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特表2023-544296エチレンビニルアセタールを含む多層音減衰中間膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】エチレンビニルアセタールを含む多層音減衰中間膜
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20231016BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231016BHJP
   C08F 8/28 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C03C27/12 D
C03C27/12 Z
B32B17/10
B32B27/30 102
C08F8/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519266
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021075881
(87)【国際公開番号】W WO2022063749
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】20198638.7
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,グレータ
(72)【発明者】
【氏名】ベークハイゼン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハールト,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AG00D
4F100AG00E
4F100AK23A
4F100AK23B
4F100AK23C
4F100AK80A
4F100AK80C
4F100AL01A
4F100AL01B
4F100AL01C
4F100AL09B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA04
4F100JB16B
4F100JH01
4F100JH01A
4F100JH01C
4F100YY00A
4F100YY00C
4G061AA02
4G061AA06
4G061AA11
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB18
4G061CD02
4G061CD18
4J100AA02Q
4J100AD02P
4J100CA04
4J100CA31
4J100HA43
4J100HB25
4J100HB37
4J100HC19
4J100HE05
4J100JA03
(57)【要約】
本発明は、エチレンビニルアセタールを含む多層音減衰中間膜に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの個別膜を含む合わせガラス用音減衰中間膜であり、第1の個別膜(A)はエチレンビニルアセタールを含む、音減衰中間膜。
【請求項2】
前記エチレンビニルアセタールは、25~60mol%の範囲のエチレン単位を含む、請求項1に記載の音減衰中間膜。
【請求項3】
少なくとも3つの個別膜を含み、第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)は外層を構成し、第2の個別が(B)が内層を構成する、請求項1又は2に記載の音減衰中間膜。
【請求項4】
第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)はエチレンビニルアセタールを含む、請求項3に記載の音減衰中間膜。
【請求項5】
第1の個別膜(A)、第2の個別膜(B)及び第3の個別膜(C)はエチレンビニルアセタールを含む、請求項4に記載の音減衰中間膜。
【請求項6】
第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)はエチレンビニルアセタールを含み、第2の個別膜(B)は熱可塑性エラストマーを含む、請求項3に記載の音減衰中間膜。
【請求項7】
第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)はエチレンビニルアセタールを含み、第2の個別膜(B)はポリビニルアセタールを含む、請求項3に記載の音減衰中間膜。
【請求項8】
第2の個別膜(B)はエチレンビニルアセタールを含む、請求項3に記載の音減衰中間膜。
【請求項9】
第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)はポリビニルアセタールを含む、請求項8に記載の音減衰中間膜。
【請求項10】
第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)はアイオノマーを含む、請求項3に記載の音減衰中間膜。
【請求項11】
個別膜(A)、(B)又は(C)の少なくとも1つがくさび形である、請求項1~10のいずれか1項に記載の音減衰中間膜。
【請求項12】
個別膜(A)、(B)及び(C)がくさび形である、請求項11に記載の音減衰中間膜。
【請求項13】
個別膜(A)、(B)及び(C)の少なくとも1つが、10~50重量%の量で可塑剤を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の音減衰中間膜。
【請求項14】
ISO16940(2008年/12月現在)に準拠して測定したときの損失係数値が0.1より大きい、請求項1~13のいずれか1項に記載の音減衰中間膜。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の音減衰中間膜で組み合わされた2枚の板ガラスを含む合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンビニルアセタールを含む多層音減衰中間膜に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせ安全ガラス(LSG)は、一般的に2枚のガラスパネルと、該ガラスパネルを接着させる中間膜で構成されている。可塑剤を含む部分的にアセタール化されたポリビニルアルコール、特にポリビニルブチラール(PVB)が膜材料として主に使用されている。LSGは、例えば自動車分野ではフロントガラスやサイドウィンドウとして、建築分野では安全ガラスとして使用されている。
【0003】
