(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】バイパス導管を有するHVACシステム
(51)【国際特許分類】
F25B 39/02 20060101AFI20231016BHJP
F25B 1/053 20060101ALI20231016BHJP
F28D 3/00 20060101ALI20231016BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F25B39/02 P
F25B1/053 A
F25B1/053 B
F28D3/00
F25B1/00 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519835
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 US2021052980
(87)【国際公開番号】W WO2022072704
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521301840
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・タイコ・アイピー・ホールディングス・エルエルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119426
【氏名又は名称】小見山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドショー,デビッド・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,キャメロン・スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー,ジェブ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】グラッドフェルター,セス・ケビン
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA37
3L103BB42
3L103CC18
3L103DD66
3L103DD69
(57)【要約】
暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システムは、HVACシステムの凝縮器から冷媒を受容するように構成された容器と、容器から冷媒を受容するように構成された蒸発器と、冷媒の第1の流れを蒸発器の第1の入口に誘導するように構成された第1の導管と、冷媒の第2の流れを蒸発器の第2の入口に誘導するように構成された第2の導管と、を含む。第2の入口は、垂直軸に対して第1の入口の上にある。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システムであって、
前記HVACシステムの凝縮器から冷媒を受容するように構成された容器と、
前記容器から前記冷媒を受容するように構成された蒸発器と、
前記冷媒の第1の流れを前記蒸発器の第1の入口に誘導するように構成された第1の導管と、
前記冷媒の第2の流れを前記蒸発器の第2の入口に誘導するように構成された第2の導管であって、前記第2の入口が、垂直軸に対して前記第1の入口の上にある、第2の導管と、を備える、暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システム。
【請求項2】
前記凝縮器から前記容器に延在する第3の導管を備え、前記第3の導管が、前記凝縮器から前記容器に誘導される前記冷媒の圧力を低減して、前記容器内の液体冷媒及び蒸気冷媒への前記冷媒の分離を可能にするように構成された膨張バルブを備える、請求項1に記載のHVACシステム。
【請求項3】
前記容器から延在し、前記液体冷媒を前記容器から前記蒸発器に向けて誘導するように構成された出口導管を備え、前記第1の導管及び前記第2の導管の各々が、前記出口導管から延在する、請求項2に記載のHVACシステム。
【請求項4】
前記凝縮器から前記冷媒を排出するように構成された出口導管と、
前記出口導管から前記容器に延在する入口導管と、を備え、
前記第1の導管が、前記出口導管から前記蒸発器に延在して、前記容器の冷媒バイパスを可能にし、前記第2の導管が、前記容器から前記蒸発器に延在する、請求項2に記載のHVACシステム。
【請求項5】
前記第1の導管が、バイパスバルブを備え、前記HVACシステムが、前記バイパスバルブに通信可能に結合されたコントローラを備え、前記コントローラが、前記HVACシステム内の圧力差を示す動作パラメータに基づいて、前記バイパスバルブを動作させるように構成されている、請求項1に記載のHVACシステム。
【請求項6】
前記第1の入口が、前記蒸発器の底部セクションに配設されている、請求項1に記載のHVACシステム。
【請求項7】
前記蒸発器が、ハイブリッド流下膜式及び満液式蒸発器である、請求項1に記載のHVACシステム。
【請求項8】
暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システムであって、
凝縮器から冷媒を受容し、前記凝縮器から受容した前記冷媒を蒸気冷媒と液体冷媒とに分離するように構成された容器と、
液体冷媒の第1の流れを前記HVACシステムの蒸発器の第1の入口に誘導するように構成された第1の導管であって、前記第1の導管が、バイパスバルブを備える、第1の導管と、
液体冷媒の第2の流れを前記蒸発器の第2の入口に誘導するように構成された第2の導管であって、前記第2の入口が、垂直軸に対して前記第1の入口の上にある、第2の導管と、
前記バイパスバルブに通信可能に結合されたコントローラであって、前記コントローラが、前記バイパスバルブを動作させて、前記第1の導管を介して前記蒸発器への液体冷媒の前記第1の流れの流量を制御するように構成されている、コントローラと、を備える、暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システム。
【請求項9】
前記蒸発器を備え、前記第2の導管が、前記蒸発器の上部セクションに延在し、前記コントローラが、前記バイパスバルブを閉じて、前記蒸発器を流下膜式蒸発器として動作させるように構成されている、請求項8に記載のHVACシステム。
【請求項10】
前記蒸発器を備え、前記第2の導管が、前記第2の導管を通って誘導される液体冷媒の前記第2の流れの圧力を低減するように構成された膨張バルブを備え、前記第1の導管が、前記蒸発器の底部セクションに延在し、前記コントローラが、前記膨張バルブを閉じて、前記蒸発器を満液式蒸発器として動作させるように構成されている、請求項8に記載のHVACシステム。
【請求項11】
前記コントローラが、前記容器内の前記液体冷媒のレベル、前記凝縮器内の前記冷媒の液体レベル、前記蒸発器内の前記冷媒の液体レベル、前記第2の導管内の液体冷媒の前記第2の流れのレベル、前記凝縮器内の圧力、前記蒸発器内の圧力、前記容器内の圧力、前記第2の導管を通る液体冷媒の前記第2の流れの流量、前記凝縮器内の温度、前記蒸発器内の温度、前記容器内の温度、周囲温度、前記HVACシステムの圧縮器に供給される電力の量、前記圧縮器の速度、又はそれらの任意の組み合わせを示す動作パラメータに基づいて、前記バイパスバルブを動作させるように構成されている、請求項8に記載のHVACシステム。
【請求項12】
前記凝縮器及び圧縮器を備え、前記圧縮器が、前記蒸発器から冷媒を受容し、前記冷媒を加圧し、前記冷媒を前記凝縮器に誘導するように構成されている、請求項8に記載のHVACシステム。
【請求項13】
前記コントローラが、閾値未満である前記凝縮器内の温度に基づいて、前記圧縮器の動作を中断するか、又は前記圧縮器を低減された容量で動作させるように構成されている、請求項12に記載のHVACシステム。
【請求項14】
前記圧縮器が、前記容器から蒸気冷媒を受容し、前記蒸気冷媒を加圧し、前記加圧された蒸気冷媒を前記凝縮器に誘導するように構成された第1の圧縮器であり、前記HVACシステムが、前記容器から蒸気冷媒を受容し、前記蒸気冷媒を加圧し、前記加圧された蒸気冷媒を前記凝縮器に誘導するように構成された第2の圧縮器を備える、請求項12に記載のHVACシステム。
【請求項15】
暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システムであって、
凝縮器と、
前記凝縮器から冷媒を受容するように構成された中間容器と、
前記中間容器から前記冷媒を受容するように構成された蒸発器と、
前記凝縮器と前記中間容器との間に延在する第1の導管であって、前記第1の導管が、前記第1の導管を通って誘導される前記冷媒の圧力を低減して、前記中間容器内の液体冷媒及び蒸気冷媒への前記冷媒の分離を可能にするように構成された膨張バルブを備える、第1の導管と、
前記中間容器と前記蒸発器の第1の入口との間に延在する第2の導管であって、前記第2の導管が、前記第1の入口を介して前記液体冷媒を前記蒸発器内に誘導するように構成されている、第2の導管と、
前記中間容器と前記蒸発器の第2の入口との間に延在する第3の導管であって、前記第2の入口が、垂直軸に対して前記第1の入口の上にあり、前記第3の導管が、前記第2の入口を介して前記液体冷媒を前記蒸発器内に誘導するように構成されている、第3の導管と、を備える、暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システム。
【請求項16】
前記第2の導管が、前記第2の導管を通って誘導される前記液体冷媒の流量を制御するように構成されたバイパスバルブを備え、前記第3の導管が、前記第3の導管を通って誘導される前記液体冷媒の圧力を低減するように構成された追加の膨張バルブを備える、請求項15に記載のHVACシステム。
【請求項17】
前記膨張バルブ、前記追加の膨張バルブ、及び前記バイパスバルブに通信可能に結合されたコントローラを備え、前記コントローラが、前記蒸発器内への前記液体冷媒の流量を示す動作パラメータに基づいて、前記膨張バルブ、前記追加の膨張バルブ、前記バイパスバルブ、又はそれらの任意の組み合わせを制御するように構成されている、請求項16に記載のHVACシステム。
【請求項18】
前記液体冷媒を前記中間容器から排出するように構成された第4の導管を備え、前記第2の導管及び前記第3の導管の各々が、前記第4の導管と前記蒸発器との間に延在する、請求項15に記載のHVACシステム。
【請求項19】
前記第2の入口が、前記蒸発器の側面セクションに配設されている、請求項15に記載のHVACシステム。
【請求項20】
前記第1の入口が、前記垂直軸に対して前記蒸発器内の管束の下に位置付けられ、前記第2の入口が、前記垂直軸に対して前記管束の上に位置付けられている、請求項15に記載のHVACシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月30日に出願された、「HVAC SYSTEM WITH BYPASS CONDUIT」と題する米国仮特許出願第63/085,842号からの優先権及びその利益を主張し、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本項は、以下に記載される本開示の様々な態様に関連し得る、当該技術の様々な態様を読者に紹介することを意図する。本考察は、本開示の様々な態様のより良い理解を容易にするために、読者に背景情報を提供するのに役立つと考えられる。したがって、これらの記載は、この観点から読むべきものであって、先行技術を承認するものとして読むべきものではないことに留意されたい。
【背景技術】
【0003】
冷凍システムは、様々な設定及び多くの目的のために使用される。例えば、冷凍システムは、冷却、加熱、除湿、又はそうでなければ調整流体を調整するための自由冷却システム及び/又は機械的冷却システムとして動作し得る。場合によっては、自由冷却システムは、いくつかの暖房、換気、及び空調用途で使用される液体対空気熱交換器を含み得る。加えて、機械的冷却システムは、蒸気圧縮冷凍サイクルを含み得、これは、冷媒を凝縮器、蒸発器、圧縮器、エコノマイザ、及び/又は膨張装置を通して循環させ得る。凝縮器では、冷媒が脱過熱、凝縮、及び/又は副冷却され、液体又は主に液体冷媒がエコノマイザに誘導され得、そこで冷媒の圧力が低下され得、冷媒の一部分を蒸発させ得る。液体冷媒は、エコノマイザから蒸発器に誘導され得、そこで液体冷媒は、空気流及び/又は冷却流体(例えば、水)などの調整流体から熱エネルギー又は熱を吸収することによって蒸発し、それによって調整流体を冷却する。いくつかの用途では、蒸気冷媒が、エコノマイザから圧縮器に誘導されて再加圧され得る。いくつかの動作条件下では、エコノマイザから蒸発器への冷媒の流れは、限定され得るか、又はそうでなければ制限され得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示される特定の実施形態の概要が、以下に記載されている。これらの態様は、これらの特定の実施形態の簡潔な概要を読者に提供するために提示されているだけであり、これらの態様は、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことに留意されたい。実際、本開示は、以下に記載されない可能性のある様々な態様を包含し得る。
【0005】
一実施形態では、暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システムは、HVACシステムの凝縮器から冷媒を受容するように構成された容器と、容器から冷媒を受容するように構成された蒸発器と、冷媒の第1の流れを蒸発器の第1の入口に誘導するように構成された第1の導管と、冷媒の第2の流れを蒸発器の第2の入口に誘導するように構成された第2の導管と、を含む。第2の入口は、垂直軸に対して第1の入口の上にある。
【0006】
一実施形態では、暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システムは、冷媒を凝縮器から受容し、凝縮器から受容した冷媒を蒸気冷媒及び液体冷媒に分離するように構成された容器と、液体冷媒の第1の流れをHVACシステムの蒸発器の第1の入口に誘導するように構成された第1の導管と、液体冷媒の第2の流れを蒸発器の第2の入口に誘導するように構成された第2の導管と、を含む。第1の導管は、バイパスバルブを含み、第2の入口は、垂直軸に対して第1の入口の上にある。HVACシステムはまた、バイパスバルブに通信可能に結合され、バイパスバルブを動作させて、第1の導管を介して蒸発器への液体冷媒の第1の流れの流量を制御するように構成されたコントローラを含む。
【0007】
一実施形態では、暖房、換気、及び/又は空調(HVAC)システムは、凝縮器、凝縮器から冷媒を受容するように構成された中間容器、中間容器から冷媒を受容するように構成された蒸発器、凝縮器と中間容器との間に延在する第1の導管、中間容器と蒸発器の第1の入口との間に延在する第2の導管、及び中間容器と蒸発器の第2の入口との間に延在する第3の導管を含む。第1の導管は、第1の導管を通って誘導される冷媒の圧力を低減して、中間容器内の液体冷媒及び蒸気冷媒への冷媒の分離を可能にするように構成された膨張バルブを含み、第2の導管は、第1の入口を介して液体冷媒を蒸発器内に誘導するように構成され、第2の入口は、垂直軸に対して第1の入口の上にあり、第3の導管は、第2の入口を介して液体冷媒を蒸発器内に誘導するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一態様による、商業的環境における暖房、換気、及び空調(HVAC)システムの一実施形態を利用し得る建物の斜視図である。
【
図2】本開示の一態様による、蒸気圧縮システムの一実施形態の斜視図である。
【
図3】本開示の一態様による、蒸気圧縮システムの一実施形態の概略図である。
【
図4】本開示の一態様による、蒸気圧縮システムの一実施形態の概略図である。
【
図5】本開示の一態様による、バイパスラインを有する蒸気圧縮システムの一実施形態の概略図である。
【
図6】本開示の一態様による、バイパスラインを有する蒸気圧縮システムの一実施形態の概略図である。
【
図7】本開示の一態様による、バイパスラインを有する蒸気圧縮システムの一実施形態の概略図である。
【
