(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】水性二酸化チタンスラリーの調製方法、そのようにして製造されたスラリー及びそれを含むコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20231013BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20231013BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20231013BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231013BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20231013BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/36
C09C3/10
C09D201/00
C09D7/62
B32B9/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521557
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021077612
(87)【国際公開番号】W WO2022074073
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】アイアーホフ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フォレル,クリスティーナ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA20
4F100AA20A
4F100AA21
4F100AA21A
4F100AB01
4F100AB01B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA13
4F100CA13A
4F100CC00
4F100CC00A
4F100DE01
4F100DE01A
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4J038DF001
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4J038KA06
4J038KA08
4J038KA17
4J038MA08
4J038NA01
4J038PA07
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、水性二酸化チタンスラリーを製造するための方法に関し、水性分散媒体を提供するステップを含み、該水性分散媒体は、分散媒体の総質量に基づいて:少なくとも50質量%の水と;100℃を超える沸点を有する10質量%~28質量%の少なくとも1つの水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒と;シリコンオイル及び/又は鉱油と疎水性固体粒子とを含む、1.0質量%~5.0質量%の少なくとも1つの消泡剤と;ポリアルキレンオキシド基を含むポリマーの群から選択される少なくとも1つの分散剤からなる群から選択される、6.0質量%~20.0質量%の分散剤であって、前記ポリマーは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸のコポリマーから選択され、前記無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和されている、少なくとも1つの分散剤と;を含む、水性分散媒体を提供するステップであって、ここで、a.、b.、c.及びd.の合計は、分散媒体の総質量の95質量%~100質量%であるステップと、ステップ(a)で提供された水性分散媒体に二酸化チタンを分散させ、そのようにして得られるスラリーの総質量に基づいて、少なくとも65質量%~85質量%の二酸化チタンを含有する二酸化チタンスラリーを得るステップであって、ここで、ステップ(b)は、少なくとも二酸化チタン粒子のヘグマン粉末度が8μm未満になるまで、非粉砕混合装置のみを使用することによって実施される、ステップとを有する。本発明はさらに、そのようにして得られたスラリー、それを含むコーティング組成物、コーティングの製造方法、及びそのようにコーティングされた基材に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性二酸化チタンスラリーの製造方法であって、以下のステップ
(a)分散媒体の総質量に基づいて、
a. 少なくとも50質量%の水と;
b. 100℃を超える沸点を有する、10質量%~28質量%の少なくとも1つの水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒と;
c. シリコンオイル及び/又は鉱油と疎水性固体粒子とを含む、1.0質量%~5.0質量%の少なくとも1つの消泡剤と;
d. ポリアルキレンオキシド基を含むポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの分散剤からなる群から選択される、6.0質量%~20.0質量%の分散剤であって、前記ポリマーは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーから選択され、前記無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和されている、少なくとも1つの分散剤と;
を含む、水性分散媒体を提供するステップであって、ここで、a.、b.、c.及びd.の合計は、前記分散媒体の総質量の95質量%~100質量%である、ステップと、
(b)ステップ(a)で提供された水性分散媒体に二酸化チタンを分散させ、そのようにして得られるスラリーの総質量に基づいて、少なくとも65質量%~85質量%の二酸化チタンを含有する二酸化チタンスラリーを得るステップであって、ここで、ステップ(b)は、少なくとも二酸化チタン粒子のヘグマン粉末度が15μm未満になるまで、非粉砕混合装置のみを使用することによって実施される、ステップと;そして任意に
(c)バインダーを含まない水性媒体及び任意にpH調整剤を添加することにより、ステップ(b)で得られた二酸化チタンスラリーの二酸化チタン含有量を、二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて65質量%~75質量%の量に調整するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記b.の水溶性又は水混和性の有機溶媒は、グリコール及びグリコールエーテルの群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記消泡剤は、鉱油及び疎水性シリカ粒子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分散剤は、
(メタ)アクリル酸と、1~8個の炭素原子を含有するアルカノールの(メタ)アクリル酸エステルと、ポリエチレンオキシドの(メタ)アクリル酸エステルと、ヘテロ原子として窒素を含有するモノマーを含むヘテロ芳香族ビニル基の重合単位と、の重合単位を含むポリ(メタ)アクリレート;及び/又は
(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーであって、前記無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和され、前記コポリマーはポリエチレンオキシド基を含有する、コポリマー、
の少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非粉砕混合装置は、好ましくはローターステーターディゾルバー、インラインディゾルバー、ジェットストリームディゾルバーの群から選択されるディゾルバーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって得られ得る水性二酸化チタンスラリーであって、前記水性二酸化チタンスラリーは、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、
i. 10質量%~30質量%の水と;
ii. 8μm未満のヘグマン粉末度を有する、65質量%~85質量%の二酸化チタンと;
iii. 100℃を超える沸点を有する、1.0質量%~5.0質量%の少なくとも1つの水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒と;
iv. シリコンオイル及び/又は鉱油と疎水性固体粒子とを含む、0.2質量%~1.0質量%の少なくとも1つの消泡剤と;
v. ポリアルキレンオキシド基を含むポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの分散剤からなる群から選択される、1.0質量%~5.0質量%の分散剤であって、前記ポリマーは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸のコポリマーと、から選択され、前記無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和されている、分散剤と、を含み、
ここで、i.、ii.、iii.、iv.及びv.の合計は、前記二酸化チタンスラリーの総質量の95質量%~100質量%である、水性二酸化チタンスラリー。
【請求項7】
1秒
-1のせん断速度で、及び23℃で50~1800mPasのせん断粘度を有する、請求項6に記載の水性二酸化チタンスラリー。
【請求項8】
7から10のpH値を有する、請求項6又は7に記載の水性二酸化チタンスラリー。
【請求項9】
水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、68質量%~90質量%の固形分を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の水性二酸化チタンスラリー。
【請求項10】
水性コーティング組成物であって、
(A)自己架橋性ポリマー及び外部架橋性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと;
(B)(A)の少なくとも1つのポリマーが外部架橋性ポリマーである場合、(A)の少なくとも1つのポリマーを架橋させるための少なくとも1つの架橋剤と;
請求項1のステップ(a)~(c)によって得られる水性二酸化チタンスラリー、又は、請求項6~9のいずれか一項により定義される水性二酸化チタンスラリーと、
を含む、水性コーティング組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の水性コーティング組成物であって、
(A)は、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーのコポリマーからなる群から選択され;
(B)は、アミノプラスト樹脂及びブロック化ポリイソシアネートの群から選択され;さらに、
(C)コーティング添加剤、有機溶媒及び着色剤の1つ以上を含む、
請求項10に記載の水性コーティング組成物。
【請求項12】
コーティングの製造方法であって、以下のステップ
1)任意に化成コーティングされた金属基材に、任意で電着コーティング組成物を塗布し、電着コーティングを硬化させて電着コーティング層を得るステップ;次いで
2)任意に、少なくとも1つのフィラーコーティング組成物及び/又はプライマーコーティング組成物を、先行のコーティング層上又は基材上に塗布して1つ以上のフィラーコーティング層及び/又はプライマーコーティング層を得て、好ましくは前記フィラーコーティング層及び/又はプライマーコーティング層を少なくとも部分的に硬化させるステップ;次いで
