(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ナス(SOLANUM MELONGENA)の種子のエタノール抽出物、それを得るための方法、それを含有する医薬組成物、および抗腫瘍剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/81 20060101AFI20231016BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231016BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231016BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231016BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231016BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
A61K36/81
A61K45/00 101
A61P43/00 121
A61P35/00
A23L33/105
A61K131:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546392
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 ES2021070738
(87)【国際公開番号】W WO2022079331
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523139076
【氏名又は名称】ユニバーシダッド デ グラナダ
(71)【出願人】
【識別番号】523139087
【氏名又は名称】セルビテック,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベルムデス ペレス,フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】パラドス サラザー,ホセ カルロス
(72)【発明者】
【氏名】メルグィゾ アロンソ,コンソラシオン
(72)【発明者】
【氏名】ポーレス フォウルキー,ヘスース マリア
(72)【発明者】
【氏名】メサス ヘルナンデス,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス マルティネス,ロザリオ
(72)【発明者】
【氏名】ガリステオ モヤ,ミラグロス
(72)【発明者】
【氏名】オルティス クエサダ,ラウル
(72)【発明者】
【氏名】カベザ モンティッラ,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス-フラード ロメロ デ ラ クルス,マリア
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD07
4B018MD53
4B018ME08
4B018ME14
4B018MF01
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C088AB48
4C088AC04
4C088CA06
4C088MA07
4C088MA08
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZB26
(57)【要約】
本発明は、ナス(Solanum melongena)の、好ましくは脱脂された、成熟種子からエタノール抽出物を得るための方法であって、50%エタノールを含有する含水アルコール溶液を用いて、酸性pHで、好ましくは窒素雰囲気下で、短時間、1~2時間以内で抽出されることを特徴とする方法を提供する。ナス(Solanum melongena)の異なる品種から得られた抽出物は、高いポリフェノール含有量を有し、結腸腺癌細胞株、膵臓腺癌細胞株、および多形膠芽腫細胞株に対して、化学療法抵抗性株に対してさえも強力な抗腫瘍活性を示すが、ヒト肝細胞に対する毒性は低い。したがって、本発明の抽出物は、現在使用されている化学療法に対して抵抗性があるものを含む、結腸腺癌、膵臓腺癌、および多形膠芽腫の治療における使用が提唱される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナス(Solanum melongena)の成熟種子ミールからエタノール性植物抽出物を得るための方法であって、
a)前記種子を粉砕してミールを得るステップと;
b)酸性pHの冷水アルコール抽出溶液を使用して、ステップa)の前記ミールを抽出するステップと、
c)任意により、ステップa)およびb)を実施する前に、機械的冷間プレスにより前記成熟種子を脱脂するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
a)前記種子を粉砕して、粒径100μm~150μmのミールを得;かつ/または
b)ステップa)で得られた前記ミールが、次の操作条件下で前記抽出溶液を使用して抽出され:
i.4℃に等しい温度、
ii.窒素雰囲気中、
iii.前記抽出溶液が、体積比50:50:0.2のエタノール、再蒸留水、および12N塩酸で構成され、
iv.pHが2に等しく、かつ
v.条件i~ivに達した後、前記ミールおよび前記抽出溶液の混合物の撹拌を30分間継続し、ここで、前記抽出溶液および前記ミールの前記混合物を遠心分離し、上清を回収することにより前記抽出物が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成熟種子を脱脂するステップc)が、40~50℃の温度で、抽出速度2~3kg種子/時間で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
i)前記ミールおよび前記抽出溶液の前記混合物を遠心分離することによって得られた沈殿物を前記抽出溶液に再懸濁させ、
ii)得られた前記懸濁液を、請求項2に記載のステップb)の条件下で再度撹拌を30分間継続し、
iii)前記懸濁液を遠心分離して、上清を回収し、かつ
iv)iii)で得られた前記上清を前記最初に得られた上清と混合することにより、エタノール抽出物が得られる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
得られた前記エタノール抽出物からエタノールを部分的または完全に蒸発させる最終追加ステップを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の方法により得られるエタノール抽出物。
【請求項7】
11.16~27.59μg没食子酸当量/mg抽出物の範囲の総ポリフェノール含有量を有する、請求項6に記載のエタノール抽出物。
【請求項8】
前記総ポリフェノール含有量が11.16~18.41μg没食子酸当量/mg抽出物の範囲であり、および/または還元能が5.33~6.31μg没食子酸当量/mg抽出物の範囲である、請求項6または7に記載のエタノール抽出物。
【請求項9】
前記総ポリフェノール含有量が、12.06~27.59μg没食子酸当量/mg抽出物の範囲である、請求項6~8のいずれかに記載のエタノール抽出物。
【請求項10】
少なくともsalanninおよび/またはカプシアノシドIIを含む、請求項6~9のいずれかに記載のエタノール抽出物。
【請求項11】
salanninおよびカプシアノシドII、さらに少なくともmyricomplanosideを含む、請求項10に記載のエタノール抽出物。
【請求項12】
salanninおよびカプシアノシドII、ならびにケンフェロール-3-sophorotrioside、myricomplanosideおよびaryllatoseBの群から選択される少なくとも1つの追加の化合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載のエタノール抽出物。
【請求項13】
salanninおよびカプシアノシドIIおよびさらに少なくともarylatoseBを含む、請求項12に記載のエタノール抽出物。
【請求項14】
salanninおよびカプシアノシドII、さらに少なくともmyricomplanosideおよびaryllatoseBを含む、請求項11~13のいずれかに記載のエタノール抽出物。
【請求項15】
salanninおよびカプシアノシドIIおよびさらに少なくともケンフェロール3-sophorotriosideおよびaryllatoseBを含む、請求項12に記載のエタノール抽出物。
【請求項16】
salannin、カプシアノシドII、myricomplanoside、aryllatoseB、およびケンフェロール3-sophorotriosideを含む、請求項11~15のいずれかに記載のエタノール抽出物。
【請求項17】
前記総ポリフェノール含有量が11.16~18.41μg没食子酸当量/mg抽出物の範囲であり、および/または前記還元能が5.33~6.31μg没食子酸当量/mg抽出物の範囲である、請求項16に記載のエタノール抽出物。
【請求項18】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法により得られた、請求項6~17のいずれかに記載のエタノール抽出物。
【請求項19】
請求項5に記載のエタノールの最終的、部分的または完全な蒸発が行われている、請求項18に記載のエタノール抽出物。
【請求項20】
脱脂成熟種子からのエタノール抽出物であって、前記成熟種子を脱脂するステップが、a)前記種子を粉砕するステップおよびb)前記得られたミールを抽出するステップを実施する前に、冷間機械プレスによって実施される、請求項18または19に記載のエタノール抽出物。
【請求項21】