図8】本開示の一態様による、バイパスラインを有する蒸気圧縮システムを動作させるための方法又はプロセスの一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ以上の具体的な実施形態が、以下に記載される。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装例の全ての特徴が、本明細書に記載されているわけではない。任意のそのような実際の実装例の開発においては、あらゆる任意の工学又は設計プロジェクトと同様に、開発者固有の目標を達成するためには、システム関連及び業界関連の制約への準拠など、実装例ごとに異なる可能性がある多くの実装例固有の決定を行う必要があることに留意されたい。更に、そのような開発努力は、複雑かつ時間がかかるものであり得るが、それにもかかわらず、本開示の恩恵を受ける当業者にとっては、設計、製作、及び製造の決まりきった仕事であることに留意されたい。
【0010】
本開示の様々な実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することが意図される。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。更に、本開示の「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」への言及は、列挙された特徴を同様に内蔵する追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図するものではないことに留意されたい。
【0011】
本開示は、冷媒回路を通って冷媒を誘導するように構成されたHVACシステムを対象とする。冷媒は、HVACシステムが構造物の内部空間及び/又は冷却流体(例えば、水)を調整することを可能にするために相変化を受けながら、冷媒回路に沿って配設された複数の導管及び構成要素を通って流れ得る。例えば、冷媒は、気相から液相に遷移するために、冷媒回路の凝縮器を介して冷却され得る。冷媒は、凝縮器から冷媒回路の蒸発器(例えば、流下膜式蒸発器)に向かって誘導され得、そこで冷媒は、蒸発器内で液相から気相に遷移して、冷媒と熱交換関係にある冷却流体(例えば、水)を冷却し得る。いくつかの実施形態では、冷媒回路は、凝縮器から液体冷媒を受容し、液体冷媒から蒸気冷媒を分離し得るエコノマイザを含み得る。次いで、エコノマイザは、蒸発器の所望の動作(例えば、効率)を達成して冷却流体を冷却するために、液体冷媒を蒸発器に誘導し、蒸気冷媒が蒸発器に流れるのを阻止し得る。代わりに、エコノマイザは、圧縮のために、蒸気冷媒を冷媒回路の圧縮器に誘導し得る。
【0012】
いくつかの状況では、冷媒は、蒸発器内に容易に流入しない場合がある。例えば、既存のHVACシステムでは、凝縮器及び/又はエコノマイザ内の比較的高い圧力が、冷媒を駆動して蒸発器内に流入させ得る。しかしながら、エコノマイザと蒸発器との間の圧力差、及び/又は凝縮器と蒸発器との間の圧力差が低い場合、冷媒は、十分な流量で蒸発器に流入しないことがある。より具体的には、低圧蒸気冷媒は、エコノマイザと蒸発器との間に延在する導管内に、及び/又はエコノマイザと蒸発器との間に配設された膨張バルブ(例えば、エコノマイザと蒸発器との間に延在する導管に沿って配設された)で収集又は蓄積することができる。例えば、凝縮器内の冷媒の圧力は低くなり得、エコノマイザは、冷媒の圧力を更に低くし得、これは、蒸発器内への冷媒の流量を低減し、それによって、HVACシステムの動作効率を低減し得る。実際、蒸発器への冷媒の低流量は、HVACシステムの特定の構成要素(例えば、圧縮器)の不安定な動作を引き起こし得る。
【0013】
したがって、エコノマイザから蒸発器への冷媒の流量を増加させることは、HVACシステムの動作効率を増加又は維持し得ることが現在認識されている。よって、本開示の実施形態は、エコノマイザと、蒸発器内への冷媒の流れの増加を可能にするように構成されたバイパスライン又は導管とを備えた冷媒回路を有するHVACシステムを対象とする。例えば、バイパスラインは、凝縮器と蒸発器との間に延在し得るか、又はエコノマイザと蒸発器との間に延在し得る。バイパスラインは、蒸発器への液体冷媒の流れを容易にして、冷媒回路内の冷媒の低圧差で、蒸発器への冷媒の流量を増加させ得る。例えば、バイパスラインは、冷媒を蒸発器に(例えば、エコノマイザから)誘導するように構成された一次ラインを介してではなく、バイパスラインを介して液体冷媒を蒸発器に流れるように駆動するために、重力及び/又は冷媒の圧力(例えば、凝縮器と蒸発器との間のヘッド圧力又は圧力差)を可能にするように配置され得る。バイパスラインは、バイパスラインを通って流れる冷媒の量を調節するように構成されたバルブを含み得る。例えば、バルブは、HVACシステムの動作パラメータを示すセンサデータに基づいて部分的又は完全に開放されて、バイパスラインを通る所望の速度での(例えば、一次ラインを通って誘導される液体冷媒の流量に対して)蒸発器への冷媒の流れを可能にし得る。上述のように、いくつかの実施形態では、バイパスラインは、エコノマイザを蒸発器に流体結合する(例えば、その間に延在する)。追加の又は代替の実施形態では、バイパスラインは、エコノマイザを通って流れることなく、液体が凝縮器から蒸発器に直接流れることを可能にする。バイパスラインは、低い及び/又は変動するヘッド圧力(例えば、凝縮器内の比較的低い冷媒圧力及び/又は蒸発器内の比較的高い冷媒圧力)の例の間など、HVACシステムの動作効率を増加又は維持するために、蒸発器内への冷媒の流量を増加させ得る。
【0014】
ここで図面に目を向けると、
図1は、典型的な商業的設定用の建物12内の暖房、換気、及び空調(HVAC)システム10の環境の一実施形態の斜視図である。HVACシステム10は、建物12を冷却するために使用され得る、冷やされた液体を供給する蒸気圧縮システム14を含み得る。HVACシステム10はまた、建物12を暖房するために暖かい液体を供給するためのボイラ16と、建物12を通して空気を循環させる空気分配システムと、を含み得る。空気分配システムはまた、空気戻りダクト18、空気供給ダクト20、及び/又は空気ハンドラ22を含み得る。いくつかの実施形態では、空気ハンドラ22は、導管24によってボイラ16及び蒸気圧縮システム14に接続されている熱交換器を含み得る。空気ハンドラ22内の熱交換器は、HVACシステム10の動作モードに応じて、ボイラ16からの加熱された液体、又は蒸気圧縮システム14からの冷やされた液体のいずれかを受容し得る。HVACシステム10は、建物12の各フロアに別個の空気ハンドラを伴って示されているが、他の実施形態では、HVACシステム10は、フロア間で共有され得る空気ハンドラ22及び/又は他の構成要素を含み得る。
【0015】
図2及び
図3は、HVACシステム10内で使用され得る蒸気圧縮システム14の実施形態を例示する。蒸気圧縮システム14は、圧縮器32から始まる回路を通して冷媒を循環させ得る。回路はまた、凝縮器34と、膨張バルブ又は膨張装置36と、液体チラー又は蒸発器38と、を含み得る。蒸気圧縮システム14は、アナログ-デジタル(A/D)変換器42、マイクロプロセッサ44、不揮発性メモリ46、及び/又は更にインターフェースボード48を有する制御パネル40(例えば、コントローラ)を含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、蒸気圧縮システム14は、可変速ドライブ(VSD)52、モータ50、圧縮器32、凝縮器34、膨張バルブ若しくは膨張装置36、及び/又は蒸発器38のうちの1つ以上を使用し得る。モータ50は、圧縮器32を駆動し得、可変速ドライブ(VSD)52によって電力を供給され得る。VSD52は、交流(AC)電源からの特定の固定回線電圧及び固定回線周波数を有するAC電力を受電し、可変電圧及び周波数を有する電力をモータ50に提供する。他の実施形態では、モータ50は、AC電源又は直流(DC)電源から直接電力供給され得る。モータ50は、VSDによって、又はAC若しくはDC電源から直接電力供給され得る任意のタイプの電気モータ、例えば、スイッチトリラクタンスモータ、誘導モータ、電子整流式永久磁石モータ、又は別の好適なモータを含み得る。
【0017】
圧縮器32は、冷媒蒸気を圧縮し、蒸気を、排出通路を通して凝縮器34に送達する。いくつかの実施形態では、圧縮器32は、遠心式圧縮器であり得る。圧縮器32によって凝縮器34に送達される冷媒蒸気は、凝縮器34内の冷却流体(例えば、水又は空気)に熱を伝達し得る。冷媒蒸気は、冷却流体との熱伝達の結果として、凝縮器34内の冷媒液に凝縮し得る。凝縮器34からの冷媒液は、膨張装置36を通して蒸発器38に流れ得る。
