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特表2023-544312基材上に画像を形成するためのインクジェットインク、インクジェット印刷方法及びインクセット、並びにインクジェットインクを形成するための水性顔料分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】基材上に画像を形成するためのインクジェットインク、インクジェット印刷方法及びインクセット、並びにインクジェットインクを形成するための水性顔料分散液
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/326 20140101AFI20231016BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20231016BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231016BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C09D11/326
C09D11/40
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519664
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2021077306
(87)【国際公開番号】W WO2022073937
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】2026619
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506176906
【氏名又は名称】ゼイコン マニュファクチュアリング ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オプ デ ベーク, ワーナー ジョセフ ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ロデ エリック ドリス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ゲンズ, ウォウター ジェローム マリア
(72)【発明者】
【氏名】デ ボス, ニルス マルガレータ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウィンズ, ロア
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039BC09
4J039BC10
4J039BC15
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA43
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
基材上に画像を形成するためのインクジェットインクであって、顔料P、顔料Pを分散させるための第1のブロックコポリマー分散剤D1及び顔料Pを分散させるための第2のブロックコポリマー分散剤D2、並びに水性キャリアを含み;前記第1のブロックコポリマー分散剤D1が前記第2のブロックコポリマー分散剤D2とは異なり、各ブロックコポリマー分散剤D1、D2が、顔料Pに固定化するための固定化セグメントA1、A2を含み、ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれが、顔料Pの水性相安定化のためのマトリックス安定化セグメントMをさらに含み、第1のブロックコポリマー分散剤D1の固定化セグメントA1が繰り返し単位R1を含み、第2のブロックコポリマー分散剤D2の固定化セグメントA2が繰り返し単位R2を含み、繰り返し単位R1が繰り返し単位R2より疎水性が低い、インクジェットインク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に画像を形成するためのインクジェットインクであって、顔料P、前記顔料Pを分散させるための第1のブロックコポリマー分散剤D1及び前記顔料Pを分散させるための第2のブロックコポリマー分散剤D2、並びに水性キャリアを含み;前記第1のブロックコポリマー分散剤D1が前記第2のブロックコポリマー分散剤D2とは異なり、各ブロックコポリマー分散剤D1、D2が、前記顔料Pに固定化するための固定化セグメントA1、A2を含み、前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれが、前記顔料Pの水性相安定化のためのマトリックス安定化セグメントMをさらに含み、前記第1のブロックコポリマー分散剤D1の前記固定化セグメントA1が繰り返し単位R1を含み、前記第2のブロックコポリマー分散剤D2の前記固定化セグメントA2が繰り返し単位R2を含み、前記繰り返し単位R1が前記繰り返し単位R2より疎水性が低い、インクジェットインク。
【請求項2】
前記繰り返し単位R1がハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R1を有し、δ(極性+水素)R1が7.2cal1/2cm-3/2を超え、前記ハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)が√[δ(極性)+δ(水素)]と定義される、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記繰り返し単位R1が非イオン性繰り返し単位である、請求項1又は2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記繰り返し単位R2がハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R2を有し、δ(極性+水素)R2が7.2cal1/2cm-3/2未満であり、前記ハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)が√[δ(極性)+δ(水素)]と定義される、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
R1の前記極性結合値:δ(極性)R1が4.4cal1/2cm-3/2を超える、請求項2~4のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
R2の前記極性結合値δ(極性)R2が4.4cal1/2cm-3/2未満である、請求項4又は5に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記第1のブロックコポリマー分散剤D1の前記固定化セグメントA1がR1とは異なる別の繰り返し単位R1’を有し、前記他の繰り返し単位R1’が、好ましくは、7.2cal1/2cm-3/2を超えるハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R1を有し;及び/又は
前記第2のブロックコポリマー分散剤D2の前記固定化セグメントA2がR2とは異なる別の繰り返し単位R2’を有し、前記他の繰り返し単位R2’が、好ましくは、7.2cal1/2cm-3/2未満のハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R2を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
前記固定化セグメントA1が少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成され、前記固定化セグメントA2が少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成され、前記モノマーM、Mが、メタクリレート、アクリレート、及びビニルモノマーからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
前記固定化セグメントA2の前記モノマーMnが、アルキル、アルケニル、又はアリール基を含む、請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
前記固定化セグメントA2の前記モノマーMnが、ベンジルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、p-トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、p-トリルアクリレート、ソルビルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及びこれらのあらゆる混合物のうちの少なくとも1種である、請求項8又は9に記載のインクジェットインク。
【請求項11】
前記固定化セグメントA1の前記モノマーMnが、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニルピロリドン(NVP)、ビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、)及び2-(2エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルアクリレート、並びにこれらのあらゆる混合物のうちの少なくとも1種である、請求項8~10のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項12】
前記固定化セグメントA1の前記モノマーMnがアクリレート又はメタクリレートであり、モノエチレングリコール基又はポリエチレングリコール基を含む、請求項11に記載のインクジェットインク。
【請求項13】
前記マトリックス安定化セグメントMが、前記顔料の水性相安定化のためのイオン性親水性繰り返し単位を得るための少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成され、前記イオン性親水性繰り返し単位が、任意選択で、中和された酸基、中和された塩基性基、又は四級アンモニウム基などの他のイオン性官能基を含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項14】
前記マトリックス安定化セグメントMが、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、クロトン酸、クロトン酸モノエステル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルアクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成される、請求項1~13のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項15】
前記マトリックス安定化セグメントMが、イオン性部分を含む少なくとも1種の繰り返し単位R3を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項16】
前記固定化セグメントA1、A2の前記繰り返し単位R1、R2がイオン性基を有さない、請求項1~15のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項17】
前記固定化セグメントA1が繰り返し単位の数nを有し、前記繰り返し単位R1が、繰り返し単位の総数n1の少なくとも50 数%、好ましくは繰り返し単位の総数n1の少なくとも80 数%であり;及び/又は
前記固定化セグメントA2が繰り返し単位の数nを有し、前記繰り返し単位R2が、繰り返し単位の総数n2の少なくとも50 数%、好ましくは繰り返し単位の総数n2の少なくとも80 数%である、請求項1~16のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項18】
前記ブロックコポリマー分散剤D1と前記ブロックコポリマー分散剤D2との重量比が、0.1~10、好ましくは0.2~5である、請求項1~17のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項19】
前記顔料Pと、前記ブロックコポリマー分散剤D1と前記ブロックコポリマー分散剤D2の和との重量比が、0.2~10.0、好ましくは0.4~5.0である、請求項1~18のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項20】
