(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】皮膚筋炎を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20231016BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231016BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231016BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20231016BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231016BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231016BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
A61K38/16
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/46
A61P21/00
A61P29/00
A61M5/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520448
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 US2021053540
(87)【国際公開番号】W WO2022076388
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タンブリーニ, ポール ピー.
【テーマコード(参考)】
4C066
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066DD08
4C066DD12
4C066EE06
4C066EE14
4C066FF05
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA94
4C084ZB11
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、二重特異性融合タンパク質を含む組成物を使用して、皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象を治療する方法を提供する。この組成物は、ウェアラブル注射器などの医療装置を使用して投与され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象を治療する方法であって、治療有効量の、配列番号1の配列を有する融合タンパク質と、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象を治療するための医療装置であって、配列番号1の融合タンパク質と、薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物を含む医療装置。
【請求項3】
オートインジェクター又はプレフィルドシリンジである、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記プレフィルドシリンジは、マルチチャンバー型プレフィルドシリンジ又は凍結乾燥シリンジである、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
ウェアラブル装置である、請求項2に記載の医療装置。
【請求項6】
治療用キットであって、
(a)ラベルを含む容器;及び
(b)配列番号1の融合タンパク質と、薬学的に許容し得る担体とを含む組成物
を含み、前記ラベルは、前記組成物が、皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象に投与されるべきであることを示す、治療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年10月5日に出願された米国仮特許出願第63/087,577号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
皮膚筋炎は、40~60歳の成人及び5~15歳の子供で最もよく見られる稀な炎症性疾患である。皮膚筋炎の主な症状は、躯幹及び躯幹に最も近い筋肉に影響を与えることが多い筋力低下である。罹患した筋肉は、こわばり、痛く且つ/又は圧痛がある場合があり、最終的に変性及び筋肉消耗(萎縮)の徴候を示し得る。筋力低下及び変性は、典型的には、進行し、腕を上げること、階段を上ること又は更衣動作などのある種の行為を実施することが徐々にできなくなることに至る場合がある。皮膚筋炎を有する個人は、場合により筋力低下に先行する可能性がある特徴的な皮膚変化も呈する。これらの特徴的な皮膚変化は、最大で40%の人々において疾患発症時の皮膚筋炎の唯一の徴候であり得る。皮膚異常は、典型的には、斑状であり、色が赤紫であり、且つ痒み又は痛みがある場合がある、顔、眼瞼、胸部、背中、指関節、膝又は肘の特有の皮膚発疹を含む。皮膚筋炎の他の症状には、筋痛、筋圧痛、嚥下困難、呼吸障害、皮下の硬いカルシウム沈着物、疲労、意図的でない体重減少及び発熱が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
皮膚筋炎の治療法は、存在せず、治療は、症状を改善することに焦点を合わせている。皮膚筋炎と診断された対象を治療するために、副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬及び抗マラリア薬が使用されている。しかし、これらの薬剤は、特に高用量において及び/又は長期間にわたって投与された場合、重篤な有害作用を有し得る。したがって、皮膚筋炎を治療するための新規の治療法の必要性が存在する。
【0004】
本発明は、補体成分C5(C5)及びヒト血清アルブミン(HSA)に結合する二重特異性融合タンパク質を含有する組成物を投与することにより、皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象(例えば、ヒト対象)を治療する方法を提供する。二重特異性融合タンパク質は、医療装置を使用して投与することができる。したがって、本発明は、二重特異性融合タンパク質を含有する組成物を収容する医療装置も特徴とする。この医療装置は、あらゆる好適な経路により、例えば皮下注射により、組成物を対象に投与するために使用され得る。
【0005】
第1の態様では、本発明は、治療有効量の、配列番号1の配列を有する融合タンパク質と、薬学的に許容し得る担体とを含有する医薬組成物を対象に投与することにより、皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象を治療する方法を提供する。別の態様では、本発明は、皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象を治療するための医療装置であって、配列番号1の融合タンパク質(例えば、治療有効量の融合タンパク質)と、薬学的に許容し得る担体とを含有する医薬組成物とを収容する医療装置を提供する。いくつかの実施形態では、装置は、オートインジェクター又はプレフィルドシリンジである。いくつかの実施形態は、プレフィルドシリンジは、マルチチャンバー型プレフィルドシリンジ又は凍結乾燥(lyo)シリンジ(すなわち本明細書に記載の凍結乾燥形態の融合タンパク質を収容するもの)である。いくつかの実施形態では、装置は、ウェアラブル装置(例えば、ウェアラブル注射器)である。
【0006】