合わせガラスの特徴としてますます重要になるのがその音減衰特性である。これは例えば、特に柔らかく、吸音性の単層膜によって実現し得る。しかし、これらの膜の機械的安定性は大抵不十分で、ガラスへの十分な接着性を示さない。
【0004】
あるいは、個別層がその機械的強度に関しては異なるので、吸音が機械的デカップリングによって達成される多層システムを使用し得る。PVBを含むこうした多層システムは、例えば、米国特許出願公開第2010/028642号明細書に記載されている。
【0005】
しかし、当業界では改善された音減衰中間膜がいまだ求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/028642号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の1つの目的は、音減衰特性が改善された、機械的安定性が改善された、環境フットプリントが改善された、熱安定性が改善された、水取り込みプロファイルが改善された、製膜中の加工性が改善された、又は製造コストもしくは原材料コストが改善された中間膜を提供することである。
【0008】
これらの及び他の目的は驚くべきことに本発明によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様では、本発明は少なくとも2つの個別膜を含む合わせガラス用音減衰中間膜であって、前記個別膜の少なくとも1つがエチレンビニルアセタールを含む、音減衰中間膜に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましくは、前記音減衰中間膜は、エチレン単位が25~60モル%の範囲のエチレンビニルアセタールを含む。より好ましくは、エチレンビニルアセタール中のエチレン単位の割合が30~55モル%、さらに好ましくは35~50モル%である。
【0011】
好ましくは、エチレンビニルアルコール中のエチレン単位の割合が、25~60モル%、より好ましくは30~55モル%、さらに好ましくは35~50モル%である。
【0012】
また好ましくは、前記音減衰中間膜は、第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)が外層を構成し、第2の個別膜(B)が内層を構成する少なくとも3つの個別膜を含む。
【0013】
また好ましくは、前記第1の個別膜(A)及び前記第3の個別膜(C)がエチレンビニルアセタールを含み、より好ましくは、前記第1の個別膜(A)、第2の個別膜(B)及び第3の個別膜(C)がエチレンビニルアセタールを含む。
【0014】
従って、本発明のこの実施形態は、合わせ安全ガラス用中間膜として使用する場合にガラスに面しているエチレンビニルアセタールを含む2つの外層と、少なくとも1つの内層を含む多層膜に関する。内層は通常、2つの外層よりも柔らかくなるように選択され、しばしば音減衰層と称されることがある。個別膜が全てエチレンビニルアセタールを含む場合、該エチレンビニルアセタールは通常グレードが異なり、例えばポリマー鎖中のエチレン単位の量、アセタール化度及び/又は鹸化度が異なる。
【0015】
好ましくは、エチレンビニルアルコールは、エチレンとビニルアセテートを共重合させ、得られたコポリマーを加水分解することにより得られる。加水分解反応では、従来既知のアルカリ触媒や酸触媒を用いることができ、それらの中でも溶媒としてメタノール及び苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いた加水分解反応が便利である。
【0016】
本発明のこの実施形態で用いるエチレンビニルアセタールの製造方法は特に限定されないが、酸性条件下でエチレンビニルアルコール溶液にアルデヒドを添加し、アセタール化反応に付す方法によって製造し得る。
【0017】
アセタール化反応後に得られた反応生成物をアルカリで中和後、水で洗浄し、エチレンビニルアセタールを得る。
【0018】
アセタール化反応を行うための触媒は特に限定されず、任意の有機酸又は無機酸を用いてもよい。その例としては、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸、炭酸などが挙げられる。
【0019】
酢酸基の鹸化度は特に限定されないが、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上、最も好ましくは99.9モル%以上である。
【0020】
好ましくは、本発明のエチレンビニルアセタール樹脂中のビニルアルコール単位の割合は、樹脂を構成する全モノマー単位に基づいて20~71モル%である。
【0021】
本発明に用いられるエチレンビニルアセタールのアセタール化度は、好ましくは1モル%~80モル%、また好ましくは5モル%以上70モル%未満、より好ましくはアセタール化度の下限が6モル%を超える、7モル%を超える、8モル%を超える、9モル%を超える、最も好ましくは10モル%を超える。さらに、アセタール化度の上限は、より好ましくは38モル%以下、36モル%以下、34mol%以下、32mol%以下の順であり、最も好ましくは30モル%未満である。別の好ましいアセタール化度は、30~50モル%である。
【0022】
好ましくは、アセタール基は個々に1~7個の炭素原子を有する、すなわちそれらは1~7個の炭素原子を有するアルデヒドとの縮合反応に由来する。より好ましくは、それらはメタナール(ホルムアルデヒド)、アセトアルデヒド、n-プロパナール(プロピオンアルデヒド)、n-ブタナール(ブチルアルデヒド)、イソ-ブタナール(2-メチル-1-プロパナール、イソ-ブチルアルデヒド)、n-ペンタナール(バレルアルデヒド)、イソ-ペンタナール(3-メチル-1-ブタナール)、sec-ペンタナール(2-メチル-1-ブタナール)、tert-ペンタナール(2,2-ジメチル-1-プロパナール)、n-ヘキサナール(カプロンアルデヒド)、イソヘキサナール(2-メチル-1-ペンタナール、3-メチル-1-ペンタナール、4-メチル-1-ペンタナール)、2,2-ジメチル-1-ブタナール、2,3-ジメチル-1-ブタナール、3,3-ジメチル-1-ブタナール、2-エチル-1-ブタナール、n-ヘプタナール、2-メチル-1-ヘキサナール、3-メチル-1-ヘキサナール、4-メチル-1-ヘキサナール、5-メチル-1-ヘキサナール、2,2-ジメチル-1-ペンタナール、3,3-ジメチル-1-ペンタナール、4,4-ジメチル-1-ペンタナール、2,3-ジメチル-1-ペンタナール、2,4-ジメチル-1-ペンタナール、3,4-ジメチル-1-ペンタナール、2-エチル-1-ペンタナール、2-エチル-2-メチル-1-ブタナール、2-エチル-3-メチル-1-ブタナール、3-エチル-2-メチル-1-ブタナール、シクロヘキシルアルデヒド及びベンズアルデビドから成るリストに由来する。最も好ましくは、それらはイソ-ブチルアルデヒド又はn-ブチルアルデヒドとの縮合反応に由来する。
