(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】側壁インサートを備えるタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
B60C13/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520092
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 FR2021051675
(87)【国際公開番号】W WO2022069831
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ギマール ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】シャピュ ヴァンサン-ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ムールホフ オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131BA02
3D131BB01
3D131BB06
3D131BC35
3D131BC47
3D131BC51
3D131CA03
3D131GA13
3D131GA19
3D131LA28
(57)【要約】
本発明の主題は、固着手段(6)を通じて側壁インサート(9)と協働するように意図した少なくとも1つの側壁(3)を備えるタイヤ(1)であり、かつこのタイヤ側壁の設計をカスタマイズするという目標を有する。本発明により、軸線方向外側側壁層(30)に形成された凹部(7)を含む固着手段(6)は、凹部(71)の底面に対して突出して凹部(71)の底面から側壁(31)の軸線方向外面の近傍まで延びる突起(8)を備え、この突起(8)は、いずれの中央平面(YZ)でも、固着手段(6)と協働するように意図した側壁インサート(9)の固着を保証するために凹部(71)の底面の近傍で最小幅Lpminを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量車両のためのタイヤ(1)であって、
タイヤ(1)が、リム(2)上に装着されるように意図され、かつ少なくとも1つの側壁インサート(9)で装備されることが可能であり、タイヤ(1)が、高さHの公称断面を有し、かつ
各々が前記リム(2)と接触するように意図した2つのビード(5)にクラウン(4)をそれぞれ接続する2つの側壁(3)、
少なくとも1つの側壁インサート(9)と相互作用するように意図した固着手段(6)を備える少なくとも1つの側壁(3)、
前記固着手段(6)が、タイヤの周方向(XX’)に周方向に延び、かつ少なくとも1つのゴム材料を備えて軸線方向外側側壁面(31)から前記側壁(3)の内側に向けて軸線方向に延びる軸線方向外側側壁層(30)に形成された凹部(7)を備えること、
前記凹部(7)が、凹部底面(71)によって前記内側に向けて軸線方向にかつ2つの凹部壁(72)によって半径方向に区切られること、
前記凹部(7)が、タイヤの回転軸(YY’)を含有するいずれの子午面(YZ)でも、深さPc、すなわち、少なくとも2mmに等しい前記軸線方向外側側壁面(31)と前記凹部底面(71)間で垂直に測定された最大距離と、タイヤ(1)の前記公称断面高さHの最大で15%に等しい前記2つの凹部壁(72)間の該軸線方向外側側壁面(31)で測定された幅Lcとを有すること、
を備え、
前記固着手段(6)は、前記凹部底面(71)に対して隆起して該凹部底面(71)から前記軸線方向外側側壁面(31)の近傍まで延びる突起(8)を備え、
前記突起(8)は、いずれの子午面(YZ)でも、前記固着手段(6)と相互作用するように意図した前記側壁インサート(9)の前記固着を保証するために前記凹部底面(71)の近傍で最小幅Lpminを有する、
ことを特徴とするタイヤ(1)。
【請求項2】
前記凹部(7)の前記深さPcは、少なくとも3mmに等しいことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項3】
前記凹部(7)の前記深さPcは、最大で7mmに等しく、好ましくは、最大で5mmに等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ(1)。
