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特表2023-544241キシレンフリーの組織処理装置及び組織を処理するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】キシレンフリーの組織処理装置及び組織を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/30 20060101AFI20231016BHJP
   B01L 3/16 20060101ALI20231016BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20231016BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G01N1/30
B01L3/16
G01N1/28 J
G01N33/48 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509511
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 CN2020108120
(87)【国際公開番号】W WO2022032428
(87)【国際公開日】2022-02-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500113648
【氏名又は名称】ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ビン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
4G057
【Fターム(参考)】
2G045BB28
2G045CB01
2G052AA33
2G052AD34
2G052EB01
2G052EB04
2G052EB11
2G052FC02
2G052FC15
4G057AB03
4G057AB38
(57)【要約】
【課題】組織処理装置及び組織処理装置によって実行される組織処理のための方法を提供する。
【解決手段】改善された組織処理のための方法又は組織処理装置は、キシレンフリーの処理をサポートすることが可能であるとともに、イソプロパノールを除去する更なる保護的化学試薬の添加無しに、キシレンの置換物(イソプロパノール、IPAなど)を効果的に除去することが可能であり、そのため組織処理方法及が単純化されてコストが顕著に削減される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織サンプルを収容するように構成され、組織サンプルが処理されるようにするとともに、第1のキャリア材料導入口(101)、第1のキャリア材料排出口(102)、処理試薬導入口(103)、処理試薬排出口(104)及び第1のガス排出口(105)を有するリアクタ(100)と、
キャリア材料を収容するように構成されるとともに、リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)に対して接続される第2のキャリア材料排出口(201)と第2のガス排出口(202)とを有するキャリア材料容器(200)と、
キャリア材料容器(200)内のキャリア材料を加熱するように構成される第2のヒータ(300)と、
リアクタ(100)の第1のガス排出口(105)に対して接続される第1の空気導入口(401)と第1の液体排出口(402)とを有するとともに、リアクタ(100)からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される第1のコンデンサ(400)と、
第1のコンデンサ(400)の第1の液体排出口(402)に対して接続されるとともに、第1のコンデンサ(400)からの凝縮液を受け取るように構成される第1の液体容器(500)と、
を含む、組織処理装置(1)。
【請求項2】
リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)とキャリア材料容器(200)の第2のキャリア材料排出口(201)とを接続するパイプに配設されるオン―オフバルブ(600)を更に含み、
好ましくは、オン―オフバルブ(600)が1~10秒、好ましくは1.5秒の開時間及び0.2~5秒、好ましくは1.0秒の閉時間を各々含むサイクルで操作されるように構成される、
請求項1に記載の組織処理装置(1)。
【請求項3】
リアクタ(100)を以下に示す圧力の下で操作されるように制御するように構成される第1の圧力制御デバイス(700)を更に含む、請求項1又は2に記載の組織処理装置(1)、
第1段階:20~40分間、好ましくは30分間、-15kPa~(乃至)-50kPa、好ましくは-40kPaの圧力で維持する、
第2段階:5~25分間、好ましくは15分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、
第3段階:10~25分間、好ましくは15分間、-60kPa~-75kPa、好ましくは-70kPaの圧力で維持する。
【請求項4】
リアクタ(100)内の処理試薬及び/又はキャリア材料を加熱するように構成される第1のヒータ(800)を更に含み、好ましくは第1のヒータ(800)が加熱蓋であり、
任意的に、第1のヒータ(800)は、リアクタ(100)を以下の温度で操作されるように制御するように構成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)、
0.5~2℃/min、好ましくは1.5℃/minの速度で、50~70℃、好ましくは65℃から75~90℃、好ましくは85℃まで上昇させて、75~90℃、好ましくは85℃で30~40分間維持する。
【請求項5】
キャリア材料容器(200)の第2のガス排出口(202)に対して接続される第2の空気導入口(901)及び第2の液体排出口(902)を有するとともに、キャリア材料容器(200)からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される第2のコンデンサ(900)と、
第2のコンデンサ(900)の第2の液体排出口(902)に対して接続されるとともに、第2のコンデンサ(900)からの凝縮液を受け取るように構成される第2の液体容器(1000)と、
を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)。
【請求項6】
第1のコンデンサ(400)及び第2のコンデンサ(900)が、各々冷却コイル(403)を含み、冷却ファン(404)及び冷却コイル(403)を取り囲む冷却チャンネル(405)を任意的に更に含む、請求項1又は5に記載の組織処理装置(1)。
【請求項7】
25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の、-20から-75kPaまで、好ましくは-40kPaの圧力と、
5秒間~15秒間、好ましくは6秒間の、任意的な雰囲気圧力と、
を各々含むサイクルで操作されるようにキャリア材料容器(200)を制御するように構成される第2の圧力制御デバイス(1100)を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)。
【請求項8】
排出口(1201)及び回収導入口(1202)を有する処理試薬容器(1200)を更に含み、
排出口(1201)がリアクタ(100)の処理試薬導入口(103)に対して接続されるとともに、回収導入口(1202)がリアクタ(100)の処理試薬排出口(104)に対して接続され、
好ましくは、排出口(1201)及び回収導入口(1202)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
好ましくは、処理試薬容器(1200)が、固定試薬容器、脱水試薬容器、クリーニング試薬容器及び任意的にキャリア材料保護試薬容器を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)。
【請求項9】
リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)及び第1のキャリア材料排出口(102)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
任意的に、キャリア材料容器(200)の第2のキャリア材料導入口及び第2のキャリア材料排出口(201)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、 任意的に、リアクタ(100)の処理試薬導入口(103)及び処理試薬排出口(104)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされる、請求項1~8のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)によって実行される組織処理のための方法であって、
リアクタ内へ処理される組織サンプルを提供すること、
固定試薬で組織サンプルを固定すること、
脱水試薬で固定された組織サンプルを脱水すること、
脱水された組織サンプル及びリアクタをクリーニング試薬でクリーニングして、脱水試薬を除去すること、
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給して、クリアされた組織サンプルを浸潤すること、ここでキャリア材料はクリーニング試薬を含み、
第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御すること、
発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御すること、及び、
排出された第1のクリーニング試薬蒸気を第1のコンデンサによって液体へ凝縮して、第1のクリーニング試薬蒸気を除去すること、
を含む方法。
【請求項11】
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給して、クリアされた組織サンプルを浸潤することが、オン―オフバルブによって、キャリア材料容器からリアクタへ供給されるキャリア材料を、1~10秒間、好ましくは1.5秒間の開時間、及び0.2~5秒間、好ましくは1.0秒間の閉時間を各々含むサイクルにおいて制御すること、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御することが、以下の温度で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む、請求項10又は11に記載の方法、
50~70℃、好ましくは65℃から75~90℃、好ましくは85℃まで、0.5~2℃/min、好ましくは1.5℃/minの速度で上昇させ、30~40分間、75~90℃、好ましくは85℃で維持する。
【請求項13】
発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御することが、以下の圧力で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む請求項10~12のいずれか1項に記載の方法、
第1段階:20~40分間、好ましくは30分間、-15kPaから-50kPa、好ましくは-40kPaの圧力で維持する、
第2段階:5~25分間、好ましくは15分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、
第3段階:10~25分間、好ましくは15分間、-60kPa~-75kPa、好ましくは-70kPaの圧力で維持する。
【請求項14】
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する前に、第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することを更に含み、
第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することが、 第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にキャリア材料容器を制御すること、
