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特表2023-544487微粒子を濾過するための触媒物品及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】微粒子を濾過するための触媒物品及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20231017BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20231017BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231017BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20231017BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231017BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/04 301E
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/035 A
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513637
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 US2020053318
(87)【国際公開番号】W WO2022071926
(87)【国際公開日】2022-04-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ラカダミヤリ、フェジル
(72)【発明者】
【氏名】クロウズ、ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】グッドウィン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】レイヴンズクロフト、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ロブソン、クリス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン、サラ
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】

触媒物品、及び内燃機関のための排気システムにおけるその使用が開示される。触媒物品は、ウォールフローフィルタである基材、第1の触媒組成物、及び第2の触媒組成物を含む。第1及び第2の触媒組成物はそれぞれ独立して、1.3ミクロン未満のD90を有するCeZr混合酸化物ゾルに由来する酸素吸蔵成分(OSC)と、1~20ミクロンのD90を有する粒子状無機酸化物とを含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火式内燃機関からの排気ガスを処理するための触媒物品であって、
入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、入口端から延びる複数の入口チャネルと、出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備え、
前記複数の入口チャネルが、前記Lの少なくとも50%にわたり、前記入口端又は前記出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、前記複数の出口チャネルが、前記Lの少なくとも50%にわたり、前記出口端又は前記入口端から延びる第2の触媒組成物を含み、前記第1及び第2の触媒組成物が、前記Lの最大80%と重なり合い、
前記第1及び第2の触媒組成物が、それぞれ独立して、1.3ミクロン未満のD90を有するCeZr混合酸化物ゾルに由来する酸素吸蔵成分(OSC)と、1~20ミクロンのD90を有する粒子状無機酸化物とを含む、触媒物品。
【請求項2】
前記CeZr混合酸化物ゾルが、1.0ミクロン未満のD90を有する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記CeZr混合酸化物ゾルが、230~310nmのZ平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記第1及び第2の触媒組成物が、前記Lの最大20%だけ重なり合う、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記第1及び第2の触媒組成物が、前記Lの最大10%だけ重なり合う、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記CeZr混合酸化物ゾルが、約2:1のZrO対CeOの重量比を有する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記粒子状無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記第1及び/又は第2の触媒組成物が、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される白金族金属(PGM)成分を更に含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記第1及び/又は第2の触媒組成物が、アルカリ又はアルカリ土類金属成分を更に含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記第1及び第2の触媒組成物が同じである、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記第1及び/又は第2の触媒組成物が、3:1~1:3の前記OSC対前記粒子状無機酸化物の重量比を有する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記第1及び/又は第2の触媒組成物が、前記基材上に直接提供される、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項13】
火花点火式エンジンの排気マニホルドと流体連絡する、請求項1に記載の触媒物品を含む排気ガス処理システム。
【請求項14】
火花点火式内燃機関から排出される排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを、請求項1に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【請求項15】
