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特表2023-544136リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20231013BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231013BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519299
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 KR2021018098
(87)【国際公開番号】W WO2022119344
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0168858
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067237
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080132
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080133
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ スン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム ラナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン アルム
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA10
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050FA12
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA02
(57)【要約】
本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質は、下記[化1]で示される層状構造のリチウム過剰酸化物を含むリチウム複合酸化物を含み、リチウム複合酸化物は、二次粒子を含み、二次粒子は、1つ以上の一次粒子を含み、一次粒子は、1つ以上の結晶子を含み、二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、コア、及び上記コアの表面の中の少なくとも一部を占めるシェルを含み、下記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)のうちから選択される少なくともいずれか1つ以上の元素の酸化数のモル数を、Mp+/Mとするとき、二次粒子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違している、二次電池用正極活物質。
[化1]rLiM1O・(1-r)LiM2O
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化1]で示される層状構造のリチウム過剰酸化物を含むリチウム複合酸化物を含み、
前記リチウム複合酸化物は、二次粒子を含み、前記二次粒子は、1つ以上の一次粒子を含み、前記一次粒子は、1つ以上の結晶子を含み、
前記二次粒子、前記一次粒子、及び前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、コア、及び前記コアの表面の中の少なくとも一部を占めるシェルを含み、
下記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)のうちから選択されるいずれか1つ以上の元素の酸化数のモル数を、Mp+/Mとするとき、前記二次粒子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違している、二次電池用正極活物質。
[化1]
rLiM1O・(1-r)LiM2O
(前記[化1]において、0<r<1、0<a≦1であり、M1は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Co、Cu、Zn、Sn、Mg、Ni、Ru、Al、Ti、Zr、B、Mn、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、Si、及びBiからなる群から選択される少なくとも1種以上であり、M2は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Co、Cu、Zn、Sn、Mg、Ni、Ru、Al、Ti、Zr、B、Mn、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、Si、及びBiからなる群から選択される少なくとも1種以上である。)
【請求項2】
前記一次粒子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違している、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記結晶子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違している、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記二次粒子、前記一次粒子、及び前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってMp+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含む、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記二次粒子、前記一次粒子、及び前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、シェルがコアよりもNi2+/Ni3+が大きい、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記二次粒子、前記一次粒子、及び前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってNi2+/Mが減少する酸化数勾配部を含む、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記二次粒子、前記一次粒子、及び前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってNi3+/Mが増加する酸化数勾配部を含む、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記二次粒子、前記一次粒子、前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のシェルは、Ni2+/Ni3+が、1よりも大きい、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記二次粒子、前記一次粒子、前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、シェルがコアよりもMn3+/Mn4+が大きい、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記二次粒子、前記一次粒子、及び前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってMn3+/Mが減少する酸化数勾配部を含む、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項11】
