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特表2023-544311テストステロンの延長送達のための生分解性ポリマー送達システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】テストステロンの延長送達のための生分解性ポリマー送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/568 20060101AFI20231016BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231016BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231016BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231016BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
A61K31/568
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/22
A61K47/20
A61P5/24
A61P15/00
A61K47/18
A61K47/12
A61K9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519653
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 IB2021058743
(87)【国際公開番号】W WO2022070010
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/085,868
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518038146
【氏名又は名称】トルマー インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バン ホーブ, エイミー
(72)【発明者】
【氏名】ジャナガム, ディリープ
(72)【発明者】
【氏名】フィールドソン, グレゴリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB16
4C076DD42
4C076DD51
4C076DD55
4C076DD60
4C076EE23
4C076EE24
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA81
(57)【要約】
注射器または針を用いて体内に投与され、長期間にわたって体内にテストステロンを送達するために利用される生分解性ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマー組成物が本明細書に開示される。一態様では、本開示は、テストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステルを含む有効医薬成分(API)と、生体適合性溶媒および低分子量ポリエチレングリコール(PEG)を含む溶媒系と、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)のコポリマーセグメントを含みかつ少なくとも1つのカルボン酸末端基を有する生分解性ポリマーとを含む医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステルを含む有効医薬成分と、
生体適合性溶媒および低分子量ポリエチレングリコール(PEG)を含む溶媒系と、
ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)のコポリマーセグメントを含みかつ少なくとも1つのカルボン酸末端基を有する生分解性ポリマーと
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記有効医薬成分が、ウンデカン酸テストステロンおよびシピオン酸テストステロンからなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記有効医薬成分がウンデカン酸テストステロンである、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物中のウンデカン酸テストステロンの量が、前記医薬組成物1グラム当たり約100mg~約400mgである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物中のウンデカン酸テストステロンの量が、前記医薬組成物1グラム当たり約150mg~約250mgである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記有効医薬成分がシピオン酸テストステロンである、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物中のシピオン酸テストステロンの量が、前記医薬組成物1グラム当たり約100mg~約400mgである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中のシピオン酸テストステロンの量が、前記医薬組成物1グラム当たり約150mg~約250mgである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が、約1μm~約100μmのDv,50を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が、約30μm~約90μmのDv,50を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が、約35μm~約75μmのDv,50を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が、約100μm~約450μmのDv,90を有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が、約300μm~約450μmのDv,90を有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が、約1~約9のスパンを有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が約5~約7のスパンを有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が約2~約4のスパンを有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物中に懸濁する前の前記有効医薬成分が約2~約7のスパンを有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記有効医薬成分が、乾式粉砕、ジェット粉砕、ナノ粉砕または水もしくは他の溶媒中での湿式粉砕、続いて凍結乾燥もしくは乾燥、均質化、ボール粉砕、カッター粉砕、ローラー粉砕、乳鉢および乳棒による細砕、ランナー粉砕、凍結粉砕、またはそれらの組み合わせによって目標粒径分布に粉砕される、請求項1から17までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記低分子量PEGが、約3350ダルトンまたはそれ未満の数平均分子量を有するPEGを含み、前記低分子量PEGの量が、前記医薬組成物の約25重量%またはそれ未満である、請求項1から18までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記低分子量PEGの量が、前記医薬組成物の約15重量%またはそれ未満である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記低分子量PEGの量が、前記医薬組成物の約10重量%またはそれ未満である、請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記低分子量PEGが末端ヒドロキシル基を含む、請求項19から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記低分子量PEGが、ヒドロキシル基およびメチルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1つの末端基を含む、請求項19から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記低分子量PEGが、PEG250、PEG300、PEG350、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1450、PEG3350、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項19から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記低分子量PEGがPEG300である、請求項1から22までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記低分子量PEGがPEG400である、請求項1から22までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記生体適合性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ブチロラクトン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、乳酸エチル、N-エチル-2-ピロリドン、グリセロールホルマール、グリコフロール、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、イソプロピリデングリセロール、乳酸、メトキシポリエチレングリコール、メトキシプロピレングリコール、酢酸メチル、メチルエチルケトン、乳酸メチル、ポリオキシル35硬化ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ベンジルアルコール、n-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、プロピレングリコール、2-ピロリドン、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリエチル、前述のいずれかのエステル、および前述のいずれかの組み合わせからなる群より選択される、請求項1から26までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記生体適合性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1から27までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記生体適合性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含む、請求項1から28までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記溶媒系が、N-メチル-2-ピロリドンおよびPEG300を含む、請求項1から29までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記生分解性ポリマーがヒドロキシ酸開始剤で形成されている、請求項1から30までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記ヒドロキシ酸開始剤が、GABA(ガンマアミノ酪酸)、GHB(ガンマヒドロキシ酪酸)、乳酸、グリコール酸、クエン酸、およびウンデシレン酸 グリコール酸からなる群より選択される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記生分解性ポリマーが、約50:50~約90:10のラクチド対グリコリドモノマーのモル比を有する、請求項1から32までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記ラクチド対グリコリドモノマーのモル比が、約70:30~約85:15である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記ラクチド対グリコリドモノマーのモル比が、約70:30である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記ラクチド対グリコリドモノマーのモル比が、約85:15である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記生分解性ポリマーの重量平均分子量が、約1kDa~約45kDaである、請求項1から36までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記生分解性ポリマーの重量平均分子量が、約4kDa~約36kDaである、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記生分解性ポリマーの重量平均分子量が、約4kDa~約14kDaである、請求項37または請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記生分解性ポリマーの重量平均分子量が約14kDa~約24kDaである、請求項37または請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記生分解性ポリマーの重量平均分子量が約20kDa~約36kDaである、請求項37または請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記有効医薬成分が、前記医薬組成物の約10重量%~約30重量%を構成する、請求項1から41までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記有効医薬成分が、前記医薬組成物の約15重量%~約25重量%を構成する、請求項1から42までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記溶媒系が、前記医薬組成物の約40重量%~約60重量%を構成する、請求項1から43までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記溶媒系が、前記医薬組成物の約45重量%~約55重量%を構成する、請求項1から44までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記生分解性ポリマーが、前記医薬組成物の約20重量%~約40重量%を構成する、請求項1から45までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記生分解性ポリマーが、前記医薬組成物の約25重量%~約35重量%を構成する、請求項1から46までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記有効医薬成分が、前記組成物の約20重量%を構成し、前記生体適合性溶媒系が、前記組成物の約50重量%を構成し、前記生分解性ポリマーが、前記医薬組成物の約30重量%を構成する、請求項1から41までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記有効医薬成分が、約35℃までの温度で前記医薬組成物中で実質的に固体形態である、請求項1から48までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記医薬組成物が、約20,000cP未満の粘度を有する、請求項1から49までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記医薬組成物が、約10,000cP未満の粘度を有する、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記医薬組成物が、約5,000cP未満の粘度を有する、請求項50または請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
約35μm~約75μmのDv,50および約2~約7のスパンを有する約20重量%のウンデカン酸テストステロンと、
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および分子量が約300ダルトンのポリエチレングリコ-ル(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約4:1である、生体適合性溶媒系と、
少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約4kDa~約24kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の70:30ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーと
を含む、医薬組成物。
【請求項54】
前記重量平均分子量が、約4kDa~約14kDaである、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記重量平均分子量が、約14kDa~約24kDaである、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記スパンが、約2~約4である、請求項53から55までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記スパンが、約5~約7である、請求項53から55までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
約35μm~約75μmのDv,50および約2~約7のスパンを有する約20重量%のウンデカン酸テストステロンと、
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および分子量が約300ダルトンのポリエチレングリコ-ル(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約4:1である、生体適合性溶媒系と、
少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約14kDa~約24kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の85:15ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーと
を含む、医薬組成物。
【請求項59】
約30μm~約50μmのDv,50および約1~約3のスパンを有する約20重量%のシピオン酸テストステロンと、
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および分子量が約300ダルトンのポリエチレングリコ-ル(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約3:2である、生体適合性溶媒系と、
