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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】強化セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/02 20060101AFI20231013BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20231013BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20231013BHJP
【FI】
C25B13/02 301
C25B13/08 301
C25B13/04 301
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518980
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2021074757
(87)【国際公開番号】W WO2022063584
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】20198114.9
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムース,ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】フェルバエスト,ハンネ
(72)【発明者】
【氏名】ツディスコ,クリスティーナ
(57)【要約】
予め湿らせたキャスティングドラム(23)上に多孔質支持体(6)を提供する工程と、ポリマー樹脂と親水性無機粒子とを含むドープ溶液(3)を、前記多孔質支持体の、前記予め湿らせたキャスティングドラムと接触する側とは異なる側に塗布する工程と、塗布されたポリマー溶液の転相(9、1)を行い、これにより、強化セパレータを得る工程と、前記キャスティングドラムから前記強化セパレータ(7)を除去する工程とを含み、前記キャスティングドラムが、前記ポリマー樹脂用の非溶媒で予め湿らされていることを特徴とする、強化セパレータの作製方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め湿らせたキャスティングドラム(23)上に多孔質支持体(6)を提供する工程と、
ポリマー樹脂と親水性無機粒子とを含むドープ溶液(3)を、前記多孔質支持体の、前記予め湿らせたキャスティングドラムと接触する側とは異なる側に塗布する工程と、
塗布されたドープ溶液の転相(9、1)を行い、これにより、強化セパレータを得る工程と、
前記キャスティングドラムから前記強化セパレータ(7)を除去する工程と、を含み、
前記キャスティングドラムが、前記ポリマー樹脂用の非溶媒で予め湿らされていることを特徴とする、強化セパレータの作製方法。
【請求項2】
前記予め湿らせたキャスティングドラムは、前記キャスティングドラムに非溶媒の層を塗布することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
彫刻キャスティングドラムが使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記予め湿らせたキャスティングドラムは、前記キャスティングドラムの表面積1mあたり50g未満の非溶媒を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記非溶媒の表面張力が40mN/m未満である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記非溶媒が界面活性剤を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記非溶媒が増粘剤を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記転相工程が、前記ドープ溶液の前記ポリマー樹脂用の非溶媒を使用した液体誘起相分離(LIPS)工程を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記キャスティングドラムを予め湿らせるための非溶媒と、前記LIPS工程のための非溶媒とが同じである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記転相工程が、蒸気誘起位相分離(VIPS)工程をさらに含む、請求項8および9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー樹脂が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリフェニルスルフィドからなる群より選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記親水性無機粒子が、酸化ジルコニウム粒子、水酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、酸化チタン粒子、水酸化チタン粒子、および硫酸バリウム粒子からなる群より選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質支持体が、30%~80%までの開口面積を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質支持体が、40μmから200μmまでの厚さを有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記強化セパレータが、100μmから350μmまでの厚さを有する、先行する請求
項のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化セパレータの製造方法、ならびにアルカリ水電解におけるその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、水素はいくつかの工業プロセスで使用されており、例えば、化学工業では原料として、冶金工業では還元剤として使用されている。水素は、アンモニア、ひいては肥料の製造、ならびに、多くのポリマーの製造に使用されるメタノールの製造の基盤を成す構成要素である。石油中間製品の加工に水素を使用する製油所もまた、利用分野の一つである。
【0003】
水素は将来のエネルギー担体としても重要視されているが、これは、水素がエネルギーを利用可能な形態で貯蔵および送達可能であることを意味する。エネルギーは、酸素との発熱燃焼反応によって放出され、これにより水が生成される。このような燃焼反応中、炭素を含む温室効果ガスは排出されない。
【0004】
低炭素社会の実現に向けて、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した再生可能エネルギーの重要性がますます高まっている。
【0005】
風力発電システムや太陽光発電システムによる発電量は、天候条件に大きく左右されるため一定ではなく、電力需給のアンバランスが生じ得る。そこで、余剰電力を貯蔵するために、電力を使用して水素等のガス燃料を製造する、いわゆるパワーツーガス技術が、近年、多大な関心を集めている。再生可能エネルギー源からの電力生産が増加すれば、生産されたエネルギーの貯蔵および輸送の需要も高まる。
【0006】
アルカリ水電解は、電気を水素に変換し得る重要な製造プロセスである。
【0007】
