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特表2023-544325MANFを含む神経精神疾患の予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】MANFを含む神経精神疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20231016BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231016BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20231016BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20231016BHJP
   C07K 14/48 20060101ALN20231016BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231016BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
A61K38/18 ZNA
A61K48/00
A61K35/76
A61P25/00
A61P25/18
A61P43/00 107
A61P25/28
A61P25/22
A23L33/17
C07K14/48
C12N15/12
C12N15/86 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519788
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 KR2021013342
(87)【国際公開番号】W WO2022071752
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0127087
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517082560
【氏名又は名称】セフォ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユニィ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒェンミ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ヒョクマン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD69
4B018ME14
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084DB59
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA051
4C084ZA151
4C084ZA181
4C084ZB221
4C087AA01
4C087BC83
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA05
4C087ZA15
4C087ZA18
4C087ZB22
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA21
4H045EA01
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic growth factor;mesencephalic、astrocyte-derived
neurotrophic factor;MANF)またはこれに由来するペプチドまたはその断片を含む神経精神疾患の予防または治療用組成物に関し、本発明によるMANF投与は、記憶損傷及び自閉症モデルにおいて記憶損傷及び自閉症モデルにおいてコリン性及び/又はギャバ(γ-aminobutyric acid,GABA)性神経細胞の分化を促進して神経再生を誘導し、記憶力の増進及び情緒不安改善効果を示し、社会的認識、社交性及び社会的性的嗜好度の低下を改善し、自閉症、ADHD、精神遅滞障害、発達障害などの神経精神疾患の予防または治療用組成物として提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic,astrocyte-derived neurotrophic factor,MANF)または(b)これに由来するペプチドまたはその断片を有効成分として含む神経精神疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記神経精神疾患は、自閉症、ADHD、精神遅滞障害及び発達障害からなる群から選ばれるいずれか1つ以上である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記(a)MANFまたは(b)MANF由来のペプチドまたはその断片は、MANFのポリペプチド配列またはその断片、前記ポリペプチド配列をコーディングするポリヌクレオチド配列またはその断片、及び前記ポリヌクレオチド配列を含むベクターからなる群から選ばれるいずれかの形態で含まれるものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ベクターは、ウイルスベクターである、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記(a)MANFまたは(b)MANF由来のペプチドまたはその断片は、海馬において神経細胞の再生を促進するものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記(a)MANFまたは(b)MANF由来のペプチドまたはその断片は、海馬において神経細胞の分化を促進するものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記(a)MANFまたは(b)MANF由来のペプチドまたはその断片は、記憶力を改善するものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記(a)MANFまたは(b)MANF由来のペプチドまたはその断片は、不安障害を改善するものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記(a)MANFまたは(b)MANF由来のペプチドまたはその断片は、社交性または社会的認知能力を改善するものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物をヒト以外の個体に投与する段階を含む、神経精神疾患の予防または治療方法。
【請求項11】
(a)MANF、または(b)これに由来するペプチドまたはその断片を有効成分として含む神経精神疾患の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項12】
(a)MANF、または(b)これに由来するペプチドまたはその断片を有効成分として含む神経精神疾患の予防または改善用飼料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic growth factor;mesencephalic,astrocyte-derived neurotrophic factor;MANF)またはこれに由来するペプチドまたはその断片を含む神経精神疾患の予防、治療または改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
神経精神疾患(neuropsychologic disease)とは、脳神経伝達物質の不均衡と遺伝・社会的・環境的要因が複合的に作用して思考や感情、行動に異常が生じた状態を意味し、うつ病、不安障害、統合失調症、依存症、脳電症、自閉症スペクトラム障害(Autism spectrum disorder;ASD;自閉症)、ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)、発達障害、精神遅滞障害などが主な神経精神疾患に該当する。この中で自閉症は、父系のストレス、飲酒、高齢妊娠などによる生殖細胞の遺伝子突然変異により発病することが知られている。現在、発病率は1.5%と報告されているが、世界的に発病率が増加する傾向にあり、特に韓国では2.6%まで増加したという報告がある。また、ADHD、精神遅滞障害などの神経精神疾患も増加傾向にあり、これらの疾患は、出産後の初期から3年以内に診断されるので、発病初期に治療が必要であるのが実状である。
【0003】
特に、自閉症、ADHD、統合失調症、脳電症を含む神経精神科疾患は多くの遺伝子の複合的な問題により発生するが、ほとんどの脳疾患において特定の神経細胞の死滅とシナプス形成の問題、それに伴う神経伝達物質の不均衡、抑制性ギャバ(γ-aminobutyric acid,GABA)不足、シナプス発生の調節とpruningなどが原因として注目されており、その根源的治療は、神経再生促進、神経幹細胞の増殖及びギャバ性神経細胞の分化を促進させるものであるが、まだこのような根源的治療のための治療剤は、研究開発されたことがほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、脳血管細胞が神経幹細胞に分泌する16個以上の成長因子の一つである中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic growth factor;mesencephalic,astrocyte-derived neurotrophic factor,MANF)が記憶損傷を伴う自閉症、ADHD、精神遅滞障害、発達障害などの脳疾患に対して改善効果があることを確認することにより、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの目的は、(a)中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic growth factor;mesencephalic,astrocyte-derived neurotrophic factor,MANF);または(b)これに由来するペプチドまたはその断片;を有効成分として含む神経精神疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0006】
本発明の他の一つの目的は、前記組成物を個体に投与することを含む神経精神疾患の予防または治療方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の一つの目的は、(a)MANF、または(b)これに由来するペプチドま
