(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】電磁ばね圧ブレーキ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16D 59/02 20060101AFI20231016BHJP
F16D 55/06 20060101ALI20231016BHJP
F16D 27/112 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F16D59/02
F16D55/06 A
F16D27/112 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518063
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021077143
(87)【国際公開番号】W WO2022073881
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】102020006060.9
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521138707
【氏名又は名称】シーエイチアール. マイヤー ゲーエムベーハー プラス コンパニー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】CHR. MAYR GMBH + CO. KG
【住所又は居所原語表記】Eichenstr. 1 87665 Mauerstetten (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヘクト
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA78
3J058AA88
3J058AB33
3J058BA46
3J058BA61
3J058CB15
3J058CB20
3J058CC07
3J058CC13
3J058CC72
3J058CC77
3J058DD01
3J058DD15
(57)【要約】
本発明は、安価に製造でき、最適化された出力密度および長い耐用年数を有する電磁ばね圧力ブレーキ(BR)に関する。これは、コイル支持体(1)とフランジプレート(9)が短い半径方向延長部を有する狭いスペーシングストリップ(2)によって互いに接続されることで達成され、スペーシングストリップ(2)は同様に回転可能に固定され、アーマチュアディスク(4)の軸方向に移動可能なガイド。本発明はさらに、コイル支持体(1)、離間ストリップ(2)、およびフランジプレート(9)の間に可能な限り最小のエアギャップ(L)が生成されるように、これらの間に接続が生成される製造方法に関する。コイルサポート(1)とアーマチュアディスク(4)は、スプリング圧力ブレーキ(BR)がプロセスに対して信頼できる方法で閉じられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械壁、モータのハウジング又はモータのハウジングの類似物に取り付けるための、回転軸(A)を有する電磁解放式のばね圧ブレーキ(BR)であって、
前記ばね圧ブレーキ(BR)は、コイルホルダ(1)、少なくとも一つのアーマチュアディスク(4)、少なくとも一つのブレーキロータ(5)、及びフランジ板(9)からなり、
前記コイルホルダ(1)は、1つ又は複数の電磁コイル(3)と、1つ又は複数の圧縮ばね(11)とを有し、
前記コイルホルダ(1)から前記フランジ板(9)までの部品が、前述された順序において前記回転軸(A)に沿って順に配置されており、
前記コイルホルダ(1)は、極面から始まるその外周の領域において、前記コイルホルダ(1)に強固に接続される、軸方向に延びる少なくとも3つのスペーサストリップ(2)を有し、
ガイド領域(2.1)を有する前記スペーサストリップ(2)のそれぞれが、前記少なくとも1つのアーマチュアディスク(4)の対応するアーマチュアキー溝(4.1)を介して、前記少なくとも1つのアーマチュアディスク(4)の回転可能に固定され、且つ軸方向に可動な取り付けを保証しており、
前記スペーサストリップ(2)のそれぞれが、前記ガイド領域(2.1)に軸方向に隣接するセンタリング領域(2.2)を有し、接続箇所(12)を介して前記フランジ板(9)に強固に接続されており、
前記ブレーキロータ(5)は、少なくとも1つの前記圧縮ばね(11)の力によってブレーキ効果を達成するために、前記少なくとも1つのアーマチュアディスク(4)と前記フランジ板(9)との間に挟み込まれており、
前記少なくとも1つのアーマチュアディスク(4)は、少なくとも1つの前記電磁コイル(3)に通電することによってブレーキ効果を終結するために、前記少なくとも1つの圧縮ばね(11)の力に抗して前記コイルホルダ(1)の方へ引っ張られる、電磁解放式ばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項2】
前記コイルホルダ(1)は、前記スペーサストリップ(2)と共に一体形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項3】
前記スペーサストリップ(2)は、空間的に最適化された小さな半径方向の延びを有する、前記センタリング領域(2.2)及び前記ガイド領域(2.1)の均一な断面を、その軸方向の延びにわたって有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項4】
