(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】蛍光粒子を含む電気泳動媒体
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20190101AFI20231013BHJP
【FI】
G02F1/167
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519867
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 US2021052624
(87)【国際公開番号】W WO2022076223
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516101190
【氏名又は名称】イー インク カリフォルニア, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェン, シャオロン
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA02
2K101BB03
2K101BB06
2K101BB13
2K101BB40
2K101BB44
2K101BB94
2K101BB96
2K101BC02
2K101BC13
2K101BC18
2K101BC23
2K101BC46
2K101BD61
2K101BE07
2K101BE09
2K101BE24
2K101BE26
2K101BE32
2K101BE44
(57)【要約】
蛍光粒子を含む電気泳動媒体が開示される。蛍光粒子のコアは蛍光顔料であり、蛍光粒子はポリマー層および立体安定剤をさらに含む。本発明は、蛍光粒子を含む電気泳動媒体に関する。本発明の電気泳動媒体は、電気光学装置において使用することができ、明るい色および安定した画像を示す光学状態を提供する。別の局面において、本発明は、前記電気泳動媒体を含む電気光学装置である。さらに別の局面において、本発明は、蛍光粒子を含む前記電気泳動媒体を製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動媒体であって、
非極性流体中に分散された第1の種類の蛍光粒子であって、前記第1の種類の蛍光粒子はコアおよびシェルを含み、前記コアは第1の種類の蛍光顔料を含み、前記シェルはポリマー層および立体安定剤を含み、前記第1の種類の蛍光粒子は第1の色を有する、第1の種類の蛍光粒子を含む、電気泳動媒体。
【請求項2】
前記第1の種類の蛍光顔料が、ポリマーマトリクス中に蛍光色素を含む、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項3】
前記第1の種類の蛍光粒子が荷電しており、第1の電荷極性を有する、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項4】
コアおよびシェルを含む第2の種類の蛍光粒子をさらに含み、前記コアは第2の種類の蛍光顔料を含み、前記シェルはポリマー層および立体安定剤を含み、前記第2の種類の蛍光粒子は第2の色を有し、前記第2の色は前記第1の色と異なり、第2の電荷極性は前記第1の電荷極性とは反対である、請求項3に記載の電気泳動媒体。
【請求項5】
第3の種類の有機顔料を含む第3の種類の荷電粒子をさらに含み、前記第3の種類の有機顔料は、第3の色および第2の電荷極性を有し、前記第3の色は前記第1および前記第2の色と異なり、前記第2の電荷極性は前記第1の電荷極性と異なる、請求項3に記載の電気泳動媒体。
【請求項6】
第4の種類の無機顔料を含む第4の種類の荷電粒子をさらに含み、前記第4の種類の無機顔料は第4の色および第2の電荷極性を有し、前記第4の色は前記第1、第2および第3の色と異なり、前記第2の電荷極性は前記第1の電荷極性と異なる、請求項3に記載の電気泳動媒体。
【請求項7】
前記第1の種類の蛍光粒子の前記コアが、蛍光顔料、有機顔料、無機顔料およびこれらの混合物からなる群から選択される第5の種類の顔料をさらに含む、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項8】
前記シェルの前記ポリマー層が、前記第1の種類の蛍光粒子の表面上に吸着され、複合体化され、または共有結合されている、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項9】
前記シェルの前記立体安定剤が、前記シェルの前記ポリマー層上に吸着され、複合体化され、または共有結合されている、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項10】
前記非極性流体が無色である、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項11】
前記非極性流体が色素で着色されている、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項12】
前記第1の種類の蛍光粒子が、前記第1の種類の蛍光粒子の重量に対して10~90重量%の第1の種類の蛍光顔料を含む、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項13】
前記第1の種類の蛍光粒子の前記シェルの前記ポリマー層が、第1のモノマーまたはオリゴマーの重合から形成され、前記第1のモノマーまたはオリゴマーが、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、シロキサン、エチレン、プロピレンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項14】
前記第1の種類の蛍光粒子の前記シェルの前記立体安定剤が、第2のモノマーまたはオリゴマーの重合から形成され、前記第2のモノマーまたはオリゴマーが、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、シロキサン、エチレン、プロピレンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項15】
電荷制御剤をさらに含む、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項16】
第1の光透過性電極層と、電気泳動媒体層と、第2の電極層とを含む電気光学装置であって、前記電気泳動媒体層は、前記第1の光透過性層と前記第2の電極層との間に位置し、前記電気泳動媒体層は、請求項1に記載の電気泳動媒体を含む、電気光学装置。
【請求項17】
電気泳動媒体を製造する方法であって、
(1)キャリア中の第1の種類の蛍光顔料の分散物を提供する工程と;
(2)第1の種類のモノマーまたはオリゴマーと第2の種類のモノマーまたはオリゴマーとを前記キャリア中の前記第1の種類の蛍光顔料の前記分散物中に添加することによって、および前記第1のモノマーまたはオリゴマーおよび前記第2のモノマーまたはオリゴマーを撹拌下で重合させることによって、第1の種類の蛍光粒子を形成する工程と;
を含み、
前記第1の種類の蛍光粒子は、コアとシェルを含み、前記コアは、前記第1の種類の蛍光顔料を含み、前記シェルは、前記第1のモノマーまたはオリゴマーの重合によって形成されたポリマー層と、前記第2のポリマーまたはオリゴマーの重合によって形成された立体安定剤とを含む、方法。
【請求項18】
前記第1の種類の蛍光粒子を形成する工程の後に、
(3)前記第1の種類の蛍光粒子を単離する工程と;
(4)単離された前記第1の種類の蛍光粒子を非極性流体中に再分散させる工程と
をさらに含む、請求項17に記載の電気泳動媒体を製造する方法。
【請求項19】
前記第1の種類の蛍光顔料が、ポリマーマトリクス中に蛍光色素を含む、請求項17に記載の電気泳動媒体を製造する方法。
【請求項20】
前記第1のモノマーまたはオリゴマーの前記重合がリビング重合である、請求項17に記載の電気泳動媒体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/088,148号の優先権を主張する。本明細書で参照される任意の特許、公開された出願、または他の公開された研究の全内容は、参照により組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、蛍光粒子を含む電気泳動媒体に関する。本発明の電気泳動媒体は、電気光学装置において使用することができ、明るい色および安定した画像を示す光学状態を提供する。別の局面において、本発明は、前記電気泳動媒体を含む電気光学装置である。さらに別の局面において、本発明は、蛍光粒子を含む前記電気泳動媒体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
「電気光学」という用語は、材料またはディスプレイに適用される場合、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すために画像化技術分野におけるその通常の意味で本明細書において使用され、前記材料は、前記材料への電界の印加によってその第1の表示状態から第2の表示状態に変化する。光学特性は、典型的には人間の目に知覚可能な色であるが、光の透過、反射率、発光、または機械読み取りを目的としたディスプレイの場合には、可視範囲外の電磁波長の反射率の変化という意味での擬似カラーなどの別の光学特性であり得る。
【0004】
「灰色状態」という用語は、本明細書では、画素の2つの極端な光学状態の中間状態を指すために画像化技術分野におけるその通常の意味で使用され、これらの2つの極端な状態の間での黒白遷移を必ずしも含意しない。例えば、以下に言及されるE Ink特許および公開された出願のいくつかは、極端な状態が白色および藍色である電気泳動ディスプレイを記載しているので、中間の「灰色状態」は実際には淡青色である。実際、既に述べたように、光学状態の変化は、全くもって色の変化ではない場合がある。「黒」および「白」という用語は、ディスプレイの2つの極端な光学状態を指すために以下で使用され得、厳密には黒と白ではない極端な光学状態、例えば前述の白および藍色の状態を通常含むものとして理解されるべきである。「モノクローム」という用語は、以下では、介在する灰色状態なしに画素をそれらの2つの極端な光学状態のみに動作させる動作スキームを表すために使用され得る。
【0005】
いくつかの電気光学材料は、材料が固体外面を有するという意味で固体であるが、材料は、液体または気体で満たされた内部空間を有してもよく、有していることが多い。固体の電気光学材料を用いたこのようなディスプレイを、以下では、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と呼ぶ場合がある。したがって、「固体電気光学ディスプレイ」という用語には、回転二色性部材ディスプレイ、カプセルに封入された電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイおよびカプセルに封入された液晶ディスプレイが含まれる。
【0006】