3)任意に、少なくとも1つのベースコート組成物及び/又は少なくとも1つのクリアコート組成物を、先行のコーティング層上又は基材上に塗布して少なくとも1つのベースコート層及び/又は少なくとも1つのクリアコート層を得て、好ましくは前記ベースコート層及び/又はクリアコート層を乾燥及び/又は少なくとも部分的に硬化させるステップ;次いで
4)任意に、少なくとも1つのクリアコート組成物を、先行のステップで得られたコーティング層の上に塗布するステップ;及び
5)先行のいずれかのステップで硬化されなかったすべての層を共同で硬化させること;
を含み、
ここで、ステップ2)及び3)の少なくとも1つが実施され、ステップ2)及び3)の少なくとも1つにおいて、フィラーコーティング組成物、プライマーコーティング組成物及びベースコート組成物の少なくとも1つが、請求項10又は11に記載の水性コーティング組成物である、方法。
【請求項13】
ステップ1)~5)が実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法によって得られるコーティング基材。
【請求項15】
前記基材は、自動車ボディ及び自動車ボディの部品である、請求項14に記載のコーティング基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性二酸化チタンスラリーの調製方法、そのようにして調製されたスラリー、及び水性コーティング組成物、特に水性フィラー組成物及び水性ベースコート組成物などの自動車コーティング組成物におけるその使用に関する。本発明はさらに、コーティングを製造するための方法、及びそのようにしてコーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、白は世界的に最も人気のある色であり、生産される自動車の3分の1以上が白の色空間に該当する。最も頻繁に使用される白色顔料は二酸化チタンであり、二酸化チタンは良好な入手性、良好な加工性、及びコーティング産業、特に自動車コーティング産業で必要とされる幅広い特性を兼ね備えている。さらに、白色顔料は、有色組成物のより明るい色調を作り出すために広く使用されている。
【0003】
コーティング組成物の調製において、通常二酸化チタン顔料は、顔料の他にさまざまな量のバインダー及び溶媒を含む顔料ペーストとして使用される。
【0004】
このような二酸化チタンスラリーは、典型的には、2段階プロセスで製造されるミルベースの形態で提供され、ここで、第1段階では、ディゾルバーの使用により予分散物が製造され、第2段階では、予分散物を粉砕(milling)することにより最終ペースト/分散物を製造する。しかしながら、2段階プロセスのために、そのような既存の水性二酸化チタンスラリーは、第1段階の粘度よりも一般的に低い粉砕粘度など、第2段階で観察される条件によって制限される。しかし、より低い粘度は、より多い量の液体キャリア媒体、したがって、より低い顔料含有量に相関する。
【0005】
このような2段階プロセスで得られた顔料ペーストは、優れた保存安定性、望ましい粒度分布、及び良好な色特性を示すことがあるが、顔料に対して比較的多量のバインダーを含み、同時に、典型的には約50質量%以下の二酸化チタン量を含む。
【0006】
WO2006/010438A1は、45質量%より少ない二酸化チタンを含有する水性二酸化チタン顔料調製物を記載しており、これは二酸化チタンをYstral Conti-TDS 3ジェットストリームディゾルバーで予分散させた後に高エネルギーミルで粉砕する必要がある。
【0007】
WO2013/159090A1は、大量のポリマーを含有する二酸化チタン顔料の顔料挽き(grind)分散物の製造方法を記載している。
【0008】
上記のような2段階プロセスは、エネルギー、時間、及びコストがかかるという事実に加えて、このような分散物に使用される多量のバインダー(保存中の顔料の沈降に対して分散物を安定に保つために必要である)は、必然的に、適合するバインダーの概念を有するコーティング組成物への、このようなスラリーの使用を制限する。
【0009】
したがって、スラリーが適用される目標のコーティング組成物で必要とされるバインダーとの不適合を避けるために、二酸化チタン顔料を多量に含有しバインダーの量を少なく含有する二酸化チタンスラリーを提供することは、非常に望ましいことである。
【0010】
いくつかのケースにおいては、顔料スラリーは非常に少ない量のバインダーで予分散されるが、そのような最先端のスラリーでは、予分散物は、所望の粒度分布を得るために、その後粉砕される。
【0011】
市販のバインダーフリーのスラリーもあり、これらは、本発明の実験パートで比較用の二酸化チタンスラリーとして試験された。そのようなスラリーは、例えば、US2010/0104884A1でも使用されている。
【0012】
US9,903,021B1は、二酸化チタンを含む白色分散物の調製を記載しており、これは、バインダー含有量が低く、分散物の質量に基づいて69.8質量%の固形分を有している。しかしながら、この分散物は、使用前に、ミルで粉砕され、したがって、その製造には粉砕工程を必要とした。
【0013】
しかし、このようなバインダーフリーのスラリーは、通常、顔料含有量が所望よりも低く、及び/又は、粘度が所望よりも高いため、自動化プロセスでポンプ可能性(pumpability)を実現することが難しく、レオロジー制御添加剤の使用を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
最新の二酸化チタンスラリーが、上記に列挙したようなさまざまな問題を抱えているため、粉砕工程を必要とせず、新しい二酸化チタンスラリーと、粉砕工程を必要とせず、分散工程のみを必要とする方法で、それらを製造する方法に対する継続する希求がある。さらに、完全にバインダーを含まない二酸化チタンスラリーを得ることが目的ではなく、選択されたバインダーを少量だけ含む水性スラリーを得ることが目的である。本発明の二酸化チタンスラリーは、好ましくは、普遍的に使用可能なスラリーであり、該スラリーは、異なるバインダー概念に基づく異なるコーティング組成物のような多種多様な異なるターゲットシステムにおいて使用され得る。
【0015】
さらに、二酸化チタンスラリーは、高い顔料含有量を有するが、低い粘度、特に低せん断粘度が、良好なポンプ可能性を確保するのに十分な低い粘度を有することがさらに求められている。それでもやはり、本発明の二酸化チタン顔料スラリーは、良好な保存安定性を示し、スラリー中の顔料の過度の沈降を防止し、多少の沈降が生じた場合でも、簡単な撹拌によって沈殿物を再分散させることが容易であるべきである。
【0016】
さらに、スラリーが簡単な自動化プロセスで製造され得ることが望まれていた。
【0017】
水性二酸化チタンスラリーを含有する水性コーティング組成物から調製されるコーティング、特にフィラー組成物、プライマー組成物及び/又はベースコート組成物から調製されるコーティングは、優れた光沢(gloss)及び輝度(brightness)、低ヘイズ、高いピンホール限界及び優れたレベリング性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は、水性二酸化チタンスラリーを製造するための方法を提供することによって達成され、該方法は以下のステップを含む。
(a)分散媒体の総質量に基づいて、
a. 少なくとも50質量%の水と;
b. 100℃を超える沸点を有する10質量%~28質量%の少なくとも1つの水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒と;
c. シリコンオイル及び/又は鉱油と疎水性固体粒子とを含む、1.0質量%~5.0質量%の少なくとも1つの消泡剤と;
d. ポリアルキレンオキシド基を含むポリマーからなる群から選択される、6.0質量%~20.0質量%の少なくとも1つの分散剤であって、該ポリマーは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーから選択され、該無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和されている、少なくとも1つの分散剤と、
を含む、水性分散媒体を提供するステップであって、ここで、a.、b.、c.及びd.の合計は、分散媒体の総質量の95質量%~100質量%である、ステップと、
(b)ステップ(a)で提供された水性分散媒体に二酸化チタンを分散させ、そのようにして得られるスラリーの総質量に基づいて、少なくとも65質量%~85質量%の二酸化チタンを含有する二酸化チタンスラリーを得るステップであって、ここで、ステップ(b)は、少なくとも二酸化チタン粒子のヘグマン粉末度が15μm未満になるまで、非粉砕混合装置のみを使用することによって実施される、ステップと;そして任意に
(c)バインダーを含まない水性媒体及び任意にpH調整剤を添加することにより、ステップ(b)で得られた二酸化チタンスラリーの二酸化チタン含有量を、二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて65質量%~75質量%の量に調整するステップと、
を含む。
【0019】
この方法は、「本発明による水性二酸化チタンスラリーの製造方法」とも呼ばれる。
【0020】
本発明のさらなる目的は、前述の方法により得られ得る二酸化チタンスラリーであって、該二酸化チタンスラリーは、該二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、
i. 10質量%~30質量%の水と;
ii. 15μm未満のヘグマン粉末度を有する、65質量%~85質量%の二酸化チタンと;
iii. 100℃を超える沸点を有する、1.0質量%~5.0質量%の少なくとも1つの水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒と;
iv. シリコンオイル及び/又は鉱油と疎水性固体粒子とを含む、0.2質量%~1.0質量%の少なくとも1つの消泡剤と;
v. ポリアルキレンオキシド基を含むポリマーからなる群から選択される、1.0質量%~5.0質量%の分散剤であって、該ポリマーは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレート、及びそれらの(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーとの混合物から選択され、該無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和されている、分散剤と、を含み、
ここで、i.、ii.、iii.、iv.及びv.の合計は、二酸化チタンスラリーの総質量の95質量%~100質量%である。
【0021】
このようなスラリーは、「本発明による水性二酸化チタンスラリー」又は実験パートでは「本発明による顔料の予混合物」とも呼ばれる。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、水性コーティング組成物であって、
(A)自己架橋性ポリマー及び外部架橋性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと;
(B)少なくとも1つのポリマー(A)が外部架橋性ポリマーである場合、少なくとも1つのポリマー(A)を架橋させるための少なくとも1つの架橋剤と;
本発明による水性二酸化チタンスラリーの製造方法のステップ(a)~(c)に従って得られた、又は本発明による水性二酸化チタンスラリーについて定義されたとおりの、水性二酸化チタンスラリーと、
を含む、水性コーティング組成物である。
【0023】
このような水性コーティング組成物は、「本発明による水性コーティング組成物」とも呼ばれる。
【0024】
本発明のさらなる目的は、コーティング、好ましくは多層コーティングを製造するための方法である。
【0025】
このようなコーティングは「本発明によるコーティング」とも呼ばれる。
【0026】
本発明のさらなる目的は、前述の方法によって得ることができるコーティング基材である。
【0027】
