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特表2023-544448皮膚放射線傷害の予防及び治療のための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】皮膚放射線傷害の予防及び治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20231016BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 31/13 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/02
A61P1/02
A61K31/13
A61K31/137
A61K47/22
A61K9/08
A61K9/06
A61P1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542836
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 US2021051583
(87)【国際公開番号】W WO2022066791
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/081,547
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/081,718
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523104616
【氏名又は名称】ライセラ セラピューティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RYTHERA THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】6135 NW 167th Street Suite E-15 Miami Lakes, Florida 33015, US
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】レジナルト エル.ハーディー
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル ブリゲル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076BB29
4C076CC16
4C076CC19
4C076DD34S
4C076DD59S
4C076DD60S
4C084AA17
4C084MA17
4C084MA28
4C084MA56
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA671
4C084ZA672
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC201
4C084ZC202
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA07
4C206FA29
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA76
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZA67
4C206ZA89
(57)【要約】
酸性スフィンゴミエリナーゼ(FIASMA)の1つ以上の機能阻害剤を使用する、放射線皮膚炎及び放射線直腸障害を含む皮膚放射線傷害(CRI)を治療するための組成物及び方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚放射線傷害(CRI)を治療するための方法であって、前記方法は:
それを必要とする患者の皮膚の標的範囲に、放射線治療の前、間又は後に少なくとも1回/日、有効量の酸性スフィンゴミエリナーゼ(FIASMA)の1つ以上の機能阻害剤を含む局所組成物0.5~5mlを投与することを含む、方法。
【請求項2】
CRIを治療することが、CRIを予防する、CRIの発生率若しくは再発率を低下させる、阻害する、治療する、CRIの重症度を回復若しくは低下させる、又は逆転させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CRIが、環境放射線への曝露から生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CRIが、軍事兵器からの放射線への曝露から生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記CRIが、癌の医学的放射線治療から生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CRIが放射線皮膚炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記CRIが口腔粘膜炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記CRIが放射線直腸障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記FIASMAが、選択的セロトニン取り込み阻害剤(SSRI)、三環式抗うつ薬(TCA)、抗ヒスタミン薬、抗不整脈薬、アドレナリン受容体遮断薬(ARB)、及びβ遮断薬の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記FIASMAがSSRIである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記FIASMAがTCAである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記FIASMAが、ドキセピンを除くTCAである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記FIASMAがセルトラリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記FIASMAがアミトリプチリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、5~50mgまでのFIASMAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、前記組成物1ml当たり20mgまでのアミトリプチリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、前記組成物1ml当たり40mgまでのセルトラリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、前記組成物1ml当たり10~20mgのアミトリプチリンを含み、前記組成物1ml当たり5~50mgのセルトラリンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEから選択される抗酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、有効用量の活性成分を前記患者の前記標的範囲にインサイチュで送達する局所剤形として製剤化される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が薬学的に許容される基材と共に製剤化されて、前記活性成分を前記患者の皮膚の標的範囲に局所送達するためのローション、クリーム、軟膏、又はゲルを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が舌下剤形として製剤化される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が坐薬剤形で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、前記FIASMAを肛門直腸腔に送達するための直腸プラグデバイスによって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
皮膚放射線傷害(CRI)を治療するための医薬組成物であって、前記組成物が有効量の酸性スフィンゴミエリナーゼ(FIASMA)の少なくとも1つの機能阻害剤を含む、医薬組成物。
【請求項26】
CRIを治療することが、CRIを予防する、CRIの発生率若しくは再発率を低下させる、阻害する、治療する、CRIの重症度を回復若しくは低下させる、又は逆転させることを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記CRIが放射線皮膚炎である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記CRIが口腔粘膜炎である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記CRIが放射線直腸障害である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記FIASMAが、選択的セロトニン取り込み阻害剤(SSRI)、三環式抗うつ薬(TCA)、抗ヒスタミン薬、抗不整脈薬、アドレナリン受容体遮断薬(ARB)、及びβ遮断薬の群から選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記FIASMAがSSRIである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記FIASMAがTCAである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記FIASMAがドキセピンを除くTCAである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記FIASMAがセルトラリンである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記FIASMAがアミトリプチリンである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記組成物が、5~50mgの少なくとも1つのFIASMAを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記組成物が、前記組成物1ml当たり20mgまでのアミトリプチリンを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記組成物が、前記組成物1ml当たり40mgまでのセルトラリンを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記組成物が、前記組成物1ml当たり10~20mgのアミトリプチリンを含み、前記組成物1ml当たり5~50mgのセルトラリンをさらに含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記組成物が、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEから選択される抗酸化剤をさらに含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記組成物が、有効用量の活性成分を前記患者の前記標的範囲にインサイチュで送達する局所剤形として製剤化される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記組成物が薬学的に許容される基材と共に製剤化されて、前記活性成分を前記患者の皮膚の標的範囲に局所送達するためのローション、クリーム、軟膏、又はゲルを形成する、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記組成物が舌下剤形で投与される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記組成物が坐薬剤形で提供される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記組成物が、前記FIASMAを肛門直腸腔に送達するための直腸プラグデバイスによって投与される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項46】
