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特表2023-544254無細胞タンパク質合成系を用いた抗体の大規模産生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】無細胞タンパク質合成系を用いた抗体の大規模産生方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/02 20060101AFI20231016BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20231016BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
C07K1/02 ZNA
C07K16/00
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516759
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 US2021050025
(87)【国際公開番号】W WO2022056361
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/078,254
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511167135
【氏名又は名称】ストロ バイオファーマ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イン、カン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA71
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書において、無細胞タンパク質合成系を用いた抗体の大規模産生方法を記載する。この方法は、軽鎖(LC)ポリペプチドの存在下、無細胞細菌抽出物中、抗体の重鎖(HC)ポリペプチドを、前記重鎖をコードする核酸から発現し、それにより、前記抗体を産生することを含む。この方法は、例えば、約10リットル以上の反応体積、例えば、約10リットル~約25,000リットルの反応体積において、抗体の商業的産生に適しているように大規模に行われる。この方法は、前記重鎖ポリペプチドと同じ無細胞タンパク質合成系で前記軽鎖の合成とは対照的に、適切にフォールディング及びアセンブリされた抗体の単位体積当たりの収量増加をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖(LC)ポリペプチドの存在下で、抗体の重鎖(HC)ポリペプチドを、前記重鎖をコードする核酸から発現させて、前記抗体を産生することを含み、
前記発現は、約10リットル~約25,000リットルの体積を有する反応混合物中で行われる、
無細胞タンパク質合成系を用いた抗体の大規模産生方法。
【請求項2】
前記反応混合物が、約10リットル~約10,000リットルの体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物が、約15,000リットル~約25,000リットルの体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物が、約10,000リットル~約20,000リットルの体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応混合物が細菌抽出物を含み、
前記発現が、
(i)前記細菌抽出物を、前記HCをコードする核酸と配合すること;及び
(ii)前記無細胞タンパク質合成系を、前記HCの前記発現を可能とする条件下でインキュベートすること、
を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
全抗体タンパク質及び適切にフォールディングされた抗体の1リットル当たりの収量が、前記重鎖ポリペプチド及び前記軽鎖ポリペプチドの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比べて増加する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記適切にフォールディングされた抗体の1リットル当たりの収量が、前記重鎖ポリペプチド及び前記軽鎖ポリペプチドの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比較して約30%以上高い、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記適切にフォールディングされた抗体の1リットル当たりの収量が、前記重鎖ポリペプチド及び前記軽鎖ポリペプチドの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比較して約40%以上高い、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記適切にフォールディングされた抗体の1リットル当たりの収量が、前記重鎖ポリペプチド及び前記軽鎖ポリペプチドの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比較して約50%以上高い、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記適切にフォールディングされた抗体の1リットル当たりの収量が、前記重鎖ポリペプチド及び前記軽鎖ポリペプチドの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比較して70%以上高い、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記適切にフォールディングされた抗体の1リットル当たりの収量が、前記重鎖ポリペプチド及び前記軽鎖ポリペプチドの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比較して80%以上高い、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの二量体化が、前記重鎖ポリペプチド及び前記軽鎖ポリペプチドの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比べて増加する、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
重鎖ポリペプチド単量体及び軽鎖ポリペプチド単量体に対する重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの二量体の比が、前記重鎖ポリペプチド及び前記軽鎖ポリペプチドの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比べて増加する、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記軽鎖ポリペプチドを、前記発現工程前に前記反応混合物に添加する、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加する前に、別の反応で産生されるか、合成されるか、又は前もって作製される(prefabricate)、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記軽鎖ポリペプチドは、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、又は無細胞抽出物中で前記軽鎖ポリペプチドをコードする核酸から発現される、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記軽鎖ポリペプチドは、インタクトな生細胞内で前記LCポリペプチドをコードする核酸から発現される、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記インタクトな生細胞は、細菌細胞又は哺乳類細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加される前に、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、無細胞抽出物、又は細胞の培養物から精製又は部分的に精製される、請求項14~請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体は、IgG、IgA、若しくはIgDサブタイプ、又はこれらの組合せである、請求項1~請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、抗B細胞成熟抗原(抗BCMA)抗体、抗分化抗原群74(抗CD74)抗体、又は抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体から選択される、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体がFAB断片を含む、請求項1~請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が二重特異性抗体である、請求項1~請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記二重特異性抗体が、IgA由来の配列及びIgG CH3ドメイン由来の配列を含む2つの非対称のCH3ドメインを含むヘテロ二量体Fc領域を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記二重特異性抗体がドメイン交換抗体であり、
前記HCが前記LCと二量体化する、請求項24又は請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記二重特異性抗体が、立体的相補性又は静電的相補性に基づいてHCヘテロ二量体化が増強された改変CH3ドメインを含む、請求項24~請求項26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記改変CH3ドメインが、安定なCH3ヘテロ二量体の生成を促進するノブ変異及びホール変異を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記二重特異性抗体が、1つのFabドメイン及び1つのscFvドメインを含み、前記Fabドメイン及び前記scFvドメインは、異なる抗原と結合する、請求項24~請求項27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記HC及び/又は前記LCが、少なくとも1つの非天然アミノ酸(nnAA)を含む、請求項1~請求項29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記HCが、少なくとも1つの非天然アミノ酸(nnAA)を含む、請求項1~請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記HC中の前記nnAAが、前記LC中の前記nnAAと同じであるか又は異なっている、請求項30又は請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記nnAAが、p-アセチルフェニルアラニン又はp-アジドメチル-L-フェニルアラニンである、請求項30~請求項32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、前記抗体を産生する非還元条件下、前記HC及びLCをアセンブリすることを更に含む、請求項1~請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記無細胞タンパク質合成系が、関連補助因子を有する細菌抽出物を含む、請求項1~請求項34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記無細胞タンパク質合成系が、大腸菌(E.coli)株から調製された細菌抽出物を含む、請求項1~請求項35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記無細胞タンパク質合成系が、ATPを産生する酸化的リン酸化反応を含む、請求項1~請求項36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記無細胞タンパク質合成系が、再構成リボソーム系を含む、請求項1~請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記無細胞タンパク質合成系が、外因性タンパク質シャペロンを含む、請求項1~請求項38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記外因性タンパク質シャペロンが、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ(PPI)、及びデアグリガーゼから成る群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記PDIが、DsbA、DsbC及びDsbGから選択され;
前記PPIが、FkpA、SlyD、tig、SurA、及びCpr6から選択され;
前記デアグリガーゼが、IbpA、IbpB、及びSkpから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記無細胞タンパク質合成系が、変異放出因子1タンパク質(RF1)を含む、請求項1~請求項41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
(i)細菌細胞抽出物を含む反応混合物;
(ii)重鎖ポリペプチドをコードする核酸;及び
(iii)軽鎖ポリペプチド
を含み、
前記反応混合物は、約10リットル~約25,000リットルの体積を有する、無細胞タンパク質合成系。
【請求項44】
前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加される前に、別の反応で産生されるか、合成されるか、又は前もって作製される(prefabricate)、請求項43に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項45】
前記軽鎖ポリペプチドは、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、又は無細胞抽出物中で前記軽鎖ポリペプチドをコードする核酸から発現される、請求項43又は請求項44に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項46】
前記軽鎖ポリペプチドは、インタクトな生細胞内で前記LCポリペプチドをコードする核酸から発現される、請求項43又は請求項44に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項47】
前記インタクトな生細胞が細菌細胞又は哺乳類細胞である、請求項46に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項48】
前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加される前に、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、無細胞抽出物、又は細胞の培養物から精製又は部分的に精製される、請求項43~請求項47のいずれか一項に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項49】
前記反応混合物が、リボソーム、ATP、アミノ酸、及びtRNAを含む、請求項43~請求項48のいずれか一項に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項50】
前記細菌細胞抽出物が大腸菌(E.coli)株から調製される、請求項43~請求項49のいずれか一項に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項51】
前記無細胞タンパク質合成系が、外因性タンパク質シャペロンを更に含む、請求項43~請求項50のいずれか一項に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項52】
前記外因性タンパク質シャペロンが、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ(PPI)、及びデアグリガーゼから成る群から選択される、請求項51に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項53】
前記PDIが、DsbA、DsbC及びDsbGから選択され;
前記PPIが、FkpA、SlyD、tig、SurA、及びCpr6から選択され;
前記デアグリガーゼが、IbpA、IbpB、及びSkpから選択される、請求項52に記載の無細胞タンパク質合成系。
【請求項54】
前記無細胞タンパク質合成系が、変異放出因子1タンパク質(RF1)を更に含む、請求項43~請求項53のいずれか一項に記載の無細胞タンパク質合成系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年9月14日に出願された米国特許仮出願第63/078,254号の優先権の利益を主張し、この開示は全目的のためその全文を参照することにより本明細書に援用されるものとする。
【0002】
配列リスト
本願は、ASCII書式で電子的に提出された配列リストを含み、これはその全文の参照により本明細書に援用される。2021年9月8日に作成された前記ASCII複製物は、091200-1260233-006910PC_SL.txtという名称であり、65,782バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