「双安定」および「双安定性」という用語は、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示素子を備えるディスプレイであって、有限な持続時間のアドレス指定パルスによって、任意の所与の素子を、その第1または第2の表示状態のいずれかをとるように動作させた後、アドレス指定パルスが終了した後に、前記表示素子の状態を変化させるために必要とされるアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば少なくとも4倍、その状態が持続するようなディスプレイを指すために当技術分野におけるそれらの通常の意味で本明細書において使用される。米国特許第7,170,670号では、灰色スケールが可能ないくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、それらの極端な黒色状態および白色状態だけでなく、それらの中間の灰色状態においても安定であり、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイについても同じことが該当することが示されている。このタイプのディスプレイは、適切には双安定ではなく「多安定」と呼ばれるが、双安定ディスプレイと多安定ディスプレイの両方を包含するために、便宜上、本明細書では「双安定」という用語が使用され得る。
【0007】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが公知である。電気光学ディスプレイの1つのタイプは、例えば、米国特許第5,808,783号;同第5,777,782号;同第5,760,761号;同第6,054,071号 同第6,055,091号;同第6,097,531号;同第6,128,124号;同第6,137,467号;および同第6,147,791号に記載されているような回転二色性部材タイプである(このタイプのディスプレイは「回転二色性ボール」ディスプレイと呼ばれることが多いが、上記特許のいくつかでは回転部材が球形ではないので、「回転二色性部材」という用語がより正確なものとして好ましい)。このようなディスプレイは、異なる光学的特徴を有する2またはそれを超える部分を有する多数の小物体(典型的には、球形または円筒形)と、内部双極子とを使用する。これらの物体は、マトリックス内の液体で満たされた液胞内に懸濁され、液胞は、物体が自由に回転するように液体で満たされている。ディスプレイに電界を印加し、それによって物体を様々な位置に回転させ、物体のどの部分が画面を通じて見られるかを変動させることによって、ディスプレイの外観が変化する。このタイプの電気光学媒体は、典型的には双安定である。
【0008】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、半導電性金属酸化物から少なくとも部分的に形成された電極と、電極に取り付けられた可逆的色変化が可能な複数の色素分子とを含むナノクロミックフィルムの形態のエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、O’Regan,B.ら、Nature 1991,353,737;およびWood,D.,Information Display,18(3),24(March 2002)を参照のこと。Bach,U.ら、Adv.Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号;同第6,870,657号;および同第6,950,220号にも記載されている。このタイプの媒体も、典型的には双安定である。
【0009】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R.A.ら、‘‘Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting’’,Nature,425,383-385(2003)に記載されているエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号には、このようなエレクトロウェッティングディスプレイを双安定にすることができることが示されている。
【0010】
長年にわたり鋭意研究開発されてきた電気光学ディスプレイの1つのタイプは、複数の荷電粒子が電界の影響下で流体を通じて移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較すると、良好な輝度およびコントラスト、広い視野角、状態双安定性ならびに低消費電力という属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期の画質に伴う問題が、これらのディスプレイの広範な使用を妨げてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は沈降する傾向があり、その結果、これらのディスプレイの耐用年数は不十分になる。
【0011】
マサチューセッツ工科大学(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LLCおよび関連企業に譲渡されたまたはそれらの名義での多数の特許および出願は、カプセルに封入されたマイクロセル電気泳動媒体およびその他の電気光学媒体において使用される様々な技術を記載している。カプセルに封入された電気泳動媒体は、多数の小さなカプセルを含み、その各々自体は、流体媒体中に電気泳動的に移動可能な粒子を含む内相と、内相を取り囲むカプセル壁とを含む。典型的には、カプセル自体がポリマー結合剤内に保持されて、2つの電極間に配置されたコヒーレント層を形成する。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体はマイクロカプセル内に封入されず、代わりにキャリア媒体、典型的にはポリマーフィルム内に形成された複数の空洞内に保持される。[[以下、「マイクロキャビティ電気泳動ディスプレイ」という用語は、カプセルに封入された電気泳動ディスプレイとマイクロセル電気泳動ディスプレイの両方を包含するために使用され得る。]]これらの特許および出願に記載されている技術には、以下のものが含まれる。
(a)電気泳動粒子、流体および流体添加剤;例えば、米国特許第7,002,728号および同第7,679,814号を参照されたい;
(b)カプセル、結合剤およびカプセル化の方法;例えば、米国特許第6,922,276号および同第7,411,719号を参照されたい;
(c)マイクロセル構造体、壁材料およびマイクロセルを形成する方法;例えば、米国特許第7,072,095号および同第9,279,906号を参照されたい;
(d)マイクロセルを充填し、密封するための方法;例えば、米国特許第7,144,942号および同第7,715,088号を参照されたい;
(e)電気光学材料を含有するフィルムおよびサブアセンブリ;例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号を参照されたい;
(f)ディスプレイにおいて使用されるバックプレーン、接着層およびその他の補助層および方法;例えば、米国特許第7,116,318号および同第7,535,624号を参照されたい;
(g)色形成および色調整;例えば、米国特許第7,075,502号および同第7,839,564号を参照されたい;
(h)ディスプレイを動作させるための方法;例えば、米国特許第7,012,600号および同第7,453,445号を参照されたい;
(i)ディスプレイの用途;例えば、米国特許第7,312,784号および同第8,009,348号を参照されたい;ならびに
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に記載されているような非電気泳動ディスプレイ;ディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の用途;例えば、米国特許第7,615,325号;および米国特許出願公開第2015/0005720号および第2016/0012710号を参照されたい。
【0012】
前述の特許および出願の多くは、カプセルに封入された電気泳動媒体中の別々のマイクロカプセルを取り囲む壁は連続相によって置き換えることができ、それにより、電気泳動媒体が電気泳動流体の複数の別々の液滴とポリマー材料の連続相とを含むいわゆるポリマー分散型電気泳動ディスプレイを生成できること、ならびにこのようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別々の液滴は、たとえ別々のカプセル膜にそれぞれの個々の液滴が付随していなくても、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認めている。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。したがって、本出願の目的において、このようなポリマー分散型電気泳動媒体は、カプセルに封入された電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0013】
カプセルに封入された電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来の電気泳動機器のクラスタリングおよび沈降故障モードに悩まされず、多種多様な柔軟かつ堅固な基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力などのさらなる利点を提供する。(「印刷」という用語の使用は、パッチダイ(patch die)コーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティングなどの予め計量されたコーティング;ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティングなどのロールコーティング;グラビアコーティング;ディップコーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;刷毛塗り;エアナイフコーティング;シルクスクリーン印刷法;静電印刷法;感熱印刷法;インクジェット印刷法;電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号を参照);ならびに他の類似の技術を含むがこれらに限定されない、印刷およびコーティングの全ての形態を含むことが意図される。)したがって、得られるディスプレイは柔軟であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は安価に作製することができる。
【0014】
他のタイプの電気光学媒体もまた、本発明のディスプレイにおいて使用され得る。
【0015】
電気泳動ディスプレイは、通常、電気泳動材料の層と、電気泳動材料の反対側に配置された少なくとも2つの他の層とを含み、これら2つの層のうちの1つは電極層である。ほとんどのこのようなディスプレイにおいて、両方の層は電極層であり、電極層の一方または両方は、ディスプレイの画素を画定するようにパターン化される。例えば、一方の電極層を細長い行電極にパターン化することができ、他方を行電極に対して直角に走行する細長い列電極にパターン化することができ、画素は行電極と列電極の交差部によって画定される。あるいは、より一般的には、一方の電極層は単一の連続する電極の形態を有し、他方の電極層は画素電極のマトリクスへとパターン化され、これらの各々がディスプレイの1つの画素を画定する。タッチペン、印字ヘッドまたはディスプレイから分離した同様の可動電極とともに使用することが意図される別のタイプの電気泳動ディスプレイでは、電気泳動層に隣接する層の1つのみが電極を備え、電気泳動層の反対側の層は、典型的には、可動電極が電気泳動層を損傷するのを防止することが意図される保護層である。