前記スペーサストリップ(2)は、その軸方向の延びにわたって、前記ガイド領域(2.1)及び前記センタリング領域(2.2)の互いに異なる断面を有しており、
前記ガイド領域(2.1)は、前記センタリング領域(2.2)よりも大きな、半径方向の延びを有しており、
前記ガイド領域(2.1)は、前記アーマチュアキー溝(4.1)に面するその領域において丸みを帯びた又は角張った形状を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項5】
前記スペーサストリップ(2)は、その軸方向の延びにわたって、少なくとも前記センタリング領域(2.2)の内側において、回転軸(A)を有するシリンダ表面の部分に対応する断面を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項6】
前記コイルホルダ(1)及び前記スペーサストリップ(2)が個別の部品として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項7】
前記スペーサストリップ(2)は、その軸方向の延びにわたって、ストリップシャフト(2.3)、前記センタリング領域(2.2)、及び前記ガイド領域(2.1)の領域において、均一な断面を有することを特徴とする、請求項6に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項8】
前記スペーサストリップ(2)は、その軸方向の延びにわたって、ストリップシャフト(2.3)の半径方向の延びが前記ガイド領域(2.1)及び/又は前記センタリング領域(2.2)の半径方向の延びよりも大きいという、断面を有していることを特徴とする、請求項6に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項9】
前記スペーサストリップ(2)は、その軸方向の延びにわたって、ストリップシャフト(2.3)の半径方向の延びが前記ガイド領域(2.1)及び/又は前記センタリング領域(2.2)の半径方向の延びよりも小さいという、断面を有することを特徴とする、請求項6に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項10】
前記スペーサストリップ(2)は、その軸方向の延びにわたって、長方形の断面を有し、前記コイルホルダ(1)の受け溝(1.4)が、溝底部と溝側面との間にほぼ直角を有することを特徴とする、請求項6~9のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項11】
前記スペーサストリップ(2)は、回転軸(A)に関して、好ましくは互いに等しい角度間隔において前記コイルホルダ(1)上に配置されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項12】
前記フランジ板(9)が滑らかな円形リングの形状を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項13】
前記フランジ板(9)が円形リングの形状を有し、
前記センタリング領域(2.2)に向かって半径方向に向けられた、前記フランジ板(9)の接触領域が、それぞれ平坦な形状を形成していることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項14】
前記スペーサストリップ(2)の前記センタリング領域(2.2)が、横方向に配置された相互に対向する逃げ面(2.4)を有し、これによって、前記センタリング領域(2.2)は前記ガイド領域(2.1)よりも周方向において小さな幅を有していることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)。
【請求項15】
電磁解放式ばね圧ブレーキ(BR)の製造方法であって、
前記ばね圧ブレーキ(BR)は、コイルホルダ(1)、少なくとも1つのアーマチュアディスク(4)、少なくとも1つのブレーキロータ(5)及びフランジ板(9)からなり、
前記コイルホルダ(1)は、1つ又は複数の電磁コイル(3)と、1つ又は複数の圧縮ばね(11)とを有しており、
前記コイルホルダ(1)から前記フランジ板(9)までの部品が、前述された順序において回転軸(A)に沿って順に配置されており、
前記コイルホルダ(1)は、極面から始まるその外周の領域において、軸方向に延びる少なくとも3つのスペーサストリップ(2)を有し、そのスペーサストリップは、ガイド領域(2.1)を介して少なくとも1つのアーマチュアディスク(4)の回転可能に固定され、且つ軸方向に可動な取り付けを保証し、センタリング領域(2.2)及び接続箇所(12)を介してフランジ板(9)への強固な接続を可能にするものにおいて、
前記ばね圧ブレーキ(BR)の個々の部品を、前記コイルホルダ(1)から前記フランジ板(9)まで、前述された順序において、治具板(V)と少なくとも1つのプレススタンプ(S)とからなる装置に挿入し、
前記プレススタンプ(S)によって、前記ばね圧ブレーキ(BR)の全ての部品を互いに直接接触するように治具板(V)に対して押圧し、その後、プレススタンプを、所望の空隙(L)の量だけ制御されて戻し、このポジションにおいて前記スペーサストリップ(2)を前記フランジ板(9)又は前記コイルホルダ(1)に接続するか、又は、
前記プレススタンプ(S)によって、スペーサフィルム(D)が間に挿入された前記ばね圧ブレーキ(BR)のすべての部品を互いに直接接触するように前記治具板(V)に対して押圧し、その後、前記スペーサストリップ(2)を前記フランジ板(9)又は前記コイルホルダ(1)に接続し、最後に前記スペーサフィルム(D)を前記ばね圧ブレーキ(BR)から取り外す、電磁解放式ばね圧ブレーキ(BR)の製造方法。
