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特表2023-544194PETase酵素の活性及び耐熱性を向上させるための変異
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】PETase酵素の活性及び耐熱性を向上させるための変異
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20231013BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 9/14 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N15/63 Z
C12N9/14
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521049
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 US2021053530
(87)【国際公開番号】W WO2022076380
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/088,321
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ルー ホンユアン
(72)【発明者】
【氏名】ディアス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】コール ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】シュロフ ラガブ
(72)【発明者】
【氏名】エリントン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アルパー ハル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01Y
4B065AA44X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA31
4B065CA55
(57)【要約】
ある範囲の温度及びpHにわたって活性を有するPETヒドロラーゼが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ
N233、S58、N114、S121、N225、M262、T270、T140、S61、I208、及びR224からなる群から選択される、配列番号1に対する位置
に対応する少なくとも1つの変異を有する、
操作されたPET(ポリ(エチレンテレフタレート))ヒドロラーゼ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの変異が、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、及びR224Qからなる群から選択される、請求項1に記載の操作されたPETヒドロラーゼ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの変異が、S58Y、S58M、S58L、S58V、S58P、S61D、S61E、S61Y、S61F、N114H、N114L、N114R、N114S、N114T、T140Y、T140L、T140I、T140V、T140S、I208M、I208H、I208F、I208Y、I208P、I208A、R224D、R224E、R224S、R224T、R224N、R224Q、N225N、N225I、N225V、N225M、N225A、N225L、N225S、N225T、N233R、N233Y、N233H、N233P、M262L、M262I、M262A、M262V、M262F、M262W、T270Y、T270R、及びT270Hからなる群から選択される、請求項1に記載の操作されたPETヒドロラーゼ。
【請求項4】
前記アミノ酸配列が、配列番号1、2又は3と少なくとも95%、98%、又は99%同一である、請求項1又は2又は3に記載の操作されたPETヒドロラーゼ。
【請求項5】
前記アミノ酸配列が、前記少なくとも1つの変異を除いて、配列番号1、2又は3と同一である、請求項1又は2又は3に記載の操作されたPETヒドロラーゼ。
【請求項6】
前記アミノ酸配列が、配列番号6~34のうちの1つ以上と少なくとも95%、98%、99%又は100%同一である、請求項1又は2又は3に記載の操作されたPETヒドロラーゼ。
【請求項7】
前記アミノ酸配列が、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、及びR224Qからなる群から選択される、配列番号1に対する位置に対応する少なくとも2つの変異を有する、請求項1又は4のいずれか一項に記載の操作されたPETヒドロラーゼ。
【請求項8】
前記アミノ酸配列が、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、R224Q、S58Y、S58M、S58L、S58V、S58P、S61D、S61E、S61Y、S61F、N114H、N114L、N114R、N114S、N114T、T140Y、T140L、T140I、T140V、T140S、S121E、I208M、I208H、I208F、I208Y、I208P、I208A、R224D、R224E、R224S、R224T、R224N、R224Q、N225N、N225I、N225V、N225M、N225A、N225L、N225S、N225T、N233R、N233Y、N233H、N233P、M262L、M262I、M262A、M262V、M262F、M262W、T270Y、T270R、及びT270Hからなる群から選択される、配列番号1に対する位置に対応する2つ又は3つの変異を有する、請求項1又は4のいずれか一項に記載の操作されたPETヒドロラーゼ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の操作されたPETヒドロラーゼをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記操作されたPETヒドロラーゼが、シグナルペプチドを更に含む、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項9~10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターであって、それにより、前記プロモーターが、前記操作されたPETヒドロラーゼの発現を制御する、ベクター。
【請求項12】
請求項9~10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項11に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項13】
微生物細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
細菌細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項15】
前記細菌細胞がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)である、請求項に記載の宿主細胞。
【請求項16】
真菌細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項17】
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を分解する方法であって、PETを、請求項1~8のいずれか一項に記載の操作されたPETヒドロラーゼと、前記PETを分解する条件下で接触させることを含む、方法。
【請求項18】
前記PETを、前記操作されたPETヒドロラーゼを発現及び分泌する宿主細胞と接触させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記操作されたPETヒドロラーゼが精製されている、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記条件が、25~70℃の温度におけるインキュベーションを含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記温度が、25~40℃又は30~40℃又は25~45℃である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記温度が、40~70℃又は45~65℃又は45~55℃である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記条件が、6~10(例えば、6~8、7~8.5、又は8~10)のpHにおけるインキュベーションを含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2020年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/088,321号の優先権の利益を主張し、これは、あらゆる目的のために、参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
今日、プラスチックは我々の日常生活において最も広く普及している人工材料となっている。その卓越した物理的・化学的特性ゆえに、プラスチックは、包装、衣料、自動車、電子機器、家庭、農業、建築、建設など、多くの産業に不可欠な多種多様な製品に加工されている。プラスチックの世界生産量は2018年に3億5,900万トンに達したが、現在もプラスチック需要は依然として急増している。
【0003】
皮肉なことに、ほとんどのプラスチックは一回限りの使用を前提とした短命な製品である一方、非常に安定した分子構造に起因して、驚くほど長い寿命を有している。このような扱いにくいプラスチック製品の生産と消費が増え続けた結果、プラスチック廃棄物の蓄積は生態系に大きな脅威を与えることとなった。燃焼又は熱分解などの従来のプラスチック廃棄物管理技術は、エネルギー集約型のプロセスであることが多く、追加の環境汚染物質を生成する可能性がある。これとは対照的に、近年現れた加水分解性プラスチックの酵素分解は、温和な条件下で作用可能であり、解重合反応からプラスチックモノマーを回収することができる潜在性がある。そのため、これは学会及び産業界の双方で注目されている。特に、四番目に多く生産されているプラスチックポリマーであるPETの酵素加水分解は、近年大きな進歩を遂げている。
【0004】
過去10年間において、PETモノマーであるテレフタレート(TPA)とエチレングリコール(EG)との間のエステル結合を切断可能な多数の酵素が発見された。代表的なものとして、サーモビフィダ・フスカ(Thermobifida fusca)KW3由来のTfCut1及びTfCut2(Furukawa,Makoto et al.,2019.“Efficient Degradation of Poly(Ethylene Terephthalate)with Thermobifida Fusca Cutinase Exhibiting Improved Catalytic Activity Generated Using Mutagenesis and Additive-Based Approaches.”Scientific Reports.https://doi.org/10.1038/s41598-019-52379-z,Then et al.2016;2015;Herrero Acero et al.2011)、サッカロモノスポラ・ビリディス(Saccharomonospora viridis)AHK190由来のCut190(Oda,Masayuki et al.,2018.“Enzymatic Hydrolysis of PET:Functional Roles of Three Ca2+Ions Bound to a Cutinase-like Enzyme,Cut190*,and Its Engineering for Improved Activity.”Applied Microbiology and Biotechnology.https://doi.org/10.1007/s00253-018-9374-x;Kawai,Fusako et al.,2014.“A Novel Ca2+-Activated,Thermostabilized Polyesterase Capable of Hydrolyzing Polyethylene Terephthalate from Saccharomonospora Viridis AHK190.”Applied Microbiology and Biotechnology.https://doi.org/10.1007/s00253-014-5860-y)、並びに枝葉堆肥メタゲノムに由来するLC-クチナーゼ(Tournier,V.et al.,2020.“An Engineered PET Depolymerase to Break down and Recycle Plastic Bottles.”Nature.https://doi.org/10.1038/s41586-020-2149-4;Shirke,Abhijit N et al.,2018.“Stabilizing Leaf and Branch Compost Cutinase(LCC)with Glycosylation:Mechanism and Effect on PET Hydrolysis.”Biochemistry.https://doi.org/10.1021/acs.biochem.7b01189)は、他のPETヒドロラーゼと比較して比較的高いPET分解活性を有することが報告されている。しかしながら、これらの酵素は、温和な温度では非常に低い活性を示し、最適な活性を発揮するためにかなり高い作動温度(>60℃)を必要とし、環境修復戦略として全細胞生体触媒に適用することは制限される。最近、Yoshidaらは、新規PET資化性細菌イデオネラ・サカイエンシス(Ideonella sakaiensis)201-F6をPETボトルリサイクル現場から分離することに成功したことを、報告した。Yoshida,Shosuke et al,2016.“A Bacterium That Degrades and Assimilates Poly(Ethylene Terephthalate).”Science 351(6278):1196 LP-1199.https://doi.org/10.1126/science.aad6359。この細菌は、クチナーゼ様酵素であるIsPETaseを分泌し、これは常温でこれまで同定されたPET分解酵素の中で最も高いPET分解活性を示し、その有望な環境適用性を示している。環境PET修復のための全細胞生体触媒システムを開発するために、研究者らは、酵母(ピキア・パストリス(Pichia pastoris)GS115、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)IMUFRJ 50,682)(Costa,Andressa Maio da et al.,2020.“Poly(Ethylene Terephthalate)(PET)Degradation by Yarrowia Lipolytica:Investigations on Cell Growth,Enzyme Production and Monomers Consumption.”Process Biochemistry.https://doi.org/10.1016/j.procbio.2020.04.001;Chen,Zhuozhi et al.,2020.“Efficient Biodegradation of Highly Crystallized Polyethylene Terephthalate through Cell Surface Display of Bacterial PETase.”Science of the Total Environment.https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2019.136138)、及び微細藻類(フェオダクチラム・トリコルヌタム(Phaeodactylum tricornutum)、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)CC-124及びCC-503)(Kim,Ji Won et al.,2020.“Functional Expression of Polyethylene Terephthalate-Degrading Enzyme(PETase)in Green Microalgae.”Microbial Cell Factories.https://doi.org/10.1186/s12934-020-01355-8;Moog,Daniel et al.,2019.“Using a Marine Microalga as a Chassis for Polyethylene Terephthalate(PET)Degradation.”Microbial Cell Factories.https://doi.org/10.1186/s12934-019-1220-z)を含むいくつかの異なるシャーシにIsPETaseを取り付けることを試みた。
【0005】
