(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断モデルの訓練方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20231017BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231017BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61B6/03 360Z
G06T7/00 350C
G06T7/00 612
A61B6/03 377
G01T1/161 D
A61B6/03 360T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562000
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2022-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2022074386
(87)【国際公開番号】W WO2023040164
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111075570.3
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521162399
【氏名又は名称】之江実験室
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲聞▼▲タオ▼
(72)【発明者】
【氏名】金 源
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲海▼亮
(72)【発明者】
【氏名】薛 ▲夢▼凡
【テーマコード(参考)】
4C093
4C188
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA36
4C093DA03
4C093FF18
4C093FF28
4C188EE02
4C188FF07
4C188KK24
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA02
5L096FA59
5L096HA11
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】 本発明はPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断モデルの訓練方法及び装置を提供する。
【解決手段】
本発明はマルチタスク学習方法を使用し、病理画像に基づく診断分類により取得されたニューラルネットワークを訓練して病理特徴を抽出して、PET/CT画像に基づく診断分類ニューラルネットワークを訓練することを補助する。本発明はPET/CT画像に基づく肺癌診断分類精度を向上させるとともに、病理画像が訓練過程における先験知識として使用されるだけであり、実際の応用ではネットワークの入力として使用される必要がない。この方法は複数の尺度で融合される理念によって、PET/CT画像が肺癌診断分類として使用される精度を向上させ、早期肺癌診断の手段として更に普及及び応用されることに寄与し、臨床医師による患者の診断及び後続の治療案に助けを与え、それと同時に、病理画像が先験知識の補助とされる解決手段も病理切片の解釈可能性を更に向上させ、病理科医師による病理特徴のさらなる抽出に貢献する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルの訓練方法であって、
対応のPET/CT画像、病理画像及び臨床肺腺癌扁平上皮癌診断結果データを取得し、且つ病理画像を訓練済みのニューラルネットワークAに入力して病理特徴を取得することと、
初期ニューラルネットワークモデルを構築し、PET/CT画像を入力とし、予測された病理特徴及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果を出力とし、取得されたPET/CT画像、病理特徴及び臨床肺腺癌扁平上皮癌診断結果データを利用して前記初期ニューラルネットワークモデルを訓練して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得することとを含み、
前記初期ニューラルネットワークモデルの出力と対応の真理値との誤差を計算し、誤差が最も小さくなるまで、誤差に基づいて前記初期ニューラルネットワークモデルのパラメータを更新して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得し、
損失は、以下の式5で示され、
【数5】
、
loss1及びloss2がそれぞれ肺腺癌扁平上皮癌診断結果、及び病理特徴と対応の真理値との誤差であり、
がハイパーパラメータであり、
であり、
前記ニューラルネットワークAの入力が病理画像であり、出力が肺腺癌扁平上皮癌診断結果であり、診断分類精度が0.95以上であり、前記病理特徴がニューラルネットワークAの特徴抽出層の出力である
ことを特徴とするPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルの訓練方法。
【請求項2】
前記病理画像は、以下の式3を満足し、
【数3】
ここで、S
mask及びS
allはそれぞれ医者が注釈した肺癌情報プロファイルの画像面積、及び背景を含む全面積である
ことを特徴とする請求項1に記載の訓練方法。
【請求項3】
前記ニューラルネットワークAには、ResNet-50構造が用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載の訓練方法。
【請求項4】
前記初期ニューラルネットワークモデルはDenseNet-121構造を用い、PET及びCT画像がチャネル次元に沿って融合される特徴を入力とする
ことを特徴とする請求項1に記載の訓練方法。
【請求項5】