少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約20kDa~約36kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の70:30ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーと
を含む、医薬組成物。
【請求項60】
内因性テストステロンの欠乏または欠如に関連する状態に対するテストステロン補充療法のための医薬品として使用するための、請求項1から59までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記状態が、原発性性腺機能低下症および低ゴナドトロピン性性腺機能低下症からなる群より選択される、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記状態が、先天性または後天性である、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記状態が、女性から男性へのトランスジェンダーである、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項64】
対象の体内への請求項1から59までのいずれか1項に記載の医薬組成物の投与の際に形成される固体デポー。
【請求項65】
テストステロン補充療法のための医薬品の製造における、請求項1から59までのいずれか1項に記載の医薬組成物を含む製品の使用。
【請求項66】
対象における内因性テストステロンの欠乏または欠如に関連する状態に対するテストステロン補充療法の方法であって、請求項1から59までのいずれか1項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項67】
前記医薬組成物が皮下投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記医薬組成物が、約1ヶ月に1回投与される、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記医薬組成物が、約2ヶ月に1回投与される、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記医薬組成物が、約3ヶ月に1回投与される、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記医薬組成物が、約4ヶ月に1回投与される、請求項67または請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記医薬組成物が、約5ヶ月に1回投与される、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記医薬組成物が、注射時に対象において固体in situデポーを形成する、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項74】
前記固体デポーが、少なくとも約30日間にわたり臨床的に有効な量の前記有効医薬成分を前記対象に放出する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記固体デポーが、少なくとも約60日間にわたり前記有効医薬成分を前記対象に放出する、請求項73または請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記固体デポーが、少なくとも約90日間にわたり前記有効医薬成分を前記対象に放出する、請求項73から75までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記固体デポーが、少なくとも約120日間にわたり前記有効医薬成分を前記対象に放出する、請求項73から76までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記固体デポーが、少なくとも約150日間にわたり前記有効医薬成分を前記対象に放出する、請求項73から77までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記医薬組成物を対象に投与すると、前記対象の平均血清テストステロン濃度が、投与後少なくとも約1ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである、請求項66、67、および73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記対象の血清テストステロンレベルが、投与後少なくとも約2ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記対象の血清テストステロンレベルが、投与後少なくとも約3ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである、請求項79または請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記対象の血清テストステロンレベルが、投与後少なくとも約4ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである、請求項79から81までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記対象の血清テストステロンレベルが、投与後少なくとも約5ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである、請求項79から82までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
請求項1から59までのいずれか1項に記載の医薬組成物を含む注射器。
【請求項85】
前記注射器が第1のチャンバおよび第2のチャンバを備え、前記医薬組成物が前記第1のチャンバに貯蔵され、前記第2のチャンバが空である、請求項84に記載の注射器。
【請求項86】
前記注射器が、第1のチャンバおよび第2のチャンバを備え、前記第1のチャンバが有効医薬成分を含み、前記第2のチャンバが溶媒系および生分解性ポリマーを含む、請求項84に記載の注射器。
【請求項87】
前記医薬組成物が、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとを接続し、次いで前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間で前記チャンバの内容物を押し出すように混合される、請求項84または請求項86に記載の注射器。
【請求項88】
約16~約22のゲージを有する針をさらに備える、請求項84から87までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項89】
前記注射器が、約2mLまたはそれ未満の注入体積を含む、請求項84から88までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項90】
前記注射器が、約1mLまたはそれ未満の注入体積を含む、請求項84から89までのいずれか1項に記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本出願は、注射器または針を用いて体内に投与され、長期間にわたって体内にテストステロンを送達するために利用される生分解性ポリマー組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
性腺機能低下症は、男性生殖腺機能の欠損または欠如により、テストステロンの分泌が不十分であること、またはテストステロン濃度を標準的な生理学的範囲内にもたらすことができないこと、および/または正常な精子形成を行うことができないことと定義される。原発性性腺機能低下症は、精巣機能不全に起因するもので、クラインフェルター症候群などの先天性障害に起因し得るか、または例えば、放射線処置、化学療法、おたふく風邪、腫瘍、もしくは精巣への外傷の結果として起こり得る後天性障害に起因し得る。続発性性腺機能低下症は、視床下部-下垂体軸の機能不全に起因するもので、その結果、テストステロン依存性機能を維持するのに不十分なテストステロンの産生または放出をもたらす。続発性性腺機能低下症では、先天性または後天性の疾患状態が、ホルモンを放出して精巣を刺激してテストステロンを産生する主要な腺である視床下部または下垂体のいずれかを害する。性腺機能低下症はまた、原発性および続発性性腺機能低下症の組み合わせから生じることもある。性腺機能低下症はどの年齢でも起こり得る。しかしながら、低いテストステロンレベルは、より高齢の男性においてより一般的であり、これは不妊症および性機能障害をもたらし得る。性腺機能低下症はまた、うつ病、心血管疾患、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、およびアルツハイマー病のリスクを増加させ得る。
【0003】
テストステロン補充療法は、性欲および性機能、骨密度、筋肉量、身体組成、気分、赤血球生成、認知、および心血管疾患の改善を含む、性腺機能低下症を有する男性に広範囲の利益をもたらし得る。テストステロン補充療法はまた、男性避妊薬として、またはトランスジェンシー(女性から男性)ホルモン療法において使用され得る。テストステロン補充療法は、経口的に、局所ゲル、経皮パッチとして、注射によって、または皮下に外科的に配置されたインプラントとして投与され得る。注射によるまたはインプラントを介した投与は、テストステロンを他の人に拡散するリスクを最小限に抑えながら、より一貫した用量を提供できるという利益を有する。テストステロン療法は、患者(例えば、性腺機能低下症の症状の処置)に多くの利益を提供することができるが、それと接触する他の人、特に女性および子供に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0004】
当技術分野では、長期間にわたって臨床有効量のテストステロンを患者に安全に、効果的に、かつ一貫して送達するテストステロン補充製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
一態様では、本開示は、テストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステルを含む有効医薬成分(API)と、生体適合性溶媒および低分子量ポリエチレングリコール(PEG)を含む溶媒系と、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)のコポリマーセグメントを含みかつ少なくとも1つのカルボン酸末端基を有する生分解性ポリマーとを含む医薬組成物を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、有効医薬成分は、ウンデカン酸テストステロンである。
【0007】
いくつかの実施形態では、組成物中のウンデカン酸テストステロンの量は、医薬組成物1グラム当たり約100mg~約400mgである。
【0008】
他の実施形態では、組成物中のウンデカン酸テストステロンの量は、医薬組成物1グラム当たり約150mg~約250mgである。
【0009】
いくつかの実施形態では、有効医薬成分は、シピオン酸テストステロンである。
【0010】
いくつかの実施形態では、組成物中のシピオン酸テストステロンの量は、医薬組成物1グラム当たり約100mg~約400mgである。
【0011】
他の実施形態では、組成物中のシピオン酸テストステロンの量は、医薬組成物1グラム当たり約150mg~約250mgである。
【0012】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約1μm~約100μmのDv,50を有する。
【0013】
他の実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約30μm~約90μmのDv,50を有する。
【0014】
さらに他の実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約35μm~約75μmのDv,50を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約100μm~約450μmのDv,90を有する。
【0016】
他の実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約300μm~約450μmのDv,90を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約1~約9のスパンを有する。
【0018】
他の実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約4~約9のスパンを有する。
【0019】
さらに他の実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約1~約3のスパンを有する。
【0020】
さらに他の実施形態では、医薬組成物中に懸濁する前の有効医薬成分は、約2~約7のスパンを有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、有効医薬成分は、乾式粉砕、ジェット粉砕、ナノ粉砕または水もしくは他の溶媒中での湿式粉砕、続いて凍結乾燥もしくは乾燥、均質化、ボール粉砕、カッター粉砕、ローラー粉砕、乳鉢および乳棒による細砕(grinding)、ランナー粉砕(runner milling)、凍結粉砕、またはそれらの組み合わせによって目標粒径分布に粉砕される。
【0022】
いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、約3350ダルトンまたはそれ未満の数平均分子量を有する1つまたはそれを超えるPEGを含み、低分子量PEGの量は、医薬組成物の約25重量%またはそれ未満である。
【0023】
他の実施形態では、低分子量PEGの量は、医薬組成物の約15重量%またはそれ未満である。
【0024】
さらに他の実施形態では、低分子量PEGの量は、医薬組成物の約10重量%またはそれ未満である。
【0025】
いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、末端ヒドロキシル基を含む。
【0026】
他の実施形態では、低分子量PEGは、ヒドロキシル基およびメチルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1つの末端基を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、低分子PEGは、PEG250、PEG300、PEG350、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1450、およびPEG3350からなる群より選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、PEG300である。
【0029】
いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、PEG400である。
【0030】
いくつかの実施形態では、生体適合性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ブチロラクトン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、乳酸エチル、N-エチル-2-ピロリドン、グリセロールホルマール、グリコフロール、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、イソプロピリデングリセロール、乳酸、メトキシポリエチレングリコール、メトキシプロピレングリコール、酢酸メチル、メチルエチルケトン、乳酸メチル、ポリオキシル35硬化ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ベンジルアルコール、n-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、プロピレングリコール、2-ピロリドン、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリエチル、前述のいずれかのエステル、および前述のいずれかの組み合わせからなる群より選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、生体適合性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、生体適合性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、生体適合性溶媒系は、N-メチル-2-ピロリドンおよびPEG300を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、ヒドロキシ酸開始剤で形成される。
【0035】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシ酸開始剤は、GABA(ガンマアミノ酪酸)、GHB(ガンマヒドロキシ酪酸)、乳酸、グリコール酸、クエン酸、およびウンデシレン酸 グリコール酸からなる群より選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、約50:50~約90:10のラクチド対グリコリドモノマーのモル比を有する。
【0037】
他の実施形態では、ラクチド対グリコリドモノマーのモル比は、約70:30~約85:15である。
【0038】
さらに他の実施形態では、ラクチド対グリコリドモノマーのモル比は、約70:30である。
【0039】
さらに他の実施形態では、ラクチド対グリコリドモノマーのモル比は、約85:15である。
【0040】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約1kDa~約45kDaである。
【0041】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約4kDa~約36kDaである。
【0042】
他の実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約4kDa~約14kDaである。
【0043】
さらに他の実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約14kDa~約24kDaである。
【0044】
さらに他の実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約20kDa~約36kDaである。
【0045】
いくつかの実施形態では、有効医薬成分は、医薬組成物の約10重量%~約30重量%を構成する。
【0046】
他の実施形態では、有効医薬成分は、医薬組成物の約15重量%~約25重量%を構成する。
【0047】
いくつかの実施形態では、溶媒系は、医薬組成物の約40重量%~約60重量%を構成する。
【0048】
他の実施形態では、溶媒系は、医薬組成物の約45重量%~約55重量%を構成する。
【0049】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、医薬組成物の約20重量%~約40重量%を構成する。
【0050】
他の実施形態では、生分解性ポリマーは、医薬組成物の約25重量%~約35重量%を構成する。
【0051】