【0016】
3層電気泳動ディスプレイの製造は、通常、少なくとも1つの積層操作を含む。例えば、前述のMITおよびE Inkの特許および出願のいくつかには、プラスチックフィルム上にインジウムスズ酸化物(ITO)または同様の導電性コーティング(最終ディスプレイの1つの電極として作用する)を含む柔軟な基材上に、結合剤中にカプセルを含むカプセル封入された電気泳動媒体がコーティングされており、カプセル/結合剤コーティングが乾燥されて、基材にしっかりと接着された電気泳動媒体のコヒーレント層を形成する、カプセル封入された電気泳動ディスプレイを製造するための方法が記載されている。別個に、多数の画素電極と、画素電極をドライブ回路に接続するための導体の適切な配置とを含むバックプレーンが準備される。最終ディスプレイを形成するために、カプセル/結合剤層をその上に有する基材は、積層接着剤を使用してバックプレーンに積層される。(プラスチックフィルムなどの、タッチペンまたはその他の可動電極がその上を滑らかに動くことができる単純な保護層でバックプレーンを置き換えることによって、タッチペンまたは類似の可動電極とともに使用可能な電気泳動ディスプレイを調製するために、非常に類似した方法を使用することができる。)このような方法の1つの好ましい形態では、バックプレーン自体が柔軟であり、プラスチックフィルムまたは他の柔軟な基材上に画素電極および導体を印刷することによって調製される。この方法によるディスプレイの大量生産のための明白な積層技術は、積層接着剤を用いたロール積層である。
【0017】
前述の米国特許第6,982,178号に論述されているように(第3欄第63行~第5欄第46行参照)、電気泳動ディスプレイにおいて使用される構成要素の多く、およびこのようなディスプレイを製造するために使用される方法は、液晶ディスプレイ(LCD)に使用される技術に由来する。例えば、電気泳動ディスプレイは、トランジスタまたはダイオードのアレイと画素電極の対応するアレイとを備えるアクティブマトリクスバックプレーンと、透明基材上の(複数の画素上に広がり、典型的にはディスプレイ全体に広がる電極という意味で)「連続的」前面電極とを利用し得、これらの構成要素はLCDのものと本質的に同じである。しかしながら、LCDを組み立てるために使用される方法は、カプセルに封入された電気泳動ディスプレイとともに使用することができない。LCDは、通常、バックプレーンと前面電極とを別々のガラス基材上に形成し、次いでこれらの構成要素をそれらの間に小さな開口部を残しつつ互いに接着固定して、得られた組立品を真空下に置き、組立品を液晶の浴に浸漬することによって組み立てられ、その結果、液晶は、バックプレーンと前面電極の間の開口部を通って流れる。最後に、液晶を適所に配置した状態で、開口部を封止して最終ディスプレイを提供する。
【0018】
このLCD組み立て過程は、カプセルに封入されたディスプレイに容易に転用することができない。電気泳動材料は固体であるため、電気泳動材料は、バックプレーンと前面電極が互いに固定される前に、バックプレーンと前面電極の間に存在しなければならない。さらに、前面電極とバックプレーンの間に、いずれにも取り付けられずに単に配置される液晶材料とは対照的に、カプセルに封入された電気泳動媒体は、通常、両方に固定される必要があり、一般的には回路を含むバックプレーン上に媒体を形成するよりも容易であるため、ほとんどの場合、電気泳動媒体は前面電極上に形成され、次いで、典型的には電気泳動媒体の表面全体を接着剤で覆い、熱、圧力、および場合によっては真空下で積層することによって、前面電極/電気泳動媒体の組み合わせ物が、バックプレーンに積層される。したがって、固体電気泳動ディスプレイの最終の積層のためのほとんどの従来技術の方法は、本質的にバッチ法であり、典型的には、電気光学媒体、積層接着剤およびバックプレーンは、最終組み立ての直前に1つにまとめられるので、大量生産により適した方法を提供することが望ましい。
【0019】
電気光学ディスプレイはしばしば高価である;例えば、ポータブルコンピュータ中に見られるカラーLCDのコストは、通例、コンピュータのコスト全体のかなりの割合を占める。電気光学ディスプレイの使用は、携帯型コンピュータよりもはるかに安価な携帯電話および携帯情報端末(PDA)などの装置に広がるので、このようなディスプレイのコストを削減する大きな圧力が存在する。上述のように、印刷技術によって柔軟な基材の上にいくつかの固体電気光学媒体の層を形成することができれば、コート紙、ポリマー性フィルムおよび類似の媒体の製造のために使用される商業機器を使用したロール・ツー・ロールコーティングなどの大量生産技術を使用することによって、ディスプレイの電気光学構成要素のコストを削減する可能性が開かれる。
【0020】
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産によく適合した固体電気光学ディスプレイ(カプセルに封入された電気泳動ディスプレイを含む)を組み立てる方法を記載している。本質的に、この特許は、光透過性導電層と、前記導電層と電気的に接触している固体電気光学媒体の層と、接着層と、剥離シートとを順に備える、いわゆる「フロントプレーン積層体」(「FPL」)を記載している。典型的には、光透過性導電層は、基材が永久変形することなく(例えば)直径10インチ(254mm)のドラムの周りに手動で巻き付けることができるという意味で、好ましくは柔軟である光透過性基材上に担持される。「光透過性」という用語は、そのように指定された層が、その層を通して見る観察者が、通常は導電層および隣接する基材(存在する場合)を通して見られる電気光学媒体の表示状態の変化を観察することを可能にするのに十分な光を透過することを意味するために、本特許および本明細書において使用され、電気光学媒体が非可視波長での反射率の変化を示す場合には、「光透過性」という用語は、当然、関連する非可視波長の透過を指すと解釈されるべきである。基材は、典型的にはポリマーフィルムであり、通常、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは約2~約10ミル(51~254μm)の範囲の厚さを有する。導電層は、都合よく、例えばアルミニウムもしくはITOの薄い金属もしくは金属酸化物層であり、または導電性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタラート)(PET)フィルムは、例えば、E.I.du Pont de Nemours&Company、Wilmington DEから「aluminized Mylar」(「Mylar」は登録商標である)として市販されており、このような市販材料を使用すると、フロントプレーン積層体において良好な結果が得られ得る。
【0021】
このようなフロントプレーン積層体を使用した電気光学ディスプレイの組み立ては、フロントプレーン積層体から剥離シートを除去し、接着層をバックプレーンに接着させるのに有効な条件下で接着層をバックプレーンと接触させ、それによって接着層、電気光学媒体の層および導電層をバックプレーンに固定することによって達成され得る。フロントプレーン積層体は、典型的にはロール・ツー・ロールコーティング技術を使用して大量生産され、次いで特定のバックプレーンとともに使用するために必要とされる任意のサイズの小片に切断され得るので、この方法は大量生産によく適合している。
【0022】
米国特許第7,561,324号は、本質的に前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーン積層体の簡略版である、いわゆる「二重剥離シート」を記載している。二重剥離シートの1つの形態は、2つの接着層の間に挟まれた固体電気光学媒体の層を含み、接着層の一方または両方が剥離シートによって覆われている。二重剥離シートの別の形態は、2つの剥離シート間に挟まれた固体電気光学媒体の層を含む。二重剥離フィルムの両形態は、既に記載したフロントプレーン積層体から電気光学ディスプレイを組み立てる方法と概ね同様の方法において使用することが意図されているが、2つの別個の積層を含み、典型的には、第1の積層では、二重剥離シートは前部電極に積層されて前部サブアセンブリを形成し、次いで、第2の積層では、前部サブアセンブリはバックプレーンに積層されて最終ディスプレイを形成するが、これら2つの積層の順序は所望であれば逆にすることができる。
【0023】
米国特許第7,839,564号は、前述の米国特許第6,982,178号に記載されているフロントプレーン積層体の変形形態である、いわゆる「逆位のフロントプレーン積層体」を記載している。この逆位のフロントプレーン積層体は、順に、光透過性保護層および光透過性導電層の少なくとも1つと、接着層と、固体電気光学媒体の層と、剥離シートとを備える。この逆位のフロントプレーン積層体は、電気光学層と前面電極または前面基材との間に積層接着剤の層を有し、電気光学層とバックプレーンとの間には、第2の典型的には薄い接着剤の層が存在してもよく、または存在しなくてもよい、電気光学ディスプレイを形成するために使用される。このような電気光学ディスプレイは、優れた解像度と優れた低温性能を併せ持つことができる。
現在、電気泳動ディスプレイの電気泳動媒体は、従来の有機および/または無機顔料粒子を含む。ディスプレイ内蔵のフロントライトが存在しない場合には、そのような反射型ディスプレイの反射画像の明るさおよび表示色の鮮やかさは、周囲光に依存する。したがって、画像の明るさおよび色の鮮やかさを改善する必要が存在する。さらに、電気泳動粒子が凝結または凝集したときに低下し得る画像安定性に対する要求も存在する。本発明の発明者は、驚くべきことに、蛍光顔料を有するコアと、ポリマー層および立体安定剤を含むシェルとを含む蛍光粒子を有する電気泳動媒体の使用が、電気光学装置の電気光学性能を改善することを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第7,170,670号明細書
【特許文献2】米国特許第5,808,783号明細書
【特許文献3】米国特許第5,777,782号明細書
【特許文献4】米国特許第5,760,761号明細書
【特許文献5】米国特許第6,054,071号明細書
【特許文献6】米国特許第6,055,091号明細書
【特許文献7】米国特許第6,097,531号明細書
【特許文献8】米国特許第6,128,124号明細書
【特許文献9】米国特許第6,137,467号明細書
【特許文献10】米国特許第6,147,791号明細書
【特許文献11】米国特許第6,301,038号明細書
【特許文献12】米国特許第6,870,657号明細書
【特許文献13】米国特許第6,950,220号明細書
【特許文献14】米国特許第7,002,728号明細書
【特許文献15】米国特許第7,679,814号明細書
【特許文献16】米国特許第6,922,276号明細書
【特許文献17】米国特許第7,411,719号明細書
【特許文献18】米国特許第7,072,095号明細書
【特許文献19】米国特許第9,279,906号明細書
【特許文献20】米国特許第7,144,942号明細書
【特許文献21】米国特許第7,715,088号明細書