発生した第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料容器の外部へ排出されるサイクルの圧力の下で操作されるようにキャリア材料容器を制御すること、
各サイクルが、
25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の-20~-75kPa、好ましくは-40kPaの圧力、及び
5秒間~15秒間 好ましくは6秒間の任意的な雰囲気圧力、を含み、そして、
排出された第2のクリーニング試薬蒸気を第2のコンデンサによって液体へ凝縮して、第2のクリーニング試薬蒸気を除去すること、
を任意的に更に含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する前に、リアクタへキャリア材料保護試薬を提供してクリアされた組織サンプル及びリアクタ内のクリーニング試薬を除去することを更に含み、
好ましくは、キャリア材料保護試薬がクリーニング試薬置換物、クリーニング試薬置換物とクリーニング試薬との混合物、及びクリーニング試薬置換物とキャリア材料との混合物を含む、
請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織処理の分野に、特に組織処理装置及び組織処理装置による組織処理のための方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
生物学的組織サンプルは生物学的リサーチ、病理学的な検出又は他の関連分野に関して非常に重要である。組織処理方法は、通常は、組織サンプルの固定、脱水試薬を用いる固定された組織サンプルの脱水、脱水試薬を除去するためのクリーニング試薬を用いる脱水された組織サンプルのクリーニング、及びキャリア材料を用いるクリア(クリーニング)された組織サンプルの浸潤のステップを含む。キシレン、強力な刺激を有し、発癌性物質としてヒトの身体に有害な無色で透明な液体が、組織処理方法において組織サンプにおけるエタノールなどの脱水試薬を除去するために一般的に使用される。良好な作業環境を確保するためにキシレンを除去することが必要である。
【0003】
組織処理方法においてIPAと略称されるイソプロパノールなどのキシレンの置換物を使用することが提案されている。CN101929927Bは組織サンプルの処理に関するキシレンフリーの方法を開示し、該方法は、パラフィンなどのキャリア材料の中に混入したイソプロパノールの量を減少させるように、脱水された組織サンプルのイソプロパノールを用いるクリーニングの後に、組織サンプル及びリアクタの中のイソプロパノールを除去するキャリア材料保護試薬、例えば、PARALASTの添加を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許第101929927号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このキシレンフリーの方法は追加の試薬(PARALASTなど)の使用を必要とし、PARALASTなどの化学試薬廃棄物の廃棄に部分的に起因する高価なコスト及び複雑化したプロセスを結果として生じる。更に、他の既存の組織処理方法又は キシレンフリー処理をサポートするデバイスは、しばしば、エアシステム内へのキャリア材料の侵入が生じ、そのためエアシステムのブロッキング(目詰まり)に伴う維持コストの増加及びデバイスの寿命の短縮が生じる。
【0006】
従って、特に、効果的で、コストが低くかつ単純な様式のイソプロパノールを除去することが可能な、改善されたキシレンフリーの処理装置及び該装置を使用する組織処理方法に関する緊急のニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、関連技術分野に存在する少なくとも1つの問題点を、少なくともある程度解決することを図る。従って、組織処理装置及び組織処理装置によって実行される組織処理のための方法が提供される。
【0008】
第1の視点では、実施形態(複数)において、
組織サンプルを収容するように構成され、組織サンプルが処理されるようにするとともに、
第1のキャリア材料導入口(101)、第1のキャリア材料排出口(102)、処理試薬導入口(103)、処理試薬排出口(104)及び第1のガス排出口(105)を有する、
リアクタ(100)と、
キャリア材料を収容するように構成されるとともに、リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)に対して接続される第2のキャリア材料排出口(201)と第2のガス排出口(202)とを有する、
キャリア材料容器(200)と、
キャリア材料容器(200)内のキャリア材料を加熱するように構成される第2のヒータ(300)と、
リアクタ(100)の第1のガス排出口(105)に対して接続される第1の空気導入口(401)と第1の液体排出口(402)を有するとともに、
リアクタ(100)からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される、
第1のコンデンサ(400)と、
第1のコンデンサ(400)の第1の液体排出口(402)に対して接続されるとともに、第1のコンデンサ(400)からの凝縮液を受け取るように構成される第1の液体容器(500)と、
を含む、組織処理装置(1)が提供される。
【0009】
当該実施形態(複数)によれば、本開示において提供される組織処理装置は、キシレンフリーの処理をサポートすることが可能であり、そしてイソプロパノールを除去するための保護的化学試薬(PARALASTなど)の更なる添加無しに処理の間のキシレンの置換物(ないし代替物、イソプロパノール、IPAなど)の効果的な除去を可能にし、組織処理方法を単純化しつつコストを顕著に削減する。
【0010】
一実施形態において、組織処理装置(1)は
リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)とキャリア材料容器(200)の第2のキャリア材料排出口(201)とを接続するパイプに配設されるオン―オフバルブ(600)を更に含み、
好ましくは、オン―オフバルブ(600)が1~10秒、好ましくは1.5秒の開時間及び0.2~5秒、好ましくは1.0秒の閉時間を各々含むサイクルで操作されるように構成される。
【0011】
当該実施形態によれば、キャリア材料容器200からリアクタ100への融解パラフィンなどのキャリア材料の供給スピードを低速にすることができるとともに、作用状態(すなわち高い温度かつ陰圧)の下で融解パラフィン内のイソプロパノールをパラフィンから適切に分離することができ、それによって作用状態の下でリアクタ100の中に融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される。
【0012】
他の一実施形態において、組織処理装置(1)はリアクタ(100)を以下に示す圧力の下で操作されるように制御するように構成される第1の圧力制御デバイス(700)を更に含む、
第1段階:20~40分間、好ましくは30分間、-15kPa~(乃至)-50kPa、好ましくは-40kPaの圧力で維持する、
第2段階:5~25分間、好ましくは15分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、
第3段階:10~25分間、好ましくは15分間、-60kPa~-75kPa、好ましくは-70kPaの圧力で維持する。
【0013】
当該実施形態によれば、リアクタ内の圧力は、イソプロパノール蒸気がリアクタ内のキャリア材料から緩やかかつ均一に生成するように徐々に減少し、作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される。
【0014】
他の一実施形態において、組織処理装置(1)はリアクタ(100)内の処理試薬及び/又はキャリア材料を加熱するように構成される第1のヒータ(800)を更に含み、好ましくは第1のヒータ(800)が加熱蓋であり、
任意的に、第1のヒータ(800)は、リアクタ(100)を以下の温度で操作されるように制御するように構成される、
0.5~2℃/min、好ましくは1.5℃/minの速度で、50~70℃、好ましくは65℃から75~90℃、好ましくは85℃まで上昇させて、75~90℃、好ましくは85℃で30~40分間維持する。
【0015】
当該実施形態によれば、リアクタ内のキャリア材料からイソプロパノール蒸気が緩やかかつ均一に生成するようにリアクタの温度を徐々に上昇させて、作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することを防止し、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることを回避する。
【0016】
他の一実施形態において、組織処理装置(1)は
キャリア材料容器(200)の第2のガス排出口(202)に対して接続される第2の空気導入口(901)及び第2の液体排出口(902)を有するとともに、キャリア材料容器(200)からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される第2のコンデンサ(900)と、
第2のコンデンサ(900)の第2の液体排出口(902)に対して接続されるとともに、第2のコンデンサ(900)からの凝縮液を受け取るように構成される第2の液体容器(1000)と、
を更に含む。
【0017】
この実施形態において、第1のコンデンサ(400)及び第2のコンデンサ(900)は、各々冷却コイル(403)を含み、冷却ファン(404)及び冷却コイル(403)を取り囲む冷却チャンネル(405)を任意的に更に含む。
【0018】
当該実施形態によれば、キャリア材料内のイソプロパノールを完全に(フルに)除去することができる。
【0019】
他の一実施形態において、組織処理装置(1)は
25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の、-20から-75kPaまで、好ましくは-40kPaの圧力と、
5秒間~15秒間、好ましくは6秒間の、任意的な雰囲気圧力と、
を各々含むサイクルの圧力下で操作されるようにキャリア材料容器(200)を制御するように構成される第2の圧力制御デバイス(1100)を更に含む。
【0020】
当該実施形態によれば、キャリア材料内のイソプロパノールを完全に(フルに)除去することができる
【0021】
他の一実施形態において、組織処理装置(1)は、排出口(1201)及び回収(return)導入口(1202)を有する処理試薬容器(1200)を更に含み、
排出口(1201)がリアクタ(100)の処理試薬導入口(103)に対して接続されるとともに、回収導入口(1202)がリアクタ(100)の処理試薬排出口(104)に対して接続され、
好ましくは、排出口(1201)及び回収導入口(1202)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
好ましくは、処理試薬容器(1200)が、固定試薬容器、脱水試薬容器、クリーニング試薬容器及び任意的にキャリア材料保護試薬容器を含む。
【0022】
他の一実施形態において、
リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)及び第1のキャリア材料排出口(102)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
任意的に、キャリア材料容器(200)の第2のキャリア材料導入口及び第2のキャリア材料排出口(201)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、 任意的に、リアクタ(100)の処理試薬導入口(103)及び処理試薬排出口(104)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされる。
【0023】
第2の視点では、実施形態(複数)において
