(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】化学原料分配器及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 4/00 20060101AFI20231016BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B01J4/00 101
B01J8/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518805
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021052817
(87)【国際公開番号】W WO2022072599
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】プレッツ、マシュー ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、クアン
(72)【発明者】
【氏名】カマト、プリティシュ エム.
(72)【発明者】
【氏名】リー、リーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、リン
【テーマコード(参考)】
4G068
4G070
【Fターム(参考)】
4G068AA01
4G068AB01
4G068AC09
4G068AD18
4G068AD47
4G070AA01
4G070AB10
4G070BB32
4G070CA06
4G070CA18
4G070CB15
(57)【要約】
1つ以上の実施形態によれば、化学原料分配器は、化学原料注入口と、本体と、複数の一次化学原料排出口と、二次化学原料排出口と、を含み得る。化学原料注入口は、化学原料供給流を化学原料分配器内に通し得る。本体の1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定し得る。複数の一次化学原料排出口は、細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部分に沿って離間配置され得、化学原料供給流の第1の部分を供給分配器から排出し、容器に入れるように動作可能であり得る。二次化学原料排出口は、複数の一次化学原料排出口の下流にあり得、化学原料供給流の第2の部分を化学原料分配器から排出するように動作可能であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学原料分配器であって、
化学原料供給流を前記化学原料分配器内に通す化学原料注入口であって、前記化学原料供給流は第1の部分及び第2の部分からなる、化学原料注入口と、
1つ以上の壁及び複数の一次化学原料排出口を含む本体であって、前記1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定し、前記複数の一次化学原料排出口は、前記細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部分に沿って離間配置され、前記複数の一次化学原料排出口は、前記化学原料供給流の前記第1の部分を前記供給分配器から排出し、容器に入れるように動作可能である、本体と、
前記複数の一次化学原料排出口の下流にある二次化学原料排出口であって、前記二次化学原料排出口は、前記化学原料供給流の前記第2の部分が前記化学原料分配器を通過し、前記容器には入らないように、前記化学原料供給流の前記第2の部分を前記化学原料分配器から排出するように動作可能である、二次化学原料排出口と、を備える、化学原料分配器。
【請求項2】
前記1つ以上の壁は、前記細長い化学原料供給流経路の上流流体通路及び下流流体通路を画定し、
前記上流流体通路は、前記化学原料注入口と流体連通しており、
前記上流流体通路は、前記下流流体通路と流体連通しており、
前記下流流体通路は、前記複数の一次化学原料排出口及び前記二次化学原料排出口と流体連通している、請求項1に記載の化学原料分配器。
【請求項3】
前記上流流体通路は、1つ以上の壁によって前記下流流体通路から分離されている、請求項2に記載の化学原料分配器。
【請求項4】
前記下流流体通路は、前記上流流体通路を取り囲む、請求項2又は3に記載の化学原料分配器。
【請求項5】
前記上流流体通路は円筒形状を含み、前記下流流体通路は前記円筒形状を取り囲む円筒形シェル形状を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項6】
前記上流流体通路及び前記下流流体通路は、同軸幾何学形状を形成する、請求項2~5のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項7】
前記上流流体通路は気密である、請求項2~6のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項8】
前記本体は管からなる、請求項1に記載の化学原料分配器。
【請求項9】
前記本体は、第1の直管セグメントと、コネクタ管セグメントと、第2の直管セグメントと、を含み、前記第1の直管セグメントは前記コネクタ管セグメントに接続され、前記コネクタ管セグメントは前記第2の直管セグメントに接続され、前記第1の直管セグメント及び前記第2の直管セグメントは実質的に平行である、請求項8に記載の化学原料分配器。
【請求項10】
前記本体は、前記容器の外周を実質的にたどる輪郭を有するように成形されている、請求項1に記載の化学原料分配器。
【請求項11】
化学原料供給流を分配するための方法であって、
化学原料供給流を、化学原料注入口を通して化学原料分配器に入れることであって、前記化学原料供給流は第1の部分及び第2の部分からなる、ことと、
前記化学原料供給流の前記第1の部分を、複数の一次化学原料排出口を通して前記化学原料分配器から排出し、容器に入れることと、
