(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】バリアントSTAPHYLOCOCCUS AUREUS LUKA及びLUKBポリペプチド並びにワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20231016BHJP
C07K 14/31 20060101ALI20231016BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231016BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231016BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231016BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231016BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231016BHJP
A61K 39/085 20060101ALI20231016BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231016BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231016BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C07K14/31
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/085
A61K39/39
A61P31/04
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519355
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 US2021052418
(87)【国際公開番号】W WO2022067255
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514010601
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500350265
【氏名又は名称】ニューヨーク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】モロウ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンチノフ,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】フールトセン,ジェローン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジンクアン
(72)【発明者】
【氏名】ソマニ,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】バックレー,ピーター ティー.
(72)【発明者】
【氏名】トレス,ビクター ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4B065CA46
4C085AA03
4C085AA04
4C085BA13
4C085BA43
4C085CC07
4C085DD61
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF24
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、Staphylococcus aureusロイコシジンA(LukA)及びロイコシジンB(LukB)バリアントポリペプチド、並びにLukA、LukB及びLukABバリアントポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本開示は更に、これらのLukA及びLukBバリアントを含むワクチン組成物、並びに対象においてStaphylococcus aureusに対する免疫応答を生成する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号25のバリアントStaphylococcus aureusロイコシジンA(LukA)ポリペプチドであって、前記LukAバリアントポリペプチドが、
配列番号25のアミノ酸残基Lys83、Ser141、Val113、及びVal193に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、バリアントStaphylococcus aureus LukAポリペプチド。
【請求項2】
前記LukAバリアントポリペプチドが、
配列番号25のGlu323に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を更に含む、請求項1に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項3】
前記Glu323に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、グルタミン酸からアラニンへの(Glu323Ala)置換を含む、請求項2に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項4】
前記Lys83に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、リジンからメチオニンへの(Lys83Met)置換を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項5】
前記Ser141に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、セリンからアラニンへの(Ser141Ala)置換を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項6】
前記Val113に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、バリンからイソロイシンへの(Val113Ile)置換を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項7】
前記Val193に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、バリンからイソロイシンへの(Val193Ile)置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項8】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号25のアミノ酸残基Lys83、Ser141、Val113、Val193及びGlu323に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、請求項2~7のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項9】
前記アミノ酸置換が、Lys83Met、Ser141Ala、Val113Ile、Val193Ile及びGlu323Alaを含む、請求項8に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項10】
前記バリアントが、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile及びGlu320Alaに対応するアミノ酸置換を含む配列番号1のCC8 LukAバリアントである、請求項1に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項11】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項12】
前記バリアントが、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile及びGlu321Alaに対応するアミノ酸置換を含む配列番号2のCC45 LukAバリアントである、請求項1に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項13】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項14】
前記LukAバリアントポリペプチドが、
配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項15】
前記Tyr74に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、チロシンからシステインへの(Tyr74Cys)置換を含む、請求項14に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項16】
前記Asp140に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、アスパラギンからシステインへの(Asp140Cys)置換を含む、請求項14又は15に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項17】
前記Gly149に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、グリシンからシステインへの(Gly149Cys)置換を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項18】
前記Gly156に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、グリシンからシステインへの(Gly156Cys)置換を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項19】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149及びGly156に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド
【請求項20】
前記バリアントが、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Glu320Ala、Tyr71Cys、Asp137Cys、Gly146Cys、及びGly153Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号1のCC8 LukAバリアントである、請求項14に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項21】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項20に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項22】
前記バリアントが、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala,Val111Ile、Val191Ile、Glu321Ala、Tyr72Cys、Asp138Cys、Gly147Cys、及びGly154Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号2のCC45 LukAバリアントである、請求項14に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項23】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項24】
前記LukAバリアントポリペプチドが、
配列番号25のアミノ酸残基Thr249に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項25】
前記Thr249に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、トレオニンからバリンへの(Thr249Val)置換を含む、請求項24に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項26】
前記バリアントLukAタンパク質が、配列番号7又は配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項25に記載のLukAバリアントポリペプチド
【請求項27】
アミノ末端シグナル配列を更に含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項28】
前記アミノ末端シグナル配列が、配列番号23のアミノ酸配列を含む、請求項27に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項29】
アミノ末端精製配列を更に含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチド。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項31】
請求項30に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項32】
請求項31に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項33】
配列番号39のバリアントStaphylococcus aureusロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、前記LukBバリアントポリペプチドが、
配列番号39のアミノ酸残基Val53に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、バリアントStaphylococcus aureus LukBタンパク質又はポリペプチド。
【請求項34】
前記Val53に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、バリンからロイシンへの(Val53Leu)置換を含む、請求項33に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項35】
前記バリアントが、配列番号15のVal53Leuに対応するアミノ酸置換を含む配列番号15のCC8 LukBバリアントである、請求項33に記載のLukBバリアントポリペプチド
【請求項36】
前記LukBバリアントポリペプチドが、配列番号17のアミノ酸配列を含む、請求項35に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項37】
前記バリアントが、配列番号16のVal53Leuに対応するアミノ酸置換を含む配列番号16のCC45 LukBバリアントである、請求項33に記載のLukBバリアントポリペプチド
【請求項38】
前記LukBバリアントポリペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項39】
前記バリアントが、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を更に含む、請求項33又は34に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項40】
前記Glu45に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、グルタミン酸からシステインへの(Glu45Cys)置換を含む、請求項39に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項41】
前記Glu109に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、グルタミン酸からシステインへの(Glu109Cys)置換を含む、請求項39又は40に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項42】
前記Thr121に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、トレオニンからシステインへの(Thr121Cys)置換を含む、請求項39~41のいずれか一項に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項43】
前記Arg154に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、アルギニンからシステインへの(Arg154Cys)置換を含む、請求項39~42のいずれか一項に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項44】
前記LukBバリアントポリペプチドが、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、請求項39~43のいずれか一項に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項45】
前記バリアントが、配列番号15のVal53Leu、Glu45Cys、Glu109Cys、Thr121Cys及びArg154Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号15のCC8 LukBバリアントである、請求項39に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項46】
前記LukBバリアントポリペプチドが、配列番号19のアミノ酸配列を含む、請求項45に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項47】
前記バリアントが、配列番号16のVal53Leu、Glu45Cys、Glu110Cys、Thr123Cys、及びArg155Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号16のCC45 LukBバリアントである、請求項33に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項48】
前記LukBバリアントポリペプチドが、配列番号20のアミノ酸配列を含む、請求項47に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項49】
配列番号39のバリアントStaphylococcus aureusロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、前記LukBバリアントポリペプチドが、
配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、バリアントStaphylococcus aureus LukBタンパク質又はポリペプチド。
【請求項50】
前記Glu45に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、グルタミン酸からシステインへの(Glu45Cys)置換を含み、前記Thr121に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、トレオニンからシステインへの(Thr121Cys)置換を含む、請求項49に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項51】
前記Glu109に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、グルタミン酸からシステインへの(Glu109Cys)置換を含み、前記Arg154に対応するアミノ酸残基での前記アミノ酸置換が、アルギニンからシステインへの(Arg154Cys)置換を含む、請求項49又は50に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項52】
前記LukBバリアントポリペプチドが、配列番号39のアミノ酸Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、請求項49~51のいずれか一項に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項53】
前記バリアントが、配列番号15のGlu45Cys、Glu109Cys、Thr121Cys、及びArg154Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号15のCC8 LukBバリアントである、請求項52に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項54】
前記LukBバリアントポリペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項53に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項55】
前記バリアントが、配列番号16のGlu45Cys、Glu110Cys、Thr123Cys、及びArg155Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号16のCC45 LukBバリアントである、請求項52に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項56】
前記LukBバリアントポリペプチドが、配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項55に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項57】
アミノ末端シグナル配列を更に含む、請求項33~56のいずれか一項に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項58】
前記アミノ末端シグナル配列が、配列番号23のアミノ酸配列を含む、請求項57に記載のLukBバリアントポリペプチド
【請求項59】
アミノ末端精製タグを更に含む、請求項33~58のいずれか一項に記載のLukBバリアントポリペプチド。
【請求項60】
請求項33~59のいずれか一項に記載のLukBバリアントポリペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項61】
請求項60に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項62】
請求項60に記載の核酸分子に作動可能に連結された請求項30に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項63】
請求項61又は62に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項64】
請求項1~29のいずれか一項に記載の1つ以上のバリアントLukAタンパク質又はポリペプチドを含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物。
【請求項65】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号1のバリアントである、請求項64に記載のワクチン組成物。
【請求項66】
ロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する前記LukBタンパク質又はポリペプチドを更に含む、請求項64又は65に記載のワクチン組成物。
【請求項67】
ロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する前記LukBタンパク質又はポリペプチドを更に含む、請求項64又は65に記載のワクチン組成物。
【請求項68】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸残基Lys80、Ser138、Val110、Val190、及びGlu320Alaに対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、請求項67に記載のワクチン組成物。
【請求項69】
前記LukAバリアントポリペプチドが、アミノ酸配列配列番号3を含み、前記LukBポリペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項68に記載のワクチン組成物。
【請求項70】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項68に記載のワクチン組成物。
【請求項71】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号17のアミノ酸配列を含む、請求項68に記載のワクチン組成物。
【請求項72】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号2のバリアントである、請求項64に記載のワクチン組成物。
【請求項73】
ロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する、LukBタンパク質又はポリペプチドを更に含む、請求項72に記載のワクチン組成物。
【請求項74】
ロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する、LukBタンパク質又はポリペプチドを更に含む、請求項72に記載のワクチン組成物。
【請求項75】
前記LukAバリアントポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸残基Lys81、Ser139、Val111、Val191、及びGlu321Alaに対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、請求項73に記載のワクチン組成物。
【請求項76】
前記LukAバリアントポリペプチドが、アミノ酸配列配列番号4を含み、前記LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項75に記載のワクチン組成物。
【請求項77】
請求項33~56のいずれか一項に記載の1つ以上のバリアントLukBタンパク質又はポリペプチドを含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物。
【請求項78】
ロイコシジンA(LukA)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号1(CC8)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する、LukAタンパク質又はポリペプチドを更に含む、請求項77に記載のワクチン組成物。
【請求項79】
ロイコシジンA(LukA)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号2(CC45)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する、LukAタンパク質又はポリペプチドを更に含む、請求項77に記載のワクチン組成物。
【請求項80】
請求項1~32のいずれか一項に記載のLukAバリアントポリペプチドと、
請求項33~56のいずれか一項に記載のLukBバリアントポリペプチドと、を含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物。
【請求項81】
アジュバントを更に含む、請求項64~80のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項82】
1つ以上の追加のS.aureus抗原を更に含む、請求項64~81のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項83】
対象においてS.aureusに対する免疫応答を生成する方法であって、前記方法が、
前記対象においてS.aureusに対する前記免疫応答を生成するのに有効な条件下で、請求項64~81のいずれか一項に記載のワクチン組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項84】
対象においてS.aureusに対する免疫応答を生成する方法における使用のための、請求項64~81のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月28日に出願された米国仮特許出願第63/084,273号の優先権の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、バリアントStaphylococcus aureusロイコシジンA(LukA)及びロイコシジンB(LukB)タンパク質及びポリペプチド、これらのLukA及びLukBバリアントを含むワクチン組成物、並びにStaphylococcus aureus感染症の治療及び/又は予防のための対象における細胞傷害を誘発するための記載されたワクチン組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
Staphylococcus aureusは、敗血症、感染性心内膜炎、及び毒素ショックを含む広範な侵襲的疾患、並びに重症度の低い皮膚及び軟部組織感染症を引き起こす(Tong et al.,“Staphylococcus aureus Infections:Epidemiology,Pathophysiology,Clinical Manifestation,and Management”Clin.Microbiol.Rev.28(3):603-661(2015))。現在、S.aureusと闘うための承認されているワクチンはなく、抗生物質耐性出現によって治療の選択肢が更に制限されている(Sause et al.,“Antibody-Based Biologics and Their Promise to Combat Staphylococcus aureus Infections,”Trends Pharmacol.Sci.37(3):231-241(2016))。多様な臨床症候群を引き起こすS.aureusの能力は、多くの場合、ゲノム量の大きな変化に関連している(Copin et al.,“After the Deluge:Mining Staphylococcus aureus Genomic Data for Clinical Associations and Host-Pathogen Interactions,”Curr.Opin.Microbiol.41:43-50(2018)及びRecker et al.,“Clonal Differences in Staphylococcus aureus Bacteraemia-Associated Mortality,”Nat.Microbiol.2(10):1381-1388(2017))。特に、ゲノムの約40%は、全てのS.aureus分離株によって共有されるわけではない(Bosi et al.,“Comparative Genome-Scale Modelling of Staphylococcus aureus Strains Identifies Strain-Specific Metabolic Capabilities Linked to Pathogenicity,”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 113(26):E3801-3809(2016))ので、ワクチン及び生物製剤の生成のための保存された標的の特定を更に複雑にする。
【0004】
本開示は、当技術分野におけるこれら及び他の制限を克服することを対象とする。
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様は、バリアントStaphylococcus aureusロイコシジンA(LukA)タンパク質又はそのポリペプチドに関する。一態様では、LukAバリアントは、配列番号25のアミノ酸残基Lys83、Ser141、Val113、Val193に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、配列番号25のLukAタンパク質又はポリペプチドのバリアントである。
【0006】
本開示の追加の態様は、上記のものに対する1つ以上のアミノ酸置換、欠失、及び/又は付加を有するLukAバリアントに関する。本開示はまた、バリアントLukAタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸分子、及び前述の核酸分子を含む発現ベクターにも関する。
【0007】
本開示の別の態様は、バリアントStaphylococcus aureusロイコシジンB(LukB)タンパク質又はそのポリペプチドに関する。一態様では、LukBバリアントは、配列番号39のアミノ酸残基Val53に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、配列番号39のLukBタンパク質又はポリペプチドのバリアントである。
【0008】
一態様では、LukBバリアントは、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121及びArg154に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、配列番号39のLukBタンパク質又はポリペプチドのバリアントである。
【0009】
本開示の追加の態様は、上記のものに対する1つ以上のアミノ酸置換、欠失、及び/又は付加を有するLukBバリアントに関する。本開示はまた、バリアントLukBタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸分子、及び前述の核酸分子を含む発現ベクターにも関する。
【0010】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるLukBポリペプチド又はLukBバリアントポリペプチドをコードする核酸分子と作動可能に連結された、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドをコードする核酸分子を含む発現ベクターを対象とする。
【0011】
本開示の別の態様は、本明細書に記載される発現ベクターのいずれか1つ以上を含む宿主細胞を対象とする。
【0012】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドを含むStaphylococcus aureusワクチン組成物を対象とする。
【0013】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるLukBバリアントポリペプチドを含むStaphylococcus aureusワクチン組成物を対象とする。
【0014】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチド及び本明細書に記載されるLukBバリアントポリペプチドを含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物を対象とする。
【0015】
本開示の別の態様は、対象においてStaphylococcus aureusに対する免疫応答を生成する方法に関する。本方法は、対象においてS.aureusに対する当該免疫応答を生成するのに有効な条件下で、本明細書に記載されるワクチン組成物を当該対象に投与することを含む。
【0016】
Staphylococcus aureus(S.aureus)は、多数の院内感染及び市中感染の原因となっている。免疫系によるクリアランスを逃れるために、S.aureusは、ロイコシジンとして知られる2成分の膜孔形成毒素の分泌を含む幅広い戦略を採用する。各ロイコシジンは、約300アミノ酸長の2つのポリペプチドから構成され、宿主細胞標的化(そのクロマトグラフィー溶出プロファイルに基づく低速のS)及び重合(高速のF)サブユニットとして分類される。ヒトS.aureus単離株には、最大で5つのロイコシジンが記載されている。パントン-バレンタインロイコシジン(PVL、又はLukSF-PV)、ガンマ-ヘモリジン(HlgAB及びHlgCB)、ロイコシジンED(LukED)及びロイコシジンAB(LukAB、LukGHとも呼ばれる)。ロイコシジンは特定の細胞表面タンパク質受容体に結合し、オリゴマー細孔にアセンブルされ、最終的には急速な浸透圧の調節解除により細胞溶解を引き起こす(Spaan et al.,“Leukocidins:Staphylococcal Bi-Component Pore-Forming Toxins find their Receptors”Nat.Rev.Microbiol.15(7):435-447(2017))。