このようなコーティング基材は、「本発明によるコーティング基材」とも呼ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
以下では、本発明の好ましい実施形態をさらに開示し、本発明をより詳細に説明する。
【0029】
水性二酸化チタンスラリーの製造方法
ステップ(a)
本発明による水性二酸化チタンスラリーの製造方法の第1ステップでは、水性分散媒体が提供される。
【0030】
含水量
水性分散媒体の主成分は水である。水性分散媒体は、水性分散媒体の総質量に基づいて、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも55質量%、さらに好ましくは少なくとも60質量%の水を含有する。好ましくは、水の含有量は、水性分散媒体の総質量に基づいて、85質量%未満、より好ましくは80質量%未満、最も好ましくは75質量%未満である。
【0031】
水溶性及び/又は水混和性有機溶媒
水性分散媒は、水性分散媒の総質量に基づいて、10質量%~28質量%、好ましくは12質量%~25質量%、より好ましくは15~23質量%の量の水溶性及び/又は水混和性有機溶媒をさらに含有する。
【0032】
水溶性及び/又は水混和性有機溶媒は、IUPAC標準条件下で、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも110℃、さらにより好ましくは少なくとも140℃、最も好ましくは少なくとも160℃の沸点を有する。水溶性及び/又は水混和性有機溶媒は、例えば、最終的に塗布されたコーティングにシードが生じる可能性がある容器又は貯蔵タンクの縁部での表面乾燥のリスクを低減するために、又はカワバリ形成(skin formation)を防止するために役立つ。水溶性及び/又は水混和性有機溶媒の沸点が低すぎる場合、かなりの量の溶媒が蒸発し、混合装置の壁に乾燥した二酸化チタンの凝集物(aggregate)又は塊状物(agglomerate)が残る傾向があり、これは最終的なスラリーに戻ってくる可能性がある。そのようなスラリーがコーティング組成物に使用される場合、そのような凝集物/塊状物のためにコーティングの外観と均一性が損なわれる可能性がある。
【0033】
好ましくは、水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒は、式(I)の溶媒の群から選択される:
R1O-[R-O]n-R2 (I)、
【0034】
式中
nは1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2であり;
残基R1は、H、又は1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子、より好ましくは1~3個、例えば1、2又は3個の炭素原子を有するアルキル基であり;
残基R2は、H、又は1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子、より好ましくは1~3個、例えば1、2又は3個の炭素原子を有するアルキル基であり;及び
n個の残基Rは、CH2CH2、CH2CH2CH2、CH(CH3)CH2及び/又はCH2CH(CH3)からなる群から独立して選択され;
R1、R2のうち少なくとも1つはHである。
【0035】
水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒は、好ましくは、トリエチレングリコールなどのグリコール、及びブチルグリコール、ブチルジグリコール、1-メトキシ-2-プロパノール又はプロピレングリコールn-プロピルエーテルなどのグリコールエーテルからなる群から選択される。
【0036】
消泡剤
水性分散媒体は、水性分散媒体の総質量に基づいて、1.0質量%~5.0質量%、好ましくは1.5質量%~4.0質量%、より好ましくは1.8質量%~3.5質量%の量の少なくとも1つの消泡剤をさらに含む。本明細書で使用される消泡剤は、シリコンオイル及び鉱油から、好ましくは鉱油から、最も好ましくは水素化ナフテン鉱油の群からの鉱油から選択される少なくとも1つのオイルを含む。
【0037】
消泡剤は、好ましくは疎水性尿素又は疎水性シリカからなる群からの、最も好ましくは疎水性シリカの群からの、疎水性固体粒子をさらに含有する。疎水性シリカは、好ましくは、有機シランで表面処理されたヒュームドシリカ及び沈降シリカの群から選択される。
【0038】
消泡剤は、乳化剤、好ましくは非イオノゲン乳化剤及びポリマー成分を微量で含有していてよい。
【0039】
最も好ましい消泡剤は、少なくとも鉱油と疎水性シリカを含み、鉱油は、好ましくは水素化ナフテン鉱油から選択される。
【0040】
分散剤
水性分散媒体は、ポリアルキレンオキシド基を含有するポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの分散剤を、6.0質量%~20.0質量%、好ましくは8質量%~18質量%、より好ましくは10質量%~16質量%さらに含有し、該ポリマーはアニオン性ポリ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーから選択され、該無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和されている。
【0041】
好ましくは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレートは、側鎖としてのポリアルキレンオキシド基と、少なくとも部分的にそれらの塩の形態になっているカルボン酸とを含む。それらがさらにカルボン酸エステル基と窒素含有芳香族基を含むことが好ましい。
【0042】
本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及びメタクリレートを示す。(メタ)アクリレートを含有するポリマーは、アクリレート又はメタクリレート類又はその両方を含有することができる。
【0043】
好ましいポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは、(メタ)アクリル酸と、アルカノール、特に1~8個、好ましくは2~6個の炭素原子を含有するアルカノールの(メタ)アクリル酸エステルと、ポリエチレンオキシド、好ましくは、末端基決定による200g/mol~1000g/mol、好ましくは300g/mol~800g/mol、より好ましくは400~600g/molの数平均分子量を有するポリエチレンオキシドの(メタ)アクリル酸エステルと、ビニルピリジンなどの、ヘテロ原子として窒素を含有するモノマーを含むヘテロ芳香族ビニル基の重合単位と、重合単位を含む。
【0044】
アニオン性ポリ(メタ)アクリレートは、例えば、モノマーのフリーラジカル重合によって調製されることができ、この方法は当業者によく知られている。フリーラジカル重合は、通常、ペルオキソ化合物、アゾ化合物又はレドックス開始剤系などの重合開始剤の存在下で、連鎖移動剤の非存在下又は存在下で実施される。アニオン基を形成するそれらのモノマーは、通常、遊離酸の形態で使用され、重合後に少なくとも部分的に中和される。典型的な重合温度は、大気圧で30~150℃の範囲である。重合は、好ましくはモノマーの少なくとも1つの溶解度を増加させる、好ましくは溶媒又は溶媒混合物中でバルクで実施され得る。
【0045】
(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーであって、該無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和され、側鎖として、さらに好ましくはポリエチレンオキシド側鎖として、ポリアルキレンオキシド基を含有するコポリマーは、上記のポリ(メタ)アクリレートと単独又は組み合わせて分散媒体として使用されることもできる。このようなコポリマーは、例えばEvonik社からTego 752Wという商品名である。しかし、それらはまた、ラジカル重合によって得られることができる。
【0046】
特に好ましいのは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーの混合物であり、該無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和され、該コポリマーは、側鎖として、さらに好ましくはポリエチレンオキシド側鎖として、ポリアルキレンオキシド基を含有する。
【0047】
このような分散剤は、本発明において好ましく、例えば、BASF SE社からDispex(登録商標)、例えば、Dispex(登録商標)Ultra PX 4575という商品名で入手可能である。
【0048】
ステップ(b)
二酸化チタン
ステップ(b)で使用される二酸化チタンは、典型的には二酸化チタン粉末であり、好ましくは、多数の商業的供給源、例えばKRONOS INTERNATIONAL,Inc(例えば、KRONOS 2310又はKRONOS 2360)、Chemours Titanium Technologies(例えば、Ti-Pure(商標)R-960又はTi-Pure(商標)TS-6200)、Tronox(例えば、TiONA(登録商標)826又はTiONA(登録商標)595)、Lomon Billions(例えばBILLIONS(登録商標)BLR-601又はLOMON(登録商標)R-996)又はVenator(例えば、TIOXIDE(登録商標)TR92又はTIOXIDE(登録商標)TR88)などから入手可能なルチル型である。
【0049】
手順の特徴
ステップ(b)において、二酸化チタンはステップ(a)で提供された水性分散媒体に導入されて、そのようにして得られたスラリーの総質量に基づいて、少なくとも65質量%から85質量%までの二酸化チタンを含む二酸化チタンスラリーを得る。
【0050】
ステップ(b)は、非粉砕混合装置、特に好ましくはディゾルバー、より特に好ましくはローターステータータイプのディゾルバーのみを使用することにより実施される。特に好ましいのは、ジェットストリームタイプの混合装置又はインラインディゾルバーでもある。このような非粉砕混合装置は、例えば、Netzsch社からMasterMix(登録商標)という商品名で、Cavitron社からCavitron(登録商標)CD1010という商品名で、Ystral社からConti-TDS(登録商標)という商品名で入手可能である。
【0051】
混合装置に関連して本明細書で使用される「非粉砕」という用語は、本発明による水性二酸化チタンスラリーを製造するためにミルが使用されないことを意味する。本発明の意味での「ミル」は、鋼、磁器、セラミック、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又は硬化ガラスなどの非摩耗性粉砕媒体を利用する。粉砕プロセスにおいて、分散は、分散される顔料を、粉砕媒体同士及び/又は粉砕媒体とミルの壁との間で粉砕することによって達成される。
【0052】
本発明による水性二酸化チタンスラリーを製造するための完全な方法は、分散物を製造するために粉砕媒体が使用されるいかなるステップも含まない。
【0053】
ステップ(b)は、少なくとも、二酸化チタン粒子のヘグマン粉末度が15μm未満、好ましくは12μm未満、より好ましくは10μm未満、さらにより好ましくは8μm未満、例えば5μm未満となるまで実施される。これは、典型的には、非粉砕混合装置において、数分以内に達成される。一般に、混合時間(すなわち分散時間)は、1分~30分の間、より典型的には2分~25分の間、好ましくは3分~20分の間、より好ましくは4分~15分の間、例えば5分~10分の間である。
【0054】
ステップ(b)において、製造されるスラリーの温度は、好ましくは90℃を超えない、より好ましくは80℃を超えない、さらにより好ましくは70℃を超えない、最も好ましくは60℃を超えない、又は50℃未満である。温度が高すぎると、顔料の再凝集、及び/又は灰色化が起こる可能性がある。このような問題が発生した場合、温度を下げる必要がある。
【0055】
