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特表2023-544217高速光ワイヤレス通信のためのハイブリッド光トランスミッタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】高速光ワイヤレス通信のためのハイブリッド光トランスミッタ
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/114 20130101AFI20231013BHJP
   H04B 10/073 20130101ALI20231013BHJP
【FI】
H04B10/114
H04B10/073
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528355
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2021081141
(87)【国際公開番号】W WO2022101217
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20207389.6
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】カリード アミール マスード
(72)【発明者】
【氏名】ヨルダン クリスチャン
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AA21
5K102AD01
5K102AH01
5K102AH26
5K102AL23
5K102KA01
5K102KA39
5K102LA03
5K102LA24
5K102LA53
5K102MA01
5K102MB02
5K102MC06
5K102MD04
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH22
5K102MH27
5K102PB02
5K102PB14
5K102PH31
5K102RD27
5K102RD28
(57)【要約】
光ワイヤレス通信システムにおいて高いデータレートを満たし大きなカバレッジを得るためのアプリケーション要件を満たすために、光ワイヤレス通信(OWC)トランスミッタ(100)が本発明で開示される。OWCトランスミッタ(100)は、第1の視野(FoV)(155)において第1の光データ信号(151)を発するように構成される第1の光源(150)と、第2のFoV(165)において第2の光データ信号(161)を発するように構成される第2の光源(160)とを含む。第1の光源(150)及び第2の光源(160)は異なるタイプであり、第1のFoV(155)は第2のFoV(165)よりも広い。OWCトランスミッタ(100)は、同時に、第1の光源(150)を介して第1の光データ信号(151)を発する、及び、第2の光源(160)を介して第2の光データ信号(161)を発するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の視野において第1の光データ信号を発するように構成される第1の光源と、
第2の視野において第2の光データ信号を発するように構成される第2の光源と、
を含む、光ワイヤレス通信トランスミッタであって、
前記第1の光源及び前記第2の光源は異なるタイプであり、前記第1の視野は前記第2の視野よりも広く、
当該光ワイヤレス通信トランスミッタは、同時に、前記第1の光源を介して前記第1の光データ信号を発する、及び、前記第2の光源を介して前記第2の光データ信号を発するように構成され、
当該光ワイヤレス通信トランスミッタは、前記第1の光源と前記第2の光源との間の応答時間の差を補償するように構成される、光ワイヤレス通信トランスミッタ。
【請求項2】
前記第2の光源は、前記第1の光源よりも大きな帯域幅をサポートする、請求項1に記載の光ワイヤレス通信トランスミッタ。
【請求項3】
前記第1の光データ信号及び前記第2の光データ信号は、当該光ワイヤレス通信トランスミッタに提供される共通データストリームからのものである、請求項1又は2に記載の光ワイヤレス通信トランスミッタ。
【請求項4】
前記第1の光データ信号は、前記共通データストリームの低周波数部分を含み、前記第2の光データ信号は、前記共通データストリームの高周波数部分を含む、請求項3に記載の光ワイヤレス通信トランスミッタ。
【請求項5】
前記第1の光データ信号に含まれる情報は、前記第2の光データ信号に完全に含まれる、請求項3に記載の光ワイヤレス通信トランスミッタ。
【請求項6】
当該光ワイヤレス通信トランスミッタは、前記第1の光源の応答時間を測定するためのスニファ回路を含み、当該光ワイヤレス通信トランスミッタは、前記第1の光源の前記測定された応答時間に応じて、前記第2の光源への共通データストリームからの信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償するように構成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光ワイヤレス通信トランスミッタ。
【請求項7】
当該光ワイヤレス通信トランスミッタは、前記第1の光データ信号及び前記第2の光データ信号を送信する前に以下のステップを実行するように構成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光ワイヤレス通信トランスミッタ、
それぞれ前記第1の光源を介して及び前記第2の光源を介してリモート光ワイヤレス通信レシーバにテスト信号を送信するステップ、
前記リモート光ワイヤレス通信レシーバから応答信号を受信するステップであって、前記応答信号は、それぞれ前記第1の光源及び前記第2の光源によって送信された前記テスト信号から導出されるチャネル状態情報に関するフィードバックを含む、ステップ、
前記応答信号に基づいて前記第1の光源と前記第2の光源との間の応答時間の差を決定するステップ、及び
前記決定された応答時間の差に応じて、前記第2の光源への共通データストリームからの信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償するステップ。
【請求項8】
