(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】特にはグライダ翼用のコーテッド軽量布帛
(51)【国際特許分類】
D06M 15/564 20060101AFI20231016BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20231016BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20231016BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20231016BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20231016BHJP
D06M 13/477 20060101ALI20231016BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20231016BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20231016BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
D06M15/564
C09D175/04
D03D1/00 Z
D03D15/283
D06M13/395
D06M13/477
A63B69/00 515D
B41M3/00 Z
D06M101:32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520334
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2021077235
(87)【国際公開番号】W WO2022073902
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508349735
【氏名又は名称】ポルシェ アンデュストリ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ ブラン
【テーマコード(参考)】
2H113
4J038
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
2H113AA06
2H113BB06
4J038DG111
4J038DG121
4J038DG131
4J038DG232
4J038MA09
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4L033AA07
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4L048AA20
4L048AA21
4L048AA34
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4L048AA49
4L048AB07
4L048AC09
4L048AC10
4L048BA01
4L048CA01
4L048CA02
4L048CA11
4L048CA15
4L048DA00
4L048EB00
4L048EB05
(57)【要約】
連続したたて糸とよこ糸から形成され、そしてその2つの表面の一方もしくは両方がポリウレタン(PU)でコーティングされたグライダ翼、特にはパラグライダ翼のための布帛であって、被覆のない布帛が1.8~4の範囲の被覆率TCを有しており、それらの糸がポリ(エチレンテレフタレート)(PET)で作られること、この布帛がたて糸とよこ糸の密度に関して、30~50糸/cmの範囲の密度を有していること、ポリウレタンが、ポリエーテル系またはポリカーボネート系である架橋ポリウレタン(PU)であること、そしてこのPUが、(1)実施において有機溶媒相中で用いられ、標準DIN 53504に従って、100%伸びにおいて5MPa以下の弾性率を有する単一成分ポリウレタンの、(2)乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の、約5%~約30%の範囲の比率を基にした架橋剤による、架橋から誘導されることを特徴とする、布帛。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンググライダ翼用、特にはパラグライダ翼用の布帛であって、連続したたて糸およびよこ糸から形成され、そしてその2つの表面の一方もしくは両方がポリウレタン(PU)でコーティングされており、被覆されていない布帛が1.8~4の範囲、好ましくは2.6~3.2範囲の被覆率TCを有しており、TCは、式TC=((糸の数/cm)×(1糸のcmでの直径))(たて糸)+((糸の数/cm)×(1糸のcmでの直径))(よこ糸)に従って計算され、それらの糸は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)から作られること、前記PETは、6cN/dtex以上、特には6~7cN/dtexのテナシティを有していること、前記布帛は、たて糸およびよこ糸密度に関して、30~50糸/cmの範囲の密度を有していること、前記ポリウレタンは、ポリエーテル系、ポリエステル系、またはポリカーボネート系である架橋ポリウレタン(PU)であること、ならびにこのPUは、(1)標準DIN 53504に従って、100%伸びにおいて5MPa以下の、特には1~4MPaの範囲の、特には1~3MPaの範囲の弾性率を有し、実施においては有機溶媒相中で用いられる、単一成分ポリウレタンの、乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の、約5質量%~約30質量%の範囲、特には7質量%~20質量%の範囲、特には約8質量%~約18質量%の範囲の比率を基にした、架橋剤による、架橋から誘導されること、を特徴とする、布帛。
【請求項2】
前記PETの糸が、標準DIN EN ISO 2062に従って、20%以上の、特には20%~30%の範囲の、破断時伸びを有する、請求項1記載の布帛。
【請求項3】
前記布帛が、コーティングを含めて、25~42g/m
2、特には27~42g/m
2の範囲の質量を有する、請求項1または2記載の布帛。
【請求項4】
前記コーティング材料の乾燥吸収率が、10質量%以上、特には10質量%~30質量%の範囲、好ましくは12質量%~30質量%の範囲、より好ましくは15質量%~25質量%の範囲である、請求項1~3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項5】
