(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】振動刺激を提供するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61N 2/12 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
A61N2/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519860
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 US2021071669
(87)【国際公開番号】W WO2022073025
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522170652
【氏名又は名称】ウェイブ・ニューロサイエンス、インク.
【氏名又は名称原語表記】Wave Neuroscience Inc.
【住所又は居所原語表記】1601 Dove St., #205 Newport Beach,CA 92660 UNITED STATES
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,ジェームズ・ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA04
4C106AA07
4C106BB02
4C106CC03
4C106FF11
(57)【要約】
治療のためのEEG読み取り値に基づいてフィードバックを提供するために振動エネルギーをユーザに提供するために、システムおよび方法が本明細書に説明されており、治療は、それらのEEG読み取り値の品質ファクタに基づいて振動周波数をユーザに提供し、EEG帯域内のプリセットされた周波数を提供して、品質ファクタをチューンアップまたはチューンダウンする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)人の特定のEEG帯域の周波数選択性およびリズム性の尺度であるQファクタに影響を与えるために、EEG帯域の事前選択されたQファクタまたはターゲットQファクタに向けて振動面の振動を調整することと、
(b)前記振動面を被験者の頭部に適用することと
を含む、被験者を治療する方法。
【請求項2】
(a)被験者の特定のEEG帯域内の固有周波数のQファクタを決定することと、
(b)ステップ(a)からの固有周波数のQファクタを、健康人集団データベースの固有周波数の平均Qファクタと比較し、
ステップ(a)からの固有周波数のQファクタが健康人集団データベースの固有周波数の平均Qファクタより高いとき、複数の振動周波数または事前選択された単一の振動周波数を用いて振動面を被験者の頭部に適用することによって、被験者の固有周波数のQファクタをチューンダウンし、
ステップ(a)からの固有周波数のQファクタが健康人集団データベースの固有周波数の平均Qファクタより低いとき、複数の振動周波数または事前選択された単一の振動周波数を用いて振動面を被験者の頭部に適用することによって、被験者の固有周波数のQファクタをチューンアップすることと
を含む、被験者を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/085,570号の優先権を主張し、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、いくつかの精神障害に対する新規で安価な、使いやすい療法のための方法およびシステムについて説明する。研究により、人の脳に付与されたエネルギーが、脳の自然な神経可塑性により、機能性の変化をもたらし得ることが示されている。反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は、人の頭皮の近くに設置したコイルにより送達される高エネルギーの電磁パルスを用いて、脳にエネルギーを付与するものである。脳のターゲット領域に向けられたとき、コイル下の神経細胞の発火特性に変化がもたらされることができる。しかし、磁気パルスが人のEEG帯域の固有周波数で提供される場合、磁気パルスのエネルギーは、所望の変化をもたらしながら、大幅に減少することがある。これは、その固有周波数での脳の自然共振によるものである。
【0003】
脳の固有周波数での刺激の結果としての、脳の神経細胞活動に対する機能的な変化は、脳が「同調」することであり、脳全体の神経細胞の発火がよりリズミック、同期的、およびコヒーレントになることである。脳の同期性が増加すると、人の集中度、集中力、落ち着きが改善され、多くの精神疾患の症状も改善される可能性がある。脳が同調すると、特定のEEG帯域の固有周波数分布の帯域幅のあたりのEEGが狭くなる傾向があり、その結果、Qファクタが増加する。Qファクタは、固有周波数を固有周波数周りの周波数分布の帯域幅で割った比率で定義される。また、脳の固有周波数ではない刺激を付与することで、人の脳を離調させることも可能であり、その結果、Qファクタは低下する。例えば、刺激周波数は、脳の固有周波数から1Hzより多く離れたものとすることができる。別の例では、刺激周波数は、脳の固有周波数と等しくない値に周期的な間隔でランダムにシフトし得る。
【0004】