有効量のFIASMAを含み、抗炎症薬及び麻酔薬を含まない、請求項25に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線曝露によって誘導された皮膚状態又は傷害を治療するための化合物、組成物、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚放射線傷害(CRI)は、哺乳動物及びヒトを含む動物における皮膚又はその下にある組織に対する損傷であり、産業又は軍事関連供給源、例えば、原子力発電所又は核兵器において使用される放射性材料からの放射線曝露により誘導され、又は該曝露から生じる。軽度皮膚損傷、例えば、日光への過剰曝露による日焼けは、一般にCRIの定義に入ると見なされないが;用語CRIは、放射線皮膚炎などの皮膚状態、又は、放射線直腸障害、口腔粘膜炎、若しくは重度の口腔粘膜炎などの他の状態を含むことができ、それらのそれぞれは、身体の特定の範囲に投与された医学的放射線療法の後に観察され得る。
【0003】
医学分野における放射線療法は、局所又は局部進行癌の治療において成功裏に使用されており、単独治療又は化学療法若しくは手術の補助として用いることができる。しかしながら、そのような治療における放射線曝露は、皮膚及び周囲組織の重度の熱傷、並びに色素沈着の永久的な変化を引き起こし得る。癌の放射線療法で治療された95%もの患者が、皮膚反応を経験するであろう。例えば、乳癌患者に投与された放射線治療に起因する特定の皮膚反応は、「放射線皮膚炎」と称される。
【0004】
頭頸部癌の患者は、頭頸部癌を治療するための放射線治療後に、口腔を裏打ちする上皮細胞に対する損傷に起因する口腔粘膜炎に罹患する可能性がある。放射線治療に起因して口腔内に潰瘍性病変が形成されたとき、又は患者が固体食物の嚥下が不可能となった場合、この状態は「重度の口腔粘膜炎」、即ち「SOM」と見なされる。
【0005】
骨盤範囲に投与された放射線療法は、直腸組織に損傷を引き起こし得る。骨盤範囲を標的とする放射線療法がもたらす多様な障害は、肛門直腸領域を冒す可能性があり、炎症性、虚血性、感染性、外傷性、又は腫瘍性病態のうちの1つ以上に関与し得る。肛門直腸疾患の症状には、肛門又は直腸痛、腸を動かす緊急性、便失禁、下痢、直腸出血、及び直腸の排出困難が含まれる。これらの状態は、「放射線直腸炎」と称され、より最近では、及びより正確には「放射線直腸障害」と称される。
【0006】
放射線療法を受けている癌患者におけるこれらの状態の蔓延に鑑みて、いくつかの戦略及び治療が、放射線皮膚炎に罹患している患者に提案されているが、大きな成功は収めていない。アロエベラ及び局所ビタミンCが試みられたが、照射された乳房組織の結果の改善はなかった。
【0007】
他の報告では、局所コルチコステロイド又はデクスパンテノール含有皮膚軟化剤の予防及び継続使用は、放射線皮膚炎を回復させ得るが予防しないことが示されている。他の報告では、3%尿素ローションを用いる湿潤皮膚ケアが頭頸部腫瘍を有する経皮照射された患者の急性皮膚反応を遅延させ、そのグレードを低下させることが示されている。コルチコステロイドの負の副作用は十分に実証されており、その使用は避けることが好ましい。局所コルチコステロイドは色素沈着変化に対して殆ど~全く効果がない。
【0008】
Biafine及びLipidermは放射線防護効果を有さないことが示された一方、遡及分析においてアミホスチンの使用から有意な皮膚細胞保護効果が示された。
【0009】
ミソプロストール、プロスタグランジンE(l)類似体は、動物試験において有効な放射線保護剤であることが見出されており、子宮において放射線に曝露されたシリアンハムスター胚の発癌性形質転換を予防した。しかしながら、ヒトでは結果の成功は得られなかった。
【0010】
放射線直腸障害又は直腸炎の予防又は治療の試みも、ほとんどが不成功であった。肛門直腸又は下部腸の状態に用いられた多くの局所治療は、効果がないように思われる。例えば、炎症性腸疾患(IBD)の治療に以前使用されていた抗炎症剤5-アミノサリチル酸(5-ASA)の使用は、ヒドロコルチゾンなどのステロイドを伴い又は伴わずに、放射線直腸障害又は直腸炎の治療では不成功であった。スクラルファートは、放射線直腸障害に推奨されていたが、効果がないことが証明された。
【0011】
ニトログリセリン及びカルシウムチャネル遮断薬などの局所療法も、放射線直腸障害の治療に有効ではないことが見出された。短鎖脂肪酸浣腸も放射線直腸障害の治療に使用されているが、入手が容易ではなく、投与が困難である。
【0012】
最近、坐薬中に製剤化されたビタミンA、ビタミンC、及びビタミンEなどの抗酸化剤が、放射線直腸障害又は直腸炎の治療に関して記載されている。坐薬は、特定の全身状態の治療のために肛門又は腟内に配置される医薬を含む固体剤形であるが、肛門直腸及び婦人科障害の局所的な治療に使用され得る。例えば、直腸坐薬の1つの一般的な使用は、便秘の治療のためである。
【0013】
直腸坐薬はまた、口腔による医薬の受容が不可能な患者において薬物送達の代替形態として使用され、それにより医薬は粘膜によって吸収され、全身に分布する。このタイプの直腸坐薬の例としては、悪心及び疼痛の治療が挙げられる。
【0014】
放射線療法からの健康な組織への損傷は、酸性スフィンゴミエリナーゼ/セラミド経路を介した形質膜からのシグナル伝達に関連した内皮応答が関与し得ることが提案されている(Corre,I.,et al.,Inti.J.Mol.Sci.(2013)14,22678-22696)。例えば、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)活性を阻害することによる、内皮損傷に対する保護は、正常組織内の放射線毒性を制限するための手段として示唆されている。Corre、上記、22685に。ASMaseの阻害剤は公知であるが、いずれも局所投与用に開発されておらず、一般にCRI、又は特に放射線皮膚炎若しくは放射線直腸障害の予防又は治療に有効であることが示されていない。
【0015】
アミトリプチリンは、坐薬剤形に製剤化されている。しかしながら、アミトリプチリン坐薬は、全身送達用に、及びうつ病(アミトリプチリンの公知の適応症)の治療用にのみ調製された。全身送達用のアミトリプチリン坐薬の別の適応症は不眠症であり、アミトリプチリンに観察される睡眠誘導副作用を利用する。アミトリプチリン坐薬は、骨盤放射線療法を受けている若しくは受けた患者に、又は放射線直腸障害若しくは直腸炎の治療のために、又は下部腸管内の任意の他のインサイチュ治療のために投与されることが以前に知られていなかった。
【0016】
三環式抗うつ薬は、一般に、放射線直腸障害又は直腸炎などの肛門直腸障害の治療について以前に知られていなかった。アミトリプチリンなどの三環式抗うつ薬を含む剤形もまた、肛門若しくは直腸投与又は放射線直腸障害若しくは直腸炎のインサイチュ(又は非全身)治療用に製剤化されていなかった。より具体的には、アミトリプチリンは、放射線直腸障害又は直腸炎の局所治療のための剤形、例えば坐薬又は他の肛門直腸送達デバイスに以前に製剤化されていなかった。三環式抗うつ薬、例えばアミトリプチリンはまた、放射線直腸障害又は直腸炎の治療のための薬物のインサイチュ送達のために、薬物放出が主に腸内、好ましくは下部腸内で起こるように、低いpH環境(7未満の酸性pH)内、例えば胃内での放出を迂回する制御放出製剤として製剤化されていなかった。
【0017】
選択的セロトニン取り込み阻害剤(SSRI)は、坐薬形態で利用可能であることが知られておらず;SSRIはまた、放射線直腸障害又は直腸炎の治療で使用されたことがこれまで知られていない。
【0018】
アミトリプチリンなどのTCA、又はセルトラリンなどのSSRIの局所投与から利益を得る可能性がある多数の肛門直腸疾患が存在する。これらの状態には、潰瘍性直腸炎及びクローン病を含む炎症性腸疾患(IBD)、裂肛、内痔核、放射線直腸障害、肛門及び直腸腫瘍、肛門疣贅、肛門異形成、孤立性直腸潰瘍症候群、肛囲そう痒症並びに肛門直腸虚血が含まれる(がこれらに限定されない)。これらの状態は、現在利用可能な治療選択肢が限られている多様な相当の臨床問題である。
【0019】
癌の治療における放射線療法の継続的且つ増大する使用、及び放射線皮膚炎又は放射線直腸障害を含むCRIに対する利用可能な予防的又は治療的医薬の欠如は、何百万もの患者に影響を及ぼす、長年の満たされていない患者のニーズである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
主題の発明は、産業若しくは軍事放射線源に関する放射線の環境曝露、又は癌治療における治療的放射線処置から生じた放射線皮膚炎若しくは放射線直腸障害を含む皮膚放射線傷害(CRI)を予防する、その発生率若しくは再発率を低下させる、阻害する、治療する、その重症度を回復若しくは低下させる、又は逆転させるための方法に関する。用語、CRIは、一般に、皮膚の外層又は真皮に対する放射線損傷を含むが、より深い皮膚層、例えば皮下層又は脂肪層に対する損傷も含み得る。放射線皮膚炎及び放射線直腸障害は、CRIの定義に含まれるが、一般に真皮の損傷に関連した状態と見なされる。
【0021】
本発明による方法は、放射線皮膚炎又は放射線直腸障害を含むCRIに罹患している患者の皮膚表面に、少なくとも1つの酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)阻害剤を含む組成物を局所投与又は適用することを含む。頭字語FIASMAにより当技術分野で公知の酸性スフィンゴミエリナーゼの機能阻害剤は、特定の選択的セロトニン取り込み阻害剤(SSRI)、三環式抗うつ薬(TCA)、抗ヒスタミン薬、抗不整脈剤、アドレナリン受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬などを含む。
【0022】