前記布帛が、11~44dtexの範囲、好ましくは11~33dtexのdtexを有する、特には1~4の範囲、好ましくは1.3~3.5の範囲のDPF(繊維当たりのデシテックス)を有するたて糸およびよこ糸を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の布帛。
【請求項6】
前記PUの前記架橋剤が、イソシアネート、ポリイソシアネート、メラミン、メラミンを含む混合物、またはイソシアネートとメラミンの混合物である、請求項1~5のいずれか1項記載の布帛。
【請求項7】
標準NFG 07111に従って、100cm
2の測定表面積に亘って、2000Paの圧力の下で、測定された20L/m
2/分以下の通気性、および/または標準Tappi 441 om-90に従って測定された、新品もしくは経時変化の後のいずれかで、1%以下の吸水率を有する、請求項1~6のいずれか1項記載の布帛。
【請求項8】
前記布帛が、たて糸およびよこ糸方向に沿ったバイアスにおいて、標準NF EN ISO 13934-1に従って、3Lbsの下で、10%以下の、特には1%~10%の範囲の、好ましくは3%~10%の範囲の、より好ましくは5%~10%の範囲の伸びを有する、請求項1~7のいずれか1項記載の布帛。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の布帛を含むグライダ翼、特にはパラグライダ翼。
【請求項10】
前記グライダ翼が、昇華印刷されたパターンを有する、請求項9記載のグライダ翼。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項記載のコーテッド布帛を製造するための布帛製造方法であって、
・布帛が準備される、前記布帛は、たて糸およびよこ糸密度に関して30~50糸/cmの範囲の密度を有するポリ(エチレンテレフタレート)(PET)で作られ、前記PETの糸が、6cN/dtex以上、特には6~7cN/dtexの範囲のテナシティ(または引張強度)を有している、
・この布帛の2つの表面の一方もしくは両方が、標準DIN 53504に従って、100%伸びにおいて、約5MPa以下、特には1~4MPaの範囲、特には1~3MPaの範囲の弾性率を有する1成分ポリウレタンエラストマー、前記エラストマーの溶媒、および約5質量%~約30質量%の範囲、特には約7質量%~約20質量%の範囲、特には8質量%~約18質量%の範囲の乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率を基にした架橋剤、の混合物を使用してコーティングされる、
・前記布帛が、乾燥し、そして前記コーティングが架橋されるまで加熱される、
・コーテッド布帛が得られる、
・随意選択的に、前記布帛が、例えば昇華印刷によって、その2つの表面の一方もしくは両方に印刷される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラグライダ型のグライダ翼のための軽量布帛およびその布帛を製造するための布帛製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グライン翼、例えばパラグライダ翼、の分野では、布帛製造業者は、軽さ、低い気孔率、および耐久性を組み合わせることを長らく探求してきた。気孔率の減少は通常は質量の増加と同義であるため、これは方程式を解くのが難しいことを表している。実際に、気孔率は布帛の密度、すなわち、単位面積当たりのたて糸とよこ糸の数に依存する。布帛の気孔率はまた、布帛の孔を多かれ少なかれ塞ぐように意図されたコーティングの存在に依存する。コーティングは、実際に極めて重要であり、そしてコーテッド布帛の、そして従ってグライダ翼の質量の無視できない部分を構成する。また、コーティングは、布帛に、バイアスに亘って適切な強靭性を与えるのに重要である。
【0003】
コーティングは、必要とされる気孔率を与えるのに必要な重要な要素であり、それは耐久性でなければならない。耐久性の概念は、種々の基準、例えばUV安定性、および加水分解安定性、そして従って、より包括的には、大気安定性、耐候安定性、および耐水安定性を包含することができる。加水分解安定性は、気孔率特性の経時的な保持における主要な要因と見なされるべきである。現在は、グライン翼、例えばパラグライダ翼は、ポリアミドで作られ、そしてコーティング材料としてポリエステル系またはポリカーボネート系ポリウレタン(PU)を用いる。それらのコーティングは、UVに対して比較的良好な耐久性を有しているが、他方でそれらは加水分解安定性に関しては限定された耐久性を有している。布帛の質量は、通常は20~40g/m2の範囲である。
【0004】
たて糸とよこ糸の性質もまた翼の性質と耐久性に影響を有している。実際には、翼はポリアミド6.6で作られているが、しかしながらポリアミド6.6は親水性ポリマーであり、水を吸収する傾向を有する布帛を与える。ポリアミド6.6系布帛から作られたパラグライダ翼は、従ってUV線と加水分解の組み合わされた作用の下で、重くなり、そして早期に老化する傾向を有している。吸収された水は、ポリアミドの、そしてコーティングの機械的性能を低下させる。
【0005】
従って、コーテッド布帛が新しい場合には、適切な気孔率を示すコーテッド布帛を製造するための技術は既に知られている。しかしながら、パラグライダの実地においては、既知のコーテッド布帛は、湿気の多い環境ではこの性質の劣化を受けることが見受けられ、それらから作られた翼に寿命の問題を提起させる
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、それらの欠点を矯正し、そして軽量の性質と良好な機械的性能の両方、ならびに気孔率、水の吸収へのより低い感受性もしくは実際には不感受性さえ、そして耐久性、の性質を組み合わせたコーテッド布帛を提供することであり、それは安全で耐久性のあるグライダ翼、特にはパラグライダ翼における使用に実用用途を有する可能性がある。
【0007】
本発明の他の目的は、特にはバイアスに亘っての適切な強靭性および高い引裂き抵抗を備えた、高い水準のパラグライダ翼のために必要な最良の機械的性質を保持するそのような布帛を提供することである。
【0008】
他の目的は、昇華印刷によって布帛を印刷する能力を有すること、そして従って、このような方法で印刷されるのに好適な新規なコーテッド布帛を提供することを可能にすることである。
【0009】