23nm未満の粒子の排出を低減するための排気ガス処理システムにおける請求項1に記載の触媒物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するための触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火式エンジンは、火花点火を用いて炭化水素及び空気混合物の燃焼を引き起こす。これとは異なり、圧縮着火式エンジンは、炭化水素を圧縮空気中に噴射することによって炭化水素の燃焼を引き起こす。火花点火式エンジンは、ガソリン燃料、メタノール及び/又はエタノールを含む含酸素添加剤とブレンドされたガソリン燃料、液体石油ガス、又は圧縮天然ガスを燃料とすることができる。火花点火式エンジンは、化学量論的に運転されるエンジン又はリーンバーン運転エンジンであることができる。
【0003】
三元触媒(TWC)は、典型的には、1つ以上の白金族金属、特に白金、パラジウム、及びロジウムからなる群から選択されるものを含有する。TWCは、以下の3つの反応を同時に触媒することを意図している:(i)一酸化炭素の二酸化炭素への酸化;(ii)未燃焼炭化水素の二酸化炭素及び水への酸化;並びに(iii)窒素酸化物の窒素及び酸素への還元。
【0004】
これらの3つの反応は、TWCが化学量論的点で又はその付近で作動するエンジンから排気ガスを受け取ると、最も効率的に生じる。当該技術分野において周知のように、火花点火式(例えば、火花点火)内燃機関においてガソリン燃料が燃焼したときに排出される一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NO)の量は、主に燃焼筒内の空燃比に影響を受ける。化学量論的にバランスのとれた組成を有する排気ガスは、酸化性ガス(NO及びO)及び還元性ガス(HC及びCO)の濃度が実質的に一致しているものである。この化学量論的にバランスのとれた排気ガス組成を生じる空燃比は、典型的には14.7:1として与えられる。
【0005】
理論的には、化学量論的にバランスのとれた排気ガス組成において、O、NO、CO、及びHCを、CO、HO、及びN(及び残留O)に完全に変換できる必要があり、これがTWCの役割である。したがって、理想的には、燃焼混合物の空燃比が化学量論的にバランスのとれた排気ガス組成を生成するような方法でエンジンを動作させる必要がある。
【0006】
排気ガスの酸化ガスと還元ガスとの間の組成バランスを定義する方法は、排気ガスのラムダ(λ)値であり、これは、実際のエンジン空燃比を化学量論的エンジン空燃比で割ったものとして定義することができる。ラムダ(λ)値が1の場合、化学量論的にバランスのとれた(又は化学量論的)排気ガス組成を表し、ラムダ値が>1の場合、過剰のO及びNOを表し、組成は「リーン」と表現され、ラムダ値が<1の場合、過剰のHC及びCOを表し、組成は「リッチ」と表現される。これは、空燃比を生じる排気ガス組成に応じて、「化学量論的」、「リーン」又は「リッチ」としてエンジンが動作する空燃比:したがって、化学量論的に動作するガソリンエンジン又はリーンバーンガソリンエンジンでの空燃比を指すこともまた、当該技術分野において一般的である。
【0007】
TWCを使用したNOのNへの還元は、排気ガス組成が化学量論的にリーンであるときは効率が低下することを理解されたい。同様に、TWCは、排気ガス組成がリッチであるとき、CO及びHCを酸化する能力が低くなる。したがって、課題は、TWCに流入する排気ガスの組成を、可能な限り化学量論的組成に近いまま維持することである。
【0008】
当然のことながら、エンジンが定常状態にあるとき、空燃比が化学量論的であることを保証することは比較的容易である。しかしながら、エンジンが車両を推進するために使用される場合、必要とされる燃料量は、運転者がエンジンにかける負荷要求に応じて一時的に変化する。これにより、三元変換のために化学量論的な排気ガスが生成されるように空燃比を制御することが特に困難になる。実際には、排気ガス酸素(EGO)(又はラムダ)センサから排気ガス組成に関する情報を受け取るエンジン制御ユニット、いわゆる、閉ループフィードバックシステムによって、空燃比を制御する。このようなシステムの特徴は、空燃比の調節に関連するタイムラグがあるため、わずかにリッチな化学量論的(又は制御セット)点とわずかにリーンとの間で、空燃比が振動する(又は摂動する)ことである。この摂動は、空燃比の振れ幅及び応答周波数(Hz)によって特徴付けられる。
【0009】
典型的なTWC中の活性成分は、高表面積酸化物上に担持されたロジウムと組み合わせた白金及びパラジウム、又は更にはパラジウムのみ(ロジウムなし)の一方又は両方、並びに酸素吸蔵成分を含む。
【0010】
排気ガス組成が設定点よりわずかにリッチな場合、未反応CO及びHCを消費するため、すなわち、反応をより化学量論的にするために少量の酸素が必要とされる。逆に、排気ガスがわずかにリーンになると、過剰な酸素を消費する必要がある。これは、摂動中に酸素を排出又は吸収する酸素吸蔵成分(OSC)の開発によって達成された。最新のTWCにおける最も一般的に使用される酸素吸蔵成分は、酸化セリウム(CeO)又はセリウムを含有する混合酸化物又は複合酸化物、例えば、CeZr混合酸化物又はCeZr混合酸化物複合酸化物である。
【0011】
ガソリン燃料を火花点火式で燃焼させたときに排出される一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NO)に加えて(これらは全てTWC触媒で処理できる)、粒子状物質(PM)の排出を考慮する必要がある。
【0012】
環境PMは、ほとんどの著者によって、空気力学的直径に基づいて次のカテゴリに分類される(空気力学的直径は、測定された粒子と同じ空気中の沈降速度の1g/cm密度球の直径として定義される):(i)空気力学径10μm未満の粒子PM-10;(ii)直径2.5μm未満の微粒子(PM-2.5)、(iii)直径0.1μm(又は100nm)未満の超微粒子、(iv)直径50nm未満であることを特徴とするナノ粒子。
【0013】
1990年代半ば以降、内燃機関から排出される粒子状物質の粒子サイズ分布は、微粒子及び超微粒子の健康への悪影響の可能性があるため、ますます注目を集めている。環境空気中のPM-10粒子状物質の濃度は、米国の法律によって規制されている。PM-2.5の新しい追加の環境空気品質基準は、人間の死亡率と2.5μm未満の微粒子の濃度との間に強い相関関係があることを示した健康調査の結果として、1997年に米国で導入された。
【0014】
ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンで生成されたナノ粒子は、より大きなサイズの粒子状物質よりも人間の肺に深く浸透すると理解されており、その結果、2.5~10.0μmの範囲の粒子状物質に関する研究結果から推定されるように、それらはより大きな粒子よりも有害であると考えられているため、関心は今やナノ粒子に移行している。