本開示は、商業的製造に適している、大規模に対象とするタンパク質を産生するための方法及びシステムを提供する。前記方法は、適切にフォールディングされアセンブリされた抗体などの対象とするタンパク質の全収量及び/又は収量を増加させることができる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、無細胞タンパク質合成系において適切にフォールディングされた抗体の収量の増加方法及び増加するための組成物を記載する。1つの態様では、この方法を、適切にフォールディングされた抗体の比較的大量の商業的産生に適切な規模で行う。したがって、無細胞タンパク質合成系を用いた抗体の大規模産生方法であって、前記方法は、軽鎖(LC)ポリペプチドの存在下で、抗体の重鎖(HC)ポリペプチドを、前記重鎖をコードする核酸から発現させて、前記抗体を産生することを含む、方法を記載する。いくつかの実施形態では、この無細胞タンパク質合成系は、約10リットル~約25,000リットルの体積を有する反応混合物を含む。いくつかの実施形態では、前記HCの発現は、約10リットル~約10,000リットルの体積を有する反応混合物中で行われる。いくつかの実施形態では、前記HCの発現は、約15,000リットル~約25,000リットルの体積を有する反応混合物中で行われる。いくつかの実施形態では、この反応混合物は、約10リットル~約25,000リットル以上の体積を有する。いくつかの実施形態では、この反応混合物は、約10リットル~約25,000リットル以下の体積を有する。いくつかの実施形態では、この反応混合物は、約10,000リットル~約20,000リットルの体積を有する。
【0005】
いくつかの実施形態では、この反応混合物は、細菌抽出物を含み、前記HCの発現は、(i)前記細菌抽出物を、前記HCをコードする核酸と配合すること;及び(ii)前記無細胞タンパク質合成系を、前記HCの前記発現を可能とする条件下でインキュベートすること、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、全抗体タンパク質と適切にフォールディングされた抗体の1リットル当たりの収量は、前記重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比べて増加する。いくつかの実施形態では、適切にフォールディングされた抗体の1リットル当たりの収量は、前記重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比べて増加する。いくつかの実施形態では、全抗体タンパク質の1リットル当たりの収量及び適切にフォールディングされた抗体タンパク質の1リットル当たりの収量を、前記重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの両方が同じ反応混合物中で発現される反応混合物と比べて増加する。いくつかの実施形態では、全抗体タンパク質の1リットル当たりの収量及び/又は適切にフォールディングされた抗体タンパク質の1リットル当たりの収量は、前記重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの両方が同じ反応混合物中で同時に発現される反応混合物と比べて増加する。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記適切にフォールディングされた抗体タンパク質の1リットル当たりの収量は、前記重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方が発現される反応混合物と比較して約30%~約90%高い。いくつかの実施形態では、前記適切にフォールディングされた抗体タンパク質の1リットル当たりの収量は、前記重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方が発現される反応混合物と比較して約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上又は約90%以上高い。いくつかの実施形態では、前記重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの二量体化を増大する。いくつかの実施形態では、重鎖ポリペプチド単量体及び軽鎖ポリペプチド単量体に対する重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとの二量体の比が増大する。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドを、前記発現工程前に前記反応混合物に添加する。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加する前に、別の反応で産生される。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加する前に、合成又は前もって製造される(prefabricate)。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、又は無細胞抽出物中で前記軽鎖ポリペプチドをコードする核酸から発現される。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、インタクトな生細胞内で前記軽鎖ポリペプチドをコードする核酸から発現される。いくつかの実施形態では、前記インタクトな生細胞は、細菌細胞又は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加される前に、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、無細胞抽出物、及び/又は細胞の培養物から精製又は部分的に精製される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、IgG、IgA、若しくはIgDサブタイプ、又はこれらの組合せである。いくつかの実施形態では、前記抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、前記抗体は、抗B細胞成熟抗原(抗BCMA)抗体、抗分化抗原群74(抗CD74)抗体、又は抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体から選択される。いくつかの実施形態では、前記抗体は、FAB断片を含む。
【0011】
いくつかの態様では、前記抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、前記二重特異性抗体は、IgA由来の配列及びIgG CH3ドメイン由来の配列を含む2つの非対称のCH3ドメインを含むヘテロ二量体Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、前記二重特異性抗体は、ドメイン交換抗体であり、前記HCは、前記LCと二量体化する。いくつかの実施形態では、前記二重特異性抗体は、立体的相補性又は静電的相補性に基づいてHCヘテロ二量体化が増強された改変CH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、前記改変CH3ドメインは、安定なCH3ヘテロ二量体の生成を促進するノブ変異及びホール変異を含む。いくつかの実施形態では、前記二重特異性抗体は、1つのFabドメイン及び1つのscFvドメインを含み、Fabドメイン及びscFvドメインは、異なる抗原と結合する。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記HC及び/又はLCは、少なくとも1つの非天然アミノ酸(nnAA)を含む。いくつかの実施形態では、前記HCは、少なくとも1つの非天然アミノ酸(nnAA)を含む。いくつかの実施形態では、前記HC中の前記nnAAは、同じ又は前記LC中の前記nnAAと異なり得る。いくつかの実施形態では、前記nnAAは、p-アセチルフェニルアラニン又はp-アジドメチル-L-フェニルアラニンである。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記抗体を産生する非還元条件下、前記HC及びLCのアセンブリを更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記無細胞タンパク質合成系は、関連補助因子を有する細菌抽出物を含む。いくつかの実施形態では、前記無細胞タンパク質合成系は、大腸菌(E.coli)株から調製された細菌抽出物を含む。いくつかの実施形態では、前記無細胞タンパク質合成系は、ATPを産生する酸化的リン酸化反応を含む。いくつかの実施形態では、前記無細胞タンパク質合成系は、再構成リボソーム系を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記無細胞タンパク質合成系は、外因性タンパク質シャペロンを含む。いくつかの実施形態では、前記外因性タンパク質シャペロンは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ(PPI)、及びデアグリガーゼから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、前記PDIは、DsbA、DsbC及びDsbGから選択され;前記PPIは、FkpA、SlyD、tig、SurA、及びCpr6から選択され;並びに前記デアグリガーゼは、IbpA、IbpB、及びSkpから選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記無細胞タンパク質合成系は、変異放出因子1タンパク質(RF1)を含む。
【0017】
無細胞タンパク質合成系も提供する。1つの態様では、前記無細胞タンパク質合成系は、(i)細菌細胞抽出物を含む反応混合物;(ii)重鎖ポリペプチドをコードする核酸;及び(iii)軽鎖ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、この無細胞タンパク質合成系は、約10リットル~約25,000リットルの体積を有する反応混合物を含む。
【0018】
前記無細胞タンパク質合成系のいくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは前記反応混合物に添加される。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物中で発現されないか、又は前記反応混合物は、前記軽鎖をコードするプラスミドを含まない。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加する前に、別の反応で産生されるか、合成されるか、又は前もって製造される(prefarbirate)。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、又は無細胞抽出物中で前記軽鎖ポリペプチドをコードする核酸から発現される。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、インタクトな生細胞内で前記LCポリペプチドをコードする核酸から発現される。いくつかの実施形態では、前記インタクトな生細胞は、細菌細胞又は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、前記軽鎖ポリペプチドは、前記反応混合物に添加される前に、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、無細胞抽出物、及び/又は細胞の培養物から精製又は部分的に精製される。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記反応混合物は、リボソーム、ATP、アミノ酸、及びtRNAを含む。いくつかの実施形態では、前記細菌細胞抽出物を、大腸菌(E.coli)株から調製する。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記無細胞タンパク質合成系は、外因性タンパク質シャペロンを更に含む。いくつかの実施形態では、前記外因性タンパク質シャペロンは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ(PPI)、及びデアグリガーゼから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、前記PDIは、DsbA、DsbC及びDsbGから選択され;前記PPIは、FkpA、SlyD、tig、SurA、及びCpr6から選択され;並びに前記デアグリガーゼは、IbpA、IbpB、及びSkpから選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記無細胞タンパク質合成系は、変異放出因子1タンパク質(RF1)を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、重鎖(HC)ポリペプチド及び軽鎖(LC)ポリペプチドをコードする発現プラスミドを含む反応物における抗BCMA抗体力価を示し、前記LCを、前もって製造された軽鎖(PFLC)ポリペプチドとして提供あるいは前記LCポリペプチドをコードする発現プラスミドから発現した。バイオリアクター内又はFlowerPlate(登録商標)(FP)系(m2p-labs GmbH)を用いて反応を行った。抗BCMA抗体の収量(力価)は、前記LCポリペプチドをコードする発現プラスミドの添加と比較して、PFLCポリペプチドを前記反応物に添加した場合に増加した。
図2図2は、抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体力価は、PFLC濃度の増加と共に用量依存的に増加すること、及び前記LCが前記LCをコードするプラスミドから発現される場合の力価(0g/L PFLC)と比較して、力価の増加は、1.0g/L~1.2g/L PFLCを用いた場合のほとんど2倍であることを示す。抗体力価を、PhyTip(登録商標)カラム(PhyNexus,Inc.)又はHPLCを用いて測定した。
図3図3は、バイオリアクター及びFlowerPlate系における抗FOLR1抗体力価を示し、LCは、PFLCとして提供又はプラスミドから発現された。抗体力価を、PhyTip(登録商標)カラムを用いて測定した。抗FOLR1抗体の収量は、前記LCポリペプチドをコードする発現プラスミドの添加と比較して、PFLCポリペプチドを反応物に添加した場合0.2Lバイオリアクターにおいて増加した。
図4図4は、バイオリアクターにおける抗FOLR1抗体力価を示し、LCは、PFLCとして提供又はプラスミドから発現された。抗体力価を、HPLCを用いて測定した。抗FOLR1抗体の収量は、前記LCポリペプチドをコードする発現プラスミドの添加と比較して、PFLCポリペプチドを反応物に添加した場合0.2Lバイオリアクターにおいて増加した。
図5図5は、2つの異なる濃度のPFLC(0.5g/L及び0.75g/L)を有するHC pDNAプラスミドを含む抽出物(3mg/L及び6mg/L)を用いた抗FOLR1抗体滴定データを示す。コントロールは、重鎖発現プラスミド及び軽鎖発現プラスミドを含む抽出物(3mg/L)の37%であった。
図6図6は、バイオリアクター及びFP系反応物における抗CD74抗体力価を示し、HCはプラスミドから発現され、LCはPFLCとして提供又はプラスミドから発現された。抗CD74抗体力価は、LCがPFLCとして提供された場合、0.2Lバイオリアクター及び5mLバイオリアクターにおいて約80%増加した。抗CD74抗体力価は、LCがPFLCとして提供された場合、1mL FlowerPlateにおいて約50%増加した。図6のデータは、反応器に供給しないバッチXCFからである。
図7図7は、PFLCを含む抽出物は、軽鎖をコードするプラスミドDNAを含むコントロール抽出物と比較して、抗CD74抗体の力価を増加させた。
図8図8は、精製PFLC試薬又は粗PFLCライセート試薬を含む反応物中の発現に対し、プラスミドからのHC/LC同時発現と比較したトラスツズマブIgGの相対的発現を示す。精製PFLC試薬又は粗PFLC試薬のいずれかを含む反応物は、前記HC及びLCがプラスミドから同時発現される反応物と比較して、同様な力価増加を示した。
図9図9は、プラスミドから発現されたLCを含む反応物と比較して、SEEDボディFab/scFv二重特異性抗体の収量は、精製PFLC試薬を含む反応において増加したことを示す。HC-GA及びscFv-AGタンパク質は、両反応物においてプラスミドから発現された。
図10図10は、反応物に添加されたHC発現プラスミド及びPFLCの濃度に対する、用量依存性関係で増加した抗BCMA抗体の力価を示す。結果を、JMPで作成したコンター図として表した。
図11図11は、反応物に添加されたHC発現プラスミド及びPFLCの濃度に対する、用量依存性関係で増加した抗FLOR1抗体の力価を示す。結果を、JMPで作成したコンター図として表した。
図12図12は、HC発現プラスミド及びPFLCを含む反応物中の抗CD74抗体の力価を示す。結果を、JMPで作成したコンター図として表した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。例えば、Lackie,DICTIONARY OF CELL AND MOLECULAR BIOLOGY, Elsevier(4th ed.2007);Sambrook et al.,MOLECULAR,CLONING, A LLABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989);Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley and Sons(Hoboken,NY 1995)参照。用語「a」又は「an」は、「1又は複数」を意味するものとする。用語「含む(comprise)」及び「comprises」及び「comprising」などのその変化形は、工程又は要素の記述に先行する場合、更なる工程又は要素を付加してもよく、この付加は排除されないことを意味するものとする。本明細書に記載されているものと類似又は均等であるいずれの方法、デバイス及び物質も、本発明の実践において使用することができる。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供され、本開示の範囲を限定するものではない。
【0024】
用語「約(about)」は、基準値又は数値の±10%、例えば、基準値又は数値の±1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%の範囲を示す。
【0025】