更に他の目的は、以下の本発明の説明を読むことによって明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それらの、そして他の目的は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)で作られた連続的たて糸およびよこ糸から形成され、そしてその2つの表面の一方もしくは両方に、好ましくは唯一の表面に、ポリウレタン(PU)でコーティングされた軽量布帛によって達成される。この布帛は、好ましくはたて糸およびよこ糸密度に関して、30~50糸/cmの範囲の密度を有している。ポリウレタンは、有利には架橋ポリウレタン(PU)であり、それはポリエーテル系、ポリエステル系またはポリカーボネート系である。他の好ましい特徴的な性質によれば、PUは単一成分のポリウレタンエラストマーから得られる。このエラストマーは、それら自体は知られているように、ポリオールセグメント(ポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネート)、イソシアネートセグメント、および連鎖延長剤もしくはヒドロキシル化架橋剤から形成される。1つの重要な好ましい特徴的な性質は、このエラストマーが、DIN53504に従って、100%伸びにおいて、約5MPa以下の、特には1~4MPaの範囲、特には1~3MPa、例えば約2MPaの弾性率を有していることである。他の重要な好ましい特徴的性質は、このエラストマーが架橋剤(このエラストマーを形成するために用いられた架橋剤と混同されてはならない)との混合物であることである。特には、乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率は、約5質量%~約30質量%の範囲、特には約7質量%~約20質量%の範囲、特には約8質量%~約18質量%(例えば、約8質量%~約16質量%)である。架橋剤は、特にはイソシアネート、メラミン、またはイソシアネートとメラミンの混合物を含んでいる。この架橋剤は、特にはエラストマーに残る反応性官能基(特にはNCOおよびアルコール)の全てもしくは一部をブロックし、更なる結合もしくは架橋を生成させ、そして布帛のコーティングを形成する架橋PUを得ることを可能にさせる。本発明による布帛は、グライダ翼、特にはパラグライダ翼のために設計され、またはグライダ翼、特にはパラグライダ翼を形成するのに適切である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この布帛は、有利には1.8~4の範囲の、特には2.6~3.2の範囲の被覆率TCを有している。このTC(被覆率)は、製織操作から誘導された、結果として得られるPET布帛の、そしていずれかの起こり得るカレンダー操作または同様の操作の前の、被覆率である。このTCは、以下のように計算される:TC=((糸の数/cm)×(1糸のcmでの直径))(たて糸)+((糸の数/cm)×(1糸のcmでの直径))(よこ糸)。本発明で維持されるTC値は、一方では、この布帛の使用の分野で適切な低い気孔率を得るためにコーティング材料の吸収の比率を制限し、そして結果として、他方では、コーテッド布帛の最終的な質量を制限することを可能にする、最後にそして有利には、カレンダープロセスによって、おそらくはその後に、強化された、十分に閉じられた構成を有する、布帛を提供する値に相当する。
【0012】
本発明は特には、グライダ翼、特にはパラグライダ翼のための、連続したたて糸とよこ糸から形成され、そしてその2つの表面の一方もしくは両方がポリウレタン(PU)でコーティングされた布帛に関し、被覆のない布帛は1.8~4の範囲の被覆率TCを有しており、それらの糸がポリ(エチレンテレフタレート)(PET)で作られており、その布帛は、たて糸およびよこ糸密度に関して、30~50糸/cmの範囲の密度を有しており、そのポリウレタンがポリエーテル系、ポリエステル系もしくはポリカーボネート系である架橋ポリウレタン(PU)であり、そしてこのPUが、(1)標準DIN53504に従って、100%伸びにおいて5MPa以下の、特には1~4MPaの範囲の、特には1~3MPaの範囲の弾性率を有する、実施において有機溶媒相中(特に溶媒中に溶解)で使用される、単一成分ポリウレタンエラストマーの、(2)約5質量%~約30質量%の範囲の、特には約7質量%~約20質量%の範囲の、特には約8質量%~約18質量%の範囲の乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率をもとにした架橋剤による、架橋から誘導されることで特徴づけられる。
【0013】
本発明による布帛は、驚くべきことに、経時の間、そして従ってその布帛の使用の間に、その初期の気孔率(新しい場合の)を維持する、またはその気孔率のわずかな増加のみを経験する能力を有している。同時に、これらの布帛はまた、経時の間またはそれらの使用の間に、水の吸収に関して低い水準の増加を経験するだけであるという利点を与える。時間と使用の経過に対して、気孔率、水の吸収に対してより低い感受性、または実際には不感受性に関して優れた性質を有し、それによって翼の効率的で安全な使用を可能にする軽量さの性質および良好な機械的性能を実質的に維持することを可能にさせる、グライダ翼、特にはパラグライダ翼のための布帛を提供することを可能にする方策が見い出された。
【0014】
この布帛は、コーティングを含めて、25~42g/m2、特には27~40g/m2の範囲の質量を有することができる。
【0015】
1つの態様によれば、コーティング材料の乾燥吸収率は、10質量%以上、特には10質量%~30質量%の範囲、好ましくは12質量%~30質量%の範囲、より好ましくは15質量%~25質量%の範囲である。乾燥吸収率は、コーテッド布帛上の乾燥コーティング(特には架橋PU)の質量の比率であり、最終的に布帛上に存在する乾燥/架橋コーティングの質量を表している。
【0016】
PETは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位で作られているが、しかしながら、本発明の範囲は、実際にはポリエステルの分子鎖当たりに、少量の他の単位、例えば10モル%未満、特には5モル%未満の他の単位、を含む変種にもまた拡張される(これらの他の単位を形成するために、コモノマーとしては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、ヒドロキシ安息香酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメリット酸、およびペンタエリスリトが挙げられる)。
【0017】
ポリエステル糸は多繊維糸である。それらは、複数の連続繊維から形成される。1つの態様によれば、この布帛は、たて糸とよこ糸を含み、それらは11~14dtexの範囲、例えば11~33dtexの範囲、特にはDPF(繊維当たりのデシテックス)で、1~4の範囲、好ましくは1.3~3.5の範囲を有している。
【0018】
1つの態様では、たて糸およびよこ糸は、同じ番手(count)を有しており、そして同じDPFを有している。
【0019】