【0015】
ディーゼル粒子状物質のサイズ分布は、粒子の核形成及び凝集のメカニズムに対応する確立されたバイモーダル特性を有する。ディーゼルPMは、質量をほとんど保持しない多数の小さな粒子で構成されている。ほぼ全てのディーゼル粒子状物質のサイズは1μmを大幅に下回る。すなわち、微粒子(すなわち、1997年の米国法に該当する)、超微粒子、及びナノ粒子の混合物が含まれる。
【0016】
セラミックウォールフローモノリスなどのディーゼル粒子状物質フィルタは、深層濾過及び表面濾過の組み合わせで機能し得ることが理解されており、深層濾過能力が飽和し、粒子状物質層が濾過表面を覆い始めると、より高い煤担持量で濾過ケーキが発生する。深層濾過は、ケーキ濾過よりも濾過効率がやや低く、圧力損失が少ないという特徴がある。
【0017】
火花点火式エンジンによって生成されたPMは、ディーゼル(圧縮着火式)エンジンによって生成されたものと比較して、ごくわずかな蓄積及び粗いモードで、超微細が非常に高い割合であり、これは、大気への放出を防ぐために、火花点火式エンジンの排気ガスからそれを除去することへの課題を提示する。特に、火花点火式エンジンに由来するPMの大部分は、ディーゼルPMのサイズ分布と比較して比較的小さいため、火花点火PM表面タイプのケーキ濾過を促進するフィルタ基材を使用することは実際には不可能であり、これは、必要となるフィルタ基材の平均細孔サイズが比較的小さいと、システム内で非実用的に高い背圧が発生するためである。
【0018】
更に、一般に、一般に火花点火排気ガス中のPMが少ない(そのため、煤ケーキが形成される可能性は低い)ため、関連する排出基準を満たすために、ディーゼルPMをトラップするために設計された従来のウォールフローフィルタを使用して、火花点火式エンジンからのPMの表面型濾過を促進することはできず、火花点火排気ガス温度は一般に高く、酸化によるPMの除去が速くなり得るため、ケーキ濾過によるPM除去の増加が防止される。従来のディーゼルウォールフローフィルタでの火花点火PMの深層濾過も、PMが濾材の細孔径よりも大幅に小さいため困難である。したがって、通常の操作では、コーティングされていない従来のディーゼルウォールフローフィルタは、圧縮着火式エンジンよりも火花点火式エンジンで使用した場合の濾過効率が低くなる。
【0019】
2014年9月1日からのヨーロッパの排出規制(Euro 6)では、ディーゼルとガソリン(火花点火式)との両方の乗用車から排出される粒子の数を制御する必要がある。ガソリンEU小型車の場合、許容限度は次のとおりである:1000mg/kmの一酸化炭素;60mg/kmの窒素酸化物(NO);100mg/kmの総炭化水素(うち≦68mg/kmは非メタン炭化水素);及び4.5mg/kmの粒子状物質(直接噴射エンジンの場合のみ)。Euro 6には、PM数の標準制限である1kmあたり6.0×1011が設定されているが、相手先ブランド供給業者は2017年まで6×1012km-1の制限を要求し得る。実用的な意味で、法制化されている粒子状物質の範囲は、23nm~3μmである。
【0020】
米国では、2012年3月22日、カリフォルニア州大気資源局(CARB)が、2017年以降のモデルイヤーから、3mg/マイル排出制限を含み、様々な中間レビューがそれを実行可能であるとみなす限り、1mg/マイルの後での導入が可能である、「LEV III」の乗用車、小型トラック、及び中型車に新しい排気基準を採用した。
【0021】
新しいEuro 6排出基準は、ガソリン排出基準を満たすためのいくつかの困難な設計上の問題を提示する。特に、全て許容可能な背圧で(例えば、EUドライブサイクルの最大オンサイクル背圧で測定)、PMガソリン(火花点火)排出量を削減し、更に同時に、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、及び未燃炭化水素(HC)の1つ以上などの非PM汚染物質の排出基準を満たすためのフィルタ、又はフィルタを含む排気システムをいかに設計するかである。
【0022】
Euro 6排出基準を満たすために、TWCとフィルタとを組み合わせるための最近の取り組みがいくつかある。
【0023】
国際公開第2014125296号は、車両の火花点火式内燃機関用の排気システムを含む火花点火式エンジンを開示している。排気システムは、三元触媒ウォッシュコートでコーティングされた車両の火花点火式内燃機関から放出される排気ガスから粒子状物質を濾過するためのフィルタを含む。ウォッシュコートは、白金族金属及び複数の固体粒子を含み、複数の固体粒子は、少なくとも1つのベース金属酸化物と、セリウムを含む混合酸化物又は複合酸化物である少なくとも1つの酸素吸蔵成分とを含む。セリウム及び/又は少なくとも1つのベース金属酸化物を含む混合酸化物又は複合酸化物は、1μm未満の中央値粒子サイズ(D50)を有する。
【0024】
米国特許出願公開第20090193796号は、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び粒子状物質を含む排気ガスを処理するためのガソリン直噴エンジンの下流にある排出処理システムを開示しており、排出処理システムは、粒子状物質トラップ上又は粒子状物質トラップ内にコーティングされたTWC触媒を含む触媒粒子状物質トラップを含む。提供される説明及び実施例では、触媒コーティング(層状又は層状触媒複合体とも呼ばれる)は、所望の貴金属化合物の溶液と少なくとも1つの担体材料(細かく分割された高表面積、高融点金属酸化物など)とのスラリー混合物から調製される。スラリー混合物は、例えば、ボールミル又は他の同様の装置において粉砕され、粒子サイズが約20μm未満、すなわち平均直径[「D50」として知られる]が約0.1~15μmの間である実質的に全ての固体をもたらす。実施例では、アルミナのミリングによる粉砕は、粒子の90%[「D90」として知られる]の粒子サイズが8~10μmになるように行われた。セリア-ジルコニア複合材料の粉砕は、<5μmのD90粒子サイズにミリングすることによって行われた。
【0025】
英国特許第2514875号において、発明者らは、低背圧用途のために、米国特許出願公開第20090193796号に開示されているものなどのコーティングフィルタ用の三元触媒で使用するためのミリングされたCe/Zr混合酸化物を含むウォッシュコート組成物の使用を検討した。ここで、Ce/Zr混合酸化物をミリングすることにより、セリウム/ジルコニウム混合酸化物のD50の減少とともに背圧は減少したが、同時に、特にCO及びNO排出について、三元触媒活性が大幅に減少したことがわかった。
【0026】