前記顔料Pと前記ブロックコポリマー分散剤D1との重量比が、0.05~10.0、好ましくは0.1~5.0である、請求項1~19のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項21】
前記顔料Pと前記ブロックコポリマー分散剤D2との重量比が、0.05~10.0、好ましくは0.1~5.0である、請求項1~20のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項22】
前記ブロックコポリマー分散剤D1及び/又は前記ブロックコポリマー分散剤D2がジブロックコポリマーである、請求項1~21のいずれか一項に記載のインクジェットインク。
【請求項23】
インクジェットインクを形成するための顔料分散液であって、顔料P、前記顔料Pを分散させるための第1のブロックコポリマー分散剤D1及び前記顔料Pを分散させるための第2のブロックコポリマー分散剤D2、並びに水性キャリアを含み;前記第1のブロックコポリマー分散剤D1が前記第2のブロックコポリマー分散剤D2とは異なり、各ブロックコポリマー分散剤D1、D2が、前記顔料Pに固定化するための固定化セグメントA1、A2を含み、前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれが、前記顔料Pの水性相安定化のためのマトリックス安定化セグメントMをさらに含み、前記第1のブロックコポリマー分散剤D1の前記固定化セグメントA1が繰り返し単位R1を含み、前記第2のブロックコポリマー分散剤D2の前記固定化セグメントA2が繰り返し単位R2を含み、前記繰り返し単位R1が前記繰り返し単位R2より疎水性が低く;
前記水性キャリアが、水、及び任意選択で、前記水性キャリアの総重量の20重量%未満、好ましくは2重量%未満である総量の水溶性有機溶媒を含有する、顔料分散液。
【請求項24】
前記繰り返し単位R1が、ハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R1(=√[δ(極性)+δ(水素)])を有し、δ(極性+水素)R1が7.2cal1/2cm-3/2を超える、請求項23に記載の顔料分散液。
【請求項25】
前記顔料分散液中の顔料Pの量が、前記顔料分散液の重量に基づいて10~80重量%の範囲である、請求項23又は24に記載の顔料分散液。
【請求項26】
複数のインクジェットインクを基材に適用することによって前記基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法であって、前記複数のインクジェットインクが、請求項1~22のいずれか一項に記載のインクを含む、インクジェット印刷方法。
【請求項27】
各インクジェットインクの液滴を前記基材上に噴射して、カラー画像を前記基材上に形成するステップを含む、請求項26に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項28】
複数のインクを含むインクジェットインクセットであって、前記インクのうちの少なくとも1種が請求項1~22のいずれか一項に記載のインクである、インクジェットインクセット。
【請求項29】
デジタルデータシグナルに応答するインクジェットプリンターであって、請求項1~22のいずれか一項に記載のインクジェットインク又は請求項28に記載のインクジェットインクセットを備えた、インクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明の分野は、基材上に画像を形成するためのインクジェットインク、インクジェット印刷方法、及びインクジェットインクのインクセット並びにインクジェットインクを形成するための水性顔料分散液に関する。基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法は、本発明によるインクジェットインクを使用する。基材上に画像を形成するためのインクジェットインクのインクセットは、本発明によるインクジェットインクを含む。本発明の分野は、本発明によるインクジェットインクを形成するための水性顔料分散液にさらに関する。
【0002】
[背景]
基材上に複数のインクジェットインクを加えることによる、基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法は一般的に公知である。産業用印刷用途のためのインクジェットインクは、主として、着色剤として顔料を使用するが、例外として、織物工業では多くの場合依然として反応性染料系のインクジェットインクを使用している。顔料は、キャリア媒体に実際に溶解している染料とは対照的に、インクジェットインクキャリア中でも固体のままでいる固体材料である。顔料粒子はインクに微細分散し、ナノメートルスケールのサイズである。典型的なインクジェット印刷方法は、3又は4色のインクジェットインクを使用して、多色の画像を作り出す。典型的な色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)である。CMYカラーインクジェットインクは、典型的には有機顔料でできており、一部は錯体中に金属原子を含む一方で、Kインクは、典型的にはカーボンブラックでできている有機顔料を使用する。顔料粉末は、ナノメートル粒子としては市販されていないが、合成プロセスの間に形成された顔料粒子の集塊及び凝集体として販売されている。顔料の集塊及び凝集体はより小さくされる必要があり、典型的には、粉砕、微粉砕、又は集塊及び凝集体を砕く他の技法によりナノメートルスケールサイズにされるだろう。顔料粉末粒子の粒径減少は、多くの場合、後の段階でインクに使用されるキャリア媒体中で実施される。顔料粒子をより小さくするそのようなプロセスステップは、多くの場合、最終インク中よりも高い顔料濃度で行われ、その結果顔料分散液と称される。
【0003】
先に議論された通り、顔料は、30~300nmのサイズに機械的に砕かれるが、それは、顔料が再集塊するのを物理的及び/又は静電的に防ぐために分散剤(又は界面活性剤)を加えることにより安定化される必要がある。典型的には、顔料表面と、ポリマー性分散剤(例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー)又は界面活性剤であり得る分散剤との間に化学結合がないので、これは物理化学的現象である。
【0004】
場合によっては、共有結合する化学物質も水性インク中の顔料粒子安定化に使用され得るが、これは、大抵は費用のかかる製造方法を必要とする。
【0005】
顔料分散液を製造する公知の手法は、ランダム重合された分散剤に基づいている:分散剤は、例えばフレキソ印刷用のアナログインクに使用されるが、インクジェットインクにも使用される。典型的には、ランダムポリマーは2種のモノマーでできており、一方はより顔料親和性であり、他方はよりキャリア液体と相溶性があるか、又はいわばマトリックス親和性がある。これらのモノマーはポリマー中にランダムに広がっており、そのためポリマー構造(すなわちモノマー配列)及びモノマー性繰り返し単位の数は事前に定義されていない。そのため、いくつかのポリマーは、液体中の顔料粒子を安定化させることが可能な好都合な構造を有するだろうが、安定化にとって「悪い」構造を有する非活性集団も同様にある(例えば、充分でない顔料アンカー、互いの顔料アンカーに充分に近接していない、マトリックス親和性基が少なすぎる)。これらの部分は、多くの場合吸着されないか、又は容易に脱着し、安定でない分散液をもたらす。インクジェットインクのための分散液を製造する際に望ましくない他の副次的作用が起こり得る。主な問題のうち2つは、吸収されていない高分子量分散剤分子がマトリックス中に存在し、したがって、より高い分散液粘度の原因になることである。さらに、最終インクの粘弾性が悪影響を受け得る。粘度増加及び最終インクの影響を受けた粘弾性の両効果は、ミスト形成増加などにより、液滴形成プロセスを乱し得る。
【0006】
別の公知の手法はブロックコポリマー分散剤である。疎水性及び親水性ブロックセグメントを含むブロックコポリマー分散剤は、多くのインクジェットインク特許に開示されてきた。米国特許第5859113号(DU PONT)は、ポリマー性Aセグメント及びポリマー性Bセグメントを有するABブロックコポリマー分散剤を開示する。
【0007】
ブロックコポリマー分散剤などの多種多様なポリマー性分散剤が提案されてきたが、特にインクジェットにおける顔料の分散安定性には、依然としてさらなる改善が必要である。一貫した画像品質のために、インクジェットインクは、例えば、顧客へのインクの輸送若しくは貯蔵の間の高温(60℃超)並びに水の蒸発及び水溶性有機溶媒の濃度上昇などの使用中のインクジェットインクの分散媒の変化又は機能性ポリマーの添加による基材上のインクの密着性、乾燥、耐水性若しくは耐引掻性の改善に対処することが可能である分散安定性を必要とする。
【0008】
産業用インクジェットプロセスにおいて、特に、より高い噴射頻度、より小さい液滴形成、より高い噴射温度、及び/又はより困難なシングルパス印刷用途で、インクジェット印刷に使用可能な顔料分散液の安定性の要求も増加しつつある。
【0009】
全てのインク添加剤(界面活性剤、ラテックス、ポリマー、オリゴマー、(水溶性)有機溶媒など)は、分散剤と競合して顔料表面と相互作用し、そのため、顔料分散液安定性に悪影響を与え得る。これらの添加剤は、典型的には、本質的に有機であり(インクマトリックスと非相溶性ですら、ある程度まで)、添加剤は、特に水性インク中で顕著に、顔料の同じ有機表面をめぐって競合するだろう。これが印字ヘッド内部で起こる場合、それは、表面からの分散剤の除去、安定性の低下又は破壊をもたらし、ノズルを不可逆的に詰まらせて、例えば、空白行及び画像品質の深刻な低下、又はヘッドへのインクフローに悪影響を及ぼす、大きすぎる粒子を含むインクをもたらす。
【0010】
要求増加のために、着色顔料の種類に応じた最適化など、インク添加剤をさらに最適化して、一貫した画像品質及び信頼性のあるインクジェットプロセスを得ることが必要である。
【0011】
さらに、着色顔料の一部では、インクジェットインクに要求される顔料安定性を高めながら、簡単な方法で、例えば微粉砕プロセスを使用して微細な顔料分散液を得ることがより困難であることが見出された。
【0012】
得られる顔料分散液が最終インクジェットインクを処方するための広い多用途性を与えるように、追加の共溶媒を必要とせず、顔料分散液の高レベルの安定性を維持しながら、高度の微粉砕性能(すなわち、所望の粒径に非常に容易に微粉砕することが可能である)を異なる顔料に与えるブロックコポリマー分散剤を処方する要求が依然として存在する。
【0013】
したがって、そのような安定な顔料インクジェットインクであって、インクジェットインク中の顔料の分散安定性がより多様なインクジェットインクに関して容易に増大され得る顔料インクジェットインクを製造できることが必要である。
【0014】
[発明の概要]
本発明の第1の態様によると、基材上に画像を形成するためのインクジェットインクであって、顔料P、顔料Pを分散させるための第1のブロックコポリマー分散剤D1及び顔料Pを分散させるための第2のブロックコポリマー分散剤D2、並びに水性キャリアを含み;前記第1のブロックコポリマー分散剤D1が前記第2のブロックコポリマー分散剤D2とは異なり、各ブロックコポリマー分散剤D1、D2が、顔料Pに固定化するための固定化セグメントA1、A2を含み、ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれが、顔料Pの水性相安定化のためのマトリックス安定化セグメントMをさらに含み、第1のブロックコポリマー分散剤D1の固定化セグメントA1が繰り返し単位R1を含み、第2のブロックコポリマー分散剤D2の固定化セグメントA2が繰り返し単位R2を含み、繰り返し単位R1が繰り返し単位R2より疎水性が低い、インクジェットインクが提供される。
【0015】
本発明の別の態様によると、複数のインクジェットインクを基材上に適用することによる、基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法であって、複数のインクジェットインクが本発明によるインクを含むインクジェット印刷方法が提供される。
【0016】
本発明の別の態様によると、複数の着色インクを含むインクジェットインクセットであって、インクのうち少なくとも1種が本発明によるインクであるインクジェットインクセットが提供される。
【0017】
本発明の別の態様によると、デジタルデータシグナルに応答するインクジェットプリンターであって、本発明によるインクジェットインク又は本発明によるインクジェットインクセットを備えたインクジェットプリンターが提供される。
【0018】