【請求項4】
前記軸線方向外側側壁層(30)は、前記固着手段(6)で幅Wを有し、該軸線方向外側側壁層(30)の該厚みWと前記凹部(7)の前記深さPcとの間の差が、少なくとも1mmに等しく、好ましくは、少なくとも2mmに等しいことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項5】
前記凹部(7)の前記幅Lcは、タイヤ(1)の前記公称断面高さHの最大で10%に等しいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項6】
前記凹部(7)の前記幅Lcは、最大で20mmに等しく、好ましくは、最大で12mmに等しいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項7】
前記凹部(7)は、単一ゴム材料で構成された軸線方向外側側壁層(30)に形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項8】
いずれの子午面(YZ)にも存在し、かつ前記軸線方向外側側壁面(31)との各凹部壁(72)のそれぞれ2つの交点(721,722)を通過する直線(T)が、半径方向(ZZ’)との最大で25°に等しい、好ましくは、最大で15°に等しい角度(A)を形成することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項9】
前記突起(8)は、いずれの子午面(YZ)でも、前記凹部(7)の前記深さPcよりも2mm短いものに少なくとも等しい高さHpを有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項10】
前記突起(8)は、いずれの子午面(YZ)でも、前記凹部(7)の前記深さPcに2mmを加えたものに最大で等しい高さHpを有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項11】
前記突起(8)は、いずれの子午面(YZ)でも、前記凹部底面(71)から外側に向けて軸線方向に延びて前記最小突起幅Lpminに等しい最小幅を有する第1の幅狭部分(81)と、該第1の幅狭部分(81)から外側に向けて軸線方向に延びて最大突起幅Lpmaxに等しい最大幅を有する第2の幅広部分(82)との段付き配置によって構成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項12】
前記側壁(3)は、その軸線方向外側側壁面(31)上にかつビード(5)の半径方向外側近傍に、縁部コーナ(321)を有する保護リッジ(32)を備え、前記固着手段(6)は、周方向平均線(61)を有し、該固着手段(6)の該周方向平均線(61)は、いずれの子午面(YZ)でも、該保護リッジ(32)の該縁部コーナ(321)の半径方向外側で少なくとも4mmに等しい半径方向距離d1に位置決めされることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項13】
前記固着手段(6)の前記周方向平均線(61)は、いずれの子午面(YZ)でも、タイヤ(1)の前記公称断面高さの中間点H/2を通過する軸線方向直線(D)の半径方向内側でタイヤ(1)の該公称断面高さHの少なくとも10%に等しい半径方向距離d2に位置決めされることを特徴とする請求項12に記載のタイヤ(1)。
【請求項14】
固着手段(6)の凹部(7)に係合することにより、かつ該固着手段(6)の突起(8)にわたってクリップ留めすることによって請求項1から13のいずれか一項に記載のタイヤ(1)の該固着手段(6)と相互作用するように意図した側壁インサート(9)。
【請求項15】
側壁インサートが前記タイヤ上に装着される前に、前記固着手段(6)の周方向平均線の平均直径D1に最大で等しい平均直径D2を有する周方向平均線を有することを特徴とする請求項14に記載の側壁インサート(9)。
【請求項16】
少なくとも1つのポリマー材料を備えることを特徴とする請求項14又は15に記載の側壁インサート(9)。
【請求項17】
側壁インサート(9)が、10%伸長時の引張弾性率M2を有する材料で作られ、かつ10%伸長時の引張弾性率M1を有するゴム材料で作られた固着手段(6)と相互作用するように意図され、M2が、少なくとも0.4