【請求項16】
前記製造方法の開始前に、前記スペーサストリップ(2)は、前記コイルホルダ(1)と強固に接続されたプレハブユニットを形成し、
前記製造方法の間において、前記スペーサストリップ(2)と前記フランジ板(9)との間の接続を前記装置内において作成することを特徴とする、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記製造方法の開始前に、前記スペーサストリップ(2)は、前記フランジ板(9)と強固に接続されたプレハブユニットを形成し、
前記製造方法の間において、前記スペーサストリップ(2)と前記コイルホルダ(1)との間の接続を前記装置内において作成することを特徴とする、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記スペーサストリップ(2)と前記コイルホルダ(1)との間、及び/又は、前記スペーサストリップ(2)と前記フランジ板(9)との間の接続を、接着、はんだ付け、ねじ止め又は溶接の方法によって作成することを特徴とする、請求項16又は17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記スペーサストリップ(2)と前記コイルホルダ(1)との間、及び/又は、前記スペーサストリップ(2)と前記フランジ板(9)との間の接続を、有利なレーザ溶接法によって作成することを特徴とする、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ばね圧ブレーキ(BR)、及び、特に前記コイルホルダ(1)が、丸い形の外形輪郭、好ましくは円形の外形輪郭を有することを特徴とする、ばね圧ブレーキ(BR)及び請求項1~19のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)の製造方法。
【請求項21】
前記ばね圧ブレーキ(BR)、及び、特に前記コイルホルダ(1)が、矩形の外形輪郭、好ましくは正方形の外形輪郭を有することを特徴とする、ばね圧ブレーキ(BR)及び請求項1~19のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)の製造方法。
【請求項22】
前記ばね圧ブレーキ(BR)、及び、特に前記コイルホルダ(1)が、多角形の、又は多面体の外形輪郭を有することを特徴とする、ばね圧ブレーキ(BR)及び請求項1~19のいずれか1項に記載のばね圧ブレーキ(BR)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ブレーキ、特に、好ましくは円形の構造形態の、電磁ばね圧ブレーキに関し、その電磁ばね圧ブレーキは、少なくとも1つの力を及ぼす要素、例えば少なくとも1つの圧縮ばねを有するコイルホルダと、少なくとも1つの電磁コイルと、少なくとも1つのアーマチュアディスクと、好ましい実施形態においては両平面上に摩擦ライニングを有する少なくとも1つのブレーキロータと、反摩擦面とからなる。本発明は、また、その電磁ばね圧ブレーキ(以下、通常単に、ばね圧ブレーキという)の製造方法に関する。
【0002】
本発明による、ばね圧ブレーキは、性能及び耐用年数を最適化した構造形態によって特徴付けられ、ばね圧ブレーキの出力密度を更に高める特別な低コストの製造方法を用いて提供される。
【背景技術】
【0003】
従来技術から、電磁ばね圧ブレーキは、コイルホルダがスペーサブッシュを介してフランジ板の形態の反摩擦面にねじ止めされているものが知られている。このような、ばね圧ブレーキは、
図1に示されている。その際、スペーサブッシュは、コイルホルダをフランジ板に接続することに加えて、軸方向に可動なアーマチュアディスクの回転可能な固定部(Drehfixierung)として機能し、また、少なくとも1つのブレーキロータが、半径方向において、スペーサブッシュの内部に配置されている。それによって、ブレーキロータの外径、したがって有効摩擦半径が制限されている。また、構造的に可能な摩擦ライニングの体積に依存する、摩擦ライニングの可能な摩耗予備量が、それによって制限され、これは、ばね圧ブレーキの耐用年数に負の影響を及ぼす。
【0004】
ブレーキが閉じられたときにコイルホルダとアーマチュアディスクとの間に生じる、ばね圧ブレーキのいわゆる空隙は、そのような構成の場合、部品の寸法によって規定され、且つ、それによって、複数の構成部品の公差の合計から生じる、対応した大きな公差を免れない。規定された最小空隙を確保するためには、大きな公称寸法を有する空隙が提供されねばならず、それによって、その空隙は、アーマチュアディスクとコイルホルダとからなる、電磁石の磁気回路の力を制限する。それによって、使用する圧縮ばねの可能な力も制限され、また、結果として、ばね圧ブレーキによって発生可能なブレークトルクも制限される。上記された従来技術に対応する構成のばね圧ブレーキ用の所定の設置スペースの場合には、その達成可能なブレークトルク及び摩耗予備量は、これ以上増加させることができない。
【0005】
国際公開第2019/007931号パンフレットから分かるように、ブレーキロータの可能な摩擦半径を増加させるための対策が従来技術から知られている。その場合、別個のスペーサブッシュの代わりに、コイルホルダ上に一体成形されたスペーサ要素を使用することが提案されている。このスペーサ要素はアーマチュアディスクの回転可能な固定部の役割も果たし、その締結ねじ用の貫通孔は、電磁コイルのためのコイル空間に向かって半径方向内側に開口している。それによって、ブレーキロータの摩擦半径をわずかに増加させることができ、その結果、達成可能なトルクと、摩擦ライニングの体積に依存する、ばね圧ブレーキの耐用年数もわずかに増加させることができる。しかしながら、部品公差の影響は残り、また、大きな空隙を設ける必要があり、それに伴うデメリットもある。
