(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ロタウイルスに対するワクチン接種のために有用な融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20231016BHJP
C07K 14/735 20060101ALI20231016BHJP
C07K 14/14 20060101ALI20231016BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231016BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231016BHJP
A61K 39/15 20060101ALI20231016BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231016BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231016BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/735
C07K14/14
C12N15/62 Z
A61P37/04
A61K39/15
A61P31/14
A61P1/00
A61P1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520375
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 US2021071701
(87)【国際公開番号】W WO2022076979
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】アンストロム デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パターソン アビー レイ
(72)【発明者】
【氏名】ハイウィック グレゴリー ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ウェスリー スコット
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン ブライオン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン エリック マーティン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ワクチンを調製するため、特に、ロタウイルス感染によって引き起こされる1つ又は複数の臨床徴候を低減するために有用な、組換え的に構築されたポリペプチドに関する。より具体的には、本発明は、N末端からC末端の方向に、(i)ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び(ii)例えば、IgG Fc断片などの免疫グロブリンFc断片を含む融合タンパク質であって、前記融合タンパク質が、イノシシ属動物におけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ又は複数の臨床徴候、死亡率又は糞便排出を低減する方法において有用である、融合タンパク質を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び
- 免疫グロブリンFc断片
を含むポリペプチド。
【請求項2】
前記免疫グロブリンFc断片が、リンカー部分を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されているか、又は
前記免疫グロブリンFc断片が、前記免疫グロブリンFc断片のN末端アミノ酸残基と前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている、
請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
式x-y-z
(式中、
xは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片からなり、
yは、リンカー部分であり、
zは、免疫グロブリンFc断片である)
の融合タンパク質である、ポリペプチド、特に、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ロタウイルスが、ブタロタウイルスであり、並びに/又は
前記ロタウイルスが、ロタウイルスA及びロタウイルスCからなる群から選択される、
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、ロタウイルスVP8タンパク質のN末端が伸長したレクチン様ドメインであり、N末端伸長が、1~20アミノ酸残基、好ましくは、5~15アミノ酸残基の長さである、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ロタウイルスが、遺伝子型P[7]ロタウイルス、遺伝子型P[6]ロタウイルス及び遺伝子型P[13]ロタウイルスからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、ロタウイルスVP8タンパク質の一部分、特に、ロタウイルスA VP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列からなるか、又はそれであり、
前記ロタウイルスVP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列が、好ましくは、
- ロタウイルスVP8タンパク質の一部分をコードする複数のヌクレオチド配列をアミノ酸配列に翻訳するステップ、
- 好ましくは、MUSCLE配列アライメントソフトウェアUPGMB clustering及びデフォルトギャップペナルティパラメーターを使用することによって、前記アミノ酸配列を公知のロタウイルスVP8タンパク質と整列させるステップ、
- 前記整列された配列を系統発生解析に付し、ロタウイルスVP8タンパク質配列に基づく近隣結合系統発生再構築を作製するステップ、特に、前記整列されたアミノ酸配列を、系統発生解析のためのMEGA7ソフトウェアにインポートし、ロタウイルスVP8タンパク質配列に基づいて近隣結合系統発生再構築を作製するステップ、
- 系統発生のブートストラップテストを伴うポアソン補正法を使用して最適樹を計算するステップ(n=100)、
- 全170位置にわたって、部位ごとのアミノ酸置換の単位で、進化距離に等しい枝の長さを用いて一定の縮尺で最適樹を描くステップ、
- ブートストラップクラスター関連が70%よりも高いノードを有意として見なすステップ、
- およそ10%の距離及び70%よりも高いブートストラップクラスター関連を有するノードをクラスターとして指定するステップ、並びに
- クラスターを選択し、クラスター内の整列された位置ごとの最大頻度を特定することによって、コンセンサス配列を作製するステップ、並びに
- 任意に、アミノ酸の同等の割合が整列された位置において観察される場合において、事前に定義された生成物保護プロファイルと併せて、報告された疫学データに基づいて、アミノ酸残基を選択するステップ
を含む方法によって得られ得る、
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記免疫グロブリンFc断片が、腸細胞が、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が由来するロタウイルスによる感染に感受性である種のゲノムによってコードされる免疫グロブリンFc断片であり、並びに/或いは
前記免疫グロブリンFc断片が、好ましくは、イノシシ属動物IgG Fc断片であり、並びに/或いは
前記免疫グロブリンFc断片が、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、若しくは特に、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記リンカー部分が、1~50アミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列であり、並びに/或いは
前記リンカー部分が、配列番号9、配列番号10及び配列番号11からなる群から選択される配列と、少なくとも66%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、若しくは特に100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されたロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片を含み、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、好ましくは、リンカー部分を介して、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結され、前記リンカー部分が、特に、請求項10において規定されたリンカー部分であり、或いは
前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片のN末端アミノ酸残基と前記免疫グロブリンFc断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されており、並びに
前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、好ましくは、配列番号2~6からなる群から選択される配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、若しくはさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、並びに/或いは
前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、好ましくは、C末端が前記免疫グロブリンFc断片に連結されているロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片とは異なる、
請求項2~10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、若しくは特に、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるタンパク質である、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドの複数を含むか、又はそれから構成される多量体であって、前記多量体が、好ましくは、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドと第2の同一のポリペプチドとによって形成されるホモ二量体である、多量体。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチド及び/又は請求項13に記載の多量体を含む免疫原性組成物。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドが、好ましくは、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20及び配列番号21からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、又は特に、100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項16】
医薬として使用するための、好ましくは、ワクチンとして使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
対象におけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する方法において使用するための、或いは対象におけるロタウイルスによる感染を処置又は防止する方法において使用するための、或いは対象におけるロタウイルスによる感染を処置又は防止する方法において使用するための、及び/或いは
対象におけるロタウイルスに対する免疫応答を誘導するための方法において使用するための、
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
子ブタにおけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する方法であって、前記方法が、
- 請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項14に記載の免疫原性組成物を、雌ブタに投与するステップ、及び
- 前記子ブタが、前記雌ブタによって授乳されるステップ
を含む、方法。
【請求項19】
前記1つ又は複数の臨床徴候が、
- 下痢、
- ロタウイルスコロニー形成、特に、腸のロタウイルスコロニー形成、
- 病変、特に、肉眼的病変、
- 1日当たりの平均体重増加の減少、及び
- 胃腸炎
からなる群から選択される、請求項17に記載のポリペプチド若しくは免疫原性組成物又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
- 前記ロタウイルス感染が、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染である、
- 前記ロタウイルスによる感染が、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染である、又は
- 前記ロタウイルスに対する免疫応答が、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスに対する免疫応答である、
請求項17若しくは19に記載のポリペプチド若しくは免疫原性組成物又は請求項18若しくは19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリペプチドが、遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片を含むか、又は前記免疫原性組成物が、遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片を含むポリペプチドを含み、
好ましくは、前記遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、配列番号3の配列と少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、
請求項20に記載のポリペプチド若しくは免疫原性組成物又は請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項14に記載の免疫原性組成物を生成する方法であって、方法が、
(a)培養物中の感受性細胞の請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターによる感染を可能にするステップであって、前記ポリペプチドが、前記ベクターによって発現される、ステップ、
(b)その後、特に細胞培養上清中の、前記ポリペプチドを回収するステップであって、好ましくは、細胞デブリが、分離ステップ、好ましくは、少なくとも1つのフィルター、好ましくは、2つのフィルターを通す精密濾過を含む分離ステップを介して、前記ポリペプチドから分離され、少なくとも1つのフィルターが、好ましくは、約1~約20μm及び/若しくは約0.1μm~約4μmの細孔サイズを有する、ステップ、
(c)バイナリーエチレンイミン(BEI)をステップ(b)の混合物に添加することによって、ベクターを不活化するステップ、
(d)チオ硫酸ナトリウムをステップ(c)から得られた混合物に添加することによって、BEIを中和するステップ、並びに
(e)約5kDa~約100kDa、好ましくは、約10kDa~約50kDaの分子量カットオフを有するフィルター膜を有するフィルターを利用する濾過ステップにより液体の部分を混合物から除去することよって、ステップ(d)から得られた混合物中のポリペプチドを濃縮するステップ、並びに
(f)任意に、ステップ(e)の後に残った混合物を、薬学的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、賦形剤、及びそれらの組合せからなる群から選択されるさらなる構成成分と混合するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
技術分野
本発明は、ワクチンを調製するため、特に、ロタウイルス感染によって引き起こされる1つ又は複数の臨床徴候を低減するために有用な、組換え的に構築されたポリペプチドに関する。より具体的には、本発明は、N末端からC末端の方向に、(i)ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び(ii)例えば、IgG Fc断片などの免疫グロブリンFc断片を含む融合タンパク質であって、前記融合タンパク質が、イノシシ属動物(swine)におけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ又は複数の臨床徴候、死亡率又は糞便排出を低減する方法において有用である、融合タンパク質を対象とする。
【背景技術】
【0002】
背景情報
ロタウイルスは、レオウイルス科(Reoviridae)内の属を含む二本鎖RNAウイルスである。ロタウイルス感染は、胃腸疾患を引き起こすことが知られており、幼児における胃腸炎の最も一般的な原因と考えられている。ロタウイルスは、糞口経路によって伝染し、小腸を覆う細胞に感染する。感染した細胞は、胃腸炎を誘発するエンテロトキシンを産生し、重度の下痢、時には脱水による死をもたらす。
ロタウイルスは、11セグメントの二本鎖RNA(dsRNA)から構成されるゲノムを有し、国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって定義され、Matthijnssens et al.(Arch Virol 157:1177-1182 (2012))(本明細書において言及されるこの刊行物及び以下の刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる)によって要約されるように、抗原性及び内部ウイルスカプシドタンパク質6(VP6)の配列に基づく分類に基づき8つの群(A~H)に現在分類されている。
ロタウイルスのゲノムは、6つの構造タンパク質(VP1~VP4、VP6及びVP7)及び6つの非構造タンパク質(NSP1~NSP6)をコードし、ここで、ゲノムセグメント1~10はそれぞれ、1つのロタウイルスタンパク質をコードし、ゲノムセグメント11は、2つのタンパク質(NSP5及びNSP6)をコードする。
【0003】
ロタウイルスAの文脈において、異なる株は、構造タンパク質VP7及びVP4に基づいて、遺伝子型(比較配列解析及び/又は核酸ハイブリダイゼーションデータによって定義される)又は血清型(血清学的アッセイによって定義される)として分類され得る。VP7及びVP4は、最外タンパク質層(外側カプシド)の構成成分であり、両方とも、中和エピトープを持つ。VP7は、ビリオンの外側層又は表面を形成する糖タンパク質である(したがって、「G」と表される)。VP7は、G型の株を決定し、G血清型及びG遺伝子型の名称は同一である。VP4は、プロテアーゼに感受性であり(したがって、「P」と表される)、ウイルスのP型を決定する。G型とは対照的に、P血清型及び遺伝子型に割り当てられる数は異なる(Santos N. et Hoshino Y., 2005, Reviews in Medical Virology, 15, 29-56)。したがって、P血清型は、Pとそれに続く割り当てられた数として表され、P遺伝子型は、Pとそれに続く括弧内の割り当てられた数によって表される(例えば、「P[7]」又は「P[13]」)。同じ遺伝子型に属する株は、89%よりも高いアミノ酸配列同一性を有する(Estes and Kapikian. Rotaviruses. In: Knipe, D.M.; Howley, P.M. Fields Virology, 5th ed.;Wolters Kluwer/Lippincott Williams & Wilkins Health: Philadelphia, PA, USA (2007);Gorziglia et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 87(18):7155-9 (1990))。
【0004】
ロタウイルスは、特に、ほぼ100%のブタに存在する群A及びCのロタウイルスに対する抗体を有するイノシシ属動物における胃腸炎の主要な原因でもある(Vlasova et al. Viruses. 9(3): 48 (2017))。現在、改変生ワクチン又は死菌ワクチンのみが、ロタウイルスAに対して利用可能である。実験室においてロタウイルスCを培養することができないことで、この群に対するワクチンの開発を妨げ、次いで、これは、組換えワクチンの魅力を増大させる。
【0005】
組換え抗ロタウイルスワクチンの作製は、3つの層に配置される4つのタンパク質から構成されるロタウイルスカプシドの複雑さによって妨害される。最内層は、T=1対称を有するVP2の60の二量体から構成される。VP2層は、T=13対称を有するVP6の260の三量体によって形成される中間層の適切な順序のために必要である。VP2とVP6との間の得られる対称のミスマッチは、5つの別個のVP6三量体位置、及び3つの別個のポア型を生じる。VP2の非存在下において、VP6は、塩及びpH依存性の様式で、規則正しい高分子量の微小管及び球状体を容易に形成し、これは、ウイルス集合の副生成物を示し得る。カプシドにおいて、VP6層は、適所でVP4スパイクを保持するクランプとして作用するVP7の260のCa2+依存性三量体によって覆われる。VP7は、グリコシル化されるか、又はG型抗原であり、中和エピトープを含有する。中和抗体の大部分は、三量体VP7のみを認識し、次にスパイクの放出を遮断するVP7三量体の解離を防止することによって作用すると考えられる。ロタウイルスのスパイクは、II型ポアでのみVP6層に挿入される60のVP4の三量体として存在する。VP4は、中和エピトープを含有し、P型抗原であり、トリプシンによってスパイク塩基VP5*、及び切断後にVP5*と会合したままの細胞相互作用ヘッドVP8*に切断される。トリプシン処理は、スパイクが大規模な構造再編成を受けて、宿主細胞における受容体結合のための活性部位を露出させる間に、細胞侵入のためにスパイクを刺激する。上記集合プロセスの複雑さを無視して、適切な集合を促進する環境条件でのロタウイルスカプシドタンパク質の化学量論的発現を達成することは困難である。
【0006】
ロタウイルスカプシド集合の困難さを考慮して、サブユニットワクチンアプローチへの関心があった。VP7及びVP4は、中和エピトープを含有する2つのタンパク質であるが、しかしながら、VP7の使用は、そのグリコシル化及びカルシウム依存性三量体化によって複雑になるであろう。VP4の使用は、その三量体化、トリプシン処理、及び潜在的なコンフォメーション状態の範囲によって複雑になる。VP4のトリプシン処理によって生じるVP8ドメイン又はVP8*とも名付けられたVP8タンパク質は、中和エピトープを含有し、単量体であり、その構造が高分解能で決定されており(Dormitzer et al. EMBO J. 21(5): 885-897 (2002))、非常に安定と記載されている。
さらにまた、VP8タンパク質内で、レクチン様ドメイン(aa65~224)は、宿主受容体と相互作用し、ウイルスの宿主細胞への付着に関与すると考えられる(Rodriguez et al., PloS Pathog. 10(5):e1004157 (2014))。
【0007】
小児用のロタウイルスサブユニットワクチンを開発するためのアプローチが記載されており、ここで、N末端で破傷風トキソイドユニバーサルCD4+T細胞エピトープ(aa830~844)P2に連結された短縮型VP8タンパク質(VP8*のアミノ酸残基64(又は65)~223)が、大腸菌(Escherichia coli)において産生され(Wen et al. Vaccine. 32(35): 4420-7 (2014))、乳幼児において試験された(Groome et al. Lancet Infect Dis.17(8):843-853 (2017))。しかしながら、一価サブユニットワクチン(ロタウイルス遺伝子型P[8]の短縮型VP8タンパク質に基づく)のこの使用は、異型ロタウイルス株に対して不十分な応答を誘発し、また、三価ワクチン製剤(遺伝子型P[4]、P[6]、P[8]抗原を組み合わせるために3つのタンパク質を含む)が、最近、試験された(Groome et al. Lancet Infect Dis. S1473-3099(20)30001 (2020))。
【0008】
