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特表2023-544227抗CD22抗体分子又は抗原結合断片及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-20
(54)【発明の名称】抗CD22抗体分子又は抗原結合断片及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231013BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231013BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231013BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231013BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C07K16/28
A61K39/395 N
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543258
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2021121826
(87)【国際公開番号】W WO2022068899
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202011048723.0
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523113766
【氏名又は名称】昆明賽諾制薬股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼ 振平
(72)【発明者】
【氏名】朱 建▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲リー▼
(72)【発明者】
【氏名】謝 ▲躍▼▲慶▼
(72)【発明者】
【氏名】江 ▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 海▲チウ▼
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明に提供するのは、単離抗CD22抗体又はその抗原結合断片であり、更に提供するのはその使用である。該抗体又はその抗原結合断片は、CD22組換えタンパク質及びCD22陽性細胞株に対する強い同定能及び高親和性、CD22陽性細胞株に進入する強い内在化能力、並びに細菌外毒素との融合後に、CD22陽性細胞株に対する有効な増殖阻害及び細胞アポトーシス効果を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗CD22抗体又はその抗原結合断片であって、該重鎖可変領域(VH)及び該軽鎖可変領域(VL)が、それぞれ、
(1)配列番号19に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR1、配列番号25に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR2、及び配列番号21に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR3、並びに配列番号22に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR1、配列番号23に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR2、及び配列番号24に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR3、又は、
(2)配列番号19に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR1、配列番号26に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR2、及び配列番号21に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR3、並びに配列番号22に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR1、配列番号23に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR2、及び配列番号24に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR3、
を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記重鎖可変領域が配列番号4、配列番号3、配列番号6、若しくは配列番号5に示されるようなアミノ酸配列、又は配列番号4、配列番号3、配列番号6、若しくは配列番号5に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は、
前記軽鎖可変領域が配列番号2、配列番号7、若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号7、若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、それぞれ、
(1)配列番号4に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号4に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号2に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号2に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(2)配列番号4に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号4に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号7に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号7に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(3)配列番号3に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号3に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号7に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号7に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(4)配列番号3に