第1の視点に記載の組織処理装置(1)によって実行される組織処理のための方法であって、
リアクタ内へ処理される組織サンプルを提供すること、
固定試薬で組織サンプルを固定すること、
脱水試薬で固定された組織サンプルを脱水すること、
脱水された組織サンプル及びリアクタをクリーニング試薬でクリーニングして、脱水試薬を除去すること、
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給して、クリア(クリーニング)された組織サンプルを浸潤すること、ここでキャリア材料はクリーニング試薬を含み、
第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御すること、
発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御すること、及び、
排出された第1のクリーニング試薬蒸気を第1のコンデンサによって液体へ凝縮して、第1のクリーニング試薬蒸気を除去すること、
を含む方法が提供される。
【0024】
当該実施形態によれば、組織処理のための方法は、キャリア材料内のクリーニング試薬(イソプロパノールなど)を効果的かつ効率的に除去することが可能であり、それによってイソプロパノール除去試薬の追加及びその後の廃棄化学試薬処理を回避することができ、処理コストが削減され環境的に優しくなる(friendly)。
【0025】
一実施形態において、本開示の方法は、キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給して、クリア(クリーニング)された組織サンプルを浸潤することが、オン―オフバルブによって、キャリア材料容器からリアクタへ供給されるキャリア材料を、1~10秒間、好ましくは1.5秒間の開時間、及び0.2~5秒間、好ましくは1.0秒間の閉時間を各々含むサイクルにおいて制御すること、を更に含む。
【0026】
当該実施形態によれば、キャリア材料容器200からリアクタ100への融解パラフィンなどのキャリア材料の供給スピードを低速にすることができるとともに、作用状態(すなわち高い温度かつ陰圧)の下で融解パラフィン内のイソプロパノールをパラフィンから適切に分離することができ、それによって作用状態の下でリアクタ100の中に融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される。
【0027】
他の一実施形態において、
第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御することが、以下の温度で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む、
50~70℃、好ましくは65℃から75~90℃、好ましくは85℃まで、0.5~2℃/min、好ましくは1.5℃/minの速度で上昇させ、30~40分間、75~90℃、好ましくは85℃で維持する。
【0028】
当該実施形態によれば、リアクタ内のキャリア材料からイソプロパノール蒸気が緩やかかつ均一に生成されるようにリアクタの温度を徐々に上昇させて、作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することを防止し、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることを回避する。
【0029】
他の一実施形態において、
発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御することが、以下の圧力で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む、
第1段階:20~40分間、好ましくは30分間、-15kPaから-50kPa、好ましくは-40kPaの圧力で維持する、
第2段階:5~25分間、好ましくは15分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、
第3段階:10~25分間、好ましくは15分間、-60kPa~-75kPa、好ましくは-70kPaの圧力で維持する。
【0030】
当該実施形態によれば、リアクタ内のキャリア材料からイソプロパノール蒸気が緩やかかつ均一に生成されるようにリアクタ内の圧力を徐々に低下させて、作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することを防止し、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることを回避する。。
【0031】
他の一実施形態において、本開示の方法は、
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する前に、第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することを更に含み、
第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することが、 第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にキャリア材料容器を制御すること、
発生した第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料容器の外部へ排出されるサイクルの圧力の下で操作されるようにキャリア材料容器を制御すること、
各サイクルが、
25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の-20~-75kPa、好ましくは-40kPaの圧力、及び
5秒間~15秒間 好ましくは6秒間の任意的な雰囲気圧力、を含み、そして、
排出された第2のクリーニング試薬蒸気を第2のコンデンサによって液体へ凝縮して、第2のクリーニング試薬蒸気を除去すること、
を任意的に更に含む。
【0032】
当該実施形態によれば、キャリア材料内のイソプロパノールを完全に(フルに)除去することができる。
【0033】
他の一実施形態において、本開示の方法は、キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する前に、リアクタへキャリア材料保護試薬を提供してクリアされた組織サンプル及びリアクタ内のクリーニング試薬を除去することを更に含み、
好ましくは、キャリア材料保護試薬がクリーニング試薬置換物、クリーニング試薬置換物とクリーニング試薬との混合物、及びクリーニング試薬置換物とキャリア材料との混合物を含む。
【0034】
上述の一般的記載及び以下の詳細な記載の両方は説明のためのものと理解され、本開示を限定するとは解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示の実施形態(複数)のこれらの及び/又は他の視点及び利点は、図面を参照しつつ以下の記載から明白になり及びより容易に分かるだろう。
図1図1は、本開示の一実施形態の組織処理装置1の模式図である。
図2図2は、本開示の一実施形態の組織処理装置1の他の模式図である。
図3図3は、本開示の一実施形態の組織処理装置1の他の模式図である。
図4図4は、本開示の一実施形態の組織処理装置1の他の模式図である。
図5図5は、本開示の一実施形態の組織処理装置1の他の模式図である。
図6図6は、本開示の一実施形態の組織処理装置1の他の模式図である。
図7図7は、本開示の一実施形態の組織処理装置1の他の模式図である。
図8A図8Aは、本開示の一実施形態の組織処理装置2の模式図である。
図8B図8Bは、本開示の一実施形態の組織処理装置2の模式図である。
図9図9は、本開示のいくつかの実施形態の組織処理装置の模式的プロセスフロー図である。
図10図10は、本開示のいくつかの実施形態の組織処理のための方法S1のフローチャートである。
図11図11は、本開示の実施形態の組織処理のための方法S1の他のフローチャートである。
図12図12は、本開示の一実施形態の組織処理のための方法S1のステップS900のフローチャートである。
図13図13は、本開示のいくつかの実施形態の組織処理のための方法S2のフローチャートである。
図14図14は、本開示の一実施形態の浸潤における処理装置のリアクタの中の温度設定(ないし温度推移、temperature procedure)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示の実施形態(複数)は、以下に詳細に記載され、それらの例が図面に示される。本願おいて図面を参照して説明される実施形態(複数)は説明のためのものであり、本開示を一般的に理解するために使用される。実施形態(複数)は、本開示を限定すると解釈されるべきではない。同一の又は類似の要素及び同一の又は類似の機能を有する要素は、明細書全体に渡って同様の引用符号によって記される。
【0037】
本開示において使用される用語は、特定の実施形態を示す目的のみのためのものであり本開示を限定すると解釈されるべきではないことが説明されるべきである。本開示の実施形態(複数)及び添付の請求の範囲において使用される場合に、文脈において他に明確に示されない限り、単数形の「a」、「an」及び「the」は複数の形態を同様に含むことを意味する。本願において使用される場合に、用語「及び/又は」は、関連付けて列挙されるアイテムのいずれか1つ及び1つ以上の全ての可能な組み合わせを含むとも理解される。
【0038】
本開示において、「第1の」及び「第2の」などの用語は説明の目的で本願において使用され、相対的な重要性又は顕著さを示す又は示唆すること、あるいは言及される技術的特徴の量を暗示することは意図されない。つまり、「第1の」及び「第2の」を用いて定義される特徴は、この特徴の1つ以上を含み得る。本開示の明細書において、「複数の」は、他に特定されない限り、2つ又は2つを上回るこの特徴を意味する。
【0039】
本開示の明細書において、他に特定又は限定されない限り、用語「配設される(arranged)」、「接続される(connected)」及び「カップル化される(coupled)」及びそれらのバリエーションは広義に使用され、力学的(メカニカル)な又は電気的なアレンジメント(複数)、接続及びカップリングなどを包含し、2つの構成要素の内部的アレンジメント、接続及びカップリングでもあり得るし、更に直接的及び間接的なアレンジメント、接続及びカップリングでもあり得ると理解されるべきである。これは、本開示の詳細な実施形態に従って本発明の技術分野における通常の知識を有する者に理解され得る。
【0040】
本開示の実施形態(複数)において提供される改善された組織処理装置及び改善された組織処理装置によって実行される組織処理のための方法は、以下に図面を参照しつつ記載される。
【0041】
改善された組織処理のための方法又は組織処理装置は、イソプロパノールを除去するための更なる保護的化学試薬(PARALASTなど)の添加無しに、キシレンフリーの処理をサポートすること及びキシレンの置換物(substitute)(イソプロパノール、IPAなど)を効果的に除去することが可能であり、そのため組織処理方法が単純化されコストを顕著に省く(saving)。
【0042】
更に、提供される組織処理装置は、追加のパラフィン精製ステップ無しに、組織処理の間のイソプロパノールの精製をサポートする。具体的には、パラフィン供給速度、リアクタ内の温度及び圧力を制御することによってパラフィン内のイソプロパノールをパラフィンから緩やかかつ均一に分離することができ、短時間の間にIPAの泡が生成すること及びIPAの泡がエアシステム内に入り込むことを回避することができる。組織処理装置は、組織処理期間の間のみならず非組織処理段階においてもパラフィン精製をサポートし、そのため有効で、低コストでかつ単純な仕方においてその後の浸潤のために高度に精製されたパラフィンを取得することが可能であり、それによってパラフィンの寿命を延長させて、高い品質の組織サンプルの取得に寄与する。
【0043】
本開示の第1の視点において、図1図9に示すように、組織処理装置1が実施形態(複数)において提供される。
【0044】