前記二次粒子、前記一次粒子、及び前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってMn4+/Mが増加する酸化数勾配部を含む、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項12】
前記二次粒子、前記一次粒子、前記結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のシェルは、Mn3+/Mn4+が、1よりも大きい、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項13】
前記正極活物質は、コバルト(Co)を含むか、又はコバルトを(Co)を含まない、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項14】
請求項1に記載の正極活物質を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状構造のリチウム過剰酸化物を含むリチウム複合酸化物を含む二次電池用正極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、MP3プレーヤー、タブレットPCのような携帯用モバイル機器の発展により、電気エネルギーを貯蔵する二次電池に対する需要が爆発的に伸び続けている。 特に、電気自動車、中大型エネルギー貯蔵システム、及び高エネルギー密度が要求される携帯機器の登場により、リチウム二次電池に対する需要が増加しつつある。
【0003】
正極活物質として、近年、最も脚光を浴びている物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物Li(NiCoMn)O(このとき、上記x、y、zは、それぞれ独立した酸化物組成元素の原子分率であって、0<x≦1、0<y≦1、0<z≦1、及び0<x+y+z≦1)である。この材料は、これまで正極活物質として活発に研究及び使用されてきたLiCoOよりも高電圧で使用されるため、高容量を出すという長所があり、また、Co含有量が相対的に少ないため、低価格であるという長所がある。しかし、レート特性(rate capability)及び高温での寿命特性が劣るという短所がある。
【0004】
それで、既存のLi(NiCoMn)Oを凌駕する高い可逆容量を示すリチウム過剰型層状酸化物をリチウム二次電池に適用するための研究が盛んに行われている。
【0005】
しかし、寿命サイクル中に発生する放電容量減少(cycle life)及び電圧降下(voltage decay)現象が問題となるが、これは、寿命サイクル中の遷移金属移動によるスピネルと類似した構造への相転移によるものである。このような放電容量減少及び電圧降下の問題は、リチウム二次電池の商用化のためには、必ず解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、二次電池用正極活物質の寿命サイクル中の相転移を抑制することにより、充放電容量を増加させ、寿命劣化及び電圧降下の問題を解消することにある。
また、本発明の目的は、二次電池用正極活物質のリチウムイオン移動度を増加させ、レート特性を向上させることにある。
さらに、本発明の目的は、二次電池用正極活物質の表面の運動(kinetic)及び構造安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のような課題を解決するため、本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質は、下記[化1]で示される層状構造のリチウム過剰酸化物を含むリチウム複合酸化物を含み、上記リチウム複合酸化物は、二次粒子を含み、上記二次粒子は、1つ以上の一次粒子を含み、上記一次粒子は、1つ以上の結晶子を含み、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、コア、及び上記コアの表面の中の少なくとも一部を占めるシェルを含み、下記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)のうちから選択される少なくともいずれか1つ以上の元素の酸化数のモル数を、Mp+/Mとするとき、上記二次粒子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違している。
【0008】
[化1]
rLiM1O・(1-r)LiM2O
上記[化1]において、0<r<1、0<a≦1であり、M1は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Co、Cu、Zn、Sn、Mg、Ni、Ru、Al、Ti、Zr、B、Mn、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、Si、及びBiからなる群から選択される少なくとも1種以上であり、M2は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Co、Cu、Zn、Sn、Mg、Ni、Ru、Al、Ti、Zr、B、Mn、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、Si、及びBiからなる群から選択される少なくとも1種以上である。
【0009】
また、上記一次粒子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違していてもよい。
また、上記結晶子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違していてもよい。
【0010】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってMp+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
【0011】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、シェルがコアよりもNi2+/Ni3+が大きくてもよい。
【0012】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってNi2+/Mが減少する酸化数勾配部を含むことができる。
【0013】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってNi3+/Mが増加する酸化数勾配部を含むことができる。
【0014】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のシェルは、Ni2+/Ni3+が、1よりも大きくてもよい。