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号3に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号8に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(5)配列番号6に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号6に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号8に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(6)配列番号5に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号5に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号8に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体がネズミ抗体、キメラ抗体又は完全若しくは部分的ヒト化抗体であり、
或いは、前記抗体がscFv、dsFv、(dsFv)、Fab、Fab’、F(ab’)又はFv抗体であり、
好ましくは、前記抗体がモノクローナル抗体又は一本鎖抗体であり、
好ましくは、前記抗体が、ヒト又はネズミ定常領域、好ましくはヒト又はネズミ重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を含み、
好ましくは、前記抗体が重鎖及び軽鎖を含み、より好ましくは、前記抗体がIgG、IgA、IgM、IgD及びIgEからなる群より選択される重鎖定常領域及び/又はカッパ又はラムダ型軽鎖定常領域を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体がモノクローナル抗体、好ましくはネズミ、キメラ又はヒト化モノクローナル抗体であり、
好ましくは、該モノクローナル抗体の軽鎖がカッパ型であり、
より好ましくは、該モノクローナル抗体がIgG1抗体である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD22抗体若しくはその抗原結合断片をコードするか、又は請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD22抗体若しくはその抗原結合断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項8】
請求項6に記載の核酸分子及び/又は請求項7に記載のベクターを含むか、又は請求項6に記載の核酸分子及び/又は請求項7に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクションされている宿主細胞。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項6に記載の核酸分子、請求項7に記載のベクター、及び/又は請求項8に記載の宿主細胞を含む組成物。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と療法剤であるパートナー分子とを含むイムノコンジュゲート。
【請求項11】
疾患を治療する薬剤の製造における、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項6に記載の核酸分子、請求項7に記載のベクター、請求項8に記載の宿主細胞、請求項9に記載の組成物、及び/又は請求項10に記載のイムノコンジュゲートの使用。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項6に記載の核酸分子、請求項7に記載のベクター、請求項8に記載の宿主細胞、請求項9に記載の組成物、及び/又は請求項10に記載のイムノコンジュゲートを含むキット。
【請求項13】
疾患を治療する方法であって、その必要がある被験体に、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項6に記載の核酸分子、請求項7に記載のベクター、請求項8に記載の宿主細胞、請求項9に記載の組成物、及び/又は請求項10に記載のイムノコンジュゲートを投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年9月29日に出願された中国特許出願第202011048723.0号の優先権の利益を主張し、その全体が引用することで本明細書の一部をなす。
【0002】
本開示は、生物医学の分野に、特に新規ヒト化抗CD22抗体及びその適用に関する。
【背景技術】
【0003】
CD22(Siglec-2)は、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(Siglec)受容体であり、シアル酸(Sia)含有グリカンに特異的に結合し、細胞接着及び/又は細胞シグナル伝達を促進する。CD22発現はB細胞に限定され、B細胞阻害のベースラインレベルを確立する際に必須の役割を果たし、したがって体液性免疫におけるホメオスタシスの非常に重要な決定要因である。CD22は、Bリンパ球性白血病/リンパ腫及び成熟B細胞白血病/リンパ腫を含む、多様なB細胞悪性疾患において新生物細胞中で発現される。CD22の発現は、毛様細胞白血病(HCL)及び前リンパ球性白血病において特に強いものであり得る。
【0004】
研究によって、抗CD22抗体を自己免疫疾患及びB細胞腫瘍の治療に使用することができることがわかってきている。さらに、抗CD22抗体は、しばしば、他の薬剤、例えば細胞傷害剤のコンジュゲート化のために開発され、その標的化特性によって、標的細胞への薬剤の標的化送達を可能にする。
【0005】
したがって、当該技術分野には、CD22に関する高親和性を有し、単独で又は他の薬剤若しくは分子にコンジュゲート化された際のいずれかに、CD22関連疾患の治療に使用することができる、新規抗CD22抗体又はその断片に関する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術的問題を解決するため、本開示は、CD22に結合し、組換えCD22タンパク質及びCD22陽性細胞に対する強い認識能及び高親和性、CD22陽性細胞内への強い内在化能、並びに細菌外毒素との融合後にCD22陽性細胞に対する強い増殖阻害及びアポトーシス誘導効果を示すヒト化抗CD22抗体である、単離モノクローナル抗体を提供する。単離モノクローナル抗体に基づいて、本開示は、抗体の重要なドメインを含む多様な抗体形式及びその対応する使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術的解決法は以下の通りである。
【0008】
1つの態様において、本開示は、単離抗CD22抗体又はその抗原結合断片を提供する。本明細書において用いられる際、抗体の「抗原結合断片」は、CD22への抗体の結合能及び抗体の対応する生物学的活性を保持する、抗体の多様な機能断片を含む。
【0009】