別のアプローチにおいて、N末端短縮型VP8タンパク質「VP8-1」(aa26~241)は、コレラ毒素の五量体化されている非毒性Bサブユニット(CTB)とN末端又はC末端で融合された。得られた五量体融合タンパク質(CTB-VP8-1、VP8-1-CTB)のうち、CTB-VP8-1(即ち、CTBにN末端で融合されたVP8-1)のみが、VP8-1-CTBと比較して、さらなる開発のための実行可能な候補であると考えられ、これは、マウスモデルにおいて、GM1、又はVP8*に特異的な中和モノクローナル抗体に感受性のコンフォメーションに対するより高い結合活性を示し、より高い力価の中和抗体を誘発し、より高い保護有効性を付与した(Xue et al. Hum Vaccin Immunother. 12(11) 2959-2968 (2016))。
しかしながら、ロタウイルスカプシド集合の困難さを考慮して、特に、サブユニットワクチンが、一般に、非常に安全であると考えられているので、代替のサブユニットワクチンアプローチへの関心がある。また、培養することが困難であるそのようなロタウイルスのワクチン抗原の簡単な生成を可能にする、有効なロタウイルスサブユニット抗原の組換え発現は、強く所望されている。さらにまた、ロタウイルスは、イノシシ属動物における胃腸炎の主要な原因であるので、特に、イノシシ属動物のために現在市販されているMLVロタウイルスワクチンと同等の、又はそれよりもさらにより有効な有効性を可能にする抗原を含む、イノシシ属動物用のサブユニットワクチンを有する必要性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の説明
上記の技術的課題に対する解決手段は、特許請求の範囲において特徴付けられる記載及び実施形態によって達成される。
したがって、本発明は、その異なる態様において、特許請求の範囲に従って実行される。
本発明は、IgG Fc断片とC末端で連結されたロタウイルスVP8タンパク質の断片、即ち、N末端が伸長したレクチン様ドメインを含むポリペプチドの雌ブタへの投与が、中和抗体の受動的伝達を介して、ロタウイルスによる負荷後のそれらの子における下痢及び糞便排出を有意に低減したという驚くべき知見に基づく。
【0010】
第1の態様において、したがって、本発明は、
- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び
- 免疫グロブリンFc断片
を含むポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、本明細書の以下で、「本発明のポリペプチド」とも称する。
本発明の文脈において、そのようなポリペプチドが、細胞において産生されると、細胞から放出され、次いで、細胞それ自身からよりもむしろ細胞の周囲の上清から回収され得ることも予想外にも発見した。
本発明のポリペプチドのさらなる利点は、所望により、それが、異なるロタウイルスの2つの免疫原性断片を含む/提示する1つのポリペプチドとして調製され、それによって、次に同じ目的のために組み合わせる必要がある2つの異なる一価ポリペプチドを別々に調製することを不要にし得るという点である。
好ましくは、本明細書において記載される免疫グロブリンFc断片は、
- 前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端、又は
- 前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端
に連結されている。
【0011】
特に、前記免疫グロブリンFc断片は、好ましくは、
- リンカー部分を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端、又は
- リンカー部分を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端
に連結されている。
【0012】
別の好ましい態様において、本明細書において記載される免疫グロブリンFc断片は、
- 前記免疫グロブリンFc断片のN末端アミノ酸残基と前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端、又は
- 前記免疫グロブリンFc断片のC末端アミノ酸残基と前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端
に連結されている。
最も好ましくは、本明細書において記載される免疫グロブリンFc断片は、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている。
したがって、本発明のポリペプチドは、特に、
- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び
- 免疫グロブリンFc断片を含むポリペプチドであって、
前記免疫グロブリンFc断片は、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている、ポリペプチドである。
【0013】
本明細書において使用される「ポリペプチド」という用語は、特に、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸残基の任意の鎖を指し、特定の長さの生成物は指さない。例えば、「ポリペプチド」は、アミノ酸残基の長い鎖、例えば、150~600アミノ酸残基長、又はそれよりも長いものを指し得る。「ポリペプチド」という用語は、1つ又は複数の翻訳後修飾を有するポリペプチドを含み、ここで、翻訳後修飾としては、例えば、グリコシル化、リン酸化、脂質化(例えば、ミリストイル化など)、アセチル化、ユビキチン化、硫酸化、ADPリボシル化、ヒドロキシル化、Cys/Met酸化、カルボキシル化、メチル化などが挙げられる。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本発明の文脈において互換的に使用される。
【0014】
「免疫原性断片」という用語は、特に、それが由来するタンパク質の免疫原性を少なくとも部分的に保持するタンパク質の断片を指すことが理解される。したがって、「ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片」は、具体的には、全長VP8タンパク質の免疫原性を少なくとも部分的に保持するロタウイルスVP8タンパク質の断片を指すことが理解される。
「VP8タンパク質」という用語は、本明細書において記載される場合、特に、ロタウイルスの文脈において頻繁に使用される、「VP8ドメイン」、「VP8*」又は「VP4のVP8断片」と同等であることが理解される。
「免疫グロブリンFc断片」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含有するタンパク質、より具体的に、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域、並びに軽鎖定常領域1(CL1)を含有しないタンパク質を指す。これは、免疫グロブリンのヒンジ領域又はヒンジ領域の一部分(即ち、重鎖定常領域のヒンジ領域)をさらに含んでいてもよい。また、免疫グロブリンFc断片は、重鎖定常領域1(CH1)の一部又は全部を含有していてもよい。
「免疫グロブリンFc断片」という用語は、本明細書において使用される場合、「免疫グロブリンFcドメイン」と同等であることが理解される。
【0015】
本明細書において使用される「に連結される(linked to)」という用語は、特に、ポリペプチド内で、免疫グロブリンFc断片を、ロタウイルスVPタンパク質の免疫原性断片のC末端又はN末端に接続するための任意の手段を指す。連結するという意味の例は、(1)前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に直接連結され、前記免疫グロブリンFc断片にも結合する介在部分による、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端への免疫グロブリンFc断片の間接連結、及び(2)共有結合による、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端への免疫グロブリンFc断片の直接連結を含む。「に連結される(linked to)」及び「と連結される(linked with)」という用語は、本発明の文脈において、互換的に使用される。
【0016】
特に、
「 - ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び
- 免疫グロブリンFc断片
を含むポリペプチドであって、前記免疫グロブリンFc断片が、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている、ポリペプチド」という表現は、本明細書において使用される場合、特に、
「N末端からC末端の方向に、
- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のアミノ酸配列、及び
- 免疫グロブリンFc断片のアミノ酸配列
を含むポリペプチド」という表現、又は
「 - ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び
- 前記免疫原性断片のC末端に連結された免疫グロブリンFc断片
を含むポリペプチド」という表現
と同等であることが理解される。
【0017】
最も好ましい態様によれば、免疫グロブリンFc断片は、リンカー部分を介して前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている。
リンカー部分は、本明細書において記載される場合、本発明の文脈において、好ましくは、ペプチドリンカーである。
「ペプチドリンカー」という用語は、本明細書において使用される場合、1つ又は複数のアミノ酸残基を含むペプチドを指す。より具体的には、「ペプチドリンカー」という用語は、本明細書において使用される場合、2つの可変のタンパク質及び/又はドメイン、例えば、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片及び免疫グロブリンFc断片を接続することができるペプチドを指す。
【0018】
特定の好ましい態様において、免疫グロブリンFc断片は、リンカー部分を介して前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されており、ここで、
- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、リンカー部分のN末端アミノ酸残基とロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、リンカー部分に連結されており、
- リンカー部分は、免疫グロブリンFc断片のN末端アミノ酸残基とリンカー部分のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、免疫グロブリンFc断片に連結されている。
また、免疫グロブリンFc断片が、免疫グロブリンFc断片のN末端アミノ酸残基とロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片に連結されていることが好ましい場合がある。
【0019】
本発明のポリペプチドは、特に、融合タンパク質であることが理解されるであろう。
本明細書において使用される場合、「融合タンパク質」という用語は、同じではない2つ以上のポリペプチドの全部又は一部を融合する(即ち、接合する)ことによって形成されるタンパク質を意味する。典型的には、融合タンパク質は、2つ以上のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを端と端で接合することによって、組換えDNA技法を使用して作製される。より具体的には、「融合タンパク質」という用語は、したがって、第1のポリペプチドをコードする第1の核酸配列及び第2のポリペプチドをコードする少なくとも第2の核酸を組み合わせることによって作製される核酸転写物から翻訳されるタンパク質を指し、ここで、融合タンパク質は、天然に存在するタンパク質ではない。核酸構築物は、融合タンパク質中で接合されている2つ以上のポリペプチドをコードし得る。
別の好ましい態様において、本発明は、ポリペプチド、特に、上記で言及されるポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、式x-y-z(式中、
xは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片からなるか、又はそれを含み、
yは、リンカー部分であり、
zは、免疫グロブリンFc断片である)
の融合タンパク質である、ポリペプチドを提供する。
【0020】
式x-y-zは、特に、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端アミノ酸残基が、前記リンカー部分により、好ましくは、前記リンカー部分のN末端アミノ酸残基とのペプチド結合を介して連結されていること、及び前記免疫グロブリンFc断片のN末端アミノ酸残基が、前記リンカー部分により、好ましくは、前記リンカー部分のC末端アミノ酸残基とのペプチド結合を介して、連結されていることが理解されるべきである。
「xは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片からなる」という表現は、本明細書において記載される場合、特に、「xは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片である」と同等であることが理解される。
好ましい態様において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、本明細書において言及される場合、好ましくは、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が投与される対象におけるロタウイルスに対する免疫応答を誘導することができる。
別の好ましい態様において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、50~200、好ましくは、140~190アミノ酸残基の長さであるポリペプチドである。
【0021】
本明細書において言及されるロタウイルスは、好ましくは、ロタウイルスA及びロタウイルスCからなる群から選択される。そのため、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、本明細書において言及される場合、好ましくは、ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片及びロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片からなる群から選択される。
「ロタウイルスA」及び「ロタウイルスC」という用語は、それぞれ、本明細書において言及される場合、ICTV(Matthijnssens et al. Arch Virol 157:1177-1182 (2012)によって要約)によって定義される、それぞれ、ロタウイルスA及びロタウイルスCに関する。
【0022】
別の好ましい態様によれば、本明細書において言及されるロタウイルスは、ブタロタウイルスである。
特に好ましい一態様において、本明細書において言及されるロタウイルスは、ロタウイルスAである。したがって、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、本明細書において記載される場合、好ましくは、ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片である。
さらに好ましい態様において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメインを含む。「ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメイン」は、本明細書において言及される場合、好ましくは、ロタウイルスA VP8タンパク質のレクチン様ドメインであることが理解される。
【0023】
「ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメイン」という用語は、特に、それぞれ、ロタウイルスVP8タンパク質のアミノ酸残基65~224からなるアミノ酸配列に対応するロタウイルスVP8タンパク質の残基65~224を指し、ここで、前記ロタウイルスVP8タンパク質のアミノ酸残基65~224は、好ましくは、ロタウイルスA VP8タンパク質のアミノ酸残基65~224である。
したがって、「ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメイン」は、好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質、特に、ロタウイルスA VP8タンパク質のアミノ酸残基65~224のアミノ酸配列からなる。
【0024】
好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、ロタウイルスVP8タンパク質のN末端が伸長したレクチン様ドメインであり、ここで、N末端伸長は、1~20アミノ酸残基、特に、5~15アミノ酸残基の長さである。最も好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、ロタウイルスVP8タンパク質のN末端が伸長したレクチン様ドメインであり、ここで、N末端伸長は、8アミノ酸残基の長さである。
前記N末端伸長のアミノ酸残基は、好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質のアミノ酸配列中のレクチン様ドメインのN末端アミノ酸残基に隣接している個々の長さのアミノ酸配列である。
したがって、特定の態様において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、本明細書において言及される場合、好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質、特に、ロタウイルスAタンパク質の、アミノ酸残基60~224、アミノ酸残基59~224、アミノ酸残基58~224、アミノ酸残基57~224、アミノ酸残基56~224、アミノ酸残基55~224、アミノ酸残基54~224、アミノ酸残基53~224、アミノ酸残基52~224、アミノ酸残基51~224、アミノ酸残基50~224、又はアミノ酸残基49~224のアミノ酸配列からなる。
【0025】
最も好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、本明細書において言及される場合、ロタウイルスVP8タンパク質、特に、ロタウイルスAタンパク質のアミノ酸残基57~224のアミノ酸配列からなる。
アミノ酸残基の上記の番号付け(例えば、「65~224」又は「57~224」)は、好ましくは、野生型ロタウイルスVP8タンパク質、特に、野生型ロタウイルスA VP8タンパク質のアミノ酸配列を参照する。前記野生型ロタウイルスVP8タンパク質は、好ましくは、配列番号1に示されるタンパク質である。
【0026】
さらなる好ましい態様によれば、本明細書において言及されるロタウイルスは、遺伝子型P[6]ロタウイルス、遺伝子型P[7]ロタウイルス及び遺伝子型P[13]ロタウイルスからなる群から選択されるロタウイルス、特に、ロタウイルスAである。したがって、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、本明細書において言及される場合、好ましくは、遺伝子型P[6]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片及び遺伝子型P[13]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片からなる群から選択され、特に、遺伝子型P[6]ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片、遺伝子型P[7]ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片及び遺伝子型P[13]ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片からなる群から選択される。
【0027】
「遺伝子型P[6]ロタウイルス」、「遺伝子型P[7]ロタウイルス」、「遺伝子型P[13]ロタウイルス」及び「遺伝子型P[23]ロタウイルス」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、Estes and Kapikian. Rotaviruses. In: Knipe, D.M.; Howley, P.M. Fields Virology, 5th ed.;Wolters Kluwer/Lippincott Williams & Wilkins Health: Philadelphia, PA, USA (2007);Gorziglia et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 87(18):7155-9 (1990)に記載されている、ロタウイルスの確立されたVP4(P)遺伝子型分類(例えば、P[6]、P[7]、P[13]又はP[23])に関する。
【0028】
最も好ましくは、本明細書において言及されるロタウイルスは、遺伝子型P[7]ロタウイルスである。そのため、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、本明細書において言及される場合、最も好ましくは、遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、特に、遺伝子型P[7]ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片である。
本明細書において言及されるロタウイルスVP8タンパク質は、最も好ましくは、配列番号1の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、若しくはさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメインは、本明細書において言及される場合、好ましくは、配列番号2の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、若しくはさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
一例において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、配列番号3の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
別の好ましい態様において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、ロタウイルスVP8タンパク質の一部分、特に、ロタウイルスA VP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列からなるか、又はそれである。
【0029】
本明細書において使用される場合、「コンセンサス配列」という用語は、特に、関連する配列のファミリーにおいて最も頻繁に存在するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker, From Genes to Clones (Verlagsgesellschaft, Weinheim, Germany 1987)を参照されたい)。タンパク質のファミリーにおいて、コンセンサス配列中のそれぞれの位置は、ファミリーにおけるその位置に最も高頻度で存在するアミノ酸によって占められる。「コンセンサス配列」という用語は、したがって、推定のアミノ酸配列(又はヌクレオチド配列)を表す。コンセンサス配列は、複数の類似する配列を表す。コンセンサス配列におけるそれぞれの位置は、3つ以上の配列を整列させることによって決定されるその位置に最も高頻度で存在するアミノ酸残基(又はヌクレオチド塩基)に対応する。
【0030】
好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列は、本明細書において言及される場合、
- ロタウイルスVP8タンパク質の一部分をコードする複数のヌクレオチド配列をアミノ酸配列に翻訳するステップ、
- 好ましくは、MUSCLE配列アライメントソフトウェアUPGMB clustering及びデフォルトギャップペナルティパラメーターを使用することによって、前記アミノ酸配列を公知のロタウイルスVP8タンパク質と整列させるステップ、