*M1に等しいことを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載の側壁インサート(9)。
【請求項18】
側壁インサート(9)が、10%伸長時の引張弾性率M2を有する材料で作られ、かつ10%伸長時の引張弾性率M1を有するゴム材料で作られた固着手段(6)と相互作用するように意図され、M2が、最大で5
*M1に等しいことを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載の側壁インサート(9)。
【請求項19】
前記固着手段(6)を備える前記側壁(3)のものとは異なる配色及び/又はテクスチャを有することを特徴とする請求項14から18のいずれか一項に記載の側壁インサート(9)。
【請求項20】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のタイヤ(1)と請求項14から19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの側壁インサート(9)とで構成されたアセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関連し、より具体的に軽量四輪車両(自動車、バン)又は二輪車両(オートバイ)を装備するように意図し、かつ側壁インサートを有する少なくとも1つの側壁を備えてタイヤ側壁の設計を個人化するように意図するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
車両製造業者及びユーザの継続的な懸念は、着色手段及び/又は本明細書でインサートと呼ぶ追加要素を使用してタイヤ側壁の設計を個人化することである。
【0003】
公知の着色手段は、タイヤの側壁に存在して隣接ゴム組成物の黒色と対照を成す例えば白色の着色ゴム組成物である。しかし、この技術的ソリューションは、ある一定の数の欠点を有する。まず最初に、着色手段に隣接するゴム組成物に存在する保護成分のようなある一定の化学成分は、着色ゴム組成物に向けて移動してそれが経時的に徐々に色を失うことに至る可能性がある。これに加えて、タイヤの耐用期間全体を通した側壁の変形は、着色ゴム組成物に亀裂を開始させ、かつその外観を劣化させる可能性がある。更に、タイヤをそのリム上に装着するのに使用される機械的手段も、着色ゴム組成物をそれに対して擦ることによって劣化させる可能性がある。最後に、異なる色の各部分を備えるタイヤの製造は、工業的観点からより複合的である。
【0004】
公知のインサートの中でも取りわけ、欧州特許第2692542号明細書は、タイヤのビードとリムとの間に装着されるように意図された装飾リングを説明している。しかし、このリングの装着は、その位置決めの理由で微妙である。これに加えて、タイヤのビードとリムとの間のリングの存在は、タイヤの機械的挙動及び従って車両のそれを修正する可能性がある。最後に、それを正しく設置するために、このリングは、リムの形状の適応化を要求するリスクを冒し、リムの形状の適応化は、次に、タイヤがそれに対して設計されたリムプロファイルの規格にもはや準拠しないと考えられる。
【0005】
米国特許第3128815号明細書は、側壁に取り外し可能に係合するように意図されたタイヤ裏当て要素の形態の別のインサートを説明している。この裏当て要素は、側壁内のその端部の係合、側壁に対して隆起又は陥凹した固着手段によるその端部での取り付けのような様々な手段によって側壁に固定することができる。更に、説明された裏当て要素は、側壁の有意な部分、典型的に側壁の表面積の少なくとも3分の1を覆い、かつより具体的に側壁の軸線方向最外点とリムフランジ間の側壁の半径方向内側セグメントに位置決めされる。しかし、この裏当て要素は、それがタイヤの高度に撓むゾーンに位置決めされるので、タイヤが走行している時に変形して側壁から脱離された状態になり易い。
【0006】