【0006】
出力密度を更に高めるために、独国特許出願公開第102016103176号明細書は、好ましくは円形の電磁ばね圧ブレーキのための特別な構造形態及び製造方法を提案する。この構造形態によって、ブレーキロータの摩擦半径をさらに増大させることができ、好ましくは管状の接続要素を介した、コイルホルダとフランジ板との間の接続のために提案された方法によって、最適化された小さな空隙が達成され得る。しかしながら、記載されたばね圧ブレーキにおいては、コイルホルダとアーマチュアの接続と、アーマチュアディスクの回転可能な固定部との間に機能的な分離が存在する。アーマチュアディスクの回転可能な固定部のために、コイルホルダの孔に挿入される円筒ボルトの形態の別個の要素が提供される。それによって、製造の手間がかかり、また、ばね要素の取り付け、及び/又は、電磁石のパワーアップのために利用できる、コイルホルダの極面が減少する。その結果、このばね圧ブレーキの場合には、達成可能な出力密度も制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、最適化された出力密度と長い耐用年数を有する安価に生産可能な、好ましくは円形の電磁ばね圧ブレーキを提供することである。その電磁ばね圧ブレーキにおいては、構造上の処置によって少なくとも1つのブレーキロータの摩擦半径が最大に達しており、コイルホルダと電磁コイルから形成される電磁石の極面には、アーマチュアディスクのための追加のガイド要素がなく、存在する部品公差が特別な製造方法よって排除され、それによって電磁石とアーマチュアディスクの間の正確で非常に小さな空隙が達成される。他方において、アーマチュアディスク又はブレーキロータのような部品の厚み公差を拡大することができ、それは、さらなるコストダウンを可能にする。この課題は、本発明の独立請求項の特徴によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による、ばね圧ブレーキにおいては、スペーサブッシュは、小さな半径方向の延び(Erstreckung)を有するスペーサストリップによって置き換えることが提案される。そのスペーサストリップは、コイルホルダと一体に製造される、又は、代替的に、例えば溶接、接着、ねじ止め、リベット止め、フランジング、又は同等の接続方法によってコイルホルダに強固な接続が可能である。その場合、少なくともその長手方向の延びの部分領域において矩形又はほぼ矩形の断面を有するスペーサストリップは、アーマチュアディスクのためのガイドの機能を担い、アーマチュアディスクは、それによって回転可能に固定され、且つ軸方向に移動可能である。
【0009】
ばね圧ブレーキを周辺部、例えば機械壁に固定するために、コイルホルダは、対応するねじ山又は同等の接続手段を有する。代替的に、コイルホルダと反対側のフランジ板にも、対応する接続手段、例えば、内ねじ又は、ねじ付きボルトを設けることができる。少なくとも3つのスペーサストリップ内の半径方向において、ブレーキロータはアーマチュアディスクとフランジ板との間に位置し、したがって大きな摩擦半径を有することができ、これは、ばね圧ブレーキの高い出力密度及び大きな摩耗予備量に寄与する。
【0010】
ここで、本発明による、ばね圧ブレーキは、1つのブレーキロータのみを備えることができ、それによって、ばね圧ブレーキは、コイルホルダ、アーマチュアディスク、両面に摩擦ライニングを有するブレーキロータ、及びフランジ板を、前述された部品順序において有している。
【0011】
達成可能なトルクを数倍にも増すために、ばね圧ブレーキは、複数のブレーキロータを備えることもでき、それによって、例えば、ダブルロータブレーキは、前述された部品順序において、コイルホルダ、アーマチュアディスク、第1のブレーキロータ、スペーサストリップによって回転可能に固定され且つ軸方向に可動の中間板、第2のブレーキロータ、最後に、フランジ板を有している。
【0012】
出力密度のさらなる向上のために、ばね圧ブレーキの組立の際に、空隙のばらつきにつながる、部品の製造公差をなくす特別な製造方法を用いることが、本発明に従って提案される。このために、フランジ板が、その外周又はフランジ板溝を、スペーサストリップのセンタリング領域内において半径方向に有し、且つ、軸方向に、対応する移動間隙を有するように、スペーサストリップ及びフランジ板を互いに調整する。
【0013】
その製造方法の際に、圧縮ばねを装着したコイルホルダを、平坦面をスペーサストリップに対向させた治具板上に置き、スペーサストリップ間において、半径方向に存在する空間に、部品のアーマチュアディスク、ブレーキロータ、フランジ板をその順序に挿入する。次に、1つ以上のプレススタンプを用いて、フランジ板を、コイルホルダに対して第1のストローク動作の方向に、前述の全ての部品が互いに直接重なるまで押圧する。次に、1つ又は複数のプレススタンプを、ばね圧ブレーキの所望の空隙に対応する距離だけ、第2のストローク動作の方向に移動制御する。最後に、フランジ板に面するスペーサストリップの端部とフランジ板との間に、例えば溶接、はんだ付け、又は接着法、好ましくはレーザ溶接法によって、強固な接続を生成する。その際、溶接レーザは、所望の接合経路に沿ってロボットによってガイドされ得る。代替的には、接合すべき領域を有するばね圧ブレーキを、回転軸を中心に回転する治具板上において、溶接レーザに沿ってガイドすることができる。その後、空隙付きの、ばね圧ブレーキを治具板から取り外し、組み込み可能なユニットとして顧客に提供することができる。