アルカリ水電解セルでは、いわゆるセパレータまたはダイヤフラムを使用して極性の異なる電極を分離し、これら電子伝導部(電極)間の短絡を防止すると共に、ガスクロスオーバーを回避することで、水素(陰極で生成)と酸素(陽極で生成)の再結合を防止している。セパレータは、これらの機能を全て果たすと共に、陰極から陽極へのヒドロキシルイオンの輸送のために高イオン伝導体でもあるべきである。
【0008】
セパレータは、一般的に、多孔質支持体を備えている。このような多孔質支持体は、特許文献1(Hydrogen Systems社)に開示されているように、セパレータを補強し、セパレータの操作およびセパレータの電解槽への導入を容易にする。
【0009】
好ましい多孔質支持体は、高温、高濃度のアルカリ溶液に対する耐性が高いことから、ポリプロピレン(PP)またはポリフェニレンサルファイド(PPS)で作製されたものである。
【0010】
特許文献2および特許文献3(Agfa Gevaert社およびVITO社)は、ドープ溶液とも呼ばれるポリマー溶液を多孔質支持体の両側にコーティングする、強化セパレータの作製方法を開示している。しかしながら、この方法は、薄型セパレータの作製には最適ではない。ポリマー溶液を、このような薄型セパレータでは典型的である薄い多孔質支持体の両側に塗布することは、きわどい作業であり、セパレータの波打ちが生じるおそれがある。
【0011】
しかしながら、より薄い多孔質支持体を備えた薄型セパレータでは、イオン伝導度が高くなるため、電解効率が向上する。
【0012】
ポリマー溶液を多孔質支持体の片側のみに塗布する方法では、通常、仮支持体の使用が一般的である。例えば、先に述べた特許文献1に開示の方法では、まず、ドープ溶液を仮支持体上に塗布する。次に、多孔質支持体を、前記塗布されたポリマー溶液に浸漬する。凝固工程後、得られた強化セパレータから、仮支持体を除去する。
【0013】
このような仮支持体の代替品に、いわゆる支持キャスティングドラムがある。キャスティングドラムは、多孔質支持体を片側で支持し、一方、多孔質支持体の他方の側にはポリマー溶液が塗布される。凝固工程後、得られたセパレータがキャスティングドラムから取り外される。しかしながら、このような方法には、以下に詳述するように、複雑さおよびスループット等、いくつかの欠点もある。
【0014】
そのため、より複雑でなく、かつ、より費用対効果の高い、薄型強化セパレータの製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第232923(A)号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/147084号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2009/147086号パンフレット
【発明の概要】
【0016】
本発明は、十分な機械的品質を有し、かつイオン伝導度が向上した薄型強化セパレータを作製するための、より複雑でなく、費用対効果の高い方法を提供することを目的とする。
【0017】
この目的は、請求項1に記載の方法により実現される。
【0018】
本発明のさらなる目的は、以下の記載より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、多孔質支持体の片側にポリマー溶液をコーティングする、支持キャスティングドラムを用いた先行技術による強化セパレータの作製方法を模式的に示す図である。
図2図2は、多孔質支持体の片側にポリマー溶液をコーティングする、支持キャスティングベルトを用いた先行技術による強化セパレータの別の作製方法を模式的に示す図である。
図3図3は、多孔質支持体の片側にポリマー溶液をコーティングする、支持キャスティングドラムを用いた本発明による強化セパレータの作製方法を模式的に示す図である。
図4図4は、多孔質支持体の片側にポリマー溶液をコーティングする、支持彫刻キャスティングドラムを用いた本発明による強化セパレータの別の作製方法を模式的に示す図である。
図5図5は、本発明の方法によって得られたセパレータの2つの実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
強化セパレータの作製方法
強化セパレータの作製方法は、一般的には、
多孔質支持体を準備する工程と、
ポリマー樹脂と、親水性粒子と、溶媒とを含むドープ溶液を、多孔質支持体の片側に塗布する工程と、
塗布したドープ溶液の転相を行う工程と、を含む。
【0021】
塗布されたドープ溶液は、一般的には、転相工程の前に、多孔質支持体に含浸される。あるいは、多孔質支持体を、転相を行う直前に前記塗布ドープに浸漬してもよい。
【0022】
転相工程は、一般的には、前記ポリマー樹脂用の非溶媒中で行われる。このような転相は、液体誘起相分離(Liquid Induced Phase Separation:LIPS)とも呼ばれる。
【0023】
図1は、多孔質支持体の片側にドープ溶液をコーティングし、かつ、支持キャスティングドラムを使用する、先行技術による強化セパレータの製造プロセスを示している。
【0024】
多孔質支持体(6)を、キャスティングドラム(2)上に提供する。次に、多孔質支持体の、キャスティングドラムと接触していない側に、ドープ溶液を塗布する(3)。塗布されたドープ溶液は、多孔質支持体に浸透していき、多孔質支持体がドープ溶液に完全に含浸されるとキャスティングドラム表面に接触し、ドラム表面の回転により凝固浴(1)に入る。凝固浴には、ドープ溶液のポリマー樹脂用の非溶媒、一般的には水が入れられている。
【0025】
塗布されたドープ溶液は、片側からのみ、凝固浴(1)の非溶媒と接触する。このため、得られるセパレータは、非溶媒との接触側には小さな孔を、キャスティングドラムと接触する当該セパレータの反対側には、より大きく、より輪郭が曖昧な孔を有する、いわゆる非対称セパレータとなるのが一般的である。
【0026】
膜とも呼ばれる凝固したドープ溶液は、布が一般的である多孔質支持体に少なくとも部分的に埋め込まれており、次いでこれがさらに洗浄部、乾燥部へと導かれ(7)、最後に巻き取られる。
【0027】
キャスティングドラムが回転して凝固浴から出ると、その表面は拭き取られるか、あるいは掻き落とされ(8)、さらに乾燥ゾーン(4)で乾燥されて完全に乾燥した表面を呈し、この表面上に、多孔質支持体(6)が提供され、ドープ溶液が塗布される(3)。
【0028】
多孔質支持体へのドープ浸透度は、当該支持体の開口面積およびドープ溶液の粘度に依存する。しかしながら、ほとんどの場合に高い浸透度が得られ、これによりドープ溶液は多孔質支持体に完全に含浸され、キャスティングドラム表面(2)に接触する。
【0029】
セパレータ(7)は、塗布されたドープ液の転相(凝固)が完了した場合にのみ、キャスティングドラム表面から離脱する。塗布したドープ液が完全に固化しない限り、セパレータはキャスティングドラムに付着している。
【0030】
塗布液の片側のみが非溶媒と接触しているため、キャスティングドラムに接触しているドープ液が凝固(固化)して、得られたセパレータがキャスティングドラムから離脱可能
となるまでにはかなり時間がかかる。凝固が完了せず、キャスティングドラムに接触しているドープ溶液が液体で溶解状態のままである限り、キャスティングドラムからセパレータを引き剥がすことや、または離脱させることは不可能である。引き剥がそうとすれば、塗布されたドープ層に断裂が生じてしまう。
【0031】