請求項1に記載の方法により得られた請求項20に記載のエタノール抽出物であって、前記方法において、冷間機械圧搾により前記成熟種子を脱脂するステップが、ステップa)およびb)を実施する前に、請求項3に記載の条件下で実施され、前記種子を粉砕するステップa)および前記得られたミールを抽出するステップb)は、請求項2に記載のとおり実施され、請求項2に記載の方法を実行した後に得られる沈殿物の2回目の抽出が、請求項4に記載の条件に従って行われる、請求項20に記載のエタノール抽出物。
【請求項22】
請求項6~21のいずれかに記載の抽出物を製剤中に含む医薬組成物。
【請求項23】
前記抽出物中に存在する抗がん剤に加えて、少なくとも1つの抗がん剤をさらに含む組み合わせ医薬組成物である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、請求項22または23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項19~21のいずれかに記載の抽出物を製剤中に含む、請求項22~24のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
大腸がん、膵がんおよび神経膠芽腫の群から選択されるがんの種類の治療において使用するための、請求項6~21のいずれかに記載の抽出物。
【請求項27】
がんの種類が、結腸腺癌、膵臓腺癌および多形膠芽腫の群から選択される、請求項26に記載の使用のための抽出物。
【請求項28】
請求項20または21に記載の脱脂成熟種子からの抽出物である、請求項26または27に記載の使用のための抽出物。
【請求項29】
請求項10~18のいずれかに記載の成熟種子からの抽出物である、請求項26~28のいずれかに記載の使用のための抽出物。
【請求項30】
結腸腺癌の治療に使用するための、請求項29に記載の使用のための抽出物。
【請求項31】
化学療法抵抗性結腸腺癌の治療に使用するための、請求項29に記載の使用のための抽出物。
【請求項32】
膵臓腺癌の治療に使用するための、請求項29に記載の使用のための抽出物。
【請求項33】
大腸がん、膵がんおよび神経膠芽腫の群から選択されるがんの種類の治療において使用するための、請求項22~25のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記がんが、結腸腺癌、膵臓腺癌および多形膠芽腫の群から選択される、請求項33に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項35】
請求項25に記載の組成物である、請求項33または34に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項36】
前記がんが、結腸腺癌である、請求項34または35に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項37】
前記がんが、化学療法抵抗性結腸腺癌である、請求項36に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項38】
請求項6~21のいずれかに記載の抽出物の、栄養補助食品に組み込まれる機能性成分としての使用。
【請求項39】
請求項6~21のいずれかに記載の抽出物を機能性成分として含む栄養補助食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、植物学、栄養および生物医学の分野に関する。具体的には、本発明は、任意により脱脂されたナス(Solanum melongena)の成熟種子ミールから、抗腫瘍剤として使用される植物由来のエタノール抽出物を得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、特定の細胞の変化が過剰な細胞分裂およびこれらの悪性細胞の他の組織への拡散能力につながる増殖プロセスの制御の喪失を引き起こす一連の関連疾患として定義されている。一般に、がんは、世界人口において高い発生率を有し、特に患者が非常に悪い予後を有する進行ステージの疾患では、より有効な新規治療の開発が必要とされている。腫瘍学の分野では、大腸がん(CRC)は、現在の有病率および今後数年間の発生率の予測により、真の公衆衛生問題と見なされている。
【0003】
Spanish Society of Medical Oncology(Sociedad Espanola de Oncologia MedicaまたはSEOM)の2018年のデータによれば、CRCは、男女および世界で最も発生率の高いがんの3位である。スペインでは、CRCは、男女ともに最も高頻度で診断されるがん(2019年)であり、男性および女性の両方において、2番目に多いがんである。死亡率に関しては、National Institute of Statisticsによると、2019年12月の時点で、CRCは男女ともにがん関連死の2番目に多い原因であった。この死亡率は、明確な増加傾向を有し、ライフスタイルおよび食事に関連していることが示されている。
【0004】
CRCを発症するリスク因子は、以下である:i)年齢、これは、他の病状または素因のない50歳を超える患者(症例の90%)で最も頻繁に診断されるためである;ii)食事因子、これは、重要な役割を果たしており、継続的に調査されている;実際、過度のアルコール消費、体重過大および肥満、ならびに特定の種類の食品(加工肉)がこの病状に関連してる;iii)素因となる疾患、特に腸ポリープまたは炎症性腸疾患の存在。これは、これらの患者がCRC発症のリスクが高いと見なされるべきであることを意味する;iv)CRCの病歴;v)いわゆる遺伝的または家族的因子、ここでは、25%の症例で家族歴があり、10%で遺伝的要素があることを考慮する、およびvi)最後にライフスタイルであり、身体的不活動が重要因子である。
【0005】
近年、CRCの治療および予防が大いに進歩したにもかかわらず、治癒または発生率の低下という点では、満足のいく結果とはかけ離れている。患者が遠隔転移(特に肝臓内)を発症する疾患の最も進行した段階では、試験された様々な適用療法の結果が特に不良であることを強調する必要がある。これらの結果は、非常に低い生存率を有するこれらの患者の予後において、劇的に反映される。現在承認されているCRCの治療は、腫瘍が切除可能な場合の手術から、オキサリプラチン、イリノテカン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、Utefos、TAS-102、ラルチトレキシド(単独または併用)など、異なる細胞毒性をベースにした化学療法または放射線療法の使用にまで及ぶ。近年では、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブなどのモノクローナル抗体、および非常に特異的な治療適応症を有する組換え融合タンパク質(アフリベルセプト)など、CRCに対して活性な新規生物学的薬剤が開発されている(Loree et al.,2017;Nappi et al.,2018;Bregni et al.,2020)。それにもかかわらず、これらの患者の平均生存(15~20.5ヶ月)が明確に示すとおり、結果は、非常に限定的である。したがって、これらの患者の予後を改善し、生存率を改善するには、治療活性を予防作用に追加する新規戦略の開発が必要である(Idrees et al.,2019;Regleroetal.,2019)。
【0006】
新規治療および予防戦略の開発は、ナノテクノロジー、遺伝子治療のほか、免疫系を活性化する戦略を使用した免疫療法、または植物もしくは動物起源の新規化合物または抽出物の使用に至るまで、多数の研究分野を網羅しており、これらは、CRCの治療、または治療に対する応答を改善するための現在の治療に対するアジュバントにおいて活性であり得る。これに関連して、植物抽出物または誘導体が腫瘍細胞の生存率、増殖、および生存に及ぼす効果の試験は、近年大きな関心を集めている(Goyal et al.,2017)。実際に、この一連の研究は、特定のがん腫に対する様々な植物抽出物の抗腫瘍および予防活性が評価され始めた1960年以来、National Cancer Institute(USA)によって承認され、支援を受けている(Huang et al.,2013)。一般に植物、特にその抽出物は、i)治療剤の直接的な供給源である、ii)より複雑な半合成薬を製造するための原料である、iii)合成薬を調製するためのモデルとして役立ち得る活性原理の化学構造を提供するためのものである、およびiv)新薬の検索における分類学的マーカーとしての上記原理を使用するためのものであるため、医学において多くの用途を有する。これらの可能な用途は、植物およびその抽出物中に存在する植物性化学物質によるものであり、そのうち5,000超が種子、果物、根、塊茎、葉などの中で確認されており、それらは、フェノール化合物、カロテノイド、ビタミン、アルカロイド、テルペンおよびテルペノイド、窒素化合物、および有機硫黄化合物である(Thapliyal et al.,2018)。
【0007】
それらは、植物またはその一部から抽出されているが、多くの植物性化学化合物の考えられる活性は、単離された後、または、最も多くは、それらの存在が実証されているクロマトグラフィープロセスで得られた画分の活性を分析することによって、個別に試験されてきた。したがって、例えば、Akihisa T.et al.(2011)は、インドセンダン(Azadirachta indica)樹の種子からsalanninを単離し、salanninおよび特定の他のリモノイドがメラニン形成プロセスに対して強力な阻害効果を呈することを実証した。これらの化合物を単離するために、n-ヘキサンで3時間還流による抽出を行い、その後存在するリモノイドをクロマトグラフィーによって単離した。Salanninはまた、神経芽細胞腫および骨肉腫細胞株において抗腫瘍活性を有し(Cohen et al.,1996)、NIE.115神経芽細胞腫細胞株で133±6μM、143B.TK骨肉腫細胞株で89±12μMのIC50を示す。
【0008】
さらに、ケンフェロール3-sophorotriosideは、抗酸化活性および肝保護活性に関連している(Toshiyuki et al.,2001)。
【0009】