前記第1の光源は、少なくとも1つの発光ダイオードを含み、前記第2の光源は、レーザ、垂直キャビティ面発光レーザのうちの少なくとも1つを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光ワイヤレス通信トランスミッタ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光ワイヤレス通信トランスミッタと、
少なくとも1つの光センサを含むリモート光ワイヤレス通信レシーバであって、前記少なくとも1つの光センサは、前記光ワイヤレス通信トランスミッタによって送信される前記第1の光データ信号及び前記第2の光データ信号の少なくとも一方を受信するように構成される、リモート光ワイヤレス通信レシーバと、
を含む、光ワイヤレス通信システム。
【請求項10】
光ワイヤレス通信トランスミッタの方法であって、当該方法は、
第1の視野において第1の光源を介して第1の光データ信号を発することと、
第2の視野において第2の光源を介して第2の光データ信号を発することと、
同時に、前記第1の光源を介して前記第1の光データ信号を発する、及び、前記第2の光源を介して前記第2の光データ信号を発することと、
を含み、
前記第1の光源及び前記第2の光源は異なるタイプであり、前記第1の視野は前記第2の視野よりも広く、
当該方法は、
前記第1の光源と前記第2の光源との間の応答時間の差を補償すること、
を含む、方法。
【請求項11】
当該方法は、
前記第1の光源の応答時間を測定することと、
前記第1の光源の前記測定された応答時間に応じて、前記第2の光源への信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償することと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
当該方法は、
それぞれ前記第1の光源を介して及び前記第2の光源を介してテスト信号を送信することと、
前記テスト信号から導出されるチャネル状態情報に関するフィードバックを含む、応答信号を受信することと、
前記応答信号に基づいて前記第1の光源と前記第2の光源との間の応答時間の差を決定することと、
前記決定された応答時間の差に応じて、前記第2の光源への信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償することと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
コンピューティングプログラムであって、当該プログラムが処理手段を含む光ワイヤレス通信トランスミッタによって実行された場合、前記処理手段に請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法を実行させるコード手段を含む、コンピューティングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Li-Fiネットワーク等、光ワイヤレス通信ネットワーク(optical wireless communication network)の分野に関する。とりわけ、本明細書では、高速光ワイヤレス通信をサポートするためのハイブリッド光トランスミッタ(hybrid optical transmitter)を有するシステムに関する、様々な方法、装置、システム、及びコンピュータ可読媒体が開示される。
【背景技術】
【0002】
ラップトップ、タブレット、スマートフォン等、ますます多くの電子デバイスがワイヤレスでインターネットに接続することを可能にするために、ワイヤレス通信は、データレート及びリンク品質に関するこれまでにない要件に直面し、IoT(Internet-of-Things)に関する新たなデジタル革命を踏まえ、このような要件は年々高まっている。Wi-Fi(登録商標)等の無線周波数技術(Radio frequency technology)は、この革命に取り組むにはスペクトルキャパシティ(spectrum capacity)が限られている。一方、ライトフィデリティ(light fidelity)(Li-Fi)は、その本質的なセキュリティ強化(intrinsic security enhancement)、及び、可視光、紫外線(UV)、赤外線(IR)スペクトルの利用可能な帯域幅でより高いデータレートをサポートするケイパビリティ(capability)でますます注目を集めている。さらに、Li-Fiは指向性があり、光遮断材料によって遮蔽されるため、同じ帯域幅を空間的に再利用することによりユーザの密なエリアに、Wi-Fi(登録商標)と比較して、より多くのアクセスポイントを配備する可能性を備える。ワイヤレス無線周波数通信(wireless radio frequency communication)に対するこれらの重要な優位性は、Li-FiをIoTアプリケーション及び屋内ワイヤレスアクセスのための混雑した無線スペクトル(crowded radio spectrum)への圧力を緩和する有望なセキュアソリューションにしている。Li-Fiの他の利点としては、特定のユーザに保証される帯域幅、及び電磁干渉を受けやすいエリアにおいて安全に機能する能力(ability)が挙げられる。それゆえ、Li-Fiは、次世代のイマーシブコネクティビティ(immersive connectivity)を可能にする非常に有望な技術である。
【0003】
照明ベースの通信の分野ではいくつかの関連するターミノロジーがある。可視光通信(VLC:visible-light communication)は、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)等の強度変調光源によって、人間の目の持続性(persistence)よりも速くデータを送信する。Li-Fiは、日常照明器具(everyday luminaire)、例えば、室内照明又は屋外照明等の照明源によって発せられる光に信号を埋め込み、斯くして、照明器具からの照明を情報のキャリアとして使用することを可能にするために用いられることが多い。斯くして、光は、部屋等の対象環境を照らすための可視照明寄与(典型的には、光の主要な目的)と、環境に情報を提供するための埋め込まれた信号(典型的には、光の副次的な機能と考えられる)との両方を含み得る。このような場合、変調は、典型的には、人間の知覚を超えるように十分に高い周波数で、又は、少なくとも、目に見える一時的な光アーティファクト(例えば、フリッカ及び/又はストロボアーティファクト等)が、人間が気づかない若しくは少なくとも人間が許容できるように十分に高い周波数で十分に弱くなるように行われる。斯くして、埋め込まれた信号は、主要な照明機能に影響を与えない。すなわち、ユーザは、全体的な照明を知覚するだけで、当該照明に変調されているデータの効果は知覚しない。