前記loss1は交差エントロピー損失関数を用い、loss2は平均二乗損失関数を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の訓練方法。
【請求項6】
PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルの訓練装置であって、前記訓練装置は、請求項1~5のいずれか1項に記載の訓練方法に基づく装置であり、
対応のPET/CT画像、病理画像及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果データを取得することに用いられるデータ取得ユニットと、
病理画像を訓練済みのニューラルネットワークAに入力して病理特徴を取得することに用いられる病理特徴取得ユニットと、
初期ニューラルネットワークモデルを構築し、且つPET/CT画像を入力とし、予測された病理特徴及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果を出力とし、データ取得ユニット及び病理特徴取得ユニットが取得したデータを利用して前記初期ニューラルネットワークモデルを訓練して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得することに用いられる訓練ユニットと、を備える
ことを特徴とするPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルの訓練装置。
【請求項7】
対応のPET/CT画像及び病理画像を、大きさが一致するピクチャに処理することに用いられるデータ前処理ユニットを更に備える
ことを特徴とする請求項6に記載の訓練装置。
【請求項8】
PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類装置であって、
診断対象のPET/CT画像を取得することに用いられるデータ取得モジュールと、
診断対象のPET/CT画像を請求項1~6のいずれか1項に記載の訓練方法で訓練して取得されたPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルに入力して、診断分類結果を取得することに用いられる肺腺癌扁平上皮癌診断分類モジュールと、を備える
ことを特徴とするPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用画像分野及び深層学習分野に関し、特にPET/CT及び病理切片に基づく全自動的な肺腺癌扁平上皮癌のインテリジェント診断モデルの訓練方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層撮影装置(PET:positron emission tomography)は分子レベルにおける機能的なイメージング装置の1種である。走査前に患者に放射性トレーサを注入する必要があり、トレーサが患者の体内で崩壊して隠滅し、発射方向が約180°逆である1対の511keVガンマ線光子を発生させ、検出器はこれらのガンマ線光子が結晶体に到達する位置及び時間情報を収集することとなる。画像再構成アルゴリズムを使用して収集された情報を再構成して後処理すれば、トレーサが患者の体内で代謝及び摂取する状況を反映するものを取得することができる。医者はPET/CTの画像結果に基づいて各項の臨床指標を参照して患者の病状を総合的に分析することにより、治療案を決定する。
【0003】
病理検査、即ち人体の器官、組織又は細胞における病理の変化を検査する病理形態学方法はすべての検査の中で診断精度が最も高い検査方法である。病理科医者は患者の体の病変部位から小塊の組織を取り出し(異なる状況に応じてバイスで取ること、切除又は穿刺して吸い取ることなどの方法を用いてもよい)、又は手術で標本を切除して病理切片に作り、細胞及び組織の形態構造の変化を観察し、それにより病変性質を決定して病理診断を行い、これは生体組織検査(biopsy)と称され、生体と略称される。病理検査は腫瘍診断方法の中でよく使用されている比較的正確な方法であり、診断の「至適基準」と称される。
【0004】
深層畳み込みニューラルネットワーク(CNN:convolutional neural network)は近年以来に医学人工知能モデルを構築するよく使用されている方法の1つであり、階層化された畳み込み処理によって画像の異なる次元の特徴情報を抽出し、抽出された特徴を後続の特定のネットワークに入力して特定のタスク例えば分類、分割、レジストレーション、検出、騒音低減等を行う。該方法の優位性は、サンプルにより特定のタスクに顕著な意味を有する高次特徴を自動的に学習することができることにあるが、訓練のためのデータ量に対して一定の要件を求めている。
【0005】
従来のPET/CTに基づく肺癌診断分類モデルについては、データ規模及び精度の制限により、該モデルが単一センターデータに基づいて訓練されるか、それともマルチセンターデータに基づいて訓練されるかにかかわらず、その診断分類精度がいずれも実用要求を満足することができない。そして、癌症診断の「至適基準」として見なされる病理切片は、サンプリングするために常に患者に対して侵入的ひいては侵襲的検査を行う必要があるため、早期診断に応用される場合が少ない。従って、比較的高い正確度で肺癌を早期診断・分類することができるPET/CTに基づくモデルを開発することは、病院による早期肺癌の診断率をある程度で向上させ、及び臨床医者による後続の治療を助けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の欠点に対して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断モデルの訓練方法及び装置を提供することにあり、本発明はマルチタスク学習(Multi-Task Learning)アルゴリズムに基づいて、病理特徴によりPET/CTに基づく深層学習ネットワークを最適化し、それによりPET/CTネットワークの訓練効率及び精度の上限を向上させる。そして、臨床応用過程において、PET/CT画像を入力すれば肺腺癌扁平上皮癌の診断分類情報を取得することができ、病理情報の参加を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は以下の技術案により実現される。