用語「抗体」は、結合タンパク質として機能的に定義されるタンパク質及び当業者が動物産生抗体の遺伝子をコードする免疫グロブリンのフレームワーク領域から誘導されると認識するアミノ酸配列を含むと構造的に定義されるタンパク質を表す。この用語は、所定の抗原特異性を有する機能的抗原結合部位を形成する少なくとも1セット若しくは1対の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む一本鎖ポリペプチド又は二本鎖ポリペプチド二量体を含む。この用語は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体及びヘテロ二量体の形成を促進する改変Fc領域を含む二重特異性抗体を含む。この用語は、第一抗原と結合するFAB及び第二抗原と結合するscFvを含む二重特異性抗体も含む。抗体は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1又は複数のポリペプチドから成り得る。ヒトでは、認識される免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、並びに多種多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、κ又はλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεとして分類され、次に、これらは、それぞれ、免疫グロブリン分類、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義する。
【0026】
典型的免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含むことが分かっている。各四量体は、2つの同じ対のポリペプチド鎖から成り、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50kD~70kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に寄与する約100~110以上のアミノ酸の可変領域を規定する。用語可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)は、それぞれ、これらの軽鎖及び重鎖を表す。
【0027】
抗体は、インタクトな免疫グロブリン、その複合体(例えば、キメラ抗体又は二重特異性抗体)、その抗原結合性断片(例えば、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、dsFv断片、Fd断片及びFd’断片、ジ抗体又はジアボディ(dAb)、ミニ抗体)並びに一本鎖抗体(一本ポリペプチド鎖として存在する抗体)、可変重鎖及び可変軽鎖が一緒になって(直接又はペプチドリンカーにより)連続融合ポリペプチドを形成する一本鎖Fv抗体(sFv又はscFv)、ならびにscFv-Fc融合タンパク質など他の組成物として存在する。用語「抗体断片」は、完全長より小さいが、抗原結合部位を形成するのに充分な抗体の可変領域の少なくとも一部(例えば、1又は複数のCDR)を含み、したがって、完全長抗体の結合特異性及び/又は活性を保持する完全長抗体のいずれかの部分を表す。この断片は、ジスルフィド架橋及び/又はペプチドリンカーによるなど、結合された複数の鎖を含む可能性がある。抗体断片のより詳細な説明は、例えば、METHODS IN MOLECULAR BIOLOG,Vol 207:Recombinant Antibodies for Cancer Therapy Methods and Protocols (2003);Chapter 1;pp.3-25,Kipriyanov;及びFundamental Immunology,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993),を参照。
【0028】
用語「重鎖ポリペプチド」は、抗体由来の完全長重鎖、又は軽鎖ポリペプチドと対又は二量体化する場合に抗原結合部位を形成することができるその断片を含むIgポリペプチドを表す。この用語は、重鎖可変ドメイン(V)を含む断片を含む。
【0029】
用語「軽鎖ポリペプチド」は、抗体由来の完全長軽鎖、又は重鎖ポリペプチドと対又は二量体化する場合に抗原結合部位を形成することができるその断片を含むIgポリペプチドを表す。この用語は、軽鎖可変ドメイン(V)を含む断片を含む。
【0030】
用語「前もって製造された軽鎖」又は「前もって製造された軽鎖ポリペプチド」は、別の無細胞タンパク質合成系、反応混合物、又は無細胞抽出物に添加する前に、作製、産生又は合成されるLCポリペプチドを表す。この用語は、当技術分野において公知のいずれかの方法を用いて製造又は産生されるLCポリペプチドを含む。この用語は、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、又は無細胞抽出物中LCポリペプチドをコードする核酸から発現されるLCポリペプチドも含む。この用語は、細菌細胞又は哺乳類細胞などのインタクトな生細胞内でLCポリペプチドをコードする核酸から発現されるLCポリペプチドも含む。この用語は、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、若しくは無細胞抽出物、又は細胞の培養液から精製又は部分的に精製されるLCポリペプチドも含む。
【0031】
用語「細菌由来無細胞抽出物」は、DNAをmRNAに転写及び/又はmRNAをポリペプチドに翻訳することができるin vitro反応混合物の調製を表す。この混合物は、リボソーム、ATP、アミノ酸、及びtRNAを含む。これらは、溶解細菌、精製成分又は両方の組合せから直接的に誘導してよい。
【0032】
用語「無細菌細胞合成系」は、生物抽出物及び/又は定義された試薬を含む反応混合物中ポリペプチドのin vitro合成を表す。反応混合物は、巨大分子、例えば、DNA、mRNA、その他の産生のための鋳型;合成される巨大分子のための単量体、例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、その他;並びに補助因子、酵素及び合成に必要な他の試薬、例えば、リボソーム、荷電されていないtRNA、非天然アミノ酸と共に荷電されたtRNA、ポリメラーゼ、転写因子、tRNA合成酵素、その他を含むだろう。
【0033】
用語「ペプチド」、「タンパク質」、及び「ポリペプチド」は本明細書において互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを表す。この用語は、1又は複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに当てはまる。本明細書で使用されるとき、用語は、完全長タンパク質及び短縮タンパク質を含むいずれもの長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基はペプチド共有結合により結合される。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「Fab断片」は、完全長免疫グロブリンのパパインによる消化から得られる完全長抗体の部分を含む抗体断片、又は合成的に、例えば、組み換えで製造される同じ構造を有する断片である。Fab断片は、軽鎖(可変(V)及び定常(C)領域ドメインを含む)並びに重鎖(V)の可変ドメイン及び重鎖の1つの定常領域ドメイン部分(CH1)を含むもう1つの鎖を含む。
【0035】
本明細書で使用されるとき、F(ab’)断片は、pH4.0~4.5においてペプシンによる免疫グロブリンの消化から得られる抗体断片、又は同じ構造を有する合成的、例えば、組み換えで製造された抗体である。F(ab’)断片は、2つのFab断片を含むが、各重鎖部分は、前記2つの断片を結合するジスルフィド結合を形成するシステイン残基を含む付加的数個のアミノ酸を含む。
【0036】
本明細書で使用されるとき、抗体に関連する「可変ドメイン」は、異なる抗体によって異なるアミノ酸配列を含む抗体重鎖又は軽鎖の特定の免疫グロブリン(Ig)ドメインである。各軽鎖及び各重鎖は、1つの可変領域ドメイン(V、及びV)を有する。可変ドメインは、抗原特異性を提供し、したがって、抗原認識に関与する。各可変領域は、抗原結合部位ドメイン及びフレームワーク領域(FR)の部分であるCDRを含む。
【0037】
したがって、「抗原結合部位を形成するのに充分である抗体又はその部分」は、抗体又はその部分は、全6CDRを含む対応する完全長抗体の結合特異性の少なくとも一部を保持するのに充分なV及びVの少なくとも1若しくは2、通常3、4、5又は全6CDRを含むことを含む。総じて、充分な抗原結合部位は、重鎖のCDR3(CDRH3)を少なくとも必要とする。抗原結合部位は、通常、軽鎖のCDR3(CDRL3)を更に必要とする。本明細書に記載されているように、当業者は、Kabat又はChothiaナンバリングに基づいてCDRを知り、特定することができる(例えば、Kabat,E.A.et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,及びChothia et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917参照)。
【0038】
表1は、Kabat及びChothiaスキームにより特定されたCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3の位置を示す。CDR-H1に関して、残基ナンバリングは、Kabat及びChothia両方のナンバリングスキームを用いて提供される。
【表1】

【0039】
本明細書で使用されるとき、用語「抗原」及び同様な用語は、抗体、その複合体(例えば、キメラ抗体若しくは二重特異性抗体又はscFv)、又はその断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAb及び他の組成物)により認識される分子、化合物、又は複合体を表すために本明細書において使用される。この用語は、抗体、その複合体又はその断片により特異的に認識することができるいずれもの分子、例えば、ペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、化学部分、又はこれらの組合せ(例えば、リン酸化又はグリコシル化ペプチド、クロマチン部分、その他)を表すことができる。
【0040】
用語「に対して特異的」、「特異的に結合する」、及び同様なものは、非標的化合物より2倍以上大きい親和性、例えば、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、20倍以上、25倍以上、50倍以上、又は100倍以上大きい親和性を有する標的(抗原、エピトープ、抗体標的、その他)との分子(例えば、抗体又は抗体断片)の結合を表す。例えば、その標的抗原と特異的に結合、又はその標的抗原に対して特異的であるFab断片は、非標的抗原より2倍以上大きい親和性を有するその標的抗原と通常結合するFab断片である。
【0041】
抗体標的(例えば、抗原、検体、免疫複合体)と関連する用語「結合する」は、抗体が純粋な集団(適切なモル比と仮定)中の抗体標的の大多数と結合することを通常示す。例えば、所与の抗体標的と結合する抗体は、溶液中の抗体標的の3分の2以上(例えば、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)と通常結合する。当業者は、いくつかの変動性は、方法及び/又は結合を決定する閾値に応じて生じるだろうと認識する。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「結合親和性」は、(Fab断片の)結合部位と標的分子(標的抗原)との結合の強度を表す。標的分子Yに対する結合部位Xの親和性は、解離常数(K)により表され、溶液中に存在するXの結合部位の半数を占めるのに必要なYの濃度である。より低いKは、より強い又はより高いXとYとの相互作用を示し、より低い濃度のリガンドは前記部位を占有するために必要である。
【0043】
用語「核酸」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及び一本鎖又は二本鎖形態のいずれかのそのポリマー、並びにその補体を表す。用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの直鎖配列を表す。用語「ヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドの単一単位、すなわち、単量体を通常表す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はその修飾バージョンであり得る。本明細書中に考えられるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖DNA及びRNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。この用語は、対象とするタンパク質のアミノ酸配列に転写及び翻訳することができる分子の直鎖配列中のヌクレオチドの特定の順序を含む用語「核酸配列」と互換的に使用することもできる。したがって、この用語は、重鎖ポリペプチド及び/又は軽鎖ポリペプチドをコードする核酸を含む。
【0044】
用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を表す。天然アミノ酸は、遺伝コードによりコードされたもの、並びに後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシ基、アミノ基、及びR基と結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを表す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有してよいが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を表す。
【0045】
別段に明示的に指定されない限り、用語「収量」及び「力価」は、反応混合物体積に対して産生された抗体の量(HC及びLCの総量を含む)を表す。例えば、200mg/Lは、反応混合物の1リットル当たり産生された抗体200mgを表す。
【0046】
用語「大腸菌(E.coli)株」は、大腸菌(E.coli)のサブタイプを表し、この細胞は、特定の生物形態を有し、特定の遺伝子構造を共有する。用語「酸化的細胞質を有する大腸菌(E.coli)株」は、株由来細胞の一部又は全てが各々酸化的細胞質を有する大腸菌(E.coli)株を表す。
【0047】
用語「単位体積当たりの収量」は、所定の反応体積単位で無細胞合成系により発現又は産生されたタンパク質(例えば、抗体)の量を表す。この用語は、反応体積の1リットル当たり発現又は産生されたタンパク質の量(濃度)、例えば、反応体積の1リットル当たりのグラム(g/L)又は1リットル当たりのミリグラム(mg/L)を含むことができる。
【0048】
本明細書に記載されている全範囲は、範囲のエンドポイント値及びエンドポイント間の全値を含むと理解される。例えば、範囲が整数で表される場合、範囲は、エンドポイント値を含むエンドポイント値間の全整数、及び第一有効桁までの値を含み得る。したがって、1~10の範囲は、値1.0、1.1、1.2、・・・9.8、9.9、及び10.0を含む。
【0049】
本開示は、無細胞タンパク質合成系を用いた抗体の大規模産生のための組成物及び産生方法を記載する。前記方法は、軽鎖(LC)ポリペプチドを含む反応混合物中、抗体の重鎖(HC)ポリペプチドを、前記重鎖をコードする核酸から発現させることを含む。この方法は、例えば、約10リットル以上の反応体積、例えば、約10リットル~約10,000リットルの反応体積において、抗体の商業的産生に適しているように大規模に行われる。前記方法により産生される抗体の単位体積当たりの収量は、例えば、大量と比較して少量の異なる反応体積にわたって同様であり、この収量は、室内実験の典型的反応体積から抗体の商業的産生に適している反応体積まで拡張可能であることを示した。
【0050】
本明細書に記載されている方法は、予想外に、対象の抗体の単位体積当たりの収量増加をもたらす。前記方法は、対象の抗体の品質向上ももたらす可能性がある。皮質向上により、抗体のHCポリペプチド及びLCポリペプチドは、適切にフォールディングされ、組み立てられて機能的抗原結合部位を形成する必要があると理解される。したがって、本明細書に記載されている方法は、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方とも発現される反応混合物と比較して、単位体積当たりの適切にフォールディング及び/又はアセンブリされた抗体の収量を増加させ得る。例えば、適切にフォールディングされた抗体の単位体積当たりの収量は、HC及びLCをコードする核酸から重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチド両方とも発現される反応混合物と比較して、30%以上高い可能性がある。
【0051】
いくつかの態様では、HCポリペプチドの発現工程前に、無細胞タンパク質合成系反応混合物にLCポリペプチドが添加される。いくつかの実施形態では、この軽鎖ポリペプチドは、前もって製造された軽鎖(PFLC)である。例えば、前記LCポリペプチドを、HCポリペプチドを発現させるために使用される無細胞タンパク質合成系と別の又は異なる無細胞タンパク質合成系、反応混合物、又は無細胞抽出物中前記LCポリペプチドをコードする核酸から発現してよい。他の実施形態では、前記LCポリペプチドを、細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞又はCHO細胞内で発現し、かかる細胞の培養液から精製してよい。それから、PFLCポリペプチドを、HCポリペプチドをコードする核酸を含む無細胞タンパク質合成反応混合物に添加してよい。いくつかの実施形態では、発現されたLCポリペプチドを含む無細胞抽出物の一部を、発現工程前に、HCポリペプチドをコードする核酸を含む反応混合物に添加する。いくつかの実施形態では、発現されたLCポリペプチドを、HCポリペプチドをコードする核酸を含む無細胞タンパク質合成反応混合物に添加する前に、精製又は部分的に精製する。
【0052】
本明細書に記載されている実施形態のいくつか又はいずれかでは、HCポリペプチドをコードする核酸を含む反応混合物に添加する前に、前記LCポリペプチドを作製、産生又は合成する。当技術分野において公知のいずれかの方法を用いて、前記LCポリペプチドを作製、産生又は合成してよい。例えば、軽鎖ポリペプチドは、反応混合物に添加される前に、別の反応で産生されてもよく、又は軽鎖ポリペプチドは、反応混合物に添加される前に、合成若しくは前もって製造されてもよい。前記軽鎖ポリペプチドは、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、又は無細胞抽出物中で前記軽鎖ポリペプチドをコードする核酸から発現されてもよい。前記軽鎖ポリペプチドは、細菌細胞又は哺乳類細胞などのインタクトな生細胞内で前記軽鎖ポリペプチドをコードする核酸から発現されてもよい。前記軽鎖ポリペプチドは、反応混合物に添加される前に、無細胞タンパク質合成系、反応混合物、無細胞抽出物、及び/又は細胞の培養物から精製又は部分的に精製されてもよい。