したがって、従来技術の欠点を解決する改善されたTWC触媒フィルタを提供すること、又は少なくともそれに対する商業的に有用な代替物を提供することが目的である。より具体的には、排気ガスの処理を可能にして、微細な23nm未満の粒子状物質の放出に対処することを可能にする触媒物品を提供することが目的である。
【0027】
本発明者らは、英国特許第2514875号で観察された三元触媒活性の低下の問題に対処できることを見出した。彼らはまた、セリウム/ジルコニウム混合酸化物成分及びアルミナなどの無機酸化物材料の粒子サイズを注意深く選択することにより、背圧を望ましいレベルまで低減できることも発見した。
【0028】
この発見の利点は、上記の超微細煤粒子に関連する健康リスクに対処することで明らかであり、最近、International Journal of Environmental Research and Public Health(Int.J.Environ.Res.Public Health、2018年、15巻、304頁)で十分に参照及び議論されている。確かに、超微粒子の世界的な受け入れ並びに心肺及び中枢神経系の健康問題への影響は、自動車用途の世界的な法規制の強化を推進している。今日の排出制限を超えて、立法者は大気質を更に改善することを目指しており、考慮すべき1つの領域は粒子状物質であり、現在ユーロ6d基準のPN又は粒子状物質数として測定されている。
【0029】
現在、PNの測定要件は23nm以上の粒子に対するものである。測定精度が向上するにつれて法律を厳しくすることを検討する1つの明白な側面は、23nm未満の粒子サイズを検討することである。したがって、記載された発明は、Euro6dを超える粒子状物質排出法の予想される厳格化の技術的課題を解決し、大気中の超微粒子を減少させるという望ましい健康上の利益をもたらすのに役立つ。
【発明の概要】
【0030】
本開示の一態様は、火花点火式内燃機関からの排気ガスを処理するための触媒物品であって、入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、入口端から延びる複数の入口チャネルと、出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備え、複数の入口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、入口端又は出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、複数の出口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、出口端又は入口端から延びる第2の触媒組成物を含み、第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大80%と重なり合い、第1及び第2の触媒組成物が、それぞれ独立して、1.3ミクロン未満のD90を有するCeZr混合酸化物ゾルに由来する酸素吸蔵成分(OSC)と、1~20ミクロンのD90を有する粒子状無機酸化物とを含む、触媒物品に関する。
【0031】
本開示の別の態様は、火花点火式エンジンの排気マニホルドと流体連絡する、本明細書に記載の触媒物品を含む、排気ガス処理システムに関する。
【0032】
本開示の別の態様は、火花点火式内燃機関から排出される排気ガスを処理する方法であって、排気ガスを、本明細書に記載の触媒物品と接触させることを含む方法に関する。
【0033】
本開示の別の態様は、23nm未満の粒子の排出を低減するための排気ガス処理システムにおける本発明の触媒物品の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本明細書に記載するウォールフローフィルタの一実施例の概略図である。
図2】本明細書に記載するウォールフローフィルタの別の実施例の概略図である。
図3】粒子状物質の排出、具体的には、例示的な触媒物品の10~23nmの排出、特に10~23nmの粒子状物質数のシミュレートされたWLTCエンジンベンチデータを示す(#/km)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示の一態様は、火花点火式内燃機関からの排気ガスを処理するための触媒物品であって、入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、入口端から延びる複数の入口チャネルと、出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備え、複数の入口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、入口端又は出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、複数の出口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、出口端又は入口端から延びる第2の触媒組成物を含み、第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大80%と重なり合い、第1及び第2の触媒組成物が、それぞれ独立して、1.3ミクロン未満のD90を有するCeZr混合酸化物ゾルに由来する酸素吸蔵成分(OSC)と、1~20ミクロンのD90を有する粒子状無機酸化物とを含む、触媒物品に関する。
【0036】
以下の節において、本発明の異なる態様は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0037】
触媒物品は、入口端と、出口端と、それらの間に軸方向長さLとを有するウォールフローフィルタである基材と、入口端から延びる複数の入口チャネルと、出口端から延びる複数の出口チャネルと、を備える。ウォールフローフィルタは当技術分野で周知であり、典型的には、複数の入口チャネル及び複数の出口チャネルを有するセラミック多孔質フィルタ構造を含み、各入口チャネル及び各出口チャネルは、多孔質構造のセラミック壁によって部分的に定義され、各入口チャネルは、多孔質構造のセラミック壁によって出口チャネルから分離されている。
【0038】
典型的な長さは、長さ2~12インチ(5.1~30.5cm)、好ましくは長さ3~6インチ(7.6~15.2cm)である。断面は、好ましくは円形であり、典型的には、直径4.66及び5.66インチ(11.8cm及び14.4cm)のフィルタを有してもよい。しかしながら、断面はまた、フィルタを固定する必要がある車両上の空間によっても決定され得る。
【0039】
基材は、セラミック、例えば、炭化ケイ素、コーディエライト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、ムライト、例えば、針状ムライト(例えば、国際公開第01/16050号を参照)、ポルサイト、Al/Feなどのサーメット、又はその任意の2つ以上のセグメントを含む複合材料であり得る。本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0040】
