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特表2023-544203寒剤フリー(寒剤無し)の超電導磁石システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】寒剤フリー(寒剤無し)の超電導磁石システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20231013BHJP
   H10N 60/81 20230101ALI20231013BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20231013BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20231013BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01F6/06 500
H10N60/81 ZAA
F25B9/00 Z
F28D15/02 L
A61B5/055 331
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521110
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2021076151
(87)【国際公開番号】W WO2022073768
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20200942.9
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オーフェルヴェーク ヨハネス アドリアヌス
【テーマコード(参考)】
4C096
4M114
【Fターム(参考)】
4C096AB44
4C096CA53
4C096CA54
4C096CA70
4M114AA19
4M114BB04
4M114CC03
4M114DA02
4M114DA09
4M114DB02
4M114DB14
(57)【要約】
本発明は、磁場を発生させる超電導コイル1と、外側と境界付ける真空チャンバ壁3を有する真空チャンバ2と、超電導コイル1を冷却するクライオクーラ4であって、第1の温度に冷却される第1の段21及び第2の温度に冷却される第2の段22を有する冷凍器を含み、第2の温度は、第1の温度よりも低い、クライオクーラ4とを含み、超電導コイル1は、真空チャンバ2内に、真空チャンバ壁3から離れた位置に配置されており、超電導コイル1には、2つの超電導コイルコネクタ18が具備されており、超電導コイルコネクタは、2つの電流リード5にガルバニック接続されており、電流リードは、超電導コイル1に真空チャンバ2の外側から電流を提供するために、真空チャンバ壁3を通されており、各電流リード5は、第1のセクション6及び第2のセクション7を含み、第1のセクション6の断面積は第2のセクション7の断面積よりも小さく、電流リード5は、超電導コイルコネクタ18にガルバニック的に取り付けられ、対応する第2のセクション7で冷凍器の第1の段21に熱的に接続されており、電流リード5の第1のセクション6の各々は、電流リード5の第1のセクション6を冷却する冷却アレンジメント8を含む、寒剤フリーの超電導磁石システムに関する。このようにして、電流リード5のゼロ電流時の過剰熱負荷提供を、熱暴走のリスクなしに除去する、寒剤フリーの超電導磁石システムが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生させる超電導コイルと、
外側と境界付ける真空チャンバ壁を有する真空チャンバと、
前記超電導コイルを冷却するクライオクーラであって、第1の温度に冷却される第1の段及び第2の温度に冷却される第2の段を有する冷凍器を含み、前記第2の温度は、前記第1の温度よりも低い、クライオクーラと、
を含み、
前記超電導コイルは、前記真空チャンバ内に、前記真空チャンバ壁から離れた位置に配置されており、
前記超電導コイルには、2つの超電導コイルコネクタが具備されており、前記2つの超電導コイルコネクタは、2つの電流リードにガルバニック接続されており、前記2つの電流リードは、前記超電導コイルに前記真空チャンバの外側から電流を提供するために、真空チャンバ壁を通されており、
各電流リードは、第1のセクション及び第2のセクションを含み、前記第1のセクションの断面積は前記第2のセクションの断面積よりも小さく、
前記電流リードは、前記超電導コイルコネクタにガルバニック的に取り付けられ、対応する第2のセクションで前記冷凍器の前記第1の段に熱的に接続されており、
前記電流リードの前記第1のセクションの各々は、周囲温度にある前記外側への熱伝達によって前記電流リードの前記第1のセクションを冷却する冷却アレンジメントを含む、寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項2】