【0017】
最も最近特定されたロイコシジン、LukAB(DuMont et al.,“Characterization of a New Cytotoxin that Contributes to Staphylococcus aureus Pathogenesis”Mol.Microbiol.79(3):814-825(2011))は、他の2成分ロイキジンと区別するいくつかの固有の特徴を有する。LukA(S型)及びLukB(F型)サブユニットは、個々の単量体ではなく溶液中で予め組み立てられた二量体として存在する(DuMont et al.,“Identification of a Crucial Residue Required for Staphylococcus aureus LukAB Cytotoxicity and Receptor Recognition”Infection and Immunity 82(3):1268-1276(2014))。更に、LukABは、宿主細胞表面上のCD11b/CD18インテグリンを標的とし(DuMont et al.,“Staphylococcus aureus LukAB cytotoxin kills human neutrophils by targeting the CD11b subunit of the integrin Mac-1”Proc Natl Acad Sci USA.110(26):10794-9(2013))、特定の7回膜貫通型ケモカイン受容体と相互作用するPVL、LukED、HlgAB、及びHlgCB とは異なる(Spaan et al.,“Leukocidins:Staphylococcal Bi-Component Pore-Forming Toxins find their Receptors”Nat.Rev.Microbiol.15(7):435-447(2017))。最後に、LukABは、初代ヒト白血球を使用したエクスビボ感染モデルにおけるS.aureus媒介性細胞溶解の原因となる主要な毒素である(DuMont et al.,“Characterization of a New Cytotoxin that Contributes to Staphylococcus aureus Pathogenesis”Mol.Microbiol.79(3):814-825(2011))。これらの固有の特徴は、他のロイコシジンとのLukABの相違によって説明される可能性が高い。典型的には、各群内で、タイプS及びFの構成要素は、それぞれ71~82%及び65~81%の同一性を共有するが、LukA及びLukBは、他のロイコシジンと30%及び39%でしか同一でない。重要なことに、ロイコシジンAB(LukAB)は、これまでに記載された全てのヒト感染分離株に存在し、最も遠いstaphylococcal系統間で最大20%のアミノ酸の相違を呈する。
【0018】
S.aureusの病因及び感染におけるLukAB毒素の重要性を考慮して、新規のLukA及びLukBバリアントタンパク質及びポリペプチドが本明細書に開示される。本明細書に開示されるLukA及びLukBバリアントタンパク質及びポリペプチドは、互いに二量体化する能力を保持し、それらが、堅牢な免疫応答のため免疫系に対し天然毒素構造を維持し提示するが、細胞傷害活性を欠くため、理想的なワクチン候補となる。毎年多くの人がS.aureusに感染することを考慮すると、これらの感染症のかなりの割合が、従来の抗生物質治療過程に対して抵抗性である可能性が高い。本明細書に記述されるそのような感染症を治療する、及びより重要なことに予防するための革新的なアプローチは、S.aureus感染に対する防御に関与する最も重要な先天的免疫細胞である多型核白血球(PMN)を殺傷する原因となるLukABなどのS.aureusの病原性因子を阻害することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1-1】15の異なるStaphylococcus aureus LukAアミノ酸配列のアライメントであり、クローン性複合体(CC)8(配列番号1)、CC45(配列番号2)、CC30のHMPREF0772_044(TCH60)(配列番号27)、CC30のSAR2108(MRSA252)(配列番号36)、CC45のSALG_02329(A9635)(配列番号34)、CC398のSAPIG2061(ST398)(配列番号35)、CC10のSATG_01930(D139)(配列番号37)、CC8のNEWMAN(配列番号26)、CC151のSAB1876C(RF122)(配列番号32)、CC5のSAV2005(Mu50)(配列番号38)、CC5のSA1813(N315)(配列番号31)、CC8のSACOL2006(配列番号33)、CC7のHMPRE0776_0173 USA300(TCH959)(配列番号29)、CC72のHMPREF0774_2356 TCH130(配列番号28)、及びCC1のMW1942(MW2)(配列番号30)が含まれる。アライメントされたものの比較から生成された大部分のLukA配列のアミノ酸配列は、配列番号25として提供される。本明細書に記載されるアミノ酸置換の位置も、各LukA配列内で特定される。
【
図2-1】14の異なるStaphylococcus aureus LukBアミノ酸配列のアライメントであり、LukB CC8(配列番号15)、CC45(配列番号16)、CC45のA9635(配列番号40)、CC30のE1410(配列番号43)、CC30のMRSA252(配列番号45)、CC10のD139(配列番号42)、CC5のMu.50(配列番号46)、CC239のJKD6008(配列番号44)、CC8のCOL(配列番号41)、CC8のUSA300_FPR3757(配列番号50)、CC8のNEWMAN(配列番号51)、CC151のRF122(配列番号48)、CC1のMW2(配列番号47)、及びCC72のTCH130(配列番号49)が含まれる。アライメントされたものの比較から生成された大部分のLukB配列のアミノ酸配列は、配列番号39として提供される。本明細書に記載されるアミノ酸置換の位置も、各LukB配列内で特定される。
【
図3】免疫化に使用される様々なLukABバリアントの細胞傷害性を示す。異なるLukABバリアントの滴定による初代ヒトPMN(n=4)の中毒を1時間行った。細胞生存率をCellTiterで評価した。データは、2つの別個の実験で得られ、4人のドナーからの平均±SEMである。
【
図4-1】異なるLukABバリアントで免疫化されたマウスにおける、LukAB CC8又はCC45に対する抗体力価を示す。Envigo Hsd:ND4(4週齢)マウス(n=5/抗原)に、50μlのアジュバントであるTiterMax(登録商標)Goldと混合した50μlの10%グリセロール1X TBS中の、20μgのLukABを皮下投与した。5匹のマウスのコホートはまた、同体積の10%グリセロール1X TBS及びTiterMax(登録商標)Goldからなるモック免疫も受けた。同じ抗原アジュバントカクテルの2回のブースト(ブースト間は2週間間隔)の後、心臓穿刺を介してマウスから採血し、血清を得た。指示された免疫抗原で免疫化されたマウス由来の血清をプールし、段階希釈して、CC8 LukAB(
図4A)又はCC45 LukAB(
図4B)に対する抗体力価を決定した。プレートを、2μg/mlのCC8又はCC45 LukABでコーティングした。ヒートマップは、二重測定値からの平均吸光度値を示す。
【
図5】異なるLukAB毒素に対して、異なるLukABバリアントで免疫化されたマウス由来の血清に対する中和プロファイルを提供する。指示された抗原で免疫化されたマウス由来の4~0.031%の血清の存在下で、0.156μg/ml(LD90)の指示されたLukABバリアントによる1時間のヒトPMN(n=4)の中毒。指示された免疫抗原で免疫化されたマウス由来の血清をプールし、使用前に熱不活化した。CellTiterで細胞生存率を決定した。ヒートマップは、4人のドナーの死細胞の平均パーセンテージを表示し、黒は細胞死なしを、及び白は100%の細胞死を表す。
【
図6-1】指示された抗原で免疫されたマウス由来の2%(
図6A)、1%(
図6B)、及び0.5%(
図6C)のマウス血清の非存在下又は存在下でのLD
90のLukAB毒素配列バリアントによる中毒後の、死んだヒト多形核白血球のパーセンテージを示す表である。データは、死細胞のパーセンテージとして提示される。陰影のない細胞は、最も低い細胞死を示し、最も暗い灰色の陰影のある細胞は、最も高い細胞死を示す。
【
図7-1】高濃度でのLukAB RARPR-33の中毒が細胞傷害性ではないことを示す。健康なドナー(n=4~6)からの新たに単離されたヒトPMNを、異なる濃度のLukABバリアントとともに1時間インキュベートした。細胞生存率は、CellTiterの吸光度によって決定された(
図7A及び7B)。死細胞のパーセンテージは、バックグラウンド(健康な細胞+PBS)を差し引きし、100%死に設定されたTriton X100処理細胞に対して正規化することによって計算された。平均±SEMを示す。健康なドナー(n=4~6)から単離されたヒトPMNを、異なる濃度のLukABバリアントとともに2時間インキュベートした。細胞生存率は、LDH放出によって決定された。(
図7C及び7D)。平均±SEMを示す。
【
図8-1】高濃度でのLukAB RARPR-33及びD39A/R23Eトキソイドの中毒を示す。健康なドナー(n=5)からの新たに単離されたヒトPMNを、異なる濃度のLukABバリアントとともに2時間インキュベートした。細胞生存率は、CellTiterの吸光度によって決定された(
図8A及び8B)。死細胞のパーセンテージは、バックグラウンド(健康な細胞+PBS)を差し引きし、100%死に設定されたTriton X100処理細胞に対して正規化することによって計算された。平均±SEMを示す。健康なドナー(n=5)から単離されたヒトPMNを、異なる濃度のLukABバリアントとともに2時間インキュベートした。細胞生存率は、LDH放出によって決定された(
図8C及び8D)。平均±SEMを示す。
【
図9】様々なLukAB毒素に対して2つの異なるLukABトキソイドで免疫されたマウス由来の血清の中和プロファイルを示す。2つの異なる抗原で免疫されたマウス由来の0.125%血清の存在下で、0.156μg/ml(LD
90)の指示されたLukAB毒素バリアントによる1時間のヒトPMN(n=4)の中毒。両方の指示された免疫抗原で免疫化されたマウス由来の血清をプールし、使用前に熱不活化した。CellTiterで細胞生存率を決定した。棒グラフは、4人の異なるドナーの平均+SEMを示す。統計的有意性は、対応のないt検定を使用して決定され、P<0.05は有意であるとみなされた。*P<0.05、**P<0.001、***P<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、バリアントStaphylococcus aureusロイコシジンタンパク質及びポリペプチド、並びにこれらのバリアントタンパク質及びポリペプチドを含む組成物を対象とする。本開示は更に、対象におけるStaphylococcus aureus感染を予防する方法に関する。
【0021】
定義
本組成物及び方法が説明される前に、本発明は、記載される特定の組成物又は方法論に限定されず、これらは変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定のバージョン又は実施形態のみを記述するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本明細書の実施形態の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本明細書の実施形態の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、好ましい方法、デバイス、及び材料をここで説明する。本明細書で言及された全ての刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本明細書の実施形態が、先行発明によってそのような開示に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0022】
本明細書で使用される場合、及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。
【0023】
別段の記載がない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などの任意の数値は、どの場合においても用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、数値は通常、列挙された値の±10%が含まれる。例えば、1mg/mLの濃度が、0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は、0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用される場合、数値範囲の使用には、文脈が別途明確に示さない限り、全ての可能性のある部分範囲、その範囲内の整数、及び値の端数を含む、その範囲内の全ての個々の数値が明示的に含まれる。
【0024】
別段の示唆がない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連の要素の中の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者は、単に通常の実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、又は確認することができるであろう。このような同等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「含む」、「含んでいる」、「含まれる」、「含まれている」、「有する」、「有している」、「含有する」、「含有している」、又はそれらの任意の他の変形は、指定された整数若しくは整数の群を含めるが、任意の他の整数若しくは整数の群を除外しないことを暗示するものと理解され、非排他的又は無制限なものとして意図される。例えば、要素のリストを含む、組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていない、又はこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に固有の他の要素を含むことができる。更に、反対の趣旨に明示的に言及されない限り、「又は」は、排他的又は、ではなく、包括的又は、を指す。例えば、条件A又は条件Bは、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真(又は存在)であり、Bが偽(又は存在せず)であり、Aが偽(又は存在せず)であり、Bが真(又は存在)であり、かつA及びBの両方が真(又は存在)である。本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素の間の結合用語「及び/又は」は、個々の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素の適用可能性を指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素の適用可能性を指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素を併せた適用可能性を指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つが、その意味の範囲内にあると理解され、したがって、本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」の要件を満たす。複数の選択肢の同時適用性もまた、意味のうちに含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすと理解される。
【0026】
本明細書で使用される場合、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して使用される、用語「からなる(consists of)」、又は「からなる(consist of)」若しくは「からなること(consisting of)」などの変形は、任意の列挙された整数又は整数の群を含むことを示すが、指定された方法、構造、又は組成物に、追加の整数又は整数の群を追加することはできないことを示す。
【0027】
本明細書で使用される場合、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して使用される、用語「から本質的になる(consists essentially of)」、又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になること(consisting essentially of)」などの変形は、任意の列挙された整数又は整数の群を含むことを示し、かつ指定された方法、構造、又は組成物の基本特性又は新規な特性を実質的に変化させない任意の列挙された整数又は整数の群を含むことを示す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は任意の哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、以下に限定されないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなどが挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0029】
また、好ましい発明の構成要素の寸法又は特性を指す際に、本明細書で使用される用語「約」、「およそ」、「概して」、「実質的に」などの用語は、当業者によって理解されるように、記載される寸法/特性が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似の軽微な変動を排除しないことを示すことも理解されるべきである。少なくとも、数値パラメータを含むこのような参照は、当技術分野で受け入れられている数学的及び産業的原理(例えば、丸め、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用して、最小の有効桁を変化させない変動が含まれる。
【0030】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、Staphylococcus LukA及びLukBポリペプチド並びにそれらをコードするポリヌクレオチド)との関連での用語「同一の」又は「同一性」パーセントは、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、又は目視検査によって測定されるように、最大の一致が得られるように比較し整列された場合、同一であるか、又は同一であるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの指定されたパーセンテージを有する、2つ以上の配列又は部分配列を指す。
【0031】
配列比較については、典型的には、1つの配列が参照配列としての役割を果たし、これに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0032】
比較のための配列の最適なアライメントを、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison,WI)により、又は目視検査により(一般的には、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,(1995 Supplement)を参照されたい)、行うことができる。
【0033】
配列同一性及び配列類似性パーセントを決定するのに適したアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公開されている。
【0034】
配列同一性パーセントの計算に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計解析も実行する(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小の総和確率(sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸と参照核酸との比較における最小の総和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列と類似しているとみなされる。
【0035】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であるという更なる指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、例えば、保存的置換によってのみ2つのペプチドが異なる場合など、第2のポリペプチドに対し、実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の指標は、2つの分子が、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0036】
本明細書で使用される場合、同義で「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」と呼称される用語である「ポリヌクレオチド」は、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」には、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、及び一本鎖と二本鎖領域との混合物であるRNA、一本鎖若しくは、より典型的には二本鎖又は、一本鎖と二本鎖領域との混合物であり得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が含まれるが、これらに限定されない。更に、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語は、1つ以上の修飾塩基を含有するDNA又はRNA、並びに安定性のために、又は他の理由で修飾された骨格を有するDNA又はRNAも含む。「修飾された塩基」には、例えば、トリチル化塩基及びイノシンなどの異常な塩基が含まれる。DNA及びRNAに様々な改変がなされることができ、したがって、「ポリヌクレオチド」は、自然界で典型的に見られるように、ポリヌクレオチドの化学的、酵素的、又は代謝的に改変された形態、並びにウイルス及び細胞に特徴的なDNA及びRNAの化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、オリゴヌクレオチドと呼ばれることが多い比較的短い核酸鎖を包含する。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、例えば、遺伝子環境間の輸送又は宿主細胞における発現のために、所望される配列が挿入可能な、例えば制限及びライゲーション可能な任意の数の核酸を指す。核酸ベクターは、DNA又はRNAであってもよい。ベクターには、プラスミド、ファージ、ファージミド、細菌ゲノム、ウイルスゲノム、自己増幅RNA、レプリコンが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明の核酸分子を含む細胞を指す。「宿主細胞」は、任意のタイプの細胞、例えば、初代細胞、培養中の細胞、又は細胞株由来の細胞であってもよい。一実施形態では、「宿主細胞」は、本発明の核酸分子でトランスフェクト又は形質導入された細胞である。別の実施形態では、「宿主細胞」はこのようなトランスフェクト細胞又は形質導入細胞の子孫又は潜在的な子孫である。細胞の子孫は、例えば、後続する世代において、又は核酸分子の宿主細胞ゲノムへの組み込みにおいて発生し得る変異又は環境的影響に起因して、親細胞と同一であってもなくてもよい。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「発現」は、遺伝子産物の生合成を指す。この用語は、RNAへの遺伝子の転写を包含する。この用語はまた、1つ以上のポリペプチドへのRNAの翻訳を包含し、全ての天然に存在する転写後及び翻訳後修飾を更に包含する。発現されたポリペプチドは、宿主細胞の細胞質内、例えば細胞培養物の成長培地などの細胞外環境内、又は細胞膜に固定され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、アミノ酸から構成される分子を指してもよく、当業者によってタンパク質として認識され得る。本明細書では、アミノ酸残基に対する従来の1文字又は3文字のコードが使用される。本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」を互換的に使用することができる。ポリマーは、直鎖状又は分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。用語はまた、自然に又は介入により修飾されたアミノ酸ポリマーを包含し、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作又は修飾である。また、定義内には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、並びに当技術分野で公知の他の修飾も含まれる。
【0041】
本明細書に記載されるポリペプチド配列は、ペプチドのN末端領域が左側にあり、C末端領域が右側にあるという通常の慣例に従って記述される。アミノ酸の異性体型は既知であるが、別段の明示的な示唆がない限り、表されるのはアミノ酸のL型である。
【0042】
用語「単離された」は、その起源の源の細胞材料、細菌材料、ウイルス材料、又は培養培地(組換えDNA技術によって作製された場合)、又は化学前駆体若しくは他の化学物質(化学的に合成された場合)を実質的に含まない核酸又はポリペプチドを指すことができる。更に、単離されたポリペプチドは、単離されたポリペプチドとして対象に投与され得るポリペプチドを指し、言い換えれば、ポリペプチドがカラムに付着されているか、又はゲルに埋め込まれている場合、ポリペプチドは単に「単離された」とみなされない場合がある。更に、「単離核酸断片」又は「単離ペプチド」は、断片として天然に存在しない、及び/又は典型的には機能状態ではない核酸又はタンパク質断片である。
【0043】
本明細書で使用される場合、語句「免疫応答」又はその等価な「免疫学的応答」は、レシピエント対象における本開示のタンパク質、ペプチド、炭水化物、又はポリペプチドに対して向けられる、体液性(抗体媒介性)、細胞性(抗原特異的T細胞又はその分泌産物によって媒介される)、又は体液性及び細胞性応答の両方の発生を指す。そのような応答は、免疫原の投与によって誘導される能動的応答、又は抗体、抗体含有物質、又は初回抗原刺激を受けたT細胞の投与によって誘導される受動的応答であり得る。細胞免疫応答は、クラスI又はクラスIIのMHC分子と関連したポリペプチドエピトープの提示によって誘発され、抗原特異的CD4(+)Tヘルパー細胞及び/又はCD8(+)細胞傷害性T細胞を活性化する。応答はまた、単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球、樹状細胞、星状細胞、ミクログリア細胞、好酸球、又は自然免疫の他の構成要素の活性化も含まれる。本明細書で使用される場合、「能動免疫」は、抗原の投与によって対象に付与される任意の免疫を指す。
【0044】
S.aureusロイコシジンA(LukA)バリアント
本開示の第1の態様は、バリアント、すなわち、非天然由来のStaphylococcus aureus(S.aureus)ロイコシジンA(LukA)タンパク質又はポリペプチドに関する。これらのバリアントLukAタンパク質又はポリペプチドは、LukAB二成分毒素を非細胞傷害性にし、LukABヘテロ二量体を安定化し、融解温度を上昇させ、及び/又は溶解度を上昇させる、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を含む。本明細書に記載されるように、これらのバリアントLukAタンパク質及びポリペプチドは、理想的なワクチン抗原候補であり、単独で、又はロイコシジンB(LukB)野生型若しくはバリアントタンパク質若しくはポリペプチドと組み合わせて投与することができる。LukBタンパク質又はそのポリペプチドと組み合わせて投与される場合、結果として生じるトキソイドは、S.aureusLukAB毒素の構造を模倣し、それによって、S.aureusの最も強力な毒素のうちの1つに対する堅牢な免疫応答の生成を促進する。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、完全長成熟LukAタンパク質配列に対応するアミノ酸残基の全てを含む、完全長LukAタンパク質のバリアントである。本明細書で言及されるように、「成熟」ロイコシジンタンパク質配列は、アミノ末端分泌シグナルを欠くロイコシジンタンパク質の配列であり、典型的には、アミノ末端上に最初の27~28アミノ酸残基を含む。
【0045】
任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、完全長成熟LukAタンパク質よりも短いバリアントである。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、長さが少なくとも100アミノ酸残基である。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、長さが少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも200、少なくとも210、少なくとも220、少なくとも230、少なくとも240、少なくとも250、少なくとも260、少なくとも270、少なくとも280、少なくとも290、少なくとも300アミノ酸残基である。
【0046】
本明細書に記載される例示的なLukAバリアントタンパク質及びポリペプチドは、クローン性複合体CC8(配列番号1)及びCC45(配列番号2)のLukAバリアントタンパク質であり(以下の表1を参照)、当業者であれば、配列番号1及び配列番号2との関連で同定されたLukAのアミノ酸置換及び/又は欠失が、様々なクローン性複合体にわたって、又は様々なクローン性複合体にわたって高度に保存されているLukAの領域内で、保存されるアミノ酸残基であることを容易に理解するであろう。実際に、15種類の異なる株のS.aureus由来のLukAタンパク質配列のアライメント(
図1を参照)は、変異を受ける残基として本明細書で同定されるアミノ酸残基が、アライメントされたLukAアミノ酸配列の15個全てにわたって保存されている残基であることを示している。同定された変異の残基の位置は、個々のLukA配列間で異なる場合があるが、配列アライメントは、これらの位置間の対応を示している。明確にするために、配列番号25のアミノ酸配列を有するLukAコンセンサス配列を配列アライメントから生成し、特定のアミノ酸変異の場所を割り当てる目的で利用した。例えば、配列番号25のリジン残基83のアミノ酸置換は、配列番号1のLukA配列の80位のリジン残基、配列番号2のLukA配列の81位のリジン残基、及び配列番号26~38のLukA配列の83位のリジン残基に対応する。したがって、本明細書に記載される同定されたアミノ酸変異は、現在又は将来知られる任意のLukAアミノ酸配列の対応するアミノ酸残基に、普遍的に適用することができる。
【0047】
本開示のこの態様によれば、任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193に対応するアミノ酸残基のうちの1つ以上でのアミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を含む。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、上記の1つ以上のアミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失に加えて、配列番号25のGlu323に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換又は欠失を更に含む。任意の実施形態では、Glu323でのアミノ酸置換又は欠失は、配列番号25の323位(Glu323Ala)でのグルタミン酸からアラニンへの置換を含む。
【0048】
任意の実施形態では、LukA(及び本明細書に記載されるLukB)の1つ以上の同定された位置でのアミノ酸置換は、保存的置換である。こうした保存的置換は、あるアミノ酸残基を、機能的同等物として作用する同じクラスのメンバーである別のアミノ酸残基に置換することを含み、結果としてサイレントな改変をもたらす。すなわち、天然配列に対する変更は、LukAの基本的な特性を顕著に減少させないであろう。これらのアミノ酸残基のクラスには、非極性(疎水性)アミノ酸(例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニン)、極性中性アミノ酸(例えば、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン)、正に荷電した(塩基性)アミノ酸、(例えば、アルギニン、リジン、ヒスチジン、及び負に荷電した(酸性)アミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)が挙げられる。
【0049】
他の実施形態では、本明細書に記載されるバリアントロイコシジンポリペプチドの1つ以上の同定された位置でのアミノ酸置換は、非保存的改変(すなわち、同定された領域の配列、構造、機能、又は活性を破壊する置換)である。このような置換は、タンパク質の細胞傷害性を低減又は緩和する目的で望ましい場合がある。非保存的置換は、ある特定のクラスのアミノ酸残基を異なるクラスのアミノ酸残基で置換することを含む。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸残基の極性中性アミノ酸での置換、又はその逆である。別の実施形態では、非保存的置換は、正に荷電した(塩基性)アミノ酸残基の、アスパラギン酸及びグルタミン酸等の負に荷電した(酸性)アミノ酸残基との置換、又はその逆の置換を含む。そのような分子改変は、一本鎖鋳型(Kunkel et al.,Proc.Acad.Sci.,USA 82:488-492(1985)、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、二本鎖DNA鋳型(Papworth,et al.,Strategies 9(3):3-4(1996)、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を使用するプラスミド鋳型でのプライマー伸長法を含む、当技術分野で周知の方法によって、及びPCRクローニング(Braman,J.(ed.),IN VITRO MUTAGENESIS PROTOCOLS,2nd ed.Humana Press,Totowa,N.J.(2002)、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)によって達成することができる。
【0050】
任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25の83位でのリジンに対応する残基でのリジンからメチオニンへの置換(Lys83Met)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1の80位でのリジンに対応する残基でのリジンからメチオニンへの置換(Lys80Met)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2の81位でのリジンに対応する残基でのリジンからメチオニンへの置換(Lys81Met)を含む。
【0051】