Ting et al.(2017)は、myricomplanosideを含有する抽出物を開発した。この目的のために、Ting et al.は、Astragalus chinensisの種子からエタノール抽出物(95%)を産生し、その後画分を作製し、クロマトグラフィーによって単離させたいくつかの化合物を得た。myricomplanosideを含有するこれらの画分のうちの1つは、抗酸化活性、抗炎症活性、および抗増殖活性を呈する。
【0010】
次に、カプシアノシドのグループは、アクチンフィラメントの再編成を調節することによって細胞骨格の機能を妨害することを特徴とする(Hashimoto et al.,1997)。
【0011】
一般に、フェノール化合物は、その大きい構造的多様性および幅広い生物活性により、科学界の関心を集めてきた。これらのフェノール化合物は、植物の再生および成長に不可欠な機能を保持し、病原体、寄生虫、および捕食者に対する防御メカニズムとして作用し、植物に色を付与することにも関与する。それらは、植物にとって有益であるのみでなく、抗酸化剤、抗がん剤、抗菌剤、および抗炎症剤としてヒトの健康にも重要な役割を果たす(Huang et al.,2013;Bonta et al.,2019)。それらの生物活性のために、主成分がポリフェノール、すなわち分子ごとに複数のフェノール基を有する化合物である多数の薬物および特許が存在する。これは、Kemin(スペインではUnivarが代理である)によって入手され、乾燥プロセス後に収穫されたグリーンミント(KI110およびKI42範囲)から得られる特許サプリメント(米国特許9839661)であるNeumentix(商標)(https://www.kemin.com/na/en-us/products/neumentix)の場合である。ローズマリー酸、サルビアノール酸、およびカフタル酸タイプのポリフェノールが豊富なこのサプリメントは、臨床試験を通じて、認知能力に大きな有利点を提供することが示されている。さらに、このサプリメントを特徴付けるポリフェノールは、抗酸化剤として作用し、酸化ストレスを軽減する、ニューロンの成長を促進する、および脳内の神経細胞を保護する。同様に、ブドウ、ブルーベリー、ならびに他の果物および野菜中に見られるポリフェノールは、神経変性疾患の発症リスクを低下させる能力について試験されている。さらに、Douglas Laboratories(商標登録)(Valencia,Spain:https://www.douglaslabs.es/)のNeurophenol(商標)(ブルーベリーおよびブドウの抽出物の混合物)を配合した最適化クルクミンの場合のように、加齢による影響、特に記憶喪失を最小限に抑えるためのサプリメントとしても使用されている。抗酸化作用を有するブドウの種(Vitaflavan(登録商標)、商品DRT-Les Derives Resiniques et Terpeniques,Dax,France:https://www.vitaflavan.com/es/)、赤ブドウの搾りかす(Eminol(登録商標))および赤ワイン(Provinols(登録商標),Sucren/Vitimed,Seppic,La Garenne Colombes,France:https://www.seppic.com/provinolstm-0)の特許を取得した商品化されたポリフェノール抽出物も存在する。
【0012】
過去20年間に使用された薬物の25%超が植物に直接由来し、別の25%は、改変された天然産物に由来する(Amin et al.,2009)。医学目的で使用される植物の5%~15%のみが、その生物活性化合物を得ることを目的とした研究の対象となっていることに言及する価値がある。このことにより、植物種からの新薬探索が重要であることが強調される(Rivas-Moralesetal.,2016;Wongetal.,2018)。
【0013】
ソラナム属(ナス科)は、ナス科中いずれの属よりも多くの種(1500を超える登録種)を有し、そのうちジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、およびナス(eggplant)(Solanum melongena)が、それらの経済的および文化的重要性のために強調されている。 ナス属の種は、アルカロイドなどの様々な植物性化学物質を含有するため、この属は、古くから医学目的に使用されている。これらの種が提示するアルカロイドは、抗微生物、抗リウマチ、抗酸化のほかに、抗がんなど、幅広い生物学的活性により、非常に興味深いものであった(Jayakumar et al.,2016)。
【0014】
ナス(Solanum melongena)(eggplant)種の植物は、東南アジアに由来すると考えられ、その主要原産中心地は、インドと考えられ、インドでは、古代から(少なくとも紀元前2000年から)栽培されている。アフリカおよび中国での祖先栽培も知られており、中国では、小さい果実がなる品種が開発された二番目の原産中心地であり得る。ナス(eggplant)の栽培は、北アフリカ全体に広がり、そこからその栽培がイスラム教徒のスペインのほか、他の温暖な地中海諸国、例えば、フランス、イタリア、およびギリシャなどに広がったと考えられる。現在開発されている数多くの品種は、アジア起源の祖先品種および他の種の品種と共存しており、その果実は、ナス(eggplant)とも呼ばれ、サハラ以南のアフリカにおける祖先の環境に適応させた品種などの種であるSolanumae thiopicumなど、それらと密接な関係にある種もある。
【0015】
ナス(Solanum melongena)は、植物の様々な部分から始まるその様々な生物活性化合物の研究および同定により、その治療用途が知られている植物種の1つである。
【0016】
したがって、例えば、文献JP2002226387Aは、創傷、火傷、ざ瘡、足白癬、口内炎、炎症、腫瘍などを局所的に治療するために使用される乾燥ナス(eggplant)粉末を含有する医薬組成物に関する。
【0017】
Zhao Dong-yingらによる試験(2020)など、いくつかの他の試験では、ナス(Solanum melongena)のがく片からの様々なセスキテルペノイドおよび他の化合物の単離および同定、その後還流によるエタノール抽出(70%)、その後石油エーテルによる生物活性化合物の単離について記載されている。これらの化合物は、子宮頸がん細胞株、腺がん細胞株、および胃がん細胞株に対してin vitroで試験された。
【0018】
これらの試験はまた、乳がん株中、in vitroで試験された異なる化合物が単離された根を用いて実施された。この場合、抽出物を生じさせるために行われる方法は、70%エタノールおよび分画による還流プロセスである。2019年のYin Xin et al.らによる試験では、いくつかのセスキテルペノイドが単離されたが、試験されたもののいずれも、乳がん(MCF-7)細胞株、肝がん(HepG2)細胞株、または子宮頸がん(HeLa)細胞株に対する細胞毒性を示さなかった。Yang Bing-Youの2020年の試験では、根からのテルペン、リグナン、および他の化合物の単離について記載されており、その一部は、同じ細胞株に対して中程度の細胞毒性を示した。
【0019】
がく片および根と同様に、生物活性化合物(グリコアルカロイド、特にソラマルジン)も試験された果物の皮中に発見され、肝がん(Fekry et al.,2019)および肺がん(Shen et al.,2017)に対する有効性が示されており、これらは、メタノールおよびエタノール抽出(70%)およびHPLC(70%)を使用して得られた。最後に、ナス(eggplant)の皮からのアントシアニンおよびデルフィニジン誘導体は、メタノール中に浸漬することによって行われる抽出により単離し、これらは、結腸がん細胞株で抗酸化活性を有することが示されている(Jing et al.,2015)。
【0020】
グリコアルカロイドの抗がん活性は、Lee et al.によって2004年にすでに観察されており、ここでは、ジャガイモ、ナス(eggplant)、およびトマトの様々なグリコアルカロイドと、HT-29結腸がん細胞およびHepG2肝がん細胞に対するそれらの活性と、に関する試験を実施した。ナス(Solanum melongena)中で特定された主要なグリコアルカロイドは、ソラマルジンおよびソラニンであった。概して、グリコアルカロイドはある程度の抗がん作用を有することが示されたが、結腸がん細胞に対するよりも肝がん細胞株を用いた試験において、それらの有効性が高かった。
【0021】
したがって、一部の試験では、ナス(Solanum melongena)種の植物の異なる部分中での生物活性化合物の存在を分析し、各化合物について、様々な種類の腫瘍におけるその活性を個別に分析しているが、これらの化合物が作用する分子メカニズムに関する研究はほとんどない。これらの試験は、これらの機能性抽出物または単離された化合物が腫瘍細胞に対して作用し得る経路を解明するために不可欠である。抽出物の分子活性の態様に取り組む数少ない研究の中で、Nishina et al.(2015)によって行われた試験があり、ここでは生物活性化合物であるジオスシンが、ナス(Solanum melongena L.)のメタノール抽出物から単離された。これは、MITF(メラノサイトおよび破骨細胞の発生に関与する小眼球関連転写因子)を結合して活性化するホスホCREB タンパク質の調節を解除することにより、メラニン形成の阻害剤として作用する。
【0022】
さらに、植物の他の部分に焦点を当てた試験があるが、種子には注目していないと考えられ、ナス(Solanum melongena)種子からの機能性抽出物の抗腫瘍活性の試験、またはそれらから生物活性化合物を単離する論文は近年公開されていない。1985年に公開された1つの試験のみが、65℃で4時間メタノールと還流し、減圧下で抽出濃縮することによるナス(Solanum melongena)種子からの3つのサポニンの単離について記載されている。しかし、この試験では、これらの化合物の抗増殖活性については報告されていない(Kintia and Shvets,1985)。
