(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ビニル部分を有するポリ-3-ヒドロキシアルカノエート及びその生産方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/06 20060101AFI20231016BHJP
C12P 7/62 20220101ALI20231016BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20231016BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20231016BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20231016BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20231016BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
C08G63/06
C12P7/62
C08G63/78
C12N15/54 ZNA
C12N15/60 ZBP
C12N1/15
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516840
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 IB2021000690
(87)【国際公開番号】W WO2022074456
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523091626
【氏名又は名称】ポリファーム カナダ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】POLYFERM CANADA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ラムゼイ, ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ラムゼイ, ジュリアナ
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス‐フローレス, アラセリ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4B064AD83
4B064CA02
4B064CA19
4B064CB24
4B064CC24
4B064CD07
4B064CD09
4B064CE03
4B064DA01
4B065AA26Y
4B065AA41X
4B065AA44Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB07
4B065BB10
4B065BC01
4B065CA12
4B065CA44
4J029AA07
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC02
4J029AE06
4J029EA02
4J029EA05
4J029GA51
4J029HA05
4J029HB07
4J200AA02
4J200AA13
4J200BA03
4J200BA06
4J200BA12
4J200DA22
4J200EA01
(57)【要約】
短鎖長(scl)サブユニットと中鎖長(mcl)サブユニットの両方を含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)コポリマーを生産する方法であって、mclサブユニットの一部が反応性ビニル基を持つ、方法が提供される。この方法は、(i)特定のクラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードするPHAシンターゼ(phaC)遺伝子と、(ii)特定の(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子とを含む細胞を用意するステップと、アルケン酸を含む増殖培地中で前記細胞を培養するステップとを含む。反応性ビニル基を持つサブユニットを有するscl-mcl PHAは、例えば、生理活性分子の共有結合など、様々な用途において有用であることが期待されている。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.85.0~99.5mol%の1つ又は複数の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~5mol%の1つ又は複数の中鎖長3-ヒドロキシアルケノエートサブユニット
とを含むポリエステルコポリマーであって、
前記中鎖長3-ヒドロキシアルケノエートサブユニットが側鎖にアルケン部分を含む、ポリエステルコポリマー。
【請求項2】
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含むポリエステルコポリマー。
【請求項3】
前記アルケン部分が末端アルケン部分である、請求項1又は2に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項4】
前記飽和短鎖長ポリヒドロキシアルカノエートサブユニットが飽和短鎖長3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットである、前記請求項のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項5】
前記飽和短鎖長3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットが3-ヒドロキシブチレートサブユニットである、前記請求項のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項6】
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット
とを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項7】
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項8】
a.60.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~40.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、請求項2に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項9】
a.70.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~30.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、請求項2に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項10】
a.80.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~20.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、請求項2に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項11】
a.90.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~10.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、請求項2に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項12】
a.95.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~5.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、請求項2に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマーを生産する方法であって、
a.i.配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するクラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードするphaC遺伝子と、
ii.配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子
とを含む細胞を用意するステップと、
b.アルケン酸を含む増殖培地中で前記細胞を培養し、それによって前記ポリエステルコポリマーを得るステップ
とを含む、方法。
【請求項14】
前記クラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼが、配列番号1と少なくとも91%、例えば、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の配列同一性、例えば、配列番号1と少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼが、配列番号2と少なくとも91%、例えば、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の配列同一性、例えば、配列番号2と少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記phaC遺伝子が前記細胞に固有のものである、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼが、広特異性(R)特異的エノイルCoAヒドラターゼである、請求項13及び16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする前記phaJ遺伝子が、前記細胞に固有のものではない、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする前記phaJ遺伝子が、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440株由来のphaJ遺伝子である、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞がカプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)である、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞がカプリアビダス・ネカトールH16株である、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードするfadE遺伝子をさらに含む、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
アシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードする前記fadE遺伝子が、大腸菌(Escherichia coli)K12株由来のfadE遺伝子である、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、炭素源としてウンデカ-10-エン酸を使用することができる、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、唯一の炭素源としてウンデカ-10-エン酸及びフルクトースを使用することができる、請求項13~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、細胞乾燥重量で少なくとも15%の前記請求項のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー、例えば少なくとも20%の前記ポリエステルを蓄積することができる、請求項13~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、細胞乾燥重量で少なくとも30%の前記請求項のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマーを蓄積することができる、請求項13~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記増殖培地が13-酸化阻害剤を含む、請求項13~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記13-酸化防止剤がアクリル酸である、請求項13~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記アルケン酸がウンデカ-10-エン酸である、請求項13~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記phaC遺伝子が前記細胞に固有のものである、請求項13~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼが広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼである、請求項13~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする前記phaJ遺伝子が、前記細胞に固有のものではない、請求項13~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする前記phaJ遺伝子が、前記シュードモナス・プチダKT2440株由来のphaJ遺伝子である、請求項13~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞がカプリアビダス・ネカトールである、請求項13~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞がカプリアビダス・ネカトールH16株である、請求項13~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードするfadE遺伝子をさらに含む、請求項13~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記アシル-CoAデヒドロゲナーゼが、配列番号3と少なくとも91%、例えば、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の配列同一性、例えば、配列番号3と少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項13~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
アシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードする前記fadE遺伝子が、前記大腸菌K12株由来のfadE遺伝子である、請求項13~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、炭素源としてウンデカ-10-エン酸を使用することができる、請求項13~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、唯一の炭素源としてウンデカ-10-エン酸及びフルクトースを使用することができる、請求項13~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が、細胞乾燥重量で少なくとも15%の請求項1~12のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー、例えば少なくとも20%のポリエステルを蓄積することができる、請求項13~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が、細胞乾燥重量で少なくとも30%の請求項1~12のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマーを蓄積することができる、請求項13~42のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、2020年10月9日に欧州特許庁に出願された欧州仮特許出願第EP20201070.8号の優先権を主張し、その内容全体はすべての目的において参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、バイオポリマー及びその生産に関する。特に、本発明は、短鎖長及び短鎖長~中鎖長のポリ-3-ヒドロキシアルカノエート及びその微生物生産に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]ポリ-3-ヒドロキシアルカノエート(PHA)は、おそらく炭素及びエネルギーを保全する、あるいは細胞内の酸化還元状態を制御する方法として、様々な微生物によって蓄積されるポリエステルのファミリーである。PHAは、構成モノマーの長さによって下位分類される。3-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシブタン酸、及び3-ヒドロキシペンタン酸(C3~C5)のポリマーは、短鎖長(scl)PHAと呼ばれる。
【0004】
[0004]6~14個の炭素原子を有する3-ヒドロキシアルカン酸、すなわち、3-ヒドロキシヘキサン酸~3-ヒドロキシテトラデカン酸のポリマーは、中鎖長(mcl)PHAと呼ばれる。側鎖の長さは、PHAの様々な機械的、物理的、及び化学的特性を付与する。
【0005】
[0005]PHAは、動物組織内でゆっくりと分解され、酸度又は毒性代謝物が比較的少なく放出されるので、生物医学的な用途を有することが明らかにされている。これらの用途の多くは、PHAにドープされた生理活性化合物の徐放を必要とするか、又はその徐放により改善される(Zhangら 2018年)。scl-mcl PHAコポリマーは、マウスにおける全身性エリテマトーデスを処置するためのPHAナノ粒子の形成に使用されており、副作用は低減している(Huら 2020年)。用いる可能性のある別の分野は、治療薬の徐放が求められる創傷治癒においてである。Giourievaら 2019年は、PHAのドーピングを用いたそのような研究について報告している。
【0006】
[0006]B.セパシア(B.cepacia)IPT64は、無関係な炭素源由来の不飽和sclサブユニット(3-ヒドロキシ-4-ペンテノエート)を含むscl-PHAを蓄積するが、4-ペンテン酸が供給された場合、より多くのscl-PHAが生成されることが明らかにされている(de Andrade Rodriguesら 2000年)。また、ロドスピリルム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)も、4-ペンテン酸が供給された場合、3-ヒドロキシ酪酸及び3-ヒドロキシペンタン酸を含むscl-PHAコポリマーに3-ヒドロキシ-4-ペンテノエートサブユニットを蓄積することが明らかにされている(Ulmerら 1994年、Ballistreriら 1995年、Bearら 1997年)。しかし、4-ペンテン酸は高価であり、多くの又はほとんどの商業的な用途には適切ではない。さらに、短い側鎖しか生成されず、さらなる化学修飾には適さない可能性がある。また、9~12%の3-ヒドロキシ-デカ-9-エノエートを含む3-ヒドロキシブタン酸のコポリマーを蓄積することができる組換え細菌株も開示されている(中国特許出願公開第109266597号)。
【0007】
[0007]上記で概説した可能性のある用途の多くは、scl-mcl PHAをベースとしたものであり得る。したがって、反応基を持つサブユニットを含むそのようなscl-mcl PHAの利用可能性は、生理活性分子をポリマーに共有結合させることができるという理由から、非常に有用であり得る。しかし、今日まで、そのような反応基を有するscl又はscl-mcl PHAを生産する実用法は開示されていない。さらに、中国特許出願公開第109266597号の開示は、基質として9-デセノールを使用してPHAにC10不飽和サブユニットを組み込む手段のみを提供している。これらのPHAは、すべてのこうした用途に適しているというわけではなく、また9-デセノールなどの基質のコストは高いため、この方法を実施するにはかなりの費用がかかる可能性がある。さらに、中国特許出願公開第109266597号の菌株は、細胞乾燥重量(CDW)でわずかなパーセンテージのPHAしかを蓄積することができず(例えば、CDWで11.3%のPHA)、大規模生産において大きなデメリットとなり得る。中国特許出願公開第109266597の菌株は、PHAシンターゼをコードするphaC遺伝子に関して、固有のものではない。
【0008】
[0008]カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)は、以前はアルカリゲネス・ユートロフス(Alcaligenes eutrophus)を含めた多くの様々な名称で知られており、ポリ-3-ヒドロキシアルカノエート(PHA)の最も有名な産生株である。ポリ-3-ヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸(P(HB-HV))コポリマーを生産する方法が発見されるまでは(Ramsayら 1990年)、3-ヒドロキシ酪酸のホモポリマーしか合成できないと考えられていた。カプリアビダス・ネカトールは、その収率が高く、生産速度が速いことから、最初のICI P(HB-HV)生産工程に選択された。(P.A.Holmes、S.H.Collins、及びW.F.Wright、European patent69、497、1987年4月。)
【0009】
[0009]PHA合成における最終段階は、酵素のPHAシンターゼ(PhaC)によって触媒される重合段階である。粗製C.ネカトールシンターゼは、数年後にネカトールシンターゼがいくらかの3-ヒドロキシヘキサノエート(3HHx)を組み込むことができることが判明するまで(Dennisら 1998年)、C5より大きい基質は受け入れられないと考えられていた(Haywoodら 1989年)。その後、β-酸化障害された大腸菌にphaCをクローニングすることにより、カプリアビダス・ネカトールシンターゼは、HO(C8)及びHDD(C12)を含むmcl-PHAを少量蓄積することができたが、驚いたことに、オクタノエート、デカノエート及びドデカノエートを供給した場合、HD(C10)は蓄積されないことがわかった。これは、そのような作用の唯一の報告である。
【0010】
[0010]今日に至るまで、カプリアビダス・ネカトールのPHAシンターゼの特異性は、分子量の小さい基質に限定されると一般的に考えられている。例えば、Mezzollaら 2018年は、「phaC酵素を4つのクラスに分類したのは、短鎖長(scl)ポリマー又は中鎖長(mcl)ポリマーを形成する優先度による基質特異性に応じたものである:クラスI、クラスIII及びクラスIVは、プロピオネート、ブチレート、バレレート、及びヘキサノエート前駆体に応じてscl-PHAを生産する。」と述べている。カプリアビダス・ネカトールPHAシンターゼは、クラスIシンターゼである。
【0011】
[0011]また、側鎖に末端アルケン部分を含むPHAは、P.プチダ(P.putida)などのmcl-PHA産生株によってのみ蓄積されると考えられている。例えば、Mezzollaら 2018年は、「クラスIIのPHA重合酵素を持つシュードモナス属の種(Pseudomonas sp.)によって生産される、不飽和モノマー(3-ヒドロキシアルケノエート)を含むPHAも存在する。」と述べている。少量の3-ヒドロキシ-4-ペンテノエート(すなわち、scl-PHA)を重合するクラスIシンターゼの報告が1つ存在したが(de Andrade Rodriguesら 2000年)、カプリアビダス・ネカトールPHAシンターゼを使用したscl-mcl-PHAコポリマー(ここで、mclサブユニットはビニル基を含む)の生産は、報告されていない。
【0012】
[0012]したがって、scl飽和サブユニットと、反応性ビニル基を持つmclサブユニットとを有する新規のscl-mcl PHAを生産するためのより優れた方法が必要とされている。さらに、PHAが非持続性プラスチック又は環境に有害なプラスチックに置き換わるならば、より効率的な生産方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0013】
