプチド、3種を超えるアミノ酸のポリペプチド、タンパク質、酵素、ベタイン、カルニチン、カルノシン、ヒドロキシトリプトファン、システイン、ヒドロキシプロリン、N-アセチルシスチン、S-アデノシルメチオニン、チラミン、γ-アミノ酪酸、セロトニン、ドーパミン、2-アミノヘプタン酸(2-aminohepanoic acid)、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、セレノメチオニン、アロ-イソロイシン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチルリジン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、ピロリシン、ホルミルメチオニン、β-アラニン、δ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸、デヒドロアラニン、シスタチオニン、ランチオニン、ジェンコル酸、ジアミンピメリン酸、イソバリン、ラウロイルリジン、グルタミン酸システイン-アルギニンペプチド、ミリストイルサルコシンナトリウム、ステアロイル(steroyl)グルタミン酸二ナトリウム、脂肪酸、脂質、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸、パルミチン酸ナトリウム、ミリスチン酸、エライジン酸、エライジン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ラウリン酸、ラウリン酸ナトリウム、アラキジン酸、アラキジン酸ナトリウム、エルカ酸、エルカ酸ナトリウム、パルミトレイン酸、パルミトレイン酸ナトリウム、リノール酸、リノール酸ナトリウム、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリエトキシドデシルシラン、トリメトキシドデシルシラン、トリエトキシテトラデシルシラン、トリメトキシテトラデシルシラン、トリエトキシヘキサデシルシラン、トリメトキシヘキサデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、PEG-8トリエトキシシラン、ホホバワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、未反応フッ素化化合物、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、パーフルオロアルキルリン酸、トリエトキシカプリルシラン、ステアロイルグルタミン酸、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、シリカ、アロエ、並びにこれらの混合物及び組合せからなる群より選択される、請求項11に記載の層状顔料系。
【請求項13】
請求項1に記載の層状顔料系を含む、化粧品製剤又はパーソナルケア製剤。
【請求項14】
前記化粧品製剤が、ファンデーション、プレストパウダー、ルースパウダー、ブロンザー、コンシーラー、顔用液体化粧品、BB/CCクリーム、ティンテッドモイスチャライザー、リキッドファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、口紅、リップグロス、頬紅、ルージュ、フェイシャルパウダー、及びマニキュア液からなる群より選択される、請求項13に記載の化粧品製剤又はパーソナルケア製剤。
【請求項15】
請求項1に記載の層状顔料系を含む、インク又はコーティング組成物。
【請求項16】
前記インク又は前記コーティング組成物が、自動車用コーティング、保護用透明コーティング、内装建築用コーティング、外装建築用コーティング、粉体コーティング、工業用コーティング、腐食防止コーティング、グラビア印刷用インク、フレキソ印刷用インク、ペーストインク、エネルギー硬化(UV又はEB)インクからなる群より選択される、請求項15に記載のインク又はコーティング組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の層状顔料系を含む、プラスチック材料。
【請求項18】
前記プラスチック材料が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、エポキシ、ポリアミド、ポリ(塩化ビニル)、及びポリ(フッ化ビニリデン)、並びに任意のアクリル、アルキド、フルオロポリマー、及びこれらのブレンドから選択される、請求項17に記載のプラスチック材料。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
化粧品製剤の皮膚及び顔の油分又は汗との相互作用は、製剤の装着特性に大きな影響を及ぼす。顔の油分(例えば、皮脂)は、化粧品製剤に含まれる顔料を濡らし、皮膚上に移行させることがある。さらに、皮脂によって顔料が濡れると、色の変化を受けて不自然な外観となり得る。これらの落とし穴は、微細な線及び皺をより容易に露呈させる「ケーキ状」の外観として顕在化する。どのように顕在化するかにかかわらず、化粧品は、塗布し直さなければならず、化粧品の消費者は、定期的な塗布し直しを否定的側面とみなしている。
【0002】