さらに、実験部に記載されたように決定されるスラリーの低せん断粘度(1秒-1)は、好ましくは1800mPasを超えない、より好ましくは1000mPasを超えない、最も好ましくは500mPasを超えない。
【0056】
ヘグマン粉末度の決定は、本発明の実験部分に記載されているように達成される。
【0057】
ステップ(c)
ステップ(c)は任意のステップである。ステップ(a)で使用される水性分散媒体に、水を多く使用することも少なく使用することも可能であるため、任意のステップ(c)では、水性二酸化チタンスラリーの固形分、粘度及びpH値を調整することが特に可能である。
【0058】
したがって、ステップ(c)では、所望の二酸化チタン含有量を得るために、水、又は水と水溶性及び/又は水混和性有機溶媒との混合物などのバインダーフリーの水性媒体を添加してよい。ステップ(c)において、エタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンのような有機アミンなどのpH調整剤を添加することも可能である。
【0059】
本発明の水性二酸化チタンスラリーを製造するための方法では粉砕ステップがその一部ではないため、ステップ(c)の後に粉砕ステップは続かない。
【0060】
上記の方法で得られた水性二酸化チタンスラリーは保存安定性が高く、たとえ沈殿が生じたとしても、スラリーは簡単な撹拌により容易に再分散されることができる。水性二酸化チタンスラリーは、さらに粉砕又は処理をすることなく、直接使用されることができる。このようにして製造されたスラリーは、さまざまな異なるバインダーを含む水性コーティング組成物に導入される用意ができている。
【0061】
本発明の目的のために、「バインダー」という用語は、DIN EN ISO 4618(ドイツ語版、日付:2007年3月)に従って、膜形成に関与するコーティング組成物の不揮発性画分であると理解される。したがって、そこに含まれる顔料及び/又はフィラーは、「バインダー」の用語に包含されない。
【0062】
水性二酸化チタンスラリー
好ましくは、水性二酸化チタンスラリー中の水の量は、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、15質量%~30質量%、より好ましくは20質量%~30質量%の範囲にある。
【0063】
好ましくは、水性二酸化チタンスラリー中の上記で定義された二酸化チタンの量は、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、65質量%~80質量%、より好ましくは65質量%~75質量%の範囲にある。
【0064】
好ましくは、水性二酸化チタンスラリー中の100℃を超える沸点を有する少なくとも1つの水溶性及び/又は水混和性有機溶媒の量は、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、2.0質量%~5.0質量%、より好ましくは2.5質量%~4.5質量%の範囲にある。
【0065】
好ましくは、水性二酸化チタンスラリー中の上記で定義された少なくとも1つの消泡剤の量は、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、0.3質量%~0.9質量%、より好ましくは0.4質量%~0.8質量%の範囲にある。
【0066】
好ましくは、水性二酸化チタンスラリー中の上記で定義された少なくとも1つの分散剤の量は、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、1.5質量%~4.0質量%、より好ましくは1.7質量%~3.8質量%の範囲にある。
【0067】
さらに追加の疎水性固体粒子が成分viとして、好ましくは疎水性シリカとして含まれる場合、その量は、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.4質量%未満、最も好ましくは0.3質量%未満、例えば0.2質量%以下である。そのような疎水性シリカは、好ましくはヒュームドシリカ又は沈降シリカから選択され、好ましくはヒュームドシリカである。そのようなシリカは、例えば、Evonik社からAerosil(登録商標)R972という商品名で市販されている。
【0068】
好ましくは、本発明による水性二酸化チタンスラリーのpH値は、7と10の間、より好ましくは7.5と9.5の間、最も好ましくは8.0と9.0との間である。
【0069】
好ましくは、前述の方法によって得られる水性二酸化チタンスラリーは、二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、
i. 15質量%~30質量%の水と;
ii. 8μm未満のヘグマン粉末度を有する、65質量%~80質量%の二酸化チタンと;
iii. 100℃を超える沸点を有する、2.0質量%~5.0質量%の少なくとも1つの水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒と;
iv. シリコンオイル及び/又は鉱油と疎水性固体粒子とを含む、0.3質量%~0.9質量%の少なくとも1つの消泡剤と;
v. ポリアルキレンオキシド基を含むポリマーからなる群から選択される、1.5質量%~4.0質量%の少なくとも1つの分散剤であって、該ポリマーは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーから選択され、該無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和されている、分散剤と、を含み、
ここで、i.、ii.、iii.、iv.及びv.の合計は、二酸化チタンスラリーの総質量の97質量%~100質量%である。
【0070】
より好ましくは、前述の方法により得られ得る水性二酸化チタンスラリーは、二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、
i. 20質量%~30質量%の水と;
ii. 8μm未満のヘグマン粉末度を有する、65質量%~75質量%の二酸化チタンと;
iii. 100℃を超える沸点を有する、2.5質量%~4.5質量%の少なくとも1つの水溶性及び/又は水混和性の有機溶媒と;
iv. シリコンオイル及び/又は鉱油と疎水性固体粒子とを含む、0.4質量%~0.8質量%の少なくとも1つの消泡剤と;
v. ポリアルキレンオキシド基を含むポリマーからなる群から選択される、1.7質量%~3.8質量%の少なくとも1つの分散剤であって、該ポリマーは、アニオン性ポリ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸とのコポリマーから選択され、該無水マレイン酸は少なくとも部分的に加水分解及び/又は中和されている、分散剤と、を含み、
ここで、i.、ii.、iii.、iv.及びv.の合計は、二酸化チタンスラリーの総質量の99質量%~100質量%である。
【0071】
前述の成分i.、ii.、iii.、iv.及びv.は、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、95質量%~100質量%、好ましくは97質量%~100質量%、さらにより好ましくは99質量%~100質量%を構成するため、典型的なコーティング添加剤、溶媒、着色剤などのさらなる成分を導入することができる。そのような成分が導入される場合、液体又は溶解した成分は、典型的には、成分を水性分散媒体に混合することによって、本発明による水性二酸化チタンスラリーを製造する方法のステップ(a)で導入され、さらなる疎水性固体粒子などの固体成分は、二酸化チタンと共にステップ(b)で導入されてよい。最も好ましくは、本発明の水性二酸化チタンスラリーにはさらなる成分は含まれない。
【0072】
すべての成分は、本発明による水性二酸化チタンスラリーの製造方法について定義され;水性二酸化チタンスラリーに関する上記の好ましい範囲及びより好ましい範囲のいずれも、成分の最も一般的な定義だけでなく、これらの成分の好ましい定義、より好ましい定義及び最も好ましい定義に関しても同様に適用される。
【0073】
上記で定義された二酸化チタンスラリー及び/又は水性二酸化チタンスラリーの製造方法に従って得られた二酸化チタンスラリーは、好ましくは、本発明の実験部に記載されたように決定される23℃での低せん断粘度(せん断速度:1秒-1)を50~1800mPasの範囲、より好ましくは70~1000mPasの範囲、さらにより好ましくは80~500mPasの範囲、最も好ましくは100~300mPas、さらにより好ましくは100~200mPasの範囲で有する。
【0074】
上記で定義された二酸化チタンスラリー及び/又は水性二酸化チタンスラリーの製造方法に従って得られた二酸化チタンスラリーの固形分(実験部に記載されたように決定される)は、水性二酸化チタンスラリーの総質量に基づいて、好ましくは68~90質量%、より好ましくは70質量~80質量、最も好ましくは72質量~78質量%の範囲である。
【0075】
水性コーティング組成物
本発明による水性コーティング組成物は、(A)自己架橋性ポリマー及び外部架橋性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーと;(B)少なくとも1つのポリマー(A)が外部架橋性ポリマーである場合、少なくとも1つのポリマー(A)を架橋するための少なくとも1つの架橋剤と;本発明による水性二酸化チタンスラリーとを含む。
【0076】
本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは、一液型コーティング組成物である。
【0077】
最も好ましい本発明の水性コーティング組成物は、プライマーコーティング組成物又はフィラーコーティング組成物又は水性ベースコート組成物である。「水性(aqueous)」という用語は、「水系(waterborne)」という用語と交換可能である。
【0078】
成分(A)
本発明の水性コーティング組成物は成分(A)として、(A)少なくとも1つのポリマーを含有する。このポリマーはバインダーとして役割を果たす。
【0079】
好ましくは、(A)の少なくとも1つのポリマー(A)は、コーティング組成物の主バインダーである。本発明における主バインダーとして、バインダー成分は好ましくは、それぞれのコーティング組成物の総固形分に基づいて、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、最も好ましくは少なくとも70質量%の量で含有されるものを指す。
【0080】
成分(A)として使用できる適切なポリマーは、例えば、EP0228003A1,DE4438504A1,EP0593454B1,DE19948004A1,EP0787159B1,DE4009858A1,DE4437535A1,WO92/15405A1及びWO2005/021168A1に開示されている。
【0081】
好ましくは、成分(A)として使用される(A)少なくとも1つのポリマーは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーのコポリマー、例えばポリウレタンポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタンポリウレアからなる群から選択される。
【0082】
好ましいポリウレタンは、例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1、第4頁19行目~第11頁29行目(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願EP0228003A1、第3頁24行目~第5頁40行目、欧州特許出願EP0634431A1、第3頁38行目~第8頁9行目;及び国際特許出願WO92/15405、第2頁35行目~10頁32行目に記載され、又はVD1と記載され、及びWO2018/011311(例PD1)に記載される。
【0083】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1の第6段53行目~第7段61行目及び第10段24行目~第13段3行目、又はWO2014/033135A2の第2頁24行目~第7頁10行目及び第28頁13行目~第29頁13行目に記載されている。