一実施形態において、図1に示すように、組織処理装置1は、リアクタ100、キャリア材料容器200、第2のヒータ300、第1のコンデンサ400及び第1の液体容器500を含む 。
【0045】
リアクタ100
リアクタ100は組織サンプルを収容するように構成され、組織サンプルを処理されるようにするとともに、第1のキャリア材料導入口101、第1のキャリア材料排出口102、処理試薬導入口103、処理試薬排出口104及び第1のガス排出口105を有する。
【0046】
一実施形態において、リアクタ100の第1のキャリア材料導入口101及び第1のキャリア材料排出口102は、個別に配設される。
【0047】
この実施形態において、リアクタ100の第1のキャリア材料導入口101は、チューブを介してキャリア材料容器200からキャリア材料を受け取るようにキャリア材料容器200のキャリア材料排出口に対して接続される。リアクタ100の第1のキャリア材料排出口102は、キャリア材料をリサイクルするためにチューブを介してキャリア材料排出口又はキャリア材料容器200の異なる導入口に対して接続される。
【0048】
他の一実施形態において、リアクタの第1のキャリア材料導入口101及び第1のキャリア材料排出口102は、同一のアレンジメントに組み合わせられる。この実施形態において、キャリア材料は同一の穴部を通ってチューブを介してリアクタの中へ供給される及び/又はリアクタの外へ排出される。
【0049】
一実施形態において、処理装置はキャリア材料受容器を更に含み、キャリア材料受容器は、リアクタからのキャリア材料のこぼれ(ないしあふれ、spilt)を受け取るために第1のキャリア材料排出口102に対して接続される。
【0050】
一実施形態において、リアクタ100の処理試薬導入口103及び処理試薬排出口104は、個別に配設される。他の一実施形態において、リアクタ100の処理試薬導入口103及び処理試薬排出口104は同一のアレンジメントに組み合わされる。この実施形態において、処理試薬は、同一の穴部を通ってチューブを介してリアクタの中へ供給される及び/又はリアクタの外へ排出される。
【0051】
実際的には、リアクタ100はレトルト(Retort)である。処理装置1におけるリアクタ100の数は、組織サンプル処理に関して適切である限り、限定されない。例えば、処理装置1は1、2、3、4、5又は6つのレトルトを含むことができる。組織サンプル(複数)は、処理の間に、レトルトのカセット内に供される。レトルトは、必要があれば、10、50、100、150、200又は250個のカセットを収容することができる。カセットは、効果的に化学試薬を流入させる又は排出することが可能な中空のプラスチックボックスであり得る。レトルト及びカセットは、化学試薬の化学作用に対して耐性である。レトルト100は、作業環境において緊密に密封される。レトルト100の温度及び圧力は、処理の間に必要であれば制御され得る。
【0052】
キャリア材料容器200
キャリア材料容器200は、組織サンプルを収容するように構成されるとともに、リアクタ100の第1のキャリア材料導入口101に対して接続される第2のキャリア材料排出口201及び第2のガス排出口202を有する。この実施形態において、第2のキャリア材料排出口201はキャリア材料回収導入口としても使用され得る。つまり、キャリア材料は、チューブを介して第2のキャリア材料排出口201を通って、キャリア材料容器200からリアクタ100へ供給されるか、又はリアクタ100からキャリア材料容器200へ戻される。
【0053】
他の一実施形態において、キャリア材料容器200は、第2のキャリア材料導入口203を更に有し、第2のキャリア材料導入口203はリアクタ100の第1のキャリア材料排出口102に対して接続される。この実施形態において、キャリア材料容器200の第2のキャリア材料導入口203及び第2のキャリア材料排出口201は、個別に配設される。更に、リアクタ100からのキャリア材料は、キャリア材料容器200へ戻すことなく、別個に収集することができる。
【0054】
キャリア材料容器200は、作業環境において緊密に密封される。キャリア材料容器200の温度及び圧力は、必要に応じて制御することができる。キャリア材料は、組織サンプルの湿潤に適したパラフィン又は油であり得る。
【0055】
第2のヒータ300
第2のヒータ300は、キャリア材料容器200内のキャリア材料を加熱するように構成される。第2のヒータ300は、キャリア材料容器200の内側に設置されるか、又はキャリア材料容器の外側に設置される。
【0056】
一実施形態において、第2のヒータ300は、キャリア材料容器200の側壁に対してカップル化される加熱要素である。他の一実施形態において、第2のヒータ300はオーブンであり、キャリア材料容器200はオーブンのチャンバ内に配設される。第2のヒータ300は、キャリア材料が融解状態になる温度にキャリア材料容器200を制御するように構成され、それによってキャリア材料がチューブを介してレトルト100又は他のデバイス内へ供給可能になる。例えば、キャリア材料容器200の温度は、65℃~85℃の範囲(範囲内のいずれかの値を含む)に制御され、そのため、イソプロパノールなどのクリーニング試薬をキャリア材料容器200の中のキャリア材料から完全に分離することが可能である。
【0057】
好ましくは、チューブは、キャリア材料が供給される間又はレトルト100から排出される間に融解状態を保つように、チューブの周囲にヒータ要素(heater component)を有する。チューブ及びその周囲のヒータ要素は個別に配設されるか、又は加熱チューブなど同一アレンジメントへ組み合わされ得る。
【0058】
第1のコンデンサ400及び第1の液体容器500
第1のコンデンサ400は、リアクタ100の第1のガス排出口105に対して接続される第1の空気導入口401及び第1の液体排出口402を有するとともに、リアクタ100からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される。第1の液体容器500は、第1のコンデンサ400の第1の液体排出口402に対して接続されるとともに、第1のコンデンサ400から凝縮液を受け取るように構成される。
【0059】
一実施形態において、第1のコンデンサ400は冷却コイル403を更に含み、任意的に冷却コイル403を取り囲む冷却ファン404及び冷却チャンネル405を更に含み、それによって冷却パフォーマンスが増強する。具体的には、第1のコンデンサ400は、パラフィン浸潤の間に、主にパラフィンなどのキャリア材料からのイソプロパノール蒸気を凝縮するように構成される。例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のイソプロパノール蒸気を、第1のコンデンサ400によって液体に凝縮することができる。第1の液体容器の容積は、1L、5L、10L、15L、20L、25L又は30Lであり得るが、第1のコンデンサ400からの凝縮液を十分に受け取ることが可能な限り限定されない。驚くべきことに、処理装置におけるコンデンサシステムの追加が、適切な温度及び圧力の下で効果的かつ効率的にキャリア材料内のイソプロパノールを除去することが可能であることが分かった。それによって更なるイソプロパノール除去試薬及びその後の廃棄物化学試薬処理が回避され、そのため処理コストが削減され環境的に優しくなる。
【0060】
オン―オフバルブ600
図2に示すように、他の一実施形態において、組織処理装置1はオン―オフバルブ600を更に含む。
【0061】
オン―オフバルブ600は、リアクタの第1のキャリア材料導入口101とキャリア材料容器200の第2のキャリア材料排出口201とを接続するパイプに配設される。
【0062】
この実施形態において、オン―オフバルブ600は、1秒間~10秒間、好ましくは1.5秒間の開時間と、0.2秒間~5秒間、好ましくは1.0秒間の閉時間とを各々含むサイクルで操作されるように構成される。オン―オフバルブ600の開時間は、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5又は10秒間に設定することができ、オン―オフバルブの閉時間は、0.2、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8、2.0、2.2、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、3.8、4.0、4.2、4.5、4.8又は5秒間に設定することができる。オン―オフバルブ600は、特定のサイクルにおいて操作されるように構成され、キャリア材料容器200からリアクタ100への融解パラフィンなどのキャリア材料の供給スピードを低速にすることができるとともに、作用(ないし作業)状態(すなわち高い温度かつ陰圧)の下で融解パラフィン内のイソプロパノールをパラフィンから適切に分離することができ、それによって作用状態の下でリアクタ100の中に融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される。
【0063】
第1の圧力制御デバイス700
図3に示すように、一実施形態において、組織処理装置1は、第1の圧力制御デバイス700を更に含む。
【0064】
第1の圧力制御デバイス700は、ポンプ701、圧力センサ702、水圧・油圧式ダンパ703、エアバルブ704、リリーフバルブ705、エアマニホールド706及び圧力配送のためのチューブを含む。第1の圧力制御デバイス700は、チューブを介してレトルト100に対して流体的に接続され、レトルト100に対して陽圧又は陰圧をもたらす。一実施形態において、組織処理の間に、リアクタの圧力は第1の圧力制御デバイス700によって20kPa~(乃至)-80kPaの範囲に制御される。この実施形態において、キャリア材料での浸潤の間に、リアクタの圧力は第1の圧力制御デバイス700によって-15kPa~-75kPaに制御される。
【0065】
具体的には、図14に示すように、第1の圧力制御デバイス700は、浸潤の間に、リアクタを以下に示す圧力の下で操作されるように制御するように構成される。第1段階:20~40分間、好ましくは30分間、-15kPa~-50kPa、好ましくは-40kPaの圧力で維持する、第2段階:5~25分間、好ましくは15分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、第3段階:10~25分間、好ましくは15分間、-60kPa~-75kPa、好ましくは-70kPaの圧力で維持する。より具体的には、第1段階において、リアクタは、約30分間、-40kPaなどの相対的により高い圧力に制御され、それによって大量のイソプロパノールが緩やかかつ均一にキャリア材料から生成することを許容してIPAの泡の生成を回避し、第2段階においてリアクタの圧力は、浸潤のために約15分間にわたって(ある)傾斜率(ramp rate)で所望の圧力まで更に下げられ、それによってキャリア材料から残りのイソプロパノールを完全に生成させ、そして第3段階において、リアクタは組織サンプルの浸潤を実行するために約-70kPaに制御される。そのため、取得した組織サンプルは高い品質である。
【0066】
この実施形態によれば、リアクタ内の圧力は徐々に低下し、リアクタ内のキャリア材料からイソプロパノール蒸気が緩やかかつ均一に生成し、作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される、
【0067】
他の一実施形態において、第1の圧力制御デバイス700はキャリア材料容器200に対して更に接続され、キャリア材料容器200に対して陽圧又は陰圧をもたらす。
【0068】
第1のヒータ800
図4に示すように、一実施形態において、組織処理装置1は第1のヒータ800を更に含む。
【0069】