他の態様では、たて糸およびよこ糸は、異なる番手を有しており、1つの方向における糸の番手は、他の方向の糸の番手よりも厳密に高い。例えば、1つの方向の糸の番手は、30~44dtexの範囲、特には30~36dtexの範囲であり、一方で、他の方向の糸の番手は、11~33dtex、特には19~26dtexの範囲であり、第1の方向の糸の番手は、他の方向の糸の番手よりも厳密に高い。1つの態様によれば、より高い番手の糸は、よこ糸の方向である。他の態様では、より高い番手の糸は、たて糸の方向である。
【0020】
他の態様では、たて糸もしくはよこ糸のいずれかの同じ与えられた方向で、またはたて糸とよこ糸の両方の方向で、多様な番手を与えることが可能である。この場合には、たて糸の方向および/またはよこ糸の方向において、異なる番手を有する少なくとも2種の糸がある。
【0021】
PET糸のテナシティ(または引張強度)は、特には6cN/dtex以上、特に6~7cN/dtexの範囲である。それらの破断時伸びは、特には20%以上、特には20%~30%の範囲である。テナシティおよび破断時伸びは、標準DIN EN ISO2062に従って測定される。
【0022】
それらの特徴的な特性を有するPET繊維または糸は、商業的に入手可能であり、および/または注文に応じて製造することができる。
【0023】
ポリエステル糸は、随意選択的に1種もしくは2種以上の添加剤、例えば安定剤および/または帯電防止剤を含んでいる。
【0024】
1つの態様では、本発明の布帛は、バイアスに亘る強靭性によって特徴付けられる。バイアスは、それがたて糸に対して45°の方向に沿って測定される場合には、たて糸方向であると言われる。バイアスは、それがよこ糸に対して45°の方向に沿って測定される場合には、よこ糸方向であると言われる。伸びは、バイアスに沿って加えられた3ポンド(Lbs、1.36kgである)の力の下でのパーセントで測定される。この伸びは、バイアスに亘る布帛の強靭性を特徴付ける。用いられる標準は、NF EN ISO 13934-1であり、幅が50mmで長さが300mmを有する試験片が作られる。
【0025】
動力計の締め付け具は200mm間隔で離れており、そして測定は100mm/分の速度で行われる。
【0026】
特には、本発明によるコーテッド布帛は、3Lbsにおいて、たて糸およびよこ糸方向に沿ったバイアスで、10%以下である伸びを有している。この伸びは、従って1%~10%の範囲、好ましくは3%~10%の範囲、より好ましくは5%~10%の範囲である。
【0027】
1つの態様によれば、この軽量布帛は、標準NFG 07111(100cm2の測定表面積)に従って測定して、2000Paの圧力の下で、20L/m2/分以下の通気性を有している。
【0028】
1つの態様によれば、実施において用いられるPET布帛は、カレンダー加工の布帛であり、それは、それがPUでコーティングされる前にカレンダー加工されていることを意味している。カレンダー加工は、布帛を押しつぶし、そして糸ならびに構成する繊維を広げ、そのことは布帛の細孔を閉鎖し、そしてその気孔率を低減するのに貢献する。
【0029】
本発明の布帛は、溶媒相中のポリウレタンでコーティングすることによって得られる。このコーティングは、以下に言及される特徴的な特性のいずれかの1つを有することができる。第1には、この布帛は、その2つの表面の一方または両方をコーティングされることができ、好ましくは、それは一方の表面をコーティングされる。
【0030】
ポリウレタンは、剛性の部分(イソシアネート)と可撓性の部分(ポリオール)を含んでいる。当業者は、100%伸びにおける弾性率によって特徴付けられる、所望の強靭性のエラストマーを得るために、イソシアネート/ポリオール比と、成分の性質との間の折衷案をどのように見出すかを知っている。好ましくは、コーティングに用いられるエラストマーは、単一成分のエラレストマ-であり、イソシアネートは、ポリオールと、次いで連鎖延長剤または架橋剤と反応されており、通常は、反応性官能基、例えばNCOおよびアルコールをなお含んでいるエラストマーを形成する。当業者は、イソシアネート、ポリオール、および連鎖延長剤もしくは架橋剤から得られるコポリマーまたはエラストマーの製造について文献、特には、These en Materiaux Polymeres et Composites [Thesis on Polymer Materials and Composites], by Segolene Hibon, Institut National de Sciences Appliquees-INSA [National Institute of Applied Sciences] in Lyon, France, 2006.を参照することができる。
【0031】
コーティング組成物は、架橋剤、特にはイソシアネートまたはメラミン、あるいはその2つの混合物によって補足される。用語「イソシアネート」は、イソシアネートおよびポリイソシアネートの両方を、単独で、あるいは他のイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの1種もしくは2種以上との混合物として、のいずれかで、を意味していると理解される。用語「イソシアネート」は、ここでは、用語「イソシアネート」および「ポリイソシアネート」を含むように理解されなければならない。ポリイソシアネートが好ましい。メラミンについては、それは、特にはメラミンそのもの(1,3,5-トリアジン-、4,6-トリアミン)またはメラミンを含む混合物もしくは樹脂、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂であることができる。
【0032】
1つの態様によれば、乾燥架橋剤の乾燥エラストマーに対する比率は、約5質量%~約30質量%の範囲、特には約7質量%~約20質量%の範囲、特には約8質量%~約18質量%の範囲である。
【0033】
1つの態様によれば、ポリウレタン(および出発時のエラストマー)は、ポリエーテル系である。特には、ポリエーテル系ポリウレタンは、直鎖または分岐であり、そしてポリエーテル型のポリオール部分とイソシアネート部分を含んでいる。
【0034】
1つの態様によれば、ポリウレタン(および出発時のエラストマー)は、ポリエステル系である。特には、ポリエステル系ポリウレタンは、直鎖または分岐であり、そしてポリエステル型のポリオール部分とイソシアネート部分を含んでいる。
【0035】
他の態様によれば、ポリウレタン(および出発時のエラストマー)は、ポリカーボネート系である。特には、ポリカーボネート系ポリウレタンは、直鎖または分岐であり、そしてポリカーボネート型のポリオール部分とイソシアネート部分を含んでいる。
【0036】
エラストマーおよび架橋剤については、イソシアネート部分は好ましくは脂肪族であり、実際に芳香族のイソシアネートは、経時で黄色に変化する欠点を有しており、それによって、それらは使用することができるものの、それらはより好ましからざるものにされる。