本発明の方法において有用なSSRIは:シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、又はセルトラリンのうちの1つ以上を含む。好ましいSSRIはセルトラリンである。好ましい実施形態によれば、本発明の剤形は、投与量0.1mg~1000mg;より好ましくは用量約1mg~100mg、最も好ましくは用量約5mg~50mgのアミトリプチリンを含む。好ましい用量は、1~5%(w/w)組成物に製剤化された約10~50mgのSSRIであると企図される。用量は変動してもよく、剤形中でより低いと薬物をより急速に部位に送達し、又は剤形中でより高いと薬物をよりゆっくり放出する。
【0023】
本発明の方法又は組成物において有用な三環式抗うつ薬(TCA)は:アミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン(単独ではなく組み合わせで)、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、マプロチリン、ノルクロミプラミン、ノルチアデン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、チアネプチン、又はトリミプラミンのうちの1つ以上を含む。好ましいTCAはアミトリプチリンである。好ましい一実施形態によれば、本発明の剤形は、投与量0.1~1000mg;より好ましくは用量約1mg~100mg、最も好ましくは用量約5mg~50mgのアミトリプチリンを含む。好ましい用量は、1~5%(w/w)組成物に製剤化された約10~50mgのTCAである。用量は変動してもよく、剤形中でより低いと薬物をより急速に部位に送達し、又は剤形中でより高いと薬物をよりゆっくり放出する。
【0024】
より具体的には、本発明の方法は:
- 薬学的に有効な量の少なくとも1つのFIASMA、又は2つ以上のFIASMA薬の組み合わせを活性成分として含む局所組成物を提供する工程と、
- 有効量の組成物を、放射線療法の前、又は放射線療法の後又は両方に、それを必要とする患者に局所投与又は適用する工程と、
を含む。
【0025】
放射線直腸障害を予防する、その発生率若しくは再発率を低下させる、阻害する、治療する、その重症度を回復若しくは低下させる、又は逆転させるための方法において、該方法は:
- 骨盤範囲の放射線治療を受けている患者、又は放射線直腸障害若しくは直腸炎に罹患している患者などの、それを必要とする患者に、薬学的に有効な量の1つ以上の活性成分を含む剤形を肛門直腸投与する工程であって、少なくとも1つの活性成分はFIASMAである、工程
を含むことができる。
【0026】
口腔粘膜炎又は重度の口腔粘膜炎を予防する、その発生率若しくは再発率を低下させる、阻害する、治療する、その重症度を回復若しくは低下させる、又は逆転させる方法において、該方法は:
- FIASMAを活性成分として含む舌下制御放出剤形を提供する工程と、
- 頭頸部癌の放射線治療を受けている患者などの、それを必要とする患者に、薬学的に有効な量の1つ以上の活性成分を含む制御放出舌下剤形を投与する工程であって、少なくとも1つの活性成分はFIASMAである、工程と、
を含むことができる。
【0027】
舌下投与用の制御放出剤形は、当技術分野で公知であり、剤形の溶解を遅延させることができ、それにより薬物の放出がある時間にわたって延長され、口腔内での活性薬物の存在を保持し、又は滞在時間を増大させる。そのような制御放出剤形は、医薬分野の当業者に認識されるように、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、トローチ(pastille)、トローチ(troche)、又は薄フィルムストリップなどであり得る。
【0028】
放射線療法の前に組成物を適用又は投与することは、放射線療法セッション中に組成物を定位置に保持することを含み得ることが理解されるであろう。本方法は、各放射線療法セッションについて反復することができ、放射線療法セッションの前、後又は間に、組成物を少なくとも1回/週、数回/週、毎日、又は1日複数回、投与又は適用することを含み得る。
【0029】
或いは、主題の発明による方法は、有効量の少なくとも1つのFIASMAを含む組成物を経口投与することを含むことができる。そのような経口組成物は、即時放出又は制御放出剤形であり得る。口腔を冒す状態、例えば口腔粘膜炎又は重度の口腔粘膜炎の場合、口腔内で溶解し、全体を飲み込まない経口剤形が好ましい。
【0030】
骨盤範囲内で放射線療法を受けている、放射線直腸障害の患者において、好ましい方法は、FIASMAを含む組成物を含む固体坐薬又は直腸プラグ剤形を提供することと、剤形を、部位への活性成分の送達に必要な期間、直腸腔内に配置することと、を含むことができる。
【0031】
主題の発明はまた、放射線皮膚炎又は放射線直腸障害を含む皮膚放射線傷害(CRI)を予防する、その発生率又は再発率を低下させる、治療する、その重症度を回復若しくは低下させる、又は逆転させるのに有用な酸性スフィンゴミエリナーゼ(FIASMA)の少なくとも1つの機能阻害剤を活性薬物又は活性物質として含む局所医薬組成物に関する。
【0032】
本発明はまた、放射線直腸障害の予防、その発生率若しくは再発率の低下、治療、その重症度の回復若しくは低下、又は逆転に使用するための坐薬剤形を含み得る。坐薬剤形は、可溶性基材及びTCA、例えば、アミトリプチリン、SSRI、例えばセルトラリン、又は1つ以上のTCA若しくはSSRIの組み合わせを含むことができ、さらに、坐薬剤形中で従来使用されている他の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0033】
肛門直腸腔へのFIASMAの送達及び薬物のインサイチュ投与のために坐薬又は直腸プラグ送達デバイスを使用する方法では、剤形は、制御放出製剤として直腸プラグ送達デバイスと共に提供され又は直腸プラグ送達デバイスに組み込まれ、剤形に組み込まれ又は剤形の外表面上に被覆された活性薬物の放出を遅滞させ得る1つ以上の賦形剤、又は活性成分を含む剤形中の粒子、顆粒若しくはビーズを有する。制御放出剤形は、経口投与用に提供することもでき、ここで経口剤形は、胃内の酸性環境を迂回し、pHが7.0を超える腸管内で活性成分を放出する遅延放出剤形として製剤化される。そのような制御放出剤形は、錠剤上の腸溶コーティングを用いて製剤化され、遅延放出カプセル剤若しくはカプレット内に提供され、遅延放出マトリクス組成物に製剤化され、又は上記の組み合わせであり得る。
【0034】
剤形が直腸プラグ送達デバイスの場合、デバイスは、ハウジングを形成する不溶性プラグであってもよく、該ハウジングは、TCA、SSRI、又はそれらの様々な組み合わせであり得るFIASMAを含む組成物を内部に収容するための内部チャンバを有する。例えば、直腸プラグのチャンバは、TCAを含む粘性組成物で満たされてもよく、又はTCA活性成分を含む坐薬剤形を収容してもよい。
【0035】
本発明の方法を実行するのに有用な直腸プラグ送達デバイスの代替的な実施形態は、TCA、例えばアミトリプチリン、SSRI、例えばセルトラリン、又はそれらの組み合わせを含む組成物を注入又は被覆した多孔質圧縮性発泡体材料を含む。本発明の方法について記載されるデバイスは、約0.1mg~約1000mg以上の有効用量のFIASMA又はFIASMA組み合わせを含むことができる。
【0036】
本発明による組成物はまた、単一の固定用量組成物に製剤化又は一緒に混合された2つ以上の活性医薬成分、例えば2つ以上の異なるTCA、2つ以上の異なるSSRI、又は1つ以上のSSRIと組み合わせた1つ以上のTCAなどを含む組成物を含んでもよい。
【0037】
本発明の方法で使用するための組成物は、約0.1~1000ミリグラム(mg)のFIASMAを含むことができる。本発明の方法により有用な局所組成物は、局所液体として提供することができるが、好ましくは局所クリーム、ゲル、ローション、又は軟膏として製剤化される。本発明の組成物及び方法における活性成分として有用な1つの好ましいFIASMAは、SSRI、セルトラリンである。本発明の組成物及び方法における活性成分として有用な別のFIASMAは、TCA、アミトリプチリンである。本発明の組成物又は方法では、他のFIASMA化合物で置き換えることができ、又は他のFIASMA化合物と組み合わせて提供することができる。
【0038】
局所剤形は、1つ以上の活性成分として使用される1つ以上のFIASMAと薬学的に適合可能な従来の及び市販の医薬基材組成物を含むことができ、さらに、局所又は経口剤形中に従来使用されている他の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。これらの市販の医薬基材は、活性薬物物質のためのビヒクル又は媒質として機能することができ、皮膚軟化剤、浸透促進剤、溶媒、ゲル化剤、増粘剤若しくは粘度向上剤、保存剤、又は局所製剤中に一般に使用される他の適切な賦形剤のうちの1つ以上を含むことができる。
【0039】
好ましくは、FIASMAは、組成物の適用又は投与後に、皮膚への組成物からの薬物の標的化投与及び即時送達を可能にする即時放出局所製剤で提供される。FIASMA成分が投与又は適用部位に保持されることが好ましい可能性がある。したがって、本発明の組成物は、浸透促進剤を含む組成物よりも長期間、組成物及び活性物質を皮膚の表面上に維持するために、浸透促進剤を除外することができ、これは、全身的に吸収され得る皮膚中又は皮膚下への活性物質の浸透を可能にし又は促進する。或いは、特定の場合、浸透促進剤が好ましく、組成物中で使用されてもよい。
【0040】
組成物の経口剤形は、即時放出であってもよく、又はポリマー、ゲル、ガム、ワックスなどの賦形剤と共に製剤化されてもよく、又はマトリクスに組み込まれてもよく、又は経口投与後の組成物からの活性成分の遅延(slow)、遅延(delay)、持続、又は延長放出のためのコーティングを含んでもよい。例えば、口腔粘膜炎の治療におけるFIASMAの舌下投与のための固体剤形は、口腔内で溶解するように製剤化されてもよく、剤形からの薬物の放出を制御、遅延、持続又は延長する賦形剤を含んでもよい。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、剤形は、TCA若しくはSSRI成分などの第2の活性物質を含むことができ、又はTCA若しくはSSRIではない第2の活性、例えば、異なる薬物クラスの活性成分を含むことができる。好ましい実施形態では、組成物は、TCAである第1の活性成分と、異なるTCAであるか若しくはSSRIである、又はTCAではない他のクラスの化合物である第2の活性成分とを含む。例えば、第2の活性成分は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、又はビタミンEなどの抗酸化剤であり得る。好ましくは、組成物中の第2の活性物質は、抗炎症剤、例えば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)でも麻酔剤、例えば局所麻酔薬、例えばリドカインでもない。