本発明の別の態様によると、インクジェットインクを形成するための水性顔料分散液であって、顔料P、顔料Pを分散させるための第1のブロックコポリマー分散剤D1及び顔料Pを分散させるための第2のブロックコポリマー分散剤D2、並びに水性キャリアを含み;前記第1のブロックコポリマー分散剤D1が前記第2のブロックコポリマー分散剤D2とは異なり、各ブロックコポリマー分散剤D1、D2が、顔料Pに固定化するための固定化セグメントA1、A2を含み、ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれが、顔料Pの水性相安定化のためのマトリックス安定化セグメントMをさらに含み、第1のブロックコポリマー分散剤D1の固定化セグメントA1が繰り返し単位R1を含み、第2のブロックコポリマー分散剤D2の固定化セグメントA2が繰り返し単位R2を含み、繰り返し単位R1が繰り返し単位R2より疎水性が低く;水性キャリアが水を含む、水性顔料分散液が提供される。
【0019】
[本発明の有利な効果]
安定な顔料インクジェットインクの容易な製造が、第1のブロックコポリマー分散剤D1と第2のブロックコポリマー分散剤D2の組合せを使用して可能であることが本発明者らにより見出された。第1のブロックコポリマー分散剤D1の繰り返し単位R1は、第2のブロックコポリマー分散剤D2の繰り返し単位R2より疎水性が低い。第1のブロックコポリマー分散剤D1は、インクジェットインクに要求される顔料安定性を改善し、同時に、簡単な方法での、例えば微粉砕プロセスを使用する微細な顔料粒子を有する微細な顔料分散液の容易な製造を増大させることが見出された。第2のブロックコポリマー分散剤D2は、インクジェットインクに要求される顔料安定性をさらに高める。顔料分散液又はインクジェットインク中の第1のブロックコポリマー分散剤D1と第2のブロックコポリマー分散剤D2の組合せは、驚くべきことに、これらの利点を、有害な作用なしに組み合わせる。さらに、有益な微細な顔料粒子を得るために必要な水溶性有機共溶媒はないか、又は最低限である。したがって、本発明による顔料分散液は、水溶性有機共溶媒を含有しないか、又は種々の量の水溶性有機共溶媒を含有するなど、種々の組成を有するインクジェットインクを与えるために多用途に使用できる。
【0020】
2種のブロックコポリマー分散剤の使用は、顔料分散液の複雑さを増加させるように見えることもあるが、微粉砕性能の上昇及び異なるブロックコポリマー分散剤の混合比の柔軟性は、多用途で安定な顔料分散液の製造を達成する。
【0021】
顔料は、異なる疎水性の程度と共に存在する表面を有し得るが、これは、顔料表面の一部が、顔料表面の他の部分より疎水性が低くなり得ることを意味する。ブロックコポリマー分散剤の非常に特化した設計/選択が、顔料表面全体を覆い、それにより、非常に安定な顔料分散液を得るために必要であることが見出された。
【0022】
さらに、インクに顔料Pを分散させるための選択されたブロックコポリマー分散剤D1、D2は、分散剤と競合し得る水溶性有機溶媒などの種々のインク添加剤がインクジェットインクに加えられる場合でも、生じたインクジェットインク中で顔料Pが再集塊することを防ぎ得る。
【0023】
さらに、顔料Pを分散させるためのブロックコポリマー分散剤D1、D2の使用は、インク耐久性及び一貫した画像品質への要求が増加している産業用インクジェット印刷において噴射安定性を支援し、増大させ得る。
【0024】
(顔料分散安定性)
本願で定義される顔料分散液安定性は、顔料分散液の顔料粒子粉砕特性を含み得て、高温条件(室温又はインクの通常の操作温度に対して)などの厳しい条件並びに競合性の水溶性有機溶媒をキャリア及び/若しくは他のインク添加剤に加えること並びに/又はその量を増やすことによるなどの重大な水性キャリア条件に曝された場合の顔料分散液安定性特性を含み得る。
【0025】
顔料分散液の顔料粒子粉砕特性は、顔料の集塊及び凝集体のサイズを30~300nmなどのナノメートルサイズまで容易に減少させる能力を示し、それは、ブロックコポリマー分散剤を加えて、顔料が再集塊するのを物理的及び/又は静電的に防ぐことにより安定化される。
【0026】
[発明の実施形態]
以下の例示的実施形態が記載されるが、本発明はこれらの実施形態に限定されない:
【0027】
(ブロックコポリマー顔料分散剤)
ブロックコポリマー分散剤D1、D2の組合せが、インク中の顔料安定性を全体的に改善することが見出された。異なる性質を有するブロックコポリマー分散剤D1、D2を選択することにより、顔料表面へのポリマー性分散剤の物理的相互作用を最適にするために、分散剤の特化した化学的微調整が可能になることが見出された。コポリマー分散剤の設計におけるバランスをとる行動は、顔料親和性/マトリックス親和性バランスにある。水性インクでは、ポリマーの相対的な親水性/疎水性の性質が重要であるようである。このようにして、顔料粒子Pはキャリアと相溶化され得る。ブロックコポリマー中の顔料親和性/マトリックス親和性バランスを変更することは、多くの方法で実施できる。
【0028】
本発明者らは、特に、顔料粒子表面に化学的に異なる領域を有する粒子に面する場合、セグメント中の繰り返し単位の数を変更するだけでは不充分であり得ることを見出した。この問題の解決法を提供するために、本発明者らは、おそらく繰り返し単位の数も異なる第2の化学的に異なる種類の繰り返し単位を有する第2のブロックコポリマー分散剤も使用することが非常に有益になり得ることを見出した。
【0029】
ブロックコポリマー分散剤は、ランダムコポリマーとは異なり、化学組成中の調整された分子構造(ポリマー中にブロック的に組み込まれている)、狭い分子量分布、及び/又は異なる構成ブロック若しくはモノマーの定義されたブロック鎖長を有する。ブロックコポリマー分散剤は、ポリマー中でブロックに配列された2種以上の異なるモノマーから作られ得る。
【0030】
本発明のブロックコポリマーのブロックは、狭い分子量分布、及び/又は定義されたブロック鎖長を有する。ブロックコポリマーは異なるブロックからなるポリマーにより定義され、各ブロックがサイズ及び組成に関して実質的に等しく、全てのポリマー分子が実質的に同じ組成及び長さを有することを意味する。同じ組成は、ブロックが1種の繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位が同じこと、又は、ブロックが2種以上の異なる繰り返し単位を含む場合、それぞれの繰り返し単位の間の数の比が同じであることを意味する。
【0031】
個別のブロック及び完成したポリマーもサイズが等しいという事実は、それぞれ個別のブロック又は完成したポリマーのM/Mとして定義される多分散性Dにより表すことができ、それは、好ましくは1.6未満、より好ましくは1.5未満である。
【0032】
例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2は、1.6未満、より好ましくは1.5未満の多分散性PDを有する。特定の実施形態において、ブロックコポリマー分散剤Dのブロックのそれぞれは、1.6未満、より好ましくは1.5未満の多分散性Dを有する。
【0033】
顔料分散剤として通常使用されるランダムコポリマーと比較すると、ブロックコポリマー分散剤中の顔料親和性モノマーは、1つ又は複数の適切なサイズ及び化学作用のマトリックス親和性モノマー系ブロックの隣にある適切なサイズ及び化学作用のブロックとして作られ得る。これにより、特定の顔料とブロックコポリマー系分散剤との間の相互作用を微調整し、最大化する選択肢が作られる。最大化された相互作用は、顔料表面との分散剤の強力な物理化学的結合を生み出すだろう。分散剤は顔料の表面に配置されて顔料の再集塊を防ぐので、顔料表面への分散剤のこの強力な固定化は、顔料表面からのポリマーの脱着を妨げるものであり、特に最終インクに使用される場合高度に安定な顔料分散液の作製を可能にし得て、マトリックスに溶解した低レベルの分散剤の利点をさらに提供し得る。
【0034】
分散剤と顔料の強力な連結は、水性インク中で本質的に(少なくとも部分的に)疎水性である傾向があり、そのため、同様に有機顔料表面に到達したい他のインク添加剤の競合する相互作用にも耐えるだろう。
【0035】
例示的実施形態において、ブロックコポリマー分散剤Dは、ジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーから選択される。マトリックス安定化セグメントは、1つのモノマーから形成された1つのブロックを含み得て、別のモノマーから形成された別のブロックをさらに含み得る。固定化セグメントは、1つのモノマーから形成された1つのブロックを含み得て、別のモノマーから形成された別のブロックをさらに含み得る。そのため、ブロックコポリマー分散剤は、2つのブロックを有するジブロックコポリマーであるか、3つのブロックを有するトリブロックコポリマーであり得て、4以上の任意の他の好適な数のブロックを有し得る。
【0036】
ブロックコポリマー分散剤のマトリックス安定化セグメント及び固定化セグメントは、ブロックコポリマー分散剤に沿って任意の順序で配列され得る。
【0037】
例示的実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2は水溶性ブロックコポリマー分散剤である。ブロックコポリマーは、少なくとも15重量%の乾燥ポリマーが水中にある状態で、ブロックコポリマーが25℃の水に少なくとも1週間溶解したままである場合、好ましくは25℃の水に少なくとも1か月以上溶解したままである場合、より好ましくは、25℃の水中の溶解した乾燥ポリマーの重量パーセンテージが少なくとも20重量%であり、最も好ましくは、25℃の水中の溶解した乾燥ポリマーの重量パーセンテージが少なくとも25重量%以上である場合、「水溶性」と定義される。
【0038】
本発明によるブロックコポリマー分散剤のブロックは、開始剤部分、停止部分、末端基、及び/又は連結部分をさらに含有し得る。
【0039】
ブロックの繰り返し単位は置換基を含み得る。置換基は、ブロックを重合した後、又はブロックコポリマーを重合した後に、別の置換基に任意選択で転化され得て、それにより、繰り返し単位を修飾し得る。
【0040】
例示的実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2は直鎖ポリマー鎖により構成されている。別の例示的実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2は少なくとも部分的に架橋されており、その場合、ブロックコポリマー分散剤は顔料に付着しているか、又は少なくとも部分的に顔料をカプセル化している。
【0041】
ブロック分散剤D1及びD2は、2000~20000g/mol、より好ましくは3000~12000g/molのMwをそれぞれ有し、D1及びD2の固定化セグメントAの繰り返し単位の総数と、マトリックス安定化セグメントMの繰り返し単位の総数との比は、0.5~10、より好ましくは1~5の範囲である。分散剤の分子量が2000g/molより低い場合、分散安定性は維持されず、分子量が20000g/molより高い場合、分散液の粘度がしばしば高くなりすぎるか、又は分散安定性が、2つ以上の顔料粒子に固定化された分散剤ポリマー鎖により影響を受け得る。2000g/molを超える分子量を有するポリマー性分散剤は、結合剤の添加なしですら、インクの乾燥プロセスの間の基材への密着性の利点も与える。さらに、アナログ又はデジタルオーバープリントワニスの使用は、印刷された画像の性質、例えば、機械的抵抗及び耐薬品性、耐ホットスカッフ性(hot scuff resistance)、及び摩擦係数をさらに増加させることを支援し得る。
【0042】
ブロックコポリマー分散剤D1とD2の混合物の酸価は、50~200mg KOH/gポリマー、より好ましくは60~150mg KOH/gポリマーの範囲であり、水への良好な溶解度を可能にする。混合物の酸価は、個別のブロックコポリマー分散剤D1及びD2の酸価(AV)の測定/計算並びに次いで顔料分散液中のD1とD2の重量比に従った混合物のAvの計算により決定される。そのため、酸価は、マトリックス安定化セグメントと固定化セグメントの間の重量比の尺度である。マトリックス安定化セグメントの寄与が高すぎることを意味する高すぎるAVでは、ポリマー分散剤は、一時的に顔料表面から脱着し、例えば顔料分散安定性に影響する可能性がある。高すぎるAVの別の問題は、基材上のインク画像の耐水性が不充分であり得ることである。
【0043】
他方で、固定化セグメントの寄与が高すぎる場合の低すぎるAVでは、特に共溶媒が少量であるか又は共溶媒がない場合の微粉砕の場合、ポリマー分散剤の溶解度が効率よい微粉砕プロセスを与えるには不充分であり得る。共溶媒を実質的に含まない分散液ではインク処方の間にインク成分を自由に選べるので、共溶媒を実質的に含まない分散液の利益が非常に好ましいことに留意されたい。