【0004】
高速のワイヤレス光通信の場合、可視光通信ではなく赤外線(IR)通信が用いられることがよくある。紫外線及び赤外線放射は人間の目には見えないが、スペクトルのこれらの領域を利用する技術は、屈折率の場合等、波長依存性の結果としてばらつきが生じる可能性はあるが、同様である。多くの場合、紫外線及び/又は赤外線を利用することは、これらの周波数範囲が人間の目には見えず、よりフレキシビリティがシステムに導入されることができるため、有利である。無論、紫外量子(ultraviolet quantum)は、赤外及び/又は可視光に比べてより高いエネルギレベルを有するため、状況によっては紫外光の使用が望ましくない場合もある。
【0005】
変調に基づいて、光における情報は、任意の適切な光センサ又はフォトディテクタを用いて検出されることができる。例えば、光センサは、フォトダイオードであってもよい。光センサは、専用のフォトセル(ポイントディテクタ)、場合によってはレンズ、リフレクタ、ディフューザ又は蛍光体コンバータ(低速用)を備えたフォトセルのアレイ、又はフォトセル(ピクセル)のアレイ及びアレイに像を形成するためのレンズであってもよい。例えば、光センサは、スマートフォン、タブレット又はラップトップ等のユーザデバイスにプラグインするドングルに含まれる専用のフォトセルであってもよく、又は、センサは、統合されてもよく及び/又は3D顔認識のために元々は設計されている赤外線ディテクタのアレイ等、二重目的であってもよい。どちらにしても、これにより、ユーザデバイス上で動作するアプリケーションは、光を介してデータを受信することが可能になる。
【0006】
Li-Fiシステムは、THzの範囲の非許可帯域幅(un-licensed bandwidth)で非常に高いデータレートをサポートする可能性があるが、現在商業的に達成可能なビットレートは、典型的には、LED(可視又はIR)の低い固有の帯域幅(10~20MHz)に起因して、OFDM等のスペクトル効率の高い変調を使用して数百Mbpsの範囲にある。さらに、Li-Fiシステムが大きなカバレッジ(例えば、半値全幅(FWHM:full width at half maximum)の関数に従って30~60°)をサポートすることは非常に魅力的である。しかしながら、大きなカバレッジの要件は、典型的には、受信光パワーの大幅な低減(高いパスロス、TXパワーを目の安全制限下に維持)をもたらし、したがって、全体のスループットをさらに制限する可能性がある。一方、レーザ、又は垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL:vertical-cavity surface-emitting laser)ベースのLi-Fiシステムは、大きな変調帯域幅をサポートすることができる。しかしながら、目の安全のために、レーザ/VCSELによって発せられるパワー総量はかなり制限され、斯くして、大きなカバレッジを実現することは依然困難である。
【0007】
GB2568659Aは、メディアアクセス制御(MAC)層及び2つの異なる物理(PHY)層を含む光ワイヤレス通信トランスミッタに関する。PHY層の各々は、それぞれ異なる光源を駆動する。
【0008】
MARRACCINI PHILIP J等による「Smart multiple-mode indoor optical wireless design and multimode light source smart energy-efficient links」は、環境及びアプリケーションの変化にスマートに適応するためにラインオブサイト(LOS)及び非LOS光ワイヤレス方法を組み合わせるスマートマルチモード屋内光ワイヤレスシステムに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光ワイヤレス通信リンクの性能は、光フロントエンド、すなわち、トランスミッタ側の光源に大きく依存する。例えば、LEDベースの光ワイヤレス通信システムでは、比較的大きな視野(FoV:Field of View)及び長い通信距離で、低~中のデータレートが達成されることができる。レーザ/VCSELベースの光ワイヤレス通信システムでは、比較的小さなカバレッジ(狭ビーム)及び短い通信距離で、より高いデータレートが達成されることができる。
【0010】
異なる光源の利益を活用するために、本発明者らは、少なくとも2つの異なる光源を含むハイブリッド光フロントエンドを備えるトランスミッタを配備することを提案する。一例として、LED及びVCSELのハイブリッドでは、トランスミッタは、LED及びVCSELがオーバーラップするゾーンにおいて高いデータレートを提供し、LEDのみのカバレッジゾーンにおいて中程度のデータレート(moderate data rate)を提供することができる。しかしながら、異なる光源間の応答時間の差に起因して、コロケートされた(co-located)異なる光源は、レシーバ側で互いに干渉をもたらし、通信性能に妥協する可能性がある。
【0011】
上記に鑑み、本開示は、高速及び大きなカバレッジの両方を達成するためのハイブリッドトランスミッタを提供するための方法、装置、及びシステムに関する。とりわけ、本発明の目的は、請求項1に記載の光ワイヤレス通信(OWC:optical wireless communication)トランスミッタ、請求項9に記載のOWCシステム、請求項10に記載のOWCトランスミッタの方法、及び請求項13に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、OWCトランスミッタが提供される。OWCトランスミッタは、第1の視野(FoV)において第1の光データ信号を発するように構成される第1の光源と、第2のFoVにおいて第2の光データ信号を発するように構成される第2の光源とを含み、第1の光源及び第2の光源は異なるタイプであり、第1のFoVは第2のFoVよりも広く、光ワイヤレス通信トランスミッタはさらに、同時に、第1の光源を介して第1の光データ信号を発する、及び、第2の光源を介して第2の光データ信号を発するように構成される。
【0013】
OWCトランスミッタはさらに、第1の光源と第2の光源との間の応答時間の差を補償するように構成される。応答時間は、OWCトランスミッタ側でローカルに測定されてもよく、又は、フィードバックループを介してリモートOWCレシーバから得られてもよい。