【0042】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、SSRIである第1の活性成分と、異なるSSRIであるか若しくはTCAである、又はSSRIではない他のクラスの化合物である第2の活性成分とを含む。例えば、第2の活性成分は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、又はビタミンEなどの抗酸化剤であり得る。好ましくは、組成物中の第2の活性は、抗炎症剤、例えば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)でもなく麻酔剤、例えば局所麻酔薬、例えばリドカインでもない。
【0043】
好ましくは、本方法は、放射線療法又は治療中に放射線に直接又は付随的に曝露される皮膚の標的範囲に有効用量を送達することができる局所組成物中に製剤化されたFIASMAを用いて行われる。例えば、活性成分は、液体組成物として製剤化され、皮膚の標的範囲に液滴として投与され得る。或いは、FIASMAは、患者の標的皮膚範囲へのFIASMAの局所送達のためのローション、クリーム、軟膏又はゲルとして、増粘剤又は粘度向上剤を含む組成物中に製剤化されてもよい。局所製剤は、放射線療法の前又は後に、皮膚の標的範囲上又は標的範囲内に擦り付けられてもよい。
【0044】
固体経口剤形を使用する方法では、活性成分は粒子、顆粒又はビーズとして提供され、当技術分野で容易に理解されるように、錠剤、カプセル剤、カプレットなどの形態で製造することができる。経口剤形は、例えば、制御放出剤形として提供することができ、ここで活性成分は、遅延放出剤形、例えば腸溶錠、遅延放出カプセル剤若しくはカプレットに製剤化され、又は遅延放出マトリクス組成物に製剤化され得る。これらの制御放出剤形の組み合わせも使用することができる。
【0045】
したがって、本発明によれば、皮膚放射線傷害(CRI)を予防する、その発生率又は再発率を低下させる、阻害する、治療する、その重症度を回復若しくは低下させるための方法は、それを必要とする患者の皮膚の標的範囲に、放射線治療の前、間、及び後に少なくとも1回/日、有効量、例えば、約0.5%~約5% w/wのFIASMA、例えばTCA(例えば、アミトリプチリン)又はSSRI(例えば、セルトラリン)を含む組成物を、治療するべき範囲のサイズに応じて0.5~50ml以上、局所投与することを含む。
【0046】
放射線皮膚炎を予防し、治療し、又は回復させるための方法はまた、それを必要とする患者の皮膚の標的範囲に、放射線治療の前、間、及び後に少なくとも1回/日、例えば、約0.5%~約5% w/wのFIASMA、例えばTCA(例えば、アミトリプチリン)又はSSRI(例えば、セルトラリン)を含む組成物を、治療するべき範囲のサイズに応じて0.5~50ml以上、局所投与することを含む。
【0047】
本方法はまた、それを必要とする患者の標的範囲に、放射線治療の前、間、及び後に少なくとも1回/日、有効量、例えば、約0.5%~約5% w/wのFIASMA、例えばTCA(例えば、アミトリプチリン)又はSSRI(例えば、セルトラリン)を含む組成物を、治療するべき範囲のサイズに応じて0.5~50ml以上、局所投与又は送達することによって、放射線直腸障害を予防する、治療する、又は回復させることを含む。
【0048】
本方法に使用される局所組成物は、組成物1ml当たり5~50mgのアミトリプチリンを含むことができ、又は組成物1ml当たり5~50mgのセルトラリンを含むことができ、又は組成物1ml当たり10~40mgのアミトリプチリン、及び組成物1ml当たり10~40mgのセルトラリンを含むことができる。
【0049】
上記の局所組成物は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEなどの抗酸化剤も含むことができる。
【0050】
好ましくは、本発明の方法に使用される組成物は、有効用量の活性成分を患者の標的範囲にインサイチュで送達する局所剤形として製剤化される。これは、患者の皮膚の標的範囲への活性成分の局所送達のためのローション、クリーム、軟膏、又はゲルを形成するために、薬学的に許容される基材と共に製剤化される組成物を用いて行われてもよい。
【0051】
或いは、組成物は、アミトリプチリン及びアミトリプチリンではない第2の三環式抗うつ薬、例えばアミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン(単独ではなく組み合わせで)、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、マプロチリン、ノルクロミプラミン、ノルチアデン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、チアネプチン、又はトリミプラミンを含むことができる。
【0052】
セルトラリンを含む組成物は、セルトラリンではない第2の選択的セロトニン取り込み阻害剤、例えばシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、又はパロキセチンを含むことができる。
【0053】
本発明の医薬組成物は、患者への1つ以上の活性成分の送達のために、有効量の1つ以上の活性成分、例えばアミトリプチリン、セルトラリン、又はそれらの組み合わせを含む局所医薬組成物として提供することができ、又は経口剤形であり得る。好ましい実施形態では、本発明の局所組成物は、抗炎症剤及び麻酔剤を有さず、含まず、又はそれらを除外する。
【0054】
好ましい局所医薬組成物は、組成物1ml当たり10~20mgのアミトリプチリン、又は組成物1ml当たり10~50mgのセルトラリン、又は組成物1ml当たり15~20mgのアミトリプチリン及び組成物1ml当たり20~40mgのセルトラリンを含む。上記のいずれも、さらに、有効量のビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、又はビタミンEなどの抗酸化剤を含むことができる。
【0055】
本発明の経口剤形は、制御放出経口剤形として製剤化することができる。
【0056】
本発明の方法及び組成物及び剤形は、アトピー性皮膚炎、熱傷、日焼け、皮膚筋線維腫、曝露により誘導されるしわなどの他の皮膚状態を予防する、治療する、又は回復させるのに有用であり得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】突出部材及びフランジ部材を有する直腸プラグデバイスの斜視図を示し、突出部材は、細孔を有し、少なくとも1つの活性成分、例えばTCA、SSRI、又はそれらの組み合わせを含む可溶性剤形を収容するためのチャンバの境界を付けるように示されたハウジングを含む。
図2】チャンバ内に配置された剤形を示す、図1の直腸プラグの断面図を示す。
図3】TCA又はSSRI又は組み合わせを含む組成物を注入され又は該組成物で被覆された多孔質圧縮性発泡体材料を含む、本発明の直腸プラグの代替的な実施形態の斜視図を示し、投与後のその拡張構成で示されている。
図4】投与前の圧縮構成の図3の多孔質圧縮性発泡体直腸プラグの斜視図を示す。
図5】30Gy焦点照射後の皮膚傷害の検査による結果を示す。図5のパネルAは、30Gy後の4週間までの個々のマウスの皮膚傷害スコアの概要である。パネルBは、経時的な放射線皮膚傷害スコアの観察された変化のグラフである。データは平均+/-SEMとして示される。n=5マウス/治療群。
図6】30Gy焦点照射後の皮膚傷害の検査の結果を示す。図6のパネルAは、照射前に4%セルトラリン3回、照射後に4%セルトラリン2回、又は照射前及び照射後にプラセボ5回で治療されたマウスに関する皮膚傷害スコアの概要である。皮膚傷害スコアは、照射後、6週間まで毎週検査された。図6のパネルB~Dは、異なる治療を受けたマウスのコホート間の皮膚傷害スコアの経時的な比較を示す。データは平均+/-SEMとして示される。n=5マウス/治療群。ボンフェローニ事後検定を有する2方向ANOVAによるP<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、ヒトを含む哺乳動物における皮膚状態を予防する、その発生率若しくは再発率を低下させる、阻害する、治療する、その重症度を回復若しくは低下させる、又は逆転させるための革新的な方法を提供し、治療の方法を実行するために新規な組成物又は剤形の使用を用いることができる。
【0059】
以後、皮膚放射線傷害、即ち「CRI」、又はCRIの一タイプと見なされる特定の状態に関連した用語「治療する」、「治療すること」、又は「の治療」は、CRIを「予防すること」、「その発生率を低下させること」、「その再発率を低下させること」、「阻害すること」、「回復させること」、「その重症度を低下させること」、「逆転させること」又は「治療すること」の任意の1つを意味し若しくは指し、又はそれらで置換することができる。特定の用語、CRIを「予防すること」、「その発生率を低下させること」「その再発率を低下させること」、「阻害すること」、「回復させること」、「その重症度を低下させること」、又は「逆転させること」は、その治療のみを指定することが意図される場合に使用され、又はこれらの用語は、その用語を意味することが意図されない場合、「治療」から明示的に除外され得る。例えば、「その発生率を低下させる」ための方法は、CRIの発生率を低下させることのみを意味し得、CRIを「阻害すること」を意味しない。或いは、「CRIの発生率(occurrence)を低下させることを除く、CRIを治療するための方法」は、CRIを予防する、その発生率(incidence)を低下させる、阻害する、回復させる、その重症度を低下させる、又は逆転させるための方法を意味し得る。
【0060】
用語「皮膚放射線傷害」、又は「CRI」は、産業又は軍事関連供給源、例えば、原子力発電所において、又は核兵器において、又は医学的放射線療法において使用される放射性材料からの放射線に対する曝露により誘導され、又は曝露から生じる、哺乳動物及びヒトを含む動物における皮膚又はその下にある組織に対する損傷と定義されるとして医学分野で受け入れられている。したがって、用語CRIは、医学的放射線療法後に観察される放射線皮膚炎又は放射線直腸障害などの皮膚状態を含むことができる。軽度の皮膚損傷、例えば、日光への過剰曝露による日焼けは、一般に、CRIの定義に含まれると見なされない。
【0061】
「放射線皮膚炎」は、身体の範囲の放射線療法から生じる皮膚の障害を指す。例えば、放射線療法は、女性及び男性における癌性乳房組織の、公知の許容された治療である。標的とされた癌性組織を覆う皮膚の炎症、及び放射線に対する曝露は、皮膚への損傷をもたらす可能性がある。これらの徴候及び症状は、放射線皮膚炎として知られる。この用語は、そのような障害を治療する皮膚科医及び他の医師によって臨床的に理解される通りに本明細書で使用される。
【0062】
「放射線直腸障害」又はその同義語、「放射線直腸炎」は、骨盤範囲の放射線療法から生じる直腸のライニングの炎症を含む、直腸機能の変化をもたらす直腸の障害を指す。骨盤範囲の放射線療法は、泌尿生殖器組織の癌、例えば、男性の前立腺癌の治療、又は女性の子宮頸癌の治療の公知の許容された治療処置である。この用語は、そのような障害を治療する医師によって臨床的に理解される通りに本明細書で使用される。
【0063】