【0023】
また好ましくは、エチレンビニルアセタールは混合アセタール、すなわち、少なくとも2つの異なるアセタール基を含む。言い換えれば、本発明で用いられるエチレンビニルアセタールは、それぞれのエチレンビニルアルコールの2つのヒドロキシ基と1つのアルデヒドとの反応に由来する第1のアセタール基と、それぞれのエチレンビニルアルコールの他の2つのヒドロキシ基と第2のアルデヒドとの反応から得られる少なくとも第2のアセタール基とを含み、該第1のアルデヒドは該第2のアルデヒドと異なる。好ましいアルデヒドは、上記のアセタール基を1つ有するアセタールに使用されるものと同じである。
【0024】
好ましくは、本発明プロセスで使用されるエチレンビニルアセタールは、ガラス転移温度(Tg)が30、35、40、45、又は50℃以上である。また、好ましくは、Tgが90、75、70、65、60、55℃である。より好ましくは、本発明プロセスで使用されるエチレンビニルアセタールは、Tgが30~90℃、最も好ましくは35~75℃、具体的には40~55℃である。
【0025】
ガラス転移温度は、DIN 53765に準拠してマイナス50℃~200℃の温度間隔で10K/分の加熱速度を用いる示差走査熱量測定法(DSC)によって決定される。1番目の加熱傾斜、それに続く冷却傾斜、それに続く2番目の加熱傾斜が使用された。ガラス転移温度の位置は、DIN 51007に準拠して、2番目の加熱傾斜に関連する測定曲線上に定められた。DIN中点(Tg DIN)は、ハーフステップ高さの水平線と測定曲線との交点として定義された。ステップ高さは中央接線とガラス転移前後の測定曲線のベースラインとの2つの交点の垂直距離によって定義された。
【0026】
融点(溶融温度、Tm)は、DIN EN ISO 11357-3:2018に準拠して示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。
【0027】
エチレンビニルアセタールのビニルアルコール含有量とビニルアセテート含有量は、DIN ISO 3681(アセテート含有量)及びDIN ISO 53240(PVA含有量)に準拠して決定された。ビニルアセタール含有量は、DIN ISO 53401/53240に準拠して決定されたビニルアルコール含有量及びビニルアセテート含有量の合計と、100にするのに必要なエチレンの合計からの残りの部分として計算できる。アセタール化度は、ビニルアセタール含有量をビニルアルコール含有量、ビニルアセタール含有量、及びビニルアセテート含有量の合計で除することによって算出できる。重量%からモル%への変換は、当業者に公知の計算式で行うことができる。
【0028】
エチレンビニルアセタール樹脂のエチレン含有量は、NMR分光法によって測定される。まず、エチレンビニルアセタール樹脂をエタノールに溶解し、2N塩酸ヒドロキシルアミン溶液と塩酸を加え、該混合物を水槽中コンデンサーで還流下4時間撹拌し、冷却後、アンモニア水を加える。その後、メタノールを加え、ポリマーを沈殿させ、水洗、乾燥し、エチレンビニルアルコールコポリマーを得る。次に、このエチレンビニルアルコールコポリマーを120℃のDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、室温まで冷却後、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン及び無水酢酸を加え、1時間撹拌し、その後イオン交換水及びアセトンで沈殿させ、乾燥してエチレンビニルアセテートコポリマーを得る。このポリマーをDMSO-d6に溶解し、400MHzのプロトンNMRスペクトロメーターで測定する。得られたスペクトルを256回積分した。エチレン-ビニルアルコールコポリマーのエチレン単位のモル比は、エチレン単位とビニルアセテート単位に由来するメチンプロトン(1.1~1.9ppmのピーク)とビニルアセテート単位に由来する末端メチルプロトン(2.0ppmのピーク)の強度比から算出される。なお、エチレン単位はアセタール化反応の影響を受けないため、アセタール化反応前のエチレンビニルアルコールコポリマーのエチレン単位のモル比(n)は、アセタール化反応後に得られるエチレンビニルアセタール樹脂のエチレン単位のモル比(n)に等しい。
【0029】
また、本発明の中間膜は、上述したエチレンビニルアセタールとは異なる他のポリマーを含み得る。それはヒドロキシ含有量、エチレン含有量、アセテート含有量及び/又は重合度及び/又はアセタール化度及び/又はアセタールの種類が異なる、1つ又は複数の他のエチレンビニルアセタールグレードを含み得る。あるいは、それはポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートコポリマー(PETG)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、木材充填複合材料、金属充填複合材料、炭素繊維充填複合材料、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリオレフィン、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アイオノマー、ポリブチラールのようなポリビニルアセタール及びこれらの混合物から成る群から選択される任意のポリマーも含み得る。
【0030】
好ましくは、前記第1の個別膜(A)及び前記第3の個別膜(C)はエチレンビニルアセタールを含み、前記第2の個別膜(B)は熱可塑性エラストマーを含む。
【0031】
熱可塑性エラストマーとは、一般にソフトセグメントとハードセグメントを有する材料を含む、例えば、ポリスチレン系エラストマー(ソフトセグメント:ポリブタジエン、ポリイソプレン/ハードセグメント:ポリスチレン)、ポリオレフィン系エラストマー(ソフトセグメント:エチレンプロピレンゴム/ハードセグメント:ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル系エラストマー(ソフトセグメント:ポリ塩化ビニル/ハードセグメント:ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン系エラストマー(ソフトセグメント:ポリエーテル、ポリエステル、又はポリカーボネート/ハードセグメント:ポリウレタン)、ポリエステル系エラストマー(ソフトセグメント:脂肪族ポリエステル/ハードセグメント:芳香族ポリエステル)、ポリエーテルエステル系エラストマー(ソフトセグメント:ポリエーテル/ハードセグメント:ポリエステル)、ポリアミド系エラストマー(ソフトセグメント.ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステル、又はポリエーテル/ハードセグメント:ポリアミド(例えばナイロン樹脂など)、ポリブタジエン系エラストマー(ソフトセグメント:非晶質ブチルゴム/ハードセグメント:シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン樹脂)、アクリルエラストマー(ソフトセグメント:ポリアクリレートエステル/ハードセグメント:ポリメチルメタクリレート)など。なお、上記熱可塑性エラストマーは、単独で用いてもよいし、その2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