ドープ溶液の完全な凝固に要する時間は、塗布されたドープ層の厚さ、ドープ溶液の組成、非溶媒の種類、凝固浴の温度、およびその他のプロセスパラメータに依存する。回転するキャスティングドラムを使用する場合、塗布されたドープ溶液が凝固浴の非溶媒と接触する時間は、ドラムの回転速度によって決まる。完全な凝固を可能にしてキャスティングドラムからセパレータを離脱させるためには、回転速度、ひいては製造速度が制限される。
【0032】
キャスティングドラムの直径を大きくすると、塗布されたドープ溶液と凝固浴の非溶媒との接触時間が長くなり、製造速度が速くなる。
【0033】
製造速度を速める別の方法として、図2に示すような無端平ベルトを使用することが挙げられる。平ベルト(23)は、一般的にはステンレス鋼製であり、1つが駆動される少なくとも2つのローラー(21)上を走行する。より長いベルト(23)を使用することにより、多孔質支持体(6)上に塗布されたドープ溶液(3)と凝固浴(1)の非溶媒との接触時間が長くなり、その結果、製造速度が速くなる。
【0034】
しかしながら、キャスティングドラムの直径の拡大、または従動ベルトの実装は、いずれも製造方法をより複雑にし、よってコストを増大させる。
【0035】
上述した問題は、キャスティングドラムを少量の非溶媒で予め均一に湿潤させるようにした本発明の製造方法によって解決する。これにより、塗布されたドープ溶液が(多孔質支持体に完全に含浸された後に)キャストドラム表面に接触した際、当該キャストドラム表面には非溶媒が存在するため、ドープ溶液の転相(凝固)が起こる。多孔質支持体には、当該多孔質支持体にドープ溶液を塗布したほぼ直後に、塗布したドープ溶液が完全に含浸される。この方法によれば、セパレータをより速くキャスティングドラムから引き剥がすことができ、ドラムの直径の拡大やベルトの使用は不要となる。
【0036】
本発明に係る強化セパレータの作製方法は、
i)予め湿らせたキャスティングドラム(23)上に多孔質支持体(6)を提供する工程と、
ii)ポリマー樹脂と、親水性無機粒子と、溶媒とを含むドープ溶液(3)を、前記多孔質支持体の、前記予め湿らせたキャスティングドラムと接触する側とは異なる側に塗布する工程と、
iii)前記塗布したポリマー溶液の転相(9、1)を行う工程と、
iv)前記キャスティングドラムから強化セパレータ(7)を除去する工程と、を含み、
前記キャスティングドラムが、前記ポリマー樹脂用の非溶媒で予め湿らされていることを特徴とする。
【0037】
なお、ここでいう非溶媒とは、後述の通り、単一の溶媒であってもよいし、異なる溶媒の混合物であってもよい。
【0038】
本発明の一実施形態では、キャスティングドラムの表面に非溶媒の薄層を塗布することにより、キャスティングドラムを予め湿らせる。
【0039】
非溶媒は、例えば、浸漬コーティング、ナイフコーティング、押出コーティング、スプ
レーコーティング、スライドホッパーコーティング等、任意のコーティング技術によってキャスティングドラムに塗布すればよい。
【0040】
非溶媒の層は、キャスティングドラムの表面積1mあたり50g未満の非溶媒を含む。
【0041】
キャスティングドラムを予め湿らせるために使用する非溶媒は、液体誘起転相工程(後述)で使用されるものと同じ非溶媒であることが好ましい。この場合、キャスティングドラムは、図3に示すように、凝固浴(1)からの塗布によりコーティング(2)を施す浸漬コーティングによって、予め湿らせることが好ましい。エアナイフまたは計量ロール(5)を使用して、塗布される非溶媒の層厚を調整してもよい。
【0042】
キャスティングドラム上の非溶媒の層が厚すぎると、多孔質支持体が非溶媒で湿りすぎてしまい、塗布したドープ溶液の多孔質支持体への浸透が不十分になる場合がある。多孔質支持体へのドープ溶液の浸透が不足すると、凝固工程後に、多孔質支持体から膜(凝固したドープ溶液)が剥離してしまうおそれがある。多孔質支持体へのドープ溶液の十分な浸透により、多孔質支持体への凝固したポリマー層の十分な接着が保証される。このような良好な接着は、セパレータの良好な機械的特性をもたらすものであり、セパレータの操作およびセパレータの電解槽への導入に重要である。
【0043】
非溶媒の粘度は、一般的には、ドープ溶液の粘度よりもはるかに低い。キャスティングドラム上の非溶媒の層が厚すぎて、非溶媒で湿りすぎた多孔質布となった場合、非溶媒およびドープ溶液間でのいわゆる滑り(slip)のため、ドープ溶液の均一なコーティングが困難となる場合がある。これはおそらく、粘性力によって構築される剪断力が、ひとまとまりのドープ全体を担持するには不十分であるためと考えられる。
【0044】
これらの理由により、キャスティングドラム上の非溶媒の層厚は、多孔質支持体の厚さよりも薄いことが好ましい。非溶媒の層の厚さは、多孔質支持体の厚さの50%未満であることがより好ましく、20%未満であることが最も好ましい。
【0045】
本発明の別の実施形態では、図4に示すように、キャスティングドラムとして彫刻ロールが使用される。
【0046】
彫刻ロールまたは彫刻ドラム(23)は、凝固浴(1)中で回転し、これにより、グリッドまたは彫刻が非溶媒で満たされる。余分な非溶媒は、スクレーパーまたはドクターブレード(8)で除去することが好ましい。
【0047】
彫刻ドラムに取り込まれる非溶媒液の量または体積は、当該ドラムにおける彫刻セルのジオメトリおよび深さに依存する。
【0048】
彫刻パターンは、線、点、またはこれら両方の組み合わせで構成されてもよい。ドットパターンは、一般的にはセルパターンと呼ばれる。
【0049】
彫刻セルは、四角形、ピラミッド、六角形、または斜線状(tri-helical)であってもよい。また、チャネル開放型の彫刻(open channel engraving)により、セル同士が互いにつながっていてもよい。
【0050】
セル数とは、1直線センチメートルあたりのセルの列数を指す。セル深さとは、セルの深さを指す。セル体積(cm/m)とは、彫刻ロールに取り込まれ得る非溶媒の量を指し、セル数およびセル深さによって決まる。
【0051】
好ましいセル体積は、彫刻パターン、深さ、および線もしくセルの密度に応じて、25cm3/m2未満、またはさらには10cm/m未満であってもよい。
【0052】
四角形のセルパターンでは、50行/cmのセル数および75μmの彫り込み深さを使用して、25cm/mのセル体積を得てもよい。70行/cmのセル数および36μmの彫り込み深さを使用して、10cm/mのセル体積を得てもよい。
【0053】
パターン、例えば、線またはドットは、機械で彫刻してもよいし、レーザーを用いて彫刻してもよい。
【0054】
図4は、彫刻キャスティングドラム(23)、多孔質支持体(6)、および得られたセパレータ(7)を拡大して示している。
【0055】
多孔質支持体は、図4の拡大部分に円として描かれている、布の繊維(詳細は後述)で構成されている。これは、多孔質支持体へのドープ溶液の良好な浸透をもたらす、多孔質支持体の開口面積をよく示している。強化セパレータ(7)は、凝固したドープ溶液に埋め込まれた多孔質支持体からなる。
【0056】
彫刻キャスティングドラムを使用する利点は、多孔質布(6)が、プリウェット液(10)にほとんどまたは全く浸漬されないことであり、これにより、前記布(6)にドープ溶液(3)を良好に浸透させることができる。この結果、膜による布の固定または埋め込みが良好に行われる。
【0057】
予め湿らせたドラムを使用するもう一つの利点は、布を備えたまだ内部が完全に凝固していないドープ(7)からドラムが迅速に離れることにより、さらなる溶媒交換が両側で起こることを可能とし、これにより生産速度を向上し得ることである。
【0058】
以下に詳述するように、前記転相工程は、蒸気誘起位相分離(Vapour Induced Phase Separation:VIPS)工程(図4の9)も含んでよい。
