(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】磁性ビーズ、それを製造する方法、及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/44 20060101AFI20231017BHJP
C01G 49/06 20060101ALI20231017BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20231017BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20231017BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20231017BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20231017BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20231017BHJP
H01F 1/36 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01F1/44
C01G49/06 B
C01G49/00 A
C12N15/10 114Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/686 Z
H01F1/34 140
H01F1/34 120
H01F1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517277
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021050269
(87)【国際公開番号】W WO2022060732
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518040194
【氏名又は名称】ナノフェーズ テクノロジーズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Nanophase Technologies Corporation
【住所又は居所原語表記】1319 Marquette Drive Romeoville, Illinois 60446 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】サルカス ハリー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】クレトン ケビン
【テーマコード(参考)】
4B063
4G002
5E041
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR50
4B063QR62
4B063QR83
4B063QS25
4B063QS36
4G002AA03
4G002AA06
4G002AB02
4G002AD04
4G002AE05
5E041AB12
5E041BD07
5E041BD12
5E041BD13
5E041CA10
5E041HB17
5E041NN06
5E041NN13
(57)【要約】
磁性ビーズは、非磁性マトリックス中に分散した、複数の磁性ナノ粒子を含む。磁性ビーズは、0.1μm~100μmの平均粒径を有する。マトリックスは、無機金属酸化物又はポリマーを含んでもよい。磁性ビーズは、少なくとも40m2/gの比表面積を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ii)非磁性無機酸化物マトリックス中に分散した、(i)複数の磁性ナノ粒子
を含む磁性ビーズであって、
前記磁性ビーズが、0.1μm~100μmの平均粒径を有し、
前記磁性ナノ粒子が、20nm~50nmの平均粒径を有し、
前記非磁性無機酸化物マトリックスが、I族元素もII族元素も含有せず、かつホウ素を含有せず、
前記磁性ビーズが、前記磁性ビーズの重量に対して少なくとも75重量%の前記複数の磁性ナノ粒子を含有し、かつ、前記磁性ナノ粒子のバルク飽和の少なくとも75%の飽和磁化を保持する、前記磁性ビーズ。
【請求項2】
(ii)非磁性無機酸化物マトリックス中に分散した、(i)複数の磁性ナノ粒子
を含む磁性ビーズであって、
前記磁性ビーズが、0.1μm~100μmの平均粒径を有し、
前記磁性ナノ粒子が、20nm~50nmの平均粒径を有し、
前記磁性ビーズが、少なくとも40m
2/gの比表面積を有し、
前記磁性ビーズが、前記磁性ビーズの重量に対して少なくとも75重量%の前記複数の磁性ナノ粒子を含有し、かつ、前記磁性ナノ粒子のバルク飽和の少なくとも75%の飽和磁化を保持する、前記磁性ビーズ。
【請求項3】
非磁性無機酸化物マトリックスが、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、又はこれらの混合物を含む、請求項1又は2に記載の磁性ビーズ。
【請求項4】
(ii)ポリマーマトリックス中に分散した、(i)複数の磁性ナノ粒子
を含む磁性ビーズであって、
前記磁性ビーズが、0.1μm~100μmの平均粒径を有し、