移行の影響を軽減する1つの方法は、化粧品が完全に濡れる前に、犠牲的に油分を吸収する高表面積で無色のフィラー粒子を使用することである。この高表面積フィラーは、顔の油分に対するスカベンジャーであり、顔の油分が製剤の残部と相互作用する前に吸収し、移行開始前に化粧品が装着され得る時間を増加させる。
【0003】
移行の影響を軽減するもう1つの方法は、微細な線及び皺を不明瞭にする又はぼかす粒子を含めることである。このような現象は、ソフトフォーカスと呼ばれる。化粧品が顔の皺に移行した場合、顔料がソフトフォーカスをもたらすことで皺を不明瞭にし、目立たなくし、化粧品を塗布し直す必要性を減少させる。
【0004】
これまで化粧品材料は、油分吸収度又はソフトフォーカスのいずれかに対処するものであり、両方の問題に同時に対処する材料はなかった。従来、これらの化粧品材料は、(限定されるものではないが)タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、及び/又はマイクロプラスチックを含めた物質を含んでいたが、これらの成分は、近年では消費者及び/又は規制当局によって有害と認識されている。より最近では、これらの成分に対する社会の懸念により、これらの成分の化粧品への使用及び表示に関する新たな規制が世界的に行われている。このため、安全であることが一般的に認められている材料(GRAS材料)を用いて製品を開発することが有益と考えられる。
【0005】
化粧品製剤の装着改善のための従来の戦略は、結合剤に着目しており、疎水性の高いポリマー、シリコーン、及び顔料の表面処理を利用して、にじみを防ぐ膜を化粧品の上に作り出すというものであった。このアプローチは、化粧品を塗布する領域とは別の領域から生じる汗及び涙のような外部環境因子から保護する。
【0006】
ソフトフォーカス顔料は利用可能であるが、人体の健康又は環境に有害と社会にみなされている成分を含んでいる。このような成分としては、二酸化チタン、タルク、ホウ素、及びマイクロプラスチックが挙げられる。油分吸収度が高くない先行技術のソフトフォーカス顔料は、結果として帰結を得る場合もそうでない場合もあるが、我々の顔料は、化粧品の他の部分との相互作用から生じる汚れを防ぐ吸収性フィラーと、ソフトフォーカス効果と、1つで2つの機能を果たす。これらの油分は、化粧品製剤の移行を引き起こし、その結果、短期間で製剤の塗布し直しが必要となり得る。
【0007】
本発明の組成物は、多孔質又は非多孔質の基質を多孔質のシェルとともに含む層状顔料系を形成することにより、これらの問題に対処している。1つの商業的実施形態は、望ましい特性を有する機能的な顔料系を形成するために、珪藻土基質をヒドロキシアパタイトシェルとともに含むことができる。
【0008】
これらの2つの鉱物を合わせて1つの粒子にすることで粒子表面積が増加し、それにより皮膚に塗布したときの油分吸収度と、粉末の多孔性が高いことによる望ましいソフトフォーカス特性とが高められることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
本発明の組成物は、層状顔料系であって、内部の基質粒子(多孔質であってもそうでなくてもよい)をコーティングする多孔質の鉱物シェルの外層を組み込んで層状顔料系を形成する、層状顔料系を対象とする。概して、内部の基質及び外層の両方が天然の多孔質微細構造を有し、この微細構造が、表面に塗布したときに、ソフトフォーカス特性をもたらし油分吸収度を増加させることができる。これにより、皮膚に塗布された化粧品製剤の顔料が移行したり飽和したりするのを低減することができる。
【0011】
多孔質の鉱物シェルは、リン酸カルシウム鉱物(例えば、ヒドロキシアパタイト(HA))を含むことができ、内部粒子は珪藻土とすることができる。珪藻土(DE)及びヒドロキシアパタイト(HA)はともに多孔質であり、この2つの材料の組合せにより、高度な表面積を備えた機能的な層状顔料系が得られる。高表面積により、油分吸収度は、一般的に使用されている他のフィラーに比べて優れたものとなる。さらに、HA及び基質の低い屈折率ならびに多孔質の二層構造により、多くの異なる材料界面(例えば、空気-HA、空気-基質、HA-基質)がもたらされ、光の強力な前方散乱及び拡散が生じ、その結果、優れたソフトフォーカスが得られる。高い油分吸収度及びソフトフォーカス両方の組合せはこれまで実証されておらず、この技術により、製剤者が単一の成分を用いて両方の特性を十分に利用することが可能になる。
【0012】
ヒドロキシアパタイト(HA)は、次の化学式:Ca10(PO4)6(OH)2を有する水和リン酸カルシウムの鉱物である。歯のエナメル質を構成する主要な鉱物であり、哺乳類においては骨量の70%を構成している。ヒドロキシアパタイトは、溶液から容易に沈殿して多孔質の鉱物コーティングをもたらすことができる。このようなコーティングは、生体適合性が高く細胞材料の成長を促進するため、肥料及び臓器移植で利用されている。
【0013】
珪藻土(DE)は、化石化した藻類から作られた多孔質の鉱物であり、化粧品、農業、及び食品を含めた複数の用途で使用されている。分子レベルでは、DEは、二酸化ケイ素で構成されているが、Ca2+及びMg2+のような他の鉱物も存在することがある。鉱物の多孔度は、化石化する前の元来の藻類生物の構造に起因する。
【0014】