【特許文献22】米国特許第6,982,178号明細書
【特許文献23】米国特許第7,839,564号明細書
【特許文献24】米国特許第7,116,318号明細書
【特許文献25】米国特許第7,535,624号明細書
【特許文献26】米国特許第7,075,502号明細書
【特許文献27】米国特許第7,839,564号明細書
【特許文献28】米国特許第7,012,600号明細書
【特許文献29】米国特許第7,453,445号明細書
【特許文献30】米国特許第7,312,784号明細書
【特許文献31】米国特許第8,009,348号明細書
【特許文献32】米国特許第6,241,921号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第2015/0277160号明細書
【特許文献34】米国特許第7,615,325号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2015/0005720号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2016/0012710号明細書
【特許文献37】米国特許第6,866,760号明細書
【特許文献38】米国特許第7,339,715号明細書
【特許文献39】米国特許第7,561,324号明細書
【特許文献40】米国特許第7,839,564号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】O’Regan,B.ら、Nature 1991,353,737
【非特許文献2】Wood,D.,Information Display,18(3),24(March 2002)
【非特許文献3】Bach,U.ら、Adv.Mater.,2002,14(11),845
【非特許文献4】Hayes,R.A.ら、‘‘Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting’’,Nature,425,383-385(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
発明の概要
本発明は、流体中に分散された蛍光粒子を含む電気泳動媒体に関する。本発明はまた、非極性流体中に分散された蛍光粒子を有する電気泳動媒体を含む電気光学装置に関する。本発明はまた、非極性流体中に分散された蛍光粒子を含む電気泳動媒体を含む電気泳動媒体を製造する方法に関する。
一局面において、本発明の電気泳動媒体は、非極性流体中に分散された第1の種類の蛍光粒子を含む。第1の種類の蛍光粒子は、コアおよびシェルを含む。コアは第1の種類の蛍光顔料を含み、シェルはポリマー層および立体安定剤を含む。第1の種類の蛍光顔料は、ポリマーマトリクス中に蛍光色素を含み得る。第1の種類の蛍光粒子は荷電していることがあり得、第1の電荷極性を有する。第1の種類の蛍光粒子の電荷は、第1の種類の蛍光顔料の電荷もしくは荷電可能な官能基、またはポリマー層の電荷もしくは荷電可能な官能基、または立体安定剤の電荷もしくは荷電可能な官能基の結果であり得る。ポリマー層は、第1の種類の蛍光粒子の表面上に吸着され得、複合体化され得、または共有結合され得る。シェルの立体安定剤は、シェルのポリマー層上に吸着され得、複合体化され得、または共有結合され得る。第1の種類の蛍光粒子のシェルのポリマー層は、第1のモノマーまたはオリゴマーの重合から形成され得、第1のモノマーまたはオリゴマーは、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、シロキサン、エチレン、プロピレンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。第1の種類の蛍光粒子のシェルの立体安定剤は、第2のモノマーまたはオリゴマーの重合から形成され得、第2のモノマーまたはオリゴマーは、アクリラート、メタクリラート、スチレン、メチルスチレン、シロキサン、エチレン、プロピレンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0027】
電気泳動媒体はコアおよびシェルを含む第2の種類の蛍光粒子をさらに含み得、前記コアは第2の種類の蛍光顔料を含み、前記シェルはポリマー層および立体安定剤を含み、前記第2の種類の蛍光粒子は第2の色を有し、前記第2の色は前記第1の色と異なり、第2の電荷極性は前記第1の電荷極性とは反対である。電気泳動媒体は、第3の種類の有機顔料を含む第3の種類の荷電粒子をさらに含み得、前記第3の種類の有機顔料は、第3の色および第2の電荷極性を有し、前記第3の色は前記第1および前記第2の色と異なり、前記第2の電荷極性は前記第1の電荷極性と異なる。電気泳動媒体は第4の種類の無機顔料を含む第4の種類の荷電粒子をさらに含み得、前記第4の種類の無機顔料は第4の色および第2の電荷極性を有し、前記第4の色は前記第1、第2および第3の色と異なり、前記第2の電荷極性は前記第1の電荷極性と異なる。第1の種類の蛍光粒子のコアは、蛍光顔料、有機顔料、無機顔料およびこれらの混合物からなる群から選択される第5の種類の顔料をさらに含み得る。第5の種類の顔料の色は、白、黒、オレンジ、赤、マゼンタ、黄色、シアン、青、バイオレット、緑または別の色であり得る。
【0028】
電気泳動媒体の非極性流体は無色であり得、または色素で着色され得る。色素は非極性流体に可溶性である。非極性流体は炭化水素であり得る。
【0029】
一局面において、本発明は、電気光学装置に関する。電気光学装置は、電気泳動ディスプレイであり得る。電気光学装置は、第1の光透過性電極層と、電気泳動媒体層と、第2の電極層とを含み、電気泳動媒体層は、第1の光透過性層と第2の電極層との間に位置する。電気泳動媒体層は、電気泳動媒体を含む。電気泳動媒体は、非極性流体中に分散された第1の種類の蛍光粒子を含む。第1の種類の蛍光粒子はコアおよびシェルを含み、コアは第1の種類の蛍光顔料を含み、シェルはポリマー層および立体安定剤を含む。第1の種類の蛍光粒子は、第1の色を有する。第1の種類の蛍光顔料は、ポリマーマトリクス中に蛍光色素を含み得る。第1の種類の蛍光粒子は荷電していることがあり得、第1の電荷極性を有する。第1の種類の蛍光粒子の電荷は、第1の種類の蛍光顔料の電荷もしくは荷電可能な官能基、またはポリマー層の電荷もしくは荷電可能な官能基、または立体安定剤の電荷もしくは荷電可能な官能基の結果であり得る。シェルは、第1の種類の蛍光粒子の表面上に吸着され得、複合体化され得、または共有結合され得る。シェルの立体安定剤は、シェルのポリマー層上に吸着され得、複合体化され得、または共有結合され得る。
【0030】
別の局面において、本発明は、電気泳動媒体を製造する方法であって、(1)キャリア中の第1の種類の蛍光顔料の分散物を提供する工程と、(2)第1の種類のモノマーまたはオリゴマーと第2の種類のモノマーまたはオリゴマーとを前記キャリア中の前記第1の種類の蛍光顔料の前記分散物中に添加することによって、ならびに前記第1のモノマーまたはオリゴマーおよび前記第2のモノマーまたはオリゴマーを撹拌下で重合させることによって、第1の種類の蛍光粒子を形成する工程とを含む、方法に関する。第1の種類の蛍光粒子は、コアおよびシェルを含む。コアは、第1の種類の蛍光顔料を含み、シェルは、第1のモノマーまたはオリゴマーの重合によって形成されたポリマー層と、第2のポリマーまたはオリゴマーの重合によって形成された立体安定剤とを含む。電気泳動媒体を製造する方法は、(3)第1の種類の蛍光粒子を単離する工程と、(4)単離された第1の種類の蛍光粒子を非極性流体中に再分散させる工程とをさらに含み得る。第1の種類の蛍光顔料は、ポリマーマトリクス中に蛍光色素を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【0032】
【
図2】
図2A、
図2B、
図2Cは、本発明の電気光学装置の3つの異なる光学状態を示す。電気光学装置は、第1の種類の蛍光粒子および第4の種類の荷電粒子を有する電気泳動媒体を含む。この例における2つの異なる種類の粒子は、反対に荷電している。電気泳動媒体は、マイクロセル中に封入されている。
【0033】
【
図3】
図3は、第1の種類の蛍光粒子および第3の種類(または第4の種類)の荷電粒子を有する電気泳動媒体を含む本発明の電気光学装置の光学状態を示す。この例における2つの異なる種類の粒子は、反対に荷電している。電気泳動媒体はマイクロカプセル中に封入されている。
【0034】
【
図4】
図4は、実施例2の電気泳動装置の白色状態およびオレンジ色状態の色測定を示す。オレンジ色状態は、
図4ではより暗く見える。
【0035】
【
図5】
図5は、ポリマー材料で表面処理する前の第1の種類の蛍光顔料の熱重量分析(TGA)に対応するグラフである。
【0036】
【
図6】
図6は、コアが(DayGloによって供給される)蛍光顔料Blaze Orange(商標)AX-15-Nである、実施例1からの第1の種類の蛍光粒子の熱重量分析(TGA)に対応するグラフである。
【0037】
【
図7】
図7は、リビング重合を介した第1の種類の蛍光粒子の製造方法の図示である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
本明細書で使用される「荷電粒子」という用語は、電気を帯びた粒子を意味する。
【0039】
電気泳動ディスプレイ(EPD)は、非極性流体中に分散された荷電顔料粒子に影響を及ぼす電気泳動現象に基づく非発光装置である。EPDは、典型的には電気泳動媒体層を含む。電気泳動媒体層は、非極性流体中に荷電粒子を含む電気泳動媒体を含む。電気泳動媒体層は、離隔した一対の電極の間に配置されている。装置の表示側に位置する電極の少なくとも1つは、光透過性である。典型的には、他の電極は1組の画素電極を構成する。
【0040】
非極性流体は、炭化水素溶媒または炭化水素溶媒の組み合わせであり得る。電気泳動ディスプレイの一例では、電気泳動媒体は、対比色を有する非極性流体中に1つの色を有する1種類の荷電粒子を含む。この場合、2つの電極間に電圧差が課されると、顔料粒子は、顔料粒子の極性と反対の極性の電極に引き寄せられることによって移動する。そのため、透明なプレートにおいて示す色は、溶媒の色または顔料粒子の色のいずれであってもよい。プレート極性の反転は、反対側のプレートに戻るように粒子を移動させ、それによって色を反転させる。
【0041】
あるいは、電気泳動媒体は、対比色で反対の電荷を有する2種類の顔料粒子を有し得る。2種類の顔料粒子は、透明な流体中に分散されている。この場合、2つの電極間に電圧差が課されると、2種類の顔料粒子は、ディスプレイセル内の反対の端部(上部または底部)に向かって移動する。したがって、2種類の顔料粒子の色のうちの1つが、ディスプレイセルの表示側に見られる。
【0042】
別の代替形態では、ハイライトまたは多色ディスプレイ装置を形成するために、追加の種類の顔料粒子が電気泳動媒体に添加される。
【0043】
理想的な装置では、荷電顔料粒子は分離した状態を保ち、すべての動作条件下で凝集も凝結(相互にまたは電極に付着)もしない。
【0044】
本発明は、非極性流体中に分散された第1の種類の蛍光粒子を含む電気泳動媒体に関する。第1の種類の蛍光粒子を
図1に示す。
