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特表2023-544411薬物送達デバイスおよび連続したPCO障壁縁部を有するIOL
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスおよび連続したPCO障壁縁部を有するIOL
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20231016BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
A61F2/16
A61F9/007 170
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520466
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 US2021053629
(87)【国際公開番号】W WO2022076456
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】17/062,909
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2017747.3
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522336096
【氏名又は名称】スパイグラス ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPYGLASS PHARMA,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【弁理士】
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】ケーブル、クレイグ アラン ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、グレン アール.
(72)【発明者】
【氏名】デネウィル、ジェームズ アール.
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリック ワイ.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097SA06
4C097SA08
4C097SA10
(57)【要約】
ハプティックおよび前記ハプティックに固定された薬物送達デバイスを有するIOLを含む眼用インプラントが提供される。前記薬物送達デバイスの最後方範囲は、前記IOLの後縁またはPCO障壁縁部の前方に位置する。他の構成において、前記薬物送達デバイスには、PCO障壁縁部が設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、前記IOLアセンブリは、前面および後面、ならびに周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、前記後面は鋭い角度の縁部(24E)において前記周囲側壁に接合し、前記鋭い角度の縁部は前記鋭い角度の縁部の平面(P)を画定する、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック上に配置された薬物送達デバイスであって、前記薬物送達デバイスは、後面(33P)および周囲側壁(33C)を有し、前記ハプティック上の前記薬物送達デバイスはPCO障壁の形成を妨害しない、前記薬物送達デバイスと、
を含む、眼用インプラント(11)。
【請求項2】
前記薬物送達デバイス(30)は、前記薬物送達デバイス(30)の前記鋭い角度の縁部(33E)が前記平面(P)から前方に変位されるように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される、請求項1に記載の眼用インプラント。
【請求項3】
前記薬物送達デバイス(30)は、前記薬物送達デバイス(30)の前記鋭い角度の縁部(33E)が前記平面(P)から後方に変位されるように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される、請求項1に記載の眼用インプラント。
【請求項4】
前記薬物送達デバイス(30)は、前記薬物送達デバイス(30)の前記鋭い角度の縁部(33E)が前記平面(P)と同一平面上にあるように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される、請求項1に記載の眼用インプラント。
【請求項5】
前記薬物送達デバイスが、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含み、前記後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備え、前記ハプティックが前記薬物送達デバイスを前記ハプティックに固定するために前記開口内に配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項6】
前記後方パネル(33)の前記周囲側壁(33C)の一部が、前記IOL(24)の前記側壁(24C)の一部に直接接する、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項7】
前記後方パネル(33)の前記周囲側壁(33C)は、前記IOL(24)の前記側壁(24C)から放射方向外向きに変位される、請求項1~6のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項8】
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、前記IOLアセンブリは、前面および後面、ならびに周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、前記ハプティック(28)は、薬物送達デバイス(30)を受け入れるように構成された形状およびサイズを有するハプティック基部(28B)を介して前記レンズに接合される、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック(28)上に配置されるように構成された薬物送達デバイス(30)であって、前記ハプティック基部(28B)を受け入れるように構成された開口(34)を有し、前記開口(34)は、前記ハプティック基部(28B)の周りの前記薬物送達デバイス(30)の回転を阻止する構成において前記ハプティック基部(28B)の形状およびサイズに調整され、組み立てられた構成において、前記薬物送達デバイス(30)は、前記ハプティック基部(28B)が前記開口(34)を占有する状態で、前記ハプティック基部(28B)上に配置される、前記薬物送達デバイス(30)と、
を含む、眼用インプラント(11)。
【請求項9】
前記薬物送達デバイス(30)が、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含み、前記後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備えた、請求項8に記載の眼用インプラント。
【請求項10】
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、前記IOLアセンブリは、前面および後面、ならびに周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、前記ハプティック(28)は、薬物送達デバイス(30)を受け入れるように構成された形状およびサイズを有するハプティック基部(28B)を介して前記レンズ(12)に接合される、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック上に配置されるように構成された薬物送達デバイス(30)であって、前記薬物送達デバイス(30)は前記ハプティック基部(28B)を受け入れるように構成された開口(34)を有し、前記開口(34)は、前記ハプティック基部(28B)の周りの前記薬物送達デバイス(30)の回転を阻止する構成において前記ハプティック基部(28B)の形状およびサイズに調整され、組み立てられた構成においては、前記薬物送達デバイス(30)は前記ハプティック基部(28B)が前記開口(34)を占有する状態で、前記ハプティック基部(28B)上に配置される、前記薬物送達デバイス(30)と、