たはその断片を有効成分として含む神経精神疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の一つの目的は、(a)MANF、または(b)これに由来するペプチドまたはその断片を有効成分として含む神経精神疾患の予防または改善用飼料組成物を提供することである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic growth factor;mesencephalic,astrocyte-derived neurotrophic factor,MANF)またはこれに由来するペプチドまたはその断片の投与は、記憶損傷及び自閉症モデルにおいてコリン性及び/又はギャバ(γ-aminobutyric acid,GABA)性神経細胞の分化を促進して神経再生を誘導し、記憶力増進及び不安障害改善効果を示し、社会的認識、社交性及び社会的性的選好度の低下を改善するので、自閉症、ADHD、精神遅滞障害、発達障害などの神経精神疾患の予防または治療用組成物として提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、MANFの神経分化を促進する最適用量を決定するために成熟したニューロンの核をマーキングするNeuN抗体、ギャバ性神経細胞をマーキングするGAD65/67(Glutamic acid decarboxylase)とvGAT(vesicular GABA transferase)抗体を使用して免疫ブロッティング法で分析した結果である。
図2図2は、MANFの神経幹細胞の増殖と初期分化(neurogenesis)を促進する最適用量を決定するために神経前駆細胞の増殖と初期分化をType1神経前駆細胞マーカーであるSox2と移動しながら分化を開始するType3神経前駆細胞マーカーであるDCX抗体を使用して免疫ブロッティング法で分析した結果である。
図3図3は、MANFによる神経前駆細胞の増殖促進の有無を調べるために増殖する細胞マーカーであるKi67抗体で染色される細胞と神経前駆細胞マーカーであるnestin抗体で染色される神経前駆細胞を免疫蛍光染色法で分析した結果である。
図4図4は、MANFによる神経前駆細胞の分化促進の有無を調べるため、未成熟神経マーカーTuJ1、成熟神経マーカーNeuN抗体を使用して免疫蛍光染色法で分析した結果である。
図5図5は、MANFによる神経細胞増殖及び分化効果を証明するため、MANF受容体mRNAに対するsiRNAを作製して神経前駆細胞に処理して増殖するKi67染色された細胞と分化を開始する神経前駆細胞マーカーであるDCX抗体を使用して免疫蛍光染色法で分析した結果である。
図6図6は、ギャバ(γ-aminobutyric acid、GABA)性神経細胞マーカーであるGAD(Glutamic acid decarboxylase)遺伝子プロモーターに蛍光タンパク質であるGFP(green fluorescent protein)を組換えたプラスミドを1次培養した神経前駆細胞に導入し、MANFのギャバ性神経細胞分化促進効果を証明した結果である。
図7図7は、記憶損傷及び自閉症動物モデルにMANF発現ベクター(MANF-AAV)を導入したヒト間葉系幹細胞(human mesenchymal stem cell,hMSC)を脳移植する過程を示す模式図である。
図8図8は、海馬にMANF-AAVが導入されたhMSCを移植した(PLGF-AAV-hMSC)記憶損傷及び自閉症モデルを対象に記憶能力を測定するY字型迷路実験(A)、受動回避実験(passive avoidance test)(B)、モリス水迷路実験(Moris Water maze)(C)、不安障害を測定する高架式十字迷路実験(D)及び開放空間行動検査(E)を行った結果である。
図9図9は、海馬にMANF-AAV-hMSCが移植された記憶損傷及び自閉症モデルを対象に社会性能力(Sociability)を測定する社会的オープンフィールド(Social Open Field)検査を行った結果である。
図10図10は、海馬にMANF-AAV-hMSCが移植された記憶損傷及び自閉症モデルを対象に社会性(セッションI)を測定する3つの部屋測定法を使用して行動実験した結果である。
図11図11は、海馬にMANF-AAV-hMSCが移植された記憶損傷及び自閉症モデルを対象に社会的認識(セッションII)を測定する3つの部屋測定法を使用して行動実験した結果である。
図12図12は、海馬にMANF-AAV-hMSCが移植された記憶損傷及び自閉症モデルを対象に性的選好度(セッションIII)を測定する3つの部屋測定法を使用して行動実験した結果である。
図13図13は、行動実験後、MANF-AAV-hMSCを移植した記憶損傷及び自閉症モデルの脳組織においてTUNEL染色を通じて脳神経細胞の死滅を染色した結果である。
図14図14は、行動実験後、MANF-AAV-hMSCを移植した記憶損傷及び自閉症モデルの脳組織において神経幹細胞(Sox2+)の増殖(BrdU+、Ki67)と移動(DCX)の有無を免疫蛍光染色法で分析した結果である。
図15図15は、行動実験後、MANF投与された記憶損傷及び自閉症モデルの脳組織において新たに増殖してBrdU染色された神経前駆細胞が成熟した神経細胞(NeuN)、希突起膠細胞(oligodendrocyte)(CNPase)、ギャバ性神経細胞(GAD)への分化促進の有無を調査した結果である。
図16図16は、行動実験後、MANF-AAV-hMSCを移植した記憶損傷及び自閉症モデルの脳組織において不安と社会性行動領域である背側海馬(ventral Hippocampus)部位を染色してギャバ性神経細胞とコリン性神経細胞の分化促進を示した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。一方、本発明で開示されるそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用されてもよい。すなわち、本発明に開示された様々な要素のすべての組み合わせが本発明の範囲に属する。また、後述する下記の具体的な説明によって本発明の範疇が制限されるとは言えない。また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験のみを使用し本発明に記載された本発明の特定の態様に対する多数の等価物を認知または確認しうる。また、このような等価物は、本発明に含まれることが意図される。
【0012】
前記目的を達成するための本発明の一態様は、(a)中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic growth factor;mesencephalic,astrocyte-derived neurotrophic factor,MANF)。または(b)これに由来するペプチドまたはその断片を有効成分として含む神経精神疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0013】
本発明において、用語の「神経精神疾患(neuropsychologic disease)」とは、脳神経伝達物質の不均衡と遺伝・社会的・環境的要因が複合的に作用して思考と感情、行動に異常が生じた状態を意味し、神経精神疾患に属するうつ病、不安障害、統合失調症、依存症、脳電症、自閉症スペクトラム障害(Autism spectrum disorder;ASD;自閉症)、ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)、発達障害、精神遅滞障害などが主な神経精神疾患に該当する。
【0014】
本発明において、前記神経精神疾患は、自閉症、ADHD、精神遅滞障害及び発達障害からなる群から選ばれるいずれか1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0015】
また、本発明において、前記神経精神疾患は、記憶損傷を伴うものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0016】
本発明において、用語の「中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic growth factor;mesencephalic,astrocyte-derived neurotrophic factor;MANF)は、脳血管細胞が神経幹細胞に分泌する16個以上の成長因子のうち1つであり、中脳成長因子と混用して使用されてもよい。
【0017】
前記MANFは、配列番号1のアミノ酸配列を有するか、または配列番号1のアミノ酸配列からなるか、または配列番号1で記載されるアミノ酸配列を含むものであってもよいが、これに制限されるものではない。前記配列番号1の配列は、公知のデータベースであるNCBIジェンバンク(Genbank)でその配列を確認しうる。
【0018】
具体的に、前記MANFは、配列番号1及び/又は前記配列番号1と少なくとも70%以上の相同性(homology)または同一性(Identity)を有するアミノ酸配列を有してもよい。また、このような相同性または同一性を有し、前記MANFに相応する機能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有するMANFも本出願の範囲内に含まれることは自明である。
【0019】
すなわち、本出願において「特定の配列番号で記載されたアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチド」、「特定の配列番号で記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質またはポリペプチド」と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同一または相応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も本出願で使用できることは自明である。例えば、「配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド」は、これと同一または相応する活性を有する場合であれば、「配列番号1のアミノ酸配列として含むポリペプチド」に属することは自明である。
【0020】
本発明において、用語の「MANF由来のペプチド」は、MANFを構成するペプチドの中から選ばれるどのようなペプチドでも制限なく含まれてもよく、具体的に、前記MANF由来のペプチドは、2つ以上の連続するアミノ酸を含むものであってよく、その断片も含まれてもよい。
【0021】
本発明において、(a)MANFまたは(b)MANF由来のペプチドまたはその断片は、MANFのポリペプチド配列またはその断片、前記ポリペプチド配列をコーディングするポリヌクレオチド配列またはその断片、及び前記ポリヌクレオチド配列を含むベクターからなる群から選ばれるいずれかの形態で前記組成物に含まれるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明において、前記MANFをコーディングする遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列をコーディングする塩基配列を含んでもよく、より具体的には、配列番号2の塩基配列を含むか、有するか、またはなるものであってもよいが、これに制限されるものではない。前記配列番号2の塩基配列は、公知のデータベースであるジェンバンクから得られる。