前記ポリマーマトリックスが、PEG官能基化界面活性剤の部分を含有しない、前記磁性ビーズ。
【請求項5】
磁性ビーズが、前記磁性ビーズの重量に対して少なくとも75重量%の複数の磁性ナノ粒子を含有し、かつ、前記磁性ナノ粒子のバルク飽和の少なくとも75%の飽和磁化を保持する、請求項4に記載の磁性ビーズ。
【請求項6】
イオン交換樹脂を含まない、請求項1~5のいずれかに記載の磁性ビーズ。
【請求項7】
マトリックスが、シロキサン、ポリフェノール、アミン、無水物、又はチオールを含有するポリマーを含む、請求項1~6のいずれかに記載の磁性ビーズ。
【請求項8】
ポリマーマトリックスがポリフェノールを含まない、請求項1~7のいずれかに記載の磁性ビーズ。
【請求項9】
磁性ビーズを製造する方法であって、
マトリックス中に分散した磁性ナノ粒子を含む固体分散体を形成すること、及び
前記固体分散体を粉砕して、0.1μm~100μmの平均粒径を有する磁性ビーズを形成すること
を含む、前記方法。
【請求項10】
磁性ナノ粒子が、ガンマ相酸化鉄及び/又はフェライト材料を含む、請求項1~9のいずれかに記載の磁性ビーズ又は方法。
【請求項11】
磁性ナノ粒子が、20nm~50nmの平均粒径を有する、請求項1~10のいずれかに記載の磁性ビーズ又は方法。
【請求項12】
PEGを含む被覆をさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の磁性ビーズ又は方法。
【請求項13】
生物学的薬剤を含む被覆をさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載の磁性ビーズ又は方法。
【請求項14】
磁性ナノ粒子のバルク飽和磁化の少なくとも76%の飽和磁化を有する、請求項1~13のいずれかに記載の磁性ビーズ又は方法。
【請求項15】
磁性ナノ粒子のバルク飽和磁化の80%~95%の飽和磁化を有する、請求項1~14のいずれかに記載の磁性ビーズ又は方法。
【請求項16】
磁性ビーズが、少なくとも40m
2/gの比表面積を有する、請求項1~15のいずれかに記載の磁性ビーズ又は方法。
【請求項17】
核酸を精製する方法であって、
請求項1~16のいずれかに記載の磁性ビーズを用意すること、
前記磁性ビーズを核酸に可逆的に結合させること、
前記磁性ビーズ及び核酸を洗浄すること、及び
前記磁性ビーズからDNA断片を溶出させること
を含む、前記方法。
【請求項18】
少なくとも1つの核酸分子を可逆的に結合させる方法であって、
(a)請求項1~16のいずれかに記載の少なくとも1つの磁性ビーズの溶液中の分散体を用意すること、
(b)前記分散体と少なくとも1つの核酸分子とを、前記少なくとも1つの核酸分子が前記少なくとも1つの磁性ビーズと可逆的に結合するように組み合わせること、
前記少なくとも1つの核酸分子を前記少なくとも1つの磁性ビーズから溶出させること
を含む、前記方法。
【請求項19】
請求項1~16のいずれかに記載の磁性ビーズ、
結合溶液、
洗浄溶液、及び
溶出溶液
を含む、キット。
【請求項20】
請求項1~16のいずれかに記載の磁性ビーズ、及び
核酸を増幅するための試薬
を含む、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
磁性ビーズは、さらなる分析(例えば、配列決定)、処理、又は改変のため、核酸を複雑な生物学的混合物から分離するのに使用されている。このようなビーズは、-OH基等の核酸への親和性を有する化学基を呈する表面を典型的に有する。好ましくは、ビーズは、磁石を使用して複雑な生物学的混合物から容易に分離するのに十分なほど大きく、同時に、所望の核酸に結合するために混合物中に懸濁したままであるのに十分なほど小さい。最適な粒径は1μm~2μmである。ビーズが大きくなると分離がより容易になるが、これらは混合物から急速に沈降する傾向があり、かつ体積に対して表面積が小さい。ビーズが小さくなると、体積に対する表面積は大きいが、磁場の作用下で混合物から分離するのが遅い。さらに、ビーズを混合物から分離するのに使用される磁石に対するビーズの引力が強いほどビーズをより速く回収することができ、より多くのビーズ、したがってより多くの核酸が回収されるため、ビーズの磁気モーメントを最大にすることが望ましい。
【0002】
磁性ビーズは、粒径が最大1μm(1000nm)の粒子である磁性ナノ粒子を用いて開始することにより調製されている。磁気モーメントは、体積と、原子スピンの内部整列に起因する飽和磁化との積である。飽和磁化は、各磁性ナノ粒子内の磁区(すなわち、原子スピンが整列した領域)の数を最小にすることにより、最大になる。単磁区超常磁性ナノ粒子も使用することができる。材料に依存するが、単磁区磁性ナノ粒子の最大サイズは、典型的に100nmよりもはるかに小さい(Majetich, S.A. et al. “Magnetic nanoparticles” MRS Bulletin 38, pp. 899-903 (Nov. 2013))。
【0003】