【0084】
他の適切なポリエステルは、例えば、WO2008/148555A1に記載されているような、樹枝状構造を有するポリエステルである。
【0085】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー((メタ)アクリル化ポリウレタン)及びその調製は、例えば、WO91/15528A1、第3頁21行目~第20頁33行目及びDE4437535A1、第2頁27行目~第6頁22行目に記載されている。
【0086】
好ましいポリ(メタ)アクリレートは、水及び/又は有機溶媒中でエチレン性不飽和モノマーを多段階フリーラジカル乳化重合することにより調製されることができるものである。さらに、いわゆるシードコア-シェルポリマー(SCSポリマー)を使用することができる。このようなポリマー又はこのようなポリマーを含有する水性分散体は、例えば、WO2016/116299A1から公知である。
【0087】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、ポリウレタン-ポリウレア粒子であり、好ましくは40nm~約2000nm未満の平均粒径を有するものである。
【0088】
成分(A)として使用されるポリマーは、好ましくは外部架橋性であり、架橋反応を可能にする反応性官能基を有する。当業者に知られている任意の一般的な架橋可能な反応性官能基が考えられる。
【0089】
好ましくは、成分(A)として使用されるポリマーは、一級アミノ基、二級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基及びカルバメート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能反応性基を有する。好ましくは、成分(A)として使用されるポリマーは、少なくとも官能性ヒドロキシル基を含有する。
【0090】
好ましくは、成分(A)として使用されるポリマーはヒドロキシ官能性であり、より好ましくは5~250mgKOH/g、より好ましくは20~120mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0091】
成分(B)
さらに、本発明の水性コーティング組成物は、当業者に公知の少なくとも1つの架橋剤を含有することができる。架橋剤は、コーティング組成物の膜形成性不揮発性成分の中に含まれるものであり、したがって、バインダーの一般的な定義に含まれる。
【0092】
少なくとも1つの架橋剤が必要である一方で、成分(A)の少なくとも1つのポリマーが外部的にのみ架橋可能である場合、いくつかの架橋剤、特に後述のようなアミノプラスト樹脂が、特にその硬化温度より低い温度でむしろ可塑剤として作用することも可能である。したがって、いずれの場合であっても、さらに、成分(A)の少なくとも1つのポリマーを架橋するために架橋剤が必要でない場合であっても、成分(B)、特に後述のアミノプラスト樹脂を使用して、コーティングを可塑化させることが可能である。
【0093】
架橋剤が存在する場合、それは、好ましくは、少なくとも1つのアミノプラスト樹脂及び/又は少なくとも1種のブロック化ポリイソシアネートであり、好ましくはアミノプラスト樹脂である。アミノプラスト樹脂の中でも、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のようなメラミン樹脂が特に好ましい。本明細書で使用される「ポリイソシアネート」という用語は、平均で2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを包含する。本発明によるコーティング組成物は一液型コーティング組成物であるため、本明細書で使用される「ブロック化イソシアネート」は完全にブロックされており、すなわち遊離イソシアネート基を含有しないものである。
【0094】
ブロック化ポリイソシアネートを製造するのに適したポリイソシアネートには、原則として完全にブロックされた形態で水性コーティング材料に使用されるすべての既知の脂肪族、環状脂肪族、脂肪族-環状脂肪族、芳香族、脂肪族-芳香族及び/又は環状脂肪族-芳香族ポリイソシアネートとポリイソシアネート付加物とが含まれる。イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、ウレアカルボジイミド基及び/又はウレジオン基を含有するポリイソシアネートを使用することも可能である。
【0095】
適したポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート(=5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン)、5-イソシアナト-1-(2-イソシアナトエタ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、5-イソシアナト-1-(3-イソシアナトプロパ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、5-イソシアナト(4-イソシアナトブタ-1-イル)-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン、1-イソシアナト-2-(3-イソシアナトプロパ-1-イル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-2-(3-イソシアナトエタ-1-イル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-2-(4-イソシアナトブタ-1-イル)シクロヘキサン、1,2-ジイソシアナトシクロブタン、1,3-ジイソシアナトシクロブタン、1,2-ジイソシアナトシクロペンタン、1,3-ジイソシアナトシクロペンタン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン2,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、30質量%までのトランス/トランス含量の液体ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、あるいは特許WO97/49745及びWO97/49747に記載されている二量体脂肪酸から誘導されたジイソシアネート、特に、2-ヘプチル-3,4-ビス(9-イソシアナトノニル)-1-ペンチルシクロヘキサン、1,2-、1,4-もしくは1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2-、1,4-もしくは1,3-ビス(2-イソシアナトエタ-1-イル)シクロヘキサン、1,3-ビス(3-イソシアナトプロパ-1-イル)シクロヘキサン、1,2-、1,4-もしくは1,3-ビス(4-イソシアナトブタ-1-イル)シクロヘキサン、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(=1,3-ビス(2-イソシアナトプロパ-2-イル)ベンゼン)、又はトリレンジイソシアネートである。
【0096】
ポリイソシアネートをブロックするのに適したブロック剤の例としては、米国特許第4,444,954で知られているブロッキング剤があり、特にフェノール類、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t-ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、この酸のエステル、又は2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンなど;ラクタム類、例えばイプシロン-カプロラクタム、デルタ-バレロラクタム、ガンマ-ブチロラクタム又はベータ-プロピオラクタムなど;活性メチレン化合物、例えばマロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル又はアセト酢酸メチル、又はアセチルアセトンなど;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、n-アミルアルコール、t-アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロモヒドリン、1,3-ジクロロー2プロパノール、1,4-シクロヘキシルジメタノール又はアセトシアノヒドリンなど;メルカプタン類、例えばブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール又はエチルチオフェノールなど;酸アミド類、例えばアセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセトアミド、ステアルアミド、又はベンズアミドなど;イミド類、例えば、スクシンイミド、フタルイミド又はマレイミドなど;アミン類、例えばジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン又はブチルフェニルアミンなど;イミダゾール類、例えば、イミダゾール又は2-エチルイミダゾールなど;尿素類、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素又は1,3-ジフェニル尿素など;カルバメート類、例えばフェニルN-フェニルカルバメート又は2-オキサゾリドンなど;イミン類、例えばエチレンイミンなど;オキシム類、例えばアセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンゾフェノンオキシム又はクロロヘキサノンオキシムなど;亜硫酸塩、例えば亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素カリウムなど;ヒドロキサムエステル、例えばベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)又はアリルメタクリロヒドロキサメートなど;又は置換ピラゾール、イミダゾール又はトリアゾール;及びこれらのブロック剤の混合物がある。ブロック剤は、ブロックされたイソシアネート基が、正確に、本発明のコーティング組成物の熱架橋が起こる温度範囲、特に好ましくは120~160℃の温度範囲でのみ、脱ブロッキングを受け、架橋反応に入るように選択されることが好ましい。
【0097】
メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の中で、最も好ましいのは高アルキル化メラミン樹脂及び高イミノメラミン樹脂である。
【0098】
高アルキル化メラミン樹脂は、アルキル化アルコールの種類を除き、ヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)と類似している。この樹脂は、メトキシ部位と、より長い鎖長のアルコキシ部位(エトキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ)の組み合わせを含む。それらは、また、アルキル化の程度とモノマーの含有量で互いに異なる。より長い鎖長のアルコキシ部位は、より低粘度、改善された流動性とレベリング、及びコート間接着を付与する。そのような樹脂は、ヒドロキシル、カルボキシル及びアミドなどの官能性ポリマーのための架橋剤として有効である。多くの場合、実際の等価質量は140~200である。その他の利点は、低VOC、本質的に柔軟な主鎖樹脂と併用した場合の高い膜柔軟性と強靭性、優れた配合安定性(特にpH8~9及び優れた表面損傷抵抗特性での水性システムにおいて)などがある。これらは、例えばAllnex社からCymel(登録商標)、例えばCymel(登録商標)3020という商品名で市販されている。
【0099】