【0023】
本発明において、用語の「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドモノマー(mono
mer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドのポリマー(polymer)で、一定の長さ以上のDNAまたはRNA鎖であって、より具体的には、前記変異体をコーディングするポリヌクレオチド断片を意味する。前記ポリヌクレオチドは、機能を果たすことができるポリヌクレオチド集合体の場合、遺伝子として記載されてもよい。本出願において、ポリヌクレオチドと遺伝子は混用されてもよい。
【0024】
具体的に、本出願のポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)により、または前記ポリペプチドを発現させようとする生物で好まれるコドンを考慮し、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない範囲内でコーディング領域に多様な変形が行われてもよい。具体的に、配列番号1のアミノ酸配列からなるMANFをコーディングするポリヌクレオチド配列であれば、制限なく含んでもよい。
【0025】
また、公知の遺伝子配列から調製できるプローブ、例えば、前記塩基配列の全体または一部に対する相補配列と厳しい条件下でハイブリッド化し、配列番号1のアミノ酸配列からなるMANFをコーディングする配列であれば、制限なく含まれてもよい。前記「厳しい条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的混成化を可能にする条件を意味する。このような条件は、当該技術分野でよく知られている。例えば、相同性または同一性の高い遺伝子同士で40%以上、具体的には、90%以上、より具体的には、95%以上、さらに具体的には、97%以上、特に具体的には、99%以上の相同性または同一性を有する遺伝子同士をハイブリッド化し、それより相同性または同一性の低い遺伝子同士でハイブリダイズしない条件、または通常の使用していたハイブリッド化(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1ΥSSC、0.1%SDS、具体的には、60℃、0.1ΥSSC、0.1%SDS、より具体的には、68℃、0.1ΥSSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件が挙げられる。
【0026】
混成化とは、たとえ混成化の厳格度によって塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、2つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語の「相補的」とは、互いに混成化が可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに使用される。例えば、DNAに対して、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願は、さらに実質的に類似した核酸配列だけでなく、全体の配列に相補的な単離された核酸断片を含んでもよい。
【0027】
具体的に、相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値で混成化段階を含む混成化条件を使用し、上述の条件を使用して探知してもよい。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに制限されるものではなく、その目的に応じて当業者によって適宜調節されてもよい。
【0028】
ポリヌクレオチドを混成化する適切な厳格度は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当技術分野でよく知られている(Sambrook et al.,supra、9.50-9.51、11.7-11.8参照)。
【0029】
本出願において、用語の「相同性(homology)」及び「同一性(Identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列に関連する程度を意味し、百分率で表されてもよい。用語の相同性及び同一性とは、よく相互交換的に使用されてもよい。
【0030】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準配列アルゴリズムによって決定され、使用されるプログラムによって確立されたデフォルトギャップペナルティとともに使用されてもよい。実質的に、相同
性を有するか(homologous)、または同一(identical)の配列は、中間または高い厳格な条件(stringent conditions)下で一般的に配列の全体または全体-長さの少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%以上でハイブリッドされてもよい。ハイブリッド化は、ポリヌクレオチドにおいてコドンの代わりに縮退コドンを含有するポリヌクレオチドも考慮される。
【0031】
前記ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列に対する相同性または同一性は、例えば、文献によるアルゴリズムBLAST[参照:karlin及びAltschul,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993)]、またはPearsonによるFASTA(参照:Methods Enzynmol.,183,63,1990)を使用して決定してもよい。このようなアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(参照:http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。また、任意のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、定義された厳しい条件下で使用された混成化実験によって配列を比較することにより確認することができ、定義された適切な混成化条件は、当技術分野内であり、当業者によく知られた方法(例えば、J.Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition,Cold Spring Harbor laboratory press,Cold Spring Harbor,New York,1989;F.M.Ausubel et al., Current Protocols In Molecular Biology)として決定されてもよい。
【0032】
本出願において用語の「ベクター」とは、適切な宿主内で目的とするタンパク質をコーディングするポリヌクレオチド配列を目的タンパク質を発現させるのに適した調節配列に作動可能に連結された形態で含有するDNA製造物を意味する。前記発現調節配列は、転写を開始可能なプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコーディングする配列、転写及び解毒の終結を調節する配列を含んでもよい。ベクターは、適切な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムに関係なく複製されるか、または機能することができ、ゲノムそのものに統合されてもよい。
【0033】
本出願で使用されるベクターは、宿主細胞内で複製可能であり、遺伝子治療用として使用できるものであれば特に限定されず、当業界で公知のベクターを用いてもよい。例えば、遺伝子治療用として通常使用されるベクターの例としては、天然状態、または組換え状態のウイルスベクターまたは非ウイルス性ベクターが挙げられる。具体例として、ウイルスベクターとしては、アデノウイルス(Adenovirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、レンチウイルス(Lentivirus)、アデノ付属ウイルス(Adeno-Associated Virus、AAV)、腫瘍溶解性ウイルス(OncolytIc Virus)及びヘルペスシンプレックスウイルス(Herpes Simplex Virus)ベクターなどを使用してもよく、非ウイルス性ベクターとしては、プラスミド(Plasmid)とリポソーム(Liposome)などがある。具体的に、本出願で使用可能なベクターは、遺伝子治療用ウイルスベクターとしてAAVベクターであってもよいが、これに特に制限されるものではなく、公知の遺伝子治療用ウイルスベクターを使用してもよい。
【0034】
前記遺伝子治療用ウイルスベクターは、ウイルス感染時に一度だけ感染し、ウイルスを増殖させることができないベクターであるため、周辺細胞が感染せず、安全にヒトの治療用として使用され、その中でもAAVは、ヒトに臨床的に治療に使用する際に最も安定した形態のベクターとして認められており、現在、世界的に遺伝子治療臨床で最も多く使用
されているベクターである。本出願では、ペプチド形態のウイルスベクターも含まれてもよく、MANF配列の一部を含むMANF由来のペプチド形態のウイルスベクターまたはウイルスベクターを含む様々なDNAベクターの形態を制限なく含んでもよい。
【0035】
本出願において用語の「形質転換」とは、目的タンパク質をコーディングするポリヌクレオチドを含む組換えベクターが宿主細胞内に導入され、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコーディングするタンパク質が発現されることを意味する。
【0036】
また、前記で用語の「作動可能に連結」されたものとは、本出願の目的タンパク質をコーディングするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介するプロモーター配列または発現調節領域と前記ポリヌクレオチド配列が機能的に連結されていることを意味する。作動可能な連結は、当業界の公知の遺伝子組換え技術を用いて製造してもよく、部位-特異的DNA切断及び連結は、当業界の切断及び連結酵素などを使用して作製してもよいが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明において、前記「目的タンパク質」は、MANFまたはこれに由来するペプチドまたはその断片であってもよい。
【0038】