しかしながら、IsPETaseの1つの大きな欠点は、融解温度(T)48.8℃しか示さない、熱に弱い酵素である点である。IsPETaseは30℃で24時間培養すると、その酵素活性のほとんどが失われることが報告されている(Son,Hyeoncheol Francis et al.,2019.“Rational Protein Engineering of Thermo-Stable PETase from Ideonella Sakaiensis for Highly Efficient PET Degradation.”ACS Catalysis 9(4):3519-26.https://doi.org/10.1021/acscatal.9b00568)。それにもかかわらず、分解効率を最大限高めるためには、バイオレメディエーションに適用されるPET分解酵素が、厳しい細胞外環境下(例えば、野生型PETaseの最適条件(温度、pH、塩濃度)以外の条件)でも長期間にわたって酵素活性を保持できることが、より理想的である。IsPETaseの低い熱安定性は、PETの実際の酵素分解への利用を明らかに妨げると考えられる。IsPETaseの活性と安定性を改善するために、IsPETaseの結晶構造を決定し、その触媒機構を明らかにするために、かなりの研究努力がなされており(Joo,Seongjoon et al.,2018.“Structural Insight into Molecular Mechanism of Poly(Ethylene Terephthalate)Degradation.”Nature Communications.https://doi.org/10.1038/s41467-018-02881-1;Austin,Harry P.et al.,2018.“Characterization and Engineering of a Plastic-Degrading Aromatic Polyesterase.”Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America.https://doi.org/10.1073/pnas.1718804115)、この酵素の合理的なタンパク質工学のための新たな機会を広げている。IsPETaseの構造情報を利用して、いくつかの研究が単一点変異を導入することに成功し、PET分解の触媒活性を1.2倍~3.1倍高めることができた(Taniguchi,Ikuo et al.,2019.“Biodegradation of PET:Current Status and Application Aspects.”ACS Catalysis 9(5).https://doi.org/10.1021/acscatal.8b05171)。最近、Sonらは、野生型IsPETaseと比較して、強化された熱安定性(T=57.7℃)及び40℃で14倍高いPET分解活性を示すIsPETaseS121E/D186H/R280Aバリアントを作成した(Son,Hyeoncheol Francisら、2019、“Rational Protein Engineering of Thermo-Stable PETase from Ideonella Sakaiensis for Highly Efficient PET Degradation.”ACS Catalysis 9(4):3519-26.https://doi.org/10.1021/acscatal.9b00568)。最近では、Cuiらが計算機で設計し、IsPETaseL117F/Q119Y/T140D/W159H,G165A/I168R/A180I/S188Q/S214H/R280Aは、劇的に熱耐性(T=79.8℃)が向上しており、2桁以上高いPET分解活性を有していると報告した(Cui,Ying-Lu et al.,2019.Computational Redesign of PETase for Plastic Biodegradation by GRAPE Strategy.https://doi.org/10.1101/787069)。
【発明の概要】
【0006】
発明の簡単な概要
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号1と実質的に同一(例えば、少なくとも70、75、80、85、90、95、98、99%)であるアミノ酸配列を含み、かつN233、S58、N114、S121、N225、M262、T270、T140、S61、I208、及びR224からなる群から選択される配列番号1に対する位置に対応する少なくとも1つの変異を有する、操作されたPET(ポリ(エチレンテレフタレート))ヒドロラーゼを提供する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの変異は、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、及びR224Qからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの変異は、S58Y、S58M、S58L、S58V、S58P、S61D、S61E、S61Y、S61F、N114H、N114L、N114R、N114S、N114T、S121E、T140Y、T140L、T140I、T140V、T140S、I208M、I208H、I208F、I208Y、I208P、I208A、R224D、R224E、R224S、R224T、R224N、R224Q、N225N、N225I、N225V、N225M、N225A、N225L、N225S、N225T、N233R、N233Y、N233H、N233P、M262L、M262I、M262A、M262V、M262F、M262W、T270Y、T270R、T270H、R43K、A240C、及びH186Dからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号1、2又は3と少なくとも95%、98%又は99%同一である。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、少なくとも1つの変異を除いて、配列番号1、2又は3と同一である。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号6~34のうちの1つ以上と、少なくとも95%、98%、99%又は100%同一である。
【0007】
いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、及びR224Qからなる群から選択される、配列番号1に対する位置に対応する少なくとも2つの変異を有する。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、N233K、S58E、S58A、N114T、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、R224Q、S58Y、S58M、S58L、S58V、S58P、S61D、S61E、S61Y、S61F、N114H、N114L、N114R、N114S、N114T、S121E、T140Y、T140L、T140I、T140V、T140S、I208M、I208H、I208F、I208Y、I208P、I208A、R224D、R224E、R224S、R224T、R224N、R224Q、N225N、N225I、N225V、N225M、N225A、N225L、N225S、N225T、N233R、N233Y、N233H、N233P、M262L、M262I、M262A、M262V、M262F、M262W、T270Y、T270R、T270H、R43K、A240C、及びH186Dからなる群から選択される、配列番号1に対する位置に対応する2つ又は3つ(又は4、5、6、7、8、9、又は10)の変異を有する。
【0008】
また、上記又は本明細書の他の箇所に記載されるような、操作されたPETヒドロラーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、操作されたPETヒドロラーゼは、シグナルペプチドを更に含む。
【0009】
また、上記又は本明細書の他の箇所に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターであって、それにより、プロモーターが、操作されたPETヒドロラーゼの発現を制御する、ベクターも提供される。
【0010】
また、上記又は本明細書の他の箇所に記載されたポリヌクレオチド又はベクターを含む、宿主細胞も提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、微生物細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞である。いくつかの実施形態において、細菌細胞は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、真菌細胞である。
【0011】
また、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を分解する方法であって、PETを、上記又は本明細書の他の箇所に記載の操作されたPETヒドロラーゼと、PETを分解する条件下で接触させることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、PETを、操作されたPETヒドロラーゼを発現及び分泌する宿主細胞と接触させることを含んでいる。いくつかの実施形態において、操作されたPETヒドロラーゼは精製される。
【0012】
いくつかの実施形態において、条件は、25~70℃の温度におけるインキュベーションを含む。いくつかの実施形態において、温度は25~40℃又は30~40℃又は25~45℃である。いくつかの実施形態において、温度は40~70℃又は45~65℃又は45~55℃である。
【0013】
いくつかの実施形態において、条件は、6~10(例えば、6~8、7~8.5、又は8~10)のpHにおけるインキュベーションを含む。
【0014】
定義
「PETヒドロラーゼ」は、ポリエチレンテレフタレート(PET)プラスチックの、モノマーモノ-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)への加水分解を触媒する酵素のエステラーゼクラスに属する。PETヒドロラーゼの例としては、野生型イデオネラ・サカイエンシスの「IsPETase」である配列番号1である。PETヒドロラーゼ活性は、酵素がPETフィルムを分解する能力を測定することにより決定することができ、これは、設定時間中、設定条件下で酵素と共に、一定時間インキュベートした後のフィルムの重量変化により測定される。例えば、実施例7参照。
【0015】
「ポリヌクレオチド」は、典型的には5’から3’末端まで読まれたデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖のポリマーである。ポリヌクレオチドにはRNA及びDNAがあり、天然源から単離されたもの、インビトロで合成されたもの、又は天然分子と合成分子との組み合わせから調製されたものがある。この用語が二本鎖分子に適用される場合、それは全体の長さを示すために使用され、「塩基対」という用語と同等であると理解される。
【0016】
「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、天然に製造されたか、合成的に製造されたかにかかわらず、ペプチド結合によって結合したアミノ酸残基のポリマーである。
【0017】
2つの核酸配列又はポリペプチドは、以下に説明するように最大一致に関して整列させたときに、2つの配列において、それぞれ、ヌクレオチド又はアミノ酸残基の配列が同じである場合に「同一」であると言われる。用語「同一」又はパーセント「同一性」は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈において、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、又は手動アライメント及び目視検査によって測定される、比較ウィンドウにわたって最大一致に関して比較し、アライメントさせたときに、同一であるか又は同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定パーセントを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。配列同一性の割合がタンパク質又はペプチドに関して使用される場合、同一でない残基位置は、しばしば保存的アミノ酸置換によって異なることが認識され、ここでアミノ酸残基は、同様の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、したがって分子の機能特性を変化させない。配列が保存的置換で異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存性を訂正するために上方調整することができる。この調整を行う手段は、当業者にはよく知られている。典型的には、これは、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコアリングし、それによってパーセント配列同一性を増加させることを含む。したがって、例えば、同一のアミノ酸に1のスコアが与えられ、非保存的置換に0のスコアが与えられる場合、保存的置換には0と1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE (Intelligenetics,Mountain View,California,USA)において実行されるように、例えば、Meyers & Miller,Computer Applic.Biol.Sci.4:11-17(1988)のアルゴリズムに従って計算される。
【0018】
2つの核酸又はポリペプチドの文脈で使用される「実質的同一性」又は「実質的に同一」という表現は、基準配列と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を指す。代替的に、パーセント同一性は、70%~100%の任意の整数であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法、好ましくは、以下に記載されるように、標準パラメータを使用するBLASTを使用して決定されるように、配列が基準配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する場合に、配列は参照配列と実質同一である。本開示の実施形態は、配列番号1~3のいずれか1つ以上と実質的に同一であり、本明細書に記載のように少なくとも1つのアミノ酸置換を含有するポリペプチドを提供する。
【0019】
配列比較のために、典型的には1つの配列は基準配列として機能し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び基準配列をコンピューターに入力し、必要があれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することも、代替パラメータを指定することも可能である。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0020】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムは、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これは、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されている。BLAST解析のためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトを通じて一般に入手可能である。このアルゴリズムでは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードとアライメントしたときに、ある正の値を持つ閾値スコアTと一致するか満たす、クエリー配列中の長さWの短いワードを同定して、高スコア配列ペア(HSP)を同定する。Tは隣接ワードスコア閾値と称される(上記Altschul et al)。これらの初期隣接ワードヒットは、それを含むより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシード(seed)として機能する。次に、ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加することができる限り、各配列に沿って両方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータM(マッチした残基のペアに対する報酬スコア;常に>0)とN(ミスマッチした残基に対するペナルティスコア;常に<0)を使って計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを算出する。累積アライメントスコアが最大達成値から量Xだけ低下するか、1つ以上の負のスコアの残基アライメントの蓄積により累積スコアがゼロ以下になるか、いずれかの配列の末端に到達したときに、各方向へのワードヒットの拡張が停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、Xは、アライメントの感度及び速度を決定する。アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワードサイズ(W)28、期待値(E)10、M=1、N=-2、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワードサイズ(W)3、期待値(E)10、BLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915(1989)参照)。
【0021】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を実行する(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)参照)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の尺度の1つは最小和確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間のマッチが偶然に起こる確率の指標となる。例えば、試験核酸と基準核酸の比較における最小和確率が約0.01未満、より好ましくは約10-5未満、最も好ましくは約10-20未満である場合、核酸は基準配列に類似するとみなされる。
【0022】
「アミノ酸変異」とは、所定の位置のアミノ酸残基(例えば、野生型PETヒドロラーゼ又は他の非天然型PETヒドロラーゼに生じる天然由来のアミノ酸残基)を他のアミノ酸残基(例えば、天然由来の残基以外)に置き換えることを指す。例えば、野生型イデオネラ・サカイエンシスIsPETase野生型配列(配列番号1)の233位の天然由来のアミノ酸残基はアスパラギン(N)(N233)であり、したがって、N233におけるアミノ酸置換は、天然由来のアスパラギンをアスパラギン以外の任意のアミノ酸残基に置き換えることを指す。
【0023】