別の態様では、本発明は、治療用キットであって、(a)ラベルを含む容器;及び(b)配列番号1の融合タンパク質(例えば、治療有効量の融合タンパク質)と、薬学的に許容し得る担体とを含有する組成物を含み、ラベルは、組成物が、皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象に投与されるべきであることを示す、治療用キットを提供する。
【0007】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、皮膚筋炎は、若年性皮膚筋炎である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、皮膚筋炎は、成人型皮膚筋炎である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、皮膚筋炎は、筋無症候性皮膚筋炎である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、皮膚筋炎は、癌(悪性腫瘍随伴皮膚筋炎)と関連する。
【0008】
本明細書に記載の融合タンパク質は、いくつかの利点を提供する。例えば、本明細書に記載の抗HSA VHH-抗C5 VHH融合タンパク質の治療的使用は、いくつかの利点を提供する。抗HSA VHHドメインは、HSA結合部分を含まない治療薬と比較した場合に改善された安定性及びより長い半減期を有する融合タンパク質を提供する。さらに、この融合タンパク質は、2つのVHHドメインで構成されるため、VHドメインとVLドメインとの両方を含む通常の四鎖抗体よりもかなり小さい(VHHドメインは、通常のIgGのおよそ10分の1の大きさのみである)。小さいサイズにより、通常の四鎖抗体及びその抗原結合断片よりも高い組織への浸透が可能になり、またVHHドメインは、通常の四鎖抗体及びその抗原結合断片が到達できない標的及びエピトープに到達できることが公知である。さらに、VHHドメインは、高度に溶解性であり、凝集する傾向を有しない。VHHドメインは、熱、pH、プロテアーゼ及び他の変性薬剤又は条件に対しても高度に安定である。したがって、本明細書に記載の融合タンパク質は、通常の四鎖抗体又はその抗原結合断片よりも高い用量で投与され得る。最後に、抗HSA VHH-抗C5 VHH融合タンパク質は、補体経路における特定のタンパク質を標的にする。したがって、これは、皮膚筋炎を有する対象を治療するために、皮膚筋炎を治療するために現在使用されている抗炎症及び免疫抑制剤よりも高用量において、長時間にわたって及び/又は少ない有害作用を伴って使用することができる。
【0009】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0010】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下で定義する。本明細書で定義された用語は、本発明に関連する分野の技術者によって一般に理解される通りの意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図されず、その具体例を例示のために使用することができる一般分類を含む。本明細書の用語法は、本発明の具体的実施形態を説明するために使用されるが、その利用は、特許請求の範囲で概説されるものを除いて、本発明を限定しない。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、記載される値の上下10%以内である値を指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、ある範囲の値で提供されるあらゆる値は、上限と下限との両方及び上限と下限との中に含まれるあらゆる値を含む。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「結合ドメイン」は、抗原と相互作用するアミノ酸残基を含むタンパク質又は抗体の部分を指す。結合ドメインには、限定されないが、抗体(例えば、全長抗体)並びにその抗原結合部分が含まれる。結合ドメインは、抗原に対する特異性及び親和性を結合剤に与える。この用語は、免疫グロブリン結合ドメインと相同であるか又は概ね相同である結合ドメインを有するあらゆるタンパク質も包含する。
【0014】
本明細書で使用される用語「抗体」には、抗体全体及びそのあらゆる抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)又は単鎖型が含まれる。「抗体」は、ある好ましい実施形態では、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質又はその抗原結合部分を指す。用語「重鎖」及び「軽鎖」は、本明細書で使用される場合、標的抗原に対する特異性を与えるのに十分な可変ドメイン配列を有するあらゆるIgポリペプチドを指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略される)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略される)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。全長の軽鎖及び重鎖内では、可変及び定常ドメインは、典型的には、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖は、約10個以上のアミノ酸の「D」領域も含む。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、典型的には、抗原結合部位を形成する。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存される領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体経路の第1成分(C1q)を含めた宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0015】
抗体の用語「抗原結合断片」(又は単に「抗体断片」)は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上の断片又は部分を指す。こうした「断片」は、例えば、約8~約1500アミノ酸の長さ、好適には約8~約745アミノ酸の長さ、好適には約8~約300、例えば約8~約200アミノ酸又は約10~約50若しくは100アミノ酸の長さである。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の用語「抗原結合断片」に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、すなわちVL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)又は(vii)合成リンカーによって任意選択的に連結することができる2つ以上の単離されたCDRの組み合わせが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別の遺伝子によってコードされるが、これらは、これらが単一のタンパク質鎖(ここで、VL領域とVH領域とは、対合して一価の分子を形成する)として作製されることを可能にする合成リンカーにより、組換え方法を使用して連結することができる(単鎖Fv(sFv)として公知であり;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)。こうした単鎖抗体も抗体の用語「抗原結合断片」に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、その断片は、インタクトな抗体と同じ方式で有用性についてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術又はインタクトな免疫グロブリンの酵素的若しくは化学的切断によって産生することができる。