【0044】
酸価の別の側面は、紙(すなわち、非塗工クラフト及びリサイクルされた、並びにオフセットコート媒体)及びフィルム基材の上の画像品質を改善するために典型的に使用されるプライマーとの相互作用の面での値の重要性である。アナログ的及びデジタル的に加えられたプライマーが使用されて、より低い色間滲み(intercolor bleeding)、より高い光学濃度などが達成される。しかし、プライマーは、典型的には、分散された顔料の安定性を減少させるか又は「クラッシュさせる(crash)」ように意図されるカチオン性成分(ポリマー性又は多価金属カチオン)又は酸性成分を含有する。そのようなプライマーは、顔料分散液の酸価が200mg KOH/gより低い場合に最良に機能する。クラッシュされた顔料と印刷された基材との間の最適な結合を作り出すために、そのようなプライマーは、多くの場合ポリマー性結合剤も含有する。
【0045】
ブロック分散剤D1、D2の適切な範囲の分子量と酸価の組合せは、例えば、その後に除去されなければならない溶媒の使用なしに、容易で費用対効果が高い方法で顔料分散液を調製することを支援するものである。その組合せは、非被覆段ボール上での色強度を増大させるために、例えば非被覆段ボールに印刷するためのインク組成物に典型的に使用され得るプライマーとの良好な相互作用も支援し得る。
【0046】
例示的実施形態において、固定化セグメントA1は少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成され、固定化セグメントA2は少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成され、モノマーM、Mは、メタクリレート、アクリレート、及びビニルモノマーからなる群から選択される。
【0047】
固定化セグメントは顔料に固定化するための固定化部分であり、ブロックコポリマー分散剤D1の固定化セグメントA1は、ブロックコポリマー分散剤D2の固定化セグメントA2とは異なる。
【0048】
(固定化セグメントA1)
第1のブロックコポリマー分散剤D1は、繰り返し単位R1を含む固定化セグメントA1を含む。第1のブロックコポリマー分散剤D1の繰り返し単位R1は、第2のブロックコポリマー分散剤D2の繰り返し単位R2より疎水性が低い。
【0049】
(非イオン性の疎水性が低い繰り返し単位R1)
固定化セグメントA1の繰り返し単位R1は、メタクリレート、アクリレート、及びビニルモノマーからなる群から選択され得る非イオン性の疎水性が低いモノマーMnを使用して形成される。
【0050】
特に、繰り返し単位R1は非イオン性繰り返し単位であり、これは、繰り返し単位R1がイオン性部分を含まないことを意味する。非イオン性繰り返し単位R1は、顔料Pとの固定化相互作用を増大させるように選択される。
【0051】
好ましくは、R1がR2より疎水性が低いことは、R2のハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R2より高いR1のハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R1を比較することに基づいている。本発明によるハンセン溶解度パラメーターは、HSPiPソフトウェアバージョン5.2.03を使用してY-MB法に従って計算される。
【0052】
ハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)は、繰り返し単位の極性結合値と繰り返し単位の水素結合値の和であり、ハンセン溶解度パラメーター理論によると、この和は、繰り返し単位の極性結合値の二乗と水素結合値の二乗の和の平方根と定義される:δ(極性+水素)=√[δ(極性)+δ(水素)]。
【0053】
好ましくは、繰り返し単位R1は、R1の極性結合値とR1の水素結合値の和であるハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R1を有し、δ(極性+水素)R1は7.2cal1/2cm-3/2を超える。
【0054】
R1の極性結合値とR1の水素結合値の和は、R1の極性結合値の二乗とR1の水素結合値の二乗の和の平方根と定義される:δ(極性+水素)=√[δ(極性)+δ(水素)]。
【0055】
例示的実施形態において、R1の極性結合値:δ(極性)R1は4.4cal1/2cm-3/2超である。
【0056】
好ましくは、固定化セグメントA1の疎水性が低い固定化モノマーMnは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAE(M)A)、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニルピロリドン(NVP)、及びビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、及び2-(2エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)など、それらの置換基のそれらの構造中にヘテロ原子を有する。
【0057】
具体例において、固定化セグメントA1のモノマーMnは、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニルピロリドン(NVP)、ビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、)及び2-(2エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルアクリレート、並びにこれらのあらゆる混合物のうちの少なくとも1種である。
【0058】
好ましい例において、固定化セグメントA1のモノマーMnはアクリレート又はメタクリレートであり、モノエチレングリコール基又はポリエチレングリコール基を含む。
【0059】
特定の例において、固定化セグメントA1は、少なくとも2種の異なる固定化モノマーMnを使用することにより形成され得る少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含有する。
【0060】
例示的実施形態において、第1のブロックコポリマー分散剤D1の固定化セグメントA1は、R1とは異なる別の繰り返し単位R1’を有する。好ましくは、他の繰り返し単位R1’は、7.2cal1/2cm-3/2を超えるハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R1を有する。前記実施形態において、R1’は、ブロックコポリマー分散剤D1の粉砕性能に追加の有益な寄与を与える。
【0061】
(固定化セグメントA2)
第2のブロックコポリマー分散剤D2は、繰り返し単位R2を含む固定化セグメントA2を含む。第1のブロックコポリマー分散剤D1の繰り返し単位R1は、第2のブロックコポリマー分散剤D2の繰り返し単位R2より疎水性が低い。
【0062】
(疎水性繰り返し単位R2)
固定化セグメントA2の繰り返し単位R2は、メタクリレート、アクリレート、及びビニルモノマーからなる群から選択され得る疎水性モノマーMnを使用して形成される。
【0063】
例示的実施形態において、繰り返し単位R2は、R2の極性結合値とR2の水素結合値の和であるハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R2を有し、δ(極性+水素)R2は7.2cal1/2cm-3/2未満である。繰り返し単位R2は繰り返し単位R1より疎水性が高く、R2の極性結合値と水素結合値の和がより低いことに対応する。
【0064】
例示的実施形態において、R2の極性結合値:δ(極性)R2は4.4cal1/2cm-3/2未満である。繰り返し単位R2は繰り返し単位R1より疎水性が高く、R2のより低い極性結合値に対応する。
【0065】
例示的実施形態において、固定化セグメントA2のモノマーMnは、アルキル、アルケニル、又はアリール基を含む。
【0066】
具体例において、固定化セグメントA2のモノマーMnは、ベンジルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、p-トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、p-トリルアクリレート、ソルビルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及びこれらのあらゆる混合物のうちの少なくとも1種である。
【0067】
特定の例において、固定化セグメントA2は、少なくとも2種の異なる固定化モノマーMnを使用して形成され得る少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含有する。
【0068】
例示的実施形態において、第2のブロックコポリマー分散剤D2の固定化セグメントA2は、R2とは異なる別の繰り返し単位R2’を有する。好ましくは、他の繰り返し単位R2’は、7.2cal1/2cm-3/2未満であるハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R2を有する。前記実施形態において、R2’は、ブロックコポリマー分散剤D2の顔料分散安定性効果に追加の有益な寄与を与える。
【0069】
(固定化セグメントA1、A2中の繰り返し単位R1と繰り返し単位R2の関係)
例示的実施形態において、固定化セグメントA1、A2の繰り返し単位R1、R2は、はイオン性基を有さない。したがって、固定化セグメントA1、A2は水性キャリア相に実質的に溶解しない。
【0070】
例示的実施形態において、固定化セグメントA1は繰り返し単位の数nを有し、繰り返し単位R1は、繰り返し単位の総数n1の少なくとも50 数%、好ましくは繰り返し単位の総数n1の少なくとも80 数%である。
【0071】
例示的実施形態において、固定化セグメントA2は繰り返し単位の数n2を有し、繰り返し単位R2は、繰り返し単位の総数n2の少なくとも50 数%、好ましくは繰り返し単位の総数n2の少なくとも80 数%である。
【0072】
(マトリックス安定化セグメントM)
ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれは、顔料Pの水性相安定化のためのマトリックス安定化セグメントMをさらに含む。
【0073】
例示的実施形態において、マトリックス安定化セグメントMは、少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成される。好ましくは、少なくとも1種のモノマーMnは、顔料の水性相安定化のためのイオン性親水性繰り返し単位を得るためのモノマーである。イオン性親水性繰り返し単位は、水性キャリア相へのマトリックス安定化セグメントMの溶解度を与える。イオン性親水性繰り返し単位は、任意選択で、中和された酸基、プロトン化アミノ基などの中和された塩基性基、又は四級アンモニウム基などの他のイオン性官能基を含有する。
【0074】
2種の異なるモノマーMnがマトリックス安定化セグメントMの形成に使用される場合、マトリックス安定化セグメントMは、それぞれの異なるモノマーMnによりそれぞれ形成される第1の繰り返し単位及び第2の繰り返し単位を有する。その場合、セグメントMの第1の繰り返し単位の数及び第2の繰り返し単位の数は、合計で、セグメントM、すなわち第1のブロックのマトリックス安定化パートの繰り返し単位の総数nとなる。
【0075】
特に、マトリックス安定化セグメントMの少なくとも1種のイオン性親水性繰り返し単位R3はイオン性部分を含む。
【0076】
さらに、マトリックス安定化セグメントMは、イオン性親水性繰り返し単位に加えて、他の非イオン性繰り返し単位を含み得る。例示的実施形態において、マトリックス安定化セグメントMはイオン性親水性繰り返し単位を含み得て、非イオン性マトリックス安定化繰り返し単位は(ポリ)グリコール官能基を含有する。マトリックス安定化セグメントMのイオン性親水性繰り返し単位及び非イオン性繰り返し単位は、ポリマーの水溶性に共同的に寄与する。
【0077】
(イオン性繰り返し単位R3)
具体例において、マトリックス安定化セグメントMは、それぞれイオン性親水性繰り返し単位R3を得るための少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成される。イオン性親水性繰り返し単位R3は、好ましくは、中和された酸基、中和された塩基性基、又は四級アンモニウム基などの他のイオン性官能基を含有する。
【0078】
イオン性親水性繰り返し単位R3は、水性キャリア相へのマトリックス安定化セグメントMの溶解度を与える。