を含む、眼用インプラント(11)。
【請求項11】
前記薬物送達デバイス(30)が、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含むとともに、前記後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備えた、請求項8~10のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項12】
前記薬物送達デバイス(30)が、前面(36A)および前面縁部(36E)を有する前方パネル(36)を備え、前記前面縁部(36E)が前記IOLレンズの主平面(B)に平行な平面(A)内に完全に位置する、請求項8~11のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項13】
前記前面(36A)が平面である、請求項8~12のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項14】
前記前方パネル(36)が周方向寸法(40)および半径方向寸法(41)によって特徴付けられ、前記周方向寸法(40)が前記半径方向寸法(41)よりも大きい、請求項8~13のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項15】
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、前記IOLアセンブリは、前面および後面、ならびに周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、前記ハプティック(28)は、薬物送達デバイス(30)を受け入れるように構成された形状およびサイズを有するハプティック基部(28B)を介して前記レンズに接合される、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック(28)上に配置されるように構成された薬物送達デバイス(30)であって、前記薬物送達デバイス(30)は前記ハプティック基部(28B)を受け入れるように構成された開口(34)を有し、前記ハプティックは、前記ハプティック基部からの前記薬物送達デバイス(30)の外方移動を阻止するように構成された第1の保持構造をさらに含み、組み立てられた構成においては、第1の保持構造(37、36、39)が前記薬物送達デバイス(30)の障害となり、前記ハプティック基部(28B)からの前記薬物送達デバイス(30)の外方移動を阻止する、前記薬物送達デバイス(30)と、
を含む、眼用インプラント(11)。
【請求項16】
前記第1の保持構造が、前記ハプティック(28)に沿った前記薬物送達デバイス(30)の外方移動を阻止するように構成された、前記ハプティック上の戻り止めまたは肩部を含む、請求項15に記載の眼用インプラント。
【請求項17】
前記第1の保持構造は、前記ハプティック基部(28B)内に刻み目を含み、前記薬物送達デバイス(30)は前記刻み目を占有するように構成された支柱(35)を含む第2の保持特性を含む、請求項15または請求項16に記載の眼用インプラント。
【請求項18】
前記薬物送達デバイス(30)は、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含むとともに、前記後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備え、前記薬物送達デバイス(30)は、前記支柱(35)のうちの1つが前記刻み目内に配置された状態で前記ハプティック上に配置される、請求項15~17のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項19】
前記薬物送達デバイス(30)は、前記薬物送達デバイス(30)の前記鋭い角度の縁部(33E)が前記平面(P)から前方に変位されるように前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される、請求項8~18のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項20】
前記薬物送達デバイス(30)は、前記薬物送達デバイス(30)の前記鋭い角度の縁部(33E)が前記平面(P)から後方に変位されるように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される、請求項8~18のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項21】
前記薬物送達デバイス(30)は、前記薬物送達デバイス(30)の前記鋭い角度の縁部(33E)が前記平面(P)と同一平面上にあるように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される、請求項8~18のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項22】
前記薬物送達デバイス(30)の前記最後面(30P)が、前記平面(P)から0.1~1ミリメートルだけ前方に変位される、請求項2または請求項19に記載の眼用インプラント。
【請求項23】
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、前記IOLアセンブリは、前面(24A)および後面(24P)と、周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、前記後面は鋭い角度の縁部(24E)において前記周囲側壁に接合し、前記鋭い角度の縁部(24E)は前記鋭い角度の縁部(24E)の平面(P)を画定する、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック(28)上に配置された薬物送達デバイス(30)であって、前記薬物送達デバイス(30)の最後面(30P)が前記平面(P)から前方に変位され、それにより前記ハプティック(28)上の前記薬物送達デバイス(30)の存在がPCO障壁の形成を妨害しないように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置された前記薬物送達デバイス(30)と、
を含む、眼用インプラント(11)。
【請求項24】
前記薬物送達デバイス(30)の前記最後面(30P)が、前記平面(P)から0.1~1ミリメートルだけ前方に変位される、請求項23に記載の眼用インプラント。
【請求項25】
前記ハプティック(28)が、接合部において前記レンズ(24)に接合され、前記ハプティックと前記レンズとの間の前記接合部の最後方範囲が、前記鋭い角度の縁部(24E)から前方に変位/オフセットされる、請求項23または請求項24に記載の眼用インプラント。
【請求項26】
前記ハプティックが接合部で前記レンズ(24)に接合され、前記接合部の最後方範囲が前記鋭い角度の縁部から前方に変位/オフセットされ、それにより前記ハプティックの存在が前記IOLの鋭い縁部と前記嚢の前記後部との間のPCO障壁の形成を妨害しない、請求項23~25のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項27】
前記鋭い角度の縁部は、内角およびコーナー半径によって特徴付けられ、前記後方パネルの表面および前記後方パネルの前記円周側壁との間が80°~100°の範囲であり、前記鋭い角度の縁部の前記コーナー半径が500μm未満、好ましくは60μm未満である、請求項23~26のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項28】