熱可塑性エラストマー中のハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、約5質量%以上、又は約7質量%以上、又は約8質量%以上、又は約10質量%以上、又は約14質量%以上、又は約16質量%以上、又は約18質量%以上が好ましい。ハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、約40質量%以下、又は約30質量%以下、又は約20質量%以下が好ましい。ハードセグメントの含有量が約5質量%未満であると、層Bの成形が困難となる、tan dのピーク高さが低くなる、積層体の曲げ剛性が小さくなる、又は高周波領域での遮音性が低下する傾向がある。ハードセグメントの含有量が約40質量%を超えると、熱可塑性エラストマーの特性が発揮されにくい、遮音性能の安定性が低下する、又は室温付近の遮音特性が低下する傾向がある。
【0033】
熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、約60質量%以上、又は約70質量%以上、又は約80質量%以上が好ましい。ソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、約95質量%以下、又は約92質量%以下、又は約90質量%以下、又は約88質量%以下、又は約86質量%以下、又は約84質量%以下、又は約82質量%以下が好ましい。ソフトセグメントの含有量が約60質量%未満であると、熱可塑性エラストマーの特性が発揮されにくい傾向がある。ソフトセグメントの含有量が約95質量%より多いと、層Bの成形が困難になる、tan dのピーク高さが低くなる、積層体の曲げ剛性が低下する、又は高周波領域での遮音性が低下する傾向がある。ここで、複数の熱可塑性エラストマーが混合されている場合、熱可塑性エラストマー中のハードセグメントとソフトセグメントの含有量は、それぞれ混合物の平均値と見なされる。
【0034】
成形性と遮音性を両立させる観点から、熱可塑性エラストマーとして、ハードセグメントとソフトセグメントを有するブロックコポリマーを使用することがより好ましい。
なおその上に、遮音性をさらに向上させる観点から、ポリスチレン系エラストマーを使用することが好ましい。
【0035】
また、熱可塑性エラストマーとして、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムなどの架橋ゴムを使用してよい。
【0036】
熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニルモノマーとビニルモノマーもしくは共役ジエンモノマーとのコポリマー、又は該コポリマーの水素添加物であることが好ましい。遮音性を示すゴムとしての機能とプラスチックとしての機能の両方を両立させる観点から、コポリマーは、芳香族ビニルポリマーブロックと脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックを有するブロックコポリマー、例えば、ポリスチレン系エラストマーが好ましい。
【0037】
熱可塑性エラストマーとして、芳香族ビニルポリマーブロックとビニルポリマーブロックもしくは共役ジエンポリマーブロック、例えば、芳香族ビニルポリマーブロックと脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックとを有するブロックコポリマーを用いる場合、これらのポリマーブロックの結合型は特に限定されず、直鎖結合型、分岐鎖結合型、放射結合型及びこれらの2つ以上が組み合わされた結合型のいずれであってもよい。その中でも、直鎖結合型が好ましい。
【0038】
芳香族ビニルポリマーブロックを「a」で、また脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックを「b」で表したときに、直鎖結合型の例としては、a-bで示されるジブロックコポリマー、a-b-a又はb-a-bで示されるトリブロックコポリマー、a-b-a-bで示されるテトラブロックコポリマー、a-b-a-b-a又はb-a-b-a-bで示されるペンタブロックコポリマー、(a-b)nX型コポリマー(Xはカップリング残基、nは2以上の整数を表す)、及びこれらの混合物が挙げられる。それらの中で、ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーが好ましく、トリブロックコポリマーは、a-b-aで示されるトリブロックコポリマーがより好ましい。
【0039】
脂肪族不飽和炭化水素ポリマーブロックを構成する脂肪族不飽和炭化水素モノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-フェニル-1-ブテン、6-フェニル-1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、5-メチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2-フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、3-フルオロプロペン、トリフルオロエチレン、3,4-ジクロロ-1-ブテン、ブタジエン、イソプレン、ジシクロペンタジエン、ノルボメン、アセチレンなどが挙げられる。これらの脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、単独で用いてもよいし、その2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ブロックコポリマーの製造方法は特に限定されないが、例えば、アニオン重合法、カチオン重合法、ラジカル重合法などによって製造できる。例えば、アニオン重合の場合、その具体例としては、以下のものが挙げられる。