珪藻土(DE)及びヒドロキシアパタイト(HA)などの材料を層状顔料系に組み入れることにより、両物質が一般的に安全と認識されているという点において、先行技術に勝る利点がもたらされる。一般的に安全な成分を技術的利点と組み合わせることで、化粧品メーカーにとって説得力のある価値が提案され、商品化への良好な動機がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願に記載の層状顔料系は、多孔質又は無孔質の鉱物基質と鉱物シェルとを有する層状顔料粒子を含む。なお、「多孔質の鉱物基質コア」、「多孔質の鉱物基質」、及び「多孔質の基質」が互換的に使用され得ることに留意されたい。顔料が高い多孔性及び多層構造を有することで顔料の油分吸収度が高くなり、それにより化粧品製剤の寿命を長びかせることができる。また、この顔料構造を化粧品製剤に使用すると、優れたソフトフォーカス特性がもたらされる。この層状顔料系はさらに、以下で論じる他の添加剤を含むことができる。
【0016】
理論に拘束されるものではないが、多孔質材料の二層構造により、材料のブレンド又は個々の材料の等体積量のいずれよりも効率的に油分を吸収することが可能になると考えられている。さらに、この多孔質材料の層状組合せにより、高表面積及び複数の界面を備えた構造が作り出され、効率的なぼかし及びソフトフォーカスがもたらされる。
【0017】
1つの実施形態において、層状顔料系は、内部の多孔質の基質と、外部のシェルとを含み、「多孔質の基質」という用語は、同じサイズの無孔質の基質に比べて高表面積を有するという意味を含む。孔の形態は重要ではないが、本発明の範囲を低減することなく、孔は球状、円筒状、非晶質、又は薄板状であってもよい。
【0018】
1つの実施形態において、多孔質の基質は、シリカ、マイカ、パーライト、珪藻土、カオリン、カオリナイト、セリサイト、粘土、タルク、珪藻岩、珪藻土、ゼオライト、及びこれらの混合物から選択される鉱物である。
【0019】
1つの実施形態において、多孔質の基質は、高表面積粒子である。基質が粒子である場合、基質はその境界を画定する形状を有することができる。基質の形状は本発明の範囲を限定せず、基質は当業者に知られている任意の形状とすることができる。例示的な基質の形状としては、不規則、球状、小板状、針状、針金状、及びこれらの混合物が挙げられる。基質は、光散乱法による測定において、粒度中央値d50によって定義される粒度分布を有する。基質のd50は、2~100μmの範囲であることが好ましい。1つの実施形態において、基質のd50は、0.5~35μmの範囲であり得る。
【0020】
1つの実施形態において、基質は、多孔質の鉱物シェルの1つ以上の層でコーティングされてもよい。多孔質の鉱物シェルは、高い表面積を有し、孔が任意の形態を有する鉱物シェルとして定義される。多孔質の鉱物シェルの場合、多孔質の鉱物基質の表面に存在する場合もあれば、多孔質の鉱物基質の孔に浸透する場合もある。多孔質の鉱物シェルは概して、多孔質の基質の表面に、多孔質の基質に対し1~100重量%の範囲で存在する。多孔質の鉱物シェルは、本発明の範囲を限定することなく、多孔質の基質を完全に又は部分的に包含することができる。
【0021】
1つの実施形態において、多孔質の鉱物シェルは、本発明の範囲を限定することなく、結晶質又は非晶質であり得る。多孔質の鉱物シェルは、限定されるものではないが、以下の群からの1つ以上の鉱物を含むことができる:リン酸カルシウム、リン酸一カルシウム、リン酸一カルシウム一水和物、リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム一水和物、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、二リン酸二カルシウム、三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、モネタイト、ブルシャイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、シリカ、二酸化チタン、アナターゼ、ルチル、及びこれらの混合物。
【0022】
1つの実施形態において、層状顔料系は、任意選択で、1つ以上の添加剤とともにブレンド又は処理することができる。これらの添加剤は、異なる機能、例えば、分散性の改善、感触の改善、疎水性の改善、及び油分吸収度の改善を有することができる。さらに、添加剤を使用して、層状顔料系の表面電荷特性をカチオン性、アニオン性、中性又は非荷電性に変更することができる。
【0023】