【0023】
CRCに対する代替的治療戦略を開発する必要があることを考慮すると、CRCに作用する、好ましくは選択的な抗腫瘍活性を有する新規抗がん剤が発見できれば、関心が集まるであろう。簡素にすることを目的として、内部に存在する生物活性化合物を単離する必要なく(たとえこの単離が可能であっても)、その抽出物がそのような活性を呈する、食用部分を含む植物、好ましくはナス(eggplant)などからの植物抽出物中にこの活性が見出された場合、および抽出物が非がん細胞に対して毒性の減少を示すであろう濃度での抗がん剤としての使用を容易にする方法によって、抽出物を得ることができた場合、興味深いであろう。また、上記抽出物が、それ自体で抗がん活性(または一般に治療活性)を呈した2つ以上の成分を含有し、上記生物活性化合物の2つ以上と組み合わせた医薬組成物の調製が可能になることも、好ましい追加の特徴であろう。さらに、上記抽出物が腫瘍細胞死を引き起こす分子メカニズムおよび細胞メカニズムを、好ましくはある程度詳しく知ることは有用であろう。
【0024】
本発明は、この問題に対する解決策を提供し、これには、上述の所望の追加の利点のいくつかも含まれる。
【発明の概要】
【0025】
一態様では、本発明は、ナス(Solanum melongena)の成熟種子からエタノール性植物抽出物を得るための方法であって、
a)種子を粉砕してミールを得るステップと;
b)酸性pHの冷水アルコール抽出溶液を使用して、ステップa)のミールを抽出するステップと、
c)任意により、ステップa)およびb)を実施する前に、機械的冷間プレスにより成熟種子を脱脂するステップと、を含む方法に関する。
【0026】
好ましくは、本発明の方法は、以下の条件下で実施される:
a)種子を粉砕して、粒径100μm~150μmのミールを得;かつ/または
b)ステップa)で得られたミールが、次の条件下で水アルコール抽出溶液を使用して抽出され:
i.4℃に等しい温度、
ii.窒素還元雰囲気中、
iii.抽出溶液が、体積比50:50:0.2のエタノール、再蒸留水、および12N塩酸で構成され、
iv.pHが2に等しく、
v.条件i~ivに達した後、ミールおよび抽出溶液の混合物の撹拌を30分間継続し、ここで、抽出溶液およびミールの混合物を遠心分離し、上清を回収することによりエタノール抽出物が得られる。
【0027】
脱脂は、ミールを得る前に、40~50℃の温度で、抽出速度2~3kg種子/時間で行うことが非常に特に好ましい。
【0028】
別の好ましい実施形態では、次のサブステップを適用して、最初の抽出から得られた残留物、特に遠心分離後に最初の抽出物を得ることから得られた沈殿物に対して新たな抽出が行われる:
i)ミールおよび抽出溶液の混合物を遠心分離することによって得られた沈殿物を抽出溶液に再懸濁させ、
ii)得られた懸濁液を、請求項2に記載のステップb)の条件下で30分間再度撹拌し、
iii)上記懸濁液を遠心分離して、上清を回収し、
iv)iii)で得られた上清を最初に得られた上清と混合することにより、エタノール抽出物が得られる。
【0029】
本発明の方法は、得られたエタノール抽出物からエタノールを部分的または完全に蒸発させる追加の最終ステップを含んでもよい。
【0030】
別の態様では、本発明は、特に高いポリフェノール含有量を有する、成熟ナス(Solanum melongena)種子からのエタノール抽出物に関する。好ましくは、上記抽出物は、本発明の方法によって得られる抽出物である。
【0031】
実施例1の試験によれば、エタノール抽出物は、11.16~27.59μg没食子酸当量/mg抽出物の範囲の総ポリフェノール含有量を有する。好ましくは、総ポリフェノール含有量は、12.06~27.59μg没食子酸当量/mg抽出物(脱脂ミールからの抽出物から決定される極値)の範囲である。総ポリフェノール含有量が11.16~18.41の範囲である場合、および/または還元能が5.33~6.31μgの没食子酸当量/mg抽出物(品種S0506の抽出物中で得られた値)の範囲である場合も興味深い。
【0032】
これまでのものと互換性のある別の可能な実施形態では、エタノール抽出物は、少なくともsalanninおよび/またはカプシアノシドIIを含む。好ましくは、上記の2つの化合物に加えて、エタノール抽出物は、ケンフェロール3-sophorotrioside、myricomplanosideおよびaryllatoseB、またはこれら3つの化合物の組み合わせの群から選択される少なくとも1つのさらなる生物活性化合物を含み、特に好ましくは、エタノール抽出物は、salanninおよびカプシアノシドに加えて、myricomplanosideおよび/またはaryllatoseB、またはaryllatoseBおよびケンフェロール3-sophorotriosideを含む。より好ましくは、エタノール抽出物は、少なくとも5つのこれまでの化合物:salannin、カプシアノシドII、myricomplanoside、aryllatoseBおよびケンフェロール3-sophorotriosideを含む。
【0033】
本発明の方法の場合、および以下に記載する本発明の他の態様の場合と同様に、ナス(Solanum melongena)品種の成熟種子、好ましくは脱脂した成熟種子のミールから得られる抽出物に対応する実施形態が好ましい。したがって、本発明のエタノール抽出物の場合、ナス(Solanum melongena)品種の成熟種子から得られる生化学的パラメーターに基づく定義を満たすことが好ましい。すなわち、抽出物は、
i)総ポリフェノールの含有量が、12.06~27.59μgの没食子酸当量/mg抽出物、および/または
ii)抽出物は、少なくともsalannin、カプシアノシドIIおよびmyricomplanosideを含む。
【0034】
サンプルS0506の成熟種子から得られる本発明の抽出物も、脱脂および非脱脂ミールの両方からのものが好ましい。そのため、これらは、
i)総ポリフェノール含有量が11.16~18.41の範囲、および/または還元能が、5.33~6.31μgの没食子酸当量/mg抽出物である、および/または
ii)抽出物は、salannin、カプシアノシドII、myricomplanoside、aryllatoseBおよびケンフェロール3-sophorotriosideを含む。
【0035】
いずれの定義においても、抽出物は、その最も一般的な定義において、またはその可能な実施形態のいずれにおいても、本発明の方法によって得られたものであることが好ましい。これらの実施形態には、エタノールの最終的、部分的または全体的蒸発が行われる任意の最終追加ステップを行う可能性が含まれる。ここでもまた、ステップa)種子の粉砕およびステップb)得られたミールの抽出を行う前に、冷間機械プレスによって成熟種子を脱脂するステップを実施することが好ましく、特に、可能なそれぞれのステップ(脱脂、粉砕、および抽出自体)は、本発明の方法の可能な実施形態を説明する際に表される明確な特徴を用いて実施され、これには、最初の抽出物を生じさせる遠心分離から得られる沈殿物に対して2回目の抽出を実施することを含む。
【0036】
医薬組成物も本発明の一態様であり、これは、上記の可能な実施形態のいずれかにおいて、その製剤中に本発明の抽出物、例えば、エタノールの最終的、部分的または完全な蒸発が行われる本発明の方法によって得られた抽出物を含む本発明の医薬組成物とみなされる。本組成物は、抽出物中に存在する抗がん剤に加えて、少なくとも1つの抗がん剤を含む医薬組成物の組み合わせであり得る。任意の他の実施形態とも適合する別の可能な実施形態では、組成物はまた、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤および/または担体を含んでもよい。
【0037】
また、本発明の上記の態様は、医薬組成物の調製のための本発明の抽出物の使用も、特にがんの治療を意図する場合、特に大腸がん、膵がんおよび神経膠芽腫の群から選択される場合、本発明に含まれることを意味すると考えることができる。
【0038】
大腸がん、膵がんおよび神経膠芽腫の群から選択されるがんのタイプの治療に使用するための本発明の抽出物または本発明の医薬組成物も本発明の態様である。より具体的には、がんは、結腸腺癌、膵臓腺癌、および多形膠芽腫の群から選択され得る。本発明の態様から、好ましいものは、抽出物および医薬組成物、成熟種子から得られた抽出物、特に脱脂されたまたは脱脂されていない抽出物、およびそれらから調製された医薬組成物を指すものである。
【0039】
本発明の抽出物または本発明の医薬組成物の治療的使用に関連する態様は、大腸がん、膵がんおよび神経膠芽腫から選択されるがんに罹患している対象の治療方法にも定義することができるか、またはそれらに関連する。この方法は、本発明の医薬組成物または治療有効量の本発明の抽出物を投与することを含む。対象は、治療用途のための本発明の抽出物または本発明の医薬組成物の定義におけるとおり、任意の哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。
【0040】
本発明の別の態様は、栄養補助食品に組み込まれる活性成分としての本発明の抽出物の使用に言及する。「栄養補助食品」とは、機能性成分と呼ばれる栄養的または生理的機能を持つ天然起源の物質を含有する、食事に加えられる製品として定義される。一般的に経口摂取され、丸剤、錠剤、カプセル、粉末サシェ、液体のアンプル、および点滴ボトルなど、様々な形態で提供され得る。
【0041】
本発明の抽出物を活性成分または生物活性成分として含む食物補完物またはサプリメントもまた、本発明の一態様と見なされる。このサプリメントは、栄養補助食品(nutraceutical)とも呼ばれ得、これは、好ましくは植物起源の、濃縮された生物活性天然物質の非食品マトリックス(丸剤、カプセル、粉末など)で提供される食品サプリメントまたは補完物として理解され、これは、食品自体が有し得る効果よりも大きい、健康への好ましい効果を有する。換言すれば、栄養補助食品(nutraceutical)は、健康について証明されたさらなる利点を提供し、大腸がん、膵がん、および神経膠芽腫などの疾患の予防および治療において医学的改善を提供することができる、食品の成分またはその一部である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】種子ミールからエタノール抽出物を得るための方法の図を示す。