[0013]本開示は、新規PHA及びその生産方法を提供する。本発明者らは、驚いたことに、C.ネカトールの固有PHAシンターゼが、sclサブユニットとmclサブユニットの両方を重合してコポリマーを形成できることを見出した。本発明者らは、開示したPHAの生合成の成功が、広特異性(R)特異的エノイルCoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子の組み込みに依存することをさらに見出した。
【0014】
[0014]本開示の一態様は、
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含むポリエステルコポリマーを提供する。
【0015】
[0015]本開示の一態様は、
a.85.0~99.0mol%の1つ又は複数の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~5mol%の1つ又は複数の中鎖長3-ヒドロキシアルケノエートサブユニット
とを含むポリエステルコポリマーであって、
[0016]前記中鎖長3-ヒドロキシアルケノエートサブユニットが側鎖に末端アルケン部分を含む、ポリエステルコポリマーを提供する。
【0016】
[0017]本開示の一態様は、本開示のポリエステルコポリマーを生産することができる細胞であって、
a.配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するクラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードするphaC遺伝子と、
b.配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する(R)特異的エノイルCoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子
とを含む、細胞を提供する。
【0017】
[0018]本開示の最後の態様は、本明細書に開示のポリエステルコポリマーを生産する方法であって、
a.本開示に記載の細胞を用意するステップと、
b.アルケン酸を含む増殖培地中で前記細胞を培養し、それによってポリエステルコポリマーを得るステップ
とを含む、方法を提供する。
【0018】
[0019]本明細書に開示の細胞は、ポリエステルコポリマーの細胞乾燥重量(CDW)のポリエステルコポリマーパーセンテージで表される高収率のポリエステル生成物を提供する。
【0019】
[0020]mclサブユニットのビニル部分は、本開示のポリエステルコポリマーのさらなる官能基化にとって有利となり得る。本開示のコポリマーは、側鎖に末端ビニル基を有するサブユニットを0.1~20.0mol%含むので、本開示のポリエステルコポリマーは、少なくとも0.1の官能基化度が必要とされる官能基化PHAの生産に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、フェッドバッチ発酵終了時のC.ネカトールH16/pMPJAS03バイオマスから抽出されたPHAのNMR分析を示し、その組成が3HB(94.7mol%)-co-3HHx(1.5mol%)-co-3HHO(2.33mol%)-co-3HD(0.69mol%)-co-3HHp(=)(0.73mol%)であったことを示す。
【
図2】
図2は、リン酸制限ケモスタット培養(希釈率=0.14h
-1)におけるC.ネカトールH16/pMPJAS03バイオマス及びPHA生産に対するアクリル酸添加の効果を示す。
【
図3】
図3は、リン酸制限ケモスタット培養(希釈率=0.14h
-1)におけるC.ネカトールH16/pMPJAS03のscl/mcl PHA含有量に対するアクリル酸添加の効果を示す。
【
図4】
図4は、pK18プラスミド及びpBTB-3 pRangerを示す。
【
図5】
図5は、GS4560-1 pBSK遺伝子1(fadE 大腸菌)プラスミド及びGS4560-2 pBSK遺伝子2(phaJ P.プチダ)プラスミドを示す。
【
図6】
図6は、pMPJAS01プラスミド及びpMPJAS02プラスミドを示す。
【
図7】
図7は、pMPJAS03プラスミドを示す。
【
図8】
図8は、scl/mcl PHAを調製するプロセスのフローチャートを示す。(R)-3-scl-ヒドロキシアシル-CoAは、C.ネカトールのphaC遺伝子産物(PHAシンターゼ)によって受け入れられるが、野生型phaJ産物は十分な(R)-3-mcl-ヒドロキシアシル-CoAを供給することができない。野生型のphaJを(R)-3-mcl-ヒドロキシアシル-CoAを供給できるものと置き換えることによって、scl-mcl PHAを生産することができる。供給されるmcl-ヒドロキシアシル-CoAがビニル基を有する場合、ビニル基は側鎖の末端で成長するポリマーに組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[定義]
[0028]本明細書で使用される場合の略語「PHA」とは、ポリヒドロキシアルカノエート、特にポリ-3-ヒドロキシアルカノエートを意味するものとする。PHAはホモポリマー又はコポリマーのいずれかであり得る。
【0022】
[0029]本明細書では、PHAモノマー単位について以下の略語を使用する:3HB(3-ヒドロキシ酪酸)、3HHx(3-ヒドロキシヘキサン酸)、3HHO(3-ヒドロキシオクタン酸)、3HD(3-ヒドロキシデカン酸)及び3HHp(=)(3-ヒドロキシヘプテン酸)。
【0023】
[0030]本明細書で使用される場合、用語(=)は、モノマーサブユニットに関して、当該サブユニットがその側鎖に末端アルケンを含むことを意味するように使用される。
【0024】
[0031]カプリアビダス・ネカトールは、以前はラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)などの別名でも呼ばれていた。本発明は、現在カプリアビダス・ネカトールと呼ばれている細菌種に関する。
【0025】
[0032]本明細書で使用される場合、「サブユニット」とは、ポリマー骨格を構成する個別の反復分子部分を指す。本明細書では、サブユニットは、ポリマーが生成された元の非重合モノマー単位を参照することで同定することができる。例として、PHAのサブユニットは、3-ヒドロキシアルカノエートサブユニット又は3-ヒドロキシアルカン酸サブユニットと呼ぶことができる。
【0026】
[0033]PHA中のサブユニットの含有量に関する「mol%」という用語は、PHA中のサブユニットの総量と比較した前記サブユニットの量を指す。例えば、10個のサブユニットごとに1個がA型である場合のPHAは、10mol%のAを含むと考えられる。
【0027】
[0034]本明細書で使用される場合、「短鎖長」ヒドロキシアルカノエートサブユニットという用語は、3~5個の炭素原子を有するヒドロキシ-アルカノエートサブユニットを指す。特定の例は、3-ヒドロキシプロパノエートサブユニット、3-ヒドロキシブタノエートサブユニット、及び3-ヒドロキシペンタン酸サブユニットである。すなわち、PHAポリマー中のsclサブユニットは側鎖を有さないか、又は側鎖が1若しくは2個の炭素原子長である。scl 3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットは、式(I)の構造:
【化1】
を有し、
[0035]式中、RはH、メチル又はエチルであり、点線はPHAの他のサブユニットへの結合点を示す。
【0028】
[0036]「scl-ヒドロキシアルケノエート」サブユニットという用語は、5個の炭素原子と、側鎖の炭素原子間に1個の炭素-炭素二重結合を有するサブユニットを指す。scl-ヒドロキシアルケノエートサブユニットの例は、3-ヒドロキシペンテノエートをベースとしたサブユニット、すなわち、式(II):
【化2】
を有するサブユニットであり、
[0037]式中、点線は、PHAの他のサブユニットへの結合点を示す。
【0029】
[0038]本明細書で使用される場合、「中鎖長」ヒドロキシアルカノエートサブユニットという用語は、6~14個の炭素原子を有するヒドロキシ-アルカノエートサブユニットを指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、この用語は、式(III)の構造:
【化3】
を有する3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットを指し、
[0039]式中、Rは2~10個の炭素原子を持つアルキル基であり、点線は、PHAの他のサブユニットへの結合点を示す。好ましくは、アルキル基は直鎖アルキル基である。
【0030】
[0040]「mcl-ヒドロキシアルケノエート」サブユニットという用語は、6~15個の炭素原子と、側鎖の炭素原子間に少なくとも1個の末端炭素-炭素二重結合を有するヒドロキシアルケノエートサブユニットを指す。mcl-ヒドロキシアルケノエートサブユニットの例は、3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートをベースとしたサブユニット、すなわち、式(IV):
【化4】
を有するサブユニットであり、
[0041]式中、点線はPHAの他のサブユニットへの結合点を示す。サブユニットの側鎖は、分岐状であっても直鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。側鎖は複数の末端二重結合を含み得るが、側鎖は、好ましくは、厳密には1個の末端二重結合を含む。
【0031】
[0042]本明細書で使用される場合の「Xは、n~mの範囲のYを含む」などの語句は、Xが少なくともn、最大mのYを含むことを指す。すなわち、この用語は、Xがmを超えるYを含まないことを示す。例えば、ポリエステル材料が0.5~5.0%の範囲でmcl PHAを含むことが記載されている場合、前記ポリエステル材料は5.0%を超えるmcl PHAを含まない。
【0032】
[0043]PHAシンターゼ及びポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼは、本明細書において交換可能に使用される。
【0033】
[0044]「細胞乾燥重量でX%のY」という語句は、本開示の細胞から得られる乾燥バイオマスが重量でX%のYを含むことを意味するものとする。
【0034】
[0045]PHAシンターゼの説明における「型」及び「クラス」という用語は同義であり、例えば、I型PHAシンターゼは、クラスI PHAシンターゼと同義である。
【0035】
[ポリ-3-ヒドロキシアルカノエート]
【0036】
[0046]本開示は、ポリエステルコポリマーに関し、特にポリ-3-ヒドロキシアルカノエートに関する。PHAポリマーは熱可塑性であり、従来の加工装置によって加工することができる。特定の組成に応じて、PHAポリマーは延性及び弾性であり得るか、又は硬性及び脆性であり得、幅広い用途が可能である。
【0037】
[0047]本開示の一実施形態は、
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、ポリエステルコポリマーを提供する。
【0038】
[0048]PHAの物理的・機械的特性は、特定のPHAサブユニットに依存し、したがって、前記サブユニットの特定の側鎖に依存する。scl-PHAは、mcl-PHA対応物と比較すると、高い結晶化度、高い融解温度、中程度のガラス転移温度を有する傾向がある。またscl-PHAは、mcl-PHAと比較すると、比較的高い引張強度及び高いヤング率を有する傾向もある。最後に、mcl-PHAは、scl-PHAと比較すると、破断で高い伸長を有する傾向がある。多くの用途において、PHAがscl-PHAの物理的・機械的特性を有し、しかも官能基化をすることができることが好ましい場合がある。これは、コポリマーに存在するscl-PHAサブユニットを主体として有することによって達成することができる。したがって、本開示の一実施形態は、
a.85.0~99.0mol%の1つ又は複数の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~5mol%の1つ又は複数の中鎖長3-ヒドロキシアルカノエートサブユニット
とを含むポリエステルコポリマーであって、
前記中鎖長3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットが側鎖にアルケン部分を含む、ポリエステルコポリマーを提供する。
【0039】
[0049]本開示の好ましい実施形態では、アルケン部分は末端アルケン部分である。
【0040】