本発明での使用に適した基材は、典型的には>40%又は>50%の多孔度を有し、50~65%又は55~60%などの45~75%の多孔度を有利に使用することができる。多孔度は、基材内の空隙空間の割合の尺度であり、排気システム内の背圧に関連する。一般に、多孔度が低いほど、背圧は高くなる。
【0041】
本発明での使用に適した基材は、典型的には、8~45μm、例えば8~25μm、10~20μm、又は10~15μmの表面細孔の平均細孔サイズを有する。細孔サイズは当業者に周知であり、適切な測定技術は当業者に知られている。
【0042】
第1及び第2の触媒組成物の各々は、独立して、1.3ミクロン未満のD90を有するCeZr混合酸化物ゾルに由来する酸素吸蔵成分(OSC)と、1~20ミクロンのD90を有する粒子状無機酸化物とを含む。
【0043】
粒子サイズ分布は、D10、D50、及びD90の測定値によって特徴付けることができる。いずれの場合も、数値は、記載されている値よりも小さい粒子のパーセンテージ量を示す。言い換えると、100ミクロンのD90は、粒子の90%が直径100ミクロンよりも小さいことを意味する。D10及びD90を知ることにより、粒子の分布における粒子の範囲を定義することができる。D10及びD90値による試料の粒子サイズの特徴は、一般に粒子サイズ分布の幅を定義する。これらの値が近いほど、粒子サイズの分布は狭くなる。
【0044】
CeZr混合酸化物ゾル及び/又は粒子状無機酸化物のD10、D50及びD90値を得るために必要な粒子サイズ測定値は、体積ベースの手法であるMalvern Mastersizer 2000を使用したレーザー回折粒径分析によって得ることができ(すなわち、D50及びD90は、D50及びD90(又はD(v,0.50)及びD(v,0.90)とも称され得る)、数学的Mie理論モデルを適用して粒子サイズ分布を求める。レーザー回折システムは、球近似に基づいて粒子の直径を求めることによって機能する。レーザー回折粒子サイズ分析による粒子サイズ測定のために、希釈試料を、界面活性剤を含まない蒸留水中で35ワットで30秒間超音波処理することによって調製した。
【0045】
いくつかの実施形態では、CeZr混合酸化物ゾルのD90は、1.2ミクロン未満、又は1.1ミクロン未満、又は1.0ミクロン未満、又は900nm未満、又は800nm未満、又は700nm未満、又は600nm未満、又は500nm未満、又は400nm未満、又は300nm未満であり得る。
【0046】
いくつかの他の実施形態では、CeZr混合酸化物ゾルのD90は、1.2ミクロン~1.3ミクロン、又は1.1ミクロン~1.2ミクロン、又は1.0ミクロン~1.1ミクロン、又は900nm~1.0ミクロン、又は800nm~900nm、又は700nm~800nm、又は600nm~700nm、又は500nm~600nm、又は400nm~500nm、又は300nm~400nm、又は200nm~300nm、又は100nm~200nmであり得る。
【0047】
CeZr混合酸化物ゾルは、100nm~700nm、好ましくは200nm~600nm、より好ましくは300nm~400nmのD50を有してもよい。
【0048】
粒子サイズは、試料のZ平均粒子サイズを得ることによっても特徴付けることができる。Z平均は、動的光散乱(DLS)によって測定された粒子のアンサンブルコレクションの強度加重平均流体力学的サイズである。Z平均は、測定された相関曲線のキュムラント解析から導出され、単一の粒子サイズが仮定され、単一の指数関数フィットが自己相関関数に適用される。CeZr混合酸化物ゾル及び/又は粒子状無機酸化物のZ平均粒子サイズを得るために必要な粒子サイズ測定値は、Malvern Zetasizer Nanoを使用する動的光散乱粒子サイズ分析によって得ることができる。全ての試験は、希釈水性媒体中で行われ、等価拡散率の球の調和平均流体力学的直径は、ストークス-アインシュタイン式に従って、ランダムに移動する粒子によって散乱される光の時間依存性のキュムラント分析によって判定される。
【0049】
CeZr混合酸化物ゾルのZ平均粒子サイズは、好ましくは150nm~350nm、より好ましくは230~310nmである。
【0050】
CeZr混合酸化物ゾルは、水性媒体中に分散されたCeZr混合酸化物(CeZr混合酸化物粒子又はCeZr混合酸化物ナノ粒子)を含む。CeZr混合酸化物は、セリア及びジルコニアを含む。「セリア」又は「二酸化セリウム」及び「ジルコニア」又は「酸化ジルコニウム」として名目上記載されているが、存在する実際の酸化アニオンは、酸化物アニオン若しくは水酸化物アニオン、又はそれらの混合物、例えば水和酸化物相(例えば、オキシ水酸化物)を含み得ることが当業者によって理解される。
【0051】
好ましくは、CeZr混合酸化物ゾル中のCeZr混合酸化物の濃度は、CeZr混合酸化物ゾルの重量に対して、10~約50重量パーセント(「重量%」)、より好ましくは15~約45重量%、最も好ましくは20~約40重量%の範囲である。
【0052】
CeZr混合酸化物ゾル中に存在するCeZr混合酸化物は、好ましくは、CeZr混合酸化物の総重量に対して約5~約60重量%の量で、より好ましくは約10~約50重量%の量で、最も好ましくは約30~約40重量%の量でセリアを含んでもよい。
【0053】
ゾル中に存在するCeZr混合酸化物は、好ましくは、CeZr混合酸化物の総重量に対して約10~約75重量%の量で、より好ましくは約30~約70重量%の量で、最も好ましくは約50~約65重量%の量でジルコニアを含んでもよい。
【0054】
一実施形態では、CeZr混合酸化物ゾルは、約2:1のZrO対CeOの重量比を有する。
【0055】
ゾル中に存在するCeZr混合酸化物は、セリア以外の希土類酸化物を含んでもよい。CeZr混合酸化物中の希土類酸化物は、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、イットリウム(Y)、及びそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される。CeZr混合酸化物は、好ましくはLa、Nd、Pr、若しくはYの酸化物、又はそれらの混合物、より好ましくはLa若しくはNdの酸化物、又はそれらの混合物を含む。
【0056】
CeZr混合酸化物ゾル中のCeZr混合酸化物中の希土類酸化物の量は、好ましくは、CeZr混合酸化物の総重量に対して約1~約25重量%の量、より好ましくは約2~約20重量%の量、最も好ましくは約5~約15重量%の量であってもよい。
【0057】