図1の第1の種類の蛍光粒子10のコアは、第1の種類の蛍光顔料11を含む。第1の種類の蛍光粒子のシェルは、ポリマー層12および立体安定剤13を含む。第1の種類の蛍光粒子のシェルのポリマー層12は、第1の種類のモノマーまたはオリゴマーの重合によってコアの表面上に形成され得るポリマー材料を含む。ポリマー層12はまた、第1の種類の蛍光顔料との第1の種類のマクロモノマーの反応から、または第1の種類の蛍光顔料の表面上への第1の種類のポリマーの吸着もしくは複合体化から形成され得る。第1の種類の蛍光粒子のシェルの立体安定剤13は、第2の種類のモノマーまたはオリゴマーの重合からポリマー層12の表面上に形成され得る。立体安定剤13は、ポリマー層13との第2の種類のマクロモノマーの反応から、またはポリマー層12の表面上への第2の種類のポリマーの吸着もしくは複合体化からも形成され得る。ポリマー層のモノマー、オリゴマーおよびマクロモノマーは、アクリラート、メタクリラート、スチレン、シロキサン、エチレン、プロピレンまたはこれらの混合物を含み得る。第1の種類の蛍光粒子の立体安定剤13は、電気泳動媒体中の第1の種類の蛍光粒子が非凝結および非凝集状態で存在することを可能にする。ポリマー層12は、1より多くのポリマーを含み得、1より多くのモノマー、オリゴマーまたはマクロモノマーによって形成され得る。立体安定剤13も、1より多くのポリマーを含み得、1より多くのモノマー、オリゴマーまたはマクロモノマーによって形成され得る。典型的には、ポリマー層12の材料は、立体安定剤13の材料よりも極性である。ポリマー層12は、第1の種類の蛍光顔料11に共有結合され得、または第1の種類の蛍光顔料の表面上に吸着もしくは複合体化され得る。立体安定剤13は、ポリマー層12上に共有結合され得る。立体安定剤13およびポリマー層12は、電荷生成または電荷制御剤との相互作用を可能にする官能基を含み得る。第1の種類の蛍光粒子は、第1の種類の蛍光粒子の重量に対して10重量%~99重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して20重量%~95重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して25重量%~92重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して35重量%~90重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して45重量%~88重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して40重量%~85重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して50重量%~80重量%の第1の種類の蛍光顔料を含み得る。
【0045】
第1の種類の蛍光粒子は、第1の種類の蛍光粒子の重量に対して0.5重量%~95重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して1重量%~85重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して2重量%~70重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して5重量%~50重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して8重量%~40重量%の第1の種類の蛍光顔料、または第1の種類の蛍光粒子の重量に対して10重量%~30重量%の第1の種類の蛍光顔料を含み得る。
【0046】
第1の種類の蛍光粒子の体積平均直径は、100nm~5μm、または300nm~1.5μm、または500nm~1μmであり得る。
【0047】
第1の種類の蛍光粒子のコアは、第1の種類の蛍光顔料に加えて、第5の種類の顔料を含み得る。第5の種類の顔料は、第5の種類の蛍光顔料、第5の種類の有機顔料、第5の種類の無機顔料およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。第5の種類の顔料の色は、白、黒、オレンジ、赤、マゼンタ、黄色、シアン、青、バイオレット、緑または別の色であり得る。
【0048】
第1の種類の蛍光粒子は、第1の色を有する。第1の色は、オレンジ、赤、マゼンタ、黄色、シアン、青、バイオレット、緑、黒、白またはその他の色であり得る。第1の種類の蛍光粒子は、第1の極性の電荷を有し得る。第1の種類の蛍光粒子の電荷は、第1の種類の蛍光顔料の電荷もしくは荷電可能な官能基、またはポリマー層の電荷もしくは荷電可能な官能基、または立体安定剤の電荷もしくは荷電可能な官能基、または電気泳動媒体中に存在し得る電荷制御剤との第1の種類の蛍光粒子の相互作用による電荷の結果であり得る。第1の電荷極性は、正または負であり得る。
【0049】
蛍光顔料は、UVスペクトル中の光を吸収し、より長い波長の光を放出する固体材料である。蛍光顔料の1つのクラスは、蛍光色素とポリマー樹脂との組み合わせによって形成される。これらの蛍光顔料は、従来の顔料よりもはるかに明るく、より鮮やかな色を提供し、紫外光およびブラックライトの下で光るため、特有の光学効果を与える。蛍光顔料を形成するために蛍光色素とともに使用される樹脂は、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーの両方を含む。このような樹脂の非限定的な例は、ポリアミド、ポリエステル、アクリル(acrylic)、スチレン、メラミン-ホルムアルデヒドおよびベンゾグアナミン-ホルムアルデヒドである。様々な蛍光色素および様々な樹脂をベースとする多数の蛍光顔料が市販されている。蛍光顔料の非限定的な例は、DayGlo(登録商標)によって供給されるAurora Pink(登録商標)A-11、Rocket Red(商標)A-13-N、Fire Orange(商標)A-14-N、Blaze Orange(商標)A-15-N、Signal Green(商標)A-17-N、Horizon Blue(商標)A-19、Corona Magenta(商標)A-21、Aurora Pink(登録商標)AX-11-5、Neon Red(商標)AX-12-5、Rocket Red(商標)AX-13-5、Fire Orange(商標)AX-14-N、Blaze Orange(商標)AX-15-N、Arc Yellow(商標)AX-16、N Saturn Yellow(登録商標)AX-17-N、Signal Green(商標)AX-18-N、Horizon Blue(商標)A-19、Corona Magenta(商標)AX-21、Aurora Pink(登録商標)ECO-11、Rocket Red(商標)ECO-13、Fire Orange(商標)ECO-14、Blaze Orange(商標)ECO-15、Saturn Yellow(商標)ECO-17、Signal Green(商標)ECO-18、Horizon Blue(商標)ECO-19、Ultra Violet(商標)ECO-20、Corona Magenta(商標)ECO-21、EZ-11 Aurora Pink(登録商標)、EZ-15 Blaze Orange(商標)、EZ-17 Saturn Yellow(登録商標)、EZ-18 Signal Green(商標)、EZ-21 Corona Magenta(商標)、GC17F Citrine Yellow、GC18XPF Emerald Green MB、GC19XPF Sapphire Blue MB、GC26F Crimson Red、GPF22 Corona Magenta(商標)、GPF26 Rocket Red(商標)、GPF30 Blaze Orange(商標)、GPF31 Aurora Pink(登録商標)、GPF34 Saturn Yellow(登録商標)、GPL-11 Aurora Pink(登録商標)、GPL-13 Rocket Red(商標)、GPX-14 Fire Orange(商標)、GPL-15 Blaze Orange(商標)、GPX-17 Saturn Yellow(登録商標)、GPL-19 Horizon Blue(商標)、GPL-21 Corona Magenta(商標)、GPL-00 Clear、MP-CH5510 Chartreuse、MP-GR5511 Green、MP-OY5512 Orange-Yellow、MP-OG5513 Orange、MP-RD5515 Red、MP-MG5518 Magenta、MP-PR5547 Purple、MP-CE5606 Cerise、MP-PK5661 Pink、MP-BL6182 Blue、NX-13C Rocket Red(商標)、NX-14C Fire Orange(商標)、NX-15C Blaze Orange(商標)、NX-17C Saturn Yellow(登録商標)、NX-21C Corona Magenta(商標)、T-11 Aurora Pink(登録商標)、T-13 Rocket Red(商標)、T-14 Fire Orange(商標)、T-15 Blaze Orange(商標)、T-16 Arc Yellow(商標)、T-17N Saturn Yellow(登録商標)、T-18N Signal Green(商標)、T-19 Horizon Blue(商標)、GT-11 Aurora Pink(登録商標)、GT-13 Rocket Red(商標)、GT-14N Fire Orange(商標)、GT-15N Blaze Orange(商標)、GT-17N Saturn Yellow(登録商標)、GT-21 Corona Magenta(商標)、VCL2014 Fire Orange(商標)、VCL1700 Saturn Yellow(登録商標)、VCL2018 Signal Green(商標)、Z-11 Aurora Pink(登録商標)、Z-12 Neon Red(商標)、Z-13 Fire Orange(商標)、Z-14 Fire Orange(商標)、Z-15 Blaze Orange(商標)、Z-17-N Saturn Yellow(登録商標)、Z-18 Signal Green(商標)、Z-21 Corona Magenta(商標)、ZQ-11 Aurora Pink(登録商標)、ZQ-12 Neon Red(商標)、ZQ-13 Rocket Red(商標)、ZQ-14 Fire Orange(商標)、ZQ-15 Blaze Orange(商標)、ZQ-17 Saturn Yellow(登録商標)、ZQ-18 Signal Green(商標)、ZQ-19 Horizon Blue(商標)、ZQ-21 Corona Magenta(商標)、およびBrilliant(登録商標)によって供給されるBSR、BSTS、BMS、BFE、BGP、BSTW、BGP、BNF、BVC、BIB2、BWDである。
【0050】