[0050]PHAは、典型的には、3-ヒドロキシアルカン酸サブユニット又は4-ヒドロキシアルカン酸サブユニットのいずれかをベースとしている。本開示のPHAシンターゼは、好ましくは、3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットを重合する。したがって、本開示の一実施形態では、ポリエステルコポリマーは、飽和短鎖長3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットである飽和短鎖長ポリヒドロキシアルカノエートサブユニットを含む。
【0041】
[0051]3-ヒドロキシ酪酸をベースとしたPHAはコンポスト化しやすく、したがって、他の市販の熱可塑性物質と比べて注目されている。3-ヒドロキシ酪酸は、scl-PHAサブユニットである。したがって、本開示の一実施形態では、飽和短鎖長3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットは、3-ヒドロキシブチレートサブユニットである。
【0042】
[0052]本開示の文脈では、末端アルケン部分を含む側鎖がある程度の長さであることが好ましいと考えられる。これによって、末端アルケン部分がPHA骨格からある程度離され、次に、反応性部分、すなわちアルケン基がPHAの骨格から除かれるので、官能基化がより容易になり得る。約4~6個の炭素原子の長さの側鎖を有するmcl-PHAサブユニットは、このことを達成するのに特に好ましいと考えられる。したがって、本開示の一実施形態では、ポリエステルコポリマーは、3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニットを含む。本開示の特定の実施形態では、ポリエステルコポリマーは、
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット
とを含む。
【0043】
[0053]本開示の一実施形態では、ポリエステルコポリマーは、3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニットを含む。本開示の特定の実施形態では、ポリエステルコポリマーは、
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニットとを含む。
【0044】
[0054]本開示のさらなる実施形態では、ポリエステルコポリマーは、
a.60.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~40.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む。
【0045】
[0055]本開示のよりさらなる実施形態では、ポリエステルコポリマーは、
a.70.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~30.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む。
【0046】
[0056]本開示のいっそうさらなる実施形態では、ポリエステルコポリマーは、
a.80.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~20.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む。
【0047】
[0057]本開示のよりいっそうさらなる実施形態では、ポリエステルコポリマーは、
a.90.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~10.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む。
【0048】
[0058]本開示のPHAは、前記PHAを他の化合物で官能基化するのに有用であるアルケン部分を含む。これらの化合物は生理活性化合物である可能性があり、ひいては大型になり得るか、又は嵩張り得る。生理活性化合物が他の部分に接近されている場合、又は、例えばそれらの基質が生理活性化合物に適切に到達することができない場合、生理活性物質は活性の低下を示す場合がある。したがって、PHAは、生理活性化合物の結合に適した部位、すなわち末端アルケンをあまり多く含まないことが好ましく、その理由は、PHAの官能基化により、活性が最適よりも劣った生理活性物質が生成される可能性があるからである。生理活性化合物の遊離が下記に概説したような酵素を用いる切断によって達成される場合、高度のアルケン部分又は官能基化アルケン部分を有することはまた、酵素の活性も低下させ得る。したがって、本開示の好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、
a.95.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~5.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む。
【0049】
[PHAの官能基化]
[0059]ポリマー材料を含む多くの生理活性組成物、いわゆる「生理活性ポリマー」は、生理活性成分をポリマー材料とドーピングする(混合する)ことによって生理活性化される。このことは、ポリマー材料から生理活性成分が遊離する割合を制御することを困難にし得る。代わりに、生理活性成分をポリマー材料に共有結合させると、より安定的な組成物を提供することができ、生理活性成分の遊離割合は、例えば、切断可能なリンカーの切断によって、又はポリマー材料の酵素分解によって、より良好に制御され得る。本開示のPHAのビニル部分は、生理活性成分、例えば、薬物、酵素及びホルモンなどの共有結合に適切に使用することができる。生理活性成分の遊離は、PHAを切断する解重合酵素、すなわちPHAデポリメラーゼなどのエステラーゼ、又はPHAを分解し、植物組織又は動物組織で確認されている他のエステラーゼによって作用され得る。これにより、遊離は拡散ではなく共有結合の切断に依存するため、生理活性成分の遊離割合をより良好に制御することができる。或いは、生理活性成分がポリマー材料から遊離されないこと、すなわち、ポリマー材料が生理活性成分の支持体として作用することが望まれる。この場合、生理活性成分をポリマーに共有結合させ、不可逆的に結合した生理活性成分を得ることが有利である。このような材料は、生理活性成分をドープしたポリマー材料よりもより安定的であることを証明することができるが、その理由は、生理活性成分がポリマーから漏出する可能性があるからである。本開示のPHAのビニル部分は、生理活性成分の共有結合において適切に使用することができる。
【0050】
[PHAの生産用細胞]
[0060]本開示のPHAは、適切な細胞培養を使用して生産することができる。本発明者らは、本開示のscl-mcl-PHAコポリマーの生合成が、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードするphaC遺伝子と、(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子とを含む細胞によって達成され得ることを明らかにした。したがって、本開示の一実施形態は、
a.配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するクラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードするphaC遺伝子と、
b.配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子
とを含む、細胞であって、
[0061]前記細胞が本開示のポリエステルコポリマーを生産することができる、細胞を提供する。本開示のさらなる実施形態では、細胞はカプリアビダス・ネカトールである。
【0051】
[0062]本発明者らは、特定のカプリアビダス・ネカトールH16株が本開示の細胞の作製に有用であることを見出した。したがって、本開示の一実施形態では、細胞はカプリアビダス・ネカトールH16株から作製されている。
【0052】
[phaC遺伝子及びPHAシンターゼ]
[0063]scl-mcl-PHAコポリマーの生合成は、クラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードするphaC遺伝子のみを有する細胞株、特にカプリアビダス・ネカトールでは行うことができないと一般に考えられてきた。しかし、本発明者らは、カプリアビダス・ネカトールに固有のphaC遺伝子が、ビニル側鎖を有するscl-mcl-PHAコポリマーを生産することができるクラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードすることを見出した。したがって、本開示の一実施形態では、クラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードするphaC遺伝子は、カプリアビダス・ネカトールに固有のphaC遺伝子である。本開示の特定の実施形態では、phaC遺伝子は、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するクラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードする。
【0053】
[phaJ遺伝子及び(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼ]
[0064]本発明者らは、細胞が広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子を含むことが最も重要であることを見出した。(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼは、(3R)-ヒドロキシアシル-CoAから(2E)-エノイル-CoAを合成することを触媒するが、これは3-ヒドロキシアルカノエートの生合成における主要な工程である。(R)特異的エノイル-CoA水和物が短鎖長基質及び中鎖長基質の両方を受け入れ、その結果、scl-3-ヒドロキシアルカノエート、mcl-3-ヒドロキシアルカノエート、及びmcl-3-ヒドロキシアルケノエートが生成され得ることが最も重要である。したがって、本開示の一実施形態では、(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼは、広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼである。カプリアビダス・ネカトールに固有のphaJ遺伝子は、scl基質のみを重合することができる(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする。したがって、本開示の一実施形態では、広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子は、その細胞に固有のものではない。phaJ遺伝子はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、特にKT2440株に存在する遺伝子に相当し得る。したがって、本開示の一実施形態では、広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子は、シュードモナス・プチダKT2440株由来のphaJ遺伝子である。シュードモナス・プチダKT2440の(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼのコード配列は、本明細書において配列番号4として提供されている。この遺伝子によってコードされている広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼは、本明細書において配列番号2として提供されている。本開示の一実施形態では、phaJ遺伝子は、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする。
【0054】
[fadE遺伝子]
[0065]fadE遺伝子は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードしており、これは2,3-飽和アルカン酸のエノイル-CoA、すなわち(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼの基質への反応を触媒する。したがって、本開示の細胞にfadE遺伝子を組み込んで、(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼの基質を十分に供給することを確実にすることが好ましい場合がある。