本発明のMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片は、MANFのポリペプチド配列またはその断片、前記ポリペプチド配列をコーディングするポリヌクレオチド配列またはその断片、または前記ポリヌクレオチド配列を含むベクターの形態で薬学的組成物に含まれることにより、前記組成物が投与された個体内のMANFのレベルを増加させて神経精神疾患の予防または治療効果を示すことができる。
【0039】
本発明において、用語の「予防」は、前記組成物の投与によって神経精神疾患を抑制するか、または発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0040】
本発明において、用語の「治療」とは、前記組成物の投与によって神経精神疾患による症状が好転するか、または有利に変化されるすべての行為を意味する。
【0041】
本発明のMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片を有効成分として含む薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよい。このとき、前記組成物に含まれる有効成分の含量は、特にこれに制限されるものではないが、組成物の総重量に対して0.0001重量%~10重量%で、好ましくは、0.001重量%~1重量%を含んでもよい。
【0042】
前記薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内容液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤及び坐剤からなる群から選ばれるいずれか1つの剤形を有してもよく、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調製される。経口投与用固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤1つ以上の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調製される。また、単純な賦形剤の他にステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤も使用される。経口投与用液状製剤としては、懸濁剤、内容液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキドパラフィンの他に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与用製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどが使用されてもよい。坐剤の基剤としては、ウィテプソール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されてもよい。
【0043】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与してもよい。
【0044】
本発明において、用語の「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、個体の種類及び重症度、年齢、性別、疾病の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野においてによく知られている要素によって決定されてもよい。本発明の組成物は、個別治療剤として投与するか、または他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次的または同時に投与されてもよい。そして、単一または多重投与されてもよい。前記要素をすべて考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定されてもよい。本発明の組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路及び期間に応じて異なるが、好ましい効果のために、本発明の薬学的組成物は、1日当たり0.0001~100mg/kgで、好ましくは、0.001~10mg/kgで投与することが好ましい。投与は、1日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記組成物は、マウス、家畜、ヒトなどの様々な哺乳動物に様々な経路で投与してもよく、投与方式は、当業界の通常の方法であれば制限なく含まれ、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜、または脳血管内注射により投与されてもよい。
【0045】
また、本発明の薬学的組成物は、ヒトに適用される医薬品だけでなく、動物医薬品の形態で使用されてもよい。
【0046】
本発明のMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片は、海馬において神経細胞の再生を促進しうる。
【0047】
本発明のMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片は、神経細胞の分化を促進するものであってもよい。
【0048】
具体的に、本発明のMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片は、コリン性神経細胞及び/又はギャバ(γ-aminobutyric acid,GABA)性神経細胞の分化を促進して神経細胞の再生を促進するものであってもよい。
【0049】
本発明では、イボテン酸(Ibotenic acid、IBO)によって誘導される記憶損傷及び自閉症モデルを作製した。
【0050】
前記IBOは、マウスの脳内に注入時、線条体(striatum)、海馬(hippocampus)の形成、黒質(substantia nigra)及び梨状皮質(piriform cortex)のニューロンを損傷させる化合物であり、具体的な実験では、これをentorhinal cortex内の3つの部位に注入投与することにより、海馬の背側と腹側に神経損傷を誘導し、記憶損傷及び自閉症を誘導しうる(Miyuki Sadamatsu,congenital Anomalies 2006;46,1-9,Review of animal models for autism:implication of thyroid hormone)。
【0051】
したがって、本発明の記憶損傷及び自閉症モデルは、IBOが投与されることにより、
不安と社会性行動領域である腹側海馬(ventral Hippocampus)部位のコリン性神経細胞の分化が減少したが、本発明の一具現例では、MANF投与時にコリン性神経細胞の分化が増加した(図16)。
【0052】
一方、注意力行動欠乏障害、脳卒中、統合失調症、自閉症などの疾病は、興奮性細胞とギャバ性神経細胞の不均衡によって現れることが知られており、これを改善するために信号伝達体系が複雑な興奮性信号伝達物質よりも抑制性信号伝達物質であるギャバの生成または分化を促進することが必要である。ギャバ性神経細胞への分化に関与する遺伝子の中で、GAD(Glutamic acid decarboxylase)遺伝子は、グルタメートの脱カルボキシル化を触媒する酵素で、この過程を通じて抑制性神経伝達物質であるギャバを合成することが知られている。
【0053】
そこで、本発明の他の一具現例では、MANFが1次神経前駆細胞の神経細胞分化過程でギャバ性神経細胞への分化を促進するかを確認した結果、1次神経前駆細胞分化過程でMANFを30ng/mlの濃度で処理したとき、NeuNの数は大きな変化がなかったが、Con群に比べてGFP陽性細胞が増加し、MANFが神経細胞分化過程においてギャバ性神経細胞への分化を促進することを示した(図6)。
【0054】
本発明のMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片は、記憶力を改善するものであってもよい。
【0055】
本発明の一具現例において、IBOが投与された記憶損傷及び自閉症モデルを対象にY字型迷路測定法、受動回避検査とモリス水迷路検査を通じて記憶能力を測定した結果、すべて記憶力向上を示した(図8A-C)。
【0056】
本発明のMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片は、不安障害を改善するものであってもよい。
【0057】
本発明の一具現例において、IBOが投与された記憶損傷及び自閉症モデルを対象に高架式十字迷路実験及び開放空間行動検査を通じて不安行動を測定した結果、MANF投与群がIBO群または陽性対照群に比べて不安行動が減少し(図8D-E)、不安障害が改善された。
【0058】
本発明のMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片は、社交性または社会的認知能力を改善するものであってもよい。
【0059】
本発明の一具現例において、IBOが投与された記憶損傷及び自閉症モデルを対象に行動実験を通じて、MANF投与による社会的行動、社会的認識、社交性及び社会的性的選好度の回復の有無を調査した結果、MANF投与群がIBO群または陽性対照群に比べて社会的行動、社会的認識、社交性及び社会的性的選好度が回復することが分かった(図9-12)。
【0060】
本発明の他の一具現例において、前記行動実験後の記憶損傷及び自閉症モデルの脳組織を分析した結果、IBO投与群では、細胞死が有意に増加したが、MANF-AAV-hMSC投与群は、IBO投与群及びGFP-AAV-hMSC投与群に比べて細胞死が著しく抑制され、MANFは、記憶損傷及び自閉症モデルにおいて脳神経細胞の死滅を抑制し、生存を増加させることが分かる(図13)。
【0061】
また、本発明のさらに他の一具現例において、前記行動実験後の記憶損傷及び自閉症モデルの脳組織を分析した結果、MANF投与群は、神経幹細胞(Sox2+)の増殖(B
rdU+、Ki67)と移動(DCX)を促進して神経再生を増進させ(図14)、新しく増殖したBrdU染色された神経前駆細胞の成熟した神経細胞(NeuN)、希突起神経膠(oligodendrocyte)(CNPase)、ギャバ性神経細胞(GAD)への分化が増加した(図15)。
【0062】
このように、本発明は、MANFが記憶損傷及び自閉症モデルにおいて記憶損傷及び自閉症モデルにおいてコリン性及び/又はギャバ性神経細胞の分化を促進して神経再生を誘導し、記憶力の増進及び不安障害改善効果を示し、社会的認識、社交性及び社会的性的選好度の低下を改善することにより、神経精神疾患、特に自閉症、ADHD、精神遅滞障害、発達障害などの神経精神疾患の予防または治療に効果があることを最初に明らかにしたことに意義がある。
【0063】
また、MANFに由来するペプチドまたはその断片も、前述したようにMANFと同じ効果を示すことができる。
【0064】
本発明の他の一態様は、本発明の薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、神経精神疾患の予防または治療方法を提供することである。
【0065】