【0016】
本明細書に開示される抗体、免疫グロブリン若しくは免疫学的に機能性の免疫グロブリン断片又は操作されたポリペプチド若しくは融合タンパク質は、これらの分子がタンパク質及び/又は巨大分子の複合混合物中のその抗原標的を優先的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われる。用語「特異的に結合する」は、本明細書で使用される場合、本開示の抗体、免疫グロブリン若しくは免疫学的に機能性の免疫グロブリン断片又は操作されたポリペプチド若しくは融合タンパク質が、少なくとも約10-6M,10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M以上のKDでエピトープを含有する抗原に結合し、且つ/又は非特異的な抗原に対する親和性の少なくとも2倍高い親和性でエピトープに結合する能力を指す。
【0017】
用語「重鎖抗体」は、本明細書で使用される場合、2本の重鎖からなり、且つ通常の抗体に見られる2本の軽鎖を欠く抗体を指す。
【0018】
用語「VHHドメイン」は、通常の四鎖抗体中に存在する重鎖可変ドメイン(本明細書では「VHドメイン」と称される)と、また通常の四鎖抗体中に存在する軽鎖可変ドメイン(本明細書では「VLドメイン」と称される)とを区別するために、天然に存在する重鎖抗体中に存在する可変ドメインを指す。重鎖抗体からの単一ドメイン、重鎖可変ドメイン配列は、VHH若しくはVHH抗体、VHH若しくはVHH抗体断片又はVHH若しくはVHHドメインと称され得る。
【0019】
用語「ペプチドリンカー」は、本明細書で使用される場合、融合タンパク質のポリペプチド間に挿入されるか又は含まれる1つ以上のアミノ酸残基を指す。ペプチドリンカーは、例えば、配列段階において、融合タンパク質のポリペプチド間において移行時に挿入するか又は含めることができる。リンカー中のアミノ酸残基の同一性及び配列は、所望の二次構造に応じて変わり得る。例えば、グリシン、セリン及びアラニンは、最大限の柔軟性を有するリンカーにとって有用である。所望の特性に応じて必要に応じてより大きいペプチドリンカーを構築するために、第1のアミノ酸残基と同じであるか又は異なり得る1つ以上の他のアミノ酸残基と組み合わせたあらゆるアミノ酸残基をリンカーとみなすことができる。
【0020】
用語「半減期」は、本明細書で使用される場合、融合タンパク質の血清中濃度が、例えば、生理機構による分子の分解及び/又は分子のクリアランス若しくは隔離の結果としてインビボで50%低下するのに要する時間を指す。薬物動態分析及び半減期の決定の方法は、当業者に公知である。
【0021】
用語「二重特異性の」は、2つの抗原と結合することが可能である融合タンパク質を指す。用語「多価融合タンパク質」は、2つ以上の抗原結合部位を含む融合タンパク質を意味する。用語「多重特異性融合タンパク質」は、2つ以上の関連する又は関連しない標的と結合することが可能である融合タンパク質を指す。
【0022】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、コーディング情報を発現系(例えば、宿主細胞又はインビトロ発現系)に移すために使用されるあらゆる分子(例えば、核酸、プラスミド又はウイルス)を指す。あるタイプのベクターは、「プラスミド」であり、これは、それに追加のDNAセグメントを挿入することができる環状二重鎖DNA(dsDNA)分子を指す。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに挿入することができる。ある種のベクターは、ベクターが導入される宿主細胞中での自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性の哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性の哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時、宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、ベクターが作動可能に連結されたコード配列の発現を誘導することが可能である。こうしたベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。
【0023】
用語「作動可能に連結された」は、本明細書で使用される場合、隣接する配列が所望の機能を果たすように構成又は構築されている、隣接する配列の配置を指す。したがって、コード配列に作動可能に連結された隣接する配列は、コード配列の複製、転写及び/又は翻訳を実施することが可能であり得る。コード配列は、プロモーターに作動可能に連結され、例えば、ここで、プロモーターは、そのコード配列の転写を誘導することが可能である。隣接する配列は、正確に機能する限り、作動可能に連結されたとみなされるコード配列と接触している必要はない。
【0024】
用語「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、発現ベクターが導入されている細胞を指す。宿主細胞は、特定の対象細胞だけでなく、こうした細胞の子孫も指すものとする。変異又は環境的影響に起因してその後の世代である種の改変が生じ得るため、こうした子孫は、実際には親細胞と同一ではない場合があるが、こうした細胞は、やはり本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。本開示の融合タンパク質を発現させるために、細菌、酵母、バキュロウイルス及び哺乳類発現系(並びにファージディスプレイ発現系)を含めた非常に様々な宿主細胞発現系を使用することができる。
【0025】
本明細書で使用される用語「患者」及び「対象」には、ヒト及び動物対象が含まれる。
【0026】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」又は「治療用組成物」は、患者に投与されたとき、所望の治療効果を誘発することが可能な化合物又は組成物を指す。
【0027】
用語「薬学的に許容し得る担体」又は「生理学的に許容し得る担体」は、本明細書で使用される場合、本開示の融合タンパク質の送達を達成又は増強するのに適した1つ以上の製剤材料を指す。
【0028】