【0015】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、シェルがコアよりもMn3+/Mn4+が大きくてもよい。
【0016】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってMn3+/Mが減少する酸化数勾配部を含むことができる。
【0017】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、それぞれの表面からそれぞれの中心に向かってMn4+/Mが増加する酸化数勾配部を含むことができる。
【0018】
また、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のシェルは、Mn3+/Mn4+が、1よりも大きくてもよい。
【0019】
また、上記正極活物質は、コバルト(Co)を含むか、又はコバルト(Co)を含まないことができる。
本発明の実施例に係る二次電池は、上記正極活物質を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質によれば、寿命サイクル中の相転移を抑制することにより、充放電容量を増加させ、寿命劣化及び電圧降下の問題を解消することができる。
また、本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質によれば、リチウムイオン移動度が増加し、レート特性が向上することができる。
さらに、本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質によれば、表面の運動(kinetic)及び構造安定性が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】比較例及び実施例に係るNi2p酸化数に対するXPSの分析結果を示す。
図2】比較例及び実施例に係るMn2p酸化数に対するXPSの分析結果を示す。
図3】比較例及び実施例に係るMn3s酸化数に対するXPSの分析結果を示す。
図4】実施例に係る遷移金属に対するXPSの分析結果を示す。
図5】比較例及び実施例に係るSEMの分析結果を示す。
図6】実施例1に係るTEM-EDS及び濃度勾配の分析結果を示す。
図7】実施例1に係るTEM-EDS及び濃度勾配の分析結果を示す。
図8】実施例5に係るTEM-EDS及び濃度勾配の分析結果を示す。
図9】比較例及び実施例に係る初期電圧プロファイルの分析結果を示す。
図10】比較例及び実施例に係るレート特性の分析結果を示す。
図11】比較例及び実施例に係るレート特性の分析結果を示す。
図12】比較例及び実施例に係る寿命特性の分析結果を示す。
図13】比較例及び実施例に係る寿命特性の分析結果を示す。
図14】比較例及び実施例に係る電圧特性の分析結果を示す。
図15】比較例及び実施例に係る電圧特性の分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において使用される「含む」という用語は、他の技術的特徴を含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)として理解されるべきである。
本発明において使用される「一例として」、「一実施例として」、及び「好ましい」という用語は、所定の環境下で所定の利点を提供できる本発明の実施形態を指すものであり、本発明の範疇から他の実施形態を排除しようとするものではない。
【0023】
本明細書において使用される「好ましい一例として」とは、本発明が解決しようとする課題、即ち、相転移の抑制、充放電容量の増加、寿命劣化及び電圧降下の解消、リチウム移動度の増加、レート特性及び構造安定性の向上のような効果を奏する手段としての好適な一実施形態を指称する。
【0024】
本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質は、下記[化1]で示される層状構造のリチウム過剰酸化物を含むリチウム複合酸化物を含む。
【0025】
[化1]
rLiM1O・(1-r)LiM2O
上記[化1]において、0<r<1、0<a≦1であり、M1及びM2は、互いに独立しており、上記M1は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Co、Cu、Zn、Sn、Mg、Ni、Ru、Al、Ti、Zr、B、Mn、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、Si、及びBiのうちから選択される少なくとも1種以上であり、上記M2は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Co、Cu、Zn、Sn、Mg、Ni、Ru、Al、Ti、Zr、B、Mn、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、Si、及びBiのうちから選択される少なくとも1種以上である。
【0026】
より好ましい一例として、上記M1は、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Mo、Ru、W、Ti、Zr、Sn、V、Al、Mg、Ta、B、P、Nb、Cu、La、Ba、Sr、及びCeのうちから選択される少なくとも1種以上であり、上記M2は、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mo、Ru、W、Ti、Zr、Sn、V、Al、Mg、Ta、B、P、Nb、Cu、La、Ba、Sr、及びCeのうちから選択される少なくとも1種以上である。
【0027】
一例として、上記[化1]において、上記リチウム過剰酸化物は、単斜晶系(monoclinic)構造のLiM1Oと、菱面体(rhombohedral)構造のLiM2Oとが混在している固溶体相(phase)であることができる。
【0028】
より好ましい一例として、上記M1は、平均原子価が、3.5~4.5であり、4であることができる。
より好ましい一例として、上記M2は、平均原子価が、2.5~3.5であり、3であることができる。
【0029】
また、より好ましい一例として、上記[化1]は、下記[化1-1]で示すことができる。
[化1-1]
rLiMnMd11-p・(1-r)LiNiCoMnMd21-(x+y+z)
上記[化1]において、0<r<1、0<p≦1、0<a≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、及び0<x+y+z≦1であり、Md1及びMd2は、互いに独立しており、上記Md1は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Co、Cu、Zn、Sn、Mg、Ni、Ru、Al、Ti、Zr、B、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、Si、及びBiのうちから選択される少なくとも1種以上であり、上記Md2は、Mo、Nb、Fe、Cr、V、Cu、Zn、Sn、Mg、Ru、Al、Ti、Zr、B、Na、K、Y、P、Ba、Sr、La、Ga、Gd、Sm、W、Ca、Ce、Ta、Sc、In、S、Ge、Si、及びBiのうちから選択される少なくとも1種以上である。