前記化学原料供給流の前記第2の部分が前記容器に入らないように、前記化学原料供給流の前記第2の部分を、前記複数の一次化学原料排出口の下流にある二次化学原料排出口を通して前記化学原料分配器から排出することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記化学原料分配器は、細長い化学原料供給流経路を画定する1つ以上の壁と、前記細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部分に沿って離間配置された複数の一次化学原料排出口と、を含む本体を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化学原料供給流の前記第2の部分の流量に対する前記化学原料供給流の前記第1の部分の流量の比は、0.1~3.0である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学原料分配器から排出される前記化学原料供給流の前記第2の部分が、前記化学原料注入口を前記化学原料供給流が通過する前に、前記化学原料供給流と混ぜ合わされるように、前記供給流の前記第2の部分を再循環させることを更に含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記容器内の温度は650℃超であり、前記化学原料分配器の外周の最高表面温度は650℃を超えない、請求項11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月30日に出願され、「CHEMICAL FEED DISTRIBUTORS AND METHODS OF USING THE SAME」と題された米国仮特許出願第63/085,264号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書は、概して、化学処理に関し、より具体的には、化学原料供給流を導入するためのシステム及びプロセスに関する。
【0003】
技術的背景
ガス状化学物質は、供給分配器を通して反応器又は他の容器に供給され得る。供給分配器を利用して、このような反応器又は容器への供給化学物質流のバランスのとれた分配を促進することができる。このような供給化学物質の分布は、好ましい反応を促進することができ、化学システムにおける物質移動平衡を維持することができる。
【発明の概要】
【0004】
多くの化学プロセスにおいて、化学原料供給流は、化学原料分配器を通して反応器又は燃焼器などの高温環境に供給される。これらの高温環境は、化学原料分配器の外周の最高表面温度を上昇させる可能性があり、その後コーキングと呼ばれる炭素質沈着物の形成のリスクを増大させる可能性がある。これは、流動床容器において特に問題であり、容器内の流動固体は、放射性及び伝導性熱伝達を介して高温環境から供給分配器への熱伝達を大幅に向上させる。次に、コーキングは、閉塞及び流量不均等分布のリスクを生じさせる可能性がある。したがって、改良された化学原料分配器が必要とされている。化学原料供給流の一部分のみを容器に分配し、化学原料供給流の別の部分は容器に供給されない化学原料分配器は、化学原料分配器のピーク表面温度の低下を促進し得ることが見出された。そのような化学原料分配器の実施形態が本明細書に記載される。そのような化学原料分配器の1つ以上の実施形態は、比較的安定した外周の最高表面温度を維持することができ、したがって、コーキングのリスク及びコーキングに関連する副次的影響を低減することができる。本開示の実施形態は、線速度が維持され得、化学原料分配器内の停滞ゾーンが低減され得るように、化学原料供給流の再循環を伴う化学原料分配器を利用することによって、この必要性を満たす。
【0005】
一実施形態によれば、化学原料分配器は、化学原料注入口と、本体と、二次化学原料排出口とを備えることができる。化学原料注入口は、化学原料供給流を化学原料分配器に入れることができる。化学原料供給流は第1の部分及び第2の部分からなり得る。本体は、1つ以上の壁及び複数の一次化学原料排出口を含み得る。1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定し得る。複数の一次化学原料排出口は、細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部分に沿って離間配置され得る。複数の一次化学原料排出口は、化学原料供給流の第1の部分を供給分配器から排出し、容器に入れるように動作可能であり得る。二次化学原料排出口は、複数の一次化学原料排出口の下流にあり得る。二次化学原料排出口は、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器を通過し、容器には入らないように、化学原料供給流の第2の部分を化学原料分配器から排出するように動作可能であり得る。
【0006】
別の実施形態によれば、化学原料供給流を分配するための方法は、化学原料供給流を化学原料注入口を通して化学原料分配器に入れることを含み得る。化学原料供給流は第1の部分及び第2の部分からなり得る。本方法はまた、化学原料供給流の第1の部分を、複数の一次化学原料排出口を通して化学原料分配器から排出し、容器に入れることを含み得る。本方法は、化学原料供給流の第2の部分が容器に入らないように、化学原料供給流の第2の部分を、複数の一次化学原料排出口の下流にある二次化学原料排出口を通して化学原料分配器から排出することを更に含み得る。
【0007】
追加の特徴及び有益性は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、一部分は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、及び特許請求の範囲を含む本明細書に記載される実施形態を実践することによって認識されるであろう。
【0008】
上記の全般的な説明及び下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の断面俯瞰図の概略図である。