【0053】
一般的方法
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。実務者は、特に、Green,M.R.and Sambrook,J.,eds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,N.Y.(2012),及びAusubel,F.M.,et al.Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 99),John Wiley & Sons,New York(2012)を対象とし、これらは、定義及び当技術分野の用語のため、参照により本明細書に援用される。標準的方法は、RNA操作及び分析のための詳細な方法を記載しているBindereif,Schon,& Westhof(2005)Handbook of RNA Biochemistry,Wiley-VCH,Weinheim,Germanyにも見られ、これは参照により本明細書に援用される。組み換え核酸を作製するための適切な分子技術の例、及び多くのクローニング実行による当業者を指導するのに十分な説明書は、Green,M.R.,and Sambrook,J.,(Id.);Ausubel,F.M.,et al.(Id.);Berger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology(Volume 152 Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.1987);and PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,San Diego,Calif.1990)に見られ、これらは参照により本明細書に援用される。
【0054】
タンパク質精製、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、及び結晶化は、Coligan et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New Yorkに記載されている。無細胞合成方法は、Spirin & Swartz(2008)Cell-free Protein Synthesis,Wiley-VCH,Weinheim,Germany.に記載されている。無細胞合成を用いた非天然アミノ酸のタンパク質への組込み方法は、Shimizu et al.(2006)FEBS Journal,273,4133-4140に記載されている。
【0055】
PCR増幅方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Innis et al.PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press Inc.San Diego,Calif.,1990に記載されている。増幅反応は、通常、増幅されることになるDNA、熱安定性DNAポリメラーゼ、2つのオリゴヌクレオチドプライマー、デオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)、反応バッファ及びマグネシウムを含む。通常、望ましい熱サイクル数は、1~25サイクルである。PCR条件のプライマー設計及び最適化の方法は、当技術分野において周知であり、Ausubel et al.Short Protocols in Molecular Biology,5th Edition,Wiley,2002,及びInnis et al.PCR Protocols,Academic Press,1990などの標準的分子生物学本で見ることが可能である。コンピュータプログラムは、必要な特異性及び最適増幅特性を有するプライマーの設計に有用である(例えば、Oligo Version 5.0(National Biosciences))。いくつかの実施形態では、PCRプライマーは、制限酵素に対する認識部位を付加的に含み、ベクター中の特異的制限酵素部位への増幅されたDNA断片の挿入を促進し得る。制限部位がPCRプライマーの5’末端に付加されるものである場合、酵素がより効率的に切断することを可能とするように数個(例えば、2又は3個)の余分の5’塩基を含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、PCRプライマーは、その後のin vitro転写を可能とするように、T7又はSP6などのRNAポリメラーゼプロモーター部位を含んでもよい。in vitro転写の方法は、当業者に周知である(例えば、Van Gelder et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1663-1667,1990;Eberwine et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:3010-3014,1992参照)。
【0056】
本明細書に記載されているタンパク質が名称により表される場合、これは、同様の機能及び同様のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。したがって、本明細書に記載されているタンパク質としては、野生型原型タンパク質、並びに相同体、多形バリエーション及び組み換えにより作製された変異タンパク質が挙げられる。タンパク質が原型タンパク質と80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する場合、タンパク質は、同様なアミノ酸配列を有すると定義される。タンパク質の配列同一性を、BLASTPプログラムで、デフォルトのワード長3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコア行列を用いて決定することができる(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919,1992参照)。
【0057】
タンパク質相同体、多形バリアント又は組み換え変異タンパク質が本明細書に記載されているタンパク質に含まれるか否かを容易に決定する従来試験は、原型タンパク質に対して生成されたポリクローナル抗体と特異的結合することによる。
【0058】
無細胞タンパク質合成(CFPS)技術
本明細書に記載されている対象の生物活性タンパク質を発現させるために、無細胞タンパク質合成系を使用することができる。精製mRNA転写又はin vitro合成反応中にDNAから転写されるmRNAからin vitroタンパク質合成を支持する細胞抽出物を開発した。本明細書に記載されている無細胞タンパク質合成系は、大反応体積、例えば、約10リットル以上、約20リットル、約30リットル、約40リットル、約50リットル、約60リットル、約70リットル、約80リットル、約90リットル、約100リットル、約150リットル、約200リットル、約300リットル、約400リットル、約500リットル、約600リットル、約700リットル、約800リットル、約900リットル、約1000リットル、約2000リットル、約3000リットル、約4000リットル、約5000リットル、約6000リットル、約7000リットル、約8000リットル、約9000リットル、約10,000リットル、約15,000リットル、約20,000リットル、又は約25,000リットルなどの約10リットル以上の反応体積を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている無細胞タンパク質合成系は、約10リットル以下、約20リットル、約30リットル、約40リットル、約50リットル、約60リットル、約70リットル、約80リットル、約90リットル、約100リットル、約150リットル、約200リットル、約300リットル、約400リットル、約500リットル、約600リットル、約700リットル、約800リットル、約900リットル、約1000リットル、約2000リットル、約3000リットル、約4000リットル、約5000リットル、約6000リットル、約7000リットル、約8000リットル、約9000リットル、約10,000リットル、約15,000リットル、約20,000リットル、又は約25,000リットルなどの約10リットル以下の反応体積を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている無細胞タンパク質合成系は、約10,000リットル~20,000リットルの反応体積、又は約10,000リットル以下~20,000リットルの反応体積、又は約10,000リットル~20,000リットルの最大体積、例えば、10,000リットル、11,000リットル、12,000リットル、13,000リットル、14,000リットル、15,000リットル、16,000リットル、17,000リットル、18,000リットル、19,000リットル、又は20,000リットルの最大体積を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている無細胞タンパク質合成系は、約10,000リットルの反応体積、約10,000リットル以下の反応体積、又は約10,000リットルの最大反応体積を含むことができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、この無細胞タンパク質合成系は、約10リットル~約25,000リットルの体積を有する反応混合物を含む。いくつかの実施形態では、この無細胞タンパク質合成系は、約10リットル~約10,000リットルの体積を有する反応混合物を含む。いくつかの実施形態では、この反応混合物は、約10,000リットル~約20,000リットルの体積を含む。いくつかの実施形態では、この反応混合物は、約15,000リットル~約25,000リットルの体積を含む。いくつかの実施形態では、この反応混合物は、約10リットル~約25,000リットル以上の体積を含む。いくつかの実施形態では、この反応混合物は、約10リットル~約25,000リットル以下の体積を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、対象とするタンパク質は、抗体である。
【0061】
反応混合物におけるポリペプチドのCFPSは、細菌抽出物及び/又は定義されている試薬を含む。この反応混合物は、少なくともATP又はエネルギー源;巨大分子、例えば、DNA、mRNA、その他の産生のための鋳型;アミノ酸、並びにポリペプチド合成に必要な補助因子、酵素及び他の試薬、例えば、リボソーム、tRNA、ポリメラーゼ、転写因子、アミノアシル合成酵素、伸長因子、開始因子、その他を含む。本発明の1つの実施形態では、エネルギー源は、恒常性エネルギー源である。高エネルギーリン酸結合からATPの再生を触媒する酵素、例えば、酢酸キナーゼ、クレアチンキナーゼ、その他も含まれ得る。かかる酵素は、翻訳に使用される抽出物中に存在してもよく、反応混合物に添加してもよい。かかる合成反応系は、当技術分野において周知であり、文献に記載されている。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「反応混合物」は、核酸鋳型からポリペプチドの合成を触媒することができる反応混合物を表す。反応混合物は、細菌細胞からの抽出物、例えば、大腸菌(E.coli)S30抽出物を含む。S30抽出物は、当技術分野において周知であり、例えば、Lesley,S.A.,et al.(1991),J.Biol.Chem.266,2632-8に記載されている。好気性条件下又は嫌気性条件下のいずれかで合成を行うことができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、細菌抽出物は乾燥している。乾燥細菌抽出物は、出発物質の固形パーセントの測定により決定される元の固形物の110%のミリQ水(例えば、逆浸透水)中に再調製することができる。1つの実施形態では、抽出物10mLの元の固形物の110%である乾燥抽出物の精秤されたアリコートを、マグネティックスターラー上に撹拌バーを含むガラス製ビーカー内の10mLのミリQ水に添加する。得られた混合物を、粉末が溶解するまで撹拌する。一旦溶解すれば、物質を15mLのFalconチューブに移し、もし直ぐに使用しなければ、-80℃に貯蔵する。
【0064】
反応混合物中の抽出物の体積パーセントは変わり、抽出物は、通常総体積の約10%以上であり;より通常、約20%以上であり;場合によっては、総体積の約50%以上又は約60%以上;通常約75%以下で提供される場合、更なる効果を提供する可能性がある。
【0065】
一般的系としては、対象とするタンパク質をコードする核酸鋳型が挙げられる。この核酸鋳型は、RNA分子(例えば、mRNA)又はmRNAをコードする核酸(例えば、RNA、DNA)であり、いずれかの形態(例えば、直鎖、環状、超らせん状、一本鎖、二本鎖、その他)である。核酸鋳型は、所望のタンパク質の産生を誘導する。
【0066】
鋳型を維持するため、抽出物を製造するために使用される細胞を、有害な酵素の活性を低下、実質的に低下若しくは排除するため、又は改良された活性を有する酵素のために選択してよい。修飾されたヌクレアーゼ又は脱リン酸酵素活性(例えば、少なくとも1つの変異脱リン酸酵素若しくはヌクレアーゼ遺伝子又はこれらの組合せ)を有する細菌細胞を、合成効率を増強するための細胞抽出物の合成のために使用することができる。例えば、CFPSのS30抽出物を作製するために使用される大腸菌(E.coli)株は、RNアーゼE又はRNアーゼA欠乏性であり得る(例えば、変異による)。
【0067】
CFPS系を、検出可能に標識化されたアミノ酸、又は慣例に従わない若しくは非天然アミノ酸の所望タンパク質への組込みを誘導するように改変することもできる。アミノ酸を、別の生物源から合成又は誘導することができる。これに限定されないが検出可能に標識化されたアミノ酸を含む様々な種類の非天然アミノ酸を、CFPS反応物に添加し、特定の目的のためにタンパク質に効果的に組み込むために付加することができる。例えば、Albayrak,C.and Swartz,JR.,Biochem.Biophys Res.Commun.,431(2):291-5;Yang WC et al.Biotechnol.Prog.(2012),28(2):413-20;Kuechenreuther et al..PLoS One,(2012),7(9):e45850;及びSwartz JR.,AIChE Journal,58(1):5-13参照。
【0068】
一般的CFPS反応では、対象とするタンパク質をコードする遺伝子は、転写バッファ中で発現され、CFPS抽出物及び翻訳バッファ中対象とするタンパク質に翻訳されるmRNAを得る。転写バッファ、無細胞抽出物及び翻訳バッファを、別々に添加することができ、又はこれらの溶液の2又は複数を、これらの添加前に配合してもよく、又は同時に添加してもよい。
【0069】
対象とするタンパク質をin vitro合成するため、ある時点でCFPS抽出物は、対象とするタンパク質をコードするmRNA分子を含む。いくつかのCFPS系では、mRNAを、天然源から精製された後に外因的に添加するか、又はRNAポリメラーゼII、SP6 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼIII及び/又はファージ由来RNAポリメラーゼなどのRNAポリメラーゼを用いてクローン化されたDNAからin vitro合成で調製する。他の系では、mRNAを、鋳型DNAからin vitroで産生し;転写及び翻訳両方とも、この種類のCFPS反応で起こる。いくつかの実施形態では、転写及び翻訳系は、相補的転写及び翻訳系を結合又は含み、これは、同じ反応におけるRNA及びタンパク質両方の合成を行う。かかるin vitro転写及び翻訳系では、CFPS抽出物は、転写(mRNAを産生)及び翻訳(タンパク質を合成)の両方に必要な全成分(外因性又は内因性)を単一系に含む。本明細書に記載されている結合された転写及び翻訳系は、大腸菌を用いた無細胞タンパク質合成(OCFS)系と呼ぶこともあり、対象の適切にフォールディングされたタンパク質の高力価、例えば、抗体発現の高力価を得ることが可能である。
【0070】
無細胞タンパク質合成反応混合物は、以下の成分を含む:DNAなどの、少なくとも1つのプロモーターと機能的に結合された対象の遺伝子、所望により、1若しくは複数の他の調節配列(例えば、対象の遺伝子を含むクローニングベクター又は発現ベクター)又はPCR断片を含む鋳型核酸;対象の遺伝子が機能的に結合されたプロモーターを認識するRNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ)及び、所望により、鋳型核酸が機能的に結合された所望により存在する調節配列に指令された1若しくは複数の転写因子;リボヌクレオチド三リン酸(rNTP);所望により存在する他の転写因子及びその補助因子;リボソーム;転移RNA(tRNA);他又は所望により存在する翻訳因子(例えば、翻訳開始因子、伸長因子及び翻訳終了因子)及びその補助因子;1又は複数のエネルギー源(例えば、ATP、GTP);所望により存在する1又は複数のエネルギー再生成分(例えば、PEP/ピルビン酸キナーゼ、AP/酢酸キナーゼ又はクレアチンリン酸/クレアチンキナーゼ);所望により存在する収率及び/又は有効率を増強する因子(例えば、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ阻害剤、タンパク質安定剤、シャペロン)及びその補助因子;並びに:所望により存在する可溶化剤。反応混合物は、塩(例えば、酢酸、グルタミン酸、又は硫酸のカリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、及びマンガン塩)を含むタンパク質合成に特に必要なアミノ酸及び他の物質、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、第四級アミノエチル及びアミノエチルデキストラン、その他)、環状AMP、タンパク質又は核酸分解酵素の阻害剤、タンパク質合成の阻害剤又は制御因子、酸化/還元調整剤(例えば、DTT、アスコルビン酸、グルタチオン、及び/又はその酸化物)、非変性界面活性剤(例えば、トリトンX-100)、バッファ成分、スペルミン、スペルミジン、プトレシン、その他を更に含む。CFPS反応物の成分は、米国特許第7,338,789号及び同第7,351,563号、並びに米国特許出願公開第2010/0184135号及び同第2010/0093024号により詳細に論じられておりこれらの各々の開示は、全目的のためその全文を参照することにより援用される。