【0030】
上記Md1及びMd2は、それぞれ独立に、格子をなす元素、ドーパント、又はコーティング物質であることができ、上記Md1及びMd2の種類とは無関係に、本発明の目的とする効果を得ることができる。
【0031】
より好ましい一例として、上記Md1は、Cr、Fe、Co、Ni、Mo、Ru、W、Ti、Zr、Sn、V、Al、Mg、Ta、B、P、Nb、Cu、La、Ba、Sr、及びCeのうちから選択される少なくとも1種以上であり、上記Md2は、Cr、Fe、Mo、Ru、W、Ti、Zr、Sn、V、Al、Mg、Ta、B、P、Nb、Cu、La、Ba、Sr、及びCeのうちから選択される少なくとも1種以上である。
【0032】
一例として、上記化[1-1]において、上記リチウム過剰酸化物は、単斜晶系(monoclinic)構造のLiMnMd11-pと、菱面体(rhombohedral)構造のLiNiCoMnMd1―(x+y+z)とが混在している固溶体相(phase)であることができる。
【0033】
一例として、上記リチウム過剰酸化物は、リチウム原子層と、ニッケル、コバルト、マンガン、又はMdの原子層とが、酸素原子層を介して交互に重なった層状構造であることができる。
【0034】
一例として、上記r値は、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、又は0.6以下であることができる。
一例として、上記pは、0超過、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9以上、又は1.0であることができる。
【0035】
より好ましい一例として、本発明のリチウム複合酸化物は、M1及びM2の全モル数に対するリチウムのモル数Li/Mが、1.01以上、1.05以上、1.1以上であることができ、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、又は1.3以下であることができる。
【0036】
より好ましい一例として、上記リチウム複合酸化物は、M1及びM2の全モル数に対するニッケル(Ni)のモル数Ni/Mが、0.1、0.2、又は0.3以上であることができ、0.7以下、0.6以下、又は0.5以下であることができる。
【0037】
より好ましい一例として、上記リチウム複合酸化物は、M1及びM2の全モル数に対するコバルト(Co)のモル数Co/Mが、0.0、0.05、又は0.1以上であることができ、0.3、0.2、又は0.1以下であることができる。
【0038】
より好ましい一例として、本発明の一実施例による正極活物質は、Coを含まないことができる。
【0039】
より好ましい一例として、上記リチウム複合酸化物は、M1及びM2の全モル数に対するマンガン(Mn)のモル数Mn/Mが、0.1、0.2、又は0.3以上であることができ、0.8、又は0.7以下であることができる。
【0040】
より好ましい一例として、上記リチウム複合酸化物は、M1及びM2の全モル数に対するMd2のモル数Md2/Mが、0.0以上であることができ、0.2、又は0.1以下であることができる。
【0041】
また、上記リチウム複合酸化物は、二次粒子を含み、上記二次粒子は、1つ以上の一次粒子を含み、上記一次粒子は、1つ以上の結晶子(crystallite)を含む。
【0042】
本発明の明細書において、「1つ以上」とは、1つ又は2つ以上を意味する。
一例として、上記二次粒子は、1つの一次粒子を含むことができ、2つ以上の一次粒子が凝集されて形成されることができる。
一例として、上記一次粒子は、1つの結晶子を含むことができ、2つ以上の結晶子が凝集されて形成されることができる。
【0043】
本発明の一実施例による正極活物質は、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか一つ以上は、それぞれ、コア、及び上記コアの表面の中の少なくとも一部を占めるシェルを含む。
【0044】
一例として、上記二次粒子は、コア、及び上記コアの表面の中の少なくとも一部を占めるシェルを含むコア-シェル構造を有する粒子であることができる。
【0045】
この場合、上記「少なくとも一部」とは、上記二次粒子の全表面積の0%超過、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上であることを意味することができる。
【0046】
上記二次粒子の平均粒径(D50)は、0.5~20μmであることができる。
一例として、上記二次粒子のシェルの厚さは、0超過10μm以下、0超過1μm以下、0超過500nm以下、0超過400nm以下、0超過300nm以下、0超過200nm以下、0超過150nm以下、0超過100nm以下、0超過90nm以下、0超過80nm以下、0超過70nm以下、0超過60nm以下、又は0超過50nm以下であることができる。
【0047】
一例として、上記二次粒子のシェルの厚さは、二次粒子の長さの0.0%超過、1、10、20、30,40、50、60、70、80、又は90%以上であることができ、100%未満、90、80、70、60、50、40、30、20、10、又は1%以下であることができる。
【0048】
一例として、上記一次粒子は、コア、及び上記コアの表面の中の少なくとも一部を占めるシェルを含むことができる。
この場合、上記「少なくとも一部」とは、上記一次粒子の全表面積の0%超過、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上であることを意味することができる。
【0049】
一例として、上記一次粒子のシェルの厚さは、0超過10μm以下、0超過1μm以下、0超過500nm以下、0超過400nm以下、0超過300nm以下、0超過200nm以下、0超過150nm以下、0超過100nm以下、0超過90nm以下、0超過80nm以下、0超過70nm以下、0超過60nm以下、又は0超過50nm以下であることができる。
【0050】
一例として、上記一次粒子のシェルの厚さは、一次粒子の長さの0.0%超過、1、10、20、30,40、50、60、70、80、又は90%以上であることができ、100%未満、90、80、70、60、50、40、30、20、10、又は1%以下であることができる。
【0051】
一例として、上記結晶子は、コア、及び上記コアの表面の中の少なくとも一部を占めるシェルを含むことができる。
【0052】
この場合、上記「少なくとも一部」とは、上記結晶子の全表面積の0%超過、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上であることを意味することができる。
【0053】
一例として、上記結晶子のシェルの厚さは、0超過10μm以下、0超過1μm以下、0超過500nm以下、0超過400nm以下、0超過300nm以下、0超過200nm以下、0超過150nm以下、0超過100nm以下、0超過90nm以下、0超過80nm以下、0超過70nm以下、0超過60nm以下、又は0超過50nm以下であることができる。
【0054】
一例として、上記結晶子のシェルの厚さは、結晶子の長さの0.0%超過、1、10、20、30,40、50、60、70、80、又は90%以上であることができ、100%未満、90、80、70、60、50、40、30、20、10、又は1%以下であることができる。
【0055】