【
図1B】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の第1の実施形態の斜視図の概略図である。
【
図1C】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の第2の実施形態の断面俯瞰図の概略図である。
【
図1D】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の第3の実施形態の断面俯瞰図の概略図である。
【
図1E】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の化学原料排出口の断面図の概略図である。
【
図2】本開示の1つ以上の実施形態による容器の模式切断図である。
【
図3A】本開示の1つ以上の実施形態による、供給再循環を伴う化学原料分配器の外周の最高表面温度のモデルの概略図である。
【
図3B】本開示の1つ以上の実施形態による、供給再循環を伴わない化学原料分配器の外周の最高表面温度のモデルの概略図である。
【
図4】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料に暴露される化学原料分配器の壁のピーク温度を、化学原料分配器に沿った距離の関数として示すグラフである。
【
図5】本開示の1つ以上の実施形態による、ノズル当たりの正規化流量を、化学原料分配器に沿った入口からのノズル距離の関数として示すグラフである。
【0010】
ここで、様々な実施形態をより詳細に参照し、そのいくつかの実施形態が添付の図面に例示される。可能な場合はいつでも、同じ又は類似の部分を参照するために、図面全体で同じ参照番号が使用されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態によれば、化学原料分配器及びそのようなものを使用するための方法を対象とする。一般に、本明細書に記載される化学原料分配器は、化学原料注入口と、1つ以上の壁を含む本体と、複数の一次化学原料排出口と、二次原料排出口と、を備え得る。化学原料供給流は、化学原料注入口を通過し得る。本明細書に記載されるように、化学原料供給流は、一般に、組成が等しい第1の部分及び第2の部分のみを含む。化学原料供給流の第1の部分は、複数の一次化学原料排出口から出され得、第2の部分は、二次化学原料排出口から出され得る。
【0012】
化学原料分配器の多数の実施形態が、添付の図面に関して説明される。しかしながら、ここに記載されるように、これらの実施形態は、化学原料供給流を一次化学原料流出口及び二次化学原料流出口を通過させるなどの共通のテーマを共有し得る。例えば、
図1A、
図1B、
図1C、及び
図1Dはそれぞれ、同様に一次化学原料排出口及び二次化学原料排出口を含む実施形態を示す。
【0013】
ここで
図1A、
図1B、
図1C、及び
図1Dを参照すると、1つ以上の実施形態によれば、化学原料分配器100は、化学原料注入口101を備え得る。化学原料注入口101は、化学原料供給流102を化学原料分配器100内に通し得る。したがって、化学原料供給流102は、化学原料注入口101を通過して化学原料分配器100に入り得る。本明細書に記載されるように、化学原料注入口101は、化学原料分配器100及び化学原料分配器100内の化学原料供給流102が容器110に入ることを可能にする容器110内の入口の場所を指し得る。
【0014】
化学原料分配器100は、本体105を備え得る。本体105は、1つ以上の壁106を含み得る。本体105はまた、複数の一次化学原料排出口107を含み得る。本明細書に記載されるように、複数の一次化学原料排出口107は、本体105の以上の(the or more)壁106における開口部であり得、化学原料分配器100から容器110への化学原料供給流102のための通路を提供し得る。実施形態では、複数の化学原料排出口107は、化学原料分配器に沿って一列に配置されてもよい。他の実施形態では、
図1Bに示すように、複数の化学原料排出口107は、2列など、化学原料分配器100に沿って交互の位置に配置されてもよい。化学原料排出口107は、化学原料分配器100に沿って任意の構成で配置され得ることが企図される。複数の化学原料排出口107は、圧力降下を生じさせ、より均一な分配を生じさせるために、それぞれの化学原料排出口107の始点にオリフィス107Aを含んでもよい。複数の化学原料排出口107はまた、複数の化学原料排出口107を通過する表面ガス速度を減速させて、触媒損耗又は化学原料分配器100の損傷を引き起こさないようにするためのディフューザ107Bを含んでもよい。ディフューザ107Bは、ガス速度が毎秒50フィート(ft/sec)から300ft/secの範囲内になることを可能にし得る。
【0015】
1つ以上の壁106は、細長い化学原料供給流経路109を画定し得る。複数の一次化学原料排出口107は、細長い化学原料供給流経路109の長さの少なくとも一部分に沿って離間配置され得る。複数の一次化学原料排出口107は、化学原料供給流102の第1の部分103を化学供給分配器100から排出し、容器110に入れるように動作可能であり得る。二次化学原料排出口108は、複数の一次化学原料排出口107の下流にあり得る。二次化学原料排出口108は、化学原料供給流102の第2の部分104を化学供給分配器100から排出するように動作可能であり得る。化学原料供給流102の第2の部分104は、化学原料分配器100を通過することはできるが、容器110に入ることはできない。本明細書で使用される場合、二次化学原料排出口108は、化学原料分配器100及び化学原料分配器100内の化学原料供給流102の任意の残りの部分が容器110から排出されることを可能にする、容器110内の出口の場所を指し得る。二次化学原料排出口108を通過し得る化学原料供給流102の残りの部分は、複数の一次化学原料排出口107を介して化学原料分配器100から容器110に送られない化学原料供給流102の部分に対応し得る。