配列構造に関して、本開示は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗CD22抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)が、それぞれ、
(1)配列番号19(IYDMS)に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR1、配列番号25(YISSGGGTTYYPDSVKG)に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR2、及び配列番号21(HSGYGTHWGVLFAY)に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR3、並びに配列番号22(RASQDISNYLN)に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR1、配列番号23(YTSILHS)に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR2、及び配列番号24(QQGNTLPWT)に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR3、又は、
(2)配列番号19(IYDMS)に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR1、配列番号26(YISSGGGTTYYPGSVKG)に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR2、及び配列番号21(HSGYGTHWGVLFAY)に示されるようなアミノ酸配列を有するH-CDR3、並びに配列番号22(RASQDISNYLN)に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR1、配列番号23(YTSILHS)に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR2、及び配列番号24(QQGNTLPWT)に示されるようなアミノ酸配列を有するL-CDR3、
を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0010】
本開示によって提供される抗CD22抗体又はその抗原結合断片は、抗原CD22、特にヒトCD22に、高親和性で結合可能である。
【0011】
好ましくは、本開示によって提供される抗CD22抗体又はその抗原結合断片において、重鎖可変領域は、配列番号4、配列番号3、配列番号6、若しくは配列番号5に示されるようなアミノ酸配列、又は配列番号4、配列番号3、配列番号6、若しくは配列番号5に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得て、及び/又は軽鎖可変領域は、配列番号2、配列番号7、若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号7、若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0012】
「少なくとも75%の同一性」は、配列に関して本開示の文脈において用いられる際、75%以上の任意の同一性パーセント、例えば少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に99%の同一性である。
【0013】
更に好ましくは、本開示によって提供される抗体又はその抗原結合断片において、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、それぞれ、
(1)配列番号4に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号4に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号2に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号2に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(2)配列番号4に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号4に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号7に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号7に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(3)配列番号3に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号3に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号7に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号7に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(4)配列番号3に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号3に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号8に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(5)配列番号6に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号6に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号8に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(6)配列番号5に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号5に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号8に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号8に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
を含む。
【0014】
特に、本開示によって提供される抗体又はその抗原結合断片は、どちらも上述のようなCDR及びフレームワーク領域を、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のような配置で含む、少なくとも重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。更に或いは、「少なくとも75%同一性」によるアミノ酸配列中の最大25%の相違が、重鎖可変領域若しくは軽鎖可変領域の任意のフレームワーク領域中に、又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の外部の本開示によって提供される抗体若しくはその抗原結合断片中の任意のドメイン若しくは配列中に存在し得る。相違は、任意の位置のアミノ酸欠失、付加又は置換から生じてもよい。