【0059】
非溶媒の表面張力が高すぎて、ドラムが彫刻されているか否かにかかわらず、脱湿スポットを発生させることなくドラム表面を良好に均一に湿潤させることができない場合には、プリウェット液に界面活性剤を添加してその表面張力を下げることが必要な場合がある。
【0060】
プリウェット液の表面張力は、40mN/m未満であることが好ましい。
【0061】
プリウェット液に増粘剤を添加し、その粘度を高めてもよい。
【0062】
プリウェット液の粘度は、50mPa・s未満であることが好ましい。
【0063】
塗布またはナイフ塗布された(doctored)「プリウェット」液が良好に広がるように、キャスティングドラムまたは彫刻ドラムは、表面エネルギーが十分に高い耐摩耗性材料で作られていることが好ましい。ドラムの表面として使用し得る材料としては、クロムめっき、ステンレス鋼、セラミック等が挙げられる。
【0064】
ドラムまたは彫刻ドラムの凝固浴への浸漬部分は、好ましくは全周の約30%から70%であり、より好ましくは約40%から60%である。
【0065】
水電解用セパレータ
本発明に係る製造方法で得られた水電解用セパレータ(図5)は、多孔質支持体(10)および多孔質層(20b)を含む。多孔質支持体を備えたこのようなセパレータは、強化セパレータと呼ばれることが多い。
【0066】
先に詳述した通り、好ましいセパレータは、ポリマー樹脂と、親水性無機粒子と、溶媒とを含む、一般的にドープ溶液と呼ばれるコーティング溶液を、多孔質支持体の片側に塗布することによって作製される。次に、ポリマー樹脂が三次元多孔質ポリマーネットワークを形成する転相工程の後に、多孔質層が得られる。
ドープ溶液が多孔質支持体の表面に塗布されると、ドープ溶液が支持体に浸み込む。
転相後、多孔質支持体への含浸により、三次元多孔質ポリマーネットワークが多孔質支持体内にも確実に行き渡るようになる。これにより、多孔質親水層と多孔質支持体との良好な接着が得られる。
【0067】
好ましいセパレータ(100)を、図5に模式的に示す。ドープ溶液(20a)を多孔質支持体(10)の片側に塗布し、次いで、塗布したドープ溶液を、好ましくは完全に支持体に含浸させる。転相工程(50)の後、支持体(10)と多孔質層(20b)とを備えたセパレータ(100)が得られる。
【0068】
多孔質支持体は、セパレータの製造過程、すなわち、後述のコーティング工程および/または凝固工程において、セパレータを支持し、かつ強度を与えるために使用される。製造過程において仮支持体でセパレータを補強することで、セパレータの洗浄、巻き戻し等が容易に行える。
【0069】
さらに、多孔質支持体は、例えば、セパレータを様々な形式に切断する変換プロセス、ならびにアルカリ電解槽の電極間にセパレータを導入する組立プロセスにおいて、セパレータに強度と引裂き抵抗を付与する。
【0070】
しかしながら、多孔質支持体は、セパレータのイオン伝導性に悪影響を及ぼす可能性がある。アルカリ電解槽の電解セル内への配置後は、多孔質支持体によるセパレータの補強は必ずしも必要ではない。特に、後述のいわゆるゼロギャップ構成では、気泡が抜ける際にセパレータが振動することがないため、セパレータに、亀裂または破れの原因となる疲労は生じない。
【0071】
本発明の別の実施形態によれば、多孔質支持体は、未公開の欧州特許出願第20183861.2(A)号明細書(2020年3月7日にAgfa Gevaert社が出願)に開示されているように、好ましくはアルカリ溶液によって、より好ましくはアルカリ電解槽の電解質によって、セパレータから実質的に除去することが可能である。
【0072】
アルカリ溶液またはアルカリ電解槽の電解質は、好ましくは10重量%~40重量%のKOH水溶液であり、より好ましくは20重量%~35重量%のKOH水溶液である。特に好ましいアルカリ溶液または電解質は、30重量%のKOH水溶液である。
【0073】
アルカリ溶液または電解質の温度は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。
【0074】
多孔質支持体は、アルカリ溶液または電解槽に使用される電解質によって当該支持体が溶解また分解されることによって除去されることが好ましい。
【0075】
上述の通り、セパレータを補強する多孔質支持体の存在が、セパレータのイオン伝導性に悪影響を及ぼす可能性がある。仮支持体を除去した後、セパレータのイオン伝導性が向上することが好ましい。
【0076】
図5に概略的に示すように、多孔質支持体は、セパレータ(100)をアルカリ溶液(60)で処理することにより、電解槽スタックに組み込む前に任意選択で除去してもよく、これによりセパレータ(200)を得てもよい。図3および図4を参照すると、このようなアルカリ処理は、セパレータ(7)を凝固浴(1)からアルカリ浴へと導くことにより実施されることが好ましい。
【0077】
セパレータの厚さは、好ましくは50μmから500μmの間であり、より好ましくは100μmから350μmの間である。
【0078】
セパレータの細孔径は、ガスクロスオーバーを回避して水素と酸素の再結合を防止するため、十分に小さくする必要がある。一方、陰極から陽極へのヒドロキシルイオンの効率的な輸送を確実なものとするためには、より大きな細孔径が好ましい。ヒドロキシルイオンを効率的に輸送するためには、電解質をセパレータに効率的に浸透させる必要がある。
【0079】
セパレータの最大孔径(PDmax)は、好ましくは0.05μmから2μmの間であり、より好ましくは0.10μmから1μmの間であり、最も好ましくは0.15μmから0.5μmの間である。
【0080】
ここでいう細孔径とは、米国試験材料協会規格(ASMT)の方法F316に記載のバブルポイント試験方法を用いて測定したものであることが好ましい。
【0081】
セパレータの空孔率は、好ましくは30%から70%の間であり、より好ましくは40%から60%の間である。空孔率が上述の範囲内であるセパレータは、ダイヤフラムの細孔が連続的に電解液で満たされるため、一般的に、優れたイオン透過性および優れたガスバリア性を有する。
【0082】
ドープ溶液の塗布
多孔質支持体(6)の片側へのドープ溶液(3)のコーティングまたはキャスティングには、あらゆる公知のコーティングシステムを用いることができ、バーコーティングもしくはロッドコーティング、押出コーティング、およびスロットコーティングからなる群より選択されるコーティングシステムを用いて行うことが好ましい。
【0083】
非常に好ましい実施形態では、ドープ溶液は、スロットダイコーティングによって塗布される。ドープ溶液を支持体の片側に塗布する場合には、一般的には、1つのスロットコーティングダイが使用される。スロットダイヘッドは、ドープ溶液を所定温度に保ち、ドープ溶液を多孔質支持体上に均一に行き渡らせ、かつ、流速を調節して塗布されるドープ溶液の膜厚を調整することが可能である。
【0084】
ドープ溶液の粘度は、スロットダイコーティングに使用される場合、コーティング温度および1s-1のせん断速度において、好ましくは1Pa・sから500Pa・sの間であり、より好ましくは10Pa・sから100Pa・sの間である。
【0085】
ドープ溶液は、せん断減粘性であることが好ましい。せん断速度100s-1での粘度に対する、せん断速度1s-1での粘度の比は、少なくとも2であることが好ましく、少なくとも2.5であることがより好ましく、少なくとも5であることが最も好ましい。
【0086】
多孔質支持体(6)は、連続したウェブであることが好ましい。
【0087】