【0016】
動作中、化学原料供給流102は、容器110内部の温度と比較して相対的に低い温度で供給され得る。1つ以上の実施形態によれば、化学原料供給流102の温度と容器110内の温度との間の差は、300℃超、例えば、350℃超、400℃超、450℃超、500℃超、550℃超、600℃超、又は650℃超であり得る。実施形態では、容器110内の温度は500℃超であってもよく、化学原料供給流102の温度は容器内の温度より低くてもよい。動作中、容器110内の温度が、化学原料分配器100を加熱し始める可能性があり、したがって、化学原料分配器100の外周の最高表面温度を上昇させる可能性がある。外周の最高表面温度は、化学原料分配器100全体にわたって最も高い表面温度を指し得る。これはまた、化学原料分配器100内の化学原料供給流102の温度を上昇させ得る。化学原料分配器100の外周の最高表面温度又は化学原料分配器100内の化学原料供給流102の温度が過度に上昇すると、化学原料供給流102は、化学原料分配器100上にコークスを沈着させ始める可能性がある。化学原料分配器100上にコークスが沈着すると、複数の一次化学原料物出口107が閉塞し始める可能性があり、それによって流量不均等分布が生じる可能性があり、動作上の問題をもたらし得る。本開示で使用される場合、「流量不均等分布」は、複数の一次化学原料排出口107間の均一な流量分布の差を指し得る。
【0017】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、二次化学原料排出口108は、複数の一次化学原料排出口107の下流にあり得る。二次化学原料排出口108は、化学原料供給流102の第2の部分104を化学供給分配器100から排出するように動作可能であり得る。化学原料供給流102の第2の部分104を化学原料分配器100から排出することにより、コーキングのリスク、ひいては、閉塞及び流量不均等分布のリスクが減少し得る。特定の理論に束縛されるものではないが、化学原料供給流102の第2の部分104は、化学原料分配器100から出され、実際に容器110には入らないので、化学原料分配器100内の化学原料供給流102の総流量は増加され得る。化学原料供給流102のこの増加した流量は、化学原料供給流102の第1の部分103が、化学原料供給流102の第2の部分104の再循環がない場合と同じままであり得るので、容器110に入る化学原料供給流102の流量に実質的には影響し得ない。特定の理論に束縛されるものではないが、化学原料供給流102のこの増加した流量は、化学原料分配器100内の停滞を低減し得る。この停滞の低減により、化学原料分配器100内の化学原料供給流102が化学原料分配器100を通って急速に移動する望ましいレイノルズ数が維持され得る。化学原料分配器100内の化学原料供給流102の流れが増加すると、化学原料分配器100の外周の最高表面温度は、コーキングが最小限に抑えられ得るように十分に低いままであり得る。すなわち、この望ましいレイノルズ数は、コーキングを効果的に最小限に抑えることができ、その結果、複数の一次化学原料排出口107の閉塞及び流量不均等分布を最小限に抑えることができる。
【0018】
本開示で使用される場合、「化学原料」は、メタン、天然ガス、エタン、プロパン、水素、又は燃焼時にエネルギー値を含む任意のガスなどであるがこれらに限定されない、任意のプロセス供給流又は燃料ガスを指し得る。加えて、本開示で使用される場合、「容器」は、任意選択的に1つ以上の触媒の存在下で1つ以上の化学反応が1つ以上の反応物間で起こり得る反応器又は燃焼器などの、ガス又は固体を保持するための中空容器を指し得る。容器は、最大55体積%の固体粒子体積分率を有してもよく、容器内のガスの空塔速度は、固体粒子の最小流動化速度より高くてもよい。
【0019】
本開示で使用される場合、「上流」及び「下流」という用語は、プロセス流の流れの方向に対する要素の相対的な位置決めを指し得る。システムの第1の要素は、システムを通って流れるプロセス流が、第2の要素に遭遇する前に第1の要素に遭遇する場合、第2の要素の「上流」と見なされ得る。同様に、システムを通って流れるプロセス流が、第2の要素に遭遇する前に第1の要素に遭遇する場合、第2の要素は、第1の要素の「下流」と見なされ得る。
【0020】
加えて、本開示で使用される場合、「コーキング」は、炭素質沈着物又はコークスの形成を指し得る。「閉塞」は、通路又はポートが部分的に制限されるか、又は完全に塞がれ得るようなコークスの蓄積を指し得る。
【0021】
図1A及び
図1Bを参照すると、いくつかの実施形態では、1つ以上の壁106は、細長い化学原料供給流経路109の上流流体通路111及び下流流体通路112を画定し得る。上流流体通路111は、化学原料注入口101と流体連通し得る。上流流体通路111は、下流流体通路112と流体連通し得る。下流流体通路112は、複数の一次化学原料排出口107及び二次化学原料排出口108と流体連通し得る。
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、上流流体通路111は、1つ以上の壁106によって下流流体通路112から分離され得る。第1の壁106Aは、上流流体通路111を画定し得る。第2の壁106Bは、第1の壁106Aと共に、下流流体通路112を画定し得る。第3の壁106Cは、化学原料分配器100の端部として機能し得る。第3の壁106Cは、第1の壁106A及び第2の壁106Bに垂直であり得る。第3の壁106Cはまた、他の幾何学形状を含み得ることが企図される。第3の壁106Cは、直線状であるか、丸みを帯びたものか、又は尖ったものであり得る。上流流体通路111が下流流体通路112と流体連通するために、化学原料分配器100の本体105は、第1の壁106Aの端部と第3の壁106Cとの間に空隙を含み得る。第1の壁106Aの端部と第3の壁106Cとの間の空隙は、化学原料供給流102が上流流体通路111から下流流体通路112へと流体的に通過することを可能にし得る。