任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25の141位でのセリンに対応する残基でのセリンからアラニンへの置換(Ser141Ala)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1の138位でのセリンに対応する残基でのセリンからアラニンへの置換(Ser138Ala)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2の139位でのセリンに対応する残基でのセリンからアラニンへの置換(Ser139Ala)を含む。
【0052】
任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25の113位でのバリンに対応する残基でのバリンからイソロイシンへの置換(Val113Ile)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1の110位でのバリンに対応する残基でのバリンからイソロイシンへの置換(Val110Ile)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2の111位でのバリンに対応する残基でのバリンからイソロイシンへの置換(Val111Ile)を含む。
【0053】
任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25の193位でのバリンに対応する残基でのバリンからイソロイシンへの置換(Val193Ile)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1の190位でのバリンに対応する残基でのバリンからイソロイシンへの置換(Val190Ile)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2の191位でのバリンに対応する残基でのバリンからイソロイシンへの置換(Val191Ile)を含む。
【0054】
任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193に対応する残基での任意の1つ以上の置換に加えて、配列番号25の323位グルタミン酸残基に対応する残基でのグルタミン酸からアラニンへの置換(Glu323Ala)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のLys80、Ser138、Val110、Val190に対応する残基での任意の1つ以上の置換に加えて、配列番号1の320位グルタミン酸残基に対応する残基でのグルタミン酸からアラニンへの置換(Glu320Ala)を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys81、Ser139、Val111、Val191に対応する残基での任意の1つ以上の置換に加えて、配列番号2の321位グルタミン酸残基に対応する残基でのグルタミン酸からアラニンへの置換(Glu321Ala)を含む。
【0055】
任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193に対応する前述のアミノ酸残基のうちの2つでのアミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を有するポリペプチドを含む。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、前述のアミノ酸残基のうちの3つでの、アミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を含む。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、前述のアミノ酸残基のうちの4つ全てでの、アミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を含む。任意の実施形態では、本開示のLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys83Met、Ser141Ala、Val113Ile、及びVal193Ileに対応する前述のアミノ酸残基での、リジンからメチオニンへの、セリンからアラニンへの、及びバリンからイソロイシンへのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号25の残基323に対応するアミノ酸残基での、グルタミン酸からアラニンへのアミノ酸置換(Glu323Ala)を更に含み、すなわち、バリアントLukAは、配列番号25のLys83Met、Ser141Ala、Val113Ile、Val193Ile、及びGlu323Alaに対応する置換を含む。
【0056】
本開示の例示的なバリアントLukAポリペプチドは、配列番号25のLys83Met、Ser141Ala、Val113Ile、Val193Ile、及びGlu323Alaに対応するアミノ酸置換を所有する。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile及びGlu320Alaに対応するアミノ酸置換を含むCC8 LukAバリアントである。任意の実施形態では、このLukAバリアントポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列、又は配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。
【0057】
任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、及びGlu321Alaに対応するアミノ酸置換を含むCC45C LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、このLukAバリアントポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列、又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。他の例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys83Met、Ser141Ala、Val113Ile、Val193Ile、及びGlu323Alaの置換に対応するアミノ酸置換を含む、配列番号26~38のLukAタンパク質のうちのいずれか1つを含む。
【0058】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応するアミノ酸残基のうちの1つ以上でのアミノ酸置換を含む。一実施形態では、前述の1つ以上の残基でのアミノ酸置換は、ジスルフィド結合を形成してLukABヘテロ二量体構造の立体構造を安定化することができるシステイン残基を導入する。例えば、一実施形態では、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のTyr74に対応するアミノ酸残基でのチロシンからシステインへの置換(Tyr74Cys)を含み、配列番号25のAsp140に対応するアミノ酸残基でのアスパラギンからシステインへの置換(Asp140Cys)を含む。74位及び140位のこれらのシステイン残基は、ジスルフィド結合を形成し、それによって、野生型LukAと比較して、又はジスルフィド結合を形成することができる対のシステイン残基を含有しない他のバリアントLukAポリペプチドと比較して、バリアントLukAの熱安定性を増加させる。
【0059】
別の実施形態では、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のGly149に対応するアミノ酸残基でのグリシンからシステインへの置換(Gly149Cys)を含み、配列番号25のGly156に対応するアミノ酸残基でのグリシンからシステインへの置換(Gly156Cys)を含む。149位及び156位で導入されたこれらのシステイン残基は、ジスルフィド結合を形成し、それによって、野生型LukAと比較して、又はジスルフィド結合を形成することができる対のシステイン残基を含有しない他のバリアントLukAポリペプチドと比較して、バリアントLukAの熱安定性を増加させる。
【0060】
任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、これらのアミノ酸残基の各々でのアミノ酸置換は、上記のようなシステイン残基の導入を伴う。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基Tyr71、Asp137、Gly146、及びGly153に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、これらのアミノ酸残基の各々でのアミノ酸置換は、システイン残基の導入を伴う。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸残基Tyr72、Asp138、Gly147、及びGly154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、これらのアミノ酸残基の各々でのアミノ酸置換は、システイン残基の導入を伴う。
【0061】
任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換と組み合わせて、Lys83、Ser141、Val113、Val193、及びGlu323に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは、配列番号25の残基Lys83、Ser141、Val113、Val193、及びGlu323並びに残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。
【0062】
任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のLys80、Ser138、Val110、Val190、Glu320、Tyr71、Asp137、Gly146、及びGly153の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC8 LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Glu320Ala、Tyr71Cys、Asp137Cys、Gly146Cys、及びGly153Cysの各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC8 LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、このCC8 LukAバリアントポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列、又は配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0063】
任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のLys81、Ser139、Val111、Val191、Glu321、Tyr72、Asp138、Gly147、及びGly154の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC45 LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、Glu321Ala、Tyr72Cys、Asp138Cys、Gly147Cys、及びGly154Cysの各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC45 LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、このCC45 LukAバリアントポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列、又は配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0064】
他の例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys83Met、Ser141Ala、Val113Ile、Val193Ile、Glu323、Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応するアミノ酸置換を含む、配列番号26~38のLukAタンパク質のうちのいずれか1つを含む。
【0065】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸残基Thr249に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換又は欠失を含む。任意の実施形態では、LukAバリアントは、Thr249に対応する残基での置換を含み、置換は、この残基でのトレオニンからバリンへの置換(Thr249Val)である。任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基Thr246に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換又は欠失を含む。任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸残基Thr247に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換又は欠失を含む。
【0066】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドは、本明細書に記載される他のアミノ酸残基置換のいずれか1つ、すなわち、配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193、Glu323、Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する残基での置換、と組み合わせて、配列番号25のThr249に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドは、本明細書に記載される他のアミノ酸残基置換のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、又は9つ全てと組み合わせた、配列番号25のThr249に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193、Glu323、及びThr249に対応する各々の残基でのアミノ酸置換を含む。
【0067】
任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のLys80、Ser138、Val110、Val190、Glu320、及びThr246の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC8 LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Glu320Ala、及びThr246Valの各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC8 LukAバリアントポリペプチドである。一実施形態では、前述の位置の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有する例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列、又は配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。
【0068】
任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のLys81、Ser139、Val111、Val191、Glu321、及びThr247の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC45 LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、Glu321Ala、及びThr247Valの各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC45 LukAバリアントポリペプチドである。一実施形態では、前述の位置の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有する例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列、又は配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。
【0069】
他の例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193、Glu323、及びThr249に対応するアミノ酸残基での記載されたアミノ酸置換を含む、配列番号26~38のLukAタンパク質のうちのいずれか1つを含む。
【0070】
任意の実施形態では、LukAバリアントポリペプチドは配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193、Glu323、Thr249、Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する各々の残基でのアミノ酸置換を含む。
【0071】
任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のLys80、Ser138、Val110、Val190、Glu320、Tyr71、Asp137、Gly146、Gly153、及びThr246の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC8 LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Glu320Ala、Tyr71Cys、Asp137Cys、Gly146Cys、Gly153Cys、及びThr246Valの各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC8 LukAバリアントポリペプチドである。一実施形態では、前述の位置の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有する例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列、又は配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。
【0072】
任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のLys81、Ser139、Val111、Val191、Glu321、Tyr72、Asp138、Gly147、Gly154、及びThr247の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC45 LukAバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、Glu321Ala、Tyr72Cys、Asp138Cys、Gly147Cys、Gly154Cys、及びThr247Alaの各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有するCC45 LukAバリアントポリペプチドである。一実施形態では、前述の位置の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有する例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列、又は配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。
【0073】
他の例示的なLukAバリアントポリペプチドは、配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193、Glu323、Thr249、Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する残基での記載されたアミノ酸置換を含む、配列番号26~38のLukAタンパク質のうちのいずれか1つを含む。
【0074】
以下の表1は、本明細書に開示される例示的なバリアントLukAアミノ酸配列を提供する。
【表1】
【0075】
S.aureusロイコシジンB(LukB)バリアント
本開示の別の態様は、S.aureusロイコシジンB(LukB)バリアントポリペプチドを対象とする。これらのLukBバリアントポリペプチドは、LukBの安定性を改善し、それによってLukABのトキソイド安定性に寄与する、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を含む。本明細書に記載されるように、これらのLukBバリアントポリペプチドは、単独で、又はロイコシジンA(LukA)野生型若しくはバリアントタンパク質若しくはポリペプチドと組み合わせて投与することができる理想的なワクチン抗原候補である。LukA野生型ポリペプチド又はバリアントポリペプチドと組み合わせて投与される場合、結果として生じるトキソイドは、S.aureusLukAB毒素の構造を模倣し、それによって、S.aureusの最も強力な毒素のうちの1つに対する堅牢な免疫応答の生成を促進する。任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、完全長成熟LukBタンパク質配列に対応するアミノ酸残基の全てを含む、完全長LukBタンパク質のバリアントである。任意の実施形態では、LukBバリアントは、完全長成熟LukBタンパク質よりも短い参照タンパク質のアミノ酸鎖を含む。一実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、長さが少なくとも100アミノ酸残基である。任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、長さが少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも200、少なくとも210、少なくとも220、少なくとも230、少なくとも240、少なくとも250、少なくとも260、少なくとも270、少なくとも280、少なくとも290、少なくとも300アミノ酸残基である。
【0076】
本明細書に記載される例示的なLukBバリアントポリペプチドは、クローン性複合体CC8(配列番号15)及びCC45(配列番号16)のLukBバリアントであり(以下の表2を参照)、当業者であれば、配列番号15及び配列番号16との関連で同定されたLukBのアミノ酸置換及び/又は欠失が、様々なクローン性複合体にわたって、又は様々なクローン性複合体にわたって高度に保存されているLukBの領域内で、保存されるアミノ酸残基であることを容易に理解するであろう。14種類の異なる株のS.aureus由来のLukBタンパク質配列のアライメント(
図2を参照)は、変異を受ける残基として本明細書で同定されるアミノ酸残基が、アライメントされたLukBアミノ酸配列の14個全てにわたって保存されている残基であることを示している。同定された変異の残基の位置は、個々のLukB-配列間で異なる場合があるが、配列アライメントは、これらの位置間の対応を示している。明確にするために、配列番号39のアミノ酸配列を有するLukBコンセンサス配列を配列アライメントから生成し、特定のアミノ酸変異の場所を割り当てる目的で利用した。例えば、配列番号39のグルタミン酸残基109のアミノ酸置換は、配列番号15、42、44、及び46~51のLukB配列の109位のグルタミン酸残基、配列番号16、40、43、及び45のLukB配列の110位のグルタミン酸残基、並びに配列番号41のLukB配列の60位のグルタミン酸残基に対応する。したがって、本明細書に記載される同定されたアミノ酸変異を、現在又は将来知られる任意のLukBアミノ酸配列の対応するアミノ酸残基に、普遍的に適用することができる。
【0077】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるLukBバリアントポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸残基Val53に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換又は欠失を含む。任意の実施形態では、Val53でのアミノ酸置換は、バリンからロイシンへの(Val53Leu)置換を含む。一実施形態では、例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号39のVal53Leuに対応する置換を含む。
【0078】
任意の実施形態では、例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号15の53位に対応するアミノ酸位置でのアミノ酸置換を有する、CC8 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号15の53位に対応する位置でのバリンからロイシンへのアミノ酸置換を有する、CC8 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、53位のバリンからロイシンへの置換を有する例示的なCC8 LukB配列は、配列番号17のアミノ酸配列、又は配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
任意の実施形態では、例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号16の53位に対応するアミノ酸位置でのアミノ酸置換を有する、CC45 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号16の53位に対応する位置でのバリンからロイシンへのアミノ酸置換を有する、CC45 LukBバリアントポリペプチドである。一実施形態では、配列番号39のVal53Leu置換に対応する置換を含む例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列、又は配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
他の例示的なLukBバリアントポリペプチドは、Val53Leuに対応するアミノ酸置換を含む配列番号40~51のLukBタンパク質のいずれか1つを含む。
【0081】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukBバリアントポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。一実施形態では、前述の1つ以上の残基でのアミノ酸置換は、ジスルフィド結合を形成してLukABヘテロ二量体構造の立体構造を安定化することができるシステイン残基を導入する。例えば、一実施形態では、本明細書に記載されるLukBバリアントタンパク質又はポリペプチドは、配列番号39のGlu45に対応するアミノ酸残基でのグルタミン酸からシステインへの置換(Glu45Cys)を含み、配列番号39のThr121に対応するアミノ酸残基でのトレオニンからシステインへの置換(Thr121Cys)を含む。45位及び121位で導入されたこれらのシステイン残基は、ジスルフィド結合を形成し、それによって、野生型LukBと比較して、又はジスルフィド結合を形成することができる対のシステイン残基を含有しない本明細書に記載される他のバリアントLukBタンパク質又はポリペプチドと比較して、バリアントLukBの熱安定性を増加させる。
【0082】
別の実施形態では、本明細書に記載されるLukBバリアントタンパク質又はポリペプチドは、配列番号39のGlu109に対応するアミノ酸残基でのグルタミン酸からシステインへの置換(Glu109Cys)を含み、配列番号39のArg154に対応するアミノ酸残基でのアルギニンからシステインへの置換(Arg154Cys)を含む。109位及び154位に導入されたこれらのシステイン残基は、ジスルフィド結合を形成し、それによって、野生型LukBと比較して、又はジスルフィド結合を形成することができる対のシステイン残基を含有しない他のLukBバリアントポリペプチドと比較して、LukBバリアントの熱安定性を増加させる。
【0083】
任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、これらのアミノ酸残基の各々でのアミノ酸置換は、上記のようなシステイン残基の導入を伴う。
【0084】
任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むCC8 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むCC8 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、これらのアミノ酸残基の各々でのアミノ酸置換は、上記のようなシステイン残基の導入を伴う。一実施形態では、配列番号39のGlu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する残基でのシステインアミノ酸置換を含む例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列、又は配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0085】
任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸残基Glu45、Glu110、Thr122、及びArg155に対応するアミノ酸残基のうちのいずれか1つでのアミノ酸置換を含むCC45 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸残基Glu45、Glu110、Thr122、及びArg155に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むCC45 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、これらのアミノ酸残基の各々でのアミノ酸置換は、上記のようなシステイン残基の導入を伴う。別の実施形態では、配列番号39のGlu45、Glu110、Thr122、及びArg155に対応する残基でのシステインアミノ酸置換を含むLukBバリアントポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列、又は配列番号22のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0086】
他の例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号39の残基、Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する残基での記載されたアミノ酸置換を含む、配列番号40~51のLukBタンパク質のうちのいずれか1つを含む。
【0087】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるLukBバリアントポリペプチドは、配列番号39のGlu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換と組み合わせて、配列番号39のVal53に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸残基Val53、Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むCC8 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸残基Val53Leu、Glu45Cys、Glu109Cys、Thr121Cys、及びArg154Cysに対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むCC8 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、例示的なCC8 LukBバリアントポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列、又は配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0088】
任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸残基Val53、Glu45、Glu110、Thr122、及びArg155に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むCC45 LukBバリアントポリペプチドである。任意の実施形態では、LukBバリアントポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸残基Val53Leu、Glu45Cys、Glu110Cys、Thr123Cys、及びArg155Cys に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むCC45 LukBバリアントポリペプチドである。前述の位置の各々に対応する残基でのアミノ酸置換を有する例示的なCC45 LukBバリアントポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有する。
【0089】
他の例示的なLukBバリアントポリペプチドは、配列番号39のVal53、Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する残基での記載されたアミノ酸置換を含む、配列番号40~51のLukBタンパク質のうちのいずれか1つを含む。
【0090】
以下の表2は、本明細書に開示される例示的なバリアントLukBアミノ酸配列を提供する。
【表2】
【0091】
本明細書の開示の全ての態様によれば、本明細書に開示のバリアントLukA及び/又はLukBバリアントポリペプチドは、1つ以上の異種アミノ酸配列を更に含み得る。好適な異種アミノ酸配列には、限定されないが、タグ配列、免疫原、シグナル配列などが含まれる。好適なタグ配列としては、限定されるものではないが、ポリヒスチジンタグ、ポリアルギニンタグ、FLAGタグ、ステップタグII、ユビキチンタグ、NusAタグ、キチン結合ドメイン、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ドメイン、Hat-タグ、S-タグ、SBP、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼが挙げられる(参照により本明細書に組み込まれる、Terpe K.,“Overview of Tag Protein Fusions:From Molecular and Biochemical Fundamentals to Commercial Systems,”Appl.Microbiol.Biotechnol.60:523-33(2003)を参照されたい)。好適な免疫原としては、限定されるものではないが、T細胞エピトープ、B細胞エピトープが挙げられる。好適なシグナル配列としては、限定されるものではないが、PelBシグナル配列、Secシグナル配列、Tatシグナル配列、AmyEシグナル配列(参照により本明細書に組み込まれる、Freudl R.,“Signal Peptides for Recombinant Protein Secretion in Bacterial Expression Systems”,Microbial Cell Factories 17:52(2018)を参照されたい)が挙げられる。任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukA及び/又はLukBバリアントポリペプチドは、PelB配列(MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA、配列番号23)を含む。任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukA及び/又はそのLukBバリアントポリペプチドは、His-タグ(例えば、NSAHHHHHHGS、配列番号24)を含む。任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukA及び/又はLukBバリアントポリペプチドは、前述のPelB配列及びHis-タグの両方を含む。