塗布直後に、多孔質支持体が、ドープ溶液に含浸された状態となることが好ましい。支持体は、塗布されたドープ溶液が完全に含浸した状態となることが好ましい。
【0088】
転相工程
ドープ溶液を支持体上に塗布した後、塗布したドープ溶液の転相を行う。転相工程では、塗布されたドープ溶液が、多孔質の親水性層に変換される。
【0089】
塗布されたドープ溶液から多孔質親水性層を作製するための転相機構としては、どのような機構を使用してもよい。
【0090】
転相工程は、いわゆる液体誘起相分離(LIPS)工程、蒸気誘起相分離(VIPS)工程、またはVIPS工程とLIPS工程との組み合わせを含むことが好ましい。転相工程は、VIPS工程およびLIPS工程の両方を含むことが好ましい。
【0091】
LIPSおよびVIPSは、いずれも非溶媒誘起の転相プロセスである。
【0092】
LIPS工程では、ドープ溶液でコーティングされた支持体を、ドープ溶液の溶媒と混和可能な、ドープ溶液のポリマー樹脂用の非溶媒に接触させる。
【0093】
ドープ溶液でコーティングされた支持体を、凝固浴(1)とも呼ばれる非溶媒浴に浸漬することにより、これを実施することが一般的である。
【0094】
好ましい非溶媒としては、水;水と、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびジメチルアセトアミド(DMAC)からなる群より選択される非プロトン溶媒との混合物;PVPもしくはPVA等の水溶性ポリマーの水溶液;または水と、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコールとの混合物が挙げられる。
【0095】
非溶媒としては、水が最も好ましい。
【0096】
凝固浴の温度は、好ましくは20℃から90℃の間、より好ましくは40℃から70℃の間である。
【0097】
コーティングされたポリマー層から非溶媒浴への溶媒の移動、ならびに当該ポリマー層への非溶媒の移動により、転相が起こり、三次元多孔質ポリマーネットワークが形成される。塗布されたドープ溶液が支持体に含浸されることにより、得られた親水性層と支持体とが十分に接着される。
【0098】
VIPS工程では、ドープ溶液でコーティングされた支持体は、非溶媒の蒸気、好ましくは湿った空気に曝される。
【0099】
凝固工程は、VIPS工程とLIPS工程の両方を含むことが好ましい。ドープ溶液でコーティングされた支持体は、凝固浴への浸漬(LIPS工程)の前に、まず、湿った空気に曝される(VIPS工程)ことが好ましい。
【0100】
図3および図4に示す製造方法では、VIPSは、スロットコーティングダイ(3)と凝固浴(1)中の非溶媒表面(20)との間にあり、例えば、断熱金属板(15)で環境から遮蔽されている、領域9内で実施される。
【0101】
VIPS工程における水の移動の程度および速度は、空気の速度、空気の相対湿度および温度、ならびに曝露時間を調整することによって制御可能である。
【0102】
曝露時間は、スロットコーティングダイ(3)と凝固浴(1)中の非溶媒表面(20)との間の距離、および/または長尺なウェブ6がスロットコーティングダイから凝固浴に向かって搬送される速度を変更することによって調整してもよい。
【0103】
VIPS領域(9)の相対湿度は、凝固浴の温度によって、ならびにVIPS領域(15)を環境および凝固浴から遮蔽することによって調整してもよい。
【0104】
空気の速度は、VIPS領域(9)内に組み込まれたベンチレーターの回転速度によって調整してもよい。
【0105】
転相工程の後、好ましくは、凝固浴中で行われるLIPS工程の後に、洗浄工程を行ってもよい。
【0106】
転相工程の後、または任意選択の洗浄工程の後に、乾燥工程を行ってもよい。
【0107】
仮支持体の除去
仮支持体が使用される実施形態では、後述するように、セパレータを電解槽の電極間に配置する前または後に、仮支持体を除去してもよい。
【0108】
セパレータをアルカリ電解槽に配置する前に仮支持体を除去した場合には、当該支持体の除去後にアルカリ電解槽の電解液によって多孔質支持体から溶け出す物質または多孔質支持体の分解生成物が、電極の電極触媒特性または電解プロセスに悪影響を及ぼすことがない。ただし、支持体を電解槽の外で除去すると、電解槽スタックを組み立てる際に、セパレータシートの操作または取り扱いのための余分な補強という利点はなくなる。
【0109】
仮支持体を除去するには、転相工程後、セパレータをアルカリ溶液に曝すことが好ましい。
【0110】
多孔質支持体を備えたセパレータを、アルカリ溶液を含む浴に入れることが好ましい。
【0111】
支持体を除去するアルカリ処理の後、好ましくは、得られたセパレータに対して洗浄工程を行い、続いて、任意選択で乾燥工程を行う。
【0112】
アルカリ溶液は、好ましくは20重量%~40重量%のKOH水溶液であり、より好ましくは30重量%のKOH水溶液である。
【0113】
アルカリ溶液の温度は、50℃以上であることが好ましい。
【0114】
多孔質支持体
多孔質支持体は、一般的には、セパレータを補強し機械的強度を確保するために使用される。
【0115】
支持体の厚さは、好ましくは20μmから400μmまで、より好ましくは40μmから200μmまで、最も好ましくは60μmから100μmまでである。
【0116】
多孔質支持体は、多孔質布、多孔質金属板、および多孔質セラミック板からなる群より
選択することができる。
【0117】
多孔質支持体は、多孔質布であることが好ましく、多孔質ポリマー布であることがより好ましい。
【0118】
多孔質ポリマー布は、織布であっても不織布であってもよい。織布は、一般的に、寸法安定性、ならびに開口面積および厚みの均質性がより優れている。ただし、厚さ100μm以下の織布はより製造が複雑で、より高価となる。不織布の場合は、厚さが100μm以下であっても、製造はそれほど複雑ではない。さらに、不織布は、より大きい開口面積を有し得る。
【0119】
多孔質支持体の開口面積は、支持体への電解液の良好な浸透を確保するため、30%から80%の間であることが好ましく、40%から70%の間であることがより好ましい。
【0120】
好適な多孔質ポリマー布としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(PE)、ポリスルホン(PS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド/ナイロン(PA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(s-PEEK)、モノクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、エチレンとテトラフルオロエチレン(tetrafluorethylene)(ETFE)もしくはクロロトリフルオロエチレン(chlorotrifluorethylene)(ECTFE)との共重合体、ポリイミド、ポリエーテルイミド、およびm-アラミドで作製された布が挙げられる。
【0121】
好ましいポリマー布は、ポリプロピレン(PP)またはポリフェニレンサルファイド(PPS)で作製されたものであり、ポリフェニレンサルファイド(PPS)で作製されたものが最も好ましい。
【0122】
ポリフェニレンスルフィド系の多孔質支持体は、高温、高濃度のアルカリ溶液に対する耐性が高く、かつ、水電解プロセス中に陽極から発生する活性酸素に対する化学的安定性が高い。また、ポリフェニレンサルファイドは、織布または不織布等、様々な形態に容易に加工できる。
【0123】
多孔質支持体の密度は、0.1g/cmから0.7g/cmの間であることが好ましい。