【0014】
発光ダイオード(LED)、レーザ、VCSEL(垂直キャビティ面発光レーザ)、VCSELアレイ、レーザダイオード、LEP(発光プラズマ(light-emitting plasma))等、異なるタイプの光源がある。開示されるOWCトランスミッタは、少なくとも2つの異なる光源を含む。2つの光源の違いは、電力消費、カバレッジ、最大出力パワー、応答時間又は信号帯域幅にあってもよい。前述したように、LEDベースの光ワイヤレス通信システムは、比較的長い通信距離及び大きなFoV/カバレッジエリアであるが、低~中のデータレートによって特徴付けられ、一方、VCSELベースの光ワイヤレス通信システムは、高いデータレートであるが、狭いFoVで比較的小さな角度カバレッジによって特徴付けられる。
【0015】
トランスミッタのデータレートを高めるために、2つの異種(heterogeneous)光源は同時に送信するように構成される。2つの光源は実質的に同時に発していることに留意されたい。2つの光源は異なるデータレートをサポートしてもよいので、同じ量の情報が送信されるべきである場合、2つの光源は実質的に同時に送信を開始してもよいが、送信速度又はデータレートの違いに起因して、一方が他方より早く終了する可能性がある。
【0016】
好ましい構成(configuration)において、第2の光源は、第1の光源よりも大きな帯域幅をサポートする。
【0017】
第2の光源のより大きな帯域幅では、より高いデータレートがサポートされることができる。この意味で、第2の光源は、第1の光源よりも高性能である。典型的には、これはまた、第2の光源はより高い電力消費を消費する可能性があることも示唆する。しかしながら、第2の光源は、第1の光源と比較して、同じ量のデータを送信するのに必要な時間が短く、FoVがより小さいので、ある量のデータを送信するのに消費されるエネルギは同等か、ましてはより少ない可能性がある。
【0018】
有益には、第1の光データ信号及び第2の光データ信号は、OWCトランスミッタに提供される共通データストリームからのものである。
【0019】
高速及び大きなカバレッジの両方を達成するために、第1の光データ信号及び第2の光データ信号を共通データストリームから生成することが有益である。斯くして、同じ生データが、第1の光源を有する第1のトランスミッタチェーン及び第2の光源を有する第2のトランスミッタチェーンに供給される。第1の光源は第2の光源と比較して帯域幅が狭いので、データストリームの低解像度又は圧縮バージョンが第1の光源によって送信されてもよく、完全な情報が第2の光源によって配信されてもよい。第1の光源のデータレートがデータストリームのスループットをサポートするのに十分である場合、同一の情報が両方の光源によって送信されてもよい。また、第1の光源及び第2の光源が同じ生データを共同で(in a collective manner)送信し、同じデータの異なる部分又は周波数成分がそれぞれ2つの光源を介して送信されるように構成されてもよい。
【0020】
共通データストリームがOWCトランスミッタに提供される場合、第1のオプションでは、第1の光データ信号は、共通データストリームの低周波数部分を含み、第2の光データ信号は、共通データストリームの高周波数部分を含む。
【0021】
第1の光源及び第2の光源を介す2つの同時光リンク間の干渉を回避するために、共通データストリームは、低周波数部分及び高周波数部分に分割され、それぞれ、第1の光データ信号及び第2の光データ信号として配信される。好ましくは、共通データストリームの低周波数部分の帯域幅は、第1の光源のスループットを最大化するために第1の光源の帯域幅とマッチする。斯くして、分割は、共通データストリームの高周波数部分が、低周波数部分よりも大きな帯域幅を有するように保たれる。
【0022】
このオプションでは、第1の光データ信号及び第2の光データ信号は共通データストリームに由来するが、同じデータソースの異なる周波数成分が第1の光源及び第2の光源を介して送信される。したがって、第1の光源及び第2の光源は、周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)モードで動作される。
【0023】
共通データストリームがOWCトランスミッタに提供される場合、第2のオプションでは、第1の光データ信号及び第2の光データ信号は周波数がオーバーラップし、第1の光データ信号に含まれる情報は、第2の光データ信号に完全に含まれる。
【0024】
スループットをさらに向上させるためには、第1の光源及び第2の光源の両方によって同じ周波数バンドを共有することがより好ましい。斯くして、第1の光データ信号の周波数は、第2の光データ信号の周波数によって完全にカバーされる。このセットアップでは、第1の光源及び第2の光源を介して発せられる光が同期してリモートレシーバ側に到着するように保つことが重要である。
【0025】
このオプションでは、同じ信号の2つのバージョン、すなわち、低解像度バージョン及び高解像度バージョンが、それぞれ第1の光源及び第2の光源を介して送信される。第1の光源は第2の光源よりもFoVが広いので、第1の光源を介して低解像度の信号を送信することにより、OWCトランスミッタのカバレッジが拡張される。それゆえ、リモートレシーバが第2の光源のFoV内に位置する場合、リモートレシーバは、信号の全詳細を享受することができる。リモートレシーバが当該領域から出るが、第1の光源のFoV内に移動する場合、リモートデバイスは、低解像度の信号を依然として得ることができる。
【0026】
第2のオプションでは、OWCトランスミッタはさらに、第1の光源と第2の光源との間の応答時間の差を補償するように構成されることが有利である。
【0027】
信号はトランスミッタの電気的部分(electrical part)において時間領域で正確に制御されることができるので、第1の光データ信号及び第2の光データ信号は、2つの光フロントエンドに実質的に同時に到着し得る。第1の光源と第2の光源との間の応答時間の差等、さらなるレイテンシ(additional latency)が、トランスミッタの光学的部分(optical part)において発せられた信号に加えられ得る。
【0028】
