IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノボ・ノルデイスク・エー/エスの特許一覧

<>
  • 特表-腸内薬剤送達のための装置 図1
  • 特表-腸内薬剤送達のための装置 図2A
  • 特表-腸内薬剤送達のための装置 図2B
  • 特表-腸内薬剤送達のための装置 図2C
  • 特表-腸内薬剤送達のための装置 図2D
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】腸内薬剤送達のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520064
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2021077061
(87)【国際公開番号】W WO2022069691
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20199760.8
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フレズレクスン, モーデン レヴズゴード
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE01
4C066FF02
(57)【要約】
生きている哺乳動物対象の消化管壁部分に流体薬剤製剤を導入するための摂取可能なジェット注射装置は、適応ノズル、ノズルと流れ連通している薬剤貯蔵部、および流体薬剤を加圧するための駆動配設を備え、駆動配設は、初期状態から放出状態に作動可能である。ノズルは、軸方向に固定され、半径方向に膨張可能な出口チャネルを有する弾性ノズル部材を備え、チャネルは、駆動配設が初期状態にあるときに完全に崩壊し、それによって、貯蔵部からの密封された出口を提供する。駆動配設が作動し、貯蔵部内の圧力が所与の開放圧力レベルを超えると、チャネルは開放し、それによって、消化管粘膜表面に貫入するよう適合された流体薬剤の平行化されたジェット流を生成し、チャネルの断面積は、貯蔵部圧力の変動に応答して適合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている哺乳動物対象の腸壁部分に原薬を導入するための摂取可能なジェット注射装置(100)であって、
-ハウジング(110、120)と、
-適応ノズル(130)と、
-記ノズルと流れ連通し、流体薬剤を含有する貯蔵部(115)と、
-前記流体薬剤を加圧するための駆動配設(150、170)であって、初期状態から放出状態に作動可能である、駆動配設と、を備え、
-前記ノズルが、軸方向に固定され、半径方向に膨張可能な出口チャネル(136)を有する弾性ノズル部材(135)を備え、前記チャネルが、前記駆動配設が前記初期状態にあるときに完全に崩壊し、それによって、前記貯蔵部からの密封された出口を提供し、
-前記駆動配設が作動し、前記貯蔵部内の圧力が所与の開放圧力レベルを超えると、前記チャネルが開放し、それによって、消化管粘膜表面に貫入するよう適合された流体薬剤の平行化されたジェット流を生成し、
-前記チャネルの断面積が、貯蔵部圧力の変動に応答して適合する、ジェット注射装置。
【請求項2】
開放時の前記チャネルが、略円形の断面、および少なくとも0.5mm、1.0mm、または1.5mmの長さを有する、請求項1に記載のジェット注射装置。
【請求項3】
前記ノズルが、弾性ノズル部材(135)の形態にある内側部品と、前記チャネルと整列した固定サイズの開口部(132)を有し、それによって、ノズルの最大口径を提供する外側部品(131)と、を備える、請求項1または2に記載のジェット注射装置。
【請求項4】
前記駆動配設が、圧縮螺旋ばね(170)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のジェット注射装置。
【請求項5】
前記駆動配設が、消化管液に曝されたときに溶解可能な材料から形成された、初期に遮断する放出部材(160)を備える放出機構を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のジェット注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸粘膜層への薬剤製剤の送達のために適合された薬剤送達装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主にインスリンの送達による糖尿病治療が参照されるが、これは本発明の例示的な使用に過ぎない。