ここで、二次粒子、一次粒子、又は結晶子において、上記「コア」とは、二次粒子、一次粒子、又は結晶子の内側に存在し、粒子の表面を除いた、粒子の中心に近接した領域を意味する。また、上記「シェル」とは、粒子の中心又は粒子の内部を除いた、表面に近接した領域を意味する。
【0056】
本発明の一実施例による正極活物質は、ニッケル、コバルト、及び/又はマンガンなどの遷移金属が、二次粒子、一次粒子、及び/又は結晶子の内に拡散してコアと区別されるシェルを形成することができる。
【0057】
本発明の実施例による正極活物質は、上記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対するニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)のうちから選択される少なくともいずれか1つ以上の元素の酸化数のモル数をMp+/Mとするとき、上記二次粒子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違している。
【0058】
本発明において、上記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対するニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)のうちから選択される少なくともいずれか1つ以上の元素の酸化数のモル数を、Mp+/Mと定義する。
【0059】
本発明の一実施例による正極活物質は、上記二次粒子のコア及びシェルのMP+/Mが相違している。
本発明では、上述の組成を有するリチウム複合酸化物において、二次粒子のコア及びシェルのMP+/Mを異なるように制御することで、表面の運動(kinetic)の向上により、表面のリチウム移動度が増加し、粒子の表面での不可逆反応が低減し、構造安定性及び効率を向上することができる。
【0060】
より好ましい一例として、上記一次粒子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違していてもよい。
【0061】
本発明では、上述の組成を有するリチウム複合酸化物において、一実施例による一次粒子のコア及びシェルのMP+/Mを異なるように制御することで、表面の運動(kinetic)の向上により、表面のリチウム移動度が増加し、粒子の表面での不可逆反応が低減し、構造安定性及び効率を向上することができる。
【0062】
より好ましい一例として、上記結晶子のコア及びシェルのMp+/Mは、相違していてもよい。
【0063】
本発明では、上述の組成を有するリチウム複合酸化物において、一実施例による結晶子のコア及びシェルのMP+/Mを異なるように制御することで、表面の運動(kinetic)の向上により、表面のリチウム移動度が増加し、粒子の表面での不可逆反応が低減し、構造安定性及び効率を向上することができる。
【0064】
一例として、上記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、2価の酸化数を有するニッケル(Ni)のモル数を、Ni2+/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、コア及びシェルのNi2+/Mは、相違していてもよい。
【0065】
一例として、上記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、3価の酸化数を有するニッケル(Ni)のモル数を、Ni3+/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、コア及びシェルのNi3+/Mは、相違していてもよい。
【0066】
一例として、上記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、2価の酸化数を有するコバルト(Co)のモル数を、Co2+/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、コア及びシェルのCo2+/Mは、相違していてもよい。
【0067】
一例として、上記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、3価の酸化数を有するコバルト(Co)のモル数を、Co3+/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、コア及びシェルのCo3+/Mは、相違していてもよい。
【0068】
一例として、上記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、3価の酸化数を有するマンガン(Mn)のモル数を、Mn3+/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、コア及びシェルのMn3+/Mは、相違していてもよい。
【0069】
一例として、上記[化1]中のM1及びM2の全モル数に対する、4価の酸化数を有するマンガン(Mn)のモル数を、Mn4+/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のコア及びシェルにおいて、コア及びシェルのMn4+/Mは、相違していてもよい。
【0070】
より好ましい一例として、上記二次粒子は、表面から中心に向かってMp+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
【0071】
より好ましい一例として、上記一次粒子は、表面から中心に向かってMp+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
より好ましい一例として、上記結晶子は、表面から中心に向かってMp+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
【0072】
一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、Ni2+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、Ni3+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、Co2+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、Co3+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、Mn3+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上は、Mn4+/Mが勾配を有する酸化数勾配部を含むことができる。
【0073】
より好ましい一例として、上記二次粒子は、シェルがコアよりもNi2+/Ni3+が大きくてもよい。
また、上記二次粒子において、シェルのNi2+/Ni3+は、コアのNi2+/Ni3+よりも1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、又は1.3倍以上であることができ、3.0倍以下、又は2.0倍以下であることができる。
【0074】
また、上記二次粒子は、表面から中心に向かってNi2+/Mが減少する酸化数勾配部を含むことができる。