ポリペプチド配列の個々の置換は、コードされた配列中の単一のアミノ酸又はわずかな割合のアミノ酸を変化させ、その結果、アミノ酸が、化学的に類似したアミノ酸と置換される「保存的改変バリアント」となる。以下のアミノ酸は互いに保存的置換である:1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、スレオニン(T)、及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照)。
【0024】
アミノ酸残基「[指定配列]のアミノ酸残基[X]に対応する」、アミノ酸置換「[指定配列]のアミノ酸置換[X]に対応する」等は、ポリペプチド及び配列を最適に整列させた場合に、指定配列の相当するアミノ酸と整列する、関心あるポリペプチド中のアミノ酸を指す。例えば、配列番号1の位置に対応するアミノ酸は、BLASTのようなアラインメントアルゴリズムを使用して決定することができる。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置の「対応」は、配列番号1を別のPETヒドロラーゼ配列に対して整列させることによって決定される。試験PETヒドロラーゼ配列が配列番号1と異なる場合(例えば、アミノ酸の変化又はアミノ酸の付加又は欠失によって)、例えば試験PETヒドロラーゼがアミノ末端シグナル配列を有するか、又は1つ以上のアミノ酸を配列番号1に対して挿入していた場合、改善されたPETヒドロラーゼ活性に関連する特定の変異が、配列番号1におけるものと同じ数値位置番号にない場合があるが、その位置もアライメントによる決定のように配列番号1の位置に依然として、「対応」することになる。
【0025】
「宿主細胞」という用語は、異種ポリヌクレオチドを複製及び/又は転写及び/又は翻訳することができる任意の細胞を指す。したがって、「宿主細胞」は、インビトロ又はインビボに位置するかどうかにかかわらず、任意の原核細胞(大腸菌(E.coli)を含むがこれに限定されない)又は真核細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞、及び虫細胞を含むがこれに限定されない)を指す。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック動物又はトランスジェニック植物に位置することができる。宿主細胞は、例えば、異種ポリヌクレオチドで形質転換され得る。
【0026】
「ベクター」は、コード配列及びコード配列の発現に必要な配列を含む核酸を指す。ベクターは、ウイルス性又は非ウイルス性であり得る。「プラスミド」とは、非ウイルス性ベクターであり、例えば、遺伝子の発現に必要な遺伝子及び/又は調節エレメントをコードする核酸分子である。「ウイルスベクター」とは、他の核酸を細胞内に輸送することができるウイルス由来の核酸である。ウイルスベクターは、適切な環境に存在する場合、ベクターによって運ばれる1つ以上の遺伝子によってコードされる1つ又は複数のタンパク質の発現を指示することが可能である。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ニューラルネットワーク解析により予測された一連の変異を含むIsPETaseバリアント、無効化IsPETase、及びThermoPETaseのエステラーゼ活性を、野生型IsPETaseと比較して示す棒グラフである。野生型IsPETase及びそのバリアントのエステラーゼ活性は、酪酸レゾルフィンアッセイにより測定される。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「Dead」は変異(S160A)により酵素機能を失った無効化IsPETaseを表し、「WT」は野生型IsPetaseを表している。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図2】ニューラルネットワーク解析により予測された一連の変異を含むIsPETaseバリアント、無効化IsPETase、及びThermoPETaseのPET分解活性を、野生型IsPETaseと比較して示す棒グラフである。基質としてPETフィルムを使用し、酵素濃度200nMで野生型IsPETase及びそのバリアントの加水分解活性を測定した。アッセイ反応は、40℃で96時間インキュベートした。酵素処理前後のPETフィルムサンプルを比較し、PETase処理したフィルムの質量損失を測定した。PETase処理したフィルムの写真は、IsPETaseバリアントの異なる分解活性により、異なる表面侵食の程度を示す。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「Dead」は変異(S160A)により酵素機能を失った無効化IsPETaseを表し、「WT」は野生型IsPETaseを表している。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図3】野生型IsPETaseと比較して高いPET分解活性を示す、最初に予測された7つのニューラルネットワーク変異の残基ロケールを示している。
図4】野生型IsPETaseと比較したIsPETaseバリアントのエステラーゼ活性を示す棒グラフである。野生型IsPETase及びそのバリアントのエステラーゼ活性は、酪酸レゾルフィンアッセイにより測定される。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「TNK」は変異N233Kを含むThermoPETaseバリアントを表し、「Dura」は変異L117F、Q119Y、T140D、W159H、G165A、I168R、A180I、S188Q、S214H、R280Aを含むDuraPETaseを表し、「DNK」は変異N233Kを含むDuraPETaseバリアントを表し、「WT」は野生型IsPETaseを表す。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図5】異なる温度におけるIsPETaseバリアントのPET分解活性を示す棒グラフである。基質としてPETフィルムを使用し、酵素濃度200nMでIsPETaseバリアントの加水分解活性を測定した。アッセイ反応は、30℃及び40℃で96時間、50℃で48時間インキュベートした。酵素処理前後のPETフィルムサンプルを比較し、PETase処理したフィルムの質量損失を測定した。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「TNK」は変異N233Kを含むThermoPETaseバリアントを表し、「Dura」は変異L117F、Q119Y、T140D、W159H、G165A、I168R、A180I、S188Q、S214H、R280Aを含むDuraPETaseを表し、「DNK」は変異N233Kを含むDuraPETaseバリアントを表す。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図6】ニューラルネットワーク解析により予測された一連の変異を含むTNK(変異S121E、D186H、R280A、及びN233Kを含むIsPETaseバリアント)バリアント、ThermoPETase、及びDuraPETaseのエステラーゼ活性を、TNKと比較して示す棒グラフである。ThermoPETase、DuraPETase、TNK及びそのバリアントのエステラーゼ活性は、酪酸レゾルフィンアッセイによって測定される。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「TNK」は変異N233Kを含むThermoPETaseバリアントを表し、「TNK+X」は、ニューラルネットワーク解析により予測された変異のうちの1つを含むTNKバリアントを表し、「Dura」は変異L117F、Q119Y、T140D、W159H、G165A、I168R、A180I、S188Q、S214H、R280Aを含むDuraPETaseを表し、「DNK」は変異N233Kを含むDuraPETaseバリアントを表す。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図7】異なる温度における、ニューラルネットワーク解析により予測された一連の変異を含むTNK(変異S121E、D186H、R280A、及びN233Kを含むIsPETaseバリアント)バリアント、ThermoPETase、及びDuraPETaseのPET分解活性を、TNKと比較して示す棒グラフである。基質としてPETフィルムを使用し、酵素濃度200nMでIsPETaseバリアントの加水分解活性を測定した。アッセイ反応は、30℃、40℃、50℃、又は55℃で96時間インキュベートした。酵素処理前後のPETフィルムサンプルを比較し、PETase処理したフィルムの質量損失を測定した。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「TNK」は変異N233Kを含むThermoPETaseバリアントを表し、「TNK+X」は、ニューラルネットワーク解析により予測された変異S58E、N114T、N225C、M262L、T270V、T67D、Q91I、S121E、T67D、Q91I、S61T、I208V、S58A、及びR224Qのうちの1つを含むTNK Netcを表し、「Dura」は変異L117F、Q119Y、T140D、W159H、G165A、I168R、A180I、S188Q、S214H、R280Aを含むDuraPETaseを表し、「DNK」は変異N233Kを含むDuraPETaseバリアントを表す。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図8】野生型IsPETase(配列番号1)と比較しての、WT IsPETaseの結晶構造に基づいてニューラルネットワークモデリングにより予測された10個の選択された置換を含むWT NET(配列番号5)、及びThermoPETaseの結晶構造に基づいてニューラルネットワークモデリングにより予測された6つの選択された置換を含むThermo NET(配列番号5)のアミノ酸配列のアライメントである。変異配列の改変は、強調表示されている。
図9図9a~c:機械学習誘導予測より、様々なPETaseスキャフォールドについて改善された酵素性能が付与された。9a.Mutcomputeの出力により表現された、野生型PETaseタンパク質の構造。PETaseの各アミノ酸残基をMutcomputeで評価した結果、隣接する化学的微小環境と20個の各アミノ酸の化学的適合性を反映する確率分布が得られた。野生型確率が低い(好ましくない)残基は赤、野生型確率が高い(好ましい)残基は青で表示されている。本研究で利用した両方の結晶構造に対するMutComputeのインタラクティブな可視化は、https://www.mutcompute.com/petase/5xjh、及びhttps://www.mutcompute.com/petase/6ij6において公開されている。9b.Mutcomputeで予測された4つの主な変異の微小環境。9c.Mutcomputeによって予測された変異のダウンセレクションの模式図、及び変異誘発により生成された変異の酵素的性能と、ダウンセレクションされた変異の比較。野生型PETase及びThermoPETaseの結晶構造を用いてMutComputeを実行した結果、2つの予測ライブラリーが生成された。次に、予測されたアミノ酸及び野生型アミノ酸の間の確率の変化倍率により、予測値をランク付けした。段階的組み合わせ戦略を使用して、様々なPETaseのスキャフォールドに単一又は複数の予測された変異を組み込むことにより、159個のバリアントが生成された。バリアントの実験的特性評価により、4つの主要な変異をダウンセレクションし、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)という3つのPETaseスキャフォールドにわたって組み合わせ的にアセンブルし、全ての可能な組み合わせを作成した。ヒートマップは、得られたバリアントのPET加水分解活性、及びバリアントのそれぞれのスキャフォールドに対する変化倍率を示している。PET加水分解活性は、96時間の反応時間後、PETaseバリアントがgf-PETフィルムを加水分解して放出したPETモノマー(TPAとMHETとの合計)の量を測定することで評価した。この図に示す全ての酵素について、緩衝液KHPO-NaOH(pH8)が使用された。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図10】αPETaseのPET加水分解活性は、温和な温度及び適度なpHで各種PHEより優れていた。反応温度40℃において、αPETase、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)、βPETase、LCC、及びICCMのpH範囲(6.5~8.0)におけるPET加水分解活性の比較。PET加水分解活性は、96時間の反応時間後、試験されたPETがgf-PETフィルムを加水分解して放出したPETモノマー(TPAとMHETとの合計)の量を測定することで評価した。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図11a図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。11a.51種類のポストコンシューマー・プラスチック製品から穴開けにより得たpc-PETフィルムの完全分解。
図11b図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。11b.αPETase、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)、βPETase、LCC、及びICCMの反応温度50℃におけるPET加水分解活性の時間経過。PET加水分解活性は、試験したPHEによってpc-PET(豆菓子プラスチック容器)フィルムを加水分解して放出されたPETモノマー量(TPAとMHETとの合計)を様々な時点で測定することによって評価した。この図に示す全ての酵素について、緩衝液KHPO-NaOH(pH8)が使用された。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図11c図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。11c.αPETaseによる様々な曝露時間後のpc-PETフィルムの原子間力顕微鏡画像。
図11d図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。11d.αPETaseを用いた大型未処理PET容器の50℃での完全分解。
図11e図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。e.αPETase、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)、βPETase、LCC、及びICCMによる市販ポリエステル製品の50℃での分解。
図12a図12a~c:PETの酵素的-化学的リサイクル及びインサイチュのバイオレメディエーションにおけるαPETaseの応用。12a.αPETaseによるポストコンシューマー・プラスチック廃棄物の解重合及び化学重合を組み込んだPETのクローズドループリサイクルプロセスの模式図。再生バージンPETの結晶化度は、示差走査熱量測定により58%と測定された。
図12b図12a~c:PETの酵素的-化学的リサイクル及びインサイチュのバイオレメディエーションにおけるαPETaseの応用。12b.P.プチダ(P.putida)Go19と外因性PHEとを組み合わせた同時プロセス:αPETase、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)、βPETase、LCC及びICCM。PHE(αPETase/WT/Thermo/Dura/βPETase/LCC/ICCM)及びGO19はPHEとP.プチダGo19との同時処理を表し、PHEはP.プチダGo19なしで酵素を提示する対照条件を表す。遊離したPETモノマー、pc-PETフィルムの質量損失、及びP.プチダGo19の細胞密度は、96時間のインキュベーション後に測定した。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図12c図12a~c:PETの酵素的-化学的リサイクル及びインサイチュのバイオレメディエーションにおけるαPETaseの応用。12c.αPETase/WT/Thermo/Dura/βPETaseを分泌可能な操作されたP.プチダGo19株の統合プロセス。遊離しれたPETモノマー、pc-PETフィルムの質量損失、及びP.プチダGo19の細胞密度は、120時間のインキュベーション後に測定した。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図13】Mutcomputeによって予測された変異を組み込んだPETaseバリアント、及びそれぞれのスキャフォールドである野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)の耐熱性。各酵素の融解温度は示差走査熱量測定で決定した。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図14】αPETaseによる各種pc-PETフィルムの質量、結晶化度%、及び完全分解にかかる時間。円形のpc-PETフィルム(直径6mm)は、地元の食料品店チェーン(Walmart、Costco、及びHEB)で入手可能な食品、飲料、薬品、事務用品、家庭用品及び化粧品の包装に使用される51種類の異なるポストコンシューマー・プラスチック製品から穴開けにより得た。pc-PETフィルムは、フィルムが完全に分解されるまで、50℃でαPETaseによる連続処理によって加水分解された。酵素溶液(100mMの緩衝液KHPO-NaOH(pH8)(pH8)中の200nMのαPETase)は、24時間ごとに補充した。無傷のpc-PETフィルムの結晶化度%は、示差走査熱量測定によって決定した。フィルムの初期質量は、デジタルスケールにより重量測定で決定した。DSC及び重量測定の両方は、三つ組で実施した。平均値±s.d.(n=3)が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本開示は、野生型酵素と比較して向上した酵素活性を示すPETヒドロラーゼ(すなわち、PETase)酵素の変異体型を提供する。本明細書に記載のIsPETaseの変異体型は、より広い温度範囲、例えば、野生型酵素よりも低い温度にわたって触媒活性を維持することができ、並びにより広いpH範囲にわたって改善された活性を維持することができる。