特開平11-151918号公報も、側壁の面に対して陥凹した取り付け手段によってトレッドの近くの側壁の半径方向外側セグメント内でタイヤ側壁に固定されるように意図された取り外し可能色インサートを説明している。しかし、そのような取り付け手段は、タイヤがそのリム上に装着されて膨脹した時にこのインサートをタイヤ上に容易に装着することを可能にせず、その理由は、そこでのインサートの形状が膨脹圧力に依存して又はリムの幅に依存して取り付け手段の凹部の形状と比べて不十分である場合があるからである。これに加えて、タイヤが走行している時に、側壁でのインサートのロッキングは、例えば強い横断方向加速度の下ではインサートが放出されるリスクを伴って修正される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2692542号明細書
【特許文献2】米国特許第3128815号明細書
【特許文献3】特開平11-151918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者が自身に課した目的は、側壁上の装着とそこへの取り付けとを改善した少なくとも1つの側壁インサートで装備されることが可能なタイヤを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、リム上に装着されるように意図し、かつ少なくとも1つの側壁インサートで装備されることが可能である軽量車両のためのタイヤによって達成され、このタイヤは、高さHの公称断面を有し、かつ以下を備える:
-各々がリムと接触するように意図された2つのビードにクラウンをそれぞれ接続する2つの側壁、
-少なくとも1つの側壁インサートと相互作用するように意図された固着手段を備える少なくとも1つの側壁、
-固着手段が、タイヤの周方向に少なくとも部分的に周方向に延び、かつ少なくとも1つのゴム材料を備える軸線方向外側側壁層に形成されて軸線方向外側側壁面から側壁の内側に向けて軸線方向に延びる凹部を備えること、
-凹部が、凹部底面によって内側に向けて軸線方向にかつ2つの凹部壁によって半径方向に区切られること、
-凹部が、タイヤの回転軸を含有するいずれの子午面でも、深さPc、すなわち、少なくとも2mmに等しい軸線方向外側側壁面と凹部底面間で垂直に測定された最大距離と、タイヤの公称断面高さHの最大で15%に等しく、2つの凹部壁間で軸線方向外側側壁面で測定された幅Lcとを有すること、
-固着手段が、凹部底面に対して隆起して凹部底面から軸線方向外側側壁面の近傍まで延びる突起を備えること、及び
-突起が、いずれの子午面でも、固着手段と相互作用するように意図された側壁インサートの固着を保証するために凹部底面の近傍で最小幅Lpminを有すること。
【0010】
本発明の原理は、軸線方向外側側壁層に形成された周方向凹部とこの凹部に形成された突起とを備えて側壁インサートのためのものである固着手段を有することである。
【0011】
凹部は、周方向に連続又は周方向に不連続であり、すなわち、別々の周方向部分で形成することができる。
【0012】
凹部が形成される軸線方向外側側壁層は、大気と接触する軸線方向外側側壁面から最も多くの場合に布地である補強材で形成された軸線方向最外補強層まで軸線方向に延びる。より具体的には、軸線方向外側側壁層は、軸線方向最外補強層の補強材を被覆する通常はコーティング化合物と呼ばれるゴム化合物と軸線方向内側接触している。
【0013】
凹部は、側壁インサートの縁部をその壁間にロックすることにより、側壁を固着することを可能にする。それは、すなわち、側壁インサートが放出されやすいタイヤが走行して時に側壁インサートを定位置に保持することに寄与する。
【0014】
凹部はまた、軸線方向外側側壁面に対して有意な突起を生成しないように、従って、このゾーンで側壁の近傍の空気の流れを乱さないように側壁の厚みに側壁インサートを係合させることを可能にする。その結果、タイヤの空力抵抗は増加しない。相応に、タイヤの転がり抵抗及び従って燃料消費量も増加しない。
【0015】
本発明により、凹部の深さPcは、少なくとも2mmに等しい。
【0016】
深さPcが2mm未満である場合に、固着手段は、タイヤにその使用の過程でその耐用期間全体を通して印加される様々な機械的応力に耐えることを可能にする側壁インサートの十分な取り付けを保証しない。
【0017】
同様に、本発明により、凹部の幅Lcは、タイヤの公称断面高さHの最大で15%に等しい。
【0018】