【0055】
[0066]目的によっては、(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼは、fadE遺伝子産物が存在しなくても十分な基質を有している可能性があり、したがって、fadE遺伝子は、本PHAの生合成に有益であり得るが、常に必須ではない。したがって、本開示の一実施形態では、細胞は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードするfadE遺伝子を含む。本開示の特定の実施形態では、fadE遺伝子は、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードする。本開示の一実施形態では、fadE遺伝子は、配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する。本開示の好ましい実施形態では、fadE遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)K12株に固有のものである。
【0056】
[炭素源]
[0067]本開示の細胞は、炭素源としてアルケン酸を使用することができる。詳しくは、本開示の細胞は、末端アルケンを有するアルケン酸を使用することができると考えられる。アルケン酸の例は、ヘキサ-5-エン酸、ヘプタ-6-エン酸、オクタ-7-エン酸、ノナ-8-エン酸、デカ-9-エン酸、ウンデカ-10-エン酸、及び/又はドデカ-11-エン酸である。本開示の細胞は、炭素源としてウンデカ-10-エン酸を使用することが明らかにされている。ウンデカ-10-エン酸は、mcl-3-ヒドロキシアルケノエートに変換され、本開示のPHAコポリマーに組み込まれる。ウンデカ-10-エン酸は安価な試薬である。したがって、本開示の好ましい実施形態では、細胞はウンデカ-10-エン酸を使用することができる。
【0057】
[0068]本開示の細胞は、唯一の炭素源としてフルクトースを使用することができる。ウンデカ-10-エン酸は、本開示のPHAコポリマーを生産するのに望ましい。したがって、本開示の一実施形態では、細胞は、炭素源としてウンデカ-10-エン酸及びフルクトースを使用することができる。
【0058】
[13-酸化阻害]
[0069]13-酸化は、増殖及び生産培地のウンデカ-10-エン酸のmcl-3-ヒドロキシアルカノエート(C7及びC9)へのトランケーションを媒介する。したがって、ウンデカ-10-エン酸が所望の基質に変換されるように、いくらかの13-酸化が起こることが有利であり得る。しかし、13-酸化はまた、所望の基質である3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエート及び3-ヒドロキシノン-8-エノエートのさらなる変換にも作用を及ぼし、細胞に利用され得るmcl-3-ヒドロキシアルケノエート基質の量を効果的に減少させうる。本発明者らは、あるレベルの13-酸化阻害が、ウンデセン酸からの不飽和サブユニットの収率を増加させ、本開示のscl-mcl-PHAコポリマーが得られることを見出した。したがって、本開示の一実施形態では、細胞増殖培地は13-酸化阻害剤を含む。本開示の好ましい実施形態では、13-酸化阻害剤はアクリル酸である。
【0059】
[0070]13-酸化は、アルケン酸をPHAに組み込むのに適した形態に変換するのに必要であるだけでなく、前記トランケーションから生成される所望の生成物の分解にも関与するので、特定のレベルの13-酸化活性が達成されることが重要である。13-酸化活性のレベルは、アクリル酸などの13-酸化阻害剤を適切な濃度で添加することによって制御することができる。したがって、本開示の一実施形態では、増殖培地は10~100mMのアクリル酸を含む。本開示のさらなる実施形態では、増殖培地は、10~20mMのアクリル酸、例えば20~30mM、例えば30~40mM、例えば40~50mM、例えば50~60mM、例えば60~70mM、例えば70~80mM、例えば80~90mM、例えば90~100mMのアクリル酸を含む。本開示の好ましい実施形態では、増殖培地は10~40mMのアクリル酸を含む。
【0060】
[PHAコポリマーの蓄積]
[0071]本開示の細胞は、多量のPHAコポリマーを蓄積することができる。本開示の一実施形態では、細胞は、細胞乾燥重量で少なくとも15%の本開示のPHAを蓄積することができる。本開示のさらなる実施形態では、細胞は、細胞乾燥重量で少なくとも20%のPHAを蓄積することができる。本開示のよりさらなる実施形態では、細胞は、細胞乾燥重量で少なくとも25%のPHAコポリマーを蓄積することができる。いっそうのさらなる実施形態では、細胞は、細胞乾燥重量で少なくとも30%のPHAコポリマーを蓄積することができる。
【0061】
[PHAコポリマーを生産する方法]
[0072]本開示の一実施形態は、本開示のポリエステルコポリマーを生産する方法であって、
a.本明細書に開示の細胞を用意するステップと、
b.アルケン酸を含む増殖培地中で前記細胞を培養し、それによって前記ポリエステルコポリマーを得るステップ
とを含む、方法を提供する。
【0062】
[0073]本開示のさらなる実施形態では、増殖培地はフルクトースを含む。本開示の別の実施形態では、増殖培地は13-酸化阻害剤を含む。さらなる実施形態では、13-酸化阻害剤はアクリル酸である。
【0063】
[0074]本開示の一実施形態では、細胞は26.0~31.0℃で、例えば27.0~30.0℃、例えば27.5~29.5℃で発酵される。別の実施形態では、細胞は6.6~7.1、例えば6.7~7.0のpHで発酵される。一実施形態では、空気飽和は20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上で維持される。
【0064】
[0075]本開示の一実施形態では、フルクトース、並びにアルカン酸及びアルケン酸の混合物が細胞に供給される。一実施形態では、フルクトースのアルカン酸及びアルケン酸の混合物に対する比は、90:10~10:90(mol(フルクトース):mol(アルカン酸+アルケン酸))である。好ましい実施形態では、フルクトースのアルカン酸及びアルケン酸の混合物に対する比は、約70:30(mol(フルクトース):mol(アルカン酸+アルケン酸))である。
【0065】
[0076]本開示の好ましい実施形態では、アルカン酸及びアルケン酸が細胞に供給される。本開示のさらなる実施形態では、アルカン酸及びアルケン酸は、97:3~50:50(mol(アルカン酸):mol(アルケン酸))の比で細胞に供給される。さらなる実施形態では、アルカン酸のアルケン酸に対する比は、約90:10(mol(アルカン酸):mol(アルケン酸))である。本開示の特定の実施形態では、アルカン酸はデカン酸である。別の実施形態では、アルケン酸はデカ-9-エン酸である。
【0066】
[0077]本開示の一実施形態では、細胞は、「13-酸化阻害」の項目で概説されている濃度の13-酸化阻害剤の存在下で発酵される。
【実施例】
【0067】
[実施例1:組換え株の作製及び培養]
[0078]プラスミドpMPJAS03は、広宿主域のp-BTB3(Lynchら、2006年)及びpK18(Pridmore 1987年)プラスミドを主鎖として使用して構築した。両プラスミドをHindIIIで消化し、融合させて、pMPJAS01を形成させた。fadEEcを保有するプラスミドGS45640-1 pBSK遺伝子1(GenBank Accession NC_000913)をHindIIIで直鎖状化し、Klenowで平滑末端化した。プラスミドGS45640-1遺伝子2(GenBank Accession NC_002947)由来の遺伝子phaJPpをEcoRV/XhoIで遊離させ、Klenowで平滑末端化した。プラスミドpMPJAS02は、直鎖状化プラスミドGS45640-1 pBSK遺伝子1とphaJ1Pp断片とを融合することによって得られた。pMPJAS02に保有されているfadEEc-phaJ1Pp断片をAccI/HindIIIで遊離させ、Klenowで平滑末端化し、pMPJAS01に挿入してプラスミドpMPJAS03を作製した。このプラスミドをエレクトロポレーションによりC.ネカトールH16に導入し、組換えC.ネカトールH16/pMPJAS03を作製した。この組換えプラスミドは、カナマイシン耐性特性及びクロラムフェニコール耐性特性、並びにアラビノースプロモーター(araC-PBAD)下のfadEEc-phaJ1Pp DNA断片を保有していた。pMPJAS03プラスミド構築の模式図を
図7に示す。
図4~
図6は、pMPJAS03を構築するために使用される残りのプラスミドの模式図を示す。プラスミド構築は、ゲル電気泳動スクリーニングで補助した。
【0068】
[0079]組換えプラスミドpMPJAS03は、カナマイシン耐性遺伝子及びクロラムフェニコール耐性遺伝子を保有し、アラビノースプロモーター(araC-PBAD)(Araceliら 2020年)下で大腸菌株K12遺伝子由来のfadE及びP.プチダ株KT2440遺伝子由来のphaJ1を共発現するように設計された。
【0069】
[0080]発酵は、5.0Lの攪拌槽バイオリアクター(Infor HT社、ボットミンゲン、スイス)で実施し、作業容量は3.0Lとした。温度は30.0℃±1.0に設定し、pHはNH4OH 28%(w/v)溶液又はKOH 2Mを添加することにより6.85±0.05に自動制御した。溶存酸素は、Ingoldポーラログラフィック電極(Mettler Toledo,Hamilton社、米国)を用いてモニターし、空気飽和の30%以上に維持した。純酸素を含む空気の添加を制御することにより、通気を2.0L/分に維持した。攪拌は、700rpmの速度で、2つの6枚羽根のRushtonインペラーによって行った。CO2は、赤外線CO2モニター(Guardian Plus,Topac社、ヒンガン、マサチューセッツ州)を用いて出口ガス流で測定した。LabVIEW6.1(National Instruments社、オースティン、テキサス州)を使用して、CO2生成(CPR g/L h)を記録し、貯留槽の質量に基づき、蠕動型ポンプを用いてフルクトース及びキャノーラ油/DAの供給を制御した。炭素源は、キャノーラ油/DA混合物用のものと濃縮フルクトース溶液用の別のものの別々の貯留槽から供給した。
【0070】
[0081]300mlの接種液を500mLの3個の振盪用フラスコに分配し、30℃、200rpmでインキュベートした。24時間後、接種液を無菌的にバイオリアクターに移した。発酵は3段階で実施した。
【0071】
[0082]第1段階:初期培養をバッチモードで行い、2.0g/Lのフルクトースを唯一の炭素源として使用した。
【0072】
[0083]第2段階:指数関数的な細胞増殖。フルクトース及びキャノーラ油(9:1)を比増殖速度0.14h-1で供給した。PHは、NH4OH 28%(w/v)を添加することによって制御した。
【0073】
[0084]第3段階:NH4制限によるPHA合成。一定供給は、総基質(キャノーラ油/DA)を2.5g/L hに設定した。キャノーラ油/DAを混合する前に、15%(v/v)の酢酸を添加することによってデカン酸を室温に可溶化した。araC-PBADプロモーターの制御下のプラスミドpMPJAS03中のfadE遺伝子及びphaJ1遺伝子を、0.1%(v/v)のアラビノースを添加することにより、この段階開始時に構成的に発現させた。NH4濃度は、必要に応じて硫酸アンモニウムの水溶液を添加することによって培養物中約0.4g/Lに維持した。
【0074】
[実施例2:フルクトース及びデカン酸を同時供給する連続培養]
【0075】
[0085]接種培地は、1リットル当たり、9.0gのフルクトース、3.7gのNH4SO4、5.66gのNaH2PO4・12H2O、2.70gのKH2PO4・7H2O、0.4gのMgSO4・7H2O、及び1.0の栄養ブロスを含んでいた。連続培養無機培地は、1リットル当たり、1.8gのNH4SO4、5.66gのNaH2PO4・12H2O、2.70gのKH2PO4.7H2O、0.4gのMgSO4・7H2Oと、2.0mlの微量元素溶液(10gのFeSO4・7H2O、3.0gのCaCl2・2H2O、0.3gのH3BO3、0.2gのCoCl2・6H2O、2.2gのZnSO4・7H2O、0.5gのMnSO2・4H2O、0.15gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのNiCl2・6H2O及び1.0gのCuSO4・5H2O)を含んでいた。アラビノース0.1%、抗生物質、及びアクリル酸を無機培地に補充した。培養は、フルクトース/デカン酸(予め15%(v/v)の酢酸を用いて室温で可溶化したもの)を同時供給して実施した。