CeZr混合酸化物ゾル中に存在するCeZr混合酸化物は、遷移金属酸化物を含んでもよい。CeZr混合酸化物中に存在する遷移金属は、好ましくは、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、遷移金属は、Ti、Hf、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。最も好ましくは、遷移金属は、Hfである。
【0058】
本発明に適したCeZr混合酸化物ゾルは、既知の技術によって調製することができる。例えば、国際公開2020161459、米国特許第10,570,063号、米国特許第9,820,917号、米国特許第9,820,917号、CN1371867A、H.He、Integrated Ferroelectrics、161:1、36~44、J.J.Gulicovski、S.K.Milonjic、及びK.Meszaros Szecsenyi「Synthesis and Characterization of Stable Aqueous Ceria Sols,Materials and Manufacturing Processes」、24巻:10~11頁、2009年、1080~1085頁を参照。
【0059】
本発明で使用される粒子状無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。粒子状無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、ランタナ、シリカ、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、粒子状無機酸化物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、粒子状無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい粒子状無機酸化物は、ランタン/アルミナ複合酸化物である。
【0060】
好ましくは、粒子状無機酸化物は、少なくとも80m/g、より好ましくは、少なくとも150m/g、及び最も好ましくは少なくとも200m/gの表面積を有する。
【0061】
一般に、粒子状無機酸化物は、1~20ミクロンのD90を有する。好ましくは、粒子状無機酸化物は、5~20ミクロンのD90を有する。より好ましくは、粒子状無機酸化物は、5~15ミクロンのD90を有する。
【0062】
第1及び第2の触媒組成物は、好ましくは両方ともTWC組成物である。TWC組成物は当該技術分野において周知であり、特定の成分は当業者によって容易に選択され得る。TWCは、典型的には、酸素吸蔵成分(OSC)と共に、高表面積支持体(すなわち、無機酸化物)上に提供される1つ以上の白金族金属(PGM)を含む。TWC組成物は、概ね、基材上にウォッシュコートで提供される。
【0063】
好ましくは、第1及び/又は第2の触媒組成物は、OSC(CeZr混合酸化物ゾルに由来する混合酸化物)対粒子状OSC対粒子状無機酸化物の重量比が、10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3である。好ましくは、各組成物におけるOSCの担持量は、0.5~4g/in、好ましくは1~3g/inである。
【0064】
好ましくは、第1及び/又は第2の触媒組成物は、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される白金族金属(PGM)成分を更に含む。
【0065】
PGM成分が第1及び/又は第2の触媒組成物中に存在する場合、PGM成分は、好ましくは粒子状無機酸化物上に担持される。
【0066】
第1及び/又は第2の触媒組成物は、PGM成分の1~100g/ft、好ましくは5~80g/ft、より好ましくはPGM成分の10~50g/ftであり得る。
【0067】
第1及び/又は第2の触媒組成物は、アルカリ又はアルカリ土類金属成分を更に含み得る。好ましくは、第1及び/又は第2の触媒組成物は、バリウム又はストロンチウムを含む。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1及び/又は第2の触媒組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。好ましくは、バリウムはBaCO複合材料として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0068】
本発明の触媒物品は、当業者に周知である他の成分を含んでもよい。例えば、第1及び/又は第2の触媒組成物は、少なくとも1種の結合剤及び/又は少なくとも1種の界面活性剤を更に含んでもよい。結合剤が存在する場合、分散性アルミナ結合剤が好ましい。
【0069】
好ましくは、第1及び第2の触媒組成物は実質的に同じである。組成は同じであってもよいが、担持量は異なっていてもよい。好ましくは、製造の複雑さを低減するために、第1及び第2の触媒組成物は同じであり得る。
【0070】
第1及び第2の触媒組成物は、ウォッシュコーティング工程によって基材にコーティングされてもよい。CeZr混合酸化物ゾル、粒子状無機酸化物、及び使用される場合にはPGMなどの他の成分、並びに適切な溶媒、好ましくは水を含むウォッシュコートスラリーが調製される。結合剤、安定剤、又は促進剤などの追加の成分も組み込み得る。スラリーは、好ましくは約10重量%~約70重量%の固体材料、より好ましくは約20重量%~約50重量%の固体材料を含有する。
【0071】
ウォッシュコートスラリーで基材をコーティングするために、多くの技術が使用され得る。
【0072】
ウォッシュコーティングの一方法では、基材は、次いで、組成物の所望の担持量を基材上に堆積させるために、ウォッシュコートスラリーに1回以上浸漬され得る、又はスラリーが基材上にコーティングされ得る。ウォッシュコートスラリーは、ウォッシュコートスラリーの粒子サイズ及び粘度に応じて、コーティング中に基材の細孔に少なくとも部分的に浸透し得る。
【0073】
国際公開第1999/47260号に記載されているジョンソン・マッセイの精密コーティングプロセスなどの技術でコーティングする場合(これは、基材へのウォッシュコートの真空又は圧力引き込みに依存する)、出口チャネルの入口端及び入口チャネルの出口端にコーティングを適用することが可能である。この技術は、基材の細孔内にウォッシュコートを提供するだけでなく、材料を引き抜いて、基材の適用された場所とは反対側の壁にコーティングを提供する。
【0074】
基材を第1及び第2の組成物でコーティングした後、コーティングされた基材を好ましくは乾燥させ、次いで高温で加熱することによってか焼して触媒物品を形成する。好ましくは、か焼は、約1~8時間、400~600℃で行う。