ビーズのサイズ、ビーズの形状、ビーズ内の磁性ナノ粒子の選択、及びビーズ中の磁性材料の量を制御することの間にはトレードオフが存在している。例えば、欧州特許出願公開第757,106号明細書において、サイズが0.2μm~0.4μmの実質的に球状のコア-シェル磁性ナノ粒子を、テトラエトキシシランを使用して多孔質シリカで被覆することで、多孔質シリカ被覆を有し、直径が0.5μm~15μmであり、磁性金属酸化物の含量が約10%~60%である実質的に球状の磁性ビーズを生成している(欧州特許出願公開第0757,106号明細書)。ビーズのサイズは、磁性金属酸化物の含量とのトレードオフで、磁性ナノ粒子のサイズにより制御され、磁性ビーズの形状は、磁性ナノ粒子の形状により制御される。磁性ナノ粒子は単磁区磁性ナノ粒子よりも大きいことが必要であり、さもなければ磁性ビーズは小さすぎるか、又は磁性金属酸化物の含量が少なすぎることになる。
【0004】
磁性ガラスビーズは、米国特許出願公開第2005/0266462号明細書に記載されているように、単磁区磁性ナノ粒子等の非常に小さな磁性粒子をガラス中に分散させることによって形成されている(米国特許出願公開第2005/0266462号明細書)。ゾル-ゲル法を使用して、ナトリウム(Na)等のアルカリ金属と共にシリカ(SiO2)並びにB2O3及びAl2O3を含むガラスの他の構成成分を含有するゲルマトリックスに、磁性ナノ粒子を分散させる。次いで混合物を噴霧して所望のサイズ及び形状の粒子を形成し、次いでこれを融点未満で注意深く焼結させて、所望の磁性ガラスビーズを形成する。磁気特性が失われうる温度未満に焼結温度を保つには、アルカリ金属及びB2O3等の軟質ガラスの他の成分を含むことが必要である。この方法は、ゾル-ゲルを噴霧することができるようにゾル-ゲルの粘度を制御する必要があるため複雑であり、1μm~2μmの粒子を噴霧によって形成することができる速度に起因して遅い。焼結プロセスは、細孔を埋めてより均一な球形状をもたらすため、表面積を低下させる。米国特許出願公開第2005/0266462号明細書の表4には、いくつかの組成物のBET表面積が記載されており、達成された最も大きい表面積は26.85m2/gであった。
【0005】
別の方法では、超常磁性ナノ粒子の分散体から、テンプレートとしてエマルションを使用して、その後フリーラジカル重合を行うことにより磁性ビーズを形成する(Shang, H., et al. “Synthesis and Characterization of Paramagnetic Microparticles through Emulsion-Templated Free Radical Polymerization” Langmuir 22, pp. 2516-2522 (2006))。直径約3nm~7nmの磁鉄鉱ナノ粒子を、オレイン酸で被覆することにより疎水性にした。重合開始剤としてベンゾフェノン及び界面活性剤としてSDSを含む、ヘキサン中のナノ粒子の強磁性流体エマルションを形成した。油相の液滴のサイズを制御するため、所望のサイズ(2μm又は5μm)の細孔を有する膜にエマルションを通し、次いでヘキサンを蒸発させた。次いでSDSを重合性アルコールで置き換えて、表面に-OH基を付与した。エマルションをアクリル酸及び重合性アルコールと混合することによって微粒子を形成し、次いで紫外線を使用して重合した。方法は、必要とされるステップの数に起因して複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0757,106号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0266462号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Majetich, S.A. et al. “Magnetic nanoparticles” MRS Bulletin 38, pp. 899-903 (Nov. 2013)
【非特許文献2】Shang, H., et al. “Synthesis and Characterization of Paramagnetic Microparticles through Emulsion-Templated Free Radical Polymerization” Langmuir 22, pp. 2516-2522 (2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、(ii)非磁性無機酸化物マトリックス中に分散した、(i)複数の磁性ナノ粒子を含む磁性ビーズである。磁性ビーズは、0.1μm~100μmの平均粒径を有し、磁性ナノ粒子は、20nm~50nmの平均粒径を有し、非磁性無機酸化物マトリックスは、I族元素もII族元素も含有せず、かつホウ素を含有せず、磁性ビーズは、磁性ビーズの重量に対して少なくとも75重量%の複数の磁性ナノ粒子を含有し、磁性ナノ粒子のバルク飽和の少なくとも75%の飽和磁化を保持する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、(ii)非磁性無機酸化物マトリックス中に分散した、(i)複数の磁性ナノ粒子を含む磁性ビーズである。磁性ビーズは、0.1μm~100μmの平均粒径を有し、磁性ナノ粒子は、20nm~50nmの平均粒径を有し、磁性ビーズは、少なくとも40m2/gの比表面積を有し、磁性ビーズは、磁性ビーズの重量に対して少なくとも75重量%の複数の磁性ナノ粒子を含有し、磁性ナノ粒子のバルク飽和の少なくとも75%の飽和磁化を保持する。
【0010】