【0079】
具体例において、マトリックス安定化セグメントMは、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、クロトン酸、クロトン酸モノエステル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルアクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーMnを使用して形成される。
【0080】
マトリックス安定化セグメントが酸官能基を有する親水性繰り返し単位を含有する場合、酸基のかなりの部分が、溶解度及び分散安定性を与えるために中和剤により中和される必要があり、好ましくは、pHレベルを7.5に設定することにより、全ての酸が中和され、最も好ましくは、pHは8.5以上に設定される。マトリックス安定化セグメントが塩基性官能基を有する親水性繰り返し単位を含有する場合、プロトン化アミノ基などの塩基性基のかなりの部分が、溶解度及び分散安定性を与えるために中和され、好ましくは、pHレベルを6.5に設定することにより、全ての塩基性基が中和され、最も好ましくは、pHは5.5以下に設定される。
【0081】
中和剤及びそのため繰り返し単位R3の対応する使用された塩対イオンの選択が、修飾された繰り返し単位R3を、異なる化学構造として考えられなければならないように決定する。
【0082】
酸基のための可能な中和剤は、トリメチルアミン及びトリエチルアミンなどの三級アミン、トリエタノールアミン、アンモニア、2-ジメチルアミノエタノール、2アミノ-2メチル1プロパノール、2(2-アミノ-エチルアミノ)エタノール、2アミノ-2メチル1プロパノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどである。
【0083】
アミノ基などの塩基性基のための可能な中和剤としては、塩化水素酸及び硫酸などの無機酸;並びに酢酸、クエン酸、マレイン酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、及びグリコール酸などの有機酸がある。本発明は、これらの例示されたものに限定されない。
【0084】
中和剤及び繰り返し単位R3の対応する塩対イオンの選択は、顔料粒子粉砕特性及び顔料分散の速度に対する効果を含み、並びに/又は過酷な条件に曝された場合の顔料分散安定性特性に対する効果を含む、顔料分散安定性に対する影響を有し得る。中和剤、pH値、及び対応する塩対イオンの選択は、最終インクの挙動、例えば、乾燥速度、オープンタイム、第1液滴信頼性、及び噴射安定性にも影響し得る。
【0085】
(顔料)
水性インクでは、顔料表面は、一般に、バルク液体よりも疎水性の性質を有する。したがって、アルキルアクリレート及びベンジルアクリレートのようなアリールアクリレートのような疎水性固定化モノマーを使用できる。しかし、顔料の一部は、疎水性が低いさらなる顔料表面を有することが見出され、これらの顔料は、1種のブロック分散剤のみでは、良好な微粉砕性能及び分散安定性を実現することがより困難であると見出された。
【0086】
顔料表面の差異は、化学分析により、若しくは顔料の合成手順により示され得るか、又はHSPIP/ハンセン溶解度法により実験的に示すことができる。この方法において、物質の溶解度が異なる溶媒中で評価され得て、結果として溶解度/相溶性が、水素力(hydrogen force)、双極子力(dipole force)、及びファンデルワールス/分散力として表され得る。明らかに異なる顔料表面を有し得る顔料は、a.o.PR122、PBk7、PB15.3、PY74、及びPY155である。
【0087】
そのため、ブロックコポリマー分散剤D1の固定化セグメントA1及びブロックコポリマー分散剤D2の固定化セグメントA2は、顔料表面の異なる固定化部位のために選択され得る異なる繰り返し単位を含有する。例えば、顔料の結晶構造の場合に、異なる化学的性質を有する表面が存在し得て、より高い顔料分散安定性を達成するための異なる固定化化学作用を必要とし得る。
【0088】
例示的な実施形態において、顔料Pは、インクの色を調整するために選択される着色顔料である。
【0089】
例示的な実施形態において、顔料Pは、任意選択で有機顔料の有機成分と錯体形成している金属原子を含む有機顔料である。
【0090】
例示的な実施形態において、顔料Pは、任意選択で金属酸化物を含む無機顔料である。
【0091】
特定の例示的な実施形態において、マゼンタ顔料は、ピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19、及びピグメントレッド202から選択されるキナクリドン顔料であるか、又はマゼンタ顔料はピグメントレッド57:1であり、並びに/又はシアン顔料は、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15.4、ピグメントブルー15.6であり、並びに/又はイエロー顔料は、ピグメントイエロー155及びピグメントイエロー74及びピグメントイエロー180から選択され、並びに/又はブラック顔料は、カーボンブラック、好ましくはピグメントブラック7である。
【0092】
(水性顔料分散液)
好ましくは、水性キャリア中の水の量は、水性キャリアの総重量の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも95重量%である。
【0093】
具体例において、水性キャリアは総量の水溶性有機溶媒を含有し、それは、水性キャリアの総重量の20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満である。好ましくは、水性キャリアは水溶性有機溶媒を実質的に含有しない。
【0094】
水性キャリア中の比較的多量の水及び/又は比較的少量の水溶性有機溶媒若しくは水溶性有機溶媒が全くないことは、水性顔料分散液から誘導されるインクジェットインクを製造することの多用途で容易な使用を増大させる。
【0095】
例示的実施形態において、顔料分散液中の顔料Pの量は、顔料分散液の重量に基づいて10~60重量%の範囲である。顔料分散液は、顔料分散液から誘導されたインクジェットインクと比べて、顔料Pの濃縮された分散液であり得る。一般に、インクジェットインク中の着色顔料Pの量は、インクジェットインクの重量に基づいて0.5~10重量%の範囲であり得る。無機顔料、好ましくは白色顔料の場合、顔料分散液中の顔料Pの量は、顔料分散液の重量に基づいて40~80重量%の範囲であり、最終インクジェットインク中で10~50重量%である。
【0096】
例示的実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1とブロックコポリマー分散剤D2との重量比は、0.1~10、好ましくは0.2~5である。
【0097】
例示的実施形態において、顔料Pと、ブロックコポリマー分散剤D1とブロックコポリマー分散剤D2の和との重量比は、0.2~10.0、好ましくは0.4~5.0である。
【0098】
例示的実施形態において、顔料Pとブロックコポリマー分散剤D1との重量比は、0.5~10.0、好ましくは0.1~5.0である。
【0099】
例示的実施形態において、顔料Pとブロックコポリマー分散剤D2との重量比は、0.05~10.0、好ましくは0.1~5.0である。
【0100】
(水性顔料分散液を調製する方法)
好ましくは、水性顔料分散液は、水溶性有機溶媒又は他の有機溶媒を使用せずに調製される。
【0101】
顔料分散液は、原料を適切な比で混合することにより調製される。顔料濃度は、典型的には、10~60重量%であり、顔料/ブロック分散剤の重量比は、典型的には、0.1~10である。ブロック分散剤として、本発明によるブロックコポリマー分散剤D1とブロックコポリマー分散剤D2の組合せが使用される。
【0102】
ブロックコポリマー分散剤D1とブロックコポリマー分散剤D2との重量比は、0.1~10、好ましくは0.2~5である。
【0103】
湿潤剤(典型的にはMw<1000g/mol)などのように、顔料、分散剤、及び水以外の(beside)他の成分を加えて、顔料分散プロセスを改善できる。
【0104】
好ましくは、水溶性共溶媒(アルキルエーテル又はグリコールのような)を使用しないか、又は限定された量のみの水溶性共溶媒が水性顔料分散液の調製に使用される。
【0105】
cowlsミキサー、溶解機のような当技術分野における公知の方法により、原料の非常に良好な混合を実施して、最終分散ステップを開始する前に非常に良好なプレミックスを得ることが有益である。
【0106】
分散方法に特定の限定は課せられない。分散方法の例は、ペイントシェーカー、横型及び縦型ビーズミル、並びに高圧ホモジナイザーである。顔料表面への分散剤の非常に良好な固定化及び又は非常に良好な静電立体安定化(electro steric stabilization)を確実にするために、高い温度(40~80℃)で微粉砕するか、又は特定の時間の間の微粉砕ステップの後に40~80℃で熱処理を実施することが有益になり得る。この熱処理は、静的にも動的(すなわち、熱処理の間の分散液のある種類の激しい撹拌/撹拌)にも実施できる。
【0107】
微粉砕が完了すると、微粉砕媒は、微粉砕された粒子から、濾過、メッシュスクリーンに通すふるい分けなどの従来の分離技法を使用して分離される。多くの場合、ふるいは、例えば、ビーズミル用の微粉砕機内に組み込まれている。
【0108】
好ましくは、ブロックコポリマー分散剤を水性媒体に溶解させてから予備分散液が製造される。溶解されたポリマーは、乾燥されたブロックコポリマーを、水及び必要な場合、追加の中和剤と少なくとも2時間室温で混合することにより得られる。溶解プロセスを加速させるために、撹拌及び/又は温度を60℃まで増加させることが使用され得る。
【0109】
(水性顔料インクジェットインク)
任意の量の追加の水及び水溶性有機共溶媒が顔料分散液に加えられて、本発明によるインクジェットが形成され得る。界面活性剤、結合剤、分散助剤、増粘剤、pH調整剤などの任意の他の好適な添加剤が顔料分散液に加えられて、本発明によるインクジェットインクが形成され得る。
【0110】
例示的実施形態において、インクは水性キャリアを有する水性インクである。水性キャリアは室温で液体である。水性キャリアは、水及び任意選択で、ブロックコポリマー分散剤D1、D2を含む顔料Pを運搬又は懸濁させるための水溶性有機共溶媒又は複数の共溶媒を含む。
【0111】
例示的実施形態において、インク中の顔料の量は、インクの総重量に対して少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%であり、好ましくは、インクは、25℃で高くとも20mPa.sの粘度を有する。
【0112】
例示的な実施形態において、インクジェットインクの粘度は、25℃で4~30mPa.s、好ましくは25℃で4~20mPa.sである。
【0113】
例示的な実施形態において、インクジェットインクの静的表面張力は17~35mN/mである。
【0114】
特に、インクは、基材への密着性、乾燥、基材上のインクの耐水性又は耐引掻性のうちの少なくとも1つを改善するための少なくとも1種のバインダー樹脂を含有し得る。前記バインダー樹脂は水溶性樹脂であり得るか、又は樹脂微粒子として与えられ得る。樹脂微粒子は、インクジェットインクに、エマルション又は格子(lattices)として分散される。
【0115】
インクジェットインク含有結合剤は、高い顔料安定性を維持しながら、基材への顔料の密着性を増大させるために使用され得る。本発明によるインクジェットインクの顔料分散液は、前記少なくとも1種のバインダー樹脂と組み合わせて使用される場合、高い安定性を維持することが見出された。
【0116】
(水溶性有機溶媒)
例示的実施形態において、水溶性有機溶媒は、ポリオール化合物、(ポリ)エチレングリコールエーテル又は(ポリ)プロピレングリコールエーテル化合物などのグリコールエーテル化合物のうち少なくとも1種を含む。本願の文脈におけるポリオール化合物は多価アルコールと同じであり、すなわち、例えばグリセロール又はプロピレングリコールのように、少なくとも2つのアルコール基を有する。特定の例示的な実施形態において、水溶性グリコールエーテル化合物はグリコールモノブチルエーテルである。
【0117】
基材へのインクの浸透性(湿潤性)を改善するための浸透剤である水溶性有機溶媒が選択され得る。浸透剤は、基材上のドット直径を調整するのを支援し、及び/又は顔料の基材への密着性を改善する。特に好適な浸透剤は、表面張力活性を有し、それによりインクの表面張力を低下させる。
【0118】