【0003】
多くの人々が、糖尿病などの疾患に罹り、日常的に、および多くの場合、毎日のように薬剤の注射を受けることを必要としている。疾患を治療するために、これらの人々は、複雑であるとみなされ得る、かつ不快な経験となり得る、異なるタスクを実施する必要がある。さらに、その人々は、外出時に注射装置、針、薬剤を持参することが必要となる。したがって、治療が錠剤またはカプセルの経口摂取に基づき得る場合、そのような疾患の治療の有意な改善とみなされることになる。
【0004】
しかしながら、タンパク質ベースの薬剤は、摂取時に吸収されるのではなく、分解および消化されることになるため、そのような溶液は、実現が非常に困難である。
【0005】
経口摂取を通してインスリンを血流中に送達するための作用溶液を提供するために、薬剤は、消化管の壁(GI壁)内に送達されなければならない。これは、以下の数個の課題を提示する:(1)薬剤は、胃内の酸による分解または消化から保護されなければならない。(2)薬剤は、下部消化管、すなわち、胃の後に放出されなければならず、これは、薬剤放出の機会の時間を制限する。(3)薬剤は、下部消化管内の流体の分解環境に曝される時間を制限するために、GI壁に送達されなければならない。壁で放出されない場合、薬剤は、分解流体から保護されない限り、放出点から壁への移動中に分解され得るか、または吸収されずに下部消化管を通過し得る。(4)薬剤は、GI壁の粘膜層を通過し、GI壁の豊富に血管新生した粘膜下層に貫入しなければならず、これは、タンパク質などのより大きい分子にとって困難である。
【0006】
この目的のために、受動的な化学吸収よりも、原薬がGI壁に導入されることを提供する、摂取可能な送達装置が提案されている。そのような装置は、ある量の薬剤製剤、搭載された作動および駆動配設、ならびに駆動配設を自己トリガするための手段を備える。薬剤は、GI壁に「ショット」される固体ペレットの形態にあってもよいか、またはGI壁に導入される短い針を介して、もしくはノズルを通した無針ジェット(ジェット注射)を介して注射される、流体形態にあってもよい。一般に、薬剤をGI壁に適切に送達するために、摂取可能な装置からの薬剤出口は、GI壁の粘膜内層と近接または接触して配設されなければならない。
【0007】
摂取可能なジェット装置は、例えば、圧縮気体またはばねによって駆動され得る。貯蔵中、および放出されるまで、ノズルは、例えば、溶解可能なコーティングまたはプラグによって密封され得る。
【0008】
【特許文献1】は、1つ以上のノズル開口部を介して腸壁部分に原薬を導入するための摂取可能なジェット注射装置を開示し、各ノズルは、摂取可能な装置からの分注可能な物質の望ましいタイプの送達に適切な所望のサイズおよび形状を有する。摂取可能な装置は、分注可能な物質がノズルを介して摂取可能な装置から出るのを防止するように構成された第1の状態、および分注可能な物質がノズルを介して摂取可能な装置から出るのを防止しないように構成された第2の状態を有する、抑制機構を備える。
【0009】
【特許文献2】は、第1の貫入圧における第1の流体、および第2のより低い圧力における第2の細胞含有流体懸濁液を使用した、細胞懸濁液のパルスジェット送達のための供給システムを開示する。第1の流体の送達と第2の流体の送達との間の滴下を防止するために、ノズルがパルス間で閉鎖されることを確実にする可撓性ノズルが利される。可撓性ノズルは、開口部なしである特定の軸方向拡張を可能にするように構成されており、これにより、パルスジェット注射が行われる前に、弁の上流の遠位貯蔵部内に事前投与量の流体が受容されることが可能になる。弾性ノズルは、ノズル開口部の周囲に円周方向縁形態の構成を有する。
【0010】
【特許文献3】は、口腔ケアのための液滴ジェットシステムを開示し、システムは、流体流動中に前方に歪んで、直径を低減し、動作中に時計方向にずらされた(clocked)ときに拡張し得る、最初に開放した可撓性ノズル部材を含み、より広いノズル直径は、詰まった物質をノズル開口部から流し出すことを可能にする。
【0011】
上記に関して、本発明の目的は、薬剤製剤が消化管内に送達され、血流中に吸収されるのを効率的に、確実に、かつ費用効果的に可能にする、摂取可能な薬剤送達組立品または装置を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2020/106704号
【特許文献2】米国特許公開第2016/0184525号
【特許文献3】米国特許公開第2009/0001196号