【0015】
本開示によって提供される抗体は、ネズミ抗体、キメラ抗体又は完全若しくは部分的ヒト化抗体であり、或いは、抗体は、scFv、dsFv、(dsFv)、Fab、Fab’、F(ab’)又はFv抗体の形態である。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体又は一本鎖抗体である。
【0016】
可変領域に加えて、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はネズミ定常領域、好ましくはヒト又はネズミ重鎖定常領域(CH)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を含む。好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、重鎖及び軽鎖を含み、より好ましくは、抗体又はその抗原結合断片は、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEからなる群より選択される重鎖定常領域及び/又はカッパ若しくはラムダ型軽鎖定常領域を含む。本発明の1つの特定の実施の形態によれば、抗体は、モノクローナル抗体、好ましくはネズミ、キメラ又はヒト化モノクローナル抗体である。本発明の1つの特定の実施の形態によれば、モノクローナル抗体はIgG1抗体である。
【0017】
更に好ましくは、本開示によって提供される抗体又はその抗原結合断片は、配列番号9に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号9に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖定常領域、及び/又は配列番号10に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号10に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
【0018】
本発明の1つの特定の実施の形態によれば、本開示は、それぞれ、
(1)配列番号13に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号13に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号12に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号12に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(2)配列番号13に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号13に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号14に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号14に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(3)配列番号15に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号15に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号14に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号14に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(4)配列番号15に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号15に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号16に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
(5)配列番号17に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号17に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号16に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(6)配列番号18に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号18に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、及び、配列番号16に示されるようなアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列、
を含む重鎖及び軽鎖を有するモノクローナル抗体を提供する。
【0019】
別の態様において、本開示は、本開示によって提供される抗CD22抗体若しくはその抗原結合断片をコードするか、又は抗CD22抗体若しくはその抗原結合断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸分子も提供する。
【0020】
更なる態様において、本開示は、上述のような核酸分子を含むベクターを提供する。ベクターは真核発現ベクター、原核発現ベクター、人工染色体、ファージベクター等であることが可能である。
【0021】
また更なる態様において、本開示は、上述のような核酸分子若しくはベクターを含む宿主細胞、又は上述のような核酸分子若しくはベクターで形質転換若しくはトランスフェクションされている宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核又は真核細胞、例えば細菌、昆虫、真菌、植物又は動物細胞であることが可能である。
【0022】
本開示によって提供される抗体又はその抗原結合断片は、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて得られ得る。例えば、抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖を、本開示によって提供される核酸分子から得ることが可能であり、次いで、これらを、抗体の任意選択の他のドメインと共に抗体に組み立てることも可能であるし、或いは本開示によって提供される宿主細胞を、宿主細胞が抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖を発現し、これらを抗体に組み立てることを可能にする条件下で培養する。任意選択で、方法は、産生された抗体を回収する工程を更に含む。