【0029】
例えば、イデオネラ・サカイエンシスIsPETase野生型配列のアミノ酸残基N233、S58、N114、N225、M262、T270、又はT140(配列番号1に示される)のリジン(N233K)、グルタミン酸(S58E)、スレオニン(N114T)、システイン(N225C)、ロイシン(M262L)、バリン(T270V)、又はアスパラギン酸(T140D)による単一置換により、野生型酵素と比較してPET分解活性が上昇したことが発見された。これらの単一変異体のうち、変異N233Kを含むIsPETaseバリアントが最大の改善効果を示し、PETフィルム分解アッセイにおいて40℃で野生型IsPETaseより約8.5倍高いPET分解活性を示した。
【0030】
更に、2つの公表されたIsPETaseバリアントの配列IsPETaseS121E/D186H/R280A(本明細書では、「ThermoPETase」と称する)、及びIsPETaseL117F/Q119Y/T140D/W159H,G165A/I168R/A180I/S188Q/S214H/R280A(本明細書では「DuraPETase」と称する)(Cui,Ying-Lu et al.,2019.Computational Redesign of PETase for Plastic Biodegradation by GRAPE Strategy.https://doi.org/10.1101/787069;Son,Hyeoncheol Francis et al.,2019.“Rational Protein Engineering of Thermo-Stable PETase from Ideonella Sakaiensis for Highly Efficient PET Degradation.”ACS Catalysis 9(4):3519-26.https://doi.org/10.1021/acscatal.9b00568)におけるアミノ酸残基N233をリジン(N233K)で置換すると、ThermoPETase及びDuraPETaseと比較して、熱安定性が高く、PET分解活性が高くなることがわかった。ThermoPETase及びDuraPETaseのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号2及び配列番号3に示す。より具体的には、N233Kのアミノ酸置換を含むThermoPETaseバリアント(「TNK」と表記し、その配列を配列番号4で示す)は、50℃でThermoPETaseの約6.4倍高いPET分解活性を示す。
【0031】
加えて、IsPETaseバリアント-TNK配列(配列番号4で示す)のアミノ酸残基S58、N114、N225、M262、T270、S61、I208又はR224のグルタミン酸(S58E)又はアラニン(S58A)、スレオニン(N114T)、システイン(N225C)、ロイシン(M262L)、バリン(T270V)、スレオニン(S61T)、バリン(I208V)又はグルタミン(N224Q)による単一置換により、TNK酵素と比較してPET分解活性及び熱安定性がより高まることも発見された。具体的には、R224Qのアミノ酸置換を含むTNKバリアントは、30℃、40℃、50℃及び55℃において、TNKよりも高いPET分解活性を示す。
【0032】
本開示は、対照PETヒドロラーゼと比較して特定のアミノ酸変化を有する操作された(すなわち、非天然)PET(ポリ(エチレンテレフタレート))ヒドロラーゼを提供し、それにより対照PETヒドロラーゼと比較して、操作されたPETヒドロラーゼが特定の温度又はpH、又はそれらの組み合わせにおける改善された耐熱性、改善された活性を有することとなる。対照PETヒドロラーゼは、列挙された変異を欠くがそれ以外は同一のPETヒドロラーゼであり、典型的には、そこに変異が導入されるPETヒドロラーゼである。
【0033】
実施例で考察されたように、変異は、いくつかの異なるPETヒドロラーゼに挿入され、一般に、各ケースで活性の改善が示されている。したがって、本開示は、アミノ酸配列に対する、変異のうちの1つ以上の導入を提供し、アミノ酸配列は、配列番号1又は配列番号2又は配列番号3と実質的に(例えば、少なくとも70、80、90又は95%)同一であり、N233、S58、N114、S121、N225、M262、T270、T140、S61、I208、及びR224からなる群から選択される配列番号1に対する位置に対応する少なくとも1つの変異を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの変異は、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、及びR224Qからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの変異は、S58Y/M/L/V/P、S61D/E/Y/F、N114H/L/R/S/T、T140Y/L/I/V/S、I208M/H/F/Y/P/A、R224D/E/S/N/Q、N225N/I/V/M/A/L/S/T、N233R/Y/H/P、M262L/I/A/V/F/W、及びT270Y/R/Hからなる群から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態において、PETヒドロラーゼは、2、3、4、5、6、7、又はそれを上回る上記変異を有し得る。具体的に開示される変異の例示的な組み合わせには、表2に記載されるものが含まれ、これらは、例えば、配列番号1又は配列番号2又は配列番号3と実質的に(例えば、少なくとも70、80、90、又は95%)同一であるアミノ酸配列に導入され得る。例えば、いくつかの実施形態において、PETヒドロラーゼは、N233置換(例えば、N233Kに限定されない)、及びS58、N114、N225、M262、T270、S61、I208、R224、R43、A240、及びH186(例えば、S58E、S58A、N114T、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、R224Q、R43K、A240C、又はH186Dのうちの1つに限定されない)における少なくとも1つの更なる置換を含む。例えば、いくつかの実施形態において、PETヒドロラーゼは、N233置換(例えば、N233Kに限定されない)及びR224置換(例えば、R224Qに限定されない)を含む。いくつかの実施形態において、上記の置換のいずれかを、S121E/D186H/R280Aのうちの1つ、2つ又は3つ全てと組み合わせることができる。
【0035】
例えば、配列番号1、2又は3と少なくとも95%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列に含まれ得る例示的な変異体としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:N233K(例えば、配列番号1において)、S121E(例えば、配列番号1において)、T140D(例えば、配列番号1において)、R224Q(例えば、配列番号1において)、N233K+S121E(例えば、配列番号1において)、N233K+R224Q(例えば、配列番号1において)、R224Q+S121E(例えば、配列番号1において)、N233K+T140D(例えば、配列番号1において)、R224Q+T140D(例えば、配列番号1において)、S121E+T140D(例えば、配列番号1において)、N233K+R224Q+S121E(例えば、配列番号1において)、N233K+R224Q+T140D(例えば、配列番号1において)、N233K+S121E+T140D(例えば、配列番号1において)、R224Q+S121E+T140D(例えば、配列番号1において)、N233K+R224Q+S121E+T140D(例えば、配列番号1において)、N233K(例えば、配列番号2において)、T140D(例えば、配列番号2において)、R224Q(例えば、配列番号2において)、N233K+T140D(例えば、配列番号2において)、N233K+R224Q(例えば、配列番号1又は2)、R224Q+T140D(例えば、配列番号2において)、N233K+R224Q+T140D(例えば、配列番号2において)、N233K(例えば、配列番号3において)、S121E(例えば、配列番号3において)、R224Q(例えば、配列番号3において)、N233K+R224Q(例えば、配列番号3において)、N233K+S121E(例えば、配列番号3において)、R224Q+S121E(例えば、配列番号3において)、又はR224Q+S121E+N233K(例えば、配列番号3において)。
【0036】
例示的な配列には、以下のように配列番号6~34が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
WT PETaseスキャフォールド(配列番号1)上に構築された変異体
【0038】
ThermoPETaseスキャフォールド(配列番号2)上に構築された変異体
【0039】
DuraPETaseスキャフォールド(配列番号3)上に構築された変異体
【0040】
本開示はまた、本明細書に記載の操作されたPETヒドロラーゼをコードする核酸、例えば、配列番号1又は配列番号2又は配列番号3と実質的に(例えば、少なくとも70、80、90、又は95%)同一であり、N233、S58、N114、N225、M262、T270、T140、S61、I208、及びR224からなる群から選択される配列番号1に対する位置に対応する少なくとも1つの変異を有するアミノ酸を含む、PETヒドロラーゼを提供する。いくつかの実施形態において、核酸は、コード配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む。コード配列は、それが発現されるであろう細胞に対してコドン最適化され得る。
【0041】
ポリペプチドをコードする核酸は、遺伝的組換えの分野における日常的な技術を使用して発現させることができる。このような技術を開示する基本的なテキストには、Sambrook and Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd ed.2001);Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);and Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1994-1999)がある。ポリペプチドの改変は、生理活性を低下させることなく、付加的になされ得る。いくつかの改変は、ドメインのクローニング、発現、又は組み込みを容易にするために行われ得る。本明細書に記載のタンパク質は、当業者によって周知である標準方法を使用して作製され得る。大腸菌などの原核細胞又は他の原核宿主を含むがこれらに限定されない種々の宿主細胞における組換え発現は、当技術分野でよく知られている。
【0042】
複合体中の所望のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、組換え発現ベクター、及び組換え発現ベクターを含む宿主細胞、並びに組換え法によるかかるベクター及び宿主細胞の作製方法は、当業者にはよく知られている。
【0043】
ポリヌクレオチドは、当技術分野でよく知られた技術によって合成又は調製され得る。所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、当業者に知られた技術に従って合成され、及び/又はクローニングされ、発現され得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、標準的な方法を使用して特定のレシピエントに対してコドン最適化されるであろう。例えば、タンパク質をコードするDNA構築物は、微生物宿主、例えば、酵母又は細菌における発現のためにコドン最適化され得る。
【0044】
有用な細菌の例としては、エシェリキア(Escherichia)、エンテロバクター(Enterobacter)、アゾトバクター(Azotobacter)、エルウィニア(Erwinia)、バシラス(Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、クレブシエラ(Klebsielia)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、シゲラ(Shigella)、リゾビウム(Rhizobia)、ビトレオシラ(Vitreoscilla)、及びパラコッカス(Paracoccus)が挙げられるが、これらに限定されない。所望のタンパク質をコードする核酸は、各宿主に適した発現制御配列に作動可能に連結される。大腸菌の場合、これにはT7、trp又はλプロモーターのようなプロモーター、リボソーム結合部位、好ましくは転写終結シグナルを含み得る。タンパク質はまた、哺乳類、昆虫、植物、又は酵母細胞のような他の細胞で発現され得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、例えば、検出又は精製の目的のために、1つ以上のアフィニティタグを含む。多くの好適切タグが、例えば、Kimpleらにより記載されたもの(Curr Protoc Protein Sci.2013;73(1):9.9.1-9.9.23)を含む、ポリペプチド構築物に含まれ得る。アフィニティタグの例としては、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、キチン結合ドメイン(CBD)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)部位、FLAGエピトープ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)タグ、ヘマグルチニン(HA)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)部位;Mycエピトープ、ポリヒスチジンタグ(例えば、HHHHHH)、及びストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、米国特許第5,506,121号に記載されているものなど)が挙げられるが、これらに限定されない。アフィニティタグは、ポリペプチド構築物中の1つ以上の位置に含まれ得る。ストレプトアビジン結合ペプチドのようなアフィニティタグは、例えば、ポリペプチド構築物のN末端又はポリペプチド構築物のC末端に存在し得る。いくつかの実施形態では、リンカーペプチドは、アフィニティタグ、例えば、追加のアミノ酸残基を有するか又は有さない配列DYKDDDDKを含むFLAGエピトープを含んでいる。
【0046】
本明細書に記載のポリペプチドは、細胞内で発現させることができ、又は細胞から分泌させることができる。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、ポリペプチドが細胞から分泌されるように、発現されたポリペプチドのアミノ末端に連結される。
【0047】
一旦発現されると、ポリペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む当技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(全体として、R.Scopes,Protein Purification,Springer-Verlag,N.Y.(1982),Deutscher,Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification.,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)参照)。少なくとも約90~95%の均質性(例えば、98~99%以上の均質性)の実質的に純粋な組成物が、特定の実施形態において提供される。
【0048】
また、PETプラスチックディスクと、本明細書に記載の1つ以上の操作されたPETヒドロラーゼとを含む反応混合物、並びに酵素とのインキュベーション後のディスクのパーセント質量損失によって測定されるPETプラスチックの分解を実証するためにこのような反応混合物を使用する方法が提供される。反応混合物中の操作されたPETヒドロラーゼは、精製形態であり得るか、又は宿主細胞中で発現され得る(すなわち、酵素を発現する宿主細胞が、反応混合物中に存在し得る)。記載されたPETヒドロラーゼのいくつかの利点は、それらが高温で改善された活性を示し得ると同時に、以前に記載された操作された又はネイティブPETaseよりも高いレベルの活性で、低いpH条件及び低い温度でプラスチックを分解することができるという利点を有していることである。
【0049】
ポリエステル含有材料を分解するのに必要な時間は、ポリエステル含有材料自体(すなわち、プラスチック製品の性質及び起源、その組成、形状など)、使用する正確な酵素及び酵素の量、並びに様々なプロセスパラメータ(すなわち、温度、pH、追加剤、撹拌など)に依存して変化し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、分解方法の条件は、常温、例えば25~45℃の温度を含む。これらの温度は、宿主細胞(例えば、細菌細胞)がPETヒドロラーゼを発現し、宿主細胞が反応混合物中のPETプラスチックに接触する実施形態において特に有用であり得る。細胞による最適な生存及び酵素発現のための正確な温度を選択することができる。
【0051】
代替的に、いくつかの実施形態では、PETヒドロラーゼは、例えば40~70℃又は45~65℃又は45~55℃のような高い温度下でPETプラスチックと共にインキュベートされる。
【0052】
いくつかの実施形態では、温度は、分解される材料中のPETプラスチックのガラス転移温度(Tg)未満に維持される。いくつかの実施形態では、温度は、分解される材料中のPETプラスチックのガラス転移温度(Tg)以上で維持される。いくつかの実施形態では、プロセスは、酵素が複数回使用され、及び/又はリサイクルされ得る温度で、連続的な方式で実施される。
【0053】
種々のpHを、記載された酵素と共に使用することができる。いくつかの実施形態では、酵素及びPETプラスチックは、6~10(例えば、6~8、7~8.5、又は8~10)のpHの下で反応される。より中性のpH範囲は、例えば、酵素を発現する細胞がプラスチックとインキュベートされる場合に使用され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、プラスチックとPETヒドロラーゼとの間の接触面を増加させるように、その構造を物理的に変化させるために、プラスチック含有材料は、PETヒドロラーゼと接触させる前に前処理される場合がある。