- 前記整列された配列を系統発生解析に付し、ロタウイルスVP8タンパク質配列に基づく近隣結合系統発生再構築を作製するステップ、特に、前記整列されたアミノ酸配列を、系統発生解析のためのMEGA7ソフトウェアにインポートし、ロタウイルスVP8タンパク質配列に基づいて近隣結合系統発生再構築を作製するステップ、
- 系統発生のブートストラップテストを伴うポアソン補正法を使用して最適樹を計算するステップ(n=100)、
- 全170位置にわたって、部位ごとのアミノ酸置換の単位で、進化距離に等しい枝の長さを用いて一定の縮尺で最適樹を描くステップ、
- ブートストラップクラスター関連が70%よりも高いノードを有意として見なすステップ、
- およそ10%の距離及び70%よりも高いブートストラップクラスター関連を有するノードをクラスターとして指定するステップ、並びに
- クラスターを選択し、クラスター内の整列された位置ごとの最大頻度を特定することによって、コンセンサス配列を作製するステップ、並びに
- 任意に、アミノ酸の同等の割合が整列された位置において観察される場合において、事前に定義された生成物保護プロファイルと併せて、報告された疫学データに基づいて、アミノ酸残基を選択するステップ
を含む、方法によって得られ得る。
【0031】
例えば、この文脈において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、好ましくは、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
さらなる好ましい態様において、本明細書において言及されるロタウイルスは、ロタウイルスCである。この態様によれば、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、好ましくは、ロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片である。
この態様の文脈において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、好ましくは、配列番号6の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0032】
本発明によれば、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、したがって、好ましくは、
- ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片、特に、本明細書において記載されるロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片のいずれか、若しくは
- ロタウイルスVP8タンパク質の一部分、例えば、ロタウイルスA VP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列、好ましくは、コンセンサス配列の文脈において、本明細書において記載されるロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のいずれか、若しくは
- ロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片、特に、本明細書において記載されるロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片のいずれか
からなるか、又はそれである。
【0033】
特定の好ましい態様において、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片は、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0034】
本明細書において記載される免疫グロブリンFc断片は、好ましくは、少なくとも220アミノ酸残基の長さ、最も好ましくは、220~250アミノ酸残基の長さである。
別の特定の好ましい態様によれば、本明細書において記載される免疫グロブリンFc断片は、グリコシル化されていない。「グリコシル化されていない」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、免疫グロブリンFc断片が、それらに付着するオリゴ糖分子を有さないことを意味する。
好ましくは、免疫グロブリンFc断片は、本明細書において言及される場合、免疫グロブリンの、
- 重鎖定常領域2(CH2)、及び
- 重鎖定常領域3(CH3)、並びに
- 任意に、ヒンジ領域又はヒンジ領域の一部分
を含むか、又はそれからなる。
【0035】
別の好ましい態様によれば、本明細書において言及される免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgD、IgE及びIgMからなる群から選択される。したがって、免疫グロブリンFc断片は、好ましくは、IgG Fc断片、IgA Fc断片、IgD Fc断片、IgE Fc断片及びIgM Fc断片からなる群から選択される。
最も好ましい態様によれば、本明細書において記載される免疫グロブリンFc断片は、IgG Fc断片である。
IgGは、本明細書において言及される場合、好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5及びIgG6からなる群から選択される。したがって、別の好ましい態様によれば、本明細書において言及される免疫グロブリンFc断片は、IgG1 Fc断片、IgG2 Fc断片、IgG3 Fc断片、IgG4 Fc断片、IgG5 Fc断片及びIgG6 Fc断片からなる群から選択される。
【0036】
最も好ましくは、免疫グロブリンFc断片は、腸細胞が、本明細書において言及されるロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が由来するロタウイルスによる感染に感受性である種のゲノムによってコードされるタンパク質である。例えば、ロタウイルスVP8タンパク質の断片が、ブタロタウイルスVP8タンパク質の断片である場合、免疫グロブリンFc断片は、好ましくは、ブタゲノムによってコードされる免疫グロブリンFc断片である。別の例によれば、ロタウイルスVP8タンパク質の断片が、ニワトリロタウイルスVP8タンパク質の断片である場合、免疫グロブリンFc断片は、好ましくは、ニワトリゲノムによってコードされる免疫グロブリンFc断片である。
より具体的には、免疫グロブリンFc断片は、好ましくは、イノシシ属動物IgG Fc断片である。
さらなる好ましい態様において、免疫グロブリンFc断片は、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、若しくは特に、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0037】
本明細書において言及されるリンカー部分又はペプチドリンカーは、それぞれ、好ましくは、1~50アミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列、特に、3~20アミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列である。例えば、リンカー部分は、3、8又は10アミノ酸残基の長さであるペプチドリンカーであり得る。
目的に応じて、短いリンカーが、融合タンパク質パートナー間のタンパク質分解のリスクを減少させるために所望されることがある。したがって、本発明の文脈において記載されるペプチドリンカーは、好ましくは、それぞれ、1~5アミノ酸残基、より好ましくは、2~4アミノ酸残基、最も好ましくは、3アミノ酸残基の長さを有するか、又はそれからなる。
好ましい態様によれば、リンカー部分は、配列番号9、配列番号10及び配列番号11からなる群から選択される配列と、少なくとも66%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、若しくは特に100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0038】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端アミノ酸残基に隣接しているN末端メチオニン残基を有する。
別の好ましい態様によれば、本発明のポリペプチドは、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されたロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片を含む。
前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片は、好ましくは、
- ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片、特に、本明細書において記載されるロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片のいずれか、若しくは
- ロタウイルスVP8タンパク質の一部分、例えば、ロタウイルスA VP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列、好ましくは、コンセンサス配列の文脈において、本明細書において記載されるロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のいずれか、若しくは
- ロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片、特に、本明細書において記載されるロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片のいずれか
からなるか、又はそれである。
【0039】
特に、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片は、好ましくは、配列番号2~6からなる群から選択される配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、若しくはさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
特定の好ましい態様において、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片は、C末端が前記免疫グロブリンFc断片に連結されているロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片とは異なる。
前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片は、好ましくは、リンカー部分を介して、特に、本明細書において記載されるリンカー部分のいずれかを介して、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されている。好ましくは、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片は、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片のN末端アミノ酸残基とリンカー部分のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、リンカー部分に連結されている。
或いは、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片のN末端アミノ酸残基と前記免疫グロブリンFc断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されていることが好ましくあり得る。
【0040】
特定の好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるタンパク質である。
好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるタンパク質である。
【0041】
「アミノ酸配列からなる(consisting of an amino acid sequence)」又は「アミノ酸配列からなる(consists of an amino acid sequence)」という表現は、それぞれ、本明細書において使用される場合、特に、タンパク質又はタンパク質ドメインが発現される細胞によって影響を受けるアミノ酸配列のあらゆる共翻訳の及び/又は翻訳後の1つ若しくは複数の修飾にも関係することが理解される。したがって、「アミノ酸配列からなる(consisting of an amino acid sequence)」又は「アミノ酸配列からなる(consists of an amino acid sequence)」という表現は、それぞれ、本明細書において使用される場合、他に明示的に言及されない限り、タンパク質又はタンパク質ドメインが発現される細胞によってもたらされる1つ又は複数の修飾、特に、タンパク質生合成及び/又はタンパク質プロセシングにおいてもたらされる、好ましくは、グリコシル化、リン酸化及びアセチル化からなる群から選択されるアミノ酸残基の修飾を有するアミノ酸配列も対象とする。
【0042】
「少なくとも90%」という用語に関して、本発明の文脈において言及される場合、前記用語は、好ましくは、「少なくとも91%」、より好ましくは、「少なくとも92%」、さらにより好ましくは、「少なくとも93%」、又は特に、「少なくとも94%」に関することが理解される。
「少なくとも95%」という用語に関して、本発明の文脈において言及される場合、前記用語は、好ましくは、「少なくとも96%」、より好ましくは、「少なくとも97%」、さらにより好ましくは、「少なくとも98%」、又は特に、「少なくとも99%」に関することが理解される。
「少なくとも99%」という用語に関して、本発明の文脈において言及される場合、前記用語は、好ましくは、「少なくとも99.2%」、より好ましくは、「少なくとも99.4%」、さらにより好ましくは、「少なくとも99.6%」、又は特に、「少なくとも99.8%」に関することが理解される。
「100%の配列同一性を有する」という用語は、本明細書において使用される場合、「同一である」という用語と同等であることが理解される。
【0043】
配列同一性パーセントは、当技術分野で認識される意味を有し、2つのポリペプチド又はポリヌクレオチド配列の間の同一性を測定するための多くの方法がある。例えば、Lesk, Ed., Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988);Smith, Ed., Biocomputing: Informatics And Genome Projects, Academic Press, New York, (1993);Griffin & Griffin, Eds., Computer Analysis Of Sequence Data, Part I, Humana Press, New Jersey, (1994);von Heinje, Sequence Analysis In Molecular Biology, Academic Press, (1987);及びGribskov & Devereux, Eds., Sequence Analysis Primer, M Stockton Press, New York, (1991)を参照されたい。ポリヌクレオチド又はポリペプチドを整列させるための方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al., Nuc.Acids Res.12:387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al., J.Molec.Biol.215:403 (1990))、及びSmith and Waterman (Adv.App.Math., 2:482-489 (1981))のローカル相同アルゴリズムを使用するBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Unix用のバージョン8、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、Wis.53711)を含むコンピュータプログラムにおいて体系化されている。例えば、FASTAアルゴリズムを利用するコンピュータプログラムALIGNを、ギャップオープンペナルティ-12及びギャップ伸張ペナルティ-2でアフィンギャップサーチを用いて、使用することができる。本発明の目的のために、ヌクレオチド配列は、DNASTAR Inc.によるMegAlignソフトウェア バージョン11.1.0(59),419におけるClustal W法を使用して、このプログラムにおけるデフォルトの複数のアライメントパラメーターセット(ギャップペナルティ=15.0、ギャップ長さペナルティ=6.66及び遅延不一致配列(%)=30%、DNA転移ウェイト=0.50及びDNAウェイトマトリックス=IUB)を使用して整列され、そして、それぞれ、タンパク質/アミノ酸配列は、DNASTAR Inc.によるMegAlignソフトウェア、バージョン11.1.0(59),419のClustal W法を使用して、このプログラムにおけるデフォルトの複数のアライメントパラメーターセット(ギャップペナルティ=10.0、ギャップ長さペナルティ=0.2、及び遅延不一致配列(%)=30%によるGonnetシリーズタンパク質ウェイトマトリックス)を使用して整列される。
【0044】
本明細書において使用される場合、「配列番号Xの配列との配列同一性」という用語は、それぞれ、「配列番号Xの長さにわたる配列番号Xの配列との配列同一性」という用語、又は「配列番号Xの全長にわたる配列番号Xの配列との配列同一性」という用語と同等であることが特に理解される。この文脈において、「X」は、「配列番号X」が本明細書において言及される配列番号のいずれかを表すように、1~25から選択されるあらゆる整数である。
【0045】
「配列番号[...]、...及び配列番号[...]からなる群」という表現は、本明細書において使用される場合、「配列番号[...]の配列、...及び配列番号[...]の配列からなる群」と互換可能である。この文脈における「[...]」は、配列の番号についてのプレースホルダーである。例えば、「配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群」という表現は、「配列番号3の配列、配列番号4の配列、配列番号5の配列及び配列番号6の配列からなる群」と互換可能である。
【0046】
別の特定の好ましい態様によれば、本発明のポリペプチドは、
- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、特に、本明細書において記載されるロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のいずれか、
- 前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端アミノ酸残基に隣接しているN末端メチオニン残基、及び
- 免疫グロブリンFc断片、特に、本明細書において記載される免疫グロブリンFc断片のいずれか
であって、
前記免疫グロブリンFc断片が、特に、リンカー部分を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されており、前記リンカー部分が、好ましくは、本明細書において記載されるリンカー部分のいずれかである、免疫グロブリンFc断片、並びに
- 任意に、特に、リンカー部分を介して、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されたロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片であって、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、好ましくは、本明細書において記載されるロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片のいずれかであり、前記リンカー部分が、好ましくは、本明細書において記載されるリンカー部分のいずれかである、ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片
からなる。
【0047】
またさらなる好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、さらなる本発明のポリペプチドと二量体を形成する。最も好ましくは、本発明のポリペプチドは、第2の同一のポリペプチドとホモ二量体を形成する。
したがって、「本発明のポリペプチド」という用語が、2つの本発明のポリペプチドから構成されるあらゆる二量体をさらに包含すること、特に、2つの同一の本発明のポリペプチドから構成されるあらゆるホモ二量体を包含することが特に理解される。
別の特定の好ましい態様によれば、本発明は、複数の本発明のポリペプチドを含むか、又はそれから構成される多量体を提供し、ここで、前記多量体は、本明細書の以下で、「本発明の多量体」とも称する。
好ましくは、本発明の多量体は、1つの本発明のポリペプチドと第2の同一の本発明のポリペプチドとによって形成されるホモ二量体である。
【0048】
「本発明の多量体」という用語が、異なる本発明の多量体のあらゆる混合物、例えば、
- 1つの本発明のポリペプチドと第2の同一の本発明のポリペプチドによって形成されるホモ二量体、及び
- 3つ以上の同じ本発明のポリペプチドによって形成される1つ又は複数の多量体
の混合物をさらに包含することが特に理解される。
本発明は、本発明のポリペプチド及び/又は本発明の多量体を含む免疫原性組成物をさらに提供し、ここで、前記免疫原性組成物は、本明細書の以下で、「本発明の免疫原性組成物」とも称する。
【0049】
したがって、好ましい一例において、本発明の免疫原性組成物は、
- 1つの本発明のポリペプチドからなる単量体、及び
- 2つの同一の本発明のポリペプチドからなるホモ二量体、並びに
- 任意に、3つの同一の本発明のポリペプチドからなるホモ三量体
を含み、ここで、好ましくは、
- 前記2つの同一の本発明のポリペプチドのそれぞれ、及び
- 任意に、前記3つの同一の本発明のポリペプチドのそれぞれ
は、前記1つの本発明のポリペプチドとして、同じアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0050】
本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、少なくとも100nM、好ましくは、少なくとも250nM、より好ましくは、少なくとも500nM、最も好ましくは、少なくとも1μMの濃度の本発明のポリペプチドを含む。
別の好ましい態様によれば、本発明の免疫原性組成物は、100nM~50μM、好ましくは、250nM~25μM、最も好ましくは、1~10μMの濃度の本発明のポリペプチドを含有する。
特に、1mL、又は場合によっては、2mLの本発明の免疫原性組成物が、対象に投与される。したがって、対象に投与される本発明の免疫原性組成物の用量は、好ましくは、1mL又は2mLの体積を有する。
好ましくは、1用量又は2用量の免疫原性組成物が、対象に投与される。
【0051】
本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、全身的に又は局所的に投与される。慣習的に使用される投与の好適な経路は、非経口又は経口投与、例えば、筋肉内、皮内、静脈内、腹腔内、皮下、鼻腔内、及び吸入である。しかしながら、化合物の性質及び作用機序に応じて、免疫原性組成物は、同様に、他の経路によって投与されてもよい。免疫原性組成物が筋肉内投与されることが最も好ましい。本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、薬学的に又は獣医学的に許容される担体又は賦形剤をさらに含む。
本明細書において使用される場合、「薬学的に又は獣医学的に許容される担体」としては、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、安定化剤、希釈剤、保存剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤などが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態、特に、凍結乾燥された免疫原性組成物を含む実施形態において、本発明において使用するための安定化剤は、凍結乾燥又はフリーズドライのための安定剤を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、アジュバントを含有する。