【0023】
別の態様において、本開示は、本開示によって提供される抗体又はその抗原結合断片、核酸分子、ベクター及び/又は宿主細胞を含む組成物も提供する。好ましくは、組成物は、医薬的に許容され得るキャリアー、アジュバント、及び賦形剤を任意選択で更に含む医薬組成物である。
【0024】
更に別の態様において、本開示は、本明細書に提供される抗CD22抗体又はその抗原結合断片と、療法剤であるパートナー分子とを含むイムノコンジュゲートも提供する。療法剤は、細胞毒(例えば緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)外毒素(例えばPE38))、放射性同位体、抗生物質、小分子毒素、他の薬剤等であってもよい。
【0025】
さらに、本開示は、本開示によって提供される抗体又はその抗原結合断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、組成物、及び/又はイムノコンジュゲートを含むキットも提供する。
【0026】
更なる態様において、本発明は、CD22を発現する腫瘍又は癌を含む疾患の治療用の薬剤製造のための、本明細書に提供される抗体又はその抗原結合断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、組成物、及び/又はイムノコンジュゲートの使用も提供する。例えば、疾患は、CD22関連B細胞悪性腫瘍、又はCD22の高発現によって特徴づけられるB細胞悪性腫瘍、例えばCD22高発現リンパ腫又は白血病である。好ましくは、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫又はマントル細胞リンパ腫であり、白血病は慢性リンパ球性白血病、毛様細胞白血病又は急性リンパ球性白血病である。
【0027】
したがって、本開示は、疾患を治療する方法であって、その必要がある被験体に、本明細書に提供される抗体若しくはその抗原結合断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、組成物、及び/又はイムノコンジュゲートを投与することを含む、方法を提供する。被験体は、ヒト又は非ヒト霊長類、及び家畜、農場又は実験哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、マウス、ウサギ等を含む、哺乳動物である。好ましくは、被験体はヒトである。疾患には、CD22を発現する腫瘍又は癌が含まれる。例えば疾患は、CD22関連B細胞悪性腫瘍、又はCD22の高発現によって特徴づけられるB細胞悪性腫瘍、例えばCD22高発現リンパ腫又は白血病である。好ましくは、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫又はマントル細胞リンパ腫であり、白血病は慢性リンパ球性白血病、毛様細胞白血病又は急性リンパ球性白血病である。
【0028】
本発明の実施形態を、付随する図を参照して以下に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ELISAによる、CD22への本開示によって提供される抗体の結合の検出結果を示す図である。
図2A】1:1結合モデルを用いたSPRによる、CD22に対する本開示によって提供される抗体の結合動力学の検出結果を示す図である。パネル2AはHA22 mAbである。
図2B】1:1結合モデルを用いたSPRによる、CD22に対する本開示によって提供される抗体の結合動力学の検出結果を示す図である。パネル2BはmAb-1である。
図2C】1:1結合モデルを用いたSPRによる、CD22に対する本開示によって提供される抗体の結合動力学の検出結果を示す図である。パネル2CはmAb-2である。
図2D】1:1結合モデルを用いたSPRによる、CD22に対する本開示によって提供される抗体の結合動力学の検出結果を示す図である。パネル2DはmAb-3である。
図2E】1:1結合モデルを用いたSPRによる、CD22に対する本開示によって提供される抗体の結合動力学の検出結果を示す図である。パネル2EはmAb-4である。
図2F】1:1結合モデルを用いたSPRによる、CD22に対する本開示によって提供される抗体の結合動力学の検出結果を示す図である。パネル2FはmAb-5である。
図2G】1:1結合モデルを用いたSPRによる、CD22に対する本開示によって提供される抗体の結合動力学の検出結果を示す図である。パネル2GはmAb-6である。
図3】FACSによる、細胞膜上のCD22に対する本開示によって提供される抗体の結合の検出結果を示す図である。パネル3AはRaji細胞であり、パネル3BはREH細胞であり、パネル3CはCA46細胞である。
図4】FACSによる、本開示によって提供される抗体のエンドサイトーシスの検出結果を示す図である。パネル4AはRaji細胞であり、パネル4BはCA46細胞であり、パネル4CはREH細胞である。
図5】本開示によって提供される抗体のADCC活性の検出結果を示す図である。パネル5AはCA46細胞であり、パネル5BはRaji細胞であり、パネル5CはREH細胞である。
図6A】50μg/mLの高用量での、本開示によって提供される抗体のADCC活性の検出結果を示す図である。パネル6AはCA46細胞である。
図6B】50μg/mLの高用量での、本開示によって提供される抗体のADCC活性の検出結果を示す図である。パネル6BはRaji細胞である。
図6C】50μg/mLの高用量での、本開示によって提供される抗体のADCC活性の検出結果を示す図である。パネル6CはREH細胞である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明を、具体例を参照して説明する。これらの実施例は本発明の単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではないことが当業者には理解されよう。
【0031】
以下の実施例における実験手順は、特に明示がない限り、全て慣用のものである。以下の実施例で用いた原材料及び試薬は、特に明示がない限り、いずれも市販品である。
【実施例
【0032】
実施例1 抗体の構築及び調製
本実施例において、VH領域配列及びVL領域配列を得て、これらを定常領域に融合させることによって、IgG1型モノクローナル抗体を再構築した。
【0033】
1.1 ヒト化設計
フレームワークシャッフリング戦略を用いて、組換え免疫毒素HA22に含まれる重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)のフレームワーク領域中のアミノ酸を、元来のネズミのものからヒトのものに改変した。Kabat及びChothiaナンバリングシステムの両方、並びにオンラインツール(http://www.bioinf.org.uk/abs/)を用いて決定された全てのCDRを、不変のままにした。最も近いヒト抗体マッチのため、HA22のVH及びVL両方のフレームワーク及びJ領域各々を、国際ImMunoGeneTics情報システム(商標)(IMGT、http://www.imgt.org)中のヒト抗体生殖系列配列に対して整列した。バーニヤ残基(Vernier residue)と見なされるか、又はVH/VL相互作用のために重要であると見なされるネズミ残基は、CD22に対する特異性及び親和性を保持するため、変化させなかった。