【発明の概要】
【0013】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または下記の開示だけでなく例示的な実施形態の説明からも明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0014】
したがって、本発明の第1の態様では、生きている哺乳動物対象の腸壁部分に原薬を導入するための摂取可能なジェット注射装置が提供される。装置は、ハウジング、適応ノズル、ノズルと流れ連通し、流体薬剤を含有する貯蔵部、および流体薬剤を加圧するための駆動配設を備え、駆動配設は、初期状態から放出状態に作動可能である。ノズルは、軸方向に固定され、半径方向に膨張可能な出口チャネルを有する弾性ノズル部材を備え、チャネルは、駆動配設が初期状態にあるときに完全に崩壊し、それによって、貯蔵部からの密封された出口を提供する。駆動配設が作動し、貯蔵部内の圧力が所与の開放圧力レベルを超えると、チャネルは開放し、それによって、消化管粘膜表面に貫入するよう適合された流体薬剤の平行化されたジェット流を生成するように適合されており、チャネルの断面積は、貯蔵部圧力の変動に応答して適合する。
【0015】
「軸方向に固定された」という用語は、出口チャネル(すなわち、チャネルを画定するノズル部材の部分)が、軸方向に動くようには設計されておらず、すべての実用的な目的のために、動作中に軸方向に動かないことを示す。しかしながら、弾性ノズル部材はそれにもかかわらず、動作中に最小の程度、例えば、0.5mm未満、0.3mm未満、または0.1mm未満、軸方向に動き得る。
【0016】
上記の配設によって、初期に崩壊したチャネルは、外部と貯蔵部内部との間に密封バリアを提供し、これにより、例えば、ノズル動作を妨げ得る機械的抑制機構または溶解可能なノズルコーティングに依存しない単純な設計が可能になる。そのようなコーティングは、含まれてもよいか、または含まれなくてもよい。さらに、配設により、ノズルが生成されたジェットの特徴に動的に調整されて、それによって摂取可能な薬剤送達装置の有効性を最適化することが可能になる。開放時のチャネルは、略円形の断面、および例えば、0.3mm超、0.5mm超、または1mm超の長さを有し得る。
【0017】
例示的な実施形態では、ノズルは、弾性ノズル部材の形態にある内側部品、およびチャネルと整列した固定サイズの開口部を有する外側部品を備え、それによって、ノズルの最大口径を提供する、ノズル組立品の形態にある。
【0018】
駆動配設は、例えば、エネルギー源として、圧縮螺旋ばね、圧縮気体、または気体発生手段を備え得る。駆動配設は、消化管液に曝されたときに溶解可能な材料から形成される、初期に遮断する放出部材を備える放出機構を備え得る。本出願の文脈において、「溶解する」という用語はまた、侵食するおよび/または分解すると特徴付けられ得るプロセスも包含する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、送達を通過し、指定された標的部位内に入ることができる任意の薬剤製剤を包含することを意味する。薬剤は、単一の貯蔵部からの単一の薬剤化合物または予混合物または配合された複数の薬剤化合物薬剤物質であってもよい。代表的な薬剤としては、固体、粉末または液体の両方の形態における、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP-1含有薬剤ならびにその誘導体)、タンパク質、およびホルモンなどの医薬品、生物由来または活性物質、ホルモンおよび遺伝子に基づく物質、栄養製剤、ならびに他の物質が挙げられる。具体的には、薬剤は、インスリンまたはGLP-1含有薬剤であってもよく、これは、その類似体、ならびに1つ以上の他の薬剤との組み合わせを含む。
【0020】
以下では、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、摂取可能な薬剤送達装置の例示的な実施形態を示す。
図2A-2D】図2A~2Dは、図1に示される装置についての異なる動作状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図において、同様の構造は、主として同様の参照番号で識別される。
【0023】