【0075】
本発明によれば、触媒物品の複数の入口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、入口端又は出口端から延びる第1の触媒組成物を含み、複数の出口チャネルが、Lの少なくとも50%にわたり、出口端又は入口端から延びる第2の触媒組成物を含む。第1及び第2の触媒組成物は、Lの最大80%と重なり合う。第1及び第2の触媒組成物は、好ましくはLの最大20%、より好ましくはLの最大10%重なり合う。第1及び第2の組成物の一方は、複数の入口チャネル又は出口チャネルの完全なコーティングを提供し得る。
【0076】
重なり合いが最大で20%である場合、第1の触媒組成物は、入口端から(Lの)少なくとも50%及び最大で70%の距離だけ延びる入口チャネル上に提供され得、一方、第2の触媒組成物は、出口端から少なくとも50%及び最大で70%の距離だけ延びる出口チャネル上に提供され得る。重なり合いは最大で20%であるため、第1の触媒組成物が、例えば、70%である場合、第2の触媒組成は50%だけ延び得る。
【0077】
好ましくは、第1及び/又は第2の触媒組成物は、基材上に直接提供される。
【0078】
基材上の第1及び第2の組成物の位置は、使用されるコーティング技術に依存するであろう。基材上にコーティングされる第1及び第2の組成物は、壁内、壁上、又は壁内と壁上の組み合わせであってもよい。好ましくは、コーティングの少なくとも一部は壁上に設けられる。
【0079】
一実施形態では、ウォールフローフィルタの入口チャネル及び/又は出口チャネルは、壁上くさび形プロファイルを有し、くさびの最も厚い端部は、チャネルのプラグ端部にあり、ウォッシュコートも壁内に存在する。この配置は、出願人の国際公開第2017/056067号とは異なる。国際公開第2017/056067号は、ウォールフローフィルタを長手方向断面で見たときに「くさび」形状で壁上に配置された三元触媒ウォッシュコートを含む触媒ウォールフローフィルタを開示している。すなわち、壁のコーティングの厚さは、ウォールフローフィルタの開水路端の最も厚い端から先細りになる。
【0080】
国際公開第1999/47260号に開示されているような真空浸透法でコーティングする場合、ウォールフローフィルタ構造の壁の側面から、ウォッシュコート組成物が、最初に多孔質フィルタ壁を通して接触させられ、それらのいくつかが壁の反対側(2番目)の壁に載るようにする、ウォッシュコート内の粒子を「引っ張る」条件を使用する。
【0081】
本開示の別の態様は、火花点火式エンジンの排気マニホルドと流体連絡する、本明細書に記載の触媒物品を含む、排気ガス処理システムである。
【0082】
所望により、排気システムは追加の構成要素を含むことができる。例えば、リーンバーンエンジンに特に適用可能な排気システムにおいて、NOxトラップは、記載される触媒物品の上流に配置することができる。NOxトラップは、NOx吸収触媒(NAC)としても知られ、例えば米国特許第5,473,887号から既知であり、リーン作動モードでの動作中に、リーン(酸素リッチ)排気ガス(ラムダ>1)から窒素酸化物(NOx)を吸着し、排気ガス中の酸素濃度が低下したときNOxを脱着する(化学量論的又はリッチ作動モード)ように設計されている。脱着したNOxは、NAC自体の、又はNACの下流に位置する、ロジウム又はセリアなどの触媒成分によって促進される、好適な還元剤、例えばガソリン燃料でNに還元することができる。
【0083】
希望するとおり、本明細書に記載の触媒物品を残した後、所望により、排気ガス流は、次いで、適切な排気管を介して下流のNOxトラップに搬送されて、排気ガス流中の残りのNOx排出汚染物質を吸着させることができる。更なる排気管を通してNOxトラップから、NOxトラップの出口を受容するSCR触媒を配置して、NOxトラップによって生成された任意のアンモニアを、還元剤としてアンモニアを使用して窒素及び水を形成するための窒素酸化物を還元する選択的触媒還元触媒で、更なる排出を処理することができる。SCR触媒から、排気管は、テールパイプ及びシステム外に導くことができる。
【0084】
本開示の別の態様は、火花点火式内燃機関から排出される排気ガスを処理する方法であって、排気ガスを、本明細書に記載の触媒物品と接触させることを含む方法である。好ましくは、エンジンはリーンバーンガソリンエンジンである。更に、本開示は、本明細書に記載されるエンジンを備える、乗用車などの車両を含むことができる。
【0085】
本開示の別の態様は、23nm未満の粒子の排出を低減するための、特に10~23nmの粒子の排出を低減するための、排気ガス処理システムにおける本明細書に記載の触媒物品の使用である。好ましくは、触媒物品の使用により、23nm未満の粒子の排出の数が少なくとも20パーセント減少し、より好ましくは、少なくとも30パーセント、更により好ましくは、少なくとも40パーセント減少する。
【0086】
本開示の別の態様は、火花点火式内燃機関から排出される排気ガスを処理する方法であって、排気ガスを、本明細書に記載の触媒物品と接触させることを含み、本方法は、23nm未満の粒子の排出を低減するための、特に10~23nmの粒子の排出を低減するためのものである、方法である。
【0087】
本開示の別の態様は、23nm未満の粒子の排出を低減するための、特に10~23nmの粒子の排出を低減するための、排気ガス処理システムにおける本明細書に記載の触媒物品の使用である。
【0088】
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野において周知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、頭字語「PGM」は、「白金族金属(platinum group metal)」を指す。「白金族金属」という用語は、概して、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群から選択される金属を指す。概して、「PGM」という用語は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「混合酸化物」という用語は、概して、当該技術分野において従来的に既知であるように、単相における酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される場合、「複合酸化物」という用語は、概して、当該技術分野において従来的に既知であるように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0091】
本明細書で使用される用語「担持量」は、他の単位が提供されていない限り、金属重量基準でのg/ftの単位の測定値を指す。
【0092】
これから、以下の非限定的な図面に関連して、本発明を説明する。