また、上記二次粒子は、表面から中心に向かってNi3+/Mが増加する酸化数勾配部を含むことができる。
より好ましい一例として、上記二次粒子のシェルは、Ni2+/Ni3+が、1よりも大きくてもよい。
【0075】
また、上記二次粒子のシェルは、Ni2+/Ni3+が、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0以上であることができる。
より好ましい一例として、上記二次粒子は、シェルがコアよりもMn3+/Mn4+が大きくてもよい。
【0076】
また、上記二次粒子において、シェルのMn3+/Mn4+は、コアのMn3+/Mn4+よりも1倍超過、1.1倍以上、又は1.2倍以上であることができ、3.0倍以下、又は2.0倍以下であることができる。
【0077】
また、上記二次粒子は、表面から中心に向かってMn3+/Mが減少する酸化数勾配部を含むことができる。
また、上記二次粒子は、表面から中心に向かってMn4+/Mが増加する酸化数勾配部を含むことができる。
より好ましい一例として、上記二次粒子のシェルは、Mn3+/Mn4+が、1よりも大きくてもよい。
【0078】
また、上記二次粒子のシェルは、Mn3+/Mn4+が、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0以上であることができる。
より好ましい一例として、上記一次粒子は、シェルがコアよりもNi2+/Ni3+が大きくてもよい。
【0079】
また、上記一次粒子において、シェルのNi2+/Ni3+は、コアのNi2+/Ni3+よりも1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、又は1.3倍以上であることができ、3.0倍以下、又は2.0倍以下であることができる。
【0080】
また、上記一次粒子は、表面から中心に向かってNi2+/Mが減少する酸化数勾配部を含むことができる。
また、上記一次粒子は、表面から中心に向かってNi3+/Mが増加する酸化数勾配部を含むことができる。
より好ましい一例として、上記一次粒子のシェルは、Ni2+/Ni3+が、1よりも大きくてもよい。
【0081】
また、上記一次粒子のシェルは、Ni2+/Ni3+が、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0以上であることができる。
【0082】
より好ましい一例として、上記一次粒子は、シェルがコアよりもMn3+/Mn4+が大きくてもよい。
また、上記一次粒子において、シェルのMn3+/Mn4+は、コアのMn3+/Mn4+よりも1倍超過、1.1倍以上、又は1.2倍以上であることができ、3.0倍以下、又は2.0倍以下であることができる。
【0083】
また、上記一次粒子は、表面から中心に向かってMn3+/Mが減少する酸化数勾配部を含むことができる。
また、上記一次粒子は、表面から中心に向かってMn4+/Mが増加する酸化数勾配部を含むことができる。
より好ましい一例として、上記一次粒子のシェルは、Mn3+/Mn4+が、1よりも大きくてもよい。
【0084】
また、上記一次粒子のシェルは、Mn3+/Mn4+が、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0以上であることができる。
より好ましい一例として、上記結晶子は、シェルがコアよりもNi2+/Ni3+が大きくてもよい。
また、上記結晶子において、シェルのNi2+/Ni3+は、コアのNi2+/Ni3+よりも1倍超過、1.1倍以上、、1.2倍以上、又は1.3倍以上であることができ、3.0倍以下、又は2.0倍以下であることができる。
【0085】
また、上記結晶子は、表面から中心に向かってNi2+/Mが減少する酸化数勾配部を含むことができる。
また、上記結晶子は、表面から中心に向かってNi3+/Mが増加する酸化数勾配部を含むことができる。
より好ましい一例として、上記結晶子のシェルは、Ni2+/Ni3+が、1よりも大きくてもよい。
【0086】
また、上記結晶子のシェルは、Ni2+/Ni3+が、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0以上であることができる。
より好ましい一例として、上記結晶子は、シェルがコアよりもMn3+/Mn4+が大きくてもよい。
【0087】
また、上記結晶子において、シェルのMn3+/Mn4+は、コアのMn3+/Mn4+よりも1倍超過、1.1倍以上、又は1.2倍以上であることができ、3.0倍以下、又は2.0倍以下であることができる。
【0088】
また、上記結晶子は、表面から中心に向かってMn3+/Mが減少する酸化数勾配部を含むことができる。
また、上記結晶子は、表面から中心に向かってMn4+/Mが増加する酸化数勾配部を含むことができる。
より好ましい一例として、上記結晶子のシェルは、Mn3+/Mn4+が、1よりも大きくてもよい。
【0089】
また、上記結晶子のシェルは、Mn3+/Mn4+が、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0以上であることができる。
【0090】
より好ましい一例として、上記正極活物質は、コバルト(Co)を含むことができる。
また、他の好ましい一例として、本発明の一実施例による正極活物質は、コバルト(Co)を含まないことができる。この場合、高価なコバルトを使用することなく、二次粒子、一次粒子、又は結晶子内において、コア及びシェルの遷移金属の酸化数を制御することで、二次電池用正極活物質の寿命サイクル中の相転移を抑制し、これにより、充放電容量を増加させ、寿命劣化及び電圧降下の問題を解決することができる。
【0091】
本発明の実施例による正極活物質は、別のコーティング層をさらに含むことができる。上記コーティング層は、P、Nb、Si、Sn、Al、Pr、Al、Ti、Zr、Fe、Al、Fe、Co、Ca、Mn、Ti、Sm、Zr、Fe、La、Ce、Pr、Mg、Bi、Li、W、Co、Zr、B、Ba、F、K、Na、V、Ge、Ga、As、Sr、Y、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Ir、Ni、Zn、In、Na、K、Rb、Cs、Fr、Sc、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sb、Hf、Ta、Re、Os、Pt、Au、Pb、Bi、及びPoのうちから選択される少なくともいずれか1つ以上のコーティング物質を含むことができるが、これらに制限されない。
【0092】
上記コーティング層は、上記正極活物質とリチウム二次電池に含まれる電解液との接触を遮断して副反応の発生を抑制することで、寿命特性を向上させ、かつ充填密度を増加させることができ、コーティング層によって、リチウムイオン伝導体として作用することができる。
【0093】
また、上記コーティング層は、上記正極活物質の表面の全体、又は一次粒子の表面の全体に形成されることもでき、部分的に形成されることもできる。また、上記コーティング層は、単層コーティング、二重層コーティング、粒界コーティング、均一コーティング、又はアイランドコーティングの形態であることができる。
【0094】
本発明の実施例による正極活物質は、一次粒子の内部にリチウムイオン拡散経路が形成されることができる。
【0095】