異なる光源の応答時間(遅延応答)はかなり異なる可能性がある。例えば、LEDの場合、応答時間は最大10~20nsである可能性があるのに対し、VCSELの場合、応答時間は1ns未満である可能性がある。このような応答時間の差は、2つの光源を介して送信される信号間に位相ずれをもたらす可能性があり、リモートレシーバ側において、このような位相ずれは、互いに相殺的干渉(destructive interference)をもたらし、通信性能を低下させる可能性がある。それゆえ、第1の光源と第2の光源との間の応答時間の差を補償して、リモートレシーバが2つの信号の分岐を建設的に受信することを可能にし、信号対雑音比(SNR)をさらに向上させることが好ましい。
【0029】
応答時間の差を導出するために、OWCトランスミッタは、好ましくはさらに、第1の光源の応答時間を測定するためのスニファ回路(sniffer circuit)を含み、OWCトランスミッタはさらに、第1の光源の測定された応答時間に応じて、第2の光源への共通データストリームからの信号経路に追加の遅延(extra delay)を加えることにより、応答時間の差を補償するように構成される。
【0030】
応答時間の差を導出するための1つのスキームは、第1の光源である、遅い光源の応答時間を直接測定することである。測定は、スニファ回路を介して行われる。その後、遅い光源の応答時間に相当するさらなる遅延(additional delay)が、第2の光源である、速い光源を含むトランスミッタチェーンに意図的に導入される。ここでの前提は、第2の光源の応答時間は、第1の光源の応答時間と比較して無視できるほど小さいことである。このスキームは、OWCトランスミッタにおいてローカルに実行されることができる。
【0031】
応答時間の差を導出するための代替的なアプローチとして、OWCトランスミッタはさらに、第1の光データ信号及び第2の光データ信号を送信する前に以下のステップを実行するように構成される:それぞれ第1の光源を介して及び第2の光源を介してリモートOWCレシーバにテスト信号を送信するステップ、リモートOWCレシーバから応答信号を受信するステップであって、応答信号は、それぞれ第1の光源及び第2の光源によって送信されたテスト信号から導出されるチャネル状態情報(CSI:channel state information)に関するフィードバックを含む、ステップ、応答信号に基づいて第1の光源と第2の光源との間の応答時間の差を決定するステップ、及び、決定された応答時間の差に応じて、第2の光源への共通データストリームからの信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償するステップ。
【0032】
このスキームでは、応答時間の差は、OWCトランスミッタによって、リモートOWCレシーバからのフィードバックループを介して得られる。テスト信号は、OWCトランスミッタによって、それぞれ第1の光源を介して及び第2の光源を介してリモートOWCレシーバに送信され、OWCレシーバは、受信したテスト信号に基づいてチャネル状態情報(CSI)を計算する。CSIは、入来信号(incoming signal)に関する位相及び振幅の両方の情報を提供する。それゆえ、同じテスト信号に対して2つの異なる光源によってトランスミッタ側で導入される位相ずれも、リモートOWCレシーバによって計算されるCSIに反映される。リモートOWCレシーバは、CSIを含む応答信号をOWCトランスミッタに送り返す。その後、トランスミッタは、応答時間の差を得ることができ、共通データ源から第2の光源への信号経路に遅延を意図的に適用するために用いられる。このようにして、第1の光源及び第2の光源を介して発せられた光信号は、データ通信のために位相が揃えられる。
【0033】
リモートOWCレシーバからの応答信号は、OWCリンクではなく、別のワイヤレスリンクを介して送信されてもよい。他のワイヤレスリンクは、Wi-Fi(登録商標)、Zigbee(登録商標)、又はBLE等、短距離ワイヤレス通信プロトコルに従ってもよい。応答信号は、OWCリンクを介して送信されてもよい。この場合、双方向OWCリンクが、OWCトランスミッタ及びリモートOWCレシーバによって可能にされ、この場合、双方がOWCトランシーバとなる。
【0034】
このようなプロシージャは、新しいリモートレシーバと新しいOWCリンクを確立するたびに繰り返されてもよく、データ通信が実際に開始される前に純粋に初期設定段階として実行されることが好ましい。
【0035】
好ましいセットアップにおいて、第1の光源は、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含み、第2の光源は、レーザ、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)のうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
同じOWCトランスミッタ内でこのような2つの異種光源を採用する利益を最大化するために、2つの光源は著しく異なる特性を呈することが有利である。例えば、一方の光源はその大きなカバレッジが得意であってもよく、他方の光源はより高いデータレートに適していてもよい。LEDとVCSELの組み合わせは、OWCトランスミッタに配備するための良い候補であり得る。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、OWCシステムが提供される。OWCシステムは、本発明によるOWCトランスミッタと、少なくとも1つの光センサを含むリモートOWCレシーバであって、少なくとも1つの光センサは、OWCトランスミッタトランスミッタによって送信される第1の光データ信号及び第2の光データ信号の少なくとも一方を受信するように構成される、リモートOWCレシーバとを含む。
【0038】
本発明の第3の態様によれば、OWCトランスミッタの方法が提供される。OWCトランスミッタの方法は、第1の視野(FoV)において第1の光源を介して第1の光データ信号を発するステップと、第2のFoVにおいて第2の光源を介して第2の光データ信号を発するステップと、同時に、第1の光源を介して第1の光データ信号を発する、及び、第2の光源を介して第2の光データ信号を発するステップとを含み、第1の光源及び第2の光源は異なるタイプであり、第1のFoVは第2のFoVよりも広い。
【0039】
方法はさらに、第1の光源と第2の光源との間の応答時間の差を補償するステップを含む。
【0040】