【0092】
バリアントLukA及びLukBポリヌクレオチド並びに構築物
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるLukA及びLukBバリアントポリペプチドをコードする核酸分子を対象とする。本明細書に記載される核酸分子には、単離ポリヌクレオチド、組換えポリヌクレオチド配列、発現ベクターの一部、又はインビトロ又はインビボ転写/翻訳に使用される線状DNA又はRNA配列を含む線状DNA又はRNA配列の一部、並びに本明細書に記載されるLukA及びLukBバリアントポリペプチドの原核細胞及び真核細胞の発現及び分泌に適合するベクターが挙げられる。任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAポリヌクレオチド及びLukBポリヌクレオチドは、DNAを含む。任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAポリヌクレオチド及びLukBポリヌクレオチドは、RNA、特にmRNAを含む。
【0093】
本開示のポリヌクレオチドは、核酸自動合成装置での固相ポリヌクレオチド合成などの化学合成によって生成され得、完全な一本鎖又は二本鎖分子に組み立てられ得る。あるいは、本開示のポリヌクレオチドは、PCRとそれに続くルーチンクローニングなどの他の技術によって生成され得る。所与の配列のポリヌクレオチドを生成又は取得するための技術は、当技術分野で周知である。
【0094】
任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号25の83位のリジンに対応する残基でのリジンからメチオニンへの置換(Lys83Met)を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、本開示のポリペプチドは、配列番号25の141位でのセリンに対応する残基でのセリンからアラニンへの置換(Ser141Ala)を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、本開示のポリペプチドは、配列番号25の113位のバリンに対応する残基でのバリンからイソロイシンへの置換(Val113Ile)を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、本開示のポリペプチドは、配列番号25の193位のバリンに対応する残基でのバリンからイソロイシンへの置換(Val193Ile)を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、前述のアミノ酸残基に対応する残基、すなわち、配列番号25のLys803Met、Ser141Ala、Val113Ile、及びVal193Ileでの、リジンからメチオニンへの、セリンからアラニンへの、及びバリンからイソロイシンへのアミノ酸置換を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、Glu323Alaに対応するアミノ酸置換を更に含むLukAバリアントポリペプチドをコードし、すなわち、ポリヌクレオチドは、配列番号25のLys83Met、Ser141Ala、Val113Ile、Val193Ile、及びGlu323Ala置換に対応する置換を含むLukAバリアントをコードする。
【0095】
一実施形態では、例示的な核酸分子は、CC8 LukAバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile及びGlu320Alaに対応するアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントをコードする核酸分子である。CC8 LukAをコードする例示的な核酸分子は、配列番号52として本明細書に提供される。したがって、任意の実施形態では、例示的な核酸分子は、配列番号52のバリアントであり、当該バリアントは、配列番号52のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0096】
一実施形態では、CC8 Luk8バリアントをコードする例示的な核酸分子は、配列番号3(LukA CC8 Glu320Ala、Lys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile)のLukAバリアント配列、又は配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする核酸分子である。このLukA CC8バリアントをコードする例示的な核酸分子は、配列番号54に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。任意の実施形態では、このLukA CC8バリアントをコードする核酸分子は、配列番号54のヌクレオチド配列を含む。
【0097】
別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC45 LukAバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、及びGlu321Alaに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号2のバリアントをコードする核酸分子である。CC45 LukAをコードする例示的な核酸分子は、配列番号53として本明細書に提供される。したがって、任意の実施形態では、例示的な核酸分子は、配列番号53のバリアントであり、当該バリアントは、配列番号53のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0098】
一実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号4(LukA CC45 Glu321Ala、Lys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile)のCC45 LukAバリアント配列、又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする核酸分子である。このLukA CC45バリアントをコードする例示的な核酸分子は、配列番号55に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。任意の実施形態では、このLukA CC8バリアントをコードする核酸分子は、配列番号55のヌクレオチド配列を含む。
【0099】
任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応するアミノ酸残基のうちの1つ以上でのアミノ酸置換を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号25のTyr74に対応するアミノ酸残基でのチロシンからシステインへの置換(Tyr74Cys)を含み、配列番号25のAsp140に対応するアミノ酸残基でのアスパラギンからシステインへの置換(Asp140Cys)を含む、LukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号25のGly149に対応するアミノ酸残基でのグリシンからシステインへの置換(Gly149Cys)を含み、配列番号25のGly156に対応するアミノ酸残基でのグリシンからシステインへの置換(Gly156Cys)を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、これらのアミノ酸残基の各々でのアミノ酸置換は、上記のようなシステイン残基である。
【0100】
任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換と組み合わせて、Lys83、Ser141、Val113、Val193、及びGlu323に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、LukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号25の残基Lys83、Ser141、Val113、Val193、及びGlu323並びに残基Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。
【0101】
一実施形態では、例示的な核酸分子は、CC8 LukAバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Glu320Ala、Tyr71Cys、Asp137Cys、Gly146Cys、及びGly153Cysの各々に対応するアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントをコードする核酸分子である。一実施形態では、例示的な核酸分子は、配列番号5(LukA CC8 Glu320Ala、Lys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Tyr71Cys、Asp137Cys、Gly146Cys、Gly153Cys)のLukAバリアント配列、又は配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする核酸分子である。
【0102】
別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC45 LukAバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、Glu321Ala、Tyr72Cys、Asp138Cys、Gly147Cys、及びGly154Cysの各々に対応するアミノ酸置換を含む配列番号2のバリアントをコードする核酸分子である。一実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号6(LukA CC45 Glu321Ala、Lys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、Tyr72Cys、Asp138Cys、Gly147Cys、Gly154Cys)のLukAバリアント配列、又は配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする核酸分子である。
【0103】
任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号25のアミノ酸残基Thr249に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換又は欠失を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号25の249位に対応するこの残基でのトレオニンからバリンへの置換を含むLukAバリアントをコードする。任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号25のLys83、Ser141、Val113、Val193、Glu323、Tyr74、Asp140、Gly149、及びGly156に対応する残基でのアミノ酸置換のうちのいずれか1つ又は全てと組み合わせて、Thr249に対応する位置でのアミノ酸置換を含むLukAバリアントポリペプチドをコードする。
【0104】
一実施形態では、例示的な核酸分子は、CC8 LukAバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Glu320Ala及びThr246Valの各々に対応するアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントをコードする核酸分子である。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号7(LukA CC8 Glu320Ala、Lys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、及びThr246Val)のLukAバリアント配列、又は配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする核酸分子である。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、Glu320Ala、Lys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Thr246Val、Tyr71Cys、Asp137Cys、Gly146Cys、及びGly153Cysに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号9のCC8 LukAバリアント配列をコードする核酸分子である。本開示の例示的な核酸分子は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列をコードする核酸分子を包含する。任意の実施形態では、配列番号9のこのLukA CC8バリアントをコードする例示的な核酸分子は、配列番号56に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。任意の実施形態では、このLukA CC8バリアントをコードする核酸分子は、配列番号56のヌクレオチド配列を含む。
【0105】
別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC45 LukAバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、Glu321Ala、及びThr247Valの各々に対応するアミノ酸置換を含む配列番号2のバリアントをコードする核酸分子である。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号8(LukA CC45 Glu321Ala、Lys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、Thr247Val)のLukAバリアント配列、又は配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする核酸分子である。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、Glu321Ala、Lys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile、Thr247Val、Tyr72Cys、Asp138Cys、Gly147Cys、及びGly154Cysに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号10のLukAバリアント配列をコードする核酸分子である。本開示の例示的な核酸分子は、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列をコードする核酸分子を包含する。任意の実施形態では、配列番号10のこのLukA CC45バリアントをコードする例示的な核酸分子は、配列番号57に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。任意の実施形態では、このLukA CC8バリアントをコードする核酸分子は、配列番号57のヌクレオチド配列を含む。
【0106】
本開示の別の態様は、本明細書に開示されるLukBバリアントポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象とする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号39のアミノ酸残基Val53に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換又は欠失を含むLukBバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、Val53でのアミノ酸置換は、バリンからロイシンへの(Val53Leu)置換を含む。一実施形態では、例示的な核酸分子は、CC8 LukBバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号15の53位でのアミノ酸置換を含む配列番号15のバリアントをコードする核酸分子である。CC8 LukBをコードする例示的な核酸分子は、配列番号58として本明細書に提供される。したがって、任意の実施形態では、例示的な核酸分子は、配列番号58のバリアントであり、当該バリアントは、配列番号58のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0107】
一実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号17(LukB CC8 V53L)のLukBバリアントペプチド、又は配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする。このLukB CC8 V53Lバリアントをコードする例示的な核酸分子は、配列番号60に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。任意の実施形態では、このLukA CC8バリアントをコードする核酸分子は、配列番号60のヌクレオチド配列を含む。
【0108】
別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC45 LukBバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号16の53位でのアミノ酸置換を含む配列番号16のバリアントをコードする核酸分子である。CC45 LukBをコードする例示的な核酸分子は、配列番号59として本明細書に提供される。したがって、任意の実施形態では、例示的な核酸分子は、配列番号59のバリアントであり、当該バリアントは、配列番号59のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0109】
別の実施形態では、本開示の例示的なポリヌクレオチドは、配列番号18(LukB CC45 V53L)のLukBバリアントペプチド、又は配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする。このLukB CC45 V53Lバリアントをコードする例示的な核酸分子は、配列番号61に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。任意の実施形態では、このLukA CC45バリアントをコードする核酸分子は、配列番号61のヌクレオチド配列を含む。
【0110】
任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むLukBバリアントポリペプチドをコードする。一実施形態では、前述の1つ以上の残基でのアミノ酸置換は、ジスルフィド結合を形成してLukABヘテロ二量体構造の立体構造を安定化することができる1つ以上のシステイン残基を導入する。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号39のGlu45に対応するアミノ酸残基でのグルタミン酸からシステインへの置換(Glu45Cys)、及び配列番号39のThr121に対応するアミノ酸残基でのトレオニンからシステインへの置換(Thr121Cys)を含むLukBバリアントタンパク質又はポリペプチドをコードする。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号39のGlu109に対応するアミノ酸残基でのグルタミン酸からシステインへの置換(Glu109Cys)、及び配列番号39のArg154に対応するアミノ酸残基でのアルギニンからシステインへの置換(Arg154Cys)を含むLukBバリアントタンパク質又はポリペプチドをコードする。
【0111】
任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むLukBバリアントポリペプチドをコードする。任意の実施形態では、これらのアミノ酸残基の各々でのアミノ酸置換は、上記のようなシステイン残基の導入を伴う。
【0112】
一実施形態では、例示的な核酸分子は、CC8 LukBバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号15のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む配列番号15のバリアントをコードする核酸分子である。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号21(LukB CC8 Glu45Cys、Glu109Cys、Thr121Cys、及びArg154Cys)のアミノ酸配列を含むLukBバリアントペプチド、又は配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする。別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC45 LukBバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号16のアミノ酸残基Glu45、Glu110、Thr122及びArg155に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、配列番号16のバリアントをコードする核酸分子である。任意の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号22(LukB CC45 Glu45Cys、Thr122Cys、Glu110Cys、Arg155Cys)のアミノ酸配列を含むLukBバリアントペプチド、又は配列番号22のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする。
【0113】
任意の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号39のGlu45、Glu109、Thr121及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換と組み合わせて、配列番号39のVal53に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含むLukBバリアントポリペプチドをコードする。一実施形態では、例示的な核酸分子は、CC8 LukBバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号15のアミノ酸残基Val53、Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む配列番号15のバリアントをコードする核酸分子である。任意の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号19(LukB CC8 Val53Leu、Glu45Cys、Glu109Cys、Thr121Cys、及びArg154Cys)のアミノ酸配列を有するLukBバリアントペプチド、又は配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする。別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC45 LukBバリアント配列をコードする核酸分子であり、例えば、配列番号16のアミノ酸残基Val53、Glu45、Glu110、Thr122及びArg155に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む配列番号16のバリアントをコードする核酸分子である。任意の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号20(LukB CC45 Val53Leu、Glu45Cys、Thr122Cys、Glu110Cys、Arg155Cys)のアミノ酸配列を有するLukBバリアントペプチド、又は配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するアミノ酸配列、をコードする。
【0114】
別の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、本明細書に開示されるLukA配列及びLukB配列をコードする核酸分子である。一実施形態では、例示的な核酸分子は、CC45 LukA配列(バリアント又は非バリアント)及びCC45 LukB配列(バリアント又は非バリアント)をコードするポリヌクレオチドである。例えば、本明細書に開示されるCC45 LukAバリアント配列及びCC45 LukB非バリアント配列をコードするポリヌクレオチド、又は本明細書に開示されるCC45 LukA非バリアント配列及びCC45 LukBバリアント配列をコードするポリヌクレオチド。
【0115】
別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC8 LukA配列(バリアント又は非バリアント)及びCC8 LukB配列(バリアント又は非バリアント)をコードするポリヌクレオチドである。例えば、本明細書に開示されるCC8 LukAバリアント配列及びCC8 LukB非バリアント配列をコードするポリヌクレオチド、又は本明細書に開示されるCC8 LukA非バリアント配列及びCC8 LukBバリアント配列をコードするポリヌクレオチド。
【0116】
別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC45 LukA配列(バリアント又は非バリアント)及びCC8 LukB配列(バリアント又は非バリアント)をコードするポリヌクレオチドである。例えば、本明細書に開示されるCC45 LukAバリアント配列及びCC8 LukB非バリアント配列をコードするポリヌクレオチド、又は本明細書に開示されるCC45 LukA非バリアント配列及びCC8 LukBバリアント配列をコードするポリヌクレオチド。
【0117】
別の実施形態では、例示的な核酸分子は、CC8 LukA配列(バリアント又は非バリアント)及びCC45 LukB配列(バリアント又は非バリアント)をコードする核酸分子である。例えば、本明細書に開示されるCC8 LukAバリアント配列及びCC45 LukB非バリアント配列をコードするポリヌクレオチド、又は本明細書に開示されるCC8 LukA非バリアント配列及びCC45 LukBバリアント配列をコードするポリヌクレオチドである。
【0118】
別の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、LukAバリアント配列及びLukB野生型配列をコードするポリヌクレオチドである。例えば、配列番号15又は配列番号16のLukB野生型(すなわち、非バリアント)配列と組み合わせた、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14のうちのいずれか1つから選択されるLukAバリアント配列をコードするポリヌクレオチド。
【0119】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、LukA野生型配列及びLukBバリアント配列をコードするポリヌクレオチドである。例えば、配列番号17、18、19、20、21、又は22のいずれか1つから選択されるLukBバリアント配列と組み合わせた配列番号1又は配列番号2のLukA野生型配列をコードするポリヌクレオチド。
【0120】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、LukAバリアント配列及びLukBバリアント配列をコードするポリヌクレオチドである。例えば、配列番号17、18、19、20、21、又は22のうちのいずれか1つから選択されるLukBバリアント配列と組み合わせた、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14のうちのいずれか1つから選択されるLukAバリアント配列をコードするポリヌクレオチド。
【0121】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号3のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号4のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号5のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号6のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号7のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号8のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号9のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号10のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号11のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号12のLukAバリアント配列、及び配列番号15若しくは16のLukB非バリアント配列、配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号13のLukAバリアント配列、及び配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号14のLukAバリアント配列、及び配列番号17若しくは18のLukBバリアント配列、配列番号19若しくは20のLukBバリアント配列、又は配列番号21若しくは22のLukBバリアント配列をコードする。
【0122】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号17のLukBバリアント配列、及び配列番号1若しくは2のLukA非バリアント配列、配列番号3若しくは4のLukAバリアント配列、配列番号5若しくは6のLukAバリアント配列、配列番号7若しくは8のLukAバリアント配列、配列番号9若しくは10のLukAバリアント配列、配列番号11若しくは12のLukAバリアント配列、又は配列番号13若しくは14のLukAバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号18のLukBバリアント配列、及び配列番号1若しくは2のLukA非バリアント配列、配列番号3若しくは4のLukAバリアント配列、配列番号5若しくは6のLukAバリアント配列、配列番号7若しくは8のLukAバリアント配列、配列番号9若しくは10のLukAバリアント配列、配列番号11若しくは12のLukAバリアント配列、又は配列番号13若しくは14のLukAバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号19のLukBバリアント配列、及び配列番号1若しくは2のLukA非バリアント配列、配列番号3若しくは4のLukAバリアント配列、配列番号5若しくは6のLukAバリアント配列、配列番号7若しくは8のLukAバリアント配列、配列番号9若しくは10のLukAバリアント配列、配列番号11若しくは12のLukAバリアント配列、又は配列番号13若しくは14のLukAバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号20のLukBバリアント配列、及び配列番号1若しくは2のLukA非バリアント配列、配列番号3若しくは4のLukAバリアント配列、配列番号5若しくは6のLukAバリアント配列、配列番号7若しくは8のLukAバリアント配列、配列番号9若しくは10のLukAバリアント配列、配列番号11若しくは12のLukAバリアント配列、又は配列番号13若しくは14のLukAバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号21のLukBバリアント配列、及び配列番号1若しくは2のLukA非バリアント配列、配列番号3若しくは4のLukAバリアント配列、配列番号5若しくは6のLukAバリアント配列、配列番号7若しくは8のLukAバリアント配列、配列番号9若しくは10のLukAバリアント配列、配列番号11若しくは12のLukAバリアント配列、又は配列番号13若しくは14のLukAバリアント配列をコードする。任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号22のLukBバリアント配列、及び配列番号1若しくは2のLukA非バリアント配列、配列番号3若しくは4のLukAバリアント配列、配列番号5若しくは6のLukAバリアント配列、配列番号7若しくは8のLukAバリアント配列、配列番号9若しくは10のLukAバリアント配列、配列番号11若しくは12のLukAバリアント配列、又は配列番号13若しくは14のLukAバリアント配列をコードする。
【0123】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号4のCC45 LukAバリアント配列、及び配列番号16のCC45 LukB配列をコードする。このLukABヘテロ二量体(RARPR-15)をコードする例示的な核酸分子は、配列番号59(CC45 LukB)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号55(CC45 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。このLukABヘテロ二量体をコードする例示的な核酸分子は、配列番号59のヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号55のヌクレオチド配列を含む。
【0124】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号4のCC45 LukAバリアント配列及び配列番号18のCC45 LukBバリアント配列をコードする。このLukABヘテロ二量体(RARPR-30)をコードする例示的な核酸分子は、配列番号61(CC45 LukBバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号55(CC45 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。このLukABヘテロ二量体をコードする例示的な核酸分子は、配列番号61のヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号55のヌクレオチド配列を含む。
【0125】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号3のCC8 LukAバリアント配列、及び配列番号15のCC8 LukBバリアント配列をコードする。このLukABヘテロ二量体(RARPR-32)をコードする例示的な核酸分子は、配列番号58(CC8 LukB)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54(CC8 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。このLukABヘテロ二量体をコードする例示的な核酸分子は、配列番号58のヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54のヌクレオチド配列を含む。
【0126】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号3のCC8 LukAバリアント配列及び配列番号18のCC45 LukBバリアント配列をコードする。このLukABヘテロ二量体(RARPR-33)をコードする例示的な核酸分子は、配列番号61(CC45 LukBバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54(CC8 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。このLukABヘテロ二量体をコードする例示的な核酸分子は、配列番号61のヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54のヌクレオチド配列を含む。