いくつかの実施形態では、有効医薬成分は、組成物の約20重量%を構成し、生体適合性溶媒系は、組成物の約50重量%を構成し、生分解性ポリマーは、医薬組成物の約30重量%を構成する。
【0052】
いくつかの実施形態では、有効医薬成分は、約35℃までの温度で医薬組成物中で実質的に固体形態で存在する。
【0053】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20,000cP未満の粘度を有する。
【0054】
他の実施形態では、医薬組成物は、約10,000cP未満の粘度を有する。
【0055】
さらに他の実施形態では、医薬組成物は、約5,000cP未満の粘度を有する。
【0056】
一実施形態では、医薬組成物は、約35μm~約75μmのDv,50および約2~約7のスパン、好ましくは約2~約4または約5~約7のスパンを有する約20重量%のウンデカン酸テストステロンと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および数平均分子量が約300ダルトンの末端ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコ-ル(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約4:1である、生体適合性溶媒系と、少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約4kDa~約24kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の70:30ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーであって、好ましくは、重量平均分子量は、約4kDa~約14kDaまたは約14kDa~約24kDaである、70:30ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーとを含む。
【0057】
別の実施形態では、医薬組成物は、約35μm~約75μmのDv,50および約2~約7のスパンを有する約20重量%のウンデカン酸テストステロンと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および数平均分子量が約300ダルトンの末端ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコ-ル(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約4:1である、生体適合性溶媒系と、少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約14kDa~約24kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の85:15ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーとを含む。
【0058】
さらに別の実施形態では、医薬組成物は、約30μm~約50μmのDv,50および約1~約3のスパンを有する約20重量%のシピオン酸テストステロンと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および数平均分子量が約300ダルトンの末端ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコ-ル(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約3:2である、生体適合性溶媒系と、少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約20kDa~約36kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の70:30ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーとを含む。
【0059】
本開示の別の態様は、内因性テストステロンの欠乏または欠如に関連する状態に対するテストステロン補充療法のための医薬品としての本明細書に開示される医薬組成物の使用である。
【0060】
いくつかの実施形態では、状態は、原発性性腺機能低下症および低ゴナドトロピン性性腺機能低下症からなる群より選択される。
【0061】
いくつかの実施形態では、状態は、先天性または後天性である。
【0062】
いくつかの実施形態では、状態は、女性から男性へのトランスジェンダーである。
【0063】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の医薬組成物を対象の体内に投与すると形成される固体デポーである。
【0064】
本開示の別の態様は、テストステロン補充療法のための医薬品の製造において本明細書に記載の医薬組成物を含む製品を提供することである。
【0065】
本開示の別の態様は、対象における内因性テストステロンの欠乏または欠如に関連する状態に対するテストステロン補充療法の方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法である。
【0066】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1ヶ月に1回投与される。
【0068】
他の実施形態では、医薬組成物は、約2ヶ月に1回投与される。
【0069】
他の実施形態では、医薬組成物は、約3ヶ月に1回投与される。
【0070】
さらに他の実施形態では、医薬組成物は、約4ヶ月に1回投与される。
【0071】
さらに他の実施形態では、医薬組成物は、約5ヶ月に1回投与される。
【0072】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、注射時に対象において固体in situデポーを形成する。
【0073】
いくつかの実施形態では、固体デポーは、少なくとも約30日間にわたり臨床的に有効な量の有効医薬成分を対象に放出する。
【0074】
他の実施形態では、固体デポーは、少なくとも約60日間にわたり、対象に有効医薬成分を放出する。
【0075】
他の実施形態では、固体デポーは、少なくとも約90日間にわたり、対象に有効医薬成分を放出する。
【0076】
さらに他の実施形態では、固体デポーは、少なくとも約120日間にわたり、有効医薬成分を対象に放出する。
【0077】
さらに他の実施形態では、固体デポーは、少なくとも約150日間にわたり、有効医薬成分を対象に放出する。
【0078】
いくつかの実施形態では、医薬組成物を対象に投与すると、対象の平均血清テストステロン濃度は、投与後少なくとも約1ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである。
【0079】
他の実施形態では、医薬組成物を対象に投与すると、対象の血清テストステロンレベルは、投与後少なくとも約2ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである。
【0080】
他の実施形態では、医薬組成物を対象に投与すると、対象の血清テストステロンレベルは、投与後少なくとも約3ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである。
【0081】
さらに他の実施形態では、医薬組成物を対象に投与すると、対象の血清テストステロンレベルは、投与後少なくとも約4ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである。
【0082】
さらに他の実施形態では、医薬組成物を対象に投与すると、対象の血清テストステロンレベルは、投与後少なくとも約5ヶ月間、約3ng/mL~約10ng/mLである。
【0083】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の医薬組成物を含む注射器である。
【0084】
いくつかの実施形態では、注射器は、第1のチャンバおよび第2のチャンバを備え、医薬組成物は第1のチャンバに貯蔵され、第2のチャンバは空である。
【0085】
いくつかの実施形態では、注射器は、第1のチャンバおよび第2のチャンバを備え、第1のチャンバは有効医薬成分を含み、第2のチャンバは溶媒系および生分解性ポリマーを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、第1のチャンバと第2のチャンバとを接続し、次いで第1のチャンバと第2のチャンバとの間でチャンバの内容物を押し出すように混合される。
【0087】
いくつかの実施形態では、注射器は、約16~約22のゲージを有する針を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、注射器は、約2mLまたはそれ未満の注入体積を含む。
【0089】
他の実施形態では、注射器は、約1mLまたはそれ未満の注入体積を含む。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1図1は、TU PLGコポリマー製剤(試験製剤1(◆)、2(●)、3(■)、4(◇)、5(
【化1】
)、6(
【化2】
)、および7( ))ならびに非ポリマー性対照製剤(○)の注射後のラットにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。TU PLGコポリマー製剤および非ポリマー性対照製剤の組成を表1および2に提供する。
【0091】
図2-1】図2は、TU PLGコポリマー製剤の注射後のラットにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。図2Aにおいて、試験製剤5(
【化3】
)の重量平均分子量は9kDaであり、試験製剤7( )の重量平均分子量は19kDaである。図2Bにおいて、試験製剤2(●)の重量平均分子量は9kDaであり、試験製剤3(■)の重量平均分子量は19kDaである。TU PLGコポリマー製剤の組成を表1に提供する。
図2-2】同上。
【0092】
図3-1】図3は、TU PLGコポリマー製剤の注射後のラットにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。図3Aにおいて、試験製剤1(◆)は、4のDv,50および2.3のスパンを有するTU粒子を含み、試験製剤5(
【化4】
)は、53のDv,50および6.2のスパンを有するTU粒子を含み、試験製剤2(灰色の●)は、67のDv,50および6のスパンを有するTU粒子を含む。図3Bにおいて、試験製剤4(灰色の◇)は、18のDv,50および2.7のスパンを有するTU粒子を含み、試験製剤7( )は、53のDv,50および6.2のスパンを有するTU粒子を含み、試験製剤3(■)は、67のDv,50および6のスパンを有するTU粒子を含む。TU PLGコポリマー製剤の組成を表1に提供する。
図3-2】同上。
【0093】
図4図4は、TU PLGコポリマー製剤の注射後のラットにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。試験製剤5(
【化5】
)は、70:30のL:Gモノマーモル比を有し、試験製剤6(
【化6】
)は、85:15のL:Gモノマーモル比を有する。TU PLGコポリマー製剤の組成を表1に提供する。
【0094】
図5図5は、低用量100mg/kg(0.18mL)(黒色の- -、下側の線)、中用量300mg/kg(0.53mL)(黒色の点鎖線・・- ・・-、中央の線)および高用量500mg/kg(0.88mL)(灰色の点鎖線・-・■・-・、上側の線)で送達されたTU PLGコポリマー製剤である試験製剤7の注射後のラットにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。試験製剤7の組成を表1に提供する。
【0095】
図6図6は、TU PLGコポリマー製剤の注射後のラットにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。試験製剤3(■)は、67μmのDv,50、412μmのDv,90、および6のスパンを有するTU粒子を含み、試験製剤7( )は、53μmのDv,50、340μmのDv,90、および6.2のスパンを有するTU粒子を含み、試験製剤8(◆)は、51μmのDv,50、146μmのDv,90、および2.6のスパンを有するTU粒子を含む。TU PLGコポリマー製剤の組成を表1および5に提供する。
【0096】
図7図7は、TC PLGコポリマー製剤(試験製剤9(破線--★--)、10((--☆--)、および11(灰色の点鎖線・・-・★・-・・)の注射後のラットにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。TC PLGコポリマー製剤の組成を表7に提供する。
【0097】
図8図8は、TC PLG コポリマー製剤(試験製剤9(★);製剤組成については表7を参照されたい)の注射後のラットにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。比較のために、TU PLGコポリマー製剤(試験製剤3(■)および4(◇);製剤組成については表1を参照されたい)の放出プロファイルも示す。
【0098】
図9図9は、TU PLGコポリマー製剤(試験製剤12(黒色の実線-★-、上側の線)および13(灰色の点鎖線・・-・★・-・・、下側の線))の注射後のミニブタにおける平均テストステロン濃度(ng/mL)を比較するin vivo実験の結果を示す。TU PLGコポリマー製剤の組成を表9に提供する。
【0099】
図10図10は、試験製剤14の低用量20mg/kg(1×1mL)(黒色の-▲-、下側の線)、中用量90mg/kg(3×1.5mL)(灰色の-△-、中央の線)および高用量160mg/kg(4×2mL)(破線--△--、上側の線)を投与されたミニブタのTU in vivo放出プロファイルを示す。TU PLGコポリマー試験製剤14の組成を表11に提供する。
【0100】
図11図11は、累積TU放出として示される、TU PLGコポリマー試験製剤15(・・Δ・・)、16(--+--)、および17(-X-)を用いて達成されたウンデカン酸テストステロン平均放出を比較するin vitro実験の結果を示す。TU PLGコポリマー製剤の組成を表13に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0101】
詳細な説明
長期間にわたってテストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステル(またはその適切な類似体)を放出するために注射器または針を介して対象または患者の体内に投与することができる医薬組成物が本明細書に記載される。本明細書に記載の組成物は、治療ウインドウ(therapeuticwindow)内の一貫したレベルのテストステロンまたはそのエステルを長期間にわたって患者に送達することができる。特に、本開示は、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)のコポリマーセグメントを含む生分解性ポリマー、生体適合性溶媒および少なくとも1つの低分子量ポリエチレングリコール(PEG)を含む生体適合性溶媒系、ならびにその中に懸濁されたテストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステルを含む延長放出医薬組成物に関する。医薬組成物は、生分解性(または生体侵食性(bioerodible))のin situ形成された固体インプラントまたはデポーを対象に提供するために使用され得る。組成物は流動性懸濁物として組織に投与され、溶媒の散逸時に固体デポーがin situで形成される。デポーを使用して、約30日間~約180日間にわたって、または約60日間~約150日間にわたって、または約60日間~約120日間にわたって、または約60日間~約90日間にわたって、または約90日間にわたって、テストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステルを制御放出または延長放出の様式で対象に送達する。本開示の医薬組成物は、以下の特定の、新規かつ独創的な組み合わせの結果である:(1)ポリマーの種類、分子量範囲、およびモノマー比範囲;(2)溶媒の種類および範囲;ならびに/または(3)長期処置期間にわたって予測可能なテストステロンレベルを送達し、患者において所望の目標血清テストステロン濃度をもたらす製剤を一緒に提供する薬物形態および原薬粒径範囲。
【0102】
本明細書に開示される医薬組成物は、テストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステル(またはその適切な類似体であって、これはテストステロンまたはそのエステルの塩もしくは誘導体を含み得る)を有効医薬成分(API)として含み、これは本明細書で一般に「テストステロンAPI」と呼ばれ得る。本開示での使用に適したテストステロンAPIは、好ましくは、本開示の製剤中の安定な懸濁物中にある(すなわち、本明細書に記載の生分解性ポリマーおよび溶媒系と組み合わせた場合)。実施形態では、好ましいテストステロンAPIは、テストステロンまたはテストステロンのエステルから選択される。本開示での使用に適したテストステロンのエステルの例としては、ウンデシル酸テストステロンとしても知られるウンデカン酸テストステロン(TU)、シピオン酸テストステロン(TC)、プロピオン酸テストステロン、およびブシクル酸テストステロン(testosterone busciclate)が挙げられる。ウンデカン酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、およびブシクル酸テストステロンは、ホルモンであるテストステロンのプロドラッグである。それらは、主に雄性性腺機能低下症の処置のためのアンドロゲン補充療法において使用されるテストステロンのエステルである。本開示の製剤内に提供されるテストステロンAPIはまた、男性避妊薬として、またはトランスジェンダー(女性から男性)ホルモン療法において使用され得る。テストステロンのプロドラッグ、例えば、テストステロンエステルの使用は、特定の適用において利点または利益を提供し得る。例えば、それは、製剤の安定性(例えば、保存中もしくは照射中、またはin vivo送達後)を改善し、薬物の活性形態の放出を遅延させ、製剤中の薬物の溶解度に影響を及ぼすかもしくは改変し、および/または薬物の作用持続時間を延長するかもしくは別様に改変することができる。
【0103】
制御放出組成物(もしくは製剤)または延長放出組成物(もしくは製剤)とも呼ばれ得る本開示の医薬組成物は、対象に生分解性または生体侵食性のin situ形成デポーを提供するために使用される。本明細書で使用される生分解性ポリマーまたはコポリマーは、水および体液に実質的に不溶性である。組成物は、投与前および投与の時点では、以下から構成される流動性組成物である:(1)生分解性ポリマーまたはコポリマー、特にポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)のコポリマーセグメントを含みかつ少なくとも1つのカルボン酸末端基を有する生分解性熱可塑性ポリマーと;(2)生体適合性溶媒および少なくとも1つの低分子量ポリエチレングリコール(PEG)の共溶媒を含む適切な溶媒系との組み合わせ;ならびに(3)その中に懸濁された、好ましくはテストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステルであるテストステロンAPI。流動性の延長放出組成物は、液体またはゲルとして組織に投与され、溶媒の散逸時に固体デポーがin situで形成される。