【0076】
[0086]すべての発酵試験は、28.5℃±1.0で、pHを2M KOH溶液を用いてpH6.85±0.05に自動的に制御した、作業容量1.5Lの2.0L撹拌槽バイオリアクター(Bioflo IIc社、ニューブランズウィック)で実施した。溶存酸素は、Ingoldポーラログラフィック電極(Mettler Toledo,Hamilton社、米国)でモニターし、0.5L/分の通気及び700rpmの攪拌速度を維持することにより、30%以上の空気飽和に維持した。CO2は出口ガス流で測定し、赤外線CO2モニター(Guardian Plus,Topac社、ヒンガン、マサチューセッツ州)を用いて測定した。LabVIEW 6.1(National Instruments社、オースティン、テキサス州)を使用して、CO2生成(CPRg/L h)を記録し、貯留槽の質量に基づき、蠕動型ポンプを用いてフルクトース及び脂肪酸の供給を自動制御した。
【0077】
[0087]150mlの接種液を500mLの振盪フラスコで30℃及び200rpmにて培養した。24時間後、接種液を無菌的にバイオリアクターに移した。
【0078】
[0088]まず、10g/Lのフルクトース及び4.2g/LのNH4SO4を補充した上記の無機塩培地を使用して、バイオリアクターをバッチモードで操作した。フルクトースが枯渇した後、システムを連続培養に移行し、0.14h-1の一定の希釈率とした。無機流量を0.21L/hに設定し、総基質割合を5.7g/Lに維持し、フルクトースとデカン酸のモル比をそれぞれ0.69/0.31とした。デカン酸には、すべての場合において10%のウンデシレン酸を補充した。培養物の容量は、定常状態に達するまで1.5Lで維持した。DO及びCPRがプラトーになった時点で定常状態と考えられ、最低5回の作業量に対して維持した。報告したデータは、各定常状態において3時間間隔で採取した少なくとも3つの試料の平均である。
【0079】
[実施例3:PHAの抽出及び分析]
材料及び方法
バイオマス及び栄養分析
[0089]20mLの培養試料を2連で採取し、6000xgで15分間遠心分離した。得られたバイオマスペレットを2回蒸留水で洗浄し、凍結乾燥して細胞乾燥重量(CDW)として測定した総バイオマスを評価した。上清は、栄養消費分析が実施されるまで-20℃で保存した。フルクトースは、3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)法により比色定量した。アンモニウムは、フェノール・次亜塩素酸塩アッセイに従って分析した。リン酸塩は、ホスホモリブデートのモリブデンブルーへの還元により測定した。総残留キャノーラ油/ウンデシレン酸デカン酸/ウンデシレン酸濃度は、メタノリシス後、内部標準として安息香酸を使用するガスクロマトグラフィー(GC)分析により決定した。
【0080】
ガスクロマトグラフィー(GC)によるPHA含有量分析
[0090]脂肪酸メチルエステルの評価は、以下の方法に従って実施した:凍結乾燥バイオマス50mgを、クロロホルム2mL並びに14%(v/v)硫酸及び内部標準としての0.2%(v/v)安息香酸を含むメタノール1mLと混合した。反応は、気密性スクリューキャップ付きのホウケイ酸ガラスチューブで行った。試薬と凍結乾燥バイオマスをチューブ内で十分に混合し、100±2℃の水浴内に4時間置いた。チューブを室温まで冷却し、2mLの蒸留水を加え、得られた有機相を後でGC分析用に静かに収集した。1μLの試料を、水素炎イオン化検出器(FID)を搭載したVarian CP3900ガスクロマトグラフに注入した。インジェクター及び検出器の温度は、それぞれ、250℃及び170℃であった。PHA含有量(重量%)は、総PHA濃度のバイオマスに対する割合のパーセンテージとして決定した。次いで、残留バイオマスを細胞濃度(CDW)とPHA含有量の差として推定した。
【0081】
PHAの抽出及び精製
[0091]凍結乾燥バイオマスをクロロホルムで浸漬し、室温で一晩、一定の攪拌下でインキュベートした。PHAを、濾過と10容量の氷冷メタノールを用いた滴下添加による沈殿の後にクロロホルム溶液から回収した。PHAをクロロホルムに再懸濁し、メタノールで2回沈殿させた。2回目の沈殿後に、残留溶媒を蒸発させることによって除去した。
【0082】
NMRによるPHA組成
[0092]PHAの化学構造を1H-NMR及び13C-NMR分析により調べた。約20mgのPHAを1mLの重水素化クロロホルム(CDCl3)に溶解し、Bruker Avance II 400分光計(Bruker社、ビラリカ、マサチューセッツ州)を使用し、さらなるNMRスペクトルを記録した。1H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルを、室温にてそれぞれ400MHz及び100MHzで得た。共鳴信号などの化学シフトは、CDCl3(内部標準)の1H NMR:7.26ppm及び13C NMR:77.42の顕著な信号と比較してppmで示した。
【0083】
結果
[0093]C.ネカトールH16/pMPJAS03のフェドバッチ発酵により、49重量%のPHAを含む59.7g/Lの乾燥バイオマスが生成された。第3段階(PHA蓄積段階)において、90重量%のキャノーラ油及び10重量%のウンデシレン酸を供給したところ、NMRによって明らかなように(
図1)、3HB(94.73mol%)-co-3HHx(1.51mol%)-co-3HHO(2.33mol%)-co-3HD(0.69mol%)-co-3HHp(=)(0.73mol%)の最終ポリマー組成が得られた。これらの結果は、C.ネカトールでphaJを発現させると、固有のシンターゼがC10程度の大きさの基質を重合し、C7程度の大きさのサブユニットにビニル基を組み込むことができることを示している。また結果からは、C11基質のウンデシレン酸が、ポリマーに組み込まれる前に13-酸化により4炭素でトランケートされることが明らかであった。0.73mol%のこのサブユニットにビニル基を持つPHAは、生理活性PHAを必要とする多くの用途に適していることが評価される。
【0084】
[実施例4:PHAの生産における13-酸化の阻害 - ケモスタット]
[0094]アクリル酸などの13-酸化防止剤の添加により、ビニルサブユニットの含有量が増加した。供給物中のアクリル酸を増やすとバイオマス生産は抑制されたが、PHAの蓄積は、試験した最高レベルの30mM以上になるまで影響を受けなかった(
図2)。アクリル酸を添加することにより、mcl-PHAサブユニット含有量は、何も供給されなかった場合の約3mol%から、40mMのアクリル酸供給時の10mol%を超えるまで増加し、ビニルサブユニット含有量は、0mol%から1.7mol%に増加した(表1)。より高いアクリル酸濃度では、いくらかの3-ヒドロキシノネノエートが蓄積された。約17mol%のウンデシレン酸は不飽和サブユニットに変換された。ウンデシレン酸の他の炭素源に対する割合が増加すると、ビニルサブユニット含有量がさらに増加されるようである。ペンテン酸とは異なり、ウンデシレン酸(ヒマシ油由来)は安価であり、大量に入手することができる。この研究は、実用的で経済的な、ビニルサブユニットを有するscl-mcl PHAを生産する方法を明らかにしている。
【0085】
[0095]表1:供給物中のアクリル酸濃度の関数としてのPHAコポリマー組成。PHA含有量及び組成を3連で測定した。平均値及び標準偏差を示す。
a:3HB:3-ヒドロキシブチレート;3HV:3-ヒドロキシバレレート;3HHx:3-ヒドロキシヘキサノエート;3HO:3-ヒドロキシオクタノエート;3HD:3-ヒドロキシデカノエート;3HHp(=):3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエート;3HNo(=):3-ヒドロキシノン-8-エノエート
【表1】
【0086】
[項目]
本発明は、以下の項目によって部分的に定義される。
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、ポリエステルコポリマー。
a.85.0~99.5mol%の1つ又は複数の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~5mol%の1つ又は複数の中鎖長3-ヒドロキシアルケノエートサブユニット
とを含むポリエステルコポリマーであって、
前記中鎖長3-ヒドロキシアルケノエートサブユニットが前記側鎖に末端アルケン部分を含む、ポリエステルコポリマー。
前記アルケン部分が末端アルケン部分である、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
前記飽和短鎖長ポリヒドロキシアルカノエートサブユニットが飽和短鎖長3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットである、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
前記飽和短鎖長3-ヒドロキシアルカノエートサブユニットが3-ヒドロキシブチレートサブユニットである、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット
とを含む、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
a.飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
a.60.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~40.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
a.70.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~30.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
a.80.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~20.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
a.90.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~10.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
a.95.0~99.5mol%の飽和短鎖長ヒドロキシアルカノエートサブユニットと、
b.0.5~5.0mol%の3-ヒドロキシヘプタ-6-エノエートサブユニット及び/又は3-ヒドロキシノン-8-エノエートサブユニット
とを含む、前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー。
前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマーを生産する方法であって、
a.i.配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するクラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼをコードするphaC遺伝子と、
ii.配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードするphaJ遺伝子
とを含む細胞を用意するステップと、
b.アルケン酸を含む増殖培地中で前記細胞を培養し、それによって前記ポリエステルコポリマーを得るステップ
とを含む、方法。
14.前記クラスIポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼが、配列番号1と少なくとも91%、例えば、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の配列同一性、例えば、配列番号1と少なくとも99%の配列同一性を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