凹部の幅Lcは、それが大きくなるほど、使用中に側壁インサートのゾーンの撓みが大きくなり、これが側壁インサートの有意な変形と潜在的な疲労の問題とを発生するので制限されたままでなければならない。凹部での変形は、具体的には凹部の幅Lcと共に増大し、その幅は、タイヤの公称断面高さHに対する百分率として又は絶対値として表現することが可能である。公称断面高さHは、例えば「欧州タイヤ及びリム技術機構(European Tyre and Rim Technical Organisation)」又は「ETRTO」規格のようなタイヤに関連する通常の規格によって定められる。
【0019】
凹部底面からの凹部に形成された突起は、側壁インサートの軸線方向内面と接触するように意図され、かつ側壁インサートを固着することが凹部底面の近傍で最小幅Lpminを有するその軸線方向内側部分によって可能である。この突起構成は、突起にわたって側壁インサートを実質的にクリップ留めすることを可能にし、かつそれが、タイヤが走行している時にタイヤに印加される機械的な曲げ及び遠心応力の下で定位置に保持されることを保証する。
【0020】
有利なことに、凹部の深さPcは、最大で3mmに等しい。
【0021】
より有利なことに、凹部の深さPcは、最大で7mmに等しく、好ましくは、最大で5mmに等しい。
【0022】
深さPcが7mmよりも大きい場合に、凹部底面の軸線方向内側のゴム材料層の厚みは、この凹部に係合されるように意図された側壁インサートと軸線方向最外補強層間の機械的分断を保証するのに十分でない。これは、亀裂を発生しやすい凹部底面での応力集中と側壁の耐久性の低下とをもたらす。更に、製造に関して、制限された深さの凹部は、タイヤを組み立てて次にそれを仕上げる段階中に凹部底面の軸線方向内側のゴム材料層の厚みの存在をこのゾーンに存在する材料の有意な移動にも関わらず保証する。言い換えれば、過度に高くない凹部深さは、製造公差を保証することを可能にする。
【0023】
固着手段で幅Wを有する軸線方向外側側壁層を用いると、軸線方向外側側壁層の厚みWと凹部の深さPcとの間の差は、少なくとも1mmに等しく、好ましくは、少なくとも2mmに等しい。
【0024】
厚みWは、軸線方向外側側壁面と軸線方向最外補強層の補強材の軸線方向外側繊維との間で測定され、この厚みは、従って、実際の軸線方向外側側壁層と軸線方向最外補強層の軸線方向外側コーティング層とを考慮している。軸線方向外側側壁層の厚みWと凹部の深さPcとの間の差は、すなわち、凹部底面と軸線方向最外補強層との間に備えられたゴム材料層の厚みを定める。
【0025】
1mmの厚みは、この凹部に係合するように意図された側壁インサートと補強材の軸線方向内側補強体との間の軸線方向外側側壁層とのインタフェースでの機械的分断を保証するゴム材料層の最小厚みである。この最小厚みは、結果的に、亀裂を発生しやすい凹部底面での応力集中と側壁の耐久性の低下とを回避する。
【0026】
有利なことに、凹部の幅Lcは、タイヤの公称断面高さHの最大で10%に等しい。
【0027】
同様に有利なことに、凹部の幅Lcは、最大で20mmに等しく、好ましくは、最大で12mmに等しい。
【0028】
好ましくは、凹部は、単一ゴム材料で作られた軸線方向外側側壁層に形成される。
【0029】
その結果、凹部は、材料の重ね合わせで構成されて従ってこの材料間のインタフェースでの機械的強度の問題に潜在的に敏感である複合層には形成されない。
【0030】
有利なことに、いずれの子午面にも存在し、かつそれぞれ軸線方向外側側壁面との各凹部壁の2つの交点を通過する直線は、半径方向と最大で25°に等しい、好ましくは、最大で15°に等しい角度を形成する。
【0031】
角度Aが25°よりも大きい時に、軸線方向外側側壁面は、一般的にタイヤビードに近い固着手段のゾーンで半径方向に対して過度に傾斜した状態になる。その結果、凹部の横壁は、側壁インサートを保持することを可能にせず、側壁インサートは、遠心力の作用の下で変形することになる。
【0032】
好ましくは、突起は、いずれの子午面でも、凹部の深さPcよりも2mm少ないものに少なくとも等しい高さHpを有する。
【0033】
凹部の深さPcよりも2mm少ないものに等しい最小高さ値Hpは、依然として軸線方向外側側壁面を超えて突出することなく又はそれをごく僅かにのみ越えて突出しながら十分な固着高さを有して突起にわたって側壁インサートを位置決めすることを可能にする。この構成は、すなわち、側壁インサートの有効な固定をそれを依然として縁石に対する側壁の潜在的な擦りから保護しながら保証する。更に、側壁の厚み内の側壁インサートの限定的な係合は、それを設計手段として見ることができることを保証する。