「アジュバント」としては、本明細書において使用される場合、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン、例えば、Quil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、Birmingham、AL)、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンが挙げられ得る。エマルジョンは、特に、軽質流動パラフィン油(欧州薬局方タイプ);スクアラン又はスクアレンなどのイソプレノイド油;アルケン、特に、イソブテン又はデセンのオリゴマー化から得られる油;直鎖状アルキル基を含有する酸又はアルコールのエステル、より具体的には、植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)、又はプロピレングリコールジオレエート;分枝状脂肪酸又はアルコールのエステル、特に、イソステアリン酸エステルに基づくことができる。油は、乳化剤と組み合わせて使用して、エマルジョンを形成する。乳化剤は、好ましくは、非イオン性界面活性剤、特に、ソルビタン、マンニド(例えば、無水マンニトールオレエート)、グリコール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸のエステルであって、エトキシル化されていてもよいエステル、並びにポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特に、Pluronic製品、特に、L121である。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D.E.S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94 (1995)及びTodd et al., Vaccine 15:564-570 (1997)を参照されたい。例示的なアジュバントは、「Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach」 edited by M.Powell and M.Newman, Plenum Press, 1995の147頁に記載されているSPTエマルジョン、又はこの同じ書籍の183頁に記載されているエマルジョンMF59である。
【0053】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、並びに無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、架橋されている、特に、糖又はポリアルコールのポリアルケニルエーテルで架橋されている、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、カルボマーという用語によって公知である(Phameuropa Vol.8, No.2, June 1996)。当業者は、少なくとも3つのヒドロキシルの水素原子が少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置き換えられた、少なくとも3つのヒドロキシル基、好ましくは、8を超えないヒドロキシル基を有するポリヒドロキシル化化合物で架橋されたそのようなアクリルポリマーを記載する米国特許第2,909,462号も参照することもできる。好ましいラジカルは、2~4個の炭素原子、例えば、ビニル、アリル及び他のエチレン性不飽和基を含有するものである。不飽和ラジカルは、それら自身が、メチルなどの他の置換基を含有していてもよい。CARBOPOL(登録商標)という名称で販売されている製品(BF Goodrich、Ohio、USA)が、特に適切である。それらは、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋されている。その中でも、Carbopol 974P、934P及び971Pが言及され得る。CARBOPOL(登録商標)971Pの使用が最も好ましい。中でも、無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーは、無水マレイン酸及びエチレンのコポリマーであるコポリマーEMA(Monsanto)である。これらのポリマーの水への溶解は、免疫原性組成物、免疫学的組成物又はワクチン組成物それ自身に組み込まれるアジュバント溶液を与えるために、好ましくは、生理学的pHに中和される酸溶液をもたらす。
【0054】
アジュバントが選択され得るさらなる好適なアジュバントとしては、限定されるものではないが、多くの他のものの中で、RIBIアジュバントシステム(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx、Atlanta Ga)、SAF-M(Chiron、Emeryville CA)、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌に由来する易熱性エンテロトキシン(組換え又はその他)、コレラ毒素、IMS1314又はムラミルジペプチド、或いは天然に存在するか、若しくは組換えのサイトカイン又はそのアナログ、又は内因性サイトカイン放出の刺激因子が挙げられる。
【0055】
アジュバントが、用量あたり約100μg~約10mgの量、好ましくは、用量あたり約100μg~約10mgの量、より好ましくは、用量あたり約500μg~約5mgの量、さらにより好ましくは、用量あたり約750μg~約2.5mgの量、最も好ましくは、用量あたり約1mgの量で添加され得ると予想される。或いは、アジュバントは、最終製品の体積の約0.01~50%の濃度、好ましくは、約2%~30%の濃度、より好ましくは、約5%~25%の濃度、さらにより好ましくは、約7%~22%の濃度、最も好ましくは、10%~20%の濃度であり得る。
「希釈剤」としては、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが挙げられ得る。等張剤としては、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール及びラクトースが挙げられ得る。安定剤としては、とりわけ、アルブミン、及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が挙げられる。
【0056】
特に好ましい態様によれば、本発明は、免疫原性組成物、特に、本発明の免疫原性組成物も提供し、ここで、免疫原性組成物は、
- 本発明のポリペプチド及び/若しくは本発明の多量体、並びに
- 薬学的に若しくは獣医学的に許容される担体又は賦形剤、並びに
- 任意に、アジュバント
を含むか、又はこれからなる。
本発明の文脈におけるアジュバントは、好ましくは、乳化された水中油型アジュバント及びカルボマーからなる群から選択される。
「免疫原性組成物」という用語は、免疫原性組成物が投与される宿主中で免疫学的応答を誘発する少なくとも1つの抗原を含む組成物を指す。そのような免疫学的応答は、本発明による免疫原性組成物に対する細胞性免疫応答及び/又は抗体媒介免疫応答であり得る。宿主はまた、「対象」と記載される。好ましくは、本明細書において記載又は言及される宿主又は対象のいずれかは、動物である。
「動物」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、哺乳動物、好ましくは、イノシシ属動物、より好ましくは、ブタ、最も好ましくは、子ブタに関する。
【0057】
通常、「免疫学的応答」としては、限定されるものではないが、1つ又は複数の以下の効果が挙げられる:本発明の免疫原性組成物に含まれる1つ又は複数の抗原に特異的に対する、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、並びに/又は細胞傷害性T細胞及び/若しくはガンマ-デルタT細胞の産生或いは活性化。好ましくは、宿主は、保護的免疫学的応答又は治療的応答のいずれかを提示する。
「保護的免疫学的応答」は、感染した宿主によって通常提示される1つ若しくは複数の臨床徴候の低減若しくは欠如、より迅速な回復時間及び/若しくは感染期間の低下、又は感染した宿主の組織若しくは体液若しくは排出物におけるより低い病原体力価のいずれかによって実証される。
「病原体」又は「特定の病原体」は、本明細書において言及される場合、特に、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が由来するロタウイルスに関する。例えば、病原体は、本明細書において言及される場合、ロタウイルスA又はロタウイルスCである。
【0058】
宿主が、新たな感染への抵抗性が増強され、及び/又は疾患の臨床重症度が低減されるような防御的免疫学的応答を提示する場合において、免疫原性組成物は、「ワクチン」と記載される。
「抗原」は、本明細書において記載される場合、限定されるものではないが、そのような抗原又はその免疫学的に活性な構成成分を含む目的の免疫学的組成物又はワクチンに対して、宿主において免疫学的応答を誘発する構成成分を指す。特に、「抗原」という用語は、本明細書において使用される場合、宿主に投与されたら、宿主において免疫学的応答を誘発し得るタンパク質又はタンパク質ドメインを指す。
【0059】
「処置及び/又は予防」という用語は、集団における特定の病原体感染の出現を減少させること、又は特定の病原体感染によって引き起こされるか、若しくはそれに関連する1つ若しくは複数の臨床徴候の重症度の低減を指す。したがって、「処置及び/又は予防」という用語は、特定の病原体に感染するようになる集団における動物の数の低減(=特定の病原体感染の出現を減少させること)、又は動物がそのような免疫原性組成物を受けていない動物の群と比較して、動物が本明細書において提供される有効量の免疫原性組成物を受けた動物の群における病原体による感染に、通常、関連するか、若しくはそれによって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候の重症度の低減を指す。
「処置及び/又は予防」は、一般に、そのような処置/予防を必要とするか、又はそれから利益を受け得る対象又は対象の集団への、有効量の本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物の投与を含む。「処置」という用語は、集団の対象又は少なくとも一部の動物がそのような病原体に既に感染し、そのような動物がそのような病原体感染によって引き起こされるか、又はそれに関連するいくつかの臨床徴候を既に示している時点での有効量の免疫原性組成物の投与を指す。「予防」という用語は、病原体によるそのような対象のあらゆる感染の前の、又は少なくともそのような動物若しくは動物の群におけるすべての動物がそのような病原体による感染によって引き起こされるか、若しくはそれに関連する1つ若しくは複数の臨床徴候も示さない場合の、対象への投与を指す。
【0060】
「有効量」という用語は、本明細書において使用される場合、限定されるものではないが、対象において免疫応答を誘発する又は誘発することができる、抗原、特に、本発明のポリペプチド及び/又は本発明の多量体の量を意味する。そのような有効量は、集団における特定の病原体感染の出現を減少させることができ、又は特定の病原体感染の1つ若しくは複数の臨床徴候の重症度を低減することができる。好ましくは、1つ又は複数の臨床徴候は、処置されていないか、又は本発明の前に適用可能であった免疫学的組成物で処置されたが、その後特定の病原体に感染した対象のいずれかと比較して、少なくとも10%、より好ましくは、少なくとも20%、さらにより好ましくは、少なくとも30%、さらにより好ましくは、少なくとも40%、さらにより好ましくは、少なくとも50%、さらにより好ましくは、少なくとも60%、さらにより好ましくは、少なくとも70%、さらにより好ましくは、少なくとも80%、さらにより好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%、出現又は重症度を減少させる。
【0061】
「臨床徴候」という用語は、本明細書において使用される場合、特定の病原体からの対象の感染の徴候を指す。感染の臨床徴候は、選択される病原体に依存する。そのような臨床徴候の例としては、限定されるものではないが、下痢、嘔吐、発熱、腹痛及び脱水が挙げられる。
対象における特定の病原体感染によって引き起こされるか、若しくはそれに関連する1つ若しくは複数の臨床徴候の出現の低減又はその重症度の低減は、対象への1用量又は複数用量の本発明の免疫原性組成物の投与によって達成することができる。
【0062】
「糞便排出を低減する」という用語は、限定されるものではないが、糞便1mLあたりのロタウイルスなどの病原性ウイルスのRNAコピー数、又は糞便1デシリットルあたりのプラーク形成コロニー数の低減を意味し、組成物を受けておらず、感染するようになり得る対象と比較して、少なくとも50%、本発明の組成物を受けている対象の糞便において低減される。より好ましくは、糞便排出レベルは、本発明の組成物を受けている対象において、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも99.9%、より好ましくは、少なくとも99.99%、さらにより好ましくは、少なくとも99.999%低減される。
「糞便排出」という用語は、本明細書において使用される場合、医学及びウイルス学におけるその明白な通常の意味に従って使用され、対象の糞便を介した、感染した対象からの環境への対象の細胞からのウイルスの産生及び放出を指す。
【0063】
本発明のポリペプチドは、好ましくは、組換えタンパク質、特に、組換えバキュロウイルス発現タンパク質である。
「組換えタンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、組換えDNA技法によって産生されるタンパク質を指し、ここで、一般に、発現タンパク質をコードするDNAは、好適な発現ベクターに挿入され、次に、これを使用して、形質転換するか、又はウイルスベクターの場合において、宿主細胞に感染させて、異種タンパク質を産生させる。したがって、「組換えタンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、組換えDNA分子から発現されるタンパク質分子を指す。「組換えDNA分子」は、本明細書において使用される場合、分子生物学的技法によって一緒に接合されたDNAのセグメントから構成されるDNA分子を指す。組換えタンパク質の産生のための好適な系としては、限定されるものではないが、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス)、原核細胞系(例えば、大腸菌)、真菌(例えば、ミセリオフソラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophile)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、ウスティラゴ・マイディス(Ustilago maydis))、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccaromyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))、哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣、HEK293)、植物(例えば、ベニバナ)、藻類、鳥類細胞、両生類細胞、魚類細胞、及び無細胞系(例えば、ウサギ網状赤血球溶血液)が挙げられる。
【0064】
別の態様によれば、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを提供し、ここで、前記ポリヌクレオチドは、本明細書の以下で、「本発明によるポリヌクレオチド」とも称し、好ましくは、単離されたポリヌクレオチドである。
好ましくは、本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20及び配列番号21からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、又は特に、100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0065】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドの産生は、当技術分野における技能内であり、他のものの中でも、Sam brook et al., 2001, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;Amusable, et al., 2003, Current Protocols In Molecular Biology, Greene Publishing Associates & Wiley Interscience, NY;Innis et al.(eds), 1995, PCR Strategies, Academic Press, Inc., San Diego;及びErlich (ed), 1994, PCR Technology, Oxford University Press, New Yorkに記載される組換え技法に従って行うことができ、これらのすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
またさらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。
【0066】
「ベクター」及び「本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するベクター」は、本発明の目的のために、好適な発現ベクター、好ましくは、バキュロウイルス発現ベクターを指し、次に、これを使用して、DNAによってコードされるタンパク質又はポリペプチドを産生するように、宿主細胞にトランスフェクトするか、又はバキュロウイルス発現ベクターの場合において、宿主細胞に感染させる。ベクター、並びに発現のためのベクター(又は組換え体)を作製及び/又は使用するための方法は、米国特許4,603,112号、同第4,769,330号、同第5,174,993号、同第5,505,941号、同第5,338,683号、同第5,494,807号、同第4,722,848号、同第5,942,235号、同第5,364,773号、同第5,762,938号、同第5,770,212号、同第5,942,235号、同第382,425号、PCT公開の国際公開第94/16716号、国際公開第96/39491号、国際公開第95/30018号;Paoletti, 「Applications of pox virus vectors to vaccination: An update, 「PNAS USA 93: 11349-11353, October 1996;Moss, 「Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expression, vaccination, and safety,」 PNAS USA 93: 11341-11348, October 1996;Smithら、米国特許第4,745,051号(組換えバキュロウイルス);Richardson, C.D.(Editor), Methods in Molecular Biology 39, 「Baculovirus Expression Protocols」(1995 Humana Press Inc.);Smith et al., 「Production of Human Beta Interferon in Insect Cells Infected with a Baculovirus Expression Vector」, Molecular and Cellular Biology, December, 1983, Vol.3, No.12, p.2156-2165;Pennock et al., 「Strong and Regulated Expression of Escherichia coli B-Galactosidase in Infect Cells with a Baculovirus vector, 「Molecular and Cellular Biology March 1984, Vol.4, No.3, p.406;欧州特許出願第0370573号;1986年10月16日に出願された米国出願第920,197号;欧州特許出願公開第265785号;米国特許第4,769,331号(組換えヘルペスウイルス);Roizman, 「The function of herpes simplex virus genes: A primer for genetic engineering of novel vectors,」PNAS USA 93:11307-11312, October 1996;Andreansky et al., 「The application of genetically engineered herpes simplex viruses to the treatment of experimental brain tumors,」 PNAS USA 93: 11313-11318, October 1996;Robertson et al., 「Epstein-Barr virus vectors for gene delivery to B lymphocytes」, PNAS USA 93: 11334-11340, October 1996;Frolov et al., 「Alphavirus-based expression vectors: Strategies and applications,」 PNAS USA 93: 11371-11377, October 1996;Kitson et al., J.Virol.65, 3068-3075, 1991;米国特許第5,591,439号、同第5,552,143号;国際公開第98/00166号;両方とも1996年7月3日に出願され、認可された米国出願第08/675,556号及び同第08/675,566号(組換えアデノウイルス);Grunhaus et al., 1992, 「Adenovirus as cloning vectors,」 Seminars in Virology (Vol.3) p.237-52, 1993;Ballay et al.EMBO Journal, vol.4, p.3861-65, Graham, Tibtech 8, 85-87, April, 1990;Prevec et al., J.Gen Virol.70, 42434;PCT国際公開第91/11525号;Felgner et al.(1994), J.Biol.Chem.269, 2550-2561, Science, 259: 1745-49, 1993;及びMcClements et al., 「Immunization with DNA vaccines encoding glycoprotein D or glycoprotein B, alone or in combination, induces protective immunity in animal models of herpes simplex virus-2 disease」, PNAS USA 93: 11414-11420, October 1996;並びに米国特許第5,591,639号、同第5,589,466号及び同第5,580,859号、並びに国際公開第90/11092号、国際公開第93/19183号、国際公開第94/21797号、国際公開第95/11307号、国際公開第95/20660号;とりわけ、DNA発現ベクターに関する、Tang et al., Nature及びFurth et al., Analytical Biochemistryにおいて開示されている方法によって、又はそれと類似する方法で、作製する又は行うことができる。また、国際公開第98/33510号;Ju et al., Diabetologia, 41: 736-739, 1998(レンチウイルス発現系);Sanfordら、米国特許第4,945,050号;Fischbach et al.(Intracel);国際公開第90/01543号;Robinson et al., Seminars in Immunology vol.9, pp.271-283 (1997)(DNAベクター系);Szokka et al.、米国特許第4,394,448号(method of inserting DNA into living cells);McCormick et al.、米国特許第5,677,178号(use of cytopathic viruses);及び米国特許第5,928,913号(vectors for gene delivery)、並びに本明細書で引用される他の文献も参照されたい。
【0067】
好ましいウイルスベクターとしては、特に、産生細胞が、昆虫細胞であるならば、BaculoGold(BD Biosciences Pharmingen、San Diego、CA)などのバキュロウイルスが挙げられる。バキュロウイルス発現系が好ましいが、上記に記載したものを含む他の発現系が、本発明の目的のために、即ち、組換えタンパク質の発現のために働くことが当業者に理解される。