【0104】
本明細書で使用される場合、「流動性」とは、組成物が媒体(例えば、注射器)を介して対象の体内に注射される能力を指す。例えば、組成物は、注射器を使用して、対象の皮膚の下(すなわち、皮下)または筋肉(すなわち、筋肉内)に注射することができる。対象に注射される組成物の能力は、典型的には、組成物の粘度、および使用されるデバイス(すなわち、デバイスの種類、手動か自動か、針ゲージなど)に依存する。したがって、組成物は、組成物が媒体(例えば、注射器)を通って対象の体内に押し込まれ得るように、注射前に適切な粘度を有するべきであるが、それでもなお組成物は、APIが注射前に組成物中に懸濁したままであるように十分に粘性であるべきである。典型的には、組成物の粘度は、約500cP~約20,000cP、または約500cP~約10,000cP、または約500cP~約5,000cP、または約500cP~約3,000cP、または約500cP~約1,500cP、または約1500cP~約3000cP、または約2000cP~約2500cPであり、またはそれは約20,000cP未満、または約10,000cP未満、または約5,000cP未満、または約3000cP未満であってもよい。組成物の粘度は、組成物が、例えば16~24ゲージの針、または18~22ゲージの針、または18~20ゲージの針を有する注射器を介した手動注射によって投与され得るようなものであり得るか、または自動注射器を使用した注射によって投与され得る。
【0105】
上述のように、延長放出組成物を対象に注射すると、溶媒が散逸し、in-situ固体デポーが形成される。ポリマーデポーは、加水分解によって、残りのポリマー断片がデポーから拡散するのに十分小さくなるまで分解する。分解中、テストステロンAPIは、長期間にわたってデポーから放出される。そのように形成されたデポーは、約30日間~約180日間の投与期間にわたって、または約60日間~約150日間、または約60日間~約120日間、または約60日間~約90日間、または約30日間、約60日間、約90日間、約120日間、約150日間、または約180日間(またはそれよりも長期)の期間にわたって、制御放出または延長放出の様式で対象に治療量のテストステロンAPIを一貫して送達するために最適に使用される。延長放出組成物は、投与期間中の平均で、健康な男性における血清テストステロン濃度を反映する目標血清テストステロン濃度を達成するテストステロン補充を提供する(例えば、性腺機能正常の範囲)。具体的には、一実施形態では、例示的な例として、患者の少なくとも75%は、10.4nmol/L~34.7nmol/Lの血漿中テストステロン平均濃度(Cavg)(すなわち、3ng/mL~10ng/mL)を有し、Cavgが性腺機能正常の範囲内にある対象の百分率に対する95%信頼区間の下限は65%以上であり、投与期間中のいかなる時点でも血漿中テストステロン最大濃度(Cmax)は25ng/mLを超えず、患者の5%またはそれ未満は、18ng/mL~25ng/mLのCmaxを有し、患者の85%超は、15ng/mL未満のCmaxを有する(例えば、Shehzad Basaria,「Male hypogonadism,」383 Lancet 1250(2014);Abraham Morgentalerら、「Long acting testosterone undecanoate therapy in men with hypogonadism:results of a pharmacokinetic clinical study」180 J.Urology 2307(2008)を参照されたい)。
【0106】
本明細書に開示される組成物の有益な特徴は、治療有効量のテストステロンの対象への延長放出を提供する組成物の能力である。したがって、組成物中に存在するテストステロンAPIの量は、所望の治療効果を達成するのに十分であるべきであり、例えば、平均して、性腺機能正常の範囲(例えば、治療上有効な場合、血漿中の3ng/mL~10ng/mLのテストステロン、またはより広い範囲もしくは重複する範囲)において、アンドロゲン欠乏症の症状を処置または軽減するために;男性性腺機能亢進症の症状を処置または軽減するために;トランスジェンダーの男性または性別適合のための補助療法として;または受胎調節として、テストステロン補充を提供するのに十分であるべきである。さらに、組成物中に存在するテストステロンAPIの量は、本明細書に開示される時間枠に従って長期処置に適しているべきである。例えば、単一投与製剤は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、または少なくとも6ヶ月間にわたり患者の処置に十分な量のテストステロンAPIを含み得る。
【0107】
生分解性ポリマー
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、主に、必ずしも排他的ではないが、直鎖または分岐鎖であり得る鎖中で共有結合した繰り返し単位から形成される高分子有機化合物として定義され得る。「繰り返し単位」は、高分子構造内に2回以上見出すことができる高分子の構造部分である。典型的には、ポリマーは、共有化学結合によって一緒に結合して直鎖骨格を形成する多数の数種類の繰り返し単位から構成され、そこから置換基が分岐様式で依存してもしなくてもよい。繰り返し単位は、互いに同一であり得るが、必ずしもそうである必要はない。したがって、Aが繰り返し単位であり、ポリマーである-A-A-A-A-型の構造は、ホモポリマーとして知られている。一方、AおよびBが繰り返し単位である-A-B-A-B-型または-A-A-A-B-A-A-B-型の構造もポリマーであり、コポリマーと呼ばれることがある。AおよびBは繰り返し単位であるが、Cは繰り返し単位ではない(すなわち、Cは、高分子構造内に1回見出される)、-A-A-A-A-C-A-A型またはA-B-A-C-A-B-A型の構造もまた、本明細書の定義の下でのポリマーである。Cの両側に繰り返し単位がある場合、Cは「コア」または「コア単位」と呼ばれる。約10個までの繰り返し単位で形成された短いポリマーは、「オリゴマー」と呼ばれる。理論上、ポリマー中の繰り返し単位の数に上限はないが、実際には、単一のポリマー分子中の繰り返し単位の数の上限は約100万であり得る。しかしながら、本開示のポリマー中の繰り返し単位の数は、典型的には数百またはそれ未満である。いくつかの実施形態では、「ポリマー」という用語は、「生分解性ポリマー」という用語と互換的に使用され得る。
【0108】
「コポリマー」という用語は、同一でない繰り返し単位を含む様々なポリマーを指すために使用され得る。「コポリマー」は、2つ以上の種類の繰り返し単位によって定義されるような配列において規則的またはランダムであり得る。いくつかの種類のコポリマーは、ランダムコポリマー、グラフトコポリマーおよびブロックコポリマーである。
【0109】
本明細書で使用される「ポリマーセグメント」または「コポリマーセグメント」という用語は、より大きな分子の一部または部分を指すことができ、そのセグメントは、より大きな分子を構成するために他の一部または部分にそれぞれ結合したポリマーまたはコポリマーのセクションである。ポリマーセグメントまたはコポリマーセグメントがセグメントの一方の末端でより大きな分子に結合している場合、結合の末端は「近位端」であり、他方の自由端は「遠位端」である。
【0110】
本明細書で使用される場合、「生分解性」という用語は、任意の特定の分解機構またはプロセスに関係なく、生理学的条件下で1つまたはそれを超える水溶性材料に変換される任意の水不溶性材料を指す。「生体侵食性」という用語は、生理学的条件下で、化学構造の変化の有無にかかわらず、1つまたはそれを超える水溶性材料に変換される任意の水不溶性材料を指す。
【0111】
本開示の組成物に使用される生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)ポリマー、好ましくはポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーである。PLGポリマーは、典型的には、ラクチドモノマーおよびグリコリドモノマーからの開環重合によって形成される。「ポリ(ラクチド-グリコリド)」、「ポリ(ラクチド-co-グリコリド)」、または「PLG」という用語は、ポリマー鎖を構成する乳酸の二量体単位およびグリコール酸の二量体単位から形成されるコポリマーまたはコポリマーセグメントを指すために本明細書で互換的に使用され得る。PLGポリマーは、典型的には、環状二量体ラクチドおよびグリコリドの重合によって形成されるが、二量体単位が重合プロセスの所与のステップで組み込まれる任意のプロセスによって理論的に形成することもできる。本開示のPLGポリマーは固体ポリマーであり、体内で固体デポーを形成し、これはポリマーの溶融温度が体温(例えば、約36.5℃~約37.5℃(約97.7°F~約99.5°F))を超えることを意味する。
【0112】
本明細書で使用される場合、「ラクチド」という用語、本明細書では、化学化合物自体、例えば「ラクチド試薬」または「ラクチド反応物」を指す場合、乳酸の二量体環状エステルを意味する:
【化7】
ラクチドは、(メチル基を有する)キラル炭素原子において任意の立体配置であり得る。それはまた、キラル炭素原子において異なる立体配置を有する分子の混合物であってもよい。したがって、ラクチドは、DD-、DL-、LD-、LL-ラクチド、またはそれらの任意の混合物もしくは組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、「ラクチド」単位を含有する「ポリ(ラクチド-co-グリコリド)」などのポリマーを指す場合、「ラクチド」または「ラクチド単位」という用語は、他のそのような単位または他の種類の繰り返し単位と共にポリマー鎖にさらに組み込まれ得るエステル結合によって結合された2つの乳酸単位からなる開環種を意味する。ラクチド単位の一方の末端は、エステル結合、もしくはアミド結合を介して、またはカルボキシル基が形成し得る任意の他の種類の結合を介して隣接原子に結合され得るカルボキシル基を含む。ラクチド単位の他方の末端は、エステル結合、エーテル結合を介して、またはヒドロキシル基が形成し得る任意の他の種類の結合を介して隣接原子に結合され得るヒドロキシル基を含む。したがって、ポリラクチドポリマー中の「ラクチド」は、波線が隣接する基との結合点を示すという理解の下で、一対の乳酸分子から形成されていると構造的に見ることができるポリマーの繰り返し単位を指す:
【化8】
キラル炭素原子における立体配置は、環状二量体について上述したように、あらゆる可能な立体配置およびそれらの混合物を含む。ポリラクチドは、右旋性もしくは左旋性についてDもしくはLによって、またはラセミ混合物についてDL、例えばポリ(D,L-ラクチド)もしくはポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)によって表記される2つの立体形態で存在する。
【0113】
「グリコリド」という用語は、本明細書では、「グリコリド試薬」または「グリコリド反応物」などの化学化合物自体を指す場合、グリコール酸の二量体環状エステルを意味する:
【化9】
ポリマー中の「グリコリド」単位を指す場合、この用語は、繰り返し単位である、以下に示されるグリコール酸の二量体を指す:
【化10】
ラクチド単位と同様に、いくつかの実施形態では、グリコリド単位の一方の末端は、エステル結合、もしくはアミド結合を介して、またはカルボキシル基が形成し得る任意の他の種類の結合を介して隣接原子に結合されたカルボキシル基を含み得、グリコリド単位の他方の末端は、エステル結合、エーテル結合を介して、またはヒドロキシル基が形成し得る任意の他の種類の結合を介して隣接原子に結合され得るヒドロキシル基を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、PLGポリマーは、少なくとも1つのカルボン酸末端基を有する。少なくとも1つのカルボン酸末端基は保護されておらず、カルボン酸に対する保護基として機能するエステルまたは任意の他の官能基の形態ではない。典型的には、酸末端基を有するPLGポリマーは、水または式Nu-R-COOH(式中、Nuはアミンまたはヒドロキシルなどの求核性部分であり、Rは任意の有機部分であり、-COOHはカルボン酸官能基である)のカルボン酸化合物によって開始される標準的な鎖成長重合技術によって、ラクチドおよび/またはグリコリドモノマーの開環重合によって作製される。分子の求核性部分は、触媒および熱の存在下で開環重合を開始するように作用し、一方の末端にカルボン酸官能基を有するポリマーを生成する。適切な開始剤であるカルボン酸は、アルキル鎖、求核剤を含有し、ポリマーを作製するために使用される溶媒に可溶性であるものである。適切な開始剤の例としては、GABA(γ-アミノ酪酸)、GHB(γ-ヒドロキシ酪酸)、乳酸、グリコール酸、クエン酸、およびウンデシレン酸が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、重合後修飾によってポリマー鎖の末端にカルボン酸末端基を生成してもよい。ポリマー上のカルボン酸末端基の存在は、エステルおよび/またはヒドロキシ基などの他の末端基を有するPLGポリマーと比較して、ポリマーの親水性を増加させ、ポリマーの分解およびAPIのin situ放出に影響を及ぼし得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「触媒」という用語は、重合を開始するおよび/または重合速度を増加させることができる任意の適切な物質を指し得る。いくつかの実施形態では、触媒は、開環重合に適した任意の触媒であり得る。例えば、重合触媒として、有機酸のスズ塩が使用され得る。スズ塩は、第一スズ(二価)または第二スズ(四価)のいずれの形態であってもよい。いくつかの例では、触媒はオクタン酸第一スズであり得る。触媒は、典型的には約0.01~1.0%の範囲の任意の適切な量で重合反応混合物中に存在してもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、生分解性コポリマーは、任意の2つの整数X対Y(すなわち、X:Y)のラクチド対グリコリド(L:G)モノマーのモル比を有し、Xは少なくとも約50かつ約90以下であり、XおよびYの合計は100である。特に明記しない限り、本明細書に開示されるコポリマー中のモノマー間のすべての比はモル比である。言い換えれば、いくつかの実施形態では、PLGコポリマーは、約50:50~約90:10のラクチド対グリコリドモノマーのモル比を有する。いくつかの実施形態では、PLGコポリマーは、約70:30~約85:15のラクチド対グリコリドモノマーのモル比を有する。いくつかの実施形態では、PLGコポリマーは、約70:30、または約75:25、または約80:20、または約85:15のラクチド対グリコリドモノマー単位のモル比を有する。
【0117】
実施形態では、PLGコポリマーは、必要に応じて、低分子量オリゴマーおよび/または未反応モノマーおよび/または触媒を除去するために延長放出製剤で使用する前に精製されてもよい。ポリマーを精製するいくつかの方法が当技術分野で知られており、とりわけ米国特許第4,810,775号、同第7,019,106号、および同第9,187,593号に記載されている方法が挙げられる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「分子量」および「平均分子量」という用語は、特に明記しない限り、ポリスチレン標準および溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を利用する従来のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器(Agilent G1362A示差屈折率検出器を備えたAgilent 1260 Infinity Quaternary LCなど)によって測定される重量平均分子量を意味する。さらに、本明細書で報告される「分子量」および「平均分子量」および「重量平均分子量」は、特に明記しない限り、組成物が電子ビーム(eビーム)照射による滅菌を受けた後の延長放出組成物内のポリマーまたはコポリマーの分子量を指す。電子ビーム滅菌のプロセスは、ポリマー結合の破壊によりポリマーの分子量を低下させ、より低いMWを有するより短いポリマー鎖をもたらすことが周知である。電子ビーム照射によるMWの減少量は特徴付けられており、製造中に考慮され、例えば、ポリマーの初期サイズに応じて約0.1~25%であり得る。本明細書で報告される「分子量」および「平均分子量」および「重量平均分子量」の範囲はまた、ポリマーの放出仕様の分子量範囲を指し得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約1kDa~約45kDa、または約4kDa~約40kDa、または約4kDa~約36kDa、または約4kDa~約30kDa、または約4kDa~約25kDa、または約4kDa~約24kDa、または約4kDa~約23kDa、または約4kDa~約22kDa、または約4kDa~約21kDa、または約4kDa~約20kDa、または約4kDa~約19kDa、または約4kDa~約18kDa、または約4kDa~約17kDa、または約4kDa~約16kDa、または約4kDa~約15kDa、または約4kDa~約14kDa、または約4kDa~約13kDa、または約4kDa~約12kDa、または約4kDa~約11kDa、または約4kDa~約10kDa、あるいは1kDa~約45kDaの任意の整数~任意の他の整数であり得る。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、14kDa~約40kDa、または約14kDa~約36kDa、または約14kDa~約30kDa、または約14kDa~約25kDa、または約14kDa~約24kDa、または約14kDa~約23kDa、または約14kDa~約22kDa、または約14kDa~約21kDa、または約14kDa~約20kDaであり得る。いくつかの好ましい実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約4kDa~約14kDaであり得る。さらに他の好ましい実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約14kDa~約24kDaであり得る。一方、さらに他の好ましい実施形態では、生分解性ポリマーの重量平均分子量は、約20kDa~約36kDaであり得る。組成物のいくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、重量平均分子量が約4kDa、または約5kDa、または約6kDa、または約7kDa、または約8kDa、または約9kDa、または約10kDa、または約11kDa、または約12kDa、または約13kDa、または約14kDa、または約15kDa、または約16kDa、または約17kDa、または約18kDa、または約19kDa、または約20kDa、または約21kDa、または約22kDa、または約23kDa、または約24kDa、または約25kDa、または約26kDa、または約27kDa、または約28kDa、または約29kDa、または約30kDa、または約31kDa、または約32kDa、または約33kDa、または約34kDa、または約35kDa、または約36kDaの重量平均分子量を有する。好ましい実施形態では、生分解性ポリマーは、約9kDaの重量平均分子量を有する。一方、他の好ましい実施形態では、生分解性ポリマーは、約19kDaの重量平均分子量を有する。一方、さらに他の好ましい実施形態では、生分解性ポリマーは、約28kDaの重量平均分子量を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、約70:30~約85:15のラクチド対グリコリドモノマーのモル比を含むポリ(ラクチド-co-グリコリド)コポリマーであり得、ここで、ポリマーは、少なくとも1つのカルボン酸末端基および約4kDa~約36kDaの重量平均分子量を有する。いくつかの好ましい実施形態では、生分解性ポリマーは、約70:30または約85:15のラクチド対グリコリドモノマーのモル比を含むポリ(ラクチド-co-グリコリド)コポリマーであり得、ここで、ポリマーは、少なくとも1つのカルボン酸末端基および約4kDa~約14kDaの重量平均分子量、またはより好ましくは約9kDaの重量平均分子量を有する。他の好ましい実施形態では、生分解性ポリマーは、約70:30または約85:15のラクチド対グリコリドモノマーのモル比を含むポリ(ラクチド-co-グリコリド)コポリマーであり得、ここで、ポリマーは、少なくとも1つのカルボン酸末端基および約14kDa~約24kDa、またはより好ましくは約19kDaの重量平均分子量を有する。さらに他の好ましい実施形態では、生分解性ポリマーは、約70:30または約85:15のラクチド対グリコリドモノマーのモル比を含むポリ(ラクチド-co-グリコリド)コポリマーであり得、ここで、ポリマーは、少なくとも1つのカルボン酸末端基および約20kDa~約36kDaの重量平均分子量、またはより好ましくは約28kDaの重量平均分子量を有する。