【0034】
同じく好ましくは、突起は、いずれの子午面でも、凹部の深さPcに2mmを加えてものに少なくとも等しい高さHpを有する。
【0035】
凹部の深さPcに2mmを加えたものに等しい最大高さ値Hpは、軸線方向外側側壁面に対してインサートが隆起することを回避することを可能にする。この構成は、すなわち、このゾーンで側壁の近傍の空気の流れを乱さないことを可能にする。その結果、タイヤの空力抵抗は増加しない。相応に、タイヤの転がり抵抗及び従って燃料消費も増加しない。更に、縁石に対する側壁の潜在的な擦りに対する感受性は、依然として限定的である。
【0036】
突起の好ましい実施形態により、突起は、いずれの子午面でも、凹部底面から外側に向けて軸線方向延びて最小突起幅Lpminに等しい最小幅を有する第1の幅狭部分と、第1の幅狭部分から外側に向けて軸線方向に延びて最大突起幅Lpmaxに等しい最大幅を有する第2の幅広部分との段付き配置によって構成される。そのような突起は、すなわち、実質的にきのこ形状を有し、その茎は、第1の幅狭部分であり、その傘は、第2の幅広部分である。
【0037】
側壁が、その軸線方向外側側壁面上にかつビードの半径方向外側近傍に、縁部コーナを有する保護リッジを備え、かつ固着手段が、周方向平均線を有する場合に、固着手段の周方向平均線は、いずれの子午面でも、保護リッジの縁部コーナの半径方向外側で少なくとも4mmに等しい半径方向距離d1に有利に位置決めされる。
【0038】
保護リッジは、軸線方向外側側壁面上にかつビードの半径方向外側近傍に位置決めされる。ビードの半径方向外側近傍に位置決めすることは、保護リッジの半径方向最内点が、タイヤがその上に装着されるように意図されるリムフランジの半径方向外側の少なくとも4mmの半径方向距離に位置決めされることを意味する。更に、保護リッジの縁部コーナは、軸線方向外側側壁面上に位置付けられない保護リッジの実質的に三角形の断面の頂点である。
【0039】
保護リッジの機能は、タイヤがその上に装着されるように意図されるリムのフランジを保護することであるので、それは、縁石及び石のような外部要素に対して最も擦れやすいタイヤの部分であり、かつ同じくタイヤが取り外されている時に地面と最も接触しやすい部分である。その結果、側壁インサート及び従って対応する固着手段は、損傷を受けないほど十分遠くに保護リッジから離れていなければならない。更に、保護リッジに近い固着手段は、それをより一層可視にする。
【0040】
同じく有利なことに、固着手段の周方向平均線は、いずれの子午面でも、タイヤの公称断面高さの中間点H/2を通過する軸線方向直線の半径方向内側でタイヤの公称断面高さHの少なくとも10%に等しい半径方向距離d2に位置決めされる。
【0041】
小さい公称断面高さH及び従って小さい側壁高さを有するある一定のタイヤに対して、保護リッジがタイヤの軸線方向最外部分である場合に、他のタイヤに対しては、タイヤの軸線方向最外点は、タイヤの公称断面高さの中間点H/2を通過する軸線方向直線上に位置決めされる。これらのタイヤに対して、特に側壁が縁石に対して擦れる時の側壁インサートの劣化を避けるために、対応する固着手段の周方向平均線は、タイヤの公称断面高さの中間点H/2を通過する軸線方向直線の半径方向内側でタイヤの公称断面高さHの少なくとも10%に等しい半径方向距離d2に有利に半径方向に位置決めされる。典型的には、半径方向距離d2は、少なくとも2mmに等しく、好ましくは、少なくとも8mmに等しい。
【0042】
本発明はまた、タイヤ側壁上に装着されるように意図される側壁インサートに関する。
【0043】
側壁インサートは、固着手段(6)の凹部(7)に係合することにより、かつ固着手段(6)の突起(8)にわたってクリップ留めすることにより、上述のタイヤ実施形態のいずれかによって固着手段と相互作用するように意図される。
【0044】
側壁インサートは、側壁インサートがタイヤに固着される前に、固着手段の周方向平均線の最大で平均直径D1に等しい平均直径D2を有する周方向平均線を有する。これらの条件では、側壁インサートは、プレストレスの下で固着手段に固着され、これは、側壁インサートを側壁の定位置に実質的に保持し、タイヤが走行している時に放出されるリスクが低いことに寄与する。