【0068】
したがって、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含有するバキュロウイルスも提供する。本明細書の以下で「本発明によるバキュロウイルス」とも称される前記バキュロウイルスは、好ましくは、単離されたバキュロウイルスである。
さらにまた、本発明は、したがって、本発明のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは、発現ベクターも提供する。本明細書の以下で「本発明によるプラスミド」とも称される前記プラスミドは、特に、単離されたプラスミドである。
本発明は、本発明のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むバキュロウイルス、又は本発明のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは、発現ベクターに感染した、及び/又はそれを含有する細胞も提供する。本明細書の以下で「本発明による細胞」とも称される前記細胞は、好ましくは、単離された細胞である。
【0069】
「単離された」という用語は、単離された細胞の文脈において使用される場合、人間の手によって、その天然環境から離れて存在する、したがって、天然の産物ではない、細胞である。
また別の態様において、本発明は、医薬、好ましくは、ワクチンの調製のための、本発明のポリペプチド、本発明の多量体、本発明によるバキュロウイルス、本発明の免疫原性組成物、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるウイルス様粒子、本発明によるプラスミド、及び/又は本発明による細胞の使用にも関する。
【0070】
この文脈において、本発明は、本発明のポリペプチドを生成する方法であって、前記方法が、細胞、好ましくは、昆虫細胞を、本発明によるバキュロウイルスに感染させるステップを含む、方法も提供する。
さらにまた、本発明は、本発明のポリペプチドを生成する方法であって、前記方法が、細胞を、本発明によるプラスミドでトランスフェクトするステップを含む、方法も提供する。
本発明のポリペプチドは、好ましくは、ウイルス様粒子の安定な自己集合のために十分な高い量で発現され、次いで、これは、ワクチン接種のために使用され得る。
【0071】
「ワクチン接種」又は「ワクチン接種すること」という用語は、本明細書において使用される場合、限定されるものではないが、抗原、例えば、免疫原性組成物に含まれる抗原の対象への投与を含むプロセスを意味し、ここで、前記抗原、例えば、本発明のポリペプチド又は本発明の多量体は、前記対象に投与されると、前記対象において保護的免疫学的応答を誘発するか、又はそれを誘発することができる。
本発明は、医薬として、好ましくは、ワクチンとして使用するための、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物も提供する。
【0072】
特に、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物は、ロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候若しくは疾患を低減又は防止する方法であって、ロタウイルスが、好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片をコードするゲノムを有する群のロタウイルスである、方法において使用するために提供される。本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物は、特に、ロタウイルス感染によって引き起こされる糞便排出を低減又は防止する方法であって、ウイルスが、好ましくは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片をコードするゲノムを有する群のロタウイルスである、方法において使用するために提供される。したがって、特定の一例において、本明細書において言及されるロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片がロタウイルスAのゲノムによってコードされる場合、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物は、ロタウイルスAによる感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率、糞便排出若しくは疾患を低減又は防止する方法において使用するためのものである。
【0073】
より具体的には、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物は、対象におけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する方法において使用するため、或いは対象におけるロタウイルスによる感染を処置又は防止する方法において使用するために提供される。
ロタウイルス感染は、本明細書において言及される場合、特に、ロタウイルスA又はロタウイルスCによる感染を指す。
さらにまた、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物は、対象におけるロタウイルスに対する免疫応答を誘導するための方法において使用するために提供される。
対象は、本明細書において言及される場合、好ましくは、哺乳動物、例えば、イノシシ属動物若しくはウシ亜科動物、又は鳥類、例えば、ニワトリである。特に、対象は、ブタであり、ここで、ブタは、好ましくは、子ブタ又は雌ブタ、例えば、妊娠雌ブタである。最も好ましくは、対象におけるロタウイルスに対する免疫応答を誘導するという文脈において、前記対象は、妊娠雌ブタである。対象におけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する、或いは対象におけるロタウイルスによる感染を処置又は防止するという文脈において、前記対象は、最も好ましくは、子ブタである。
【0074】
好ましい一態様によれば、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物は、子ブタにおけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する方法であって、子ブタが、免疫原性組成物が投与された雌ブタによって授乳される、方法において使用するためのものである。免疫原性組成物が投与された前記雌ブタは、好ましくは、免疫原性組成物が、前記雌ブタが妊娠している、特に、前記子ブタを妊娠している間に投与された雌ブタである。
さらにまた、本発明は、ロタウイルス感染の処置又は防止、ロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出の低減、防止又は処置、或いはロタウイルス感染によって引き起こされる疾患の防止又は処置のための方法であって、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む、方法に関する。
また、好ましくは、妊娠雌ブタにおける、ロタウイルスに特異的な抗体の産生を誘導するための方法であって、前記方法が、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物を前記雌ブタに投与するステップを含む、方法が提供される。
【0075】
さらにまた、本発明は、子ブタにおけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する方法であって、前記方法が、
- 本発明のポリペプチド又は本発明による免疫原性組成物を雌ブタに投与するステップ、及び
- 前記子ブタが、前記雌ブタによって授乳されるステップ
を含み、前記雌ブタが、好ましくは、特に前記ブタを妊娠している雌ブタである、方法を提供する。
【0076】
好ましくは、前記2つの前述の方法は、
- 本発明のポリペプチド又は本発明による免疫原性組成物を、前記子ブタを妊娠している雌ブタに投与するステップ、
- 前記雌ブタに、前記子ブタを出産させるステップ、及び
- 前記子ブタが、前記雌ブタによって授乳されるステップ
を含む。
また、子ブタにおけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減する方法であって、子ブタが、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物が投与された雌ブタによって授乳される、方法が提供される。
【0077】
1つ又は複数の臨床徴候は、本明細書において言及される場合、好ましくは、
- 下痢、
- ロタウイルスコロニー形成、特に、腸のロタウイルスコロニー形成、
- 病変、特に、肉眼的病変、及び
- 1日当たりの平均体重増加の減少
からなる群から選択される。
一例によれば、本明細書において言及される1つ又は複数の臨床徴候は、腸、特に、小腸のロタウイルスコロニー形成である。別の例によれば、本明細書において言及される1つ又は複数の臨床徴候は、腸病変、特に、肉眼的腸病変である。
【0078】
別の特定の好ましい態様によれば、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物は、上記に記載される方法のいずれかにおいて使用するためのものであり、ここで、
- 前記ロタウイルス感染は、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染であるか、
- 前記ロタウイルスによる感染は、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染であるか、
- 前記ロタウイルスに対する免疫応答は、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスに対する免疫応答であるか、又は
- 前記ロタウイルスに特異的な抗体は、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスに特異的な抗体であり、
そして、好ましくは、それぞれ、前記本発明のポリペプチドは、特に、配列番号3の配列と少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片を含む本明細書に記載される本発明のポリペプチドのいずれかであるか、或いは前記本発明の免疫原性組成物は、特に、配列番号3の配列と少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片を含む本明細書に記載される本発明のポリペプチドのいずれかを含む。
【0079】
特定の一態様において、「遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/又は遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染」は、本明細書において言及される場合、遺伝子型P[23]ロタウイルスによる感染である。
別の好ましい態様において、「遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/又は遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染」は、本明細書において言及される場合、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染である。
特定の一態様において、「遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/又は遺伝子型P[7]ロタウイルスに対する免疫応答」は、本明細書において言及される場合、遺伝子型P[23]ロタウイルスに対する免疫応答である。
別の好ましい態様において、「遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/又は遺伝子型P[7]ロタウイルスに対する免疫応答」は、本明細書において言及される場合、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び遺伝子型P[7]ロタウイルスに対する免疫応答である。
【0080】
特定の一態様において、「遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/又は遺伝子型P[7]ロタウイルスに特異的な抗体」は、本明細書において言及される場合、遺伝子型P[23]ロタウイルスに特異的な抗体である。
別の好ましい態様において、「遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/又は遺伝子型P[7]ロタウイルスに特異的な抗体」は、本明細書において言及される場合、遺伝子型P[23]ロタウイルスに特異的な抗体及び遺伝子型P[7]ロタウイルスに特異的な抗体を含むか、又はそれである。
【0081】
さらなる態様において、本発明のポリペプチド又は本発明の免疫原性組成物は、動物における、好ましくは、妊娠雌ブタにおける、ロタウイルスCに特異的な抗体の産生を誘導するために投与される。好ましくは、このさらなる態様において、それぞれ、前記本発明のポリペプチドは、特に、配列番号15の配列と少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、ロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片を含む本明細書に記載される本発明のポリペプチドのいずれかであるか、又は前記本発明の免疫原性組成物は、特に、配列番号15の配列と少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、ロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片を含む本明細書に記載される本発明のポリペプチドのいずれかを含む。
【0082】
本発明は、本発明のポリペプチド及び/又は本発明の多量体を生成する方法であって、前記方法が、細胞を、本発明のプラスミドでトランスフェクトするステップを含む、方法をさらに提供する。
さらにまた、本発明のポリペプチド及び/又は本発明の多量体を生成する方法であって、前記方法が、細胞、好ましくは、昆虫細胞を、本発明のバキュロウイルスに感染させるステップを含む、方法が提供される。
【0083】
また、本発明は、本発明の免疫原性組成物を生成する方法であって、方法が、
(a)培養物中の感受性細胞の本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターによる感染を可能にするステップであって、前記ポリペプチドが、前記ベクターによって発現される、ステップ、
(b)その後、特に前記培養細胞の上清中の、前記ポリペプチドを回収するステップであって、好ましくは、細胞デブリが、分離ステップ、好ましくは、少なくとも1つのフィルター、好ましくは、2つのフィルターを通す精密濾過を含む分離ステップを介して、前記ポリペプチドから分離され、少なくとも1つのフィルターが、好ましくは、約1~約20μm及び/若しくは約0.1μm~約4μmの細孔サイズを有する、ステップ、
(c)バイナリーエチレンイミン(BEI)をステップ(b)の混合物に添加することによって、ベクターを不活化するステップ、
(d)チオ硫酸ナトリウムをステップ(c)から得られた混合物に添加することによって、BEIを中和するステップ、並びに
(e)約5kDa~約100kDa、好ましくは、約10kDa~約50kDaの分子量カットオフを有するフィルター膜を有するフィルターを利用する濾過ステップにより液体の部分を混合物から除去することよって、ステップ(d)から得られた混合物中のポリペプチドを濃縮するステップ、並びに
(f)任意に、ステップ(e)の後に残った混合物を、薬学的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、賦形剤、及びそれらの組合せからなる群から選択されるさらなる構成成分と混合するステップ
を含む、方法に関する。
【0084】
前記方法のステップ(a)において、前記細胞は、好ましくは、昆虫細胞であり、前記ベクターは、好ましくは、本発明のバキュロウイルスである。
前記方法のステップ(b)において、前記ポリペプチドは、最も好ましくは、細胞内部からよりもむしろ、前記培養細胞の上清において回収される。
さらにまた、本発明は、本発明の免疫原性組成物、及び本明細書に記載される方法のいずれかにおける前記免疫原性組成物の使用であって、前記免疫原性組成物が、本発明の免疫原性組成物を生成する後述の方法によって得られる、免疫原性組成物及び使用を提供する。
【0085】
また、本発明は、
- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び
- 異種二量体化ドメイン
を含むポリペプチドであって、前記異種二量体化ドメインが、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている、ポリペプチドを提供する。
「二量体化ドメイン」という用語は、本明細書において使用される場合、特に、1つのさらなる二量体化ドメインに特異的に結合するか、又はそれと会合して、例えば、二量体を形成することができるアミノ酸配列に関する。一例において、二量体化ドメインは、同じアミノ酸配列を有する1つの他の二量体化ドメインに結合するか、又はそれぞれ、それとホモ会合して、ホモ二量体を形成することができるアミノ酸配列である。二量体化ドメインは、1つ又は複数のシステイン残基を含有することができ、その結果、ジスルフィド結合が、それぞれ、会合した二量体化ドメインの間で形成され得るか、又は形成された。
【0086】
「異種二量体化ドメイン」は、本文脈において、特に、本明細書において言及されるロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が由来するロタウイルス以外の実体に由来する二量体化ドメインに関する。例えば、異種二量体化ドメインは、ロタウイルス以外のウイルスのゲノムによって、又は好ましくは、真核細胞若しくは原核細胞、特に哺乳動物若しくは鳥類の細胞のゲノムによってコードされる二量体化ドメインである。
好ましくは、異種二量体化ドメインは、腸細胞が、本明細書において言及されるロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が由来するロタウイルスによる感染に感受性である種のゲノムによってコードされる二量体化ドメインである。例えば、ロタウイルスVP8タンパク質の断片が、ブタロタウイルスVP8タンパク質の断片である場合、異種二量体化ドメインは、好ましくは、ブタゲノムによってコードされる二量体化ドメインである。別の例によれば、ロタウイルスVP8タンパク質の断片が、ニワトリロタウイルスVP8タンパク質の断片である場合、異種二量体化ドメインは、好ましくは、ニワトリゲノムによってコードされる二量体化ドメインである。
【0087】
別の好ましい態様によれば、異種二量体化ドメインは、それぞれ、ホモ二量体を形成することができるか、又はそれを形成する。
好ましい一例において、本明細書において言及される異種二量体化ドメインは、コイルドコイルドメイン、特に、ロイシンジッパードメインである。
前記ロイシンジッパードメインは、好ましくは、c-Junロイシンジッパードメイン、例えば、ブタc-Junロイシンジッパードメインである。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は、本開示を説明することを意図するのみである。それらは、決して特許請求の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
融合タンパク質の設計、生成及び試験:
構築物設計:
ロタウイルスA VP4配列は、イノシシ属動物の糞便試料から元は得られたものであり、これは、GenBank配列JX971567.1の最も近くに一致し、P[7]遺伝子型として分類される。本明細書の以下で「AVP8」とも名付けられたVP4アミノ酸57~224(配列番号3)を使用し、これは、8アミノ酸残基が伸長したN末端を有するが、VP8タンパク質のレクチン様ドメインに対応した。リンカー部分は、Gly-Gly-Ser(配列番号9)である。イノシシ属動物IgG Fc配列(配列番号7)は、IgG重鎖定常前駆体(GenBank配列BAM75568.1)のアミノ酸242~470と一致する。昆虫細胞に対してすべてコドン最適化された、AVP8をコードするIDT Gblock、Gly-Gly-Serリンカー、及びイノシシ属動物IgG Fc配列を、受け取り(配列番号17)、本明細書においてAVP8-IgG Fcと名付けられた。AVP8-IgG Fcによってコードされるタンパク質(配列番号12)はまた、本明細書において「AVP8-IgG Fcタンパク質」とも称される。
【0089】
クローニング、発現及び精製:
AVP8-IgG Fcを、TOPOクローニングし、その後、BamHI及びNotI制限部位を使用して、バキュロウイルス移入プラスミドpVL1393に挿入し、次いで、BaculoGoldでSf9細胞に同時トランスフェクトして、組換えバキュロウイルスを作製した。AVP8-IgG Fcタンパク質の生成を、以下の通り行った。3Lのスピナーフラスコ中の1LのSf+細胞に、4DPIで回収された使用済み培地を用いて0.2MOIで感染させ、15,000gで20分遠心分離し、0.2μm濾過した。1mLのMabSelect SuRE LX樹脂スラリー(GE Healthcare、カタログ番号17-5474-01)を添加し、穏やかに撹拌しながら、4℃で終夜インキュベートした。樹脂を、濾過によって取り戻し、4×10mLのGentle結合緩衝液(Pierce、カタログ番号21012)で洗浄し、7×5mLの体積のGentle溶出緩衝液(Pierce、カタログ番号21027)で溶出させた。画分を、一緒にし、1回の緩衝液交換で、3.5LのTBSに対して、4℃で透析した。BCAアッセイ(Thermo Scientific、カタログ番号23227)を行って、濃度(80μg/mL)を決定した。
【0090】
血清学研究:
プロテインA精製されたAVP8-IgG Fcタンパク質を、87.5%の抗原及び12.5%のアジュバントを有するEmulsigen Dで製剤化した。およそ7週齢のブタは、21日後のブーストで、頸部側面においてIMによって2mL用量を受けた。血清試料を、7週間の間、毎週収集した。AVP8-IgG Fcタンパク質でワクチン接種されたブタからの血清を、下記に記載されるようにして(「ELISAのためのプロトコール」)、ELISAによって(
図1)、下記に記載されるようにして(「ウイルス中和アッセイのためのプロトコール」)、ウイルス中和アッセイ(
図2)によって、評価した。無関係のワクチン対照と比較して、AVP8-IgG Fcタンパク質でワクチン接種されたブタからのIgG ELISAの結果は、14日目のピークでSP比の増加を示し、21日目のブースト後に再び上昇した。ウイルス中和力価は、同様に、7日目及び14日目の増加、それに続いて、21日目のブースト後の28日目に2回目のピークを示した。
【0091】
ELISAのためのプロトコール
IgA ELISAのために、培地タンパク質が結合している96ウェルELISAプレートを、1×PBSで1:16に希釈された全ロタウイルス抗原でコーティングした。プレートを、4℃の温度で終夜インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、1×PBSTを使用して洗浄し、次いで、カゼインブロッキング溶液で、37℃で1時間ブロッキングした。洗浄後、ブロッキング緩衝液中で1:40の最終希釈に希釈された100μLの一次抗体を、プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ウェルを、100μlの1:3200希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗イノシシ属動物IgAでコーティングし、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、室温で15分間、3,5,3’,5’-テトラメチルベンジジンで展開し、反応を、450nmでの光学密度(CD)測定の前に、1NのHClで停止した。陽性対照及び陰性対照を含む試料を、二反復で、ウェルにおいて実行し、結果を、(試料-陰性対照)と(陽性対照-陰性対照)の比(S-N)/(P-N)の平均として報告する。
【0092】