前記薬物送達デバイスが、1つ以上の治療剤を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【請求項29】
前記1つ以上の治療剤が、ベータ遮断薬、アルファアゴニスト、ROCK阻害剤、アデノシン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、アドレナリンまたはコリン受容体活性化剤、プロスタグランジン類縁体、ステロイド、アプタマー、抗体、補体因子、抗酸化剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、抗菌剤、またはそれらの組み合わせを含む、請求項28に記載の眼用インプラント。
【請求項30】
前記1つ以上の治療剤が、プロスタグランジン類縁体を含むか、またはプロスタグランジン類縁体からなる、請求項28または請求項29に記載の眼用インプラント。
【請求項31】
眼疾患の治療を必要とする患者において眼疾患を治療する方法であって、前記方法は、請求項1~30のいずれか一項に記載の眼用インプラントを前記患者の眼の水晶体嚢内に埋め込むことと、それにより前記患者において前記眼疾患を治療することを含む、方法。
【請求項32】
前記水晶体嚢を前記IOLに接近させることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記水晶体嚢の前記後部と前記鋭い角度の縁部との間にPCO障壁を形成することをさらに含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記眼疾患が、緑内障、滲出型黄斑変性、乾性黄斑変性症、ブドウ膜炎、眼の感染もしくは炎症、またはそれらの組み合わせを含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項31~34のいずれか一項に記載の方法であって、前記埋め込むことは、
前記眼用インプラントを折り畳むまたは巻いて小径構成にして注入器に収納することと、
前記注入器を前記眼の角膜と強膜との間の小さなスリットを通して挿入することと、
前記眼用インプラントを前記注入器から前記眼の組織に押し込むことと、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載される本開示は、眼内レンズなどの眼用インプラントの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
眼内レンズ(IOL)は、患者の目の生来の水晶体が除去された後に、生来の水晶体と置き換えるために埋め込まれ得る眼用の人工レンズである。生来の水晶体は、白内障に冒されるため除去される場合がある。前記IOLが埋め込まれることで、明瞭な視覚およびある程度の焦点合わせを患者に提供し得る。眼内レンズはまた、極端な近視または遠視を矯正するために、生来の水晶体(有水晶体眼内レンズ、PIOL)を除去することなく患者に埋め込まれ得る。IOLの様々な副作用を緩和するために、または白内障につながる疾患と共存し得る眼の他の疾患を治療するために、IOLの埋め込みと同時に、複数の治療剤を眼に投与することが有利である。感染および炎症などの副作用、ならびに緑内障などの疾患は、IOLに固定され得る追加のデバイスに組み込まれ得る治療剤を用いて治療することができる。IOLに加え、種々の他の疾患に対応するために、レンズを含まない眼性インプラントが埋め込まれ得る。後嚢混濁(PCO)は、IOLの埋め込みに影響を及ぼす疾患であり、IOLと水晶体被膜の後部との間の領域への、水晶体上皮細胞の移動に起因して生じる。これらの水晶体上皮細胞がこの領域で増殖および分化するにつれて、水晶体被膜の後部は不透明になる。これは、続発性白内障と称されることがある視力障害を引き起こす可能性がある。この影響は、IOL自体の構造、例えば、(典型的には、正方形縁部と称される)鋭い角度の縁部で接合された後部表面および周囲側壁表面を有するIOLを形成することなどによって制限され得る。水晶体被膜の後部は、IOL上に崩れてIOLに融合し、水晶体被膜の後部とIOLの鋭い角度の縁部との間の融合接合部は、水晶体上皮細胞に対する障壁として機能する。
【0003】
Ophthalmic Device For Drug Deliveryと題されたKahook, et al.による特許文献1(2020年1月23日公開)などの先の特許出願は、IOLと組み合わせて使用される薬物送達デバイスの様々な構成を開示している。他にも、ハプティック上への薬物送達デバイスの配置が提案されている。ハプティック上への薬物送達デバイスの配置が好ましい状況については、本発明者らは、IOLの裏側への水晶体内皮細胞の移動を阻止するために必要とされる正方形縁部を妨害しない構成を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0022840号明細書
【発明の概要】
【0005】
以下に記載されるデバイスおよび方法は、IOLの裏側の全周にPCO障壁縁部を維持しながら、IOLハプティック上への薬物送達デバイスの配置を提供する。本構成は、IOLおよび他の眼用インプラントとともに採用され得る。本構成は、IOLの全周に有効であるPCO障壁を維持しながら、インプラント患者に影響を及ぼす種々の疾患を治療するために、薬物送達デバイスの埋め込みに加えてIOLの埋め込みを可能とする。前記デバイスはレンズおよびハプティックを含むIOLアセンブリを含む。IOLアセンブリは前面および後面、ならびに周囲側壁によって特徴付けられる。前記後面は鋭い角度の縁部において周囲側壁に接合する。前記鋭い角度の縁部は前記鋭い角度の縁部の平面を画定し、前記鋭い角度の縁部はPCO障壁縁部として機能する。薬物送達デバイスはハプティック上に配置され、各薬物送達デバイスの最後面が平面から前方に変位されるように、ハプティック上に構成かつ配置される。この構造では、ハプティック上の薬物送達デバイスの存在は、鋭い縁部と水晶体被膜の後部との間のPCO障壁の形成を妨害しない。
【0006】
PCO障壁縁部を維持する別の構成では、薬物送達デバイスの最後方範囲は、レンズのPCO障壁縁部の平面を越えて後方に延在し得る。この構成では、薬物送達デバイスは、後面と、後側壁に隣接する周囲側壁とを備えて構成され、上述のIOLのPCO障壁縁部と同様に、薬物送達デバイスの後面は、鋭い角度の縁部(後方外側縁部でもある)で薬物送達デバイスの周囲側壁に接合する。
【0007】
加えて、以下に説明する薬物送達デバイスの他の構成は、水晶体嚢内でのIOLおよび薬物送達デバイスの安定した位置決めを提供する。薬物送達デバイスの前面は、水晶体嚢によって薬物送達デバイスに及ぼされる力が水晶体嚢の赤道面に対するIOLの傾斜を促さないように構成される。そのため、IOLのレンズの光軸は眼の光軸に対して角度を持たない。後面は、IOLの平面に対して平行な平坦面であり得るか、またはIOLの平面に対して平行な平面内に存在する縁部によって囲まれた湾曲面であり得る。
【0008】
様々な態様において、本明細書に提供される眼用インプラント(11)は、レンズ(24)およびハプティック(28)を含むIOLアセンブリ(12)を含み、前記IOLアセンブリは前面(24A)および後面(24P)、ならびに周縁側壁(24C)によって特徴付けられ、前記後面が鋭い角度の縁部(24E)で周縁側壁に接合し、前記鋭い角度の縁部(24E)が前記鋭い角度の縁部(24E)の平面(P)を画定している。そして、眼用インプラントは、ハプティック(28)上に配置された薬物送達デバイス(30)を含み、前記薬物送達デバイス(30)の最後面(30P)が前記平面(P)から前方に変位し、それによりハプティック(28)上の薬物送達デバイス(30)の存在がPCO障壁の形成を妨害しないように、前記薬物送達デバイス(30)はハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)の最後面(30P)は、平面(P)から0.1~1ミリメートルだけ前方に変位される。いくつかの事例において、ハプティック(28)は、接合部においてレンズ(24)に接合され、ハプティックとレンズとの間の接合部の最後方範囲は、鋭い角度の縁部(24E)から前方に変位/オフセットされる。いくつかの事例において、ハプティックは、接合部においてレンズ(24)に接合され、前記接合部の最後方範囲は、鋭い角度の縁部から前方に変位/オフセットされ、それにより、ハプティックの存在は、IOLの鋭い角度の縁部と前記嚢の後部との間のPCO障壁の形成を妨害しない。いくつかの事例では、鋭い角度の縁部は内角およびコーナー半径によって特徴付けられ、後方パネルの表面およびその後方パネルの円周側壁との間が80°~100°の範囲であり、鋭い角度の縁部のコーナー半径が500μm未満、好ましくは60μm未満である。