【0055】
任意に、解重合から生じるモノマー及び/又はオリゴマーを、順次又は連続的に回収することができる。出発プラスチック含有材料に応じて、単一のタイプのモノマー及び/又はオリゴマー、又はいくつかの異なるタイプのモノマー及び/又はオリゴマーが回収され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のPETヒドロラーゼを第2の酵素と組み合わせて(同時又は順次)、プラスチック製品を分解させる。例えばいくつかの実施形態では、第2の酵素はMHETase酵素である(例えば、Palmら、Nat Commun.10:1717(2019)参照)。
【0057】
回収されたモノマー及び/又はオリゴマーは、あらゆる好適な精製方法を使用して、更に精製し、再重合可能な形態に調整することができる。精製方法の例としては、ストリッピング処理、水溶液による分離、蒸気選択的凝縮、バイオプロセス後の媒体のろ過及び濃縮、分離、蒸留、真空蒸発、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、沈殿、結晶化、濃度及び酸付加脱水及び沈殿、ナノフィルトレーション、酸触媒処理、半連続モード蒸留又は連続モード蒸留、溶媒抽出、蒸発濃縮、蒸発結晶化、液液抽出、水素化、共沸蒸留プロセス、吸着、カラムクロマトグラフィー、単純真空蒸留及び精密ろ過が挙げられ、これらを組み合わせても、組み合わせなくてもよい。代替的に、回収/遊離したモノマーは、細胞によって(明示的な回収の有無にかかわらず)、様々な製品の製造のための炭素源として使用され得る。これは、細胞をプラスチック及び酵素と共インキュベートすることによって、又は逐次プロセスで達成することができる。
【0058】
以下の実施例は、本発明の態様を例示するものであり、それを限定することを意図するものではない。
【実施例
【0059】
実施例1:ニューラルネットワーク解析で予測される変異
IsPETaseの熱安定性を更に改善するために、より高い適合性を有するIsPETaseバリアントの設計のために、構造ベースの深層学習人工知能(A.I.)モデルを導入した(Shroff,Raghav et al.,2019.“A Structure-Based Deep Learning Framework for Protein Engineering.”BioRxiv,January,833905.Https://doi.org/10.1101/833905)。この3D畳み込みニューラルネットワークA.I.モデルは、アミノ酸残基とその周囲の化学環境との正しい関連性を学習するように訓練されていた。このモデルは、タンパク質構造中の好ましくないアミノ酸残基を特定し、タンパク質全体のフォールディング及び機能を向上させるために最適な置換を予測することができる。IsPETase及びPETフィルム分解アッセイのニューラルネットワーク解析を通じて、IsPETaseのPET分解活性を促進することができる点変異を特定した。
【0060】
野生型PETaseの耐熱性を向上させるために、3D畳み込みニューラルネットワークA.I.モデル(Shroffら、2019)が、より高い適合性を有するIsPETaseバリアントを再設計するために適用された。最初に、野生型IsPETaseに対してニューラルネットワーク解析を実施した。RCSB Protein Data Bankに寄託された野生型IsPETaseの結晶構造(PDB:6EQE、5XG0、5XJH)を使用して、好ましくない野生型アミノ酸残基が特定され、酵素の全体的な適合性を促進し得るアミノ酸残基に置換することが提案される。その結果、N233K、S58E、N114T、N225C、M262L、T270V、又はT140D、S121E、T67D、及びQ91Iの10個のアミノ酸置換が野生型IsPETaseの変異誘発に選ばれた(表1)。その後、ThermoPETaseについても、RCSB Protein Data Bankに寄託されている結晶構造(PDB:6iJ6)を使用して、ニューラルネットワーク解析を行った。その結果、ニューラルネットワークモデルにより10個のアミノ酸置換が予測された(表1)。これら2つの予測セットで重複する変異と、TNK酵素で提示されている変異を除いて、S58E、N114T、N225C、M262L、T270V、T67D、Q91I、S121E、T67D、Q91I、S61T、I208V、S58A及びR224Qを含む11個のアミノ酸置換が、更にTNK酵素の変異誘発に選ばれた。
【0061】
単一又は複数のニューラルネット変異を、異なる遺伝子バックグラウンド(WT IsPETase、ThermoPETase、DuraPETase)へ導入した。表2は、作成され、かつ特徴付けられている変異体のリストである。
マークは、WT IsPETase、ThermoPETase、又はDuraPETaseバックグラウンドにおける特定の変異の変異体が作成されたことを示す。「+」マークは、それぞれの祖先型酵素と比較してPET分解活性の向上が見られた変異体を強調している。表3は、様々な酵素反応温度でPET分解活性が向上した全ての変異体をまとめたものである。「+」マークは、特定の温度でそれぞれの祖先型酵素と比較してPET分解活性の改善を示した変異体を強調している。これに対して、「-」マークは、特定の温度でそれぞれの祖先型酵素と比較して、PET分解活性の改善又は劣化を示していない変異体を強調している。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
実施例2:イデオネラ・サカイエンシス201-F6 IsPETase遺伝子のクローニング
シュードモナス・プチダKT2440のIsPETaseの分泌を可能にするために、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)MO-19のマルトテトラオース形成アミラーゼ由来のシグナルペプチド-SPpstu(21アミノ酸)のヌクレオチド配列(Fujita,M et al.,1989.“Cloning and Nucleotide Sequence of the Gene(AmyP)for Maltotetraose-Forming Amylase from Pseudomonas Stutzeri MO-19.”Journal of Bacteriology.https://doi.org/10.1128/jb.171.3.1333-1339.1989)を使用して、IsPETaseの元のシグナルペプチド配列(最初の27アミノ酸)を置換し、クローニング用の合成遺伝子を作製した。この合成遺伝子を鋳型として使用して、N末端にSPpstuが提示されたIsPETase遺伝子をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。その後、Gibson Assembly法を使用して、PCR産物を改変pBTK552ベクターにサブクローニングし(Leonard,Sean P.,et al.2018.“Genetic Engineering of Bee Gut Microbiome Bacteria with a Toolkit for Modular Assembly of Broad-Host-Range Plasmids.”ACS Synthetic Biology.https://doi.org/10.1021/acssynbio.7b00399)、ここで抗生物質耐性マーカーをスペクチノマイシンからカナマイシン耐性遺伝子に切り替えた。エレクトロコンピテントセル大腸菌(Escherichia coli)DH10βを、標準的なエレクトロポレーションプロトコルに従って、ギブソンアセンブリ産物で形質転換した。得られた発現プラスミド(pLH2と命名)DNAは、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen)を使用して、クローニング宿主の一晩培養から抽出された。抽出したプラスミドのDNA配列は、サンガーシークエンスで検証した。次に、P.プチダKT2440のエレクトロコンピテントセルを、生成した発現プラスミドpLH2で形質転換した。
【0066】
実施例3:IsPETaseタンパク質の発現及び精製
発現プラスミドpLH2を保有するP.プチダKT2440株のシングルコロニーを、50μg/mlのカナマイシンを含むLuria Bertani broth(LB)培地2mlに接種し、30℃/225rpmで一夜培養した。一晩培養した培養液(150μl使用)を500mlのシェイクフラスコで1000倍希釈してスケールアップし、37℃/225rpmで細胞密度0.6(光学密度[OD600])まで培養した。イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)0.2mMを添加してタンパク質発現を誘導し、細胞を30℃/225rpmで24時間培養した。
【0067】
分泌されたIsPETaseの単離は、誘導された細胞培養物を14,000gで10分間遠心分離し、分泌タンパク質を有する上清を得た。この上清をHisPur(商標)Ni-NTA Resin(Thermo Fisher Scientific)により、製造者の指示に従い精製を行った。タンパク質溶出の脱塩は、Sephadex G-25 PD-10カラム(GE Healthcare)を使用して、製造者の指示に従い実施した。精製及び脱塩の全ての工程は、4℃の低温室で行った。その後、精製したタンパク質をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugal Filters装置(50ml、10KDaカットオフ)で濃縮し、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(pH7.0)で保存した。タンパク質濃度は、Coomassie Plus Bradford Assayキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して決定した。
【0068】
実施例4:イデオネラ・サカイエンシス201-F6 IsPETaseバリアント遺伝子のクローニング
ニューラルネットワークモデリングにより予測された単一点変異を持つIsPETaseバリアントを作成するために、部位特異的変異誘発を、Q5(登録商標)Site-Directed Mutagenesisキット(New England Biolabs)に記載されているPCR法を使用して実施した。変異誘発PCR反応の鋳型としてプラスミドpLH2を使用した。対応するプライマー配列及びアニーリング温度は、NEBaseChanger(商標)ツールを使用して設計及び作成した。Stellar(商標)Competent Cells(Clontech Laboratories)をクローニング宿主として使用し、製造元の説明書に記載されている熱ショック法を使用して、ライゲーションしたプラスミドで形質転換した。プラスミドの抽出、配列決定、及びIsPETaseバリアントをコードするプラスミドでのP.プチダKT2440の形質転換は、プラスミドpLH2について実施例2に記載したのと同じ条件下で実施した。
【0069】
実施例5:IsPETaseバリアントタンパク質の発現及び精製
IsPETaseバリアントの発現及び精製は、IsPETaseタンパク質について実施例3に記載した条件と同じ条件で実施した。
【0070】
実施例6:酪酸レゾルフィンを使用するエステラーゼ活性解析のインビトロ解析
酪酸レゾルフィンエステルに対する酵素活性を比較するために、200mMの精製酵素を、100mMのリン酸緩衝液(pH8.0)中で10mMの酪酸レゾルフィン(Sigma-Aldrich)と共に室温でインキュベートした。より詳細には、精製酵素をまず100mMリン酸緩衝液で希釈し、200nMの最終濃度を得た。その後、希釈した各酵素サンプルの10μlを、96ウェルバックポリスチレンマイクロタイタープレート(Costar3603、Corning)のウェルにピペットで移した。アッセイ試薬の酪酸レゾルフィンを各サンプルウェルに90μl添加することでアッセイ反応を開始し、直ちにInfinite200(登録商標)PROマイクロプレートプレートリーダー(Tecan Group AG)で10分間、レゾルフィンの蛍光(Ex/Em=535/588nm)を連続計測した。
【0071】
実施例7:市販のPETフィルムを使用するPET分解活性のインビトロ解析
IsPETase及びその酵素バリアントによるPETの分解率を評価するために、市販のPETフィルム(Goodfellow、米国577-529-50;仕様:密度1.3~1.4gcm-3、屈折率1.58~1.64、25℃における水に対する透過性100×10-13 cm.cm cm-2-1 Pa-1、熱膨張係数20~80×10-6-1、23℃における熱伝導率0.13~0.15 W m-1 K-1)を基材として、P.プチダから分泌された精製IsPETase酵素及びそのバリアントと共に、分解アッセイに使用した。PETフィルムは直径6mmの円形に調製し、1%SDS、20%エタノール、脱イオン水で3回洗浄した。その後、50mM、pH9.0の緩衝液グリシン-NaOH中の精製IsPETase 200nMを含有するガラス試験管に、フィルムを添加した。その後、反応混合物を30/40/50/55℃で48/96時間インキュベートした。その後、得られたPETase処理フィルムを再び3回洗浄し、次いで、重量測定の前に、30℃で24時間、真空下でサンプルを乾燥させた。酵素処理前後のPETフィルムサンプルの重量を比較し、質量損失を算出した。
【0072】
ある実験では、上記のようなPETフィルム分解アッセイを使用して、IsPETase Net単一バリアントのPET分解活性を、野生型IsPETase、活性が完全に失われた変異PETase、及びThermoPETaseと比較する。アッセイ反応は、40℃で96時間インキュベートした。その結果を図2に示す。この結果は、N233K、S58E、N114T、N225C、M262L、T270V、T140Dが、野生型IsPETaseと比較して変異体のPET分解活性を高くすることができる有益な置換であることを実証している。これらの単一変異体の中で、変異N233Kを含むバリアントは、野生型IsPETaseに対して約8.5倍高いPET分解活性を示し、最大の改善につながった。
【0073】
1つの実験において、上記と同じPETフィルム分解アッセイを使用して、それぞれ、TNK及びDNKのPET分解活性をThermoPETase及びDuraPETaseと比較した。アッセイ反応は、30/40℃で96時間、又は50℃で48時間インキュベートした。その結果を図5に示す。この結果から、ThermoPETase及びDuraPETaseのアミノ酸配列における置換N233Kによっても、PET分解性能が向上することが実証される。具体的には、TNKは30℃及び40℃でThermoPETaseとほぼ同様のPET分解活性を示したが、50℃ではTNKがThermoPETaseの6.4倍高い活性を示した。これは、置換N233Kが、ThermoPETaseの熱耐性を更に改善することを示唆している。これとは対照的に、DNKは50℃でDuraPETaseよりわずかに高いPET分解活性を示すにとどまった。
【0074】
別の実験では、上記のようなPETフィルム分解アッセイを使用して、TNK Net単一バリアントのPET分解活性を、ThermoPETase、DuraPETase及びTNKと比較している。アッセイ反応は、30/40/50/55℃で96時間インキュベートした。その結果を図7に示す。この結果は、S58E、N114T、N225C、M262L、T270V、S58A、S61T、I208V及びR224Qが、野生型IsPETaseと比較して変異体のPET分解活性を高くすることができる有益な置換であることを実証している。これらの単一変異体のうち、変異N233Kを含むバリアントは、野生型IsPETaseに対して約8.5倍高いPET分解活性を示し、最大の改善につながった。
【0075】
実施例8:
酵素の構造解析に基づき、以下の更なる残基が、活性を改善するための置換のために特定された。
【0076】
S58Y-チロシンは、R59とカチオン-π相互作用を形成し、S142及びS143と近くの水分子と水素結合し、高温でタンパク質がアンフォールディングしないように保つことができる。
【0077】
S58M/L/V-メチオニン、ロイシン、イソロイシン、及びバリンは、αヘリックスとβシートの間に形成された疎水性ポケットに折り畳まれた非構造化ループを維持し、それらを高温で一緒に保つのを助けることができる。
【0078】
S58P-プロリンは、2本のβストランド間の非構造化ループの柔軟性を制限し、より高温でそれらを一緒に保つことができる。
【0079】
S61D/E-このセリンは現在R132と水素結合を形成している。このアルギニンはアニオン性残基の近くにはなく、むしろR59に近いため、反発性の静電的相互作用が生じる。この残基のASP又はGLUは、R59とR132の間に陰イオンを付加し、結果として、タンパク質を高温で折り畳んだままにする静電引力が生じる。
【0080】
S61Y/F-R59とR132の両方とカチオンπ相互作用を形成することができ、結果として、タンパク質を高温で折り畳んだままにする静電引力が生じる。
【0081】
N114H/L/R-D118と塩橋を形成することができ、Q126並びにバックボーン残基T63及びG64と水素結合することができる。
【0082】
N114S/T-D118及びQ126並びにバックボーン残基T63及びG64と水素結合することができる。
【0083】
T140:このスレオニンは、部分的に溶媒にさらされた非構造化ループにある。
【0084】
T140Y-チロシンは、溶媒との水素結合を保持し、R59とカチオン-π相互作用を形成する可能性がある。
【0085】
T140L/I/V-この非構造化ループが由来するβシートとαヘリックスとの間の疎水性崩壊を助けることができる。
【0086】
T140S-溶媒との相互作用を助けることができ、非構造化ループのS142及びS143と水素結合してループを緊密に保つことができる。
【0087】
I208M/H/F/Y-近くの残基(Y87、W185、H237)及びテレフタレート基質のベンゼン環のπ電子と相互作用することができる。
【0088】
I208P-これは非構造化ループであり、D206を触媒三残基の適切な位置に保持するために、何らかの順序を必要とする。この非構造化ループ内の何らかの柔軟性を取り除くことで、触媒三残基がより高い温度で機能するようになる。