【0124】
欧州特許出願公開第1776490(A)号明細書および国際公開第2009/147084号パンフレットに開示のような製造プロセスを可能にするため、多孔質支持体は、連続ウェブであることが好ましい。
【0125】
ウェブの幅は、好ましくは30cmから300cmの間であり、より好ましくは40cmから200cmの間である。
【0126】
本発明の別の実施形態では、多孔質支持体は、上述のように、いわゆる仮多孔質支持体であってもよい。
【0127】
このような仮支持体は、電解槽内で除去されるため、高アルカリ電解液に対して耐性を有する必要はない。
【0128】
アルカリ処理によりセパレータから除去し得る布を設計するためには、以下のアプロー
チが好ましい:
布繊維の主ポリマーにアルカリ可溶化基を導入すること;
布繊維の主ポリマーにアルカリ反応基を導入すること;および
布繊維の主ポリマーの骨格にアルカリ分解性官能基を導入すること。
【0129】
好ましいアルカリ可溶化基は、pKaが10以下、より好ましくは8以下、最も好ましくは6以下の官能基である。特に好ましいアルカリ可溶化基は、フェノール、スルホンアミド、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、およびスルホン酸からなる群より選択され、カルボン酸が特に好ましい。
【0130】
好ましいアルカリ反応基は、エステル類および無水物からなる群より選択され、エステル類が特に好ましい。
【0131】
好ましいアルカリ分解性基は、エステル類である。
【0132】
布繊維は、天然ポリマー、合成ポリマー、またはこれらの組み合わせから選択することができる。布は、綿布、絹布、亜麻布、ジュート布、麻布、モダール布、竹布、パイナップル布、バサルト布、ラミー布、ポリエステル系布、アクリル系布、ガラス繊維布、アラミド繊維布、ポリアミド布、ポリオレフィン布、ポリウレタン布、およびこれらの混合物からなる群より選択することが好ましい。
【0133】
アルカリ可溶性の布を設計するための戦略が、いくつか開示されている。
【0134】
後から行う改質(post modification)による綿のアルカリ可溶性化は、American Dyestuff Reporter,50(19),67-74(1961)および米国特許第3087775号明細書(米国農務省)に開示されているように、アルカリ可溶性セルロース系布の設計に用いられている、古くから知られた手法である。低官能化カルボキシメチルセルロースタイプのポリマーが特に好ましい。
【0135】
ポリアミドの骨格を、米国特許第5457144号(Rohm and Haas Company)に開示のような特定のエステル類等のアルカリ分解性官能基で官能化し、アルカリ可溶性のポリアミドを設計することができる。
【0136】
ポリオレフィンは、好ましくは無水物およびカルボン酸からなる群より選択される、アルカリ反応性基またはアルカリ可溶性基を含むモノマーを用いて、官能化または共重合化することができる。無水マレイン酸でグラフト官能化された、エチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体およびポリエチレンは、特に好ましい官能化ポリオレフィンである。
【0137】
最も好ましい実施形態では、前記布はポリエステル系であるが、これは、この布自体がアルカリ分解性を本質的に備えているためである。特に好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、およびこれらの共重合体からなる群より選択される。ポリ乳酸は、その生分解性と、再生可能資源から製造される点から特に好ましい。
【0138】
アルカリ可溶性および分解性を高めたポリエステルを設計する戦略として、日本特許第7145509号明細書(東洋紡績)に開示のように、ポリエステル構造への親水性ブロック、好ましくはポリエチレングリコール断片の導入に基づく戦略であって、中国特許第1439751号明細書(Jinan Zhenghao Advanced Fiber Co.)および韓国特許第2018110827号明細書(Toray Chemi
cal Korea Inc.)に開示のように、追加の水可溶化基の導入を任意選択で組み合わせて行なう戦略が開示されている。さらに別の戦略は、シュウ酸エステル類等、ポリエステル骨格における反応性エステルの導入に基づいて行うことができ、これにより、アルカリ処理に対する繊維の感受性を向上させるものである。
【0139】
ポリマー布は、単独で使用してもよいし、あるいは、2つ以上のポリマー布を組み合わせて使用して支持体を製造してもよい。
【0140】
アルカリ電解槽の電解質によって支持体が除去された後、支持体から溶け出した物質または支持体の分解生成物が、電極の電極触媒特性または電解プロセスに悪影響を及ぼさないことが好ましい。
【0141】
支持体は、アルカリ溶液またはアルカリ電解槽の電解質によって、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%除去される。最も好ましい実施形態では、支持体は、アルカリ電解槽の電解質によって完全に除去される。
【0142】
支持体は、アルカリ溶液またはアルカリ電解槽の電解質中に24時間~48時間静置された後、実質的に除去されることが好ましい。しかしながら、支持体は、アルカリ溶液またはアルカリ電解槽の電解質中に2週間または1ヶ月間静置された後、実質的に除去されてもよい。
【0143】
ただし、仮支持体は、セパレータの作製方法に使用される各種成分、特に溶媒に対して耐性を有する必要がある。
【0144】
例えば、仮支持体は、仮支持体上にドープ溶液を塗布するコーティング工程を可能とするため、後述のセパレータの作製方法に使用されるドープ溶液の溶媒に対し、好ましくは少なくとも0.5分間、より好ましくは少なくとも1分間、最も好ましくは少なくとも2分間、特に好ましくは少なくとも5分間耐性を示す必要がある。
【0145】
後述の凝固工程の後、ドープ溶液の溶媒は除去され、支持体に影響を及ぼさない程度の非常に低い残存量(好ましくは10g/m未満、より好ましくは5g/m未満)となる。
【0146】
ポリマー樹脂
多孔質層は、ポリマー樹脂を含む。
【0147】
ポリマー樹脂は、後述の通り、セパレータの作製における転相工程の結果として、三次元多孔質ネットワークを形成する。
【0148】
ポリマー樹脂は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン樹脂、ならびにポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリスチレン(PS)等の芳香族炭化水素樹脂から選択してもよい。ポリマー樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上のポリマー樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
PVDFおよびビニリデンフルオライド(VDF)系共重合体が、酸化/還元耐性および成膜性の点から好ましい。これらの中でも、VDF、ヘキサンフルオロプロピレン(HFP)、およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の三量体が、膨潤性、耐熱性、および電極への接着性に優れていることから好ましい。
【0150】