1つの実施形態において、層状顔料系は、塗布の後の時点で受動的に放出され得る成分も含むことができる。これが可能なのは、粒子の多孔質構造と、粒子当たりの自由体積が大量に作り出されていることとによるものである。典型的な添加剤の例としては、限定されるものではないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:メチコン、ジメチコン、トリフルオロプロピルジメチコン、レシチン、卵レシチン、植物レシチン、水素化レシチン、ガラクトースアラビナン糖、デンプン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、キトサン、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸亜鉛、グリセロリン酸ナトリウム、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、プロリン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、タウリン、シトルリン、オルニチン、テアニン、ジペプチド、トリペプチド、3種を超えるアミノ酸のポリペプチド、タンパク質、酵素、ベタイン、カルニチン、カルノシン、ヒドロキシトリプトファン、システイン、ヒドロキシプロリン、N-アセチルシスチン、S-アデノシルメチオニン、チラミン、γ-アミノ酪酸、セロトニン、ドーパミン、2-アミノヘプタン酸(2-aminohepanoic acid)、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、セレノメチオニン、アロ-イソロイシン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチルリジン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、ピロリシン、ホルミルメチオニン、β-アラニン、δ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸、デヒドロアラニン、シスタチオニン、ランチオニン、ジェンコル酸、ジアミンピメリン酸、イソバリン、ラウロイルリジン、グルタミン酸システイン-アルギニンペプチド、ミリストイルサルコシンナトリウム、ステアロイル(steroyl)グルタミン酸二ナトリウム、脂肪酸、脂質、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸、パルミチン酸ナトリウム、ミリスチン酸、エライジン酸、エライジン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ラウリン酸、ラウリン酸ナトリウム、アラキジン酸、アラキジン酸ナトリウム、エルカ酸、エルカ酸ナトリウム、パルミトレイン酸、パルミトレイン酸ナトリウム、リノール酸、リノール酸ナトリウム、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリエトキシドデシルシラン、トリメトキシドデシルシラン、トリエトキシテトラデシルシラン、トリメトキシテトラデシルシラン、トリエトキシヘキサデシルシラン、トリメトキシヘキサデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、PEG-8トリエトキシシラン、ホホバワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、未反応フッ素化化合物、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、パーフルオロアルキルリン酸、トリエトキシカプリルシラン、ステアロイルグルタミン酸、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、シリカ、アロエ、並びにこれらの混合物及び組合せ。
【0024】
多孔質の鉱物基質と多孔質の鉱物シェルとを含む層状顔料系を化粧品製剤に使用して、化粧品の長時間装着特性を改善することができる。1つの実施形態において、層状顔料系は、任意のタイプのパーソナルケア又は化粧品製剤に、装着特性を改善する最適化された装填量で組み込むことができる。別の実施形態において、層状顔料系は、任意のタイプのパーソナルケア又は化粧品製剤に、製剤のソフトフォーカス特性において最大値を示す最適化された装填量で組み込むことができる。1つの実施形態において、層状顔料系は、化粧品に受動的又は能動的効果をもたらす成分であり得る。別の実施形態において、層状顔料系は、化粧品製剤中のフィラー又は結合剤として作用することができる。1つの実施形態において、層状顔料系の最適化された装填量は、化粧品製剤のタイプに応じて、パーソナルケア又は化粧品製剤の総重量に対し0.1重量%~90.0重量%の範囲とすることができる。
【0025】
1つの実施形態において、層状顔料系は、任意のタイプのパーソナルケア製剤、例えば、にきび処置剤、フェイスクリーム、スキンジェル、ハンドクリーム、ボディローション、保湿剤、油中水型製剤、水中油型製剤、セルライト処置剤、ボディスプラッシュ、シャンプー、コンディショナー、スタイリング製品、ヘアスプレー、セットローション、プライマー、ムース、ジェル、ポマード、ワックス、ドライシャンプー、美容液、オイル、ヘアカラー、根元タッチアップ製品、スカルプトリートメント、消臭剤、制汗剤、日焼け止め、日焼けローション、美白化粧品、リップバーム、アンチエイジングクリーム、目元用美容液、ボディオイル、メイク落とし、シェービングクリーム、シェービングジェル、及びアイクリームに組み込むことができる。層状顔料がパーソナルケア製剤に組み込まれる場合、層状顔料に、本発明の範囲を限定することなく、即時又は長時間放出のための1つ以上の活性又は受動成分を装填することができる。
【0026】