「口腔粘膜炎」は、頭頸部癌の治療に使用される放射線療法から生じる状態を指し、「重度の口腔粘膜炎」又は「SOM」と適切に称されるより重度の状態は、多くの場合、口腔内の潰瘍性組織に関連し、又は患者が食物若しくは飲料を嚥下できない場合に関連し得る。口腔粘膜炎は、癌治療、特に放射線の一般的な、衰弱させる合併症である。これは、疼痛を含むいくつかの問題、食べることができない結果としての栄養上の問題、及び粘膜中の開放創による感染症のリスクの増大をもたらし得る。
【0064】
本発明の一実施形態は、有効量又は用量の酸性スフィンゴミエリナーゼの機能阻害剤(FIASMA)を投与することによる皮膚放射線傷害(CRI)の治療方法に関する。FIASMAの例としては、特定の選択的セロトニン取り込み阻害剤(SSRI)、三環式抗うつ薬(TCA)、抗ヒスタミン薬、抗不整脈薬、統合失調症治療薬、止痢薬、アドレナリン受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬、エストロゲン受容体モジュレーターなどが挙げられる。
【0065】
主題の発明による有用なSSRIの例は、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、及びセルトラリンである。主題の発明による有用な好ましいSSRIには、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、及びセルトラリンが含まれる。
【0066】
主題の発明による有用なTCAの例は、アミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン(単独ではなく組み合わせで)、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、マプロチリン、ノルクロミプラミン、ノルチアデン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、チアネプチン、及びトリミプラミンである。主題の発明による有用な好ましいTCAは、アミトリプチリン、デシプラミン、及びイミプラミンである。
【0067】
本発明は、少なくとも1つのFIASMA、例えばTCA又は及びSSRIの使用を含み、同じ薬物クラスからの少なくとも2つの異なるFIASMA、又は異なる薬物クラスからの少なくとも2つの異なるFIASMAの使用を含むことができる。例えば、主題の発明は、少なくとも2つのTCA、少なくとも1つのTCA及び少なくとも1つのSSRI、又は少なくとも1つのTCA若しくはSSRI及びTCA若しくはSSRIではない少なくとも1つの追加の活性成分を使用するCRIの治療を含むことができる。
【0068】
主題の発明による使用のための好ましいTCAは、アミトリプチリンである。米国内で商標名ELAVIL(登録商標)(AstraZeneca PLC、Cambridge England)で販売されているアミトリプチリンは、主に、大うつ病性障害、不安障害、及びあまり一般的ではないが注意欠陥多動性障害(ADHD)及び双極性障害を含む多数の精神疾患の治療に使用される。他の使用には、偏頭痛の予防、線維筋痛症及びヘルペス後神経痛などの神経因性疼痛、及びあまり一般的ではないが不眠症の治療が含まれる。
【0069】
主題の発明による使用のための好ましいSSRIは、セルトラリンである。米国内で商標名Zoloft(登録商標)(Pfizer、New York、NY USA)で販売されているセルトラリンは、主に、うつ病、パニック発作、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、社会不安障害(社会恐怖症)、及び重症型の月経前症候群(月経前不快気分障害)の治療に使用される。
【0070】
アミトリプチリン及びセルトラリンは、放射線皮膚炎の予防又は治療に有用であることは以前に知られていなかった。
【0071】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのFIASMAは、放射線皮膚炎などの皮膚状態又は障害の予防、回復又は治療のために、皮膚の表面上に配置又は適用することによって投与するための局所医薬組成物に組み込まれ得る。この組成物は、患者の医師又は医療従事者によって処方されるように、1日1回以上又は以下の頻度で投与され得る。
【0072】
剤形としての局所組成物又は製剤は、当技術分野で周知であり、医学的治療において従来使用されている。主題の発明による好ましい実施形態は、FIASMAを薬学的に適合可能な基材組成物に組み込んで、少なくとも1つのFIASMAを活性医薬成分(API)又は薬剤として含む局所ローション、クリーム、ゲル、又は軟膏を作製することである。本発明の別の実施形態は、活性薬剤としての少なくとも2つの異なるFIASMA、例えば、少なくとも1つのTCA及び少なくとも1つのSSRIの組み合わせを、薬学的に適合可能な基材組成物に組み込んで局所ローション、クリーム、ゲル、又は軟膏を作製することを含む。好ましい実施形態は、1つ以上の活性成分を薬学的に許容される基材中に徹底的に混合して均質混合物を提供することを含む。基材中の溶解が不完全な活性成分の場合、縣濁液を形成することができ、縣濁液は、活性物質が基材全体に均等に分散するように徹底的に混合された活性成分を含む。本発明の組成物は、局所剤形中で従来使用されている他の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0073】
本発明の別の実施形態では、1つ以上のTCA又はSSRIなどの活性成分は、経口投与用に製剤化することができる。一実施形態では、経口用量は、即時放出剤形として提供される。一実施形態では、経口用量は、制御放出剤形として提供される。
【0074】
一実施形態では、本発明の舌下投与用の経口剤形は、少なくとも1つのFIASMAを含む、単位剤形(例えば、ロゼンジ、丸剤、錠剤、フィルム、又はストリップ)の医薬組成物を含み、好ましい実施形態では、制御放出製剤として調製される。単位剤形、例えばロゼンジのサイズに関して、製造の簡易さ及び費用、並びに消費者の好みが考慮されるであろう。舌下剤形のサイズは、約5mm~20mm、又は約5mm~18mm、又は約7mm~18mm、又は約10mm~15mmで変動し得る。舌下剤形が円形又はほぼ円形の場合、サイズ範囲は、適切な直径値である。殆どの場合、ロゼンジの厚さは、1mm~10mm、より一般的には3mm~5mmであろう。
【0075】
舌下剤形は、単層又は二層の形態であり得る。可溶性粘膜付着特性を有する舌下剤形は、粘膜付着性親水コロイドを含む粉末をプレスすることにより作製され得る。一例として、付着性錠剤(pastil)は、付着性のためのアラビアゴムと、活性成分としての少なくとも1つのFIASMAとを含む乾燥粉末を混合することによって作製され得る。舌下剤形の口腔内の滞留時間は、製品の溶解速度及び総溶解時間に従って最適化され得る。例えば、舌下制御放出ロゼンジ又はフィルムは、投与後に口腔内で少なくとも1分、好ましくは1~30分、より好ましくは5~15分の滞留時間を有するように調製され得る。
【0076】
別の態様では、本発明は、舌下投与用に製剤化される単位剤形の医薬組成物を特徴とし、単位剤形は、5~50mgのFIASMAを含む(例えば、剤形は、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、又は50mgのセルトラリンを含む。
【0077】
制御放出経口剤形は、胃の酸性環境内で不溶性であり、小腸の中性環境内で可溶性であるポリマーフィルムで固体剤形を被覆することによって作製された遅延放出製剤を含む。
【0078】
本発明の組成物は、従来の添加物又は他の賦形剤、例えば可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、流動促進剤などを含むことができる。
【0079】
本発明は、FIASMAの投与によってCRIを予防する、回復させる、又は治療する方法を提供する。本方法は、約0.001~100グラムの活性成分を含む組成物を提供する工程と、薬物をそれを必要とする患者に、局所組成物、例えばクリーム若しくはローション若しくは軟膏として皮膚に直接、又は経口剤形に製剤化して送達する工程と、を含む。
【0080】
好ましい一実施形態によれば、局所剤形中に含まれるFIASMAは、投与量1~1000mg;より好ましくは用量約5mg~150mg、最も好ましくは用量約10~100mgで提供され、約0.5%~約5% w/w局所組成物として投与されるアミトリプチリンである。例えば、1%~5%活性成分(組成物1ml当たり10~50mgの活性成分)を含む組成物は、約0.5ml~約5ml/局所適用の量で投与され得る。好ましくは、組成物は、CRIを予防又は治療するために、10~100mgの活性成分を皮膚に送達するために約1ml~約2mlの量で局所投与される。
【0081】
1つの好ましい用量は、1%の主題の発明によるFIASMAを活性成分として含む少なくとも1mlの組成物の投与である。別の好ましい用量は、少なくとも1mlの主題の発明によるFIASMA活性成分を含む2% w/w組成物の投与である。さらに別の好ましい用量は、少なくとも1mlの主題の発明によるFIASMA活性成分を含む3% w/w組成物の投与である。尚別の好ましい用量は、少なくとも1mlの主題の発明によるFIASMA活性成分を含む4% w/w組成物の投与である。またさらに好ましい用量は、少なくとも1mlの主題の発明によるFIASMA活性成分を含む5% w/w組成物の投与である。薬物の濃度は、約0.1%の増分増加で提供され得ることが理解されるであろう。非限定的な例示として、FIASMAは、負の副作用を有することなく、意図される効果を得るために、所望により1.1%、1.2%、1.3%など、5%までの濃度で提供することができる。
【0082】
剤形中に含まれる用量は変動してもよく、剤形中でより低いと薬物をより急速に部位に送達し、又は剤形中でより高いと薬物をよりゆっくり放出する。用量の変動はまた、組成物中に含まれる活性成分に依存し得る。例えば、1つを超えるFIASMAを含む組成物は、各活性物質の1%未満、例えば0.1%~0.9%、好ましくは約0.5%の各活性物質を含むことができ、それにより最終組成物は、組成物中に1%~2%未満の総活性成分を含む。これは、有利には、患者に投与される各活性成分の用量を低下させる一方で、等価な又は実質的に等価な予防的又は治療的効果を提供することができる。少なくとも1つのTCA及び少なくとも1つのSSRIを含む固定用量の組み合わせ製品が相乗効果を提供し得ることも企図され、ここで有効性は、各活性成分が単独で使用された場合の予想される相加作用よりも大きい。
【0083】
一実施形態では、FIASMAは、制御放出製剤として経口剤形中に提供され、この制御放出製剤は、投与され次第、剤形からの全ての薬物の送達を提供する即時放出製剤と比較して、一定期間にわたる薬物の送達を可能にする。当技術分野で公知の制御放出製剤は、活性薬剤と共に製剤化されたコーティング、例えば腸溶被覆錠剤、ビーズ、又はペレット、イオン交換樹脂、ワックス、アルギン酸塩、ゲル化剤、例えばセルロースヒドロゲル(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、即ちHPMC)又はポリマーアクリルアミド(例えば、カルボポール(登録商標))、及び適切なビヒクルの使用を含む。