ここで使用される用語は、前述の通りである。
【0066】
本発明において、用語の「個体」とは、神経精神疾患が発病したか、または発病し得るヒトを除くすべての動物を意味し、本発明の薬学的組成物を神経精神疾患の疑いのある個体に投与することにより、個体を効率的に治療しうる。
【0067】
本発明において、用語の「投与」とは、任意の適切な方法で神経精神疾患の疑いのある個体に本発明の薬学的組成物を導入することを意味し、投与経路は、目的組織に到達できる限り、経口または非経口の様々な経路を介して投与されてもよい。
【0068】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与してもよく、これについては前述の通りである。
【0069】
本発明の薬学的組成物は、神経精神疾患を予防または治療目的とする個体であれば特に限定されず、いかなる個体にも適用可能である。例えば、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギなどの非ヒト動物、鳥類及び魚類などにすべて使用されてもよく、前記薬学的組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内及び鼻腔内に投与されてもよく、局所治療のため、必要に応じて病変内の投与を含む適切な方法によって投与されてもよい。本発明の前記薬学的組成物の好ましい投与量は、個体の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適宜選ばれてもよい。例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射によって投与されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0070】
本発明のさらに他の一態様は、(a)MANF、または(b)これに由来するペプチドまたはその断片を有効成分として含む神経精神疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供することである。
【0071】
ここで使用される用語は、前述の通りである。
【0072】
本発明において、用語の「改善」とは、前記組成物を用いて神経精神疾患の疑い及び発明個体の症状が好転するか、または有益となるすべての行為をいう。
【0073】
本発明の食品組成物は、食品学的に許容可能な塩を含んでもよく、前記食品学的に許容可能な塩は、食品学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成される酸付加塩または塩基によって形成される金属塩が有用である。一例として、遊離酸としては無機酸と有機酸を使用してもよい。無機酸としては塩酸、硫酸、臭素酸、亜硫酸またはリン酸などを使用してもよく、有機酸としてはクエン酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、メタンスルホン酸などを使用してもよい。また、金属塩としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を使用してもよい。しかし、これに制限されるものではない。
【0074】
本発明の食品組成物は、丸剤、粉末、顆粒、浸剤、錠剤、カプセル又は液剤などの形態を含み、前記組成物を添加できる食品としては、例えば、各種食品類、例えば、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0075】
本発明の食品組成物に含まれる成分としては、必須成分として有効成分を含有するほか、他の成分には特に制限はなく、通常の食品のように様々な生薬抽出物、食品補助添加剤または天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前記食品組成物において有効成分の含量は、使用目的(予防、改善または治療的処置)に応じて適切に決定されてもよい。このとき、前記組成物に含まれる有効成分の含量は、特にこれに制限されるものではないが、組成物総重量に対して0.0001重量%~10重量%で、好ましくは、0.001重量%~1重量%を含んでもよい。
【0076】
また、前記食品補助添加剤は、当業界で通常の食品補助添加剤、例えば、香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定剤などを含んでもよい。
【0077】
前記天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など、ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど、及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。上述のほか、香味剤として天然香味剤(例えば、レバウジオシドA、グリシルヒジンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパラタムなど)を有利に使用してもよい。
【0078】
前記の他、本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクト酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有してもよい。その他に、天然フルーツジュース及びフルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。このような成分は独立して、または組み合わせて使用してもよい。
【0079】
本発明において、前記健康補助食品は、健康機能食品及び健康食品などを含んでもよい。
【0080】
前記健康機能(性)食品(functional food)とは、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同じ用語で、栄養供給の他にも生体調節機能が効率的に現れるように加工された医学、医療効果の高い食品を意味する。ここで「機能(性)」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、または生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。
【0081】
本発明の食品組成物を含む食品は、当業界で通常使用される方法により製造可能であり
、前記製造時には、当業界で通常添加する原料及び成分を添加して製造してもよい。また、前記食品の剤形も食品として認められる剤形であれば、制限なく製造してもよい。本発明の食品組成物は、様々な形態の剤形として製造されてもよく、一般薬品とは異なり、食品を原料として薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがないという長所があり、携帯性に優れている。
【0082】
本発明の他の一態様は、(a)MANF、または(b)これに由来するペプチドまたはその断片を有効成分として含む神経精神疾患の予防または改善用飼料組成物を提供することである。
【0083】
ここで使用される用語は、前述の通りである。
【0084】
本発明において、用語の「飼料」とは、動物が食べ、摂取し、消化させるための、またはこれに適した任意の天然または人工規定食、一食など、または前記一食の成分を意味する。
【0085】
前記飼料の種類は、特に制限されず、当技術分野で通常使用される飼料を使用してもよい。前記飼料の非制限的な例としては、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、澱粉類、ユウガオ類または穀物副産物類などの植物性飼料、タンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、油脂類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類または食物などの動物性飼料が挙げられる。これらは単独で使用するか、または2種以上を混合して使用してもよいが、これに制限されるものではない。
【0086】
本発明の飼料組成物は、哺乳類、家禽類、魚類及び甲殻類を含む多数の動物食餌、すなわち飼料に適用してもよい。具体的に、商業用として重要なブタ、ウシ、ヤギなどの哺乳類、ゾウ、ラクダなどの動物園の動物、イヌ、ネコなどの家畜に使用してもよい。商業的に重要な家禽類には、トリ、アヒル、ガチョウなどが含まれ、マスやエビなどの商業的に飼育される魚類及び甲殻類を含んでもよい。
【0087】
本発明の飼料組成物は、投与のためにMANF、MANF由来のペプチドまたはその断片の他に、さらにクエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸などの有機酸、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、重合リン酸塩などのリン酸塩、ポリフェノール、カテチン、トコフェロール、ビタミンC、緑茶抽出物、キトサン、タンニン酸などの天然抗酸化剤のうち1種以上を混合して使用してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤または潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、カプセル、顆粒または錠剤として製剤化してもよい。
【0088】
また、本発明の飼料組成物は、補助成分としてアミノ酸、無機塩類、ビタミン、抗酸化剤、抗真菌剤、抗菌剤などの各種補助剤及び粉砕又は破砕された小麦、大麦、トウモロコシなどの植物性タンパク質飼料、血粉、肉粉、魚粉などの動物性タンパク質飼料、動物性脂肪及び植物性脂肪などの主成分の他にも栄養補助剤、成長促進剤、消化吸収促進剤、疾病予防剤と併用してもよい。
【0089】
前記飼料用組成物は、飼料添加剤を含んでもよい。本発明の飼料添加剤は、飼料管理法上の補助飼料に相当する。
【0090】
本発明の飼料組成物を飼料添加物として使用する場合、前記飼料組成物をそのまま添加するか、または他の成分と併用してよく、通常の方法によって適宜使用されてもよい。飼料組成物の投与形態は、非毒性制約上、許容可能な担体と組み合わせて直ちに放出または徐放性剤形として製造してもよい。このような食用担体は、トウモロコシデンプン、ラク
トース、スクロース、プロピレングリコールであってもよい。固体型担体の場合には錠剤、散剤、トローチ剤などの投与形態であってもよく、液体型担体の場合にはシロップ剤、液体懸濁液剤、エマルジョン剤、溶液剤などの投与形態であってもよい。また、投与剤は、保存剤、潤滑剤、溶液促進剤、安定化剤を含有してもよく、他の疾患の予防、治療または改善上有用な物質を含有してもよい。
【実施例
【0091】
発明の実施のための形態
【0092】
以下、下記実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0093】