応答時間の差を導出するための一例として、方法はさらに、第1の光源の応答時間を測定するステップと、第1の光源の測定された応答時間に応じて、第2の光源への信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償するステップとを含む。
【0041】
応答時間の差を導出するための別の例として、方法はさらに、それぞれ第1の光源を介して及び第2の光源を介してテスト信号を送信するステップと、テスト信号から導出されるチャネル状態情報(CSI)に関するフィードバックを含む、応答信号を受信するステップと、応答信号に基づいて第1の光源と第2の光源との間の応答時間の差を決定するステップと、決定された応答時間の差に応じて、第2の光源への信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償するステップとを含む。
【0042】
本発明はさらに、コンピューティングプログラムであって、当該プログラムが処理手段を含む光フロントエンドサブシステムによって実行された場合、処理手段に本発明で開示される光フロントエンドサブシステムの方法を実行させるコード手段を含む、コンピューティングプログラムに具現化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図面中、同様の参照文字は、一般に、異なる図にわたって同じ部分を指す。また、これらの図面は、必ずしも正しい縮尺ではなく、その代わりに、全般的に、本発明の原理を例示することに重点が置かれている。
図1】本発明のOWCトランスミッタの基本ブロック図を示す。
図2】典型的なOWCトランスミッタの1つの可能なシステムセットアップを示す。
図3】本発明の光フロントエンドの一例を示す。
図4】本発明のOWCトランスミッタの1つの可能なシステムセットアップを示す。
図5】本発明のOWCトランスミッタの別の可能なシステムセットアップを示す。
図6】本発明のOWCシステムを示す。
図7】OWCトランスミッタの方法のフローチャートを示す。
図8】OWCトランスミッタの方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の様々な実施形態が、図1に示されるような光ワイヤレス通信(OWC)トランスミッタ100に基づいて述べられる。基本セットアップとして、OWCトランスミッタ100は、第1の光源150と第2の光源160とを含む。第1の光源150は、第1の視野(FoV)155において第1の光データ信号151を発するように構成され、第2の光源160は、第2のFoV165において第2の光データ信号161を発するように構成される。第1のFoV155は、第2のFoV165よりも広い。図1に例示的に示されるように、第2のFoV165が第1のFoV155によって完全にカバーされることが有益であり得る。第1のFoV155及び第2のFoV165が同じ点に中心付けられることがさらに有益であり得る。代替的に、第1のFoV155及び第2のFoV165は、部分的にオーバーラップして又はオーバーラップせずに異なるエリアに方向付けられる。OWCトランスミッタ100はさらに、第1の光データ信号151及び第2の光データ信号161を同時に発するように構成される。
【0045】
ここでFoVは、光源からの光が知覚され得る、三次元空間における光源から生じる立体角であると理解される。立体角の形状は、限定されるものではないが、レンズ、回折格子、ダイヤフラム及び/又はコリメータ等、さらなる光学的手段を用いて成形されてもよい。光源と併せて使用される別の用語は、カバレッジエリアであり、カバレッジエリアは、光源からの光が入射する三次元空間におけるエリアとして理解される。
【0046】
好ましいセットアップにおいて、第1の光源150及び第2の光源160は異なるタイプであり、電力消費、応答時間、帯域幅等、FoV以外の他の特性においても互いに異なる。例えば、第2の光源160は、第1の光源150と比較して、より狭いビームでより高いデータレートで光信号を発してもよい。一方、第1の光源150は、中程度のデータレートであるが、より広いカバレッジ及びより長い通信距離で光信号を配信することができてもよい。例えば、第1の光源150は、中~低速ワイドビーム光トランスミッタを容易にするLEDベースの光トランスミッタであってもよく、第2の光源160は、高速ナロービーム光トランスミッタを容易にするVCSELベースの光トランスミッタであってもよい。それゆえ、開示されるOWCトランスミッタ100は、高スループット及び大きなカバレッジの両方の向上を達成するために第1の光源150及び第2の光源160の両方を相補的に配備する。
【0047】
図2は、ハイレベルブロック図で典型的なOWCトランスミッタの1つの可能なシステムセットアップを示している。一方の側では、OWCトランスミッタは、有線接続(Ethernet(登録商標)、光ファイバ等)、又はワイヤレス接続(RF、ミリ波、又はOWCトランスミッタがリモートデバイスと行う光ワイヤレス通信とは異なる他の種類の高速光ワイヤレス)であることができる、バックボーンネットワークへのインターフェース114を有する。他方の側では、OWCトランスミッタは、リモートOWCレシーバとの光リンクを可能にするための光フロントエンド111を有する。さらに、OWCトランスミッタは、異なる変調スキーム間の変換及びアナログ信号のコンディショニングの観点で、バックボーンネットワーク上のデータと光ワイヤレスリンク上のデータとの間の翻訳又は変換も実施する。それゆえ、典型的なOWCトランスミッタは、デジタルモジュレータ及びデモジュレータコンポーネント113及びアナログフロントエンド112も含む。送信経路において、アナログフロントエンド(AFE)112は、光フロントエンドを駆動するためにベースバンド信号をコンディショニング及び増幅するためのプログラマブル増幅器、フィルタ、及びドライバを含んでもよい。少なくとも光源を含む光フロントエンド111は、電気信号及び光信号間の変換を実施する。光信号を発するために、光フロントエンド111は、電気的な送信信号を光源を介して出力される光信号に変換するために使用される。
【0048】
本発明による光フロントエンド111の一例が図3に示されている。光フロントエンド111は、第1の光源150及び第2の光源160を含む。任意選択的に、光フロントエンド111はさらに、それぞれ第1の光源150及び第2の光源160を駆動するための第1のドライバ1111及び第2のドライバ1112を含む。ドライバ1111、1112は、主に、光源に必要とされる電力を調整するために使用される。