第3の態様において、本発明は、ポリマーマトリックス中に分散した複数の磁性ナノ粒子を含む、磁性ビーズである。磁性ビーズは、0.1μm~100μmの平均粒径を有し、ポリマーマトリックスは、PEG官能基化界面活性剤の部分を含有しない。
【0011】
第4の態様において、本発明は、磁性ビーズを製造する方法であって、マトリックス中に分散した磁性ナノ粒子を含む固体分散体を形成することと、固体分散体を粉砕して、0.1μm~100μmの平均粒径を有する磁性ビーズを形成することとを含む、方法である。
【0012】
定義
用語「粒径」は、電子顕微鏡法又は光学顕微鏡法で見たときの粒子の画像の平均直径を意味する。用語「粒径」は、別段の指示がない限り、このように使用される。用語「平均粒径」は、別段の指示がない限り、一群の粒子の粒径の平均(少なくとも500nmの平均粒径を有する粒子について)、又は完全緻密粒子と一致する、ブルナウアー-エメット-テラー法(BET法,Brunauer-Emmett-Teller法)を使用して決定されm2/g単位で測定された粒子の比表面積から球形モデルを使用して計算された平均(500nm未満の平均粒径を有する粒子について)を意味する。用語「粉末」、「ビーズ」、及び「粒子」は、互換可能に使用される。
【0013】
用語「ナノ粒子」は、最大1μm(1000nm)の平均粒径を有する粒子を意味する。
【0014】
「磁性ナノ粒子のバルク飽和磁化」という句は、磁性ナノ粒子を形成する材料のバルク飽和磁化を意味し、磁性ナノ粒子の飽和磁化を意味するものではない。
【0015】
全ての百分率(%)は、別段の指定がない限り、重量/重量パーセントである。
【0016】
全ての温度は、+/-5℃の精度で報告される。
【0017】
ビーズの比表面積(SSA,specific surface area)は、m2/g単位で測定され、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法を使用して決定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】様々な磁性ビーズについて、インプットDNAの百分率として、平均収率パーセントを表すグラフである。
【
図2】様々な磁性ビーズについて、インプットDNAの重量に対する、重量での平均回収量を表すグラフである。
【
図3】様々な磁性ビーズについて、インプットRNAの百分率として、平均収率パーセントを表すグラフである。
【
図4】様々な磁性ビーズについて、インプットRNAの重量に対する、重量での平均回収量を表すグラフである。
【
図5】様々なインプットDNA濃度での2種の磁性ビーズについて、サイクル数と、ベースラインを差し引いた蛍光(RFU)とを表すグラフである。
【
図6】インプットDNA1ng及び10ngにおける2種の磁性ビーズのCq値を示す棒グラフである。
【
図7】様々なインプットRNA濃度での2種の磁性ビーズについて、サイクル数と、ベースラインを差し引いた蛍光(RFU)とを表すグラフである。
【
図8】インプットRNA10ng及び50ngにおける2種の磁性ビーズのCq値を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
磁性ビーズを形成するための従来の方法は全て、より小さな材料、例えば磁性粒子、液体、又はエマルションからビーズを構築し、ビーズのサイズ及び組成をビーズが製造されるときに制御する、ボトムアップアプローチを使用する。本発明は異なるアプローチを使用し、磁性ビーズを形成するためのトップダウンアプローチにおいて、所望の組成のバルク材料を形成し、次いで粉砕を用いてビーズのサイズを制御する。磁性ビーズの組成物の形成を、ビーズ自体の形成から分離することにより、方法を単純化することと高速化することの両方が可能となる。
【0020】
本発明は、非磁性マトリックス中の単磁区超常磁性ナノ粒子であってもよい磁性ナノ粒子の分散体を形成し、その後に粉砕してビーズを形成することを含む。分散体は、表面重合、化学堆積、又は溶融加工によって形成してもよい。任意に、磁性ビーズの表面を修飾して、核酸又は所望の他の生物学的物質への親和性を改善してもよい。本発明は、非磁性マトリックス中に複数の磁性ナノ粒子を含む磁性ビーズを含む。
【0021】
磁性ビーズの核酸を収集する能力はビーズの表面積に比例するので、表面積が大きくなると、より良好な核酸収集特性がもたらされる。ボトムアップアプローチでは、ビーズを形成し、ビーズを一緒に保つのに焼結が必要とされる。溶融により表面はより滑らかになり、細孔が埋まるため、焼結プロセスはビーズの表面積を減らす。好ましくは、本発明の磁性ビーズは、焼結を含む方法と比較して表面積がより大きく、核酸の収集を改善する。焼結されたガラスビーズでは、焼結によって多孔性及び網形が失われるため、サイズとBET表面積の間に強い相関があるが、本出願のビーズは、多孔性及び網形を保持するため、サイズにほぼ依存しないBET表面積を有する。磁性ビーズは固体であり、磁性ナノ粒子は好ましくは一緒に架橋されている。磁性ビーズは、好ましくは、少なくとも40m2/g、例えば40m2/g~275m2/g、例えば45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、及び270m2/g、並びにこれらの間の範囲の比表面積を有する。
【0022】