刺激の周波数が、固有周波数とは異なるが、固有周波数から約1/2Hz以内の値に設定されると、刺激エネルギーは、固有周波数を刺激の周波数に向けて「引っ張る」傾向がある。したがって、固有周波数を予め指定されたターゲット値に向かって変化させることも可能である。
【0005】
刺激の周波数が、頭部のかなりの部分が影響を受けるようなものであれば、エネルギーは脳の複数の領域に影響を与え、物理的に分離した脳領域間の神経細胞の発火をよりコヒーレントにする。したがって、予め指定されたターゲット値に向かってコヒーレンスを変化させることも可能である。
【0006】
エネルギーの周波数内容がその人の固有周波数に設定されると、刺激のエネルギーが低くなる可能性があるので、他のより低いエネルギーのモダリティを使用して、依然効果を得ることもできる。例えば、経頭蓋交流電流刺激法(tACS)は、頭皮上の電極を用い、それらは電極が頭蓋骨を通して人の脳に非常に低いエネルギーの電気パルスを与えるものであり、その電気パルスが神経細胞発火の脳固有周波数をターゲットにしていれば、刺激が非常に低いにもかかわらず、脳の機能性の変化がもたらされることができる。
【0007】
エネルギー刺激の例は、例えば、米国特許第8,456,408号;第8,475,354号;第8,480,554号;第8,585,568号;第8,870,737号;第8,926,490号;第9,015,057号;第9,308,385号;第9,649,502号;第9,962,555号;第10,342,986号;第10,350,427号;第10,398,906号;第10,420,482号;および第10,420,953号;および米国公開第2016/0045756号;2017/0296837号;2018/0104504号;および2018/0229049号に見出され得、これらはそれぞれ引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8,456,408号明細書
【特許文献2】米国特許第8,475,354号明細書
【特許文献3】米国特許第8,480,554号明細書
【特許文献4】米国特許第8,585,568号明細書
【特許文献5】米国特許第8,870,737号明細書
【特許文献6】米国特許第8,926,490号明細書
【特許文献7】米国特許第9,015,057号明細書
【特許文献8】米国特許第9,308,385号明細書
【特許文献9】米国特許第9,649,502号明細書
【特許文献10】米国特許第9,962,555号明細書
【特許文献11】米国特許第10,342,986号明細書
【特許文献12】米国特許第10,350,427号明細書
【特許文献13】米国特許第10,398,906号明細書
【特許文献14】米国特許第10,420,482号明細書
【特許文献15】米国特許第10,420,953号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2016/0045756号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2017/0296837号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2018/0104504号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2018/0229049号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に説明される例示的な実施形態は、被験者の頭部に振動エネルギーを適用するシステムおよび方法を含む。
【0010】
本明細書に説明される例示的な実施形態は、被験者の特定のEEG帯域の固有周波数に影響を与えるための振動エネルギー源を、特定の帯域の事前選択された周波数またはターゲット固有周波数に向かって調整し、振動エネルギーを被験者の頭部に適用するシステムおよび方法を含む。他のEEGベースの影響もまた、または代替的にもたらされ得る。例えば、固有周波数の高調波および/またはサブ高調波が使用されてもよい。振動エネルギー源はまた、または代替的に、脳内の複数の部位間の固有周波数のQファクタ、EEG位相、および/またはコヒーレンス、およびそれらの任意の組み合わせに影響を与えるために使用されてもよい。
【0011】
例示的な実施形態では、振動エネルギーは、錘を回転および/または並進させることによって作られ得る。錘は磁性体であってもよい。
【0012】
例示的な実施形態では、振動エネルギーは、周波数における磁気刺激および/または電気刺激と組み合わせて適用される。電気刺激および/または磁気刺激の周波数は、振動刺激の周波数の高調波、および/またはサブ高調波とほぼ等しくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による例示的なデバイスおよびデバイスの部分的な構成要素図である。
【
図2】本発明の実施形態による例示的なデバイスおよびデバイスの部分的な構成要素図である。
【
図3】本発明の実施形態による例示的なデバイスおよびデバイスの部分的な構成要素図である。
【
図4】本発明の実施形態による例示的なデバイスおよびデバイスの部分的な構成要素図である。
【
図5】本発明の実施形態による例示的なデバイスおよびデバイスの部分的な構成要素図である。
【
図6】本発明の実施形態による例示的なデバイスおよびデバイスの部分的な構成要素図である。
【