実施例1.神経細胞分化過程において中脳星状細胞由来の神経成長因子(mesencephalic growth factor;mesencephalic growth factor;mesencephalic,astrocyte-derIved neurotrophic factor,MANF)の最適用量調査
【0094】
神経前駆細胞において分化マーカー発現を促進するMANFの最適用量(optimum doze)を決定するため、成熟したニューロンの核をマーキングするNeuN抗体、ギャバ性神経細胞をマーキングするGAD65/67(Glutamic acid decarboxylase)とvGAT(vesicular GABA transferase)を用いて免疫ブロッティング実験を行った。
【0095】
具体的に、海馬由来の神経幹細胞は、E16マウス胚の脳から分離した。海馬の隆起は、解剖顕微鏡の下で無菌状態の細いピンセットを使用してE16マウスの胚前脳から細かく切断した。これらの組織を集めてCa+/Mg+-freeHBSS(インビトロジェン)溶液からピペットを使用して機械的に分離し、15μg/mlのポリ-L-オルニチン(poly-L-ornithine)と1μg/mlのフィブロネクチン(fibronectin、シグマ)で予めコーティングされた35mmの培養ディッシュに19,000細胞/cmで植えた。細胞は3日間、5%COの条件下で10ng/mL bFGF(basic fibroblast growth factor、Invitrogen)が添加された血清のないN2培地(増殖用培地)を使用して培養した。以後、0.05%トリプシン(trypsin)/EDTA(ethylene-diamine-tetraacetic acid)を使用して細胞を剥がし、免疫染色のためには、12mmのガラスカバーガラス(ベルコ)に、免疫ブロッティングのためには、100mmのディッシュに神経前駆細胞を植え、1日間bFGFを含む増殖用N2培地で培養した。以後、増殖条件では、bFGFを続けて含む培地にMANFを表示した濃度で処理し、2~3日間培養し、分化条件では、bFGFを含まない分化用培地にMANFを添加して3~7日間培養した。対照群(vehicle)には、MANFの代わりに生理食塩水を同体積で添加した。
【0096】
前記で培養した神経幹細胞を分化3~7日後に培地をすべて除去し、PBS(Phosphate-buffered saline)で1回洗浄した。次に、プロテアーゼ阻害剤(protease inhibitor)が添加された溶解バッファー(lysis buffer)を用いて細胞をすべて溶解した。前記溶解物を10%のゲルに同体積でローディングした後、PVDF(Polyvinylidene Fluoride)膜に移し、2%BSA in TBSTまたは5% skim milk in TBSTで常温で1時間ブロッキングした。1次抗体は、rb-GAD65/67(1:1000)、mo-NeuN(1:1000)、mo-Vgat(1:700)、mo-actin(1:2000)を使用し、2%BSA In TBST1次抗体を希釈して4℃で16時間反応させた後、1×TBSTで洗浄した。2次抗体は、mo-HRP(1:5000)、rb-HRP(1:5000)を使用し、2% skim milk in TBSTまたは2%BSA in TBSTに2次抗体を希釈して1時間反応した後、フィルムに現像した。対照群抗体は、mo-tubulin(Millipore,05-661,1:2000)、mo-actin(Santa cruz,SC-47778,1:2000)を使用した。
【0097】
その結果、MANFを10-50ng/ml処理したとき、30ngでNeuNは1.6倍増加し、GAD65/67とvGATタンパク質量は約2.5倍増加し、NeuN、GAD65/67、vGATタンパク質はすべて30ng/mlの濃度で最も増加した(図1)。
【0098】
次に、増殖する神経前駆細胞についてType1神経前駆細胞マーカーであるSox2(mo-Sox2:R&D system,MAB2018,1:1000)、Type3分化を開始する移動する神経前駆細胞マーカーであるDCX(goat-DCX:Santa cruz,SC-8066,1:1000)を免疫ブロッティングした結果、MANFを20~500ng/mlで添加したとき、すべて同様に増加する傾向を示した(図2)。具体的に、20ng/mlでSox2とDCXがすべて大きく増加した。
【0099】
そこで、以下の実施例では、前記実験結果から導き出されたMANFの最適容量である30ng/ml濃度を使用して実験した。
【0100】
実施例2.MANFの神経細胞増殖及び分化促進効果の調査
【0101】
2-1.免疫染色技術による神経細胞増殖及び分化過程におけるMANFの効果
【0102】
MANFによる神経前駆細胞の増殖促進の有無を調べるため、1次培養した神経前駆細胞にMANFを処理した後、Ki67抗体で増殖する細胞、Nestin抗体で神経前駆細胞、TuJ1で未成熟神経細胞、NeuN抗体で成熟した神経細胞を蛍光染色した。
【0103】
具体的に、前記実施例1と同じ方法で神経前駆細胞を培養し、培地をすべて除去した後、PBSで1回洗浄した。4%PFA(Paraformaldehyde)in PBSで15分間固定した後、再びPBSで2回洗浄した。細胞が付着したカバースリップをPBSTで洗浄した後、0.5%Triton X-100-PBSTを入れて10分間反応させた。再び2%BSA in PBSTまたは5%正常血清(Normal donkey serum:Jackson lab、017-000-121、Normal horse serum:Sigma、H0146)でブロッキングし、1次抗体としてrb-Ki67(Abcam、AB15580、1:500)、mo-NeuN(Millipore、MAB377B、1:500)、mo-Tuj1(Sigma、T8660、1:3000)、mo-Flag(Sigma、F1804、1:500)、mo-Nestin(Millipore、MAB353、1:200)を2%BSA in PBSに入れて4℃で一晩反応させた。翌日、これをPBSTで洗浄した後、2次抗体でmo-Alexa 488(Invitrogen,A21202,1:700),mo-Cy3(Jackson lab,715-165-151,1:500),rb-Alexa 488(Jackson lab、711-546-152、1:700)をPBSTに入れて常温で1時間反応させた。DAPI(1μg/mL、Sigma)で細胞核を染色し、スライドに載せて共焦点レーザー顕微鏡でスキャンし、写真を撮った。前記方法は、Heo SR et al.(2009)及びHan AM t al.(2012)を参考した。
【0104】
細胞数の確認及びデータ分析のため、DAPIでマーカーされた細胞核数を数え、各分化マーカーで染色された細胞数を数えて各分化マーカーの数を細胞核数として百分率で表した。このとき、形状と位置が正確に一致し、神経細胞の形状をしている細胞数を数えた。例えば、NeuN細胞数の測定は、核の形で丸い形をしており、DAPIと染色が重なる細胞数を数え、スライドの端部に現れる非特異的な信号は含まれていない。データ分析は、一元配置分散分析(Anova)を通じて対照群と実験群を比較した。資料の統計学的意義は、p<0.05であった。
【0105】
その結果、対照群に比べてKi67染色される増殖する細胞とnestin染色される神経前駆細胞が有意に増加した(図3)。未成熟神経細胞(TuJ1)と成熟した神経細胞(NeuN)も増加したが、統計的に有意ではなかった(図4)。
【0106】
2-2.siRNA knock downによる神経細胞増殖過程におけるMANFの効果
【0107】
MANFの神経幹細胞の増殖効果を証明するためにMANF受容体mRNAに対するsiRNAを作製し、1次培養した神経前駆細胞(A)と白マウス海馬に注入して(B)DCXとKi67発現細胞を調査した。
【0108】
具体的に、前記実施例1と同じ方法で神経前駆細胞を培養し、3日後にトリプシン処理し、細胞を集めてsiRNAを処理した後、カバースリップあたり8×10で細胞をシーディングした。3種類のMANF受容体同型タンパク質(isoform)に対するsiRNAを10、30nMずつ、計30、90nMで処理した。ここで使用されるsiRNAは、以下の通りである:Negative control scrambled sequenceとMANF receptor 1 antisense sequence:UAGAGUGUACGGUAGACAC(配列番号4))、MANF receptor 2 antisense sequence:AUGGUGUUAGAGUGUAGUC(配列番号5):MANF receptor 3 antisense sequence:AUCGGAAGAGGUUCAUGAC(配列番号6))。siRNA処理後、1.5日目の日に固定して染色を行った。
【0109】
その結果、対照群としてscrambled RNAを処理した場合(sicon)に対してsiRNAを処理した場合には、増殖するKi67染色された細胞と分化する神経細胞マーカーであるDCXが染色された細胞数が有意に減少し、MANFが神経幹細胞の増殖と分化を促進することを証明した(図5A)。
【0110】
MANF受容体siRNAを白マウス海馬のhillus部位に注入し、1.5日後にマウスの脳組織を得てKi67、DCX抗体で染色した結果、scrambled RNA注入群に比べてsiRNA注入群においてKi67、DCX染色された細胞数がそれぞれ約50%が減少した(図5B)。
【0111】
実施例3.MANFのギャバ(γ-aminobutyric acid,GABA)性神経細胞分化促進効果の調査
【0112】
MANFによる1次神経前駆細胞のギャバ性神経細胞への分化を効率的に調べるため、ヒトGAD遺伝子のプロモーター部位に蛍光タンパク質であるGFP(green fluorescent protein)を組換え、目視で簡便かつ効果的にギャバ性神経細胞への分化の有無を観察及び検出できるプラスミド(GAD-GFP)を使用した。前記プロモーターの活性が増加する場合、ギャバ性神経細胞への分化が促進され、プロモーターの活性増加の有無は、これに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現量により
モニタリングが可能であり、レポーター遺伝子の発現量が増加する場合、ギャバ性神経細胞への分化が促進されることが分かる。また、前記プロモーターに結合する転写因子を使用してギャバ性神経細胞の分化を容易に観察しうる。
【0113】
具体的に、1次神経前駆細胞培養後3日後に0.05%トリプシンで細胞をディッシュから分離し、subculture後、すべての群にGAD-GFP DNAをトランスフェクションした。細胞を24ウェルプレートにシーディングし、10ng/mL bFGFを含むN2培地で24時間培養した。bFGFのない分化用N2培地にMANFを30ng/mlの濃度で処理し、3日と5日後に固定して染色した。
【0114】