【0089】
I208A-活性部位の求核性S160に対する潜在的な立体障害を除去することになる。
【0090】
R224D/E-このアルギニンは、近くにアニオン性残基がなく溶媒に露出しており、K177、K227、R260と反発する相互作用を有するように考えられる。したがって、陰イオン性アミノ酸(ASP/GLU)を配置することにより、この領域の静電的性質が改善され、耐熱性が向上する。
【0091】
R224S/T/N/Q-これらのアミノ酸は、反発するカチオンを取り除き、領域の静電相互作用を緩和し、水素結合に寄与する。
【0092】
N225N-ASNは疎水性ポケットにある。しかし、バックボーンカルボニルと水素結合する。
【0093】
N225I/V/M/A/L-ポケットの疎水性を高め、より高い温度でアンフォールディングしないようにする。
【0094】
N225S/T-T195及びV196へのバックボーン水素結合を維持するが、疎水性ポケットにそれほど突き出ないようにする。
【0095】
N233R/Y/H-このアスパラギンは3つのアニオン(E204、E231、D283)に隣接しており、カチオンはこの領域の強い反発静電気を緩和する。
【0096】
N233P-このアスパラギンは、βストランドの最後と、活性部位に触媒性ヒスチジンを保持する非構造化ループの最初にある。プロリンはこのβストランドをキャップし、触媒性Hisへの剛性を助け、より高い温度で触媒的に活性を保持する。
【0097】
M262:このメチオニンは、中央に位置するβシートと緊密な疎水性ポケットにある。
【0098】
M262L/I/A/V-他の疎水性残基は立体障害により強い疎水性相互作用を有し、タンパク質が高温でアンフォールディングしないように保つことができる。
【0099】
M262F/W-F106とのπ-πスタッキングにより、疎水性崩壊を強化することができる。
【0100】
T270Y/R/H-カチオンがE274と塩橋を、F271とカチオン-π相互作用を形成し得、この領域が高温で局所構造を保持することを可能にする。
【0101】
実施例9:
プラスチック廃棄物の生成増加及び蓄積は、生態学的な問題を引き起こしている。現在のプラスチック廃棄物管理は、持続不可能でエネルギー集約的、又は危険な物理化学的及び機械的プロセスに大きく依存するが、一方で、酵素分解はプラスチック廃棄物のリサイクルに対して環境に配慮した持続可能なルートを提供する。ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)は、包装材並びに布地及び使い捨て容器の製造に広く使用されており、世界の固体廃棄物の12%を占めている。しかしながら、これまでにいくつかのPETヒドロラーゼが報告されているものの、堅牢性に欠ける、又は反応温度がかなり高い(約70℃)ことにより、バイオレメディエーションなどの実用化が妨げられている。ここで、構造ベースの深層学習モデルを使用して、イデオネラ・サカイエンシス由来の高度に堅牢で機能的なPETヒドロラーゼを設計する。結果として得られた、最も優れた変異体(αPETase)は、広い適度な温度範囲(特に30~50℃)において、葉枝堆肥クチナーゼ及びその変異体を含む対応するものよりも、優れたPET加水分解活性を示すだけでなく、向上した耐熱性及びpH耐性も有している。51種類の異なるプラスチック製品から採取した未処理のポストコンシューマーPETは、全てαPETaseによって1週間以内に完全に分解され、50℃では24時間という短時間で完全に分解されることを実証する。また、αPETaseによるPET廃棄物の酵素的解重合から回収したモノマーを重合することにより、バージンPETを再合成することができることを示し、PETのクローズドループリサイクルプロセスを実証する。適度な温度における優勢な活性及び微生物との卓越した適合性により、αPETaseは、酵素ベースと細胞ベースの両方のプラットフォームで理想的な触媒となる。この点で、我々は、分泌型αPETaseを発現する操作されたシュードモナス株がPETを分解し、分解産物であるテレフタル酸を増殖のための炭素及びエネルギー源として利用できる、連続的かつ統合的なバイオプロセスを実証し、αPETaseが環境バイオレメディエーション用途に大きな可能性を秘めていることを示唆する。
【0102】
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)は、合成繊維の70%及び非繊維プラスチック包装の10%を構成し(Geyer,R.,Jambeck,J.R.& Law,K.L.Production,use,and fate of all plastics ever made.Sci.Adv.3,(2017))、それに応じて、使い捨ての製造された材料の膨大な廃棄物の流れの典型となっている。しかし、PETの循環型炭素経済は、迅速な酵素的解重合、及びそれに続く化学的再重合又は他の製品へのアップサイクル/価値化によって理論的に達成可能である(Simon,N.et al.A binding global agreement to address the life cycle of plastics.Science(80-.).373,43 LP-47(2021)),(Kawai,F.,Kawabata,T.& Oda,M.Current knowledge on enzymatic PET degradation and its possible application to waste stream management and other fields.Applied Microbiology and Biotechnology 103,(2019))。しかしながら、既存の全てのPET加水分解酵素(PHE)は、適度なpH/温度範囲で機能する、または未処理のポストコンシューマー・プラスチックを直接利用する能力が制限されている。このような特性は、インサイチュのバイオレメディエーション及び簡便で低コストの工業規模プロセスに不可欠である(Taniguchi,I.et al.PETの生分解:Current Status and Application Aspects.ACS Catal.(2019).doi:10.1021/acscatal.8b05171)。これらの制限を克服するために、深層学習及びタンパク質工学のアプローチを採用して、他の全ての既知のPHE、及び派生変異体を上回る様式で、広範囲の生のPET基質(モデル及び実際のポストコンシューマーPETの両方)、温度、及びpHレベルにわたって例外的に高い活性を有するPHEを生成した。
【0103】
PETの酵素的解重合は、2005年に初めて報告され、エステラーゼ、リパーゼ、及びクチナーゼに由来する19種類の異なるPHEを使用して最近実証されている(Taniguchi,I.et al.Biodegradation of PET:Current Status and Application Aspects.ACS Catal.(2019).doi:10.1021/acscatal.8b05171),(Inderthal,H.,Tai,S.L.& Harrison,S.T.L.Non-Hydrolyzable Plastics-An Interdisciplinary Look at Plastic Bio-Oxidation.Trends in Biotechnology(2021).doi:10.1016/j.tibtech.2020.05.004),(Chen,C.C.,Dai,L.,Ma,L.& Guo,R.T.Enzymatic degradation of plant biomass and synthetic polymers.Nature Reviews Chemistry(2020).doi:10.1038/s41570-020-0163-6)。しかしながら、これらの酵素の大部分は、高い反応温度(すなわち、PETのガラス転移温度約70℃以上)においてのみ、評価できる加水分解活性を示す。例えば、人工の葉枝堆肥クチナーゼ(LCC)は、前処理したポストコンシューマーPETを、72℃、pH8.0で10時間以内に90%分解することができる(Tournier,V.et al.An engineered PET depolymerase to break down and recycle plastic bottles.Nature(2020).doi:10.1038/s41586-020-2149-4)。他のほとんどのPHEも同様に、適度な温度(Yoshida,S.et al.A bacterium that degrades and assimilates poly(ethylene terephthalate).Science(80-.).(2016).doi:10.1126/science.aad6359)、及びより中性のpH条件下では、不十分な活性を示し(Chen,C.C.et al.General features to enhance enzymatic activity of poly(ethylene terephthalate)hydrolysis.Nat.Catal.(2021).doi:10.1038/s41929-021-00616-y)、PET廃棄物のインサイチュの微生物によるバイオレメディエーションソリューションに大きな制約を与えている。回収不能なプラスチックの40%が自然環境に存在するため、この制限は重大な懸念事項である(Worm,B.,Lotze,H.K.,Jubinville,I.,Wilcox,C.& Jambeck,J.Plastic as a Persistent Marine Pollutant.Annual Review of Environment and Resources(2017).doi:10.1146/annurev-environ-102016-060700)。加えて、未処理のポストコンシューマー・プラスチック廃棄物を常温付近で変換することが、産業用途では望ましいのに対し、高温や前処理は純運転コストを増加させる。
【0104】
一方、PET資化性細菌イデオネラ・サカイエンシス由来のPHE(Yoshida,S.et al.A bacterium that degrades and assimilates poly(ethylene terephthalate)、Science(80-351,1196 LP-1199(2016).)(PETase)は常温で動作可能であるが、非常に不安定であり、37℃でも24時間後には活性が失われる(Son,H.F.et al.Rational Protein Engineering of Thermo-Stable PETase from Ideonella sakaiensis for Highly Efficient PET Degradation.ACS Catal.9,3519-3526(2019))。よって、実用化には限界がある。それにもかかわらず、この中温性酵素は、これまでにも耐熱性、堅牢性、機能性を向上させる試みがなされてきた。(Son,H.F.et al.Rational Protein Engineering of Thermo-Stable PETase from Ideonella sakaiensis for Highly Efficient PET Degradation.ACS Catal.9、3519-3526(2019)),(Austin,H.P.et al.Characterization and engineering of a plastic-degrading aromatic polyesterase.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.115,E4350-E4357(2018)),(Joo,S.et al.Structural insight into molecular mechanism of poly(ethylene terephthalate)degradation.Nat.Commun.9,(2018)),(Han,X.et al.Structural insight into catalytic mechanism of PET hydrolase.Nat.Commun.(2017).doi:10.1038/s41467-017-02255-z),(Furukawa,M.,Kawakami,N.,Oda,K.& Miyamoto,K.Acceleration of Enzymatic Degradation of Poly(ethylene terephthalate)by Surface Coating with Anionic Surfactants.ChemSusChem(2018).doi:10.1002/cssc.201802096),(Cui,Y.et al.Computational Redesign of a PETase for Plastic Biodegradation under Ambient Condition by the GRAPE Strategy.ACS Catal.(2021).doi:10.1021/acscatal.0c05126),(Chen,K.,Hu,Y.,Dong,X.& Sun,Y.Molecular Insights into the Enhanced Performance of EKylated PETase Toward PET Degradation.ACS Catal.11,7358-7370(2021))。最も注目に値する操作されたPETaseバリアントであるThermoPETase(Son,H.F.et al.Rational Protein Engineering of Thermo-Stable PETase from Ideonella sakaiensis for Highly Efficient PET Degradation.ACS Catal.9,3519-3526 (2019))、及びDuraPETase(Cui,Y.-L.et al.Computational redesign of PETase for plastic biodegradation by GRAPE strategy.(2019).doi:10.1101/787069)は、それぞれ、合理的なタンパク質工学及び計算機による再設計によって作製された。これら2つの変異体は、特定の条件下で耐熱性及び触媒活性が改善されたが(Son,H.F.et al.Rational Protein Engineering of Thermo-Stable PETase from Ideonella sakaiensis for Highly Efficient PET Degradation.ACS Catal.9,3519-3526(2019)),(Cui,Y.et al.Computational Redesign of a PETase for Plastic Biodegradation under Ambient Condition by the GRAPE Strategy.ACS Catal.(2021).doi:10.1021/acscatal.0c05126)、温和な温度では全体のPET加水分解活性は低かった。
【0105】
我々は、より焦点を絞ったタンパク質工学的アプローチでは、全体的な安定性と活性との間の進化的なトレードオフを克服することはできず、中立的で構造に基づいた深層学習ニューラルネットワークが、あらゆる条件下で一般的に酵素の機能を改善する可能性があると仮定した。そこで、三次元自己教師型畳み込みニューラルネットワーク、MutComputeを採用した(Shroff,R.et al.Discovery of novel gain-of-function mutations guided by structure-based deep learning.ACS Synth.Biol(2020).doi:10.1021/acssynbio.0c00345)。このアルゴリズムは、Protein Data Bankにある19,000を超える配列多様なタンパク質構造で訓練され、アミノ酸残基を局所的な化学的微小環境と関連付ける。具体的には、野生型PETase及びThermoPETase(結晶構造PDB:5XJH及び6IJ6)の各残基における20個の正規アミノ酸を全てシミュレーションした構造適合の離散確率分布を得るために、MutComputeを採用した。変異の対象となる重大な残基の選択を支援するために、この分布をタンパク質の結晶構造上に表示して(図9a)、野生型アミノ酸残基が置換候補よりも「適合性が低い」位置を特定した。また、タンパク質工学の実験に焦点を当てるため、これらの予測値を更に適合確率の予測された変化倍率でランク付けし、最も一致しない残基を変異誘発の対象とした。段階的組み合わせ戦略を使用して、このリストの残基を使用して、様々なPETaseスキャフォールドに単一又は複数の予測される変異を組み込むために、合計159個のバリアントを生成した。向上した触媒活性(エステラーゼ活性及びプラスチック分解速度で測定)並びに耐熱性(タンパク質融点(Tm)で測定)を示すバリアントを、更に評価した。このセットのうち、4つの予測される変異(S121E、N233K、R224Q、T140D)(図9b)は、単独及び組み合わせの両方で最高の改善をもたらすため、更なる組み合わせによる組み立て及び追跡調査解析に選択された。
【0106】
3つのPETaseスキャフォールド(野生型PETase、ThermoPETase、DuraPETase)にわたって、これら4つの変異の29の可能な組み合わせ全てを組み立てた。注目すべきは、2つは、複数回の試行後、DuraPETaseバックグラウンドを使用して精製することができなかった点である。残りの27個の変異体の耐熱性解析の結果、24個(約89%)がそれぞれのスキャフォールドに比べてTを上昇させた(図13)。それぞれのPETaseスキャフォールドから耐熱性の最も高い変化が観察されたのは、T58.1℃のバリアント、PETaseN233K/T140D(WT PETaseからΔT=10℃)、T67.4℃のThermoPETaseN233K/R224Q(ThermoPETaseからのΔT=9℃)、及びT83.5℃のDuraPETaseN233K(DuraPETaseからのΔT=5℃)であった。後者の変異体は、これまでに報告されている最も耐熱性が高いPETase変異体を代表している。また、27個のバリアント全てのタンパク質収量が親スキャフォールドと比較して向上しており(最大3.8倍増加)、Mutcomputeがより安定性の高い変異体を同定できることが更に強調された。これらの変異は、スキャフォールドにわたって移し替え可能(portability)であり、組み合わせの相乗効果を発揮することから、このニューラルネットワークベースのアプローチの威力を実証している。