【0014】
記載された製造方法が、ばね圧ブレーキの円周上に分配された複数のプレススタンプを用いて実施され、各プレススタンプが個別に経路制御された動作を行う場合、コイルホルダ及び/又はアーマチュアディスク及び/又はフランジ板の、円周上に分散された異なる高さ公差は、有利な方法によって補償することが可能である。
【0015】
1つのみ又は複数のプレスパンチを用いて実施することができる代替的な製造方法においては、まず、圧縮ばねを有するコイルホルダを、治具板上に配置する。次に、少なくとも2つのスペーサフィルムをコイルホルダの極面に、円周上に分散して提供し、次に、アーマチュアディスク、ブレーキロータ、フランジ板をこの順序において載置する。ここで使用されるスペーサフィルムの厚さは、ばね圧ブレーキの所望の後の空隙に対応する。次に、少なくとも1つのプレススタンプは、スペーサフィルムを含むすべての前述の部品が互いに直接重なるまで、フランジ板を第1のストローク動作の方向に押圧する。このポジションにおいて、スペーサストリップの端部とフランジ板の外周との間に、好ましくはレーザ溶接法によって、強固な接続を行う。その後、スペーサフィルムを、コイルホルダとアーマチュアディスクとの間のギャップから半径方向に引き抜き、それによって、ばね圧ブレーキにおいて所望の空隙が得られる。プレススタンプが初期位置に戻った後、ばね圧ブレーキは、組み込みユニットとして、直ぐに出荷できる。
【0016】
説明した構成及び製造方法によって、最適化された出力密度及び長い耐用年数を有する低コストの電磁ばね圧ブレーキを提供することができる。その際、構造上の措置によって、ブレーキロータの摩擦半径を最大化し、コイルホルダの極面はわずかな中断によって最大の磁気及びばね力を可能にし、部品の公差を特別な製造方法によって排除し、それによって、コイルホルダとアーマチュアディスクとの間の正確で非常に小さな空隙を実現することが可能である。
【0017】
本発明の更なる有利な詳細は、特許請求の範囲及び後述する図面の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来技術による電磁ばね圧ブレーキの縦断面、並びに、詳細部Aを有するその斜視図である。
【
図2】本発明による、ばね圧ブレーキの第1の実施形態の縦断面、並びに、詳細部Bを有するその斜視図である。
【
図3】本発明による、ばね圧ブレーキの第1の実施形態の
図2に基づく分解斜視図、並びに、詳細部Cである。
【
図4】本発明による、ばね圧ブレーキの第2の実施形態の分解斜視図、並びに、詳細部Dである。
【
図5】本発明による、ばね圧ブレーキの第3の実施形態の分解斜視図、並びに、詳細部Eである。
【
図6】本発明による、ばね圧ブレーキの第4の実施形態の縦断面、並びに、詳細部Fを有するその斜視図である。
【
図7】第1の調整装置における、本発明による、ばね圧ブレーキの
図2に基づく第1の実施形態の縦断面、並びに、その斜視図である。
【
図8】第2の調整装置における、本発明による、ばね圧ブレーキの
図5に基づく第3の実施形態の縦断面、並びに、その斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、従来技術による電磁解放式ばね圧ブレーキ(BR)においては、コイルホルダ(1)が、スペーサブッシュ(7)及びねじ(8)を介してフランジ板(9)に結合されている。コイルホルダ(1)とフランジ板(9)との間には、アーマチュアディスク(4)と、両側に摩擦ライニング(5.1)を有するブレーキロータ(5)が配置されている。その際、ブレーキロータ(5)はロータ歯(5.2)を介して歯付きボス(6)に形状密着して係合し、その歯付きボスは、例えばモータの図示しないシャフトに接続されている。
【0020】
詳細部Aから分かるように、アーマチュアディスク(4)は、回転可能に固定され、且つ軸方向に可動に、スペーサブッシュ(7)上のアーマチュアキー溝(4.1)を介してガイドされ、電磁コイル(3)が通電されていない場合、コイルホルダ(1)のばね穴(1.2)に配置された圧縮ばね(11)によってブレーキロータ(5)に押しつけられている。それによって、ブレーキロータ(5)は、アーマチュアディスク(4)とフランジ板(9)との間に挟まれ、歯付きボス(6)を介して図示しないシャフトが回転軸(A)を中心に回転することを阻止する。コイルホルダ(1)のコイル室(1.1)に埋設された電磁コイル(3)に通電することによって、アーマチュアディスク(4)は、圧縮ばね(11)の力に抗してコイルホルダ(1)に引きつけられ、ブレーキロータ(5)を解放し、そのブレーキロータは、歯付きボス(6)及びシャフトとともに回転軸(A)を中心として自由に回転できる。
【0021】
ブレーキロータ(5)の外径はスペーサブッシュ(7)の寸法によって制限され、ばね圧ブレーキ(BR)が閉じられたときに生じるコイルホルダ(1)とアーマチュアディスク(4)との間の空隙(L)の大きさが、アーマチュアディスク(4)及びブレーキロータ(5)の厚さとスペーサブッシュ(7)の軸方向の延びとそれに応じた寸法許容誤差によって決まることは、明らかである。ブレーキロータ(5)の限られたサイズと空隙(L)の必要なサイズとによって、従来技術のばね圧ブレーキ(BR)は、限られた出力密度及び限られた耐用年数を有する。
【0022】