IgG ELISAのために、培地タンパク質が結合している96ウェルELISAプレートを、1×PBSで1:8に希釈された全ロタウイルス抗原でコーティングした。プレートを、4℃の温度で終夜インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、1×PBSTを使用して洗浄し、次いで、ブロッティンググレードのブロッキング溶液で、37℃で1時間ブロッキングした。洗浄後、ブロッキング緩衝液中で1:625の最終希釈に希釈された100μLの一次抗体を、プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ウェルを、100μlの1:8000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗イノシシ属動物IgGでコーティングし、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、室温で10分間、3,5,3’,5’-テトラメチルベンジジンで展開し、反応を、450nmでの光学密度(CD)測定の前に、1NのHClで停止した。陽性対照及び陰性対照を含む試料を、二反復で、ウェルにおいて実行し、結果を、(試料-陰性対照)と(陽性対照-陰性対照)の比(S-N)/(P-N)の平均として報告する。
【0093】
ウイルス中和アッセイのためのプロトコール
すべての血清及び乳試料を、56℃で30分間、熱失活させた。試料を、ロタウイルス成長培地(MEM+2.5%のHEPES+0.3%のトリプトースホスフェートブロス+0.02%の酵母+10μg/mLのトリプシン)中、1:40から1:2,560まで連続希釈した。ロタウイルスA分離株(力価7.0log TCID50/mL)を、ロタウイルス成長培地に1:25,000希釈した。合計で200μlの希釈された血清を、200μlの希釈されたウイルスに添加し、混合物を、37℃±5%のCO2で1時間、インキュベートした。成長培地を、MA104細胞が播種された3~4日の96ウェルプレートから、無菌で除去した。インキュベーション後、200μlのウイルス-血清混合物を、細胞培養プレートに移した。細胞を、37℃±5%のCO2で72時間、インキュベートした。ストック及び希釈されたウイルスを、使用の日に滴定して、アッセイにおいて使用される希釈物を確認した。インキュベーション後、上清を廃棄し、プレートを200μL/ウェルの1×PBSで1回洗浄した。固定後、100μL/ウェルの50%/50%のアセトン/メタノールを添加した。プレートを、室温で15分間インキュベートし、風乾し、次いで、100μL/ウェルの1×PBSで再水和した。一次抗体(ウサギ抗ロタウイルスAポリクローナル血清、内部で作製)を、1×PBS中、1:1000希釈した。100μL/ウェルの希釈された一次抗体を添加し、プレートを、37℃±5%のCO2で1時間、インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、100μL/ウェルの1×PBSで2回洗浄した。二次抗体(Jackson ImmunoResearch FITC標識ヤギ抗ウサギIgG カタログ番号111-095-003)を、1×PBS中、1:100希釈した。100μL/ウェルの希釈された二次抗体を添加し、プレートを、37℃±5%のCO2で1時間、インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、100μL/ウェルの1×PBSで2回洗浄した。プレートを、紫外線顕微鏡を使用して、蛍光の存在について読み取った。アッセイは、希釈されたウイルスの力価(Reed-Muench法を使用して作製)が2.8±0.5log TCID50/mLであることが見出された場合に、有効と見なした。加えて、公知の陽性試料及び陰性試料を、対照としてそれぞれのアッセイに含めた。血清力価を、染色が観察されなかったものを最高希釈として報告した。
【0094】
(実施例2)
負荷研究:
この研究の主要な目的は、AVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)を含む本明細書において「IgG:AVP8」とも称されるプロトタイプワクチン及び本明細書において「プラセボ」と称される無関係の対照ワクチンの従来の雌ブタへの投与が、病原性のあるロタウイルスA負荷に対してブタに受動的保護を付与したかを評価することであった。さらにまた、比較のために、本明細書において「市販製品」又は「市販ワクチン」とも称される市販のMLVロタウイルスワクチン(ProSystem(登録商標)Rota、Merck Animal Health)を、研究において使用した。プロトタイプワクチンを、下記のセクション「IgG:AVP8の生成」において記載されるように、感染のために使用される異なる体積及びより長いインキュベーション期間を用いたが、実施例1において上記に記載される生成と同様に生成した。市販製品を、ワクチンProSystem(登録商標)TGE/Rotaについて製造業者によって提供されたラベル説明(投薬量及び指導、並びにイノシシ属動物の経口ワクチン接種のための推奨方法)に従って使用した。
【0095】
合計で16頭の雌ブタを研究に含めた。雌ブタを、下記の表1において記載されるように、3つの処置群及び1つの厳密な対照群に無作為化した。T02及びT04の雌ブタは、3つの部屋の間で混ぜ合わせた。T06及びT07の雌ブタは、2つの別々の部屋に収容した。すべての雌ブタに、表1において列挙される適切な経路によって適切な材料でワクチン接種した。T07の雌ブタは、ワクチン未接種のままであった(厳密な対照)。血清を、ワクチン接種期間全体を通して、定期的に雌ブタから収集し、抗体陽転の証拠についてアッセイした。糞便試料を、分娩前に収集し、RT-qPCRによってスクリーニングして、母獣が分娩前に活発にロタウイルスを排出しなかったことを確認した。全体的な健康観察を、それぞれの雌ブタにおいて、毎日記録した。分娩は、雌ブタが妊娠114日目に達した時まで、自然に起こさせた。この時以後、分娩を誘発した。子ブタを、分娩の時に、試験に登録した。出生時に健康であった子ブタのみをタグ付けし、施設の標準的な操作手順に従って処理し、試験に含めた。ブタが、0~5日齢になったら、それらを出血させ、糞便スワブを収集し、ブタを負荷した(T07を除く)。負荷の時に、ブタに、胃内に5mL用量の重炭酸ナトリウム、次いで、胃内に5mL用量の負荷材料を投与した。負荷期間全体を通して、すべての動物を、腸疾患(下痢、及び挙動の変化)の存在について、毎日モニターした。糞便試料を、負荷期間全体を通して、定期的に収集した。負荷2日後(DPC 2)、それぞれの同腹仔からおよそ3分の1のブタを、安楽死させた。安楽死の後、剖検を行い、ブタを肉眼的病変について評価した。腸切片を、顕微鏡評価及び免疫組織学的評価のために収集した。腸スワブを、RT-qPCR評価のために収集した。DPC 21に、すべての残ったブタを、体重測定し、出血させ、糞便スワブを収集した。試料収集後、ブタを安楽死させた。ブタを肉眼的病変について評価し、腸スワブを収集した。
【0096】
【0097】
研究全体を通して、T07(厳密な対照)からの雌ブタの血清VN力価は、一定のままであったか、又は減少して、曝露の欠如及び有効な研究を示した(ウイルス中和は、実施例1(「ウイルス中和アッセイのためのプロトコール」)において上記に記載されたようにして評価し、結果を
図3に示す)。ワクチン接種段階の間、血清の最高中央値VN力価が、IgG:AVP8(T04)プロトタイプワクチンでワクチン接種された雌ブタにおいて観察された。この群において、分娩6週間前の1用量投与が、D14までにT04(IgG:AVP8)における3/5の動物において力価の4倍以上の増加をもたらした。ブタの負荷の時の前に、T04(IgG:AVP8)における5/5の動物は、力価の4倍以上の増加を有していた。プラセボ群(T02)の雌ブタは、ワクチン接種段階の間に、血清VN力価の有意な増加(<2倍)を有さなかった。T06(市販ワクチン)の雌ブタは、D35まで、血清VN力価の有意な増加(<2倍)を有さなかった。ブタの負荷の時の前に、T06(市販ワクチン)の両雌ブタは、力価の4倍の増加を有していた。負荷材料への側面曝露後、T02(プラセボ)及びT06(市販ワクチン)の雌ブタにおけるVN血清力価が増加した。逆に、T04(IgG:AVP8)の雌ブタにおけるVN血清力価は、一定のままであったか、又は4/5の雌ブタにおいて減少した。初乳及び乳VN力価に関して、T04群(IgG:AVP8)において、VN力価は、分娩時に最も高く、負荷前の試料において減少し、負荷後の試料においてさらに減少した。プラセボ群(T02)において、VN力価は、分娩時及び負荷前に低かったが、負荷材料への側面曝露後に増加した。
【0098】
負荷前のブタ血清におけるVN力価は、T04(IgG:AVP8)のブタの大部分において高く(>1280)、雌ブタからブタへの免疫の受動的移動を示した。逆に、T02(プラセボ)及びT06(市販ワクチン)のブタにおける力価の大部分は、低かった(<1280)。
【0099】
負荷段階全体を通して、最高の死亡数が、死亡したブタの8/57(14.0%)で、T02(プラセボ)において観察された。逆に、T04(IgG:AVP8)において、1/46(2.2%)のみのブタが死亡し、T06(市販ワクチン)において1/22(4.5%)のブタが死亡し、及びT07(厳密な対照)において1/27(3.7%)のブタが死亡した。下痢の臨床徴候は、研究全体を通して、T07(厳密な対照)のブタにおいて観察されなかった。T02(プラセボ)のブタにおける下痢の臨床徴候は、負荷後1日目(DPC1)又は2日目に開始し、DPC10までに大部分の動物において解消された。全体として、下痢の臨床徴候は、研究の間に少なくとも1回、T02(プラセボ)の動物の44/57(77.2%)において観察された。これらの44頭の動物のうち、下痢は、29頭(65.9%)の動物において、重度と見なされた。対照的に、下痢の臨床徴候は、T04(IgG:AVP8)のブタにおいて低減された。群による臨床的下痢の結果の概要について、下記の表2を参照されたい。
【0100】
【0101】
負荷の前に、RT-qPCRによるロタウイルスA RNAの検出はなく、有効な研究を示した。加えて、研究全体を通して、T07(厳密な対照)からの雌ブタ又はブタにおいて、RT-qPCRによるロタウイルスA RNAの検出はなかった。負荷後のブタにおいて、排出は、T02(プラセボ)において最も蔓延していた。大部分のブタにおいて、排出は、DPC1~3に開始し、DPC14まで続いた。最も興味深かったのは、T02(プラセボ)及びT06(市販ワクチン)と比較して、T04(IgG:AVP8)において観察された排出の低減であった。排出のパーセンテージ及び検出されたRNAの量の中央値は両方とも低減され(研究日による糞便における群の中央値logロタウイルスA RNAゲノムコピー(gc)/mLについて、
図4を参照されたい)、試験は、下記に記載されるようにして行った(「ロタA qRT-PCRのためのプロトコール」)。
【0102】
それぞれの群から無作為に選択されたブタのサブセットを、DPC2で安楽死及び剖検した。ブタを、肉眼的腸病変(薄壁、ガス膨張した小腸、純粋な液体含量など)、顕微鏡病変(萎縮腸)、及び免疫組織化学的検査(IHC)によるロタウイルスA特異的染色の存在について評価した。下記の表3は、群による剖検の時に腸病変を有していたブタの数を示す。負荷は、プラセボ群(T02)のブタの84.2%(16/19)が肉眼的病変を有し、その63.2%(12/19)が染色されていたので、成功と見なした。最も興味深かったのは、T04(IgG:AVP8)の1/15のブタのみにおける、動物のロタウイルスA染色の欠如であった。加えて、T04(IgG:AVP8)において、T02(プラセボ)及び市販製品(T06)と比較して、肉眼的病変を有するブタのパーセンテージの低減があった。
【0103】
【0104】
1日当たりの平均体重増加を、生存しているブタについて算出し(kg)、下記の表4に示す。ADWGにおける最高数的利益は、T04(IgG:AVP8)からのブタにおいて観察された。ワクチン接種後のADWGの増加は、T02(プラセボ)と比較して、有意に異なった。
【0105】
【表4】
結論として、IgG:AVP8プロトタイプワクチン(配列番号12のポリペプチドを含む)による分娩6週間及び2週間前での従来の雌ブタのワクチン接種は、雌ブタの血清及び初乳において高い中和抗体力価をもたらす。これらの中和抗体は、ワクチン接種された雌ブタからのブタの血清における高い力価(>1280)の検出によって証拠付けられるように、出生後のブタに受動的に伝達された。ブタにおける高い中和抗体力価の存在は、臨床的保護をもたらす。詳細には、ワクチン接種された雌ブタから生まれたブタは、プラセボ対照及び市販ワクチンから生まれたブタと比較して、ロタウイルスA RNAの糞便排出が低減され、死亡率が低減され、下痢の臨床徴候が低減され、DPC2でロタウイルスAのコロニー形成が低減され、DPC2で肉眼的病変が低減され、ADWGが増加した。
【0106】
ロタA qRT-PCRのためのプロトコール
糞便試料中のロタウイルスA RNAを決定するために、定量的1ステップRT-PCRキット(iTaq Universal One-Step RT-PCRキット;BioRad、カタログ番号1725140)を、アッセイのために使用した。プライマー及びプローブの情報について、下記の表5を参照されたい。
【0107】
【0108】
リアルタイムRT-PCRを、5μlの抽出された総核酸、1μlのそれぞれのプローブ(5μM)、1μlのそれぞれのプライマー(10μM)、10μlの2×RT-PCRミックス、0.5μlのiScript逆転写酵素及び0.5μlのDEPC処理水を含有する20μlの反応物において行った。反応を、以下の条件下、CFX96リアルタイムPCR検出システム(BioRad)を使用して行った:50℃で10分間の最初の逆転写、それに続く95℃で3分間の最初の変性、95℃で15秒間の40サイクルの変性、並びに60℃で45秒間のアニーリング及び伸長。相対定量データを作製するために、2つのロタウイルスA g-ブロックの連続希釈を、それぞれの実行に含めた。等量のg-ブロックのそれぞれを、出発濃度として5.0×107ゲノムコピー/μLを使用して、実行に含めた。光学データを、CFX Managerソフトウェアを使用して解析した。それぞれの決定のために、閾値の線を、サイクル閾値(Ct)決定モードのための回帰設定を使用して、自動で算出した。ベースライン減算を、ベースライン減算モードを使用して、自動で行った。10未満のベースライン最終値を有する曲線を、手動で補正した。
【0109】
IgG:AVP8の生成
5Lのシェーカーフラスコ中、1×106個細胞/mLの適切な濃度の2LのSf+(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda))細胞を、ロタウイルスA VP8コア-イノシシ属動物IgG Fc融合タンパク質(BaculoGold(BG)/pVL1393-AVP8-IgG;1.18×108TCID50/mL)を含有する1.7mLの組換えバキュロウイルスストックに感染させた。シェーカーフラスコを、90rpmの一定の撹拌で、28℃±2℃で5日間、インキュベートした。細胞及び培地を、3×1Lの遠心分離ボトルに無菌で写し、細胞を、10,000gで、4℃で20分間、ペレット化した。得られた上清を、0.2μmフィルター(Thermo Scientific、カタログ番号567-0020)を通過させ、次いで、2.5mLのMabSelect SuRe LXプロテインA樹脂(GE Healthcare カタログ番号17-5474-01)とともに、穏やかな撹拌で、4℃で終夜、インキュベートした。樹脂を、0.2μm濾過(Thermo Scientific、カタログ番号567-0020)によって回収し、次いで、12×10mL体積のGentle Ag/Ab結合緩衝液(Thermo Scientific、カタログ番号21012)で洗浄した。AVP8-IgGを、7×10mL体積のGentle Ag/Ab溶出緩衝液(Thermo Scientific、カタログ番号21027)を使用して、樹脂から溶出させた。AVP8-IgGを、1回の緩衝液交換で、3.5Lの20mMのTris pH7.5、150mMのNaClに対して、透析した。残ったバキュロウイルスを、5mMのBEIで、37℃で24時間、不活化した。得られた材料を、1×PBS(Gibco カタログ番号10010-023)中、70μg/mLの標的濃度に希釈した。希釈された材料を、12.5%のEmulsigen Dを用いて製剤化した。
【0110】
(実施例3)
血清学研究:
この研究の主要な目的は、AVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)を含むプロトタイプワクチン及び本明細書において「プラセボ」と称される対照ワクチンの従来の雌ブタへの投与が、ロタウイルスAに対する血清学的応答を生じたかを評価することであった。本明細書において「IgG-AVP8」とも称されるプロトタイプワクチン(アジュバントとしてEmulsigen D又はCarbopolのいずれかを含む、参照.下記の表7及び7B)を、セクション「ワクチン生成:IgG-AVP8」において下記に記載されるようにして、感染のために使用される異なる体積及びより長いインキュベーション期間を用いたが、実施例1及び2において上記に記載される生成と同様に生成した。
【0111】
合計で20頭の雌ブタを研究に含めた。雌ブタを、下記の表6において記載されるように、4つの処置群に無作為化した。雌ブタを、研究全体を通して、混ぜ合わせた。すべての雌ブタに、表4において列挙されるように、D0及びD21において、筋肉内に適切な材料でワクチン接種した。血清を、研究全体を通して、定期的に雌ブタから収集し、ウイルス中和アッセイによって、抗体陽転の証拠についてアッセイした。全体的な健康観察を、それぞれの雌ブタにおいて、毎日記録した。研究を、D42に終了した。
【0112】
【0113】
研究全体を通して、T06及びT07(プラセボ群)からの雌ブタの血清VN力価は、一定のままであったか、又は減少して、曝露の欠如及び有効な研究を示した(ウイルス中和は、1:40から1:40,960への希釈の増加を評価した改変を伴って、実施例1(「ウイルス中和アッセイのためのプロトコール」)において上記に記載されたようにして評価した)。ワクチン接種段階の間、IgG-AVP8/Emulsigen D(T02)及びIgG-AVP8/Carbopol(T03)プロトタイプワクチンでワクチン接種された雌ブタは、力価が有意に増加した(>4倍)。両群(T02及びT03)について、群平均力価は、1回のワクチン接種後に640を上回り、研究期間全体を通して640を上回ったままであった。対照的に、プラセボ群(T06及びT07)の雌ブタは、研究全体を通して、血清VN力価の有意な増加(<2倍)はなかった。
結論として、IgG-AVP8プロトタイプワクチン(配列番号12のポリペプチドを含む)による分娩6週間及び2週間前での従来の雌ブタのワクチン接種は、雌ブタの血清において高い中和抗体力価をもたらす。
【0114】
ワクチン生成:IgG-AVP8
10LのSartorius Biostat Bガラスジャケット容器中、1.00x106個細胞/mLの8LのSf+細胞を、15mLのBG/pVL1393-AVP8-IgG、1.19x108TCID50/mLで、0.22のMOIで感染させた。バイオリアクターを、100rpmの撹拌及び0.3slpmでスパージされた酸素を用いて、27℃で実行した。容器を、6DPIで回収し、10,000g及び4℃で20分間遠心分離し、上清を0.8/0.2μm濾過した(GE Healthcare、カタログ番号6715-7582)。2750mLの清澄化された上清を、5mMのBEIで、27℃で5日間、不活化した。残ったBEIのチオ硫酸ナトリウムによる中和後、2750mLを、およそ12回、10kDa中空繊維フィルター(GE、カタログ番号UFP-10-C-4MA)を使用して、225mLまで濃縮した。濃度を、255μg/mLであると決定した。
【0115】
【0116】
【0117】
(実施例4)
本研究の主要な目的は、IgG-AVP8(AVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)を含む)でワクチン接種された動物が、AVP8-IgG Fcタンパク質が設計されたP[7]以外のさまざまなG及びP型のさまざまなロタウイルスA血清型/遺伝子型を交差中和することができるかを評価することであった。これは、他の分離株に対して保護的であるAVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)の能力を示すであろう。
簡潔には、IgG-AVP8でワクチン接種されたブタからの熱失活血清を、行A~行Gまでの希釈ブロックにおいて、MEM中、1:200で出発して2倍希釈した。行Hは、血清を含有しなかった。別々の希釈ブロックにおいて、さまざまなG及びP型のロタウイルスAを、欄1~欄11まで、6.0Log10TCID50/mLで開始して、希釈プレートにわたって1.5倍希釈した。欄12は、ウイルスを含有しなかった。対応するウェルからの250μLのウイルス及び250μLの血清を、混ぜ合わせ、37℃で1時間、インキュベートした。1時間のインキュベーション後、100μLのウイルス-血清混合物で、単層のMA104細胞を覆い、37℃で72時間、インキュベートし、IFAによって染色し、ウイルスの存在について読み取った。ウイルスの存在を、プレートにおいて「+」として記録し、ウイルスの欠如を、「0」として記録した。次いで、これらの結果を、表8に移した。
以下の6つのロタウイルスA分離株を、このアッセイで比較した:G9P[7]、G9P[23]、G4P[23]、G3P[7]、G5P[7]、及びG4P[7]。表1の結果は、P型のP[23]がP[7]を交差中和することを示す。P[7]又はP[23]を含むすべてのG型も、中和し、このアッセイにおいて、G型が、ウイルスの中和において重要ではなかったことを示した。
【0118】
【0119】
結論として、IgG-AVP8(AVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)を含む)でワクチン接種された動物は、ロタウイルス遺伝子型P[7]及びP[23]を交差中和するであろう。G型は、ウイルスの中和において重要な役割を果たさなかった。
【0120】
(実施例5)
イノシシ属動物における概念実験の証明:
合計で40頭の動物を、この研究において使用する。ブタを、群あたり10頭のブタで、4つの処置群に無作為化する。ブタを、研究全体を通して、混ぜ合わせる。全体的な健康観察、血清試料のプレスクリーニング及び糞便試料のプレスクリーニングを、処置前に行って、動物の健康を確認し、ロタウイルスAに対するベースライン血清学的応答を決定し、ワクチン接種の前又はその時の活動性ロタウイルスA感染なしを確認する。研究の0(D0)において、動物に、以下の材料で、筋肉内にワクチン接種する:T01:IgG-P[7]AVP8ワクチン(配列番号12のポリペプチドを含む)、T02:IgG-P[13]AVP8ワクチン(配列番号14のポリペプチドを含む)、T03:P[7]AVP8-IgG-P[13]AVP8ワクチン(配列番号16のポリペプチドを含む)、T04:プラセボ。血清試料を、研究の0、7、14、21、28、36、42及び49日目に採取する。すべての動物は、研究のD49において、剖検で、人道的に安楽死させる。血清試料を、ウイルス中和アッセイによって試験して、経時的なワクチンプロトタイプに対する血清学的応答を決定する。T01でワクチン接種された動物は、ロタウイルス遺伝子型P[7]及びP[23]を中和する抗体を有し、T02でワクチン接種された動物は、ロタウイルス遺伝子型P[13]を中和する抗体を有し、T03でワクチン接種された動物は、ロタウイルス遺伝子型P[7]、P[13]及びP[23]を中和する抗体を有する。
【0121】
(実施例6)
SDS PAGE:
DTTあり及びなしのプロテインA精製されたAVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)生成物のSDS-PAGE(
図5A):SDS-PAGE画像のための試料を作製するための方法は、簡潔には、以下の通りであった:バキュロウイルス回収上清を、10mMのBEIで、37℃で36時間、不活化し、次いで中和した。次いで、試料を、プロテインA樹脂を使用して精製した。次いで、すべての試料を、25mMのDTT(最終)又は等体積の水のいずれかを有するNuPAGE 4×LDS試料緩衝液(Invitrogen カタログ番号NP0007)を使用して変性させ、95℃で10分間、加熱した。試料を、4~12%のSDS-PAGEゲル(Invitrogen カタログ番号NP0335BOX)において、180Vで45分間、流し、染色した(eStain L1、GenScript カタログ番号M00548-1;脱染 カタログ番号M00549-1)。
結果として、還元(+DTT(ジチオスレイトール))試料で流したレーンにおいて、主に1つのバンド(単量体AVP8-IgG Fcタンパク質、下記に記載されるウエスタンブロットの結果と併せて考慮された)が見られたことが分かった。非還元試料(-DTT)で流したレーンにおいて、追加のバンドが見られた。追加のバンドは、それぞれがモノマーの倍数である分子量範囲であった。
【0122】
ウエスタンブロット:
抗イノシシ属動物IgG Fc断片のウエスタンブロット(