(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として用いて、芳香族ビニルモノマー、共役ジエンモノマー、続いて芳香族ビニルモノマーを連続的に重合する方法。
(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として用いて、芳香族ビニルモノマーと共役ジエンモノマーを連続的に重合し、続いてカップリング剤を添加してカップリングを行う方法。
(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用いて、共役ジエンモノマー、続いて芳香族ビニルモノマーを連続的に重合する方法。
【0041】
好適な熱可塑性エラストマーの具体例は、例えば、米国特許出願公開第2010/239802号明細書を参照することで見出すことができる。
【0042】
好ましい一実施形態において、熱可塑性エラストマーは、少なくとも
(A)主に芳香族ビニル化合物単位から構成されるポリマーブロック、及び
(B)主に1,3-ブタジエン単位から構成される、又は主にイソプレン単位と1,3-ブタジエン単位から構成されるポリマーブロック
を含むブロックコポリマーを水素添加することによって形成される水添ブロックコポリマーであって、ポリマーブロック(A)の含有量が水添ブロックコポリマーの全量に基づいて約5%~約40質量%であり、ポリマーブロック(B)の水素添加率が約70%以上であり、水添ブロックコポリマーのガラス転移温度が約-45℃~約30℃である。
【0043】
別の好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは、少なくとも、主に芳香族ビニル化合物単位から構成されるポリマーブロック(C)及び、主に1,3-ブタジエン単位から構成される又は主にイソプレン単位及び1,3-ブタジエン単位から構成されるポリマーブロック(D)を含むブロックコポリマーを水素添加することによって形成される水添ブロックコポリマーであって、ポリマーブロック(C)の含有量が、水添ブロックコポリマーの全量に基づいて約10質量%~約40質量%であり、ポリマーブロック(D)の水添率が約80%以上であり、水添ブロックコポリマーのガラス転移温度が約-45℃未満である。
【0044】
上記2つの好ましい実施形態において、望ましくは、芳香族ビニル化合物がスチレンである、及び/又は、ポリマーブロック(B)及び(D)が主にイソプレン単位及び1,3-ブタジエン単位から構成される、及び/又は、水添ブロックコポリマーがA1-B-A2又はC1-D-C2型構造を有するトリブロックコポリマーである。
【0045】
本発明の別の実施形態では、第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)はエチレンビニルアセタールを含み、第2の個別膜(B)はポリビニルアセタールを含む。
【0046】
上記のような他のアルデヒドも有利に使用できるが、好ましくは、個別膜(B)はポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化することによって得られるポリビニルブチラール(PVB)をベースとする。
【0047】
好ましくは、個別膜(B)は、ポリビニルアセテート基の部分が5~8モル%のポリビニルアセタールを含む。
【0048】
好ましくは、個別膜(B)は、ポリビニルアルコール基の部分が18重量%未満、より好ましくは14重量%未満、最も好ましくは11~13.5重量%、具体的には11.5~13重量%未満のポリビニルアセタールを含む。
【0049】
好適なポリビニルアセタールの具体例は、例えば、米国特許出願公開第2010/028642号明細書を参照することによって見出すことができる。
【0050】
別の好ましい実施形態では、第2の個別膜(B)は、エチレンビニルアセタールを含む。従って、エチレンビニルアセタールは、より硬い2つの外膜で補われるより柔らかいコア材料である。
【0051】
好ましくは、第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)は、ポリビニルアセタールを含む。
【0052】
好適には、ポリビニルアセタールは、ポリアセテート基の部分が0.1~11モル%、好ましくは0.1~4モル%、より好ましくは0.1~2モル%である。
【0053】
また好適には、ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール基の部分が17~22重量%、好ましくは18~21重量%、より好ましくは19.0~20.5重量%である
【0054】
好適なポリビニルアセタールの具体例は、例えば、米国特許出願公開第2010/028642号明細書を参照することによって見出すことができる。
【0055】
本発明の別の好ましい実施形態では、第1の個別膜(A)及び第3の個別膜(C)は、アイオノマーを含む。
【0056】
アイオノマー樹脂は、エチレンに由来する構成単位、a,b-不飽和カルボン酸に由来する構成単位、及び任意選択で後述の他の構成単位を有する樹脂を含む、部分的に中和されたエチレンa,b-不飽和カルボン酸コポリマーであって、a,b-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の少なくとも一部がイオンで中和されている。
【0057】
ベースポリマーとなるエチレン-a,b-不飽和カルボン酸コポリマーにおいて、a,b-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有割合は、(全コポリマーの質量に基づいて)通常2質量%以上、又は5質量%以上である。加えて、a,b-不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有割合は、(全コポリマーの質量に基づいて)通常30質量%以下である。
【0058】
アイオノマーを構成するa,b-不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、a-エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの混合物から選択される。別の実施形態では、a,B-エチレン性不飽和カルボン酸は、メタクリル酸である。
【0059】