【0037】
1つの態様では、本発明の軽量布帛は、溶媒相中のポリウレタンをコーティングすることによって得られる。ポリエステル布帛からコーテッド布帛を製造するための布帛製造方法は、本発明の他の目的である。コーティングは、以下に言及される特徴的な特性のいずれか1つを有することができる。
【0038】
コーティング工程は、布地のコーティングに通常用いられる技術、例えば直接コーティングによって行われる。用語「直接コーティング」は、例えばドクターブレード、シリンダー、エアナイフ、パッダーを使用する、マイヤーロッド(またはチャンピオンプロセス(Champion process))を用いる、直接堆積コーティングプロセス、を表していると理解される。
【0039】
本発明の他の目的は、ここで規定される高テナシティPET布帛のコーティングのための、ここで規定されるPUエラストマーまたは架橋PUコーティングの使用である。このコーティングは、特には、布帛に、ここに記載された性質(単数)または性質(複数)、特にはここに記載されたようなバイアス方向の伸び、および/または新品で、そして経時後もしくはここに記載された使用の後の非常に低い吸水量、および/または新品のコーテッド布帛と、経時後もしくはここに記載された使用の後のコーテッド布帛との間の増加を示さない、または単にわずかしか増加を示さない気孔率を与えるように意図されている。この使用は、本発明の他の目的である、以下の製造方法をもたらすことができる。
【0040】
コーテッド布帛を製造するための布帛製造方法は、特には以下の工程を含んでいる。
(a)本発明によるポリエステル布帛が準備され、好ましくはこの布帛はカレンダー加工されている。
(b)この布帛の2つの表面の一方もしくは両方が、ここに記載されたように、本発明による溶媒相中のポリウレタンを使用して、好ましくは溶媒中に、そして架橋剤との混合物中に溶解された単一成分のエラストマーから、本発明によるコーティング速度で、コーティングされる。
(c)この布帛は、コーティングが乾燥および架橋するまで加熱される。
(d)本発明によるコーテッド布帛が得られる。
(e)随意選択的に、この布帛は、例えば昇華印刷によって、その2つの表面の一方もしくは両方に、印刷される。
【0041】
本発明の目的は、特にはコーテッド布帛を製造する布帛製造方法に関し、以下の特徴を含んでいる。
・布帛が準備され、この布帛は、たて糸およびよこ糸の密度に関して、30~50糸/cmの範囲の密度を有しているポリ(エチレンテレフタレート(PET)から作られる。
・この布帛の2つの表面の一方もしくは両方が、標準DIN 53504に従って、100%伸びにおいて約5MPa以下、特には1~4MPaの範囲、特には1~3MPaの弾性率を有する単一成分のポリウレタンエラストマー、このエラストマーのための溶媒、ならびに架橋剤の混合物を、約5質量%~約30質量%の範囲、特には約7質量%~約20質量%の範囲、特には約8質量%~約18質量%の範囲の乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率を基にして、使用してコーティングされる。
・この布帛は、コーティングが乾燥し、そして架橋するまで加熱される。
・コーテッド布帛が得られる。
・随意選択的に、この布帛は、例えば昇華印刷によって、その2つの表面の一方もしくは両方に、印刷される。
【0042】
この方法は、上記の布帛を製造することを目的としており、従って、この布帛の製造に用いられる要素の特徴的な特性は、以下の欄でそれらを繰り返す必要なしに、本方法に、本方法におけるそれらの使用のためのそれらの要素の選択に、適用可能である。
【0043】
PET布帛は、コーティングの前に、有利にカレンダー加工されることができる。
【0044】
1つの態様によれば、PET布帛は、コーティングの前に、器具、シリンダーもしくはカレンダロールとカウンタープレートとの間でカレンダー加工される。カレンダー器具に通過された布帛の表面は、「カレンダー加工表面」と称されるが、他の表面と比較して平滑化されている。
【0045】
1つの態様によれば、コーティングは、このカレンダー加工された表面にもたらされる。ポリマーの接着は、この平滑な表面に前もってプライマーを最初に適用することによって促進されることができる。それは物理的処理または化学的処理であることができる。それは例えば、化学結合を形成するために、ポリマーの基と反応することができる官能基を与える化学的処理である。
【0046】
他の態様によれば、コーティングは、平滑化されていない他の表面にもたらされる。コーティングの取込みの速度は、関連する表面に依存して変わることが理解されなければならず、この速度は、非平滑化表面でより高く、それによって当業者は、コーティングの量と質量を調整することが可能となる。また、両方の表面をコーティングすることも可能である。
【0047】
他の態様によれば、PET布帛は、2つのカレンダー器具、シリンダーもしくはカレンダーロールの間で、コーティングの前にカレンダー加工される。布帛の両方の表面が平滑化される。2つの表面の一方もしくは両方が、上記のような接着処理のあり、またはなしで、次いでコーティングされる。
【0048】
PET布帛のカレンダー処理は、好ましくは150~250℃の範囲、好ましくは180~210℃の範囲の温度で行われる。カレンダー処理は、好ましくは150~250kg、好ましくは180~230kgの範囲の圧力で行われる。カレンダーの回転速度は、1~30m/分の範囲、好ましくは1~20m/分の範囲であることができる。
【0049】
本発明の軽量布帛は、溶媒相中のポリウレタンでコーティングすることによって得られる。このコーティングは、以下に言及される特徴的な特性のいずれか1つを有することができる。
【0050】
PUは、標準DIN 53504に従って、100%伸びにおいて、約5MPa以下の、特には1~4MPaの範囲の、特には1~3MPaの範囲の弾性率を有している。PUは、有機溶媒の中の溶液中に置かれる。このポリマーは媒質中に溶解される。PUの架橋剤が、この溶液に加えられる。特には、乾燥ポリウレタンに対する乾燥架橋剤の比率は、約5%~約30質量%の範囲、特には約7質量%~約20質量%の範囲、特には約8質量%~約18質量%の範囲である。
【0051】
本発明の布帛は、溶媒中に溶解されたポリウレタンでコーティングすることによって得られる。特には、このコーティングは、溶媒中の溶液中に単一成分のエラストマー(特には、イソシアネート、ポリオールおよび連鎖延長剤もしくは架橋剤から形成された)を含んでいる。このフィルムは、溶媒の蒸発の間に自然に形成される。溶媒は、有機溶媒であり、そして特には芳香族溶媒、アルコール、ケトン、エステル、ジメチルホルムアミド、およびn-メチルピロリドンからなる群から選択されることができる。1つの特別な態様では、溶媒は、トルエン、キシレン、イソプロパノール、ブタノール、1-メトキシプロパン-2-オール、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、n-メチルピロリドン、および上記の少なくとも2種の混合物からなる群から選択される。例えば、トルエンとイソプロパノールの混合物。