図5B):バイオリアクターにおいて生成したAVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12))生成物を、BEI添加の前に、1mL試料で回収した。試料を、20,000g及び4℃で5分間、遠心分離し、上清を新しいチューブにデカンテーションし、ペレット及び上清の両方を、-70℃で保管した。ペレット及び上清を解凍し、ペレットを1mLの8Mの尿素に再懸濁させ、次いで、等量のペレット及び上清を、還元条件下(+DTT)、SDS-PAGE上で流し、PVDF膜に移した。ウエスタンブロットを、1:1000希釈のHRPコンジュゲートヤギ抗イノシシ属動物で調べて、イノシシ属動物IgG Fc断片を検出した。
結果として、予想外にも、AVP8-IgG Fcタンパク質は、細胞ペレット試料において見られなかった。代わりに、すべてのAVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)は、有利には、細胞培養上清試料において見出された。
【0123】
(実施例7)
コンセンサス配列の作製:
配列番号4(遺伝子型P[6]ロタウイルスVP8タンパク質に基づく)及び配列番号5(遺伝子型P[13]ロタウイルスVP8タンパク質に基づく)のコンセンサス配列を、以下に記載されるようにして作製した。
【0124】
配列を、NCBI Virus Variationデータベースからの公に利用可能なイノシシ属動物ロタウイルスVP4ヌクレオチド配列、及び内部で誘導したロタウイルス分離株配列からコンパイルした。分離株名称、分離株P型、地理的起源、及び利用可能な場合は分離日についてのメタデータを含む、配列についての追加のメタデータもコンパイルした。ヌクレオチド配列を、タンパク質配列に翻訳し、MUSCLE配列アライメントソフトウェアUPGMB clustering及びデフォルトギャップペナルティパラメーターを使用して、公知のVP8タンパク質と整列させた。整列されなかったVP5アミノ酸をトリミングし、廃棄した。VP8の整列されたタンパク質配列を、系統発生解析のためにMEGA7ソフトウェアにインポートし、近隣結合系統発生再構築を、VP8タンパク質配列に基づいて作製した。最適樹を、系統発生のブートストラップテストを伴うポアソン補正法を使用してコンピュータ処理し(n=100)、全170位置にわたって、部位ごとのアミノ酸置換の単位で、進化距離に等しい枝の長さを用いて一定の縮尺で描いた。ブートストラップクラスター関連が70%よりも高かったノードを有意と見なした。およそ10%の距離及び70%よりも高いブートストラップクラスター関連を有するノードをクラスターとして指定した。大きなクラスターにフィットしない異常配列を、配列品質及びP型の起源について、個々に評価した。疑わしい低い品質の配列を、解析から除去した一方、イノシシ属動物ロタウイルスにおいて稀に観察されるP型からの配列を保持した。コンセンサス配列を作製するために使用されるクラスターを、所望の生成物保護プロファイル、及びインビトロ血清交差中和研究に基づいて選択した。コンセンサス配列を、整列された位置ごとの最大頻度によって作製し、アミノ酸の同等の割合が整列された位置において観察された場合において、アミノ酸残基を、生成物保護プロファイルと併せて、報告された疫学データに基づいて選択した。
【0125】
(実施例8)
負荷研究:
この研究の主要な目的は、AVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)を含む本明細書において「IgG#AVP8」とも称されるプロトタイプワクチン及び本明細書において「プラセボ」と称される無関係の対照ワクチンの従来の母獣への投与が、病原性のあるロタウイルスA負荷に対してブタに受動的保護を付与したかを評価することであった。プロトタイプワクチンを、下記のセクション「IgG#AVP8の生成」において記載されるように、感染のために使用される異なる体積及び異なる精製方法を用いたが、実施例1において上記に記載される生成と同様に生成した。
【0126】
合計で20頭の母獣を研究に含めた。母獣を、下記の表9において記載されるように、2つの処置群及び1つの厳密な対照群に無作為化した。T01及びT03の母獣は、3つの部屋の間で混ぜ合わせた。T07の母獣は、別々の部屋に収容した。すべての母獣に、表9において列挙される適切な経路によって適切な材料でワクチン接種した。T07の母獣は、ワクチン未接種のままであった(厳密な対照)。血清を、ワクチン接種期間全体を通して、定期的に母獣から収集し、抗体陽転の証拠についてアッセイした。糞便試料を、分娩前に収集し、RT-qPCRによってスクリーニングして、母獣が分娩前に活発にロタウイルスを排出しなかったことを確認した。全体的な健康観察を、それぞれの雌ブタにおいて、毎日記録した。分娩は、雌ブタが妊娠114日目に達した時まで、自然に起こさせた。この時以後、分娩を誘発した。子ブタを、分娩の時に、試験に登録した。出生時に健康であった子ブタのみをタグ付けし、施設の標準的な操作手順に従って処理し、試験に含めた。ブタが、1~5日齢になったら、それらを出血させ、糞便スワブを収集し、ブタを負荷した(T07を除く)。負荷の時に、ブタに、胃内に5mL用量の重炭酸ナトリウム、次いで、胃内に1mL用量の負荷材料を投与した。負荷期間全体を通して、すべての動物を、腸疾患(下痢、及び挙動の変化)の存在について、毎日モニターした。糞便試料を、負荷1日後(DPC1)に収集した。DPC2に、T01及びT03のすべてのブタを安楽死させた。腸切片を、顕微鏡評価及び免疫組織学的評価のために収集した。
【0127】
【0128】
研究全体を通して、T07(厳密な対照)からの母獣の血清VN力価は、4倍未満増加して、曝露の欠如及び有効な研究を示した(ウイルス中和は、実施例1(「ウイルス中和アッセイのためのプロトコール」)において上記に記載されたようにして評価し、結果を表10及び
図6に示す。ワクチン接種段階の間、血清の最高平均VN力価は、プロトタイプワクチンIgG#AVP8(T03群)でワクチン接種された母獣において観察された。この群において、分娩6週間前の1用量投与が、D14までにT03(IgG#AVP8)における6/8の動物において力価の4倍以上の増加をもたらした。T01群(プラセボ)の母獣は、ワクチン接種段階の間に、血清VN力価の有意な増加(<2倍)を有さなかった。母獣の初乳VN力価:T03群(IgG#AVP8)の母獣は、T01群(プラセボ)の母獣と比較して、より高い平均VN力価を有していた。
【0129】
【0130】
負荷前のブタ血清におけるVN力価は、T03群(IgG番号AVP8)のブタの大部分において高く(>1280)、母獣からブタへの免疫の受動的移動を示した。逆に、T02(プラセボ)のブタにおける力価の大部分は、低かった(<1280)。
T01群(プラセボ)及びT03群(IgG#AVP8)において、ロタウイルス抗原が、少なくとも1つの腸切片において免疫組織化学的検査(IHC)によって検出され、動物が、負荷の少なくとも1日後に異常な糞便スコアを有していた場合に、ブタは影響を受けたと定義した。頻度分布を、下記の表1に列挙する。このケース定義の使用に基づいて、プロトタイプワクチンIgG#AVP8(T03群)による分娩6週間及び2週間前での母獣のワクチン接種は、異種ロタウイルスA P[7]負荷材料による負荷後に、ブタにおけるロタウイルス関連疾患を防止した;防止割合、0.926、95%信頼区間0.734、0.979。
【0131】
【0132】
結論として、プロトタイプワクチンIgG#AVP8(配列番号12のポリペプチドを含む)による分娩6週間及び2週間前での従来の母獣のワクチン接種は、雌ブタの血清及び初乳において高い中和抗体力価をもたらす。これらの中和抗体は、ワクチン接種された母獣からのブタの血清における高い力価(>1280)の検出によって証拠付けられるように、出生後のブタに受動的に伝達された。ブタにおける高い中和抗体力価の存在は、臨床的保護をもたらす。具体的には、ワクチン接種された母獣から生まれた少数のブタが、プラセボ対照から生まれたイノシシ属動物と比較して、影響を受けたと見なされた。
【0133】
IgG#AVP8の生成
2つの10LのSartorius Biostat Bガラスジャケット容器に、1.00x106個細胞/mLで3LのSf+細胞を播種した。播種3日後、それぞれの容器を、0.1のMOIで感染させ、それぞれの容器の体積を、Ex-cell 420無血清培地(SAFC カタログ番号14420C-1000mL)を使用して、8Lに調整した。バイオリアクターを、100rpmの撹拌で、40%に設定又は40%より上に設定された溶存酸素及び1.3slpmで覆われたCCAを用いて、27℃で実行した。容器を、接種7日後に回収し、液体を10,000g及び4℃で20分間遠心分離し、上清を0.8/0.2μm濾過した(GE Healthcare、カタログ番号6715-7582)。清澄化された上清(8L/容器)を、Sartorius Biostat Bガラスジャケット容器中、5mMのBEIで、37℃で3日間、不活化した。不活化後、残ったBEIを、チオ硫酸ナトリウムで中和した。中和後、7000mLを、およそ10回、10kDa中空繊維フィルター(GE、カタログ番号UFP-10-C-5A)を使用して、700mLまで濃縮した。濃縮材料を、5体積(3500mL)の1×PBSで透析濾過した。ワクチンを、12.5%のEmulsigen D、28%の濃縮材料、及び59.5%の1×PBS(体積:体積)を用いて製剤化した。
【0134】
(実施例9)
イノシシ属動物における概念実験の証明:
合計で20頭の動物を、この研究において使用する。ブタを、群あたり10頭のブタで、2つの処置群に無作為化する。ブタを、研究全体を通して、混ぜ合わせる。全体的な健康観察、血清試料のプレスクリーニング及び糞便試料のプレスクリーニングを、処置前に行って、動物の健康を確認し、ロタウイルスCに対するベースライン血清学的応答を決定し、ワクチン接種の前又はその時の活動性ロタウイルスC感染なしを確認する。研究の0日目(D0)及びD28において、動物に、以下の材料で、筋肉内にワクチン接種する:T01:IgG-CVP8ワクチン(配列番号15のポリペプチドを含む)、T02:プラセボ。血清試料を、研究の0、7、14、21、28、36及び42日目に採取する。すべての動物は、研究のD42において、剖検で、人道的に安楽死させる。血清試料を、ELISAによって試験して、経時的なワクチンプロトタイプに対する血清学的応答を決定する。T01でワクチン接種された動物は、T02でワクチン接種された動物よりも、より高い平均レベルのロタウイルスCに対する抗体を有しており、これは、力価の増加は有していない。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【
図1】ブタロタウイルスAに対する、Emulsigen Dを用いて製剤化されたAVP8-IgG Fcタンパク質(ラベルに「AVP8-IgG」と記載)又はプラセボ(「無関係対照」)のいずれかでワクチン接種されたブタの血清IgG応答を示す図である。
【
図2】Emulsigen Dを用いて製剤化されたAVP8-IgG Fcタンパク質(ラベルに「AVP8-IgG」と記載)又はプラセボ(「無関係対照」でワクチン接種されたブタの試料における、ブタロタウイルスAウイルスを中和することができる抗体を検出及び定量化するために実施されたVN(ウイルス中和)アッセイの結果を示す図である。
【
図3】群及び研究日による雌ブタ血清におけるロタウイルスに対する平均VN力価を示す図である。図中、研究日のD0及びD28は、「分娩6週間前及び2週間前」の時点(即ち、治験薬が、それぞれ、T02及びT04研究群に投与された場合)を表し、研究日のD7、D28及びD35は、「分娩5週間前、2週間前及び1週間前」の時点(即ち、市販ワクチンがT06に投与された場合)を表す。
【
図4】研究日による糞便における群の中央値logロタウイルスA RNAゲノムコピー(gc)/mLを示す図である。
【
図5】A)ジチオスレイトールで還元されている(「+DTT」)か、又は還元されていない(「-DTT」)、プロテインA精製されたAVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)生成物試料のSDS-PAGEを示す図である;B)AVP8-IgG Fcタンパク質(配列番号12)バイオリアクター生成物のウエスタンブロットを示す図であって、図中、試料は、遠心分離されて、細胞ペレット画分(「ペレット」)及び上清画分(「上清」)に分離され、これを、凍結-解凍プロセス後に、還元条件下(+DTT)、SDS-PAGE上に流し、PVDF膜に移し、HRPコンジュゲートヤギ抗イノシシ属動物で調べて、イノシシ属動物IgG Fc断片を検出した。
【
図6】群及び研究日による雌ブタ血清におけるロタウイルスに対する平均VN力価を示す図である。図中、研究日のD0及びD28は、「分娩6週間前及び2週間前」の時点(即ち、治験薬が、それぞれ、T01及びT03研究群に投与された場合)を表す。
【0136】
配列表/起源及び地理的起源(適用可能な場合)において:
配列番号1は、米国ノースカロライナの農場が起源の(遺伝子型P[7])ロタウイルスVP8タンパク質の配列に相当する。
配列番号2は、米国ノースカロライナの農場が起源の(遺伝子型P[7])ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメインの配列に相当する。
配列番号3は、米国ノースカロライナの農場が起源の(遺伝子型P[7])ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片の配列に相当する。
配列番号4は、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片の配列、即ち、ロタウイルスVP8タンパク質(遺伝子型P[6]に基づく)の一部分のコンセンサス配列に相当する。
【0137】
配列番号5は、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片の配列、即ち、ロタウイルスVP8タンパク質(遺伝子型P[13]に基づく)の免疫原性断片のコンセンサス配列の一部分のコンセンサス配列に相当する。
配列番号6は、ロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片の配列に相当する。
配列番号7は、イノシシ属動物IgG Fc断片の配列に相当する。
配列番号8は、モルモットIgG Fc断片の配列に相当する。
配列番号9は、リンカー部分の配列に相当する。
【0138】
配列番号10は、リンカー部分の配列に相当する。
配列番号11は、リンカー部分の配列に相当する。
配列番号12は、配列番号3、配列番号9及び配列番号7の配列を含むポリペプチド(融合タンパク質)の配列に相当する。
配列番号13は、配列番号4、配列番号9及び配列番号7の配列を含むポリペプチド(融合タンパク質)の配列に相当する。
配列番号14は、配列番号5、配列番号9及び配列番号7の配列を含むポリペプチド(融合タンパク質)の配列に相当する。
【0139】
配列番号15は、配列番号6、配列番号9及び配列番号7の配列を含むポリペプチド(融合タンパク質)の配列に相当する。
配列番号16は、配列番号3、配列番号9、配列番号7、配列番号10及び配列番号5の配列を含むポリペプチド(融合タンパク質)の配列に相当する。
配列番号17は、配列番号12のポリペプチド(融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドの配列に相当する。
配列番号18は、配列番号13のポリペプチド(融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドの配列に相当する。
配列番号19は、配列番号14のポリペプチド(融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドの配列に相当する。
配列番号20は、配列番号15のポリペプチド(融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドの配列に相当する。
配列番号21は、配列番号16のポリペプチド(融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドの配列に相当する。
配列番号22~25:プライマー及びプローブ配列(表5)。
【0140】
以下の項も本明細書に開示する。したがって、本開示は、以下の項を特色とする態様をさらに含む。
1.- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び
- 免疫グロブリンFc断片
を含むポリペプチド。
2.前記免疫グロブリンFc断片が、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されているか、又は
前記免疫グロブリンFc断片が、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端に連結されている、
項1に記載のポリペプチド。
3.前記免疫グロブリンFc断片が、リンカー部分を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されているか、又は
前記免疫グロブリンFc断片が、リンカー部分を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端に連結されている、
項1又は2に記載のポリペプチド。
4.前記免疫グロブリンFc断片が、前記免疫グロブリンFc断片のN末端アミノ酸残基と前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されているか、又は
前記免疫グロブリンFc断片が、前記免疫グロブリンFc断片のC末端アミノ酸残基と前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端に連結されている、
項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
5.前記免疫グロブリンFc断片が、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている、項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0141】
6.前記免疫グロブリンFc断片が、リンカー部分を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されているか、又は
前記免疫グロブリンFc断片が、前記免疫グロブリンFc断片のN末端アミノ酸残基と前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている、
項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
7.前記ポリペプチドが、融合タンパク質である、項1~6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
8.前記ポリペプチドが、式x-y-z(式中、
xは、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片からなり、
yは、リンカー部分であり、
zは、免疫グロブリンFc断片である)
の融合タンパク質である、ポリペプチド、特に、項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
9.前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が投与される対象におけるロタウイルスに対する免疫応答を誘導することができる、項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
10.前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、50~200、好ましくは、140~190アミノ酸残基の長さである、項1~9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0142】
11.前記ロタウイルスが、ブタロタウイルスである、項1~10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
12.前記ロタウイルスが、ロタウイルスA及びロタウイルスCからなる群から選択される、項1~11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
13.前記ロタウイルスが、ロタウイルスAである、項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
14.前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメインを含む、項1~13のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0143】
15.前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、ロタウイルスVP8タンパク質のN末端が伸長したレクチン様ドメインであり、N末端伸長が、1~20アミノ酸残基、好ましくは、5~15アミノ酸残基の長さである、項1~14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
16.ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメインが、ロタウイルスVP8タンパク質のアミノ酸残基65~224のアミノ酸配列からなる、項14又は15に記載のポリペプチド。
17.前記N末端伸長のアミノ酸配列が、ロタウイルスVP8タンパク質のアミノ酸配列中のレクチン様ドメインのN末端アミノ酸残基に隣接している個々の長さのアミノ酸配列である、項15又は16に記載のポリペプチド。
18.前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、
ロタウイルスVP8タンパク質の、
アミノ酸残基60~224、アミノ酸残基59~224、アミノ酸残基58~224、アミノ酸残基57~224、アミノ酸残基56~224、アミノ酸残基55~224、アミノ酸残基54~224、アミノ酸残基53~224、アミノ酸残基52~224、アミノ酸残基51~224、アミノ酸残基50~224、又はアミノ酸残基49~224
のアミノ酸配列からなる、項1~17のいずれか1項に記載のポリペプチド。
19.前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、ロタウイルスVP8タンパク質のアミノ酸残基57~224のアミノ酸配列からなる、項1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0144】
20.前記アミノ酸残基の番号付けが、野生型ロタウイルスVP8タンパク質、特に野生型ロタウイルスA VP8タンパク質のアミノ酸配列を参照しており、前記野生型ロタウイルスVP8が、好ましくは、配列番号1に示されるタンパク質である、項16~19のいずれか1項に記載のポリペプチド。
21.前記ロタウイルスが、遺伝子型P[7]ロタウイルス、遺伝子型P[6]ロタウイルス及び遺伝子型P[13]ロタウイルスからなる群から選択される、項1~20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
22.ロタウイルスVP8タンパク質が、配列番号1の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、若しくはさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、項1~21のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0145】
23.ロタウイルスVP8タンパク質のレクチン様ドメインが、配列番号2の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、項14~22のいずれか1項に記載のポリペプチド。
24.ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、配列番号3の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、項1~23のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0146】
25. ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、ロタウイルスVP8タンパク質の一部分、特に、ロタウイルスA VP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列からなるか、又はそれであり、
前記ロタウイルスVP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列が、好ましくは、
- ロタウイルスVP8タンパク質の一部分をコードする複数のヌクレオチド配列をアミノ酸配列に翻訳するステップ、