【0009】
様々な態様において、本明細書では、患者を治療する方法が提供され、前記方法は、
眼用インプラントを提供するステップであって、前記眼用インプラントは、
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、そのIOLアセンブリは、前面(24A)および後面(24P)、ならびに周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、前記後面は鋭い角度の縁部(24E)において前記周囲側壁に接合し、前記鋭い角度の縁部は前記鋭い角度の縁部の平面(P)を画定する、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック(28)上に配置される薬物送達デバイス(30)であって、その薬物送達デバイス(30)は、その薬物送達デバイスの最後面が前記平面(P)から前方に変位し、それにより前記ハプティック上の前記薬物送達デバイスの存在がPCO障壁の形成を妨害しないように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置され、緑内障、黄斑変性症、ブドウ膜炎、後嚢濁化、眼の感染症または炎症を治療するために有効な治療剤を含む、薬物送達デバイス(30)と、
を含む眼用インプラントを提供するステップと、
前記眼用インプラントを患者の眼の水晶体嚢内に埋め込むステップと、
前記水晶体嚢が前記IOLに接近し、前記水晶体嚢の後部と前記鋭い角度の縁部との間にPCO障壁を形成することを可能にするステップと
を含む。
【0010】
いくつかの事例において、薬物送達デバイスの最後面は、平面(P)から0.1~1.0ミリメートルだけ前方に変位される。いくつかの事例において、ハプティックは、接合部においてレンズ(24)に接合され、ハプティックとレンズとの間の接合部の最後方範囲は、鋭い縁部から前方に変位/オフセットされる。いくつかの事例において、ハプティックは、接合部でレンズ(24)に接合され、接合部の最後方範囲は、鋭い縁部から前方に変位/オフセットされ、それにより、ハプティックの存在は、IOLの鋭い縁部と前記嚢の後方部分との間のPCO障壁の形成を妨害しない。
【0011】
様々な態様において、本明細書では、眼用インプラント(11)が提供され、
前記眼用インプラント(11)は、
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、そのIOLアセンブリは、前面および後面、ならびに周縁側壁(24C)によって特徴付けられ、前記後面は、鋭い角度の縁部(24E)において前記周縁側壁に接合し、前記鋭い角度の縁部は、前記鋭い角度の縁部の平面(P)を画定する、前記IOLアセンブリ(12)と、
ハプティック上に配置される薬物送達デバイスであって、後面(33P)と周縁側壁(33C)とを有し、前記後面は鋭い角度の縁部(33E)において周縁側壁に接合する、前記薬物送達デバイスと、
を含む。
【0012】
いくつかの事例において、薬物送達デバイスは、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含むとともに、その後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備え、前記ハプティックが前記開口内に配置されて、薬物送達デバイスが前記ハプティックに固定される。いくつかの事例において、後方パネル(33)の円周側壁(33C)の一部は、IOL(24)の側壁(24C)の一部に直接接する。いくつかの事例において、後方パネル(33)の円周側壁(33C)は、IOL(24)の側壁(24C)から放射方向外向きに変位される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)から前方に変位されるように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)から後方に変位されるように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)と同一平面上にあるように、前記ハプティック(28)上に構成かつ配置される。
【0013】
様々な態様において、本明細書では、患者を治療する方法が提供され、前記方法は、
眼用インプラントを提供するステップであって、前記眼用インプラントは、
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、そのIOLアセンブリは、前面および後面、ならびに周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、その後面は鋭い角度の縁部(24E)において前記周囲側壁に接合し、前記鋭い角度の縁部は前記鋭い角度の縁部の平面(P)を画定する、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック上に固定されるように構成された薬物送達デバイスであって、後面(33P)と周縁側壁(33C)とを有し、その後面は鋭い角度の縁部(33E)において周縁側壁に接合し、前記薬物送達デバイスは、緑内障、黄斑変性症、ブドウ膜炎、後嚢濁化、眼の感染症または炎症を治療するために有効な治療剤を含む、前記薬物送達デバイスと、
を含む眼用インプラントを提供するステップと、
前記薬物送達デバイスを前記ハプティックに固定するステップと、
前記眼用インプラントを患者の眼の水晶体嚢内に埋め込むステップと、
前記水晶体嚢が前記IOLに接近し、前記水晶体嚢の後部と前記IOLの前記鋭い角度の縁部との間にPCO障壁を形成し、前記水晶体嚢と前記後方パネルの前記鋭い角度の縁部との間にPCO障壁を形成することを可能にするステップと、
を含む。
【0014】
いくつかの事例において、薬物送達デバイスは、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含むとともに、その後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備え、前記方法は、前記開口(34)にハプティック(28)を挿入することによって、薬物送達デバイス(30)をハプティック(28)上に固定することをさらに含む。いくつかの事例において、前記後方パネル(33)の周囲側壁(33C)の一部がIOL(24)の側壁(24C)の一部に直接接するように、薬物送達デバイス(30)をハプティック(28)上に固定する。いくつかの事例において、後方パネル(33)の円周側壁(33C)がIOL(24)の側壁(24C)から放射方向外向きに変位され、IOLのPCO障壁縁部と後方パネル(33)のPCO障壁縁部との間にラジアルギャップを残すように、薬物送達デバイス(30)をハプティック(28)上に固定する。いくつかの事例において、そのような方法は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)から前方に変位されるように、薬物送達デバイス(30)をハプティック(28)上に固定するステップをさらに含む。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)から後方に変位されるように、薬物送達デバイス(30)をハプティック(28)上に固定することをさらに含む。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)と同一平面上にあるように、薬物送達デバイス(30)をハプティック(28)上に固定することをさらに含む。