【0034】
ヒト化設計パネルを用意して、最大ヒト化を所持する一方で、最適な親和性及び有効性プロファイルを維持する最終候補を選択するために評価した。
【0035】
1.2 遺伝子配列決定
抗体のHA22及びヒト化型に含有される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を表1に示す。続くmAb再構築のため、Kabat体系に従った抗体可変領域の定義によって、重鎖及び軽鎖のエルボー領域を決定し、かつCDR1、CDR2、及びCDR3を同定し、下線で示した。
【0036】
【表1】
【0037】
1.3 IgG1の定常領域のアミノ酸配列
可変領域の分析に際して、カッパ型軽鎖を有するように抗体を決定し、したがって、IgG抗体の再構築のため、カッパ型軽鎖定常領域及びIgG1重鎖定常領域を選択した。定常領域配列を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
1.4 再構築されたIgGモノクローナル抗体
表1に提供されるV領域配列を表2に提供される定常領域配列に融合することにより、表3に示される完全重鎖及び完全軽鎖を再構築した。
【0040】
【表3】


【0041】
1.5 モノクローナル抗体の調製
pCDNA 3.4ベクターをmAb用の発現ベクターとして用いた。コドン最適化後、全遺伝子を合成し、pCDNA 3.4ベクター内に挿入し、内毒素不含プラスミド調製キットを用いてトランスフェクション用の発現ベクターを調製した。一過性発現宿主用の宿主としてExpiCHO細胞株を用いた。一過性トランスフェクション後、細胞培養上清を採取し、親和性精製を通じて抗体を得て、次いでこれを同定し、-80℃で保存した。
【0042】
実施例2 CD22抗原への抗体の結合の検出
本実施例において、ELISAプレートをCD22抗原でコーティングして、評価しようとする抗体を捕捉し、Fd領域を特異的に認識可能なHRP標識二次抗体を通じて発色させて、CD22抗原への各mAbの結合(EC50)を検出した。
【0043】
ELISAプレートを、1ウェルあたり100μlの200ng/mLのCD22抗原(ビオチン化ヒトSiglec-2/CD22タンパク質、Fc、Avitag(商標)、ACROBiosystems(ARCO))で、4℃で一晩コーティングした。翌日、プレートをPBSTで洗浄し、次いで添加したブロッキング緩衝液(PBST+3%ミルク)によって37℃で1時間~2時間ブロッキングし、次いでPBSTで再び洗浄した。
【0044】
試験しようとする各抗体を、勾配をつけてPBST+1%BSAで希釈して、それぞれ、0.01ng/mL、0.05ng/mL、0.25ng/mL、1.28ng/mL、6.40ng/mL、32ng/mL、160ng/mL、800ng/mL、4000ng/mL、20000ng/mLの濃度の抗体希釈物を得て、各希釈物の100μlをELISAプレートの各ウェルに添加し、これを次いで、37℃で1時間インキュベーションした。
【0045】
インキュベーション後、プレートをPBSTで洗浄した。1:10000希釈した二次抗体(マウス抗ヒトIgG Fd二次抗体、HRP、REF:SA5-10190、Invitrogen、USA)100μlをELISAプレートの各ウェルに添加し、これを次いで、37℃で1時間インキュベーションした。その後、プレートをPBSTで洗浄した。
【0046】
TMB溶液(TMB単一構成要素基質溶液、カタログ番号PR1200、Beijing Solarbio Science & Technology Co., Ltd.)100μlをプレートの各ウェルに添加し、これを次いで、室温で15分間インキュベーションした。次いで、50μlの停止緩衝液(ELISA停止緩衝液(10倍)、カタログ番号C1058、Beijing Solarbio Science & Technology Co., Ltd.)をそこに添加し、プレートを振盪した。450nmでの吸光度値を検出した。結果を図1及び表4に示す。
【0047】
図1及び表4に示されるように、アイソタイプ対照のOD450値は0.1未満であり、非特異的結合による結果に対する干渉はないことが示された。4パラメータ非線形適合の適合度は0.99より高い優れた適合度であり、結果が客観的に分析可能であることを示した。最高値は、mAb-6が2.435~2.564に達する顕著に高いシグナル値を示すことを示し、これは、HA22 mAbの値である2.147~2.283よりも有意に高く、mAb-6が飽和結合のより高いプラトーを有することを示した。mAb-1の最高値は1.726~1.795であり、HA22 mAbの2.147~2.283よりも有意により低く、残りのmAb-2、mAb-3、mAb-4、及びmAb-5の最高値はHA22 mAbのものに匹敵するか又はそれよりもわずかに高かった。
【0048】
陽性抗体HA22 mAbのEC50値は20.28ng/mLであり、mAb-1~mAb-6のEC50値は全てHA22 mAbのものより低く、EC50値は以下のようにランク付け可能である:mAb-2<mAb-6<mAb-3<mAb-4<mAb-1<mAb-5<HA22 mAb。
【0049】
【表4】
【0050】
実施例3 CD22抗原に対する抗体の結合動力学に関する研究
本実施例において、抗原に対する抗体の結合動力学をSPRによって検出した。
【0051】
以下の試薬及び材料を主に用いた。
固定する抗原:CD22-Fcビオチン化抗原:ACROBiosystems(ARCO)SI2-H82F8
試験する抗体:抗CD22 mAb、
チップSA、
固定緩衝液:(1)1M NaCl/50mM NaOH、
(2)1M NaCl/50mM NaOH/50%イソプロパノール、
泳動緩衝液:1×HBS-EP緩衝液、
再生緩衝液:グリシン、pH1.5。
【0052】
実験工程は以下の通りであった。
1)センサーチップSAを取り、その表面を超純水で清浄化し、窒素下で乾燥した後、スロット内に挿入した。それぞれ、固定緩衝液(1)及び(2)を96ウェルプレート中のカラムA1及びA2に添加し、3.85nM CD22-Fcビオチン化抗原を1ウェルあたり200μLで、カラムA3中の対応するウェル内に添加した。抗原を固定するようにプログラムを設定し、約70RUのデルタRUが達成されたら、固定を停止した。
2)会合時間250秒及び解離時間600秒を含むプログラム「結合試験」を設定し、HA22 mAbを用いて試験を行い、4%~5%の解離度が示された。
3)HA22 mAbを1000nMに希釈し、続いて100nMに希釈して、更に、1ウェルあたり約250μLの最終体積で、100nMから出発して8回、2倍希釈した。会合時間250秒及び解離時間600秒で、抗原へのその抗体番号1の結合能を検出するため、プログラムをセットアップした。分析ソフトウェアは、HA22 mAbの結合が正常に適合することを示した。