【0052】
1つの態様では、溶媒相のポリウレタンは、PUと溶媒の混合物に対する非架橋PU、特には単一成分エラストマーの20質量%~50質量%のその濃度によって特徴付けられることができる。1つの態様では、この溶媒相のポリウレタン、特には溶媒中の溶液のエラストマーは、(標準DIN EN ISO/A3に従って)23℃において、100000mPa.s未満の、好ましくは23℃において、5000~60000mPa.sの範囲の粘度によって特徴付けられることができる。
【0053】
特には、乾燥および架橋工程は、第一には、例えば約90~約120℃の範囲の温度での、乾燥、その後の約140~約210℃の範囲の温度での架橋を含んでいる。
【0054】
本発明の布帛コーティング組成物は、更に添加剤を含むことができる。前記の添加剤は、布帛コーティング組成物に通常用いられるいずれかの添加剤であることができる。それらは、特には粘度調整剤、UV安定剤、染料、分散剤、および界面活性剤からなる群から選択される。1つの態様では、コーティングは、抗UV剤を含んでいる。
【0055】
1つの態様では、本方法は、乾燥および架橋工程の後に、布帛に防汚性および/または撥水性を与える1つもしくは2つ以上の後処理工程を含んでいる。用語「防汚性処理」は、静電気防止および/または粘着防止製品を使用する処理を指していると理解される。用語「撥水性処理」は、フッ素化樹脂のための架橋剤、例えばイソシアネート、を伴って、または伴わずに、フッ素化樹脂を使用する処理を指していると理解される。撥水性処理は、乾燥/架橋工程が続いて行われる。1つの態様では、後処理は、当業者によって知られているいずれかの方法、そして特にはパディング、コーティング、噴霧またはプラズマ処理によって、適用される。
【0056】
本発明は、多数の構成繊維を含む細糸を使用するという利点を有する。布帛に軽量さを与えるのに加えて、このことは、コーティングのときに、そして特にはコーティングがカレンダー加工によって繊維を広げる工程が先行される場合には。コーティングの前に布帛の気孔率を有意に低減させることを可能にし、それが、ポリマーの取込みを低減させ、そして従ってコーティングの相対的質量を低下させることを可能にし、そして最後には、このことは、布帛の最終的な質量を低下させることをも可能にさせ、一方で布帛が気孔率および耐久性に関して良好な性質を有していることをも確実にさせる。
【0057】
ここに記載されたコーテッド布帛は、いわゆる昇華印刷技術によって印刷されることができることが見い出された。本発明の1つの態様によれば、このコーテッド布帛は、昇華技術によって着色され、印刷され、または装飾される。この後者のことは、特には高温で昇華されることができる1種もしくは2種以上の染料で、基材(転写基材)にパターンを印刷することによって実施される。この基材は、その後にコーテッド布帛に接触して適用され、次いで例えば約200℃で、圧力下に熱カレンダー加工される。染料は、ガス相に移動し、そしてコーティング中に、および/または表面へ、および/または布帛へと移動する。ポリエステルPETは、この温度において安定なままである。
【0058】
本発明の目的はまた、本発明による方法を実施することによって得られる、または得られることができる軽量布帛に関する。
【0059】
従って、本発明の目的はまた、本発明による布帛を含む、または本発明による布帛から作られる物品、例えばグライダ翼、特にはパラグライダ翼に関する。それは昇華印刷されたパターンを保持することができる。
【0060】
本発明の布帛は、有利には高い耐久性、特には高い水安定性を示す。この安定性は、例の項に記載された、種々の促進経時変化方法によって評価することができる。
・加水分解および機械的負荷の後の気孔率:その気孔率は、標準NFG07111に従って、好ましくは20L/m2/分以下、特には12L/m2/分以下、特には10L/m2/分以下のままでなければならない、および/または、
・標準Tappi 441 om-90に従って、新品で、または経時後のいずれでも、1%以下、特には0.9%以下、例えば0.5%以下の吸水率。
【0061】
本発明は、好ましい態様に相当する例を用いて以下に説明されるが、それらは説明のために提供されるものであって、いずれかの限定を加えるものではない。
【実施例】
【0062】
この例は、PUでコーティングされた慣用のポリアミド6.6の一方の表面(対照)へのポリウレタンコーティングの影響と、本発明によるPUで一方の表面にコーティングされた高テナシティポリエチレンテレフタレート(PET)布帛を比較している。
【0063】
PA6.6は、パラグライダ分野における慣用のポリアミド布帛であるが、しかしながら100%伸びにおいて2MPaの弾性率を有するPUエラストマーと、イソシアネート+メラミンホルムアルデヒド架橋剤とから得られるPUコーティングを有している。乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率は、8.4%である。このPUは、トルエンとイソプロパノールの50/50混合物中で用いられる。
【0064】
例1において、PETは、100%伸びにおいて2MPaの弾性率を有するPUエラストマーと、イソシアネート+メラミンホルムアルデヒド架橋剤とから得られたPUコーティングを有している。乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率は。8.4%である。このPUは、トルエンとイソプロパノールの50/50混合物中で用いられる。
【0065】
例2において、PETは、100%伸びにおいて2MPaの弾性率を有するPUエラストマーと、イソシアネート+メラミンホルムアルデヒド架橋剤とから得られたPUコーティングを有している。乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率は。15.4%である。このPUは、トルエンとイソプロパノールの50/50混合物中で用いられる。
【0066】
両方の場合において、PUは、脂肪族ポリカーボネート系である、単一成分のPUである。
【0067】
このPETのテナシティは、6.25c/dtexである。破断時の伸びは24.6%である。
【0068】
このコーティングは、ドクターブレードによってもたらされ、そして次いで100℃での乾燥の工程が続き、そして次いで180℃での架橋の工程が続く。速度は、27m/分である。
【0069】
【0070】