【0049】
上述したように、共通データストリーム50から提供される光信号を発するように第1の光源150及び第2の光源160を構成することが有益であり得る。この場合、第1の光源150及び第2の光源160は、共通データストリーム50からの信号の異なる部分を配信する、又は共通データストリーム50からの同じ信号を配信するように採用される。2つの光源によってサポートされる帯域幅が異なることを考慮すると、共通データストリーム50の実際のスループットに応じて、第1の光源150は圧縮された低解像度データを配信するように構成され、第2の光源160は完全なデータセットを配信するように構成されるように、同じ信号が、2つの光源によって異なる解像度又は詳細で配信されてもよい。この場合、リモートデバイスが第2のFoV165のカバレッジ内にある場合、リモートデバイスは、高データレートリンクを享受することができ、リモートデバイスが第2のFoV165から出るが、第1のFoV155内に移動する場合、リモートデバイスは、低減された解像度を有するOWCトランスミッタ100からの情報を受信することが依然として可能であり得る。
【0050】
第1の光源150及び第2の光源160が同じデータを発するために同じ周波数バンドを利用することを可能にするために、2つの光源間の応答時間の差を補償する必要がある。これは、入力データを第1の光源150及び第2の光源160に実質的に同時に供給するようにタイミングはOWCトランスミッタ100の電気的部分において正確に制御されることができるが、異なる遅延が、それぞれ第1の光源150及び第2の光源160によって光学的部分において導入される可能性があるからである。異なるタイプの光源に起因して、応答時間の差は比較的大きくなり得、その結果、第1の光データ信号151と第2の光データ信号161との間に位相ずれが生じる。位相が揃えられていない(phase mis-aligned)第1の光データ信号151及び第2の光データ信号161がリモートOWCレシーバ側に到着する場合、互いに相殺的干渉をもたらすことになる。それゆえ、2つの発せられた光信号も位相が揃えられる(phase aligned)ことを可能にするために2つの光源間の応答時間の差を補償することが重要である。
【0051】
図4及び図5にそれぞれ示されるように、応答時間の差を導出するための2つの方法がある。図4において、測定は、OWCトランスミッタ100内でローカルに行われる。システムセットアップに示されるように、OWCトランスミッタ100はさらに、第1の光源150の応答時間を直接測定するために使用される、スニファ回路170を含む。第1の光源150によって発せられる光信号は、出力でスニッフィングされ(sniffed)、電気ドメインに変換され、信号に追加的な遅延を導入することによって第2の光源160への入力にフィードバックされる。好ましくは、遅延は、第2の光源160を変調するドライバ1112に供給する前に電気信号に適用される。ここでの前提は、第2の光源160の応答時間は、第1の光源150の応答時間と比較して十分に小さいことである。したがって、応答時間の差は、第1の光源150の応答時間によって支配される(dominated)。
【0052】
図5は、リモートOWCレシーバ200からのフィードバックを介して実施される、第1の光源150と第2の光源160との間の応答時間の差を導出するための別の可能な方法を示している。この方法は、OWCトランスミッタ100によって、それぞれ第1の光源150及び第2の光源160を介してリモートOWCレシーバ200にテスト信号を送信することによりトリガされる。好ましくは、第1の光源150及び第2の光源160は、同じテスト信号を時間を重ねることなく順次送信するように構成される。したがって、リモートOWCレシーバ200は、相殺的干渉の心配なしに、2つのコピーを独立して受信することができる。テスト信号を受信すると、リモートOWCレシーバ200はチャネル状態情報(CSI)を計算し、応答信号においてCSIをOWCトランスミッタ100に送り返す。その後、OWCトランスミッタ100は、受信した応答信号に基づいて2つの光源の応答時間の差を導出することができる。代替的なオプションは、リモートOWCレシーバ200が応答時間の差をローカルに導出し、応答信号において当該情報をOWCトランスミッタ100に直接提供することであってもよい。
【0053】
応答信号は、光ワイヤレスリンクではなく、別のワイヤレス通信技術を介して送信されてもよい。他のワイヤレス通信技術は、Wi-Fi(登録商標)、Zigbee(登録商標)、BLE等、短距離ワイヤレス通信プロトコルに基づいてもよい。応答信号に含まれるCSI又は応答時間の差に関する情報は、第2の光源160に向かう信号経路に適用されるべき遅延を計算するためにOWCトランスミッタのコントローラ又はプロセッサに提供されてもよい。その後、遅延は、図2に示されるコンポーネント113等のデジタルモジュレータ及びデモジュレータコンポーネントにおいて適用されてもよく、図4に示されるように第2の光源に供給される信号の直前に適用されてもよく、又は、第2の光源160のドライバ1112に信号が供給される前に適用されてもよい。
【0054】
代替的に、OWCトランスミッタ100とリモートOWCレシーバ200との間の光リンクが双方向光ワイヤレスリンクである場合、リモートOWCレシーバ200からOWCトランスミッタ100への応答信号は、同じ光チャネルを介して送信されてもよい。
【0055】
図6は、本発明によるOWCトランスミッタ100とリモートOWCレシーバ200とを含むOWCシステム300を示している。リモートOWCレシーバ200は、OWCトランスミッタ100によって送信される第1の光データ信号及び第2の光データ信号の少なくとも一方を受信するのに適し且つ受信するように構成される、少なくとも1つの光センサ250を含む。好ましい例では、リモートOWCレシーバ200が第2のFoV165内に位置する場合、光センサ250は、第2の光データ信号161を受信するように構成される。リモートOWCレシーバ200が第2のFoV165の外側であるが、第1のFoV155内に位置する場合、光センサ250は、第1の光データ信号151を受信するように構成される。
【0056】