例示的な浸透剤としては、アルカンジオール及びグリコールエーテルがある。浸透性を有する水溶性有機溶媒が分散剤と競合する傾向があり、それが顔料を安定化させることが本発明者らにより見出された。
【0119】
例示的な浸透剤は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル又はエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールモノブチルエーテルである。ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、1,2-ヘキサンジオールのような数種の浸透剤が表面張力活性を有し、それによりインクの表面張力を低下させることが留意されるべきである。
【0120】
例示的な実施形態において、インク中の少なくとも1種の水溶性有機溶媒の重量濃度は、インクの総重量に基づいて、5重量%~40重量%の範囲、好ましくは5重量%~30重量%の範囲である。
【0121】
特定の実施形態において、インク中の少なくとも1種の浸透剤の重量濃度は、インクの総重量に基づいて、1重量%~15重量%の範囲、好ましくは2重量%~10重量%の範囲である。
【0122】
(水性顔料インクジェットインクセット)
具体例において、インクセットのインクジェットインクは、シアン顔料を含むシアンインク、マゼンタ顔料を含むマゼンタインク、イエロー顔料を含むイエローインク、及びブラック顔料を含むブラックインクを含む。インクセットは、任意の他の着色顔料インク及び/又は非着色顔料インクを含み得る。インクセットは、1つ又は複数の非顔料インクをさらに含み得る。
【0123】
(インクジェット印刷方法)
例示的実施形態において、インクジェット印刷方法は、各インクジェットインクの液滴を基材に噴射して、カラー画像を基材上に形成することを含む。
【0124】
特定の例示的な実施形態において、液滴は、インクジェットプリントヘッドを使用して噴射される。
【0125】
例示的実施形態において、インクジェットプロセスは、完成した段ボール、波形ライナー、紙及びフィルムラベルのようなラベル基材、又は柔軟性がある包装基材上に、シングルパスで、少なくとも30m/分、好ましくは少なくとも50m/分のスピードで画像を形成することを含む。
【0126】
[詳細な説明]
本明細書で使用される通り、用語「分散液」は、二相系であって、1相が、バルク物質全体に分布されている微粉砕された粒子(多くの場合コロイド状サイズ範囲である)からなり、粒子が分散相又は内相であり、バルク物質が連続相又は外相である二相系を意味する。
【0127】
本明細書で使用される通り、用語「分散剤」は、懸濁媒に加えられて、極めて微細な固体粒子の均一で最大の分離を促進する界面活性剤を意味する。顔料では、分散剤はポリマー性分散剤であり得て、分散剤及び顔料を含む分散液は、通常、分散装置を使用して調製される。
【0128】
本明細書で使用される通り、用語「水性」は、水又は水と少なくとも1種の水溶性若しくは部分的に水溶性の有機溶媒(共溶媒)の混合物を指す。本明細書で使用される通り、用語「水性インク(water based ink)」は、用語「水性インク(aqueous ink)」と同じ意味を有する。
【0129】
本明細書で使用される通り、用語「実質的に」は、著しい程度、ほとんど全てであることを意味する。
【0130】
本明細書で使用される通り、用語「インクセット」は、本発明に従ってインクジェットインクを基材上に加えることにより基材上に画像を印刷するためのパーツのキットとして使用されるインクジェットインクの組合せを意味する。特に、インクセットは、同じ印刷プロセスに共に使用されてカラー画像を基材上に形成し得るインクジェットインクの組合せである。
【0131】
本明細書の材料、方法、及び例は説明のためのものであり、限定的でないものとする。
【0132】
本明細書で使用される用語「ウレタン」は、
【化1】

などウレタンの異性体も含むと理解されなければならない。
【0133】
(水性インク)
インク中の着色剤の使用は、水性インクの最も本質的な形態である。しかし、ノズルでのインクの乾燥を防ぐために、インクジェット印刷方法に使用される水性インクは、典型的には、高沸点及び水への好都合な溶解度を有する水溶性有機溶媒も含む。この種類の溶媒は、水性インク中の保水剤とも考えられ得る。
【0134】
インクジェット印刷方法に使用される水性インクは、典型的には、インクの基材への浸透性(湿潤性)を改善する浸透剤である水溶性有機溶媒も含む。浸透剤は、基材上のドット直径を調整するのを支援し、及び/又は顔料の基材への密着性を改善する。特に好適な浸透剤は、表面張力活性を有し、それにより、インクの表面張力を低下させる。さらに、印刷ヘッド中、基材上などの水性インクの最低限の量の濡れ及び広がりを可能にするため、インクジェット印刷方法に使用される水性インクは、典型的には、1種又は複数の界面活性剤も含む。
【0135】
最後に、水性インク組成物は、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、結合剤、及び保存剤などの様々な種類の添加剤も含み得る。これらの種類の添加剤を水性インク組成物に加えると、組成物がインクジェットインクとしてより好都合に使用されることが可能になる。
【0136】
(顔料)
顔料は、好ましくは、優れた耐水性、耐光性、耐候性、及び耐ガス性などを与える観点から使用される。本発明に使用され得る顔料の例としては、従来の有機顔料及び無機顔料がある。
【0137】
顔料は、HERBST,Wら、Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.2nd edition.vch,1997により開示されるものから選択され得る。
【0138】
顔料インクジェットインク中の顔料粒子は、インクジェット印刷装置を通る、特に吐出ノズルでのインクの自由流動を可能にするほど充分に小さくなくてはいけない。最大の色の濃さのため、及び沈降を緩徐にするためにも小粒子を使用することが望ましい。
【0139】
顔料インクジェットインク中の顔料の平均粒径は、5nm~1μm、特に好ましくは5nm~500nm、及び最も好ましくは30nm~300nmでなくてはならない。より大きい顔料粒径は、本発明の目的が達成される限り使用され得る。
【0140】
顔料は、顔料インクジェットインク中に、顔料インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~30重量%、好ましくは1~10重量%の量で使用される。
【0141】
本発明に使用され得るシアン顔料の例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:6、16、及び22、並びにC.I.バットブルー4及び6がある。これらのシアン顔料は個別に使用され得るか、又は2種以上の顔料の組合せが使用され得る。
【0142】
本発明に使用され得るマゼンタ顔料の例としては、C.1.ピグメントレッド5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、及び122;キナクリドン固溶体146、147、150、185、238、242、254、255、266、及び269、並びにC.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、43、及び50がある。キナクリドン混合結晶顔料も使用できる。
【0143】
本発明に使用され得るイエロー顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー10、11、12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、166、168、180、185、及び213がある。
【0144】
C.I.ピグメントグリーン36及び7、ピグメントバイオレット23、ピグメントオレンジ34及び64のような他の有機顔料を使用して、色域を増大させることができる。
【0145】
本発明に使用され得るブラック顔料の例としては、アニリンブラック、ルモゲンブラック、及びアゾメチンブラックなどの有機顔料並びにカーボンブラック及び酸化鉄などの無機顔料がある。さらに、上述のイエロー顔料、マゼンタ顔料、及びシアン顔料などの複数の着色顔料が一緒に混合されて、ブラック顔料として使用され得る。
【0146】
本発明に使用され得る無機顔料に特に制限はない。無機顔料の例は異なる金属酸化物も含み得る。
【0147】
さらに、無機顔料は、例えばKRONOSから市販されている(例えば、グレード2044、2047)若しくは金属酸化物に被覆された二酸化チタン(例えば、R700 E.I.DuPont de Nemours)としての二酸化チタン(アナターゼ、ブルッカイト、及びルチル)などの白色顔料、又は酸化亜鉛及び酸化鉄などの他の無機顔料を含み得る。
【0148】
本発明に使用され得るカーボンブラック顔料の例としては、ファーネス法又はチャンネル法を利用して製造されたカーボンブラックがある。
【0149】
市販製品の例は以下に列記され、これらの製品のいずれも好都合に使用できる。
【0150】
カーボンブラックの具体例としては、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、及びMCF88(全て三菱ケミカル株式会社により製造)、RAVEN 1255(Columbian Chemicals Co.,Inc.により製造)、REGAL 330R、400R、及び660R、並びにMOGUL L(全てCabot Corporationにより製造)、並びにNipex 1601Q、Nipex 1701Q、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35、及びPrintex U(全てOrion Engineered Carbons LLCにより製造)がある。
【0151】
本発明のこの実施形態において、顔料は、上述の顔料に限定されず、オレンジ顔料及びグリーン顔料などの他の特色も使用できる。さらに、複数の顔料が組み合わされ得る。さらに、別の実施例において、本発明のこの実施形態の水性インク組成物は、顔料を含まないクリアインクと組み合わされて、インクセットとして使用され得る。
【0152】
インクの色を修飾するのに有用であるあらゆる他の顔料及び/又は染料を使用できる。
【0153】
(界面活性剤)
本発明によるインクジェットインクは、少なくとも1種の界面活性剤を含み得る。界面活性剤(複数可)は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は双性イオン性であり得て、顔料インクジェットインクの総重量に基づいて6重量%未満の総量で、及び特に顔料インクジェットインクの総重量に基づいて4重量%未満の総量で通常加えられる。
【0154】
本発明によるインクジェットインクのための好適な界面活性剤としては、ケイ素系、アクリル系、及びフッ素系界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホスクシネートエステル塩、及び高級アルコールのリン酸エステル塩、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、並びにアセチレングリコール及びそのエチレンオキシド付加物がある。市販の例としては、Byk-348、Byk-347、Byk-3450、Dynwet 800(Byk Chemie Gmbh);Surfynol 104、Surfynol 465、Metolat 364、Dynol 800、Dynol 960(Evonik Industries)、KF-640、KF-642(信越化学工業株式会社);ID-40、ID-70(三洋化成工業株式会社)、全て日信化学工業株式会社のOlfine E1004、Olfine E1010、Olfine EXP4300、Silface SAG503など、及びこれらの組合せがある。
【0155】
(水溶性有機溶媒)
水溶性有機溶媒の種類は、本発明の効果が得られ得る限り特に限定されない。有機溶媒が、水に対する相溶性を増加させる観点から水溶性であることが好ましい。水溶性有機溶媒の例としては、アルコール、多価アルコール、アミン、アミド、グリコールエーテル、1,2-アルカンジオールなどがある。1種類のみの有機溶媒が使用され得るか、又はその2種以上が使用され得る。
【0156】
上述の多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、5以上の数のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、4以上の数のプロピレンオキシド基を有するポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなどがある。