本発明の電気泳動媒体は、第1の種類の蛍光粒子に加えて、第2の種類の蛍光粒子をさらに含み得る。第2の種類の蛍光粒子は、コアおよびシェルを含み得る。コアは、第2の種類の蛍光顔料を含み得る。シェルは、ポリマー層および立体安定剤を含み得る。第2の種類の蛍光粒子のシェルのポリマー層は、第3の種類のモノマーまたはオリゴマーの重合によってコアの表面上に形成され得るポリマー材料を含み得る。ポリマー層はまた、第2の種類の蛍光顔料との第3の種類のマクロモノマーの反応から、または第2の種類の蛍光顔料の表面上への第3の種類のポリマーの吸着もしくは複合体化から形成され得る。第2の種類の蛍光粒子のシェルの立体安定剤は、第4の種類のモノマーまたはオリゴマーからポリマー層の表面上に形成され得る。立体安定剤は、ポリマー層との第4の種類のマクロモノマーの反応から、またはポリマー層の表面上への第4の種類のポリマーの吸着もしくは複合体化からも形成され得る。ポリマー層および立体安定剤のモノマー、オリゴマーおよびマクロモノマーは、アクリラート、メタクリラート、スチレン、シロキサン、エチレン、プロピレンまたはこれらの混合物を含み得る。第2の種類の蛍光粒子の立体安定剤は、電気泳動媒体中の第2の種類の蛍光粒子が非凝結および非凝集状態であることを可能にする。ポリマー層は、1より多くのポリマーを含み得、1より多くのモノマー、オリゴマーまたはマクロモノマーによって形成され得る。立体安定剤も、1より多くのポリマーを含み得、1より多くのモノマー、オリゴマーまたはマクロモノマーによって形成され得る。ポリマー層は、第2の種類の蛍光顔料に共有結合され得、または第2の種類の蛍光顔料の表面上に吸着もしくは複合体化され得る。立体安定剤は、ポリマー層上に共有結合され得る。立体安定剤およびポリマー層は、電荷生成または電荷制御剤との相互作用を可能にする官能基を含み得る。
【0051】
第2の種類の蛍光粒子は、第1の種類の蛍光粒子の第1の色とは異なり得る第2の色を有する。第2の色は、オレンジ、赤、マゼンタ、黄色、シアン、青、バイオレット、緑、黒、白または別の色であり得る。第2の種類の蛍光粒子は、第2の極性の電荷を有する。第2の種類の蛍光粒子の第2の電荷極性は、第1の種類の蛍光粒子の第1の電荷極性と反対であり得る。第2の種類の蛍光粒子の電荷は、第2の種類の蛍光顔料の電荷もしくは荷電可能な官能基、またはポリマー層の電荷もしくは荷電可能な官能基、または立体安定剤の電荷もしくは荷電可能な官能基、または電気泳動媒体中に存在する電荷制御剤との第2の種類の蛍光粒子の相互作用による電荷の結果であり得る。第1の電荷極性は、正または負であり得る。第2の種類の蛍光粒子は、第2の種類の蛍光粒子の重量に対して10重量%~100重量%の第2の種類の蛍光顔料、または第2の種類の蛍光粒子の重量に対して20重量%~95重量%の第2の種類の蛍光顔料、または第2の種類の蛍光粒子の重量に対して25重量%~92重量%の第2の種類の蛍光顔料、または第2の種類の蛍光粒子の重量に対して35重量%~90重量%の第2の種類の蛍光顔料、または第2の種類の蛍光粒子の重量に対して45重量%~85重量%の第2の種類の蛍光顔料、または第2の種類の蛍光粒子の重量に対して50重量%~85重量%の第2の種類の蛍光顔料、または第2の種類の蛍光粒子の重量に対して60重量%~80重量%の第2の種類の蛍光顔料を含み得る。第2の種類の蛍光粒子の体積平均直径は、100nm~5μm、または300nm~1.5μm、または500nm~1μmであり得る。
【0052】
本発明の電気泳動媒体は、第1の種類の蛍光粒子に加えて、第3の種類の有機顔料を含む第3の種類の荷電粒子をさらに含み得る。第3の種類の荷電粒子は、第3の色および第2の電荷極性を有する。第3の色は、第1の種類の蛍光粒子の第1の色と異なり得る。第3の種類の荷電粒子の第2の電荷極性は、第1の種類の蛍光粒子の第1の電荷極性と反対であり得る。第3の種類の荷電粒子は、処理されていない有機顔料粒子であり得る。あるいは、1またはそれを超えるポリマーは、第3の種類の荷電粒子を形成するために、第3の種類の有機顔料上に共有結合され得、吸着され得、または複合体化され得る。第3の色は、オレンジ、赤、マゼンタ、黄色、シアン、青、バイオレット、緑、黒または別の色であり得る。第3の種類の有機顔料は、CI顔料PR 254、PR122、PR149、PG36、PG58、PG7、PY138、PY150、PY20などであり得、これらは、カラーインデックスハンドブック「New Pigment Application Technology」(CMC Publishing Co,Ltd,1986)および「Printing Ink Technology」(CMC Publishing Co,Ltd,1984)に記載されている一般的に使用される有機顔料材料である。具体例としては、Clariant Hostaperm Red D3G 70-EDS、Hostaperm Pink E-EDS、PV fast red D3G、Hostaperm red D3G 70、BASF Irgazine red L 3630、Cinquasia Red L 4100 HD、Irgazin Red L 3660 HDなどが挙げられ得る。
【0053】
第3の種類の荷電粒子は、第3の種類の荷電粒子の重量に対して10重量%~100重量%の第3の種類の有機顔料、または第3の種類の荷電粒子の重量に対して20重量%~95重量%の第3の種類の有機顔料、または第3の種類の荷電粒子の重量に対して25重量%~92重量%の第3の種類の有機顔料、または第3の種類の荷電粒子の重量に対して35重量%~90重量%の第3の種類の有機顔料、または第3の種類の荷電粒子の重量に対して45重量%~88重量%の第3の種類の有機顔料、または第3の種類の荷電粒子の重量に対して50重量%~85重量%の第3の種類の有機顔料、または第3の種類の荷電粒子の重量に対して60重量%~80重量%の第3の種類の有機顔料を含み得る。第3の種類の荷電粒子の体積平均直径は、100nm~5μm、または300nm~1.5μm、または500nm~1μmであり得る。
【0054】
本発明の電気泳動媒体は、第1の種類の蛍光粒子に加えて、第4の種類の無機顔料を含む第4の種類の荷電粒子をさらに含み得る。第4の種類の荷電粒子は、第4の色および第2の電荷極性を有する。第4の色は、第1の種類の蛍光粒子の第1の色と異なり得る。第2の電荷極性は、第1の種類の蛍光粒子の第1の電荷極性と反対であり得る。第4の種類の荷電粒子は、非処理であり得る。あるいは、1またはそれを超えるポリマーは、第4の種類の荷電粒子を形成するために、第4の種類の無機顔料上に共有結合され得、吸着され得、または複合体化され得る。第4の色は、白、黒、オレンジ、赤、マゼンタ、黄色、シアン、青、バイオレット、緑または別の色であり得る。第4の種類の無機顔料は、TiO2、BaSO4、ZnO、金属酸化物、マンガンフェライトブラックスピネル、銅クロマイトブラックスピネル、カーボンブラックまたは硫化亜鉛顔料粒子であり得る。
【0055】
第4の種類の荷電粒子は、第4の種類の荷電粒子の重量に対して10重量%~100重量%の第1の種類の無機顔料、または第4の種類の荷電粒子の重量に対して20重量%~95重量%の第1の種類の無機顔料、または第4の種類の荷電粒子の重量に対して25重量%~92重量%の第1の種類の無機顔料、または第4の種類の荷電粒子の重量に対して35重量%~90重量%の第1の種類の無機顔料、または第4の種類の荷電粒子の重量に対して45重量%~88重量%の1もしくはそれを超える顔料、または第4の種類の荷電粒子の重量に対して50重量%~85重量%の第1の種類の無機顔料、または第4の種類の荷電粒子の重量に対して60重量%~80重量%の第1の種類の無機顔料を含み得る。第4の種類の荷電粒子の体積平均直径は、100nm~5μm、または300nm~1.5μm、または500nm~1μmであり得る。
【0056】
上述のように、本発明の電気泳動媒体は、第1の電荷極性を有する第1の種類の蛍光粒子と、反対の電荷極性を有する別の種類の電荷粒子とを含み得る。例えば、電気泳動媒体は、第4の種類の無機顔料を含む第4の種類の荷電粒子を含み得、第4の種類の荷電粒子は、第1の種類の蛍光粒子の第1の色とは異なる第4の色を有する。第4の種類の荷電粒子は、第1の種類の蛍光粒子の電荷極性とは反対の電荷極性を有する。第4の種類の荷電粒子は、その表面上にポリマー層および/または立体安定剤を有してもよく、または有さなくてもよい。第1の種類の蛍光粒子と第4の種類の荷電粒子とを含む電気泳動媒体を含む3つの異なる光学状態での電気光学ディスプレイの例を
図2A~
図2Cに示す。この例では、第4の種類の荷電粒子の色は白色である。
【0057】
図2Aは、光学状態201での電気光学装置を示す。この光学状態は、装置の電極28および29に電界が印加されていないときに観察される。具体的には、装置は、マイクロセル24、25および26内にカプセル封入された電気泳動媒体を含む電気光学材料層210を含む。電気泳動媒体は、電気泳動流体23中に、第1の種類の蛍光粒子22および第4の種類の荷電粒子21(白色)を含む。電気泳動媒体は、2つの電極28、29の間に配置されている。電極28は光透過性であり、電極29は画素電極29a、29bおよび29cを含む。2種類の電気泳動粒子21および22は、反対の電荷極性を有する。第1の種類の蛍光粒子22は正に荷電しており、第4の種類の荷電粒子21は負に帯電している。電極28および29を介して電界が電気光学媒体層に印加されていないので、2種類の電気泳動粒子21および22は、電気泳動媒体全体にランダムに分布している。
【0058】
図2Bは、光学状態202での同じ装置を示す。この光学状態では、画素電極29a、29bは負の電位を有するのに対して、画素電極29cは正の電位を有する。電気泳動粒子22は正に荷電しているので、電気泳動粒子22は画素電極29a、29bに向かって(光透過性電極28から離れるように)動かされる。反対に荷電した電気泳動粒子21(白色)は、画素電極29a、29aに対応する位置(マイクロセル24、25)で光透過性電極28に向かって移動する。したがって、これらの位置では、ディスプレイは白色に見える。これに対して、負に荷電した白色の電気泳動粒子21は、正の電位を有する画素電極29cに向かって移動する。したがって、画素電極29cに対応する位置(マイクロセル26)では、第1の種類の蛍光粒子は光透過性電極28に向かって移動するので、ディスプレイは第1の色(すなわち、第1の種類の蛍光粒子の色)を有するように見える。
【0059】
図2Cは、同じ装置を示すが、光学状態202にある。この光学状態では、3つの画素電極29a、29bおよび29cはすべて負電位を有する。電気泳動粒子22は正に荷電しているので、電気泳動粒子22は画素電極29a、29bおよび29cに向かって(光透過性電極28から離れるように)動かされる。反対に荷電した電気泳動粒子21(白色)は、画素電極29a、29aおよび29cに対応する位置(マイクロセル24、25および26)で光透過性電極28に向かって移動する。したがって、ディスプレイは、3つのマイクロセル24、25および26のすべてにおいて白色に見える。
【0060】
図3は、ある光学状態にある電気光学材料層310を含む電気光学装置30を示す。電気光学材料層310は、マイクロカプセル34、35、36および37中にカプセル封入された電気泳動媒体を含む。電気泳動媒体は、電気泳動流体33中に、第1の種類の蛍光粒子32および第4の種類の荷電粒子31を含む。電気光学材料層310は、2つの電極38および39の間に配置されている。電極38は光透過性であり、電極39は画素電極39a、39bおよび39cを含む。2種類の電気泳動粒子31および32は、反対の電荷極性を有する。第1の種類の蛍光粒子32は負に荷電し、第2の種類の荷電粒子31は正に荷電している。電極38ならびに画素電極39a、39bおよび39cは、負に荷電した第1の種類の蛍光粒子32を光透過性電極38に向かって動かす電界をマイクロセル24、25および26に印加する。負に荷電した第4の種類の荷電粒子31(白色)は、第2の電極に向かって、光透過性電極から離れるように動かされる。したがって、電気光学ディスプレイは、ディスプレイの表示側で第1の蛍光タイプの粒子32の色を有するように見える。