【0107】
次に、文献(Tournier,V.et al.An engineered PET depolymerase to break down and recycle plastic bottles.Nature(2020).doi:10.1038/s41586-020-2149-4)で一般的に使用されている非晶質PETフィルム(gf-PET、サプライヤーGoodfellow)を使用して、30~60℃の温度範囲でこれらのより安定なバリアントのPET加水分解活性を評価しようと試みた。この比較から、機械学習による予測により、全てのスキャフォールドにおいてPET加水分解活性が大幅に向上し、作動温度範囲が拡大したことが直ちに判明した(図9c)。特に、PETaseN233K/R224Q/S121Eは、野生型PETaseと比較して、それぞれ、30℃及び40℃で3.4倍及び29倍のPET加水分解活性の増加を示した(図9c)。ThermoPETaseスキャフォールドに基づく酵素変異体は、作動温度範囲が拡大されており(30~60℃)、対応するものよりも有意に高い活性を示した。このセットの中で、最も優れたThermoPETaseバリアント-ThermoPETaseN233K/R224Q(αPETaseと命名)は、ThermoPETase単独と比較して、それぞれ、40℃及び50℃で2.4倍及び38倍高い活性を示した(図9c)。50℃では、αPETaseは全ての変異体の中で最も高い全体分解を示し、96時間で33.8mMのPETモノマーを放出する温度活性を示した(図9c)。DuraPETaseスキャフォールドは一般に、温和な温度(30~50℃)では比較的低い活性を示したが、最も耐熱性の高いPETase変異体-DuraPETaseN233K(βPETaseと命名)によって示されるように、高温(55~60℃)で改善が実現した(図9c)。
【0108】
これらの変異体の環境条件に対する触媒回復力を評価するため、αPETase及びβPETaseを、gf-PETを使用して、40℃、様々なpH範囲(6.5~8.0)で、野生型PETase、ThermoPETase、DuraPETase、LCC、最も活性な変異体LCCF243I/D238C/S283C/N246M(ICCM)を含む、既に報告された野生型及び変異体PHEと比較した(図10)。この比較分析により、αPETaseが低pHレベル及び常温で機能するユニークな触媒能力を有することが実証された。具体的には、αPETaseは全てのpH条件下で他のPHEより優れていた。特にpH7では、αPETaseは40℃において野生型PETaseの115倍の活性を示した(図10)。このような酵素性能から、αPETaseは、インサイチュのプラスチック・バイオレメディエーションに見られるPETの温和な温度及び適度なpHにおける酵素分解のための優れた候補となる。
【0109】
モデルプラスチック基材の他に、未処理のポストコンシューマーPET(pc-PET)に対するPETase酵素の性能を実証することが重要である。注目すべきは、上記や文献で使用されているgf-PETとは異なり、単一のポストコンシューマーPET基材が存在しないことである。そこで、食品、飲料、薬品、事務用品、日用品、及び化粧品などの包装に使用されているポストコンシューマー・プラスチック製品について、地元の食料品店チェーンで51種類のサンプルを集め、この原料を50℃においてαPETaseで酵素処理した(図14)。結晶化度及び厚みなどの物理的特性を含む不均一性、並びに添加剤及び可塑剤などの異なる組成にもかかわらず、この幅広いPET製品の穴開けにより得たサンプルは、αPETaseによっていずれも1週間以内、最短24時間で完全に分解された(図11a)。プラスチックの厚さは分解時間と相関していたが(厚さと質量とが関連しているため)、この測定基準及び結晶化度のいずれも、単独では、全体の分解率は決定されなかった。
【0110】
上記で試験したポストコンシューマー製品のうち、50℃で24時間以内にαPETaseが完全に分解した豆菓子容器のサンプルを、更に評価した。経時的解析(図11b)により、このpc-PETフィルムの分解は、放出された総PETモノマーからみて、αPETaseを使用してほぼ直線的な減衰率を示すことが判明した。それに伴い、αPETaseによるpc-PETフィルムの分解は、24時間での1.2%から7.7%への結晶化度の増加をもたらした。原子間力顕微鏡(図11c)及び走査型電子顕微鏡は、αPETaseの反応進行により、pc-PET表面にますます深く大きな穴が生成され、反応時間と共に表面粗さが増加することを示した。これとは対照的に、このpc-PETに対する野生型PETase、ThermoPETase、DuraPETase、βPETase、LCC、及びICCMのPET加水分解活性は、同じ条件下でαPETaseのそれよりも大幅に(4.2~295倍)低かった(図11b)。興味深いことに、先に報告した最適反応温度72℃においても(Tournier,V.et al.An engineered PET depolymerase to break down and recycle plastic bottles.Nature(2020).doi:10.1038/s41586-020-2149-4)、LCC及びICCMの活性は、50℃において依然として、αPETaseのそれよりも6.3倍及び2.7倍低かった。更に実験的に解析したところ、LCC及びICCMは60℃において、このpc-PETフィルムに対して最も高い分解率を示すことが判明した。しかしながら、60℃においても、LCC及びICCMの活性は、50℃におけるαPETaseのそれよりも依然として低かった。更に、αPETaseを用いたプロセスは、単に正味の反応体積を増加させるだけで、未処理の大きなプラスチック片(この場合、11mgではなく4g)にも容易に拡張できることを実証している(図11d)。これらの結果から、αPETaseは、より高い反応温度を必要とするICCMとは対照的に、より低い運転コスト及びポストコンシューマーPETの高い分解効率という利点を有する、未処理の生のPET廃棄物のリサイクルを目的とした酵素ベースのプラットフォームの有望な生体触媒として機能し得る。
【0111】
包装材料以外にも、PETは合成繊維産業で多く使用されている。この目的のために、市販のポリエステル製品を部分的に分解するためのαPETaseの応用の可能性を評価した。5つの異なる市販のポリエステル製品を50℃においてαPETaseで処理したところ、他のPHEで処理したサンプルのそれと比較して、テレフタル酸(TPA)及びモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートをより多く放出した(図11e)。このことから、αPETaseは織物に埋め込まれたマイクロプラスチックを迅速かつ効率的に分解するために使用できる可能性があり、市販のポリエステル製品からPETモノマーを回収し、マイクロファイバーの環境への溶出を低減するための潜在的なルートを提供する。
【0112】
このαPETase変異体の常温及びpH条件下での高い活性から、この酵素はPETの様々な酵素-微生物的、酵素-化学的処理に好適であると仮定した。この点で、PETの分解は循環型プラスチック経済の半分に過ぎず、我々はここで、αPETaseが化学的及び生物学的リサイクル/アップサイクリングアプリケーションの両方の用途に適合することを実証する。最初に、αPETaseを利用してポストコンシューマー・プラスチック廃棄物を分解し、引き続き、モノマーを回収することで、クローズドサイクルのPET再利用を実証する。次に、分解液から直接、化学重合を使用してバージンPETを再生する(図12a)。分解から再重合までの完全なサイクルは、わずか数日間で完了した。これらの結果は、非石油資源からバージンPETを生成するクローズドループの酵素/化学リサイクルプロセスの実現可能性を実証する。
【0113】
第2に、αPETaseの常温での分解能力を利用して、モノマーの直接解重合及び微生物価値化/バイオレメディエーションを実現しようと試みた。この目的のために、αPETaseを使用して同時及び統合的な生分解の両方のスキームを評価した。特に、土壌細菌シュードモナス・プチダGo19(Narancic,T.et al.Genome analysis of the metabolically versatile Pseudomonas umsongensis GO16:the genetic basis for PET monomer upcycling into polyhydroxyalkanoates.Microb.Biotechnol.(2021).doi:10.1111/1751-7915.13712)、(Kenny,S.T.et al.Up-cycling of PET(Polyethylene Terephthalate)to the biodegradable plastic PHA(Polyhydroxyalkanoate).Environ.Sci.Technol.(2008).doi:10.1021/es801010e)は、TPAを炭素及びエネルギー源として自然に利用することができる。最初に、PETの解重合及び発酵を同時に行う可能性を探求するため、外因性αPETaseと、その宿主を組み合わせることを試みた。P.プチダGo19を、他の炭素源を含まない未処理のpc-PETフィルムを添加した最小限の培地に接種した。培地に200mMの精製αPETaseを添加し、35℃でインキュベーションしたところ、pc-PETフィルムが分解され、不透明になり、初期重量の11.5±0.3%が失われると同時に、P.プチダGo19の増殖が観察された(図12b)。この実験を通して、αPETaseによるpc-PETフィルムの加水分解で遊離したTPAが、P.プチダGo19の増殖に消費されたことを観察した(図12b)。これとは対照的に、このようなプロセスにおいて、触媒として野生型PETase、ThermoPETase、DuraPETase、βPETase、LCC、又はICCMを使用した場合、P.プチダGo19の細胞密度及びpc-PETフィルムの重量損失は全てαPETaseを使用した場合に比べて有意に低かった(図12b)。これらの結果は、試験した他のPHEと比較すると、αPETaseが、細胞増殖適合条件下で最高のPET加水分解活性を示すことを実証した。
【0114】
最後に、P.プチダGo19にαPETaseの発現を組み込んで、pc-PETをバイオマスに変換することを可能にし、統合的なバイオプロセスを開発しようと試みた。これを行うために、P.プチダGo19を操作して、30mg/Lの高収率でαPETaseを効率的に分泌させた。統合プロセスをTPAでプライミングした後、操作された株にpc-PETフィルムを唯一の炭素源として供給した。35℃における96時間のインキュベーション後、フィルムの不透明度及び18.1±3.1%の重量損失で証明されるように、P.プチダGo19はpc-PETフィルムを部分的に分解した。同様に、遊離したモノマーは、細胞増殖に直接利用された(図12c)。この実証は、酵素生産を統合して、常温及び中性pHにおけるオンサイトのPET解重合及びTPAのバイオマスへの変換を実行する最初の統合バイオプロセスを示している。
【0115】
結論として、本研究では、構造ベースの深層学習モデルを利用して、種々のPETaseスキャフォールドにわたって安定性及び機能の向上を付与する移し替え可能な変異を同定した。最良のバリアントであるαPETaseは、広い温度範囲(30~50℃)で優勢な活性を示し、細胞増殖条件との卓越した適合性を示す。我々は、この能力を、未処理の粗大ポストコンシューマーPET廃棄物を迅速かつ効率的に分解し、織物に埋め込まれたマイクロプラスチックを減少させることで実証する。この変異体の特性は、P.プチダGo19を使用して、同時及び統合バイオプロセスによって実証されたように、低コストの産業リサイクル及びインサイチュプラスチックバイオレメディエーション用途の両方に好適である。総合すると、これらの結果は、構造ベースの深層学習がタンパク質工学にもたらし得る影響、及び中温性酵素を直接のプラスチック解重合のための広範な生体触媒に進化させる有用性を実証している。
【0116】
配列
配列番号1
長さ:290
他の情報:野生型IsPETase
配列:1
【0117】
配列番号2
長さ:290
他の情報:ThermoPETase(IsPETaseS121E/D186H/R280A
配列:2
【0118】
配列番号3
長さ:290
他の情報:DuraPETase(IsPETaseL117F/Q119Y/T140D/W159H,G165A/I168R/A180I/S188Q/S214H/R280A
配列:3
【0119】
配列番号4
長さ:290
他の情報:ThermoPETase(IsPETaseS121E/D186H/R280A/N233K
配列:4
【0120】
配列番号5
長さ:290
他の情報:WT NET
配列:5
【0121】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、例示及び実施例により若干詳細に説明されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の範囲内で特定の変更及び改変が実施され得ることを理解するであろう。加えて、本明細書で与えられている各参考文献は、各参考文献が個々に参照により組み込まれるのと同程度に、その全体が参照により組み込まれる。本出願と、本明細書で与えられている参考文献との間に矛盾が存在する場合、本出願が優先されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図12a
図12b
図12c
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
いくつかの実施形態において、条件は、6~10(例えば、6~8、7~8.5、又は8~10)のpHにおけるインキュベーションを含む。
[本発明1001]
配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ
N233、S58、N114、S121、N225、M262、T270、T140、S61、I208、及びR224からなる群から選択される、配列番号1に対する位置
に対応する少なくとも1つの変異を有する、
操作されたPET(ポリ(エチレンテレフタレート))ヒドロラーゼ。
[本発明1002]
前記少なくとも1つの変異が、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、及びR224Qからなる群から選択される、本発明1001の操作されたPETヒドロラーゼ。
[本発明1003]
前記少なくとも1つの変異が、S58Y、S58M、S58L、S58V、S58P、S61D、S61E、S61Y、S61F、N114H、N114L、N114R、N114S、N114T、T140Y、T140L、T140I、T140V、T140S、I208M、I208H、I208F、I208Y、I208P、I208A、R224D、R224E、R224S、R224T、R224N、R224Q、N225N、N225I、N225V、N225M、N225A、N225L、N225S、N225T、N233R、N233Y、N233H、N233P、M262L、M262I、M262A、M262V、M262F、M262W、T270Y、T270R、及びT270Hからなる群から選択される、本発明1001の操作されたPETヒドロラーゼ。
[本発明1004]
前記アミノ酸配列が、配列番号1、2又は3と少なくとも95%、98%、又は99%同一である、本発明1001又は1002又は1003の操作されたPETヒドロラーゼ。
[本発明1005]
前記アミノ酸配列が、前記少なくとも1つの変異を除いて、配列番号1、2又は3と同一である、本発明1001又は1002又は1003の操作されたPETヒドロラーゼ。
[本発明1006]
前記アミノ酸配列が、配列番号6~34のうちの1つ以上と少なくとも95%、98%、99%又は100%同一である、本発明1001又は1002又は1003の操作されたPETヒドロラーゼ。
[本発明1007]
前記アミノ酸配列が、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、及びR224Qからなる群から選択される、配列番号1に対する位置に対応する少なくとも2つの変異を有する、本発明1001又は1004のいずれかの操作されたPETヒドロラーゼ。
[本発明1008]
前記アミノ酸配列が、N233K、S58E、S58A、N114T、S121E、N225C、M262L、T270V、T140D、S61T、I208V、R224Q、S58Y、S58M、S58L、S58V、S58P、S61D、S61E、S61Y、S61F、N114H、N114L、N114R、N114S、N114T、T140Y、T140L、T140I、T140V、T140S、S121E、I208M、I208H、I208F、I208Y、I208P、I208A、R224D、R224E、R224S、R224T、R224N、R224Q、N225N、N225I、N225V、N225M、N225A、N225L、N225S、N225T、N233R、N233Y、N233H、N233P、M262L、M262I、M262A、M262V、M262F、M262W、T270Y、T270R、及びT270Hからなる群から選択される、配列番号1に対する位置に対応する2つ又は3つの変異を有する、本発明1001又は1004のいずれかの操作されたPETヒドロラーゼ。
[本発明1009]
本発明1001~1008のいずれかの操作されたPETヒドロラーゼをコードする、ポリヌクレオチド。
[本発明1010]
前記操作されたPETヒドロラーゼが、シグナルペプチドを更に含む、本発明1009のポリヌクレオチド。
[本発明1011]
本発明1009~1010のいずれかのポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターであって、それにより、前記プロモーターが、前記操作されたPETヒドロラーゼの発現を制御する、ベクター。
[本発明1012]
本発明1009~1010のいずれかのポリヌクレオチド又は本発明1011のベクターを含む、宿主細胞。
[本発明1013]
微生物細胞である、本発明1012の宿主細胞。
[本発明1014]
細菌細胞である、本発明1012の宿主細胞。
[本発明1015]
前記細菌細胞がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)である、本発明の宿主細胞。