【0127】
任意の実施形態では、本開示の例示的な核酸分子は、配列番号3のCC8 LukAバリアント配列及び配列番号17のCC8 LukBバリアント配列をコードする。このLukABヘテロ二量体(RARPR-34)をコードする例示的な核酸分子は、配列番号60(CC8 LukBバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54(CC8 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む。このLukABヘテロ二量体をコードする例示的な核酸分子は、配列番号60のヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54のヌクレオチド配列を含む。
【0128】
本開示の例示的な核酸分子配列を、以下の表3に提供する。
【表3】
【0129】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるバリアントLukAポリペプチド及びLukBポリペプチドをコードする核酸分子は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。コドン最適化の方法は既知であり、以前に記載されている(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Seedの国際特許出願公開WO1996/09378)。野生型配列と比較して、少なくとも1つの好ましくないコドンがより好ましいコドンで置換される場合、配列は、コドン最適化されたとみなされる。本明細書では、好ましくないコドンは、同じアミノ酸をコードする別のコドンよりも生物体で使用される頻度低いコドンであり、より好ましいコドンは、好ましくないコドンよりも生物体でより頻繁に使用されるコドンである。特定の生物体に対するコドン使用の頻度は、当技術分野で周知であり利用可能なコドン頻度表に見出すことができる。好ましくは、複数の好ましくないコドン、例えば、10%、40%、60%、80%を超える好ましくないコドン、好ましくは、ほとんどの(例えば、少なくとも90%)又は全ての好ましくないコドンが、より好ましいコドンによって置換される。好ましくは、生物において最も頻繁に使用されるコドンが、コドン最適化配列で使用される。好ましいコドンによる置換は、一般により高い発現をもたらす。
【0130】
本開示のポリヌクレオチドは、通常の分子生物学技術を使用してクローニングされてもよく、又はDNA合成及び/若しくは分子クローニングの分野で事業を有するサービス会社(例えば、GeneArt、GenScript、Invitrogen、Eurofins)による日常的な手順を使用して実施することができるDNA合成によってデノボで作製されてもよい。
【0131】
任意の実施形態では、前述の核酸分子は、ベクター、すなわち、本明細書に記載されるワクチン組成物で使用するための発現ベクターに挿入される。あるいは、これらの核酸分子は、コードされたバリアントLukAタンパク質、バリアントLukBタンパク質、又はバリアントLukAB複合体(安定ヘテロ二量体として)の発現及び単離のために、適切な宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトされる発現ベクターに挿入されてもよく、バリアントLukAB複合体は、本明細書に開示されているバリアントLukA及び非バリアントLukB、非バリアントLukA、及びバリアントLukB、又はバリアントLukA及びバリアントLukBを含む。
【0132】
本開示のこの態様によれば、本明細書に記載されるS.aureusLukA及び/又はLukBタンパク質及びそのポリペプチドをコードする核酸分子は、核酸配列構築物によってコードされるLukA及び/又はLukBタンパク質又はポリペプチドを発現することができる任意の発現ベクターに組み込むことができる。適切な発現ベクターは、そのようなベクターによってコードされるLukA及び/又はLukBタンパク質又はポリペプチドの発現を制御、調節、引き起こす、又は可能にする核酸配列要素を含む。こうした要素は、転写エンハンサー結合部位、RNAポリメラーゼ開始部位、リボソーム結合部位、及び所与の発現系においてコードされたポリペプチドの発現を促進する他の部位を含んでもよい。適切なベクターには、DNAベクター、プラスミドベクター、線状核酸、及びウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
一実施形態では、発現ベクターは、環状プラスミドである(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Muthumani et al.,“Optimized and Enhanced DNA Plasmid Vector Based In vivo Construction of a Neutralizing anti-HIV-1 Envelope Glycoprotein Fab,”Hum.Vaccin.Immunother.9:2253-2262(2013)を参照されたい)。プラスミドは、細胞ゲノムへの組み込みによって標的細胞を形質転換するか、又は染色体外に存在することができる(例えば、複製起源を有する自律複製プラスミド)。例示的なプラスミドベクターとしては、限定されるものではないが、pCEP4、pREP4、pVAX、pcDNA3.0、provax、又は組換え核酸配列構築物によってコードされるバリアントLukA及び/又はバリアントLukBタンパク質又はポリペプチドを発現することができる任意の他のプラスミド発現ベクターが挙げられる。
【0134】
別の実施形態では、発現ベクターは線状発現カセット(「LEC」)である。LECは、本明細書に記載される組換え核酸分子によってコードされるLukA及び/又はLukBタンパク質又はポリペプチドを発現するために電気穿孔を介して対象に効率的に送達することができる。LECは、リン酸骨格を欠いた任意の線状DNAであってもよい。一実施形態では、LECは、いかなる抗生物質耐性遺伝子及び/又はリン酸骨格も含有しない。別の実施形態では、LECは、所望の遺伝子発現とは関係のない他の核酸配列を含有しない。
【0135】
LECは、線状化することができる任意のプラスミドに誘導されてもよい。プラスミドは、本明細書に記載される組換え核酸分子によってコードされるLukA及び/又はLukBタンパク質又はポリペプチドを発現する能力を有し得る。例示的なプラスミドとしては、限定されるものではないが、pNP(Puerto Rico/34)、pM2(New Caledonia/99)、WLV009、pVAX、pcDNA3.0、若しくはprovax、又は組換え核酸配列構築物によってコードされるバリアントLukA及び/又はバリアントLukBタンパク質若しくはポリペプチドを発現することができる任意の他の発現ベクターが挙げられる。
【0136】
別の実施形態では、発現ベクターはウイルスベクターである。LukA及び/又はt LukBタンパク質又はポリペプチドを発現することができる好適なウイルスベクターには、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Krause et al.,“Delivery of Antigens by Viral Vectors for Vaccination,”Ther.Deliv.2(1):51-70(2011)、Ura et al.,“Developments in Viral Vector-Based Vaccines,”Vaccines 2:624-641(2014)、Buning et al,“Recent Developments in Adeno-associated Virus Vector Technology,”J.Gene Med.10:717-733(2008)を参照されたい)、レンチウイルスベクター(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ura et al.,“Developments in Viral Vector-Based Vaccines,”Vaccines 2:624-641(2014)、及びHu et al.,“Immunization Delivered by Lentiviral Vectors for Cancer and Infection Diseases,”Immunol.Rev.239:45-61(2011)を参照されたい)、レトロウイルスベクター(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ura et al.,“Developments in Viral Vector-Based Vaccines,”Vaccines 2:624-641(2014)を参照されたい)、ワクシニアウイルス、複製欠損アデノウイルスベクター、及びガットレス(gutless)アデノウイルスベクター(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,872,005号を参照されたい)が含まれる。ベクターとしての使用に適したアデノ随伴ウイルス(AAV)を生成及び単離する方法は、当該技術分野で公知である(例えば、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Grieger&Samulski,“Adeno-associated Virus as a Gene Therapy Vector:Vector Development,Production and Clinical Applications,”Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145(2005)、Buning et al,“Recent Developments in Adeno-associated Virus Vector Technology,”J.Gene Med.10:717-733(2008)を参照されたい)。
【0137】
本明細書に記載されるLukA及び/又はLukBタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸分子は、典型的には、最大発現を達成するために、発現ベクター構築物において、プロモーター、翻訳開始、3’非翻訳領域、ポリアデニル化、及び転写終結の配列と組み合わされる。LukA及び/又はLukBタンパク質又はそのポリペプチドの発現を駆動するのに好適なプロモーター配列には、限定されるものではないが、伸長因子1-アルファ(EF1a)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルス前書記遺伝子プロモーター(CMV)、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチンプロモーター(CAG)、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、シミアンウイルス40プロモーター(SV40)及びCK6プロモーターが含まれる。当技術分野で公知の宿主細胞における遺伝子発現を駆動するのに好適な他のプロモーターも、本明細書に開示される発現構築物への組み込みに適している。
【0138】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるLukAポリペプチド及び/又はLukBポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターを含む宿主細胞を対象とする。本明細書に記載されるLukAタンパク質及びLukBタンパク質又はポリペプチドをコードする発現構築物は、宿主細胞内に同時トランスフェクトされてもよく、連続的にトランスフェクトされてもよく、又は別々にトランスフェクトされてもよい。本明細書に記載されるLukAタンパク質及びLukBタンパク質及びポリペプチドは、当技術分野で周知のように、細胞株、混合細胞株、不死化細胞又は不死化細胞のクローン性集団によって任意選択的に産生することができる(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ausubel et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,NY,N.Y.(1987-2001)、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、Harlow and Lane,Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、Colligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1994-2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley&Sons,NY,N.Y.,(1997-2001)を参照されたい)。このような宿主細胞は、真核細胞、細菌細胞、植物細胞、又は古細菌細胞であってもよい。
【0139】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAポリペプチド及び/又はLukBポリペプチドは、細菌細胞で産生される。適切な細菌宿主細胞としては、限定されないが、Escherichia宿主細胞、Pseudomonas宿主細胞、Staphylococcus宿主細胞、Streptomyces宿主細胞、Mycobacterium宿主細胞、及びBacillus宿主細胞が挙げられる。任意の実施形態では、宿主細胞は、Escherichia coli宿主細胞である。任意の実施形態では、宿主細胞は、S.aureus宿主細胞である。
【0140】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukAポリペプチド及び/又はLukBポリペプチドは、真核細胞で産生される。例示的な真核細胞は、哺乳動物、昆虫、鳥類、又は他の動物の起源であってもよい。哺乳動物真核細胞には、例えばハイブリドーマ又は骨髄腫細胞株などの不死化細胞株、例えばSP2/0(American Type Culture Collection(ATCC)、Manassas,Va.,CRL-1581)、NSO(European Collection of Cell Cultures(ECACC)、Salisbury,Wiltshire,UK、ECACC第85110503号)、FO(ATCC CRL-1646)及びAg653(ATCC CRL-1580)マウス細胞株などが挙げられる。例示的なヒト骨髄腫細胞株は、U266(ATTC CRL-TIB-196)である。他の有用な細胞株としては、CHO-K1SV(Lonza Biologics、Walkersville,Md.)、CHO-K1(ATCC CRL-61)、又はDG44などのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に由来するものが挙げられる。
【0141】
本明細書に記載されるLukAポリペプチド及びLukBポリペプチドは、上記に記載される単離されたポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞を使用する様々な技術のいずれかによって調製され得る。一般に、タンパク質は、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地からタンパク質又はポリペプチドを回収するために一般的に使用される標準的なクローニング及び細胞培養技術によって産生される。宿主細胞へのトランスフェクションは、外因性DNAの原核性又は真核性宿主細胞への導入に一般的に使用される様々な技術を使用して、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどによって実施することができる。
【0142】
本明細書に記載されるLukAポリペプチド及び/又はLukBポリペプチドは、グリコシル化、異性化、脱グリコシル化、又はポリエチレングリコール(PEG)部分の追加(ペグ化)及び脂質付加などの非天然共有結合性修飾などのプロセスによって、翻訳後修飾され得る。そのような修飾は、インビボ又はインビトロで起こり得る。
【0143】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるLukA及びLukBのポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは、好ましくは「単離された」ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドである。本明細書に開示されるポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを記載するために使用される場合、「単離された」とは、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドが、その生産環境の構成要素から特定され、分離され、及び/又は回収されたことを意味する。好ましくは、単離されたポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは、その生産環境から他の構成要素との会合がない。組換え形質導入細胞から生じるものなどのその生産環境の汚染構成要素は、典型的には医薬品の使用を妨げる可能性のある物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含む可能性がある。ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含むがこれに限定されない公知の方法によって、組換え細胞培養物から回収及び精製される。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もまた精製に使用することができる。
【0144】
S.aureusワクチン組成物
本開示の別の態様は、Staphylococcus aureusワクチン組成物を対象とする。任意の実施形態では、S.aureusワクチン組成物は、本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドのうちの任意の1つ以上、又は本明細書に記載されるLukAバリアントポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子を含む。特に、ワクチン組成物のLukAバリアントポリペプチドは、本明細書で同定及び記載される1つ以上のアミノ酸残基のいずれかでの、アミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukAバリアントは、配列番号25のバリアント、又は配列番号1、2、若しくは26~38のいずれか1つのバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukAバリアントは、配列番号1のバリアント(CC8)を含む。例示的なCC8 LukAバリアントには、配列番号3、5、7、9、及び13のLukAバリアントが含まれるが、これらに限定されない。任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukAバリアントは、配列番号2のバリアント(CC45)を含む。例示的なCC45 LukAバリアントには、配列番号4、6、8、10、11、12、及び14のLukAバリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるS.aureusワクチン組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCC8 LukAバリアントを含む。
【0146】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるS.aureusワクチン組成物は、配列番号7のアミノ酸配列を有するCC8 LukAバリアントを含む。
【0147】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるS.aureusワクチン組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を有するCC45 LukAバリアントを含む。
【0148】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるS.aureusワクチン組成物は、本明細書に記載されるバリアントLukBタンパク質若しくはポリペプチドのうちの任意の1つ以上、又は本明細書に記載されるLukBバリアントタンパク質若しくはポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子を含む。特に、ワクチン組成物のLukBバリアントポリペプチドは、本明細書で同定及び記載される1つ以上のアミノ酸残基のいずれかでの、アミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukBバリアントは、配列番号39のバリアント、又は配列番号15、16、若しくは40~51のいずれか1つのバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukBバリアントは、配列番号15のバリアント(CC8)を含む。例示的なCC8 LukBバリアントには、配列番号17、19、及び21のLukBバリアントが含まれるが、これらに限定されない。任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukBバリアントは、配列番号16のバリアント(CC45)を含む。例示的なCC45 LukBバリアントには、配列番号18、20、及び21のLukBバリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0149】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるワクチン組成物は、LukAタンパク質とLukBタンパク質の両方を含む。したがって、任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB非バリアント配列、又は配列番号15に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するバリアント配列と組み合わせた配列番号1のCC8 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、CC8 LukB配列バリアント配列は、配列番号17、19及び21から選択されるアミノ酸配列を含む。例えば、任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukBに対して85%以上の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19及び21から選択されるCC8 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号3のCC8 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukB配列に対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19及び21から選択されるCC8 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号5のCC8 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19及び21から選択されるCC8 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号7のCC8 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19及び21から選択されるCC8 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号9のCC8 LukAバリアントを含む。
【0150】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCC8 LukAバリアント及び配列番号15のアミノ酸配列を有するCC8 LukBバリアントを含む。
【0151】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCC8 LukAバリアント及び配列番号17のアミノ酸配列を有するCC8 LukBバリアントを含む。
【0152】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するバリアント配列と組み合わせた配列番号1のCC8 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、CC45 LukBバリアント配列は、配列番号18、20、及び22から選択されるアミノ酸配列を含む。例えば、任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号3のCC8 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号5のCC8 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号7のCC8 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号9のCC8 LukAバリアントを含む。
【0153】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号5のアミノ酸配列を有するCC8 LukAバリアント及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCC45 LukBバリアントを含む。
【0154】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号5のアミノ酸配列を有するCC8 LukAバリアント及び配列番号22のアミノ酸配列を有するCC45 LukBバリアントを含む。
【0155】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号5のアミノ酸配列を有するCC8 LukAバリアント及び配列番号18のアミノ酸配列を有するCC45 LukBバリアントを含む。
【0156】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号5のアミノ酸配列を有するCC8 LukAバリアント及び配列番号20のアミノ酸配列を有するCC45 LukBバリアントを含む。
【0157】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、アミノ酸配列配列番号3を含むバリアントLukAタンパク質及び配列番号18のアミノ酸配列を含むLukBタンパク質を含む。
【0158】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するバリアント配列と組み合わせた、配列番号2のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、CC45 LukBバリアント配列は、配列番号18、20、及び22から選択されるアミノ酸配列を含む。例えば、任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号4のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント配列、と組み合わせた配列番号6のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント、と組み合わせた配列番号8のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント、と組み合わせた配列番号10のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント、と組み合わせた配列番号11のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のCC45 LukB配列、又は配列番号16のCC45 LukBに対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号18、20、及び22から選択されるCC45 LukBバリアント、と組み合わせた配列番号12のCC45 LukAバリアントを含む。
【0159】
一実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のアミノ酸配列を有するCC45 LukBと組み合わせて配列番号4のアミノ酸配列を有するCC45 LukAバリアントを含む。
【0160】
一実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のアミノ酸配列を有するCC45 LukBと組み合わせて配列番号11のアミノ酸配列を有するCC45 LukAバリアントを含む。
【0161】
一実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のアミノ酸配列を有するCC45 LukBと組み合わせて配列番号12のアミノ酸配列を有するCC45 LukAバリアントを含む。
【0162】
一実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号16のアミノ酸配列を有するCC45 LukBと組み合わせて配列番号8のアミノ酸配列を有するCC45 LukAバリアントを含む。
【0163】
一実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号18のアミノ酸配列を有するCC45 LukBバリアントと組み合わせて配列番号4のアミノ酸配列を有するCC45 LukAバリアントを含む。
【0164】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するバリアント配列と組み合わせた、配列番号2のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、CC8 LukBバリアント配列は、配列番号17、19及び21から選択されるアミノ酸配列を含む。例えば、任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukB配列に対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21から選択されるバリアント配列、と組み合わせた配列番号4のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukB配列に対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21から選択されるバリアント配列、と組み合わせた配列番号6のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukB配列に対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21から選択されるバリアント配列、と組み合わせた配列番号8のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukB配列に対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21から選択されるバリアント配列、と組み合わせた配列番号9のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukB配列に対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21から選択されるバリアント配列、と組み合わせた配列番号10のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukB配列に対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21から選択されるバリアント配列、と組み合わせた配列番号11のCC45 LukAバリアントを含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号15のCC8 LukB配列、又は配列番号15のCC8 LukB配列に対して>85%の配列同一性を有するそのバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21から選択されるバリアント配列、と組み合わせた配列番号12のCC45 LukAバリアントを含む。
【0165】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるバリアントLukBバリアントポリペプチドのいずれか、又はLukBバリアントをコードする核酸分子を含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物を対象とする。特に、ワクチン組成物のLukBバリアントポリペプチドは、本明細書に記載される1つ以上のアミノ酸残基の挿入、置換、及び/又は欠失を含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukBバリアントは、配列番号15のバリアント(CC8)を含む。例示的なCC8 LukBバリアントには、配列番号17、19、及び21のLukBバリアントが含まれるが、これらに限定されない。任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukBバリアントは、配列番号16のバリアント(CC45)を含む。例示的なCC45 LukBバリアントには、配列番号18、20、及び22のLukBバリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるワクチン組成物は、LukAタンパク質又はポリペプチドとともに、本明細書に記載されるLukBバリアントポリペプチドを含む。したがって、任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号1のCC8 LukA配列、又は配列番号1に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するバリアント配列と組み合わせた、配列番号15のCC8 LukBバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21のバリアント、を含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号2のCC45 LukA配列、又は配列番号2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するバリアント配列と組み合わせた、配列番号15のCC8 LukBバリアント、例えば、配列番号17、19、及び21のバリアント、を含む。
【0167】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号1のCC8 LukA配列、又は配列番号1に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するバリアント配列と組み合わせた、配列番号16のCC45 LukBバリアント、例えば、配列番号18、20、又は22のバリアント含む。任意の実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号2のCC45 LukA配列、又は配列番号2に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するバリアント配列と組み合わせた、配列番号16のCC45 LukBバリアント、例えば、配列番号18、20、又は22のバリアントを含む。
【0168】