別の好ましいポリマー樹脂として、耐熱性および耐アルカリ性に優れることから、芳香族炭化水素樹脂が挙げられる。芳香族炭化水素樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルスルホン、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、およびポリアミドイミドが挙げられる。
【0151】
特に好ましいポリマー樹脂は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリフェニルスルホンからなる群より選択され、ポリスルホンが最も好ましい。
【0152】
ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリフェニルスルホンの分子量(Mw)は、好ましくは10000~500000の間、より好ましくは25000~250000の間である。Mwが低すぎると、多孔質層の物理的強度が不十分となる場合がある。Mwが高すぎると、ドープ溶液の粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0153】
ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびこれらの組み合わせの例が、欧州特許出願公開第3085815(A)号明細書の0021~0032段落に開示されている。
【0154】
ポリマー樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上のポリマー樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0155】
無機親水性粒子
親水性層は、親水性粒子も含む。
【0156】
好ましい親水性粒子は、金属酸化物および金属水酸化物から選択される。
【0157】
好ましい金属酸化物は、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化セリウム、および酸化マグネシウムからなる群より選択される。
【0158】
好ましい金属水酸化物は、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化ビスマス、水酸化セリウム、および水酸化マグネシウムからなる群より選択される。特に好ましい水酸化マグネシウムは、欧州特許出願公開第3660188(A)号明細書の0040~0063段落に開示されている。
【0159】
別の好ましい親水性粒子としては、硫酸バリウム粒子が挙げられる。
【0160】
使用し得るその他の親水性粒子としては、周期表のIV族元素の窒化物および炭化物が挙げられる。
【0161】
親水性粒子は、D50粒径が好ましくは0.05μmから2.0μm、より好ましくは0.1μmから1.5μm、最も好ましくは0.15μmから1.00μm、特に好ましくは0.2μmから0.75μmである。D50粒径は、好ましくは0.7μm以下、好ましくは0.55μm以下、より好ましくは0.40μm以下である。
【0162】
D50粒径は、粒度分布のメジアン径または中間値としても知られている。これは、累積分布の50%における粒径の値である。例えば、D50=0.1umの場合、粒子の50%は1.0umより大きく、50%は1.0umより小さい。
【0163】
D50粒子径は、例えば、Malvern Panalytical社製のMaste
rsizerを使用し、レーザー回折を用いて測定することが好ましい。
【0164】
多孔質層の総乾燥重量に対する親水性粒子の量は、好ましくは少なくとも50重量%であり、より好ましくは少なくとも75重量%である。
【0165】
親水性粒子のポリマー樹脂に対する重量比は、60/40より大きいことが好ましく、70/30より大きいことがより好ましく、75/25より大きいことが最も好ましい。
【0166】
ドープ溶液
ドープ溶液は、上述のようなポリマー樹脂と、上述のような親水性粒子と、溶媒とを含むことが好ましい。
【0167】
ドープ溶液の溶媒は、ポリマー樹脂が溶解可能な有機溶媒であることが好ましい。さらに、有機溶媒は、水と混和性であることが好ましい。
【0168】
溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、N-エチル-ピロリドン(NEP)、N-ブチル-ピロリドン(NBP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、アセトニトリル、およびこれらの混合物から選択することが好ましい。
【0169】
非常に好ましい溶媒は、特に安全衛生上の理由から、NBPである。
【0170】
ドープ溶液は、得られるポリマー層の特性、例えば、その空孔率および外表面における最大孔径を最適化するための他の成分をさらに含んでもよい。
【0171】
ドープ溶液は、多孔質層の表面および内部の孔径を最適化するための添加剤を含むことが好ましい。このような添加剤は、有機化合物、無機化合物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0172】
多孔質層の細孔形成に影響を与え得る有機化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、多価アルコール類、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、イソノナン酸またはネオデカン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、メチルセルロース、およびデキストランが挙げられる。
【0173】
多孔質層の細孔形成に影響を与え得る好ましい有機化合物は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドンから選択される。
【0174】
好ましいポリエチレングリコールは、分子量が10000~50000であり、好ましいポリエチレンオキサイドは、分子量が50000~300000であり、好ましいポリビニルピロリドンは、分子量が30000~1000000である。
【0175】
多孔質層の細孔形成に影響を与え得る特に好ましい有機化合物は、グリセロールである。
【0176】
細孔形成に影響を与え得る化合物の量は、ドープ溶液の総重量に対して、好ましくは0.1重量%から15重量%の間であり、より好ましくは0.5重量%から5重量%の間である。
【0177】
細孔形成に影響を与え得る無機化合物としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、および硫酸バリウムが挙げられる。
【0178】
細孔形成に影響を与える添加剤を、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0179】
多孔質支持体上に2つのポリマー層を塗布する場合、両層に使用するドープ溶液は、同一でもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0180】
電解槽
本発明に係るアルカリ水電解用セパレータは、アルカリ水電解槽内で使用することができる。
電解セルは、一般的には、セパレータによって分離された、陽極と陰極の2つの電極からなる。両電極間には、電解質が存在する。
【0181】
電気エネルギー(電圧)が電解セルに供給されると、陽極で電解質のヒドロキシルイオンが酸化されて酸素となり、陰極で水が還元されて水素となる。陰極で生成されたヒドロキシルイオンは、セパレータを通って陽極へ移動する。セパレータは、電解の際に生成される水素ガスと酸素ガスとの混合を防止する。
【0182】