別の実施形態において、層状顔料系は、任意の化粧品製剤、例えば、ファンデーション、プレストパウダー、ルースパウダー、ブロンザー、コンシーラー、BB/CCクリーム、ティンテッドモイスチャライザー、リキッドファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、口紅、リップグロス、頬紅、ルージュ、フェイシャルパウダー、及びマニキュア液に組み込むことができる。
【0027】
1つの実施形態において、層状顔料系は、インク又はコーティングに組み込むことができる。作成されたインク又はコーティングは、美観上好ましい光拡散効果を有し得る。コーティング又はインクのソフトフォーカス効果は、限定されるものではないが、不透明化、マット化、ヘイズ性、傷隠し、及び伸展に及ぶ様々な効果のうちの1つ以上であり得る。インク及びコーティングの例としては、限定されるものではないが、自動車用コーティング、保護用透明コーティング、内装建築用コーティング、外装建築用コーティング、粉体コーティング、工業用コーティング、腐食防止コーティング、グラビア印刷用インク、フレキソ印刷用インク、ペーストインク、エネルギー硬化(UV又はEB)インクなどが挙げられる。さらに、層状顔料は、本発明の範囲を限定することなく、あらゆる比率で他の効果顔料又は有機顔料と組み合わせて使用することができる。
【0028】
コーティング又はインク組成物中の層状顔料系の含量は、コーティング系の他の成分に対し、好ましくは0.1重量%~50重量%の範囲で設定することができる。また、層状顔料系の含量は、コーティング系の他の構成要素に対し、1重量%~20重量%の範囲で設定することもできる。
【0029】
1つの実施形態において、層状顔料系は、プラスチック部品に組み込むことができる。この実施形態において、本発明に従うプラスチックは、プラスチックのガラス転移温度超の温度で層状顔料系をプラスチックと配合することにより、層状顔料系及びプラスチック材料に組み込むことによって得ることができる。層状顔料系を組み込むための好適な方法としては、限定されるものではないが、ブロー成形、押出成形、又はプラスチックフィルムもしくは物品の作製に使用される、当業者に知られている他の技法を挙げることができる。1つの実施形態において、層状顔料系は、製剤の総重量に対し0.01%~20%の範囲の装填率でプラスチックに組み込むことができる。
【0030】
層状顔料系をプラスチックに組み込む場合、任意の好適なプラスチック(限定されるものではないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、エポキシ、ポリアミド、ポリ(塩化ビニル)、及びポリ(フッ化ビニリデン)、並びに任意のアクリル、アルキド、フルオロポリマー、及びこれらのブレンドを含む)を使用することができる。層状顔料系をプラスチックに組み込む場合、本発明の範囲を限定することなく、1つ以上のさらなる光拡散顔料又は着色された顔料と組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明を詳細に説明した。ただし、当業者が本開示を考慮した上で、本発明の範囲及び趣旨の範囲内に含まれる修正及び/又は改善を本発明に行うことができることが理解されよう。
【実施例】
【0032】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明するが、これは本発明をさらに例示するものであり、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、またそのように解釈されるべきでもない。
【0033】
実施例1:
【0034】
2Lのオイルジャケット付き反応器に、26.4gの珪藻土(Imerys Imercare 18D)を600gのD.I.水とともに加えた。基質を水中で350RPMで撹拌し、70℃に加熱した。83.2gの酢酸カルシウム水和物及び102.6gのエチレンジアミン四酢酸及び65gの水を反応器に加え、30分間撹拌した。37gの87%リン酸を加えた。50%水酸化ナトリウムを、pHが10.0に達するまで反応器に計量して入れた。全ての試薬を加えたら、スラリーを30分間撹拌した。スラリーを濾過し、水で洗浄した。次いで水性ペーストを60℃で乾燥して、約51%のヒドロキシアパタイトを含む白色の粉末を得た。
【0035】
実施例2:
【0036】
1Lのオイルジャケット付き反応器に、30gのImerys Imercare 18Dを400gのD.I.水とともに加えた。基質を水中で350RPMで撹拌し、55℃に加熱した。47.3gの酢酸カルシウム水和物及び58.3gのエチレンジアミン四酢酸を反応器に加え、30分間撹拌した。20.5gの87%リン酸を加えた。10%水酸化ナトリウムを、pHが10.5に達するまで反応器に計量して入れた。全ての試薬を加えたら、スラリーを30分間撹拌した。スラリーを濾過し、水で洗浄した。次いで水性ペーストを60℃で乾燥して、約23%のヒドロキシアパタイトを含む白色の粉末を得た。
【0037】
実施例3:
【0038】