第1のヒータ800は、リアクタ内の処理試薬及び/又はキャリア材料を加熱するように構成される。一実施形態において、第1のヒータ800は加熱蓋である。具体的には、第1のヒータ800はリアクタ100を浸潤の間に以下の温度で操作されるように制御するように構成される。0.5~2℃/min、好ましくは1.5℃/minの速度で、50~70℃、好ましくは65℃から75~90℃、好ましくは85℃まで上昇させて、75~90℃、好ましくは85℃で30~40分間維持する。より具体的には、浸潤に関する最良の温度は、イソプロパノールの沸点が82℃であることを理由に、85℃に選ばれる。つまり、ほとんど全てのイソプロパノールが浸潤の間に除去され得る。リアクタ100の温度は、65℃~85℃から徐々に上昇し、そのため急速な温度上昇に起因して短時間の間にIPAの泡が生成することが回避される。
【0070】
この実施形態によれば、リアクタの温度は徐々に上昇し、リアクタ内のキャリア材料からイソプロパノール蒸気が緩やかかつ均一に生成して、作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される。
【0071】
第2のコンデンサ900及び第2の液体容器1000
図5に示すように、一実施形態において、組織処理装置1は第2のコンデンサ900及び第2の液体容器1000を更に含む。
【0072】
第2のコンデンサ900は、キャリア材料容器200の第2のガス排出口202に対して接続される第2の空気導入口901及び第2の液体排出口902を有するとともに、キャリア材料容器200からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される。一実施形態において、第2のコンデンサ900は冷却コイル403を更に含み、任意的に冷却ファン404及び冷却コイル403を取り囲む冷却チャンネル405を更に含む。第2の液体容器1000は、第2のコンデンサ900の第2の液体排出口902に対して接続されるとともに、第2のコンデンサ900から凝縮液を受け取るように構成される。第2のコンデンサ900及び第2の液体容器1000の構成は、それぞれ第1のコンデンサ400及び第1の液体容器500に類似し、詳細には記載されない。
【0073】
具体的には、第2のコンデンサ900は、キャリア材料容器200からリアクタ100へキャリア材料を供給する前に、主にパラフィンなどのキャリア材料からのイソプロパノール蒸気を凝縮するように構成される。例えば、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、95%又は99%のソプロパノール蒸気を第2のコンデンサ900によって液体に凝縮することができる。驚くべきことに、処理装置におけるコンデンサシステムの追加が、適切な温度及び圧力の下で効果的かつ効率的にキャリア材料内のイソプロパノールを除去することが可能であることが分かった。それによって更なるイソプロパノール除去試薬及びその後の廃棄物化学試薬処理が回避され、そのため生成コストが削減され環境的に優しくなる。
【0074】
一実施形態において、第1のコンデンサ400及び第2のコンデンサ900が個別に配設されるとともに、第1の液体容器500及び第2の液体容器1000が個別に配設される。つまり、処理装置1は、イソプロパノールを除去するために、2セットのコンデンサを含む。すなわち、リアクタ100内のイソプロパノールが第1のコンデンサ400によって凝縮され、キャリア材料容器200内のイソプロパノールが第2のコンデンサ900によって凝縮される。他の一実施形態において、第1のコンデンサ400及び第2のコンデンサ900は同一のアレンジメントであり、第1の液体容器500及び第2の液体容器1000は同一のアレンジメントである。つまり、処理装置1は、イソプロパノールを除去するために、1セットのコンデンサを含む。すなわち、リアクタ100内のイソプロパノール及びキャリア材料容器200内のイソプロパノールを同一のコンデンサによって凝縮することができる。
【0075】
一実施形態において、組織処理が実行され(すなわち作業状態)、ここでキャリア材料容器200におけるキャリア材料内のパラフィンなどのイソプロパノールは、キャリア材料容器200からリアクタ100へキャリア材料を供給する前に、第2のコンデンサ900によって除去され、リアクタ100におけるキャリア材料内の残りのイソプロパノールは、浸潤の間に、第1のコンデンサ400によって更に除去される。他の一実施形態において、組織処理は実行されず(すなわち休憩状態)、しかしながら、キャリア材料容器200におけるキャリア材料内のパラフィンなどのイソプロパノールは、第2のコンデンサ900によって除去される。
【0076】
この実施形態によれば、組織処理装置は、組織処理期間の間のみならず、非組織処理段階においてもパラフィン精製をサポートする。つまり、有効で、低コストでかつ単純な仕方でその後の浸潤のために高度に精製されたパラフィンを取得することが可能であり、それによってパラフィンの寿命を延長させて、高い品質の組織サンプルの取得に寄与する。
【0077】
第2の圧力制御デバイス1100
図6に示すように、一実施形態において、組織処理装置1は、第2の圧力制御デバイス1100を更に含む。
【0078】
一実施形態において、第2の圧力制御デバイス1100の構成は、第1の圧力制御デバイス700に類似し、再度説明されない。
【0079】
具体的には、第2の圧力制御デバイス1100は、キャリア材料容器200を、25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の、-10から-75kPaまで、好ましくは-40kPaの圧力と、5秒間~15秒間、好ましくは6秒間の、任意的な雰囲気圧力と、を各々含むサイクルの圧力の下で操作されるように制御するように構成される。そのため、イソプロパノールをキャリア材料から完全に分離することができ、それによって高度に精製されたキャリア材料を取得することができる。
【0080】
一実施形態において、第1の圧力制御デバイス700及び第2の圧力制御デバイス1100は個別に配設される。つまり処理装置1は、2セットの圧力制御デバイスを含む。すなわち、リアクタ100内のイソプロパノールを第1の圧力制御デバイス700によって排出することができ、キャリア材料容器200内のイソプロパノールを第2の圧力制御デバイス1100によって排出することができる。他の一実施形態において、第1の圧力制御デバイス700及び第2の圧力制御デバイス1100は同一のアレンジメントである。つまり、リアクタ100内のイソプロパノール及びキャリア材料容器200内のイソプロパノールを同一の圧力制御デバイスによって排出することができる。
【0081】
処理試薬容器1200
図7に示すように、一実施形態において、組織処理装置1は処理試薬容器1200を更に含む。
【0082】
処理試薬容器1200は、排出口1202及び回収導入口1201を有し、ここで排出口1202はリアクタ100の処理試薬導入口103に対して接続され、回収導入口1201はリアクタ100の処理試薬排出口104に対して接続される。
【0083】
一実施形態において、排出口1202及び回収導入口1201は個別に配設される。他の一実施形態において、排出口1202及び回収導入口1201は同一のアレンジメントに組み合わされる。つまり、処理試薬は、同一の穴部を通ってチューブを介して、処理試薬容器1200からリアクタ100へ供給されるか、又はリアクタ100から処理試薬容器1200へ排出される。この実施形態において、処理試薬容器1200は固定試薬容器、脱水試薬容器、クリーニング試薬容器及び任意的にキャリア材料保護試薬容器を含む。更に、第1の液体容器500及び第2の液体容器1000は、処理試薬容器1200のチャンバの中に収容され得る。この実施形態において、処理試薬容器1200は、1~100個(範囲内のいずれかの値を含む)のサブ容器を収容することができる。サブ容器は、ホルムアルデヒド溶液、一シリーズ濃度のエタノールイ、ソプロパノール、パラフィン及び同様のものなどの化学試薬を容れるために適した容積の、固定試薬容器、脱水試薬容器、クリーニング試薬容器、キャリア材料保護試薬容器又は凝縮液容器、例えば、ボトルであり得る。
【0084】
それぞれの試薬容器内の複数の試薬は、回転バルブ707によって順番に、リアクタ100内に供給されるか、又は対応する試薬容器へ戻される。回転バルブ707は、対応するチューブを介してどの試薬をリアクタ100内に供給するかを制御することができるとともに、試薬が対応する試薬容器へ戻るようにすることができる。処理試薬は、上述のように圧力制御デバイス700のアクションによってリアクタ100内に供給される。実施形態の一例において、処理試薬容器1200は18個の試薬ボトルを収容する。回転バルブ707は18個のポジションを有し、18個の試薬ボトル内の試薬の充填及び/又は吸出しを制御する。
【0085】
第1の視点によれば、組織処理装置は、組織処理期間の間のみならず非組織処理段階においてもパラフィン精製をサポートする。そのため、低コストでかつ単純な仕方でその後の浸潤のための高度に精製されたパラフィンを取得することが可能であり、それによってパラフィンの寿命を延長させて、高い品質の組織サンプルの取得に寄与する。
【0086】
本開示の第2の視点において、図10~14に示すように、第1の視点において説明される組織処理装置1によって実行される組織処理のための方法S1が実施形態(複数)において提供される。
【0087】
図10に示すように、第1の視点において説明した組織処理装置1によって実行される組織処理のための方法S1は、以下のステップを含む 。
S100:リアクタの中に処理される組織サンプルを提供する、
S200:固定試薬で組織サンプルを固定する、
S300:脱水試薬で固定された組織サンプルを脱水する、
S400:脱水された組織サンプル及びリアクタをクリーニング試薬でクリーニングして、脱水試薬を除去する、
S500:クリアされた組織サンプルが浸潤するようにキャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する、ここでキャリア材料はクリーニング試薬を含む、
S600:第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御する、
S700:発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御する、そして
S800:第1のコンデンサによって排出された第1のクリーニング試薬蒸気を液体へ凝縮して第1のクリーニング試薬蒸気を除去する。
【0088】
S100~S400に関して、それらは現行の組織処理方法において一般的に適用されるものに類似する。本発明の処理方法と現行の処理方法との間の相違点は主にS500~S800に在り、以下に詳細に記載される。
【0089】
一実施形態において、S500:クリアされた組織サンプルを浸潤するように キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給することは、キャリア材料容器からリアクタへ供給されるキャリア材料を1~10秒間、好ましくは1.5秒間の開時間と0.2~5秒間、好ましくは1.0秒間の閉時間とを各々含むサイクルでオン―オフバルブによって制御することを更に含む。つまり、キャリア材料容器からリアクタへの融解パラフィンなどのキャリア材料の供給スピードを低速にすることができるとともに、作用状態(すなわち高い温度かつ陰圧)の下で融解パラフィン内のイソプロパノールをパラフィンから適切に分離することができ、それによって作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される。
【0090】
一実施形態において、S600:第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御することは、リアクタを以下の温度で操作されるように制御することを更に含む。0.5~2℃/min、好ましくは1.5℃/minの速度で、50~70℃、好ましくは65℃から75~90℃、好ましくは85℃まで上昇させて、75~90℃、好ましくは85℃で30~40分間維持する。当該実施形態によれば、リアクタの温度が徐々に上昇し、そのため、リアクタ内のキャリア材料からイソプロパノール蒸気が緩やかかつ均一に生成され、作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される。
【0091】