【
図2】脂質化合物の異なる存在に基づいて、非脱脂ナス(Solanum melongena)サンプルS0506の成熟種子(a)と、事前に脱脂したナス(Solanum melongena)サンプルS0506の成熟種子(b)のミールのエタノール抽出物間の巨視的差異の代表的な画像を示す。
【
図3】a)脱脂なし、およびb)事前に脱脂したナス(Solanum melongena)サンプルS0506の種子ミールからのエタノール抽出物のクロマトグラフィーのグラフを示す。
【
図4】ナス(Solanum melongena)サンプルの脱脂ミールからのエタノール抽出物のクロマトグラフィーのグラフを示す:a)S0504、b)S0505、c)S0503。
【
図5】ナス(Solanum melongena)S0506の脱脂成熟種子ミールからのIC
50のエタノール抽出物で治療したT84大腸腫瘍株の細胞ならびに対照細胞(治療なしのT84結腸腫瘍株の細胞)中でのカスパーゼ3、8、および9の発現のウエスタンブロットメンブレンの展開を示す。
【
図6】ナス(Solanum melongena)S0506の脱脂成熟種子ミールからのIC
50のエタノール抽出物で治療されたT84大腸腫瘍細胞中でのカスパーゼ3、8および9の発現レベルの表示を示す。
【
図7】α-チューブリンに対する抗体を用いた免疫蛍光を使用して、T84細胞中での微小管の重合/脱重合に対するナス(Solanum melongena)S0506の脱脂ミールのエタノール抽出物の効果の蛍光顕微鏡によって得られた画像を示す。
【
図8】ナス(Solanum melongena)S0506の脱脂ミールからのエタノール抽出物により治療されたT84細胞の蛍光顕微鏡によって得られた画像を示す。この画像では、LysoTracker(R)アッセイを使用してオートファジー小胞の形成が観察される(酸オルガネラに対する高度選択的プローブは、弱塩基に連結したフルオロフォアからなる)。
【
図9】様々な馴化培地の存在下でのHUVEC細胞による血管の形成の蛍光顕微鏡によって得られた画像を示す。
【
図10】HUVEC細胞を異なる馴化培地にさらした後の血管新生中に形成されたセグメント、セグメントサイズ、形成されたノード、接合部、およびメッシュのグラフ表示(月)を示す。
【
図11】qPCRによって定量化された、腫瘍幹細胞の7つの細胞マーカー(CD133、CD24、CD44、SOC2、OCT4、およびNANOG)の相対発現値の表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、ナス属(ナス科)の植物種、より具体的には、ナス(Solanum melongena)(eggplant)の成熟種子のミールから得られるエタノール抽出物を得るための方法および詳細な分析に基づく。
【0044】
現在、ナス(Solanum melongena)の様々な部分(がく片、根、果実、果皮など)から得られた抽出物は、既存の文献内に見られ得る。このような抽出物は一般に、非常に毒性の高い有機溶媒および/または産生される多種多様な成分(フラボノイド、クマリン、およびテルペノイド)の毒性を増加させ得る非常に複雑で期間の長い抽出プロセスにより得られる。これは、例えば、1985年のKintia and Shvetsによる試験の場合において、前の「背景技術」セクションで述べたが、この試験では、植物の種子から抽出物が得られたが、還流下でメタノールが使用されており、このメタノールは、低濃度ではエタノールよりも強い毒性を有し、めまい、悪心、嘔吐、神経系の損傷、さらには死に至る可能性があることが知られている。この試験では、いくつかの新しいサポニンが単離され、特徴付けられたが、結腸がん、膵がん、または神経膠芽腫のがんに対して何らかの活性を有することは報告されていない。実際に、ナス(Solanum melongena)の種子から得られた、結腸がんに対する抗腫瘍活性を有する生物活性化合物の試験は現在はない。
【0045】
さらに、還流エタノールで得られた植物の他の部分(がく片、根など)からの抽出物の試験では、抽出物中に存在する特定の化合物を単離することに焦点をあてており、ここでは、特定のがん株に対する上記化合物の個々の考えられる細胞毒性について、抗増殖性試験を実施したが、その中には、一般に、結腸、膵臓、または神経膠芽腫のがん株は含まれていなかった。
【0046】
先行技術に記載された植物の異なる部分からの抽出物によって提示される、考えられる欠点に対応して、本発明者らは、好ましい生物活性を呈し、短時間の簡素な抽出プロセスを使用して、十分な抽出収量を可能にしながら、毒性のない溶媒を用いて、植物の成熟種子から得ることができる抽出物を開発した。この新規抽出物は、ナス(Solanum melongena)ポリフェノールである活性物質および低毒性物質のより具体的な組成も示す。
【0047】
本発明は、以下に基づく:
1)ナス(Solanum melongena)成熟種子ミールからのエタノール抽出物の開発。これを分析すると、高いポリフェノール含有量を有する。 抽出物は、脱脂することなく成熟種子のミールから得られたもの、および成熟種子のミールから、事前に脱脂し、酸性媒体(これは、大部分が低毒性の溶媒に溶解したポリフェノール化合物からなる)中で、短時間(好ましくは、エタノールとミール、および最初の抽出プロセスから得られる可能性のあるペレットとの接触時間が、合計で最大1~2時間)、窒素雰囲気下において、冷エタノール抽出プロセス(0℃~8℃の温度、好ましくは4℃)後に得られたものであった。
2)ヒト肝細胞のHepG2株を対照として使用して、ヒトおよびマウスの結腸がん細胞培養物で試験した場合(転移性ヒト大腸がんのT84、多剤耐性(MDR)機構を有する大腸がんのHCT15、およびC57BL6マウスで発生したマウス大腸がんのMC38)に、ナス(Solanum melongena)種子抽出物の強力な抗腫瘍活性が現れ、その治療範囲を決定することもできる。 同様に、抽出物が腫瘍細胞に作用する作用機序を試験して、細胞死を活性化する分子経路を解明した。
【0048】
本出願で開示された研究から得られた結果から、以下のことが示される:
1)ナス(Solanum melongena)の非脱脂および脱脂成熟種子のミールからエタノール抽出物(水アルコール抽出)を得るために使用される方法により、高ポリフェノール含有量の産物が得られる。
2)本発明の好ましい実施形態に対応する脱脂方法論的処理は、本発明のエタノール抽出物のさらなる展開のためのいくつかの追加の利点を有する代替法を表す。 脱脂プロセスは、一方では脱脂ミール中での、確実に高い抽出収量となる高生物活性能力を有するポリフェノールの濃縮が可能になり、他方では、有毒となり得るジテルペノイド化合物の除去が可能になる。それでも、以下の実施例2で見ることができるように、結腸がんに由来する異なる細胞株で実施された試験では、非脱脂成熟種子のミールからの抽出物および脱脂された成熟種子からの抽出物が両方とも優れた抗増殖活性を有し、両方の場合において非常に低いIC50を有し、これにより、医薬組成物の調製のための両方の抽出物の使用を検討することが可能になる。この考えは、両方の抽出物が多形膠芽腫または膵臓腺癌などの他の種類のがんに対しても抗増殖能を示すという事実によって強固なものとなり、したがって、両方の抽出物、またはそれから調製される医薬組成物は、これら他の2種類のがんの治療にも使用できる可能性がある。
3)ナス(Solanum melongena)の様々な品種の成熟種子のミール(非脱脂および脱脂の両方)からのエタノール抽出物は、高い抗腫瘍活性を示し、特に化学療法に対して抵抗性であるおよび非抵抗性である結腸がん由来の細胞において、ならびにマウス細胞において、高い抗腫瘍活性を示し、ヒト肝細胞細胞では観察されなかった強力な抗増殖効果を誘導しており、これは、その広い治療範囲を示すものである。
4)ナス(Solanum melongena)の成熟種子から得られたエタノール抽出物に対して試験した場合、ヒト腺癌株で観察されたIC50値(細胞の生物学的プロセス(本出願の試験では細胞増殖であるプロセス)を50%阻害する剤の濃度)は、非常に低く、このため、大腸がん、膵がんおよび/または神経膠芽腫に対する使用の可能性を試験するのに好適である。
5)ナス(Solanum melongena)種子ミールからのエタノール抽出物の抗増殖効果は、脱脂および非脱脂の両方で、多形膠芽腫細胞株、さらには化学療法に対して抵抗性である細胞株に対して高い抗腫瘍活性を示し、これらは最も攻撃的ながんのうちの1つであり、これは、臨床診療で一般的に使用される細胞傷害薬に対してより大きい抵抗性を示し、現在、治療手段が最も少なく、エタノール抽出物のこの特性が、臨床上特に興味深いと考えることができる。膵がん細胞株に対しても抗増殖効果が観察され、これにより、これらの種子から得られたエタノール抽出物がこの治療用途のために使用できると考えることができる。
6)ナス(Solanum melongena)の脱脂種子から、特にサンプルS0506から得られた機能性エタノール抽出物の抗腫瘍活性は、カスパーゼ経路(内因性経路および外因性経路の両方)の活性化に関与し、アポトーシスによる細胞死を生じさせる。さらに、この抽出物は、細胞微小管の重合/脱重合の障害から細胞死を誘導する。
7)ナス(Solanum melongena)の脱脂種子から得られたポイント6)と同じエタノール抽出物によって示される抗腫瘍活性は、程度は低いものの、細胞死を誘導するオートファジー経路の活性化も伴う。
8)サンプルS0506から得られた抽出物を使用して実施された試験によれば、ナス(Solanum melongena)の脱脂成熟種子からのエタノール抽出物は、腫瘍細胞と内皮細胞との正しい伝達を妨げ、これにより血管新生プロセスを減少させ、したがって、血管の形成を妨げる。