電解液としては、アルカリ溶液が一般的である。好ましい電解液は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選択される電解質の水溶液である。水酸化カリウムの電解質は、その比導電率の高さから、好まれることが多い。電解液中の電解質の濃度は、電解液の総重量に対して、好ましくは10重量%~40重量%、より好ましくは20重量%~35重量%である。非常に好ましい電解質は、30重量%のKOH水溶液である。電解液の温度は、好ましくは50℃から120℃であり、より好ましくは80℃から100℃である。
【0183】
電極は、一般的には、いわゆる触媒層を備えた基板を含む。触媒層は、酸素が生成される陽極用と、水素が生成される陰極用とで異なっていてもよい。
【0184】
一般的な基板は、ニッケル、鉄、軟鋼、ステンレス鋼、バナジウム、モリブデン、銅、銀、マンガン、白金族元素、グラファイト、およびクロムからなる群より選択される導電性材料製である。基板は、2種類以上の金属からなる導電性合金製、または2種類以上の導電性材料の混合物製であってもよい。好ましい材料は、ニッケルまたはニッケル系合金である。ニッケルは、強アルカリ溶液中での安定性に優れ、導電性が良く、比較的安価である。
【0185】
陽極上に設けられる触媒層は、高い酸素発生能を有することが好ましい。当該触媒層は、ニッケル、コバルト、鉄、および白金族元素を含むことが好ましい。当該触媒層は、これらの元素を、元素金属、化合物(例えば、酸化物)、複数の金属元素からなる複合酸化物もしくは合金、またはこれらの混合物として含んでもよい。好ましい触媒層としては、めっきニッケル、ニッケルとコバルトとの、もしくはニッケルと鉄とのめっき合金、LaNiO、LaCoO、およびNiCo等の、ニッケルとコバルトとを含む複合酸化物、酸化イリジウム等の白金族元素の化合物、またはグラフェン等の炭素材料が挙げられる。
【0186】
ラネーニッケル構造は、Ni-Al合金またはNi-Zn合金から、アルミニウムまたは亜鉛を選択的に浸出させることによって形成される。浸出中に形成された格子空孔は、大きな表面積および高密度の格子欠陥をもたらし、これらが、電極触媒反応が起こる活性部位となる。
【0187】
触媒層は、耐久性および基板に対する接着性を向上させるために、ポリマー等の有機物質をさらに含有してもよい。
【0188】
陰極上に設けられる触媒層は、高い水素発生能を有することが好ましい。当該触媒層は、ニッケル、コバルト、鉄、および白金族元素を含むことが好ましい。所望の活性および耐久性を実現するため、触媒層は、金属、酸化物等の化合物、複数の金属元素からなる複合酸化物もしくは合金、またはこれらの混合物を含んでもよい。好ましい触媒層は、ラネーニッケル;複数の材料の組み合わせからなるラネー合金(例えば、ニッケルとアルミニウム、ニッケルとスズ);ニッケル化合物またはコバルト化合物をプラズマ溶射により吹き付けて作られる多孔質コーティング;ニッケルと、例えば、コバルト、鉄、モリブデン、銀、銅から選択される元素との合金および複合化合物;水素発生能の高い白金族元素(例えば、白金およびルテニウム)の元素金属および酸化物;これらの白金族元素の元素金属もしくは酸化物と、他の白金族元素(例えば、イリジウムもしくはパラジウム)の化合物との、または希土類金属(例えば、ランタンおよびセリウム)の化合物との、混合物;および炭素材料(例えば、グラフェン)で形成される。
【0189】
より高い触媒活性および耐久性を提供するために、上述の材料は、複数の層として積層されてもよいし、前記触媒層に含有されてもよい。
【0190】
耐久性または基板への接着性を向上させるため、ポリマー材料等の有機材料を含有させてもよい。
【0191】
いわゆるゼロギャップ電解セルでは、電極をセパレータに直接接触させ、これにより、両電極間の空間を減少させている。セパレータへの電解質の充填を可能にし、かつ、生成された酸素や水素ガスを効率的に除去するため、メッシュタイプまたは多孔質の電極が使用されている。このようなゼロギャップの電解セルは、より高い電流密度で動作することが確認されている。
【0192】
典型的なアルカリ水電解槽は、前述の通り、電解セルのスタックとも呼ばれる、複数の電解セルを備えている。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め湿らせたキャスティングドラム(23)上に多孔質支持体(6)を提供する工程と、
ポリマー樹脂と親水性無機粒子とを含むドープ溶液(3)を、前記多孔質支持体の、前記予め湿らせたキャスティングドラムと接触する側とは異なる側に塗布する工程と、
塗布されたドープ溶液の転相(9、1)を行い、これにより、強化セパレータを得る工程と、
前記キャスティングドラムから前記強化セパレータ(7)を除去する工程と、を含み、
前記キャスティングドラムが、前記ポリマー樹脂用の非溶媒で予め湿らされていることを特徴とする、強化セパレータの作製方法。
【請求項2】
前記予め湿らせたキャスティングドラムは、前記キャスティングドラムに非溶媒の層を塗布することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
彫刻キャスティングドラムが使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予め湿らせたキャスティングドラムは、前記キャスティングドラムの表面積1mあたり50g未満の非溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非溶媒の表面張力が40mN/m未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非溶媒が界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非溶媒が増粘剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記転相工程が、前記ドープ溶液の前記ポリマー樹脂用の非溶媒を使用した液体誘起相分離(LIPS)工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キャスティングドラムを予め湿らせるための非溶媒と、前記LIPS工程のための非溶媒とが同じである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記転相工程が、蒸気誘起位相分離(VIPS)工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー樹脂が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリフェニルスルフィドからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記親水性無機粒子が、酸化ジルコニウム粒子、水酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、酸化チタン粒子、水酸化チタン粒子、および硫酸バリウム粒子からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質支持体が、30%~80%までの開口面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質支持体が、40μmから200μmまでの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記強化セパレータが、100μmから350μmまでの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】