【0015】
様々な態様において、本明細書では、眼用インプラント(11)が提供され、
前記眼用インプラント(11)は、
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、そのIOLアセンブリは、前面と後面、ならびに周縁側壁(24C)によって特徴付けられ、その後面は、鋭い角度の縁部(24E)において前記周縁側壁に接合し、前記鋭い角度の縁部は、前記鋭い角度の縁部の平面(P)を画定する、前記IOLアセンブリ(12)と、
ハプティック上に配置される薬物送達デバイスであって、後面(33P)と周縁側壁(33C)とを有し、前記ハプティック上の前記薬物送達デバイスはPCO障壁の形成を妨害しない、前記薬物送達デバイスと、
を含む。
【0016】
いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)から前方に変位されるように、ハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)から後方に変位されるように、ハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)と同一平面上にあるように、ハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイスは、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含むとともに、その後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備え、前記ハプティックが前記開口内に配置されることで薬物送達デバイスがハプティックに固定される。いくつかの事例において、後方パネル(33)の円周側壁(33C)の一部は、IOL(24)の側壁(24C)の一部に直接接する。いくつかの事例において、後方パネル(33)の円周側壁(33C)は、IOL(24)の側壁(24C)から放射方向外向きに変位される。
【0017】
様々な態様において、本明細書では、眼用インプラント(11)が提供され、
前記眼用インプラント(11)は、
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、そのIOLアセンブリは前面および後面、ならびに周縁側壁(24C)によって特徴付けられ、前記ハプティック(28)は、薬物送達デバイス(30)を受け入れるように構成された形状およびサイズを有するハプティック基部(28B)を介して前記レンズと接合する、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック(28)上に配置されるように構成された薬物送達デバイス(30)であって、その薬物送達デバイス(30)は、ハプティック基部(28B)を受け入れるように構成された開口(34)を有し、前記開口(34)は、ハプティック基部(28B)の周りの薬物送達デバイス(30)の回転を抑制する構成において、ハプティック基部(28B)の形状およびサイズに調整され、それにより、組み立てられた構成において、前記薬物送達システム(30)は、前記ハプティック基部(28B)が開口(34)を占有する状態で、前記ハプティック基部(28B)上に配置される、前記薬物送達デバイス(30)と、
を含む。
【0018】
いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含むとともに、その後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備える。
【0019】
様々な態様において、本明細書では、眼用インプラント(11)が提供され、
前記眼用インプラント(11)は、
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、
前記IOLアセンブリは前面および後面、ならびに周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、前記ハプティック(28)は、薬物送達デバイス(30)を受け入れるように構成された形状およびサイズを有するハプティック基部(28B)を介してレンズ(24)に接合される、前記IOLアセンブリ(12)と、
ハプティック上に配置されるように構成された薬物送達デバイス(30)であって、その薬物送達デバイス(30)は、ハプティック基部(28B)を受け入れるように構成された開口(34)を有し、前記開口(34)はハプティック基部(28B)の周りの薬物送達デバイス(30)の回転を阻止する構成においてハプティック基部(28B)の形状およびサイズに調整され、組み立てられた構成において、前記薬物送達デバイス(30)は、前記ハプティック基部(28B)が開口(34)を占有する状態で、前記ハプティック基部(28B)上に配置される、前記薬物送達デバイス(30)と、
を含む。
【0020】
いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含むとともに、その後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備える。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、前面(36A)および前面縁部(36E)を有する前方パネル(36)を含み、前面縁部(36E)は、IOLレンズの主平面(B)に平行な平面(A)内に完全に位置する。いくつかの事例において、前記前面(36A)は平面である。いくつかの事例において、前記前方パネル(36)は、円周方向寸法(40)、幅(42)、および半径方向寸法(41)によって特徴付けられ、円周方向寸法(40)は、半径方向寸法(41)よりも大きい。
【0021】
様々な態様において、本明細書では、眼用インプラント(11)が提供され、
前記眼用インプラント(11)は、
レンズ(24)とハプティック(28)とを含むIOLアセンブリ(12)であって、前記IOLアセンブリは、前面および後面、ならびに周縁側壁(24C)によって特徴付けられ、前記ハプティック(28)は、薬物送達デバイス(30)を受け入れるように構成された形状およびサイズを有するハプティック基部(28B)を介して前記レンズと接合する、前記IOLアセンブリ(12)と、
前記ハプティック(28)上に配置されるように構成された薬物送達デバイス(30)であって、前記薬物送達デバイス(30)は、ハプティック基部(28B)を受け入れるように構成された開口(34)を有し、前記ハプティックは、ハプティック基部からの薬物送達デバイス(30)の外方移動を阻止するように構成された、第1の保持構造をさらに含み、組み立てられた構成において、第1の保持構造(37、36、39)は薬物送達デバイス(30)の障害となり、前記ハプティック基部(28B)からの薬物送達デバイス(30)の外方移動が阻止される、前記薬物送達デバイス(30)と、
を含む。
【0022】
いくつかの事例において、第1の保持構造は、前記ハプティクス(28)に沿った前記薬物送達デバイス(30)の外方移動を阻止するように構成された、前記ハプティクス上の戻り止めまたは肩部を含む。いくつかの事例において、前記第1の保持構造は、ハプティック基部(28B)内に刻み目を含み、前記薬物送達デバイス(30)は、前記刻み目を占有するように構成された支柱(35)を備える第2の保持特性を備える。いくつかの事例において、前記薬物送達デバイス(30)は、一対の支柱(35)によって接合された後方パネル(33)および前方パネル(36)を含むとともに、その後方パネル(33)、前方パネル(36)および支柱(35)によって囲まれた開口(34)を備え、前記薬物送達デバイス(30)は、支柱(35)のうちの1つが前記刻み目内に配置された状態でハプティック上に配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)から前方に変位されるように、ハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)から後方に変位されるように、ハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)は、薬物送達デバイス(30)の鋭い角度の縁部(33E)が平面(P)と同一平面上にあるように、ハプティック(28)上に構成かつ配置される。いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)の前記最後面(30P)は、平面(P)から0.1~1ミリメートルだけ前方に変位される。