図3の例示される実施形態では、凝縮器34は、水冷式であり、冷却流体を凝縮器に供給する冷却塔56に接続された管束54を含む。
【0018】
蒸発器38に送達された冷媒液は、凝縮器34内で使用されるのと同じ冷却流体であってもよく、又はそうでなくてもよい別の冷却流体から熱を吸収し得る。蒸発器38内の冷媒液は、冷媒液から冷媒蒸気への相変化を受け得る。
図3の例示される実施形態に示されるように、蒸発器38は、冷却負荷62に接続された供給ライン60S及び戻りライン60Rを有する、管束58を含み得る。蒸発器38の冷却流体(例えば、水、エチレングリコール、塩化カルシウムブライン、塩化ナトリウムブライン、又は任意の他の好適な流体)は、戻りライン60Rを介して蒸発器38に入り、供給ライン60Sを介して蒸発器38を出る。蒸発器38は、冷媒との熱伝達を介して、管束58内の冷却流体の温度を低減させ得る。蒸発器38内の管束58は、複数の管及び/又は複数の管束を含み得る。いずれにしても、冷媒蒸気は、蒸発器38を出て、吸込みラインによって圧縮器32に戻り、サイクルを完了する。
【0019】
図4は、凝縮器34と、膨張装置36との間に組み込まれた中間回路64を有する蒸気圧縮システム14の概略である。中間回路64は、凝縮器34に直接流体接続された入口ライン又は導管68を有し得る。他の実施形態では、入口ライン68は、凝縮器34に間接的に流体結合され得る。
図4の例示される実施形態に示されるように、入口ライン68は、中間容器70の上流に位置付けられた第1の膨張装置66を含む。いくつかの実施形態では、中間容器70は、フラッシュタンク(例えば、フラッシュインタークーラ)であり得る。他の実施形態では、中間容器70は、熱交換器又は「表面エコノマイザ」として構成され得る。
図4の例示される実施形態では、中間容器70は、フラッシュタンクとして使用され、第1の膨張装置66は、凝縮器34から受容された冷媒液の圧力を下げる(例えば、膨張させる)ように構成される。膨張プロセス中、液体の一部分が気化して、中間容器70内で冷媒を液体及び蒸気に分離することを可能にし得る。更に、中間容器70は、中間容器70に入るときに冷媒液が経験する圧力低下のために(例えば、中間容器70に入るときに経験する体積の急激な増加のために)、冷媒液の更なる膨張を提供し得る。中間容器70内の蒸気は、圧縮器32の吸込みライン74を通して、圧縮器32によって引き出され得る。他の実施形態では、中間容器70内の蒸気は、(例えば、吸込みステージではなく)圧縮器32の中間ステージに引き込まれ得る。更なる実施形態では、蒸気圧縮システム14は、中間容器70から蒸気を引き出すことを容易にするために、中間容器70に流体結合された追加の圧縮器71を含み得る。すなわち、追加の圧縮器71(例えば、圧縮器32の容量よりも小さい容量を有する圧縮器)は、中間容器70から蒸気を引き出して蒸気を圧縮し得、第2の圧縮器71は、圧縮された冷媒を凝縮器34に排出し得る。追加の圧縮器71の動作は、圧縮器32の動作の効率を改善することによって、及び/又は圧縮器32の構造的完全性を維持することなどによって、圧縮器32の動作を容易にし得る。いずれにしても、中間容器70に集まる液体は、膨張装置66及び/又は中間容器70内での膨張のために、凝縮器34を出る冷媒液よりも低いエンタルピーであり得る。次いで、中間容器70からの液体が、ライン72内を、第2の膨張装置36を通して蒸発器38に流れ得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、蒸気圧縮システム14などの蒸気圧縮システムの効率を向上させるために、蒸気圧縮システム内にバイパスライン(例えば、バイパス導管)を含めることが有利であり得る。例えば、蒸気圧縮システム14内の圧力差(例えば、中間容器70と蒸発器38との間及び/又は凝縮器34と蒸発器38との間)が比較的低いとき、冷媒(例えば、液体冷媒)は、蒸発器38内に(例えば、一次導管を介して)容易に流入するのではなく、中間容器70内に及び/又は中間容器70から蒸発器38に延在する一次導管内にスタック、又は蓄積し得る。いくつかの実施形態では、蒸気圧縮システム14の蒸発器38は、流下膜式蒸発器であり得、流下膜式蒸発器は、他の従来のシステムよりも高い高さ(例えば、凝縮器34に対して、重力に対して)に位置付けられ得、中間容器70から蒸発器38への冷媒の流れを制限し得る。蒸発器38内への制限された冷媒の流れのために、蒸発器38によって提供される冷却量は、限定若しくは制限され得、及び/又は他の蒸気圧縮回路14の構成要素の動作は、悪影響を受け得る。
【0021】
したがって、バイパスラインは、一次導管のものよりも冷媒の流れに対してより低い抵抗を提供し得る代替流路(例えば、一次導管によって提供される流路とは異なる)に沿って冷媒の少なくとも一部を誘導し得る。いくつかの実施形態では、バイパスラインは、凝縮器34及び/又は中間容器70から蒸発器38の底部に向かって冷媒を誘導して、重力を利用してバイパスラインを通って冷媒を蒸発器38に誘導することを可能にし得る。加えて、凝縮器34内及び/又は中間容器70からの圧力(例えば、冷媒のヘッド圧力)はまた、バイパスラインを通って冷媒を蒸発器38に誘導することに寄与し得る。特定の実施形態では、バイパスラインは、バルブを含み得、制御パネル40などの蒸気圧縮システム14の制御システムは、バルブを選択的に作動させて、バイパスラインを介して蒸発器38への冷媒の流れを制御し得る。例として、制御パネル40は、(例えば、蒸気圧縮システム14の他の構成要素から受信したフィードバック又はデータに基づいて)蒸気圧縮システム14の動作容量、性能、及び/又は効率を改善するために、バルブの位置を開閉するか、又は別様に調整し得る。
【0022】
図5は、圧縮器32、凝縮器34、蒸発器38、及び中間容器70を有する蒸気圧縮システム14の一実施形態の概略図である。蒸気圧縮システム14の動作中、圧縮器32は、吸込みライン又は導管92を介して蒸発器38から冷媒(例えば、蒸気冷媒)を受容し、冷媒を加圧し、加圧された冷媒を排出ライン又は導管94を介して凝縮器34に誘導するように構成されている。凝縮器34は、冷媒を冷却し、冷媒を凝縮器34内に液体冷媒96として蓄積させ得、液体冷媒96は、中間容器70に誘導され得、そこで液体冷媒96の圧力が低減されて、液体冷媒96を蒸気冷媒及び液体冷媒98に遷移又は「フラッシュ」させる。中間容器70は、液体冷媒98を蒸発器38に誘導して、液体冷媒98を冷却流体との熱交換関係において、冷却流体を冷却し得る。凝縮器34からの液体冷媒96の減圧は、中間容器70内の液体冷媒98が、液体冷媒96の温度よりも低い温度を有することを引き起こす。このようにして、中間容器70は、蒸発器38の冷却能力の増加を可能にする。更に、中間容器70は、蒸気冷媒が蒸発器38に誘導されるのを阻止して、蒸発器38によって提供される冷却の効率を維持し得る。いくつかの実施形態では、蒸気冷媒は、再加圧のために中間容器70から(例えば、
図4に関して説明された吸込みライン74を介して)圧縮器32に戻され得る。
【0023】
蒸気圧縮システム14は、中間容器70と蒸発器38との間に延在し、中間容器70と蒸発器38とを流体結合するバイパスライン又は導管100(例えば、第1のライン又は導管)を更に含む。例示される実施形態では、蒸気圧縮システム14は、液体冷媒98(例えば、液相にある中間容器70内の冷媒の一部)が中間容器70から流出することを可能にするために、中間容器70の出口103に流体接続された第1の出口ライン又は導管102を含む。バイパスライン100は、第1の出口ライン102と、蒸発器38の底部セクション又は部分106(例えば、底部セクション106での蒸発器38の第1の入口107)との間に延在し、それらを流体結合する。このようにして、液体冷媒98は、中間容器70から第1の出口ライン102及びバイパスライン100を通って蒸発器38の底部セクション106に流れ得る。例示された蒸気圧縮システム14はまた、第1の出口ライン102と蒸発器38の上部セクション又は部分110(例えば、上部セクション110での蒸発器38の第2の入口109)との間に延在し、それらを流体結合する一次ライン又は導管108(例えば、第2のライン又は導管)を含む。したがって、液体冷媒98は、中間容器70から第1の出口ライン102及び一次ライン108を通って、蒸発器38の上部セクション110に流れ得る。例示される実施形態では、バイパスライン100及び一次ライン108の各々が、同じ第1の出口ライン102に流体結合されているが、追加の又は代替の実施形態では、バイパスライン100及び一次ライン108は、中間容器70に別々に結合され得る(例えば、中間容器70の出口を分離するために)。