NF EN ISO 2062:この標準の方法Aを用いて、伸び試験機の一定の速度を使用して、個々の糸の破断強度および破断時伸びを測定。
破断力(単位:センチニュートン、cN):破断を招く引張試験中に、試料を破断するように加えられる最大の力。
破断時伸び(%):試料の破断時に測定される試料の長さの増加率
テナシティ(cN/tex):dtex(1tex=1g/糸の長さ1000m)で表される糸の線密度で割り算したcNで表される破断力の商。
この試験は、糸の特徴的な変数である、試料の破断時の力および伸びを測定することを可能にする。
糸は、500mm離れて間隔を置かれた2つの固定締め具の間に配置される。装置(動力計)は、次いで締め具を、500mm/分の移動速度で、互いに離れるように動かし、そして加えられた力を連続して測定する。その糸を破断するのに要する力、ならびに破断時の糸の伸びの増加率が測定される。
平均の破断力および平均の破断時伸びが、この試験によって特徴付けられる2つのデータ項目である。テナシティが、線密度で破断力を割り算することによって計算される。
【0071】
単一成分ポリウレタンエラストマーの100%伸びにおける弾性率は、標準DIN 53504に従って測定される。弾性率は、標準「Spannungswerte(張力値)」の3.4で規定される。測定は、S2型のダンベル形状(Schulterstab)であるが、しかしながらバーの長さlsが55mm、そして厚さが200μmである試験片で行われた。用いられた装置は動力計である。ダンベル片は、可能な限り最小の初期荷重で、長さL0で間隔を置かれた、固定締め具に配置される。締め具は、次いで400mm/分の一定の速度で互いに離れるように動かされ、動力計で、加えられた力が伸びの関数として測定される。100%伸びにおけるMPaでの弾性率または応力は、100%伸びにおいて測定された、試験片の初期の断面に対する力の比率である。このことは、標準DIN 53504の段落9.4のSpannungswerteに記載されている。
【0072】
気孔率および水吸収率は、新品と経時後の場合について評価されなければならず、そして評価されている。
【0073】
経時変化のために、加水分解後の布帛の気孔率もまた測定される。このことを行うために、その布帛は、「Cocotte Minute」圧力調理器中で、操作温度と圧力に、水ありで4時間にわたり配置される。次いで、その布帛を外気中で、そして高速で、浮遊させることによって、1時間の処理が加えられ、その布帛はミル型の組立体に固定される(4枚羽根の組立体、布帛はそれらの羽根の1つの端部に固定される)。
【0074】
新品と経時後の場合の吸水率が、標準Tappi 441 om-90に従って測定されなければならず、そして測定される。それは、パーセントで表される。装置は、正方形のゴム製基材および金属環の被覆からなり、金属環の被覆の基部はゴム製のガスケットと接している。試料は、正方形の基材上に配置され、そして金属環がその試料の上に配置される。締め付け装置が、この系を水密にするように用いられる。特定の量の水(100mL)がその環の中に配置され、所定の時間(1分間)その試料と接触される。その時間が経過すると、水は円筒形の環から取り除かれ、試料の表面上に残留する水の残差が、この標準に記載されているようにシリンダを用いて、2枚の吸い取り紙の間に配置されたこの試料に対するこのシリンダの往復の運動によって、圧力を加えることなく、取り除かれる。吸収された水のパーセントは、水との接触の前と後の質量の差異を計算することによって決定される。
【0075】
気孔率は、新品と経時後に、標準NFG 07111または標準NF EN ISO 9237:布帛の空気浸透性の測定、に従って測定されなければならず、そして測定される;後者は前者に置き換わるものだが、しかしながら同じ結果を与える。試料は、円形の試料支持具に搭載される。2000Paの減圧が生じるように、吸引が開始され、それが試料を通過する空気流を誘発する。この流れの流速が測定され、そしてL/m2/分で与えられる。
【0076】
布帛のパーセントでの伸びは、バイアスに亘って加えられた3ポンドン(Lbs)の力の下で測定されなければならず、そして測定された。この伸びは、バイアスに亘る布帛の強靭性を特徴付ける。用いられた標準は、NF EN ISO 13934-1である。幅50mmで長さ300mmを有する試験片が作られる。動力計の締め具は、互いに200mmだけ互いに離れるように動かされ、そして測定は、100mm/分の速度で行われなければならず、そして行われた。
【0077】
例2: この例は、PET糸のテナシティの影響を比較している。
【表2】
【0078】
上記の例「対照の低テナシティPET」では、PETは4.3cN/dtexのテナシティを有しており、本発明で用いられた糸のテナシティよりも低い。両方の場合での布帛は、100%伸びにおいて2MPaの弾性率を有するPUエラストマーおよび、イソシアネート+メラミンホルムアルデヒド架橋剤から得られるPUコーティングを有している。乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率は、上記の2つの試験で15.4%である。このPUは、トルエンとイソプロパノールの50/50の混合物中で用いられ、その配合は、2つの試験で同じである。
【0079】
対照の布帛のバイアスにおける伸びは、本発明による例の5.2%よりも小さく、そしてその経時後の気孔率はまた、本発明による例の気孔率よりも有意に高い。対照におけるコーティングの比率は、本発明による例における布帛のコーティングの比率よりもより高いことを鑑みれば、この結果は驚くべきものである。
【0080】
例3: この例は、100%伸びにおけるPUの弾性率の影響を示している。
【表3】
【0081】
「対照のPET」の例は、100%伸びにおいて8MPaの弾性率を有するPUエラストマーおよびメラミンホルムアルデヒド架橋剤から得られたPUコーティングを有している。乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率は、15.1%である。このPUは、他の例におけると同様の方法で、トルエンとイソプロパノールの50/50混合物中で用いられる。布地の基材は同じである。
【0082】
100%伸びにおいて8MPaの弾性率を有するPUの使用は、バイアス方向において、本発明の想定の外側の伸び、および経時後に非常に高い気孔率をもたらす。
【0083】
本発明の布帛の吸水率は、顕著である。更に、それらの布帛はまた、昇華印刷によって印刷可能であることが見出された。最後に、本発明の布帛は、経時後の高い水準の気孔率の安定性を有しており、この性能は、予想されていないものであった。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンググライダ翼用、特にはパラグライダ翼用の布帛であって、連続したたて糸およびよこ糸から形成され、そしてその2つの表面の一方もしくは両方がポリウレタン(PU)でコーティングされており、被覆されていない布帛が1.8~4の範