4)全ての抗体、即ちmAb-1~mAb-6を1000nMに希釈し、続いて100nMに希釈して、更に、1ウェルあたり約250μLの最終体積で、100nMから出発して8回、2倍希釈した。工程3におけるものと同じプログラムをセットアップして、バッチの親和性を検出した。Biacore 8K評価を用いて結果を分析した。
【0053】
結果を図2及び表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
実施例4 CD22陽性細胞株への抗体の結合に関する研究
Raji細胞(CD22の比較的高発現を有する)、CA46細胞(CD22の比較的高発現を有する)、及びREH細胞(CD22の比較的中程度の発現を有する)を選択し、FACSを通じて得られた濃度に対する平均蛍光強度の曲線によって、抗体の細胞結合能を評価した。
【0056】
試薬:
FACS緩衝液:2%FBS+PBS、
ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体、FITC:Invitrogen、カタログ番号31529、
4%PFA、
アロフィコシアニン(APC)AffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗ヒトIgG(Fcγ断片特異的)、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-136-170
【0057】
実験工程は以下の通りであった。
1)対数増殖期のRaji細胞、CA46細胞及びREH細胞を採取し、1000rpmで3分間遠心分離した。
2)1000rpmで3分間の遠心分離によって、FACS緩衝液(2%FBS+PBS)で細胞を2回洗浄した。
3)細胞をFACS緩衝液中に再懸濁し、細胞密度を2E6/mLに調整した。
4)細胞懸濁物を96ウェル丸底プレートに1ウェルあたり50μLで添加し、次いでプレートを氷上に置いた。
5)検出しようとする各抗体を8つの濃度:100μg/mL、20μg/mL、4μg/mL、0.8μg/mL、0.16μg/mL、0.032μg/mL、0.0064μg/mL及び0.00128μg/mLに連続して5倍希釈した。
6)希釈した抗体を、細胞の入ったウェルに体積比1:1で添加し、50μg/mL、10μg/mL、2μg/mL、0.4μg/mL、0.08μg/mL、0.016μg/mL、0.0032μg/mL、0.00064μg/mLの最終濃度を得て、細胞懸濁物と混合し、次いでプレートを、4℃の冷蔵庫中、氷上に置き、30分間インキュベーションした。
7)インキュベーション後、細胞を取り出し、2000rpmで3分間遠心分離した。
8)2000rpmで3分間の遠心分離によって、FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。
9)細胞を2%PFA、室温で20分間固定した。
10)2000rpmで3分間の遠心分離によって、FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。
11)二次抗体(Raji細胞及びREH細胞にはヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体、FITCを用い、CA46細胞にはアロフィコシアニン(APC)AffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗ヒトIgG(Fcγ断片特異的)を用いた)を緩衝液中1:800で配合し、各100μLを細胞に添加し、次いで、プレートを4℃の冷蔵庫中、氷上に置き、30分間インキュベーションした。
12)インキュベーション後、細胞を2000rpmで3分間遠心分離した。
13)上清を廃棄し、2000rpmで3分間の遠心分離によって、FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。
14)細胞を200μLのFACS緩衝液中に懸濁し、そしてFITCの蛍光強度及びAPCの蛍光強度を検出した。
【0058】
結果を図3及び表6-1~表6-3に示す。
【0059】
【表6】
【0060】
パネル3A及び表4に示されるように、全ての適合パラメータR2は0.95より高い値に到達し、参照抗体HA22 mAbのEC50値は152ng/mLであり、抗体の最大蛍光シグナルは7506~8131の間であって、プラトー期に到達した。mAb-1の最大蛍光シグナルは、参照抗体HA22 mAbのものに匹敵する一方、残りのmAbの最大蛍光シグナルは全て、参照抗体HA22 mAbのものより高く、最大蛍光シグナルは以下のようにランク付け可能である。mAb-6>mAb-5>mAb-3>mAb-4>mAb-2>mAb-1>HA22 mAb。より高い蛍光強度は、ヒト化mAbがHA22 mAbよりも、Raji細胞に対してより高い結合潜在能力を有することを示す。蛍光シグナルは10ng/mLの濃度で既に検出可能であり、Raji細胞に対する各抗体の結合が10ng/mLで達成されることを示した。抗体mAb-3、mAb-5、及びmAb-6は、50μg/mLでなお蛍光シグナルプラトーに到達せず、そのため得られたEC50値は不正確なものであったが、全体の線形性評価から、mAb-1~mAb-6は、Raji細胞に対して匹敵するか又は更により強い結合能を有すると決定可能である。
【0061】
【表7】
【0062】
パネル3B及び表6-2に示されるように、CD22の中程度の発現を持つREH細胞に対して、mAb-1~mAb-6は、HA22 mAbと比較して、REH細胞に対し、匹敵するか又は更により強い結合能を有した。
【0063】
【表8】
【0064】
パネル3C及び表6-3に示されるように、CD22の高い発現を持つCA46細胞に対して、mAb-1~mAb-6は、HA22 mAbのものと類似の結合特性を保持し、これら全ては高いCA46結合を達成した。3つのCD22陽性細胞株全てに対する検出結果によれば、ヒト化mAb-1~mAb-6は、HA22 mAbのものに匹敵するか、又は更により優れた細胞結合能を保持し得る。
【0065】
実施例5 抗体の内在化効率に関する研究
CD22は、内在化の効率的な標的であるため、CD22に対する抗体の内在化効率は、しばしば、免疫毒素及びADCの発現に関する評価の最も重要な指標である。ヒト化抗体、即ちmAb-1~mAb-6の内在化効率を評価するため、3つのCD22陽性細胞株(Raji細胞、CA46細胞及びREH細胞)を評価のために選択し、抗体の内在化効率を、参照抗体HA22 mAbのものと比較した。
【0066】
試薬:
FACS緩衝液:2%FBS+PBS、
ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体、FITC:Invitrogen、カタログ番号31529、
4%PFA、
アロフィコシアニン(APC)AffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗ヒトIgG(Fcγ断片特異的)、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-136-170
【0067】