【0084】
本発明は、本発明の活性医薬成分、例えばTCA、例えばアミトリプチリン、SSRI、例えばセルトラリン、又はそれらの組み合わせのインサイチュ投与による肛門直腸障害の治療方法を提供する。本方法は、約0.001~100グラムの活性成分を含む組成物を提供する工程と、薬物を局所組成物、例えばクリーム若しくは軟膏として、又は坐薬若しくは直腸プラグ剤形に製剤化して、肛門直腸範囲に直接送達する工程とを含む。好ましい実施形態によれば、坐薬又は直腸プラグ剤形中に含まれるTCAは、投与量1~1000ミリグラム(mg);より好ましくは用量約5mg~150mg、最も好ましくは用量約10~100mgのアミトリプチリンであり、ここで1つの好ましい投与量は、約50mgを含む坐薬又は他の剤形である。別の好ましい実施形態では、坐薬又は直腸プラグ剤形中に含まれるSSRIは、投与量1~1000ミリグラム(mg);より好ましくは用量約5mg~150mg、最も好ましくは用量約10~100mgのセルトラリンであり、ここで1つの好ましい投与量は、約50mgを含む坐薬又は他の剤形である。坐薬又は直腸プラグ中に含まれる用量は変動してもよく、剤形中でより低いと薬物をより急速に部位に送達し、又は剤形中でより高いと薬物をよりゆっくり放出する。さらに、2つ以上の活性医薬成分が固定用量の組み合わせ坐薬製品中に提供される場合、活性成分のそれぞれの用量は、剤形中で減少し得、それにより有利には副作用のリスク又は発生率を低下させる。
【0085】
好ましくは、本方法は、TCA又はSSRIを活性成分として有する組成物を含む固体坐薬又は直腸プラグ剤形を提供することと、剤形を、部位への活性成分の送達に必要な期間、直腸腔内に配置することと、を含む。直腸プラグ送達デバイス内に提供される組成物は、坐薬であり得る。
【0086】
或いは、薬物は、有効用量の活性成分、例えばFIASMA、又は1つを超えるFIASMAの組み合わせを含む直腸プラグなどの直腸送達デバイスを使用して送達されてもよい。本発明による直腸プラグデバイスの一実施形態では、プラグデバイスは、活性成分を収容するためのチャンバを形成する不溶性多孔質ハウジングを含む。活性成分は、多孔質直腸プラグハウジング内に形成されたチャンバ部分内に配置された可溶性坐薬として提供され得る。坐薬は、投与された際に体液に曝露されて、活性成分を坐薬から溶解させ及びインサイチュ送達する。好ましい実施形態では、坐薬は、制御放出製剤として製剤化される。或いは、活性成分は、直腸プラグハウジング内のチャンバを満たす粘性の制御放出ゲル、軟膏、又はクリームとして製剤化されてもよい。
【0087】
他のタイプの直腸プラグが公知であり、主題の発明による使用に適合され得る。例えば、多孔質スポンジ様ポリマー材料、例えばポリウレタン発泡体から形成された直腸プラグが、便失禁における使用について公知である。このような直腸プラグは、名称PERISTEEN(商標)肛門プラグ(Coloplast Corp.、North Minneapolis、MN、USA)で販売されている。ポリウレタン発泡体は、有効量のFIASMAを含む溶液を注入することができ、直腸腔内に挿入された際の送達のために材料上に吸着され得る。これらの市販の直腸プラグは、一般に、挿入の容易さのために圧縮された構成で提供され、挿入後に溶解する水溶性フィルムで包まれ、拡大された構成に拡張し得る。このようは圧縮及び拡張は、主題の発明による薬物のインサイチュ送達には必要ではない。
【0088】
図1及び2は、本発明による使用のための直腸プラグ送達デバイスの一例を示す。図1は、直腸腔内に挿入され、活性成分の送達中、そこに常在する、デバイスの近位端を形成する細長い部材101を含む直腸プラグ送達デバイス100を示す。直腸プラグ送達デバイスは、遠位フランジ102を含んで直腸プラグ送達デバイス全体が直腸腔内に取り込まれることを防止し、それによって活性成分の投与中に直腸プラグデバイスを定位置に保つことができる。活性成分、例えばTCA又はSSRIは、細長い部材内に形成された空洞(図示せず)に収容される医薬組成物として提供されてもよい。細長い部材101の近位端は、細長い部材内に形成された空洞への体液の進入を可能にし、細長い部材内に含まれる組成物からの活性成分の退出を可能にするための細孔103を含む。直腸プラグ送達デバイスは、直腸プラグ送達デバイスの除去を容易にする、タンポンの除去と同様に機能する、遠位フランジに接続された延長部品、例えばストラップ又は紐を有することができる。
【0089】
図2は、活性医薬成分を含む組成物104を含むことができる、細長い部材101の近位端内に形成された空洞を示す、図1の直腸プラグ送達デバイス100の断面図を示す。図示されるように、組成物は、直腸腔内に投与された際に溶解又は融解する坐薬として形成され得る。或いは、組成物は、ゲル、クリーム、又は軟膏を含む無定形又は非形成組成物であり得る。好ましくは、組成物は、組成物から活性成分を経時的に放出する制御放出組成物、好ましくは延長放出組成物として提供される。
【0090】
別の実施形態では、剤形は、軟性の圧縮性多孔質材料(例えば、発泡体ゴム又はポリマースポンジ様材料)を含む肛門プラグを含み、活性成分は、多孔質圧縮性プラグ材料中に浸潤若しくは注入されているか、又は該材料上に被覆されている。この実施形態は、図3及び4に示される。
【0091】
図3は、拡張構成における軟性の圧縮性多孔質材料を含む直腸プラグ送達デバイス200を示す。直腸プラグ送達デバイス200は、その近位端に、直腸腔内に挿入された際に拡張し、直腸腔の形状に一致する薬物送達構成要素201を含む。薬物送達構成要素には、延長部品202、例えばストラップ又は紐が接続されて直腸プラグ送達デバイスの除去を容易にし、タンポンの除去と同様に機能する。
【0092】
本発明による活性成分を含む組成物は、液体若しくはゲル、クリーム、又は軟膏として、送達構成要素201を形成する多孔質材料中に注入され又は浸潤し得る。活性成分を含む組成物は、活性成分を経時的に放出する制御放出組成物、好ましくは延長放出組成物として提供され得る。
【0093】
図4は、図3の直腸プラグ送達デバイス200を示し、薬物送達構成要素201は直腸腔内への挿入を容易にするために、圧縮形態で提供される。圧縮された薬物送達構成要素201は、薬物送達構成要素201を囲む水溶性のラッパーを含むことができる。直腸プラグ送達デバイスの実施形態200を直腸腔に挿入した後、体液がラッパーを溶解し、薬物送達構成要素201が図3に示されるその拡張構成に拡張することを可能にする。図4は、直腸プラグ送達デバイスの除去を容易にするための、ストラップ又は紐であり得る延長部品202をさらに示す。
【0094】
好ましくは、活性成分は、投与されるとすぐに剤形からの全ての薬物の送達を提供する即時放出製剤と比較して、ある期間にわたる薬物の送達を可能にする制御放出製剤で提供される。当技術分野で公知の制御放出製剤には、活性剤と共に製剤化された、コーティング、例えば腸溶被覆錠、ビーズ、又はペレット、イオン交換樹脂、ワックス、アルギン酸塩、ゲル化剤、例えばセルロースヒドロゲル(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、即ちHPMC)、又はポリマーアクリルアミド(例えば、カルボポール(登録商標))、及び直腸液中で溶融又は溶解する適切なビヒクルの使用が含まれる。そのような製剤及び組成物、並びに坐薬又は他の制御放出組成物を製造する方法は、当技術分野で周知である。
【0095】
本発明による方法では、放射線皮膚炎などのCRIを治療することは、少なくとも1つのFIASMA、例えばTCA、例えばアミトリプチリン、及び/又は少なくとも1つの第2のFIASMA、例えばSSRI、例えばセルトラリンを含む組成物を使用する。本発明の方法で使用される組成物は、局所剤形で提供することができる。さらに、主題の発明は、アミトリプチリンなどの少なくとも1つのTCA、及び/又はセルトラリンなどの少なくとも1つのSSRIを含む経口剤形を使用して、放射線皮膚炎などの皮膚障害又は状態を治療する、回復させる、又は予防するための方法を含む。
【0096】
好ましくは、本方法は、組成物中に少なくとも1つのFIASMAを活性成分として有する組成物を含む局所剤形を提供することと、有効量の組成物を治療される皮膚の標的範囲上に、活性成分を部位に送達するのに必要な期間にわたって配置することとを含む。好ましい一実施形態では、活性成分は、皮膚への投与のための粘性の制御放出ゲル、軟膏、又はクリームとして製剤化することができる。本発明の局所組成物は、好ましくは、約0.1%濃度(組成物1ml当たり1mg)~約5%濃度まで(組成物1ml当たり50mg)の提供される各活性成分を;例えば、0.1%。0.2%、0.3%、0.4%、.05%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%及び1.1%、1.2%、1.3%など、0.1%の増分で約5.0%まで含む。典型的な用量は、約0.5ml~約2ml、好ましくは約1mlであるが、そのように限定されず、治療を必要とする皮膚の範囲によってのみ制限され、したがって5ml以上の用量を適用することができる。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、本発明の方法は:
環境放射線への曝露後にCRIに罹患している患者、又は医学的放射線療法を受けるか、若しくは受けており、放射線皮膚炎若しくは放射線直腸障害に罹患している患者などの、それを必要とする患者の皮膚に、有効用量の1つ以上の活性成分、即ちFIASMAである薬物を局所投与する工程を含む。
【0098】
口腔粘膜炎又は重度の口腔粘膜炎を予防する、その発生率若しくは再発率を低下させる、阻害する、治療する、その重症度を回復若しくは低下させる、又は逆転させる方法において、方法は:
- FIASMAを活性成分として含む舌下制御放出剤形を提供する工程と、
- 薬学的に有効な量の1つ以上の活性成分を含む制御放出舌下剤形を、それを必要とする患者、例えば頭頸部癌の放射線治療を受けている患者に投与する工程と
を含むことができ、
少なくとも1つの活性成分はFIASMAである。
【0099】
放射線直腸障害の治療方法において、本発明の方法は:
有効用量の1つ以上のFIASMA薬物、好ましくはTCA、SSRI、又はそれらの組み合わせから選択されるクラスの薬物を活性成分として、それを必要とする患者、例えば医学的放射線治療から生じた放射線直腸障害又は直腸炎に罹患している患者の直腸腔又は直腸組織に肛門直腸投与する工程を含む。
【0100】
放射線直腸障害の好ましい治療方法は、有効用量のFIASMA、例えばTCA、アミトリプチリン又はSSRI、セルトラリンを活性成分として肛門直腸投与することを含む。2つ以上の異なるFIASMA、又は1つ以上のFIASMAと、FIASMAではない活性成分との固定用量の組み合わせを含む組成物も使用することができる。好ましい一例では、本方法は、組成物として製剤化され、有効用量を患者の直腸腔にインサイチュで送達することができる剤形で提供されるアミトリプチリンを使用して行われる。例えば、アミトリプチリンは、液体として製剤化され、浣腸として投与されてもよく、又は増粘剤若しくは粘度向上剤と共に製剤化されて、患者の肛門直腸範囲及び直腸腔へのアミトリプチリンの局所送達用のローション、クリーム、軟膏若しくはゲルを提供してもよい。