【0024】
バイパスライン100は、液体冷媒98が中間容器70から蒸発器38に流れるための追加の流路(例えば、一次ライン108によって画定された流路から少なくとも部分的に別個であって、分離された流路)を提供する。バイパスライン100によって提供される追加の流路は、一次ライン108の流路と比較して、液体冷媒98の流れに対してより少ない抵抗を課し得る。例えば、一次ライン108は、バイパスライン100を通って誘導される液体冷媒98と比較して、垂直軸112に対して(例えば、重力に対して)液体冷媒98を更に上方に誘導し得る。すなわち、蒸発器38の上部セクション110での第2の入口109は、垂直軸112に対して、かつ垂直軸112に沿って、蒸発器38の底部セクション106での第1の入口107の上にあり得る。したがって、一次ライン108を通るものと比較して、より少ない流体圧力又は力を使用して、液体冷媒98がバイパスライン100を通って流れるように駆動し得る。実際、一次ライン108の上部116とバイパスライン100の底部118との間の高さの差114は、中間容器70内の液体冷媒98のレベルによって引き起こされる圧力とともに、より容易に、バイパスライン100を通って蒸発器38への液体冷媒98の流れを促進し得る。バイパスライン100は、液体冷媒98が所望の流量で蒸発器38に流入することを可能にするようなサイズにされ得る。例えば、バイパスライン100は、一次ライン108の開口サイズ(例えば、直径)に対して、ほぼ等しい開口サイズ(例えば、直径)又は実質的に小さい開口サイズ(例えば、直径)を有し得る。代替的に、バイパスライン100は、一次ライン108のものよりも実質的に大きい開口サイズ(例えば、直径)を有し得る。
【0025】
中間容器70の出口103は、例示される実施形態では、垂直軸112に対して、蒸発器38の第1の入口107及び第2の入口109の下にあるが、追加の又は代替の実施形態では、出口103は、垂直軸112に対して、第1の入口107及び/又は第2の入口109の上にあってもよい。例えば、中間容器70の少なくとも一部は、蒸発器38の上(例えば、第2の入口109の上)に位置付けられ得る。そのような実施形態では、第1の入口107は、バイパスライン100が、一次ライン108のそれと比較して、液体冷媒98の流れに対してより少ない抵抗を課すように、第2の入口109の下に留まることができる。
【0026】
図5に例示された蒸発器38は、流下膜式蒸発器、満液式蒸発器、又はその両方として動作するように構成されたハイブリッド流下膜式及び満液式蒸発器であり得る。例えば、蒸発器38は、液体冷媒98が一次ライン108を通って、蒸発器38の第2の入口109を介して蒸発器38の上部セクション110に流れるとき(例えば、バイパスライン100を利用して液体冷媒98を蒸発器38に誘導することなく)、流下膜式蒸発器として動作し得る。いくつかの実施形態では、バイパス導管100を通る液体冷媒98の流れは、流下膜式蒸発器としての蒸発器38の動作中に阻止され得る。液体冷媒98は、重力などにより、上部セクション110から底部セクション106に向かって蒸発器38内を流れ得る。蒸発器38は、液体冷媒98を冷却流体との熱交換関係において(例えば、そこを通って冷却流体を誘導するように構成された蒸発器38内に配設された管を介して)、上部セクション110から底部セクション106に向かって流れている間に、液体冷媒98が冷却流体を冷却することを可能にし得る。冷却流体が蒸発器38内で冷却された後、次いで、冷却流体は、別の流体(例えば、空気)を冷却流体で調整するために、調整機器(例えば、ターミナルユニット、空気ハンドラ)に誘導され得る。
【0027】
加えて、蒸発器38は、液体冷媒98がバイパスライン100を通って第1の入口107を介して蒸発器38の底部セクション106に流れるとき(例えば、中間容器70と蒸発器38との間の圧力差が比較的小さいとき)、満液式蒸発器として動作し得る。すなわち、液体冷媒98は、底部セクション106に蓄積し得る。蒸発器38は、液体冷媒98を冷却流体との熱交換関係で底部セクション106において、液体冷媒98が底部セクション106に蓄積しながら冷却流体を冷却することを可能にし得る。更に、液体冷媒98が一次ライン108及びバイパスライン100の両方を通って、それぞれ、蒸発器38の上部セクション110及び底部セクション106内に誘導されるときなど、蒸発器38は、流下膜式蒸発器及び満液式蒸発器の両方(例えば、ハイブリッド流下膜式蒸発器、又はハイブリッド満液式蒸発器、及び/又はハイブリッド流下膜式及び満液式蒸発器)として同時に動作し得る。例えば、液体冷媒98は、上部セクション110から底部セクション106に流れ、また、蒸発器38内の底部セクション106に蓄積して、蒸発器38を通って誘導される冷却流体と熱交換し得る。
【0028】
この目的のために、及び簡単に上述したように、蒸発器38は、第2の入口109の下に位置付けられ、それを通って冷却流体が誘導される第1の管束58Aを含み得る。一次ライン108を介して蒸発器38の上部セクション110に誘導された液体冷媒98は、第1の管束58Aの管の上を流れるか、又は「落ちる」(例えば、重力を介して)ことができて、第1の管束58Aを通って誘導された冷却流体と熱交換し得る。すなわち、第1の管束58Aに接触する液体冷媒98は、第1の管束58Aを通って流れる冷却流体から熱エネルギーを吸収して、上部セクション110を介して蒸発器38内に誘導される液体冷媒98の一部を蒸発させ得る。蒸発器38はまた、それを通って冷却流体がまた誘導され得る第2の管束58Bを含み得、第2の管束58Bは、蒸発器38の底部セクション106内に蓄積する液体冷媒98によって囲まれ得、液体冷媒98は、バイパスライン100を介して底部セクション106に誘導された液体冷媒98、及び/又は蒸発器38の上部セクション110から底部セクション106に落ちる液体冷媒98を含み得る。よって、第2の管束58Bは、第1の管束の下及び第1の入口107の上に位置付けられ得る。第2の管束58Bは、蒸発器38の底部セクション106で第2の管束58Bを通って流れる冷却流体との熱交換関係に液体冷媒98を置いて、底部セクション106での液体冷媒98の一部を蒸発させ得る。追加の又は代替の実施形態では、蒸発器38は、ハイブリッド流下膜式及び満液式蒸発器の代わりに、別の好適なタイプの蒸発器を含み得る。
【0029】
例示された一次ライン108は、一次ライン108を通って流れる液体冷媒98の圧力を低減させ、第1の出口ライン102から蒸発器38の上部セクション110までの液体冷媒98の流れを調節する(例えば、液体冷媒98の温度及び/又は圧力を調節する)膨張バルブ36を含み得る。バイパスライン100は、バイパスバルブ120を含み得、バイパスバルブ120は、バイパスライン100を通る液体冷媒98の蒸発器38への流れを調整及び/又は選択的に可能にし得る。膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120は、制御パネル40のマイクロプロセッサ44など、制御パネル40に通信可能に結合され得る。マイクロプロセッサ44(例えば、処理回路)は、蒸気圧縮システム14の動作条件又はパラメータ(例えば、センサフィードバックなど、フィードバックとして制御パネル40によって受信される)などに基づいて、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120の位置を調節するように構成され得る。例えば、メモリ46は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性メモリ、及び/若しくは、読み取り専用メモリ(ROM)などの不揮発性メモリ、光学ドライブ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、又は、実行されたときに、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120の動作を制御することを含む、蒸気圧縮システム14の動作を制御する命令を格納する任意の他の非一時的コンピュータ可読媒体を含み得る。