【0071】
抽出物中に存在する特定の酵素に応じて、例えば、多くの公知のヌクレアーゼ、ポリメラーゼ又は脱リン酸酵素阻害剤の1又は複数を選択し、合成効率を向上するために有利に使用することができる。
【0072】
タンパク質及び核酸合成は、通常、エネルギー源を必要とする。エネルギーは、mRNAを産生する転写開始するために必要である(例えば、DNA鋳型を使用し、翻訳開始のため、高エネルギーリン酸を例えばGTPの形態で使用する場合)。リボソームによる1つのコドンの各後続工程(3ヌクレオチド;1アミノ酸)は、GDPへの追加のGTPの加水分解を必要とする。ATPも通常必要である。タンパク質合成中重合されるアミノ酸のため、ATPは、先ず活性化されなければならない。したがって、高エネルギーリン酸結合からのエネルギーの有意量は、タンパク質及び/又は核酸合成が進行するために必要である。
【0073】
エネルギー源は、所望の化学反応を達成するためのエネルギーを提供するために酵素的に進行することができる化学基質である。ヌクレオシド三リン酸、例えば、ATPに見られるものなど、高エネルギーリン酸結合の切断による合成のためのエネルギー放出を可能とするエネルギー源を、通常使用する。高エネルギーリン酸結合に変換可能ないずれかの源は、特に適している。ATP、GTP、及び他の三リン酸は、タンパク質合成を支持するための均等なエネルギー源として通常見做すことができる。
【0074】
合成反応のためのエネルギーを得るため、系は、グルコース、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸(PEP)、カルバモイルリン酸、アセチルリン酸、クレアチンリン酸、ホスホピルビン酸、グリセルアルデヒド3-リン酸、3-ホスホグリセリン酸及びグルコース-6-リン酸などの追加されるエネルギー源を含むことができ、ATP、GTP、他のNTP、その他などの高エネルギー三リン酸化合物を生成又は再生することができる。
【0075】
充分なエネルギーが最初に合成系に存在しない場合、追加のエネルギー源を、好ましくは補充する。エネルギー源を、in vitro合成反応中に追加又は補充することもできる。
【0076】
いくつかの実施形態では、無細胞タンパク質合成反応を、NTP、大腸菌(E.coli)tRNA、アミノ酸、Mg2+酢酸塩、Mg2+グルタミン酸塩、K酢酸塩、Kグルタミン酸塩、フォリン酸、トリスpH8.2、DTT、ピルビン酸キナーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、ジスルフィドイソメラーゼ、ホスホエノールピルビン酸(PEP)、NAD、CoA、Naシュウ酸塩、プトレシン、スペルミジン、及びS30抽出物を含むPANOx-SP系を用いて行う。
【0077】
いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸(nnAA)を含むタンパク質を合成してよい。かかる実施形態では、反応混合物は、非天然アミノ酸、20天然アミノ酸と直交するtRNA、及びnnAAを直交tRNAと結合することができるtRNA合成酵素を含んでよい。例えば、米国特許出願公開第2010/0093024号参照。あるいは、反応混合物は、天然tRNA合成酵素が枯渇するtRNAと結合されたnnAAを含んでよい。例えば、国際公開第2010/081111号参照。nnAAを、当技術分野において公知のいずれかのnnAAから選択することができる。例えば、nnAAを、米国特許第9,738,724号及び米国特許第10,610,571号に記載されているものから選択することができる。いくつかの実施形態では、nnAAは、p-アセチルフェニルアラニンである。いくつかの実施形態では、nnAAは、p-アミノメチルフェニルアラニンである。いくつかの実施形態では、nnAAは、p-アジドメチル-L-フェニルアラニンである。
【0078】
場合によっては、無細胞合成反応は、一般的な二次エネルギー源の添加を必要としないが、酸化的リン酸化及びタンパク質合成の共活性化を使用する。場合によっては、CFPSを、サイトミム(細胞質模倣体)系などの反応で行う。サイトミム系は、最適化されたマグネシウム濃度を有し、ポリエチレングリコールの非存在下で行う反応条件として定義される。この系は、リン酸を蓄積せず、タンパク質合成を阻害することが分かっている。
【0079】
活性酸化的リン酸化反応経路の存在を、電子伝達系阻害剤など、経路中の工程を特異的に阻害する阻害剤を用いて試験することができる。酸化的リン酸化反応経路の阻害剤の例としては、シアン化物、一酸化炭素、アジド、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)などの毒素、及び2,4-ジニトロフェノール、オリゴマイシンなどの抗生物質、ロテノンなどの駆除薬、並びにマロン酸及びオキサロ酢酸などのコハク酸脱水素酵素の競合阻害剤が挙げられる。
【0080】
いくつかの実施形態では、無細胞タンパク質合成反応を、NTP、大腸菌(E.coli)tRNA、アミノ酸、Mg2+酢酸塩、Mg2+グルタミン酸塩、K酢酸塩、Kグルタミン酸塩、フォリン酸、トリスpH8.2、DTT、ピルビン酸キナーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、ジスルフィドイソメラーゼ、ピルビン酸ナトリウム、NAD、CoA、Naシュウ酸塩、プトレシン、スペルミジン、及びS30抽出物を含むサイトミム系を用いて行う。いくつかの実施形態では、サイトミム系のためのエネルギー基質は、ピルビン酸、グルタミン酸、及び/又はグルコースである。系のいくつかの実施形態では、ヌクレオシド三リン酸(NTP)を、ヌクレオシド一リン酸(NMP)で置換する。
【0081】
細胞抽出物を、ジスルフィド結合を減少及び適切なタンパク質フォールディングを損ない得る酵素を不活性化するために、ヨードアセトアミドで処理することができる。さらに本明細書に記載されているように、細胞抽出物に、適切なタンパク質フォールディングを促進するシャペロンを補充することもできる。いくつかの実施形態では、シャペロンは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)又はペプチジルプロリルイソメラーゼ(PPI)である。したがって、細胞抽出物に、これに限定されないが、大腸菌(E.coli)DsbCなどのPDI、若しくはこれに限定されないが、FkpAなどのPPI、又はPDI及びPPIの組合せを補充することができる。適切なシャペロンの例は、本明細書に更に記載されている。グルタチオンジスルフィド(GSSG)及びグルタチオン(GSH)を、適切なタンパク質フォールディングを促進し、異所のタンパク質ジスルフィドの形成を防止する比で抽出物に添加することもできる。
【0082】
いくつかの実施形態では、CFPS反応物は、酸化的リン酸化を行う反転膜小胞を含む。これらの小胞を、本明細書に記載されているように細胞抽出過程の調製の高圧均質化工程中に形成し、反応混合物中で使用される抽出物中に保持することができる。
【0083】
無細胞抽出物を、CFPS反応において使用する前に、室温において解凍することができる。この抽出物を、ジスルフィド結合を有するタンパク質を合成する場合、50μMヨードアセトアミドと共に30分間インキュベートすることができる。いくつかの実施形態では、CFPS反応物は、約8mMグルタミン酸マグネシウム、約10mMグルタミン酸マグネシウム、約130mMグルタミン酸マグネシウム、約35mMピルビン酸ナトリウム、約1.2mM AMP、約0.86mMのGMPの各々、UMP、及びCMP、約2mMアミノ酸(チロシンについては約1mM)、約4mMシュウ酸ナトリウム、約0.5mMプトレシン、約1.5mMスペルミジン、約16.7mMリン酸カリウム、約100mM T7 RNAポリメラーゼ、約2~10μg/mLプラスミドDNA鋳型、約1~10μM大腸菌(E.coli)DsbC、及び総濃度約2mM酸化(GSSG)グルタチオンを含む約30%(体積/体積)ヨードアセトアミド処理抽出物が挙げられる。所望により、無細胞抽出物は、1mMの還元(GSH)を含むことができる。
【0084】
無細胞合成反応条件を、当技術分野において公知のバッチ式、連続流、又は反連続流として行ってよい。反応条件は、直線的にスケーラブル、例えば、約0.5L撹拌槽反応器において約0.3L規模から、約10L反応器において約4L規模まで、約200L反応器において約100L規模まで、約500L反応器において約200L規模まで、約1000L反応器において約500L規模まで、約2000L反応器において約1000L規模まで、約4000L反応器において約2000L規模まで、約6000L反応器において約3000L規模まで、約8000L反応器において約4000L規模まで、約10,000L反応器において約5000L規模まで、約12,000L反応器において約6000L規模まで、約14,000L反応器において約7000L規模まで、約16,000L反応器において約8000L規模まで、約18,000L反応器において約9000L規模まで、約20,000L反応器において約10,000L規模まで、約40,000L反応器において約20,000L規模まで、及び約50,000L反応器において約25,000L規模までである。
【0085】
無細胞合成反応条件は、約0.3リットル以上、約1リットル、約5リットル、約10リットルの反応体積、その例としては、約10リットル以上、約20リットル、約30リットル、約40リットル、約50リットル、約60リットル、約70リットル、約80リットル、約90リットル、約100リットル、約150リットル、約200リットル、約300リットル、約400リットル、約500リットル、約600リットル、約700リットル、約800リットル、約900リットル、約1000リットル、約2000リットル、約3000リットル、約4000リットル、約5000リットル、約6000リットル、約7000リットル、約8000リットル、約9000リットル、約10,000リットル、約15,000リットル、約20,000リットル、又は約25,000リットルの反応体積を含むことができる。いくつかの実施形態では、無細胞合成反応条件は、約0.3リットル以下、約1.0リットル、約5リットル、約10リットル、約20リットル、約30リットル、約40リットル、約50リットル、約60リットル、約70リットル、約80リットル、約90リットル、約100リットル、約150リットル、約200リットル、約300リットル、約400リットル、約500リットル、約600リットル、約700リットル、約800リットル、約900リットル、約1000リットル、約2000リットル、約3000リットル、約4000リットル、約5000リットル、約6000リットル、約7000リットル、約8000リットル、約9000リットル、約10,000リットル、約15,000リットル、約20,000リットル、又は約25,000リットル以下の反応体積を含む。いくつかの実施形態では、無細胞合成反応条件は、約10,000リットル~25,000リットル、若しくは約10,000リットル以下~25,000リットルの反応体積、又は約10,000リットル~25,000リットルの最大体積、例えば、10,000リットル、11,000リットル、12,000リットル、13,000リットル、14,000リットル、15,000リットル、16,000リットル、17,000リットル、18,000リットル、19,000リットル、20,000リットル、21,000リットル、22,000リットル、23,000リットル、24,000リットル、若しくは25,000リットルの最大体積を含むことができる。いくつかの実施形態では、無細胞合成反応条件は、約10リットル~約25,000リットル、約10リットル~約10,000リットル、約10,000リットル~約20,000リットル、又は約15,000リットル~約25,000リットルの反応体積を含むことができる。
【0086】
Spirin et al.(1988)Science 242:1162-1164による連続流in vitroタンパク質合成の開発は、この反応が数時間まで延長することができることを証明した。それ以来、多数のグループは、この系を再現及び改良した(例えば、Kigawa et al.(1991)J.Biochem.110:166-168;Endo et al.(1992)J.Biotechnol.25:221-230参照)。Kim及びChoi(Biotechnol.Prog.12:645-649,1996)は、バッチ式及び連続流系の利点を、簡単な透析膜反応器を用いて「半連続操作」の導入により組み合わせることができることを報告した。これらは、従来のバッチ系の開始速度を維持しながら連続流系の延長された反応時間を再現することができた。しかしながら、連続式及び半連続式アプローチ両方とも、多量の高価な試薬を必要とし、高価な試薬は、製品収量増加よりかなり大きい倍数に増加しなければならない。
【0087】
いくつかの改良を、従来のバッチ系で行った(Kim et al.(1996)Eur.J.Biochem.239:881-886;Kuldlicki et al.(1992)Anal.Biochem.206:389-393;Kawarasaki et al.(1995)Anal.Biochem.226:320-324)。反連続系は延長された時間にわたってタンパク質合成の開始速度を維持するが、従来のバッチ系は、いくつかの利点、例えば、操作の簡便さ、容易なスケールアップ、より低い試薬費用及び優れた再現性をなお提供する。さらに、バッチ系を、同時に様々な遺伝物質を発現する多重化フォーマットで容易に行うことができる。
【0088】
Patnaik及びSwartz(Biotechniques 24:862-868,1998)は、タンパク質合成の開始比速度を、反応条件の広範な最適化によりin vivo発現と同様なレベルに増強することができることを報告した。これは、濃縮工程なしで調製された従来の細胞抽出物を用いてタンパク質合成のかかる高速度を達成することは注目すべきである(Nakano et al.(1996)J.Biotechnol.46:275-282;Kim et al.(1996)Eur.J.Biochem.239:881-886)。Kigawa et al.(1999)FEBS Lett 442:15-19は、濃縮抽出物及びエネルギー源としてクレアチンリン酸を用いた高レベルのタンパク質合成を報告している。これらの結果は、特にタンパク質合成反応の持続時間に関してバッチ系の更なる改良は、バッチ式in vitroタンパク質合成の生産性を実質的に増大することを示唆している。しかしながら、従来のバッチ系におけるタンパク質合成の早期停止の理由は不明なままである。
【0089】
本明細書に記載されているタンパク質合成反応は、大規模反応器を利用してもよく、小規模反応器を利用してもよく、又は複数の同時合成を行うために多重化されていてもよい。いくつかの実施形態では、記載されているタンパク質合成反応は、試薬流を導入する供給機構を使用する連続式反応であり、プロセスの部分として最終産物を単離してよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているタンパク質合成反応は、追加試薬を活性合成の時間を延長するために導入し得るバッチ式反応である。反応器は、バッチ式、延長バッチ式、半バッチ式、反連続式、フェッドバッチ式及び連続式などのいずれかの方式で運転することができ、適用目的に合わせて選択される。
【0090】
ライセートの作製
本明細書に記載されている方法及び系は、対象とする標的タンパク質のin vitro翻訳のための細胞ライセートを使用する。便宜上、ライセートの供給源として使用される生物は、供給源生物又は宿主細胞と呼んでよい。宿主細胞は、細菌、酵母、哺乳類細胞若しくは植物細胞であってよく、又はタンパク質合成可能な他の型の細胞であってもよい。ライセートは、所望のタンパク質をコードするメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を翻訳することができる成分を含み、所望により、所望のタンパク質をコードするDNAを転写することができる成分を含む。かかる成分としては、例えば、DNA依存性RNAポリメラーゼ(RNAポリメラーゼ)、所望のタンパク質をコードするDNAの転写の開始に必要ないずれかの転写活性化因子、転移リボ核酸(tRNA)、アミノアシル-tRNA合成酵素、70Sリボソーム、N10-ホルミルテトラヒドロ葉酸、ホルミルメチオニン-tRNAfMet合成酵素、ペプチジルトランスフェラーゼ、IF-1、IF-2、及びIF-3などの開始因子、EF-Tu、EF-Ts、及びEF-Gなどの伸長因子、RF-1、RF-2、及びRF-3などの終結因子、並びに同様のものが挙げられる。
【0091】
実施形態は、ライセートが誘導される細菌細胞を使用する。細菌のいずれかの株由来の細菌ライセートを、本発明の方法で使用することができる。細菌ライセートを以下の通り得ることができる。選択の細菌を、いくつかの成長培地のいずれか並びに当技術分野において周知されている及び特定の細菌の成長のために熟練者により容易に最適化された成長条件下対数期まで増殖する。例えば、合成のための自然環境は、グルコース及びホスフェートを含む培地中で増殖された細菌細胞由来の細胞ライセートを利用し、グルコースは、約0.25%(重量/体積)以上、より通常は、約1%以上;及び通常は約4%以下、より通常は約2%以下の濃度で存在する。かかる培地の例は、2YTPG培地であるが、内容の明確及び明確でない両方の栄養源を用いて大腸菌(E.coli)などの細菌の増殖に適した多くの公開されている培地が存在するので、当業者は、多くの培養培地をこの目的のために適用することができると考えるだろう。一夜で収穫された細胞を、適切な細胞懸濁バッファ中に細胞ペレットを懸濁し、懸濁細胞を超音波、懸濁細胞をフレンチプレス、連続流高圧ホモジナイズ、又は効果的細胞溶解に有用な当技術分野で公知の他の方法により破壊することにより溶解することができる。それから、細胞ライセートを遠心分離又はろ過して大きいDNA断片及び細胞デブリスを除去する。
【0092】
細胞ライセートを作製するために使用される細菌株は、総じて、無細胞合成効率を増大するヌクレアーゼ及び/又は脱リン酸酵素の低下された活性を有する。例えば、無細胞抽出物を作製するために使用される細菌株は、ヌクレアーゼRNアーゼE及びRNアーゼAをコードする遺伝子の変異を有する可能性がある。前記株は、無細胞合成反応において、それぞれ、アミノ酸トリプトファン、アルギニン、セリン及びシステインの分解を防止するtnaA、speA、sdaA又はgshAなどの遺伝子中の欠失などの細胞合成反応の成分を安定化する変異も有するかも知れない。加えて、前記株は、プロテアーゼompT又はlonP中のノックアウトなどの無細胞合成のタンパク質産生物を安定化する変異を有するかも知れない。