- 好ましくは、MUSCLE配列アライメントソフトウェアUPGMB clustering及びデフォルトギャップペナルティパラメーターを使用することによって、前記アミノ酸配列を公知のロタウイルスVP8タンパク質と整列させるステップ、
- 前記整列された配列を系統発生解析に付し、ロタウイルスVP8タンパク質配列に基づく近隣結合系統発生再構築を作製するステップ、特に、前記整列されたアミノ酸配列を、系統発生解析のためのMEGA7ソフトウェアにインポートし、ロタウイルスVP8タンパク質配列に基づいて近隣結合系統発生再構築を作製するステップ、
- 系統発生のブートストラップテストを伴うポアソン補正法を使用して最適樹を計算するステップ(n=100)、
- 全170位置にわたって、部位ごとのアミノ酸置換の単位で、進化距離に等しい枝の長さを用いて一定の縮尺で最適樹を描くステップ、
- ブートストラップクラスター関連が70%よりも高いノードを有意として見なすステップ、
- およそ10%の距離及び70%よりも高いブートストラップクラスター関連を有するノードをクラスターとして指定するステップ、並びに
- クラスターを選択し、クラスター内の整列された位置ごとの最大頻度を特定することによって、コンセンサス配列を作製するステップ、並びに
- 任意に、アミノ酸の同等の割合が整列された位置において観察される場合において、事前に定義された生成物保護プロファイルと併せて、報告された疫学データに基づいて、アミノ酸残基を選択するステップ
を含む、方法によって得られ得る、
項1~24のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0147】
26.ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、項1~25のいずれか1項に記載のポリペプチド。
27.前記ロタウイルスが、ロタウイルスCである、項1~26のいずれか1項に記載のポリペプチド。
28.ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、配列番号6の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、項1~27に記載のポリペプチド。
29.前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、
- 項9~24のいずれか1項若しくは複数に規定される、ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片、又は
- 項9~13、25及び26のいずれか1項に規定される、ロタウイルスVP8タンパク質の一部分、特に、ロタウイルスA VP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列、又は
- 項9~12、27及び28のいずれか1項に規定される、ロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片
からなるか、或いはそれである、項1~28のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0148】
30.ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、項1~29のいずれか1項に記載のポリペプチド。
31.前記免疫グロブリンFc断片が、少なくとも220アミノ酸残基の長さ、好ましくは、220~250アミノ酸残基の長さであり、及び/又は
免疫グロブリンFc断片が、グリコシル化されていない、
項1~30のいずれか1項に記載のポリペプチド。
32.前記免疫グロブリンFc断片が、重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)、並びに任意に、免疫グロブリンのヒンジ領域又はヒンジ領域の一部を含むか、又はそれからなる、項1~31のいずれか1項に記載のポリペプチド。
33.前記免疫グロブリンが、IgG、IgA、IgD、IgE及びIgMからなる群から選択される、項1~32のいずれか1項に記載のポリペプチド。
34.前記免疫グロブリンFc断片が、腸細胞が、ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が由来するロタウイルスによる感染に感受性である種のゲノムによってコードされる免疫グロブリンFc断片である、項1~33のいずれか1項に記載のポリペプチド。
35.前記免疫グロブリンFc断片が、イノシシ属動物IgG Fc断片である、項1~34のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0149】
36.前記免疫グロブリンFc断片が、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、若しくは特に、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、項1~35のいずれか1項に記載のポリペプチド。
37.前記リンカー部分が、1~50アミノ酸残基の長さであるアミノ酸配列である、項3~36のいずれか1項に記載のポリペプチド。
38.前記リンカー部分が、配列番号9、配列番号10及び配列番号11からなる群から選択される配列と、少なくとも66%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、若しくは特に100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、項3~37のいずれか1項に記載のポリペプチド。
39.前記ポリペプチドが、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端アミノ酸残基に隣接しているN末端メチオニン残基を有する、項5~38のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0150】
40.前記ポリペプチドが、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されているロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片を含む、項5~39のいずれか1項に記載のポリペプチド。
41. - ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片(1)、
- 免疫グロブリンFc断片、及び
- ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片(2)
を含むポリペプチド、特に、項1~40のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、
前記免疫グロブリンFc断片が、前記免疫原性断片(1)のC末端に連結され、
前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片(2)が、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されている、
ポリペプチド。
【0151】
42.前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、
- 項9~24のいずれか1項若しくは複数に規定される、ロタウイルスA VP8タンパク質の免疫原性断片、又は
- 項9~13、25及び26のいずれか1項若しくは複数に規定される、ロタウイルスVP8タンパク質の一部分、特に、ロタウイルスA VP8タンパク質の一部分のコンセンサス配列、又は
- 項9~12、27及び28のいずれか1項若しくは複数に規定される、ロタウイルスC VP8タンパク質の免疫原性断片
からなるか、或いはそれである、項40又は41に記載のポリペプチド。
43.前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、配列番号2~6からなる群から選択される配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、若しくはさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、及び/或いは
前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、C末端が前記免疫グロブリンFc断片に連結されているロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片とは異なる、項40~42のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0152】
44.前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、リンカー部分を介して、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されており、前記リンカー部分が、好ましくは、項37若しくは38に規定されるリンカー部分であり、又は
前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片のN末端アミノ酸残基と前記免疫グロブリンFc断片のC末端アミノ酸残基との間のペプチド結合を介して、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されている、
項40~43のいずれか1項に記載のポリペプチド。
45.前記ポリペプチドが、
- ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、特に、項9~30のいずれか1項又は複数に規定されるロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、
- 前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のN末端アミノ酸残基に隣接しているN末端メチオニン残基、及び
- 免疫グロブリンFc断片、特に、項31~36のいずれか1項又は複数の規定される免疫グロブリンFc断片
であって、
前記免疫グロブリンFc断片が、特に、リンカー部分を介して、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されており、前記リンカー部分が、好ましくは、項37又は38に規定されるリンカー部分である、免疫グロブリンFc断片、並びに
- 任意に、特に、リンカー部分を介して、前記免疫グロブリンFc断片のC末端に連結されたロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片であって、前記ロタウイルスVP8タンパク質のさらなる免疫原性断片が、好ましくは、項41~44のいずれか1項又は複数に規定されるさらなる免疫原性断片であり、前記リンカー部分が、好ましくは、項37又は38に規定されるリンカー部分である、さらなる免疫原性断片
からなる、項1~44のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0153】
46.前記ポリペプチドが、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、若しくは特に、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるタンパク質である、項1~45のいずれか1項に記載のポリペプチド。
47.前記ポリペプチドが、組換えタンパク質、特に、組換えバキュロウイルス発現タンパク質である、項1~46のいずれか1項に記載のポリペプチド。
48.前記ポリペプチドが、第2の同一のポリペプチドとホモ二量体を形成する、項1~47のいずれか1項に記載のポリペプチド。
49.項1~48のいずれか1項に記載の複数のポリペプチドを含むか、又はそれから構成される多量体であって、前記多量体が、好ましくは、項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチドと第2の同一のポリペプチドとによって形成されるホモ二量体である、多量体。
【0154】
50.項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド及び/又は項49に記載の多量体を含む免疫原性組成物。
51.免疫原性組成物が、薬学的に又は獣医学的に許容される担体又は賦形剤をさらに含む、項50に記載の免疫原性組成物。
52.免疫原性組成物が、アジュバントをさらに含む、項50又は51に記載の免疫原性組成物。
53. - 項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド及び/又は項49に記載の多量体、並びに
- 薬学的に又は獣医学的に許容される担体又は賦形剤、並びに、
- 任意に、アジュバント
を含むか、又はそれからなる免疫原性組成物。
54.アジュバントが、乳化された水中油型アジュバントである、項52又は53に記載の免疫原性組成物。
55.アジュバントが、カルボマーである、項52又は53に記載の免疫原性組成物。
【0155】
56.項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
57.前記ポリヌクレオチドが、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20及び配列番号21からなる群から選択される配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、又は特に、100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項56に記載のポリヌクレオチド。
58.項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは、発現ベクター。
59.項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含むプラスミド、好ましくは、発現ベクターを含む細胞。
【0156】
60.項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含有するバキュロウイルス。
61.項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含有するバキュロウイルスを含む細胞、好ましくは、昆虫細胞。
62.医薬、好ましくは、ワクチンの調製のための、
- 項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド、
- 項49に記載の多量体、
- 項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物、
- 項56若しくは57に記載のポリヌクレオチド、
- 項58に記載のプラスミド、
- 項60に記載のバキュロウイルス、及び/又は
- 項59若しくは61に記載の細胞
の使用。
63.医薬として使用するための、項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
64.ワクチンとして使用するための、項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【0157】
65.対象におけるロタウイルスに対する免疫応答を誘導するための方法において使用するための、項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
66.対象におけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する方法において使用するための、或いは対象におけるロタウイルスによる感染を処置又は防止する方法において使用するための、
項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
67.対象が、哺乳動物又は鳥類であり、鳥類が、好ましくは、ニワトリである、項65又は66に記載のポリペプチド又は免疫原性組成物。
68.対象が、哺乳動物であり、哺乳動物が、好ましくは、イノシシ属動物又はウシ亜科動物である、項65~67のいずれか1項に記載のポリペプチド又は免疫原性組成物。
69.対象が、ブタであり、ブタが、好ましくは、子ブタ又は雌ブタである、項65~68のいずれか1項に記載のポリペプチド又は免疫原性組成物。
【0158】
70.対象が、妊娠雌ブタである、項65に記載のポリペプチド又は免疫原性組成物。
71.対象が、子ブタである、項66に記載のポリペプチド又は免疫原性組成物。
72.子ブタにおけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する方法において使用するための、項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物であって、
子ブタが、免疫原性組成物が投与された雌ブタによって授乳される、ポリペプチド又は免疫原性組成物。
73.免疫原性組成物が投与された前記雌ブタが、免疫原性組成物が、前記雌ブタが妊娠している、特に、前記子ブタを妊娠している間に投与された雌ブタである、項72に記載のポリペプチド又は免疫原性組成物。
74.ロタウイルス感染の処置又は防止、ロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出の低減、防止又は処置、或いはロタウイルス感染によって引き起こされる疾患の防止又は処置のための方法であって、項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
75.雌ブタにおけるロタウイルスに特異的な抗体の産生を誘導するための方法であって、前記方法が、項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を前記雌ブタに投与するステップを含む、方法。
【0159】
76.子ブタにおけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減又は防止する方法であって、
前記方法が、
- 項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を、雌ブタに投与するステップ、及び
- 前記子ブタが、前記雌ブタによって授乳されるステップ
を含む、方法。
77.前記雌ブタが、妊娠している、特に、前記子ブタを妊娠している雌ブタである、項76に記載の方法。
78. - 項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を、前記子ブタを妊娠している雌ブタに投与するステップ、
- 前記雌ブタに、前記子ブタを出産させるステップ、及び
- 前記子ブタが、前記雌ブタによって授乳されるステップ
を含む、項76又は77に記載の方法。
79.子ブタにおけるロタウイルス感染によって引き起こされる1つ若しくは複数の臨床徴候、死亡率若しくは糞便排出を低減する方法であって、子ブタが、項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド又は項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物が投与された雌ブタによって授乳される、方法。
【0160】
80.前記1つ又は複数の臨床徴候が、
- 下痢、
- ロタウイルスコロニー形成、
- 病変、特に、肉眼的病変、
- 1日当たりの平均体重増加の減少、及び
- 胃腸炎
からなる群から選択される、項66~73のいずれか1項に記載のポリペプチド若しくは免疫原性組成物又は項74~79のいずれか1項に記載の方法。
81.前記ロタウイルスコロニー形成が、腸のロタウイルスコロニー形成であり、及び/又は前記病変が、腸病変である、項80に記載のポリペプチド若しくは免疫原性組成物又は項80に記載の方法。
【0161】
82. - 前記ロタウイルス感染が、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染である、
- 前記ロタウイルスによる感染が、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスによる感染である、
- 前記ロタウイルスに対する免疫応答が、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスに対する免疫応答である、又は
- 前記ロタウイルスに特異的な抗体が、遺伝子型P[23]ロタウイルス及び/若しくは遺伝子型P[7]ロタウイルスに特異的な抗体である、
項65~73、80及び81のいずれか1項に記載のポリペプチド若しくは免疫原性組成物又は項74~81のいずれか1項に記載の方法。
【0162】
83.前記ポリペプチドが、遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片を含み、前記ポリペプチドが、好ましくは、項21~26及び29~48のいずれか1項に規定されるポリペプチドである、項82に記載のポリペプチド。
84.免疫原性組成物が、項21~26及び29~48のいずれか1項に規定されるポリペプチドを含み、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片である、項82に記載の免疫原性組成物又は方法。
【0163】
85.前記遺伝子型P[7]ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片が、配列番号3の配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、又はさらにより好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、項83に記載のポリペプチド又は項84に記載の免疫原性組成物若しくは方法。
86.項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド及び/又は項49に記載の多量体を生成する方法であって、細胞を項58に記載のプラスミドでトランスフェクトするステップを含む、方法。
87.項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチド及び/又は項49に記載の多量体を生成する方法であって、細胞、好ましくは、昆虫細胞を、項60に記載のバキュロウイルスに感染させるステップを含む、方法。
【0164】
88.項50~55のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を生成する方法であって、方法が、
(a)培養物中の感受性細胞の項1~48のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターによる感染を可能にするステップであって、前記ポリペプチドが、前記ベクターによって発現される、ステップ、
(b)その後、特に細胞培養上清中の、前記ポリペプチドを回収するステップであって、好ましくは、細胞デブリが、分離ステップ、好ましくは、少なくとも1つのフィルター、好ましくは、2つのフィルターを通す精密濾過を含む分離ステップを介して、前記ポリペプチドから分離され、少なくとも1つのフィルターが、好ましくは、約1~約20μm及び/若しくは約0.1μm~約4μmの細孔サイズを有する、ステップ、
(c)バイナリーエチレンイミン(BEI)をステップ(b)の混合物に添加することによって、ベクターを不活化するステップ、
(d)チオ硫酸ナトリウムをステップ(c)から得られた混合物に添加することによって、BEIを中和するステップ、並びに
(e)約5kDa~約100kDa、好ましくは、約10kDa~約50kDaの分子量カットオフを有するフィルター膜を有するフィルターを利用する濾過ステップにより液体の部分を混合物から除去することよって、ステップ(d)から得られた混合物中のポリペプチドを濃縮するステップ、並びに
(f)任意に、ステップ(e)の後に残った混合物を、薬学的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、賦形剤、及びそれらの組合せからなる群から選択されるさらなる構成成分と混合するステップ
を含む、方法。
89.免疫原性組成物が、項88に記載の方法によって得られ得る、項50~55、63~73及び80~85のいずれか1項に規定される免疫原性組成物、項62に記載の使用、又は項74~82、84及び85のいずれか1項に記載の方法。
【0165】
90. - ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片、及び
- 異種二量体化ドメイン
を含むポリペプチドであって、前記異種二量体化ドメインが、前記ロタウイルスVP8タンパク質の免疫原性断片のC末端に連結されている、ポリペプチド。
91.前記異種二量体化ドメインが、コイルドコイルドメイン、特に、ロイシンジッパーである、項90に記載のポリペプチド。
【配列表】
【国際調査報告】