エチレン-酸コポリマーは、a,b-エチレン性不飽和カルボン酸エステルなどの1つ又は複数の追加のコモノマーの共重合化単位をさらに含んでいてもよい。存在する場合、通常は3~10個、又は3~8個の炭素を有するアルキルエステルが使用される。不飽和カルボン酸の好適なエステルの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ウンデシルアクリレート、ウンデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルミルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルフマレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、追加のコモノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルアセテート、及びこれらの2つ以上の混合物から選択される。別の実施形態では、追加のコモノマーは、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート及びイソブチルメタクリレートの1つ又は複数である。別の実施形態では、追加のコモノマーは、n-ブチルアクリレート及びイソブチルアクリレートの一方又は両方である。
【0060】
好適なエチレン酸コポリマーのASTM法D1238-89に準拠して190℃及び2.16kgで決定されるメルトフローレート(MFR)は約1から、又は約2から、約4000g/10分まで、又は1000g/10分まで、又は約400g/10分までである。
【0061】
最後に、好適なエチレン酸コポリマーは、例えば、米国特許第3404134号明細書、米国特許第5028674号明細書、米国特許第6500888号明細書、米国特許第6518365号明細書、米国特許第8334033号明細書及び米国特許第8399096号明細書に記載のように合成できる。
【0062】
アイオノマーを得るために、エチレン酸コポリマーは、1つ又は複数の塩基との反応によって部分的に中和される。エチレン酸コポリマーを中和するための好適な手順の一例は、米国特許第3404134号明細書及び米国特許第6518365号明細書に記載されている。中和後、エチレン酸コポリマー中に存在するカルボン酸基の水素原子の約1%から、又は約10%から、又は約15%から、又は約20%から約90%まで、又は約60%まで、又は約55%まで、又は約30%までが、他のカチオンに置換される。別の言い方をすれば、エチレン酸コポリマー中に存在するカルボン酸基の総含有量の約1%から、又は約10%から、又は約15%から、又は約20%から約90%まで、又は約60%まで、又は約55%まで、又は約30%までが中和される。もう一つ別の表現では、中和されていないエチレン酸コポリマーについて計算又は測定されたエチレン酸コポリマー中に存在するカルボン酸基の総含有量に基づいて、約1%から、又は約10%から、又は約15%から、又は約20%から約90%まで、又は約60%まで、又は約55%まで、又は約30%までのレベルまで中和される。中和レベルは、特定の最終用途に合わせて調整することができる。
【0063】
アイオノマーは、カルボキシレートアニオンの対イオンとしてカチオンを含む。好適なカチオンとしては、アイオノマー組成物が合成、加工、使用される条件下で安定である任意の正電荷種が挙げられる。好適なカチオンは、2種以上の組み合わせで使用できる。いくつかの好ましいアイオノマーでは、カチオンは金属カチオンであり、一価、二価(divalent)、二価(bivalent)、多価のいずれであってもよい。有用な一価の金属カチオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な二価金属カチオンとしては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な3価の金属カチオンとしては、アルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウムなどのカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な多価金属カチオンとしては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。金属カチオンが多価の場合、米国特許第3404134号明細書に記載のように、ステアレート、オレエート、サリシレート、フェノレートラジカルなどの錯化剤を含むことができる。別の好ましい組成では、使用される金属カチオンは、一価又は二価の金属カチオンである。好ましい金属カチオンは、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム、及びこれらの金属カチオンの1つ又は複数の組み合わせである。より好ましい組成では、カチオンは、ナトリウムカチオン、マグネシウムカチオン、亜鉛カチオン及びそれらの組み合わせである。
【0064】
一実施形態では、アイオノマー中のカルボキシレートアニオンに対する対イオンはナトリウムカチオンであり、ナトリウムカチオン以外の対イオンは、アイオノマー中のカルボキシレート基の総当量に基づいて、5当量%未満、3当量%未満、2当量%未満、又は1当量%未満の少量で場合によっては存在していてもよい。一実施形態では、対イオンは、実質的にナトリウムイオンである。
【0065】
好ましくは、個別膜(A)、(B)又は(C)の少なくとも1つがくさび形である。より好ましくは、個別膜(A)、(B)及び(C)が全てくさび形である。
【0066】
従って、本発明は、くさび形及び非くさび形の個別膜の組み合わせ又は全てがくさび形の個別膜に基づく部分的に又は完全にくさび形の中間膜に関する。ヘッドアップディスプレイを搭載した自動車では、二重像を防ぐためにくさび形の中間膜が一般的に使用されている。
【0067】