【0061】
本発明の第1の種類の蛍光粒子は、対応する電気光学光学状態の明るい画像、鮮やかな色を可能にする。第1の種類の蛍光粒子のシェルは、第1の種類の蛍光粒子の凝集に対する粒子の安定性および対応する電気泳動装置の光学状態の安定性に寄与する。以下の開示は、蛍光粒子のポリマー層および立体安定剤の形成および技術的特徴に関する考察を提供する。
【0062】
第1の種類の蛍光顔料の表面は、ポリマー層の形成前に前処理され得る。顔料表面前処理は、第1の種類のモノマーまたはオリゴマーとのコア第1の種類の蛍光顔料の適合性を改善し得る。顔料表面前処理はまた、第1の種類のモノマーまたはオリゴマーの官能基と反応することができる顔料表面の官能基を形成し得、前処理された表面とポリマー層との間に共有結合をもたらす。例えば、表面前処理は、アクリラート、ビニル、-NH2、-NCO、-OHなどの官能基を有する有機シランを用いて行われ得る。これらの官能基は、第1の種類のモノマーまたはオリゴマーと化学反応を起こし得る。ポリマー層は、ポリアクリラート、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエチレン、ポリエステル、ポリシロキサンなどの有機ポリマーであり得る。前処理は、無機または有機材料を用いて行われ得る。無機材料は、シリカ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛など、またはこれらの組み合わせを含み得る。ケイ酸ナトリウムまたはテトラエトキシシランは、シリカコーティングのための一般的な前駆体として使用され得る。第1の種類の蛍光顔料の表面上の無機材料は、第1の種類の蛍光粒子の密度を低下させるために多孔質であり得る。第2の種類の蛍光粒子、第3の種類の荷電粒子および第4の種類の顔料粒子が電気泳動媒体中に存在する場合、これらの粒子のために使用される第2の種類の蛍光顔料には上記されているのと同じ表面前処理を適用することができる。(第3および第4の種類の顔料から形成される)第3および第4の種類の荷電粒子がポリマー層および/または立体安定剤を含まない場合でさえ、第3および第4の種類の顔料の表面に表面処理が適用され得る。
【0063】
上記のように、第1の種類の蛍光粒子(および電気泳動媒体中に存在する場合には第2の種類の蛍光粒子)は、ポリマー層と立体安定剤とを含むシェルを含む。シェルのポリマー層は、ポリアクリラート、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエチレン、ポリエステル、ポリシロキサンなどのポリマーから形成され得る。例えば、ポリアクリラートポリマー層は、スチレン、メチルスチレン、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、n-ブチルアクリラート、n-ブチルメタクリラート、t-ブチルアクリラート、t-ブチルメタクリラート、ビニルピリジン、n-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルアクリラート(2-hydoxyethyl acrylate)、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラートなどのモノマーから形成され得る。ポリウレタンポリマー層は、多官能性イソシアナートまたはチオイソシアナート、第一級アルコールなどのモノマーまたはオリゴマーから形成され得る。ポリ尿素ポリマー層は、アミン/イソシアナート、アミン/チオイソシアナートなどの反応性基を含有するモノマーまたはオリゴマーから形成され得る。当業者は、本発明の本旨に基づいて、適切なモノマーまたはオリゴマーおよびその変形を選択することができるであろう。第3および第4の荷電粒子が本発明の電気泳動媒体中に存在する場合、同じポリマー層が第3および第4の荷電粒子に存在し得る。
【0064】
ポリマー層の材料は、第1の種類の蛍光粒子がその中に分散されている電気泳動媒体の非極性流体と完全に非相溶であり得るか、または比較的非相溶であり得る。本明細書で使用される「比較的非相溶」という用語は、ポリマー層の材料の約5%以下、好ましくは約1%以下が電気泳動媒体の非極性流体と混和性であることを意味する。上記は、電気泳動媒体中に第2、第3および第4の荷電粒子が存在し、それらがポリマー層および/または立体安定剤を含めば、第2、第3および第4の荷電粒子についても当てはまる。非極性流体中でのこの完全なまたは相対的な非相溶性を達成するために、ポリマー層は、その主鎖または側鎖上に極性官能基を有し得る。このような極性官能基の例としては、-COOH、-OH、NH2、R-O-R、R-NH-Rなどが挙げられ得、ここで、Rはアルキルまたはアリール基である。この事例では、側鎖の各々は、好ましくは6個未満の炭素原子を有する。一実施形態において、主鎖または側鎖は、芳香族部分を含有し得る。
【0065】
さらに、第1の種類の蛍光顔料(コア)およびポリマー層は、1つの単一単位として挙動すべきである。これは、以下に記載されるように、架橋またはカプセル封入技術によって達成され得る。
【0066】
本発明の第1の種類の蛍光粒子の調製は、様々な技術を伴い得る。例えば、第1の種類の蛍光粒子は分散重合によって形成され得る。分散重合中、第1の種類のモノマーまたはオリゴマーは、立体安定剤ポリマーの存在下でコア顔料粒子の周囲に重合され得、立体安定剤は反応媒体中に可溶性である。反応媒体として選択される溶媒は、第1のモノマーまたはオリゴマーおよび立体安定剤ポリマーの両方に対して良溶媒でなければならないが、形成されているポリマー層に対する非溶媒でなければならない。例えば、Isopar G(登録商標)などの脂肪族炭化水素溶媒中では、モノマーであるメチルメタクリラートは可溶性であるが、重合後には、得られるポリメチルメタクリラートは可溶性ではない。
【0067】
第1の種類の蛍光粒子(および存在する場合には第2の種類の蛍光粒子)のシェルの立体安定剤は、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリシロキサンまたはこれらの混合物などの高分子量ポリマーを含む。立体安定剤は、電気泳動媒体の非極性流体中での第1の種類の蛍光粒子の分散を容易にし、安定化する。さらに、立体安定剤は、必要に応じて、電荷生成または電気泳動媒体中に存在する電荷制御剤との相互作用を可能にする官能基を有し得る。第3および第4の種類の荷電粒子が電気泳動媒体中に存在する場合には、立体安定剤の上記特徴は、電気泳動媒体の第3および第4の種類の荷電粒子中に立体安定剤が存在する場合においても当てはまる。
【0068】
立体安定剤ポリマーは、ポリマー層の表面に吸着し、複合体化し、または化学的に結合するポリマーまたはマクロモノマーであり得る。立体安定剤としてのマクロモノマーの性質は、系の粒径およびコロイド安定性を決定する。
【0069】
マクロモノマーは、アクリラート末端化またはビニル末端化巨大分子であり得、これらは、アクリラートまたはビニル基が反応媒体中でモノマーと共重合することができるので好適である。
【0070】
マクロモノマーは、好ましくは、炭化水素溶媒中で第1の種類の蛍光粒子を安定化し得る長い尾部Rを有する。
【0071】
マクロモノマーの1つの種類は、以下に示されるような、アクリラート末端化ポリシロキサン(Gelest、MCR-M11、MCR-M17、MCR-M22)である。
【化1】
【0072】
この過程に適した別の種類のマクロモノマーは、以下に示されるようなPE-PEOマクロモノマーである。
RmO-[-CH2CH2O-]n-CH2-フェニル-CH=CH2
または
RmO-[-CH2CH2O-]n-C(=O)-C(CH3)=CH2
【0073】
置換基Rはポリエチレン鎖であり得、nは1~60であり、mは1~500である。これらの化合物の合成は、Dongri Chao et al.,Polymer Journal,Vol.23,no.9,1045(1991)およびKoichi Ito et al.,Macromolecules,1991,24,2348に見出すことができる。
【0074】
別の種類の適切なマクロモノマーは、以下に示すようなPEマクロモノマーである。
CH3-[-CH2-]n-CH2O-C(=O)-C(CH3)=CH2
【0075】
nは、この事例では、30~100である。この種類のマクロモノマーの合成は、Seigou Kawaguchi et al,Designed Monomers and Polymers,2000,3,263に見出すことができる。
【0076】
電荷生成のための官能基を組み込むために、コモノマーが反応媒体中に添加され得る。コモノマーは、第1の種類の蛍光粒子を直接荷電させ得、または電気泳動流体中の電荷制御剤と相互作用して、第1の種類の蛍光粒子に所望の電荷極性および電荷密度をもたらし得る。適切なコモノマーとしては、ビニルベンジルアミノエチルアミノ-プロピル-トリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルリン酸、2-アクリルアミノ-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドなどが挙げられ得る。
【0077】
あるいは、第1の種類の蛍光粒子は、
図7に示されるように、リビングラジカル分散重合によって調製され得る。リビングラジカル分散重合技術は、反応媒体中に蛍光粒子71およびモノマーまたはオリゴマーを分散させて過程を開始することにより、上記の分散重合と類似する。ポリマー層72を形成するための過程において使用されるモノマーは、スチレン、メチルスチレン、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、n-ブチルアクリラート、n-ブチルメタクリラート、t-ブチルアクリラート、t-ブチルメタクリラート、ビニルピリジン、n-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラートなどを含み得る。しかしながら、この代替過程では、複数のリビング末端74がポリマー層の表面上に形成される。リビングラジカル重合のために、反応媒体中にTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ)、RAFT(可逆的付加-開裂連鎖移動)試薬などの作用物質を添加することによって、リビング末端が生成され得る。
【0078】
さらなる工程において、リビング末端74を第2のモノマーと反応させて立体安定剤73を形成させるために、追加のモノマーが反応媒体に添加される。追加のモノマーは、ラウリルアクリラート、ラウリルメタクリラート、2-エチルヘキシルアクリラート、2-エチルヘキシルメタクリラート、ヘキシルアクリラート、ヘキシルメタクリラート、n-オクチルアクリラート、n-オクチルメタクリラート、n-オクタデシルアクリラート、n-オクタデシルメタクリラートなどであり得る。第1の種類の蛍光粒子の分散を容易にするために、立体安定剤は、第1の種類の蛍光粒子がその中に分散されている電気泳動媒体の非極性流体と相溶性でなければならない。立体安定剤はまた、リビングラジカル重合を通じて調製され得る。立体安定剤中に電荷を生成させるために、コモノマーも添加され得る。適切なコモノマーとしては、ビニルベンジルアミノエチルアミノプロピル-トリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルリン酸などが挙げられ得る。