マイクロプロセッサ44(例えば、処理回路)は、メモリ46に格納されたそのような命令を実行するように構成され得る。一例として、マイクロプロセッサ44は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、1つ以上の汎用プロセッサ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、蒸気圧縮システム14は、蒸気圧縮システム14の動作パラメータ(例えば、冷媒圧力、冷媒温度、動作容量)を検出又は決定するように構成された1つ以上のセンサ122を含み得る。制御パネル40は、センサ122からセンサデータを受信するために、センサ122に通信可能に結合され得、制御パネル40は、膨張バルブ36及び/又はバイパスバルブ120の位置を(例えば、開閉するために)調節するなど、センサデータに基づいて動作し得る。例として、センサデータは、蒸発器38内の圧力、圧縮器32の排出圧力、凝縮器34内の圧力、蒸気圧縮システム14内の(例えば、中間容器70と蒸発器38との間の)圧力差、凝縮器34内の液体冷媒96のレベル、及び/又は蒸発器38内への冷媒の流量(例えば、上部セクション110の第2の入口109を介した)を示し得る。実際、制御パネル40は、センサデータを1つ以上の閾値(例えば、圧力値、圧力差値、流量値)と比較して、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120のいずれかが調節されるべきかどうかを決定し得る。更に、センサデータは、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120のそれぞれの位置を示すことができ、したがって、制御パネル40は、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120が所望の位置に設定されているかどうかを決定するためにセンサデータを使用し得る。この目的のために、1つ以上のセンサ122は、圧縮器32、凝縮器34、蒸発器38、膨張バルブ36、膨張バルブ66、バイパスバルブ120、第1の出口ライン102、バイパスライン100、一次ライン108、蒸気圧縮システム14の任意の他の好適な場所、又はそれらの任意の組み合わせに結合され、及び/又は配設され得る。
【0031】
例として、制御パネル40は、蒸発器38への液体冷媒98の所望の流れを維持するために、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120の位置を調節し得る。例えば、低い圧力差状態の間、制御パネル40は、閾値流量を上回る液体冷媒98の蒸発器38への流れを維持するように動作し得る。更に、蒸気圧縮システム14内の圧力差(例えば、中間容器70と蒸発器38との間の圧力差)が変動し、一次ライン108を通る液体冷媒98の駆動に影響する状態の間、制御パネル40は、変動圧力差に応答して、一定の又は十分な流量で液体冷媒98の流れを調整するように動作し得る。制御パネル40はまた、凝縮器34及び/又は中間容器70内の液体冷媒96、98のレベルをそれぞれ安定させるために、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120の位置を調節し得る。すなわち、蒸発器38内に誘導される液体冷媒98の流量を制御することは、中間容器70から誘導される液体冷媒98の流量及び凝縮器34から中間容器70内に誘導される液体冷媒96の流量に影響を及ぼし得る。よって、制御パネル40は、凝縮器34及び/又は中間容器70の中へ誘導される冷媒の流量に対して、それぞれ、凝縮器34及び/又は中間容器70から外へ誘導される液体冷媒96、98の流量に基づいて、バルブ36、66、120を制御して、凝縮器34及び中間容器70内の液体冷媒96、98のレベルをそれぞれ制御し得る。
【0032】
制御パネル40の動作はまた、蒸気圧縮システム14の構成要素の構造的完全性を改善し得る。例として、バルブ36、66、120の制御は、蒸発器38内の圧力を低減させることなく(例えば、圧縮器32の動作を調節することによって)、液体冷媒98が所望の流量で蒸発器38内に誘導されることを可能にして、蒸気圧縮システム14内の圧力差(例えば、中間容器70と蒸発器38との間の)を増加させ得る。蒸発器38内の圧力を低減させることは、冷却流体の凍結を引き起こし得、これは、蒸発器38の構造的完全性に影響を及ぼし得る。したがって、蒸発器38内の圧力を低減させることによってではなく、バルブ36、66、120を制御することによって、蒸発器38内への液体冷媒98の流量を制御することは、冷却流体の凍結を阻止し得、それによって、蒸発器38の構造的完全性を改善し得る。
【0033】
蒸気圧縮システム14はまた、蒸気圧縮システム14のエネルギー消費を低減するために、自由冷却モードで動作するように構成され得る。一例として、制御パネル40は、周囲温度及び/又は閾値を下回る凝縮器34を通って誘導される(例えば、液体冷媒96を冷却するために)調整流体の温度に応答して、蒸気圧縮システム14を自由冷却モードで動作させ得る。別の例として、制御パネル40は、凝縮器34内の温度(例えば、調整流体及び/又は冷媒温度)が蒸発器38内の温度(例えば、冷却流体及び/又は冷媒温度)よりも低いことに応答して、蒸気圧縮システム14を動作させ得る。実際、バルブ36、66、120の制御は、上昇又は増加した温度及び/又は圧力で凝縮器34を動作させることなく、液体冷媒98が所望の流量で蒸発器38内に誘導されることを可能にし得る(例えば、中間容器70と蒸発器38との間の所望の圧力差を達成するために)。したがって、蒸気圧縮システム14は、自由冷却モードで動作するように構成され得、このモードでは、凝縮器34は、低減された温度及び/又は圧力であってもよく、それにもかかわらず、液体冷媒98を、所望の割合で蒸発器38内に誘導し得る(例えば、凝縮器34内の温度及び/又は圧力を増加させることなく)。
【0034】
自由冷却モードの間、制御パネル40は、圧縮器32の動作を中断することによって、又は圧縮器32を低減された容量で動作させることによって、圧縮器32の電力消費を低減し得、それによって、凝縮器34に入る冷媒の加圧を低減する。このようにして、自由冷却モード中、蒸気圧縮システム14内の圧力差(例えば、中間容器70と蒸発器38との間、及び/又は凝縮器34と蒸発器38との間)は、比較的低くてもよい(例えば、非自由冷却動作と比較して)。バイパスライン100は、液体冷媒98が、限定された機械力(例えば、圧縮器32を介して作成された圧力差)で蒸発器38に誘導されるための流路を提供することによって、自由冷却モードでの蒸気圧縮システム14の動作を容易にし得る。例えば、蒸発器38と凝縮器34との間の温度差は、蒸発器38から吸込みライン92を通って、圧縮器32を通って、排出ライン94を通って、凝縮器34内に流れるように蒸気冷媒を駆動し得る。蒸気冷媒は、次いで、調整流体との熱交換を介して液体に凝縮し、凝縮器34内の液体冷媒96として蓄積する。その後、液体冷媒96は、中間容器70内に誘導され、そこで、液体冷媒96は、部分的に気化して蒸気冷媒を形成し、部分的に液体冷媒98として蓄積する。
【0035】
バイパスバルブ120が少なくとも部分的に開いているとき、バイパスライン100は、液体冷媒98が重力を介して及び/又は中間容器70内の圧力を介して中間容器70から蒸発器38に流れることを可能にし得る。このようにして、バイパスライン100及びバイパスバルブ120は、圧縮器32の低減された又は中断された動作中に(例えば、蒸気圧縮システム14の自由冷却動作中に)、液体冷媒98が蒸気圧縮システム14を通って蒸発器38内に適切に誘導されることを可能にし得、それによって、エネルギー消費及び/又は蒸気圧縮システム14を動作させるコストを低減する。すなわち、バイパスライン100を通って誘導される液体冷媒98は、高さ差114に沿って蒸発器38の上部セクション110まで一次ライン108を通って流れる重力を克服することなく、蒸発器38内に流れ得る。このようにして、中間容器70(例えば、第1の出口ライン102)と蒸発器38との間に延在するバイパスライン100は、蒸気圧縮システム14の改善された動作(例えば、より高い効率での蒸気圧縮システム14の動作)を可能にする。