磁性ナノ粒子は、好ましくは、最大100nm、例えば1nm~100nmの平均粒径、好ましくは10nm~70nm、最も好ましくは20nm~50nmの平均粒径を有する。磁性ナノ粒子は超常磁性であってもよい。好ましくは、磁性ナノ粒子は、単磁区磁性ナノ粒子である。様々な超常磁性単磁区磁性ナノ粒子の最大粒径は、Majetich et alの
図4に記載されている(Majetich, S.A. et al. “Magnetic nanoparticles” MRS Bulletin 38, pp. 899-903 (Nov. 2013))。
【0023】
好ましくは、磁性ナノ粒子は、ガンマ相酸化鉄及び/又はフェライト材料を含む。フェライトの例としては、MxOy・Fe2O3が挙げられ、式中、Mは少なくとも1種の金属元素、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15族の金属元素、例えば、Ca、Sr、及びBa(2族)、Zn(12族)、Fe、Co、及びNi(9族)、Mn(7族)、Y及びランタニド系列元素、例えばLa及びCe(3族)、並びにBi(15族)であり、x=1~4であり、かつy=1~4である。例としては、FeO・Fe2O3(別名Fe3O4)、ZnFe2O4、BiFeO3、BaFeO3、MnFe2O4、REO・Fe2O3が挙げられ、式中、REO=Y、又はランタニド系列元素(例えば、Ce又はLa)である。混合物、ドープされた材料、及び固溶体も使用することができる。
【0024】
非磁性マトリックスは、酸化物、ガラス、ポリマー、有機化合物及び部分、並びにこれらの混合物を含有してもよい。好ましくは、非磁性マトリックスは、無機酸化物、例えばSiO2(Si(O-)4部分を含む)、Al2O3(Al(O-)3部分を含む)、TiO2(Ti(O-)4部分を含む)、及びこれらの混合物を含む。好ましくは、1族(例えば、Na及びK)、及び2族(例えば、Ca及びSr)の元素はマトリックス中に存在しない。好ましくは、ホウ素(B)はマトリックス中に存在しない。好ましくは、マトリックスは、磁性ナノ粒子の添加後に、焼結も溶融もされない。
【0025】
磁性ビーズは分散体から形成され、よって両方が同様又は同一の組成を有することになる。好ましくは、磁性ビーズ及び/又は分散体は、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、例えば90%~98%、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、及び97%の磁性ナノ粒子を含有することになる。
【0026】
分散体は、磁性ナノ粒子をマトリックス材料で被覆することによって、例えば化学堆積又は改変した化学気相成長を用いることによって、形成してもよい。あるいは、磁性ナノ粒子を重合性材料と混合してもよく、次いで重合を用いてマトリックスを形成する。あるいは、磁性ナノ粒子を液体ポリマー中に分散させ、次いでこれを固化させるか、又はゾル-ゲル中に分散させ、次いでこれを乾燥又は固化させて、マトリックスを形成してもよい。次いで粉砕を用いて分散体から磁性ビーズを形成する。
【0027】
好ましくは、磁性ビーズは、0.1μm~100μm、より好ましくは0.2μm~10μm、最も好ましくは0.5μm~5μm、例えば0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.2μm、1.4μm、1.6μm、1.8μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、及びこれらの間の値の平均粒径を有する。磁性ビーズは、分散体を粉砕することによって形成され、よって平均粒径は粉砕プロセスによって容易に制御することができる。任意に、磁性ビーズは、例えば篩を使用することによって分類して、磁性ビーズのサイズ分布を狭めてもよい。
【0028】
好ましくは、磁性ビーズは、ビーズ内に存在する磁性ナノ粒子のバルク飽和磁化の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、及び最も好ましくは少なくとも90%の飽和磁化を有する。例えば、磁性ビーズは、ビーズ内に存在する磁性ナノ粒子のバルク飽和磁化の75%~95%、例えば少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、及び94%、並びにこれらの間の値の飽和磁化を有してもよい。
【0029】
任意に、磁性ビーズを表面処理して、所望の生物学的化合物への親和性を高めてもよい。例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG,poly(ethylene glycol))を表面に結合して、-OH基の量を増加させてもよい。あるいは、PEGを表面に結合し、次いで別の薬剤、例えばビオチン又はストレプトアビジンをPEGに結合してもよい。
【0030】
磁性ビーズを使用して、核酸を単離又は精製してもよい。核酸の精製又は単離は、様々な生物学的方法、例えば核酸の配列決定、核酸ハイブリダイゼーションによる特定の核酸の直接検出、及び核酸配列増幅技術、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR,polymerase chain reaction)に有用でありうる。