【0121】
生分解性ポリマーは、組成物の約10重量%~約50重量%、または好ましくは組成物の約20重量%~約40重量%、またはより好ましくは組成物の約25重量%~約35重量%、またはさらにより好ましくは組成物の約30重量%を構成し得る。あるいは、生分解性ポリマーは、約10重量%~約50重量%の任意の整数の組成物の重量百分率を構成してもよく、または約10重量%~約50重量%の任意の整数の組成物の重量百分率~任意の他の整数の組成物の重量百分率の範囲を構成してもよい。
【0122】
生体適合性溶媒系
本開示の延長放出組成物は、3つの成分が組み合わされると、生分解性ポリマーを溶解し、テストステロンAPIを含む懸濁物を形成することができ、また体内で散逸してin situで固体デポーの形成を可能にする生体適合性溶媒系を含む。溶媒系は、少なくとも1つの生体適合性溶媒と、共溶媒としての少なくとも1つの低分子量ポリエチレングリコール(PEG)とを含む。溶媒系は、その投与時に宿主周囲組織に部分的または完全に散逸または拡散する。体液への投与時の溶媒系の拡散または散逸は、体液内の両方の成分の凝固または沈殿を介して、固体デポーとしてその中に懸濁されたポリマーおよびテストステロンAPIの固化を可能にする。溶媒系における溶媒および共溶媒の水不溶性の程度は、ポリマー固化の速度および範囲を制御するための体液への所望の拡散速度に影響を与える。さらに、溶媒/共溶媒は、流動可能な延長放出組成物の粘度を制御し、延長放出組成物の調製および対象への投与に役立つ。本開示の製剤は、本明細書に記載の所望の製剤特性および延長放出プロファイルを達成するのを助ける本発明の溶媒系を提供する。
【0123】
本明細書で使用される場合、「溶媒」という用語は、固体もしくは液体溶質を溶解する液体、または固体粒子が全体に分散している懸濁物の液体外部相を指す。「共溶媒」という用語は、溶媒中での溶質の溶解度を改変するために溶媒に添加される物質を指す。本明細書で使用される「溶媒系」という用語は、本明細書に記載の少なくとも1つの生体適合性溶媒と、共溶媒としての少なくとも1つの低分子量PEGとの組み合わせを指す。本明細書で使用される場合、「生体適合性溶媒」という用語は、人体内への注射に安全な任意の溶媒として定義され得る。「生体適合性溶媒」という用語は、「溶媒」という用語と互換的に使用され得る。生体適合性溶媒は、溶媒および/または共溶媒の混合物であってもよく、本質的に均一または不均一であってもよい。溶媒は、有機溶媒(炭素系)であってもよく、さらに、体液中で一般に非毒性である極性非プロトン溶媒であってもよい。溶媒は、部分的~完全に水不溶性であってもよい。
【0124】
本開示の実施形態での使用に適した生体適合性溶媒および共溶媒は、アミド、酸、アルコール、一塩基酸のエステル、エーテルアルコール、スルホキシド、ラクトン、ポリヒドロキシアルコール、ポリヒドロキシアルコールのエステル、ケトン、およびエーテルからなる群より選択される1つもしくはそれを超える溶媒を含むか、または少なくとも部分的にそれらで構成され得る。本開示の適切な溶媒および共溶媒としては、非限定的な例として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ブチロラクトン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、乳酸エチル、N-エチル-2-ピロリドン、グリセロールホルマール、グリコフロール、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、イソプロピリデングリセロール、乳酸、メトキシポリエチレングリコール、メトキシプロピレングリコール、酢酸メチル、メチルエチルケトン、乳酸メチル、ポリオキシル35硬化ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ベンジルアルコール、n-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、プロピレングリコール、2-ピロリドン、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリエチル、前述のいずれかのエステル、および前述のいずれかの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、生体適合性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドンおよびジメチルスルホキシドの少なくとも1つを含む。好ましい実施形態では、生体適合性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドンを含む。
【0125】
溶媒が溶媒および/または共溶媒の組み合わせまたは混合物である場合、混合物中の溶媒および/または共溶媒のうちの任意の2つは、約1:99~約99:1の任意の重量比で存在してもよい。溶媒が2つもしくはそれを超える溶媒および/または共溶媒を含む場合、それらのうちの任意の2つは、約99:1~約1:99、または約90:10~約10:90、または約80:20~約20:80、または約30:70~約70:30、または約40:60~約60:40、または約50:50の任意の重量比で、あるいは任意の重量比X:Yで存在してもよく、ここで、XおよびYの各々は約1~約99の整数であり、XおよびYの合計は100である。
【0126】
上述のように、本開示で使用される溶媒系は、少なくとも1つの生体適合性溶媒に加えて、1つまたはそれを超える低分子量ポリエチレングリコール(PEG)の形態の共溶媒を含む。本明細書の溶媒系における共溶媒としてのPEGの使用は、テストステロンAPIが製剤中に懸濁される程度を改善する。低分子量PEGは、液体担体として作用し、ポリマーを溶媒和する生体適合性溶媒である。それは一般に、製剤中のTUなどのテストステロンエステルの溶解度を制限するので、低分子量PEGの添加は製剤の熱安定性を改善し、より制御された製造プロセスおよび最終生成物をもたらす。
【0127】
典型的には、本開示で利用される低分子量PEGは、約3350ダルトンまたはそれ未満(例えば、PEG3350またはそれ未満、ここで、PEGは、単一のエチレングリコール(EG)モノマーを表す44g/molの整数値で数平均分子量が減少する)の数平均分子量を有する。当技術分野で知られているように、特定の数平均分子量のPEG共溶媒への言及は、一般に、単分散ではない材料を指し、すなわち、一緒になって目標分子量の平均分子量を提供する、材料内のPEG部分の分布が存在する。例えば、PEG300は、300Da(300Daは目標分子量である)の数平均分子量をもたらす分子量分布を有するPEG部分の混合物である。したがって、PEG300は、300Daの数平均分子量を有するPEGを意味し、PEG400は、400Daの数平均分子量を有するPEGを意味するなど。
【0128】
当技術分野で知られているように、PEGは直鎖状または分岐鎖状であり得る。PEGは、典型的には、末端ヒドロキシル(-OH)基を有するポリ(エチレングリコール)を指すが、ヒドロキシル基以外の1つまたはそれを超える異なる末端基を有するPEGの代替形態または誘導体形態が存在する。例えば、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルは、一方の末端ヒドロキシル(-OH)および一方の末端メチルエーテル(-CH)基を有し、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテルは、2つの末端メチルエーテル(-CH)基を有する。本明細書で使用される場合、「PEG」は、エチレングリコール(EG)モノマーを繰り返し有するポリマーを指す。末端基は、ヒドロキシル(-OH)基または別の化学的部分であり得る。適切なPEG末端基としては、ヒドロキシル、メチルエーテル、メチルエステル、アクリレート、メタクリレート、マレイミド、ビニルスルホネート、ノルボルネン、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、アルデヒド、無水物、エポキシド、イソシアネート、スルホニルクロリド、フルオロベンゼン、イミドエステル、カルボジイミド、アシルアジド、カーボネート、フルオロフェニルエステル、チオール、アミン、カルボキシル、およびカルボニルを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、ヒドロキシル基およびメチルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1つの末端基を含む。好ましい実施形態では、低分子量PEGは、末端ヒドロキシル基を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、単一の低分子量PEGが溶媒系に含まれ得る。他の実施形態では、2つの低分子量PEGが溶媒系に含まれ得る。他の実施形態では、3つまたはそれを超える低分子量PEGが溶媒系に含まれ得る。本開示において有用な適切な低分子量PEGとしては、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG1000、PEG1450、およびPEG3350を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのPEGは、末端ヒドロキシル基を有する。他の適切な低分子量PEGとしては、例えば、PEG250およびPEG350を挙げることができる。PEG250は、末端メチルエーテル基を有していてもよく、PEG350は、末端メチルエーテル基および末端ヒドロキシル基を有していてもよい。いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、約1000ダルトンまたはそれ未満(すなわち、PEG1000またはそれ未満)の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、約600ダルトンまたはそれ未満(すなわち、PEG600またはそれ未満)の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、PEG300またはPEG400である。
【0130】
いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、約25重量%もしくはそれ未満、または約20重量%もしくはそれ未満、または約15重量%もしくはそれ未満、または約10重量%もしくはそれ未満の量で存在してもよい。いくつかの実施形態では、低分子量PEGは、製剤の約1重量%~約25重量%、または約1重量%~約20重量%、または約1重量%~約15重量%、または約1重量%~約10重量%、または約1重量%~約9重量%、または約1重量%~約8重量%、または約1重量%~約7重量%、または約1重量%~約6重量%、または約1重量%~約5重量%、または約1重量%~約4重量%、または約1重量%~約3重量%、または約1重量%~約2重量%、または約5重量%~約15重量%、または約6重量%~約14重量%、または約7重量%~約13重量%の量、または約8重量%~約12重量%、または約9重量%~約11重量%、または約10重量%、あるいは約1重量%~約25重量%(両端の数を含む)の製剤の任意の整数重量百分率として存在してもよい。典型的には、一般的な非限定的な観察として、より小さい低分子量PEG(例えば、PEG250、PEG300、PEG350、PEG400およびPEG600)が溶媒系に含まれる場合、低分子量PEGの量は、より大きい低分子量PEG(例えば、PEG3350およびPEG1450)が溶媒系に含まれる場合よりも多くなるだろう。製剤中に存在する低分子量PEGの量は、製剤の熱安定性を改善するような量である。しかしながら、本明細書に開示される製剤はまた、室温および冷蔵温度(すなわち、0~8℃)で流動性(すなわち、注射に適している)のままである。
【0131】
本開示の実施形態では、溶媒系は、組成物の約30重量%~約70重量%、または組成物の約40重量%~約60重量%、または組成物の約45重量%~約55重量%、または組成物の約50重量%の任意の量で存在してもよく、あるいは溶媒系は、約40重量%~約70重量%の組成物の任意の整数重量百分率~組成物の任意の他の整数重量百分率であり得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、溶媒系は、NMPと低分子量PEG、好ましくはPEG300またはPEG400との混合物であってもよく、NMP対低分子量PEGの重量比は、約1:1~約5:1(両端を含む)、または約1:1、または約1.5:1、または約2:1、または約2.5:1、または約3:1、または約3.5:1、または約4:1、または約4.5:1、または約5:1である。他の実施形態では、溶媒系は、DMSOと低分子量PEG、好ましくはPEG300またはPEG400との混合物であってもよく、DMSO対低分子量PEGの重量比は、約1:1~約5:1(両端を含む)、または約1:1、または約1.5:1、または約2:1、または約2.5:1、または約3:1、または約3.5:1、または約4:1、または約4.5:1、または約5:1である。
【0133】
有効医薬成分
本明細書に開示される医薬組成物は、テストステロンまたはその薬学的に許容され得るエステル(またはその適切な類似体であって、これはテストステロンまたはそのエステルの塩もしくは誘導体を含み得る)を有効医薬成分(API)として含み、これは本明細書で一般に「テストステロンAPI」と呼ばれ得る。本開示によって提供される実施形態での使用に適したテストステロンAPIは、好ましくは、本開示によって提供される製剤中の安定な懸濁物中にある(すなわち、本明細書に記載の生分解性ポリマーおよび溶媒系と組み合わせた場合)。実施形態では、好ましいテストステロンAPIは、テストステロンまたはテストステロンのエステルから選択される。本開示によって提供される実施形態での使用に適したテストステロンのエステルとしては、ウンデシル酸テストステロンとしても知られるウンデカン酸テストステロン(TU)、シピオン酸テストステロン(TC)、プロピオン酸テストステロン、およびブシクル酸テストステロンが挙げられる。テストステロンAPIは、体温(例えば、約36.5℃~約37.5℃(約97.7°F~約99.5°F))までの温度で生分解性ポリマーおよび溶媒組成物中で実質的に固体形態(懸濁状態)である。いくつかの実施形態では、テストステロンAPIは、約35℃までの温度、またはさらには約40℃までの温度で、延長放出製剤中で実質的に固体形態である。テストステロンAPIは、周囲温度および体温で、いくつかの実施形態では、例えば特定の電子ビーム照射プロセスまたは長期間にわたって延長放出製剤を高温に曝露し得る他のプロセスに関連するより高い温度で、製剤中で化学的および物理的に安定であることが望ましい。同様に、延長放出製剤は周囲温度または冷蔵下で数週間または数ヶ月間貯蔵され得るので、このより低い温度範囲における延長放出製剤中のテストステロンAPIの化学的および物理的安定性も本開示の要素である。実施形態では、テストステロンAPIは、少なくとも約35℃、または少なくとも約36℃、または少なくとも約37℃、または少なくとも約38℃までの温度、または少なくとも約39℃、または少なくとも約40℃までの温度で延長放出製剤中で実質的に固体形態である。一実施形態では、テストステロンAPIは、0.1℃刻みで、冷蔵温度(例えば、0~8℃)またはそれより低い温度から体温まで、または他の実施形態では35℃~40℃以上の任意の温度までの範囲の温度で、延長放出組成物中で実質的に固体形態である。
【0134】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、本開示の組成物を指す場合の「懸濁物」という用語の使用は、少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%のテストステロンAPIがポリマーおよび溶媒組成物中に懸濁した固体粒子の形態である製剤を指し得る。本明細書におけるテストステロンAPIが製剤中で「実質的に固体形態である」または「実質的に懸濁状態である」という記載は、テストステロンAPIの少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%がポリマーおよび溶媒組成物中に懸濁した固体粒子の形態である製剤を指す。
【0135】
テストステロンAPIの所望の粒径または粒径の分布は、テストステロンの形態および所望の放出プロファイルに大きく依存する。一般に、非限定的な考慮事項として、より小さい粒径は、in vivoでより迅速な放出(すなわち、より短い放出持続時間)および/またはより大きいバーストおよび対応するin vivoでのより高いピーク濃度をもたらし、一方、より大きい粒径は、in vivoでより遅い放出(すなわち、より長い放出持続時間)および/またはより小さいバーストおよび対応するin vivoでのより低いピーク濃度をもたらす。いくつかの実施形態では、二峰性粒径分布は、有利な放出プロファイルまたは他の望ましい効果を提供し得る。非限定的な例として、いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、より小さい粒子は、初期治療効果を提供するために迅速な薬物放出(例えば、デポーからのより速い放出および/またはデポー内の流体チャネルの放出および/または改変時のより速い可溶化によって)を引き起こすことができ、より大きい粒子は、長期治療効果を提供するために後に放出され得ることが可能であり得る。実施形態はまた、例えば、マイクロスフェアまたは脂質スフェアに封入された粒子を含み得、これは、in vivoでテストステロンの放出を制御するための更なる機構を提供し得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、所望の粒径分布を得るために、テストステロンAPIを粉砕することができる。適切な粉砕技術としては、非限定的な例として、乾式粉砕、ジェット粉砕(流体エネルギー粉砕(fluid energy milling)としても公知)、ナノ粉砕または水もしくは他の溶媒中での湿式粉砕、続いて凍結乾燥もしくは乾燥、均質化、ボール粉砕、カッター粉砕、ローラー粉砕、乳鉢および乳棒による細砕、ランナー粉砕、凍結粉砕、またはそれらの組み合わせが挙げられる。多くの実施形態では、ジェット粉砕は、その温度制御、汚染のリスクの低減、およびスケーラビリティのために望ましい技術である。一般に、非限定的な考慮事項として、機械的微粒子化および粉砕技術は、一般に、ポリマー配合挙動および安全性に影響を及ぼし得る残留溶媒および共結晶を導入する再結晶化リスクがあるため、再結晶化技術よりも適している。いくつかの実施形態では、テストステロンAPIを粉砕し、次いで凍結乾燥または他の方法で乾燥させて、残留水を除去し、および/または安定性を改善することができる。