一実施形態において、S700:発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御することは、以下の圧力で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む。第1段階:20~40分間、好ましくは30分間、-15kPaから-50kPa、好ましくは-40kPaの圧力で維持する。第2段階:5~25分間、好ましくは15分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる。第3段階:10~25分間、好ましくは15分間、-60kPa~-75kPa、好ましくは-70kPaの圧力で維持する。この実施形態によれば、リアクタ内の圧力は徐々に低下し、そのためリアクタ内のキャリア材料からイソプロパノール蒸気が緩やかかつ均一に生成され、作用状態の下でリアクタの中へ融解パラフィンを充填する時にパラフィン内のイソプロパノールが短時間の間に大量の泡沫を生成することが防止され、そして更にIPAの泡がエアシステム内へ入り込み、パラフィンによってエアシステムがブロッキングされることが回避される。
【0092】
一実施形態において、図11に示すように、組織処理のための方法S1は、S500の前に第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することS900を更に含む。
【0093】
図12に示すように、この実施形態においてS900は、
S901:第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にキャリア材料容器を制御すること;
S902:発生した第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料容器の外部へ排出されるサイクルの圧力の下で操作されるようにキャリア材料容器を制御すること、ここで、各サイクルは、25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の-20~-75kPa、好ましくは-40kPaの圧力と、5秒間~15秒間、好ましくは6秒間の任意的な雰囲気圧力とを含む;
S903:排出された第2のクリーニング試薬蒸気を第2のコンデンサによって液体へ凝縮して、第2のクリーニング試薬蒸気を除去すること、を更に含む。
【0094】
当該実施形態によれば、パラフィンなどのキャリア材料内のイソプロパノールなどのクリーニング試薬が、キャリア材料容器の中で部分的に除去され、例えば、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%のイソプロパノールがキャリア材料容器の中で除去される。キャリア材料内のイソプロパノールなどの残りのクリーニング試薬はリアクタの中で更に除去され、例えば、99%、98%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2%又は1%のイソプロパノールがリアクタの中で除去される。つまり、キャリア材料内のイソプロパノールなどのクリーニング試薬は、更なる保護的化学試薬の添加なしに完全に除去され、それによって組織処理方法が単純化し、コストが顕著に削減される。
【0095】
第2の視点によれば、組織処理のための方法は、キャリア材料内のクリーニング試薬(イソプロパノールなど)を効果的かつ効率的に除去することが可能であり、それによってイソプロパノール除去試薬の追加及びその後の廃棄物化学試薬処理が回避されるため、生成コストが削減され環境的に優しい。
【0096】
本開示の第3の視点において、図8A及び図8Bに示すように、実施形態(複数)において組織処理装置2が提供される。組織処理装置2は、リアクタ100、キャリア材料容器200、第2のヒータ300、第2のコンデンサ900、及び第2の液体容器1000を含む。
【0097】
他の一実施形態において、組織処理装置2は、第1の視点において説明したオン―オフバルブ600を更に含む。他の一実施形態において、組織処理装置2は、第1の視点において説明した第2の圧力制御デバイス1100を更に含む。他の一実施形態において、組織処理装置2は、第1の視点において説明した第1のコンデンサ400及び第1の液体容器500を更に含む。他の一実施形態において、組織処理装置2は、第1の視点において説明した第1の圧力制御デバイス700を更に含む。他の一実施形態において、組織処理装置2は、第1の視点において説明した第1のヒータ800を更に含む。他の一実施形態において、組織処理装置2は、第1の視点において説明した処理試薬容器1200を更に含む。リアクタ100、キャリア材料容器200、第2のヒータ300、第1のコンデンサ400、第1の液体容器500、オン―オフバルブ600、第1の圧力制御デバイス700、第1のヒータ800、第2のコンデンサ900、第2の液体容器1000、第2の圧力制御デバイス1100及び処理試薬容器1200の構成及び機能は、第1の視点において説明したものにそれぞれ類似するが、スペース的制約に起因して再度説明されない。
【0098】
第3の視点によれば、組織処理装置は、組織処理期間の間のみならず、非組織処理段階においてもパラフィン精製をサポートし、そのため有効で、低コストでかつ単純な仕方においてその後の浸潤のために高度に精製されたパラフィンを取得することが可能であり、それによってパラフィンの寿命を延長させて、高い品質の組織サンプルの取得に寄与する。
【0099】
本開示の第4の視点において、図13に示すように、実施形態(複数)において、第3の視点において説明した組織処理装置2によって実行される組織処理のための方法S2が提供され、当該方法は以下のステップを含む。
S100:リアクタの中に処理される組織サンプルを提供する、
S200:固定試薬で組織サンプルを固定する、
S300:脱水試薬で固定された組織サンプルを脱水する、
S400:脱水された組織サンプル及びリアクタをクリーニング試薬でクリーニングして、脱水試薬を除去する、
S500:クリアされた組織サンプルが浸潤するようにキャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する。
ここで、当該方法はS500の前にS900:第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することを更に含む。
【0100】
この実施形態において、S900:第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することは、
S901: 第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にキャリア材料容器を制御すること、
S902: 発生した第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料容器の外部へ排出されるサイクルの圧力の下で操作されるようにキャリア材料容器を制御すること、ここで各サイクルは、25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の-20~-75kPa、好ましくは-40kPaの圧力、及び
5秒間~15秒間 好ましくは6秒間の任意的な雰囲気圧力、を含み
S903: 排出された第2のクリーニング試薬蒸気を第2のコンデンサによって液体へ凝縮して、第2のクリーニング試薬蒸気を除去すること、を更に含む。
【0101】
他の一実施形態において、本発明の方法は、S500の後に以下のステップを更に含む。
S600:第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御すること、
S700:発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御すること、そして、
S800:排出された第1のクリーニング試薬蒸気を第1のコンデンサによって液体へ凝縮して、第1のクリーニング試薬蒸気を除去すること。
【0102】
組織処理のための方法S1と組織処理のための方法S2との間の主たる相違点は、S1では、キャリア材料内のクリーニング試薬が第1のコンデンサによってリアクタの中で実質的に除去されて、そして任意的にキャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する(S500)前にキャリア材料内のクリーニング試薬が第2のコンデンサによってキャリア材料容器の中で除去されるのに対し、その一方で、S2では、クリアされた組織サンプルを浸潤するように、キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する(S500)前に、キャリア材料内のクリーニング試薬が第2のコンデンサによってキャリア材料容器の中で実質的に除去されて、そして任意的にキャリア材料内の残りのクリーニング試薬が第1のコンデンサによってリアクタの中で更に除去される、ことである。つまり、S1では、キャリア材料容器からリアクタへ提供される前には、キャリア材料は実質的にクリーニング試薬を含むのに対し、その一方で、S2では、キャリア材料容器からリアクタへ提供される前にキャリア材料はクリーニング試薬をほとんど含まない。
【0103】
第4の視点の実施形態(複数)においてS100、S200、S300、S400、S500、S600、S700、S800及びS900の詳細は、第3の視点のものにそれぞれ類似し、スペース的制約に起因して再度説明されない。S2では、キャリア材料がキャリア材料容器からリアクタへ提供される前に、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のキャリア材料内のクリーニング試薬が第2のコンデンサによって除去されている。
【0104】
第4の視点によれば、組織処理のための方法は、キャリア材料内のクリーニング試薬(イソプロパノールなど)を効果的かつ効率的に除去することが可能であり、それによってイソプロパノール除去試薬の追加及びその後の廃棄物化学試薬処理が回避されるため、処理コストが削減され環境的に優しい。
【0105】
実施例
本開示は、実施例(複数)を用いてより詳細に説明される。以下の実施例によっては本発明は限定されないと理解される。
【0106】
実施例1
組織サンプルは、組織処理装置1を使用して処理された。この実施例では、一対のコンデンサシステム(すなわち、第1のコンデンサ400及び第1の液体容器500)のみが提供される。この実施例において、クリーニング試薬はイソプロパノールであり、キャリア材料はパラフィンである。組織処理のために使用されるパラフィンは、大量のイソプロパノールを含む。リアクタはレトルトであり、キャリア材料容器はオーブンである。レトルト内にパラフィンを充填する前に、オーブンの中でパラフィン内のイソプロパノールは除去されなかった。つまり、イソプロパノールは、組織処理の間にレトルトの中で実質的に除去された。
【0107】
この実施例においてオン―オフバルブの作動サイクルを調査して、IPA除去効果を評価した。オン―オフバルブは、以下の一シリーズのサイクルにおいて作動させた。レトルトの温度設定(ないし温度推移、temperature procedure)は、25分間内に65℃から85℃へ上昇し、浸潤の間に35分間85℃で維持するように設定した。レトルトの圧力設定(ないし圧力推移、pressure procedure)は、30分間、-40kPaで維持し、15分間内に-40kPaから-70kPaまで低下させて、浸潤の間に15分間、-70kPaで維持するように設定した。IPA除去効率、IPA泡沫生成及び組織サンプル品質が測定され、結果は表1に示される。
表1 オン―オフバルブの異なる作動サイクルの下でのIPA除去効果
【0108】
実施例2
組織処理方法は、レトルトにおいて下記のように異なる温度設定を設定したことを除いて、実施例1に類似する。具体的には、オン―オフバルブは1.5秒間の開時間及び1.0秒間の閉時間を各々含むサイクルで作動させた。レトルトの圧力推移は、30分間、-40kPaで維持し、15分間内に-40kPaから-70kPaまで低下させ、次いで浸潤の間に15分間、-70kPaで維持するように設定した。IPA除去効率、IPA泡沫生成及び組織サンプル品質が測定され、結果は表2に示される。