【0093】
図1は、本発明の一実施例を示す。図1は、多孔質コーディエライト基材で作られたウォールフローフィルタ1の断面を示す。ウォールフローフィルタ1は、入口端5と出口端10との間に延びる長さLを有する。ウォールフローフィルタ1は、複数の入口チャネル15及び複数の出口チャネル20(1つのみが示される)を備える。複数の入口チャネル15及び出口チャネル20は、それぞれの端がプラグ21で塞がれている。
【0094】
入口チャネル15の内面25は、第1の触媒組成物を含む壁上コーティング30でコーティングされている。コーティング30は、入口端5からLの少なくとも50%に延び、チャネルの長さに沿ってほぼ均一な厚さを有する。
【0095】
出口チャネル20の内面35は、第2の触媒組成物を含む壁上コーティング40でコーティングされている。コーティング40は、出口端10からLの少なくとも50%に延び、チャネルの長さに沿ってほぼ均一な厚さを有する。
【0096】
コーティング30と40との間の重なり合い領域45は、Lの20%以下である。
【0097】
使用中、排気ガス流50(矢印で示される)は、ウォールフローフィルタ1の壁を通って入口チャネル15に入り、出口チャネル20から出る。
【0098】
図2は、本発明の別の実施例を示す。図2は、多孔質コーディエライト基材で作られたウォールフローフィルタ1の断面を示す。ウォールフローフィルタ1は、入口端5と出口端10との間に延びる長さLを有する。ウォールフローフィルタ1は、複数の入口チャネル15及び複数の出口チャネル20(1つのみが示される)を備える。複数の入口チャネル15及び出口チャネル20は、それぞれの端がプラグ21で塞がれている。
【0099】
入口チャネル15の内面25は、第1の触媒組成物を含む壁上コーティング30でコーティングされている。更に、第1の触媒組成物は、入口チャネル15の壁構造内にも存在する。コーティング30は、出口端10からLの少なくとも50%に延びる。コーティング30はくさび形であり、出口端10でより厚い量を有する。コーティング30は、国際公開第1999/47260号の方法に従って適用される。
【0100】
出口チャネル20の内面35は、第2の触媒組成物を含む壁上コーティング40でコーティングされている。更に、第2の触媒組成物は、出口チャネル20の壁構造内にも存在する。コーティング40は、入口端5からLの少なくとも50%に延びる。コーティング40はくさび形であり、入口端5でより厚い量を有する。コーティング40は、国際公開第1999/47260号の方法に従って適用される。
【0101】
コーティング30と40との間の重なり合い領域45は、Lの20%以下である。
【0102】
使用中、排気ガス流50(矢印で示される)は、ウォールフローフィルタ1の壁を通って入口チャネル15に入り、出口チャネル20から出る。
【0103】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0104】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0105】
実施例1
約2:1のZrO対CeOの重量比及び<1μmのD90を有するCeZr混合酸化物ゾルから誘導される1.2g/in CeZr混合酸化物(OSC)と、12μmのD90を有する0.4g/in La安定化アルミナ成分とを含む1.6g/inのウォッシュコート担持量で三元触媒ウォッシュコートを調製した。PGM担持量は22g/ft(Pt:Pd:Rh,0:20:2)であった。
【0106】
完成したウォッシュコートスラリーは、国際公開第1999/47260号に記載されているジョンソン・マッセイの精密コーティングプロセスを使用してGPF基材にコーティングするために、約24%の適切な最終ウォッシュコート固形分に調整された。使用した基材は、公称63%の多孔度及び17.5μmの平均細孔サイズ、直径4.66インチ、長さ6インチ、300セル/平方インチ、チャネル壁厚1000分の8インチの市販のコーディエライトGPF基材であった。コーティングを基材の各端部から塗布し、各塗布は基材全長の58%の長さをカバーして、未コーティング領域のない完全にコーティングされた最終製品を得た(16%重なり合い)。入口チャネル及び出口チャネルに適用されたウォッシュコートスラリーの量は同じである。次いで、コーティングされた基材を、当技術分野で知られている通常の方法で乾燥及びか焼した。製品プロファイルを、図2に示す。
【0107】
実施例2
La安定化アルミナ成分は更に5μmのD90を有することを除いて、実施例2は実施例1と同じ方法で調製された。
【0108】
比較例3
参照コーティングされたGPFは、GPF基材用に開発された最新のTWCコーティングを適用することによって準備された。ウォッシュコート担持量は、1.2g/inのOSC成分(CeZr混合酸化物粒子、ゾルに由来しない)、0.4g/inのLa安定化アルミナ成分、及び22g/ftのPGM担持量を含む1.6g/inで調製した(Pt:Pd:Rh、0:20:2)。実施例1及び2とは対照的に、ここではOSC成分とLa安定化アルミナ成分との両方のD90が約7μmである。
【0109】
コーティングされていない220/6参照GPF
本発明と更に比較するために、コーティングされていないGPF参照が使用された。これは市販のGPF基材であり、6×1011のEuro 6PN制限でこのような後処理システムでの使用を検討できる。同じ触媒の直径及び長さ、したがって触媒の体積を、実施例1~3、直径4.66インチ及び長さ6インチとして選択した。しかしながら、必要な濾過効率を達成するために、そのような裸のフィルタは、より低い公称気孔率及び平均孔径を必要とする。これは背圧の望ましくない増加を引き起こす可能性があるため、1平方インチあたりのセル及び壁の厚さは通常、ウォッシュコートでコーティングされるように設計された基材よりも薄くなる。コーティングされていない参照GPFは、1平方インチあたり220セルで、壁の厚さは1000分の6インチであった。
【0110】
濾過性能評価
上記の試料は、粒子状物質の排出、特に10~23nmの排出について評価した。評価は、2.0Lガソリン直噴エンジンを搭載したエンジンベンチで実行されたシミュレートされたWLTCで実行された。粒子は、Combustion DMS500粒子分析装置を使用して測定した。
【0111】
結果を図3に示し、これは、各実施例で完了した3つのWLTCテストの平均であった。結果は、コーティングされていない低気孔率220/6GPF及び比較例3と比較して、実施例1及び2の利点を示す。特に、実施例1は、現在利用可能な代替物よりもはるかに改善された利点を提供する。
【0112】
以下の表1は、実施例1及び実施例2と比較例3との追加の背圧低下の利点を示す。
【0113】
【表1】

図1
図2
図3
【国際調査報告】