用語「治療」又は「治療する」は、本明細書で使用される場合、治療処置と予防又は防止対策との両方を指す。治療を必要とする者は、疾患若しくは状態を有する者並びに疾患若しくは状態を有するリスクがある者又は疾患若しくは状態が予防されるべきである者を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、例えば、本明細書に記載の融合タンパク質の「治療有効」量は、所望の治療結果をもたらすのに十分な量又は投薬量を指す。治療有効量は、投与されると、疾患症状の重症度の低下(例えば、皮膚筋炎の症状の軽減、疾患症状のない時期の頻度及び期間の増大又は疾患の苦痛に起因する機能障害若しくは能力障害の予防)をもたらすか、又は治療されている状態、例えば皮膚筋炎に伴う臨床的に定義された病理学的過程の1つ以上を一定期間抑制するのに十分である量である。ある種の実施形態では、本明細書に記載の治療薬の治療有効量には、皮膚筋炎に伴う発疹を軽減するか又は筋力低下及び/若しくは萎縮を軽減する量(又は反復投与の場合には様々な量)が含まれ得る。治療有効量は、治療されている患者に関連する様々な因子及び状態並びに障害の重症度に応じて変わり得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、抗ヒト血清アルブミン(HSA)単一ドメイン、重鎖抗体からの重鎖可変ドメイン配列(本明細書ではVHHドメインと称される)及び抗補体成分C5(C5)VHHドメインを含む融合タンパク質を使用して皮膚筋炎を治療する方法を特徴とする。2つのVHHドメインは、ペプチドリンカーによって連結される。この融合タンパク質は、成人型皮膚筋炎、若年性筋炎又は筋無症候性皮膚筋炎(筋炎ではなく皮膚筋炎としても公知である)など、あらゆる形態の皮膚筋炎を治療するために使用することができる。この融合タンパク質は、HSA及びC5に特異的に結合するため、皮膚筋炎を治療するために現在使用される抗炎症及び免疫抑制剤よりも標的が絞られた、免疫系に対する効果を有することができる。したがって、本発明の融合タンパク質は、皮膚筋炎を治療するために現在使用されている薬剤よりも高用量において、長時間にわたって及び/又は少ない有害作用を伴って、皮膚筋炎を有する対象を治療するために使用することができる。
【0031】
皮膚筋炎
皮膚筋炎は、筋力低下及び特有の皮膚発疹によって特徴付けられる稀な炎症性疾患である。この疾患は、40~60歳の成人及び5~15歳の子供において最もよく見られ、また男性よりも女性が多く罹患することが公知である。筋力低下は、最も多くの場合、臀部、大腿、肩、上腕及び頸部など、躯幹及び躯幹に最も近い筋肉(すなわち近位筋)に影響を与える。罹患した筋肉は、こわばり、痛く且つ/又は圧痛がある場合があり、最終的に変性及び筋肉消耗(萎縮)の徴候を示し得る。筋力低下及び変性は、典型的には、進行し、歩調の変化及び腕を上げること、階段を上ること又は更衣動作などのある種の行為を実施することが徐々にできなくなることに至る場合がある。皮膚筋炎を有する個人は、場合により筋力低下に先行する可能性がある特徴的な皮膚変化も呈する。これらの特徴的な皮膚変化は、最大で40%の人々において疾患発症時の皮膚筋炎の唯一の徴候であり得る。皮膚異常は、典型的には、斑状であり、色が赤紫であり、且つ痒み又は痛みがある場合がある、顔、眼瞼、胸部、背中、指関節、膝又は肘の特有の皮膚発疹を含む。この発疹は、ヘリオトロープ疹と称され得る。皮膚筋炎の他の症状には、筋痛、筋圧痛、嚥下困難(嚥下障害)、明瞭語音困難(発声障害)、呼吸障害、皮下の硬いカルシウム沈着物、疲労、意図的でない体重減少及び発熱が含まれる。
【0032】
皮膚筋炎の治療法は、存在せず、治療は、症状を改善することに焦点を合わせている。皮膚筋炎を治療するために使用される医薬品には、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、タクロリムス又はシクロスポリン)、リツキシマブ及び抗マラリア薬(例えば、ヒドロキシクロロキン)が含まれる。こうした医薬品は、本明細書に記載の融合タンパク質を投与する方法と共に使用され得る。皮膚筋炎を治療するために、手術及び免疫グロブリン(IVIg)の静脈内注入も使用されている。こうした処置も、本明細書に記載の融合タンパク質を投与する方法と共に使用され得る。皮膚筋炎の具体的な根本的原因は、依然として不明である。しかし、皮膚筋炎は、自己免疫障害であると考えられ、エビデンスにより、遺伝、環境及び免疫因子の関与が示唆されている。例えば、皮膚筋炎を有する対象において、微小血管の補体沈着が観察されているが、補体系がどのようにして活性化されるかということ、関与する主要な補体経路及び病因における補体沈着の役割は、依然として決定されていない。
【0033】
抗C5二重特異性融合タンパク質
補体系を標的にする治療薬は、皮膚筋炎治療のための新規の手法を提供する。補体系は、細胞及びウイルス病原体の侵入から防御するために体の他の免疫系と共に作用する。少なくとも25種の補体タンパク質が存在し、これらは、血漿タンパク質と膜補因子との複合的な集合体である。血漿タンパク質は、脊椎動物血清中のグロブリンの約10%を占める。補体成分は、一連の複雑であるが、精密な酵素切断及び膜結合イベントで相互作用することにより、その免疫性の防御機能を達成する。得られる補体カスケードは、オプソニンの、免疫調節性の及び溶解性の機能を有する生成物の生成をもたらす。
【0034】
補体カスケードは、古典的経路(CP)、レクチン経路又は副経路(AP)を介して進行することができる。レクチン経路は、典型的には、マンノース結合レクチン(MBL)の高マンノース型基質への結合によって開始する。APは、抗体非依存性であり、病原体表面上のある種の分子によって開始され得る。CPは、典型的には、標的細胞上の抗原部位の抗体認識及び抗原部位への結合によって開始される。これらの経路は、C3転換酵素に収束する - ここで、補体成分C3は、活性なプロテアーゼによって切断されて、C3a及びC3bがもたらされる。
【0035】
本明細書に記載されるのは、C3bを含有する複合体によって切断される補体タンパク質、すなわち補体成分C5(C5)に結合する二重特異性融合タンパク質である。C5は、アルファ及びベータポリペプチ鎖から構成され、古典的補体経路と副補体経路の活性化中に切断される。C5への結合に加えて、本明細書に記載の二重特異性融合タンパク質は、ヒト血清アルブミン(HSA)にも結合して、このタンパク質の半減期を増大する。融合タンパク質における抗C5及び抗HSA結合部分は、それぞれが3つのCDR配列を含むVHHドメインである。抗C5及び抗HSA VHHドメインは、ペプチドリンカーによって連結されて、融合タンパク質を形成する。
【0036】
抗HSA VHH-抗C5 VHH融合タンパク質は、配列:
【化1】
を有する。
【0037】
これは、配列:
【化2】
を有するポリヌクレオチドによってコードされる。
【0038】
抗HSA結合ドメインに相当する融合タンパク質の部分は、配列:EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSS(配列番号3)を有する。抗HSA結合ドメインは、3つのCDR配列、すなわち配列:GRPVSNYA(配列番号4)を有する第1のCDR(CDR1)、配列:INWQKTAT(配列番号5)を有する第2のCDR(CDR2)及び配列:AAVFRVVAPKTQYDYDY(配列番号6)を有する第3のCDR(CDR3)を含有する。
【0039】
抗C5結合ドメインに相当する融合タンパク質の部分は、配列:
【化3】
を有する。抗C5結合ドメインは、3つのCDR配列、すなわち配列:GRAHSDYAMA(配列番号8)を有する第1のCDR(CDR1)、配列:GIGWSGGDTLYADSVRG(配列番号9)を有する第2のCDR(CDR2)及び配列:AARQGQYIYSSMRSDSYDY(配列番号10)を有する第3のCDR(CDR3)も含有する。
【0040】
抗HSA結合ドメインと抗C5結合ドメインは、配列:GGGGAGGGGAGGGGS(配列番号11)を有するペプチドリンカーによって連結される。
【0041】
ベクター、宿主細胞及びタンパク質産生
本発明の融合タンパク質は、宿主細胞から産生することができる。宿主細胞は、その対応する核酸から本明細書に記載のポリペプチド及び融合ポリペプチドを発現させるのに必要とされる必須の細胞成分、例えば細胞小器官を含む媒体を指す。核酸を当技術分野で公知の従来の技術(例えば、形質転換、遺伝子導入、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、感染など)によって宿主細胞に導入することができる核酸ベクター内に包含させることができる。核酸ベクターの選択は、使用される宿主細胞にある程度依存する。宿主細胞は、起源が哺乳類、植物又は微生物であり得る。公知の哺乳類宿主細胞に加えて、酵母宿主細胞、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及び/又は植物宿主細胞を使用することができる。一般に、好ましい宿主細胞は、真核生物(例えば、哺乳類若しくは酵母)又は原核生物(例えば、細菌)起源のものである。