【0008】
PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルの訓練方法であって、具体的には、
対応のPET/CT画像、病理画像及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果データを取得し、病理画像を訓練済みのニューラルネットワークAに入力して病理特徴を取得することと、
初期ニューラルネットワークモデルを構築し、PET/CT画像を入力とし、予測された病理特徴及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果を出力とし、取得されたデータを利用して前記初期ニューラルネットワークモデルを訓練して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得することと、を含み、
前記ニューラルネットワークAは、入力が病理画像であり、出力が肺腺癌扁平上皮癌診断結果であって、取得された病理画像データにより訓練して取得されたものであり、病理画像が肺癌に対して「至適基準」の診断分類効果を有するため、ネットワークAを訓練して入力された病理画像に極めて高い分類精度を有させることができ、本発明において診断分類精度が0.95以上であるように求められ、前記病理特徴がニューラルネットワークAの特徴抽出層の出力である。好ましくは、ニューラルネットワークAの出力層の前の層の入力である。
【0009】
好ましくは、前記初期ニューラルネットワークモデルは具体的に以下の特徴を有する。
【0010】
特徴1には、ネットワークは2つの入力を含み、それぞれ入力されたPET及びCT画像が前処理畳み込み層を通過した後、サイズが標準化され、且つチャネル次元に沿って重ねられ、その後の主畳み込み層に入る。
【0011】
特徴2には、ネットワークはマルチタスク目標ネットワークであり、主に正則化フレームワークに基づいて確立され、目標関数は、以下の式1に示され、
【数1】
(1)
ここで、mがタスク数を示し、n
iが訓練サンプル数を示し、y
i
jがj番目の訓練サンプル及びi番目のタスクのタグを示し、l(.,.)が損失関数の1種例えば交差エントロピー損失又は平均二乗偏差損失を代表し、b=(b
1,…b
m)
Tがすべてのタスクにおけるオフセット補償であり、U∈R
d×dが正方変換行列であり、A∈R
d×mが各タスクのパラメータを含み、dがパラメータの次元であるが、||A||
2
2,1がそのL2正則化行列であり、a
iがi番目のタスクのモデルパラメータを示し、Iが単位行列であるが、λが正則化パラメータである。目標関数の第1部分がすべてのタスクの経験損失を代表し、第2部分がL2正則化により解の行のスパース性及び制約行列Uの直交化を確保し、そうすると、式(1)は更に、以下の式2にに示されてもよい、
【数2】
(2)、
ここで、
が公式(1)における総訓練損失を示し、tr(.)が行列の跡を代表し、W
i=Ua
iがi番目のタスクのモデルパラメータを代表するが、
はD行列が半確定行列であることを示す。そして、マルチタスク目標ネットワークの最適化が共分散行列Dの解を求めて複数のタスク問題をデカップリングさせ、それらの並列計算を促進するものである。
【0012】
特徴3には、初期ニューラルネットワークモデルの主なタスクは肺癌の診断分類であり、補助タスクは病理特徴のフィッティングである。入力された画像は主畳み込み層を通過した後に高次特徴を出力し、特徴が主タスクの完全接続層により処理された後に診断分類結果を出力し、補助タスクの畳み込み層により処理された後にフィッティング病理特徴を出力する。2つの出力をそれぞれ症例の真の診断結果及びネットワークAが出力した病理特徴と比較して損失を求め、2つの損失は共同で初期ニューラルネットワークモデルのパラメータの更新を決定する。
【0013】
更に、初期ニューラルネットワークモデルのパラメータ量をニューラルネットワークAのパラメータ量以下にすべきであり、初期ニューラルネットワークモデルはニューラルネットワークAが出力した診断分類特徴を学習できるようにし、それにより過フィッティングを回避する。
【0014】
更に、前記病理画像は、以下の式3を満足し、
【数3】
ここで、S
mask及びS
allはそれぞれ医者が注釈した肺癌情報プロファイルの画像面積、及び背景を含む全面積である。
【0015】
更に、前記ニューラルネットワークAには、ResNet-50構造が用いられる。
【0016】
更に、前記肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルはDenseNet-121構造を用い、PET及びCT画像がチャネル次元に沿って融合される特徴を入力とする。
【0017】
更に、取得されたデータを利用して前記初期ニューラルネットワークモデルを訓練して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得することは、具体的に、
前記初期ニューラルネットワークモデルの出力と対応の真理値との誤差を計算し、誤差が最も小さくなるまで、誤差に基づいて前記初期ニューラルネットワークモデルのパラメータを更新して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得し、前記損失は、以下の式5で示され、
【数5】
、
ここで、loss1及びloss2がそれぞれ肺腺癌扁平上皮癌診断結果及び病理特徴と対応の真理値との誤差であり、
がハイパーパラメータである。
【0018】
更に、前記loss1は交差エントロピー損失関数を用い、loss2は平均二乗損失関数を用いる。
【0019】
同じ発明構想に基づいて、本発明はPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルの訓練装置を更に提供し、
対応のPET/CT画像、病理画像及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果データを取得するためのデータ取得ユニットと、