高イミノメラミン樹脂は、部分的にメチル化され、高度にアルキル化されている点で、高イミノメチル化メラミン樹脂と類似している。それらは、メチル化メラミン樹脂とはアルキル化アルコールの種類が異なり、メトキシ部位とn-ブトキシ部位の組み合わせを含んでいる。ブトキシ部位は、流動性、レベリング性及びコート間接着性を向上させる。メチル化種と同様に、その組成は主にアルコキシ/イミノ又はアルコキシ/NH官能基を含んでいる。その利点は、特に水系配合物において強酸触媒の添加を必要としないで120~150℃での速い硬化反応、高い膜硬度、及び硬化時の硬化時のホルムアルデヒド放出が少ないことである。ヒドロキシル基、カルボキシル基及びアミド官能基を有するポリマーと反応することに加え、樹脂は容易に自己凝縮する。したがって、その実際の当量は通常200から250である。これらは、例えば、Allnex社からCymel(登録商標)の商標名で市販されている、例えばCymel(登録商標)203である。
【0100】
さらなる成分(C)
本発明のコーティング組成物は、所望の用途に応じて、さらなる成分(C)として、1つ以上の通常使用されるコーティング添加剤、溶媒又は二酸化チタンとは異なる着色剤を含有することができる。顔料とフィラーと揮発性溶剤を除いて、硬化したコーティングに残存する添加剤は、コーティング組成物のバインダーに属する。
【0101】
従来のコーティング添加剤(C1)
したがって、コーティング組成物は、反応性希釈剤、光安定剤、酸化防止剤、本発明の水性二酸化チタンスラリー中のものとは異なる消泡剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、フリーラジカル重合開始剤、接着促進剤、膜形成助剤、本発明の水性二酸化チタンスラリー中のものとは異なる分散剤、レオロジー制御剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、乾燥剤、殺生物剤、及び平坦化剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる。適切なコーティング添加剤のさらなる例は、例えば教科書「Lackadditive」(Johan Bieleman著「Additives for Coatings」、Wiley-VCH、Weinheim、1998年)に記載されている。添加剤は、既知の慣用量で使用されることができる。
【0102】
好ましくは、本発明のコーティング組成物の総質量に基づくそれらの含有量は、0.5~3質量%、より好ましくは1.0~2.8質量%、特に好ましくは1.5~2.5質量%の範囲である。
【0103】
有機溶媒(C2)
本発明の水性コーティング組成物の主な液体キャリア媒体としての水に加えて、組成物は、一般的な水性コーティング組成物に見られるような典型的な量の有機溶媒を含んでいてよい。
【0104】
顔料、フィラー、染料などの着色剤(C3)
本発明によるコーティング組成物は、水性スラリーとして、本発明のコーティング組成物に使用される二酸化チタン顔料の他に、顔料を含有することができる。そのような顔料は、好ましくは着色顔料及び/又は効果顔料である。
【0105】
「着色顔料」及び「有色顔料」という用語は交換可能であり、有色顔料、黒色顔料及び白色顔料が含まれる。着色顔料としては、無機顔料及び/又は有機顔料を使用することができる。
【0106】
好ましくは、着色顔料は無機着色顔料であり、最も好ましくはカーボンブラックである。
【0107】
白色顔料の例は、二酸化チタン、亜鉛ホワイト、硫化亜鉛及びリトポンである。黒色顔料の例は、カーボンブラック、鉄マンガンブラック、スピネルブラックである。有色顔料の例としては、酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン、ウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルト及びマンガンバレット、酸化鉄レッド、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッド及びウルトラマリンレッド、酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネルとコランダム相、及びクロムオレンジ、酸化鉄イエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエロー及びビスマスバナデートである。
【0108】
効果顔料のうち、特に金属効果顔料及び/又は真珠光沢効果顔料は、本発明によるコーティング組成物に含まれることができる。
【0109】
「フィラー」という用語は、例えばDIN 55943(日付:2001年10月)から当業者に知られている。本発明の目的のために、「フィラー」は、塗布媒体、例えば本発明によるコーティング組成物に実質的に不溶性であり、特に体積を増加させるために使用される物質を意味すると理解される。本発明の文脈において、「フィラー」は、屈折率が「顔料」とは異なることが好ましく、その屈折率は、フィラーが1.7以下であるが、顔料は1.7超である。適切なフィラーの例は、カオリン、ドロマイト、カルサイト、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、特に焼成シリカ、水酸化物、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム;さらに、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlagによる,1998年第250頁以降,「フィラー」を参照されたい。
【0110】
染料は、コーティング組成物に可溶な着色剤である。
【0111】
基材のコーティング方法
本発明による水性コーティング組成物は、単層コーティングを製造するための方法で使用されることができるが、多層コーティングを製造するためにも好ましい。
【0112】
コーティングされる基材は、好ましくはプラスチック、すなわちポリマー基材又は金属基材である。しかし、セラミック基材、又はガラスなど、他の種類の基材をコーティングすることも可能である。ポリマー基材は、乾燥及び硬化条件に耐える必要がある。最も好ましいのは、冷間圧延鋼などの鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛及びアルミニウム、アルミニウム/マグネシウム合金などのこれらの合金などの金属基板、及び、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリルニトリルブタジエンスチロール(ABS)及びエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのプラスチック基板である。好ましい基材は、自動車ボディ及び自動車ボディ部品などの自動車の部品である。
【0113】
以下に記載するような方法により、単層コーティング基材及び多層コーティング基材を得ることが可能である。基材は、化成コーティング層、電着コーティング層、特に好ましくはカチオン電着コーティング層、フィラーコーティング層及び/又はプライマーコーティング層及びベースコート層のうちの1つ以上で既にコーティングされている基材であってよい。「フィラーコーティング」という用語は、「フィラーコーティング」がいわゆるフィラーコーティング組成物から得られるため、「フィラー」という用語と混同されるべきではない。
【0114】
本発明のコーティングの製造方法は、以下のステップ
1)電着コーティング層を得るために、任意に化成コーティングされた金属基材に任意で電着コーティング組成物を塗布し、電着コーティングを硬化させること;次いで
2)1つ以上のフィラーコーティング層及び/又はプライマーコーティング層を得るために、任意に、少なくとも1つのフィラーコーティング組成物及び/又はプライマーコーティング組成物を先行のコーティング層上又は基材上に塗布し、好ましくはフィラーコーティング層及び/又はプライマーコーティング層を少なくとも部分的に硬化させること;次いで
3)少なくとも1つのベースコート層を得るために、任意に、少なくとも1つのベースコート組成物を先行のコーティング層上又は基材上に塗布し、好ましくはベースコート層を乾燥及び/又は少なくとも部分的に硬化させること;次いで
4)任意に、少なくとも1つのクリアコート組成物を、先行のステップで得られたコーティング層の上に塗布すること;及び
5)先行のいずれのステップでも硬化されなかったすべての層を共同で硬化させること;
を含み、
ここで、ステップ2)及び3)の少なくとも1つが実施され、ステップ2)及び3)の少なくとも1つにおいて、フィラーコーティング組成物、プライマーコーティング組成物及び/又はベースコート組成物の少なくとも1つが、本発明による水性コーティング組成物である。
【0115】
好ましくは、本発明による多層コーティングを製造するために、基材をコーティングする方法において、ステップ1)~5)が実施される。
【0116】
多層コーティングを製造するための本発明の方法において、個々のコーティング層は、特に好ましくはステップ3)及び4)で塗布される層は、好ましくはウェットオンウェット法と呼ばれる方法によって塗布される。ウェットオンウェット法では、先行の層を(完全に)硬化させることなく、次の層を先行の層に塗布する。このようなウェットオンウェット法の例は、ドイツ特許出願DE19948004A1、第17頁37行目~第19頁22行目から公知である。
【0117】
好ましくは、本発明による水性コーティング組成物は、ステップ3)において、自動車両、より詳細には自動車の多層コーティングの一部として、ベースコート層を製造するための水性ベースコート組成物として使用される。
【0118】
任意のステップ1)で形成される電着コーティング層は、好ましくは、電着浸漬コーティング法におけるカソード電着コーティング組成物から製造される。このような組成物は、好ましくは、カソード電着可能なポリ(メタ)アクリレート樹脂又はエポキシ-アミン樹脂、及び、上記で開示されたようなブロック化ポリイソシアネートからなる群から選択される架橋剤に基づく。電着コーティング層の好ましい乾燥層厚は、15μm~25μmの範囲である。
【0119】
電着コーティング層は、その上に他の層を塗布する前に硬化させることが好ましい。硬化温度は好ましくは100~250℃の範囲、より好ましくは140~220℃の範囲であり、硬化時間は好ましくは5~50分の範囲、より好ましくは10~40分の範囲である。
【0120】
任意のステップ2)で使用されるフィラーコーティング組成物及び/又はプライマーコーティング組成物として、当業者に公知の任意のフィラーコーティング組成物及びプライマーコーティング組成物を使用することができる。これらは、好ましくは、静電スプレーコーティングによって塗布される。フィラーコーティング層及び/又はプライマーコーティング層を製造するために使用されるそのようなコーティング組成物は、溶媒系又は水性の、一液型又は二液型組成物であり得る。しかしながら、本発明による水性コーティング組成物をフィラーコーティング組成物及び/又はプライマーコーティング組成物として使用することが好ましい。ステップ2)で得られたコーティング層の好ましい乾燥層厚は、15μm~45μmの範囲、より好ましくは20μm~40μmの範囲、最も好ましくは25μm~35μmの範囲である。乾燥温度は好ましくは20~70℃の範囲、より好ましくは25~50℃の範囲であり、乾燥時間は好ましくは2~30分の範囲、より好ましくは5~15分の範囲である。硬化温度は好ましくは140~180℃の範囲、より好ましくは150~170℃の範囲であり、硬化時間は好ましくは10~40分の範囲、より好ましくは15~30分の範囲である。
【0121】
任意のステップ3)で使用されるベースコート組成物は、当業者に公知の任意のベースコート組成物であり得る。これらは、好ましくは、静電スプレーコーティングによって塗布される。好ましくは、ステップ3)においてベースコート層を製造するために使用されるベースコート組成物は、溶媒系又は水性の、一液型又は二液型組成物である。しかし、ベースコート組成物として、本発明による水性コーティング組成物を使用することが好ましい。ステップ3)で得られたコーティング層の好ましい乾燥層厚は、5μm~40μmの範囲、より好ましくは10μm~35μmの範囲、最も好ましくは15μm~30μmの範囲である。乾燥温度は好ましくは20~90℃の範囲、より好ましくは25~60℃の範囲であり、乾燥時間は好ましくは2~30分の範囲、より好ましくは5~15分の範囲である。硬化温度は好ましくは130~180℃の範囲、より好ましくは150~170℃の範囲であり、硬化時間は好ましくは10~40分の範囲、より好ましくは15~30分の範囲である。