[本発明1016]
真菌細胞である、本発明1012の宿主細胞。
[本発明1017]
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を分解する方法であって、PETを、本発明1001~1008のいずれかの操作されたPETヒドロラーゼと、前記PETを分解する条件下で接触させることを含む、方法。
[本発明1018]
前記PETを、前記操作されたPETヒドロラーゼを発現及び分泌する宿主細胞と接触させることを含む、本発明1017の方法。
[本発明1019]
前記操作されたPETヒドロラーゼが精製されている、本発明1017の方法。
[本発明1020]
前記条件が、25~70℃の温度におけるインキュベーションを含む、本発明1017~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記温度が、25~40℃又は30~40℃又は25~45℃である、本発明1020の方法。
[本発明1022]
前記温度が、40~70℃又は45~65℃又は45~55℃である、本発明1020の方法。
[本発明1023]
前記条件が、6~10(例えば、6~8、7~8.5、又は8~10)のpHにおけるインキュベーションを含む、本発明1017~1022のいずれかの方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
図1】ニューラルネットワーク解析により予測された一連の変異を含むIsPETaseバリアント、無効化IsPETase、及びThermoPETaseのエステラーゼ活性を、野生型IsPETaseと比較して示す棒グラフである。野生型IsPETase及びそのバリアントのエステラーゼ活性は、酪酸レゾルフィンアッセイにより測定される。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「Dead」は変異(S160A)により酵素機能を失った無効化IsPETaseを表し、「WT」は野生型IsPetaseを表している。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図2】ニューラルネットワーク解析により予測された一連の変異を含むIsPETaseバリアント、無効化IsPETase、及びThermoPETaseのPET分解活性を、野生型IsPETaseと比較して示す棒グラフである。基質としてPETフィルムを使用し、酵素濃度200nMで野生型IsPETase及びそのバリアントの加水分解活性を測定した。アッセイ反応は、40℃で96時間インキュベートした。酵素処理前後のPETフィルムサンプルを比較し、PETase処理したフィルムの質量損失を測定した。PETase処理したフィルムの写真は、IsPETaseバリアントの異なる分解活性により、異なる表面侵食の程度を示す。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「Dead」は変異(S160A)により酵素機能を失った無効化IsPETaseを表し、「WT」は野生型IsPETaseを表している。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図3】野生型IsPETaseと比較して高いPET分解活性を示す、最初に予測された7つのニューラルネットワーク変異の残基ロケールを示している。
図4】野生型IsPETaseと比較したIsPETaseバリアントのエステラーゼ活性を示す棒グラフである。野生型IsPETase及びそのバリアントのエステラーゼ活性は、酪酸レゾルフィンアッセイにより測定される。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「TNK」は変異N233Kを含むThermoPETaseバリアントを表し、「Dura」は変異L117F、Q119Y、T140D、W159H、G165A、I168R、A180I、S188Q、S214H、R280Aを含むDuraPETaseを表し、「DNK」は変異N233Kを含むDuraPETaseバリアントを表し、「WT」は野生型IsPETaseを表す。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図5】異なる温度におけるIsPETaseバリアントのPET分解活性を示す棒グラフである。基質としてPETフィルムを使用し、酵素濃度200nMでIsPETaseバリアントの加水分解活性を測定した。アッセイ反応は、30℃及び40℃で96時間、50℃で48時間インキュベートした。酵素処理前後のPETフィルムサンプルを比較し、PETase処理したフィルムの質量損失を測定した。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「TNK」は変異N233Kを含むThermoPETaseバリアントを表し、「Dura」は変異L117F、Q119Y、T140D、W159H、G165A、I168R、A180I、S188Q、S214H、R280Aを含むDuraPETaseを表し、「DNK」は変異N233Kを含むDuraPETaseバリアントを表す。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図6】ニューラルネットワーク解析により予測された一連の変異を含むTNK(変異S121E、D186H、R280A、及びN233Kを含むIsPETaseバリアント)バリアント、ThermoPETase、及びDuraPETaseのエステラーゼ活性を、TNKと比較して示す棒グラフである。ThermoPETase、DuraPETase、TNK及びそのバリアントのエステラーゼ活性は、酪酸レゾルフィンアッセイによって測定される。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「TNK」は変異N233Kを含むThermoPETaseバリアントを表し、「TNK+X」は、ニューラルネットワーク解析により予測された変異のうちの1つを含むTNKバリアントを表し、「Dura」は変異L117F、Q119Y、T140D、W159H、G165A、I168R、A180I、S188Q、S214H、R280Aを含むDuraPETaseを表し、「DNK」は変異N233Kを含むDuraPETaseバリアントを表す。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図7】異なる温度における、ニューラルネットワーク解析により予測された一連の変異を含むTNK(変異S121E、D186H、R280A、及びN233Kを含むIsPETaseバリアント)バリアント、ThermoPETase、及びDuraPETaseのPET分解活性を、TNKと比較して示す棒グラフである。基質としてPETフィルムを使用し、酵素濃度200nMでIsPETaseバリアントの加水分解活性を測定した。アッセイ反応は、30℃、40℃、50℃、又は55℃で96時間インキュベートした。酵素処理前後のPETフィルムサンプルを比較し、PETase処理したフィルムの質量損失を測定した。「Thermo」は変異S121E、D186H、及びR280Aを含むThermoPETaseを表し、「TNK」は変異N233Kを含むThermoPETaseバリアントを表し、「TNK+X」は、ニューラルネットワーク解析により予測された変異S58E、N114T、N225C、M262L、T270V、T67D、Q91I、S121E、T67D、Q91I、S61T、I208V、S58A、及びR224Qのうちの1つを含むTNK Netcを表し、「Dura」は変異L117F、Q119Y、T140D、W159H、G165A、I168R、A180I、S188Q、S214H、R280Aを含むDuraPETaseを表し、「DNK」は変異N233Kを含むDuraPETaseバリアントを表す。全てのサンプルは精製タンパク質サンプルであり、タンパク質濃度に対して正規化されている。
図8】野生型IsPETase(配列番号1)と比較しての、WT IsPETaseの結晶構造に基づいてニューラルネットワークモデリングにより予測された10個の選択された置換を含むWT NET(配列番号5)、及びThermoPETaseの結晶構造に基づいてニューラルネットワークモデリングにより予測された6つの選択された置換を含むThermo NET(配列番号35)のアミノ酸配列のアライメントである。変異配列の改変は、強調表示されている。図は、配列番号1、5、および35をそれぞれ出現順に開示している。
図9図9a~c:機械学習誘導予測より、様々なPETaseスキャフォールドについて改善された酵素性能が付与された。9a.Mutcomputeの出力により表現された、野生型PETaseタンパク質の構造。PETaseの各アミノ酸残基をMutcomputeで評価した結果、隣接する化学的微小環境と20個の各アミノ酸の化学的適合性を反映する確率分布が得られた。野生型確率が低い(好ましくない)残基は赤、野生型確率が高い(好ましい)残基は青で表示されている。本研究で利用した両方の結晶構造に対するMutComputeのインタラクティブな可視化は、https://www.mutcompute.com/petase/5xjh、及びhttps://www.mutcompute.com/petase/6ij6において公開されている。9b.Mutcomputeで予測された4つの主な変異の微小環境。9c.Mutcomputeによって予測された変異のダウンセレクションの模式図、及び変異誘発により生成された変異の酵素的性能と、ダウンセレクションされた変異の比較。野生型PETase及びThermoPETaseの結晶構造を用いてMutComputeを実行した結果、2つの予測ライブラリーが生成された。次に、予測されたアミノ酸及び野生型アミノ酸の間の確率の変化倍率により、予測値をランク付けした。段階的組み合わせ戦略を使用して、様々なPETaseのスキャフォールドに単一又は複数の予測された変異を組み込むことにより、159個のバリアントが生成された。バリアントの実験的特性評価により、4つの主要な変異をダウンセレクションし、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)という3つのPETaseスキャフォールドにわたって組み合わせ的にアセンブルし、全ての可能な組み合わせを作成した。ヒートマップは、得られたバリアントのPET加水分解活性、及びバリアントのそれぞれのスキャフォールドに対する変化倍率を示している。PET加水分解活性は、96時間の反応時間後、PETaseバリアントがgf-PETフィルムを加水分解して放出したPETモノマー(TPAとMHETとの合計)の量を測定することで評価した。この図に示す全ての酵素について、緩衝液KHPO-NaOH(pH8)が使用された。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図10】αPETaseのPET加水分解活性は、温和な温度及び適度なpHで各種PHEより優れていた。反応温度40℃において、αPETase、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)、βPETase、LCC、及びICCMのpH範囲(6.5~8.0)におけるPET加水分解活性の比較。PET加水分解活性は、96時間の反応時間後、試験されたPETがgf-PETフィルムを加水分解して放出したPETモノマー(TPAとMHETとの合計)の量を測定することで評価した。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図11a図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。11a.51種類のポストコンシューマー・プラスチック製品から穴開けにより得たpc-PETフィルムの完全分解。
図11b図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。11b.αPETase、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)、βPETase、LCC、及びICCMの反応温度50℃におけるPET加水分解活性の時間経過。PET加水分解活性は、試験したPHEによってpc-PET(豆菓子プラスチック容器)フィルムを加水分解して放出されたPETモノマー量(TPAとMHETとの合計)を様々な時点で測定することによって評価した。この図に示す全ての酵素について、緩衝液KHPO-NaOH(pH8)が使用された。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図11c図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。11c.αPETaseによる様々な曝露時間後のpc-PETフィルムの原子間力顕微鏡画像。
図11d図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。11d.αPETaseを用いた大型未処理PET容器の50℃での完全分解。
図11e図11a~d:ポストコンシューマーPETプラスチック及びポリエステル製品の酵素的解重合におけるαPETaseの優れた性能。e.αPETase、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)、βPETase、LCC、及びICCMによる市販ポリエステル製品の50℃での分解。
図12a図12a~c:PETの酵素的-化学的リサイクル及びインサイチュのバイオレメディエーションにおけるαPETaseの応用。12a.αPETaseによるポストコンシューマー・プラスチック廃棄物の解重合及び化学重合を組み込んだPETのクローズドループリサイクルプロセスの模式図。再生バージンPETの結晶化度は、示差走査熱量測定により58%と測定された。
図12b図12a~c:PETの酵素的-化学的リサイクル及びインサイチュのバイオレメディエーションにおけるαPETaseの応用。12b.P.プチダ(P.putida)Go19と外因性PHEとを組み合わせた同時プロセス:αPETase、野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)、βPETase、LCC及びICCM。PHE(αPETase/WT/Thermo/Dura/βPETase/LCC/ICCM)及びGO19はPHEとP.プチダGo19との同時処理を表し、PHEはP.プチダGo19なしで酵素を提示する対照条件を表す。遊離したPETモノマー、pc-PETフィルムの質量損失、及びP.プチダGo19の細胞密度は、96時間のインキュベーション後に測定した。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図12c図12a~c:PETの酵素的-化学的リサイクル及びインサイチュのバイオレメディエーションにおけるαPETaseの応用。12c.αPETase/WT/Thermo/Dura/βPETaseを分泌可能な操作されたP.プチダGo19株の統合プロセス。遊離しれたPETモノマー、pc-PETフィルムの質量損失、及びP.プチダGo19の細胞密度は、120時間のインキュベーション後に測定した。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図13】Mutcomputeによって予測された変異を組み込んだPETaseバリアント、及びそれぞれのスキャフォールドである野生型PETase(WT)、ThermoPETase(Thermo)、DuraPETase(Dura)の耐熱性。各酵素の融解温度は示差走査熱量測定で決定した。全ての測定は三つ組で実施した(n=3)。
図14】αPETaseによる各種pc-PETフィルムの質量、結晶化度%、及び完全分解にかかる時間。円形のpc-PETフィルム(直径6mm)は、地元の食料品店チェーン(Walmart、Costco、及びHEB)で入手可能な食品、飲料、薬品、事務用品、家庭用品及び化粧品の包装に使用される51種類の異なるポストコンシューマー・プラスチック製品から穴開けにより得た。pc-PETフィルムは、フィルムが完全に分解されるまで、50℃でαPETaseによる連続処理によって加水分解された。酵素溶液(100mMの緩衝液KHPO-NaOH(pH8)(pH8)中の200nMのαPETase)は、24時間ごとに補充した。無傷のpc-PETフィルムの結晶化度%は、示差走査熱量測定によって決定した。フィルムの初期質量は、デジタルスケールにより重量測定で決定した。DSC及び重量測定の両方は、三つ組で実施した。平均値±s.d.(n=3)が示されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、例えば、検出又は精製の目的のために、1つ以上のアフィニティタグを含む。多くの好適切タグが、例えば、Kimpleらにより記載されたもの(Curr Protoc Protein Sci.2013;73(1):9.9.1-9.9.23)を含む、ポリペプチド構築物に含まれ得る。アフィニティタグの例としては、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、キチン結合ドメイン(CBD)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)部位、FLAGエピトープ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)タグ、ヘマグルチニン(HA)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)部位;Mycエピトープ、ポリヒスチジンタグ(例えば、HHHHHH(配列番号36))、及びストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、米国特許第5,506,121号に記載されているものなど)が挙げられるが、これらに限定されない。アフィニティタグは、ポリペプチド構築物中の1つ以上の位置に含まれ得る。ストレプトアビジン結合ペプチドのようなアフィニティタグは、例えば、ポリペプチド構築物のN末端又はポリペプチド構築物のC末端に存在し得る。いくつかの実施形態では、リンカーペプチドは、アフィニティタグ、例えば、追加のアミノ酸残基を有するか又は有さない配列DYKDDDDK(配列番号37)を含むFLAGエピトープを含んでいる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023544194000001.app