病理画像を訓練済みのニューラルネットワークAに入力して病理特徴を取得するための病理特徴取得ユニットと、
初期ニューラルネットワークモデルを構築し、且つPET/CT画像を入力とし、予測された病理特徴及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果を出力とし、データ取得ユニット及び病理特徴取得ユニットが取得したデータを利用して前記初期ニューラルネットワークモデルを訓練して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得するための訓練ユニットと、を備える。
【0020】
更に、対応のPET/CT画像及び病理画像を、大きさが一致するピクチャに処理するためのデータ前処理ユニットを更に備える。
【0021】
訓練済みの肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルはPET/CT画像に基づいて直接に診断分類結果を出力することができ、病理データの参加を必要としない。具体的に、
PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類装置であって、
診断対象のPET/CT画像を取得するためのデータ取得モジュールと、
診断対象のPET/CT画像を上記いずれか1項に記載の訓練方法で訓練して取得したPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルに入力して、診断分類結果を取得するための肺腺癌扁平上皮癌診断分類モジュールと、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明はマルチタスク学習方法を使用し、病理画像に基づく診断分類ニューラルネットワークによって、PET/CT画像に基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを訓練することを補助する。本方法は病理特徴により肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルの訓練を補助し、PET/CT画像に基づく肺癌診断分類精度を向上させるように意図されている。同時に、病理画像は訓練過程における先験知識として使用されるだけであり、実際の応用ではネットワークの入力として使用される必要がない。この方法は、複数の尺度で融合される理念によって、PET/CT画像が肺癌診断分類として使用される精度を向上させ、早期肺癌診断の手段として更に普及及び応用されることに寄与し、臨床医師による患者の診断及び後続の治療案に助けを与え、それと同時に、病理画像が先験知識の補助とされる解決手段も病理切片の解釈可能性を更に向上させ、病理科医師による病理特徴のさらなる抽出に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1はPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断モデルの訓練フローチャートである。
【
図2】
図2はPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断モデルの訓練のニューラルネットワークの構造図である。
【0024】
以下、実例によって本方法をどのように具体的に応用してPET/CTに基づく肺癌診断分類ネットワークにおいて病理情報を導入するかについて説明する。
【0025】
図1~2に示すように、本発明のPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断モデルの訓練方法は、具体的に以下の通りである。
【0026】
ステップ1では、対応のPET/CT画像、病理画像及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果データを取得し、単一の入力及び出力の分類畳み込みニューラルネットワークを構築し、同じPET/CT画像に対応する病理画像及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果を分類畳み込みニューラルネットワークに導入し、病理画像が肺癌に対して「至適基準」の診断分類効果を有するため、分類畳み込みニューラルネットワークを訓練して入力された病理画像に極めて高い分類精度を有させることができ、その後、パラメータを保存して訓練済みのニューラルネットワークAを取得する。且つ、病理画像を訓練済みのニューラルネットワークAに入力して病理特徴を取得し、具体的に以下のサブステップを含む。
【0027】
サブステップ(1.1)では、分類畳み込みニューラルネットワークを構築し、本実例において分類畳み込みニューラルネットワークはResNet-50構造を用い、具体的な構造は表1に示される。
【0028】
【0029】
サブステップ(1.2)では、訓練に用いられる病理切片データセットを構築し、使用されるオリジナルの病理画像がいずれもホールスライドイメージ(Whole Slide Image)であるため、極めて高い解像度を有する。ニューラルネットワークの入力寸法要求及びネットワーク訓練に必要な計算リソースを満足するために、本実施例は前処理段階においてすべてのオリジナルの病理画像を224*224サイズの切片に切り出す。切片が満たすべき条件は、
【数3】
であり、
ここで、S
mask及びS
allはそれぞれ医者が注釈した肺癌情報プロファイルの画像面積、及び背景を含む全面積である。式(3)の目的は入力された病理切片画像がいずれも一定の肺癌分類特徴を含むように確保することである。異なるオリジナルの病理画像における肺癌情報は画像面積が異なることを示すため、訓練過程における各サンプル量の分布バランスを確保するために、本実例においてオーバーラップタイル戦略(Overlap-tile strategy)を使用して各オリジナルの画像から切る出された切片の数を一致させるように維持する。
【0030】