【0093】
いくつかの実施形態では、細菌抽出物を、CFPS反応において使用する前に、室温において解凍することができる。この抽出物を、ジスルフィド結合を有するタンパク質を合成する場合、50μMヨードアセトアミドと共に30分間インキュベートすることができる。いくつかの実施形態では、CFPS反応物は、約8mMグルタミン酸マグネシウム、約10mMグルタミン酸マグネシウム、約130mMグルタミン酸マグネシウム、約35mMピルビン酸ナトリウム、約1.2mM AMP、約0.86mMのGMPの各々、UMP、及びCMP、約2mMアミノ酸(チロシンについては約1mM)、約4mMシュウ酸ナトリウム、約0.5mMプトレシン、約1.5mMスペルミジン、約16.7mMリン酸カリウム、約100mM T7 RNAポリメラーゼ、約2~10μg/mLプラスミドDNA鋳型、約1~10μM大腸菌(E.coli)DsbC、及び総濃度約2mM酸化(GSSG)グルタチオンを含む約30%(体積/体積)ヨードアセトアミド処理抽出物が挙げられる。所望により、無細胞抽出物は、1mMの還元(GSH)グルタチオンを含むことができる。
【0094】
対象とするタンパク質
本明細書に記載されている方法及び系は、適切にフォールディングされた生物活性の対象とするタンパク質の発現の増加に有用である。対象とするタンパク質は、細菌無細胞合成系において発現することができるいずれかのタンパク質であり得る。非限定例としては、ジスルフィド結合を有するタンパク質及び少なくとも2つのプロリン残基を有するタンパク質が挙げられる。対象とするタンパク質は、例えば、抗体又はその断片、治療用タンパク質、成長因子、受容体、サイトカイン、酵素、リガンド、その他であり得る。対象とするタンパク質の更なる例を以下に記載する。
【0095】
抗体
本明細書で提供される方法を、無細胞タンパク質合成系においていずれかの工程の組み換え産生のために使用することができる。抗体のHCをコードするポリヌクレオチドを、無細胞タンパク質合成系に導入して、HCを発現することができ、次いで、LCと対(二量体化)にして適切にアセンブリされた抗体を産生することができる。ジスルフィド結合は、抗体中に存在し、したがって、本系は分解の防止及び抗体の収量の増加に有益である。いずれかの抗体を、培養培地の1リットル当たりのタンパク質量を表す収量、すなわち、約200mg/L以上、又は約250mg/L以上、約500mg/L以上、約750mg/L以上、又は約1000mg/L以上で本明細書に記載されている方法を用いて産生することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている方法は、約200mg/L~約1000mg/Lの抗体、例えば、約200mg/L、300mg/L、400mg/L、500mg/L、600mg/L、700mg/L、800mg/L、900mg/L又は1000mg/Lの抗体を得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、モノクローナル抗体、例えば、モノクローナルIgG抗体である。いくつかの実施形態では、前記抗体は、2つのFabアーム及び1つのFcドメインを含む二重特異性抗体であり、各Fabは異なる抗原と結合する。いくつかの実施形態では、前記抗体は、1又は複数の機能的抗原結合部位を含み、各抗原結合部位は、一対の重鎖及び軽鎖可変ドメインを含む。この一対の重鎖及び軽鎖可変ドメインを、単一B細胞又はB細胞クローンにより発現された天然又は同属の一対の重鎖及び軽鎖可変ドメインから誘導することができる。あるいは、この一対の重鎖及び軽鎖可変ドメインは、非同族又はランダム対の重鎖及び軽鎖可変ドメインを含むことができる。
【0097】
前記抗体を、治療用の分子、薬剤又は薬物と結合していてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、前記抗体を使用して、抗体薬物複合体(ADC)を作製することができる。いくつかの実施形態では、前記薬物は、細胞傷害性又は抗がん性の薬物である。ADCは、通常、前記抗体と前記薬剤又は薬物とのリンカーを含む。適切なリンカーの例としては、切断可能及び切断可能でないリンカーが挙げられる。切断可能なリンカーを、標的細胞内で酵素によりADC複合体から薬剤又は薬物を遊離するように設計することができる。前記薬物が細胞傷害性又は抗がん性薬物である場合、前記薬物は、標的に近いがん細胞に対する遊離薬物を可能とする(いわゆる、「バイスタンダー殺傷」)。切断可能でないリンカーは、通常、標的細胞への侵入後、ADC複合体から遊離されないように設計される。適切な切断可能なリンカーは、ジスルフィド、ヒドラゾン又はペプチドを含み、適切な切断可能でないリンカーはチオエーテルを含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、ヘテロ二量体Fc領域を含む二重特異性抗体である。例えば、前記抗体は、ヘテロ二量体Fc領域が、IgA及びIgG CH3ドメインからの配列を含む2つの非対称CH3ドメインを含む抗体であり得る(米国特許第9,505,848(B2)号(Davis J.,et al./Merck Patent GmbH)参照;Davis,J.H.,et al.SEEDボディ:非対称バインダー又は免疫融合及び二重特異性抗体のためのFc類似体プラットフォーム中の鎖交換遺伝子操作ドメイン(SEED)CH3ヘテロ二量体をベースとする融合タンパク質、Protein Engineering, Design and Selection,Volume 23,Issue 4,April 2010,Pages 195-202);ヘテロ二量体Fc領域を含む抗体は、一価又は二重特異性であり得、Fab、scFv、Fab/scFv組合せ、又はラクダ科単一ドメイン抗体断片(VHH)を有する融合分子として発現され得る。M. Muda,et al.,Therapeutic assessment of SEED:a new engineered antibody platform designed to generate mono- and bispecific antibodies,Protein Engineering,Design and Selection,Volume 24,Issue 5,May 2011,Pages 447-454参照。
【0099】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、軽鎖(LC)、及び重鎖(HC)を含むドメイン交換抗体であり、前記LCは前記HCと二量体化する。いくつかの実施形態では、前記抗体は、VL-CH3を含む軽鎖(LC)、及びVH-CH3-CH2-CH3を含む重鎖(HC)を含むドメイン交換抗体であり、前記LCのVL-CH3は、前記HCのVH-CH3と二量体化し、それにより、CH3LC/CH3HCドメイン対を含むドメイン交換LC/HC二量体を形成する。かかるドメイン交換抗体の例は、米国特許出願公開第2018/0016354号(WOZNIAK-KNOPP,G. et al./Merck Patent GmbH)に記載されている。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、立体的又は静電相補性に基づいて著しく増強されたHCヘテロ二量体化された改変CH3ドメインを含む二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、前記抗体は、ヘテロ二量体化を促進する各重鎖において「ノブ」又は「ホール」のいずれかを作る改変CH3ドメインを含む二重特異性抗体である。ノブ・イントゥー・ホール技術の例は、Ridgway,J.B.,et al.,Protein Eng.9(1996)617-621;Atwell et al., Journal of Molecular Biology,vol.270(1997),26-35;国際公開第1996/027011(A1)号、米国特許第7,642,228(B2)号(Carter,P.et al./Genentech Inc.)に対応;Merchant,A.M.,et al.,Nature Biotech.16(1998)677-681;欧州特許出願公開第1870459(A1)号、及びXu Y, et al., Production of bispecific antibodies in “knobs-into-holes” using a cell-free expression system.MAbs.2015;7(1):231-242に記載されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、第一抗原と結合するFAB及び第二抗原と結合するscFvを含む二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、前記抗体は、1つのアーム上の第一抗原と結合するFAB及び第二アーム上の第二抗原と結合するscFvを含む二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、前記二重特異性抗体は、Fc中の相補的変異及び/又はヘテロ二量体化を増強する重鎖を含む。かかる相補的変異の例としては、T350V、L351Y、F405A、Y407V及びT350V、T366L、K392L、T394Wが挙げられる。かかる二重特異性抗体(「バイポッド」と呼ぶ)の代表例は、Nesspor,T.C.,et al.,High-Throughput Generation of Bipod(Fab×scFv)Bispecific Antibodies Exploits Differential Chain Expression and Affinity Capture,Sci Rep 10,7557(2020)、及びその中に引用されている参考文献に記載されている。
【0102】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、Fab断片の軽鎖又は重鎖と融合されたscFvを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、Fab断片の軽鎖又は重鎖のC末端と融合されたscFvを含む。二重特異性抗体フォーマットの総説については、Brinkmann,U.and Kontermann,R.E.,The making of bispecific antibodies,mAbs,Vol.9,2017,182-212参照。
【0103】
本明細書に記載されている方法により産生された例示的抗体は、米国特許出願公開第2017/0253656(A1)号(抗分化抗原群74(CD74)抗体);米国特許出願公開第2019/0233512(A1)号(抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体)及び国際公開第2019/190969号(米国特許仮出願第62/648,266号に対応)(高B細胞成熟抗原(BCMA)抗体)に記載されている。
【0104】
いくつかの態様では、前記抗体は、SEEDボディである。いくつかの実施形態では、前記SEEDボディは、抗Muc1-scFv-AGアームと対のHC及びLCを含む抗EGFR-Fab-GAアームを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、B10抗体(抗葉酸受容体α抗体)、H01抗体(抗葉酸受容体α抗体)、7209抗体(抗CD74抗体)、抗PD1抗体、抗Tim3抗体、抗HER2抗体(例えば、トラスツズマブ)、抗LAG3抗体、抗B細胞成熟抗原(抗BCMA)抗体、抗分化抗原群74(抗CD74)抗体、抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体、及びSEEDボディから成る群から選択される。抗体の非限定例を、表2に一覧する。
【表2】

【0106】
I.プロモーター
前記HCの転写を誘導するために本発明の方法において使用することができるプロモーターは、大腸菌(E.coli)に適しているいずれかの適切なプロモーター配列であってよい。かかるプロモーターは、変異、切断、及びハイブリッドプロモーターを含み得、細胞に対して内因性(天然)又は異種性(外来性)のいずれかの細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドから得られ得る。本明細書で使用されるプロモーターは、構成的プロモーターであってもよく、誘導性プロモーターであってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、前記プロモーターは、構成的プロモーターである。プロモーターは、T7と同じプロモーター強度を実質的に有するものであってよく、すなわち、プロモーターの強度は、T7プロモーターの60%以上、70%以上、80%以上である。いくつかの実施形態では、前記T7プロモーターは、配列番号19を含むか、又はから成る。いくつかの実施形態では、前記プロモーターは、T7プロモーターの強度の50%~200%、例えば、80%~150%、又は90%~140%の範囲内である強度を示し得る。大腸菌(E.coli)において前記HCの転写を誘導するために適しているプロモーターの非限定例としては、T3プロモーター、SP6プロモーター、pBad、XylA、又はPhoAプロモーターが挙げられる。
【0108】
II.ベクター
抗体のLC及びHCをコードするポリヌクレオチドを、大腸菌(E.coli)における発現のための1又は2つの複製可能なベクターに挿入することができる。多くのベクターは、この目的のために利用可能であり、当業者は、本明細書に開示されている方法において使用するための適切なベクターを容易に選択することができる。遺伝子の発現を誘導する対象とする遺伝子及びプロモーターに加えて、ベクターは、通常、次のもの:シグナル配列、複製開始点、1又は複数のマーカー遺伝子の1又は複数を含む。
【0109】
シャペロン
対象とする生物活性タンパク質の発現を向上するため、本方法及び系は、外因性タンパク質シャペロンを含む細菌抽出物を使用することができる。分子シャペロンは、非共有結合性フォールディング又はアンフォールディング及び他の巨大分子構造物のアセンブリ又は脱アセンブリを支援するタンパク質である。シャペロンの1つの主要な機能は、新たに合成されたポリペプチド鎖及びアセンブリされたサブユニットの両方が非機能性構造物へ凝集しないようにすることである。同定された第一タンパク質シャペロン、ヌクレオプラスミンは、DNAからのヌクレオソームアセンブリ及び適切にフォールディングされたヒストンを支援する。かかるアセンブリシャペロンは、オリゴマー構造物へのフォールディングされたサブユニットのアセンブリの助けとなる。シャペロンが、リボゾーム、タンパク質の細胞内輸送、並びにミスフォールディングされた又は変性されたタンパク質のタンパク質分解から押し出されるので、シャペロンは、初期タンパク質フォールディングに関係している。最も新しく合成されたタンパク質はシャペロンの非存在下でフォールディングし得るが、小数の合成されたタンパク質はシャペロンを厳密に必要とする。通常、シャペロンの内部は、疎水性であるが、表面構造物は親水性である。シャペロンが基質タンパク質のフォールディングを促進する正確な機序は分かっていないが、部分的にフォールディングされた構造物と天然型との活性化障壁を低下させることにより、シャペロンが適切なフォールディングを保証するために所望のフォールディング工程を加速すると考えられる。さらに、特定のシャペロンは、ミスフォールディング又は凝集されたタンパク質をアンフォールディングして、順次アンフォールディング及びリフォールディングして天然及び生物活性型に戻すことにより前記タンパク質を救出する。
【0110】
これらのフォールディングされている基質をカプセル化するシャペロンのサブユニットは、シャペロンとして公知である(例えば、第I群シャペロンGroEL/GroES複合体)。第II群シャペロン、例えば、TRiC(TCP-1リング複合体、TCP-1を含むシャペロンのためのCCTとも呼ぶ)は、他の基質の中でも細胞骨格タンパク質アクチン及びチューブリンをフォールディングすると考えられている。シャペロンは、積層二重リング構造を特徴とし、原核生物、真核生物の細胞基質、及びミトコンドリア中で見られる。
【0111】
他の種類のシャペロンは、ミトコンドリア中の膜輸送及び真核生物中の小胞体(ER)に関する。細菌移行特異的シャペロンは、新たに合成された前駆体ポリペプチド鎖をトランスロケーション成分(総じてアンフォールディングされた)状態に維持し、前記前駆体ポリペプチド鎖をトランスロケーター又はトランスロケーションチャネルとしてよく知られているトランスロコンに導く。原核生物及び真核生物におけるタンパク質の同様な複合体は、最も一般的に、標的シグナル配列を有する新生ポリペプチドを、細胞基質からの小胞体(ER)の内部(大槽又は内腔)空間に輸送するが、新生タンパク質を膜自体(膜タンパク質)に統合するためにも使用される複合体を表す。小胞体(ER)では、一般的シャペロン(BiP、GRP94、GRP170)、レクチン(カルネキシン及びカルレティキュリン)及びタンパク質のフォールディングを助ける非古典的分子シャペロン(HSP47及びERp29)が存在する。フォールディングシャペロンタンパク質としては、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI、DsbA、DsbC)及びペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ(PPI、FkpA、SlyD、TF)が挙げられる。
【0112】
多くのシャペロンはヒートショックなどの細胞ストレス中に極めて上方制御され、凝集する傾向はタンパク質が高温又は他の細胞ストレスにより変性されるときに増加するので、これらは、ヒートショックタンパク質(Hsp)としても分類される。タンパク質の分解を標識するユビキチンは、ヒートショックタンパク質の特徴も有する。いくつかの極めて特異的な「立体的シャペロン」は、自然にフォールディングされ得ないタンパク質に、固有の構造的コンフォメーション(立体的)情報を伝達する。シャペロンの他の機能としては、タンパク質分解における補助、細菌接着作用、及びタンパク質凝集と関連されるプリオン病に対する応答が挙げられる。
【0113】