【0031】
試料からの単離又は精製の方法は、核酸、例えばRNA又はDNAを含有する溶液の試料を用意することと、核酸を磁性ビーズに可逆的に結合させることと、磁石又は磁力を使用して磁性ビーズを定位置に保つことと、溶液を洗浄して磁性ビーズに結合していない材料、例えばタンパク質又は細片を除去することと、緩衝溶液を使用して磁性ビーズから核酸を溶出させることとを含んでもよい。試料を調製するため、溶解剤及び中和剤を溶液の試料に導入してもよい。洗浄を1、2、3、4、5、又は6回以上行って、磁性ビーズ及び磁性ビーズに結合した核酸から、不要な細片又は他の生物学的材料を除去してもよい。溶出は、核酸が結合した粒子の周囲環境を加熱すること及び/又はこのような周囲環境のpHを上げることによって行うことができる。常磁性粒子からの核酸の溶出を助けるのに使用することができる薬剤としては、塩基性溶液、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、又は電気陰性の核酸がビーズから取り除かれるのに十分な程度に周囲環境のpHを増加させることになる任意の化合物が挙げられる。このような方法の例は、MAGMAX(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit(THERMO FISHER SCIENTIFIC(登録商標)社、番号AM1840)に記載されている。
【0032】
磁性ビーズは、キットに含まれてもよい。キットは、バッファー、例えば溶解バッファー、消化バッファー、再結合及び溶出バッファーを含んでもよい。キットは、洗浄溶液、処理プレート、及び溶出プレートを含んでもよい。キットは、溶解剤、例えば試料を破壊するためのプロテアーゼKを含んでもよい。キットの例としては、MAGMAX(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit(THERMO FISHER SCIENTIFIC(登録商標)社、番号AM1840)、AMPure XP(BECKMAN COULTER(登録商標)社)、RNAclean XP(BECKMAN COULTER(登録商標)社)、MAGNESIL(登録商標)(PROMEGA(登録商標)社)、DYNABEADS(商標)(THERMO FISHER SCIENTIFIC(登録商標)社)、及びMagNA Pure 24(ROCHE(登録商標)社)が挙げられる。
[実施例]
【0033】
実施例1:単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の合成
米国特許第5,460,701号明細書及び同第5,874,684号明細書に記載される移行アーク法により、高純度鉄(99.9%を超えるFe)原料からガンマ相酸化鉄(マグヘマイト)粒子を生成した。プロセスは、カソードガスとしてAr/H2混合物(65%/35%)、Fe2O31kg当たり34.4kWの比動力入力量、及びFe蒸気1kg当たり8.4ft3の空気のクエンチガス投入量を用いて行い、クエンチ空気は、安定なアークを維持する原点投射合流プラズマジェットに最も近い点に導入する。平均輸送空気流は、Fe2O31kg当たり20,000ft3の空気であった。得られた材料は、相当平均粒子直径23nmに相当する、50m2/gの比表面積(BET法)を有した。生成物の相純度はX線粉末回折法を使用して調べ、2シータ33.28度におけるアルファ相(ヘマタイト)の主(104)ピークが存在しないことから明らかなように、98%を超えるガンマ相であることが確認された。
【0034】
実施例2:単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の合成
米国特許出願第10/172,848号明細書及び米国特許第7,517,513号明細書に記載されるフリーバーニングアーク法により、高純度FCCグレードの鉄粉末からガンマ相酸化鉄(マグヘマイト)粒子を生成した。プロセスは、Fe2O31kg当たり22.3kWの比動力入力量、及びFe蒸気1kg当たり4.4ft3の空気のクエンチガス投入量を用いて行い、クエンチ空気は、安定なアークを維持する原点投射合流プラズマジェットに最も近い点に導入する。平均輸送空気流は、Fe2O31kg当たり4,125ft3の空気であった。得られた材料は、相当平均粒子直径30nmに相当する、38m2/gの比表面積(BET法)を有した。生成物の相純度はX線粉末回折法を使用して調べ、2シータ33.28度におけるアルファ相(ヘマタイト)の主(104)ピークが存在しないことから明らかなように、98%を超えるガンマ相であることが確認された。得られた生成物の飽和磁化を、交番磁界勾配磁力計を使用して300Kにおいて測定すると、73±1emu/gであった。これは、マグヘマイトのバルク値76emu/gの96%に相当する。
【0035】
実施例3:単磁区亜鉛フェライト磁性ナノ粒子の合成
実施例2に記載される方法により、高純度FCCグレードの鉄粉末とSHGグレードのZn粉末をモル比2:1でカソードアーク柱に共供給することによって亜鉛フェライト(ZnFe2O4)粒子を生成した。得られた材料は、相当平均粒子直径28nmに相当する、41m2/gの比表面積(BET法)を有した。生成物の結晶相を、X線粉末回折法を使用して調べ、面心立方であることが確認された。
【0036】