【0023】
様々な態様において、本明細書では、眼用インプラント(11)が提供され、
前記眼用インプラント(11)は、
レンズ(24)およびハプティック(28)を含むIOLアセンブリ(12)であって、そのIOLアセンブリは、前面(24A)と後面(24P)、ならびに周囲側壁(24C)によって特徴付けられ、前記後面が鋭い角度の縁部(24E)において前記周囲側壁に接合し、前記鋭い角度の縁部(24E)は前記鋭い角度の縁部(24E)の平面(P)を画定する、前記IOLアセンブリ(12)と、
ハプティック(28)上に配置された薬物送達デバイス(30)であって、その薬物送達デバイス(30)の最後面(30P)が前記平面(P)から前方に変位し、それによりハプティック(28)上の薬物送達デバイス(30)の存在がPCO障壁の形成を妨害しないように、ハプティック(28)上に構成かつ配置される、前記薬物送達デバイス(30)と、
を含む。
【0024】
いくつかの事例において、薬物送達デバイス(30)の前記最後面(30P)は、平面(P)から0.1~1ミリメートルだけ前方に変位される。いくつかの事例において、ハプティック(28)は、接合部においてレンズ(24)に接合され、ハプティックとレンズとの間の接合部の最後方範囲は、鋭い角度の縁部(24E)から前方に変位/オフセットされる。いくつかの事例において、ハプティックは、接合部でレンズ(24)に接合され、接合部の最後方範囲は、鋭い角度の縁部から前方に変位/オフセットされ、それにより、ハプティックの存在は、IOLの鋭い縁部と前記嚢の後部との間のPCO障壁の形成を妨害しない。いくつかの事例では、鋭い角度の縁部は内角およびコーナー半径によって特徴付けられ、後方パネルの表面およびその後方パネルの円周側壁との間が80°~100°の範囲であり、鋭い角度の縁部のコーナー半径が500μm未満、好ましくは60μm未満である。いくつかの事例において、前記薬物送達デバイスは、1つ以上の治療剤を含む。いくつかの事例において、前記1つ以上の治療剤は、ベータ遮断薬、アルファアゴニスト、ROCK阻害剤、アデノシン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、アドレナリンまたはコリン受容体活性化剤、プロスタグランジン類縁体、ステロイド、アプタマー、抗体、補体因子、抗酸化剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、抗菌剤、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの事例において、1つ以上の治療剤は、プロスタグランジン類縁体を含むか、またはプロスタグランジン類縁体からなる。
【0025】
様々な態様において、本明細書では、眼疾患の治療を必要とする患者における眼疾患を治療する方法であって、本開示による眼科用インプラントを前記患者の眼の水晶体嚢内に埋め込むことと、それにより患者の眼疾患を治療することとを含む方法が提供される。いくつかの事例において、そのような方法は、前記水晶体嚢が前記IOLに接近することを可能にすることをさらに含む。いくつかの事例において、そのような方法は、前記水晶体嚢の後部と鋭い角度の縁部との間にPCO障壁を形成することをさらに含む。いくつかの事例において、前記眼疾患は、緑内障、滲出型黄斑変性、乾性黄斑変性症、ブドウ膜炎、眼の感染症もしくは炎症、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの事例において、前記埋め込むことは、眼用インプラントを折り畳むまたは巻いて小径構成にして注入器に収納することと、注入器を眼の角膜と強膜との間の小さなスリットを通して挿入することと、注入器から眼の組織に眼用インプラントを押し込むこととを含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本開示の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
図1図1および図2は、薬物送達のための眼用インプラントシステムの使用環境を示す。
図2図1および図2は、薬物送達のための眼用インプラントシステムの使用環境を示す。
図3図3は、デバイスの後面を示す、IOLおよび薬物送達デバイスの図である。
図4図4は、デバイスの前面を示す、IOLおよび薬物送達デバイスの図である。
図5図5は、眼内レンズおよび薬物送達デバイスを示し、ハプティックおよび薬物送達デバイスの前方オフセットを示す。
図6図6は、IOLの鋭い角度の縁部を示す。
図7図7および図8は、薬物送達デバイス後部に、IOLのPCO障壁縁部とは異なるPCO障壁縁部が設けられている、IOLと薬物送達デバイスとの組み合わせを示す。
図8図7および図8は、薬物送達デバイス後部に、IOLのPCO障壁縁部とは異なるPCO障壁縁部が設けられている、IOLと薬物送達デバイスとの組み合わせを示す。
図9図9は、図8と同様の薬物送達装置を示し、薬物送達装置の前方パネルに依存する追加のパネルまたはブロックが追加されている。
図10図10は、平面(D)が、IOLのPCO障壁縁部24Eによって画定された平面(P)から後方に変位される構成を示す。
図11図11は、ハプティックの周りの薬物送達デバイスのねじれを回避するように構成された薬物送達デバイスおよびハプティックの構成を示す。
図12図12および図13は、ハプティック上での薬物送達デバイスの外方移動を防止する手段、および水晶体嚢内での薬物送達デバイスのねじれを防止または制限する薬物送達デバイスの特徴を示す。
図13図12および図13は、ハプティック上での薬物送達デバイスの外方移動を防止する手段、および水晶体嚢内での薬物送達デバイスのねじれを防止または制限する薬物送達デバイスの特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および図2は、患者の眼におけるIOL(または他の眼用インプラントシステム)の配置および使用を示す。眼1は、水晶体2(眼の天然水晶体)および水晶体嚢3と、角膜5および虹彩6ならびに角膜と虹彩との間の空間を満たす房水を含む前房4と、虹彩と水晶体嚢との間の後房7とを含む。後腔/硝子体8は、水晶体と網膜9との間の大きな空間である。眼の天然水晶体2は、光軸10によって特徴付けられる。水晶体嚢は、光軸に対して概ね垂直な赤道面13によって特徴付けられる(眼用インプラントおよび/または眼内レンズシステムの以下の説明において、後方および前方という用語は、眼の解剖学的構造に関して使用され、角膜は前方であり、網膜は後方である)。
【0028】
図2は、眼内レンズアセンブリ12と、眼内レンズアセンブリ12とともに水晶体嚢内に埋め込まれる薬物送達デバイス30とを含む、眼内のIOLシステム(または他の眼用インプラントシステム)11の配置を示す。図2に示されるように、そして図3図5により詳細に示されるように、薬物送達デバイス30は、ハプティック28上に配置される。眼内レンズアセンブリ12は、レンズ24と、1つ以上のハプティック28と、1つ以上の薬物送達デバイス30とを含む。眼内レンズアセンブリ12は、前面24Aおよび後面24P、ならびに周囲側壁24Cによって特徴付けられる。例えば、嚢テンションリング、または薬物送達デバイスを定位置に保持するための嚢骨格などの他の眼用インプラントが、IOLの代用となり得る。ハプティックは、CループまたはJループなどの任意の形態であり得る。
【0029】