9)サンプルS0506から得られた抽出物で実施された試験によれば、ナス(solanum melongena)の脱脂成熟種子からのエタノール抽出物は、結腸がん中に存在するがん幹細胞(CSC)(腫瘍の再発および治療に対する抵抗性現象の原因となる細胞)の集団を選択的に減少させる。
10)サンプルの各々から得られた抽出物に対して行われた、質量分析と組み合わせたクロマトグラフィー分析(実施例1)では、抽出物のほとんどの中に現れる化合物が存在することが示されている。その中でも、それらの生物学的活性がすでに報告されているいくつかの化合物、例えば、salannin、カプシアノシドII、myricomplanoside、aryllatoseB、およびケンフェロール3-sophorotriosideなどがこれまでに様々な植物から単離された。したがって、前述のとおり、個々の治験において、salanninは、骨肉腫株および神経芽細胞腫株に対してメラニン形成阻害活性および抗増殖活性を示した。Myricomplanosideは、抗酸化活性、抗炎症活性、および抗増殖活性に関連していたが、カプシアノシドは、細胞骨格機能を妨害することを特徴とし、ケンフェロール 3-sophorotriosideは、抗酸化活性および肝保護活性に関連している。
【0049】
したがって、本発明によって提供されるエタノール抽出法により、生物医学において、特に抗腫瘍剤として使用するための非毒性抽出物を得ることが可能になる。上記方法は、活性原理の投与のために定期的に低濃度で使用される溶媒であるエタノールの使用をベースとするため、患者での適用の目的にとって非常に有利である。
実施例
【0050】
ナス(Solanum melongena)種の根底にある科学的関心を考慮して、Cellbitec Business Group(www.cellbitec.com)に属する植物育種会社Agrointec Solutions SLから寄贈された、この種の異なる品種の成熟種子からのエタノール抽出物を、以下に示す試験において記載されているとおり試験した。
【0051】
International Union for the Protection of New Varieties of Plants(UPOV,www.upov.int)(ドキュメントTG/117/4(https://www.upov.int/edocs/tgdocs/es/tg117.pdf))の推奨に従って、この種の特徴付けの最も広いスペクトルを網羅する、ナス(solanum melongena)種の異なる種類の4品種の種子を使用した。サンプルは以下に列挙する:
1.品種S0503、ナス(Eggplant)(Solanum melongena):この品種は寄贈企業によって改良され、開発された。その類型学的特徴は、半長実であり、均一サイズで、種子が少なく、小さな萼があり、穂状花序がない、平均重量300~400グラム、皮の色は白地に紫色の明るい色である;バランスのとれた中程度から高い活力を有する植物、寒冷地での生産性が高く、タバコモザイクウイルスまたはTMVに対する耐性がある。 分析された種子サンプルは、産生バッチ番号L1-S0503に属する。
2.品種S0504、ナス(Eggplant)(Solanum melongena):この品種は寄贈会社によって改良され、開発された。その類型学的特徴は、半長実であり、均一性が高く、寒冷条件下で萼中に穂状花序が存在する、平均重量350~500g、皮の色は黒であり、冬の終わりまで品質を維持する;中程度の活力のある植物で、開いていて、二次的な花の放出がほとんどなく、サイクル全体で容易に固まり、長いサイクルに十分適応する。 温室、トンネル、および屋外での栽培に好適である。分析された種子サンプルは、産生バッチ番号L170504に属する。
3.品種S0505、ナス(Eggplant)(Solanum melongena):この品種は寄贈企業によって改良され、開発された。その類型学的特徴は、穂状花序のない円筒形実であり、平均重量40~60g、5~7の果実を有する花束の形で成長する、皮の色は白い光沢である;活力の高い植物で、高温および低温のストレス状況に対する良好な耐性、疾患および昆虫に対する良好な耐性を有する。分析された種子サンプルは、産生バッチ番号L170505に属する。
4.品種S0506、ナス(Eggplant)(Solanum melongena):この品種は寄贈企業によって改良され、開発された。その類型学的特徴は、半長実で、均一なサイズで、種子が少なく、小さな萼および穂状花序を有し、平均重量450g、300、皮の色は光沢のある黒色である;非常にバランスの取れた中程度の活力のある植物で、実の収穫が容易で、単為結実性があるため、温室栽培に推奨される。分析された種子サンプルは、産生バッチ番号L1-S0506に属する。
【0052】
-実施例1.エタノール抽出物を得るおよび分析を行うための方法
ナス(Solanum melongena)の成熟種子(非脱脂および脱脂の両方)のミールから開発されたエタノール抽出物を得るための方法は、
図1に図式化しており、次のとおりである:
1.以下の場合に応じる:
a)非脱脂ミールの場合:成熟種子を粉砕してミールを得て、-20℃で維持する。
b)脱脂ミールの場合:成熟種子の油性部分を、固体部分またはペレットから分離させる。KOMETシリーズの種子油抽出プレスを使用し、これは、個別の圧縮スクリューの代わりにスクリューコンベアを使用して油を絞出する特殊な冷間プレスプロセスを特徴とする。この機械では、油糧種子は、摂氏50度を超えないように穏やかに圧搾される。平均作業速度2~3kg/時間、油から種子への変換率は、15~25%である。その結果、脱脂された密集ドライケーキが得られる。次に、このケーキを28,000rpmで粉砕して、粒子サイズが100~150ミクロンの脱脂ミールを得て、その後、-20℃で保存する。
2.1.a)5gを秤量する、または1.b)ビーカーに入れ、すぐにそのビーカーを氷上に置き、4℃の温度で作業する。
3.15mlの抽出溶液(50%エタノール(EtOH)=50mlEtOH+50ml再蒸留水+0.2ml塩酸(HCl12N))を加える。
4.マグネチックスターラーで300rpmで撹拌する。
5.(6N HClを添加することにより)pH2にする。
6.酸化環境がなく、ポリフェノールが適切に保存されるように、窒素ガスを加える。
7.30分間、4℃で撹拌したままにする。
8.3000rpmで5分間4℃で遠心分離する。
9.上清を回収し、-20℃で保存する。
10.沈殿物を10mlの抽出溶液に再懸濁させ、上記のステップに従って2回目の抽出を行う。
11.最後に、適切な抽出を行った後、各抽出物の上清をプールし、使用するまで-20℃で保存する。
12.最後の遠心分離機で生じたペレットを廃棄する。
【0053】
記載されている抽出プロトコールに従って、エタノール抽出物は、ナス(Solanum melongena)の脱脂および非脱脂成熟種子ミールから得た。この二重プロセスの目的は、抽出物の活性を比較し、脱脂せずに成熟種子から脂質化合物を高い割合で除去することであり(
図2を参照)、両方のエタノール抽出物の巨視的な差異は、脂質化合物の存在の差異に基づいて認識でき、事前に脱脂した成熟種子ミールから得られた抽出物とその機能活性を比較する。
【0054】
収量を決定するために、エタノール抽出物を1mLのアリコートに分けてエタノールを蒸発させ、その後抽出物中の残存水を凍結乾燥した。エタノール抽出物からエタノールを除去するために、Savant DNA120蒸発システム(Thermo Scientific)を使用して60分間真空蒸発させた。エタノールを蒸発させた後、アリコートを残りの抽出物と共に液体窒素で凍結させ、TELSTAR Cryodos-50凍結乾燥機を使用して凍結乾燥し、そこで24時間保持した。凍結乾燥後、各アリコートを含有する容器との差異に基づいて抽出物の乾燥重量を計算し、その乾燥重量は、最初の抽出物の1mLの容量、その後得られた抽出物の総容量、および最終的に抽出物を調製するための初期種子ミールのグラムを指す。
【0055】
総ポリフェノールは、Kapravelou et al.(2015)によって記載されているように、Dewanto et al.技法(2002)によって決定し、ここでは、0~500μg/mLの濃度の没食子酸の標準ラインを使用する。さらに、異なる抽出物によるFe3+からFe2+への還元能は、Kapravelou et al.(2015)によって記載されているDuh et al.(1999)技法によって、分光光度法で決定され、濃度も0~500μg/mLの没食子酸の標準ラインを使用している。
【0056】
表1は、ナス(Solanum melongena)S0503、S0504、S0505、およびS0506品種の非脱脂および脱脂成熟種子ミールからの抽出物の収量および総ポリフェノールを示す。上記の表に見られるように、ナス(Solanum melongena)のすべての品種について、分析されたケースで得られた収量は、大きな変動性を示し、脱脂成熟種子からの抽出物の収量は、非脱脂成熟種子からの抽出物の収量よりも顕著に高かった。
【0057】
【0058】
さらに、総ポリフェノールおよび還元能の生化学的試験を含む抗酸化能力を分析した。総ポリフェノールに関しては、試験したすべての品種について、脱脂および非脱脂ミールからのエタノール抽出物は、非常に均一な値を示し、概して、サンプルS0505を除いて、非脱脂ミールからのエタノール抽出物(S0506では、11.16μg没食子酸当量/mg抽出物)よりも、脱脂成熟種子からのエタノール抽出物の方高い(脱脂成熟種子からの一般的なナス(eggplant)からのエタノール抽出物の場合、12.06~27.59μg没食子酸当量/mg抽出物の範囲の値)。これらの結果は、機能性抽出物の性能を向上させることに加えて、脂質化合物を除去するプロセスにより、目的の生物活性化合物の変更または除去が行われないことを裏付けることが可能になった。また、上記方法により機能性抽出物の精製が可能であることを確認した。
【0059】