実験工程は以下の通りであった。
1)対数増殖期のRaji細胞、CA46細胞及びREH細胞を採取し、1000rpmで3分間遠心分離した。
2)1000rpmで3分間の遠心分離によって、FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。
3)細胞をFACS緩衝液中に再懸濁し、細胞密度を5E6/mLに調整した。
4)細胞懸濁物を96ウェル丸底プレートに1ウェルあたり100μLで添加し、次いでプレートを氷上に置いた。
5)100μg/mLの試験しようとする抗体のストック溶液を調製し、1ウェルあたり100μLでプレートのウェルに溶液を添加して、50μg/mLの抗体濃度を得て、プレート中の細胞及び溶液を混合し、次いでプレートを4℃の冷蔵庫中、氷上に置き、30分間インキュベーションした。
6)インキュベーション後、プレートを取り出し、細胞を4℃、2000rpmで3分間遠心分離した。
7)2000rpm、4℃で3分間の遠心分離によって、FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。
8)1つのプレートを「0時間プレート」として用いた。この中の細胞を、2%PFAで、室温で20分間固定し、次いで、FACS緩衝液で2回洗浄し(2000rpm、3分間)、FACS緩衝液中に懸濁し、続く二次抗体標識のため、4℃に置いた。
9)他のプレートを「0.5時間プレート」、「1時間プレート」、「2時間プレート」、及び「4時間プレート」として用い、プレートの各ウェル中の細胞を100μLのFACS緩衝液中に懸濁し、プレートを静置培養のため、37℃定温インキュベーターに入れ、培養時間を記録した。
10)プレートを、それぞれ、0.5時間、1時間、2時間、及び4時間で取り出した。
11)全てのプレートを2000rpm、4℃で3分間遠心分離した。
12)二次抗体を緩衝液中で配合し、各100μLを細胞に添加し、次いでプレートを4℃の冷蔵庫中、氷上に置き、30分間インキュベーションした。
13)インキュベーション後、細胞を2000rpm、4℃で3分間遠心分離した。
14)上清を廃棄し、2000rpm、4℃で3分間の遠心分離によって、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した。
15)細胞を200μLのFACS緩衝液中に懸濁し、検出した。
【0068】
結果を図4に示す。
【0069】
0時間ではエンドサイトーシスは全く起こらず、抗体は細胞表面上で、100%濃縮され、経時的に、抗体は細胞内にエンドサイトーシスされて、検出可能な膜表面上の抗体の量は減少した。より低い抗体シグナルが検出されるほど、より多くのエンドサイトーシスが起こっている。図4に示されるように、Raji細胞、CA46細胞及びREH細胞内への抗体のエンドサイトーシスの割合を評価した際、mAb-1~mAb-6とHA22 mAbとの間には、エンドサイトーシス率の有意な相違は見られず、最大エンドサイトーシス効率は、Raji細胞及びCA46細胞上では0.5時間で、REH細胞上では1時間で達成された。7つの抗体は匹敵するエンドサイトーシスの割合を示したが、平均蛍光強度値の分析によって、エンドサイトーシスされる分子の数の大きな相違が見られ得た。CA46細胞上で、抗体は本質的に同一の数のエンドサイトーシス分子を達成した一方、Raji細胞及びREH細胞上では、ヒト化抗体mAb-1~mAb-6のエンドサイトーシスされる分子の数は、参照抗体HA22 mAbのものよりも有意により高く、以下のように高い方から低い方にランク付け可能であった。mAb-6>mAb-5>mAb-4>mAb-3>mAb-2=mAb-1=HA22 mAb。
【0070】
実施例6 抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)の検出
候補抗体が抗体依存性細胞傷害を有するかどうかを評価するため、ADCCアッセイのため、3つの腫瘍細胞株、即ち異なるCD22発現レベルを有するRaji細胞株、CA46細胞株及びREH細胞株を標的細胞として選択し、PBMCをエフェクター細胞として選択した。
【0071】
試薬:
R-10培地:フェノールレッド不含RPMI1640+10%不活性化FBS+2mM Glutamax、
R-2培地:フェノールレッド不含RPMI1640+2%不活性化FBS+2mM Glutamax、
Cytotox Glo(商標)細胞傷害性アッセイキット(Promega、カタログ番号G9291)。
【0072】
実験工程は以下の通りであった。
1)PBMCを1日前に融解した。
2)実験当日、融解したPBMCを採取し、200gで15分間遠心分離し、上清を廃棄した。細胞を2mLの新鮮なR-10培地に再懸濁し、計数し、細胞密度を5E6細胞/mLに調整した。細胞懸濁物を1ウェルあたり50μLでプレートに添加して、1ウェルあたり250000細胞を得るか、又はR-10培地を添加した。
3)検出しようとする抗体を、R-2培地で200μg/mL、40μg/mL、8μg/mL、1.6μg/mL、0.32μg/mL、0.064μg/mL、0.0128μg/mL及び0.00256μg/mLに希釈し、1ウェルあたり25μLをプレートに添加して、50μg/mL、10μg/mL、2μg/mL、0.4μg/mL、0.08μg/mL、0.016μg/mL、0.0032μg/mL、及び0.00064μg/mLの最終濃度を得た。
4)Raji細胞、CA46細胞及びREH細胞をR-10培地で2E5細胞/mLに希釈し、プレート内に1ウェルあたり25μLで添加して、50:1のエフェクター対標的比を達成した。
5)プレートを37℃、5%COで4時間インキュベーションし、発色させ、Cytotox Glo(商標)細胞傷害性アッセイキット中の使用説明書に従って検出した。
【0073】
結果を図5及び図6に示す。
【0074】
図5に示されるように、7つのmAbは全て、異なるCD22発現レベルを持つ腫瘍細胞に対して、有意なADCC効果を持たず、用量-反応依存曲線は適合不能である一方、これらは50μg/mLの高用量でわずかなADCC効果を示した。
【0075】
50μg/mLの用量で観察された細胞傷害を分析すると、図6に示されるように、mAb-3は比較的低い細胞傷害を有し、アイソタイプ対照と相違がなかった。抗体mAb-1、mAb-2、mAb-4、mAb-5、及びmAb-6は、高いCD22発現レベルを有するRaji細胞及びCA46細胞に対して、HA22と異ならない細胞傷害を示した。しかし、mAb-2は、低いCD22発現レベルを有するREH細胞に対して、HA22 mAbよりもわずかにより強力な細胞傷害を示した。結論として、7つのIgG1抗体によって、有意なADCC効果は示されなかった。
【0076】
本発明の実施形態に関する以上の説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で本発明に種々の変更及び修正を加えることができ、これは添付の特許請求の範囲に含まれるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
【配列表】
2023544227000001.app
【国際調査報告】