前記電流リードは、前記第1のセクションで前記真空チャンバ壁を通されている、請求項1に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項3】
前記電流リードの前記第1のセクションの断面積は、前記第2のセクションの断面積の25%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは15%未満である、請求項1又は2に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項4】
前記電流リードの前記第2のセクションの断面積は、冷却なしで前記超電導コイルに供給される所定の最大電流に熱的に耐えるような寸法にされる一方で、前記電流リードの前記第1のセクションの断面積は、冷却なしで前記超電導コイルに供給される前記所定の最大電流に熱的に耐えるのには適していないような寸法にされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項5】
所定の最大電流は、450Aである、請求項4に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項6】
前記電流リードは、前記第1のセクション及び前記第2のセクションにおいて、同じ材料、好ましくは銅で構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項7】
前記電流リードの前記第1のセクションの長さは、前記電流リードの前記第2のセクションの長さの少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは100%を超える、請求項1から6のいずれか一項に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項8】
前記電流リードの前記第1のセクションを冷却する前記冷却アレンジメントの各々は、冷却剤を伝導する冷却チャネルを、対応する電流リードの前記第1のセクション内に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項9】
前記2つの電流リード両方は、共通の冷却チャネルを含む、請求項8に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項10】
前記共通の冷却チャネルは、前記電流リードの前記第1のセクションのそれぞれの冷却チャネルと、それぞれの前記電流リードの前記第1のセクションにおける前記冷却チャネルを相互接続するガルバニック絶縁カプラとで構成されている、請求項9に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項11】
前記電流リードの前記第1のセクションを冷却する前記冷却アレンジメントの各々は、ヒートパイプを含み、前記ヒートパイプとともに前記電流リードは前記真空チャンバ壁を通され、前記ヒートパイプは、前記真空チャンバの内部へ延在し且つ前記真空チャンバの前記外側のヒートシンクに接続されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項12】
前記ヒートパイプは、前記電流リードの前記第1のセクションによって形成されている、請求項11に記載の寒剤フリーの超電導磁石システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の寒剤フリーの超電導磁石システムを備える、MRIシステム。
【請求項14】
MRIシステムのために請求項1から12のいずれか一項に記載の寒剤フリーの超電導磁石システムを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒剤フリーの超電導磁石の分野、特に、磁場を発生させる超電導コイルと、外側と境界付ける真空チャンバ壁を有する真空チャンバと、超電導コイルを冷却するクライオクーラとを備え、超電導コイルが、真空チャンバ内に、真空チャンバの壁から離れた位置に配置されており、超電導コイルには、当該コイルに真空チャンバの外側から電流を提供するための、真空チャンバ壁を通されている(真空チャンバ壁を貫通する)2本の電流リードが具備されている、寒剤フリーの超電導磁石システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、寒剤フリーの超電導磁石システムは4.2Kまで機械的に冷却でき、液体寒剤が不要であるため、液体寒剤の取り扱いに関する問題が回避される。しかし、より高温の超電導体が超電導磁石に使用される場合、システムの動作温度は10~30Kの値も有する可能性がある。そのため、液体寒剤を移す必要がないことから取り扱いが容易であり、高価な液体ヘリウムの購入を回避できるため、寒剤フリーの超電導磁石は有利である。更に、寒剤フリーのシステム動作の取り扱いは容易であり、メンテナンスがあまり必要でなくなる。
【0003】