【0023】
1つ以上の実施形態によれば、下流流体通路112は、上流流体通路111を取り囲んでもよい。いくつかの実施形態では、下流流体通路112は、上流流体通路111によって完全に取り囲まれてもよい。他の実施形態では、下流流体通路112の壁106は、下流流体通路112が上流流体通路111を完全に取り囲まないように、上流流体通路111の壁106と接触していてもよい。下流流体通路112及び上流流体通路111は、様々な幾何形状の任意の組合せを含み得る。例えば、上流流体通路111は、円筒形又は矩形の形状を含み得る。下流流体通路112は、円筒形状を取り囲む円筒形シェル又は矩形シェルの形状を含み得る。下流流体通路112は、下流流体通路112が上流流体通路111を部分的に又は完全に取り囲み得るようなシェル(すなわち、中空の幾何学形状)を含み得る。同様に、上流流体通路111は、例えば、円形、矩形、又は台形の断面形状を含み得る。下流流体通路112は、円形シェル、矩形シェル、又は台形シェルの断面形状を含み得る。実施形態では、下流流体通路112は、必ずしもシェル又は中空の幾何学形状を含まなくてもよいことが企図される。実施形態では、下流流体通路112は、上流流体通路111を取り囲まなくてもよい。したがって、実施形態では、下流流体通路112は、円筒形、矩形、円形、又は台形の形状を含み得る。
【0024】
1つ以上の実施形態によれば、上流流体通路111及び下流流体通路112は、同軸幾何形状を形成し得る。他の実施形態では、上流流体通路111及び下流流体通路112は、中心からずれた幾何形状を形成し得る。言い換えれば、上流流体通路111及び下流流体通路112は、同心であっても偏心であってもよい。1つ以上の実施形態によれば、上流流体通路111は、気密であってもよい。すなわち、上流流体通路111が下流流体通路112と流体連通する点まで、上流流体通路111が下流流体通路112と結合しないように、上流流体通路111は気密であってもよい。
【0025】
図1Cを参照すると、1つ以上の実施形態によれば、本体105は管からなってもよい。前述のように、本体105は、1つ以上の壁106によって画定されてもよい。1つ以上の壁106は、第1の直管セグメント120、コネクタ管セグメント121、及び第2の直管セグメント122を画定し得る。第1の直管セグメント120は、化学原料注入口101に接続され得る。第1の直管セグメント120はまた、コネクタ管セグメント121に接続され得る。コネクタ管セグメント121は、第1の直管セグメント120及び第2の直管セグメント122に接続され得る。第2の直管セグメント122は、二次化学原料排出口108に接続され得る。第1の直管セグメント120、コネクタ管セグメント121、及び第2の直管セグメント122は共に、細長い化学原料供給流経路109を画定し得る。化学原料供給流102は、化学原料注入口101を通って第1の直管セグメント120に入り得る。化学原料供給流102は、第1の直管セグメント120、コネクタ管セグメント121、及び第2の直管セグメント122を通過し得る。化学原料供給流102の第1の部分103は、複数の一次化学原料排出口107を通って容器110に入り得る。前述のように、複数の一次化学原料排出口107は、細長い化学原料供給流経路109の長さに沿って離間配置され得る。化学原料供給流102の第2の部分104は、容器110に入らないように、化学原料分配器100内に留まり得る。化学原料供給流102の第2の部分104は、二次化学原料排出口108を介して化学原料分配器100を出得る。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、第1の直管セグメント120及び第2の直管セグメント122は、実質的に平行であってもよい。いくつかの実施形態では、コネクタ管セグメント121は、(コネクタ管セグメント121が180°の屈曲部を含むように)U字形であってもよい。そのような実施形態では、第1の直管セグメント120及び第2の直管セグメント122は平行であってもよい。いくつかの実施形態では、化学原料分配器100が化学原料注入口101と二次化学原料排出口108との間に複数の第1の直管セグメント120及び複数の第2の直管セグメント122を備えるように、複数のコネクタ管セグメント121が使用され得ることが企図される。
【0027】
図1Dを参照すると、1つ以上の実施形態によれば、本体105は、容器110の外周を実質的にたどる輪郭を有するように成形されてもよい。いくつかの実施形態では、容器110は実質的に円形であってもよい。したがって、本体105は、円形又はリング形状を含んでもよい。第1の壁106Aは、細長い化学原料供給流経路109を画定し得る。第1の壁106Aは、本明細書で先に詳述したように、複数の一次化学原料排出口107を含み得る。
図1A、
図1B、及び
図1Cに関して前述したように、化学原料供給流102は、化学原料注入口101を介して化学原料分配器100に入り得る。化学原料供給流102は、化学原料分配器100の細長い化学原料供給流経路109に沿って移動し得る。化学原料供給流102の第1の部分103は、複数の一次化学原料排出口107を通って容器110に入り得る。化学原料供給流102の第2の部分104は、容器110に入らないように、化学原料分配器100内に留まり得る。化学原料供給流102の第2の部分104は、二次化学原料排出口108を介して化学原料分配器100を出得る。
【0028】
図2を参照すると、容器110の実施形態の概略断面図が示されている。
図2は、触媒による脱水素プロセスのための流動燃料ガス燃焼器システムとして使用される容器110を示す。しかしながら、本明細書において詳述されるように、化学原料分配器100は、様々な容器110で用いられ得る。再び