【0122】
任意のステップ4)で使用されるクリアコート組成物としては、当業者に既知の任意のクリアコート組成物を使用することができる。これらは、好ましくは、静電スプレーコーティングによって塗布される。好ましくは、クリアコート層を生成するために使用されるクリアコート組成物は、溶媒系又は水性の、一液型又は二液型組成物、好ましくは溶媒系二液型組成物である。ステップ4)で得られるコーティング層の好ましい乾燥層厚は、30μmから60μmの範囲、より好ましくは35μmから55μmの範囲、最も好ましくは40μmから50μmの範囲である。乾燥温度は好ましくは20~70℃の範囲、より好ましくは25~50℃の範囲であり、乾燥時間は好ましくは2~30分、より好ましくは5~15分である。硬化温度は好ましくは130から170℃、より好ましくは140から160℃の範囲であり、硬化時間は好ましくは15から45分の範囲、より好ましくは20から35分の範囲である。
【0123】
コーティングされた基材
本発明のさらなる目的は、本発明によるコーティングを製造するための方法によって得られ得るコーティングされた基材であって、好ましくは、該基材は自動車ボディ又はその部品から選択される。
【実施例】
【0124】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0125】
実験部
方法
固形分又は不揮発性分の決定
不揮発性分は、DIN EN ISO 3251(日付:2008年6月)に従って決定される。水性分散体の固形分の決定では、あらかじめ乾燥させたアルミ皿に1gの試料を秤量し、125℃の乾燥オーブンで60分間乾燥し、デシケーターで冷却した後、再度秤量する。導入された試料の総量に対する残渣が、不揮発性分に相当する。不揮発性分の体積は、必要に応じて、DIN 53219(日付:2009年8月)に従って任意に決定されることができる。
【0126】
乾燥膜厚の決定
膜厚は、ElectroPhysikのMiniTest(登録商標)3100-4100 Instrumentを用い、DIN EN ISO 2808(日付:2007年5月),方法12Aに従って決定される。
【0127】
低せん断粘度、高せん断粘度の決定
低せん断粘度及び高せん断粘度は、温度制御条件下(23.0℃±0.2℃)でDIN 53019-1(日付:2008年9月)に準拠した回転式粘度計を使用して、DIN 53019-2(日付:2001年2月)で校正される。この研究では、試料を最初に1000秒-1(ローディング段階)のせん断速度で5分間せん断し、次に1秒-1(アンローディング段階)のせん断速度で8分間せん断する。ローディング段階中での平均粘度レベル(高せん断粘度)と、アンローディング8分後のレベル(低せん断粘度)は測定データから決定される。
【0128】
顔料の予混合物の安定性の評価
本発明の顔料の予混合物、すなわち本発明の水性二酸化チタンスラリー(又は比較の組成物)の安定性は、保存中の顔料の沈降及び保存中に潜在的に形成された沈降物の撹拌能力に関して、視覚的に決定される。以下の基準が使用される:
a.安定性:室温又は40℃のオーブンで4週間後の顔料の予混合物の保存中に、分離が、例えば相分離の形態で起こるかどうかを決定する。
【0129】
b.沈降:安定化が足りないために、保存中に、顔料が沈降して沈殿物を形成するかどうかを決定する。
【0130】
評価は1から5までのスケールで定性的に行われる(1=非常に安定している又は沈殿物がない、3=中程度に安定している又は沈殿物が適度に形成されている、5=非常に不安定又は沈殿物が多く形成されている)。
【0131】
c.撹拌能力:保存後に形成され得た沈殿物を再び撹拌して、顔料の均一な予混合物を復元することができるかどうかを決定する。評価には、非常に簡単なものから非常に難しいものまでのスケールが使用される。
【0132】
代替的に、安定性、脱混合挙動、及び保存後の潜在的に可能な沈殿物の撹拌能力に関する顔料の予混合物の光学的評価が、3つのカテゴリーを用いて行われる:OK(非常に良好)、p.OK(部分的に良好)又はn.OK(良好でない)。
【0133】
顔料の予混合物の粉末度の評価
本発明の顔料の予混合物(又は比較の組成物)を、DIN EN ISO 1524に従ってHegmanによるグラインドメーターで測定し、粉末度又は粒状度を決定する。
【0134】
粒径の評価
本発明の顔料の予混合物(又は比較の組成物)の粒子の体積加重サイズ分布の分位数×10、×50又は×90は、ISO 13318-2 EN(日付:2007年9月)に従って光学キュベット遠心分離機での遠心を使用して決定される。LUM GmbHのLUMiSizer 651が、光経路長が2mmのデバイス及びキュベットとして使用される。
【0135】
25℃の測定温度、410nmの波長、の1234分-1回転数で、重複して測定を行い、平均値を計算する。
【0136】
体積加重サイズ分布の計算は、文献から得られたそれぞれの顔料の密度及び屈折率の値に基づいている。実施例では、二酸化チタン顔料について以下の値が使用されている:
二酸化チタン(ルチル型)
密度4250kg/m3
屈折率:2.75
吸収指数:0
水性ベースコートのウェッジ形構造物のコーティング
ピンホールの発生と膜厚依存性のレベリングを評価するために、以下の一般的な規定に従ってウェッジ形の多層塗料を調製する:
標準的なカソード電着コーティング(BASF Coatings GmbH社からのCathoGuard(登録商標)800)でコーティングされ、粗さ値Raが0.4~0.5である寸法30×50cmの鋼板の長手方向の一端を粘着テープ(Tesa社のテープ、19mm)で調製し、膜厚差を決定した。
【0137】
水性ベースコートが、0~40μmの目標膜厚(硬化物の膜厚)のウェッジとして静電塗布される。室温で2分(ピンホールの分析)又は4~5分(塗料のレベリングの分析)のフラッシュオフ時間の後、強制空気オーブンで、60℃で、10分間構造物を硬化させる。粘着テープの除去後、40~45μmの目標膜厚(硬化物の膜厚)の市販の二液型クリアコート(BASF Coatings GmbHのProGloss(登録商標))を、フローカップガンを使用して硬化した水性ベースコートに手動で塗布する。得られたクリアコート層を、室温(18~23℃)で10分間フラッシュオフし、その後、強制空気オーブンで、140℃で、20分間硬化させる。
【0138】
予焼戻し基材への水性ベースコートのウェッジ形構造物の塗布
予焼戻し基材上で膜厚依存性のレベリングを評価するために、以下の一般的な規定に従ってウェッジ形の多層コーティングを調製する:
標準的なカソード電着コーティング(BASF Coatings GmbH社からのCathoGuard(登録商標)800)でコーティングされた、寸法30×50cmの鋼板の長手方向の一端を粘着テープ(Tesa社のテープ、19mm)で調製し、膜厚差を決定した。そのように調製された基材を、55℃で8分間予焼戻しする。
【0139】
その後、水性ベースコートが、20~40μmの目標膜厚(硬化物の膜厚)で、ウェッジ形に空気圧で塗布される。4~5分の室温でのフラッシュオフタイムの後、強制空気オーブンで、55℃で、6分間構造物を硬化させる。
【0140】
粘着テープの除去後、40~45μmの目標膜厚(硬化物の膜厚)の市販の二液型クリアコート(BASF Coatings GmbHのProGloss(登録商標))を、フローカップガンを使用して硬化した水性ベースコートに手動で塗布する。得られたクリアコート層を、室温(18~23℃)で10分間フラッシュオフし、その後、強制空気オーブンで、140℃で、20分間硬化させる。
【0141】
膜厚依存性のレベリングの評価
膜厚依存性のレベリングに関する多層コーティングの評価は、以下の一般的な規定に基づいている:
水性ベースコート構造全体の乾燥膜厚を制御し、水性ベースコートのウェッジ形膜厚については、鋼板上で以下の範囲を強調する:25~30μmと30~35μm又は20~25μm、25~30μm、30~35μmと35~40μm。
【0142】
膜厚依存性のレベリングは、ウェーブスキャン装置(Byk/Gardner社製)を用いて、ベースコートの膜厚の上記4つの範囲内で決定又は評価される。この目的のために、60°の角度を使ってレーザービームは調査される表面に向けられる。測定装置は、10cmの測定区間で、いわゆる短波長範囲(0.3~1.2mm)及びいわゆる長波長範囲(1.2~12mm)での反射光の変化を認識する(長波=LW;短波=SW;値が小さいほど外観が良好)。さらに、多層構造体の表面に反射された画像の鮮明度の指標として、測定装置を用いてパラメータ「画像の明瞭度」(DOI)を決定する(数値が高いほど外観が良好)。
【0143】
ピンホール限界の決定
ピンホール感度の評価は、ピンホールが発生したときの硬化した水性ベースコートの膜厚を記録することによって目視で行われる。
【0144】
光沢、ヘイズ、輝度の決定
20°の角度における光沢及びヘイズのレベル、ならびに必要に応じて、輝度を決定するために、150μmのスパイラルブレードを用いて、コントラストモニターを備えた分析用電解質-白色プレート上に、本発明コーティング組成物(又は比較の組成物)を塗布する。室温(18~23℃)で10分間のフラッシュオフ時間の後、得られた水性ベースコート層を強制空気オーブン中で、80℃で、10分間硬化させる。水性ベースコート層が不透明でない場合、130℃でさらに10分間硬化させた後、150μmのスパイラルブレードを使用してさらに塗布する。室温で10分間のフラッシュオフ時間の後、得られた水性ベースコートを80℃で10分間中間乾燥させる。
【0145】
乾燥した水性ベースコート膜に、100μmのスパイラルブレードを使用して市販の二液型クリアコートを塗布する。得られたクリアコート膜を室温(18~23℃)で10分間フラッシングした後、強制空気オーブンで、140℃で、20分間硬化させる。
【0146】
それぞれのコーティング基材を、分光光度計(BYK Instruments:BYK-mac I Spectrophotometer)を用いて20°の角度で測定し、輝度値L*(CIEL*a*b*色空間)を決定し、又はヘイズ値の決定のためにマイクロヘイズプラス(BYK Instruments社製)を使用する。
【0147】
実施例
以下の本発明の実施例及び比較例は、本発明を説明するためのものであるが、限定的な解釈を与えるべきものではない。
【0148】
特に断りのない限り、部の数値は質量部であり、%の値はいずれの場合も質量%である。
【0149】
市販の二酸化チタンスラリーの塗布
以下の二酸化チタンスラリーは市販されており、比較のために使用される:
KRONOS 4311:KRONOS WORLDWIDE,Inc社から入手可能;スラリーは、顔料Titan Rutil 2310(ルチル型はKRONOS WORLDWIDE,Inc社からも入手可能;塩素プロセスを用いて製造)を含む。
【0150】
HEUCOTINT UN 280061 HW:Heubach GmbH社から入手可能;スラリーは、塩素プロセスを用いて製造された二酸化チタン顔料ルチル型を含む。
【0151】
1 中間生成物の調製
1.1 比較のペーストPP1の調製
白色ペーストは、50質量部のTitan Rutil 2310(KRONOS WORLDWIDE製、ルチル型、塩素プロセスを用いて製造)、DE4009858A1(実施例D、第16段、37~59行)で調製された6質量部のポリエステル、EP0228003B2(第8頁、6~18行)で調製された24.7質量部のバインダー分散体、10.5質量部の脱イオン水、4質量部の2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-ジオール(BG中52%;BASF SE社製)、4.1質量部のブチルグリコール、0.4質量部の水中10%ジメチルエタノールアミン、及び0.3質量部のAcrysolRM-8(The Dow Chemical Company社製)から粉砕プロセスによって調製される。