コイルがクライオスタットの絶縁真空内に置かれる寒剤フリーの磁石(ヘリウムレス磁石とも呼ばれる)は、液体ヘリウムリザーバからガスを流出させることによって冷却することができない電流リードが恒久的に設置されている必要がある。したがって、これらのリードはシステムの冷凍器に比較的大きな熱負荷をもたらす。磁気共鳴イメージング(MRI)磁石など、永続モードでほとんどの時間の間、均一磁場で動作する磁石の場合、電流リードのゼロ電流時の熱負荷が最も問題になる。
【0004】
米国特許第5302928号は、2段構成タイプの超電導磁石システムの電流リードについて説明している。このようなタイプの構成は、一般的に、周囲温度からサーマルシールドの温度まで及びサーマルシールドの温度から磁石の温度まで、オーミック損失が低減されるように動作する。
【0005】
先行技術において、伝導冷却される超電導磁石への熱負荷を低減することに取り組んで来ているが、寒剤フリーの超電導磁石システムにおける電流リードのゼロ電流時の熱負荷の問題に対処する解決策は提供されていない。
【0006】
米国特許出願公開第2019/1908932号には、可変断面積を有する電流リードが恒久的に設置された磁石システムが開示されている。電流リードは、アクティブ冷却デバイスの上部冷却ステージに結合された放射線シールドを介して追加的に冷却され得る。更に、電流リードは、例えば金属質量の形で金リザーバに結合されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電流リードのゼロ電流時の過剰熱負荷を、熱暴走のリスクなしに除去する、寒剤フリーの超電導磁石システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の主題によって対処される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に説明される。
【0009】
したがって、本発明によれば、寒剤フリーの超電導磁石システムが提供される。このシステムは、
磁場を発生させる超電導コイルと、
外側と境界付ける真空チャンバ壁を有する真空チャンバと、
超電導コイルを冷却するクライオクーラであって、第1の温度に冷却される第1の段及び第2の温度に冷却される第2の段を有する冷凍器を含み、第2の温度は、第1の温度よりも低い、クライオクーラとを含み、
超電導コイルは、真空チャンバ内に、真空チャンバ壁から離れた位置に配置されており、
超電導コイルには、2つの超電導コイルコネクタが具備されており、2つの超電導コイルコネクタは、2つの電流リードにガルバニック接続されており、2つの電流リードは、超電導コイルに真空チャンバの外側から電流を提供するために、真空チャンバ壁を通されており、
各電流リードは、第1のセクション及び第2のセクションを含み、第1のセクションの断面積は第2のセクションの断面積よりも小さく、
電流リードは、超電導コイルコネクタにガルバニック的に取り付けられ、対応する第2のセクションで冷凍器の第1の段に熱的に接続されており、
電流リードの第1のセクションの各々は、周囲温度(例えば室温)にある外側への熱伝達によって電流リードの第1のセクションを冷却する冷却アレンジメントを含む。
【0010】
したがって、各電流リードが、断面積が異なる少なくとも2つの異なるセクションを含み、電流リードが、より大きい断面積を有するセクションで超電導コイルコネクタに取り付けられることが本発明の重要な態様である。このようにして、より小さい断面積を有するセクションによって、電流リードを通る熱伝達が減少する。更に、電流リードの第1のセクションが、冷却アレンジメントによって冷却されることが重要である。このようにして、リード内の電流が小さいか又はゼロである状況での冷凍器の第1の段への熱漏れを減少することができる。電流リードの第2のセクションの端は、冷凍器の第1の段に熱的に固定されており、これは、それらの超電導状態において、高温超電導接続が常に維持されるという利点を提供する。
【0011】
一般に、寒剤フリーの磁石用の電流リードの適した形状は、全長にわたって一定の断面積を有する、銅といった導電性材料の棒のストリップである。本発明によれば、コイルから遠くにある電流リードのセクションにおける断面積は、リードの特定の長さにわたって減少される。冷却がない場合、コイルに電流を流すとき、リードのこのより薄いセクションは、その材料の融点を超える温度まで急速に熱くなる。このような熱暴走を防ぐために、リードの薄いセクションには冷却アレンジメントが具備されている。
【0012】
一般に、少なくとも、電流リードの断面積をその長さに沿ってどこかで減少することは既に熱負荷を低減するのに適している。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、電流リードは、第1のセクションで真空チャンバの壁を通されている。このようにして、電流リードに沿った熱伝達が更に減少される。更に、本発明の好ましい実施形態によれば、電流リードの第1のセクションの断面積は、第2のセクションの断面積の25%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは15%未満である。更に、本発明の好ましい実施形態によれば、電流リードの第2のセクションの断面積は、冷却なしで超電導コイルに供給される所定の最大電流に熱的に耐えるような寸法にされる一方で、電流リードの第1のセクションの断面積は、冷却なしで超電導コイルに供給される所定の最大電流に熱的に耐えるのには適していないような寸法にされている。好ましくは、所定の最大電流は400Aであり、より好ましくは450Aである。