フォルダーゼとして公知の酵素は、合成タンパク質の天然及び機能性コンフォメーションの形成に必須の共有結合の変化を触媒する。フォルダーゼの例としては、天然ジスルフィド結合の形成を触媒作用するタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、及びタンパク質の機能的フォールドに必要なシス構造への安定なトランスペプチジルプロリル結合の異性化を触媒作用するペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ(PPI)が挙げられる。天然ジスルフィドの形成及びプロリルイミド結合のシス-トランス異性化は共に共有結合性反応であり、タンパク質フォールディング過程において律速段階であることが多い。近年、シャペロンタンパク質であることが提案され、化学量論的濃度では、フォルダーゼは、いくつかの変性タンパク質の再活性化収量を増大する。シャペロンタンパク質の他の例としては、Skpなどのデアグリガーゼ、及び酸化還元タンパク質Trr1及びGlr1が挙げられる。
【0114】
いくつかの実施形態では、タンパク質シャペロンを、所望のタンパク質シャペロンの活性を増大する機能を有する別のタンパク質と同時発現することができる。例えば、Dsbタンパク質DsbA及びDsbCを、DsbB及びDsbDと同時発現することができ、それぞれ、DsbA及びDsbCを酸化及び還元する。
【0115】
細菌を、シャペロンをコードする遺伝子を用いた形質転換
本明細書に記載されている方法及び系において使用される細菌抽出物は、1又は複数の外因性タンパク質シャペロンを含むことができる。外因性タンパク質シャペロンを、抽出物に添加してもよく、無細胞抽出物を調製するために使用される細菌により発現してもよい。後者の実施形態では、外因性タンパク質シャペロンを、遺伝子の転写を開始するプロモーターと機能的に結合された外因性タンパク質シャペロンをコードする遺伝子から発現してもよい。
【0116】
外因性タンパク質シャペロンをコードする遺伝子を発現するために使用してよいプロモーターとしては、構成的プロモーター及び調節(誘導可能)プロモーターの両方が挙げられる。プロモーターは、宿主に応じて原核生物でもよく、真核生物でもよい。原核生物(バクテリオファージを含む)の中でも、本発明の実践に有用なプロモーターは、lac、T3、T7、λPr’P1’及びtrpプロモーターである。真核生物(ウイルスを含む)の中でも、本発明の実践に有用なプロモーターは、ユビキタスなプロモーター(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、中間体フィラメントプロモーター(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療用遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、因子VIII)、組織特異的プロモーター(例えば、平滑筋細胞内のアクチンプロモーター)、刺激に応答するプロモーター(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)、テトラサイクリン調節される転写調節物質、最初期のサイトメガロウイルス、レトロウイルスLTR、メタロチオネイン、SV-40、E1a、及びMLPプロモーターである。テトラサイクリン調節される転写調節物質及びCMVプロモーターは、国際公開第96/01313号、米国特許第5,168,062号及び同第5,385,839号に記載されており、この開示は参照により本明細書に援用される。
【0117】
いくつかの実施形態では、前記プロモーターは、構成的プロモーターである。細菌中の構成的プロモーターの例としては、spcリボソームタンパク質オペロンプロモーターPspc、プラスミドpBR322のβ-ラクタマーゼプロモーターPbla、ファージλのPプロモーター、プラスミドpBR322の複製制御プロモーターPRNAI及びPRNAII、rrnBリボソームRNAオペロンのP1及びP2プロモーター、tetプロモーター、並びにpACYCプロモーターが挙げられる。
【0118】
適切なシャペロン及びこれを使用及び産生する方法の例は、米国特許第10,190,145号(Yam et al.)に記載されている。
【0119】
OMPT1プロテアーゼ切断部位を含む改変タンパク質
いくつかの態様では、本明細書に記載されている無細胞タンパク質合成系は、外膜タンパク質T1(OmpT1)プロテアーゼ切断部位を含む改変タンパク質を含む。無細胞合成系においてOmpT1プロテアーゼ切断部位を含む改変タンパク質を含むことは、アンバーコドンにおける非天然アミノ酸を含む抗体の収量を増加させることができる。例えば、終結因子1(RF1)は、停止複合体の部分であり、UAG(アンバー)終止コドンを認識する。アンバーコドンのRF1認識は、nnAA取込みの部位における成熟前連鎖停止を促進することができ、抗体などの所望のタンパク質の収量を減少させる。アンバーコドンに導入されたnnAAを含むタンパク質の収量を、細菌細胞ライセート中のRF1の機能活性を低下させることにより増加することができる。したがって、いくつかの実施形態では、RF1の機能活性は、RF1へのOmpT1プロテアーゼ切断部位の導入により減少する。いくつかの実施形態では、OmpT1プロテアーゼ切断部位を含む改変タンパク質は、終結因子1(RF1)タンパク質又は終結因子2(RF2)タンパク質である。OmpT1プロテアーゼ切断部位を含む改変タンパク質の例は、米国特許出願公開第2015/0259664(A1)号及び米国特許第9,650,621号に記載されている。
【0120】
nnAAを含む抗体の収量を、1)RF1の抗体不活性化を中和すること、2)RF1のゲノムノックアウト(RF2強化株)、及び3)アフィニティクロマトグラフィーによる除去のためのタンパク質タグを含むRF1を発現するように改変された株を用いたRF1の部位特異的除去(キチン結合ドメイン及びHisタグ)によるRF1活性の減弱により増加してもよい。
【0121】
対象とするタンパク質の定量測定
本明細書に記載されている方法及び系により産生される抗体などの対象とするタンパク質の量を、当技術分野において公知のいずれかの方法を用いて決定することができる。例えば、発現される対象とするタンパク質を、ゲル電気泳動(例えば、PAGE)、ウェスタン分析又はキャピラリー電気泳動(例えば、Caliper LabChip)を用いて精製及び定量することができる。無細胞翻訳反応におけるタンパク質合成を、放射性標識されたアミノ酸、通常、35S標識メチオニン又は14C標識ロイシンの組込みによりモニターしてよい。放射性標識されたタンパク質を、分子サイズを可視化し、電気泳動後オートラジオグラフィーにより定量又は免疫沈降により単離することができる。組み換えHisタグの組込みは、Ni2+アフィニティカラムクロマトグラフィーによる精製の別の手段を提供する。発現系からのタンパク質産生を、可溶性タンパク質収量として又は酵素活性若しくは結合活性のアッセイの使用により測定することができる。
【0122】
発現されたタンパク質の生物活性及び適切なフォールディングの定量測定
本明細書に記載されている方法により産生された対象とするタンパク質の生物活性を、対象とするタンパク質に対して特異的なin vitro又はin vivoアッセイを用いて定量することができる。対象とするタンパク質の生物活性を、無細胞タンパク質合成反応混合物の単位体積当たりの生物活性として表すことができる。発現された対象とするタンパク質の適切なフォールディングを、可溶性タンパク質量に対して産生された総タンパク質量を比較することにより定量することができる。例えば、タンパク質の総量及びこの産生されたタンパク質の可溶性画分を、14Cロイシンなどの放射性標識されたアミノ酸を含む対象とするタンパク質の放射活性標識、及びTCAを用いたこの標識されたタンパク質の沈降により決定することができる。フォールディング及びアセンブリされたタンパク質の量を、正確な分子量に移動する可溶性タンパク質の画分を測定するため、還元及び非還元条件下ゲル電気泳動(PAGE)により決定することができる。非還元条件下、タンパク質凝集を、ゲルマトリックス上に捕捉することができるか、又は別々の実体として見做すことが難しいより高分子量のスメアとして移動する可能性があるが、還元条件下及びサンプルの加熱により、ジスルフィド結合を含むタンパク質は変性し、凝集物は解離し、発現されたタンパク質は単一のバンドとして移動する。適切なフォールディング及びアセンブリされた抗体タンパク質の量の決定方法を、実施例に記載する。抗体分子の機能活性を、免疫アッセイ、例えば、ELISAを用いて決定することができる。
【0123】
細菌株
本明細書に記載されている無細胞タンパク質合成系は、細菌又は細菌株から調製された無細胞抽出物を含むことができる。いくつかの実施形態では、細菌株は、大腸菌(E.coli)株である。大腸菌(E.coli)株を、当業者に公知であるいずれもの大腸菌(E.coli)から選択することができる。いくつかの実施形態では、大腸菌(E.coli)株は、A(K-12)、B、C又はD株である。
【実施例
【0124】
実施例1
この実施例は、無細胞合成反応において発現された重鎖及び前もって製造された軽鎖タンパク質を用いた異なるタンパク質の産生方法を記載する。
【0125】
物質及び方法
【0126】
前もって製造された軽鎖タンパク質(PFLC)を、当技術分野においてよく知られている標準的組み換えタンパク質発現及び精製方法を用いて大腸菌(E.coli)で発現した。タンパク質Lをベースとする市販アフィニティ樹脂を、精製方法で使用したが、他の精製方法を使用してもよい。
【0127】
XpressCF+(商標)反応を、PFLCを用いたか、又は軽鎖タンパク質のプラスミド指令された発現を用いたかにかかわらず同じ方法で行った。PFLCについては、LCプラスミドを取り除き、PFLC原液を最適化された濃度で添加して力価及び産物の品質を最大化した。通常、約1.0g/LのPFLCを、最大力価のためにXCF反応で使用した。約0.4g/L~1.5g/LのPFLC濃度は、良好な結果も得るが、力価の効果は、より低いPFLC濃度において最大でないかも知れない。より高濃度のPFLCでは、力価の増加は特定の点を超えて続かなかった。
【0128】
一般的なXpressCF+(商標)手順は、当技術分野において公知である(Zawada,J.F.,et al,(2011)Microscale to manufacturing scale‐up of cell‐free cytokine production-a new approach for shortening protein production development timelines.Biotechnol.Bioeng.,108:1570-1578;及びGroff,D.,et al.,(2014) Engineering toward a bacterial “endoplasmic reticulum” for the rapid expression of immunoglobulin proteins,mAbs,6:3,671-678参照)。
【0129】
前に記載されているXpressCF+(商標)手順を、追加のエネルギー源、アミノ酸、ヌクレオチド、及びXpressRNAPを供給する発現過程の間に栄養フィードを添加することにより改善した。このフィードの添加は、産物の力価を増加させた。
【0130】
結果
【0131】
SP8893(抗BCMA抗体)。
【0132】
抗BCMA抗体を、PFLCを用いて3反応器フォーマットで発現した:フィーディング並びにpH及び溶存酸素(DO)の制御を有する2バイオリアクター(7L及び0.2L反応体積)、並びにフィーディングもPHとDO制御もないFlowerPlate(登録商標)(FP)振とうプレート。比較のため、0.2Lバイオリアクター及び軽鎖タンパク質のプラスミド指令された同時発現(LC pDNA)を有するFPフォーマットで、追加の反応を行った。抗BCMA抗体の力価は、LC pDNAと比較してPFLCを用いる場合、0.2Lバイオリアクターで約43%増加した。7Lバイオリアクターの力価は、0.2Lバイオリアクターと本質的に同じであり、これは、反応条件及びPFLCの力価効果はスケーラブルであったことを実証している。1mL「FP」FlowerPlate系は、フィーディングもpH制御も有しないので、力価はバイオリアクターより通常低い。たとえそうであっても、FPは、プラスミドベースの系(LC pDNA)に対してPFLCによりかなり力価の改善を示す。LC pDNA系は、この実験では、7Lバイオリアクターにおいて運転しなかった。この実験では、PFLCを0.6g/Lで使用した。この力価を、PhyTip(登録商標)カラム(PhyNexus,Inc.)を用いて測定した。結果を図1に示す。
【0133】
結果は、反応が軽鎖タンパク質を発現したプラスミドと比較して前もって製造された軽鎖タンパク質を含んだ場合に、より高い力価の抗BCMA抗体を得た。
【0134】
PFLCを用いた力価の増加における可変性は異なる実験条件下で観察されたが、上記実験両方とも、軽鎖タンパク質をプラスミドから発現した反応と比較して、PFLCを用いた抗BCMA抗体の力価の増加を実証している。
【0135】
SP8166(抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体)。
【0136】
PFLC濃度の効果を、別の抗体産物、SP8166(抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体)に関して、フィーディング並びにpH及びDO制御も有する0.2Lバイオリアクターで検査した。結果を図3に示す。
【0137】
結果
図2に示されているように、抗FOLR1抗体の力価は、約1g/LのPFLCにおいて最大までより高いPFLC濃度と共に増加した。この実験(図2中、0g/L PFLC)では、LC pDNA系の力価と比較して、1.0g/L~1.2g/LのPFLCを用いた場合、力価はほとんど2倍であった。この実験では、2つの方法により力価を測定した:PhyTip(登録商標)カラム(PhyNexus,Inc.)及びタンパク質AベースのHPLC法(ProA HPLC)。両方法は、PFLCを用いた力価において同様な傾向を示す。
【0138】
PFLCを用いた抗FOLR1抗体(SP8166)に関して得られた力価は、0.2L~24Lバイオリアクターで同等の結果を示した(図3参照)。LC pDNA系での力価の増加は、0.2Lバイオリアクターにおいて約16%であった。LC pDNA系は、この実験では、24Lバイオリアクターにおいて運転せず、PFLCの濃度は、0.48g/Lであった。24Lバイオリアクターにおいてより高いPFLC濃度を使用した場合、PFLC対LC pDNAを含む反応における力価の更により大きい増加が期待されるはずである(力価に対するより高いPFLC濃度の影響に関して図2参照)。
【0139】
図4は、HPLCにより得られた抗FOLR1抗体力価データを示す。
【0140】
図5は、2つの異なる濃度のHC pDNAプラスミド(3mg/L及び6mg/L)及びPFLC(0.5g/L及び0.75g/L)と共に様々な量のXtractCFを用いた抗FOLR1抗体滴定データを示す。コントロールは、重鎖及び軽鎖発現プラスミド(3mg/L総プラスミド、PFLCなし)を用いた37.5%のXtractCFであった。
【0141】
図5の結果は、XtractCFが抗FOLR1抗体の用量依存的増加を示すこと、及びプラスミドから重鎖及び軽鎖両方を発現するより、PFLCを用いて力価が実質的により高いことを実証している。
【0142】
SP7219(抗CD74抗体)
【0143】
図6に示されているように、PFLCは、0.2L及び5mLバイオリアクターにおいて約80%抗CD74抗体の力価を増加させた。PFLC反応は、1g/L PFLC及び6mg/L重鎖プラスミドを使用した。LC pDNA反応は、重鎖及び軽鎖両方をコードする3mg/Lのプラスミドを使用した。力価は、この抗体に関して1mL FlowerPlateフォーマットにおいて約50%増加した。図6のデータは、反応器に供給しないバッチXCFからである。
【0144】
図7に示されているように、PFLCを用いるXpressCF+(商標)は、軽鎖をコードするプラスミドDNAを含むXpressCF+(商標)抽出物と比較して、抗CD74抗体の力価を増加させた。PFLC反応は、1.25g/L PFLC及び3.75mg/L重鎖プラスミドを使用した。LC pDNA反応は、合計5mg/Lのプラスミド(重鎖及び軽鎖プラスミドを合わせて;0.71mg/L LCプラスミド及び4.29mg/L HCプラスミド)を使用した。
【0145】
まとめると、この実験で得られたデータは、HCをコードする発現プラスミド及び反応物に添加された前もって製造されたLCを含む反応物は、HC及びLC両方をコードする発現プラスミドを含む反応物と比較して、より高い力価の抗体を産生したことを示している。
【0146】
実施例2
この実施例は、HC及びLC両方のための発現プラスミドを含む反応物と比較して、IgG発現は、精製PFLC及びPFLCを含む細胞ライセート両方を用いて増加したことを実証する。
【0147】
トラスツズマブLCをコードするプラスミドで形質転換された株SBDG419の細胞ライセートを、16.67%(重量/重量)の濃度においてバッファS30-5(5mMトリス・HCl pH8.2、1mM酢酸マグネシウム及び250mM酢酸カリウム)中で作製した。PFLCライセート試薬(4% 体積/体積)、精製PFLC試薬(0.5g/L)又はHC及びLCの同時発現のいずれかを用いたトラスツズマブIgGの発現を、C14ロイシン組込みにより検出する無細胞反応と比較した。標準的CF反応物に、2%(体積/体積)L-[14C(U)]-ロイシン(Perkin Elmer)を補充し、合成されたタンパク質と対応する酸地位高可能な画分におけるカウント数と、前記反応物における総カウント数を比較して、シンチレーション測定により力価を算出した(Zawada et al.,2011参照)。96ウェルプレートにおいて100μL規模で反応を行った。
【0148】
図8は、精製PFLC試薬及び粗PFLCライセート試薬を用いた発現と、HC/LC同時発現を比較して、C14ロイシン組込みにより測定されたトラスツズマブIgGの相対的発現を示す。力価の同様な増加を、精製PFLC試薬及び粗PFLC試薬両方において観察する。
【0149】
この実施例で得られたデータは、HC及びLC両方のための発現プラスミドを含む反応物と比較して、IgG発現は、精製PFLC又はPFLCを含む細胞ライセートのいずれかを用いて増加したことを実証している。
【0150】
実施例3
この実施例は、二重特異的SEEDボディの収量は、LCをコードする発現プラスミドを含む反応物と比較して、精製PFLCを含む反応物において増加したことを実証する。
【0151】