サンプルS0506から得られた結果は、最も高い収量の1つを有する(非脱脂成熟種子からのエタノール抽出物中42.6mg/gミールおよび脱脂種子からのエタノール抽出物中71.12mg/gミール)ため、強調する価値がある(これは本明細書全体で行われる)。脱脂成熟種子ミールからのエタノール抽出物中で決定された総ポリフェノールの値(18.41μg没食子酸当量/mg抽出物)は、試験された抽出物の中で最も高い値の1つである。さらに、後述の実施例2で示すとおり、これは最大の抗腫瘍活性を有するものの1つである(表10を参照)。これらすべての理由から、後述のとおり、細胞作用の分子メカニズムを解明するために実施される特定の試験の対象として選択した。
【0060】
抗酸化能の生化学的測定のための還元能試験は、サンプルS0506から選択された抽出物を使用して実施し、非脱脂成熟種子ミールからの抽出物について5.3μg没食子酸当量/mg抽出物の値、および脱脂ミールからのエタノール抽出物について6.31μg没食子酸当量/mg抽出物の値が得られた(表2)。したがって、脱脂成熟種子ミールにより調製した抽出物の抗酸化能は、ポリフェノールがより多くの量を得られることに基づいてより高かった。
【0061】
【0062】
クロマトグラフィー試験の実施により、ナス(Solanum melongena)の成熟種子ミールからのエタノール抽出物中に存在する化合物を決定することができた。これらの試験では、Waters ACQUITY H-Class Ultra Performance Liquid Chromatography(UPLC)およびWaters SYNAP G2 Q-TOF質量分析計を使用した。
図3および
図4は、ナス(Solanum melongena)のS0506の脱脂および非脱脂成熟種子ミール(
図3)、および他のサンプル(S0503、S0504、S0505)の脱脂成熟種子ミール(
図4)の両方から得られたエタノール抽出物のクロマトグラフィーのグラフを示す。
【0063】
以下の表3、4、5、6、および7は、ナス(Solanum melongena)品種の抽出物の各々中で同定された主要化合物、およびその各々のクロマトグラフィーデータを示す(複数のクロマトグラフィーピークを有する化合物については、そのピークの1つのデータのみ示されている)。上記化合物、およびCAS(Chemical Abstract Service)登録番号は、トリグリシジルトリメリテート(CAS番号7237-83-4)、myricomplanoside(CAS番号:123442-26-2)、ケンフェロール3-sophorotrioside(CAS番号.:80714-53-0)、ArylatoseB(CAS番号:137941-45-8)、ケルセチン3-rhamninoside(CAS番号:522-12-3)、Swertiajaponin3’-O-ゲンチオビオシド(CAS番号.:76166-51-3)、ケルセチン3,7-ジグルコシド(CAS番号:6892-74-6)、ケルシトリン(CAS番号:522-12-3)、Ramontoside(CAS番号:133882-75-4))、Macrostemonoside J(CAS番号:159935-09-8)、Salannin(CAS番号:992-20-1)、Mudanpioside J(CAS番号:262350-52-7)、Cudranian1、カプシアノシドIII(CAS番号:121961-81-7)、Protodioscin(CAS番号:55056-80-9)、Capsianoside II(CAS番号:121924-04-7)、Macrantoside I(CAS番号:90850-94-5)、ジオスシン(CAS番号:19057-60-4)、アスパラニンD(CAS番号:83931-89-9)、カランブロシドA(CAS番号:160472-99-1)、シトルシンB(CAS番号:105279)-10-5)、クロロゲン酸(CAS番号:327-97-9)、ケルセチン-3,4’-O-ジ-β-グルコピラノシド(CAS番号:29125-80-2)、Myricitrin(CAS番号:17912-87-7)、マクロステモノシドJ(CAS番号:159935-09-8)、BlumeosideC(CAS番号:94657-28-8)、ピクロシド(CAS番号:231280-24-3)、ケンフェロール3-(2G-キシロシルルチノシド)-7-グルコシド(CAS番号:131559-51-8)、Gypenoside L VI(CAS番号:109145-67-7)、ビスミオンD(CAS番号:87605-72-9)、ボルビロシドB(CAS番号485807-79-2)、ノナデカン酸(CAS番号646-30-0)である。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
非脱脂および脱脂成熟種子ミールからの抽出物の大部分中に存在する化合物の中では、Salannin(C34H44O9)、ケンフェロール3-sophorotrioside(C33H40O21)、Myricomplanoside(C22H22O13)、アリラトースB(C22H30O14)、およびカプシアノシドII(C50H84O25)が突出している(
図3、4、5、6、7)。これらの化合物の生物学的活性は、単独で試験した。
【0070】
観察されたように、ナス(Solanum melongena)の非脱脂および脱脂成熟種子ミールからのこれらの品種のエタノール抽出物は、ほとんどの部分で、上記の生物活性化合物のいくつかを共有している。UPOVTG/117/4プロトコールに示されているとおり、形態学的には果実であることに留意する必要があるが、使用される異なるサンプルは、遺伝的に同じ植物種に属し、活性化合物は、重要な代謝経路の一部であるため、これは論理的であり、すべての表現型の品種が同じ種、すなわちナス(Solanum melongena)に属している間、非常に多様であり得る。
【0071】
結腸がんにおけるナス(Solanum melongena)種の成熟種子中に存在する生物活性化合物の抗腫瘍活性に関する試験が行われていないこと、およびそれを組み込む主要化合物の独立した活性に関する知識が限られているために、本出願で開示されている研究を実施し、結腸がんにおける本発明のエタノール抽出物の抗腫瘍特性のみでなく、これらの化合物の性能およびそれらを組み合わせた作用にも深く焦点を当てた。
【0072】
-実施例2.抽出物の抗腫瘍能の測定
抽出物の抗腫瘍能を決定するために、細胞株T84(ヒト結腸腺癌細胞株)、HCT15(化学療法に対して抵抗性であるヒト結腸腺癌細胞株)、およびMC38(マウス結腸腺癌細胞株)を培養した。対照として、HepG2株を選択した(ヒト肝細胞株、その優れた分化により、薬物または活性化合物の活性に関するアッセイなど、様々なタイプのアッセイにおけるヒト肝細胞の試験のモデルとして好適となる。その多くは、対照として使用される)。
【0073】
エタノール抽出物は、エタノールによって引き起こされる細胞株に対する毒性を回避するために、事前に蒸発させた。さらに、蒸発後、一部を凍結乾燥して、得られた抽出物の量を把握し、その濃度(mg/ml)を定量化する。これに基づいて、試験する様々な濃度を計算する。細胞培養物を、すべての種類のナス(Solanum melongena)の非脱脂および脱脂成熟種子ミールの両方からの蒸発エタノール抽出物の濃度を増加させて曝露させ、スルホローダミンB技術を使用して、阻害濃度50(IC50)(抽出物が、細胞集団の50%を阻害する抽出物の濃度)を決定することができる。結果を表8に示す。
【0074】
【0075】
前表に見られるように、S0506品種の非脱脂成熟種子からのエタノール抽出物について、IC50は次のとおりであった:T84で23.88μg/ml、HCT15で37.07μg/ml、およびMC38で48.58μg/ml。S0506の脱脂成熟種子ミールからの抽出物について、IC50は、T84で35.07μg/ml、HCT15で29.63μg/ml、MC38で39.3μg/mlであった。HepG2ヒト肝細胞株におけるS0506の脱脂ミールからのエタノール抽出物のIC50は、99.87μg/mlであり、さらにin vivo研究を実施するための許容可能な治療範囲を残していることに留意する必要がある。さらに、残りのナス(Solanum melongena)品種でも非常に類似したIC50が観察された。
【0076】
結果を考慮すると、ナス(Solanum melongena)の非脱脂および脱脂成熟種子ミールからのエタノール抽出物は、高い抗増殖活性を有し、IC50は非常に低く、試験した異なるサンプル間で均一であることが観察できる。この事実は、脱脂プロセスが得られた抽出物の抗腫瘍能を過度に変化させないことが示され、場合によっては(サンプルS0506の成熟種子ミールから得られた抽出物のHCT15細胞に対する活性など)、それが増加することさえあるため、注目に値する。さらに、腫瘍株(T84、HCT15およびMC38)と非腫瘍株(HepG2)のIC50の差は重要であり、非腫瘍株で有意に高い。
【0077】
成熟種子ミールの抽出物は、非脱脂および脱脂の両方とも同様の抗腫瘍活性を有し、脱脂成熟種子ミールの抽出物が、より高い収量を有し、ポリフェノール化合物の濃度がより高いことにより、以下に詳述する残りの分子試験を実施するために、脱脂成熟種子ミールからのエタノール抽出物を使用することを決定した。さらに、サンプルS0506からの脱脂ミールからのエタノール抽出物は、HCT15株のIC50値が低く、収量が高いため、他の抽出物の代表として、これらの試験用に選択した。
【0078】
最後に、結腸がん細胞株での以前の結果に基づいて、すべての品種の脱脂および非脱脂ミールの両方からのエタノール抽出物を、多形膠芽腫および膵臓腺癌細胞株で試験した。その目的のために、細胞株A-172およびLN-229(ヒト神経膠芽腫細胞株)、SF-268およびSK-N-SH(ヒト化学療法抵抗性神経膠芽腫細胞株)に加えて、Panc-1(ヒト膵臓腺癌細胞株)を培養した。上記と同じ方法を使用して、試験中の細胞株のIC50を決定した。結果を表9に提示する。
【0079】
【0080】