【0045】
特定の実施形態により、側壁インサートは、軸線方向外側側壁面の近くで可変幅を有する場合がある。これは、固着手段の凹部の可変幅、及び従ってタイヤの回転軸の周りの回転対称性を示さない固着手段を伴う。
【0046】
好ましい実施形態により、側壁インサートは、ゴム材料、シリコーン、又は熱可塑性材料、例えば、ポリウレタンのような少なくとも1つのポリマー材料を備える。
【0047】
側壁インサートがそれで作られる1又は2以上の材料は、タイヤの側壁に亀裂及び疲労破断を誘発しやすい過度の応力を側壁インサートと固着手段間のインタフェースで発生させないほど十分に変形可能でなければならない。列挙は網羅的ではないが、ゴム材料、シリコーン、又は熱可塑性材料、例えば、ポリウレタンのようなポリマー材料は、この要件を満足すると考えられる。
【0048】
側壁インサートが、10%伸長時の引張弾性率M2を有する材料で作られ、かつ10%伸長時の引張弾性率M1を有するゴム材料で作られた固着手段と相互作用するように意図される場合に、M2は、有利に少なくとも0.4*M1に等しい。側壁インサートは、それが側壁上に設置されることを可能にするほど十分に硬くなければならない。
【0049】
側壁インサートが、10%伸長時の引張弾性率M2を有する材料で作られ、かつ10%伸長時の引張弾性率M1を有するゴム材料で作られた固着手段と相互作用するように意図される場合に、M2はまた、有利に最大で5*M1に等しい。側壁インサートは、側壁をそれが曲げ応力を受けた時に損傷しやすい過度の応力をタイヤの側壁に発生させないように、かつタイヤが走行している時に遠心力によって側壁インサートが放出されるリスクを低減するように過度に硬くてはならない。
【0050】
側壁インサートは、好ましくは、固着手段を備える側壁のものとは異なる配色及び/又はテクスチャを有する。本発明の目的は、タイヤ側壁の設計を個人化することであるので、側壁インサートは、好ましくは、側壁に対して差別的な配色及び/又はテクスチャを有する。
【0051】
好ましく着色された側壁インサートは、通常は黒色の側壁に対して1又は2以上の差別化された色を有する場合がある。同じく好ましくは、側壁インサートは、その製造を簡略化する目的で単色である。
【0052】
特定の実施形態変形により、側壁を更に差別化するために、側壁インサートは、グラフィック又は例えばベルベットタイプのテクスチャで覆われる。
【0053】
最後に、本発明は、上述のタイヤの実施形態のいずれか1つによるタイヤと、上述の側壁インサートの実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの側壁インサートとで作られたアセンブリに関する。
【0054】
縮尺通りに描かれていない概略
図1から5に本発明の特徴を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】そのリム上に装着された本発明によるタイヤを通る子午半断面を示す図である。
【
図2】本発明による固着手段を通る子午断面を示す図である。
【
図4】そのリム上に装着されて側壁インサートで装備された本発明によるタイヤを通る子午半断面を示す図である。
【
図5】側壁インサートと組み合わせた本発明による固着手段を通る子午断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、リム2上に装着された本発明によるタイヤ1を通る子午半断面である。軽量車両のためのタイヤ1は、リム2上に装着され、かつ少なくとも1つの側壁インサート9(図示せず)で装備することができる。タイヤ1は、ETRTO(欧州タイヤ及びリム技術機構)規格の意味で高さHの公称断面を有し、かつクラウン4をそれぞれ2つのビード5に接続する2つの側壁3を備え、その各々は、リム2と接触するように意図している。図示の側壁3は、側壁インサート9(図示せず)と相互作用するように意図した固着手段6を備える。固着手段6は、タイヤの周方向XX’に周方向に延び、かつ少なくとも1つのゴム材料を備えて軸線方向外側側壁面31から側壁3の内側に向けて軸線方向に延びる軸線方向外側側壁層30に形成された凹部7を備える。本発明により、固着手段6は、凹部底面に対して隆起して凹部底面から軸線方向外側側壁面31の近傍まで延びる突起8を備え、突起8は、固着手段6と相互作用するように意図した側壁インサートを固着するように、子午面YZで、凹部底面の近傍で最小幅Lpmin(参照していない)を有する。