3鎖二重特異性抗体フォーマットへのPFLCストラテジーの適用性を実証するために、抗Muc1-scFv-AGアーム(SP9203)と対となるHC及びLCから成る抗EGFR-Fab-GAから成るSEEDボディフレームワークをベースとする二重特異性抗体を、小規模C14無細胞反応において発現した(Davis,J.H.,Aperlo,C.,Li,Y.,Kurosawa,E.,Lan,Y.,Lo,K.-M.,and Huston,J.S.(2010).SEEDbodies:fusion proteins based on strand-exchange engineered domain(SEED)CH3 heterodimers in an Fc analogue platform for asymmetric binders or immunofusions and bispecific antibodies.Protein Eng.Des.Sel.23,195-202参照)。3鎖同時発現反応物は、3μg/mLの総プラスミド濃度においてHC-GA、LC及びscFv-AGをコードするプラスミドを含まれていた。PFLC試薬反応物は、3μg/mLの総プラスミド濃度のHC-GA及びscFv-AGプラスミドと共に0.5mg/mLの精製PFLC試薬を含まれていた。96ウェルプレートにおいて100μL規模のタンパク質小規模C14タンパク質発現により、力価を測定した。標準的CF反応物に、2%(体積/体積)L-[14C(U)]-ロイシン(Perkin Elmer)を補充し、合成されたタンパク質と対応する酸地位高可能な画分におけるカウント数と、前記反応物における総カウント数を比較して、シンチレーション測定により力価を算出する(Zawada,J.F.,Yin,G.,Steiner,A.R.,Yang,J.,Naresh,A.,Roy,S.M.,Gold,D.S.,Heinsohn,H.G.,and Murray,C.J.(2011).Microscale to manufacturing scale-up of cell-free cytokine production--a new approach for shortening protein production development timelines.Biotechnol.Bioeng.108,1570-1578参照)。
図9は、プラスミドから発現されたLCを含む反応物と比較して、SEEDボディFab/scFv二重特異性抗体の収量は、精製PFLC試薬を含む反応において増加したことを示す。
【0152】
この実施例で得られたデータは、二重特異的SEEDボディの収量は、LCをコードする発現プラスミドを含む反応物と比較して、精製PFLCを含む反応物において増加したことを実証している。
【0153】
実施例4
この実施例は、無細胞合成反応物で発現された重鎖及び前もって製造された軽鎖(PFLC)を用いた抗BCMA抗体の産生方法を例証する。
【0154】
方法:
【0155】
4mlバッチ反応物及び標準的無細胞フィード(初期バッチ体積の25%を添加)を含むマイクロ24バイオリアクター(PALL(登録商標)Corp.のMicro-24 MicroReactor System)で反応を行った。溶存酸素(DO)及びpHを、それぞれ、20%及び6.95に制御した。14時間目に、DO及びpHを、それぞれ、80%及び8.0に調整した。バイオリアクター温度を25℃に維持した。
【0156】
抽出物は、DASbox発酵運転から作製されたSBDG381抽出物を含んでいた。重鎖プラスミド反応物濃度は、1.5mg/L、2.15mg/L及び2.8mg/Lであった。(2つのプラスミド系HC運転濃度は、2.25mg/Lであった)。PreFab軽鎖(PFLC)濃度は、0.5g/L、0.875g/L及び1.25g/Lであった。PhyTipロードは、150μLであった。
【0157】
結果
【0158】
抗BCMA抗体の力価は、反応物に添加されたHC発現プラスミド及びPFLCの濃度に対する、用量依存性関係で増加した。図10は、PFLC及びHC両方の濃度が増加した場合に、最も高い抗BCMA抗体力価(1.2g/L以上)を得た、すなわち、それぞれ、1.25g/L及び2.8mg/L。0.7g/L未満までの著しい力価減少は、PFLC及びHCの減少により同時に観察された、すなわち、それぞれ、0.5g/L及び1.5mg/L。この実験に関して、コントロール運転(重鎖及び軽鎖の2プラスミド系)発現力価は、0.615±0.011g/L(HC濃度2.25mg/L;LC濃度2.75mg/L)。抗BCMA抗体の許容可能な収量を、0.75g/L~0.9g/Lの最小PFLC濃度及び2.3mg/L~2.8mg/Lの重鎖プラスミド濃度で得た。
【0159】
この実験で示されたデータは、抗BCMA抗体の力価は、反応物に添加されたHC発現プラスミド及びPFLCの濃度に対する用量依存性関係で増加したことを実証している。
【0160】
実施例5
この実施例は、無細胞合成反応物で発現された重鎖及び前もって製造された軽鎖(PFLC)を用いた抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体の産生方法を例証する。
【0161】
方法:
【0162】
4mlバッチ反応物及び標準的無細胞フィード(初期バッチ体積の25%を添加)を含むマイクロ24バイオリアクター(PALL(登録商標)Corp.のMicro-24 MicroReactor System)(xCF190626IU)で反応を行った。溶存酸素(DO)及びpHを、それぞれ、20%及び6.95に制御した。14時間目に、DO及びpHを、それぞれ、80%及び8.0に調整した。バイオリアクター温度を25℃に維持した。
【0163】
抽出物は、SBDG381抽出物を含んでいた。重鎖プラスミド反応物濃度は、0.7mg/L、1.1mg/L及び1.5mg/Lであった。(2つのプラスミド系HC運転濃度は、1.08mg/Lであった)。PreFab軽鎖(PFLC)濃度は、0.5g/L、0.875g/L及び1.25g/Lであった。PhyTipロードは、150μLであった。
【0164】
結果
【0165】
抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体の力価は、反応物に添加されたHC発現プラスミド及びPFLCの濃度に対する、用量依存性関係で増加した。図11は、PFLC及びHC両方が増加した場合に、抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体の最も高い力価(1.1g/L以上)を得た、すなわち、それぞれ、1.25g/L及び1.5mg/L。著しい力価減少(0.7g/L未満)は、PFLC及びHCの減少により同時に観察された、すなわち、それぞれ、0.5g/L及び0.7mg/L。この実験に関して、プラスミド系コントロール運転はなかった。抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体の許容可能な収量を、0.9g/L~1.0g/Lの最小PFLC濃度及び1.5mg/L~2.0mg/Lの重鎖プラスミド濃度で得た。HCプラスミド濃度が1.5mg/L超(2.0mg/L及び2.5mg/Lまで)増加し、PFLC濃度が1.25g/L(データ示さず)であった場合、抗体力価の更なる増加は観察されなかった。
【0166】
この実験で示されたこのデータは、抗葉酸受容体α(FOLR1)抗体の力価は、反応物に添加されたHC発現プラスミド及びPFLCの濃度に対する用量依存性関係で増加したことを示している。
【0167】
実施例6
この実施例は、無細胞合成反応物で発現された重鎖及び前もって製造された軽鎖(PFLC)を用いた抗CD74抗体の産生方法を例証する。
【0168】
方法:
【0169】
4mlバッチ反応物及び標準的無細胞フィード(初期バッチ体積の25%を添加)を含むマイクロ24バイオリアクター(PALL(登録商標)Corp.のMicro-24 MicroReactor System)(xCF190702IU)で反応を行った。溶存酸素(DO)及びpHを、それぞれ、20%及び7.2に制御した。14時間目に、DO及びpHを、それぞれ、80%及び8.0に調整した。バイオリアクター温度を28℃に維持した。
【0170】
抽出物は、SBDG381抽出物を含んでいた。重鎖プラスミド反応物濃度は、3.5mg/L、4.5mg/L及び5.5mg/Lであった。(2つのプラスミド系HC運転濃度は、4.286mg/Lであった)。PreFab軽鎖(PFLC)濃度は、0.6g/L、0.95g/L及び1.30g/Lであった。PhyTipロードは、150μLであり、プレートリーダーロードは、50μLであった。
【0171】
結果
【0172】
図12は、抗CD74抗体の最高発現を、HC発現プラスミド濃度を3.5mg/Lまで減少し、PFLCを1.3g/Lまで増加することにより得た。重鎖プラスミドを4.5mg/L超の濃度まで増加することは、より高いPFLC濃度(0.9g/L~1.3g/L)において抗体力価を減少させる傾向であった。抗CD74抗体の許容可能な収量を、0.8g/L~0.9g/Lの最小PFLC濃度及び3.5mg/L~3.8mg/LのHCプラスミド濃度で得た。この実験では、2プラスミドコントロール系は含まれなかった。
【0173】
上記実施例は、HCをコードする発現プラスミド及び反応物に添加された前もって製造されたLCを含む反応物は、HC及びLC両方をコードする発現プラスミドを含む反応物と比較して、より高い力価の抗体を産生したことを実証している。
【0174】
本明細書に記載されている実施例及び実施形態は例証する目的のためであり、その観点から様々な修正又は変更は当業者に示唆され、本願の趣旨及び範囲並びに付属のクレームの範囲内に含まれるものとする。本明細書に引用されている全ての出版物、配列アクセッション番号、特許、及び特許出願は、全ての目的のためその全文を参照することにより本明細書に援用される。
例示的配列
IgG HC及びLCのタンパク質配列
は、NNAAの部位を示す
WT B10 HC (配列番号1)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNTTTKSIHWVRQAPGKGLEWVGEIYPRDGITDYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGWHWRSGYSYYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0175】
WT B10 LC or H01 LC (配列番号2)
MDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0176】
B10 F404TAG HC (配列番号3)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNTTTKSIHWVRQAPGKGLEWVGEIYPRDGITDYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGWHWRSGYSYYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0177】
B10 Y180TAG HC (配列番号4)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNTTTKSIHWVRQAPGKGLEWVGEIYPRDGITDYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGWHWRSGYSYYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0178】
B10 K42TAG LC (配列番号5)
MDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0179】
B10 Y180TAG F404TAG HC (配列番号6)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNTTTKSIHWVRQAPGKGLEWVGEIYPRDGITDYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGWHWRSGYSYYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0180】
B10 241TAG HC (配列番号7)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNTTTKSIHWVRQAPGKGLEWVGEIYPRDGITDYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGWHWRSGYSYYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0181】
H01 Y180TAG F404TAG HC (配列番号8)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIRTQSIHWVRQAPGKGLEWIGDIFPIDGITDYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSWSWPSGMDYYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0182】
7219 LC (配列番号9)
MDIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGIGSWLAWYQQKPGKAPKLLIYAADRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYHTYPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0183】
7219 F404TAG HC (配列番号10)
MQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFNFSDYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSISYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGTVEHGAVYGTDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0184】
αPD1 HC (配列番号11)
MEVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFDSYGISWVRQAPGQGLEWMGWISAYNGNTNYAQKLQGRVTMTTDTSTNTAYMELRSLRSDDTAVYYCARDVDYGTGSGYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCEVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0185】
αPD1 LC (配列番号12)
MSYELTQPPSVSVSPGQTARITCSGDALPKQYAYWYQQKPGQAPVMVIYKDTERPSGIPERFSGSSSGTKVTLTISGVQAEDEADYYCQSADNSITYRVFGGGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0186】
αTim3 HC (配列番号13)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIDRYYIHWVRQAPGKGLEWVAGITPVRGYTEYADSVKDRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGYVYRMWDSYDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCEVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0187】
αTim3 LC (配列番号14)
MDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0188】
αLAG3 HC (配列番号15)
MQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSYKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREEAPENWDYALDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCEVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0189】
αLAG3 LC (配列番号16)
MEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGRSPFSFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0190】
H01 HC (配列番号17)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIRTQSIHWVRQAPGKGLEWIGDIFPIDGITDYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSWSWPSGMDYYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0191】
7219 HC (配列番号18)
MQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFNFSDYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSISYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGTVEHGAVYGTDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0192】
T7プロモーター(配列番号19)
TAATACGACTCACTATAGGG
【0193】
トラスツズマブHC(配列番号20)
MEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0194】
重鎖のリボソーム結合配列(配列番号21):
AXGAGXT(XはA又はGであり、及びXはA又はGである)
【0195】
軽鎖のリボソーム結合配列(配列番号22):
AXAXAT(XはG又はAであり、XはG又はAであり、及びXはG又はTである)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2023544254000001.app
【国際調査報告】