実施例4:単磁区ビスマスフェライト磁性ナノ粒子の合成
実施例2に記載される方法により、高純度FCCグレードの鉄粉末とBi2O3粉末(純度99.9%)を質量比1:4.17でカソードアーク柱に共供給することによってビスマスフェライト(BiFeO3)粒子を生成した。得られた材料は、相当平均粒子直径43nmに相当する、17m2/gの比表面積(BET法)を有した。生成物の結晶相を、X線粉末回折法を使用して調べ、菱面体晶の歪んだペロブスカイト構造を有することが確認された。
【0037】
実施例5:単磁区マンガンフェライト磁性ナノ粒子の合成(予想例)
実施例2に記載される方法により、高純度FCCグレードの鉄粉末とMnO2粉末を質量比1:1.28でカソードアーク柱に共供給することによってマンガンフェライト(MnFe2O4)粒子を生成した。得られた材料は、比表面積測定に基づき、30nmの平均粒子直径を有した。生成物の結晶相を、X線粉末回折法を使用して調べ、立方晶スピネル構造を有することが確認された。
【0038】
実施例6:単磁区複合ドープフェライト磁性ナノ粒子の合成(予想例)
実施例2に記載される方法により、高純度FCCグレードの鉄粉末とMnO2粉末とSHGグレードのZn粉末とSm2O3粉末とを質量比1.0:0.64:0.25:0.00057でカソードアーク柱に共供給することによってサマリウムドープ亜鉛マンガンフェライト粒子を生成した。得られた材料は、比表面積測定に基づき、30nmの平均粒子直径を有した。
【0039】
実施例7:単磁区Fe3O4磁性ナノ粒子の合成
実施例1の粉末を5%H2/95%N2雰囲気下、525℃で熱還元して、Fe3O4粉末を生成した。得られた黒色材料は、相当平均粒子直径44nmに相当する、26m2/gの比表面積(BET法)を有した。
【0040】
実施例8:シリカマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体の形成
ジャケット付き真空容器内で不活性窒素雰囲気下、25℃で、撹拌しながらテトラエトキシシラン(CAS番号78-10-4)1.93kgを実施例2の粉末5.00kgに添加した。撹拌を続けながら、次いで混合物の温度を110℃に上げ、1時間一定のままにした。撹拌を続け、温度を110℃に維持しながら、真空にしてエタノール反応生成物を除去した。得られた粉末を熱重量分析(TGA,thermogravimetric analysis)によって調べ、105℃において乾燥による減少が0.3%未満あり、いずれの引火性成分も含まないことがわかった。材料は、X線蛍光(XRF,X-ray fluorescence)を使用して、SiO2 9.9%及びFe2O3 90.1%の組成を有すると決定された。材料の粒径分布は、Horiba(登録商標)社のLA-960 Particle Size Analyzerを使用して、静的光散乱(ISO13320:2009 Particle size analysis - Laser diffraction methods)によって測定した。材料は、平均粒子直径が17.0ミクロン、及び分布の関連標準偏差が26.1ミクロンの、極めて広い粒径分布を有することが観察された。得られた材料の飽和磁化は、組成から65.7emu/gと計算することができる。これは、この複合体の対応するバルク磁性材料の飽和磁化の値の86.4%に相当する。
【0041】
実施例9:シリカマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体からの磁性ビーズの調製
米国特許第3,614,000号明細書に例示される方法を使用して、微粉砕により実施例8の粉末の一部を処理して、複合体磁性ビーズの目標の平均直径を達成した。直径4インチのオービタル(orbital)ジェットミルを噴射圧95PSI及び粉砕チャンバー圧力95PSIで使用した。原材料粉末を速度5kg/時間でプロセスに供給した。次いで得られた磁性ビーズ材料の粒径分布を静的光散乱によって測定した。得られた磁性ビーズ材料は、平均粒子直径が1.14ミクロン、及び分布の関連標準偏差が0.58ミクロンの、狭いガウス型粒径分布を有した。得られた磁性ビーズ材料の比表面積を、BET法を用いて測定し、69m2/gであることがわかった。
【0042】
実施例10:シリカマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体からの磁性ビーズの調製
米国特許第3,614,000号明細書に例示される方法を使用して、微粉砕により実施例8の粉末の一部を処理して、複合体磁性ビーズの目標の平均直径を達成した。直径4インチのオービタルジェットミルを噴射圧72PSI及び粉砕チャンバー圧力72PSIで使用した。原材料粉末を速度5kg/時間でプロセスに供給した。次いで得られた磁性ビーズ材料の粒径分布を静的光散乱によって測定した。得られた磁性ビーズ材料は、平均粒子直径が2.10ミクロン、及び分布の関連標準偏差が1.13ミクロンの、狭いガウス型粒径分布を有した。得られた磁性ビーズ材料の比表面積を、BET法を用いて測定し、69m2/gであることがわかった。
【0043】
実施例11:シリカマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体の形成