本発明の実施例に係る正極活物質において、上記層状構造の層をなす面は、一次粒子内でC軸に垂直な方向に結晶配向性を有し、一次粒子の内部又は外部に、正極活物質粒子の中心方向にリチウムイオン移動経路を形成することができる。
【0096】
より好ましい一例として、上記二次粒子は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)のうちから選択される少なくともいずれか一つ以上の元素の濃度が勾配を有する濃度勾配部を含むことができる。
【0097】
より好ましい一例として、上記一次粒子は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)のうちから選択される少なくともいずれか一つ以上の元素の濃度が勾配を有する濃度勾配部を含むことができる。
【0098】
より好ましい一例として、上記結晶子は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)のうちから選択される少なくともいずれか一つ以上の元素の濃度が勾配を有する濃度勾配部を含むことができる。
【0099】
より好ましい一例として、上記[化1]において、M1及びM2の全モル数に対するニッケル(Ni)のモル数をNi/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のシェルのNi/Mは、上記コアよりも高くてもよい。
【0100】
より好ましい一例として、上記[化1]において、M1及びM2の全モル数に対するコバルト(Co)のモル数をCo/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のシェルのCo/Mは、上記コアよりも高くてもよい。
【0101】
より好ましい一例として、上記[化1]において、M1及びM2の全モル数に対するマンガン(Mn)のモル数をMn/Mとするとき、上記二次粒子、一次粒子、及び結晶子のうちから選択されるいずれか1つ以上のシェルのMn/Mは、上記コアよりも低くてもよい。
【0102】
また、より好ましい一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び/又は結晶子のコアにおいて、Mn/M>Ni/M>Co/Mであることができる。
また、より好ましい一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び/又は結晶子のコアにおいて、Ni/Mは、0.1、0.2、又は0.3以上であることができ、1.0、0.9、又は0.8以下であることができる。
【0103】
また、より好ましい一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び/又は結晶子のコアにおいて、Co/Mは、0.3、0.2、0.1、又は0.05以下であることができ、0.0以上であることができる。
【0104】
また、より好ましい一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び/又は結晶子のコアにおいて、Mn/Mは、0.4、0.5、又は0.6以上であることができ、1.0、0.9、又は0.8以下であることができる。
【0105】
また、本発明のより好ましい一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び/又は結晶子のシェルにおいて、Ni/Mの最大値は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95モル%以上であることができ、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、又は10モル%以下であることができる。
【0106】
また、より好ましい一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び/又は結晶子のシェルにおいて、Co/Mの最大値は、1、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95モル%以上であることができ、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、又は10モル%以下であることができる。
【0107】
また、より好ましい一例として、上記二次粒子、一次粒子、及び/又は結晶子のシェルにおいて、Mn/Mの最小値は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95モル%以上であることができ、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、又は10モル%以下であることができる。
【0108】
以下、本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質の製造方法について説明する。
まず、前駆体粒子を形成するステップを行う。
より好ましい一例として、上記前駆体粒子は、共沈法により製造することができ、錯化剤を添加して製造することができる。
【0109】
次に、上記で得られた前駆体粒子を、300~1000℃で第1の熱処理を行った後に冷却するステップを行う。
【0110】
次に、上記第1の熱処理を行った後に冷却するステップの後、コバルト、ニッケル、及びマンガンのうちから選択される少なくともいずれか一つ以上の元素を含む化合物と湿式コーティングするステップを行うことができる。
【0111】
次に、上記第1の熱処理を行った後に冷却された粒子、又は上記湿式コーティングされた粒子、及び第1のリチウム化合物を混合し、800~1000℃で第2の熱処理を行った後に冷却するステップを行う。
【0112】
次に、上記第2の熱処理を行った後に冷却するステップの後、コバルト、ニッケル、及びマンガンのうちから選択される少なくともいずれか一つ以上の元素を含む化合物と湿式コーティングするステップを行うことができる。
【0113】
次に、上記第2の熱処理を行った後に冷却された粒子、又は上記湿式コーティングされた粒子、及び第2のリチウム化合物を混合し、300~1000℃で第3の熱処理を行った後に冷却するステップを行う。
【0114】
本発明の一実施例では、上記前駆体粒子を形成するステップの後、第1の熱処理を行った後に冷却するステップの前、前記第1の熱処理を行った後に冷却するステップ、及び前記第2の熱処理を行った後に冷却するステップの間、又は前記第2の熱処理を行った後に冷却するステップ、及び前記第3の熱処理を行った後に冷却するステップの間に、コバルト、ニッケル、及びマンガンのうちから選択される少なくともいずれか一つ以上の元素を含む化合物と湿式コーティングするステップを含むことができる。
【0115】
より好ましい一例として、上記湿式コーティングするステップは、共沈法により行うことができ、錯化剤を添加して製造することができる。
【0116】
本発明の実施例に係る二次電池は、上記正極活物質を含む。
上記正極活物質は、上述の通りであり、バインダー、導電材、及び溶媒としては、二次電池の正極集電体の上に使用可能なものであれば、特に制限されない。
上記リチウム二次電池は、具体的には、正極、上記正極と対向して位置する負極、及び上記正極と上記負極との間に電解質を含むことができるが、二次電池として使用可能なものであれば、特に制限されない。