その結果、MANFを30ng/mlの濃度で処理したとき、NeuN染色された細胞の数は、3日後10%から5日後に50%に増加したが、MANF処理群ではそれ以上増加はなく、Con群に比べてGFP陽性細胞が増加し、MANFが神経細胞分化の過程においてギャバ性神経細胞への分化を促進することが分かる(図6)。
【0115】
実施例4.MANF発現組換え-AAV(Adeno-Associated Virus)ベクターの作製
【0116】
AAV2(Adeno-Associated Virus 2)ベクターにMANF遺伝子(配列番号2)を挿入してMANF発現ベクター(MANF-AAV)を作製し、これを組換えウイルスで製造及び増幅して1012-13vg/mlで濃縮した後、ヒト間葉系幹細胞(human mesenchymal stem cell、hMSC)にMOI 10で処理した。ヒト間葉系幹細胞は、カトリック大学で製造した骨髄由来MSC細胞株を使用し、10%FBS培地またはMSC GM(Cambrix)培地を使用して培養した。
【0117】
また、対照群としてAAV2ベクターにGFP遺伝子(配列番号3)を挿入したGFP発現ベクター(GFP-AAV)を含む組換えGFP-AAVを対照群ウイルスで作製し、1012-13vg/mlに濃縮した後、MSCをMOI 10で処理した。
【0118】
前記MANF-AAV-hMSCは、脳に注入する前にトリプシン処理して培養ディッシュから分離した後、トリプシン阻害剤(300mg/60ml N2 media)を処理した。trypan blueを使用して生細胞数を正確に数えた後、7.5×10/μlに合わせて注入培地(0.7%p/s、20mm HEPES(pH7.2)、0.5% glucose in saline)に懸濁して脳に2ulを注入した。
【0119】
実施例5.イボテン酸(Ibotenic acid,IBO)により誘導される記憶損傷及び自閉症モデルの作製
【0120】
6週齢のオスのスプラグ-ドーリー(Sprague-Dawley)マウス(200~250g)は、オリエント動物飼育センター(京畿道のチャールズリバー研究所)から購入した。マウスは、社会的ストレスを避けるため、1ケージあたり2~3匹ずつランダムに収容した。飼育条件は、一定の温度範囲(23±2℃)、湿度(60±10%)、及び12時間の明暗周期を維持し、水と飼料に自由に接近できるようにした。
【0121】
前記マウスの内嗅皮質に、内嗅皮質から入力される神経信号を受信する歯状回(dentate gyrus、DG)の顆粒細胞と海馬ピラミッド細胞を破壊するIBOを投与して記憶損傷及び自閉症モデルを作製した。具体的に、マウスをエキテンシン(equitensin)(350mMペントバルビタールナトリウム(pentobarbital sodium)、250mM塩素水和物(chloral hydrate)、85
mM MgSO及び40%プロピレングリコール(propylene glycol)を含む10%エタノール)で麻酔させた。定位装置(stereotaxic device,Stoelting Co.,U.S.A.)の切歯棒(IncIsor bar)を耳間線(Interaural line)の下の3.4mmに配置し、注射針の角度を矢状面(sagittal)の中央から右側に10位置に固定した。定位装置を使用してマウスにIBO(1mg/ml)1.5ulを内嗅皮質(entorhinal cortex)に注入した。IBOは1番目、AP:-8.4、ML:-4.8、DV:-4.6、2番目、AP;-8.4、ML:-4.8、DV:2.3;3番目、AP:-8.8、ML:-3.65、DV:-3.4の3つの位置に注入された(図7)。
【0122】
前記2~3回のIBO注入後、ランダムにIBO投与群(陰性対照群)、対照群としてGFP-AAV-hMSC投与群(GFP-AAV)、MANF-AAV-hMSC投与群(PLGF-AAV)に各群を分類した。1週間の休憩期間が提供された。正常マウスからなるCon群(Control、陽性対照群)にはいかなる薬物も投与せず、IBO投与群には食塩水(saline)を投与し、GFP-AAV-hMSC投与群には前記実施例4の方法でGFP-AAVを導入したMSCを投与し(GFP-AAV)、MANF-AAV-hMSC投与群には前記実施例4の方法でMANF-AAVを導入したMSCを投与した(MANF-AAV)。
【0123】
実施例6.MANF投与による記憶能力増進及び不安障害改善効果の調査
【0124】
前記実施例5のように作製したIBOが投与された記憶損傷及び自閉症モデルを対象として、MANF投与による記憶能力増進及び不安障害改善効果を調査した。
【0125】
6-1.Y字型迷路実験
【0126】
Y字型迷路実験は、行動実験のうち最初に行った(Con群n=8、IBO投与群n=7、GFP-AAV投与群n=8、MANF-AAV投与群n=7)。実験方法は、Heo H et al.(2009)に記載された内容によって行った。天井に照明とCamを設置し、カーテンで周囲を覆った状態で、各armの先端にvisual cueを設置したY字型迷路でマウスが各armに入ることをチェックした(8、10、12分チェック)。成功確率を数式化する式は、3つずつそれぞれ異なるarmに入った回数をarmに入った合計回数-2で割って%化してデータ化した。すべての結果は、ANOVA testを用いて統計処理した。
【0127】
6-2.受動回避実験(passive avoidance test)
【0128】
前記実施例6-1の各群と同数のマウスを対象に、Heo H et al.(2009)に記載された方法により行った。この実験は、シャトルルームとともに半自動のシステムからなっている。これらのマウスは、光が点灯したときにアクリルドアを通って暗い部屋に入って光を避けるように訓練された。この訓練は、3~4日間、マウスが20秒以内に暗い部屋に入るまで1日3回繰り返した(適応)。すべてのマウスは、最後の訓練日の20秒以内に暗い部屋に入る訓練に成功した。訓練最終日に適応訓練を行った後、マウスは明るい部屋に置かれ、暗い部屋に入ったときにドアを手で閉じ、電気ショック(1mA、300g基準)を焼き網を通じて3秒間足に与えた。正確に適応訓練の24時間後、マウスは、再び明るい部屋に置かれ、暗い部屋に入る待ち時間(latency time)を720秒間測定した(監禁実験)。
【0129】
6-3.モリス水迷路実験(Moris Water maze)
【0130】
前記実施例6-1の各群と同数のマウスを対象に丸くて錆びておらず、内面が白いプール(直径160cm;高さ60cm)でモリス水迷路実験を行った。プールは、深さ50cmで水(23.0±1.0℃を維持)を満たし、目に見えないプラットホーム(15cm、丸くて白い)は、水面の1.0cmの下に隠れており、北東象限の中央に置かれた。それぞれのマウスは、隠されたプラットフォームを探すように4日間1日1回訓練を行った。訓練は、マウスをランダムに4つの象限のうち1つのプールの壁に対向するように水の中に置いて開始した。それぞれの訓練の間、マウスを最大60秒間プラットフォームを探すようにし、プラットフォームを探した後、1分間休息させた。4つの象限テストの平均時間は、訓練日の群当たり、脱出待機時間として定義した。最終実験は、プラットフォームを除去した後、マウスが60秒間プラットフォームがあった場所での滞在時間を測定した(プローブ試験:probe trial)。水泳時間と訓練の長さは、ビデオカメラを通じて追跡及び記録した。追跡は、白い背景の黒い点で示されたマウスの軌跡に沿って行った。キャプチャーされたビデオ写真は、ビデオ追跡システム(Ethovision水中迷路プログラム、Noldus情報技術、ワーゲニンゲン、オランダ)で分析した。分析された情報は、ターゲット象限で泳いだ時間と除去されたプラットフォームを探すため、仮想のプラットフォームを渡る回数が含まれた。
【0131】
実施例6-1~6-3の実験結果、図8A-Cに示すように、MANF投与した動物は、記憶能力を測定するY字型迷路測定法、受動回避検査とモリス水中迷路検査においてすべて記憶力向上を示した。
【0132】
6-4.高架式十字迷路実験
【0133】
前記実施例6-1の各群と同数のマウスを対象に不安行動を測定するため、空中に高く浮び上がっており、十字型迷路の2つのclosed armと2つのopen armから構成された行動実験装置を使用した。十字型迷路の中間でopen armの方向を見るように置かれたマウスは、10分間自由に迷路を探索した。マウスの不安障害は、露出しているopen armを避け、closed armに留まる傾向として検証した。ビデオ追跡システム(Ethovision EPMプログラム、Noldus情報技術、ワーゲニンゲン、オランダ)で分析した。
【0134】
その結果、MANF-AAV投与群においてIBO投与群に比べてopen armで過ごした時間が増加し、不安障害が改善されたことが分かる(図8D)。
【0135】
6-5.開放空間行動検査
【0136】
前記実施例6-1の各群と同数のマウスを対象に不安行動を測定するため、黒アクリルから構成された100cm*100cmの空間に20cm*20cmの正方形を底に分けて空間を分け、中央9マスを中央ゾーン(Center zone)に設定し、その他の地域をエッジゾーン(Border zone)に設定した。中央9マスには少し明るい光を当てて、相対的に明るい中央ゾーンと暗いエッジゾーンにいる時間を測定した。
【0137】
その結果、IBO群では中央にいる時間が減少したが、MANF群ではIBO群に比べて確実に中央にいる時間が増加し、MSC群に比べても増加して対照群(Con)に類似したレベルで不安障害が解消された(図8E)。
【0138】
実施例7.MANF投与による社会的オープンフィールド(Social open field)における社会的行動回復の調査
【0139】
前記実施例5のように作製したIBOが投与された記憶損傷及び自閉症モデルの社会性
能力(Sociability)の欠陥と、MANF-AAV-hMSCを投与したとき、これらの欠陥が回復できるかどうかを行動実験を通じて測定した。
【0140】
具体的に、社会的オープンフィールド(Social open field)で社交性を実験した。マウスを30分間記録環境に適応させた後、10分間黒アクリルから構成された社会的オープンフィールドに適応させた。知らないマウスを嗅覚と最小限の接触を許容する円筒型ケージに入れ、競技場の端の中央に配置した。試験対象のマウスの動きを10分間記録し、ethovision 3.1プログラムで分析した。そして、知らないマウスが置かれた円筒の周辺10cmを設定し、社交性を示した範囲を分析した。
【0141】
その結果、目的領域で過ごす時間と対象個体に関心を示す時間(sniffling)は、IBO投与群とGFP-AAV-hMSC投与群において類似して正常マウスより短く、MANF-AAV-hMSC投与群では著しく長くなったので(図9)、MANF投与は、社会的行動を回復させる結果を示した。
【0142】
実施例8.MANF投与による3つの部屋における社会的行動回復の調査
【0143】
実施例5のようにIBOが投与された記憶損傷及び自閉症モデルにMANF-AAV-hMSCを投与したとき、社会的認識、社交性及び社会的性的選好度が回復するかどうかを察し見るために3つの部屋実験を行った。