【0013】
一般に、電流リードは、その長さに沿って異なる材料で作られている場合がある。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、電流リードは、第1のセクション及び第2のセクションにおいて、同じ材料で構成されている。好ましくは、電流は、少なくとも、完全に銅で作られている。
【0014】
電流リードが、真空チャンバ壁を通るフィードスルーで恒久的に設置されている場合、これらは、磁石の中へ追加の望ましくない熱漏れを構成する。磁石は、冷凍器への追加の熱負荷を回避するために小さく保たれている。各電流リードの細い第1のセクションは、ゼロ電流の状況では、即ち、電流が超電導コイルを超電導状態でゼロ電気抵抗で流れる永続モードで磁石が動作する場合は、電流リード内の熱抵抗を増加させる。磁石を上下させる際に、電流は、電流リードを介して超電導コイルに供給される又は超電導コイルから引き上げられる。すると、電気抵抗が比較的高い細い第1のセクションでは熱放散が(IRで)増加し、細い第1のセクションにおける温度が増加する。細い第1のセクションにおける熱放散が増加することによって電流リードを損傷してしまう、電流リードのいわゆる熱暴走を回避するために、電流リードの室温端において、細い第1の部分から熱が除去される。熱除去は、好ましくは、例えば電流リードの外側に搭載された冷却フィンを使用することによって、十分な冷却面を提供することによって、周囲空気の自由対流によって行われる。上下時に電流が流れる細い部分からの熱輸送は、流体冷却によって、又は、好ましくは、電流リードの細い部分用のヒートパイプを使用することによって高めることができる。室温の外側への効率的な熱伝達によって、細い部分の冷却期間の上限なく、細い部分からの熱が連続的に除去される。なぜなら、放散が増加することによって発生した熱量に比べて外側の熱容量は(実質的に)無限だからである。これは、例えばバッファ又は冷却(He)ガスから(有限)量の流体又は固体の冷却物質を提供することによる従来のエンタルピー駆動の冷却とは本質的に異なる。(例えば流体冷却による又はヒートパイプによる)熱除去により、細い第1の部分から室温の外側への熱輸送は、(断面積の大きい)第2の部分に沿った熱輸送よりもはるかに多い。ゼロ電流状態では、電流リードの細い上部セクションの熱抵抗は、より厚い下部セクションの熱抵抗よりもはるかに高い。これは、フィードスルーを通る望ましくない熱漏れを強力に減少させる。ヒートパイプが使用される場合、このことはパッシブに達成される。なぜなら、ヒートパイプの作動流体は、その下端で凍結し、ヒートパイプの残りの部分の内側は、基本的に真空だからである。ヒートパイプの上部セクションが強制流体フローによって冷却される場合、このフローを停止すると冷却剤が凍結し、冷却剤は、冷凍状態では熱伝導率が低い。
【0015】
本発明は、電流リードの様々なセクションにおいて電流リードの様々な設計を可能にする。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、電流リードの第1のセクションの長さは、電流リードの第2のセクションの長さの少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは100%を超える。このようにして、電流リードを通る望ましくない熱伝達を更に減少できる。
【0016】
本発明では、様々なタイプの冷却アレンジメントを使用できる。本発明の好ましい実施形態によれば、電流リードの第1のセクションを冷却する冷却アレンジメントの各々は、冷却剤を伝導する冷却チャネルを、対応する電流リードの第1のセクション内に含む。この点では、本発明の好ましい実施形態によれば、両方の電流リードは、共通の冷却チャネルを含む。これにより、冷却アレンジメントの簡単且つ効率的な設計が可能になる。本発明の好ましい実施形態によれば、この共通の冷却チャネルは、電流リードの第1のセクションの対応する冷却チャネルと、それぞれの電流リードの第1のセクションにおける冷却チャネルを相互接続するガルバニック絶縁カプラとで構成されている。このようにして、2つのリードは、依然として互いにガルバニック絶縁されているが、熱的に接続されている、即ち、冷却のために熱的に接続されている。
【0017】
様々なやり方で過剰な熱を放散できる。本発明の好ましい実施形態によれば、電流リードの第1のセクションを冷却する冷却アレンジメントの各々は、ヒートパイプを含み、ヒートパイプとともに電流リードは真空チャンバ壁を通され、ヒートパイプは、真空チャンバの内部へ延在し且つ真空チャンバの外側のヒートシンクに接続されている。この点では、本発明の好ましい実施形態によれば、ヒートパイプは、電流リードの第1のセクションによって形成されている。