【0079】
さらに代替として、第1の種類の蛍光粒子は、第1の種類の蛍光顔料(コア)をポリウレタンおよび/またはポリ尿素でコーティングすることによって形成され得る。ポリウレタンおよびポリ尿素は、通常、非極性炭化水素溶媒に相溶性でなく、それらの硬度および弾性特性は、モノマー組成によって調整することができる。
【0080】
本発明の一例では、第1の種類の蛍光粒子のポリマー層は、ポリウレタンまたはポリ尿素であり得、立体安定剤は、非極性長鎖炭化水素分子を含み得る。
【0081】
第1の種類の蛍光粒子のポリウレタン(またはポリ尿素)ポリマー層を形成するための合成方法は、重縮合が起こることを除いて、ミセル内での乳化または分散重合と同様であり得る。この場合には、ポリウレタン(またはポリ尿素)を形成するモノマーまたはオリゴマーが使用される。ポリウレタン(またはポリ尿素)ポリマー層の形成に向けた反応混合物は、一方が非極性溶媒であり、他方が極性有機溶媒である2つの非相溶性溶媒を含有する油中油型エマルションを含み得る。反応は、非水性エマルジョン重縮合と称されることもあり、非極性溶媒が連続相であり、極性溶媒が不連続相である。第1のモノマーおよび第1の種類の蛍光粒子は、不連続相中に存在する。適切な非極性溶媒は、Isopar(登録商標)シリーズの溶媒、シクロヘキサン、テトラデカン、ヘキサンなどを含み得る。極性溶媒としては、アセトニトリル、DMFなどが挙げられ得る。
【0082】
乳化剤または分散剤は、この二相性反応混合物にとって極めて重要である。乳化剤または分散剤の分子構造は、非極性溶媒中に可溶な1つの部分と、極性相に固定された別の部分とを含み得る。これにより、モノマーおよび第1の種類の蛍光粒子を含有し、重縮合を通じた粒子形成のためのマイクロリアクタとして機能するミセル/液滴が安定化される。適切な乳化剤または分散剤としては、ポリ(イソプレン)-b-ポリ(メチルメタクリラート)、ポリスチレン-b-ポリ(エテン-alt-プロペン)(Kraton)などのジブロックコポリマーが挙げられ得る。
【0083】
また、粒子上に化学結合を形成するために、共乳化剤が添加され得る。例えば、アミン末端化炭化水素分子は、重縮合中に粒子と反応し得、堅牢な立体安定剤として表面に結合することができる。適切な共乳化剤としては、以下に示されるようなスルホンアミン(B-60、B-100またはB-200)が挙げられ得る。
CH3-[-OCH2CH2-]x-[-OCH2CH(CH3)-]y-NH2
式中、xは5~40であり、yは1~40である。
【0084】
代替のアプローチは、マイクロリアクタ内での重縮合反応が完了した後にポリアクリラート立体安定剤を成長させ続けることである。この事例では、ポリマー層はポリウレタンから形成され、一方、立体安定剤はポリアクリラート鎖を含み得る。この過程において使用される乳化剤または分散剤が粒子表面から洗い流された後、ポリアクリラート立体安定剤を有する得られた第1の種類の蛍光粒子は、電気泳動媒体の非極性流体中に分散されたときに安定である。アクリラート重合を開始することができるいくつかの材料としては、イソシアナトエチルアクリラート、イソシアナトスチレンなどが挙げられる。
【0085】
立体安定剤を形成するモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリラートと、非極性溶媒と相溶性である他のアクリラートとの混合物を含み得る。このようなモノマーの例としては、ラウリルアクリラート、ラウリルメタクリラート、2-エチルヘキシルアクリラート、2-エチルヘキシルメタクリラート、ヘキシルアクリラート、ヘキシルメタクリラート、n-オクチルアクリラート、n-オクチルメタクリラート、n-オクタデシルアクリラート、n-オクタデシルメタクリラートなどが挙げられる。
【0086】
上記過程のいずれにおいても、使用される試薬(例えば、第1の種類の蛍光顔料、ポリマー層を形成するための材料、および立体安定剤を形成するための材料)の量は、第1の種類の蛍光粒子の所望のシェルを達成するために調整および制御され得る。
【0087】
本発明の別の局面は、非極性流体中に本発明の第1の種類の蛍光粒子を含むディスプレイ流体に関する。非極性流体は、低い誘電率(好ましくは約2~3)、高い体積抵抗率(好ましくは約1015オーム-cmまたはそれを超える)および低い水溶性(好ましくは10百万分率未満)を有する溶媒であり得る。適切な溶媒としては、限定されないが、ドデカン、テトラデカンなどの炭化水素、Isopar(登録商標)シリーズの脂肪族炭化水素(Exxon,Houston,Tex)などが挙げられ得る。非極性流体は、炭化水素とハロゲン化炭素またはシリコーン油基材との混合物でもあり得る。
【0088】
本発明は、1粒子、2粒子または多粒子電気泳動媒体に適用可能である。多粒子系では、2種類を超える粒子が存在し得る。各種類の粒子は、他の種類の色とは異なる色を有し得る。
【0089】
一粒子系の場合には、本発明は、染色された非極性流体中に分散された本発明に従って調製された第1の種類の蛍光粒子のみを含む電気泳動媒体を対象とし得る。第1の種類の蛍光粒子および非極性流体は、対比色を有する。
【0090】
あるいは、本発明は、透明な非極性流体中に分散された2種類の粒子を含むディスプレイ流体を対象とし得る。2種類の粒子の少なくとも一方は、本発明に従って調製される。2つの種類の粒子は、反対の電荷極性を有し、対比色を有する。関連する例には、
図2A、
図2B、
図2Cおよび
図3に示される電気光学装置が含まれる。
【0091】
本発明に従って調製された第1の種類の蛍光粒子は、非極性流体中に分散された場合、多くの利点を有する。例えば、第1の種類の蛍光粒子の密度は、非極性流体と実質的に一致し得る。これにより、装置の安定性能が向上する。第1の種類の蛍光粒子の密度と非極性流体の密度との差は、好ましくは2g/cm3未満、より好ましくは1.5g/cm3未満、最も好ましくは1g/cm3未満である。
【0092】
2粒子系においては、1種類の粒子のみが本発明に従って調製される場合、他の種類の粒子は、任意の他の方法によって調製され得る。例えば、粒子は、ポリマー封入された顔料粒子であり得る。顔料粒子のマイクロカプセル化は、化学的または物理的に達成され得る。典型的なマイクロカプセル化過程には、界面重合/架橋、インサイチュ重合/架橋、相分離、単純または複合コアセルベーション、静電コーティング、噴霧乾燥、流動床コーティングおよび溶媒蒸発などが含まれる。
【0093】
第1の種類の蛍光粒子は、天然の電荷を示し得る。第1の種類の蛍光粒子はまた、電荷制御剤を使用して明確に荷電され得る。第1の種類の蛍光粒子はまた、非極性流体中に懸濁されたときに電荷を取得し得る。適切な電荷制御剤は当技術分野で周知である。適切な電荷制御剤は、本質的にポリマー性または非ポリマー性であり得る。適切な電荷制御剤はまた、イオン性または非イオン性であり得る。電荷制御剤の非限定的な例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、金属石鹸、ポリブテンスクシンイミド、無水マレイン酸コポリマー、ビニルピリジンコポリマー、ビニルピロリドンコポリマー、(メタ)アクリル酸コポリマーまたはN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラートコポリマー)、Alcolec LV30(大豆レシチン)、Petrostep B100(石油スルホナート)またはB70(スルホン酸バリウム)、Solsperse 17000(活性ポリマー分散剤)、Solsperse 9000(活性ポリマー分散剤)、OLOA 11000(スクシンイミド無灰分散剤)、OLOA 1200(ポリイソブチレンスクシンイミド)、Unithox 750(エトキシラート)、Petronate L(スルホン酸ナトリウム)、DisperBYK 101、2095、185、116、9077および220ならびにANTI-TERRAシリーズなどの界面活性剤が挙げられる。
【実施例】
【0094】
実施例
[実施例1]
第1の種類の蛍光粒子の調製。
【0095】
蛍光顔料Blaze Orange(商標)AX-15-N(DayGloによって供給;2.5g)、スチレン(8g)およびトルエン(2g)を20mlバイアル中に添加し、2時間超音波処理した。250mL反応器中に、上記混合物、MCR-M22(Gelestによって供給されるモノメタクリルオキシプロピル末端化ポリジメチルシロキサン;5.7g)およびDMS-T01(Gelestによって供給されるトリメチルシロキシ末端化ポリジメチルシロキサン;30g)を添加した。磁気撹拌しながら反応器を70℃に加熱し、窒素で20分間パージした後、過酸化ラウロイル(0.07g)を添加した。19時間後、混合物を5000rpmで15分間遠心分離した。生成した固体をヘキサン中に再分散させ、遠心分離した。このサイクルを2回繰り返し、固体を真空下、室温で乾燥させて最終粒子を製造した。この過程によって生成された第1の種類の蛍光粒子のポリマー含有量を、TGA(熱重量分析)によって決定した。第1の種類の蛍光粒子試料からのパーセント重量減少の、温度に対するグラフを
図6に示す。出発蛍光顔料の重量減少もTGA分析によって決定した。温度に対する出発顔料の対応するパーセント重量減少を
図5に示す。TGA測定は、実施例1の過程が第1の種類の蛍光粒子をポリマーで首尾よく処理したことを示す。さらに、第1の種類の蛍光粒子のTGAグラフは、300℃~400℃の追加の重量減少段階を有し、これは、この過程が新たな種を作り出したことを示している。
図6のTGAデータは、第1の種類の粒子のポリマー含有量が蛍光粒子の重量に対して約97重量%であることを示す。
【0096】
[実施例2]
実施例1からの第1の種類の蛍光粒子を含む電気泳動媒体の調製。
【0097】
実施例1からの第1の種類の蛍光粒子、反対に荷電した白色TiO
2粒子、Isopar E(炭化水素溶媒)および電荷制御剤(Solsperse 19000)を使用して電気泳動媒体組成物を調製した。電気泳動媒体組成物を、2つの電極の間に配置された試験セル中に含め、電界(+15Vおよび-15V、2秒間)の印加によってセルを白色およびオレンジ色の状態に駆動した。2つの状態の色を分光測定的に測定した。結果を表1および
図4に示す。
【0098】
【0099】
Isopar E中の粒子の分散物を観察し、対応する非処理顔料を使用した対応する分散物と比較することによって、分散安定性について第1の種類の蛍光粒子を評価した。潜在的沈降について2つの分散物を観察した。処理されていない第1の種類の蛍光顔料の分散物の顔料粒子は、分散物の調製直後に沈降した。これに対して、第1の種類の蛍光粒子の分散物は、少なくとも数日間安定であった。さらに、2つの分散物は、光学顕微鏡下で凝集についても観察された。わずかな凝集のみを示した第1の種類の蛍光粒子の分散物とは対照的に、非処理の蛍光顔料から作製された分散物は速い凝集を示すことが観察された。
【0100】
本発明の特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、均等物が代わりに用いられ得ることが当業者によって理解されるべきである。
【国際調査報告】