以下で「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」などの用語、または同様の相対表現が使用されるとき、これらは、添付の図に言及するだけであり、必ずしも実際の使用状況ではない。示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成、およびそれらの相対寸法は、例示的な目的のみを果たすことが意図される。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用されるとき、これは一般的に、説明される実施形態においてこの構成要素が単一の構成要素であることを示すが、代替的に、説明される構成要素のうちの2つ以上が単一の構成要素として、例えば、単一の射出成形部品として製造される可能性があるように、同一の部材または要素がいくつかの下位構成要素を備えてもよい。「組立品」および「サブ組立品」という用語は、説明された構成要素が所与の組立手順の間に単一の、または機能組立品またはサブ組立品を提供するために組み立てられる必要があることを暗示しておらず、機能的により密接に関連するものとしてともに分類される構成要素を説明するために使用されるに過ぎない。
【0024】
図1を参照すると、本発明の態様に従った薬剤送達装置の概念的な実施形態が説明され、実施形態は、摂取され、消化管(GI)内でGI壁に対して放出するように設計されている。胃内で放出するように設計される場合、装置は、ノズル出口が胃壁と接触または近接する、消化管(GI)内の装置の望ましい位置付けおよび配向を提供するように設計されていることが重要である。例えば、自己配向システムでは、形状および質量分布の組み合わせは、オリフィスを組織と整列させる配向においてのみ安定しているシステムをもたらす。任意の自由物体について、重心が物体の地面との接触点または接触線の真上にない場合、物体上の正味トルクが結果として生じる。適切に設計された自己配向ジェット装置は、このトルクを利用してオリフィスの方向に回転する。装置の重心がオリフィスの真上にある場合、装置上にトルクはなく、安定した配向をもたらす。小腸のより狭い内腔に放出するように設計された場合、ノズル出口は、ほとんどの場合、それ自体、腸壁の一部分と接触または近接する。あるいは、例えば、小腸におけるノズル整列のためのバルーン構造の使用が提案されている。
【0025】
所与の摂取可能なジェット装置についてジェット性能を評価すると、ジェットエネルギーおよびピーク電力が、ある量の流体薬剤を腸器官の粘膜下腔に効果的に送達する所与の装置の能力を説明するための関連パラメータであることがわかった。
【0026】
エネルギーおよびピーク電力の観点からジェットを評価することは、ジェット直径およびジェットの速度など、デポ形成に影響を与えるすべての要因を考慮に入れる。さらに、加圧気体および発泡反応などの他のエネルギー源を使用する装置と比較することをより容易にする。
【0027】
電力は、以下の式によって定義される。
【数1】
【数2】
P=電力[W]、T=推進力/力[N]、Rho=密度[kg/m]、A=面積[m]、V=速度[m/s]
【0028】
推進力は、力変換器(例えば、Kistler 9215A)を使用して測定され得、ジェット装置は、力変換器に対して配置および放出される。腸内の最適デポ(最高効率)は、250μmのオリフィス直径に対して6.6Wのジェット電力、水の密度、および0.20Nの測定された力で得られた。
【0029】
腸内のデポが形成されたピーク電力の範囲は、穿孔が観察される前に5W~7Wの範囲である。胃組織に関しては、高効率でデポを形成する最適な電力は、約21.4Wである。しかしながら、デポは、穿孔が観察される前に15Wおよび26.34Wから形成し始める。方程式2に基づき、異なるパラメータに基づいて理論的性能を計算することができる。腸内ジェット注射に関連するパラメータの詳細な開示および考察は、例えば、WO2020/106704に見られ得、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
より具体的には、図1は、略卵形態の外側形状を有し、ノズル出口が卵の遠位に面する「基部」上に配設された、摂取可能なジェット装置100を示す。装置は、下側ハウジング部品110、組み合わせて装置の外側形状ならびに内部空間を提供する、下側ハウジング部品に取り付けられた上側ハウジング部品120、下側部品内に配設されたノズル組立品130、ピストン140、組み合わされた駆動部および放出部材150、放出プラグ160、ならびに螺旋駆動ばね170を備える。
【0031】