【0036】
図6は、液体冷媒96が凝縮器34から蒸発器38に直接流れることを可能にするための、凝縮器34と蒸発器38(例えば、蒸発器38の底部セクション106)との間に延在するバイパスライン100を例示する、蒸気圧縮システム14の一部の一実施形態の概略図である。すなわち、バイパスライン100は、
図5に示されるように、蒸発器38と中間容器70との間に延在せず、それによって、液体冷媒96が中間容器70をバイパスするのを可能にする。例えば、第2の出口ライン又は導管140は、凝縮器34の(例えば、凝縮器34のベース又は底部セクションの)出口141から延在して、液体冷媒96が凝縮器34から流出することを可能にし得る。入口ライン68及びバイパスライン100の各々は、第2の出口ライン140から延在し、第2の出口ライン140に流体結合され得る。追加の又は代替の実施形態では、バイパスライン100及び入口ライン68は、凝縮器34に別々に結合され得る(例えば、凝縮器34の出口を分離するために)。いずれにしても、液体冷媒96の第1の部分は、バイパスライン100を介して蒸発器38に流れ得、液体冷媒96の第2の部分は、入口ライン68、中間容器70、及び一次ライン108を介して蒸発器38に流れ得る。このようにして、バイパスライン100を通って流れる液体冷媒96は、膨張バルブ66を通って、中間容器70に流れない。
【0037】
図6に例示された蒸気圧縮システム14は、
図5に関して上述した技術に従って動作し得る。例えば、制御パネル40は、1つ以上のセンサ122から受信したセンサデータに基づいて、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120を動作させ得、それにより、液体冷媒96、98を蒸発器38の上部セクション110に誘導するために膨張バルブ66及び膨張バルブ36を開くことによって、蒸発器38を流下膜式蒸発器として動作させ、及び/又は液体冷媒96を蒸発器38の底部セクション106に誘導するためにバイパスバルブ120を開くことによって、蒸発器38を満液式蒸発器として動作させる。実際、いくつかの動作モードでは、制御パネル40は、膨張バルブ36及び/又は膨張バルブ66を完全に閉じて、液体冷媒96、98が蒸発器38の上部セクション110に流入するのを阻止し得、それによって、蒸発器38を満液式蒸発器として動作させる。制御パネル40はまた、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120を少なくとも部分的に開いて、蒸発器38をハイブリッド流下膜式及び満液式蒸発器として動作させ得る。言い換えると、制御パネル40は、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120の動作を制御して、第1の入口107及び/又は第2の入口108を介して(例えば、1つ以上のセンサ122からのフィードバックに基づいて)蒸発器38への液体冷媒96及び/又は98の所望の流量を可能にするように構成される。
【0038】
図7は、第1の出口ライン102と蒸発器38の側面セクション又は部分160(例えば、側面セクション160の第3の入口161)との間に延在するバイパスライン100を例示する、蒸気圧縮システム14の一部の一実施形態の概略図である。例えば、蒸発器38に対する中間容器70の位置付け、及び/又は蒸気圧縮システム14内の圧力差(例えば、中間容器70と蒸発器38との間)は、液体冷媒98が、垂直軸112に対して側面セクション160の下方にある蒸発器38の底部セクション106の代わりに側面セクション160に流入することを可能にし得る。すなわち、蒸気圧縮システム14内の重力及び/又は圧力差が、液体冷媒98を、側面セクション160を介してと比較して、底部セクション106を介してより大きな流量で蒸発器38に流入させることを可能にし得るにもかかわらず、蒸気圧縮システム14の本実装は、液体冷媒98を、側面セクション160を介して所望の流量で蒸発器38に流入させることを可能にし得る(例えば、液体冷媒98を、底部セクション106を介して増大した流量で蒸発器38に流入させることなく)。
【0039】
バイパスライン100を通って側面セクション161を介して蒸発器38内に流れる液体冷媒98は、上部セクション110で第1の管束58Aの一部又はサブセットの上を流れて、蒸発器38が流下膜式蒸発器として部分的に動作することを可能にし得る。更に、蒸発器38内に誘導された液体冷媒98は、蒸発器38の底部セクション106に蓄積して、底部セクション106で蒸発器38の第2の管束58Bを少なくとも部分的に取り囲み、蒸発器38が満液式蒸発器として動作することを可能にし得る。したがって、側面セクション160に流体結合されたバイパスライン100を介して、液体冷媒98を蒸発器38内に誘導することは、蒸発器38が、流下膜式蒸発器及び満液式蒸発器の両方として動作することを可能にし得る。いくつかの実施形態では、
図7に示されるバイパスライン100の構成は、液体冷媒98を上方向(例えば、垂直軸112に沿って、重力に逆らって)に蒸発器38内に誘導することを回避し得、更に、蒸発器38内への液体冷媒98の流れ抵抗を低減し得る。更に、制御パネル40は、1つ以上のセンサ122から受信したセンサデータに基づいて、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120を動作させるなど、上述の技術を使用して、例示された蒸気圧縮システム14を動作させ得る。
【0040】
図8は、本開示の技術による、蒸気圧縮システム14を動作させるための方法又はプロセス180の一実施形態のフローチャートである。一例として、1つ以上の制御システム(例えば、制御パネル40)又は処理回路が、方法180のステップを実行するように構成され得る(例えば、メモリ46に格納された命令を介して)。更に、方法180は、代替の実施形態では異なる方法で実行され得ることに留意されたい。例えば、追加のステップが実行され得、及び/又は示された方法180の特定のステップが、除去、修正、及び/又は異なる順序で実行され得る。
【0041】
ブロック182において、蒸気圧縮システム14内の圧力差を示す1つ以上の動作パラメータが受信される。例えば、1つ以上の動作パラメータは、1つ以上のセンサ122によって出力されるセンサデータを介して受信され得る。一例として、1つ以上の動作パラメータは、蒸発器38と中間容器70との間、及び/又は蒸発器38と凝縮器34との間の圧力差を含み得る。別の例として、1つ以上の動作パラメータは、中間容器70内の、凝縮器34内の、蒸発器38内の、及び/又は一次ライン108内の冷媒(例えば、液体冷媒96、98、蒸気冷媒)の液体レベル、凝縮器34、蒸発器38、排出ライン94、及び/又は中間容器70内のそれぞれの圧力、一次ライン108内の液体冷媒98の流量及び/又は圧力、入口ライン68を通る液体冷媒96の流量、圧縮器(例えば、圧縮器32)に供給される電力量、圧縮器の速度、凝縮器34、蒸発器38、及び/又は中間容器70内のそれぞれの温度、周囲温度、蒸発器38内の冷却流体の温度、凝縮器34内の調整流体の温度、別の好適な動作パラメータ、又はそれらの任意の組み合わせ、を含み得る。実際には、1つ以上の動作パラメータは、液体冷媒98が所望の又は目標流量で蒸発器38内に流入しているかどうかを示し得る。ブロック184において、1つ以上の動作パラメータが、閾値と比較される。1つ以上の動作パラメータと閾値との比較は、蒸気圧縮システム14の動作が調節されるべきかどうかを示し得る。
【0042】