好ましくは、個別膜(A)、(B)及び(C)の少なくとも1つは10~50重量%の量の可塑剤を含む。従って、個別膜は、ポリマー材料以外に、(組成物の総重量に基づいて)最大50重量%の1つ又は複数の可塑剤を含む。対応するポリマーを可塑化することが知られている任意の化合物を使用できる。好ましい可塑剤は、脂肪族ジオール、特に脂肪族ポリエーテルジオール及び/又はポリエーテルポリオールと脂肪族カルボン酸とのジエステル、好ましくはポリアルキレンオキシドのジエステル、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールと脂肪族(C6-C10)カルボン酸、好ましくは2-エチル酪酸及びn-へプタン酸とのジエステル、また、脂肪族又は芳香族(C2-C18)ジカルボン酸、好ましくはアジピン酸、セバシン酸、フタル酸と脂肪族(C4-C12)アルコールとのジエステル、好ましくはジヘキシルアジペート、フタレート、トリメリテート、ホスフェート、脂肪酸エステル、特にトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールエチルヘキサノエート(3G8)、芳香族カルボン酸エステル、特にジベンゾエート及び/又はヒドロキシカルボン酸エステルである。特に好ましい可塑剤は、平均エトキシル化度5の2-ブチルオクタノールであるISOFOL 12+5 EO、ジヘキシルアジペート(DHA)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)、ジエチレングリコールジベンゾエート(MONOCIZER PB-3A)、MONOCIZER PB-10及びこれらの混合物である。異なる及び同一の組成の可塑剤の混合物だけでなく、単一の可塑剤も含有してよい。「異なる組成」という用語は、混合物中の可塑剤の種類とその割合の両方を意味する。積層前の出発状態で、少なくとも22重量%、例えば22.0~45.0重量%、好ましくは25.0~32.0重量%、特に26.0~30.0重量%の可塑剤を含有してもよい。
【0068】
また任意選択で、本発明の中間膜は、上述したエチレンビニルアセタール以外の他の成分を含む。例えば、酸化防止剤、光学的光沢剤、安定剤、加工助剤、有機または無機ナノ粒子、発熱ケイ酸、シリカ、表面活性物質及び/又はレオロジー改質剤を含有してもよい。
【0069】
減衰特性は厚さ2mmのガラスパネルの間に積層された厚さ0.8mmの中間膜で構成される試験片に対してISO16940に準拠して決定される。毎回、第1モードが決定され、該第1モードの対応する損失係数が決定された。
【0070】
本発明の膜の吸音効果は、将来のガラス積層体の適用温度で最も高くしなければならない。自動車用ガラスの場合、空調ユニットによって冬は窓が熱され夏は冷却されるため、適用温度は20℃程度である。上述の試験セットアップにおいて、本発明の膜は、好ましくは、15~25℃の温度範囲において最大減衰を示す。好ましくは、損失係数値は0.1より大きく、より好ましくは0.15より大きく、最も好ましくは0.2より大きい。
【0071】
中間膜の製造方法は、特に限定されない。具体的には、出発樹脂組成物は、押出成形、ブロー成形、射出成形、溶液キャストなどにより、好ましくは押出成形により、膜に成形できる。押出時の樹脂温度は、好ましくは170~250℃、より好ましくは180~240℃、さらにより好ましくは190~230℃である。樹脂温度が高くなりすぎると、エチレンビニルアセタール樹脂が部分分解を受ける。
【0072】
本発明に従って使用される個別膜は、遮音特性が悪影響を受けない限り、それぞれほぼ任意の厚さで使用できる。個別膜は全て、例えば同じ厚さを有することができるが、厚さの異なる個別膜の組み合わせも可能である。3層膜A/B/Cとして本発明の中間膜の好ましい配置の1つでは、外膜AおよびCはほぼ同じ厚さを有する一方で、吸音膜Bは可能な限り薄くなり得る。多層膜の総厚が0.8mmの場合、吸音膜は0.05~0.35mmの厚さであってもよい。本発明の多層膜は業界で通例の、例えば0.38、0.76、または1.14mm(すなわち0.38mmの倍数)の総厚を有することが好ましい。
【0073】
本発明の中間膜は、例えば膜をロールに巻き取る際に中間膜同士が付着するのを防止し、積層工程での脱気性を高めるために、少なくとも一方の表面に一定の粗さを有している。従来の方法を用いて該粗さを設けることができる。その例としては、押出条件を調整することによりもしくは表面にエンボス加工を施すことによりメルトフラクチャー構造を設ける方法などが挙げられる。エンボスの深さや形状については、従来から知られているものを使用できる。
【0074】
本発明のさらなる態様は、本発明の中間膜の合わせガラス用接着膜としての使用に関する。
【0075】
本合わせガラスは、無機ガラスまたは有機ガラスでできた2枚以上の板ガラスの間に、ポリビニルアセタールを含む少なくとも1つの膜だけでなく本発明の中間膜を挿入し積層することによって製造できる。本発明の合わせガラス用中間膜に積層されるガラスに関する制限は特にないが、フロートガラス、強化ガラス、網入りガラス、又は熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスに加えて、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラスを用いることができる。ガラスの厚さに関する制限特にないが、好ましくは1~10mm、より好ましくは2~6mmである。
【0076】
上記の合わせガラスを得るための積層方法は当技術分野で知られており、その例としては、真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、及びニップロールを用いる方法が挙げられる。さらに、仮接着後、オートクレーブ工程に投入する方法を追加的に行うこともできる。
【実施例
【0077】
本発明の目的のために、さまざまなガラス/ガラス積層体を製造する。それらは中間層として3つの組み合わされた個別膜の形態の本発明の膜を含み、膜AおよびCはガラス表面に直接接触しており、膜Bは膜AとCの間に配置されている。
表1、表2に各膜の組成を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
[本発明の中間膜の調製]
本発明の中間膜を当業者に公知のフィルム押出技術によって製作する。多層構造を実現するために、個別層A及びCは二軸押出機1を用いて押し出し、個別層Bは二軸押出機2を用いて押し出す。実施例(上記表参照)に応じて、以下に示す量のジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸(DBEA)を同押出機に供給する。
【0081】
押出機1と押出機2の溶融物が幅34cmの押出ダイに入る前に配置されるフィードブロックを用いて、A層とC層が同じ組成でB層がA層とC層の両方に接する三層膜を形成するように該層を組み合わせる。三層構造を構成する溶融物を冷却したチルロールに押し出し、弛緩し、さらなる冷却していないロールに巻かれた最終中間膜を形成する。個々の実施例の結果を表2に示す。
【0082】
実施例1.1の処方は、押出機2に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて15重量%、押出機1に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて10重量%含む。
【0083】