図3は、IOL12および薬物送達デバイス30の図であり、レンズ24の後面24Pと、レンズ自体の縁部またはレンズを取り囲むフレームの縁部であり得る、IOLの鋭い角度の後方外側縁部24Eとを含む、デバイスの後面を示す。ハプティックとレンズとの間の接合部31は、好ましくは、鋭い縁部から前方に変位/オフセットされることで、レンズの後側の周囲全体にわたってPCO縁部を保持する(典型的には、レンズおよびハプティックは一体的に形成され、この「接合部」はレンズとハプティックとの間の移行部を指す。)。薬物送達デバイス30は、一方または両方のハプティック28(好ましくは両方)上に配置され、ハプティック上を滑らせた管状(矩形または円筒形)の薬物送達デバイスの摩擦嵌合などの、任意の適切な方法で固定される。薬物送達デバイスは、レンズの後面24Pと同様に後方に面する後面30Pによって特徴付けられる。後面30Pはまた、後方外側縁部24Eから前方に変位/オフセットされることにより、後方外側縁部24Eへの後嚢3の融合の妨害を回避する。完全を期すために、図4は、IOLおよび薬物送達デバイスの図であって、レンズ24の前面24A、各ハプティック28、およびハプティックに固定され、かつ、前面30Aを含む薬物送達デバイス30を含む、デバイスの前面を示す。前面24AがIOLの周囲側壁と交わる点であるIOLの前縁部は、IOLの後側の縁部24Eに相当する鋭い角度の縁部であってもよく、または所望の光学特性を得るために、構成されるか、丸みを帯びさせてもよい。
【0030】
図5は、レンズ24、1つ以上のハプティック28、および1つ以上の薬物送達デバイス30を含む眼内レンズアセンブリ12を示す。図5に示すように、IOLの後面24Pと周囲側壁24Cとの間の鋭い縁部24Eは、レンズ24を取り囲む(好ましくはレンズを完全に取り囲む)縁部であり、鋭い縁部が位置する平面(P)を画定する。薬物送達デバイスの最後方範囲、および任意選択で、ハプティックとレンズとの間の接合部は、この平面から前方に変位され、IOLの鋭い後方縁部によって画定される平面(P)まで後方には延在しない。図6において、鋭い後方縁部の平面は、平面(P)として示されている。ハプティックに取り付けられた薬物送達デバイスの後方範囲は、制限され(および、任意で、ハプティクス接合部)、例えば、平面Dによって表されるオフセットによって制限される。オフセットは、嚢の後部と鋭い角度の縁部24Eとの融合の妨害を回避するのに十分であり、0.1~1.0mmであり得る。鋭い角度の縁部24Eは、PCO障壁縁部として機能するように構成された任意の縁部であり得、例えば、80~100°の内角α、および500μm未満、好ましくは60μm未満のコーナー半径32によって特徴付けられ得る。これは図6に示されている。
【0031】
図5に示すように、天然水晶体嚢3(鎖線で示す)は、前記嚢が鋭い縁部24Eと交わる線に沿ってIOL上に崩れ、これは、前房からIOLの後方の空間への、IOL後面と水晶体嚢後面との間の水晶体内皮細胞の移動に対する有効な障壁を形成する。
【0032】
薬物送達デバイスは、多くの構成で提供され得る。図に示されるように、薬物送達デバイスは、貫通孔を有するカラーまたはスリーブとして構成されてもよく、これは、ハプティック上を滑らせて、摩擦嵌合または戻り止め配置で保持することができる。薬物送達デバイスは、マトリックス中に埋め込まれた治療剤を有するポリマーマトリックスを含み得るか、またはそれは、浸食性形態の治療剤から構成され得る。前記マトリックスは好ましくはシリコーンを含むが、他の適切なマトリックス材料が使用され得る。薬物送達デバイスの全体は、治療剤または浸食性治療剤が充填されたマトリックス材料を含んでもよく、あるいは治療剤または浸食性治療剤が充填されたマトリックス材料は、薬物送達デバイスの一部に限定されてもよく、残りの部分は構造のために提供される。
【0033】
使用時には、いったん設置されると、薬物送達デバイスの後方最表面が、平面(P)から前方に変位して配置されるように、ハプティック上に、前記薬物送達デバイスを有する図3図6のIOLアセンブリが、構成かつ配置される。これにより患者の眼の水晶体嚢内に埋め込まれた時に、ハプティック上の薬物送達デバイスの存在がIOLレンズのPCO障壁縁部とのPCO障壁の形成を妨害しない。その後、水晶体嚢はIOLに接近し、水晶体嚢の後方部分と鋭い角度の縁部との間に薬物送達デバイスの後方によって中断されないPCO障壁を形成する。
【0034】
図7および図8は、組み立てられたIOL12および薬物送達デバイス30を示しており、薬物送達デバイス後部には、IOLのPCO障壁縁部とは異なるPCO障壁縁部が備えられる。図7に示されるように、IOLシステム11は、レンズ24から延びるハプティック28を有するIOL12を含む。薬物送達デバイス30は、ハプティック上に配置され、この構成において、PCO障壁縁部の平面(P)を越えて後方に延在してもしなくてもよい後面33P(図5および図6に示す)を有する後方パネル33と、楕円形であり楕円形開口に嵌合されるIOLレンズの枠に最も近いハプティックの一部分を収容する楕円形開口34と、を含む。2つの支柱35は、後方パネル33から前方に延びて、ハプティック28の前方側に配置された前方パネル36と接合し、後方パネル33、前方パネル36およびポスト35によって囲まれた開口34を形成する。図8からわかるように、薬物送達デバイスの後方パネル33の後面33Pは、鋭い角度の縁部33Eを有する後方パネルの側壁33Cに接合される。この鋭い角度の縁部は、IOLの鋭い角度の縁部と類似していてもよく、後面33Pと後側壁の周囲側壁33Cとの接合部に形成されている。後方パネルの鋭い角度の縁部33Eは、IOLのPCO障壁縁部24Eによって画定される平面(P)に対して後方または前方、または同一平面上にあり得る平面(D)を画定し得る。したがって、薬物送達デバイス30は、薬物送達デバイス30の鋭い角度の縁部33Eが平面(P)から前方に変位されるか、平面(P)から後方に変位されるか、または平面(P)と同一平面上にあるように、ハプティック28上に構成かつ配置される。図10は、平面(D)が、IOLのPCO障壁縁部24Eによって画定された平面(P)から後方に変位される構成を示す。
【0035】
後方パネル33の鋭い角度の縁部33Eは、後方パネルおよび後方パネルの側壁の周囲全体に延在することが好ましい。後方パネル33の鋭い角度の縁部33Eおよび周囲側壁33Cは、IOLの周囲側壁24Cに直接接してもよく、または、後方パネル33の鋭い角度の縁部33Eおよび周囲側壁33Cは、後方パネル33の周囲側壁33CがIOL24の側壁24Cから放射方向外向きに変位されるように、IOLのPCO障壁縁部と後方パネル33のPCO障壁縁部との間に狭いラジアルギャップを残して、周囲側壁24Cから離間されてもよい。
【0036】
平面(D)が平面(P)と同一平面上にあり、後方パネルがIOL側壁に直接接する場合、IOL側壁に直接接する後方パネルの領域は、鋭角ではない縁部を備えてもよく、PCO障壁縁部および後方パネルの残りの縁部は、組み合わされたIOLおよび薬物送達デバイスの全周に鋭い角度の縁部を備える。
【0037】
図8は、図7の薬物送達デバイス30を分離して示し、開口34、支柱35、後方パネル33、および前方パネル36を示す。図9は、図8のものと類似した薬物送達デバイス30を示し、開口34、支柱35、後方パネル33、および前方パネル36を示し、追加の側方パネルまたはブロック37が追加されている。側方パネルは、前方パネルから後方に延在し得、または支柱に固定され得る。治療剤または浸食性治療剤が装填されたマトリックス材料を含むこの薬物送達デバイスの部分は、前方パネル、支柱、後方パネル、または側方パネル(複数)のうちの1つ以上、またはすべてを含み得る。
【0038】
使用時には、図7図8、および図9のIOLアセンブリおよび薬物送達デバイス構成は、患者の眼の水晶体嚢内に埋め込まれてもよく、前記水晶体嚢は、次いで、IOLに接近し、前記水晶体嚢の後部とIOLの鋭い角度の縁部との間にPCO障壁を形成し、水晶体嚢と後方パネルの鋭い角度の縁部との間にPCO障壁を形成してもよい。薬物送達デバイス30は、後方パネル33の周囲側壁33Cの一部がIOL24の側壁24Cの一部に直接接するように、または後方パネル33の周囲側壁33CがIOL24の側壁24Cから放射方向外向きに変位されることで、IOLのPCO障壁縁部と後方パネル33のPCO障壁縁部との間にラジアルギャップを残すように、ハプティック28上に固定される。