図2には、本発明による、ばね圧ブレーキ(BR)の第1の実施形態が示され、このブレーキは、コイルホルダ(1)、アーマチュアディスク(4)、ブレーキロータ(5)及びフランジ板(9)の空間的配置に関して、従来技術にほぼ対応している。従来技術のばね圧ブレーキ(BR)において使用されていたスペーサブッシュ(7)の機能のみが、コイルホルダ(1)と一体型の形状を形成するスペーサストリップ(2)によって引き継がれている。その際、一方においては、スペーサストリップ(2)は、そのセンタリング領域(2.2)によって、接続箇所(12)を介してコイルホルダ(1)と反摩擦面(9)との間の接続を提供し、他方においては、そのガイド領域(2.1)によって、詳細部Bによって分かるように、アーマチュアキー溝(4.1)を介して、回転可能に固定され、且つ軸方向に可動なアーマチュアディスク(4)のガイドを引き継ぐ。センタリング領域(2.2)の小さな半径方向の延びによって、ブレーキロータ(5)の外径は、従来技術に比べてかなり大きくすることができ、それは、小さな空隙(L)と関連して、ばね圧ブレーキ(BR)の出力密度と耐用年数とを著しく増加させる。小さな空隙(L)を実現することができるばね圧ブレーキ(BR)の製造方法は、別の箇所において説明する。
【0023】
更に、スペーサストリップ(2)のセンタリング領域(2.2)には、アーマチュアキー溝(4.1)に面する両側に逃げ面(2.4)が設けられており、また、ガイド領域(2.1)の軸方向のガイド高さ(2.5)は、アーマチュアディスク(4)の軸方向の厚みより小さく形成されている。これによって、ガイド領域(2.1)に摩耗が生じた場合に、アーマチュアディスク(4)がガイド領域(2.1)に食い込んでこれと形状密着した接続を形成することを排除することができる。その結果、アーマチュアディスク(4)は、ブレーキの際に、圧縮ばね(11)の力をロータ(5)及びフランジ板(9)に伝達することが保証される。
【0024】
ばね圧ブレーキ(BR)を、コイルホルダ(1)の背面に作られるねじ山(1.3)によって、周辺部、例えばサーボモータのハウジングの内側に固定することが可能である。同様に、フランジ板(9)の領域にある、ねじ山、ボルト又は穴を介して、ばね圧ブレーキ(BR)を固定することが考えられる。
【0025】
図3及び詳細部Cは、
図2のばね圧ブレーキ(BR)を再び描いており、その際、詳細部Cによる斜視図にさらなる詳細が示されている。コイルホルダ(1)と一体形成されたスペーサストリップ(2)は、アーマチュアディスク(4)を回転可能に固定され、且つ軸方向に可動にガイドするためのガイド領域(2.1)と、フランジ板(9)をセンタリングするための、それに軸方向に隣接したセンタリング領域(2.2)とを有する。ガイド領域(2.1)は、アーマチュアキー溝(4.1)に対して大きな接触面を形成して摩耗を減らし、その軸方向移動中にアーマチュアディスク(4)の傾きを確実に防ぐために円弧形状に形成されている。これは、電磁ばね圧ブレーキ(BR)が通常フェイルセーフ原理による安全関連部品であり、非通電状態においてその完全なブレーキ効果を発揮しなければならないため、特に重要である。
【0026】
ガイド領域(4.1)の提案された形態において、
図1による従来技術に従ったばね圧ブレーキ(BR)の場合に、実証済みの構造形態に対応するアーマチュアディスク(4)を使用することも可能である。
【0027】
ブレーキ中にガイド領域(2.1)が摩耗した場合においてもアーマチュアディスク(4)の完全な可動性を確保するために、センタリング領域(2.2)の両側には、横方向に位置する逃げ面(2.4)が設けられている。
【0028】
センタリング領域(2.2)の円弧状の内側輪郭によって、外側輪郭がセンタリング領域(2.2)に正確に適合し、低コストで製造できる、円環状のフランジ板(9)を使用することができる。
【0029】
図4及び詳細部Dには、コイルホルダ(1)と一体形成されたスペーサストリップ(2)の代替的な態様が示される。アーマチュアディスク(4)を回転可能に固定され、且つ軸方向に可動にガイドするためのガイド領域(2.1)と、フランジ板(9)を受け入れるためのセンタリング領域(2.2)とは、スペーサストリップ(2)の長手方向の延びにわたって、半径方向に等しく、非常にコスト効率よく製造できる断面を有している。それによって、コイルホルダ(1)の極面を更に拡大することができる。
【0030】
スペーサストリップ(2)は、ブレーキの際にアーマチュアディスク(4)の完全な可動性を確保するために、センタリング領域(2.2)においてのみ、逃げ面(2.4)によって円周方向により小さな延びを有している。
【0031】
本例においては、アーマチュアディスク(4)は、長方形の断面を有する対応するアーマチュアキー溝(4.1)を有している。
【0032】
詳細部Eを伴う
図5には、スペーサストリップ(2)とコイルホルダ(1)とが一体形成されていない、本発明による、ばね圧ブレーキ(BR)のさらなる実施形態が示されている。この場合、スペーサストリップ(2)は、それぞれ、センタリング領域(2.2)、ガイド領域(2.1)、及びストリップシャフト(2.3)からなり、そのストリップシャフトは、コイルホルダ(1)の軸方向に延びる相補的な受け溝(1.4)に挿入されて、例えば溶接、接着、ねじ込み、リベット、フランジング又は同等の代替的な接続方法によってコイルホルダ(1)に強固に接続される。本例においては、ストリップシャフト(2.3)は、センタリング領域(2.2)よりも大きな半径方向の延びを有し、コイルホルダの極面を越えて軸方向に突出しており、それによって、ストリップシャフト(2.3)はガイド領域(2.1)の機能も担っている。アーマチュアディスク(4)のアーマチュアキー溝(4.1)は、その際これに対応する相補的な形状によって形成されている。
【0033】