下側部品110は、ノズル組立品130を受容するように適合された遠位穴111、および軸方向に摺動係合してピストン140を受容するように適合された近位貯蔵部穴112を備えて、それによって、ノズルと流れ連通している可変体積薬剤貯蔵部115を形成する。ノズル組立品は、遠位の固定直径ノズル開口部132を有する外側剛性下側部品131、ならびに可変直径ノズル出口チャネル136を有する、例えば高密度クロロブチルから作製された弾性内側ノズル部材135を備え、可変直径ノズル出口チャネルは、初期非加圧状態にあるとき、完全に崩壊しており、したがって、外部と貯蔵部内部との間に密封を提供する。このようにして、追加の密封構成要素、例えば、コーティングまたは貫入可能な膜の提供は省略され得、これは、信頼性を改善し、費用を削減する。貯蔵部内の圧力が上昇すると、チャネルは最終的に、圧力に応じて直径が変化して開放し、すなわち、適応ノズルが提供される。チャネルが、固定直径ノズル開口部132よりも大きい直径まで拡張する場合、固定直径ノズル開口部は、ノズル組立品130にとって最大ノズル直径としての役割を果たす。弾性ノズル部材は、チャネルが半径方向にしか拡張することができないように軸方向に固定されている。
【0032】
上側部材120は、近位外側開口部125および遠位内側開口部を有する、軸方向に配設された管状部分121を備え、遠位内側開口部は、内側円周方向係止フランジ122を備え、組み合わされた駆動部および放出部材150の放出部分を受容するように配設されている。
【0033】
ピストン140は、遠位に面する外側ピストン表面、および貯蔵部穴の円周方向壁と摺動および密封係合しているように適合された、遠位に配設された一対の円周方向弾性隆起部141を有する、近位に延在するスカート部分を有する、略カップ形状の構成を有する。示される実施形態では、ピストンは、内側剛性部品、および内側剛性部品に結合された外側弾性部品を備える。近位に面する内側ピストン表面は、組み合わされた駆動部および放出部材150の駆動部部分と係合するように適合されている。
【0034】
組み合わされた駆動部および放出部材150は、ディスク形状の遠位駆動部部分151、および上側部品管状部分121の内側に配設された近位に延在する管形態の放出部分155を備える。放出部分は、係止端部157が円周方向係止フランジ122の近位に面する表面に係合する拡張状態と、係止端部157が係止フランジ122を係脱し、それによって、組み合わされた駆動部および放出部材150が駆動ばね170によって遠位に動くことを可能にする格納状態との間で、半径方向に移動可能な遠位自由係止端部157を有する、一対の対向する軸方向に延在する可撓性係止アーム156を備える。
【0035】
可撓性係止アーム156は、溶解可能な材料から形成され、管状放出部分155の内側に配設されており、したがって近位外側開口部125を通して外部と連通している、プラグ形態の放出部材160によって、その初期拡張状態で保持される。例えば、胃を標的とする装置については、摂取の5~20分後にトリガが発生するべきである。例示的な放出「糖プラグ」部材は、湿潤環境で受動的に分解するイソマルトで構成されている。装置が摂取されると、糖プラグは溶解し始める。最終的に、糖プラグは、外向きに付勢された可撓性係止アーム156が内向きに、したがって係止フランジ122から解放されて動くことが可能になるほど十分に小さくなる。
【0036】
あるいは、プラグは、所与のコーティングされた物体が胃を通過し、その後に腸に入ることを確実にするように設計されているため、一般に「腸溶性コーティング」と呼ばれる材料から形成され得る。そのようなコーティングは、一般的に公知である。腸溶性コーティング材料は、所与の物体が腸内に放出されることを可能にする任意の好適なコーティング材料であり得る。場合によっては、腸溶性コーティング材料は、胃と比較して小腸で優先的に溶解し得る。他の実施形態では、腸溶性コーティング材料は、胃と比較して小腸で優先的に加水分解し得る。腸溶性コーティングとして使用される材料の非限定的な例としては、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(すなわち、酢酸コハク酸ヒプロメロース)、酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、およびアルギン酸ナトリウム、およびステアリン酸が挙げられる。追加の実施例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS2018/0193621に開示されている。腸溶性コーティング材料は、所与のpHで、または所与のpH範囲内で、例えば、5.5超のpHで、6.5超のpHで、約5.6~6の範囲内で、または約5.6~6.5もしくは7の範囲内で可溶性であるように構成され得る。腸内pHでの溶解時間は、腸溶性コーティング材料の組成ならびにプラグの構成によって制御または調節され得、例えば、腸内pHでの溶解時間は、プラグの厚さによって制御または調節され得る。