【0157】
上述のアミンの例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなどがある。
【0158】
上述のアミドの例としては、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ピロリドン、尿素などがある。
【0159】
上述のグリコールエーテルの例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどがある。
【0160】
1,2-アルカンジオールの例としては、1,2-プロパンジオール 1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオールなどがある。
【0161】
これらのうちで、水溶性有機溶媒が多価アルコールである場合、高速で印刷を実施する時点での不鮮明を、好ましくは抑制することができる。多価アルコールの好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどがある。
【0162】
基材へのインクの浸透性(湿潤性)を改善するための浸透剤である水溶性有機溶媒が選択され得る。浸透剤は、基材上でドット直径を調整するのを支援し、及び/又は基材への顔料の密着性を改善する。特に好適な浸透剤としては、アルカンジオール及びグリコールエーテルがある。
【0163】
例示的な浸透剤は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールモノブチルエーテルである。ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、1,2-ヘキサンジオールのような数種の浸透剤が表面張力活性も有し、それによりインクの表面張力を低下させることが留意されるべきである。
【0164】
(バインダー樹脂)
一実施形態において、本発明の水性インク組成物は、好ましくは、バインダー樹脂(機能性ポリマー)も含む。水性インク組成物のための公知のバインダー樹脂としては、水溶性樹脂及び樹脂微粒子(エマルション/ラテックス)がある。樹脂微粒子として使用できる樹脂の種類の例としては、アクリル系、スチレン/アクリル系、ウレタン系、スチレン/ブタジエン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系(場合により、部分的に又は完全に加水分解された)、ポリエステル系、及びポリオレフィン系樹脂がある。
【0165】
これらの追加のバインダー樹脂は、安定な噴射プロセス、基材へのインクの密着性、最終インク層の耐薬品性及び/若しくは機械的抵抗の達成を支援し、又は画像品質を改善し得る。
【0166】
(殺生物剤)
本発明の顔料インクジェットインクのための好適な殺生物剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、2-フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、2-メチル-1,2-チアゾール-3-オン、及び1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、並びにその塩である。
【0167】
殺生物剤は、好ましくは、それぞれ顔料インクジェットインクの総重量に基づいて、0.001~3重量%、より好ましくは0.01~1.00重量%の量で加えられる。
【0168】
(他の成分)
インクジェット印刷インクにおいて、種々の公知の添加剤、例えば、多糖、粘度調整剤、被覆形成剤、pH調整剤などが好適に選択されて、必要に応じて、全ての性能を改善する目的に従って上述の成分の他に使用され得る。
【0169】
(顔料インクジェットインクの調製)
本発明による顔料インクジェットインクは、最初に、顔料分散液を調製し、その後顔料分散液を所望の顔料濃度に希釈し、必要とされる水溶性有機溶媒を加えるなど全ての他のインク成分を加えることにより調製され得る。
【0170】
一般に、カラーインクを、本発明による濃縮された水性顔料分散液の形態で製造することが望ましく、それは、その後に、インクジェット印刷システムに使用するために適切な濃度に希釈される。この技法により、より多量の顔料インクを装置から調製することが可能になる。希釈により、インクは、特定の用途のための所望の粘度、色、色相、飽和密度、及び印刷領域画線比率(print area coverage)に調整される。
【0171】
インクジェットインクは、通常の混合装置を使用して成分を分散液と混合することにより調製される。撹拌及び混合の方法は特に制限されず、必要に応じて適切に選択することができ、例えば、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、超音波分散機、通常の撹拌羽根を使用する撹拌機、マグネティックスターラー、及び高速分散機を使用する。インクは最終的に使用前に濾過される。多くの場合20pl未満の液滴サイズ及び30ミクロンより小さい印刷ヘッドノズルで、1~5μmの範囲の濾過ステップが実施される。一回の不具合が相当なコストでの印刷ヘッド全体の交換につながり得るので、粒状物が確実にノズルに到達しないようにすることが極めて重要である。
【0172】
顔料インクでは、多段濾過が、典型的には、分散液の作製後、並びに添加剤の添加及び希釈後に再び使用される。ここで、主な目的は、大きすぎるか又は集塊した顔料の分散液からの除去、並びに大きすぎる粒子及び他のプロセスからの混入物質の除去である。
【0173】
利用可能なフィルター技術は、様々な用途、利点、及び欠点を有する。フィルターの例は、メンブレン、デプス及びハイブリッドフィルタータイプである。インクジェットインク用のフィルターの一般的な供給業者は、Pall、Porvair、Membrane Solutionsである。
【0174】
好ましい実施形態において、架橋又はカプセル化は微粉砕後に必要ではない。本発明による安定な顔料分散液は、架橋及び他の追加ステップを必要とせずに得ることができ、例えば、未反応物質を除去する濾過ステップは用いられない。これにより、より簡単な合成プロセスがもたらされ、安定な顔料分散液を得るために費やす必要があるエネルギー及び資源がより少ないので経済的により興味深い。
【0175】
任意選択で、架橋及び/又はカプセル化ステップを加えると、さらにより安定な分散液が生じるが、このプロセスはより複雑で、未反応の架橋剤及び/又は架橋された遊離の分散剤により感受性がある。これは、例えば限外濾過のような余分な除去ステップが使用されない場合、より性能が低い顔料分散液及び対応するインクに潜在的につながり得る。
【0176】
(実験)
(製造方法)
(ブロックコポリマー合成)
ブロックコポリマーは、数多くの異なるいわゆるリビング重合方法を使用して調製できる。方法の基礎は、使用される合成方法で不変である:
特定の生長速度で全てのポリマー鎖の同時の成長を確実にする、瞬間的な開始
リビング重合は、停止又はラジカルの再結合を避けるために、非常に低濃度の活性(生長している)鎖を所与の時間に溶液に加えることにより確実にされる。
継続した生長は厳しく制御され、それにより、ポリマーの低い多分散性及びそのため明確に定義されたポリマー組成が得られる。
【0177】
さらなる重合はいくつかの方法で達成できるが、アニオン重合及びグループ移動重合(例えば、原子移動ラジカル重合[ATRP]、NMP、…)は2つの最も通常の合成方法である。これらの方法には特有の要求事項があるので(酸素がないこと、水がないこと、…)、多くの(工業規模)体積のポリマーを製造する場合現実的でなく費用がかかる。その2つの例は、重合を開始させるための極低温でのアルキルリチウム成分又はナフタネリド(naphthanelide)の使用である。
【0178】
例示的実施形態において、ブロックコポリマーは、Wang及びMatyjaszewskiによるc(ontrolled living radical polymerization(macromolecules 1995,28 7901-7910)に記載されるATRPにより調製される。
【0179】
(合成例)
以下の手順は、ブロック分散剤を製造する潜在的な合成方法を記載するが、それは、マトリックス安定化セグメントのそのブロック長さのための30モノマーのAA及び固定化セグメントのそのブロック長さのための10モノマーのBnAを有するAA30-BnA10として特徴づけられる。それは、2つのブロックで構成されているブロックコポリマー分散剤であり、マトリックス安定化セグメントはモノマーのアクリル酸(AA)を反応させることにより形成され、約30の繰り返し単位の長さを有し、固定化セグメントはモノマーのベンジルアクリレート(BnA)を反応させることにより形成され、約10の繰り返し単位の長さを有する。他のブロック分散剤構造は、当業者により、出発物質の量及び種類並びに反応時間を調整することにより同じ方法で製造され得て、ブロック分散剤の調製の順序は交換でき、すなわち、最初にBnAブロックを製造し、その後にAAブロックを製造する。本明細書での「部」は特記されない限り質量に基づいている。
【0180】
温度計、逆流コンデンサー、及び窒素バルーンを備えた250ミリリットルの三口フラスコに、0.43部のCu(I)Br、38.5部のtert-ブチルアクリレート、41.2部のアニソール、内部標準、及び0.69部のトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me6TREN)を入れた。混合物を、3回、真空下で脱気して窒素で満たし、60℃に加熱した。その後に、1.67部のメチル2-ブロモプロピオネート(MBP)を加えて、重合反応を開始させ、それを0.5時間実施した。
【0181】
別なフラスコにおいて、16.2部のベンジルアクリレート及び0.87部のN,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を混合し、3回、真空下で脱気して窒素を充填した。この溶液を、tert-ブチルアクリレートポリマー溶液に、0.72部のCuBr及び0.19部のCu(0)と共に加えた。触媒を空気に曝すことにより、6時間後に重合を停止させた(Mn=5406及びMw/Mn=1.37、転化率=96.4%)。銅触媒をカラムクロマトグラフィーにより除去し、その後に、過剰な溶媒を蒸発により除去した。
【0182】
その後に、ブロックコポリマーのtert-ブチルアクリレート基を加水分解した。精製されたブロックコポリマーを、還流している2体積部のジオキサンに溶解させ、その後に、ポリマーのtert-ブチルアクリレート繰り返し単位の量に対して0.5当量の硫酸を溶液に加えた。2時間後、等モル量の塩基を加えて反応を停止させた。反応溶液をCelite(登録商標)で濾過して、形成された塩を除去した。ジオキサンをロータリーエバポレーションにより除去すると、アクリル酸/ベンジルアクリレートブロックコポリマーが生じた。
【0183】
マトリックス安定化セグメントのそのブロック長さのための15モノマーのAA及び固定化セグメントのそのブロック長さのための30モノマーの2-(2エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)を有するAA15-EOEOEA30として特徴づけられるブロック分散剤を製造する別の合成例。
【0184】
温度計、逆流コンデンサー、及び窒素バルーンを備えた250ミリリットル三口フラスコに、1.43部のCu(I)Br、38.5部のtert-ブチルアクリレート、41.2部のアニソール、内部標準、及び1.73部のN,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を入れた。混合物を、3回真空下で脱気して窒素で満たし、80℃に加熱した。その後に、3.34部のメチル2-ブロモプロピオネート(MBP)を加えて、重合反応を開始させ、それを1時間実施した。
【0185】
別なフラスコにおいて、112.9部の2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、48.3部のアニソール、及び1.73部のPMDETAを混合し、3回、真空下で脱気して窒素を充填した。この溶液を、tert-ブチルアクリレートポリマー溶液に、0.64部のCu(0)と共に加えた。触媒を空気に曝すことにより、重合を4時間後に停止させた(Mn=7165及びMw/Mn=1.32)。銅触媒をカラムクロマトグラフィーにより除去し、その後に過剰の溶媒を蒸発により除去した。
【0186】