15.前記(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼが、配列番号2と少なくとも91%、例えば、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の配列同一性、例えば、配列番号2と少なくとも99%の配列同一性を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
16.前記phaC遺伝子が前記細胞に固有のものである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
17.前記(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼが、広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
18.広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする前記phaJ遺伝子が、前記細胞に固有のものではない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
19.広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする前記phaJ遺伝子が、シュードモナス・プチダKT2440株由来のphaJ遺伝子である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
20.前記細胞がカプリアビダス・ネカトールである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
21.前記細胞がカプリアビダス・ネカトールH16株である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
22.前記細胞が、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードするfadE遺伝子をさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
23.アシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードする前記fadE遺伝子が、大腸菌K12株由来のfadE遺伝子である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
24.前記細胞が、炭素源としてウンデカ-10-エン酸を使用することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
25.前記細胞が、唯一の炭素源としてウンデカ-10-エン酸及びフルクトースを使用することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
26.前記細胞が、細胞乾燥重量で少なくとも15%の前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー、例えば少なくとも20%の前記ポリエステルを蓄積することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
27.前記細胞が、細胞乾燥重量で少なくとも30%の前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマーを蓄積することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
28.前記増殖培地が13-酸化阻害剤を含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
29.前記13-酸化防止剤がアクリル酸である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
30.前記アルケン酸がウンデカ-10-エン酸である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
31.前記phaC遺伝子が前記細胞に固有のものである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
32.前記(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼが広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
33.広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする前記phaJ遺伝子が、前記細胞に固有のものではない、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
34.広特異性(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼをコードする前記phaJ遺伝子が、前記シュードモナス・プチダKT2440株由来のphaJ遺伝子である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
35.前記細胞がカプリアビダス・ネカトールである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
36.前記細胞がカプリアビダス・ネカトールH16株である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
37.前記細胞が、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードするfadE遺伝子をさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
38.前記アシル-CoAデヒドロゲナーゼが、配列番号3と少なくとも91%、例えば、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の配列同一性、例えば、配列番号3と少なくとも99%の配列同一性を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
39.アシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードする前記fadE遺伝子が、前記大腸菌K12株由来のfadE遺伝子である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
40.前記細胞が、炭素源としてウンデカ-10-エン酸を使用することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
41.前記細胞が、唯一の炭素源としてウンデカ-10-エン酸及びフルクトースを使用することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
42.前記細胞が、細胞乾燥重量で少なくとも15%の前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマー、例えば少なくとも20%のポリエステルを蓄積することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
43.前記細胞が、細胞乾燥重量で少なくとも30%の前記項目のいずれか一項に記載のポリエステルコポリマーを蓄積することができる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
[配列]
配列番号1
[0096]ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼ(PHAシンターゼ):
MATGKGAAASTQEGKSQPFKVTPGPFDPATWLEWSRQWQGTEGNGHAAASGIPGLDALAGVKIAPAQLGDIQQRYMKDFSALWQAMAEGKAEATGPLHDRRFAGDAWRTNLPYRFAAAFYLLNARALTELADAVEADAKTRQRIRFAISQWVDAMSPANFLATNPEAQRLLIESGGESLRAGVRNMMEDLTRGKISQTDESAFEVGRNVAVTEGAVVFENEYFQLLQYKPLTDKVHARPLLMVPPCINKYYILDLQPESSLVRHVVEQGHTVFLVSWRNPDASMAGSTWDDYIEHAAIRAIEVARDISGQDKINVLGFCVGGTIVSTALAVLAARGEHPAASVTLLTTLLDFADTGILDVFVDEGHVQLREATLGGGAGAPCALLRGLELANTFSFLRPNDLVWNYVVDNYLKGNTPVPFDLLFWNGDATNLPGPWYCWYLRHTYLQNELKVPGKLTVCGVPVDLASIDVPTYIYGSREDHIVPWTAAYASTALLANKLRFVLGASGHIAGVINPPAKNKRSHWTNDALPESPQQWLAGAIEHHGSWWPDWTAWLAGQAGAKRAAPANYGNARYRAIEPAPGRYVKAKA
配列番号2
[0097](R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼ:
MSQVTNTPYEALEVGQKAEYKKSVEERDIQLFAAMSGDHNPVHLDAEFAAKSMFRERIAHGMFSGALISAAVACTLPGPGTIYLGQQMSFQKPVKIGDTLTVRLEILEKLPKFKVRIATNVYNQNDELVVAGEAEILAPRKQQTVELVSPPNFVAS
配列番号3
[0098]アシルコエンザイムAデヒドロゲナーゼ:
MMILSILATVVLLGALFYHRVSLFISSLILLAWTAALGVAGLWSAWVLVPLAIILVPFNFAPMRKSMISAPVFRGFRKVMPPMSRTEKEAIDAGTTWWEGDLFQGKPDWKKLHNYPQPRLTAEEQAFLDGPVEEACRMANDFQITHELADLPPELWAYLKEHRFFAMIIKKEYGGLEFSAYAQSRVLQKLSGVSGILAITVGVPNSLGPGELLQHYGTDEQKDHYLPRLARGQEIPCFALTSPEAGSDAGAIPDTGIVCMGEWQGQQVLGMRLTWNKRYITLAPIATVLGLAFKLSDPEKLLGGAEDLGITCALIPTTTPGVEIGRRHFPLNVPFQNGPTRGKDVFVPIDYIIGGPKMAGQGWRMLVECLSVGRGITLPSNSTGGVKSVALATGAYAHIRRQFKISIGKMEGIEEPLARIAGNAYVMDAAASLITYGIMLGEKPAVLSAIVKYHCTHRGQQSIIDAMDITGGKGIMLGQSNFLARAYQGAPIAITVEGANILTRSMMIFGQGAIRCHPYVLEEMEAAKNNDVNAFDKLLFKHIGHVGSNKVRSFWLGLTRGLTSSTPTGDATKRYYQHLNRLSANLALLSDVSMAVLGGSLKRRERISARLGDILSQLYLASAVLKRYDDEGRNEADLPLVHWGVQDALYQAEQAMDDLLQNFPNRVVAGLLNVVIFPTGRHYLAPSDKLDHKVAKILQVPNATRSRIGRGQYLTPSEHNPVGLLEEALVDVIAADPIHQRICKELGKNLPFTRLDELAHNALVKGLIDKDEAAILVKAEESRLRSINVDDFDPEELATKPVKLPEKVRKVEAA
配列番号4
[0099]P.プチダKT2440由来のPhaJ遺伝子のコード配列:
ATGAGCCAGGTGACCAACACCCCGTACGAGGCCCTGGAGGTGGGCCAGAAGGCCGAGTACAAGAAGAGCGTGGAGGAGCGCGACATCCAGCTGTTCGCCGCCATGAGCGGCGACCACAACCCGGTGCACCTGGACGCCGAGTTCGCCGCCAAGAGCATGTTCGCGAGCGCATCGCCCACGGCATGTTCAGCGGCGCCCTGATCAGCGCCGCCGTGGCCTGCACCCTGCCGGGCCCGGGCACCATCTACCTGGGCCAGCAGATGAGCTTCCAGAAGCCGGTGAAGATCGGCGACACCCTGACCGTGCGCCTGGAGATCCTGGAGAAGCTGCCGAAGTTCAAGGTGCGCATCGCCACCAACGTGTACAACCAGAACGACGAGCTGGTGGTGGCCGGCGAGGCCGAGATCCTGGCCCCGCGCAAGCAGCAGACCGTGGAGCTGGTGAGCCCGCCGAACTTCGTGGCCAGCTGA