【実施例
【0117】
以下、本発明の実施例について詳述する。
<実施例1~5>
前駆体の製造
共沈法を用いて、球状のNiCoMn(OH)前駆体を合成した。90L級の反応器において、NiSO・6HO、MnSO・HO、及びCoSO・7HOを、Ni:Co:Mnのモル比(mole ratio)を合わせて混合した2.5Mの複合遷移金属硫酸水溶液に、25wt%のNaOHと、28wt%のNHOHとを投入した。反応器内のpHは、9.0~12.0、反応器内の温度は、45~50℃に維持し、不活性ガスであるNを反応器に投入し、製造された前駆体が酸化されないようにした。合成撹拌完了後、フィルタープレス(F/P)装置を用いて、洗浄及び脱水を行った。最終的に、脱水品を120℃で2日間乾燥し、75μm(200mesh)篩でろ過し、4umのNiCoMn(OH)前駆体を得た。
【0118】
第1の熱処理及び冷却
上記前駆体を、ボックス焼成炉でO又はエアー(50L/min)の雰囲気を維持しながら毎分2℃で昇温し、300~1000℃で1~10時間維持した後、炉冷(furnace cooling)を行った。
【0119】
湿式コーティング(上記第1の熱処理及び冷却の後に行われる場合)
共沈法を用いて、上記前駆体の湿式コーティングを行った。上記前駆体が撹拌されている反応器に、CoSO・7HO、NiSO・6HO、又はMnSO・HOのモル比を合わせて蒸留水を混合した複合遷移金属硫酸水溶液と、25wt%のNaOHと、28wt%のNHOHとを投入した。上記遷移金属のコーティング量は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)の全モル数に対して1~10mol%であり、反応器中のpHは、9.0~12.0を維持させ、合成撹拌完了後、フィルタープラス(F/P)装置を用いて、洗浄及び脱水を行った。最終的に、脱水品を150℃で14時間乾燥し、濃度勾配を有する前駆体を得た。
【0120】
第2の熱処理及び冷却
上記前駆体を、Li/Mの比を合わせてLiOH又はLiCOを秤量し、ミキサー(manual mixer、MM)を用いて混合した。混合品をボックス焼成炉でO又はエアー(50L/min)の雰囲気を維持しながら毎分2℃で昇温し、焼成温度800~1000℃で7~12時間維持した後、炉冷(furnace cooling)を行った。
【0121】
湿式コーティング(上記第2の熱処理及び冷却の後に行われる場合)
共沈法を用いて、上記リチウム複合酸化物の湿式コーティングを行った。上記粒子が撹拌されている反応器に、CoSO・7HO、NiSO・6HO、又はMnSO・HOのモル比を合わせて蒸留水を混合した複合遷移金属硫酸水溶液と、25wt%のNaOHと、28wt%のNHOHとを投入した。上記遷移金属のコーティング量は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)の全モル数に対して1~10mol%であり、反応器中のpHは、9.0~12.0を維持させ、合成撹拌完了後、フィルタープラス(F/P)装置を用いて、洗浄及び脱水を行った。最終的に、脱水品を150℃で14時間乾燥し、濃度勾配を有するリチウム複合酸化物を得た。
【0122】
第3の熱処理及び冷却
上記コーティング品に、Li/Mの比を合わせてLiOH又はLiCOを秤量し、ミキサー(manual mixer、MM)を用いて混合した。混合品をボックス焼成炉でO又はエアー(50L/min)の雰囲気を維持しながら毎分4.4℃で昇温し、温度500~1000℃で7~12時間維持した後、炉冷(furnace cooling)を行った。
【0123】
<比較例1~2>
上記実施例1~5の製造ステップにおいて、遷移金属で湿式コーティングするステップを行わないこと以外は、実施例1~5と同様にして正極活物質を製造した。
下記表1は、上記実施例1~5及び比較例1~2の製造方法に関するものである。
【0124】
【表1】
【0125】
<製造例>リチウム二次電池の製造
上記実施例及び比較例による正極活物質90重量%、カーボンブラック5.5wt%、PVDFバインダー4.5wt%を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)30gに分散させ、正極スラリーを製造した。上記正極スラリーを、厚さ15μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布及び乾燥し、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0126】
上記正極に対して、金属リチウムを対極(counter electrode)とし、電解液としては、1.15M LiPF6 in EC/DMC/EMC=2/4/4(vol%)を使用した。
【0127】
上記正極及び負極の間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレーターを介して電池組立体を形成し、上記電解液を注入してリチウム二次電池(コインセル)を製造した。
【0128】
<実験例1>
下記表2は、上記実施例及び比較例によるリチウム二次電池の特性に関するものである。
【0129】
【表2】
【0130】
図1~3に示されるXPS分析の結果から、比較例及び実施例によるシェル及びコアにおけるNi2+/Ni3+、及びMn3+/Mn4+を確認することができる。
図4に示されるXPS分析の結果から、実施例によるシェル及びコアにおけるNi、Mn、及びCoの勾配を確認することができる。
【0131】
図5から、比較例及び実施例のSEM像を確認することができる。
図6~8に示されるTEM-EDS分析の結果から、実施例による正極活物質の金属濃度勾配を確認することができる。
【0132】
図9及び上記表2に示されるように、実施例では、比較例に比べて、充放電容量及び効率が向上することがわかる。これは、コア及びシェルにおいて、ニッケル及びマンガンの酸化数の差により、表面の運動(kinetic)が向上し、表面の移動度が増加した結果である。
【0133】
図10、11及び上記表2に示されるように、実施例では、比較例に比べて、高レート特性が向上することがわかる。これは、コア及びシェルにおいて、ニッケル及びマンガンの酸化数の差により、粒子表面での不可逆反応が低減し、効率が上昇した結果である。
図12、13及び上記表2に示されるように、実施例では、比較例に比べて、寿命特性が向上することがわかる。これは、コア及びシェルにおいて、ニッケル及びマンガンの酸化数の差により、リチウム過剰型層状酸化物のサイクル中の相転移による寿命劣化(cycle life)及び電圧降下(voltage decay)の問題点を解消した結果である。
【0134】
図14、15及び上記表2に示されるように、実施例では、比較例に比べて、電圧降下が抑制されることがわかる。これは、コア及びシェルにおいて、ニッケル及びマンガンの酸化数の差により、粒子表面での運動(kinetic)と構造安定性が向上した結果である。
【0135】
また、図9~15及び上記表2に示されるように、正極活物質にコバルトを含まず、ニッケル(Ni)で湿式コーティングを行った実施例5においても、リチウム二次電池の性能が著しく改善されることがわかる。

図1
図2
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【国際調査報告】