【0042】
1つ以上のVHH抗体を含有する多価及び多重特異性融合タンパク質及びその調製の概要は、公知である(Els Conrath,K.et al.,J.Biol.Chem.,276:7346 50,2001;Muyldermans,S.,J.Biotechnol.,74:277 302 2001;国際公開第96/34103号パンフレット、国際公開第99/23221号パンフレット及び国際公開第04/041865号パンフレット)。本明細書に記載の融合タンパク質は、例えば、発現ベクターなどの1つ以上のエレメントを含むコンストラクトから発現させるか又はコンストラクトと組み合わせることができる(国際公開第04/041862号パンフレット)。
【0043】
核酸ベクター構築及び宿主細胞
本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸配列は、当技術分野で公知の様々な方法によって調製することができる。これらの方法には、限定されないが、オリゴヌクレオチド介在性の(又は部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発、ライゲーション及びオーバーラップ伸長PCRが含まれる。本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子は、標準の技術、例えば遺伝子合成を使用して得ることができる。核酸分子は、ヌクレオチド合成装置又はPCR技術を使用して合成することができる。
【0044】
融合タンパク質をコードする核酸配列を、原核生物又は真核生物宿主細胞中で核酸分子を複製及び発現させることが可能なベクターに挿入することができる。多くのベクターが当技術分野で利用可能であり、本発明の目的のために使用することができる。それぞれのベクターは、特定の宿主細胞との適合性のために調節及び最適化することができる種々の構成成分を含有することができる。例えば、ベクター構成成分としては、限定されないが、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位、シグナル配列、対象となるタンパク質をコードする核酸配列及び転写終結配列が含まれ得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明のための宿主細胞として哺乳類細胞を使用することができる。哺乳類細胞型の例としては、限定されないが、ヒト胎児腎臓(HEK)(例えば、HEK293、HEK 293F)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、COS、PC3、Vero、MC3T3、NS0、Sp2/0、VERY、BHK、MDCK、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、T47D、NS0(いかなる免疫グロブリン鎖も内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O及びHsS78Bst細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明のための宿主細胞として酵母細胞を使用することができる。例示的な酵母宿主細胞には、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明のための宿主細胞として大腸菌(E.coli)細胞を使用することができる。大腸菌(E.coli)系統の例としては、限定されないが、大腸菌(E.coli)294(ATCC(登録商標)31,446)、大腸菌(E.coli)λ 1776(ATCC(登録商標)31,537、大腸菌(E.coli)BL21(DE3)(ATCC(登録商標)BAA-1025)及び大腸菌(E.coli)RV308(ATCC(登録商標)31,608)が挙げられる。様々な宿主細胞は、タンパク質産物の翻訳後プロセシング及び修飾(例えば、グリコシル化)のための特有及び特定の機構を有する。発現されたポリペプチドの正確な修飾及びプロセシングを確実にするために、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。上に記載した発現ベクターを、当技術分野における従来の技術、例えば形質転換、遺伝子導入、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿及び直接マイクロインジェクションを使用して適切な宿主細胞に導入することができる。ベクターがタンパク質産生のための宿主細胞に導入されると、宿主細胞を、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために、必要に応じて改変された従来の栄養培地中で培養する。治療用タンパク質の発現の方法は、当技術分野で公知であり、例えばPaulina Balbas,Argelia Lorence(eds.)Recombinant Gene Expression:Reviews and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press;2nd ed.2004及びVladimir Voynov and Justin A.Caravella(eds.)Therapeutic Proteins:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology)Humana Press;2nd ed.2012を参照されたい。
【0046】
タンパク質の産生、回収及び精製
本発明の融合タンパク質を産生するために使用される宿主細胞は、当技術分野で公知の且つ選択された宿主細胞を培養するのに適した培地中で成長させることができる。哺乳類宿主細胞に適した培地の例としては、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Expi293(商標)発現培地、ウシ胎児血清を添加したDMEM及びRPMI-1640が挙げられる。細菌宿主細胞に適した培地の例としては、選択剤、例えばアンピシリンなどの必須の添加剤を加えたLuriaブロス(LB)が挙げられる。宿主細胞は、好適な温度、例えば約20℃~約39℃、例えば25℃~約37℃、好ましくは37℃且つ5~10%などのCO2濃度で培養される。培地のpHは、一般に、主に宿主生物に依存して約6.8~7.4、例えば7.0である。本発明の発現ベクター内で誘導性プロモーターが使用される場合、プロモーターの活性化に適した条件下でタンパク質発現が誘導される。
【0047】
いくつかの実施形態では、使用される発現ベクター及び宿主細胞に応じて、発現されたタンパク質を宿主細胞(例えば、哺乳類宿主細胞)から細胞培養培地に分泌させることができる。タンパク質回収は、細胞培養培地を濾過して細胞残屑を除去することを含むことができる。タンパク質は、さらに精製することができる。融合タンパク質は、タンパク質精製の、当技術分野で公知のあらゆる方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差又はタンパク質の精製のためのあらゆる他の標準の技術によって精製することができる。例えば、タンパク質は、プロテインAカラムなどのアフィニティカラム(例えば、POROSプロテインAクロマトグラフィー)を適切に選択し、クロマトグラフィーカラム(例えば、POROS HS-50陽イオン交換クロマトグラフィー)と組み合わせること、濾過、限外濾過、塩析並びに透析手順によって単離及び精製することができる。