【0018】
本発明はまた、上記の寒剤フリーの超電導磁石システムを備えるMRIシステムと、上記したように寒剤フリーの超電導磁石システムを使用する方法とに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。ただし、このような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するためには、特許請求の範囲及び本明細書を参照するものとする。
【0020】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態によるMRIシステムを概略的に示す。
図2図2は、より詳細に電流リード及び冷却アレンジメントの第1の実施形態を概略的に示す。
図3図3は、より詳細に電流リード及び冷却アレンジメントの第2の実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図2と組み合わせて図1からわかるように、MRIシステムは、磁場を発生させる超電導コイル1と、外側と境界付ける真空チャンバ壁3を有する真空チャンバ2と、超電導コイル1を冷却する冷凍器を有するクライオクーラ4とを有する寒剤フリーの超電導磁石システムを含む。更に、超電導磁石システムは、真空チャンバ2の内側に配置された、寒剤フリーの超電導磁石システムのほとんどの部分を取り囲む放射線遮蔽体23を含む。超電導磁石システムは、永続モードで動作し、超電導コイル1へのリードは、超電導コイル1による磁場を変更する必要がある場合を除き、電流を流さない。
【0022】
クライオクーラ4の冷凍器は、熱が吸収される少なくとも2つの熱界面を有している。即ち、通常40Kの温度を有し、主に熱リンク24を介して超電導磁石システムの放射線遮蔽体23を冷却するために使用される第1の段21と、通常3~5Kの温度に達し、熱リンク26を介して超電導コイル1を主に冷却する第2の段22とを有する。超電導コイル1は、真空チャンバ2の内側に配置され、また、放射線遮蔽体23の内側に、放射線遮蔽体23に触れないように配置されている。超電導コイル1には、超電導コイル1に真空チャンバ2の外側から電流を提供するための、真空チャンバ壁3に通されている2本の電流リード5にガルバニック接続されている2本の超電導コイルコネクタ18が具備されている。
【0023】
超電導コイルコネクタ18は、高温超電導(HTS)材料から作られ、超電導コイルコネクタ18の温度がHTS材料の臨界温度よりも大幅に低いように、熱リンク25を介して冷凍器の第1の段21に熱的に固定されている。更に、図2及び図3に示すように、電流リード5の各々は、それぞれの電流線と接続するための電気的コネクタ15を含む。各電流リード5は、第1のセクション6及び第2のセクション7を含む。第2のセクション7は、冷凍器の第1の段21に熱的に固定されている。第1のセクション6、第2のセクション7、及び超電導コイルコネクタ18は、電流が流れているかどうかに関係なく、常にガルバニック的に且つ熱的に接続されている。電流リードの第1のセクションの断面積は、冷却なしで超電導コイルに供給される所定の最大電流に熱的に耐えるのには適していないような寸法にされている。代わりに、当該断面積は、最大磁石電流によって放散される熱がヒートパイプや強制フロー冷却によってこれらの部品から安全に除去できるように選択される。リードの下部のより厚いセクションは、動作状態では、上端が室温か又は室温よりも少し上であると仮定して、最大動作電流で下端に最小熱入力を提供するために、確立された方法を使用して寸法決めされる。
【0024】
図2から詳細にわかるように、第1のセクション6の断面積は、第2のセクション7の断面積よりも小さく、電流リード5は、それぞれの第2のセクション7で超電導コイルコネクタ18に取り付けられている。このようにして、電流リード5におけるゼロ電流での冷凍器の第1の段21への熱伝達は、断面積がより小さい第1のセクション6に起因して低減される。最大磁石電流が電流リード5を流れるときに、断面積のより小さい第1のセクション6における電流リード5が損傷することを防ぐために、電流リード5の第1のセクション6の各々は、電流リード5の第1のセクション6を冷却する冷却アレンジメント8を含む。前に説明したように、この冷却アレンジメントは、電流リード5を流れる電流があるときにのみアクティブになり、電流リード5が電流を流していないときは追加の熱漏れを発生させないように設計されている。図2及び図3に示すように、電流リード5は、第1のセクション6で真空チャンバの壁に通されている。これらの電流リード5は、第1のセクション及び第2のセクションにおいて、同じ材料、即ち、銅で作られている。
【0025】