2Lのオイルジャケット付き反応器に、20gのImerys Imercare 18Dを800gのD.I.水とともに加えた。基質を水中で350RPMで撹拌し、75℃に加熱した。220gの酢酸カルシウム水和物及び270.9gのエチレンジアミン四酢酸を加え、30分間撹拌した。95.4gの87%リン酸を加えた。50%水酸化ナトリウムを、pHが9.5に達するまで反応器に計量して入れた。全ての試薬を加えたら、スラリーを30分間撹拌した。反応内容物を反応器から取り出し、濾過し、洗浄した。次いで水性ペーストを60℃で乾燥して、約77%のヒドロキシアパタイトを含む白色の粉末を得た。
【0039】
実施例4:
【0040】
1Lのオイルジャケット付き反応器に、10.3gのカオリン(Imerys Imercare 02K)を、270gのD.I.水、78.8gの酢酸カルシウム水和物、及び48.6gのエチレンジアミン四酢酸とともに加えた。材料を350RPMで撹拌し、75℃に加熱した。その温度に達したら、35gの86%リン酸を加えた。180gの40%水酸化ナトリウム溶液を反応器にゆっくりと計量して入れた。反応内容物を反応器から取り出し、濾過し、洗浄した。次いで水性ペーストを60℃で乾燥して、約60%のヒドロキシアパタイトを含む白色の粉末を得た。
【0041】
実施例5:
【0042】
2Lのオイルジャケット付き反応器に、30gの珪藻土(Imerys Imercare 03D)を600gのD.I.水とともに加えた。基質を水中で350RPMで撹拌し、60℃に加熱した。94.6gの酢酸カルシウム水和物及び116.6gのエチレンジアミン四酢酸を加え、30分間撹拌した。42gの87%リン酸を加えた。50%水酸化ナトリウムを、pHが10.0に達するまで反応器に計量して入れた。全ての試薬を加えたら、スラリーを30分間撹拌した。反応内容物を反応器から取り出し、濾過し、洗浄した。次いで水性ペーストを60℃で乾燥して、約77%のヒドロキシアパタイトを含む白色の粉末を得た。
【0043】
実施例6:
【0044】
1Lのオイルジャケット付き反応器に、13.4gのマイカ(C86-6105;Sun Chemical)を、270gのD.I.水、78.8gの酢酸カルシウム水和物、及び48.6gのエチレンジアミン四酢酸とともに加えた。材料を350RPMで撹拌し、75℃に加熱した。その温度に達したら、35gの86%リン酸を加えた。180gの40%水酸化ナトリウム溶液を反応器にゆっくりと計量して入れた。反応内容物を反応器から取り出し、濾過し、洗浄した。次いで水性ペーストを60℃で乾燥して、約60%のヒドロキシアパタイトを含む白色の粉末を得た。
【0045】
注:全ての比較実施例は、リン酸カルシウム鉱物、具体的にはヒドロキシアパタイトが欠如している。
【0046】
比較実施例7:Imerys Imercare 18D(珪藻土)(ヒドロキシアパタイトなし)
【0047】
比較実施例8:Barretts Minerals MP1538USP(タルク)
【0048】
比較実施例9:Imerys Imercare 02K(カオリン)(ヒドロキシアパタイトなし)
【0049】
比較実施例10:Sun Chemical C86-6105(マイカ)(ヒドロキシアパタイトなし)
【0050】
比較実施例11:Sun Chemical C47051(TiO2)(ソフトフォーカスに使用する白色の顔料)
【0051】
比較実施例12:Sun Chemical SpectraFlex Illusion C88-0103(タルク上に25% TiO2)(ソフトフォーカスに使用する白色の顔料)
【0052】
比較実施例13:Saint-Gobain Ceramics & Plastics Tres BN PUHP3002(六方晶窒化ホウ素)(ソフトフォーカスに使用する白色の顔料)
【0053】
比較実施例14:Imercare 18D珪藻土上に25% TiO2(ソフトフォーカスに使用する白色の顔料)
【0054】
粒度
【0055】
Cilas 1064Lを用いて実施例1~14の粒度を測定した。試料を水中5%で調製し、5分間超音波処理した。粒度中央値d50を表1で報告する。
【0056】
油分吸収度
【0057】
ヒマシ油を、実施例1~13の1グラムの顔料に、顔料が濡れるまでゆっくりと加えた。スパチュラを使用して、乾燥した顔料中に油を混ぜ込んだ。1gの顔料を濡らすのに必要な油の量を記録し、これを表1で報告する。報告値は、3つの測定値の平均である。
【0058】
【0059】
表1のデータから、発明実施例1~6は1.0g油/g顔料超の高い油分吸収度値を有しており、これらの実施例が、化粧品膜において皮膚に塗布した際に、1.0g油/g顔料未満の油分吸収度値を有する比較実施例7~12及び14よりも長く持続するであろうことが示される。実施例13は、高い油分吸収度を有するものの、その組成は、消費者の認識では環境に優しい又は安全であるとはみなされない。
【0060】
表面積:
【0061】
Nova2000eを用いて、表面積をN2吸着によって測定した。表面積測定値の結果を表1で報告する。この結果は、発明実施例の表面積が比較実施例よりもはるかに高いことを示している。
【0062】
SEM分析
【0063】
Vega3 Tescanを用いて実施例1及び比較実施例7のSEM顕微鏡像を測定した。SEM画像を
図1及び
図2で報告する。
図1は、比較実施例7(ヒドロキシアパタイト層なしの珪藻土)のSEM画像である。
図1では、幾何学的な形状及び滑らかな表面を有する小さな粒子を見ることができる。
図1を
図2と対比して比較することができ、