表2 レトルトの中で実行される異なる温度推移の下でのIPA除去効果
【0109】
実施例3
組織処理方法は、レトルトにおいて下記のように異なる圧力推移を設定したことを除いて、実施例1に類似する。具体的には、オン―オフバルブは、1.5秒間の開時間及び1.0秒間の閉時間を各々含むサイクルで作動させた。レトルトの温度推移は、25分間内に65℃から85℃へ上昇し、浸潤の間に35分間85℃で維持するように設定した。IPA除去効率、IPA泡沫生成及び組織サンプル品質が測定され、結果は表3に示される。
表3 レトルト内で実行される異なる圧力推移の下でのIPA除去効果
【0110】
実施例4
組織処理方法は、2セットのコンデンサシステムが提供されることを除いて、実施例1に類似する。レトルトの中にパラフィンを充填する前にパラフィン内のイソプロパノールをオーブン内で部分的に除去した。つまり、イソプロパノールをオーブン内で部分的に除去し、そしてレトルト内で部分的に除去した。具体的には、オン―オフバルブ 1.5秒間の開時間及び1.0秒間の閉時間を各々含むサイクルで作動させた。レトルトの温度推移は、25分間内に65℃から85℃へ上昇し、浸潤の間に35分間85℃で維持するように設定した。レトルトの圧力推移は、30分間、-40kPaで維持し、15分間内に-40kPaから-70kPaまで低下させて、浸潤の間に15分間、-70kPaで維持するように設定した。IPA除去効率、IPA泡沫生成及び組織サンプル品質が測定され、結果は表2に示される。
【0111】
浸潤の間にIPAの泡沫が生成しなかったことが示され、99%のIPAがパラフィンから除去され、取得した組織サンプルは高い品質であった。
【0112】
実施例5
組織処理方法は、第2のコンデンサ900及び第2の液体容器1000のみを有する組織処理装置2を使用して組織サンプルを処理したことを除いて、実施例1に類似する。
パラフィン内のイソプロパノールは、レトルトの中にパラフィンを充填する前にオーブン内で実質的に除去された。オーブン内での異なる温度及び圧力が調査され、結果は表4に示される。
表4 キャリア容器内における異なる条件の下でのIPA除去効果
【0113】
実施例6
この実施例では、パラフィン浸潤ステップ(約60分間)において、トータルで約1120mLのIPAをレトルト内のパラフィンから排出した。
IPA量(mass):0.7683×1120≒860.5g≒13mol
レトルト内のパラフィンから1120mLのIPAを排出するための熱量:
熱量=40.06KJ/mol×13mol=520.78KJ
【0114】
80%以上のIPA蒸気が冷却部(複数)及びトラップボトルにおいて冷却される場合には、冷却部及びトラップボトルの冷却能力は、>520.78×80%≒417KJであるべきである。従って、IPA蒸気を冷やすために417KJの熱交換能力が、冷却部及びトラップボトルに提供されるべきである。
【0115】
この明細書の全体に渡って、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施例」、「特定の実施例」、又は「いくつかの実施例」 は、実施形態又は実施例と紐づけて記載される特定の特徴、構造、材料、又は特徴的な記載が、本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれることを意味する。つまり、本明細書の全体に渡る様々な場所における上記語句の出現は、本開示の同一の実施形態又は実施例を必ずしも意味しない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特徴は、1以上の実施形態又は実施例の中にいずれかの適切な仕方で組み合わせられ得る。更に、明細書に記載される異なる実施形態又は実施例、並びに実施形態又は実施例の特徴は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者によって、矛盾なく組み合わせられ得る。
【0116】
説明のための実施形態が示され記載されているが、本発明の技術分野における通常の知識を有する者には、上述の実施形態は本開示を限定するようには解釈され得ないし、そして実施形態において変形、置換及び変更が本開示の趣旨、原則及び範囲から逸脱すること無くなされ得ると分かるだろう。
【符号の説明】
【0117】
100:リアクタ
101:第1のキャリア材料導入口
102:第1のキャリア材料排出口
103:処理試薬導入口
104:処理試薬排出口
105:第1のガス排出口
200:キャリア材料容器
201:第2のキャリア材料排出口
202:第2のガス排出口
203:第2のキャリア材料導入口
300:第2のヒータ
400:第1のコンデンサ
401:第1の空気導入口
402:第1の液体排出口
403:冷却コイル
404:冷却ファン
405:冷却チャンネル
500:第1の液体容器
600:オン―オフバルブ
700:第1の圧力制御デバイス
701:ポンプ
702:圧力センサ
703:水圧・油圧式ダンパ
704:エアバルブ
705:リリーフバルブ
706:エアマニホールド
707:回転バルブ
800:第1のヒータ
900:第2のコンデンサ
901:第2の空気導入口
902:第2の液体排出口
1000:第2の液体容器
1100:第2の圧力制御デバイス
1200:処理試薬容器
1201:回収導入口
1202:排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織サンプルを収容するように構成され、組織サンプルが処理されるようにするとともに、第1のキャリア材料導入口(101)、第1のキャリア材料排出口(102)、処理試薬導入口(103)、処理試薬排出口(104)及び第1のガス排出口(105)を有するリアクタ(100)と、
キャリア材料を収容するように構成されるとともに、リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)に対して接続される第2のキャリア材料排出口(201)と第2のガス排出口(202)とを有するキャリア材料容器(200)と、
キャリア材料容器(200)内のキャリア材料を加熱するように構成される第2のヒータ(300)と、
リアクタ(100)の第1のガス排出口(105)に対して接続される第1の空気導入口(401)と第1の液体排出口(402)とを有するとともに、リアクタ(100)からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される第1のコンデンサ(400)と、
第1のコンデンサ(400)の第1の液体排出口(402)に対して接続されるとともに、第1のコンデンサ(400)からの凝縮液を受け取るように構成される第1の液体容器(500)と、
を含む、組織処理装置(1)。
【請求項2】
リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)とキャリア材料容器(200)の第2のキャリア材料排出口(201)とを接続するパイプに配設されるオン―オフバルブ(600)を更に含み、
オン―オフバルブ(600)が1~10秒の開時間及び0.2~5秒の閉時間を各々含むサイクルで操作されるように構成される、
請求項1に記載の組織処理装置(1)。
【請求項3】
リアクタ(100)を以下に示す圧力の下で操作されるように制御するように構成される第1の圧力制御デバイス(700)を更に含む、請求項1又は2に記載の組織処理装置(1)、
第1段階:20~40分間-15kPa~(乃至)-50kPaの圧力で維持する、
第2段階:5~25分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、
第3段階:10~25分間-60kPa~-75kPaの圧力で維持する。
【請求項4】
リアクタ(100)内の処理試薬及び/又はキャリア材料を加熱するように構成される第1のヒータ(800)を更に含み第1のヒータ(800)が加熱蓋であり、
第1のヒータ(800)は、リアクタ(100)を以下の温度で操作されるように制御するように構成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)、
0.5~2℃/minの速度で、50~70℃から75~90℃まで上昇させて、75~90℃で30~40分間維持する。
【請求項5】
キャリア材料容器(200)の第2のガス排出口(202)に対して接続される第2の空気導入口(901)及び第2の液体排出口(902)を有するとともに、キャリア材料容器(200)からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される第2のコンデンサ(900)と、
第2のコンデンサ(900)の第2の液体排出口(902)に対して接続されるとともに、第2のコンデンサ(900)からの凝縮液を受け取るように構成される第2の液体容器(1000)と、
を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)。
【請求項6】
第1のコンデンサ(400)及び第2のコンデンサ(900)が、各々冷却コイル(403)を含み、冷却ファン(404)及び冷却コイル(403)を取り囲む冷却チャンネル(405)を更に含む、請求項1又は5に記載の組織処理装置(1)。
【請求項7】
25秒間~45秒間の、-20から-75kPaまでの圧力と、
5秒間~15秒間雰囲気圧力と、
を各々含むサイクルで操作されるようにキャリア材料容器(200)を制御するように構成される第2の圧力制御デバイス(1100)を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)。
【請求項8】
排出口(1201)及び回収導入口(1202)を有する処理試薬容器(1200)を更に含み、
排出口(1201)がリアクタ(100)の処理試薬導入口(103)に対して接続されるとともに、回収導入口(1202)がリアクタ(100)の処理試薬排出口(104)に対して接続され、
排出口(1201)及び回収導入口(1202)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
処理試薬容器(1200)が、固定試薬容器、脱水試薬容器、クリーニング試薬容器及びキャリア材料保護試薬容器を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)。
【請求項9】
リアクタ(100)の第1のキャリア材料導入口(101)及び第1のキャリア材料排出口(102)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
キャリア材料容器(200)の第2のキャリア材料導入口及び第2のキャリア材料排出口(201)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
リアクタ(100)の処理試薬導入口(103)及び処理試薬排出口(104)が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされる、請求項1~8のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の組織処理装置(1)によって実行される組織処理のための方法であって、
リアクタ内へ処理される組織サンプルを提供すること、
固定試薬で組織サンプルを固定すること、
脱水試薬で固定された組織サンプルを脱水すること、
脱水された組織サンプル及びリアクタをクリーニング試薬でクリーニングして、脱水試薬を除去すること、
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給して、クリアされた組織サンプルを浸潤すること、ここでキャリア材料はクリーニング試薬を含み、
第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御すること、
発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御すること、及び、
排出された第1のクリーニング試薬蒸気を第1のコンデンサによって液体へ凝縮して、第1のクリーニング試薬蒸気を除去すること、
を含む方法。
【請求項11】