【0144】
具体的に、実験場所は透明なアクリルの壁からなり、小さなドアのある3つの部屋から構成され、各部屋は、長さ50cm×幅100cm×高さ50cmであった。円筒型ケージを通じて試験対象マウスの知らないマウスに対する嗅覚及び最小接触を許容した。試験前に、試験対象のマウスは中央の部屋に配置され、両側のドアを閉めて5分間適応させた。テストは、下記セッションI、II、及びIIIに分けて行った。
【0145】
<セッションI>誰もいない(none)vs知らないマウス(stranger)
【0146】
社交性を測定するため、2つの円筒型ケージを各エッジルームに配置するが、一方は知らないマウスがおり、もう一方は空とした。試験対象のマウスは、中間の部屋に配置され、3つの部屋で自由に移動し、10分間2つのケージに接近できた。マウスの動きを記録し、ethovision 3.1プログラムを通じて何もいない、及び知らないマウス1領域で分析した。
【0147】
<セッションII>見慣れたマウス(familiar)vs知らないマウス(stranger)
【0148】
新しい対象に対して新しい社会性を構築し、すでに社会性を形成した対象に対する社会的認識を分析するため、セッションIで新しいケージに新しいマウス(知らないマウス)を追加した。試験対象のマウスが3つの部屋にすべて接近できるように、2つのドアをすべて開けた後、試験対象のマウスを中間の部屋に配置し、10分間自由に動けるようにした。マウスの動きを記録し、ethovision 3.1プログラムを通じて見慣れたマウス及び知らないマウス領域で分析した。
【0149】
<セッションIII>性的選好度
【0150】
雌マウスに対する接触を分析して性的選好と社会的認識の程度を測定するため、雌及び雄マウスを各部屋の円筒型ケージに配置し、被験対象のマウスがより頻繁に接触するケージ及び時間を測定した。マウスの動きを記録し、ethovision 3.1プログラ
ムを通じてセッション別に各ケージに対する接近時間及び頻度で分析した。
【0151】
その結果、図10に示すようにセッションIで空き領域と知らないマウスを含む領域に分けて各領域で過ごした時間で分析した結果、目的領域で過ごした時間は、GFP-AAV-hMSC投与群がIBO投与群よりより短く、MANF-AAV-hMSC投与群では、IBO投与群またはGFP-AAV投与群に比べて顕著に長くなることを確認した。一方、対象マウスのない空き区域で過ごした時間は、GFP-AAV-hMSC投与群で最も長く、MANF-AAV-hMSC投与群は、正常群に類似したレベルに回復した。
【0152】
図11に示すように、セッションIIで1つの部屋で見慣れたマウスと、他の部屋で知らないマウスを認識し、新しい対象と社交性を形成することにより、マウスが既に社交性をいかによく形成しているかを調査した結果、知らないマウスの区域で過ごした時間は、正常群に比べてIBO投与群では有意に減少し、GFP-AAV-hMSC投与群は、IBO投与群よりも短かったが,MANF-AAV-hMSC投与群では、IBO投与群に類似した程度に長くなる傾向があったが、有意ではなく、GFP-AAV-hMSC投与群に比べて著しく長くなった。
【0153】
また、図12に示すように、セッションIIIで社会的性選好度を確認した結果、雌マウス区域で過ごした時間は、IBO投与群で減少傾向を示したが、GFP-AAV-hMSC投与群及びPLGF-AAV-hMSC投与群は、両方とも正常群に類似したレベルに回復した。一方、雄マウス区域で過ごした時間は、IBO投与群を除いてはCon群、GFP-AAV投与群及びMANF-AAV投与群においてすべて類似したレベルで短かった。
【0154】
これにより、MANF投与は、社会的認識、社交性及び社会的性的選好度を回復させることが分かる。
【0155】
実施例9.免疫学的組織染色実験
【0156】
前記実施例8の行動実験後、免疫組織化学分析のために各群当たり4匹以上のマウス脳組織を得て脳切片を免疫染色した。
【0157】
9-1.免疫組織化学分析-TUNEL
【0158】
実験方法は、Heo et al.(2009)に記述したものを修正して使用した。マウスを4%PFA in PBSで軽心灌流(perfused)し、4時間4% PFA in PBSに浸して固定した後、脳組織を30%スクロース In PBSで非冷凍化した後、最適な切断温度(OCT)混合物で凍結して-80℃で保管した。脳組織切片を35μm厚さの冠状面を通じて冷たいところで切断した。脳組織切片は、貯蔵溶液(30%グリセロール、30%エチレングリコール in PBS)に浸して4℃で保管した。
【0159】
以後、脳神経細胞の死滅の程度を分析するため、TUNELアッセイを行った。保管した脳片を4%パラホルムアルデヒドを使用して常温で10分固定した後、PBSで2回洗浄し、TUNELアッセイキット(Roche,11684795910)のプロトコルによって湿度を維持した37℃恒温器で1時間酵素反応を行った。以後、PBSで3回洗浄し、細胞核は1μg/mlのプロピジウムヨージド(propidium iodide、シグマ、P4864、1:3000)でマーキングして細胞死を分析した。
【0160】
その結果、図13に示すように、4週間に比べて8週間後、IBO投与群では、細胞死
が有意に増加した後に減少しなかったが、AAV-MANF-hMSC投与群は、GFP-AAV-hMSC群よりもさらに減少し、8週後には大幅に減少し、有意性が大きくなった。これは、MANFは記憶損傷及び自閉症モデルにおいて脳神経細胞の死を抑制し、生存を増加させるものと見られる。
【0161】
9-2.免疫組織化学分析-BrdU、SOX2、DCX、NeuN、vGluT1、GAD67、CNPase
【0162】
前記実施例9-1の免疫染色と同じ方法で保管された脳組織をPBSを使用して2回洗浄し、0.5%トリトンX-I00で20分間透過し、37℃で30分間2N HClで培養した。その後、15%標準血清、3%ウシ血清アルブミン(bio-WORLD、ダブリン、OH、USA)及び0.1%トリトンX-100で2時間自由に浮いている状態でブロッキングした。前記組織を16時間4℃で1次抗体であるBrdU(Abcam,1:700)抗体とSOX2(R&D system,MAB2018,1:2000),DCX(Santacruz,sc8066,1:1000),NeuN(Millipore,MAB377B,1:700)、CNPase(Abcam,ab6319,1:700)、vGluT1(Millipore、MAB5502、1:700)、GAD67(Millipore,MAB5406,1:2000)を使用して二重染色した。2次抗体としては、mo-Alexa 488(Invitrogen,A21202,1:700),mo-Cy3(Jackson lab,715-165-151,1:500),rb-Alexa 488(Jackson lab,711-546-152,1:700)、rat-Alexa 488(Abcam、ab6326、1:700)などを使用した。免疫染色した組織は、共焦点顕微鏡(LSM510、LSM800カルザイス、オーバーコーヘン、ドイツ)でスキャンした。
【0163】
二重(double)、トリプル(triple)撮影したスライドでDAPIでマーキングされた細胞数を計数し、各分化マーカーであるNeuN、CNPase、GAD、vGluT1を蛍光でマーキングしてマーキングされたそれぞれの細胞数を計数して各実験動物の海馬内の分化マーカーの数を示した。このとき、形状と位置が正確に一致し、細胞の形状である2次抗体でマーキングされた数を計数した。
【0164】
その結果、図14に示すように、MANFは、神経幹細胞(Sox2+)の増殖(BrdU+、Ki67)と移動(DCX)を促進して神経再生を増進した。
【0165】
図15に示すように、MANF投与された記憶損傷及び自閉症モデルマウス組織では、新しく増殖した(BrdU染色された)神経前駆細胞の成熟した神経細胞(NeuN)、希突起神経膠(oligodendrocyte)(CNPase)、ギャバ性神経細胞(GAD)への分化が増加した。
【0166】
実施例10.MANF投与による腹側(ventral)海馬のコリン性ニューロン(cholinergic neuron)の変化調査
【0167】
前記実施例5のように作製したIBOが投与された記憶損傷及び自閉症モデルを対象に免疫染色を用いてMANF-AAV-hMSCを投与したとき、コリン性ニューロンの変化を調査した。
【0168】
具体的に、マウスを4%PFA in PBSで灌流し、脳を摘出した。脳を4℃で4時間固定した後、4℃で48時間、30%スクロースを含むPBSを用いて脱水した。次に脳をブロック状に冷凍し、最適温度の化合物を使用して-80℃で保管した。組織を30μm厚さの冠状切片に作製し、貯蔵溶液(30%グリセロール(glycerol)、30%エチレングリコール(ethylene glycol)を含むPBS)で4℃で保管した。以後、0.5%Triton X-100-PBSに20分間透過させ、10%一般血清と3%BSA、0.1%Triton X-100-PBSで1時間室温で遮断した後、ChAT(Millipore、AB144p、1:200)の1次抗体を使用して免疫染色及び計数した。前記免疫染色は、背側海馬(ventral hippocampal regans、vHP)でそれぞれの脳切片AP-4.0~-5.2mmで0.3mmごとに行われた。
【0169】
その結果、図16に示すように、背側海馬CA3のChAT陽性細胞の数は、IBO投与群で最も低く、GFP-AAV-hMSC投与群で多少回復したが、MANF-AAV-hMSC投与群では、正常マウスに類似したレベルでコリンニューロンの数が回復し、ギャバ性神経細胞の有意性は低いが、多少増加した。また、背側海馬(ventral Hippocampus)は、情緒不安と社会性行動に関連した領域であり、背側、この部位のギャバ性神経細胞とコリン性神経細胞の分化が増加したため、MANF投与によりコリン性及びギャバ性神経細胞が再生されるものと見られる。
【0170】
前記実施例の結果によって、MANF投与は、記憶損傷及び自閉症モデルにおいてコリン性及び/又はギャバ性神経細胞の分化を促進して神経再生を誘導し、記憶力増進及び不安障害改善効果を示し、社会的認識、社交性及び社会的性的選好度の低下を改善し、自閉症、ADHD、精神遅滞障害、発達障害などの神経精神疾患の予防または治療用組成物として提供されてもよい。
【0171】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解できるだろう。これに関して、上述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明より後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、及びその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2023544325000001.app
【国際調査報告】