図2を参照すると、容器110は、概して円筒形状の下部201と錐台202を含む上部とを含み得る。錐台202と、錐台202と下側部分201との交点に引かれた内部水平仮想線との間の角度は、10~80度の範囲であり得る。10~80度の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、本明細書に開示される。例えば、管状構成要素と錐台202構成要素との間の角度は、10、40、又は60度の下限から30、50、70、又は80度の上限までの範囲であり得る。例えば、角度は、10~80度、又は代替的に30~60度、又は代替的に10~50度、又は代替的に40~80度であり得る。更に、代替の実施形態では、角度は、錐台202の高さに沿って、連続的又は不連続的に変化し得る。いくつかの実施形態では、容器110は、耐火性材料で裏打ちされていてもよく、されていなくてもよい。
【0029】
使用済み又は部分的に失活した触媒は、下降管203を通って容器110に入り得る。代替の構成では、使用済み又は部分的に失活した触媒は、米国特許第9,370,759(B2)号(代理人整理番号DOW 72935)に記載されているように、側部入口から又は底部供給口から容器110に入り、空気分配器を通過して上方へ向かい得る。使用された触媒は、はねよけ204に衝突し、それによって分配される。容器110は、はねよけ204の高さに又はそれよりわずかに下に位置する空気分配器205を更に含み得る。空気分配器205及び下降管203の出口206の上方には、グリッド207があり得る。グリッド207の上方には、複数の化学原料分配器100があり得る。1つ以上の追加のグリッド208は、化学原料分配器100の上方の容器110内に位置付けられ得る。実施形態では、化学原料分配器100は、米国特許出願第14/868,507号(代理人整理番号DOW 77770)に記載されているように、容器110に入り、容器110を実質的に横切って移動し得る。
【0030】
本明細書で前述したように、1つ以上の実施形態によれば、化学原料供給流102を分配するための方法は、化学原料供給流102を、化学原料注入口101を通して化学原料分配器100に入れることを含み得る。化学原料供給流102は、第1の部分103及び第2の部分104からなり得る。本方法はまた、化学原料供給流102の第1の部分103を化学原料分配器100から排出することを含み得る。化学原料供給流102の第1の部分103は、複数の一次化学原料排出口107を通過して容器110に入り得る。本方法は、化学原料供給流102の第2の部分104を、二次化学原料排出口108を通して化学原料分配器100から排出することを更に含み得る。本明細書で前述したように、二次化学原料排出口108は、複数の一次化学原料排出口107の下流にあり得る。したがって、化学原料供給流102の第2の部分104は、容器110に入ることはできない。
【0031】
別の実施形態によれば、化学原料供給流102を分配するための方法は、化学原料供給流102を、化学原料注入口101を通して化学原料分配器100に入れることを含み得る。この場合も、化学原料供給流102は、第1の部分103及び第2の部分104からなり得る。化学原料分配器100は、1つ以上の壁106を含む本体105を備え得る。1つ以上の壁106は、細長い化学原料供給流経路109及び複数の一次化学原料排出口107を画定し得る。複数の一次化学原料排出口107は、細長い化学原料供給流経路109の長さの少なくとも一部分に沿って離間配置され得る。本方法はまた、化学原料供給流102の第1の部分103を細長い化学原料供給流経路109に沿って通過させることを含み得る。化学原料供給流102の第1の部分103は、複数の一次化学原料排出口107を通過して化学原料分配器100から出て、容器110に入り得る。本方法は、化学原料供給流102の第2の部分104を、二次化学原料排出口108を通して化学原料分配器100から排出することを更に含み得る。化学原料供給流102の第2の部分104は、化学原料分配器100を通過することはできるが、容器110に入ることはできない。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、化学原料供給流102、化学原料供給流102の第1の部分103、及び化学原料供給流102の第2の部分104の流量は、一連の式によって表され得る。化学原料供給流102の流量Ciは、等式1によって表され得る。化学原料供給流102の第1の部分103の流量C1は、等式2によって表され得る。化学原料供給流102の第2の部分104の流量C2は、以下に示すように等式3によって表され得る。
Ci=(1+r)X (等式1)
C1=X (等式2)
C2=rX (等式3)
【0033】
等式1、2、及び3において、上に示されるように、rは、化学原料供給流102の第1の部分103の流量に対する化学原料供給流102の第2の部分104の流量の比であり、Xは、公称流量(すなわち、化学原料分配器100から出て容器110に入る化学原料供給流102の部分(第1の部分103)の流量)である。
【0034】
実施形態では、化学原料供給流102の第1の部分103の流量に対する化学原料供給流102の第2の部分104の流量の比は、0.1~3.0であり得る。例えば、化学原料供給流102の第1の部分103の流量に対する化学原料供給流102の第2の部分104の流量の比は、0.1~0.5、0.1~1.0、0.1~1.5、0.1~2.0、0.1~2.5、0.5~1.0、0.5~1.5、0.5~2.0、0.5~2.5、0.5~3.0、1.0~1.5、1.0~2.0、1.0~2.5、1.0~3.0、1.5~2.0、1.5~2.5、1.5~3.0、2.0~2.5、2.0~3.0、又は2.5~3.0であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、化学原料供給流102の第1の部分103の流量に対する化学原料供給流102の第2の部分104の流量の比は、0.5~1.5であり得る。例えば、化学原料供給流102の第1の部分103の流量に対する化学原料供給流102の第2の部分104の流量の比は、0.5~0.7、0.5~0.9、0.5~1.1、0.5~1.3、0.7~0.9、0.7~1.1、0.7~1.3、0.7~1.5、0.9~1.1、0.9~1.3、0.9~1.5、1.1~1.3、1.1~1.5、又は1.3~1.5であり得る。