代替的には、スペーサストリップ(2)を、その長手方向の延びの全体にわたって一定の断面を有するように実施すること、又は、ストリップシャフト(2.3)の場合に、ガイド領域(2.1)及びセンタリング領域(2.2)よりも小さな半径方向の延びを設けることも考えられる。
【0034】
さらに,
図2~
図4に示すように、適切な逃げ面(2.4)を有する、スペーサストリップ(2)のセンタリング領域(2.2)を設けることも可能である。
【0035】
図示のばね圧ブレーキ(BR)の周辺装置への固定のために、フランジ板(9)の外径がコイルホルダ(1)より突出しており、そのため、例えばコイルホルダ(1)の側方から、固定穴(9.2)を介してばね圧ブレーキ(BR)を固定することも可能である。同様に、コイルホルダ(1)の領域にある、ねじ山(1.3)又は対応する穴又はボルトを介して、ばね圧ブレーキ(BR)を固定することも考えられる。
【0036】
図5による例においては、フランジ板(9)とスペーサストリップ(2)との接続は、フランジ板溝(9.1)のそれぞれの底部とスペーサストリップ(2)のセンタリング領域(2.2)との間において行われる。
【0037】
斜視図及び詳細部Fを伴う
図6の縦断面は、ダブルロータ構成式のばね圧ブレーキ(BR)を示し、それによって、摩擦面の数を倍増することによって、達成可能なブレーキトルクも倍増させることができる。代替的には、3つ以上のブレーキロータ(5)を有する実施も考えられる。図示のばね圧ブレーキ(BR)においては、スペーサストリップ(2)とコイルホルダ(1)は一体の形状を形成しており、その際、スペーサストリップ(2)のセンタリング領域(2.2)は、追加の部品の受け入れのために、回転軸(A)と平行に、大きな軸方向の延びを有している。したがって、ばね圧ブレーキ(BR)は、コイルホルダ(1)、アーマチュアディスク(4)、第1のブレーキロータ(5)、中間板(10)、第2のブレーキロータ(5)、及び最終のフランジ板(9)からなり、それら部品は前述された順序に配置されている。アーマチュアディスク(4)は、スペーサストリップ(2)のガイド領域(2.1)上に、回転可能に固定され、且つ軸方向に可動に取り付けられ、その際、ガイド領域(2.1)は、小さい又は大きい半径方向の延びのみでなく、角のある又は対応する丸みを有して形成可能である。中間板(10)は、スペーサストリップ(2)のセンタリング領域(2.2)に位置し、そこにおいて、中間板キー溝(10.1)によって回転可能に固定され、且つ軸方向に可動にセンタリング領域(2.2)に装着されている。
【0038】
図7の半断面図と斜視図に基づいて、空隙(L)の減少によって可能なブレーキトルクの増加が達成される、第1の製造方法を説明する。この方法は、
図2~
図6を参照してこれまで説明したすべてのばね圧ブレーキ(BR)に適用可能であるが、機能部品が同等の方法において配置された、非円形、例えば矩形又は多角形の外輪郭を有する、ばね圧ブレーキ(BR)にも適用可能である。
図7に示した製造方法の例においては、1つのプレススタンプ(S)のみを用いて、又は複数のプレススタンプ(S)を用いて実施することができ、まず、圧縮ばね(11)を有するコイルホルダ(1)を治具板(V)上に配置する。次に、少なくとも2枚のスペーサフィルム(D)、好ましくは3枚のスペーサフィルム(D)をコイルホルダ(1)の極面に円周上に分散して配置し、次にアーマチュアディスク(4)、ブレーキロータ(5)、フランジ板(9)をその順序において配置する。代替的には、アーマチュアディスク(4)とブレーキロータ(5)との間、あるいはブレーキロータ(5)とフランジ板(9)との間にスペーサフィルム(D)を配置することも可能である。ここで使用されるスペーサフィルム(D)の厚さは、ばね圧ブレーキ(BR)の所望の後の空隙(L)に対応する。次に、少なくとも1つのプレススタンプ(S)は、スペーサフィルム(D)を含む全ての上記部品が互いに直接重なるまで、フランジ板(9)を第1のストローク動作(M1)の方向に押圧する。このポジションにおいて、スペーサストリップ(2)の端部とフランジ板(9)の外周との間の強固な接続が、好ましくはレーザ溶接法によって、接続箇所(12)においてなされる。次に、スペーサフィルム(D)を、コイルホルダ(1)とアーマチュアディスク(4)との間の隙間から半径方向に引き抜き、それによって、ばね圧ブレーキ(BR)において所望の空隙(L)を得ることができる。
【0039】
続いて、プレススタンプ(S)を第2のストローク動作(M2)の方向へ後退させ、ばね加圧ブレーキ(BR)を取り外して、組み込み可能なユニットとして直ぐに出荷される。なお、上記した手順は、勿論、説明した部品の空間的な向きに関しての制限を示すものではない。治具板(V)は、いずれの空間的位置にあることができ、その際、ばね圧ブレーキ(BR)の部品の位置、及びプレススタンプ(S)の位置は、治具板(V)の位置に対して方向づけられる。好ましくは、治具板(V)は、ばね加圧ブレーキ(BR)の全ての部品とプレススタンプ(S)とが空間的にその上にある状態において、空間的に下部にある。
【0040】
図8の半断面図及び斜視図を参照して、代替的な製造方法を説明する。代替的な製造方法においては、圧縮ばね(11)を有するコイルホルダ(1)を、スペーサストリップ(2)に対向する平面によって治具板(V)上に配置し、部品のアーマチュアディスク(4)、ブレーキロータ(5)、及びフランジ板(9)を、半径方向においてスペーサストリップ(2)間に存在する空間に、前述された順序において挿入する。次に、上記のすべての部品が互いに直接重なるまで、回転軸と同心に横たわる1つの、又は回転軸と同心の円弧上に横たわる複数のプレススタンプ(S)によって、フランジ板(9)を、第1のストローク動作(M1)の方向にコイルホルダ(1)に対して押圧する。次に、単一又は複数のプレススタンプ(S)を、第2のストローク動作(M2)の方向に、ばね圧力ブレーキ(BR)の所望の空隙(L)によって制御されて遠ざかるように移動する。