光センサ250は、フォトダイオード、専用のフォトセル(ポイントディテクタ)、場合によってはレンズ、リフレクタ、ディフューザ又は蛍光体コンバータ(低速用)を備えたフォトセルのアレイ、又はフォトセル(ピクセル)のアレイ及びアレイに像を形成するためのレンズであってもよい。また、2つの異なる光センサが、リモートOWCレシーバ200が第1のFoV155及び第2のFoV165のオーバーラップするエリアに位置する場合、第1の光データ信号151及び第2の光データ信号161を同時に受信するためにリモートOWCレシーバ200に配備されてもよい。
【0057】
図7は、OWCトランスミッタ100の方法500のフローチャートを示している。方法500は、OWCトランスミッタによって実行される以下のステップを含む:ステップS501において、OWCトランスミッタ100は、第1のFoV155において第1の光源150を介して第1の光データ信号151を発する、ステップS502において、OWCトランスミッタ100は、第2のFoV165において第2の光源160を介して第2の光データ信号161を発する、及び、OWCトランスミッタ100は、ステップS504において、第1の光源150を介して第1の光データ信号151及び第2の光源160を介して第2の光データ信号161を同時に発し、第1の光源150及び第2の光源160は、異なるタイプであり、第1のFoV151は、第2のFoV161よりも広い。任意選択的に、OWCトランスミッタ100は、ステップS503において、2つの光源を介して同時に発する前に第1の光源150と第2の光源160との間の応答時間の差を補償する。
【0058】
図8は、OWCトランスミッタ100の方法500の別の実装態様のフローチャートを示している。第1の光源150と第2の光源160との間の応答時間の差を得るための2つの異なるオプションが示されている。第1のオプションにおいて、OWCトランスミッタ100は、ステップS510において、第1の光源150の応答時間を測定し、その後、ステップS520において、第1の光源150の測定された応答時間に応じて、第2の光源160への信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償する。第2のオプションにおいて、OWCトランスミッタ100は、ステップS530において、それぞれ第1の光源150を介して及び第2の光源160を介してテスト信号を送信し、ステップS540において、OWCトランスミッタ100は、テスト信号から導出されるチャネル状態情報(CSI)に関するフィードバックを含む、応答信号を受信し、その後、OWCトランスミッタ100は、ステップS550において、応答信号に基づいて第1の光源150と第2の光源160との間の応答時間の差を決定し、ステップS560において、決定された応答時間の差に応じて、第2の光源160への信号経路に追加の遅延を加えることにより、応答時間の差を補償する。それゆえ、図7のS503のステップは、図8のS520又はS560のいずれかとして実行される。
【0059】
本発明による方法は、コンピュータ実施方法(computer implemented method)としてコンピュータで、又は専用のハードウェアで、又は両方の組み合わせで実施されてもよい。
【0060】
本発明による方法のための実行可能コードは、コンピュータ/機械可読記憶手段に記憶されてもよい。コンピュータ/機械可読記憶手段の例としては、不揮発性メモリデバイス、光記憶媒体/デバイス、ソリッドステート媒体、集積回路、サーバ等が挙げられる。好ましくは、コンピュータプログラムプロダクトは、当該プログラムプロダクトがコンピュータで実行される場合に本発明による方法を実行するためのコンピュータ可読媒体に記憶された非一時的プログラムコード手段を含む。
【0061】
方法、システム及びコンピュータ可読媒体(一時的及び非一時的)は、上述の実施形態の選択された態様を実施するために提供されてもよい。
【0062】
用語「コントローラ」は、本明細書では、一般に、数ある機能の中でもとりわけ、1つ以上のネットワークデバイス又はコーディネータの動作に関連する様々な装置を述べるために使用される。コントローラは、本明細書で論じられる様々な機能を実行するように、数多くのやり方で(例えば、専用ハードウェアを用いて)実装されることができる。「プロセッサ」は、本明細書で論じられる様々な機能を実行するように、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされてもよい、1つ以上のマイクロプロセッサを採用する、コントローラの一例である。コントローラは、プロセッサを用いて、又はプロセッサを用いずに実装されてもよく、また、一部の機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、及び関連回路)との組み合わせとして実装されてもよい。本開示の様々な実施形態で採用されてもよいコントローラ構成要素の例としては、限定するものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)が挙げられる。
【0063】
様々な実装形態では、プロセッサ又はコントローラは、1つ以上の記憶媒体(本明細書では「メモリ」と総称され、例えば、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ、コンパクトディスク、光ディスク等)に関連付けられてもよい。一部の実装形態では、これらの記憶媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、本明細書で論じられる機能の少なくとも一部を実行する、1つ以上のプログラムでエンコードされてもよい。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されてもよく、あるいは、それらの記憶媒体上に記憶されている1つ以上のプログラムが、本明細書で論じられる本発明の様々な態様を実施するために、プロセッサ又はコントローラ内にロードされることができるように、可搬性であってもよい。用語「プログラム」又は「コンピュータプログラム」は、本明細書では、1つ以上のプロセッサ又はコントローラをプログラムするために採用されることが可能な、任意のタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)を指すように、一般的な意味で使用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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【国際調査報告】