【0039】
これは、薬物送達デバイス30の鋭い角度の縁部33Eが平面(P)から前方に変位されるように、または薬物送達デバイス30の鋭い角度の縁部33Eが平面(P)から後方に変位されるように、または薬物送達デバイス30の鋭い角度の縁部33Eが平面(P)と同一平面上にあるように、薬物送達デバイス30をハプティック28上に固定することによって達成され得る。いくつかの事例において、薬物送達デバイス30は、薬物送達デバイス30の鋭い角度の縁部33Eが平面(P)から前方に変位されるように、ハプティック28上に構成される。
【0040】
いったん埋め込まれたIOL11が、水晶体嚢内の好ましい前/後位置に留まり、レンズ24の平面が眼の光軸10に垂直で、それに対応して水晶体嚢の赤道面と同一平面、または水晶体嚢の赤道面に平行な平面で、望ましい方向に留まることを保証するために、薬物送達装置の様々な構成が採用され得る。図11は、薬物送達デバイス30およびハプティック28の構成を示す。ハプティックの周りの薬物送達デバイスのねじれを回避するために、任意の適切な方法および任意の適切な手段で、ハプティックの基部の周りでの薬物送達デバイスの回転を抑制または防止するため、薬物送達デバイスを通る開口(後方パネルと前方パネルおよび接続支柱との間)は、ハプティックの基部の形状に調整される。図11において、これは、正方形または長方形の断面を有するハプティック基部28Bと、ハプティック基部を収容するように寸法決めされた適合する正方形または長方形の開口部を有する薬物送達デバイスと、を用いて達成される。したがって、薬物送達デバイスは、ハプティック上に配置されるように構成され、開口はハプティック基部を受け入れるように構成され、前記開口は前記ハプティック基部の周りでの薬物送達デバイスの回転を阻止する構成において、前記ハプティック基部の形状およびサイズに対応して調整される。組み立てられた構成において、ハプティック基部が開口を占有する状態で、薬物送達デバイスはハプティック基部上に配置される。薬物送達デバイス内で、楕円形の開口と対をなす楕円形のハプティック基部、または六角形の開口と対をなす六角形ハプティック基部など、開口がハプティック基部に対して調整される任意の他の構成を採用しうる。したがって、ハプティックまたはハプティック基部の周りでの薬物送達デバイスのねじれを防止するための様々な手段が採用され得る。
【0041】
ハプティック上での薬物送達デバイスの放射方向外側への移動を防止するための構成もまた、採用され得る。図11に示すように、例えば、ハプティックは、ハプティックから突出する戻り止め隆起38を含み得、薬物送達デバイス開口の内部には、任意選択の対応する戻り止め受容溝を有し得る。薬物送達デバイスは、いったんハプティック基部上の所定の位置に配置されると、戻り止めに衝突または当接し、したがってハプティック上での薬物送達デバイスの移動を防止することができる。図12および図13は、ハプティックがハプティック基部28Bの側面に配置された刻み目39を有する、ハプティックおよび薬物送達デバイスの実施形態を示す。刻み目は、刻み目内に嵌合する薬物送達デバイスの支柱の構成と組み合わされることで、薬物送達デバイスとハプティックとの間に締まりばめを提供する。薬物送達デバイスがハプティック基部上で引き伸ばされる時、薬物送達デバイスの支柱が刻み目内に嵌合し、刻み目と支柱との間の締まりばめが薬物送達デバイスの外側への移動を防止する。
【0042】
図12および図13は、薬物送達デバイスの前方パネルまたは平面上の肩部と組み合わされた、ハプティックから前方に立ち上がる肩部を含む、外側への移動を防止する別の手段を示す。薬物送達デバイスがハプティック基部上で引き伸ばされる時、薬物送達デバイスは肩部に衝突するとともに肩部と干渉するため、薬物送達デバイスの外側への移動を防止する。
【0043】
図13はまた、薬物送達デバイスと水晶体嚢とのねじれを防止または制限する薬物送達デバイスの特徴を示す。前方パネルは、水晶体嚢の赤道、または赤道によって画定される平面に対するIOLのねじれの可能性を制限するように構成される。図13を参照すると、前方パネル36は、縁部36E全体が平面A内に位置する、平面前面36A、または縁部36E全体が平面A内に位置する湾曲した前面を有し、この平面の表面または縁部平面は、IOLレンズの主平面Bに平行な平面A内に配置され、適切に埋め込まれた時、水晶体嚢の赤道面(図1の項目13)に配置される。前方パネルは、半径方向寸法と比較して大きい側方または円周方向寸法を有し得(図11)、前方パネルの前面は、好ましくは、平坦であり、IOLの平面に平行な平面内に整列される。この構成によると、IOLおよび薬物送達デバイス上での水晶体嚢の崩壊は、水晶体嚢内でIOLをねじるかまたは傾斜させ得る力をIOLおよび薬物送達デバイスに及ぼす可能性が低い。
【0044】
IOLは、それを折り畳むかまたは巻いて注入器内で小径構成にし、注入器を角膜と強膜との間の小さなスリットを通して挿入し、IOLを注入器から押し出すことによって埋め込むことができる。注入器から排出されると、IOLは水晶体嚢内で広がり、ハプティックは水晶体嚢の境界によって許容される程度まで開き、拡張する。水晶体嚢は最終的にIOL上で崩壊し、前記嚢の後部はIOLの表面、特に鋭い縁部24Eに接近する。前記嚢と鋭い縁部との間の緊密な接合は、水晶体上皮細胞の、前記嚢の後部とIOLの後面との間の領域への移動を抑制する。薬物送達デバイスは、製造時にハプティックに固定され得、または埋め込みの直前、埋め込みの直後、もしくは埋め込みのかなり後に(例えば、消耗した元の薬物送達デバイスの置き換えとして)、外科医によって固定され得る。
【0045】
説明される各実施形態において、薬物送達デバイスは、様々な疾患を治療するための様々な治療薬を送達するように構成することができる。ブリモニジン、ラタノプロスト、チモロール、ピロカルピン、ブリンゾラミド、ならびにベータ遮断薬、アルファアゴニスト、ROCK阻害剤、アデノシン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、アドレナリンおよびコリン受容体活性化剤、ならびにプロスタグランジン類縁体の一般的なカテゴリーにおける他の薬物を、緑内障を治療するために薬物送達デバイスに組み込むことができる。アフリベルセプト、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ステロイド、およびアプタマーを薬物送達デバイスに組み込むことで、滲出型黄斑変性症を治療することができる。補体因子、抗酸化剤および抗炎症剤を薬物送達デバイスに組み込むことで、乾燥黄斑変性を治療することができる。メトトレキサート、抗体、デキサメタゾン、トリアムシノロン、および他のステロイド剤を薬物送達デバイスに組み込むことで、ブドウ膜炎を治療することができる。抗増殖剤、抗有糸分裂剤、抗炎症剤、および水晶体上皮細胞の拡散を阻害する他の薬剤を薬物送達デバイスに組み込むことで、後嚢混濁を治療することができる。白内障手術後の術後管理のためのフルオロキノロンなどの抗生物質、ケトロラクなどの非ステロイド剤、およびプレドニゾロンなどのステロイドを薬物送達デバイスに組み込むことで、感染症および炎症を治療することができる。
【0046】
上述の構成は眼内レンズに関連して説明されているが、各構成は、嚢テンションリングおよび嚢骨格を含む、水晶体嚢内への埋め込みを目的とした眼性インプラントの様々な他の形態とともに採用され得る。
【0047】
デバイスおよび方法の好ましい実施形態を、それらが開発された環境を参照して説明してきたが、それらは本発明の原理の単なる例示である。様々な実施形態の要件は、そのような他の種と組み合わせてそれらの要件の利益を得るために、他の種の各々に組み込まれてもよく、様々な有益な特徴は、実施形態において単独で、または互いに組み合わせて採用され得る。本発明の精神および添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、他の実施形態および構成を発明することができる。
【0048】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】