【0101】
或いは、本方法は、活性医薬成分を肛門直腸腔に送達するために、及び薬物のインサイチュ投与のために、半固体又は固体剤形、例えば坐薬又は直腸プラグ送達デバイスを使用することができる。好ましくは、直腸プラグ送達デバイスと共に提供され、又は直腸プラグ送達デバイスに組み込まれる剤形は、剤形に組み込まれ又は剤形の外表面上に被覆された活性薬物の放出を遅延又は遅滞させることができる賦形剤を有する制御放出製剤である。
【0102】
剤形が直腸プラグ送達デバイスの場合、デバイスは、本発明による活性医薬成分を含む組成物を内部に収容する内部チャンバを有するハウジングを形成する不溶性プラグであってもよい 例えば、直腸プラグのチャンバは、FIASMA活性成分を含む粘性の組成物で満たされてもよく、又はFIASMAを活性成分として含む坐薬剤形を収容してもよい。
【0103】
本発明の方法を実行するのに有用な直腸プラグ送達デバイスの代替的な実施形態は、主題の発明による活性医薬成分を含む組成物を注入又は被覆した多孔質圧縮性発泡体材料を含む。本発明の方法に記載されるデバイスは、約0.1mg~約1000mg以上の量で提供される有効用量のFIASMAを含むことができる。
【0104】
本発明の方法は、それを必要とする患者に、少なくとも1つの活性成分及びFIASMAではない追加の又は第2の活性成分を投与することをさらに含むことができる。好ましくは、追加の活性物質は、少なくとも1つのTCA、少なくとも1つのSSRI、又はTCAとSSRIの組み合わせと一緒に、固定用量の組み合わせ製剤中に製剤化される。
【0105】
第1及び第2の活性物質を含む組成物の好ましい一実施形態は、TCA又はSSRI及び抗炎症薬、麻酔剤、又は抗酸化剤を含む。抗炎症薬は、ステロイド又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であり得る。或いは、組成物中の第2の活性物質は抗炎症剤ではなく、組成物はステロイド化合物を除外し、又は組成物は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を除外する。麻酔剤は、局所投与に一般的に使用される局所麻酔薬、例えばリドカインであり得る。抗酸化剤は、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEであり得る。
【0106】
主題の発明は、直腸腔への活性成分のインサイチュ送達のための制御放出製剤として製剤化された有効量のFIASMAを提供することを含む、放射線直腸障害を治療するための組成物を含む。好ましい一実施形態では、組成物は、少なくとも1つのTCA又は少なくとも1つのSSRI、又は少なくとも1つのTCA及び1つのSSRIを活性成分として含む制御放出坐薬として製剤化され得る。組成物は、本明細書に記載のFIASMAではない追加の薬物を含むことができる。
【0107】
坐薬又は直腸送達デバイスに含まれる活性医薬成分は、骨盤放射線療法の前、間又は後に投与することができる。好ましい投与は、坐薬又は直腸送達デバイスを直腸腔内に挿入し、全用量の送達が完了するまで坐薬又は直腸送達デバイスが直腸腔内に留まることを可能にすることを含む。本発明によれる好ましい坐薬は、ゆっくりと溶解し、約24時間までの期間、留まることができ、即ち毎日使用することができる。直腸プラグ送達デバイスは、約48時間までの期間、直腸腔内に留まることができるが、約24時間以内に活性成分の用量を送達する薬物製剤を含むことが好ましい。これは、排便後の毎日の使用を提供する。或いは、直腸プラグは、排便のために一時的に除去され、再挿入されてもよい。
【0108】
活性医薬成分を含む坐薬は、溶解に必要な期間、直腸腔内に滞留するように配置される。坐薬は完全に溶解可能であるので、坐薬からの活性成分の放出は、坐薬を直腸に滞留させた後に達成される。放出された活性成分は、送達の部位で高濃度で生じ、それにより肛門直腸障害に対するこの治療の有効性を増強する。
【0109】
代替的な実施形態によれば、坐薬は、他の薬物又はサプリメント、例えばビタミンE及びビタミンCを含む抗酸化剤、並びに天然抗酸化剤、例えば魚油、緑茶、ツルコケモモなどを含み又はそれらからなり得る。これらは、別個の坐薬製剤として又は本発明の坐薬の追加の成分として使用され得る。
【0110】
これらの使用及び本発明の実施形態のいずれかでは、これらの薬剤の坐薬形態は、肛門及び直腸の慢性疾患の臨床治療として使用される。
【0111】
肛門直腸疾患の治療のために坐薬形態で配置される、本発明により企図される活性成分の任意の形態が、本発明の範囲内である。さらに、本明細書に記載される活性医薬成分を他の活性又は不活性成分と組み合わせて肛門直腸疾患を治療するための坐薬に組み込むことは、本発明の範囲内で具体化される。さらに、肛門直腸障害を治療する手段として任意のFIASMAを坐薬に組み込むことは、本発明の範囲内で具体化される。最後に、他の薬剤、例えば抗炎症薬、麻酔薬、薬草、又は他のビタミンを、活性成分の有効性を増強するために坐薬に含めることができる。坐薬を製造するために使用される物質には、任意の脂肪(又は油性)基材及び/又は水溶性(又は混和性)基材が含まれる。
【0112】
特に好ましい実施形態では、坐薬に含まれる医薬は、アミトリプチリンである。好ましい実施形態では、坐薬は、脂肪(又は油性)基材及び/又は水溶性(又は混和性)基材から構成される。しかしながら、直腸内への医薬の通過を可能にするために、他の基材を本発明で使用することができる。より一般的には、デバイスを構築するために任意の形態の坐薬基材を使用することができる。さらに、多様なTCAが坐薬に組み込まれて、これらの物質が直腸及び肛門に直接適用されることを可能にすることができる。他の前述した物質も、肛門直腸障害の治療におけるそれらの有効性を増強するために坐薬に含めることができる。坐薬の内容物はまた、治療の目標に応じて、単独で又はアミトリプチリンと組み合わせて、多様なTCAからなることができる。
【0113】
治療される状態に応じて、アミトリプチリンの様々な用量を使用することができる。例えば、放射線直腸障害の治療に使用されるアミトリプチリンの直腸用量は、1日25~100mgである。デバイスの構築においては、これよりも少ない及び多い用量の両方が最初に使用されるであろう。これらの状態を治療するための最適な投与量は、臨床試験に基づいて決定される。
【0114】
しかしながら、この治療の臨床評価の後、より多い又は少ない用量のアミトリプチリンが、最終的に放射線直腸障害及び他の肛門直腸障害の治療に使用され得る。坐薬中のアミトリプチリン及び他のTCAの投与量は、これらの薬剤が罹患範囲に直接適用されるため、肛門直腸疾患の治療のための経口用量よりも少ないと予想される。しかしながら、坐薬又は直腸デバイスによる送達は摂取される必要がなく、剤形はより大きいサイズであり得るため、さらなる臨床経験又は試験に基づいて安全且つ有効であると決定された場合、経口剤形中で典型的に使用されるよりも多い用量も使用され得る
【0115】
好ましくは、CRIを治療するための方法は、FIASMA、例えば、アミトリプチリンなどのTCA、又はSSRI、例えばセルトラリンを使用して行われ、TCA又はSSRI又は両方は、組成物として調製され、有効用量を患者の皮膚にインサイチュで送達することができる剤形で提供される。例えば、アミトリプチリンは、液体として製剤化され、液体形態で皮膚の適用範囲に投与することができ、又は増粘剤若しくは粘度向上剤と共に製剤化されて、それを必要とする患者、例えば放射線療法を受けるか又は放射線皮膚炎に罹患している患者の皮膚の標的範囲にアミトリプチリンを局所送達するためのローション、クリーム、軟膏又はゲルを提供することができる。
【0116】
或いは、本方法は、固体経口剤形の投与を用いることができる。
【0117】
本発明の方法は、少なくとも1つのFIASMA及びFIASMAではない追加の活性成分を、それを必要とする患者に投与することをさらに含むことができる。好ましくは、追加の活性物質は、少なくとも1つのFIASMAと一緒に、皮膚への局所投与用の固定用量の組み合わせ製剤中に製剤化される。
【0118】
第1及び第2の活性物質を有する本発明の組成物の好ましい一実施形態は、第1の活性成分としてのSSRI及び第2の活性成分としてのTCA又は抗酸化剤を含む。抗酸化剤は、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEであってもよい。本発明の組成物のさらなる実施形態は、TCA、SSRI、及び抗酸化剤を含むことができる。活性成分の例は、TCAとしてのアミトリプチリン、SSRIとしてのセルトラリン、及び抗酸化剤としてのビタミンDである。
【0119】
治療される状態に応じて、本明細書に記載される1つ以上の活性成分の様々な用量を使用することができる。例えば、放射線皮膚炎の予防又は治療に使用されるアミトリプチリンの局所用量は、1日1mg~100mgである。
【0120】
これらの状態を予防又は治療するための最適な投与量及び治療される範囲は、臨床試験に基づいて決定される。しかしながら、この治療の適切な臨床評価の後、より多い又は少ない用量のアミトリプチリン又はセルトラリンが、最終的に放射線皮膚炎及び他の皮膚炎症性障害の予防又は治療に使用され得る。
【実施例
【0121】
実施例1 - TCAを含む組成物の使用
25mm乳房腫瘍の治療のための放射線療法を受けている又は受ける予定のある患者に組成物を提供し、該組成物は、薬学的に許容される基材中に1%~2%アミトリプチリンを含む軟膏である。放射線療法処置中に放射線に曝露され又はされるであろう皮膚の腫瘍上の範囲を特定し、マーキングし得る。
【0122】
医療従事者又は患者は、約1mlの組成物を、放射線に曝露され又は放射線によって影響を受けると予想される皮膚の範囲に少なくとも1回/日適用することによって組成物を投与する。組成物の投与を、放射線治療レジメン中、少なくとも1日1回、又は1日5回まで、少なくとも1週間繰り返す。例えば、放射線療法レジメンを週に5回(月曜日から金曜日)受けている患者は、放射線療法の90分前に、次いで就寝時に7日間、治療範囲にクリームを毎日適用し得る。月曜日~金曜日の放射線治療の前後、次いで週末、患者が放射線を受けないときに1日2回。これを5又は6週間繰り返す。
【0123】
予想される結果:放射線皮膚炎は、組成物の投与によって予防又は回復又は逆転される。
【0124】
実施例2 - 単一の活性物質、対、複数の活性物質の有効性の決定
25mm乳房腫瘍の治療のための放射線療法を受けている又は受ける予定のある5つの患者群は:
■ 薬学的に許容される基材中1%アミトリプチリン;
■ 薬学的に許容される基材中1%セルトラリン;
■ 薬学的に許容される基材中1%アミトリプチリン及び1%セルトラリン;
■ 薬学的に許容される基材中0.5%アミトリプチリン及び0.5%セルトラリン;並びに
■ 薬学的に許容される基材単独(プラセボ)
のいずれかを含む軟膏である組成物が提供される。
【0125】