【0036】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、化学原料供給流102の第2の部分104を再循環させることを更に含み得る。化学原料分配器100から排出される化学原料供給流102の第2の部分104は、化学原料供給流102が化学原料注入口101を通過する前に化学原料供給流102と混ぜ合わされ得る。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、容器110内部の温度は650℃を超えてもよく、化学原料分配器100の外周の最高表面温度は、容器100内部の温度を超えることはできない。他の実施形態では、容器110内部の温度は650℃を超えてもよく、化学原料分配器100の外周の最高表面温度は、650℃を超えることはできない。
【0038】
更に後述するように、
図3A、
図3B、及び
図4は、本明細書に記載の実施形態による化学原料分配器100の外周の最高表面温度及びピーク表面温度を更に示す。
【0039】
本明細書で前述したように、本明細書の実施形態の化学原料分配器100は、コーキングのリスクを低減し得る。コーキングは、閉塞及び流量不均等分布のリスクを生じさせ得るので、本明細書の実施形態の化学原料分配器100は、閉塞及び流量不均等分布のリスクを低減し得る。流量不均等分布はまた、化学原料分配器100内の化学原料供給流102の加熱によって引き起こされる可能性があり、これは、熱誘発流量不均等分布と称され得る。化学原料分配器100内の化学原料供給流102の温度が上昇するにつれて、化学原料供給流102の密度は減少し得る。質量流量は、ガス密度の平方根に比例する。化学原料供給流102の密度が化学原料分配器100の長さに沿って減少する場合、質量流量も化学原料分配器100の長さに沿って減少し得る。しかしながら、本開示の1つ以上の実施形態によれば、化学原料供給流102の温度上昇はより低くてもよく、その結果、化学原料供給流102の密度のいかなる変化も減少させる。したがって、熱誘発流量不均等分布が減少し得る。
【0040】
本開示の実施形態では、流量不均等分布(熱誘発流量不均等分布を含む)の相対的低減は、±15.0%未満、例えば、±14.5%未満、±14.0%未満、±13.5%未満、±13.0%未満、±12.5%未満、±12.0%未満、±11.5%未満、±11.0%未満、±10.5%未満、±10.0%未満、±9.5%未満、±9.0%未満、±8.5%未満、±8.0%未満、±7.5%未満、±7.0%未満、±6.5%未満、±6.0%未満、±5.5%未満、±5.0%未満、±4.5%未満、±4.0%未満、±3.5%未満、±3.0%未満、又は±3.0%未満であり得る。流量不均等分布は、第1の原理の質量、運動量及びエネルギー保存則に従ってシステム内の3D圧縮流及び共役熱伝達を数値的に予測することができる計算流体力学(CFD)プログラムANSYS Fluent(登録商標)を使用して決定されてもよい。流量不均等分布は、単に、分配器に沿った様々な点における完全な平均質量分配からの偏差である。
【0041】
図5に示されるように、化学原料供給流102の第2の部分104が化学原料分配器100から出される本開示の実施形態は、化学原料供給流102の第2の部分104が化学原料分配器100から出されない実施形態と比較して、流量不均等分布の減少を示す。実際に、本実施形態の流量不均等分布は、±7.5%未満であり得る。逆に、化学原料供給流102の第2の部分104が化学原料分配器100から出されない実施形態の流量不均等分布は、
図5に示されるように、±30.0%もの高さであり得る。
【実施例】
【0042】
化学原料分配器を通して化学原料を分配するためのシステム及びプロセスの様々な実施形態は、以下の実施例によって更に明確にされるであろう。これらの実施例は、本質的に例示的なものであり、本出願の主題を限定しないものとして理解されたい。
【0043】
実施例1:供給再循環の効果
実施例1では、計算流体力学(CFD)モデルを使用して、供給再循環を伴う化学原料分配器を、供給再循環を伴わない化学原料分配器と比較した。メタン、エチレン、及びプロピレンを含むガス流を52℃で化学原料分配器に供給した。次いで、化学原料分配器は、ガス流を、730℃で動作する流動床反応器内に方向付けた。両方の化学原料分配器は、同じガス流流量を有する。しかしながら、供給再循環を有する化学原料分配器では、ガス流の半分が流動床反応器に入ることを可能にし、ガス流の残りの半分は、化学原料分配器全体を通過させ、再循環させた。
【0044】
図3及び
図4に示すように、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器から出される本開示による実施形態(
図3A)は、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器から出されない実施形態(
図3B)と比較される。化学原料分配器の内壁表面のそれぞれにおける供給流のピーク表面温度は、CFDモデルから得た。供給物再循環を伴わない化学原料分配器と比較して、供給再循環を伴う化学原料分配器は、より低いピーク表面温度を示す。
図4に見られるように、供給再循環を伴わない化学原料分配器の遠位端(化学原料注入口の反対側の端部)は、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器から出される化学原料分配器の遠位端よりもはるかに高温である。
図4は、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器(401)から出されない化学原料分配器と比較した、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器(402)から出される化学原料分配器の長さにわたってはるかに均一な温度を示す。更に、