実施例1.2の処方は、押出機2に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて20重量%、押出機1に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて10重量%含む。
【0084】
実施例2.1の処方は、押出機1に添加する3G8を樹脂量に基づいて27.5重量%、押出機2に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて15重量%含む。
【0085】
実施例2.2の処方は、押出機1に添加する3G8を樹脂量に基づいて27.5重量%、押出機2に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて20重量%含む。
【0086】
実施例3.1の処方は、押出機2に添加する3G8を樹脂量に基づいて37.5重量%含む。
【0087】
実施例3.2の処方は、押出機2に添加する3G8を樹脂量に基づいて37.5重量%、押出機1に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて10重量%含む。
【0088】
実施例5.1の処方は、押出機2に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて10重量%含む。
【0089】
実施例5.2の処方は、押出機2に添加するジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)を樹脂量に基づいて15重量%含む。
【0090】
[本発明に従って使用する材料]
<層A及び層Cのエチレンビニルアセタール(ACEV1)>
日本特許出願公開第2016-28139号公報に記載の製法に従って合成したエチレン単位を44モル%含むエチレンビニルアルコールコポリマー(鹸化度:99)100重量部を1-プロパノール315重量部に分散させ、撹拌しながら溶液温度を60℃に上昇させる。その後、1M塩酸40重量部を添加し、次いで温度を60℃に保ちながらn-ブチルアルデヒド16.7重量部を添加する。反応が進むにつれて、エチレンビニルアルコールコポリマーが溶解し、反応混合物は均質な溶液となる。36時間後、炭酸水素ナトリウム6.4重量部を加え、反応を停止させる。反応溶液に1-プロパノール500重量部を加えて均一にした後、水2000重量部に滴下して加え、樹脂を析出させる。その後、ろ過と水洗の操作を3回繰り返し、得られた固体を60℃で8時間真空乾燥させる。こうして得られたエチレンビニルアセタールは、エチレン単位の含有量が44モル%、アセタール化度が31モル%である。
【0091】
<B層のエチレンビニルアセタール(ACEV2)>
日本特許出願公開第2016-28139号公報に記載の製法に従って合成したエチレン単位を48モル%含むエチレンビニルアルコールコポリマー(鹸化度:99)100重量部を1-プロパノール315重量部に分散させ、撹拌しながら溶液温度を60℃に上昇させる。その後、1M塩酸40重量部を加え、さらに温度を60℃に保ちながら、n-ブチルアルデヒド34.2重量部を加える。反応が進むにつれて、エチレンビニルアルコールコポリマーが溶解し、反応混合物は均質な溶液となる。36時間後、炭酸水素ナトリウム6.4重量部を加え、反応を停止させる。反応溶液に1-プロパノール500重量部を加えて均一にした後、水2000重量部に滴下して加え、樹脂を析出させる。その後、ろ過と水洗の操作を3回繰り返し、得られた固体を60℃で8時間真空乾燥させる。
【0092】
<ポリビニルブチラール層A(PVB1)>
ポリビニルアルコール、クラレポバール(登録商標)28-99(クラレヨーロッパGmbhの市販品)100重量部を水1075重量部に90℃に加熱しながら溶解した。温度40℃で、n-ブチルアルデヒド57.9重量部を添加し、温度12℃にて攪拌しながら、20%塩酸100重量部を添加した。ポリビニルブチラール(PVB)が析出した後、混合物を71℃に加熱し、この温度で2時間撹拌した。室温まで冷却後、PVBを分離し、水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。ポリビニルアルコール含有量が19.0重量%(27.5モル%)、ポリビニルアセテート含有量が1.3重量%(1モル%)のPVBを得た。
【0093】
<ポリビニルブチラール層B(PVB2)>
加水分解度92.5モル%のポリビニルアルコール、クラレポバール(登録商標)50-92(クラレヨーロッパGmbhの市販品)100重量部、n-ブチルアルデヒド68重量部を使用した。ポリビニルアルコール含有量が12.0重量%(18.3モル%)、ポリビニルアセテート含有量が9.6重量%(7.5モル%)のPVBを得た。
【0094】
<TPE1>
1,2-結合と3,4-結合の含有量が75%の水添ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロックコポリマー熱可塑性エラストマー。ハードブロック/ソフトブロック比[Mw(Al)/Mw(A2)]が1.00、ガラス転移温度が-15℃、スチレン含有量が21質量%、水素添加率が84%、重量平均分子量が120,000である。クラレ株式会社(東京、日本)より「ハイブラー(商標) H7125」として市販されている。
【0095】
<アイオノマー>
「SENTRY GLAS(登録商標)XTRA(商標)」という商標でクラレアメリカ社(ウィルミントン、DE、米国)から出ている中間層に使用されるアイオノマー。この材料は、米国特許出願公開第20190030863号明細書に記載のように、CI2から作製されている。
【0096】
[積層体の作製]
透明ガラス(プラニルクス(登録商標)2.1mm、板ガラス洗浄機で脱イオン水 < 5μSで洗浄)を、常に該ガラスに面している層Aと層Bとを有する中間膜と組み合わせて寸法30×30cmのテスト積層体を得る。
【0097】
さまざまなサンドイッチ状物を市販の板ガラス積層ニッパーラインに通し、プレ積層体を作る。積層はオートクレーブを使用し、標準的な条件(140℃、12barで30分の保持時間を含む90分)で行う。
【0098】
[測定]
本発明の新規な中間膜のカップリングおよび減衰性を数値化するために、ISO 16940(2008/12現在)に準拠したインピーダンス試験を、積層体から切り出した25×300mmの積層梁で使用する。ここで、損失係数(LF)は減衰に直接関連しているのに対して、共振周波数(f)は、共振周波数から計算できる曲げ剛性によるカップリングに関連している。安全ガラス積層体の典型的なオートクレーブ工程のような「熱ショック」後に、多層膜の異なる層間で可塑剤が再分布するため、インピーダンス特性の評価は、積層体の平衡化6週間後正確に20℃で行う。
【国際調査報告】