図7】本発明の実施形態による例示的なデバイスおよびデバイスの部分的な構成要素図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明は、本発明の原理を、限定ではなく、例として説明するものである。この説明は、当業者が本発明を製造し使用することを明らかに可能にし、本発明を実施する最良の態様であると現在信じられているものを含む、本発明のいくつかの実施形態、適応、変形、代替および使用について説明する。図面は、本発明の例示的な実施形態の図式的および概略的な表現であり、本発明を限定するものではなく、必ずしも縮尺通りに描かれているわけでもないことを理解されたい。
【0015】
磁石が、神経細胞の発火の脳の固有周波数と一致するか、または高調波もしくはサブ高調波である周波数で動かされるとき、可動磁石を使用して脳に非常に低い磁気エネルギーを付与し、それでも神経細胞の機能性に変化をもたらすことが可能である。
【0016】
本発明の実施形態は、患者の頭部に振動エネルギーを適用するという観点から本明細書で説明および例示されることがあるが、本発明の実施形態はそれには限定されず、身体の他の場所に振動エネルギーを適用することに追加的に適用できることを理解されたい。さらに、本発明の実施形態は、患者の観点から本明細書で説明および例示されることがあるが、被験者は、動物および/または人間の哺乳類ターゲットを含む、任意の生きているターゲットであってもよいことが理解される。
【0017】
物理的振動は、エネルギーの一形態であり、刺激周波数を含む。機械的な振動の例は、音叉、振り子、水晶、または、人もしくは楽器によって音色を作り出すときに作り出される音波などを含む。このような振動は、特定の周波数で生成されると、共振周波数を有する物体に大きな影響を与えることができる。例えば、オペラ歌手は、彼らの音程がガラスの共振周波数と一致すると、クリスタルガラスを粉々にすることがある。別の例では、1940年にタコマナローズ橋が崩壊したのは、リズミカルな風が橋の共振周波数と一致したときである。
【0018】
物理的な振動を人の頭部に適用すると、その振動エネルギーがその人の脳に適用される。振動は、局所的な頭蓋内圧の微細な変動を作り出す。この圧力の変動は、神経細胞の脱分極閾値および細胞の興奮性に影響を与える。振動によって付与されるエネルギーの大きさは、同じ周波数の低レベル磁場によって作り出されるエネルギーと同様である。
【0019】
振動は、振動するヘッドセットまたは他のデバイスを使用して外部から適用されることもできるし、移植された振動機構を使用して内部から適用されることもできる。振動は直線的であり得、頭部が単一のベクトルに沿って振動される。例えば、振動デバイスは、頭部を前方および後方に動かすことができる。別の例では、振動デバイスは、頭部を左右に動かすことができる。別の例では、振動デバイスは、頭部を上下に動かすことができる。別の例では、振動デバイスは、頭部を、本質的に頭部の表面から半径方向の長さに沿って、内側および外側に動かすことができる。方向は参考のためのみであり、患者の頭部を通してとられ、「上」は患者の頭頂部から出ており、「前方」は患者の顔の前で外側にある。方向キュー(directional queue)は一般的なものだけを意図しており、患者の頭部の輪郭からの変動を含む可能性がある。振動はまた、頭部がわずかに時計回りまたは反時計回りに回転させられる回転性のものである可能性もある。
【0020】
例示的な実施形態では、適用される振動エネルギーは、ヘッドセットまたは他のデバイスがパルス状の様式で動くだけで、同様のパルス状のエネルギーを脳に付与するような、パルス状であってもよい。振動は、ヘッドセットまたは他のデバイスが振動する様式で動く、正弦波であってもよい。
【0021】
1つの態様では、被験者を治療する方法は:(a)人の特定のEEG帯域の周波数選択性およびリズム性の尺度であるQファクタに影響を与えるために、EEG帯域の事前選択されたQファクタまたはターゲットQファクタに向けて振動面の振動を調整することと;(b)前記振動面を被験者の頭部に適用することとを含む。
【0022】
別の態様では、被験者を治療する方法は:(a)被験者の特定のEEG帯域内の固有周波数のQファクタを決定すること;(b)ステップ(a)からの固有周波数のQファクタを、健康人集団データベースの固有周波数の平均Qファクタと比較することを含む。ステップ(a)からの固有周波数のQファクタが健康人集団データベースの固有周波数の平均Qファクタより高い場合、複数の振動周波数または事前選択された単一の振動周波数を用いて振動面を被験者の頭部に近くで適用することによって、被験者の固有周波数のQファクタをチューンダウンすることと;ステップ(a)からの固有周波数のQファクタが健康人集団データベースの固有周波数の平均Qファクタより低い場合、事前選択された振動周波数を用いて振動面を被験者の頭部に適用することによって、被験者の固有周波数のQファクタをチューンアップすること。
【0023】
振動は、多くの異なる方法、および/またはデバイス、および/またはそれらの組み合わせによって生成させることができる。例えば、振動は、錘が前後に動かされる直線的なものであってよい。直線的な振動は、頭部に対して平行であり、前方から後方へ動き得る。直線的な振動は、頭部に対して平行であり、左右へ動き得る。直線的な振動は、頭部に対して垂直であり、上下に動き得る。直線的な振動は放射状であり、頭部に向かって、次いで頭部から遠ざかるように動いてもよい。複数の直線的な振動が同期して同時に適用されると、振動は直線的な振動のベクトルを加算したベクトルという結果になる。したがって、複数の振動錘を使用して、所望の任意のベクトルで頭部を振動させることが可能である。