本開示のワクチン組成物は、本明細書に記載されるLukAポリペプチド及び/又はLukBポリペプチドを、薬学的に許容可能な担体及び任意選択的に薬学的に許容可能な賦形剤とともに製剤化することによって調製される。薬学的に許容可能な担体を含む薬学的に活性な成分の製剤化は、当該技術分野で既知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば、21st edition(2005)、及びそれ以降の版)。追加の原料の非限定的な例としては、緩衝剤、希釈剤、溶媒、等張化調節剤(tonicity regulating agent)、防腐剤、安定剤、及びキレート剤が挙げられる。本発明の医薬組成物を製剤化する際に、1つ以上の薬学的に許容可能な担体を使用することができる。
【0169】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な賦形剤」(例えば、希釈剤、免疫刺激剤、アジュバント、抗酸化剤、保存剤、及び可溶化剤などの添加剤)は、使用される投与量及び濃度で組成物を投与された対象に対して非毒性である。薬学的に許容可能な担体の例としては、水、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び別の有機酸で緩衝された水が含まれる。本開示で有用であり得る薬学的に許容可能な賦形剤の代表例には、アスコルビン酸などの抗酸化物質;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭化水素;EDTAなどのキレート剤;マンニトール若しくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/又は非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0170】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるワクチン組成物は、液体製剤である。液体製剤の好ましい例は、水性製剤、すなわち、水を含む製剤である。液体製剤は、溶液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ゲルなどを含み得る。水性製剤は、典型的には、少なくとも50%w/wの水、又は少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は少なくとも95%w/wの水を含む。
【0171】
ワクチン組成物は、1つ以上のアジュバントを更に含み得る。本明細書で使用される場合、用語「アジュバント」は、本明細書に記載されるLukAポリペプチド及び/又はLukBポリペプチドと併せて投与された場合に、ポリペプチドに対する免疫応答を増強、強化、及び/又はブーストする化合物を指す。しかしながら、アジュバント化合物が単独で投与される場合、アジュバント化合物は、それをコードする前述のポリペプチド又はポリヌクレオチドに対する免疫応答を生じさせない。アジュバントは、例えば、リンパ球のリクルート、B細胞及び/又はT細胞の刺激、並びに抗原提示細胞の刺激を含む、いくつかの機構によって免疫応答を増強することができる。
【0172】
LukA及び/又はLukBポリペプチド及び/又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む本明細書に記載されるワクチン組成物は、アジュバントを含むか、又はアジュバントと組み合わせて投与される。本明細書に記載されるワクチン組成物と組み合わせた投与のためのアジュバントは、ワクチン組成物の投与の前に、併用して、又は後に投与することができる。
【0173】
好適なアジュバントは当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、フラジェリン、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウム、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、ジニトロフェノール、iscomatrix、及びリポソームポリカチオンDNA粒子が含まれる。アジュバントの追加的な例としては、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,355,625号に記載されるようなβ-グルカン、又は顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)が挙げられる。
【0174】
追加的な例示的なアジュバントには、アルミニウム塩(ミョウバン)(ミョウバン又はナノミョウバン製剤(nanoalum formulation)を含むナノ粒子を含む、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び酸化アルミニウムなど)、リン酸カルシウム(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMasson JD et al,Expert Rev Vaccines 16:289-299(2017))、モノホスホリルリピドA(MPL)又は3-de-O-アシル化モノホスホリル リピドA(3D-MPL)(例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれる英国特許第GB2220211号、EP0971739、EP1194166、US6491919を参照されたい)、AS01、AS02、AS03及びAS04(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるEP1126876、AS04に関してUS7357936 EP0671948、EP0761231、AS02に関してUS5750110を参照されたい)、イミダゾピリジン化合物(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2007/109812を参照されたい)、イミダゾキノキサリン化合物(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2007/109813を参照されたい)、デルタ-イヌリン(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPetrovsky N and PD Cooper,Vaccine 33:5920-5926(2015))、STING-活性化合成環状ジヌクレオチド(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS2015/0056224)、レシチンとカルボマーホモポリマーの組み合わせ(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS6,676,958)、サポニン、例えばQuil A及びQS21(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるZhu D and W Tuo,2016,Nat Prod Chem Res 3:e113(doi:10.4172/2329-6836.1000e113))、任意選択的にQS7との組み合わせ(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるKensil et al.,in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(eds.Powell&Newman,Plenum Press,NY,1995)、US 5,057,540を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。任意の実施形態では、アジュバントは、フロイントアジュバント(完全又は不完全)である。任意の実施形態では、アジュバントは、例えば、Brenntag(現Croda)又はInvivogenから商業的に入手可能な、Quil-Aを含む。QuilAは、Quillaja saponaria Molina tree由来のサポニンの水抽出可能な画分を含有する。これらのサポニンは、共通のトリテルペノイド骨格構造を有するトリテルペノイドサポニンのグループに属する。サポニンは、T依存性抗原及びT非依存性抗原に対する強力なアジュバント応答、並びに強力な細胞傷害性CD8+リンパ球応答を誘導し、粘膜抗原に対する応答を増強することが知られている。したがって、任意の実施形態では、アジュバントはサポニンを含む。任意の実施形態では、アジュバントは、QS-21を含む。
【0175】
任意の実施形態では、サポニンは、コレステロール及びリン脂質と組み合わされて、異なる起源の幅広い抗原に対する抗体介在性及び細胞介在性の免疫応答の両方を活性化することができる免疫刺激複合体(ISCOM)を形成する。特定の実施形態では、アジュバントはAS01、例えばAS01Bである。AS01は、MPL(3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドA)、QS21(Quillaja saponaria Molina、画分21)、及びリポソームを含有するアジュバント系である。特定の実施形態において、AS01は、市販されているか、又はWO96/33739に記載されるように作製することができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特定のアジュバントは、エマルジョンを含み、これは、例えば、油及び水などの2つの不混和流体の混合物であり、そのうちの一方は、他方の内部に小液滴として懸濁され、それらは表面活性剤によって安定化される。水中油型エマルジョンは、油の小さな液滴を囲む連続相を形成する水を有し、油中水型エマルジョンは、連続相を形成する油を有する。特定の水中油型エマルジョンは、スクアレン(代謝可能な油)を含む。特定のアジュバントは、ブロック共重合体を含み、これは、2つの単量体が一緒にクラスターを形成して、反復単位のブロックを形成するときに形成される共重合体である。ブロック共重合体、スクアレン、及び微粒子安定剤を含む油中水型エマルジョンの例は、Sigma-Aldrichから商業的に取得できるTiterMax(登録商標)である。
【0176】
任意選択的に、エマルジョンは、TLR4アゴニストなどの更なる免疫刺激成分と組み合わされ得るか、又はこれを含み得る。本明細書に開示される組成物で使用するためのアジュバントの組み合わせの好適であるが非限定的な例としては、水中油型エマルジョン(スクアレン又はピーナッツオイルなど)、MF59(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるEP0399843、US6299884、US6451325を参照されたい)、及び任意選択的にモノホスホリルリピドAなどの免疫刺激剤及び/又はAS02などのQS21と組み合わされた、AS03(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるStoute et al.,N.Engl.J.Med.336:86-91(1997)を参照されたい)が含まれる。アジュバントの更なる例は、AS01E及びAS01Bなどの、MPL及びQS21などの免疫刺激剤を含有するリポソームである(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS2011/0206758を参照されたい)。アジュバントの他の例は、CpG及びイミダゾキノリン(イミキモド及びR848など)である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるReed G.et al.,Nature Med,19:1597-1608(2013)を参照されたい)。本発明による任意の実施形態では、アジュバントは、Th1アジュバントである。
【0177】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるワクチン組成物のアジュバントは、トール様受容体4(TLR4)アゴニスト単独又は別のアジュバントとの組み合わせを含有する。TLR4アゴニストは当技術分野で周知であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるIreton GC及びSG Reed,Expert Rev Vaccines 12:793-807(2013)を参照されたい。任意の実施形態では、アジュバントは、リピドA、又はその類似体若しくは誘導体を含むTLR4アゴニストである。
【0178】
任意の実施形態では、ワクチン組成物のアジュバントは、リピドA又はリピドA類似体又は誘導体を含有する。本明細書で使用される場合、用語「リピドA」は、グルコサミンを含み、グラム陰性細菌の外膜の外葉にLPS分子を固定するケトシド結合を介してLPS分子の内核においてケト-デオキシオクツロソネートに連結されるLPS分子の疎水性脂質部分を指す。本明細書で使用される場合、リピドAには、天然に存在するリピドA、その混合物、類似体、誘導体、及び前駆体が含まれる。用語は、単糖類、例えば、リピドXと称されるリピドAの前駆体、二糖リピドA、ヘプタアシルリピドA、ヘキサアシルリピドA、ペンタアシルリピドA、テトラアシルリピドA、例えば、リピドIVAと称されるリピドAのテトラアシル前駆体、脱リン酸化リピドA、モノホスホリルリピドA、ジホスホリルリピドA、例えばEscherichia coli及びRhodobacter sphaeroides由来のリピドAなどを含む。いくつかの免疫活性化リピドA構造には、6つのアシル鎖が含有されている。グルコサミン糖に直接結合している4つの一次アシル鎖は、通常10~16炭素の長さの3-ヒドロキシアシル鎖である。2つの追加のアシル鎖は、多くの場合、一次アシル鎖の3-ヒドロキシ基に結合される。E.coliリピドAは、一例として、典型的には、糖に結合した4つのC14の3-ヒドロキシアシル鎖と、それぞれ2’位及び3’位で一次アシル鎖の3-ヒドロキシ基に結合した1つのC12及び1つのC14とを有する。
【0179】
本明細書で使用される場合、用語「リピドA類似体又は誘導体」は、リピドAの構造及び免疫活性に類似するが、自然界では必ずしも自然に存在しない分子を指す。リピドA類似体又は誘導体は、短縮又は縮合されるように、及び/又はそれらのグルコサミン残基を別のアミン糖残基、例えばガラクトサミン残基で置換するように、還元末端のグルコサミン-1-リン酸の代わりに2-デオキシ-2-アミノグルコン酸を含有するように、4’位のリン酸の代わりにガラクツロン酸部分を有するように、改変され得る。リピドA類似体又は誘導体は、細菌から単離されたリピドAから、例えば、化学的誘導によって、又は化学合成されることによって、例えば、好ましいリピドAの構造を最初に決定し、その類似体又はその誘導体を合成することによって調製されてもよい。リピドA類似体又は誘導体は、TLR4アゴニストアジュバントとしても有用である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるGregg KA et al,MBio 8,eDD492-17,doi:10.1128/mBio.00492-17(2017)を参照されたい)。
【0180】
MPL及び3D-MPLは、リピドA毒性を弱毒化するように改変されたリピドA類似体又は誘導体である。リピドA、MPL、及び3D-MPLは、長い脂肪酸鎖が付着した糖骨格を有し、骨格は、グリコシド結合内に2つの6-炭素糖、及び4位にホスホリル部分を含有する。典型的には、5~8個の長鎖脂肪酸(通常12~14個の炭素原子)が糖骨格に付着される。天然源由来のため、MPL又は3D-MPLは、例えばヘプタアシル、ヘキサアシル、ペンタアシルなどの、様々な脂肪酸の長さを有する多くの脂肪酸置換パターンの複合又は混合物として存在し得る。これは、本明細書に記載される他のリピドA類似体又は誘導体のいくつかにも当てはまるが、合成リピドAバリアントも定義され、均質であり得る。MPL及びその製造は、US4,436,727に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。3D-MPLは、US4,912,094B1(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、3位で還元末端グルコサミンと結合したエステルである3-ヒドロキシミリスチン酸アシル残基の選択的な除去によってMPLとは異なる。本明細書に記載されるワクチン組成物への含有に好適なリピドA(類似体、誘導体)の例には、MPL、3D-MPL、RC529(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるEP1385541を参照されたい)、PET-リピドA、GLA(グリコピーラノシル脂質アジュバント、合成二糖糖脂質(disaccharide glycolipid)、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US2010/0310602及びUS8722064を参照されたい)、SLA(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、ヒトワクチン用にTLR4リガンドを最適化するための構造-機能アプローチが記載される、Carter D et al,Clin.Transl.Immunology 5:e108(doi:10.1038/cti.2016.63)(2016))、PHAD(リン酸化ヘキサアシル二糖、その構造はGLAの構造と同じである)、3D-PHAD、3D-(6-アシル)-PHAD(3D(6A)-PHAD)、E6020(CAS番号287180-63-6)、ONO4007、OM-174などが挙げられる。任意の実施形態では、ワクチン組成物のアジュバントは、3D-MPL、GLA、又はSLAから選択されるリピドA類似体又は誘導体を含むTLR4アゴニストアジュバントである。特定の実施形態では、リピドA類似体又は誘導体は、リポソームで製剤化される。
【0181】
好ましくは、TLR4アゴニストを含むアジュバントは、アジュバント中の免疫調節分子及び/又は免疫原のための様々な送達系となる、様々な手法で、例えば、エマルジョンで、例えば、油中水型(w/o)エマルジョン又は水中油型(o/w)エマルジョン(例は、MF59、AS03である)、安定(ナノ-)エマルジョン(SE)、脂質懸濁液、リポソーム、(高分子)ナノ粒子、ビロソーム、吸着ミョウバン(alum adsorbed)、水性製剤(AF)などで、製剤化され得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Reed et al,Nature Med,19:1597-1608(2013)及びAlving CR et al,Curr Opin Immunol 24:310-315(2012)を参照されたい)。
【0182】
任意の実施形態では、免疫刺激性TLR4アゴニストは、任意選択的に、他の免疫調節成分、例えば、スクアレン水中油型エマルジョン(SE)(例えば、MF59、AS03)、サポニン(例えば、QuilA、QS7、QS21、Matrix M、Iscom、Iscomatrixなど)、アルミニウム塩、他のTLRのための活性化因子(例えば、イミダゾキノリン、フラゲリン、dsRNA類似体、TLR9アゴニスト、例えばCpG、など)などと組み合わせることができる(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Reed G.et al.,Nature Med,19:1597-1608(2013)を参照されたい)。
【0183】
任意の実施形態では、本明細書に開示されるワクチン組成物のアジュバントは、TLR4アゴニストの組み合わせ、例えば、SEと組み合わせたGLA(すなわち、GLA-SE)である。任意の実施形態では、TLR4アゴニストとの組み合わせにおける、例えば、サポニンの組み合わせでのGLA(例えば、GLS-QS21)、本明細書に開示されるワクチン組成物のアジュバント。任意の実施形態では、前述のアジュバントはリポソームとして製剤化され得る。したがって、例示的なアジュバントは、合成TLR4アゴニスト(例えば、MPL[GLA])及びサポニン(例えば、QS21)を含み、リポソームとして製剤化されたGLA-LSQも含む。
【0184】
本明細書に記載されるワクチン組成物で使用するための追加の例示的なアジュバントは、リピドA類似体又は誘導体を含み、並びに例えばSLA-SE(合成MPL[SLA]、スクアレンオイル/水エマルジョン)、SLA-Nanoalum(合成MPL[SLA]、アルミニウム塩)、GLA-Nanoalum(合成MPL[GLA]、アルミニウム塩)、SLA-AF(合成MPL[SLA]、水性懸濁液)、GLA-AF(合成MPL[GLA]、水性懸濁液)、SLA-alum(合成MPL[SLA]、アルミニウム塩)、GLA-alum(合成MPL[GLA]、アルミニウム塩)、AS01(MPL、QS21、リポソーム)、AS02(MPL、QS21、油/水エマルジョン)、AS25(MPL、油/水エマルジョン)、AS04(MPL、アルミニウム塩)、及びAS15(MPL、QS21、CpG、リポソーム)が挙げられる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2008/153541、WO2010/141861、WO2013/119856、WO2019/051149、WO2013/119856、WO2006/116423、米国特許第4,987,237号、米国特許第4,436,727号、米国特許第4,877,611号、米国特許第4,866,034号、米国特許第4,912,094号、米国特許第4,987,237号、米国特許第5,191,072号、米国特許第5,593,969号、米国特許第6,759,241号、米国特許第9,017,698号、米国特許第9,149,521号、米国特許第9,149,522号、米国特許第9,415,097号、米国特許第9,415,101号、米国特許第9,504,743号、Reed G.et al.,Nature Med,19:1597-1608(2013)、Johnson et al.,J Med Chem,42:4640-4649(1999)、及びUlrich and Myers,1995,Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach;Powell and Newman,Eds.;Plenum:New York,495-524を参照されたい。
【0185】
任意の実施形態では、ワクチン組成物のLukA及び/又はLukBタンパク質又はそのポリペプチドは、免疫原性担体分子にコンジュゲートされてもよい。好適な免疫原性担体分子としては、限定されるものではないが、ウシ血清アルブミン、鶏卵オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、サイログロブリン、肺炎球菌莢膜多糖、CRM197、及び髄膜炎菌外膜タンパク質が挙げられる。
【0186】
ワクチン組成物は、血清型336多糖抗原、クランピング因子A、クランピング因子B、フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、エラスチン結合タンパク質と、MHC類似タンパク質、多糖類細胞内接着性(polysaccharide intracellular adhesion)、ベータ溶血素、デルタ溶血素、パントン-バレンタインロイコシジン、ロイコシジンM、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱性毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸リアーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、エンテロトキシン、エンテロトキシンスーパー抗原SEA、エンテロトキシンスーパー抗原SAB、毒素性ショック症候群毒素-1、ポリ-N-スクシニルベータ-1→6グルコサミン、カタラーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク質、走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、Sbi、タイプ5抗原、タイプ8抗原、及びリポテイコ酸からなる群から選択される追加の1つ以上のS.aureus抗原を更に含む。本明細書に記載されるワクチン組成物への含有に適した他のS.aureus抗原としては、限定されるものではないが、CP5、CP8、Eap、Ebh、Emp、EsaB、EsaC、EsxA、EsxB、EsxAB(融合)、IsdA、IsdB、IsdC、MntC、rTSST-1、rTSST-1v、TSST-1、SasF、vWbp、vWhビトロネクチン結合タンパク質、Aaa、Aap、Ant、オートリシングルコサミニダーゼ、オートリシンアミダーゼ、Can、コラーゲン結合タンパク質、Csa1A、EFB、エラスチン結合タンパク質、EPB、FbpA、フィブリノゲン結合タンパク質、フィブロネクチン結合タンパク質、FhuD、FhuD2、FnbA、FnbB、GehD、HarA、HBP、免疫優性ABCトランスポーター、IsaA/PisA、ラミニン受容体、リパーゼGehD、MAP、Mg2+トランスポーター、MHC II類似体、MRPII、NPase、RNA III活性化タンパク質(RAP)、SasA、SasB、SasC、SasD、SasK、SBI、SEAエキソトキシン、SEBエキソトキシン、mSEB、SitC、Ni ABCトランスポーター、SitC/MntC/唾液結合タンパク質、SsaA、SSP-1、SSP-2、Sta006、及びSta011が挙げられる。
【0187】
任意の実施形態では、ワクチン組成物は、例えば、注射装置(例えば、シリンジ又は注入ポンプ)を介して注射され得る注射剤として製剤化される。注射は、例えば、筋肉内、腹腔内、硝子体内、又は静脈内に送達され得る。
【0188】
本開示のワクチン組成物は、非経口投与のために製剤化されてもよい。組成物の溶液、懸濁液、又はエマルジョンは、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及び油中のそれらの混合物中で調製されてもよい。例示的な油は、石油、動物、植物、又は合成起源のものであり、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、又は鉱油である。一般的に、水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連する糖溶液、並びにプロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射可能な溶液に好ましい液体担体である。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有する。
【0189】
注射可能な使用に適した医薬ワクチン組成物は、滅菌水溶液又は分散液、並びに滅菌注射可能な溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。全ての場合において、形態は、滅菌されなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度に流動性でなければならない。製造及び保管の条件下で安定しなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、これらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0190】
任意の実施形態では、本明細書に記載されるワクチン組成物は、固体製剤、例えば、そのまま使用できる、又は医師若しくは患者が使用する前に溶媒及び/又は希釈剤を添加する、凍結乾燥又は噴霧乾燥組成物である。固体剤形は、錠剤、例えば、圧縮錠剤、及び/又はコーティング錠、並びにカプセル(例えば、硬又は軟ゼラチンカプセル)を含み得る。ワクチン組成物はまた、例えば、サシェ、糖剤、粉末、顆粒、トローチ、又は再構成のための粉末の形態であってもよい。
【0191】
ワクチン組成物の剤形は、水溶性又は分散性の担体を含み得る場合、即時放出であってもよく、又は消化管内又は皮膚下での剤形の溶解速度を調節する水不溶性ポリマーを含み得る場合、遅延放出、徐放、又は調節放出であってもよい。
【0192】
他の実施形態では、ワクチン組成物は、鼻腔内、頬側内、又は舌下に送達され得る。
【0193】
ワクチン組成物の水性製剤中のpHは、pH3~pH10との間とすることができる。一実施形態では、ワクチン組成物のpHは、約7.0~約9.5である。別の実施形態では、ワクチン組成物のpHは約3.0~約7.0である。
【0194】
S.aureusワクチン組成物の使用
本開示の別の態様は、対象におけるS.aureus感染症の発症を防止又は阻害するための、本明細書に記載されるワクチン組成物の使用に関する。一実施形態では、本開示は、対象においてS.aureusに対する免疫応答を生成する方法であって、当該対象においてS.aureusに対する当該免疫応答を生成するのに有効な条件下で、本明細書に記載されるワクチン組成物を対象に投与することを含む、方法を対象とする。別の実施形態は、S.aureus感染を治療又は予防を必要とする対象において、それを治療又は予防する方法であって、本明細書に開示されるような有効量のワクチン組成物を投与することを伴う方法を対象とする。別の実施形態は、本明細書に開示されるような有効量のワクチン組成物を投与することを含む、S.aureusの除菌又はコロニー形成若しくは再コロニー形成の防止を必要とする対象における、それを防止する方法を対象とする。この態様によれば、本明細書に記載される方法は、S.aureusの短期的かつ持続的なコロニー形成又は再コロニー形成の防止を必要とする対象においてそれを防止するのに好適である。
【0195】
これらの方法は、本明細書に記載されるワクチン組成物のいずれか1つを、それを必要とする対象、例えば、S.aureusの曝露又は感染のリスクがある対象に投与することを含む。一実施形態では、ワクチン組成物は、上記のLukAバリアントポリペプチド(すなわち、配列番号1又は2のバリアント)、及び野生型LukBタンパク質又はポリペプチドを含む。別の実施形態では、ワクチン組成物は、上記の野生型LukAタンパク質又はポリペプチド、及びLukBバリアントポリペプチド(すなわち、配列番号15又は16のバリアント)を含む。別の実施形態では、ワクチン組成物は、上記のLukAバリアントポリペプチド及びLukBバリアントポリペプチドを含む。本開示のこの態様による治療に適した対象は、S.aureus感染症を発症するリスクがある対象である。
【0196】
本開示のこの態様によれば、予防有効量のワクチン組成物は、S.aureus感染に対する免疫応答を生成させるために対象に投与される。予防的有効量は、液性(すなわち、抗体媒介性)及び細胞性(T細胞)の免疫応答を生成又は誘発するために必要な量である。誘発された体液性応答は、そのような応答の非存在下でそうでなければ発症するであろうS.aureus感染症を予防するか又はその程度を少なくとも低減するのに十分である。好ましくは、本明細書に記載されるワクチン組成物の予防有効量の投与は、対象においてS.aureusに対する中和免疫応答を誘導する。対象において効果的な免疫応答を果たすために、組成物は、上記に記載される1つ以上の追加のS.aureus抗原又はアジュバントを更に含有してもよい。代替的な実施形態では、アジュバントは、本開示の組成物の投与前、投与後、又は投与と同時のいずれかで、組成物とは別に対象に投与される。
【0197】
本開示のこの態様の目的のために、標的の「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを包含する。対象におけるS.aureus感染及びS.aureusコロニー形成を予防、阻害、又は重症度を低減する目的でワクチン組成物を投与することに関連して、標的対象は、S.aureusに感染されるリスクがある任意の対象を包含する。特に感受性の高い対象には、免疫不全の幼児、若年者、成人、及び高齢者が含まれる。しかしながら、S.aureus感染のリスクがある任意の幼児、若年者、成人、又は高齢者は、本明細書に記載される方法及びワクチン組成物に従って治療することができる。特に適切な対象には、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)又はメチシリン感受性S.aureus(MSSA)による感染のリスクがある対象が含まれる。他の適切な対象としては、S.aureus感染に起因する状態、すなわちS.aureus関連状態、例えば、皮膚創傷及び感染症、組織膿瘍、毛包炎、骨髄炎、肺炎、熱傷様皮膚症候群、敗血症、敗血症、敗血症性関節炎、心筋炎、心内膜炎、及び毒素性ショック症候群など、を有し得るか、又は発症するリスクを有し得る対象が挙げられる。
【0198】
任意の実施形態では、対象は、少なくとも、又は最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、85、又は90歳(又はそこから導き出せる任意の範囲)である。特定の実施形態では、ヒト対象などの本明細書に記述される対象又は患者は、小児対象である。小児対象は、18歳未満と定義される対象である。任意の実施形態では、小児対象tは、2歳以下である。任意の実施形態では、小児対象は、1歳未満である。任意の実施形態では、小児対象は、6ヵ月未満である。任意の実施形態では、小児対象は、2ヵ月以下である。任意の実施形態では、ヒト患者は、65歳以上である。任意の実施形態では、ヒト患者は、医療従事者である。任意の実施形態では、患者は、外科的処置を受ける患者である。
【0199】
ワクチン組成物を、堅牢な免疫応答を誘導するのに有効な条件下で投与する場合、多数の他の因子も考慮され得る。これらの因子には、例えば、限定されないが、組成物中の活性薬剤の濃度、投与の様式及び投与頻度、並びに年齢、体重、並びに全体的な健康及び免疫状態などの対象の詳細が含まれる。一般的なガイダンスは、例えば、医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization)の刊行物及びREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Publishing Company 1990)に見出すことができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。臨床医は、所望の又は必要な予防効果、例えば、所望の抗体力価を提供する投与量に達するまで、本明細書に記載されるワクチン組成物を投与することができる。予防的応答の進行は、従来のアッセイによって容易にモニターすることができる。
【0200】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載されるワクチン組成物は、S.aureusに感染するリスクがある、又は関連する状態を発症するリスクがある対象において、S.aureus感染症の発生を予防、遅延、又は阻害するために予防的に投与される。本開示の任意の実施形態では、ワクチン組成物の予防的投与は、個体におけるS.aureus感染を完全に予防するのに有効である。他の実施形態では、予防的投与は、このような投与がなければ発症するであろう感染の全範囲を予防し、すなわち、個体におけるS.aureus感染症を実質的に予防又は阻害するのに有効である。
【0201】
S.aureus感染を防止するための予防的組成物の使用の状況において、組成物の投与量は、S.aureusLukAB媒介性細胞傷害を中和することができる抗体力価を生成するのに十分であり、多くの症状の低減、少なくとも1つの症状の重症度の減少、又は少なくとも1つの症状の更なる進行の遅延、又は感染の完全な緩和さえ達成することができるものである。
【0202】
本明細書に記載されるワクチン組成物の予防有効量は、アジュバントが共投与されるかどうかに依存し、アジュバントの非存在下では高い投与量が必要となる。投与のためのバリアントLukA及び/又はLukBの量は、患者当たり1μg~500μgから変化し得る。任意の実施形態では、5、10、20、25、50、又は100μgが、各ヒト注射に使用される。場合によっては、1回の注射当たり1~50mgの高用量が使用される。典型的には、各ヒト注射に約10、20、30、40、又は50mgが使用される。注射のタイミングは、年に1回から10年に1回まで大きく変動し得る。一般に、有効投与量は、対象から体液試料、一般には血清試料を得て、当技術分野で周知であり、測定される特定の抗原に容易に適合できる方法を使用して、LukA、LukB、又はLukABに対して開発された抗体の力価を決定することによってモニターすることができる。理想的には、最初の投与前に試料を採取し、各免疫化後にその後の試料を採取して力価を決定する。一般に、1:100の血清希釈で、対照又は「バックグラウンド」レベルよりも少なくとも4倍高い検出可能な力価を提供する用量又は投与スケジュールが望ましいが、ここで、バックグラウンドは、対照血清に対して又はELISAアッセイのプレートバックグラウンドに対して定義される。
【0203】
本開示のワクチン組成物は、予防的治療のための非経口、局所的、静脈内、経口、腹腔内、鼻腔内、又は筋肉内手段によって投与することができる。