【0137】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「粒径」という用語は、メジアン粒径を指し、「Dv,50」値とも呼ばれる。さらに、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「スパン」という用語は、90パーセンタイル粒径(「Dv,90」と呼ぶ)と10パーセンタイル粒径(「Dv,10」と呼ぶ)との差を50パーセンタイル粒径(Dv,50)で割ったものを指し、したがって、粒子の体積のスパンは、粒径が体積内にどの程度広く分布しているかの尺度として解釈することができる。粒径(例えば、Dv,90、Dv,50、およびDv,10)は、体積に基づく粒径測定によって決定される。特に明記しない限り、粒径は、Malvern Mastersizer(登録商標)機器などのレーザー回折粒径分析計を使用して決定される。数ベースの分布分析から体積ベースの分布分析に変換する(およびその逆も同様)ことができるソフトウェアプログラムおよび計算は、当技術分野で周知である。したがって、数ベースの方法を使用して計算された粒径について、体積ベースの粒径も推定することができる。体積ベースの粒径分布測定は、レーザー回折を含む多くのアンサンブル光散乱粒径測定技術のデフォルト選択肢であり、医薬品産業で一般的に使用されている。さらに、特に明記しない限り、粒径は、組成物中に懸濁する前のAPI粉末のサイズを指す。APIが組成物中に懸濁されると、粒径は原料API粉末の粒径とは異なり得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、テストステロンAPIは、組成物中に懸濁する前に、約1μm~約100μm、または約1μm~約90μm、または約1μm~約80μm、または約1μm~約70μm、または約1μm~約60μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約40μm、または約1μm~約30μm、または約1μm~約20μmのメジアン粒径(Dv,50)を有する。いくつかの実施形態では、組成物中に懸濁する前のメジアン粒径は、約10μm~約100μm、または約20μm~約100μm、または約30μm~約100μm、または約40μm~約100μm、または約50μm~約100μm、または約60μm~約100μm、または約70μm~約100μmである。いくつかの実施形態では、組成物中に懸濁する前のテストステロンAPIのメジアン粒径は、約20μm~約90μm、または約25μm~約85μm、または約30μm~約80μm、または約35μm~約75μm、または約40μm~約70μm、または約45μm~約65μmである。他の実施形態では、組成物中に懸濁する前のテストステロンAPIのメジアン粒径は、約1μm~約100μm(両端を含む)の任意の整数~任意の他の整数の範囲であり得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、テストステロンAPIは、組成物中に懸濁する前に、約100μm~約450μm、または約100μm~約440μm、または約100μm~約430μm、または約100μm~約420μm、または約100μm~約410μm、または約100μm~約400μmの90パーセンタイル粒径(Dv,90)を有する。いくつかの実施形態では、組成物中に懸濁する前の90パーセンタイル粒径は、約200μm~約450μm、または約200μm~約440μm、または約200μm~約430μm、または約200μm~約420μm、または約200μm~約410μm、または約200μm~約400μm、または約300μm~約450μm、または約300μm~約440μm、または約300μm~約430μm、または約300μm~約420μm、または約300μm~約410μm、または約300μm~約400μmである。他の実施形態では、テストステロンAPIは、組成物中に懸濁する前に、約370μm~約450μm、または約380μm~約440μm、または約390μm~約430μm、または約400μm~約420μm、または約300μm~約380μm、または約310μm~約370μm、または約320μm~約360μm、または約330μm~約350μm、または約100μm~約190μm、または約110μm~約180μm、または約120μm~約170μm、または約130μm~約160μmの90パーセンタイル粒径(Dv,90)を有する。他の実施形態では、組成物中に懸濁する前のテストステロンAPIの90パーセンタイル粒径は、約100μm~約450μm(両端を含む)の任意の整数~任意の他の整数の範囲であり得る。
【0140】
様々な実施形態では、テストステロンAPIは、組成物中に懸濁する前に、約0.1~約9、または約0.5~約9、または約1~約9、または約1.5~約9、または約2~約9、または約2.5~約9、または約3~約9、約3.5~約9、または約4~約9、または約4.5~約9、または約5~約9のスパンを有し得る。いくつかの実施形態では、テストステロンAPIは、組成物中に懸濁する前に、約1~約8.5、または約1~約8、または約1~約7.5、または約1~約7、または約1~約6.5、約1~約6、または約1~約5.5、または約1~約5、または約1~約4.5、または約1~約4、または約1~約3.5、または約1~約3、または約2~約7、または約2~約6.5、または約2~約6、または約2~約5.5、または約2~約5、または約2~約4.5、または約2~約4、または約2.5~約7、または約3~約7、または約3.5~約7のスパンを有し得る、または約4~約7、または約4.5~約7、または約5~約7のスパンを有し得る。他の実施形態では、テストステロンAPIは、組成物中に懸濁する前に、約0.1~約9の整数の任意の10分の1~整数の任意の他の10分の1の範囲であり得るスパンを有し得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物中に懸濁する前に、約35μm~約75μm、好ましくは約45μm~約65μmのメジアン粒径(Dv,50)および約2~約7の粒径スパンを有するウンデカン酸テストステロンを含む。他の実施形態では、組成物は、組成物中に懸濁する前に、約30μm~約50μmのメジアン粒径(Dv,50)および約1~約3の粒径スパンを有するシピオン酸テストステロンを含む。
【0142】
本開示の組成物中のテストステロンAPIの濃度は、組成物の約1重量%~約40重量%、例えば組成物の約1重量%~約30重量%、または組成物の約10重量%~約30重量%、または組成物の約15重量%~約25重量%、または組成物の約18重量%~約22重量%、または組成物の約20重量%の範囲であり得る。組成物中のテストステロンAPIの濃度は、組成物の約5重量%、または組成物の約10重量%、または組成物の約15重量%、または組成物の約20重量%、または組成物の約25重量%、または組成物の約30重量%、または組成物の約35重量%、または組成物の約40重量%であり得る。他の実施形態では、本開示の組成物中のテストステロンAPIの量は、組成物の約1重量%~約40重量%以内の任意の整数パーセント~任意の他の整数パーセントの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、テストステロンAPIの濃度は、組成物の約25重量%以下である。いくつかの実施形態では、テストステロンAPIの濃度は、組成物の約20重量%である。
【0143】
本開示のいくつかの実施形態によれば、延長放出組成物は、組成物1グラム当たりテストステロンAPIを、約100mg~約400mg、または約100mg~約390mg、または約100mg~約380mg、または約100mg~約370mg、または約100mg~約360mg、または約100mg~約350mg、または約100mg~約340mg、または約100mg~約330mg、または約100mg~約320mg、または約100mg~約310mg、または約100mg~約300mg、または約100mg~約290mg、または約100mg~約280mg、または約100mg~約270mg、または約100mg~約260mg、または約100mg~約250mg、または約100mg~約240mg、または約100mg~約230mg、または約100mg~約220mg、または約100mg~約210mg、または約100mg~約200mg、または約150mg~約400mg、または約150mg~約390mg、または約150mg~約380mg、または約150mg~約370mg、または約150mg~約360mg、または約150mg~約350mg、または約150mg~約340mg、または約150mg~約330mg、または約150mg~約320mg、または約150mg~約310mg、または約150mg~約300mg、または約150mg~約290mg、または約150mg~約280mg、または約150mg~約270mg、または約150mg~約260mg、または約150mg~約250mg、または約150mg~約240mg、または約150mg~約230mg、または約150mg~約220mg、または約150mg~約210mg、または約150mg~約200mg含み得る。他の実施形態では、延長放出組成物は、組成物1グラム当たりテストステロンAPIを、約100mg~約400mgの任意の整数量~任意の他の整数量含み得る。好ましい実施形態では、延長放出組成物は、組成物1グラム当たり約150mg~約250mgのテストステロンAPIを含む。
【0144】
延長放出製剤中のテストステロンAPIの量は、約0.5ng/mL~約20ng/mL、または約1ng/mL~約15ng/mL、または約2ng/mL~約15ng/mL、または約3ng/mL~約10ng/mLの平均血清テストステロン濃度を1週間以上、または2週間以上、または1ヶ月以上、または2ヶ月以上、または3ヶ月以上、または4ヶ月以上、または5ヶ月以上、または6ヶ月以上の過程にわたって達成するのに十分であり得る。
【0145】
組成物からのテストステロンAPIの放出プロファイルは、テストステロンの量、形態および粒径分布、ポリマー(例えば、モノマー比、分子量など)の量および種類、ならびに溶媒/共溶媒の量および種類を含むがこれらに限定されないいくつかの因子に依存する。好ましい実施形態では、臨床有効量のテストステロンAPIが、より短い放出時間での最小バースト放出を伴ってまたはそれを伴わずに、少なくとも3ヶ月の過程にわたって制御放出または延長放出の様式(例えば、比較的一定のまたは平坦な放出プロファイルで)で放出される。延長放出組成物は、投与期間中の平均で、性腺機能正常の範囲のテストステロン補充を提供し得、血漿中のテストステロンの平均濃度(Cavg)は、約3~約10ng/mL(すなわち、10.4nmol/L~34.7nmol/L)である。
【0146】
本開示の延長放出組成物は、テストステロンAPIと、生体適合性溶媒および低分子量ポリエチレングリコール(PEG)を含む溶媒系と、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)のコポリマーセグメントを含みかつ少なくとも1つのカルボン酸末端基を有する生分解性ポリマーとを含む。実施形態では、テストステロンAPIは、好ましくは約1μm~約100μmのDv,50、約100μm~約450μmのDv,90、および約1~約9のスパン、または約2~約7のスパンのうちの1つまたは複数を有する、ウンデカン酸テストステロンまたはシピオン酸テストステロンであり得る。実施形態では、PLGポリマーは、約70:30~約85:15のラクチド対グリコリドモノマーのモル比および約4kDa~約36kDaの生分解性ポリマーの重量平均分子量を有し得る。実施形態では、溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および約3350ダルトンもしくはそれ未満の数平均分子量を有する1つまたはそれを超えるPEG、好ましくはPEG250もしくはPEG300もしくはPEG350もしくはPEG400またはそれらの組み合わせを含み得、低分子量PEGの量は、組成物の約25重量%もしくはそれ未満、または組成物の約15重量%もしくはそれ未満、または組成物の約10重量%もしくはそれ未満である。実施形態では、テストステロンAPIが組成物の約20重量%を構成し、生体適合性溶媒系が組成物の約50重量%を構成し、生分解性ポリマーが医薬組成物の約30重量%を構成する。
【0147】
いくつかの実施形態では、延長放出組成物は、約35μm~約75μm、好ましくは約45μm~約65μmのDv,50、および約2~約7、好ましくは約2~約4または約5~約7のスパンを有する約20重量%のウンデカン酸テストステロンと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および数平均分子量が約300ダルトンのポリエチレングリコール(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約4:1である、生体適合性溶媒系と、少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約4kDa~約24kDa、好ましくは約4kDa~約14kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の70:30ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーとを含む。いくつかの実施形態では、重量平均分子量は、約9kDaである。いくつかの実施形態では、重量平均分子量は、約14kDa~約24kDaである。いくつかの実施形態では、重量平均分子量は、約19kDaである。
【0148】
他の実施形態では、延長放出組成物は、約35μm~約75μm、好ましくは約45μm~約65μmのDv,50、および約2~約7、好ましくは約2~約4または約5~約7のスパンを有する約20重量%のウンデカン酸テストステロンと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および数平均分子量が約300ダルトンのポリエチレングリコール(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約4:1である、生体適合性溶媒系と、少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約4kDa~約24kDa、好ましくは約4kDa~約14kDa、または約14kDa~約24kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の85:15ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーとを含む。
【0149】
さらに他の実施形態では、延長放出組成物は、約30μm~約50μmのDv,50および約1~約3のスパンを有する約20重量%のシピオン酸テストステロンと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および数平均分子量が約300ダルトンのポリエチレングリコ-ル(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約3:2である、生体適合性溶媒系と、少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約20kDa~約36kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の70:30ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーとを含む。
【0150】
さらに他の実施形態では、延長放出組成物は、約30μm~約50μmのDv,50および約1~約3のスパンを有する約20重量%のシピオン酸テストステロンと、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および数平均分子量が約300ダルトンのポリエチレングリコ-ル(PEG300)を含む約50重量%の生体適合性溶媒系であって、NMP対PEG300の重量比が約3:2である、生体適合性溶媒系と、少なくとも1つのカルボン酸末端基を有しかつ約20kDa~約36kDaの重量平均分子量を有する約30重量%の85:15ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)ポリマーとを含む。
【0151】
投与
本開示はまた、患者における内因性テストステロンの欠乏または欠如に関連する状態に対するテストステロン補充療法の方法であって、本明細書に開示される延長放出組成物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。内因性テストステロンの欠乏または欠如に関連する状態は、先天性または後天性の状態であり得、例えば、原発性性腺機能低下症または低ゴナドトロピン性性腺機能低下症であり得る。代替的、または追加的に、本開示は、男性避妊として、またはトランスジェンダー(女性から男性)ホルモン療法において使用するためのテストステロン補充の方法を提供し得る。
【0152】
本明細書で使用される場合、「患者」および「対象」という用語は交換可能であり、一般に、本開示の組成物または製剤が投与されるかまたは投与される予定の動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコおよびウマなどのコンパニオン動物;ならびにウシ、ヤギ、ヒツジ、およびブタなどの家畜動物を含む動物界の任意の生物)を指す。実施形態では、患者は、ヒトである。実施形態では、患者は、成人男性である。いくつかの実施形態では、成人男性患者は、原発性性腺機能低下症(先天性もしくは後天性)または低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(先天性もしくは後天性)と診断されていてもよい。いくつかの実施形態では、成人男性患者は、男性避妊を望むか、または必要とし得る。いくつかの実施形態では、患者は、女性から男性への移行を受けることを必要とする、受けている、または維持している可能性がある。
【0153】
いくつかの実施形態では、延長放出組成物は、対象への投与前に、約0℃~約8℃の冷蔵または低温貯蔵温度で貯蔵し、次いで約18℃~約25℃の室温に加温してもよい。いくつかの実施形態では、延長放出組成物は、対象への投与前に、6ヶ月以上、または12ヶ月以上、または18ヶ月以上、または24ヶ月以上の期間貯蔵され得る。いくつかの実施形態では、延長放出組成物は、患者に投与される前に、再混合する必要がないか、または投与量の均一性を回復するために最小限の再混合、撹拌、振盪、または他の方法で撹乱に供される可能性がある。いくつかの実施形態では、延長放出組成物を混合して延長放出組成物を形成するか、または投与前に再混合する必要があり得る。