【0024】
振動は、回転的であってもよい。例えば、錘付き円筒を人の頭部の上で回転させることができ、円筒は前後に回転し、方向を変える前に、任意の1方向に短い期間だけ回転する。回転振動は、人の頭部に対して任意の角度であってよい。回転錘は、対称的であり、対称軸を中心に回転することができる。回転錘はまた、非対称または対称で、軸から外れて回転してもよい。
【0025】
振動は、磁石が互いに向かって押したり引いたりすることによって引き起こされてもよい。例えば、直径方向に磁化された円筒形磁石を互いに近づけて回転させると、磁極の向きに応じて、互いに引き合う力と押す力が働く。磁石が互いに近ければ近いほど、その力は大きくなる。磁石の一方または両方がバネまたは他の可撓性の材料で振動面に固定されると、磁石は回転する際に前後にシフトし、磁石の質量が動くことで振動がもたらされる。磁石1個と鉛スラグ(slug)などの鉄系金属物体によって同様の振動が発生することもある。磁石またはスラグがバネまたは他の可撓性の材料を使用して振動面に固定されている場合、磁石および/またはスラグは、磁石が回転する際に前後にシフトし、磁石および/またはスラグの質量が動くことで振動をもたらすことになる。
【0026】
振動システムは、人の頭部に快適にフィットするヘッドセットを含み得る。ヘッドセットは、振動するように構成された表面を含み得る。ヘッドセットは、振動面が人の頭部に近接近および/または接触するように装着されるように構成されてもよい。本明細書で使用される場合、近接近とは、人の頭部との直接接触、および/または振動エネルギーが人の頭部および/または脳に伝達されるように人の頭部に十分に接近することを含むと理解される。
【0027】
例示的な実施形態では、振動システムおよびヘッドセットは、並進方向(1つ以上の方向)および/または回転方向のいずれかで動くように構成された可動要素を含む。可動要素は、振動面に振動を付与するように構成されてもよい。例えば、可動要素は、バネまたは可撓性の材料を介して振動面に結合されてもよい。可動要素は、軸に沿ってまたは軸を中心とした並進および/または回転運動を可能にするために、軸またはロッド上など、ヘッドセットに結合されてもよい。
【0028】
例示的な実施形態では、システムおよび方法は、可動要素を含み得る。運動は、振動エネルギーを生成するために使用されてもよい。振動エネルギーは、連続的に適用されてもよい。振動エネルギーは、パルスで提供されてもよい。
【0029】
システムの例示的な実施形態は、EEG帯域の固有周波数を検出するために、EEG記録デバイスを含むことができる。そのようなシステムは、システムのための振動周波数を指定するために、EEG帯域の固有周波数を使用することができる。EEGは、治療セッションの前に記録されてもよいし、治療セッションの間に記録されてもよい。また、EEGを記録することを可能にするために、振動を短時間休止することも可能である。振動周波数は、最も直近に記録されたEEGに基づいて更新されてもよい。
【0030】
システムはEEGを記録し、次いでアプリケーションを実行しているハンドヘルドデバイスにそのEEGを送信し、アプリケーションは最適な振動周波数を決定し、その周波数をシステムに送信し返すことができる。これにより、固有周波数または最適な振動周波数を決定するアルゴリズムが変更された場合、ハンドヘルドデバイス上のアプリケーションを更新することができる。また、レポートを生成するため、または振動治療の結果生じるEEGの変化を追跡するために、EEGファイルの保存を可能にすることができる。
【0031】
システムはEEGを記録し、次いでそのEEGをリモートサーバと通信する外部システムに送信し、サーバ上のプログラムが最適な振動周波数を決定し、その周波数を外部システムに送り返し、外部システムはその周波数を振動システムに送信することができる。これにより、固有周波数または最適な振動周波数を決定するアルゴリズムが変更された場合、サーバ上のソフトウェアを更新することができる。また、レポートを作成するため、または振動治療の結果生じるEEGの変化を追跡するために、EEGファイルの保存を可能にすることができる。
【0032】
図1は、錘140が人の頭部の上で左右に動く振動システム100の例示的な図面を示し、錘140は、人によって装着されるウェアラブルヘッドセット110に組み込まれる。錘140の運動の周波数は、最適な振動周波数と等しい。図の錘140は、シャフト160に取り付けられており、錘140はそのシャフト160に沿って動く。あるいは、錘はケーブルに取り付けられ、そのケーブルはヘッドセット内で左右に動くこともできる。振動システム100は、本明細書に説明される実施形態に従って錘を回転および/または並進させるために、モータ150を含むこともできる。システム100は、ユーザから制御命令を受信するため、および/または本明細書に説明されるシステムの制御コマンドを提供するためのコントローラ120も含むことができる。
【0033】