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給して、クリアされた組織サンプルを浸潤することが、オン―オフバルブによって、キャリア材料容器からリアクタへ供給されるキャリア材料を、1~10秒間の開時間、及び0.2~5秒間の閉時間を各々含むサイクルにおいて制御すること、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御することが、以下の温度で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む、請求項10又は11に記載の方法、
50~70℃から75~90℃まで0.5~2℃/minの速度で上昇させ、30~40分間、75~90℃で維持する。
【請求項13】
発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御することが、以下の圧力で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む請求項10~12のいずれか1項に記載の方法、
第1段階:20~40分間-15kPaから-50kPaの圧力で維持する、
第2段階:5~25分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、
第3段階:10~25分間-60kPa~-75kPaの圧力で維持する。
【請求項14】
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する前に、第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することを更に含み、
第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することが、
第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にキャリア材料容器を制御すること、
発生した第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料容器の外部へ排出されるサイクルの圧力の下で操作されるようにキャリア材料容器を制御すること、
各サイクルが、
25秒間~45秒間-20~-75kPaの圧力、及び
5秒間~15秒間雰囲気圧力、を含み、そして、
排出された第2のクリーニング試薬蒸気を第2のコンデンサによって液体へ凝縮して、第2のクリーニング試薬蒸気を除去すること、
更に含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
説明のための実施形態が示され記載されているが、本発明の技術分野における通常の知識を有する者には、上述の実施形態は本開示を限定するようには解釈され得ないし、そして実施形態において変形、置換及び変更が本開示の趣旨、原則及び範囲から逸脱すること無くなされ得ると分かるだろう。
なお、本発明は、好ましい形態として以下のようにも展開され得る。
(形態1)
組織サンプルを収容するように構成され、組織サンプルが処理されるようにするとともに、第1のキャリア材料導入口、第1のキャリア材料排出口、処理試薬導入口、処理試薬排出口及び第1のガス排出口を有するリアクタと、
キャリア材料を収容するように構成されるとともに、リアクタの第1のキャリア材料導入口に対して接続される第2のキャリア材料排出口と第2のガス排出口とを有するキャリア材料容器と、
キャリア材料容器内のキャリア材料を加熱するように構成される第2のヒータと、
リアクタの第1のガス排出口に対して接続される第1の空気導入口と第1の液体排出口とを有するとともに、リアクタからのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される第1のコンデンサと、
第1のコンデンサの第1の液体排出口に対して接続されるとともに、第1のコンデンサからの凝縮液を受け取るように構成される第1の液体容器と、
を含む、組織処理装置。
(形態2)
リアクタの第1のキャリア材料導入口とキャリア材料容器の第2のキャリア材料排出口とを接続するパイプに配設されるオン―オフバルブを更に含み、
好ましくは、オン―オフバルブが1~10秒、好ましくは1.5秒の開時間及び0.2~5秒、好ましくは1.0秒の閉時間を各々含むサイクルで操作されるように構成される、
形態1に記載の組織処理装置。
(形態3)
リアクタを以下に示す圧力の下で操作されるように制御するように構成される第1の圧力制御デバイスを更に含む、形態1又は2に記載の組織処理装置、
第1段階:20~40分間、好ましくは30分間、-15kPa~(乃至)-50kPa、好ましくは-40kPaの圧力で維持する、
第2段階:5~25分間、好ましくは15分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、
第3段階:10~25分間、好ましくは15分間、-60kPa~-75kPa、好ましくは-70kPaの圧力で維持する。
(形態4)
リアクタ内の処理試薬及び/又はキャリア材料を加熱するように構成される第1のヒータを更に含み、好ましくは第1のヒータが加熱蓋であり、
任意的に、第1のヒータは、リアクタを以下の温度で操作されるように制御するように構成される、
形態1~3のいずれか1つに記載の組織処理装置、
0.5~2℃/min、好ましくは1.5℃/minの速度で、50~70℃、好ましくは65℃から75~90℃、好ましくは85℃まで上昇させて、75~90℃、好ましくは85℃で30~40分間維持する。
(形態5)
キャリア材料容器の第2のガス排出口に対して接続される第2の空気導入口及び第2の液体排出口を有するとともに、キャリア材料容器からのガスの少なくとも一部を液体へ凝縮するように構成される第2のコンデンサと、
第2のコンデンサの第2の液体排出口に対して接続されるとともに、第2のコンデンサからの凝縮液を受け取るように構成される第2の液体容器と、
を更に含む、形態1~4のいずれか1つに記載の組織処理装置。
(形態6)
第1のコンデンサ及び第2のコンデンサが、各々冷却コイルを含み、冷却ファン及び冷却コイルを取り囲む冷却チャンネルを任意的に更に含む、形態1又は5に記載の組織処理装置。
(形態7)
25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の、-20から-75kPaまで、好ましくは-40kPaの圧力と、
5秒間~15秒間、好ましくは6秒間の、任意的な雰囲気圧力と、
を各々含むサイクルで操作されるようにキャリア材料容器を制御するように構成される第2の圧力制御デバイスを更に含む、形態1~6のいずれか1つに記載の組織処理装置。
(形態8)
排出口及び回収導入口を有する処理試薬容器を更に含み、
排出口がリアクタの処理試薬導入口に対して接続されるとともに、回収導入口がリアクタの処理試薬排出口に対して接続され、
好ましくは、排出口及び回収導入口が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
好ましくは、処理試薬容器が、固定試薬容器、脱水試薬容器、クリーニング試薬容器及び任意的にキャリア材料保護試薬容器を含む、
形態1~7のいずれか1つに記載の組織処理装置。
(形態9)
リアクタの第1のキャリア材料導入口及び第1のキャリア材料排出口が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
任意的に、キャリア材料容器の第2のキャリア材料導入口及び第2のキャリア材料排出口が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされ、
任意的に、リアクタの処理試薬導入口及び処理試薬排出口が個別に配設されるか又は同一アレンジメントへ組み合わされる、形態1~8のいずれか1つに記載の組織処理装置。
(形態10)
形態1~9のいずれか1つに記載の組織処理装置によって実行される組織処理のための方法であって、
リアクタ内へ処理される組織サンプルを提供すること、
固定試薬で組織サンプルを固定すること、
脱水試薬で固定された組織サンプルを脱水すること、
脱水された組織サンプル及びリアクタをクリーニング試薬でクリーニングして、脱水試薬を除去すること、
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給して、クリアされた組織サンプルを浸潤すること、ここでキャリア材料はクリーニング試薬を含み、
第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御すること、
発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御すること、及び、
排出された第1のクリーニング試薬蒸気を第1のコンデンサによって液体へ凝縮して、第1のクリーニング試薬蒸気を除去すること、
を含む方法。
(形態11)
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給して、クリアされた組織サンプルを浸潤することが、オン―オフバルブによって、キャリア材料容器からリアクタへ供給されるキャリア材料を、1~10秒間、好ましくは1.5秒間の開時間、及び0.2~5秒間、好ましくは1.0秒間の閉時間を各々含むサイクルにおいて制御すること、を更に含む、形態10に記載の方法。
(形態12)
第1のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にリアクタを制御することが、以下の温度で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む、形態10又は11に記載の方法、
50~70℃、好ましくは65℃から75~90℃、好ましくは85℃まで、0.5~2℃/min、好ましくは1.5℃/minの速度で上昇させ、30~40分間、75~90℃、好ましくは85℃で維持する。
(形態13)
発生した第1のクリーニング試薬蒸気がリアクタの外部へ排出される圧力にリアクタを制御することが、以下の圧力で操作されるようにリアクタを制御することを更に含む形態10~12のいずれか1つに記載の方法、
第1段階:20~40分間、好ましくは30分間、-15kPaから-50kPa、好ましくは-40kPaの圧力で維持する、
第2段階:5~25分間、好ましくは15分間、0.5~4kPa/minの速度で圧力を下げる、
第3段階:10~25分間、好ましくは15分間、-60kPa~-75kPa、好ましくは-70kPaの圧力で維持する。
(形態14)
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する前に、第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することを更に含み、
第2のコンデンサによってキャリア材料容器からクリーニング試薬を除去することが、 第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料から発生する温度にキャリア材料容器を制御すること、
発生した第2のクリーニング試薬蒸気がキャリア材料容器の外部へ排出されるサイクルの圧力の下で操作されるようにキャリア材料容器を制御すること、
各サイクルが、
25秒間~45秒間、好ましくは34秒間の-20~-75kPa、好ましくは-40kPaの圧力、及び
5秒間~15秒間 好ましくは6秒間の任意的な雰囲気圧力、を含み、そして、
排出された第2のクリーニング試薬蒸気を第2のコンデンサによって液体へ凝縮して、第2のクリーニング試薬蒸気を除去すること、
を任意的に更に含む、形態10~13のいずれか1つに記載の方法。
(形態15)
キャリア材料容器からリアクタへキャリア材料を供給する前に、リアクタへキャリア材料保護試薬を提供してクリアされた組織サンプル及びリアクタ内のクリーニング試薬を除去することを更に含み、
好ましくは、キャリア材料保護試薬がクリーニング試薬置換物、クリーニング試薬置換物とクリーニング試薬との混合物、及びクリーニング試薬置換物とキャリア材料との混合物を含む、
形態10~14のいずれか1つに記載の方法。
【国際調査報告】