その後に、ブロックコポリマーのtert-ブチルアクリレート基を加水分解した。精製されたブロックコポリマーを2体積部の還流しているジオキサンに溶解させ、その後に、ポリマーのtert-ブチルアクリレート繰り返し単位の量に対して0.5当量の硫酸を溶液に加えた。2時間後、等モル量の塩基を加えて、反応を停止させた。反応溶液をセライト(Celite)(登録商標)で濾過して、形成された塩を除去した。ジオキサンをロータリーエバポレーションにより除去すると、アクリル酸/2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレートブロックコポリマーが生じた。
【0187】
現在の合成方法は、「通常の」反応器系合成を説明している。別法としては、フローケミストリープロセスを利用して、言及されたブロック分散剤を合成できる。本発明者らは「Flow Chemistry:Integrated Approaches for Practical Applications」、Santiago V Luis,Eduardo Garcia-Verdugo(編)、2019、(ISBN:978-1-78801-498-4/978-1-78801-609-4)に参照する。ブロック分散剤を、フローリアクターを使用し、「通常の反応器」と同じ出発物質を使用して合成したが、EBiBを開始剤として使用し、365nm UV LED光を光子源として使用し、反応をCu(II)BrのCu(0)への還元により開始させ、使用した溶媒がアセトニトリル:エタノール1:1であることが異なっていた。フローリアクターをPFA管(1/16インチOD、0.75mmID)により組みたてた。流れは、それぞれ、インラインチェックバルブ、Tピース、及びスタティックミキサーを経て接続されてからフォトリアクターに入って、均質性を確保した。16個のLED(365nm)を八角形のリアクター(3Dプリンターを使用してPLAフィラメントにより社内で製造)に取り付けた。第2のポリマーブロックは、第1のブロックに、その後のリアクターモジュール内で付加できる。最後に、加水分解及び濾過ステップは、上述のバッチプロセスに類似して実施することも、フローリアクター配置内に一体化することもできる。
【0188】
分散剤をキャリアと相溶性にするため、親水性モノマーを中和して、それによりブロックコポリマーの塩形成基をイオン化する必要がある。中和剤として、例えばDMAEMAなどの塩基性又は(メタ)アクリル酸などの酸性など、塩形成基の種類によって、酸又は塩基を使用できる。塩基性モノマーのための中和剤としては、例えば、塩化水素酸及び硫酸などの無機酸;並びに酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、及びグリコール酸などの有機酸がある。さらに、酸性モノマーのための中和剤としては、例えば、トリメチルアミン及びトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの三級アミン、アンモニア、2-ジメチルアミノエタノール、2アンミノ(anmino)-2メチル1プロパノール、2(2アミノ-エチルアミノ)エタノール、2アミノ-2メチル1プロパノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがある。本発明は、これらの例示されたものに限定されない。
【0189】
以下の実施例に言及される合計の分散剤重量が中和剤の質量を含んでいることに留意されたい。
【0190】
(ブロックコポリマー分散剤の水溶性)
可溶化の例を表1に列記する。水溶性の試験は、以下にさらに記載される試験手順に従って実施する。
【0191】
【表1】
【0192】
溶解は、丸フラスコ中で機械的撹拌を使用して実施した。()安定性は、水性ポリマー溶液をデカントし、固体の沈降を確認することにより確認する。
【0193】
ポリマー分散剤BnA40-AA25では、比親水性/疎水性(hydrofobic)バランスが非常に低いが、それでも、有機共溶媒がない状態でより長い期間高濃度で水に可溶性であることに留意されたい。
【0194】
(カプセル化)
任意選択で、分散剤を表面で共に化学結合させることにより、架橋を微粉砕プロセスの直後に実施する。これを達成するための非常に一般的な方法により、分散剤骨格中に存在する(メタ)アクリル酸モノマーの特定の部分を結合するために(好ましくは顔料粒子の表面に)、エポキシ化合物(大部分ジ-又はトリ-エポキシド)が分散液に加えられる。全ての分散剤が顔料表面に密着するわけでない場合、これらの遊離ポリマーは、例えば、ポリマー粒子の間に組み込まれて、そのため分散液の一部を凝集させることにより架橋プロセスを妨げ、したがってその後除去されなければならない。これらの生じたカプセル化された顔料粒子は、共溶媒及び界面活性剤の添加によって乱され得ない、粒子の表面にわたる分散剤の「ネット」又は「カプセル」の形成のため、高い安定性を有するだろう。
【0195】
(顔料分散液製造)
表2による組成を有する顔料分散液を、30gの原料を、ボールジャー内で、顔料濃度15%で微粉砕することにより調製する。
【0196】
ボールジャー微粉砕を、直径が45mmの125mLのPPボトル内で実施する。ボトルに、200gの東ソー株式会社の0.3mm YTZセラミックビーズを満たす。微粉砕を、36m/分の回転速度で7日間実施する。
【0197】
【表2】
【0198】
(分析方法)
(粒径分析)
顔料の粒径を、Nicomp 3.80粒度分析計(Particle sizing systems、Santa Barbara California USA)で測定する。最適な測定性能に達するように、分散液を10~100ppmに希釈する(すなわち、分散液を、10×10倍~100×10倍希釈する)。希釈した試料を23℃で、HeNeレーザーにより測定し、dv50を、散乱光強度プロファイルのガウシアン分析から得る。
【0199】
(表面張力)
表面張力は、23℃~26℃で、気泡圧力法により、表面張力計SITA Pro Line T15(SITA Messtechnik Co、Dresden GE.)を使用して測定した値である。使用した気泡寿命は10秒であり、これは、最大気泡圧に達するまで、新たな気液界面(インク液体に浸したキャピラリーの先端で)の生成の間の時間である。測定した最大圧力を、蒸留水中での装置の較正の後に、液体の表面張力値(mN/mで表す)に自動的に再計算する。
【0200】
(粘度)
粘度(分散液及び上清液体の)を、0.1~3000 1/秒のせん断速度掃引で運転しているHaake Rheostress RS6000により25℃で測定し、mPa.sで表す。装置は、コーン/プレートジオメトリタイプC60/1°を備えており、ギャップは0.052mmに設定されている。報告される粘度は3000 1/秒の周波数で測定する。
【0201】
(ブロックコポリマー分散剤の水溶性)
ブロックコポリマーは、少なくとも15重量%の乾燥ポリマーが水中にある状態で、ブロックコポリマーが25℃の水中で少なくとも1週間溶解状態のままであり、好ましくは25℃の水中で少なくとも1か月以上溶解状態のままであり、より好ましくは、25℃の水中の溶解した乾燥ポリマーの重量パーセンテージが少なくとも1週間少なくとも20重量%であり、最も好ましくは、25℃の水中の溶解した乾燥ポリマーの重量パーセンテージが少なくとも1週間少なくとも25重量%である場合、「水溶性」と定義される。ポリマー分散剤溶液は、乾燥されたブロックコポリマーを100gの蒸留水と少なくとも2時間少なくとも25℃の温度で混合することにより得られる。溶解プロセスを加速させるために、撹拌及び/又は温度を60℃まで増加させることが使用され得る。混合の時間は、2時間~12時間で選択され得る。
【0202】
乾燥ブロックコポリマーが、マトリックス安定化セグメント中に酸性繰り返し単位を含有する場合、「水溶性」試験条件は、ポリマー溶液のpHが8.5以上であるようにモノエタノールアミン(MEA)塩基を水に加えることにより、全酸性官能基を中和することにより実施する。乾燥ブロックコポリマーがマトリックス安定化セグメントの繰り返し単位中に塩基性官能基を含有する場合、「水溶性」状態試験条件は、ポリマー溶液のpHが5.5以下であるようにHClを水に加えることにより、全塩基性官能基を中和することにより実施する。
【0203】
(評価方法)
(分散液の安定性)
顔料分散液の分散安定性を、非常に過酷な条件で試験した。顔料分散液安定性を乱すためにジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)を有機溶媒として加えた後に、分散液を80℃の高温で7日間保存した。
【0204】
5gの分散液、1.5gのDEGMBE、及び8.5gの水を含む閉じたガラスバイアルを使用した。顔料分散液は、顔料分散液の総重量に対して15重量%顔料を有する。試験における顔料の量は、組成物の総重量に対して15重量%×5[g]/15[g]=5重量%である。DEGMBEの量は、組成物の総重量に対して1.5/15=10重量%である。粒径を、熱処理の前及び後で測定する。安定性は、熱処理後のdv50が熱処理前のdv50の1.10倍より小さい場合、良好であると考えられる。
【0205】
(分散剤の粉砕性能)
分散剤の粉砕性能を、粉砕の後に得ることができる粒径により決定する。良好な粉砕性能は、dv50<175nmに達する。粉砕性能が仕様内でない場合、安定性試験を実施しなかった。
【0206】
(ハンセン溶解度パラメーター)
本発明によるハンセン溶解度パラメーターは、HSPiPソフトウェアバージョン5.2.03を使用してY-MB法により計算され、cal1/2cm-3/2で表される。
【0207】
繰り返し単位R1及びR2のハンセン溶解度パラメーターの例を表3.1及び3.2に示す。
【0208】
【表3】

【0209】
表3.1は、R1の極性結合値δ(極性)及びR1の水素結合値δ(水素)並びにR1の極性結合値とR1の水素結合値の和であるハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R1を示す。値は[cal1/2cm-3/2]で表される。
【0210】
【表4】
【0211】
表3.2は、R2の極性結合値δ(極性)及びR2の水素結合値δ(水素)並びにR2の極性結合値とR2の水素結合値の和であるハンセン溶解度パラメーター値δ(極性+水素)R2を示す。値は[cal1/2cm-3/2]で表される。
【0212】
繰り返し単位の極性結合値と繰り返し単位の水素結合値の和は、繰り返し単位の極性結合値の二乗と繰り返し単位の水素結合値の二乗の和の平方根と定義される:δ(極性+水素)=√[δ(極性)+δ(水素)]。
【0213】
(結果)
数種のブロックコポリマー性分散剤を表4に従って調製した:
【表5】
【0214】
異なる顔料分散液を、表2に言及された組成に従って表4に言及されたブロックコポリマー性分散剤を使用して調製した(表5)。顔料分散液は、15重量%の分散剤を含有し、顔料/総分散剤重量比は1であり、顔料分散液中に30重量%の顔料プラス分散剤をもたらす。顔料分散液は、粉砕実験の間、水を水性キャリアとして含有し、水溶性有機溶媒は含有しなかった。
【0215】
【表6】
【0216】
dv50が175nm未満である場合、粉砕性能を良好である(V)と考えた。熱処理後のdv50が熱処理前のdv50の1.10倍未満である場合、熱処理安定性を良好であると考える。
【0217】
表3の例から、Aタイプのブロックコポリマー性分散剤及びBタイプのブロックコポリマー性分散剤を有する顔料分散液1~5に関して、極めて安定な顔料分散液を得られることを結論付けることができる。
【0218】
等しい良好な粉砕結果及び安定性結果が、表(5)に、任意の1つ又は複数の分散剤DA1~DA4を使用する例1~5に関して示される通り得られるが、それらは、ナトリウム塩を使用する代わりにトリエタノールアミン又はモノエタノールアミンにより中和されている。それにより、これらの分散剤の有利な性質が対イオンの種類に依存しないことが示される。
【0219】
例1~5の顔料分散液により、インクジェットインクを表6に従って調製した。
【0220】
【表7】
【0221】
全インクは、4~7mPa.sの粘度及び10秒後にSita泡圧張力計(bubble tensiometer)で測定された20~27mN/mの表面張力を有する。
【0222】
これらのインク1~6により、優れた噴射品質及び画像品質が、京セラ株式会社のKJ4B AQプリントヘッドを印刷スピード1m/sで使用してコート紙及び非コート紙基材上に観察された。
【0223】
例6は、バインダー樹脂(Joncryl J8050E)を使用する場合、インクジェットインクが安定なままであることを示す。バインダー樹脂Joncryl J8050Eは、種々の紙及びフィルム基材への顔料の密着性を改善する。
【国際調査報告】