図2はよりざらざらした外観であり、表面積がより大きいことを示している。ざらざらした表面は、多孔質のヒドロキシアパタイト層の沈着に起因する。
【0064】
ソフトフォーカス測定
【0065】
顔料のソフトフォーカスは、微細な線及び皺をぼかし不明瞭にする光学的現象である。ソフトフォーカスは、顔料膜の反射特性及び透過特性の両方を組み込む方法によって定量化することができる。
【0066】
ソフトフォーカスの反射部分はSFFRとして知られており、以下の式1で定義される。
SFFR=L*75/L*15(1)
式中、L*15及びL*75は、45°入射ビームを用いたマルチアングル分光光度計で測定し、反射ビームを15°及び75°の非鏡面反射角で測定したL*輝度値である。SFFRが0.4~0.7のときに良好なソフトフォーカス効果が観察される。
【0067】
ソフトフォーカスの透過部分(SFFT)は、以下の式2によって定義される。
SFFT=TTOTTDIF(2)
式中、TTOT及びTDIFは、拡散球構成を用いた分光光度計によって測定した膜の全透過率及び拡散透過率である。SFFTが0.50を上回ったときに良好なソフトフォーカス効果が観察される。
【0068】
ソフトフォーカスを測定するため、実施例を溶媒運搬酢酸酪酸セルロース塗料基剤に10%(w/w)の装填量で分散させた。1.5mil Birdアプリケーターを用いて、白黒の試験カード(Byk Chart 2811)に塗料を塗布した。BYK mac iマルチアングル分光光度計を用いて、カードの黒色部分に対しマルチアングル色データを測定した。1.5mil Birdアプリケーターを用いて、透明なマイラーシートにさらなる塗布を行った。X-Rite Color i7分光光度計を用いて、400~700nmの直接透過率及び全透過率を測定した。SFFT及びSFFRを表2で報告する。
【0069】
【0070】
このデータは、タルクにコーティングしたTiO2を含んでいる比較実施例12が、SFFR及びSFFTの両方が規定範囲内に収まっており、ソフトフォーカス効果を有することを示している。ソフトフォーカス用に市販されている運搬窒化物粉末である比較実施例13は、不透明に見え、この装填量ではソフトフォーカス測定値が範囲から外れている。これに対し、実施例1は、この装填量で強力なソフトフォーカス効果を示しており、SFFTは全試料中で最も高く、ソフトフォーカスを示すヘイズ効果が視認可能である。
【0071】
【0072】
CCクリームは、構成要素A及びBの成分を別々に合わせ、各々を85℃に加熱することによって作製する。温めた構成要素Aを構成要素Bに加え、Dispermatを用いて10分間混合する。混合物を40℃未満に冷却し、構成要素Cを加える。D相を約10gの製剤に加え、遠心ミキサーにより3,000RPMで1分間混合してもよい。
【0073】
【手続補正書】
【提出日】2022-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物基質と、多孔質の鉱物シェルとを含
み、前記多孔質の鉱物シェルがリン酸カルシウム鉱物を含む、層状顔料系。
【請求項2】
前記鉱物基質が多孔質である、請求項1に記載の層状顔料系。
【請求項3】
前記鉱物基質が2~100μmのd50を有する粒子である、請求項1に記載の層状顔料系。
【請求項4】
前記鉱物基質が0.5~35μmのd50を有する粒子である、請求項1に記載の層状顔料系。
【請求項5】
前記多孔質の鉱物基質が、結晶質、非晶質、又はこれらの組合せである、請求項2に記載の層状顔料系。
【請求項6】
前記多孔質の鉱物基質が、シリカ、パーライト、珪藻土、カオリン、マイカ、カオリナイト、セリサイト、粘土、タルク、珪藻岩
、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ゼオライト、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の層状顔料系。
【請求項7】
前記多孔質の鉱物基質が珪藻土である、請求項6に記載の層状顔料系。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
前記リン酸カルシウム鉱物が、リン酸カルシウム、リン酸一カルシウム、リン酸一カルシウム一水和物、リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム一水和物、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、二リン酸二カルシウム、三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、モネタイト、ブルシャイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト
、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の層状顔料系。
【請求項10】
前記リン酸カルシウム鉱物がヒドロキシアパタイトである、請求項9に記載の層状顔料系。
【請求項11】
1つ以上の添加剤とともにブレンド又は処理されている、請求項1に記載の層状顔料系。
【請求項12】