サブステップ(1.3)では、サンプルを訓練セット及び検証セットに分け、検証セットはすべての症例の切片画像を含むように確保する必要があり、訓練セットを使用してステップ(1.1)において構築された分類畳み込みニューラルネットワークを訓練し、訓練済みのネットワークはテストセットにおいて0.95以上の極めて高い正確度を有するように確保する必要があり、本実例において訓練済みのニューラルネットワークAによる病理切片の肺癌診断分類精度が0.99であるように要求される。
【0031】
サブステップ(1.4)では、各組の症例に対しては、対応のPET、CT及び病理画像があり、ステップ(1.3)において構築された病理画像の検証セットデータをステップ1における訓練済みのニューラルネットワークAに入力して、それに対応する診断分類結果を取得するとともに、ニューラルネットワークAの出力層の前の層の入力を該症例の病理特徴として抽出して保存し、保存される特徴を予め標準化する必要があり、本実例においてSigmoid関数(式4)を使用して標準化し、各例のPET/CT画像が1枚の病理切片から抽出された特徴に対応する。
【数4】
S(x)及びxがそれぞれ活性化関数の入力及び出力を示す。
【0032】
ステップ2では、マルチ入力及びマルチタスク目標出力の初期ニューラルネットワークモデルを構築し、ペアリングされたPET及びCT画像を入力とし、対応の診断分類結果及び病理特徴を出力とし、初期ニューラルネットワークモデルを訓練する。具体的に以下のサブステップを含む。
【0033】
サブステップ(2.1)では、PET/CTに基づく肺癌診断分類の初期ニューラルネットワークモデルを構築し、且つ病理特徴のフィッティング出力を含む。本実例において初期ニューラルネットワークモデルはDenseNet-121構造を用い、主な構造は表2に示される。
【0034】
【0035】
サブステップ(2.2)では、前処理段階において、肺癌の病巣位置に基づいてPET/CTオリジナル画像から224*224サイズの肺癌切片を切り出し、切片をチャネル層に沿って重ねた後に初期ニューラルネットワークモデルに入力し、ネットワークの目標出力1は該症例の肺癌診断分類結果であり、目標出力2はステップ2において保存される該症例の病理特徴である(Sigmoid関数を使用して標準化することもある)。2つの目標出力及びそれに対応する真理値に対して、それぞれ誤差を求め(本実例において目標出力1が交差エントロピー損失関数を使用し、目標出力2が平均二乗損失関数を使用する)、ネットワークの実際の誤差は、
【数5】
(5)であり、
ここで、loss1及びloss2がそれぞれ目標出力1と目標出力2との誤差であり、
はハイパーパラメータ即ち目標出力2の誤差が全ネットワークの誤差を占める比率であり、
である。実際の誤差によりネットワークパラメータを更新して調整し、即ち2つの目標タスクによりネットワークを共同で訓練して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得する。
【0036】
訓練して取得された肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルはPET/CT画像に基づいて直接に診断分類結果を出力することができ、病理データの参加を必要としない。
【0037】
病理画像による先験知識のおかげで、肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルはPET/CT画像の肺癌診断分類に対して一層高い精度を有するが、病理画像はネットワークの訓練過程のみに作用し、臨床応用において提供される必要がない。これにより、訓練して取得したPET/CT肺癌診断分類ネットワークはPET/CT画像のみにより訓練して取得したネットワークよりも精度が一層高く、安定性が一層高く、肺癌の早期診断に臨床上の実際の意味を有する。
【0038】
また、1つの好適な解決手段として、上記訓練方法に基づいて構築されたPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルの訓練装置は、
対応のPET/CT画像、病理画像及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果データを取得するためのデータ取得ユニットと、
病理画像を訓練済みのニューラルネットワークAに入力して病理特徴を取得するための病理特徴取得ユニットと、
初期ニューラルネットワークモデルを構築し、且つPET/CT画像を入力とし、予測された病理特徴及び肺腺癌扁平上皮癌診断結果を出力とし、データ取得ユニット及び病理特徴取得ユニットが取得したデータを利用して前記初期ニューラルネットワークモデルを訓練して、PET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルを取得するための訓練ユニットと、を備える。
【0039】
訓練済みの肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルはPET/CT画像に基づいて直接に診断分類結果を出力することができ、病理データの参加を必要としない。具体的に、
1つの好適な解決手段として、訓練して取得された肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルによる1種のPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類装置は、
診断対象のPET/CT画像を取得するためのデータ取得モジュールと、
診断対象のPET/CT画像を上記いずれか1項に記載の訓練方法で訓練して取得されたPET/CTに基づく肺腺癌扁平上皮癌診断分類モデルに入力して、診断分類結果を取得するための肺腺癌扁平上皮癌診断分類モジュールと、を備える。
【0040】
明らかに、上記実施例は単に明確に説明するために挙げた例であり、実施形態を限定するものではない。当業者であれば、上記説明を基に更に他の異なる形式の変化又は修正を行うことができる。ここで、すべての実施形態を網羅する必要がなく、すべての実施形態を網羅することもできない。これにより派生した明らかな変化又は修正は依然として本発明の保護範囲に含まれる。
【国際調査報告】