図2は、2つの直径方向に磁化された円筒形磁石240が人の頭部の上で回転される振動システム200の例示的な図面を示す。磁石240は、人によって装着されるヘッドセット210に取り付けられ得る。磁石は、モータ250を使用して回転させることができる。また、モータ250を用いて一方の磁石240のみを回転させ、他方の磁石240は、磁石によって生成される磁界による引力と斥力により、ひとりでに回転することも可能である。磁石240がシャフトに取り付けられている場合、シャフトおよびモータ250は、バネまたは他の可撓性の材料を使用してヘッドセット210に取り付けられてもよく、これにより、磁石240およびモータ250が回転中にシフトし、振動をもたらすことができる。システムは、有線または無線接続130を通してヘッドセットに結合されたコントローラ120を含むこともできる。
【0034】
図3は、錘付き円筒が前後に回転される340振動システム300の例示的な図面を示す。回転する円筒340は、人によって装着されるヘッドセットに取り付けられる。円筒340は錘を有するので、その勢いによって回転振動が生じる。円筒340の回転運動は、時計回りと反時計回りに交互に動くモータを使用して行うことができる。この例示的な実施形態におけるヘッドセットは、説明のために取り外されている。
【0035】
図4は、2つの錘440が人の頭部に向かって、および頭部から離れる方向に交互に直線的に動く振動システム400の例示的な図面である。この図面では、2つの錘440が含まれている。好ましくは、錘440は、同期および同相としてよく、その結果、追加の効果をもたらし、より大きな振動をもたらす。錘440は、シャフト460に沿って動かされることもできるし、または、人の頭部に向かって、および人の頭部から離れる方向に交互に動かされるケーブルの一部とすることもできる。可動錘440は、人によって装着されるヘッドセット410に取り付けられることができる。
【0036】
図5は、単一の直径方向に磁化された円筒形磁石540Aが鉄材から作られたスラグ540Bの近くで回転される振動システム500の例示的な図面を示す。回転する永久磁石は、回転する磁石上の北極と南極の場所に応じて、スラグに押しと引きの力を及ぼす。磁石540Aおよびスラグ540Bは、人によって装着されるヘッドセット510に取り付けられることができる。磁石およびスラグが、バネまたは他の可撓性の材料を使用してヘッドセット510に取り付けられている場合、磁石またはスラグは、回転中に位置をシフトし、振動をもたらし得る。
【0037】
図6は、直径方向に磁化された円筒形磁石640Aが固定磁石640Bの近くで回転される振動システム600の例示的な図面を示す。固定磁石640Bは、北極または南極のいずれかが回転磁石640Aに最も近づくように配向され得る。回転磁石640Aと固定磁石640Bは、回転磁石の北極と南極の位置に応じて、互いに押しと引きの力を及ぼす。2つの磁石は、人によって装着されるヘッドセット610に取り付けられてもよい。磁石の一方または両方が、バネ650または他の可撓性の材料を使用してヘッドセット610に取り付けられている場合、磁石は回転中に位置をシフトし、振動をもたらせ得る。
【0038】
図7は、錘740が人の頭部の近くで前後に動かされる振動システム700の例示的な図面を示す。可動錘740は、人によって装着されるヘッドセット710に取り付けられ得る。ヘッドセット710は、人のEEGを記録するために使用される電極760を含んでいてもよい。人のEEGを記録し、EEG帯域の固有周波数を決定し、最適な振動セッティングを決定するためのロジックが、ヘッドセット710またはコンソール720に含まれてもよい。代替的に、ヘッドセット710は、アプリケーションを行っているハンドヘルドデバイスと通信するように構成されてもよく、計算はハンドヘルドデバイス内で行われてもよい。代替的に、ヘッドセット710は、リモートサーバと通信するように構成されてもよく、計算はサーバで実行され、振動システムに送り返されてもよい。したがって、ヘッドセットは、情報、データ、および/もしくはソフトウェアの処理ならびに/またはアップロードならびに/またはダウンロードのために、所望のオブジェクトへの有線または無線通信のための通信デバイスを有することができる。
【0039】
本明細書に説明される任意の例示的な実施形態は、本明細書に提供される特徴の任意の組み合わせを利用し得る。したがって、任意の図はただ例示的なものであり、バネ支持体、磁石の異なる組み合わせの使用、錘、スラグ、コントローラ、電極、コンソール、ワイヤなどの特徴の任意の他の組み合わせと組み合わせることができる。各構成要素は、複製、追加、削除、細分化、または他の方法で再結合されてもよく、本開示の範囲内に留まる。
【0040】
振動システムは、脳刺激の他の手段と組み合わせることができる。例えば、振動システムは、コイルベースのrTMSシステムと組み合わせることができ、その結果、追加の利益が得られる。rTMSシステムは、振動周波数と一致するパルス周波数で刺激を提供するようにプログラムされてもよい。磁気刺激を与えるために回転磁石が使用される場合、磁石は、磁場の生成に伴って振動を作り出すように取り付けられることができる。これによって、人に追加の効果を作り出すことができる。振動は、追加の効果のために、tDCSまたはtACSなどの電気刺激と組み合わせられ得る。これは、tACSパルス周波数が振動周波数と一致する場合に特に当てはまる。
【0041】