図4は、ピーク表面温度が、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器(401)から出されない実施形態ほど高い温度に達しないことを示す。このより低いピーク表面温度は、化学原料分配器から排出される化学原料供給流の第2の部分に起因し得る。ピーク表面温度は、コーキングのリスクを低減するために供給再循環量を調整することによって、プロセスの必要性に基づいて調節され得ることが、当業者には明らかであろう。
【0045】
加えて、
図5に示されるように、本開示の実施形態では、化学原料分配器にわたる一次化学原料排出口当たりの流量は、はるかに安定している。すなわち、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器から出されるとき(502)、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器から出されないとき(501)である。本明細書で前述したように、これは、流量不均等分布の減少に起因し得る。
【0046】
本開示の1つ以上の態様が本明細書に記載される。第1の態様は、化学原料分配器であって、化学原料供給流を化学原料分配器内に通す化学原料注入口であって、化学原料供給流は第1の部分及び第2の部分からなる、化学原料注入口と、1つ以上の壁及び複数の一次化学原料排出口を含む本体であって、1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定し、複数の一次化学原料排出口は、細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部分に沿って離間配置され、複数の一次化学原料排出口は、化学原料供給流の第1の部分を供給分配器から排出し、容器に入れるように動作可能である、本体と、複数の一次化学原料排出口の下流にある二次化学原料排出口であって、二次化学原料排出口は、化学原料供給流の第2の部分が化学原料分配器を通過し、容器に入らないように、化学原料供給流の第2の部分を化学原料分配器から排出するように動作可能である、二次化学原料排出口と、を備える、化学原料分配器を含み得る。
【0047】
第2の態様は、第1の態様を含み得、1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路の上流流体通路及び下流流体通路を画定し、上流流体通路は、化学原料注入口と流体連通しており、上流流体通路は、下流流体通路と流体連通しており、下流流体通路は、複数の一次化学原料排出口及び二次化学原料排出口と流体連通している。
【0048】
第3の態様は、第2の態様を含み得、上流流体通路は、1つ以上の壁によって下流流体通路から分離される。
【0049】
第4の態様は、第2の態様又は第3の態様のいずれかを含み得、下流流体通路は上流流体通路を取り囲む。
【0050】
第5の態様は、第2の態様から第4の態様のいずれかを含み得、上流流体通路は、円筒形状を含み、下流流体通路は、円筒形状を取り囲む円筒形シェル形状を含む。
【0051】
第6の態様は、第2の態様から第5の態様のいずれかを含み得、上流流体通路及び下流流体通路は、同軸幾何学形状を形成する。
【0052】
第7の態様は、第2の態様から第6の態様のいずれかを含み得、上流流体通路は気密である。
【0053】
第8の態様は、第1の態様を含み得、本体は管からなる。
【0054】
第9の態様は、第8の態様を含み得、本体は、第1の直管セグメントと、コネクタ管セグメントと、及び第2の直管セグメントと、を含み、第1の直管セグメントはコネクタ管セグメントに接続され、コネクタ管セグメントは第2の直管セグメントに接続され、第1の直管セグメント及び第2の直管セグメントは実質的に平行である。
【0055】
第10の態様は、第1の態様を含み得、本体は、容器の外周を実質的にたどる輪郭を有するように成形される。
【0056】
第11の態様は、化学原料供給流を分配するための方法であって、化学原料供給流を化学原料注入口を通して化学原料分配器に入れることであって、化学原料供給流は第1の部分及び第2の部分からなる、ことと、化学原料供給流の第1の部分を、複数の一次化学原料排出口を通して化学原料分配器から排出し、容器に入れることと、化学供給流の第2の部分が容器に入らないように、化学原料供給流の第2の部分を、複数の一次化学原料排出口の下流にある二次化学原料排出口を通して化学原料分配器から排出することと、を含む、方法を含み得る。
【0057】
第12の態様は、第11の態様を含み得、化学原料分配器は、細長い化学原料供給流経路を画定する1つ以上の壁と、細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部分に沿って離間配置された複数の一次化学原料排出口と、を含む本体を備える。
【0058】
第13の態様は、第11の態様又は第12の態様のいずれかを含み得、化学原料供給流の第2の部分の流量に対する化学原料供給流の第1の部分の流量の比は、0.1~3.0である。
【0059】
第14の態様は、第11の態様又は第12の態様のいずれかを含み得、化学原料分配器から排出される化学原料供給流の第2の部分が、化学原料注入口を化学原料供給流が通過する前に、化学原料供給流と混ぜ合わされるように、供給流の第2の部分を再循環させることを更に含む。
【0060】
第15の態様は、第11の態様又は第12の態様のいずれかを含み得、容器内部の温度は650℃超であり、化学原料分配器の外周の最高表面温度は650℃を超えない。
【0061】
最後に、特許請求された主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される実施形態に様々な修正及び変更を加え得ることが当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書に記載される様々な実施形態の修正及び変更を包含することが意図される。
【国際調査報告】