【0204】
本開示のワクチン組成物は、非経口投与のために製剤化されてもよい。組成物の溶液、懸濁液、又はエマルジョンは、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及び油中のそれらの混合物中で調製されてもよい。例示的な油は、石油、動物、植物、又は合成起源のものであり、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、又は鉱油である。一般的に、水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連する糖溶液、並びにプロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射可能な溶液に好ましい液体担体である。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有する。
【0205】
注射可能な使用に適した医薬ワクチン製剤は、滅菌水溶液又は分散液、並びに滅菌注射可能な溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。全ての場合において、形態は、滅菌されなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度に流動性でなければならない。製造及び保管の条件下で安定しなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、これらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0206】
実施形態
本開示は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0207】
実施形態1は、配列番号25のバリアントStaphylococcus aureusロイコシジンA(LukA)ポリペプチドであり、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号25のアミノ酸残基Lys83、Ser141、Val113、及びVal193に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。
【0208】
実施形態2は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号25のGlu323に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を更に含む、実施形態1に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0209】
実施形態3は、Glu323に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、グルタミン酸からアラニンへの(Glu323Ala)置換を含む、実施形態2に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0210】
実施形態4は、Lys83に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、リジンからメチオニンへの(Lys83Met)置換を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0211】
実施形態5は、Ser141に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、セリンからアラニンへの(Ser141Ala)置換を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0212】
実施形態6は、Val113に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、バリンからイソロイシンへの(Val113Ile)置換を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0213】
実施形態7は、Val193に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、バリンからイソロイシンへの(Val193Ile)置換を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0214】
実施形態8は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号25のアミノ酸残基Lys83、Ser141、Val113、Val193及びGlu323に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、実施形態2~7のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0215】
実施形態9は、アミノ酸置換が、Lys83Met、Ser141Ala、Val113Ile、Val193Ile及びGlu323Alaを含む、実施形態8に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0216】
実施形態10は、当該バリアントが、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile及びGlu320Alaに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号1のCC8 LukAバリアントである、実施形態1に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0217】
実施形態11は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含む、実施形態10に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0218】
実施形態12は、当該バリアントが、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala、Val111Ile、Val191Ile及びGlu321Alaに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号2のCC45 LukAバリアントである、実施形態1に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0219】
実施形態13は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、実施形態12に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0220】
実施形態14は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149及びGly156に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を更に含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0221】
実施形態15は、Tyr74に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、チロシンからシステインへの(Tyr74Cys)置換を含む、実施形態14に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0222】
実施形態16は、Asp140に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、アスパラギンからシステインへの(Asp140Cys)置換を含む、実施形態14又は実施形態15に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0223】
実施形態17は、Gly149に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、グリシンからシステインへの(Gly149Cys)置換を含む、実施形態14~16のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0224】
実施形態18は、Gly156に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、グリシンからシステインへの(Gly156Cys)置換を含む、実施形態14~17のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0225】
実施形態19は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号25のアミノ酸残基Tyr74、Asp140、Gly149及びGly156に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、実施形態14~18のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである
【0226】
実施形態20は、当該バリアントが、配列番号1のLys80Met、Ser138Ala、Val110Ile、Val190Ile、Glu320Ala、Tyr71Cys、Asp137Cys、Gly146Cys、及びGly153Cysに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号1のCC8 LukAバリアントである、実施形態14に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0227】
実施形態21は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸配列を含む、実施形態20に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0228】
実施形態22は、当該バリアントが、配列番号2のLys81Met、Ser139Ala,Val111Ile、Val191Ile、Glu321Ala、Tyr72Cys、Asp138Cys、Gly147Cys、及びGly154Cysに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号2のCC45 LukAバリアントである、実施形態14に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0229】
実施形態23は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態22に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0230】
実施形態24は、当該LukAバリアントポリペプチドが、配列番号25のアミノ酸残基Thr249に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を更に含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0231】
実施形態25は、Thr249に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、トレオニンからバリンへの(Thr249Val)置換を含む、実施形態24に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0232】
実施形態26は、当該バリアントLukAタンパク質が、配列番号7又は配列番号8のアミノ酸配列を含む、実施形態25に記載のLukAバリアントポリペプチドである
【0233】
実施形態27は、アミノ末端シグナル配列を更に含む、実施形態1~26のいずれか1つのLukAバリアントポリペプチドである。
【0234】
実施形態28は、アミノ末端シグナル配列が、配列番号23のアミノ酸配列を含む、実施形態27に記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0235】
実施形態29は、アミノ末端精製配列を更に含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドである。
【0236】
実施形態30は、実施形態1~29のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチドをコードする核酸分子である。
【0237】
実施形態31は、実施形態30に記載の核酸分子を含む発現ベクターである。
【0238】
実施形態32は、実施形態31に記載の発現ベクターを含む宿主細胞である。
【0239】
実施形態33は、配列番号39のバリアントStaphylococcus aureusロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであり、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号39のアミノ酸残基Val53に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。
【0240】
実施形態34は、Val53に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、バリンからロイシンへの(Val53Leu)置換を含む、実施形態33に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0241】
実施形態35は、当該バリアントが、配列番号15のVal53Leuに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号15のCC8 LukBバリアントである、実施形態33に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0242】
実施形態36は、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号17のアミノ酸配列を含む、実施形態35に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0243】
実施形態37は、当該バリアントが、配列番号16のVal53Leuに対応するアミノ酸置換を含む、配列番号16のCC45 LukBバリアントである、実施形態33に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0244】
実施形態38は、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、実施形態37に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0245】
実施形態39は、当該バリアントが、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を更に含む、実施形態33又は実施形態34に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0246】
実施形態40は、Glu45に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、グルタミン酸からシステインへの(Glu45Cys)置換を含む、実施形態39に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0247】
実施形態41は、Glu109に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、グルタミン酸からシステインへの(Glu109Cys)置換を含む、実施形態39又は実施形態40に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0248】
実施形態42は、Thr121に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、トレオニンからシステインへの(Thr121Cys)置換を含む、実施形態39~41のいずれか1つに記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0249】
実施形態43は、Arg154に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、アルギニンからシステインへの(Arg154Cys)置換を含む、実施形態39~42のいずれか1つに記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0250】
実施形態44は、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、実施形態39~43のいずれか1つに記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0251】
実施形態45は、当該バリアントが、配列番号15のVal53Leu、Glu45Cys、Glu109Cys、Thr121Cys及びArg154Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号15のCC8 LukBバリアントである、実施形態39に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0252】
実施形態46は、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号19のアミノ酸配列を含む、実施形態45に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0253】
実施形態47は、当該バリアントが、配列番号16のVal53Leu、Glu45Cys、Glu110Cys、Thr123Cys、及びArg155Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号16のCC45 LukBバリアントである、実施形態39に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0254】
実施形態48は、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号20のアミノ酸配列を含む、実施形態47に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0255】
実施形態49は、配列番号39のバリアントStaphylococcus aureusロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであり、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号39のアミノ酸残基Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。
【0256】
実施形態50は、Glu45に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、グルタミン酸からシステインへの(Glu45Cys)置換を含み、Thr121に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、トレオニンからシステインへの(Thr121Cys)置換を含む、実施形態49に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0257】
実施形態51は、Glu109に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、グルタミン酸からシステインへの(Glu109Cys)置換を含み、Arg154に対応するアミノ酸残基でのアミノ酸置換が、アルギニンからシステインへの(Arg154Cys)置換を含む、実施形態49又は実施形態50に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0258】
実施形態52は、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号39のアミノ酸Glu45、Glu109、Thr121、及びArg154に対応する各アミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、実施形態49~51のいずれか1つに記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0259】
実施形態53は、当該バリアントが、配列番号15のGlu45Cys、Glu109Cys、Thr121Cys、及びArg154Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号15のCC8 LukBバリアントである、実施形態52に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0260】
実施形態54は、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列を含む、実施形態53に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0261】
実施形態55は、当該バリアントが、配列番号16のGlu45Cys、Glu110Cys、Thr123Cys、及びArg155Cysに対応するアミノ酸置換を含む配列番号16のCC45 LukBバリアントである、実施形態52に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0262】
実施形態56は、当該LukBバリアントポリペプチドが、配列番号22のアミノ酸配列を含む、実施形態55に記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0263】
実施形態57は、アミノ末端シグナル配列を更に含む、実施形態33~56のいずれか1つに記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0264】
実施形態58は、アミノ末端シグナル配列が、配列番号23のアミノ酸配列を含む、実施形態57に記載のLukBバリアントポリペプチドである
【0265】
実施形態59は、アミノ末端精製タグを更に含む、実施形態33~58のいずれか1つに記載のLukBバリアントポリペプチドである。
【0266】
実施形態60は、実施形態33~59のいずれか1つに記載のLukBバリアントポリペプチドをコードする核酸分子である。
【0267】
実施形態61は、実施形態60に記載の核酸分子を含む発現ベクターである。
【0268】
実施形態62は、実施形態60に記載の核酸分子に作動可能に連結された実施形態30の核酸分子を含む発現ベクターである。
【0269】
実施形態63は、配列番号59(CC45 LukB)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号55(CC45 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態62に記載の発現ベクターである。
【0270】
実施形態64は、配列番号61(CC45 LukBバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号55(CC45 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態62に記載の発現ベクターである。
【0271】
実施形態65は、配列番号58(CC8 LukB)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54(CC8 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態62に記載の発現ベクターである。
【0272】
実施形態66は、配列番号61(CC45 LukBバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54(CC8 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態62に記載の発現ベクターである。
【0273】
実施形態67は、配列番号60(CC8 LukBバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列に作動可能に連結された配列番号54(CC8 LukAバリアント)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%の配列類似性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態62に記載の発現ベクターである。
【0274】
実施形態68は、実施形態61~67のいずれか1つに記載の発現ベクターを含む宿主細胞である。
【0275】
実施形態69は、実施形態61~67のいずれか1つに記載の発現ベクターを含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物である。
【0276】
実施形態70は、実施形態1~29のいずれか1つに記載の1つ以上のバリアントLukAバリアントポリペプチドを含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物である。
【0277】
実施形態71は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号1のバリアントである、実施形態70に記載のワクチン組成物である。
【0278】
実施形態72は、ロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する、当該LukBタンパク質又はポリペプチドを更に含む、実施形態70又は実施形態71に記載のワクチン組成物である。
【0279】
実施形態73は、ロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する、当該LukBタンパク質又はポリペプチドを更に含む、実施形態70又は実施形態71に記載のワクチン組成物である。
【0280】
実施形態74は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸残基Lys80、Ser138、Val110、Val190、及びGlu320Alaに対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、実施形態73に記載のワクチン組成物である。
【0281】
実施形態75は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LukBポリペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0282】
実施形態76は、LukAバリアントポリペプチドが、アミノ酸配列配列番号3を含み、LukBポリペプチドが配列番号18のアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0283】
実施形態77は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号22のアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0284】
実施形態78は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号20のアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0285】
実施形態79は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号2のバリアントである、実施形態70に記載のワクチン組成物である。
【0286】
実施形態80は、ロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する当該LukBタンパク質又はポリペプチドを更に含む、実施形態79に記載のワクチン組成物である。
【0287】
実施形態81は、ロイコシジンB(LukB)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する当該LukBタンパク質又はポリペプチドを更に含む、実施形態79に記載のワクチン組成物である。
【0288】
実施形態82は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸残基Lys81、Ser139、Val111、Val191、及びGlu321Alaに対応する1つ以上のアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む、実施形態79~81のいずれか1つに記載のワクチン組成物である。
【0289】
実施形態83は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態82に記載のワクチン組成物である。
【0290】
実施形態84は、LukAバリアントポリペプチドが、アミノ酸配列配列番号4を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、実施形態82に記載のワクチン組成物である。
【0291】
実施形態85は、実施形態33~56のいずれか1つに記載の1つ以上のバリアントLukBタンパク質又はポリペプチドを含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物である。
【0292】
実施形態86は、ロイコシジンA(LukA)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号1(CC8)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する当該LukAタンパク質又はポリペプチドを更に含む、実施形態85に記載のワクチン組成物である。
【0293】
実施形態87は、ロイコシジンA(LukA)タンパク質又はポリペプチドであって、配列番号2(CC45)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列類似性を有する当該LukAタンパク質又はポリペプチドを更に含む、実施形態85に記載のワクチン組成物である。
【0294】
実施形態88は、実施形態1~32のいずれか1つに記載のLukAバリアントポリペプチド、及び実施形態33~56のいずれか1つに記載のLukBバリアントポリペプチドを含む、Staphylococcus aureusワクチン組成物である。
【0295】
実施形態89は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0296】
実施形態90は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号15のアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0297】
実施形態91は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0298】
実施形態92は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号17のアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0299】
実施形態93は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0300】
実施形態94は、LukAバリアントポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列を含み、LukBタンパク質又はポリペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、実施形態74に記載のワクチン組成物である。
【0301】
実施形態95は、アジュバントを更に含む、実施形態64~69~94のいずれか1つに記載のワクチン組成物である。
【0302】
実施形態96は、1つ以上の追加のS.aureus抗原を更に含む、実施形態69~94のいずれか1つに記載のワクチン組成物である。
【0303】
実施形態97は、対象においてS.aureusに対する免疫応答を生成する方法であって、当該方法が、当該対象においてS.aureusに対する当該免疫応答を生成するのに有効な条件下で、実施形態69~94のいずれか1つのワクチン組成物を対象に投与することを含む、方法である。
【0304】
実施形態98は、対象においてS.aureusに対する免疫応答を生成する方法で使用する、実施形態66~94のいずれか1つに記載のワクチン組成物である。
【実施例】
【0305】
以下の実施例は、本開示の実施形態を説明するために提供されるが、その範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0306】
実施例1-例示的なLukAバリアントポリペプチド、LukBバリアントポリペプチド、及び安定LukAB複合体
LukABヘテロ二量体タンパク質の発現については、E.coliBL21(DE3)細胞を、pCDFDuet-1にクローニングされたlukA構築物、及びpETDuet-1にクローニングされたlukB構築物と同時形質転換した。形質転換体を、50μg/mLのアンピシリン及び50μg/mLのスペクチノマイシンで、それぞれpETDuet-1及びpCDFDuet-1を選択するために、Luria-Bertaniブロス中、37℃、190rpmで振とうしながら一晩培養した。発現のため、培養物がOD
600=2に達するまで190rpmで振とうしながら、37℃で一晩培養した培養液の1:50希釈液を新鮮なTerrific Broth培地に接種した。次いで、イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシドの最終濃度1mMまでの添加を介して発現を誘導し、誘導を37℃で更に5時間継続した。LukA及び/又はLukBにおけるシステイン置換の対を含むLukABヘテロ二量体の発現は、ジスルフィド結合形成を支持するために、E.coliOrigami 2(DE3)細胞の細胞質で発現された。E.coli BL21(DE3)の周辺質でのLukA単量体の発現は、pD861-CHでのlukA構築物の形質転換を介して行われ、Terrific Broth(30μg/mL カナマイシンを添加)で最終濃度の4mMのラムノースを使用して、37℃で4時間誘導された。細胞質及び周辺質発現構築物の両方を誘導した後、細胞を4℃、4000rpmで15分間遠心分離して採取し、次いで溶解緩衝液(94%のBugbuster[EMD Millipore]+6%の5M NaCl+0.4%の4M イミダゾール+プロテアーゼ阻害剤カクテル[ProteaseArrest、G-Biosciences])中に再懸濁した。室温で20分間溶解した後、可溶化液を氷上で45分間インキュベートし、次いで16100×g、4℃で35分間遠心分離した。タンパク質を、AKTA Pure 25M FPLC及びHisTrapカラムを使用して、LukAのN末端で6xHis-tagを介して精製し、イミダゾール勾配(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4、200mM NaCl中、50~500mMのイミダゾール)を使用して溶出した。SDS-PAGEにより決定された精製タンパク質を含有する画分をプールし、50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4、200mM NaCl、10%のグリセロール中、4℃で一晩透析した。精製されたタンパク質は、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(Pierce)を介して定量化された。
【表4】
【0307】
実施例2-野生型、LukA、及びLukABトキソイドの細胞傷害性
LukABトキソイドタンパク質の細胞傷害性(表4に定義)を、前単球細胞株THP-1又は新たに単離された初代ヒト多形核白血球(hPMN)のいずれかを使用して、野生型LukAB毒素と比較して評価した。
【0308】