上述した少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、振動エネルギー、磁気エネルギー、および/または電気エネルギーを適用するステップは、EEG帯域の固有周波数、固有周波数の高調波、および/またはサブ高調波におけるものである。指定されたEEG帯域内の固有周波数は、約0.5Hz-約100Hzであり得る。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、指定されたEEG帯域内のターゲット固有周波数は、約50Hzより大きくない。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、指定されたEEG帯域内のターゲット固有周波数は、約30Hzより大きくない。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、指定されたEEG帯域内のターゲット固有周波数は、約20Hzより大きくない。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、指定されたEEG帯域内のターゲット固有周波数は、約10Hzより大きくない。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、指定されたEEG帯域内のターゲット固有周波数は、約3Hzより大きい。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、指定されたEEG帯域内のターゲット固有周波数は、約1Hzより大きい。本明細書で使用される場合、約という用語は、当業者によって理解されるようないくつかの変動および/または偏差を含む可能性のある周波数を指している。例えば、使用されるデバイスおよびシステムは、通常の許容範囲および/または変動を含むことがあり、これは、デバイスが逸脱して「約」の制限内に残ることができる許容範囲および/または期待範囲を通知することになる。約という用語は、所望の臨床結果を達成することに関連することができる。例えば、所望のターゲット周波数は、0.5Hz以内であっても、同じまたはおおよその臨床結果を達成し、および/または少なくとも患者の状態の改善を達成することができる。したがって、上記は、所与の数としての臨床的利益、所与の数に近似するまたは実質的に類似する臨床的利益、および/または患者への利益を達成する所与の数についての範囲であってよい。
【0042】
上述した少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、磁気振動エネルギーは、少なくとも1つの永久磁石の運動によって生成される。いくつかの実施形態では、運動は、少なくとも1つの永久磁石の回転を含む。運動は、少なくとも1つの永久磁石の直線運動を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、運動は、少なくとも1つの永久磁石の曲線運動を含んでもよい。運動は、回転的な動き、直線的な動き、および/または揺動的動きのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0043】
上述した少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、本方法は、瞑想の代替、仮眠、ストレス解放、注意持続時間、理解力、記憶力、血圧低下、性欲増加、スポーツ能力、学習能力、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるインディケーションを改善する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態において、本方法は、うつ病、双極性、不安、強迫性障害、発作、パーキンソン病、ADHD、自閉症、薬物乱用、頭部外傷、アルツハイマー病、摂食障害、睡眠障害、耳鳴り、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される精神障害を改善する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態において、本方法は、線維筋痛症の症状を改善する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、本方法は、発作の発症を停止させる。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態において、本方法は発作の発症を予防する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態において、本方法は、周辺視野反応、注意持続時間、即時反応時間(IRT)、運動時間(MT)、単純知覚反応時間(SPR)、競合知覚反応時間(CPR)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される特性を改善する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、本方法は、HAMA、HAJVID、PANSS、MADRS、BARS、SAS、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される評価尺度を使用して測定されるような改善を提供する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態において、本方法は、パーキンソン病統一スケール(Unified Parkinson’s Rating Scale)を使用して測定されるような改善を提供する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態において、本方法は、修正されたパーキンソン病統一スケールを使用して測定されるような改善を提供する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、本方法は、永久磁石-EEG共振療法(Permanent Magneto-EEG Resonant Therapy)(pMERT)デバイス(代替的に神経-EEG同期療法(Neuro-EEG Synchronization Therapy)(NEST)デバイスと呼ばれる)を使用する。