【0154】
実施形態では、延長放出組成物は、対象の体内に皮下または筋肉内投与される。実施形態では、延長放出組成物は、約3mLもしくはそれ未満、または好ましくは約2mLもしくはそれ未満、またはより好ましくは約1mLもしくはそれ未満、またはさらに約0.5mLの注入体積を有する。延長放出組成物を対象に注射すると、溶媒および共溶媒が散逸し、in-situ固体デポーが形成され、長期間にわたってテストステロンAPIを放出する。様々な実施形態では、固体デポー内のテストステロンAPIは、臨床的に有効な量(例えば、対象における平均血清レベルのテストステロン濃度を測定することによって決定される)で患者に放出される。
【0155】
延長放出組成物は、毎週、隔週、毎月、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごと、および/またはテストステロン補充が望まれる限り、投与され得る。延長放出製剤中のテストステロンAPIの量は、より短い間隔(例えば、毎週、隔週もしくは毎月)で1つまたはそれを超える初期負荷用量を提供し、続いて維持用量を提供するのに十分であり得、組成物および/または投与の間隔によって提供されるテストステロンAPIの量は増加するか、または任意の代替投与レジメンの下で提供される。延長放出組成物は、性腺機能正常の範囲のテストステロン補充を提供し得、血漿中のテストステロンの平均濃度(Cavg)は、投与期間中に約3ng/mL~約10ng/mL(すなわち、10.4nmol/L~34.7nmol/L)である。追加的または代替的に、延長放出組成物は、約0.5ng/mL~約20ng/mL、または約1ng/mL~約15ng/mL、または約2ng/mL~約15ng/mL、または約3ng/mL~約10ng/mLの平均血清テストステロン濃度を1週間以上、または2週間以上、または1ヶ月以上、または2ヶ月以上、または3ヶ月以上、または4ヶ月以上、または5ヶ月以上、または6ヶ月以上の過程にわたって達成するのに十分な時間(すなわち、投与間隔)および/または量で投与され得る。
【0156】
製造品
本開示はまた、上記の延長放出組成物および投与方法による製造品またはキットを提供する。いくつかの実施形態では、本開示の製造品は、延長放出組成物の容器を含む。容器は単一の注射器であってもよく、延長放出組成物は注射器内に収容される。いくつかの実施形態では、注射器は、16~24ゲージの針、好ましくは16~22ゲージの針、またはより好ましくは16~20ゲージの針または18~20ゲージの針を含むことができる。他の実施形態では、注射器は自動注射器であってもよい。
【0157】
別の製造品は、本明細書に記載の延長放出組成物を含む第1の容器と、対象への投与前に延長放出組成物を混合または再混合するために使用される第2の空の容器とを含み得る。第1および第2の容器は、デュアルチャンバ注射器の第1および第2のチャンバであってもよい。これらの物品はまた、組成物が効果的に混合されるまで、第1および第2のチャンバを接続し、次いで第1のチャンバの内容物を第2のチャンバに押し込み、次いで第1のチャンバに1回以上押し戻すことを含む、組成物を混合するための指示を含み得る。これらの物品はまた、16~24ゲージの針、好ましくは16~22ゲージの針、またはより好ましくは16~20ゲージの針または18~20ゲージの針を含むことができ、これらは延長放出組成物を対象に投与するために注射器に取り付けられ得る。
【0158】
別の製造品は、テストステロンAPIおよび必要に応じて生体適合性溶媒または溶媒系を含む第1の容器と、生分解性ポリマーおよび溶媒系を含む第2の容器とを含み得る。一実施形態では、第1の容器は、第1の容器(すなわち、溶媒または溶媒系が一切存在しない場合)に乾式充填されたテストステロンAPIを含み得、第2の容器は、生体適合性ポリマーおよび溶媒系を含む。これらの実施形態では、第1および第2の容器は、デュアルチャンバ注射器の第1および第2のチャンバであってもよい。これらの物品には、第1および第2のチャンバの内容物を混合して、対象に投与するための延長放出組成物を形成するための指示も含まれ得る。第1および第2のチャンバの内容物は、第2のチャンバの内容物を第1のチャンバに添加することによって、またはその逆によって注射器内で組み合わされ、続いて混合して流動性組成物を形成することができる。あるいは、第1のチャンバの内容物を第2のチャンバに添加し、続いて混合して流動性組成物を形成してもよい。第1および第2の容器はそれぞれ、内容物を一緒に混合して流動性組成物を形成するために一緒に結合され得るか、または結合される注射器であってもよい。第1および第2のチャンバの内容物は、容器を一緒に結合し、ポリマー、溶媒系およびテストステロンAPIが効果的に一緒に混合されて流動性組成物を形成するまで2つのチャンバ間で内容物を前後に移動させることによって組み合わせて混合することができる。これらの物品はまた、16~24ゲージの針、好ましくは16~22ゲージの針、またはより好ましくは16~20ゲージの針または18~20ゲージの針を含むことができ、これらは延長放出組成物を対象に投与するために注射器に取り付けられ得る。
【0159】
これらの製造品は、テストステロン補充療法のためのその使用についての指示をさらに含み得る。これらの製造品はまた、内因性テストステロンの欠乏または欠如に関連する状態を処置するためのテストステロン補充療法のための延長放出組成物の使用の有効性および/または安全性データを提供する添付文書を含み得る。
【0160】
すべての刊行物、特許および特許文献は、参照により個々に組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0161】
実施例1
以下の実施例は、ウンデカン酸テストステロン(TU)またはシピオン酸テストステロン(TC)を含む延長放出組成物を調製および試験するために使用される方法を記載する。
【0162】
PLGポリマー。以下の実施例2~10に記載される製剤を製造するために、酸開始ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)コポリマーを、以下の方法を使用して製造した。DL-ラクチド、グリコリド、およびグリコール酸の量を選択して、調査した各ポリマーの目標モノマーモル比および重量平均分子量を得た。実施例2~10で報告されたモノマーモル比および重量平均分子量は目標値である。実際のモノマーのモル比および重量平均分子量は、製造および滅菌プロセスにおける変動のためにわずかに変わり得るが、許容され得る仕様および試験限界内にある。重合容器にDL-ラクチド、グリコリド、およびグリコール酸を適量添加し、容器の内容物を窒素雰囲気下に置いた。次いで、容器を温度制御された油浴に下げた。試薬が融解するまで容器の温度を上げた。適切な量のオクタン酸第一スズ(stannousoctoate)およびトルエンを用いて触媒溶液を作製し、容器に添加した。次いで、容器を一定に撹拌しながら約3~4時間、窒素雰囲気下で約135~145℃に加熱した。次いで、未反応のラクチドおよびグリコリドモノマーを除去するために、容器を排気し、モノマーを重合混合物から真空蒸留した。次いで、ホットメルトを冷却皿に押し出した。冷却後、固体塊を小片に分割した。
【0163】
TUまたはTCポリマー/溶媒製剤。有効医薬成分(TUまたはTC)を含むポリマー/溶媒製剤を製造するために、所望のモノマーのモル比および重量平均分子量のPLGポリマーを、示された量で、それぞれ溶媒および共溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)およびPEGと組み合わせた(以下の個々の実験を参照)。別段示されない限り、これらの実施例で使用されるPEGは、分子量300Daのヒドロキシル末端PEGである。ポリマー、NMPおよびPEGを窒素でブランケットしたジャーの中で合わせ、ターブラもしくはジャーミルを用いて周囲温度で、または組成物が均質になるまで高温でロティサリーで混合した。
【0164】
実施例2~4および6~10で使用したウンデカン酸テストステロン製剤については、ウンデカン酸テストステロン(TU)を、コポリマー/溶媒溶液と混合する前に所望の粒径分布を有するように処理した。具体的には、TU粒子をジェットミルまたはNetzchミルのいずれかで粉砕した。粒径は、TUを製剤に添加する前に、Mastersizer(登録商標)(Malvern Panalytical、ペンシルバニア州マルバーン在)などのレーザー回折粒径分析計を使用する体積ベースの粒径計算方法を使用して決定した。
【0165】
TU PLGコポリマー製剤を調製するために、ウンデカン酸テストステロンを、以下の実施例に示されるパーセンテージを達成する量でコポリマー/溶媒溶液に添加し、均質に分散するまで手動で組成物中に撹拌した。ドロップダウン式Silverson社製ホモジナイザーまたはIKA Magic Plantホモジナイザーを使用して、TU/ポリマー/溶媒混合物を均質化して、20ゲージ針による注射を可能にした。具体的には、ドロップダウン式Silverson社製ホモジナイザーを使用する場合、試料を2,500~3,500rpmで2~17分間均質化した。IKA Magic Plantホモジナイザーを使用する場合、試料を3,000rpmで3~6.25時間均質化した。TUをポリマー/溶媒混合物に組み込んだ後、半自動注射器フィラーを使用して製剤を注射器に充填し、注射器をルアールアーカプラーおよび雄型先端キャップでキャップした。次いで、注射器を乾燥剤パックを含むラベル付きフォイルパウチに包装し、パウチを密封した。
【0166】
実施例5で使用したシピオン酸テストステロン懸濁物には、供給元によって提供されるようなシピオン酸テストステロンを使用した。TC PLGコポリマー製剤を調製するために、シピオン酸テストステロンを、実施例5に示されるパーセンテージを達成する量でコポリマー/溶媒溶液に添加し、均質に分散するまで手動で組成物に撹拌した。TC PLGコポリマー製剤を、ドロップダウン式Silverson社製ホモジナイザーを用いて2,000~3,500rpmで約5分間均質化して、20ゲージ針による注射を可能にした。TCをポリマー/溶媒混合物に組み込んだ後、半自動注射器フィラーを使用して製剤を注射器に充填し、注射器をルアールアーカプラーおよび雄型先端キャップでキャップした。次いで、注射器を乾燥剤パックを含むラベル付きフォイルパウチに包装し、パウチを密封した。
【0167】
注射器にTU-またはTC-PLGコポリマー製剤を充填した後、充填した注射器を冷蔵条件下(例えば、2~8℃)で貯蔵した。注射器に電子ビーム照射を行った。およそ25kGyの総内部線量に達するように、30または32kGyの総照射線量を投与した。15kGyまたは16kGyで2回照射し、それらの間に冷蔵条件で少なくとも1時間保持する照射スキームを使用し、照射中の試料温度を薬物の溶解温度よりも低く保つように制御した。電子ビーム照射時に、ポリマーの重量平均分子量は約0.1~25%減少し得、高分子量ポリマーは典型的には、この範囲内で低分子量ポリマーよりも大きな減少を経験することに留意されたい。したがって、最終製剤(照射後)中のポリマーの所望の分子量は、初期ポリマー重量平均分子量と比較して異なり得る。
【0168】
非ポリマー性ウンデカン酸テストステロン対照溶液の製造。実施例2では、非ポリマー性ウンデカン酸テストステロン対照溶液(「非ポリマー性対照製剤」とも呼ばれる)を使用した。この対照製剤を調製するために、40重量%の食塩水、40重量%のPEG300および20重量%のウンデカン酸テストステロン(TU)を合わせ、手動振盪によって混合した。次いで、20ゲージ針を介して注射可能になるまで、ドロップダウン式Silverson社製ホモジナイザーを用いて1,500rpmで5分間製剤を均質化した。非ポリマー性対照溶液を手動でラベル付きバイアルに充填し、バイアルにゴム隔壁および圧着式上蓋で蓋をした。バイアルを乾燥剤パックを含むラベル付き箔パウチに包装し、パウチを密封した。バイアルを大きなプラスチック袋の内側に単層で配置し、上述のように電子ビーム照射に送った。
【0169】
in vivo放出試験。ラットモデルを用いてテストステロン放出速度を得た。去勢した雄ラットに、特に明記しない限り、100mg/kg(0.18mL)のウンデカン酸テストステロンまたは90mg/kg(0.16mL)のシピオン酸テストステロンを含むPLGコポリマー製剤の単回皮下注射をそれぞれ注射した。所定の時点で、ラットから採血し、血漿テストステロンレベルを決定した。各データ点は、平均血漿テストステロン濃度に基づく。6匹~10匹のラットに投薬し、分割用量の出血を初期の時点で行った。選択したラットを42、91および147日目にデポーおよび組織学的分析のために屠殺し、時点あたりn=3~10を得た。
【0170】
また、ミニブタモデルを使用してテストステロン放出速度を得た。去勢した雄ミニブタに、首および鼠径ポケットにPLGコポリマー製剤の1~2mLの皮下注射を少なくとも1回~7回まで注射して、指示された用量のウンデカン酸テストステロンを送達した。所定の時点で、ミニブタから採血し、血漿テストステロンレベルを決定した。42、91、および147日目に、デポーおよび組織学的分析のために単一のミニブタを屠殺した。各データ点は、1~6匹のミニブタの平均血漿テストステロン濃度に基づく。
【0171】
ラットまたはミニブタから血液試料を採取し、次いで試料を処理して液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)によって血漿テストステロン濃度を測定することによって、テストステロン放出プロファイルを得た。ラットの試料採取時点は、投与前、投与後30分、1時間、3時間および10時間、ならびに注射後1、4、7、14、21、28、35、42、56、70、91、105、119、133、および147日目であった。ミニブタの試料採取時点は、投与前ならびに注射後1、7、14、21、28、35、42、56、70、91、105、119、133、および147日目であった。実施例8はまた、1、4、および8時間での試料採取を含んでいた。
【0172】
in vitro放出試験。3重量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む1×PBS中のUSP APPIVを使用して、ウンデカン酸テストステロン放出速度を得た。製剤を溶解セルに送達し、媒体を再循環させた。所定の時点で、試料を採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってウンデカン酸テストステロン濃度を決定した。in vitro放出のための試料採取時点は、30分、3、5、8、15、24、36、および48時間、次いで最大5日間にわたり毎日であった。累積TU放出を計算した。各データ点は、3~6つの試料の平均に基づく。
【0173】
実施例2
以下の実施例は、ラットモデルにおけるin vivoでの製剤の放出特性に及ぼす、コポリマーモノマーのモル比および分子量ならびにTUコポリマー/溶媒製剤のウンデカン酸テストステロン(TU)粒径分布の影響を示す。
【0174】
いくつかのTU-PLGコポリマー製剤を実施例1に記載の方法に従って調製した。すべての製剤は、溶媒としてNMPおよび共溶媒としてPEG300を使用し、製剤中の溶媒(すなわち、%NMP+%PEG300)の総量は、製剤の50重量%で一定であり、NMP対PEG300の重量比は4:1であった。PLGコポリマーを組成物の30重量%の量で含めたが、その重量平均分子量およびラクチド対グリコリドモノマーのモル比は様々であった。示された粒径のウンデカン酸テストステロンは、すべての製剤中に製剤の20重量%の量で存在した。製剤の詳細を表1に提供し、表1は、(1)ウンデカン酸テストステロン(TU)、PLGポリマー(PLG)、溶媒(NMP)および共溶媒(PEG300)の重量%に関する各製剤の組成;(2)TU粒径分布;ならびに(3)ポリマーの電子ビーム照射後の、PLGポリマーの目標モノマー比(L:Gモノマー比)および重量平均分子量(ポリマー、MW)を列挙している。実施例1で概説した手順に従って調製した非ポリマー性製剤(すなわち、食塩水およびPEG300中のTU粒子の懸濁物)も調査した。非ポリマー性製剤の詳細を表2に示す。
表1:TU-酸開始-PLGポリマー製剤の組成。
【表1】
電子ビーム後のポリマーMWが示される。
表2:TU非ポリマー性対照製剤の組成。
【表2】
【0175】
試験製剤1~7および非ポリマー性対照製剤を、実施例1で概説した方法に従ってラットにおいてin vivoで評価した。図1は、in vivo放出試験(試験製剤1(◆)、2(●)、3(■)、4(◇)、5(
【化11】
)、6(
【化12】
)および7( )ならびに対照製剤(○))の結果を示す。TU放出プロファイルは、投与前および投与後の様々な時間間隔で血漿テストステロン濃度を測定することによって得られる。表3は、Tmax(すなわち、最大濃度が得られる時間)、Cmax(すなわち、最大濃度)、各製剤の半減期、およびAUCinf(すなわち、総薬物曝露を得るために積分された曲線下面積)をまとめたものである。対照製剤(◆)は、いくらかの延長された血漿テストステロンレベルの上昇を示し、Cmaxは投与後約14日で生じた。対照製剤と比較して、同じまたは類似のTU粒径を有する試験製剤のすべてが、より長い期間にわたってより低い血漿テストステロン濃度を示した。有意に小さい粒径TUを有する試験製剤のみが、より高いCmax値を示した。すべての場合において、観察されたバースト放出(2日未満でのCmax)は適度に低かった。試験製剤間の放出プロファイルの変動は、ポリマー重量平均分子量および/またはTU粒径分布の差に起因する。
表3:TU-酸開始-PLGポリマーおよび非ポリマー性対照製剤のPKパラメータ。
【表3】
【0176】
これらの実験の結果は、PLGポリマーの重量平均分子量を使用して、製剤からのTUの放出速度および放出持続時間を制御できることを実証している。比較を容易にするために、図2Aおよび2Bは、他の同様の製剤についてPLGポリマー重量平均分子量を変えることの影響を示す。具体的には、図2Aは、同じラクチド対グリコリドモノマー比およびTU粒径分布を有するが、試験製剤5が9kDaの重量平均分子量を有し、試験製剤7が19kDaの重量平均分子量を有するという点で異なる試験製剤5(
【化13】
)および7( )のTU放出プロファイルを示す。図2Bは、同じラクチド対グリコリドモノマー比およびTU粒径分布を有するが、試験製剤2が9kDaの重量平均分子量を有し、試験製剤3が19kDaの重量平均分子量を有するという点で異なる試験製剤2(●)および3(■)のTU放出プロファイルを示す。図2Bに示される2つの試験製剤は、図2Aに示される2つの試験製剤と比較して、より大きな粒径(Dv,50およびDv90)を有する。結果は、製剤中のPLGポリマーの重量平均分子量を増加させることによって、Tmaxを延長することができ、Cmaxを減少させることができることを示している。ポリマーの分子量が増加するにつれて、放出曲線は一般に平坦になり、Cmaxを低下させ、上昇した血漿Tレベルの持続時間を延長させる傾向がある。非常に早い時点での初期(バースト)放出はまた、より高い重量平均分子量を有する製剤ではより少ないようである。
【0177】
実験結果はまた、TU粒径分布を使用して、製剤からのTUの放出速度および放出持続時間を制御できることを示している。図3Aおよび図3Bは、TU粒径分布を変えることの影響を示す。具体的には、図3Aは、同じラクチド対グリコリドモノマー比および9kDaの重量平均分子量を有するが、試験製剤1が4のDv,50および2.3のスパンを有し、試験製剤5が53のDv,50および6.2のスパンを有し、試験製剤2が67のDv,50および6のスパンを有するという点で異なる試験製剤1(◆)、2(●)および5(