図1に示す特定の実施形態では、側壁3は、その軸線方向外側側壁面31上でビード5の半径方向外側近傍に縁部コーナ321を有する保護リッジ32を含む。保護リッジ32の縁部コーナ321は、軸線方向外側側壁面31上に位置付けられない保護リッジの実質的に三角形の断面の頂点である。周方向平均線61を有する固着手段6の場合に、固着手段6の周方向平均線61は、子午面YZで、保護リッジ32の縁部コーナ321の半径方向外側で少なくとも4mmに等しい半径方向距離d1に位置決めされる。更に、固着手段6の周方向平均線61は、子午面YZで、タイヤ1の公称断面高さの中間点H/2を通過する軸線方向直線Dの半径方向内側でタイヤ1の公称断面高さHの少なくとも10%に等しい半径方向距離d2に位置決めされる。
【0057】
図2は、本発明による固着手段6を通る子午断面図である。これは、
図1の詳細図である。固着手段6は、凹部7と突起8を備える。凹部7は、凹部底面71によって内側に向けて軸線方向にかつ2つの凹部壁72によって半径方向に区切られる。凹部7は、タイヤの回転軸YY’を含有する子午面YZでの深さPc、すなわち、軸線方向外側側壁面31と凹部底面71の間で垂直に測定された最大距離と、軸線方向外側側壁面31での2つの凹部壁72の間で測定された幅Lcとを有する。凹部7の深さPcは、少なくとも2mmに等しく、最大で7mmに等しい。凹部7の幅Lcは、タイヤ1の公称断面高さHの最大で15%に等しく、好ましくは、最大で10%に等しい。軸線方向外側側壁層30が固着手段6で厚みWを有する場合に、軸線方向外側側壁層30の厚みWと凹部7の深さPcとの差は、少なくとも1mmに等しい。更に、子午面YZに存在し、かつ軸線方向外側側壁面31との各凹部壁72のそれぞれ2つの交点721、722を通過する直線Tは、半径方向ZZ’と最大で25°に等しい角度Aを形成する。最後に、突起8は、いずれの子午面YZでも、凹部底面71から外側に向けて軸線方向に延びて最小突起幅Lpminに等しい最小幅を有する第1の幅狭部分81と、第1の幅狭部分81から外側に向けて軸線方向に延びて最大突起幅Lpmaxに等しい最大幅を有する第2の幅広部分82との段付き配置によって構成される。
【0058】
図[3A]~[3H]は、固着手段の実施形態の例である。図[3A]の固着手段は、ダブテール形状の突起子午断面を有する。図[3B]の固着手段は、球状の突起子午断面を有する。図[3C]の固着手段は、きのこ形状の突起子午断面を有する。図[3D]の固着手段は、刻み目付きダブテール形状の突起子午断面を有する。図[3E]の固着手段は、段付きダブテール形状の突起子午断面を有する。図[3F]の固着手段は、スリット付き円筒形突起子午断面を有する。図[3G]の固着手段は、刻み目付き円筒形突起子午断面を有する。図[3H]の固着手段は、歯を有する円筒形突起子午断面を有する。固着手段の突起の全てのこれらの例は、その固着手段内の側壁インサートの有効なロッキングを提供することを目的としている。
【0059】
図4は、そのリム上に装着されて側壁インサートで装備された本発明によるタイヤを通る子午半断面である。それは、
図1のタイヤを側壁インサート9と組み合わせている。
【0060】
図5は、側壁インサートと組み合わされた
図2に示すような本発明による固着手段を通る子午断面図である。これは、
図4の詳細図である。
【0061】
本発明者は、2.9barに等しい推奨圧力で膨脹され、かつ800kgに等しい推奨荷重に耐えるように意図したサイズ245/45 R 18 100 W XLのタイヤに対してより具体的に本発明を検査した。
【0062】
本発明者によって検査した実施例の特性を以下の表1に提示している。
【0063】
【0064】
本発明者は、本発明によるタイヤの側壁がそれで装備される側壁インサートに関して容易な装着及びより有効な取り付けを認めることができた。
【符号の説明】
【0065】
1 タイヤ
2 リム
3 側壁
6 固着手段
9 側壁インサート
H タイヤの公称断面高さ
【国際調査報告】