【0048】
他の実施形態では、例えば浸透圧ショック、超音波処理又は溶解によって宿主細胞を破壊して、発現されたタンパク質を回収することができる。細胞が破壊されると、遠心分離又は濾過によって細胞残屑を除去することができる。場合により、精製を容易にするために、ポリペプチドをペプチドなどのマーカー配列に結合させることができる。マーカーアミノ酸配列の一例は、ヘキサ-ヒスチジンペプチド(Hisタグ)であり、これは、ニッケル官能基化アガロースアフィニティカラムに、マイクロモル濃度の親和性で結合する。精製に有用な他のペプチドタグとしては、限定されないが、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに相当するヘマグルチニン「HA」タグが挙げられる(Wilson et al.,Cell 37:767、1984)。
【0049】
代わりに、本明細書に記載の融合タンパク質は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子を含有するベクター(例えば、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、改変ワクシニアアンカラ(Modified Vaccinia Ankara)(MVA))などのワクシニアウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター及びアルファウイルスベクター))を投与することにより、例えば治療の場面で対象(例えば、ヒト)の細胞によって産生することができる。ベクターは、対象の細胞に(例えば、形質転換、遺伝子導入、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、感染などによって)入り込むと、ポリペプチドの発現を促進し、このポリペプチドは、その後、細胞から分泌される。疾患又は障害の治療が所望のアウトカムである場合、さらなる措置は、必要とされない場合がある。タンパク質の収集が所望される場合、血液を対象から収集し、タンパク質を当技術分野で公知の方法によって血液から精製することができる。
【0050】
医薬組成物
本明細書に記載の融合タンパク質(例えば、配列番号1の配列を有する融合タンパク質)は、皮膚筋炎を患うヒト患者などの患者への投与のために、媒体に組み込むことができる。融合タンパク質を含有する医薬組成物は、当技術分野で公知の方法を使用して調製することができる。例えば、こうした組成物は、例えば、生理学的に許容し得る担体、賦形剤又は安定剤を使用して(Remington:The Science and Practice of Pharmacology 22nd edition,Allen,L.Ed.(2013);これは、参照により本明細書に組み込まれる)、所望の形態、例えば凍結乾燥された製剤又は水溶液の形態で調製することができる。
【0051】
好適には、1種以上の賦形剤、担体又は希釈剤と混合された、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する混合物を水中で調製することができる。分散をグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物並びに油中で調製することもできる。保管及び使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含有することができる。注射用途に適した医薬形態としては、無菌の水溶液又は分散系及び無菌の注射用溶液又は分散系の即時調製のための無菌の粉末が挙げられる(その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,466,468号明細書に記載されている)。あらゆる場合において、製剤は、無菌であり得、且つ容易な注射器通過性が存在する程度に流動性であり得る。製剤は、製造及び保管の条件下で安定であり得、細菌及び真菌などの微生物の混入作用に対して保護され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、好適なそれらの混合物及び/又は植物油を含有する、溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、また分散の場合には必要とされる粒径の維持、また界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中の、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0052】
例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解若しくは放出の速度、吸着又は浸透を改変、維持又は保護するために、許容し得る製剤材料を使用することができる。許容し得る製剤材料には、限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなど)、抗菌薬、抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝液(ホウ酸塩、炭酸水素塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩又は他の有機酸など)、増量剤(マンニトール又はグリシンなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど)、充填剤、単糖、二糖及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど)、着色、着香及び希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など)、溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど)、懸濁化剤、界面活性剤又は湿潤剤(プルロニック(登録商標);PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート20又はポリソルベート80などのポリソルベート;トリトン;トロメタミン;レシチン;コレステロール又はチロキサパールなど)、安定性増強剤(スクロース又はソルビトールなど)、張度増強剤(ハロゲン化アルカリ金属 - 好ましくは塩化ナトリウム又はカリウム - 又はマンニトール、ソルビトールなど)、送達媒体、希釈液、賦形剤及び/又は医薬補助剤(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacology 22nd edition,Allen,L.Ed.(2013)を参照されたい)が含まれる。
【0053】
当業者は、例えば、意図される投与経路、送達様式及び所望の投薬量に応じて、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する医薬組成物を開発することができる。本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、治療薬の送達を改善するための1種以上の薬剤を含むことができる。例えば、投与時の本明細書に記載の治療薬の分散及び吸収を容易にするために、例えばヒアルロナンを分解する薬剤を本明細書に記載の医薬組成物に含めるか、又はこうした薬剤を本明細書に記載の医薬組成物と共に同時投与することができる。こうした薬剤の一例は、組換えヒアルロニダーゼである。
【0054】