【化14】
)のTU放出プロファイルを示す。図3Bは、同じラクチド対グリコリドモノマー比および19kDaの同様の重量平均分子量を有するが、試験製剤4が18のDv,50および2.7のスパンを有し、試験製剤7が53のDv,50および6.2のスパンを有し、試験製剤3が67のDv,50および6のスパンを有するという点で異なる試験製剤3(■)、4(◇)および7( )のTU放出プロファイルを示す。これらの結果は、より低いDv,50を有するTU粒子を含む製剤が、より大きなサイズのTU粒子を含む製剤と比較した場合、より短い持続時間およびより高いCmaxをもたらすことを示す。血漿テストステロンプロファイルに対する粒径分布の効果は、より低分子量の製剤(例えば、9kDa製剤)でより顕著であり、製剤の中で、試験製剤1は4μmの最小TU粒径を有し、試験製剤2および5と比較してはるかに短い持続時間を有する。対照的に、より高分子量の製剤(例えば、19kDa製剤)の場合、試験製剤4は18μmのTU粒径を有し、試験製剤3および7と比較してより短い持続時間およびより高いCmaxを示すが、血漿テストステロンプロファイルの差は、試験製剤3および7と比較してはるかに小さい粒径を有するにもかかわらず、あまり顕著ではない。興味深いことに、粒径は、少なくともこれらの条件下で、初期(バースト)放出にほとんどまたは全く影響を及ぼさないようであった。
【0178】
図4は、試験製剤5(◇)および6(◆)の血漿テストステロンプロファイルを示す。試験製剤5および6は両方とも同じ粒径分布を有するTUを含有し、それらは両方とも9kDaのPLGコポリマーであるが、ポリマーはラクチド対グリコリドモノマーのモル比が異なり、試験製剤5については70:30であるが、試験製剤6については85:15である。図4は、ラクチド対グリコリドモノマー比の違いにもかかわらず、試験製剤5および6の2つの血漿テストステロンプロファイルが類似していることを示す。驚くべきことに、予想に反して、ラクチド対グリコリドモノマー比は、これらの条件下でTU放出プロファイルに実質的な影響を及ぼさないようであった(例えば、より低い重量平均分子量)。
【0179】
まとめると、PLGコポリマー製剤の放出プロファイルは、ポリマーの重量平均分子量およびTU粒径分布によって影響を受ける。これらの変数を使用して、TU放出プロファイルを調整して最適な放出動態を得ることができる。
【0180】
実施例3
以下の実施例は、ラットモデルにおけるin vivoでの製剤の血漿テストステロンプロファイルおよびPK特性に及ぼすTUコポリマー/溶媒製剤の用量比例性(dose proportionality)の影響を示す。
【0181】
実施例2からの試験製剤7を異なる用量でラットに注射した。試験製剤7は、70:30の目標L:Gモノマー比および19kDaの重量平均分子量を有する30重量%の酸開始ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)コポリマー、40重量%のNPM、10重量%のPEG300、および53μmのDv,50および6のスパンを有する20重量%のTUである。図5は、低用量100mg/kg(0.18mL)(- -)、中用量300mg/kg(0.53mL)(・・- ・・-)、および高用量500mg/kg(0.88mL)(・-・■・-・)を投与したラットのTU in vivo放出プロファイルを示す。Tmax、Cmax、半減期、AUCinfおよびAUCinf/用量を表4に提供する。結果は、投与量の増加がCmaxおよびAUCinfを増加させるが、Tmaxおよび半減期に及ぼす影響は最小限であることを示す。
表4:ラットにおける漸増用量でのTU酸開始-PLGポリマー製剤のPKパラメータ
【表4】
【0182】
実施例4
実施例2からの結果は、TU粒径分布を使用して、製剤からのTUの放出速度および放出持続時間を制御できることを示している。具体的には、より大きなサイズを有するTU粒子を含む製剤は、より長いTU放出持続時間を有するより平坦なプロファイルを有していた。この実施例では、ラットモデルにおけるin vivoでの製剤の放出特性に及ぼすTUコポリマー/溶媒製剤のウンデカン酸テストステロン(TU)粒径分布、特にDv,90および分布のスパンの影響を調査する。
【0183】
試験製剤8を、実施例1に記載の方法に従って調製した。試験製剤8の組成を表5にまとめる。
表5:TU-酸開始-PLGポリマー製剤の組成
【表5】
電子ビーム後のポリマーMWが示される。
試験製剤8の組成は、実施例2の試験製剤3および7と同様である。試験製剤3は、67μmのDv,50、412μmのDv,90、および6のスパンを有するTU粒子を含み、試験製剤7は、53μmのDv,50、340μmのDv,90、および6.2のスパンを有するTU粒子を含むが、他の点では、これらの製剤は試験製剤8と同様である。3つの製剤はすべて、同等のDv,50を有する。主な違いは、試験製剤8が有意に小さいDv,90およびスパンを有することである。
表6:異なるTU PSDを有するTU-酸開始-PLGポリマー製剤のPKパラメータ
【表6】
図6は、ラットモデルを使用してin vivoで得られた、実施例2からの試験製剤3(■)および7( )の放出プロファイルと共に、試験製剤8(◆)のTU放出プロファイルを示す。表6は、各製剤のTmax、Cmax、半減期およびAUCinfをまとめたものである。3つの製剤はすべて、同様の放出持続時間を提供するが、試験製剤8は、より大きいCmax、より遅いTmaxおよびより急な消失相を有する二峰性プロファイルを有するようである。初期バースト放出(2日未満でのCmax)は、3つの製剤すべてで低かった。これらの結果は、Dv,50に加えて、Dv,90およびDv,10(したがって、スパン)を使用してTU放出プロファイルを調整できることを示している。
【0184】
実施例5
以下の実施例は、ラットモデルにおけるin vivoでの製剤の放出特性に及ぼすTC-PLGコポリマー製剤のコポリマーモノマー比ならびに分子量および溶媒組成の影響を示す。
【0185】
いくつかのTC-PLGコポリマー製剤を、実施例1に記載の方法に従って調製した。すべての製剤は、溶媒としてNMPおよび共溶媒としてPEG300を使用し、製剤中の溶媒(すなわち、%NMP+%PEG300)の総量は、製剤の50重量%で一定であるが、NMP対PEG300の重量比を変化させた。PLGコポリマーを組成物の30重量%の量で含めたが、その重量平均分子量およびラクチド対グリコリド(L:G)モノマーのモル比は様々であった。シピオン酸テストステロンは、供給元によって提供されるように使用され、製剤中に製剤の20重量%の量で含まれた。製剤の詳細を表7に提供し、表7は、(1)シピオン酸テストステロン(TC)、PLGポリマー(PLG)、溶媒(NMP)および共溶媒(PEG300)の重量%に関する各製剤の組成;(2)TC粒径分布;ならびに(3)ポリマーの電子ビーム照射後の、PLGポリマーの目標モノマー比(L:Gモノマー比)および重量平均分子量(ポリマー、MW)を列挙している。
表7:TC-酸開始-PLGポリマー製剤の組成
【表7】
電子ビーム後のポリマーMWが示される。
【0186】
試験製剤9~11を、実施例1で概説した方法に従ってラットにおいてin vivoで評価した。図7は、in vivo放出試験(試験製剤9(--★--)、10(-☆-)、および11(・-・★・-・))の結果を示す。TC放出プロファイルは、投与前および投与後の様々な時間間隔で血漿テストステロン濃度を測定することによって得られる。すべての試験製剤は、上昇した血漿Tレベルの持続時間の延長を提供する能力を示した。表8は、各製剤のTmax、Cmax、半減期およびAUCinfをまとめたものである。TC製剤のうち、試験製剤11は、他の2つの製剤と比較した場合、より長い半減期およびより低いCmaxを有する最も好ましい血漿テストステロンプロファイルを示した。特に、試験製剤11は、グリコリドモノマーと比較してラクチドモノマーの量が多い(例えば、85:15対70:30)。この結果は、ラクチド対グリコリドモノマー比の影響をほとんど示さなかった試験製剤4および5について実施例2に示される結果(図4を参照)とは対照的である。これらのTC製剤に含まれるPEG300の量も多い。初期バースト放出後の試験製剤11の放出プロファイルは、およそ21日にCmaxが生じ、次いでおよそ56日に第2のより少ない最大値が生じる二峰性であるように見えることも興味深い。観察されたバースト放出(2日未満でのCmax)は、各製剤について適度に低かった。
表8:TC-酸開始-PLGポリマー製剤のPKパラメータ
【表8】
【0187】
同じNMP:PEG比およびポリマーを有するTC-PLG製剤で得られた血漿テストステロンプロファイルは、実施例2のTU-PLGコポリマー製剤(製剤3)と比較した場合、より高い初期バースト放出を有する。さらに、所与のポリマー製剤(例えば、重量平均分子量およびモノマー比)について、放出持続時間はより短い。図8は、試験製剤9(★)と実施例2のTU試験製剤3(■)および4(◇)の放出プロファイルの比較を示す。3つの製剤はすべて、19kDaの70:30ポリ(D,L-ラクチド-グリコリド)コポリマーを利用する。TC粒径(Dv,50)は41μmであり、これは、それぞれ67μmおよび18μmの実施例2の試験製剤3および4におけるTU粒径の間である。試験製剤9の放出プロファイルは、はるかに小さい有効成分の粒径を有するTU試験製剤3の放出プロファイルと比較しても、持続時間が短い。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、粒径の大きい(41um)TC形態が、他の点で類似しているTU形態よりも放出速度が増加したのは、2つのエステル間の溶解度の差に起因している可能性がある。
【0188】
これらの実験の結果は、PLGポリマー製剤を、TCの延長放出を提供するように調整できることを実証している。TC製剤のうち、試験製剤11は、Cmax値がより低く、半減期値がより高いことに基づいて、最も好ましい血漿テストステロンプロファイルを示した。これらの条件下で、ラクチド対グリコリドモノマー比を使用して血漿テストステロンプロファイルを調整し、最適な放出動態を得ることができる。
【0189】
実施例6
以下の実施例は、ミニブタ動物モデルにおけるin vivoでの製剤の放出特性に及ぼすTU PLGコポリマー製剤のポリマー分子量の影響を示す。
【0190】
2つのTU-ポリ(D,L-ラクチド-グリコリド)コポリマー製剤を、実施例1に記載の方法に従って調製した。2つの製剤は、PLGコポリマーの重量平均分子量が互いに異なる。製剤の詳細を表9に提供し、表9は、(1)ウンデカン酸テストステロン(TU)、PLGポリマー(PLG)、溶媒(NMP)および共溶媒(PEG300)の重量%に関する各製剤の組成;(2)TU粒径分布;ならびに(3)ポリマーの電子ビーム照射後の、PLGポリマーの目標モノマー比(L:Gモノマー比)および重量平均分子量(ポリマー、MW)を列挙している。試験製剤13は、実施例4の試験製剤8と同じである。
表9:TU-酸開始-PLGポリマー製剤の組成。
【表9】
【0191】
試験製剤12および13をミニブタに注射し、血漿テストステロンプロファイルを、実施例1に記載されているように、投与前および投与後の様々な時間間隔で血漿濃度を測定することによって得る。図9は、in vivo放出試験(試験製剤12(-★-)および13(・-・・★・-・・))の結果を示す。表10は、この2つの製剤のPKパラメータTmax、Cmax、半減期およびAUCinfをまとめたものである。試験製剤12および13は、ミニブタモデルにおいてTUの延長放出を提供するPLGコポリマー製剤の能力を確認し、血漿Tレベルの上昇が5ヶ月間観察された。19kDaコポリマーを有するTU-PLGコポリマー製剤(試験製剤13)は、9kDaコポリマー(試験製剤12)よりも遅いTmaxおよび高いCmaxでより高い血漿Tレベルを生じるようである。試験製剤13の放出プロファイルで観察された急激なCmaxは、ミニブタ試験の様々な時点でn=1~3を使用したことから、試料サイズが小さいことに起因し得る。
表10:ミニブタにおけるTU-酸開始-PLGポリマー製剤のPKパラメータ
【表10】
NC:AUCinfは計算されなかった
【0192】
実施例7
約19kDaの重量平均分子量を有するTU-PLGコポリマー製剤(電子ビーム後)におけるラクチド-グリコリドモノマー比の効果を調べるために、更なるTU-PLGコポリマー製剤を実施例1に記載される方法に従って調製する。この例では、すべての製剤が、(a)溶媒としてNMPおよび共溶媒としてPEG300を有する共溶媒系であって、製剤中の溶媒(すなわち、%NMP+%PEG300)の総量は製剤の50重量%であり、NMP対PEG300の重量比は4:1である、共溶媒系と、(b)製剤の30重量%の量の、約19kDaの電子ビーム後の重量平均分子量を有する酸開始ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)コポリマーであって、一部の製剤は70:30の目標ラクチド-グリコリドモノマー比を有し、他の製剤は85:15の目標ラクチド-グリコリドモノマー比を有する、酸開始ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)コポリマーと、(c)約45μm~約75μmのDv,50(または約53μmもしくは約67μmを目標とする)および約300μm~約450μmのDv,90(または約340μmもしくは約412μmを目標とする)を有する、製剤の20重量%の量のウンデカン酸テストステロン(TU)とを含む。例えば、試験製剤3および7は、70:30の目標ラクチド-グリコリドモノマー比を有する試験製剤の例である(実施例2を参照)。85:15の目標ラクチド-グリコリドモノマー比を使用する以外は、同様の試験製剤を調製する。
【0193】
これらの追加の試験製剤を、実施例1で概説した方法に従ってラットにおいてin vivoで評価する。TU放出プロファイルは、上記の実施例に記載されるように、投与前および投与後の様々な時間間隔で血漿テストステロン濃度を測定することによって得られる。この実験の結果は、製剤からのTUの放出速度および放出持続時間の制御に及ぼす19kDaポリマー製剤中のポリマーモノマー比の影響を実証している。
【0194】
実施例8
以下の実施例は、約19kDaの重量平均分子量を有するTU-PLGコポリマー製剤(電子ビーム後)のミニブタモデルにおけるin vivoでの製剤の血漿テストステロンプロファイルおよびPK特性に及ぼすTUコポリマー/溶媒製剤の用量比例性の影響を示す。
【0195】
TU-PLGコポリマー製剤を、実施例1に記載の方法に従って調製した。製剤の詳細を表11に示す。
表11:TU-酸開始-PLGポリマー製剤の組成
【表11】
【0196】
試験製剤14を様々な用量でミニブタに注射した。試験製剤14は、70:30の目標L:Gモノマー比および19kDaの重量平均分子量を有する30重量%の酸開始ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)コポリマー、40重量%のNMP、10重量%のPEG300、および58μmのDv,50および4のスパンを有する20重量%のTUである。図10は、低用量20mg/kg(1×1mL)(黒色の-▲-)、中用量90mg/kg(3×1.5mL)(灰色の-△-)、および高用量160mg/kg(4×2mL)(破線--△--)を投与されたミニブタのTU in vivo血漿テストステロンプロファイルを示す。Tmax、Cmax、半減期、ならびにAUCinfおよびAUCinf/用量を表12に提供する。結果は、投与量の増加がCmaxを増加させるが、Tmaxに及ぼす影響は最小限であることを示す。
表12:ミニブタにおける漸増用量でのTU酸開始-PLGポリマー製剤のPKパラメータ
【表12】
N/C:高いAUC%外挿値のために計算されなかった。
【0197】
実施例9
ミニブタモデルにおけるin vivoでの製剤の血漿テストステロンプロファイルおよびPK特性に対するTUコポリマー/溶媒製剤の用量比例性の効果を調べるために、約9kDaの重量平均分子量を有するTU-PLGコポリマー製剤(電子ビーム後)を実施例1に記載の方法に従って調製する。
【0198】
この例では、製剤は、(a)溶媒としてNMPおよび共溶媒としてPEG300を有する共溶媒系であって、製剤中の溶媒(すなわち、%NMP+%PEG300)の総量は製剤の50重量%であり、NMP対PEG300の重量比は4:1である、共溶媒系と、(b)製剤の30重量%の量の、約9kDaの電子ビーム後の重量平均分子量および70:30の目標ラクチド-グリコリドモノマー比を有する酸開始ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)コポリマーと、45~75μmのDv,50および約4~6のスパンを有する20重量%のTUとを含む。
【0199】
この追加の試験製剤を、実施例8に記載したものと同様の様々な用量で、実施例1に概説した方法に従ってミニブタにおいてin vivoで評価する。血漿テストステロンプロファイルは、上記の実施例に記載されるように、投与前および投与後の様々な時間間隔で血漿テストステロン濃度を測定することによって得られる。この実験の結果は、血漿テストステロンプロファイルおよびPKパラメータに及ぼす9kDaポリマー製剤における用量比例性の影響を実証している。
【0200】
実施例10
TUコポリマー/溶媒製剤のin vitro放出特性に及ぼすPEG分子量および末端基の影響を調べるために、更なるTU-PLGコポリマー製剤を実施例1に記載の方法に従って調製した。
表13:TU-酸開始-PLGポリマー製剤の組成。
【表13】
注釈:組成は、有効数字/丸めのために合計100%にならない場合がある。
【0201】
この例では、製剤は、(a)溶媒としてNMPおよび共溶媒としてPEGを有する共溶媒系であって、製剤中の溶媒(すなわち、%NMP+%PEG)の総量は製剤の50重量%であり、NMP対PEGの重量比は4:1である、共溶媒系と、(b)製剤の30重量%の量の、約19kDaの電子ビーム後の重量平均分子量および70:30の目標ラクチド-グリコリドモノマー比を有する酸開始ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)コポリマー、48μmのDv,50および5のスパンを有する20重量%のTUとを含む。
【0202】
これらの追加の試験製剤15、16、および17を、実施例1で概説した方法に従ってin vitroで評価した。図11は、累積TU放出として示される、in vivo放出試験(試験製剤15((・・Δ・・)、16(--+--)、および17(-X-)の結果を示す。この実験の結果は、製剤からのTU放出の望ましい速度および持続時間を維持しながら、様々な末端基および分子量を有する様々な低分子量PEGを製剤に使用できることを実証している。
【0203】
これらの追加の試験製剤(15、16、おいよび17)を、実施例1で概説した方法に従ってラットにおいてin vivoで評価する。TU放出プロファイルは、上記の実施例1に記載されるように、投与前および投与後の様々な時間間隔で血漿テストステロン濃度を測定することによって得られる。この実験の結果は、TU-PLG製剤を使用して達成される血漿テストステロンプロファイルおよびPKパラメータの制御に及ぼすPEG末端基およびPEG分子量の影響を実証する。
【0204】
本明細書に記載の実施形態の様々な変更は、当業者には明らかであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】