図2に示す本発明の好ましい実施形態によれば、電流リード5の第1のセクション6を冷却する冷却アレンジメント8の各々は、冷却剤を伝導する冷却チャネル10を、対応する電流リード5の第1のセクション6内に含む。これらの冷却チャネル10は一緒に、両方の電流リード5のための共通の冷却チャネル9を形成する。この点で、共通の冷却チャネル9は、電流リード5の第1のセクション6の対応する冷却チャネル10と、それぞれの電流リード5の第1のセクション6の冷却チャネルを相互接続するガルバニック絶縁カプラ11とで構成されている。このようにして、2つの電流リード5は、依然として互いにガルバニック絶縁されているが、熱的に接続されている、即ち、冷却のために熱的に接続されている。或いは、各電流リード5は、それ自身の、冷却剤フロー用の供給及びリターンチャンネルを有していてもよい。この場合、絶縁カプラは不要である。
【0026】
図3に示す本発明の好ましい実施形態によれば、電流リード5の第1のセクション6を冷却する冷却アレンジメント8の各々は、ヒートパイプ12を形成し、これとともに電流リード5は真空チャンバ壁3に通される。したがって、これらのヒートパイプ12は、電流リード5の第1のセクション6を形成し、どちらも真空チャンバ2の内側の中へ延在し、どちらも電流リード5の室温端にあるコンデンサである真空チャンバ2の外側の対応するヒートシンク13に接続されている。この場合、システムの動作は完全にパッシブで自動的である。ゼロ電流状態では、ヒートパイプ12の媒体(水、メタノール、又は他の適当な液体)は下端で凍結し、残りの熱伝達はリード材料を通る熱伝導となる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、外径10mm及び長さ400mmの「既製の」銅製のヒートパイプが使用される。これには、焼結された銅製の芯があり、熱輸送媒体は水蒸気である。銅製のブロックが両端にはんだ付けされている。電流リード5の冷却されていない第1のセクション6の電気的接続用に下端に小さなブロックと、他の電気的接続及びヒートシンク12、13への取り付けのために上部により大きなブロックとがある。
【0028】
前に説明したように、各電流リード5が、断面積が異なる少なくとも2つの異なるセクション6、7を含むことが重要である。このようにして、より小さい断面積を有するセクションによって、電流リードを通る熱伝達が減少する。冷却がない場合、コイルに電流を流すとき、電流リードのこのより薄い第1のセクション6は、その材料の融点を超える温度まで急速に熱くなる。このような熱暴走を防ぐために、電流リード5の薄いセクション6には冷却アレンジメント8が具備されている。この点では、電流リード5の第2のセクション7の断面積は、冷却なしで超電導コイル1に供給される所定の最大電流に熱的に耐えるような寸法にされる一方で、電流リード5の第1のセクション6の断面積は、冷却なしで超電導コイル1に供給される所定の最大電流に熱的に耐えるのには適していないような寸法にされている。
【0029】
前述したように、冷却なしの場合では、寒剤フリーの磁石用の電流リードの適した形状は、全長にわたって一定の断面積を有する、銅といった導電性材料の棒のストリップである。本明細書に説明される本発明の好ましい実施形態によれば、断面積は、リードの長さの約40~60%にわたってこの適切な値の約15~20%に減少する。冷却なしの場合、電流リード5のこの薄い第1のセクション6は、本明細書では、電流リード5の材料として使用される銅の融点を超える温度まで急速に熱くなる。このような熱暴走を防ぐために、電流リードのより細い第1のセクション5には冷却アレンジメント8が具備されている。最大電流定格が450Aの電流リードの例では、最適に冷却された各リードは、約12mmの断面積を有する300mmの長さの冷却された銅製部品が、55mmの断面積を有する400mmの長さの冷却されていない銅製部品と直列に接続される。各リードは、低温端まで約3.5Wを輸送する。同じ長さの同等の冷却されていない電流リードは、75mmの断面積を有し、各々が約12Wの低温端での熱負荷をもたらす。
【0030】
本発明は、図面及び上記の説明に詳細に例示及び説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は模範的と見なされるべきであって、限定的と見なされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行可能である。特許請求の範囲において、語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。更に、明確さのために、図面内のすべての要素に参照符号が提供されているわけではない。
【符号の説明】
【0031】
超電導コイル 1
真空チャンバ 2
真空チャンバ壁 3
クライオクーラ 4
電流リード 5
第1のセクション 6
第2のセクション 7
冷却アレンジメント 8
共通冷却チャネル 9
電流リードの第1のセクションにおける冷却チャネル 10
ガルバニック絶縁カプラ 11
ヒートパイプ 12
ヒートシンク 13
MRIシステム 14
電気的コネクタ 15
冷却入口 16
冷却出口 17
超電導コイルコネクタ 18
冷凍器の第1の段 21
冷凍器の第2の段 22
放射線遮蔽体 23
熱リンク 24
熱リンク 25
熱リンク 26
図1
図2
図3
【国際調査報告】