【0037】
軸方向に圧縮された螺旋駆動ばね170は、上側部分管状部分121の周囲に配設されており、その近位部分は、上側ハウジング部品120に係合し、遠位部分は、円板形状の駆動部部分151の近位表面に係合し、それによって、ピストン、およびしたがって貯蔵部内の流体に駆動力を及ぼす。駆動ばねは、その初期状態から、ピストンがその最遠位位置に動いており、流体薬剤製剤の本質的にすべてがノズル130を通って排出されたその完全拡張状態に拡張したときに、貯蔵エネルギーの所与の部分のみ、例えば、50%を放出するように設計されている。
【0038】
図2A~2Dを参照して、ジェット装置の動作について説明する。
【0039】
図2Aは、初期の未溶解構成にある放出プラグ160とともに使用する前の、ジェット装置100を示す。適応ノズル130は、材料の弾性特性により、かつシステム圧力がないことにより、完全に閉鎖されている。この状態では、適応ノズルは、一次包装薬剤バリアとして作用する。
【0040】
ジェット効率に対するラム効果の影響は、有効ピーク電力、およびしたがって貫入を増加させ得る。ラムまたはハンマー効果は、駆動部材とピストンとの間に間隙(図2Aに示されるような)を残し、次いで、液体製剤を「バーストジェット」へと駆動することによって達成される。
【0041】
図2B中、係止アーム端部157が係止フランジ122を係脱しており、これにより、組み合わされた駆動部および放出部材150が、駆動ばね170によって遠位に駆動されて動いて、ピストンに係合し、それを駆動することが可能になると、装置が起動するが、プランジャー/貯蔵部の接触面における静的および動的摩擦により、貯蔵部115内の初期圧力は低い。チャネル132が開放すると、適応ノズルは、初期の狭い平行化されたジェット流(図示せず)を生成している。ジェット流の初期速度は高い場合があるが、ジェットの小さい直径により、ジェットの生成された効果(ワットWでの)は比較的低く、その理由で、GI管内の所与の粘膜表面に貫入することができない場合がある。しかしながら、ジェットの初期の狭い直径により、失われた、すなわち、注射されていない薬剤製剤の量は、比較的低い。
【0042】
示される状態では、放出プラグ160は、完全に溶解されたものとして示されているが、これは例示目的に過ぎない。現実の状況下では、プラグは、可撓性係止アームによって及ぼされる半径方向の力に耐えることができなくなるほど十分に薄く、かつ/または多孔質になるまで、外側表面から溶解し始め、その時点で、プラグは、崩壊(brake)/分解し、したがって、係止アームが内向きに動くことを可能にする。
【0043】
図2C中、貯蔵部115内の動的圧力が最大まで上昇しており、結果として、ノズルチャネル136が最大直径に拡張するが、例示的な実施形態では、有効なノズル直径は、固定直径ノズル開口部132によって制御されている。この時点で、高い効果がジェットによって与えられ、粘膜層に貫入し、粘膜下層内に流体薬剤製剤を注射することが可能になる。例えば、インビトロ実験は、小腸、大腸、および直腸の粘膜下層に貫入するために、2.9~6.6Wの範囲の効果が必要であったが、胃および食道の粘膜下層に貫入するために、18W超の効果が必要であったことを示した。図2Cおよび2Dが、組み合わされた駆動部および放出部材150とピストンとの間の間隙を不正確に示すことに留意されたい。
【0044】
図2D中、拡張している駆動ばねによって与えられる力の減少により、貯蔵部内の動的圧力は低下した。結果として、適応ノズルチャネル136は、示される状態では固定直径ノズル未満である、より狭い直径に収縮した。したがって、この送達状態では、ジェット速度およびジェット直径の両方が減少しており、結果として、ジェット流は、より小さい効果を与えるが、この状態では、組織内に生成された初期開口部が、貯蔵部が空になるまで粘膜下腔への流体薬剤製剤の連続送達を可能にすると考えられる。
【0045】
例示的な実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について説明された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度まで、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
【国際調査報告】