上述の少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、本方法は経頭蓋磁気刺激(TMS)デバイスを使用しない。
【0044】
例示的な実施形態は、振動エネルギーおよび/もしくは可動構成要素の周波数ならびに/または活性化ならびに/または運動を制御するロジックをさらに含むデバイスを含むことができる。例示的な実施形態では、周波数は、約0.1Hzの増分で約2-約20Hzの間で制御される。本明細書に説明される少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、デバイスは、周波数を、約0.1Hzの増分で約2-約50Hzの間の任意の周波数になるように制御するロジックをさらに含む。本明細書に説明される少なくとも1つの態様のいくつかの実施形態では、デバイスは、治療前、治療後、および/または治療中の被験者のEEG読み取り値に応答して周波数を変更するロジックをさらに含む。本明細書に説明される少なくとも1つの態様において、デバイスは、治療期間、パルス長、パルス周波数、振動周波数、およびそれらの組み合わせの任意の組み合わせを含む周波数または治療プロトコルをユーザが設定することを可能にするロジックをさらに含む。本明細書に説明される少なくとも1つの態様において、デバイスは、ユーザが治療前に治療の持続時間を設定することを可能にするロジックをさらに含む。ロジックを含むデバイスの例示的な実施形態は、メモリおよびプロセスを伴ってよく、または機械のハウジングにローカルに、またはハウジング内でロジックを記憶し実行するためのものであってよい。ロジックを含むデバイスの例示的な実施形態は、メモリおよびプロセスを伴ってよく、または機械との有線および/または無線通信でローカルにロジックを記憶および実行するためのものであってもよい。例えば、ロジックは、リモートサーバおよび/またはユーザのハンドヘルドデバイス上にあってもよい。システムの異なる場所におけるロジックの任意の組み合わせは、本開示の範囲内である。
【0045】
本明細書に説明されたシステムの例示的な実施形態は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアに基づくことができる。本発明のいくつかの特定の実施形態が示されているが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。例えば、電子ハードウェア構成要素によって実行されるほとんどの機能は、ソフトウェアエミュレーションによって複製され得る。したがって、それらと同じ機能を達成するために書かれたソフトウェアプログラムは、入出力回路におけるハードウェア構成要素の機能をエミュレートすることができる。本発明は、本明細書に説明された特定の実施形態によって限定されるものではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定されるものとして理解されるものとする。
【0046】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して十分に説明されたが、様々な変更および修正が当業者にとって明らかになることに留意されたい。そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって定義されるこの発明の実施形態の範囲内に含まれるものとして理解されるものである。具体的には、例示的な構成要素が本明細書で説明される。これらの構成要素の任意の組み合わせは、任意の組み合わせで使用することができる。例えば、任意の構成要素、特徴、ステップまたは部品は、統合、分離、細分化、除去、複製、追加、または任意の組み合わせで使用されてもよく、本開示の範囲内に留まる。実施形態はただ例示的なものであり、特徴の例示的な組み合わせを提供するが、それに限定されるものではない。
【0047】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、用語「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」およびその変形は、指定された特徴、ステップまたは整数が含まれることを意味する。この用語は、他の特徴、ステップまたは構成要素の存在を排除するように解釈されるものではない。
【0048】
前述の説明、または以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示された特徴は、それらの具体的な形態で、または開示された機能を行うための手段、または開示された結果を達成するための方法もしくはプロセスの観点から、必要に応じて、別々に、またはそれらの特徴の任意の組み合わせで、その多様な形態で本発明の実現に利用され得る。
【国際調査報告】