持続送達又は制御送達製剤を含む製剤を含めて、追加の医薬組成物は、当業者に明らかであろう。例えば、リポソーム担体、生体分解可能な微小粒子又は多孔質ビーズ及びデポー注射を使用して持続送達又は制御送達製剤を製剤化するための技術は、当業者に公知である。
【0055】
本明細書に記載の医薬組成物を含有する溶液は、必要に応じて、好適には緩衝化することができ、液体希釈剤は、最初に十分な塩類溶液又はグルコースで等張性を与えることができる。これらの特別な水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適切である。これに関連して、用いることができる無菌の水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、ある投薬量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下点滴療法液に添加するか、又は提案される注入部位に注射することができる。治療されている対象の状態に応じて、投薬量のいくらかの変動が必然的に生じる。投与を担う人物は、いずれにせよ個々の対象のための適切な用量を決定する。さらに、ヒト投与について、調製物は、FDA Office of Biologics標準によって必要とされる通りの無菌性、発熱性、一般安全性及び純度標準を満たすことができる。
【0056】
治療の方法
本明細書に記載の組成物は、静脈内、非経口、皮内、経皮、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄及び経口投与などの様々な経路により、皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある対象に投与することができる。この組成物は、局所的に(例えば、発疹を呈している皮膚の領域に)投与することもできる。いくつかの実施形態では、組成物は、皮下に(例えば、皮下注射又は注入を介して)投与される。所与のいずれかの場合における投与に最も適した経路は、投与される特定の組成物、患者、医薬配合方法、投与方法(例えば、投与時間及び投与経路)、患者の年齢、体重、性別、治療されている疾患の重症度、患者の食事及び患者の排泄速度に依存する。組成物は、1回又は1回よりも多く(例えば、年に1回、年に2回、年に3回、2か月に1回、月に1回、2週に1回又は週に1回)投与することができる。
【0057】
本明細書に記載の通りに治療することができる対象は、成人型皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎及び筋無症候性皮膚筋炎(筋炎ではなく皮膚筋炎としても公知である)を含めた、皮膚筋炎を有する対象(例えば、皮膚筋炎を有すると特定された対象)及び皮膚筋炎を有する疑いがある対象である。いくつかの実施形態では、皮膚筋炎は、癌(悪性腫瘍随伴皮膚筋炎)と関連し、癌は、皮膚筋炎に先行するか、皮膚筋炎と合併して生じるか、又は皮膚筋炎の発症後に発生し得る。対象が皮膚筋炎を有する疑いがある場合、診断を促進するために、以下の検査の1つ以上を実施することができる:筋損傷に伴う筋肉酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)を測定するための又は自己抗体を検出するための血液検査、胸部X線、筋電図検査、核磁気共鳴画像法(MRI)、皮膚生検又は筋肉生検。皮膚筋炎の治療は、皮膚筋炎症状の改善をもたらすことができる。例えば、本明細書に記載の融合タンパク質での治療は、皮膚筋炎に伴う皮膚異常(例えば、発疹)及び/又は皮膚筋炎に伴う筋肉異常(例えば、筋力低下及び/又は萎縮)を治療することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、皮膚異常を軽減又は排除し、例えば皮膚筋炎に伴う発疹の程度を軽減し(発疹を呈している皮膚の量を低下させ)、発疹に伴う疼痛を軽減し、発疹に伴うそう痒を軽減し、且つ/又は皮膚筋炎に伴う鱗状の、乾燥した又は荒れた皮膚を軽減することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、筋力低下及び/又は萎縮を軽減する(例えば、筋力を向上させる)。本明細書に記載の組成物及び方法は、疾患進行を遅くするか又は抑制するために(例えば、筋肉の衰弱及び/又は萎縮を遅くするか又は抑制するために)使用することもできる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、皮膚筋炎の他の症状、例えば筋痛、筋圧痛、筋肉のこわばり、筋肉の炎症、拘縮の発生、爪の周囲の炎症を起こした又は腫脹した領域、嚥下困難(嚥下障害)、明瞭語音困難(発声障害)、呼吸障害、筋肉、皮膚若しくは結合組織内の硬いカルシウム沈着物の形成、関節痛、疲労、意図的でない体重減少又は発熱を予防又は軽減する。本明細書に記載の組成物及び方法は、レイノー現象、他の結合組織疾患、循環器疾患(例えば、心筋炎)、肺疾患(例えば、間質性肺疾患)又は癌(例えば、卵巣癌、肺癌、精巣癌若しくは胃腸管の癌)など、皮膚筋炎に伴う状態の発症を予防するか、その状態を発症する可能性を低下させるか又はその状態の重症度を低下させることもできる。皮膚異常(例えば、発疹)は、目視検査又は皮膚生検を使用して評価することができ、筋肉異常(例えば、筋力低下及び/又は萎縮)は、皮膚筋炎を患う対象において損なわれ得る行為(例えば、歩調、腕を上げること、階段を上ること、更衣動作、枕から頭を上げること、介助なしに床から立ち上がること)の遂行能力を観察するか、又は筋損傷を知らせることができる血液中の筋肉酵素(例えば、クレアチンキナーゼ、アルドラーゼ、アスパラギン酸アミノ基転移酵素又は乳酸脱水素酵素)のレベルを測定するか、又は筋電図検査又は筋肉生検を実施することによって評価することができる。皮膚異常及び/又は筋肉異常は、治療に対する反応を観察するために、本明細書に記載の組成物での治療の前後に評価することができる。
【0058】
治療には、様々な単位用量での、本明細書に記載の融合タンパク質を含有する組成物の投与が含まれ得る。それぞれの単位用量は、通常、あらかじめ決められた量の治療用組成物を含有する。投与される量並びに特定の投与経路及び製剤は、臨床分野の技術者の技術の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はなく、一定期間にわたる持続注入を含むことができる。組成物は、0.5mg/kg~50mg/kgの範囲(例えば、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12.0、15.0、18.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0又は50.0mg/kg)の投薬量の本発明の融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態では、対象に投与される融合タンパク質の量は、約10mg~約3,000mg(例えば、約10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,100mg、1,200mg、1,300mg、1,400mg、1,500mg、1,600mg、1,700mg、1,800mg、1,900mg、2,000mg、2,100mg、2,200mg、2,300mg、2,400mg、2,500mg、2,600mg、2,700mg、2,800mg、2,900mg又は3,000mg)である。投薬量は、医師により、疾患の程度及び対象の様々なパラメータなどの従来の因子に従って適合され得る。
【0059】