S0506の非脱脂ミールからのエタノール抽出物では、IC50は、SF-268で23.89μg/ml、SK-N-SHで25.70μg/ml、A-172で24.15μg/ml、LN-229で21.22であり、膵臓腺癌Panc-1由来の株では、IC50は、45.29μg/mlであった。S0506品種の脱脂ミールからのエタノール抽出物では、IC50はより高く、SF-268では35.36μg/ml、SKでは37.75μg/ml、A-172では36.11、LN-229では37.96、Panc-1では49.02であった。対照的に、残りのサンプルでは、脱脂ミールから得られた抽出物は、非脱脂ミールから得られた抽出物よりも概して低いIC50値を得た。
【0081】
これらの結果により、脱脂および非脱脂ミールの両方からのすべてのナス(Solanum melongena)品種のエタノール抽出物は、結腸がんに対して優れた抗腫瘍能を示すことに加えて、神経膠芽腫および膵臓腺癌の細胞株に対しても高い抗腫瘍活性を有すると結論付けることができた。
【0082】
-実施例3.-細胞死に関連するタンパク質の分子試験
本発明の抽出物の作用機序を解明するために、カスパーゼ、主にカスパーゼ8(外因性経路)、カスパーゼ9(内因性経路)およびカスパーゼ3によって媒介される細胞死経路(アポトーシス)を、対照として内因性β-アクチンを使用したウエスタンブロット法により試験した。
【0083】
この目的のために、結腸腫瘍株(T84)からの細胞を、IC50のS0506の脱脂成熟種子ミールから得られたエタノール抽出物と培養し、72時間後に細胞を収集してタンパク質抽出を進めた。
【0084】
ウエスタンブロットアッセイを実施するために、エタノール抽出物により処置した細胞、および対照細胞(処置なしのT84)からの40μgのタンパク質を、Mini-Protean IIセル(Bio-Rad,Hercules,CA)のSDS-PAGE電気泳動ポリアクリルアミドゲルにロードした。タンパク質を電気泳動により分離し、ニトロセルロースメンブレンに転写し、それに20Vを室温で1時間印加した。これらのメンブレンをブロッキング溶液(PBS-Tween+5%粉ミルク)で1時間処理し、PBS-Tweenで2回洗浄した後、一次抗体[ウサギ抗カスパーゼ-3ポリクローナルIgG(希釈1:500)、抗カスパーゼ-8(1:1000希釈)および抗カスパーゼ-9(1:1000希釈);Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA]とインキュベートした。それらを4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション時間経過後、2回の洗浄を行い、ペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体と共に室温で1時間インキュベーションを行った。最後に、ECL(増強化学発光)(Bonnus,Amersham,Little Chalfont,UK)(Ortiz et al.2009)によってタンパク質を検出した。
【0085】
ウエスタンブロットを実施後(
図5を参照)、ゲルで得られたバンドを、Bio-RadのQuantity Oneと呼ばれる分析ソフトウェアを使用して分析し、これにより、ナス(Solanum melongena)の脱脂成熟種子ミールからのエタノール抽出物が、カスパーゼ経路によって媒介される細胞アポトーシスを引き起こし、カスパーゼ9、3、および8がそれぞれ、対照と比較して4倍、6.5倍、および7.4倍過剰発現されることが確認された(
図6)。これらのデータは、エタノール抽出物が、内因性経路および外因性経路の両方を介して、アポトーシスによる細胞死を誘導することを示唆している。
【0086】
細胞死の他の可能なメカニズムの活性化を決定するために、免疫蛍光法を使用して、細胞微小管の重合/脱重合における考えられる変化の試験を行った。そのために、T84細胞培養物を、S0506の脱脂ミールから蒸発させたエタノール抽出物(IC
50)に曝露した。24時間後、細胞を固定し、抗チューブリン抗体と共にインキュベートした。
図7で確認できるように、細胞核の周囲の凝縮の存在は、細胞微小管の重合/脱重合の変化を示している。タキソール(イチイの樹皮由来)(Yu et al.,2017)およびビンクリスチン(ビンカの花由来)(Wuetal.,2012)などの一部の化学療法剤は、腫瘍細胞死を引き起こす、チューブリンの重合/脱重合をブロックすることによって作用する。これらの薬物は、様々な種類の腫瘍(白血病、リンパ腫、肺がん、前立腺など)で使用される。しかし、結腸がんについては、現在、このレベルで作用する化学療法はない。しかしながら、本発明の抽出物ならびにビンクリスチンおよびタキソールの作用との間の類似性は注目に値する。
【0087】
最後に、S0506の脱脂ミールからのエタノール抽出物によって誘導された細胞死のほとんどがアポトーシス経路によって生じたという事実にもかかわらず、その特定の割合は、オートファジー経路によって発生した。エタノール抽出物に曝露したT-84細胞の培養物(24時間)を、赤色蛍光プローブ(LysoTracker(商標)Red DND-99、Thermo Fisher Scientific)を使用して染色し、蛍光顕微鏡で観察した。T84株における古典的なオートファジー小胞の出現は、このメカニズムの活性化を示した(
図8)。
【0088】
-実施例4.-血管新生に対する効果を決定するための試験
血管新生または内皮細胞からの新しい血管の形成は、腫瘍の成長およびその拡大および転移の生成に不可欠である。本試験では、内皮細胞との伝達、したがって新しい血管の形成(血管新生)との関連で、腫瘍細胞上でのエタノール抽出物の効果を分析した。T84細胞を、IC25(20μg/ml)およびIC50(30μg/ml)の用量で、S0506の脱脂ミールからのエタノール抽出物と共に24時間インキュベートした。ウェルを洗浄し(PBS)、エタノール抽出物を含まない新しいDMEM(+10% FBSおよび1% Ab)を添加した後、培養物を48時間維持して、馴化培地を得た。次に、HUVEC細胞(臍帯内皮細胞株)を、マトリゲルを含む96ウェルプレートに播種した。血管の形成を観察するために、これらの細胞を得られた馴化培地と接触させた。
【0089】
図9で確認できるように、抽出物と接触したT84細胞からの馴化培地は、対照(曝露なしのHUVEC細胞)と比較して、HUVEC細胞による血管の形成を阻害した。血管の形成の定量化(セグメントの数、接合部、形成されたノード、およびセグメントの長さ)は、対照と比較して大幅な減少を示した(
図10)。これらの結果は、機能性エタノール抽出物が腫瘍細胞に影響を及ぼし、上皮細胞と相互作用する因子を変更し、血管新生プロセスの減少を引き起こすことを示唆している。この結果は、本発明のエタノール抽出物が、腫瘍に栄養を与える新しい血管の形成を阻害することができ、したがって腫瘍の成長および転移拡大を減少させることができることを意味するので、非常に重要である。
【0090】
-実施例5.-結腸がんのがん幹細胞(CSC)の集団に関する試験
腫瘍は、がん幹細胞(CSC)と呼ばれる腫瘍細胞の亜集団を有することを特徴とし、その基本的な特性は、未分化で多能性であるが、特に高い腫瘍形成能を有し、治療に対する抵抗性(化学療法抵抗性)を示すことを特徴としている。これらのCSCは、臨床的再発および現在使用されている治療レジメンによる治療の有効性が低いことの大部分の原因である。基礎腫瘍学および臨床腫瘍学の分野における最先端の研究の大部分は、優先的または選択的にこの細胞型に影響を与える抗腫瘍剤の開発に基づき、これにより、確実に、治療に対する患者の応答がより良くなり、患者の予後においてより大きな利益が得られるであろう。CSCは、CD133、CD44、CD24、NANOG、SOX-2、OCT-4などの特定の細胞マーカーによって同定される非常に不均一な集団である(Munro et al.,2018)。
【0091】
がん幹細胞の特定の亜集団における本発明のエタノール抽出物の抗腫瘍能を決定するために、T84細胞培養物をS0506の脱脂ミールのエタノール抽出物(IC50)に72時間曝露した。培養物から抽出された全RNAから、CSCマーカーCD24、CD44、CD133、SOX2、OCT4、およびNANOGの発現を決定するために、リアルタイムPCRを実施した。
【0092】
そのために、最初に細胞RNAをTrizol(Invitrogen)試薬で抽出し、NanoDrop2000で定量した。1μgのRNAを使用して逆転写プロセスを実行し、SuperScriptII Reverse Transcriptase(Invitrogen)およびユニバーサル逆転写プライマーを使用してcDNAを得た。SYBR Green Supermix(iTaq Universal SYBR Green Supermix(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA))を使用して、リアルタイムPCRを実施した。遺伝子発現データは、GADPHで正規化させた。すべての定量的RT-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイは、ABI7900(ABI)システムで実施し、相対発現レベルを計算する2ΔΔCt法を適用した。
【0093】
図11で観察されるとおり、ナス(Solanum melongena)S0506の脱脂ミールからの抽出物で処置された培養物は、対照中で得られたものより有意に低い選択されたマーカーの発現を示した。これらの結果は、抽出物が抗腫瘍活性を有するのみでなく、培養物中のCSCの割合を減少できることを示唆している。現在の化学療法レジメンの多くはCSCに影響を与えないのみでなく、この亜集団を選択し、早期の腫瘍の再発を促進し、その攻撃性を高めるため、この結果は大きい臨床的可能性を有し得る(Yujuan et al.,2018)。
【0094】
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【国際調査報告】