放射線療法処置中に放射線に曝露され又はされるであろう皮膚の腫瘍上の範囲を特定し、マーキングし得る。医療従事者又は患者は、約1mlの組成物を、放射線に曝露され又は放射線によって影響を受けると予想される皮膚の範囲に少なくとも1回/日、放射線治療前に適用することによって組成物を投与する。組成物の投与は、放射線治療後に少なくとも1日1回、又は1日5回まで、1週間繰り返される。
【0126】
予想される結果:活性成分を含む各組成物の有効性は、患者の各群に存在する放射線皮膚炎のレベルをスコア化することによって決定される。アミトリプチリン及びセルトラリンの組み合わせの使用の有効性が相加又は相乗効果を示すかどうかの決定は、1%アミトリプチリン及び1%セルトラリンを含む組成物の放射線皮膚炎スコアが、1%アミトリプチリン組成物単独、及び1%セルトラリン組成物単独の効果よりも低い、それと同等、それよりも高いかどうかを比較することにより決定することができる。薬学的に許容される基材中に0.5%アミトリプチリン及び0.5%セルトラリンを含む固定用量の組み合わせ組成物の放射線皮膚炎スコアは、組成物中の各活性物質単独のより高い用量と比較して、各活性物質の組み合わせのより低い用量の有効性に関する情報を提供することができる。
【0127】
実施例3 - 照射されたマウスにおける放射線皮膚炎の治療
目的:放射線誘導皮膚傷害の保護剤としての、セルトラリンの局所再製剤の効果の決定。
【0128】
材料及び方法:放射線誘導皮膚炎実験を10週齢の雌C57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory)にて行った。マウスの背側皮膚上の約3x3cm範囲を薬物治療前に剃毛した。マウスは、4%セルトラリン又はビヒクル(コホート当たりn=5マウス)の局所治療を受けるように無作為に割り付けられ、全研究者が局所治療について盲検化された。
【0129】
試験は、活性薬物含有組成物をプラセボ(ビヒクル)と比較した。活性薬物含有組成物及びプラセボの両方を第三者により調製し、試験に使用するために本発明者らに提供された。組成物の製剤を以下に概略する:
【0130】
4%セルトラリンクリーム - ヘキシレングリコール、精製水、パルミチン酸イソプロピル、カプリル/カプリントリグリセリド、プロピレングリコール、セテアレス20、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG 100、ジメチコン、オクチルドデカノール、レシチン、エチルヘキシルグリセリン、及びフェノキシエタノールを含む水中油バニシングクリーム基材中の4%(w/w)セルトラリン(塩酸塩として)。
【0131】
プラセボクリーム - 精製水、パルミチン酸イソプロピル、カプリル/カプリントリグリセリド、プロピレングリコール、セテアレス20、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG 100、ジメチコン、オクチルドデカノール、レシチン、エチルヘキシルグリセリン、及びフェノキシエタノールを含む水中油バニシングクリーム基材。
【0132】
両方の製品を、塩化ポリビニルディスクライナーを伴う白色ポリプロピレンクロージャを有する白色ポリプロピレン瓶内に包装し、外用のみ用にラベル貼付し、制御された室温(20℃~25℃)で保管し、凍結しないように指示した。
【0133】
製剤を下の組成物表にさらに記載する:
【0134】
【表1】
【0135】
組成物表に示すように、4%セルトラリン組成物を自由基材として調製する。製剤に添加するセルトラリンHClの量は、HCl塩を補うように調整される。
【0136】
PENCreamは、Humco(https://www.humco.com/pharmaceuticals/pencream/)から購入した市販の水中油バニシング基材である。このクリームのNDCコードは0395-6010-56である。
【0137】
マウスは、局所治療を、照射の2日前に開始して1日1回12日間受けた。画像誘導小動物照射X-Rad 225 Cxを使用して、1x1cm範囲の剃毛した皮膚に30GyのX線の単一線量を送達することにより皮膚炎を誘導した。
【0138】
放射線誘導皮膚炎の発生を、治療群に対して盲検化された1人の観察者によって、照射前、及び照射後4週間、毎週検査した。放射線に対する皮膚反応を、前臨床試験用に以前確立された半定量的スコアシステムに従って評価した - スコア化は、紅斑、落屑(乾燥及び湿潤)、壊死及び真皮の喪失に基づいて1.0~5.5(0.5増分)の範囲である(表1)。
【0139】
【表2】
【0140】
結果:30Gy照射後の最初の2週間中、4%セルトラリンクリームによる治療を受けたマウス全てが皮膚傷害スコア4.5を有し、一方、ビヒクル治療を受けたマウスは、より軽度のスコア3.0~3.5を有した(図1、パネルA及びB)。引掻き行動及び後遺症が4%セルトラリンコホートにおいて認められた。
【0141】
照射後21日目に、両治療コホートは皮膚傷害スコア3.0~3.5を有した。照射後28日目の実験の終了時に、4%セルトラリンの治療を受けたマウスは、1.5~2.0の範囲のより軽度の皮膚傷害スコアを有し、平均スコアは1.7であった。
【0142】
対照的に、ビヒクル治療マウスは、1.5~3.5の範囲のより高い皮膚傷害スコアを維持し、平均スコアは3.0であった(図5、パネルA及びB)。
【0143】
考察:本発明者らの予備的結果は、4%セルトラリンを受けたマウスの皮膚傷害が、30Gyの4週間後に実質的に改善し、一方、ビヒクル治療マウスの皮膚傷害は重度のままであったことを示す。照射後の最初の2週間中の4%セルトラリンで治療したマウスのより高い傷害スコアの原因は調査中であるが、文献検索により、マウスにおいて、局所セルトラリンは、以前に確立された動物試験に示されるように(Neuron 87,124-138,July 1,2015)、マウスにおいて有意なかゆみ誘発性引掻きを誘発することが確認された。30分後にクリームを除去してこの実験を反復することにより、引掻き行動及び初期皮膚傷害スコアは実質的に低下したが、上記にデータを示すように、2週間後に同様の利益を尚示した。したがって、1週間目に認められた早期毒性は、セルトラリン誘導による引掻きに起因する自己傷害に関係すると考えられる。
【0144】
結論:結果は、驚くべきことに、4% FIASMA組成物、例えば、4%セルトラリン局所組成物が放射線誘導皮膚傷害に対して有効であることを示唆する。
【0145】
実施例4 - 照射治療前と照射治療後の比較
照射治療前及び照射治療後に投与した4%セルトラリンを比較するために、実施例3に示した実験をマウスで繰り返した。4%アミトリプチリンも試験した。
【0146】
実施例3に示したものと同じスコア化チャートを使用して、マウス上の照射部位を評価した。
【0147】
方法:放射線誘導皮膚炎実験を10週齢の雌C57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory)を使用して行った。マウスの背側皮膚上の約3x3cm範囲を薬物治療前に剃毛した。画像誘導小動物照射装置X-Rad 225 Cxを使用して30GyのX線の単一線量を皮膚の1x1cm範囲に送達して、皮膚炎を誘導した。4%セルトラリンクリームを照射前に1日1回、3日間、4%セルトラリンクリームを照射後24時間で開始して1日1回、2日間、又はプラセボを1日1回、5日間(照射の前後)の局所治療を受けるように、マウスをケージにより無作為化した。
【0148】
放射線誘導皮膚炎の発生を照射後6週間、治療コホートに対して盲検化された2人の観察者(S.H.及びS.S)によって毎週検査した。放射線に対する皮膚反応を、前臨床試験用に以前確立された半定量的スコアシステムに従って評価した - スコア化は、紅斑、落屑(乾燥及び湿潤)、壊死及び真皮の喪失に基づいて1.0~5.5(0.5増分)の範囲である。
【0149】
照射治療(IR)後、1週間、2週間、3週間及び4週間のスコア結果を下の表2に示す:
【0150】
【表3】
【0151】
結果。照射治療後4週間において、10匹のセルトラリン治療マウスのうち9匹が、ビヒクルのみで治療されたマウスよりも低いスコア(より良好な改善)を示した。一般に、4%セルトラリンクリームは、照射治療前と比較して照射治療後に投与された場合、より良好に機能した;しかしながら、照射治療前はいくつかの予防効果を示した。照射治療後24時間及び48時間に投与された4%セルトラリンクリームはまた、より早期の応答を示し、照射治療の1週間以内により低いスコアを示し、照射治療後第4週まで改善されたスコアを示し続けた。
【0152】
これらの結果を図6、パネルA~Dにグラフで示す。全体として、照射後に4%セルトラリンを2回受けたマウスは、照射後1週間で開始する急性放射線皮膚炎からの加速された回復を示した(図6、A及び2)。治療後2x群の皮膚傷害スコアは、30Gy後の3~6週間でプラセボ群よりも有意に低かった(図6、パネルB)。一方、治療前3x群の皮膚傷害スコアは、30Gy後の5週間のみでプラセボ群よりも有意に低かった(図6、パネルC)。注目すべきことに、照射前に4%セルトラリンを3回受けたマウスは、照射後に4%セルトラリンを2回受けたマウスと比較して、急性放射線皮膚炎からの有意に遅い回復を示した(図6、パネルD)。
【0153】
特に、4%アミトリプチリンクリーム及び4%フルオキセチンクリームの投与は、マウスに対して有害な効果を有し、この実験アームは停止した。これは、三環式抗うつ薬(TCA)を含む4%クリーム製剤が過剰用量であり、それらの有効性を決定するためにより低い用量が必要であることを示唆する。
【0154】
本発明の前述の記載は単なる例示であり、本発明の範囲を示される正確な用語に限定することを意図するものではない。さらに、本発明は特定の例示的な実施形態を参照して詳細に記載されているが、変形及び修正は以下の特許請求の範囲に記載及び定義される本発明の範囲及び趣旨内に存在する。
【0155】
上記の開示及び実施例は本発明を一般的に説明するものであり、例示を目的として提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、限定の非存在下で実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各例において、「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる」という用語のいずれも、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。用語及び表現は説明の用語として使用され、限定するものではなく、それらの用語及び表現の使用において、示され及び記載される特徴又はその一部の均等物を除外する意図はないが、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態及び場合による特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示される概念の修正及び変形が当業者によって利用され得、そのような修正及び変形は特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると見なされることを理解するべきである。

図1
図2
図3-4】
図5
図6
【国際調査報告】