THP-1細胞は、細胞傷害性を試験する前に、ホルボール12-ミリステート13-アセテートの存在下で分化させた。THP-1細胞傷害性アッセイについては、50μL RPMI中の合計1×105個の細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。LukAB毒素及びトキソイドタンパク質を、タンパク質の標準濃度に調整し、氷冷RPMI培地中で段階希釈し、各々50μLの体積を適切なウェルに添加した。RPMIのみの陰性対照に加えて、Triton X-100を陽性対照として0.1%の最終濃度に加えた。プレートを、37℃、5%のCO2で2時間インキュベートし、その後、CytoTox-ONEアッセイ(Promega)を使用して、膜完全性のマーカーとして機能する細胞質酵素乳酸デヒドロゲナーゼの放出を評価した。
【0309】
分化THP-1細胞に対するLukA及びLukABトキソイドの細胞傷害性を、以下の表5に提供する。CC8及びCC45 LukAB野生型毒素の両方が、0.313μg/mLと低い毒素濃度で細胞集団の30%以上を殺傷したため、分化THP-1細胞は、野生型毒素に対して感受性があった。LukA(デルタ10)のC末端における最終10アミノ酸残基の欠失は、CC8デルタ10毒素の細胞傷害性が40μg/mLで5%未満の細胞死に低減したが、分化THP-1細胞に対するCC45デルタ10毒素の細胞傷害性は低減しなかった。LukA単量体のいずれも、分化THP-1細胞に対して細胞傷害を示さなかった。LukAが、LukBの非存在下では活性な細孔複合体を形成しないはずであるため、この結果は予想されたものであった。RARPR-33、RARPR-34、及びRARPR-15を含むLukAB二量体トキソイドの各々は、分化したTHP-1細胞に対する細胞傷害性の顕著な低下を示し、最高試験濃度40μg/mLで試験されたトキソイドの各々について、1%以下の細胞死を示した。
【表5】
【0310】
hPMNについては、中毒前に、全ての毒素を2.5μg/mL(サブユニット当たり)に正規化し、次いで、20μLの毒素を96ウェルプレートの上部ウェルにピペット注入し、10μLの1X PBS中で2倍に段階希釈した。PMNを単離し、90μLのRPMI(10mM HEPES+0.1%HSA)当たり200,000個の細胞に正規化した。次いで、90μLのPMNを各ウェルにピペット注入し、毒素-PMN混合物を37℃+5%CO2のインキュベーターで1時間インキュベートした。毒性を評価するために、10μLのCellTiter 96 Aqueous One Solution(CellTiter、Promega)を96ウェルプレートに加え、混合物を37℃、5% CO2で1.5時間インキュベートした。PMN生存率を、492nmの吸光度でPerkinElmer EnVision 2103 Multilabel Readerを使用して評価した。
【0311】
ヒト初代PMN細胞に対するLukA単量体及びLukAB二量体トキソイドの細胞傷害性を、以下の表6に提供する。野生型CC8及びCC45毒素は、それぞれ0.313μg/mL及び1.25μg/mLの毒素濃度で、初代ヒトPMNの90%超の殺傷を示した。比較すると、LukABトキソイド及びLukA単量体の各々は、これらの細胞に対する細胞傷害性が大幅に低下した。CC8 LukA中の10個のC末端残基の欠失は、分化THP-1細胞に対する細胞傷害性を本質的に排除したが、この毒素は、hPMNに対する細胞傷害性を保持し、5μg/mL以上の濃度で20%超の殺傷が観察された。CC8及びCC45 LukA単量体は、活性細孔複合体の形成に重要なLukB構成要素を欠くトキソイドに予想されるように、hPMNに対する細胞傷害性をほとんど示されなかった。LukAB二量体トキソイドの各々は、CC8及びCC45野生型LukAB毒素と比較して、hPMN細胞に対する細胞傷害性が顕著に低下した。RARPR-33 LukABトキソイド、並びに関連するトキソイドRARPR-32及び-34は、CC8デルタ10よりも少ない細胞傷害性を示し、RARPR-33は、最高試験濃度20μg/mLで細胞集団の15%しか殺傷しなかった。
【表6】
【0312】
実施例3-RARPR-33 LukAB毒素及びWT LukAB毒素の他のバリアントの細胞傷害性。
RARPR-33並びにWT LukAB毒素及びLukA単量体の異なるバリアントの細胞傷害性及び免疫原性を評価するために、追加の実験を実施した。免疫原性試験にマウスを使用した。
【0313】
LukAB毒素、トキソイド、及び単量体の細胞傷害性を、ヒトPMNで評価した。中毒の前に、全ての毒素を100μg/mL(サブユニット当たり)に正規化し、次いで20μLの毒素を96ウェルプレートの上部ウェルにピペット注入し、10μLの1X PBS中で2倍に段階希釈した。PMNを異なるドナーから単離し、90μLのRPMI(10mM HEPES+0.1%HSA)当たり200,000個の細胞に正規化した。90μLのPMNを各ウェルにピペット注入し、毒素-PMN混合物を37℃+5%CO2のインキュベーターで1時間インキュベートした。毒性を評価するために、10μLのCellTiter 96 Aqueous One Solution(CellTiter、Promega)を96ウェルプレートに加え、混合物を37℃、5% CO2で1.5時間インキュベートした。PMN生存率を、492nmの吸光度でPerkinElmer EnVision 2103 Multilabel Readerを使用して評価した。死細胞のパーセンテージは、バックグラウンド(健康な細胞+PBS)を差し引きし、100%死に設定されるTriton X100処理細胞に対して正規化することによって計算された。
【0314】
ヒト初代PMN細胞に対するLukA単量体及びLukAB毒素の細胞傷害性を
図3に提供する。野生型LukAB CC8及びCC45毒素は、それぞれ2.5μg/mL及び5μg/mLの毒素濃度で、初代ヒトPMNの90%超の殺傷を示した。また、2.5μg/mLでのLukABハイブリッド毒素CC8/CC45及びCC45/CC8についても、最大殺傷が観察された。比較すると、LukABトキソイド及びLukA単量体は、これらの細胞に対する細胞傷害性が大幅に低下した。CC8 LukA中の10個のC末端残基の欠失は、hPMNに対する細胞傷害性を保持し、5μg/mL以上の濃度で20%超の殺傷が観察された。CC8及びCC45 LukA単量体、並びにこれらの単量体の組み合わせは、hPMNに対する細胞傷害性をほとんど示さなかった。RARPR-33のLukABトキソイドは、CC8Δ10Cよりも少ない細胞傷害性を示し、RARPR-33は、最高試験濃度20μg/mLで細胞集団の15%しか殺傷しなかった。
【0315】
実施例4-マウスにおける免疫原性。
異なるLukABバリアントの免疫原性を決定するため、Envigo Hsd:ND4(4週齢)マウス(n=5/抗原)に、50μlのアジュバントであるTiterMax(登録商標)Goldと混合した50μlの10%グリセロール1X TBS中の20μgのLukABを皮下投与した。5匹のマウスのコホートはまた、同体積の10%グリセロール1X TBS及びTiterMax(登録商標)Goldからなるモック免疫も受けた。同じ抗原-アジュバントカクテルを2週間間隔で2回ブーストした後、心臓穿刺を介してマウスから採血し、血清を得た。
【0316】
抗LukAB抗体力価を決定するために、ELISAを実施した。WT LukAB CC8又はCC45を、1X PBS中2μg/mlに希釈し、96ウェルImmulon 2HBプレート(Thermo Fisher、カタログ番号3455)で100μlでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、洗浄緩衝液(1X PBS+0.05%Tween)で3回洗浄し、次いで200μlのブロッキング緩衝液(1X PBS中2.5%の乳状液)で1時間ブロックした。血清のブロッキング緩衝液への1:500から始まる5倍段階希釈液を生成し、ロッカー上で1時間インキュベートさせた。次いで、プレートを再び3回洗浄し、ブロッキング緩衝液で1:5,000に希釈したマウスIgG-HRP(Biorad)抗体を加え、室温で1時間インキュベートさせた。結合していない二次抗体を、洗浄緩衝液での3回連続洗浄で洗い流した。室温に戻したTMB(100μl)を各ウェルに加え、蓋をして25分間インキュベートした。反応の完了後、等量の2N硫酸を各反応ウェルに添加して、反応を停止させた。次いで、450nmの吸光度でEnvisionプレートリーダーでプレートを読み取った。
図4A及び4Bに図示されるヒートマップは、二重測定の平均吸光度値を示し、黒は高い吸光度及びコーティング抗原に結合している抗体を表し、白は低い吸光度及び結合している抗体がないことを表す。
【0317】
RARPR-33は、堅牢な抗CC8及び抗CC45 LukAB IgG抗体力価を誘発した。(
図4A及び
図4B)。RARPR-33免疫化は、CC8 WT毒素、CC8/CC45ハイブリッド毒素及びCC8Δ10Cトキソイドによる免疫と同等の抗CC8 IgG応答を誘発した。個々のCC8 LukA単量体によって誘導された抗CC8 LukAB IgG力価は、CC8 LukAB毒素又はCC8/CC45ハイブリッド毒素、CC45/CC8ハイブリッド毒素、及びRARPR 33ハイブリッド抗原によって誘導されたものほど高くはなかった(
図4A)。
【0318】
RARPR-33免疫マウスにおける抗CC45 LukAB力価は、CC8/CC45 WTハイブリッド抗原によって誘発された力価よりも高く、CC45 WT抗原によって誘発された力価と同等であった。CC8及びCC45 LukA単量体を組み合わせることにより、CC8及びCC45 LukABの両方に対する抗体力価が誘発された(
図4B)。しかしながら、CC8及びCC45 LukA単量体を組み合わせることにより誘発されたこれらの抗CC8及び抗CC45 LukAB力価は、RARPR33によって誘発されたものほど高くはなかった。個々のCC45 LukA単量体は、非常に高い抗CC45 LukAB力価を誘発する。これは、CC45/CC8ハイブリッドによって誘発されるレベルと類似しており、RARPR-33又はCC45 WT毒素によって誘発されるレベルよりもわずかに低いに過ぎない。これらの結果は、RARPR-33免疫化によりLukAB CC8及びCC45の両方に対する抗体応答が高い大きさで誘導されることを示している。
【0319】
実験5-毒素細胞傷害性の抗体介在性中和
毒素細胞傷害性の抗体介在性中和を、実施例4で上述したように免疫したマウスから得られた血清で評価した。熱不活性化プール血清をPBS中40%血清に正規化し、次いで、20μLの血清を96ウェルプレートの上部ウェルにピペット注入し、10μLの1X PBSで2倍に段階希釈した。LD
90のLukAB毒素クローン複合体配列バリアントの各々を、室温で15分間、プレートに添加した(10μL/ウェル)。次いで、80μLのRPMI(10mM HEPES+0.1%HSA)当たり200,000個の細胞に正規化された新たに単離されたヒト初代多形核白血球(hPMN)を、血清-毒素混合物に添加し、37℃+5%CO2で1時間インキュベートした。毒性を評価するために、10μLのCellTiter 96 Aqueous One Solution(CellTiter、Promega)を96ウェルプレートに加え、混合物を37℃、5% CO2で1.5時間インキュベートした。PMN生存率を、492nmの吸光度でPerkinElmer EnVision 2103 Multilabel Readerを使用して評価した。抗体中和データを
図5に提示する。
【0320】
RARPR-33免疫化マウス由来の血清は、全ての抗原の中で最も強力で広くLukAB中和能力を示した(
図5)。RARPR33免疫化マウス由来の血清は、0.25%という低い血清で試験された全ての11のLukABバリアントの細胞傷害効果を強く中和し、ほとんどのLukABバリアントはまた、0.063~0.125%という低い血清でも保護を提供した(
図5)。個々のCC8及びCC45 LukA単量体による免疫化は、抗原骨格に高度に偏ったLukAB中和能力を有する血清をもたらした(
図5)。CC8 LukA単量体とCC45 LukAの組み合わせが、各免疫化に対して各単量体20μg(総タンパク質40μg)で投与されると、広範で強力なLukAB中和能力有する血清が得られ、0.5%という低い血清で試験した11個のLukABバリアント全てを中和した(
図5)が、これはRARPR-33免疫化マウスからの血清で観察されたものよりも低い。
【0321】
組み合わせて、実施例3~5に提示されたデータは、RARPR-33のCC8/CC45 LukAB骨格に組み込まれる減弱及び安定化変異により、CC8/CC45 WT LukABハイブリッドの広範な免疫原性効果を改善する(
図4及び
図5)と同時に、CC8/CC45 WT LukAB毒素と比較してRARPR-33を高度に減弱させる(
図3)ことを示す。
【0322】
実施例6-抗血清毒素中和
毒素細胞傷害性の抗体介在性中和を、野生型LukAB、野生型LukABハイブリッド(すなわち、CC8 LukA/CC45 LukB及びCC45 LukA/CC8 LukB)、LukA単量体、又はLukABトキソイドで免疫したマウスから得られた血清で評価した。熱不活化されたプール血清をPBS中40%の血清に正規化し、次いで、20μLの血清を96ウェルプレートの上部ウェルにピペット注入し、10μLの1X PBSで2倍に段階希釈した。次いで、LD
90のLukAB毒素クローン複合体配列バリアントの各々を、2%、1%、又は0.5%の血清のいずれかを含有するプレート(10μL/ウェル)のウェルに室温で15分間添加した。次いで、異なるドナーからの新たに単離されたヒト初代多形核白血球(hPMN)を、80μLのRPMI(10mM HEPES+0.1%HSA)当たり200,000個の細胞に正規化し、血清-毒素混合物に添加し、37℃+5%CO
2で1時間インキュベートした。毒性を評価するために、10μLのCellTiter 96 Aqueous One Solution(CellTiter、Promega)を96ウェルプレートに加え、混合物を37℃、5% CO
2で1.5時間インキュベートした。PMN生存率を、492nmの吸光度でPerkinElmer EnVision 2103 Multilabel Readerを使用して評価した。抗体中和データを、
図6A(2%抗体血清)、
図6B(1%抗体血清、及び
図6C(0.5%抗体血清)の表に提示する。
【0323】
野生型CC8及びCC45 LukABによる免疫化は、免疫化抗原の配列組成を反映するパターンで、LukAB毒素の天然に存在する配列バリアントを中和した抗体を誘発した。CC8 LukAB毒素によって誘導される抗体は、CC8、CC1、CC5、及び他のS.aureus系統に由来する毒素を強力に中和したが、CC30、CC45又はST22AS.aureusに由来する毒素の完全な中和は提供しなかった。同様に、CC45 LukAB毒素を用いた免疫化は、CC30、CC45又はST22A S.aureus系統に由来する毒素を強力に中和する抗体を誘発したが、他の系統に由来する毒素は誘発しなかった。
【0324】
非天然ハイブリッドLukABである、CC45 LukBと組み合わせたCC8 LukA又はCC8 LukBと組み合わせたCC45 LukAのいずれかでのマウスの免疫化は、天然に存在する二量体の組み合わせと比較して、LukAB配列バリアントのより広範な中和を示した抗体を誘発した。非天然のハイブリッド二量体のうち、CC8 LukA及びCC45 LukBは、反対の組み合わせよりもわずかに良好な中和プロファイルを示し、このパターンは、LukAの最後から2番目の残基にGluからAlaへの置換を保有するタンパク質中に保持されていた(E323A)。野生型毒素に対して誘発された抗体について観察されたように、LukA単量体は、その配列組成を示す中和パターンを示した抗体を誘発した。CC8 LukA及びCC45 LukA単量体の組み合わせ(RARPR-31+CC45 LukA W97)は、広範な中和パターンを示した抗体を誘発したが、1%又は0.5%の血清での中和レベルの低下によって明らかなように、二量体抗原と比較して中和の効力が低下した。
【0325】
二量体トキソイドのうち、RARPR-15、RARPR-33、及びRARPR-34は、試験された全てのLukAB配列バリアントに対して広範な中和抗体応答を示した。非天然の野生型二量体の組み合わせも、広範な中和プロファイルを示したが、中和応答の効力は、いくつかのトキソイドについて観察されたものよりも劣っていた。ハイブリッド野生型及びトキソイド抗原の両方は、2%(
図6A)及び1%(
図6B)血清で試験したときに広範な中和プロファイルを示したが、0.5%血清で試験した場合、トキソイドに対する応答の効力の改善が明らかであった(
図6C)。この最低試験濃度では、RARPR-15、RARPR-32、RARPR-33、及びRARPR-34はそれぞれ広範な中和応答を示した。RARPR-33は特に、広範な中和応答を保持する血清を誘発したが、ハイブリッド野生型抗原及びE323Aトキソイドは、0.5%の血清で広範な保護応答を誘発できなかった。また、CC30、CC45、及びST22A LukAB毒素でのみ高いレベルの中和が観察されたため、最低試験濃度のCC45トキソイドRARPR-15によって誘発された中和パターンは、その配列組成を反映していた。ハイブリッド二量体トキソイドRARPR-33は、強力で広範な中和免疫応答を誘発した。
【0326】
実施例7-高濃度でのRARPR-33の細胞傷害性。
方法:
細胞傷害性アッセイ:各それぞれのLukABタンパク質複合体の細胞傷害性を評価するために、新たに単離した初代ヒト多型核白血球(PMN)を、S.aureus毒素で中毒させた。PMNを異なるドナーから単離し、50μlのRPMI(10mM HEPES+0.1%HSA)当たり200,000個の細胞に正規化した。PBS中の50μlの毒素を細胞に添加し、毒素-PMN混合物を37℃+5%CO2のインキュベーターで1時間インキュベートした。毒性を評価するために、10μlのCellTiter 96 Aqueous One Solution(CellTiter、Promega)を96ウェルプレートに加え、混合物を37℃、5% CO2で1.5時間インキュベートした。PMN生存率を、492nmの吸光度でPerkinElmer EnVision 2103 Multilabel Readerを使用して評価した。死細胞%は、バックグラウンド(健康な細胞+PBS)を差し引いて、100%死に設定されるTritonX処理細胞に対して正規化することによって計算される。
【0327】
LDHアッセイ:各々のLukABタンパク質複合体が細胞溶解を引き起こす可能性があるかどうかを評価するために、異なるドナーからの新たに単離された初代ヒト多型核白血球(PMN)を、S.aureus LukAB毒素で中毒させ及びLDH放出を測定した。WT毒素をPBSで2倍に段階希釈し、5~0.0024μg/mlの範囲の濃度で試験した。LukABトキソイドをPBSで希釈し、2.5、2、1、1.5、及び0.5mg/mlで試験した。PMNを単離し、50μlのRPMI(10mM HEPES+0.1%HSA)当たり200,000個の細胞に正規化した。次いで、50μlのPMNを各ウェルにピペット注入し、ウェル当たり50μlの希釈毒素を添加した。毒素-PMN混合物を、37℃+5%CO2のインキュベーターで2時間インキュベートした。LDH放出を評価するために、プレートを1500rpmで5分間遠心分離し、次いで、25μlの上清を各ウェルから取り出し、96ウェルブラッククリアボトムプレートに移した。25μlのCytoTox-ONE均質膜完全性試薬(homogeneous membrane integrity reagent)(Promega)をブラッククリアボトム96ウェルプレートに添加し、混合物を暗所で10分間室温でインキュベートした。細胞溶解を、PerkinElmer EnVision 2103 Multilabel Readerを使用して560nmの励起波長及び590nmの発光波長で蛍光を記録することによって評価した。死細胞%は、バックグラウンド(健康な細胞+PBS)を差し引いて、100%死に設定されたTritonX処理細胞に対して正規化することによって計算された。
【0328】
結果:
以前の実施例では、hPMNに対するLukABトキソイドRARPR-33の細胞傷害性を、最大20μg/mlの濃度まで決定した。次に、高濃度(最大2.5mg/ml)のRARPR-33の存在下で、ヒトPMNの細胞傷害性をモニターした。CellTiter測定に基づくヒトPMN(4~6ドナー)の最大細胞傷害性は、約0.156μg/ml毒素による1時間の中毒時に、WT LukAB CC8、CC45及びCC8/CC45毒素について観察された(
図7A)。RARPR-33及びCC8 LukA単量体について、CellTiterで測定された死細胞のパーセンテージは、0.5mg/mlの濃度で約10%であった(
図7B)。最大2.5mg/mlのRARPR-33又はCC8 LukA単量体の濃度でPMNをインキュベーションしても、CellTiter測定によって決定された死細胞のパーセンテージは、更に増加しなかった。
【0329】
LD15値は、15%の細胞死を誘導する抗原の濃度を示す。LD15は、線形回帰を使用して決定された。CC8 WT LukABについては、LD15は0.013μg/mlであり、CC45 WT LukABについては、LD15は0.004μg/mlであり、CC8/CC45 LukABハイブリッドについては、LD15は0.002μg/mlであった。LukAB RARPR-33のLD15は2.5mg/mlであった。LD15の値を、RARPR-33のLD15濃度を、野生型抗原のLD15濃度で割ることによって比較した。これらの観察結果に基づくと、LukAB RARPR-33毒性は、LukAB CC8 WTよりも>192,308倍低く、LukAB CC45 WTよりも>625,000倍低く、及びLukAB CC8/CC45ハイブリッドよりも>1,250,000倍低い。
【0330】
更に、LDHアッセイを実施して、異なるWT毒素、CC8 LukA単量体、又はRARPR-33との2時間のインキュベーション後の形質膜損傷を評価した。ヒトPMNの細胞傷害性は、WT毒素、CC8 WT、CC45 WT、又はCC8/CC45毒素ハイブリッドへの2時間の曝露後に誘導された(
図7C)。LDHによって決定された最大の細胞死は、0.625μg/ml毒素の濃度で観察された。対照的に、最大2.5mg/mlの濃度のRARPR-33又はCC8 LukA単量体への2時間の曝露後に、ヒトPMNの形質膜損傷は観察されなかった(
図7D)。これらのデータは、RARPR-33が解毒され、最大2.5mg/mlの濃度でヒトPMNの細胞死を誘発できないことを示す。RARPR-33のCC8/CC45 LukAB骨格に組み込まれた変異は、CC8/CC45 WT LukAB毒素と比較して、細胞傷害性を大幅に減弱した。
【0331】
実施例8:RARPR-33とD39A/R23Eトキソイドとの比較
LukAがD39A変異を有し、LukBがR23E点変異を有する、CC8骨格に基づくLukABトキソイドが生成された。この「D39A/R23Eトキソイド」は、Kailasan,S.et al,“Rational Design of Toxoid Vaccine Candidates for Staphylococcus aureus Leukocidin AB(LukAB),”Toxins 11(6):(2019)に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このトキソイドは、LukAB CC8骨格上で生成され、WT CC8 LukAB毒素と比較して、毒性が>36,000倍減弱されていると記載されていた。細胞傷害性を、PMN様であるように分化したHL-60細胞株を使用して決定した。本実験では、D39A/R23EトキソイドとRARPR-33との間で比較を行った。ヒト多形核白血球(PMN)に対する細胞傷害性を決定し、免疫化時に広範囲に毒素中和抗体を誘導する能力を評価した。
【0332】
方法:
細胞傷害性アッセイ:各々のLukABタンパク質複合体の細胞傷害性を評価するために、異なるドナーからの新たに単離された初代ヒト多型核白血球(PMN)を、S.aureus毒素で中毒させた。PMNを単離し、50μlのRPMI(10mM HEPES+0.1%HSA)当たり200,000個の細胞に正規化した。細胞に、PBS中の50μlの毒素を添加し、毒素-PMN混合物を37℃+5%CO2のインキュベーターで2時間インキュベートした。毒性を評価するために、10μlのCellTiter 96 Aqueous One Solution(CellTiter、Promega)を96ウェルプレートに加え、混合物を37℃、5% CO2で1.5時間インキュベートした。PMN生存率を、492nmの吸光度でPerkinElmer EnVision 2103 Multilabel Readerを使用して評価した。死細胞のパーセンテージは、バックグラウンド(健康な細胞+PBS)を差し引いて、100%死に設定されるTritonX処理細胞に対して正規化することによって計算される。
【0333】
LDHアッセイ:それぞれのLukABタンパク質複合体が細胞溶解を引き起こすかどうかを評価するために、異なるドナーからの新たに単離された初代ヒト多型核白血球(PMN)を、S.aureusLukAB毒素で中毒させ及びLDH放出を測定した。WT毒素をPBSで2倍に段階希釈し、0.5μg/ml~0.00024μg/mlの範囲の濃度で試験した。LukABトキソイドをPBSで1mg/ml~0.03125mg/mlの範囲の濃度に希釈し、試験した。PMNを単離し、50μlのRPMI(10mM HEPES+0.1%HSA)当たり200,000個の細胞に正規化した。次に、PMN(50μl)を各ウェルにピペット注入し、ウェル当たり50μlの希釈毒素を添加した。毒素-PMN混合物を、37℃+5%CO2のインキュベーターで2時間インキュベートした。LDH放出を評価するために、プレートを1500rpmで5分間遠心分離し、次いで、25μlの上清を各ウェルから取り出し、96ウェルブラッククリアボトムプレートに移した。25μlのCytoTox-ONE均質膜完全性試薬(Promega)をブラッククリアボトム96ウェルプレートに添加し、混合物を暗所で10分間室温でインキュベートした。細胞溶解を、PerkinElmer EnVision 2103 Multilabel Readerを使用して560nmの励起波長及び590nmの発光波長で蛍光を記録することによって評価した。死細胞のパーセンテージは、バックグラウンド(健康な細胞+PBS)を差し引いて、100%死に設定されたTritonX処理細胞に対して正規化することによって計算された。
【0334】
マウスの免疫化。Envigo Hsd:ND4(4週齢)マウス(n=5/抗原)に、50μlのアジュバントであるTiterMax(登録商標)Goldと混合した50μlの10%グリセロール1X TBS中の、20μgのLukABを皮下投与した。同じ抗原/アジュバントカクテルを2回ブーストした後、心臓穿刺を介してマウスから採血し、毒素中和試験用に血清を得た。
【0335】
毒素中和アッセイ。免疫したマウスの血清を各群からプールし、55℃の水浴中で30分間、熱不活化した。次に、プールした熱不活化血清をPBSで40%に希釈した。次いで、40%のストックを、96ウェルプレート中の10μlのPBSで2倍に段階希釈することによって、血清の更なる希釈を達成した。毒素(10μl)を、0.156μg/ml毒素(LD90)の最終濃度で血清ウェルに添加した。RPMI+0.1%のHSA+10mMのHEPES中の200,000個の細胞の濃度で80μlのhPMNを各ウェルに添加した。次いで、プレートを37℃+5%CO2のインキュベーターで1時間インキュベートした。インキュベーション後、Cell Titerをこの中毒体に添加し、1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを492nmの吸光度でプレートリーダーで読み取った。死細胞のパーセンテージは、バックグラウンド(健康な細胞+PBS)を差し引いて、100%死に設定されるTritonX処理細胞に対して正規化することによって計算された。
【0336】
結果:
D39A/R23Eトキソイドの細胞傷害性は、最大約12μg/mlまで試験されることが報告されている。ここでは、RARPR-33及びD39A/R23Eトキソイドの細胞傷害性を、1mg/mlの濃度までヒトPMNで決定した。更に、WT LukAB CC8、CC45、及びCC8/CC45を比較のために試験した。CellTiter測定値に基づくヒトPMNの最大細胞傷害性は、約0.02μg/mlのWT LukAB CC8/CC45、約0.03μg/mlのLukAB CC8、及び0.125μg/mlのLukAB CC45による、1時間の中毒時に観察された(
図8A)。5ドナーの平均を示す。D39A/R23Eトキソイドでは、1mg/mlでのインキュベーション時に約22%の細胞傷害性が観察された。RARPR-33の場合、CellTiterで測定した死細胞のパーセンテージは、1mg/mlの濃度で約3%であった(
図8B)。
【0337】
更に、LDHアッセイを実施して、異なるWT毒素、D39A/R23Eトキソイド及びRARPR-33との2時間のインキュベーション後の血漿膜損傷を評価した。ヒトPMNの細胞傷害性は、WT毒素、CC8 WT、CC45 WT、及びCC8/CC45毒素ハイブリッドの組み合わせへの曝露の2時間後に誘導された(
図8C)。LDHによって決定された最大の細胞死は、0.25μg/ml毒素の濃度で観察された。最大1mg/mlのD39A/R23Eトキソイドの濃度でのヒトPMNの2時間の曝露では、約8%の細胞死が観察された。同様の濃度のRARPR-33とともにヒトPMNをインキュベートした場合、形質膜損傷は観察されず、細胞死がないことが示された(
図8D)。これらの結果は、RARPR-33がアッセイにおける検出限界未満まで減弱化され、D39A/R23Eトキソイドよりも減弱化されていることを示す。
【0338】
RARPR-33又はD39A/R23Eトキソイドで免疫化したマウス由来の血清を、毒素中和アッセイで試験し、ヒトPMNの毒素誘導性細胞死を防ぐ血清の能力を評価した。16の異なるLukAB毒素に対する中和を、4ドナーから単離されたPMNで試験した。
【0339】
RARPR33免疫化マウスからの0.125%の血清の存在下で、試験された16のLukABバリアント全ての細胞傷害性効果を中和した(
図9)。類似の血清濃度では、D39A/R23Eトキソイド免疫化マウス由来の血清は、RARPR-33免疫化マウス由来の血清と同程度に、LukAB CC8の細胞傷害性効果に対して保護するのみあった。他の全ての毒素に対して、D39A/R23Eトキソイド免疫化マウス由来の血清では、保護が観察されないか又ははるかに低い保護が観察された。これらの結果は、RARPR-33免疫化が、D39A/R23Eトキソイドでの免疫化よりもはるかに広範な毒素中和応答を誘導したことを示す。
【0340】
実施例9:LukABトキソイドの熱安定化
野生型タンパク質と比較したLukABトキソイドの安定性を、固有のトリプトファン又はチロシン蛍光を使用した熱変性実験により評価し、フォールドした状態からアンフォールドした状態へのタンパク質の移行の中間点に対応する融解温度(Tm)を推定した。NanoTemperのPromethiusNT.Plex装置(NanoTemper Inc.、Germany)を使用して熱安定性を評価した。熱変性測定が、0.3~1mg/mLのタンパク質試料(20uL、緩衝液:50mMリン酸ナトリウム緩衝液、200mM NaCl、pH7.4、10%グリセロール)について行われ、各試料に対し2回の繰り返しで実行する。Prometheus NanoDSFユーザーインターフェース(Melting Scanタブ)を使用して、実行の実験パラメータを設定した。典型的な試料の熱走査は、1.0℃/分の速度で20℃~95℃の範囲で行われる。試料に使用されたのと同じ緩衝液中の標準mAb(CNTO5825又はNIST)を対照として含め、実行を2回繰り返した。熱融解プロファイルを、ベンダーソフトウェアPR.ThermControlを用いて分析し、タンパク質の50%がアンフォールドする温度(Tm)を決定した。
【0341】
表7A及び7Bは、nanoDSFによって評価されたLukA及びLukABトキソイドタンパク質の熱安定性を示す。タンパク質アンフォールディングの開始温度(Tonset)及びタンパク質アンフォールディングの遷移の中間点の温度(Tm1)を、安定化置換(ΔTm)あり及びなしで同等の構築物間のTmの差とともに提示する
【表7】
【表8】
【0342】
結果:熱安定性解析(表7A)により、CC45 LukAE321A/CC45 LukBタンパク質が、CC8 LukAE321A/CC45 LukBハイブリッドタンパク質のTmよりも3℃高いTm値を示したことが明らかになった。CC45 LukBwtと組み合わせて、CC45 LukAにおける個々の置換は、0~0.4℃のTmの控えめな増加をもたらした。LukBにおけるVal53Leu置換は、Tmの0.5℃の増加をもたらした。ハイブリッドLukABトキソイドはCC8 LukAバックグラウンドを含んでいたため、個々のアミノ酸置換を、野生型CC45 LukBと組み合わせたCC8 LukAで試験した(表7B)。CC45 LukAで見られるように、CC8 LukAにおける個々の置換もまた、野生型LukABよりもTm値を増加させた。LukA(RARPR-15)における置換の組み合わせは、CC45 LukAE321A/CC45 LukBタンパク質よりも1.6℃高いTm値を生成し、LukBVal53LeuとのCC8 LukA置換の組み合わせ(RARPR-33)は、CC8 LukAE321A/CC45 LukBハイブリッドよりも4℃高いTm値をもたらした。RARPR-33の熱安定性の増加は、両方のデータセットで観察された(表7A及び表7B)。nanoDSFは、50℃未満でアンフォールディングするタンパク質に対してある程度のばらつきを生じ得るが、各セット内で実行された対照を使用して決定されたΔTmは、それぞれ4.0℃及び4.1℃でデータセットにわたって一貫していた。LukA単量体は、置換の組み合わせ及びシステイン置換の対の両方を含み、≧58℃の高いTm値を示し、ジスルフィド結合が熱安定性の増加に更に寄与していることを示す。
【0343】
実施例1~9の考察:
本明細書に記載される安定的なLukABバリアントヘテロ二量体トキソイドは、S.aureusワクチン抗原候補として非常に適したものにするいくつかの特徴を有する。
【0344】
第1に、RARPR-30、RARPR-31、RARPR-32、RARPR-33、RARPR-34、及びRARPR-15を含む、本明細書に記載されるLukA単量体及びLukAB二量体トキソイドは、野生型毒素及び他の既知のトキソイド(すなわち、CC8デルタ10及びCC45デルタ10トキソイド)と比較して、分化ヒトTHP-1及びヒトPMNに対する細胞傷害性の顕著な低下を示した。最大2.5mg/mlの濃度でさえ、RARPR-33は非細胞傷害性のままであり、その完全な弱毒化を示した。
【0345】
第2に、LukA及びLukBバリアントタンパク質に導入された置換の組み合わせは、単一の置換のみを含有する対応するトキソイドと比較して、ヘテロ二量体RARPR複合体の熱安定性を大幅に強化した。特に、LukA(RARPR-15)における置換の組み合わせは、CC45 LukAE321A/CC45 LukBタンパク質よりも1.6℃高いTm値を生成し、CC8 LukBVal53LeuとのCC8 LukA置換の組み合わせ(RARPR-33)は、CC8 LukAE321A/CC45 LukBハイブリッドよりも4℃高いTm値をもたらした。
【0346】
弱毒化された細胞傷害性及び強化された熱安定性に加えて、本明細書に記載されるLukAB RARPRトキソイド、特にRARPR-15、RARPR-33、及びRARPR-34は、野生型CC45及びCC8毒素、野生型ハイブリッド毒素、並びにE323Aトキソイド及びD39A/R23Eトキソイドを含むトキソイドよりも同等の又はより広範な毒素中和応答及びより高い力価の中和抗体を誘導した。
【0347】
要約すると、減弱された細胞傷害性、改善された熱安定性、堅牢な免疫原性、及び広く中和された抗体プロファイルにより、本明細書に記載されるLukAB RARPRトキソイドは理想的なワクチン抗原候補となる。
【0348】
本明細書では好ましい実施形態が詳細に示され、記載されているが、本開示の趣旨から逸脱することなく、様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは、以下の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲内にあるとみなされることが、当業者には明らかである。
【配列表】
【国際調査報告】