前記添加剤が、メチコン、ジメチコン、トリフルオロプロピルジメチコン、レシチン、卵レシチン、植物レシチン、水素化レシチン、ガラクトースアラビナン糖、デンプン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、キトサン、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸亜鉛、グリセロリン酸ナトリウム、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、プロリン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、タウリン、シトルリン、オルニチン、テアニン、ジペプチド、トリペプチド、3種を超えるアミノ酸のポリペプチド、タンパク質、酵素、ベタイン、カルニチン、カルノシン、ヒドロキシトリプトファン、システイン、ヒドロキシプロリン、N-アセチルシスチン、S-アデノシルメチオニン、チラミン、γ-アミノ酪酸、セロトニン、ドーパミン、2-アミノヘプタン酸(2-aminohepanoic acid)、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、セレノメチオニン、アロ-イソロイシン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチルリジン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、ピロリシン、ホルミルメチオニン、β-アラニン、δ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸、デヒドロアラニン、シスタチオニン、ランチオニン、ジェンコル酸、ジアミンピメリン酸、イソバリン、ラウロイルリジン、グルタミン酸システイン-アルギニンペプチド、ミリストイルサルコシンナトリウム、ステアロイル(steroyl)グルタミン酸二ナトリウム、脂肪酸、脂質、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸、パルミチン酸ナトリウム、ミリスチン酸、エライジン酸、エライジン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ラウリン酸、ラウリン酸ナトリウム、アラキジン酸、アラキジン酸ナトリウム、エルカ酸、エルカ酸ナトリウム、パルミトレイン酸、パルミトレイン酸ナトリウム、リノール酸、リノール酸ナトリウム、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリエトキシドデシルシラン、トリメトキシドデシルシラン、トリエトキシテトラデシルシラン、トリメトキシテトラデシルシラン、トリエトキシヘキサデシルシラン、トリメトキシヘキサデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、PEG-8トリエトキシシラン、ホホバワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、未反応フッ素化化合物、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、パーフルオロアルキルリン酸、トリエトキシカプリルシラン、ステアロイルグルタミン酸、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、シリカ、アロエ、並びにこれらの混合物及び組合せからなる群より選択される、請求項11に記載の層状顔料系。
【請求項13】
請求項1に記載の層状顔料系を含む、化粧品製剤又はパーソナルケア製剤。
【請求項14】
前記化粧品製剤が、ファンデーション、プレストパウダー、ルースパウダー、ブロンザー、コンシーラー、顔用液体化粧品、BB/CCクリーム、ティンテッドモイスチャライザー、リキッドファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、口紅、リップグロス、頬紅、ルージュ、フェイシャルパウダー、及びマニキュア液からなる群より選択される、請求項13に記載の化粧品製剤又はパーソナルケア製剤。
【請求項15】
請求項1に記載の層状顔料系を含む、インク又はコーティング組成物。
【請求項16】
前記インク又は前記コーティング組成物が、自動車用コーティング、保護用透明コーティング、内装建築用コーティング、外装建築用コーティング、粉体コーティング、工業用コーティング、腐食防止コーティング、グラビア印刷用インク、フレキソ印刷用インク、ペーストインク、エネルギー硬化(UV又はEB)インクからなる群より選択される、請求項15に記載のインク又はコーティング組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の層状顔料系を含む、プラスチック材料。
【請求項18】
前記プラスチック材料が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、エポキシ、ポリアミド、ポリ(塩化ビニル)、及びポリ(フッ化ビニリデン)、並びに任意のアクリル、アルキド、フルオロポリマー、及びこれらのブレンドから選択される、請求項17に記載のプラスチック材料。
【国際調査報告】