【0152】
1.2 マットペーストMP1の作製
マットペーストは、12質量部のSyloid(登録商標)ED 3(W.R.Grace&Co.社製)、DE4009858A1(実施例D、第16段、37~59行)で調製された30質量部のポリエステル、46質量部のブチルグリコール及び12質量部の水中10%ジメチルエタノールアミンから調製される。
【0153】
1.3 黒色ペーストPP2の調製
黒色ペーストは、10質量部のカーボンブラック(Cabot Corporation社からのカーボンブラックMonarch(登録商標)1400)、57質量部のWO91/15528(第23頁26行目から第25頁24行目)に従って調製された水性バインダー分散体、25質量部の脱イオン水、2質量部のPluriol(登録商標)P900(BASF SE社製)及び6質量部の水中10%ジメチルエタノールアミンから調製される。
【0154】
2 中間生成物の調製
2.1 比較の二酸化チタン調製物PS1~PS4の調製
表2.1に示される成分を、指示された順序で顔料を除いて水性混合物に添加し、撹拌する。この混合物を10分間激しく撹拌し、均一な混合物を形成する。その後、撹拌しながら顔料を添加する。その後、得られた混合物を、ディゾルバー(例えばNetzsch社製のMasterMix(登録商標))、インラインディゾルバー(例えばFirma Cavitron社製のCavitron(登録商標)CD 1010)又はジェットストリームミキサー(例えばFirma Ystral社製のConti-TDS 5)を用いてさらに10~20分間激しく分散させる。
【0155】
【0156】
2.2 本発明の二酸化チタン調製物PS5*~PS9*の調製
表2.2に示される成分を、指示された順序で顔料を除いて水性混合物に添加し、撹拌する。この混合物を10分間激しく撹拌し、均一な混合物を形成する。その後、撹拌しながら顔料を添加し、試料PS7*の場合は疎水性シリカ(Aerosil(登録商標)R 972)を追加で添加する。その後、得られた混合物を、ディゾルバー(例えばNetzsch社製のMasterMix(登録商標))、インラインディゾルバー(例えばFirma Cavitron社製のCavitron(登録商標)CD 1010)又はジェットストリームミキサー(例えばFirma Ystral社製のConti-TDS 5)を用いてさらに10~20分間激しく分散させる。3つのデバイスすべてが本発明に適していると評価された。必要に応じて、ジメチルエタノールアミン溶液を加えてpH値を8~9の範囲になるように調整し、及び/又は水を加えてその後の10分間の撹拌により固形分を調整する。
【0157】
【0158】
3 水性ベースコートの調製例
3.1 比較の水性ベースコートWBL1及びWBL2並びに本発明の水性ベースコートWBL3*の調製
表3.1の「水相」の下に示される成分を、指示された順序で水性混合物に添加し、撹拌する。混合物を10分間撹拌した後、脱イオン水とジメチルエタノールアミンを用いて8.5±0.2のpH値に、及び回転式粘度計(Anton Paar社からのC-LTD80/QC温度制御付きRheolab QC)を使用して23℃で測定された1000s-1のせん断応力で、135±10mPa・sのスプレー粘度に調製する。
【0159】
【0160】
3.2 比較の水性ベースコートWBL4及びWBL5並びに本発明の水性ベースコートWBL6*及びWBL7*の調製
表3.2の「水相」の下に示される成分を、指示された順序で水性混合物に添加し、撹拌する。混合物を10分間撹拌した後、脱イオン水とジメチルエタノールアミンを用いて8.0±0.2のpH値に、及び回転式粘度計(Anton Paar社からのC-LTD80/QC温度制御付きRheolab QC)を使用して23℃で測定された1000s-1のせん断応力で、100±10mPa・sのスプレー粘度に調製する。
【0161】
【0162】
3.3 比較の水性ベースコートWBL8及びWBL9並びに本発明の水性ベースコートWBL10*及びWBL11*の調製
表3.3の「水相」の下に示される成分を、指示された順序で水性混合物に添加し、撹拌する。混合物を10分間撹拌した後、脱イオン水とジメチルエタノールアミンを用いて8.0±0.2のpH値に、及び回転式粘度計(Anton Paar社からのC-LTD80/QC温度制御付きRheolab QC)を使用して23℃で測定された1000s-1のせん断応力で、100±10mPa・sのスプレー粘度に調製する。
【0163】
【0164】
4 比較及び本発明の顔料調製物と水性ベースコートの比較
4.1 レオロジー挙動、安定性の評価、粒径の粉末度と分布に関する顔料調製物PS1~PS4及びKRONOS 4311(比較の調製物)とPS5*~PS9*(本発明の調製物)の比較
レオロジー挙動、(保存)安定性の評価、並びに顔料のそれぞれの予混合物の粒径の粉末度と分布に関する二酸化チタン顔料調製物PS1~PS4(比較の調製物)とPS5*~PS9*(本発明の調製物)及び参照のスラリーKRONOS 4311(比較例)の評価は前述の方法に基づいている。表4.1から表4.6に結果を要約する。
【0165】
【0166】
【0167】
表4.1及び表4.2に示されるデータは、本発明の二酸化チタン顔料調製物PS5*~PS9*が明らかにより低い低せん断粘度を示し、その結果、潜在的に改善されたポンプ可能性だけでなく、著しく増加した安定性を示すことを証明している。PS5*~PS9*は、分散された顔料粒子の沈降の程度がより低いことを示す。さらに、沈殿物は、比較の試料PS1~PS4及び参照のスラリーKRONOS 4311よりもより容易に撹拌されることができる。
【0168】
参照のスラリーHEUCOTINT UN 280061 HWは、二酸化チタン顔料調製物PS1~PS4及びPS5*~PS9*並びにKRONOS 4311よりも、60%の低い顔料分率を示す。さらに、低せん断粘度が16000mPasを超えていたため、ポンプ可能性を保証することができなかった。
【0169】
【0170】
【0171】
表4.3及び表4.4は、本発明の顔料調合物PS8*が、参照のKRONOS 4311よりも、高い40℃での保存安定性を示すことを証明している。
【0172】
本発明の顔料調製物PS8*及び参照のKRONOS 4311の低せん断粘度及び高せん断粘度は、室温で2週間又は4週間保存する間、一定レベルを有する。KRONOS 4311とは対照的に、PS8*はオーブンでの保存中も安定しており、粘度の上昇はわずかで、軽い沈殿物は容易に撹拌でき、再分散させることができる。
【0173】
KRONOS 4311は、撹拌されにくい沈殿物のため、測定不能である。
【0174】
【0175】
【0176】
それぞれの顔料調製物の粉末度を決定することにより、比較のペーストPP1及び本発明のペーストPS8*は、KRONOS 4311とは対照的に、より良好な粉砕度を示すという結果が導かれる。本発明のペーストPS8*は、ペーストPP1(エネルギー集約的な粉砕プロセスを使用して製造される)と同程度の粉砕を粉砕プロセスなしで達成する。
【0177】
光遠心法を使用してPS8*とKRONOS 4311を比較すると、粒子の体積加重サイズ分布の測定精度の範囲内で同等の分位が達成されていることがわかる。
【0178】
4.2 膜厚依存性のレベリング及びピンホールの限界に関する水性ベースコートWBL1及びWBL2(比較の調製物)とWBL3*(本発明の調製物)の比較
膜厚依存性のレベリング及びピンホールの限界に関する水性ベースコートWBL1(比較のペーストPP1を含む)、WBL2(参照のスラリーKRONOS 4311を含む)及びWBL3*(本発明の顔料調製物PS8*を含む)の試験は、前述の方法に従って行われる。表4.7から表4.9に結果を要約する。
【0179】
【0180】
【0181】
表4.7及び表4.8は、本発明の水性ベースコートWBL3*に本発明の顔料調製物PS8*を使用すると、特に短波及びDOIに関して、膜厚依存性レベリングが改善されることを証明している。内部に基材のコーティングに似せる予焼戻しシートを用いて、比較のペーストPP1又は参照のスラリーKRONOS 4311に基づく比較の水性ベースコートとは対照的に、本発明の水性ベースコートのレベリングが大幅に改善されたことが検出された。
【0182】
【0183】
表4.9の結果は、WBL1の比較のペーストPP1を本発明の顔料調製物PS8*(WBL3*)で代替してもピンホールの限界にほとんど影響を及ぼさないのに対し、参照のスラリーKRONOS 4311(WBL2)を使用すると、ピンホールの限界は著しく悪化することを示している。
【0184】
4.3 光沢度、ヘイズ値及び輝度に関する水性ベースコートWBL4及びWBL5ならびにWBL8及びWBL9(比較の調製物)と、WBL6*及びWBL7*ならびにWBL10*及びWBL11*(本発明の調製物)の比較
光沢度、ヘイズ値及び輝度に関する水性ベースコートWBL4及びWBL8(比較のペーストPP1を含む)、WBL5及びWBL9(参照のスラリーKRONOS 4311を含む)、WBL6*及びWBL10*(本発明の顔料調製物PS8*を含む)、並びにWBL7*及びWBL11*(本発明の顔料調製物PS9*を含む)の試験は、前述の方法に従って行われる。表4.10及び表4.11に結果を要約する。
【0185】
【0186】
【0187】
表4.10及び表4.11は、本発明の水性ベースコートWBL6*及びWBL7*ならびにWBL10*及びWBL11*における本発明の顔料調製物PS8*及びPS9*の使用が、WBL4及びWBL5又はWBL8及びWBL9と比較して、光沢、ヘイズ又は輝度について同等の値をもたらすことを示す。参照のスラリーKRONOS 4311との比較では、光沢とヘイズに関して利点が見いだされた。
【0188】
5.二酸化チタン顔料調製物と異なるバインダーとの混合物の調製
5.1 比較の混合物M1~M6の調製
表5.1に示される成分を、指示された順序で水性混合物に添加し、撹拌する。混合物を10分間激しく撹拌し、顔料含有量とバインダー含有量の比が5.1を示す均一な混合物を調製する。
【0189】
【0190】
5.2 本発明の混合物M7*~M12*の調製
表5.2に示される成分を、指示された順序で水性混合物に添加し、撹拌する。混合物を10分間激しく撹拌し、顔料含有量とバインダー含有量の比が5.1を示す均一な混合物を調製する。
【0191】
【0192】
6.異なるバインダーを有する顔料調合物の比較混合物と本発明の混合物の比較
6.1 レオロジー挙動及び二酸化チタンの沈降傾向の評価に関するKRONOS 4311に基づく混合物M1~M6(比較)とPS8*に基づくM7*~M12*(本発明)の比較
レオロジー挙動及び二酸化チタンの沈降傾向の評価に関するKRONOS 4311に基づく混合物M1~M6(比較)とPS8*に基づく混合物M7*~M12*(本発明)の試験は、前述の方法に従って行われる。表6.1に結果を要約する。
【0193】
【0194】
表6.1のデータは、本発明の顔料調製物PS8*を異なるバインダーとの混合物で使用すると、参照のスラリーKRONOS 4311と比較して、低いレオロジー相互作用をもたらすことを明らかにしている。特に、US5320673の第17段53行から第18段29行に従って調製されたポリアクリレート(実施例2)は、KRONOS 4311と高い不適合性を示す。レオロジー的相互作用が高すぎて、サンプルを測定することができず、沈降を決定することができない。
【0195】
対照的に、PS8*はこのバインダーと高い相溶性を示し、低せん断粘度は純粋なスラリーと比較して適度にしか上昇しない。
【0196】
さらに、表6.1は、M7*からM12*は、それぞれの参照のM1からM6と比較して、著しく良好な沈降を示すことが明らかにする。PS8*の良好な安定性、及び異なるバインダーとの適合性に関する利点は、本発明の顔料スラリーが、参照のスラリーよりも、調製物の作製に多くの可能性をもたらすことを証明している。
【国際調査報告】