配列番号5
[0100]大腸菌K12由来のFadE遺伝子のコード配列:
ATGATGATCCTGAGCATCCTGGCCACCGTGGTGCTGCTGGGCGCCCTGTTCTACCACCGCGTGAGCCTGTTCATCAGCAGCCTGATCCTGCTGGCCTGGACCGCCGCCCTGGGCGTGGCCGGCCTGTGGAGCGCCTGGGTGCTGGTGCCGCTGGCCATCATCCTGGTGCCGTTCAACTTCGCCCCGATGCGCAAGAGCATGATCAGCGCCCCGGTGTTCCGCGGCTTCCGCAAGGTGATGCCGCCGATGAGCCGCACCGAGAAGGAGGCCATCGACGCCGGCACCACCTGGTGGGAGGGCGACCTGTTCCAGGGCAAGCCGGACTGGAAGAAGCTGCACAACTACCCGCAGCCGCGCCTGACCGCCGAGGAGCAGGCCTTCCTGGACGGCCCGGTGGAGGAGGCCTGCCGCATGGCCAACGACTTCCAGATCACCCACGAGCTGGCCGACCTGCCGCCGGAGCTGTGGGCCTACCTGAAGGAGCACCGCTTCTTCGCCATGATCATCAAGAAGGAGTACGGCGGCCTGGAGTTCAGCGCCTACGCCCAGAGCCGCGTGCTGCAGAAGCTGAGCGGCGTGAGCGGCATCCTGGCCATCACCGTGGGCGTGCCGAACAGCCTGGGCCCGGGCGAGCTGCTGCAGCACTACGGCACCGACGAGCAGAAGGACCACTACCTGCCGCGCCTGGCCCGCGGCCAGGAGATCCCGTGCTTCGCCCTGACCAGCCCGGAGGCCGGCAGCGACGCCGGCGCCATCCCGGACACCGGCATCGTGTGCATGGGCGAGTGGCAGGGCCAGCAGGTGCTGGGCATGCGCCTGACCTGGAACAAGCGCTACATCACCCTGGCCCCGATCGCCACCGTGCTGGGCCTGGCCTTCAAGCTGAGCGACCCGGAGAAGCTGCTGGGCGGCGCCGAGGACCTGGGCATCACCTGCGCCCTGATCCCGACCACCACCCCGGGCGTGGAGATCGGCCGCCGCCACTTCCCGCTGAACGTGCCGTTCCAGAACGGCCCGACCCGCGGCAAGGACGTGTTCGTGCCGATCGACTACATCATCGGCGGCCCGAAGATGGCCGGCCAGGGCTGGCGCATGCTGGTGGAGTGCCTGAGCGTGGGCCGCGGCATCACCCTGCCGAGCAACAGCACCGGCGGCGTGAAGAGCGTGGCCCTGGCCACCGGCGCCTACGCCCACATCCGCCGCCAGTTCAAGATCAGCATCGGCAAGATGGAGGGCATCGAGGAGCCGCTGGCCCGCATCGCCGGCAACGCCTACGTGATGGACGCCGCCGCCAGCCTGATCACCTACGGCATCATGCTGGGCGAGAAGCCGGCCGTGCTGAGCGCCATCGTGAAGTACCACTGCACCCACCGCGGCCAGCAGAGCATCATCGACGCCATGGACATCACCGGCGGCAAGGGCATCATGCTGGGCCAGAGCAACTTCCTGGCCCGCGCCTACCAGGGCGCCCCGATCGCCATCACCGTGGAGGGCGCCAACATCCTGACCCGCAGCATGATGATCTTCGGCCAGGGCGCCATCCGCTGCCACCCGTACGTGCTGGAGGAGATGGAGGCCGCCAAGAACAACGACGTGAACGCCTTCGACAAGCTGCTGTTCAAGCACATCGGCCACGTGGGCAGCAACAAGGTGCGCAGCTTCTGGCTGGGCCTGACCCGCGGCCTGACCAGCAGCACCCCGACCGGCGACGCCACCAAGCGCTACTACCAGCACCTGAACCGCCTGAGCGCCAACCTGGCCCTGCTGAGCGACGTGAGCATGGCCGTGCTGGGCGGCAGCCTGAAGCGCCGCGAGCGCATCAGCGCCCGCCTGGGCGACATCCTGAGCCAGCTGTACCTGGCCAGCGCCGTGCTGAAGCGCTACGACGACGAGGGCCGCAACGAGGCCGACCTGCCGCTGGTGCACTGGGGCGTGCAGGACGCCCTGTACCAGGCCGAGCAGGCCATGGACGACCTGCTGCAGAACTTCCCGAACCGCGTGGTGGCCGGCCTGCTGAACGTGGTGATCTTCCCGACCGGCCGCCACTACCTGGCCCCGAGCGACAAGCTGGACCACAAGGTGGCCAAGATCCTGCAGGTGCCGAACGCCACCCGCAGCCGCATCGGCCGCGGCCAGTACCTGACCCCGAGCGAGCACAACCCGGTGGGCCTGCTGGAGGAGGCCCTGGTGGACGTGATCGCCGCCGACCCGATCCACCAGCGCATCTGCAAGGAGCTGGGCAAGAACCTGCCGTTCACCCGCCTGGACGAGCTGGCCCACAACGCCCTGGTGAAGGGCCTGATCGACAAGGACGAGGCCGCCATCCTGGTGAAGGCCGAGGAGAGCCGCCTGCGCAGCATCAACGTGGACGACTTCGACCCGGAGGAGCTGGCCACCAAGCCGGTGAAGCTGCCGGAGAAGGTGCGCAAGGTGGAGGCCGCCTAA
【0088】
[参考文献]
de Andrade Rodrigues MF, Vicente EJ, SteinbuchelA. Studies on polyhydroxyalkanoate (PHA) accumulation in a PHA synthaseI-negative mutant of Burkholderia cepacia generated by homogenotization. FEMSmicrobiology letters. 2000 Dec 1;193(1):179-85.
Araceli, F.S., Arthi, R., Del Rocio,L.C.M., Berenice, V.P. and Fermin, P.G., 2020. Biosynthesis ofpolyhydroxyalkanoates from vegetable oil under the co-expression of fadE andphaJ genes in Cupriavidus necator. International Journal of BiologicalMacromolecules.
Ballistreri A, Montaudo G, Impallomeni G,Lenz RW, Ulmer HW, Fuller RC. Synthesis and characterization of polyestersproduced by Rhodospirillum rubrum from pentenoic acid. Macromolecules. 1995May;28(10):3664-71.
Bear MM, Leboucher-Durand MA, Langlois V,Lenz RW, Goodwin S, Guerin P. Bacterial poly-3-hydroxyalkenoates with epoxygroups in the side chains. Reactive and Functional Polymers. 1997 Sep1;34(1):65-77.
Dennis, D., McCoy, M., Stangl, A.,Valentin, H.E. and Wu, Z., 1998. Formation of poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate) by PHA synthase from Ralstoniaeutropha. Journal of biotechnology, 64(2-3), pp.177-186.
Giourieva VS, Papi RM, Pantazaki AA.Polyhydroxyalkanoates Applications in Antimicrobial Agents Delivery and WoundHealing. In Biotechnological Applications of Polyhydroxyalkanoates 2019 (pp.49-76). Springer, Singapore.
Haywood, G.W., Anderson, A.J., Williams,D.R., Dawes, E.A. and Ewing, D.F., 1991. Accumulation of a poly(hydroxyalkanoate) copolymer containing primarily 3-hydroxyvalerate from simplecarbohydrate substrates by Rhodococcus sp. NCIMB 40126. International Journalof Biological Macromolecules, 13(2), pp.83-88.
Hu J, Wang M, Xiao X, Zhang B, Xie Q, Xu X,Li S, Zheng Z, Wei D, Zhang X. A novel long-acting azathioprinepolyhydroxyalkanoate nanoparticle enhances treatment efficacy for systemiclupus erythematosus with reduced side effects. Nanoscale.2020;12(19):10799-808.
Lynch MD, Gill RT, Broad host range vectorsfor stable genomic library construction. Biotechnol. Bioeng. 2006, 94, 151-158.
Mezzolla, V., D’Urso, O.F. andPoltronieri, P., 2018. Role of PhaC Type I and Type II enzymes during PHAbiosynthesis. Polymers, 10(8), p.910.
Pridmore RD, New and versatile cloningvectors with kanamycin-resistance marker. Gene, 1987, 56, 309-312.
Ramsay, B.A., Lomaliza, K., Chavarie, C.,Dube, B., Bataille, P. and Ramsay, J.A., 1990. Production ofpoly-(beta-hydroxybutyric-co-beta-hydroxyvaleric) acids. Applied andEnvironmental Microbiology, 56(7), pp.2093-2098.
Ulmer HW, Gross RA, Posada M, Weisbach P,Fuller RC, Lenz RW. Bacterial production of poly (. beta.-hydroxyalkanoates)containing unsaturated repeating units by Rhodospirillum rubrum.Macromolecules. 1994 Mar;27(7):1675-9.
Zhang J, Shishatskaya EI, Volova TG, daSilva LF, Chen GQ. Polyhydroxyalkanoates (PHA) for therapeutic applications.Materials Science and Engineering: C. 2018 May 1;86:144-50.
【配列表】
【国際調査報告】