ブロック186において、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120が、1つ以上の動作パラメータと閾値との比較に基づいて動作される(例えば、調節される)。例えば、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120のそれぞれの目標又は所望の位置が、1つ以上の動作パラメータと閾値との比較に基づいて決定され得る。特定の実施形態では、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120のいずれか又は全ては、全開位置と全閉位置との間で遷移するように構成されたオン/オフバルブを含み得る。追加の又は代替の実施形態では、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120のいずれか又は全ては、部分的に開いた位置又は部分的に閉じた位置など、全開位置と全閉位置との間の中間位置に遷移するようにも構成され得る。例えば、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120は、電磁バルブであってもよく、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120のそれぞれの位置は、(例えば、制御パネル40からの)受信された制御信号に基づき得る。いずれにしても、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120のそれぞれの位置を示すセンサデータを使用して(例えば、制御パネル40によって)、蒸発器38内への液体冷媒96、98の所望の流れを可能にするために、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120を対応する目標位置に調節し得る。
【0043】
例として、1つ以上の動作パラメータと閾値との比較が、圧力差(例えば、凝縮器34と蒸発器38との間の)が低い(例えば、低い閾値圧力差を下回る)ことを示す場合、蒸気圧縮システム14(例えば、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120)は、バイパスバルブ120の開口部を増加させることによって、及び/又は膨張バルブ36の開口部を減少させることなどによって、蒸発器38内への液体冷媒96、98の流れを増加させるように動作され得る。同様に、1つ以上の動作パラメータと閾値との比較が、圧力差が高い(例えば、高い閾値圧力差を上回る)ことを示す場合、蒸気圧縮システム14(例えば、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120)は、バイパスバルブ120の開口部を減少させることによって、及び/又は膨張バルブ36の開口部を増加させることなどによって、バイパスライン100を介して蒸発器38内への冷媒の流れを減少させるように動作され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、膨張バルブ36及び/又は膨張バルブ66の位置は、バイパスバルブ120の位置を調節する前に調節され得る。例えば、膨張バルブ36の位置及び/又は膨張バルブ66の位置は、バイパスバルブ120が調節される前に、それぞれの閾値位置(例えば、全開位置、全閉位置)に調節され得る。言い換えれば、バイパスバルブ120は、膨張バルブ36及び/又は膨張バルブ66が、十分に若しくは完全に開放されるか、又は十分に若しくは完全に閉鎖されるまで調節されない場合がある。例えば、バイパスバルブ120は、膨張バルブ36及び/又は膨張バルブ66が完全に開いた位置にあるまで閉じたままであり得る。膨張バルブ36及び/又は膨張バルブ66が全開位置に調節された後、次いで、バイパスバルブ120が、時間間隔ごとに設定された増分(例えば、全開サイズの20%)などで開放され得る。追加の又は代替の実施形態では、膨張バルブ36、膨張バルブ66、及び/又はバイパスバルブ120は、第1の入口107及び第2の入口108を介して蒸発器38内への液体冷媒96、98の流れの所望のバランスを可能にするなど、同時に調節され得る。例えば、膨張バルブ36の、及び/又は膨張バルブ66の開口部は、バイパスバルブ120の開口部が増加して、バイパスライン100を通って(例えば、一次ライン108を通るのではなく)蒸発器38内に流れる冷媒を増加させる間、縮小され得る。
【0045】
本開示は、HVACシステムの改善された動作を可能にするための1つ以上の技術的効果を提供し得る。例えば、HVACシステムは、冷媒を循環させるように構成された蒸気圧縮システムを含み得る。蒸気圧縮システムは、調整流体との熱交換を介して冷媒を冷却するように構成された凝縮器と、冷却された冷媒を冷却流体との熱交換関係において、冷却流体を冷却するように構成された蒸発器とを含み得る。蒸気圧縮システムはまた、凝縮器から排出された液体冷媒を更に冷却し、液体冷媒を蒸発器に誘導し得る中間容器を含む。蒸気圧縮システムは、冷媒を中間容器から蒸発器内に誘導するように構成された一次ラインと、冷媒を蒸発器内に誘導する(例えば、凝縮器から、中間容器から)ように構成されたバイパスラインとを含み得る。
【0046】
バイパスラインは、一次ラインよりも蒸発器内への冷媒の流れに対してより少ない抵抗を提供し得る。例えば、一次ラインは、蒸気圧縮システム内の圧力差(例えば、凝縮器と蒸発器との間、及び/又は中間容器と蒸発器との間)を利用して、冷媒を蒸発器内に誘導し得、バイパスラインは、重力を利用して、冷媒を蒸発器内に誘導し得る。いくつかの実施形態では、バイパスラインは、冷媒が重力を克服することなく、及び/又は一次ラインを介して蒸発器内に誘導される冷媒よりも少ない重力を克服することによって、蒸発器内への冷媒の流れを可能にする。したがって、例えば、冷媒が一次ラインを介して標的又は所望の流量で蒸発器内に誘導されていないときなど特定の動作条件の間、及び/又は蒸気圧縮システムにおける低い圧力差条件の間、バイパスライン(例えば、バイパスラインのバイパスバルブ)は、目標流量に向かってバイパスラインを介して蒸発器内への冷媒の流量を増加させるように動作され得る。本開示の技術はまた、蒸気圧縮システム内の(例えば、一次ライン内の)液体冷媒停滞の期間中、ヘッド又は排出圧力の変動中、凝縮器内の液体冷媒レベルの変動中などのような、蒸気圧縮システムの追加の又は代替の動作条件において利用され得る。本明細書における技術的効果及び技術的問題は、例であり、限定するものではない。本明細書に記載の実施形態は、他の技術的効果を有し得、他の技術的問題を解決し得ることに留意されたい。
【0047】
本開示の特定の特徴及び実施形態のみが図示及び説明されてきたが、多くの修正及び変更(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び比率の変化、パラメータの値(例えば、温度、圧力)、取り付け配置、材料の使用、色、配向)が、特許請求の範囲に記載された本主題の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、当業者には想到され得る。任意のプロセス又は方法ステップの順番又はシーケンスは、代替実施形態に従って、変更又は再順序付けされ得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨に収まるものとして、全てのそのような修正及び変更を網羅することが意図されていることを留意されたい。更に、例示的な実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装例の全ての特徴が説明されていない場合がある(すなわち、本開示を実施するための熟考された現在の最良モードとは無関係のもの、又は特許請求された実施形態を可能にすることとは無関係なもの)。任意のエンジニアリング又は設計プロジェクトにおけるように、任意のそのような実際の実装例の開発では、多くの実装例固有の決定がなされ得ることを理解されたい。そのような開発努力は、複雑かつ時間がかかるものであり得るが、それにもかかわらず、過度の実験をすることなく、本開示の恩恵を受ける当業者にとっては、設計、製作、及び製造の決まりきった仕事となる。
【0048】
本明細書に提示及び特許請求される技術は、本技術分野を明らかに改善する実用的な性質の材料物体及び具体的な例に参照及び適用され、よって、抽象的、無形的、又は純粋に理論的ではない。更に、本明細書の最後に添付されたいずれかの特許請求の範囲が、「[機能]を[実行]するための手段」又は「[機能]を[実行]するためのステップ」として指定された1つ以上の要素を含む場合、そのような要素は、米国特許法第112条(f)に基づいて解釈されるべきであることが意図される。しかしながら、他の様態で指定された要素を含むいずれかの特許請求の範囲については、そのような要素は、米国特許法第112条(f)に基づいて解釈されるべきではないことが意図される。
【国際調査報告】