囲の被覆率TCを有しており、TCは、式TC=((糸の数/cm)×(1糸のcmでの直径))(たて糸)+((糸の数/cm)×(1糸のcmでの直径))(よこ糸)に従って計算され、それらの糸は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)から作られること、前記PETは、6cN/dtex以
上のテナシティを有していること、前記布帛は、たて糸およびよこ糸密度に関して、30~50糸/cmの範囲の密度を有していること、前記ポリウレタンは、ポリエーテル系、ポリエステル系、またはポリカーボネート系である架橋ポリウレタン(PU)であること、ならびにこのPUは、(1)標準DIN 53504に従って、100%伸びにおいて5MPa以下
の弾性率を有し、実施においては有機溶媒相中で用いられる、単一成分ポリウレタンの、乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の
、5質量%
~30質量%の範
囲の比率を基にした、架橋剤による、架橋から誘導されること、を特徴とする、布帛。
【請求項2】
前記単一成分ポリウレタンが、標準DIN 53504に従って、100%の伸びにおいて1~4MPaの範囲の弾性率を有する、請求項1記載の布帛。
【請求項3】
前記単一成分ポリウレタンが、標準DIN 53504に従って、100%の伸びにおいて1~3MPaの範囲の弾性率を有する、請求項1記載の布帛。
【請求項4】
乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率が、7質量%~20質量%の範囲である、請求項1~3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項5】
乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率が、8質量%~18質量%の範囲である、請求項4記載の布帛。
【請求項6】
前記被覆されていない布帛が、2.6~3.2の範囲の被覆率TCを有する、請求項1~3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項7】
前記PETが、6~7cN/dtexの範囲のテナシティを有する、請求項1~3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項8】
前記PETの糸が、標準DIN EN ISO 2062に従って、20%以上
の破断時伸びを有する、
請求項1~3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項9】
前記PETの糸が、標準DIN EN ISO 2062に従って、20%~30%の範囲の、破断時伸びを有する、請求項8記載の布帛。
【請求項10】
前記布帛が、コーティングを含めて、25~42g/
m
2
の範囲の質量を有する、
請求項1~3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項11】
前記コーティングの材料の乾燥吸収率が、10質量%以
上である、請求項1~3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項12】
前記布帛が、11~44dtexの範
囲のdtexを有す
るたて糸およびよこ糸を含む、請求項
1記載の布帛。
【請求項13】
前記布帛が、11~33dtexのdtexを有するたて糸およびよこ糸を含む、請求項12記載の布帛。
【請求項14】
前記布帛が、1~4の範囲のDPF(繊維当たりのデシテックス)を有するたて糸およびよこ糸を含む、請求項12または13記載の布帛。
【請求項15】
前記PUの前記架橋剤が、イソシアネート、ポリイソシアネート、メラミン、メラミンを含む混合物、またはイソシアネートとメラミンの混合物である、請求項1~
3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項16】
前記布帛が、標準NFG 07111に従って、100cm
2の測定表面積に亘って、2000Paの圧力の下で、測定された20L/m
2/分以下の通気性、および/または標準Tappi 441 om-90に従って測定された、新品もしくは経時変化の後のいずれかで、1%以下の吸水率を有する、請求項1~
3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項17】
前記布帛が、たて糸およびよこ糸方向に沿ったバイアスにおいて、標準NF EN ISO 13934-1に従って、3Lbsの下で、10%以下
の伸びを有する、請求項1~
3のいずれか1項記載の布帛。
【請求項18】
前記布帛が、たて糸およびよこ糸方向に沿ったバイアスにおいて、標準NF EN ISO 13934-1に従って、3Lbsの下で、1%~10%の範囲の伸びを有する、請求項17記載の布帛。
【請求項19】
前記布帛が、たて糸およびよこ糸方向に沿ったバイアスにおいて、標準NF EN ISO 13934-1に従って、3Lbsの下で、5%~10%の範囲の伸びを有する、請求項17記載の布帛。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか1項記載の布帛を含むグライダ
翼。
【請求項21】
前記グライダ翼が、パラグライダ翼である、請求項20記載のグライダ翼。
【請求項22】
前記グライダ翼が、昇華印刷されたパターンを有する、請求項
20または21記載のグライダ翼。
【請求項23】
請求項1~
19のいずれか1項記載のコーテッド布帛を製造するための布帛製造方法であって、
・布帛が準備される、前記布帛は、たて糸およびよこ糸密度に関して30~50糸/cmの範囲の密度を有するポリ(エチレンテレフタレート)(PET)で作られ、前記PETの糸が、6cN/dtex以
上のテナシティ(または引張強度)を有している、
・この布帛の2つの表面の一方もしくは両方が、標準DIN 53504に従って、100%伸びにおいて、約5MPa以
下の弾性率を有する1成分ポリウレタンエラストマー、前記エラストマーの溶媒、および約5質量%~約30質量%の範
囲の乾燥エラストマーに対する乾燥架橋剤の比率を基にした架橋剤、の混合物を使用してコーティングされる、
・前記布帛が、乾燥し、そして前記コーティングが架橋されるまで加熱される、
・コーテッド布帛が得られる
、
方法。
【請求項24】
前記コーテッド布帛が、昇華印刷によって、その2つの表面の一方もしくは両方に印刷される、請求項23記載の方法。
【国際調査報告】