本明細書に記載の組成物は、皮膚筋炎の1つ以上の症状(例えば、皮膚異常、例えば発疹又は鱗状の、乾燥した若しくは荒れた皮膚、筋肉異常、例えば筋力低下、筋肉萎縮、筋痛、筋圧痛、筋肉のこわばり又は筋肉の炎症、爪の周囲の炎症を起こした又は腫脹した領域、拘縮の発生、嚥下困難(嚥下障害)、明瞭語音困難(発声障害)、呼吸障害、筋肉、皮膚若しくは結合組織内の硬いカルシウム沈着物の形成、関節痛、疲労、意図的でない体重減少又は発熱)を改善するか、又は疾患進行(例えば、進行性の筋肉衰弱若しくは萎縮)を遅くするか若しくは抑制するのに十分な量で投与される。これらの効果は、例えば、本明細書に記載の組成物の投与後、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、15週、20週、25週又はそれを超える期間以内に生じ得る。評価のアウトカムに応じて、患者は、追加の治療を受けることができる。
【0060】
本明細書に記載の組成物は、医療従事者によって投与するか又は自己投与することができる。自己投与について、組成物をオートインジェクター又はプレフィルドシリンジなどの医療装置内に含めることができる。いくつかの実施形態では、医療装置は、ウェアラブル注射器などのウェアラブル装置である。例示的なウェアラブル注射器には、あらかじめプログラムされた皮下注射のために使用することができるWest Pharmaceutical Servicesによって開発されたSmartDose(登録商標)注射器及びBD Libertas(商標)ウェアラブル注射器が含まれる。いくつかの実施形態では、医療装置は、高体積治療薬の皮下自己投与を可能にする、Enable injectionsによって製造される注入装置などのウェアラブル注入装置である。組成物は、オートインジェクター又はウェアラブル注射器に装填するためにカートリッジ内に収容され得る。
【0061】
本明細書に記載の融合タンパク質は、追加の治療法と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、治療法は、皮膚筋炎を治療するために現在使用される医薬品、例えば副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、タクロリムス又はシクロスポリン)、リツキシマブ及び抗マラリア薬(例えば、ヒドロキシクロロキン)である。融合タンパク質は、静脈内免疫グロブリン(IVIg)と組み合わせて投与するか又はカルシウム沈着物を除去するために手術と組み合わせて対象に投与することもできる。いくつかの実施形態では、治療法は、理学療法、食事改善、言語療法又は日光の回避及び/又は日光からの保護(例えば、日焼け止めの使用)である。本明細書に記載の融合タンパク質の同時投与及び追加療法は、同時(例えば、同時に又は単一の医薬組成物で投与される)、個別又は逐次(例えば、本明細書に記載の融合タンパク質は、追加療法前又は後に投与することができる)であり得る。
【0062】
キット
本明細書に記載の融合タンパク質を含有する組成物は、皮膚筋炎を治療することに使用するためのキットで提供することができる。キットは、皮膚筋炎を有する対象又は医師などのキットの使用者に、本明細書に記載の方法を実施するように指示する、ラベル又は添付文書をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、キットは、ラベルを有する容器と、本明細書に記載の融合タンパク質を含む組成物とを含み、ラベルは、組成物が、皮膚筋炎を有するか又は有する疑いがある患者に投与されるべきであることを示す。キットは、組成物を投与するための、シリンジ又は他の装置(例えば、オートインジェクター、プレフィルドシリンジ又はウェアラブル装置)を任意選択的に含むことができる。いくつかの実施形態では、キットは、乾燥させたタンパク質を有する第1の容器と、水性の製剤を有する第2の容器との両方を含む。他の実施形態では、キットは、シングル又はマルチチャンバー型プレフィルドシリンジ(例えば、液体シリンジ及び凍結乾燥シリンジ)を含む。いくつかの実施形態では、キットは、医療装置(例えば、オートインジェクター又はウェアラブル装置)と共に使用するための、本発明の組成物を収容するカートリッジを含む。
【実施例】
【0063】
本明細書に記載の組成物及び方法をどのように使用、作製及び評価することができるかの説明を当業者に提供するために以下の実施例が提示され、これは、本発明を純粋に例示するものであると意図され、本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することを意図されない。
【0064】
実施例1.抗HSA VHH-抗C5 VHH融合タンパク質を含有する組成物の投与
本明細書に開示される方法に従い、当技術分野の医師は、皮膚筋炎の1つ以上の症状を軽減する(例えば、皮膚筋炎に伴う発疹を軽減するか又は筋力低下及び/又は萎縮を軽減する)か又は疾患進行を遅くするために、皮膚筋炎を有するヒト患者などの患者を治療することができる。この目的のために、当技術分野の医師は、配列番号1の配列を有する融合タンパク質を含有する組成物をヒト患者に投与することができる。この融合タンパク質を含有する組成物を例えば静脈内又は皮下注射などの注射によって患者に投与することができる。この組成物は、患者が組成物を自己投与することができるように、オートインジェクター又はウェアラブル医療装置などの医療装置中で提供することができる。融合タンパク質は、0.5mg/kg~50mg/kg(例えば、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12.0、15.0、18.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0若しくは50.0mg/kg)又は10mg~3,000mg(例えば、約10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,100mg、1,200mg、1,300mg、1,400mg、1,500mg、1,600mg、1,700mg、1,800mg、1,900mg、2,000mg、2,100mg、2,200mg、2,300mg、2,400mg、2,500mg、2,600mg、2,700mg、2,800mg、2,900mg又は3,000mgなどの治療有効量で投与される。融合タンパク質は、皮膚筋炎の1つ以上の症状を軽減し、且つ/又は疾患の進行を遅くするのに十分な量で投与される。
【0065】
患者への組成物の投与後、当技術分野の医師は、様々な方法により、治療法に応答した患者の改善を観察することができる。例えば、医師は、目視検査又は皮膚生検を使用して患者の発疹を、また皮膚筋炎において典型的に損なわれる行為(例えば、歩調、腕を上げること、階段を上ること、更衣動作、枕から頭を上げること、介助なしに床から立ち上がること)の患者の遂行能力を観察するか、又は筋損傷を知らせることができる血液中の筋肉酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)のレベルを測定するか、又は筋電図検査又は筋肉生検を実施することにより、患者の筋力低下を観察することができる。患者が組成物の投与後に発疹、筋力低下及び/若しくは筋肉萎縮の軽減を示すか、又は疾患が進行していないという所見は、患者がその治療に対して好都合に反応していることを示す。その後の用量は、必要に応じて決定及び投与することができる。
【0066】
他の実施形態
本発明をその具体的実施形態に関して説明してきたが、さらなる改変形態が可能であり、本出願は、本発明に関連する技術内の公知の又は慣例的な実施内に入る本発明の原理に一般に従い、且つ本発明からのこうした逸脱を含む、本発明のあらゆる変形形態、使用又は適合形態を包含することが意図され、前述の本質的特徴に適合され得、特許請求の範囲の範囲内となることが理解されるであろう。他の実施形態は、特許請求の範囲内である。
【配列表】
【国際調査報告】