【0041】
最後に、フランジ板(9)に面するスペーサストリップ(2)の端部とフランジ板(9)との間の接続箇所(12)において、例えば溶接、はんだ付け又は接着法、好ましくはレーザ溶接法によって、強固な接続を行う。その際、溶接レーザは、所望の接合経路に沿ってロボットによってガイドすることができる。
【0042】
代替的には、接合される領域を有するばね圧ブレーキ(BR)を、回転軸(A)を中心に回転する治具板(V)上において、溶接レーザに沿ってガイドすることもできる。
【0043】
記載された製造方法が、ばね圧ブレーキ(BR)の円周上に分配された複数のプレススタンプ(S)を用いて実施され、その各々が経路制御された動きを行う場合、コイルホルダ(1)及び/又はアーマチュアディスク(4)及び/又はブレーキロータ(5)の、円周上に分布する様々な高さ公差を、有利な方法において補償することが可能である。
【0044】
図7又は
図8による製造方法の1つを、
図6に示すような2つのブレーキロータ(5)を有するばね圧ブレーキ(BR)に、又は2つ以上のブレーキロータ(5)を有するばね圧ブレーキ(BR)に用いる場合、1つのブレーキロータ(5)を有するばね圧ブレーキ(BR)と比較して、少なくとも1つの追加のブレーキロータ(5)と少なくとも1つの中間板(9)のみを、スペーサストリップ(2)のガイド領域(2.2)の間のスペースに挿入すれば良い。残りの方法ステップは、
図7及び
図8に関連して説明した手順に対応する。
【0045】
図5によるばね圧ブレーキ(BR)の実施において、コイルホルダ(1)とスペーサストリップ(2)が個別の部品として形成されている場合には、以下に記載される製造方法の代替的な変形例が考えられる。その際、最初のステップにおいて、まだ緩いスペーサストリップ(2)を、意図した接続箇所(12)において予めフランジ板(9)に接続し、それによって得られた組立品を、後にコイルホルダ(1)に固定する。
【0046】
図7に示す方法に類似する製造方法においては、第2のステップにおいて、まず、フランジ板(9)とスペーサストリップ(2)とからなる組立品を治具板(V)上に載置し、次に、ブレーキロータ(5)、アーマチュアディスク(4)、スペーサフィルム(D)、及び圧縮ばね(11)を有するコイルホルダ(1)を取り付ける。その際、各ストリップシャフト(2.3)がコイルホルダの関連する受け溝(1.4)内に食い込む。次に、コイルホルダ(1)を、1つ以上のプレススタンプ(S)によって、すべての部品が互いの上に直接横たわるまで、フランジ板に向かって第1のストローク動作(M1)の方向に移動させる。
【0047】
この状態において、スペーサストリップ(2)を、必要に応じて、コイルホルダ(1)の受け溝(1.4)に半径方向に押し込み、その後、例えば溶接、はんだ付け又は接着法によって、好ましい方法においては、レーザ溶接法によって、コイルホルダに固定する。次に、スペーサフィルム(D)を、ばね圧ブレーキ(BR)から半径方向に除去し、少なくとも1つのプレススタンプ(S)を、第2のストローク動作(M2)の方向にその初期位置に戻し、ばね圧ブレーキ(BR)を、完成ユニットとして取り出すことが可能である。
【0048】
図8に示す方法に類似する製造方法においては、第2のステップにおいて、まず、フランジ板(9)及びスペーサストリップ(2)からなる組立品を治具板(V)上に載置し、次に、圧縮ばね(11)を有するブレーキロータ(5)、アーマチュアディスク(4)、及びコイルホルダ(1)を取り付ける。その際、各ストリップシャフト(2.3)はコイルホルダの関連する受け溝(1.4)内に食い込む。次に、コイルホルダ(1)を、1つ以上のプレススタンプ(S)によって、すべての部品が互いの上に直接横たわるまで、フランジ板の方へ第1のストローク動作(M1)の方向に移動させる。
【0049】
その後、少なくとも1つのプレススタンプ(S)を、ばね圧力ブレーキ(BR)において所望の空隙(L)に対応する距離だけ第2のストローク動作(M2)の方向に制御されて遠ざかるように戻す。この状態において、スペーサストリップ(2)を、必要に応じてコイルホルダ(1)の受け溝(1.4)に半径方向に押し込み、その後、例えば溶接、はんだ付け又は接着法によって、好ましい方法においては、レーザ溶接法によって、コイルホルダに固定する。最後に、少なくとも1つのプレススタンプ(S)をその初期位置に戻し、ばね圧ブレーキ(BR)を完成したユニットとして取り出すことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 コイルホルダ
1.1 コイル室
1.2 ばね穴
1.3 ねじ山
1.4 受け溝
2 スペーサストリップ
2.1 ガイド領域
2.2 センタリング領域
2.3 ストリップシャフト
2.4 逃げ面
2.5 ガイド高さ
3 電磁コイル
4 アーマチュアディスク
4.1 アーマチュアキー溝
5 ブレーキロータ
5.1 摩擦ライニング
5.2 ロータの歯
6 歯付きボス
7 スペーサブッシュ
8 ねじ
9 フランジ板
9.1 フランジ板溝
9.2 固定穴
10 中間板
10.1 中間板キー溝
11 圧縮ばね
12 接続箇所
A 回転軸
BR ばね圧ブレーキ
D スペーサフィルム
L 空隙
M1 第1のストローク動作
M2 第2のストローク動作
S プレススタンプ
V 治具板
【国際調査報告】