ジャケット付き真空容器内で不活性窒素雰囲気下、25℃で、撹拌しながらテトラエトキシシラン(CAS番号78-10-4)4.33kgを実施例2の粉末5.00kgに添加した。撹拌を続けながら、次いで混合物の温度を110℃に上げ、1時間一定のままにした。撹拌を続け、温度を110℃に維持しながら、真空にしてエタノール反応生成物を除去した。得られた粉末を熱重量分析(TGA)によって調べ、105℃において乾燥による減少が0.3%未満あり、いずれの引火性成分も含まないことがわかった。材料は、X線蛍光(XRF)を使用して、SiO2 20.0%及びFe2O3 80.0%の組成を有すると決定された。得られた材料の飽和磁化は、組成から58.4emu/gと計算することができる。これは、この複合体の対応するバルク磁性材料の飽和磁化の値の76.8%に相当する。この材料は、実施例9及び実施例10に記載される方法を使用して、磁性ミクロビーズに変換することができる。
【0044】
実施例12(予想例):アルミナマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体の形成
ジャケット付き真空容器内で不活性窒素雰囲気下、25℃で、撹拌しながらアルミニウムイソプロポキシド(CAS番号555-31-7)2.23kgを実施例2の粉末5.00kgに添加した。撹拌を続けながら、次いで混合物の温度を110℃に上げ、1時間一定のままにした。撹拌を続け、温度を110℃に維持しながら、真空にしてエタノール反応生成物を除去した。得られた粉末は、Al2O3 10.0%及びFe2O3 90.0%の名目組成と、この組成に相当する飽和磁化値65.7emu/gとを有する。この材料は、実施例9及び実施例10に記載される方法を使用して、磁性ミクロビーズに変換することができる。
【0045】
実施例13(予想例):チタニアマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体の形成
ジャケット付き真空容器内で不活性窒素雰囲気下、25℃で、撹拌しながらチタンイソプロポキシド(CAS番号546-68-9)1.98kgを実施例2の粉末5.00kgに添加した。撹拌を続けながら、次いで混合物の温度を110℃に上げ、1時間一定のままにした。撹拌を続け、温度を110℃に維持しながら、真空にしてエタノール反応生成物を除去した。得られた粉末は、TiO2 10.0%及びFe2O3 90.0%の名目組成と、この組成に相当する飽和磁化値65.7emu/gとを有する。この材料は、実施例9及び実施例10に記載される方法を使用して、磁性ミクロビーズに変換することができる。
【0046】
実施例14(予想例):アルミノシリケートマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体の形成
ジャケット付き真空容器内で不活性窒素雰囲気下、25℃で、撹拌しながらアルミニウムイソプロポキシド(CAS番号555-31-7)1.40kg及びテトラエトキシシラン(CAS番号78-10-4)0.71kgを実施例2の粉末5.00kgにそれぞれ添加した。撹拌を続けながら、次いで混合物の温度を110℃に上げ、1時間一定のままにした。撹拌を続け、温度を110℃に維持しながら、真空にしてエタノール反応生成物を除去した。得られた粉末は、非晶質アルミのシリケート(Al2SiO5)10.0%及びFe2O3 90.0%の名目組成と、この組成に相当する飽和磁化値65.7emu/gとを有する。この材料は、実施例9及び実施例10に記載される方法を使用して、磁性ミクロビーズに変換することができる。
【0047】
実施例15(予想例):シリカ-PEGマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体の形成
ジャケット付き真空容器内で不活性窒素雰囲気下、25℃で、撹拌しながらテトラエトキシシラン(CAS番号78-10-4)0.193kgを実施例2の粉末5.00kgに添加した。撹拌を続けながら、次いで混合物の温度を110℃に上げ、1時間一定のままにした。撹拌を続け、温度を110℃に維持しながら、真空にしてエタノール反応生成物を除去し、続いて粉末を温度50℃にする。十分な量のポリエチレングリコール(CAS番号25322-68-3)の水溶液(ポリエチレングリコール500mg/ml)を、撹拌しながら粉末に噴霧して、ポリエチレングリコール0.5kgを送達する。撹拌しながら、混合物を真空下で温度110℃にして、水の画分を除去する。次いで得られた乾燥粉末を温度130℃にし、1時間維持して、米国特許第2,657,149号明細書に記載される方法により、第1の反応ステップからのシラノール基との反応によってポリエチレングリコールを粒子表面にグラフトする。Fe2O3 90質量%である、得られた材料は、実施例9及び実施例10に記載される方法を使用して、磁性ミクロビーズに変換することができる。
【0048】
実施例16(予想例):磁性ビーズのPEG表面修飾の調製
実施例9の材料を自然のpHで、30%固体で脱イオン水中に分散させて、分散体を形成する。十分な量のα,ω-ジ-コハク酸ポリエチレングリコール(20,000Da)の水溶液を添加し、α,ω-ジ-コハク酸ポリエチレングリコールと実施例9の磁性ビーズ材料の表面シラノールとの間でエステル化反応を行った後、ポリエチレングリコール表面官能基化磁性88質量%Fe2O3を生成する。
【0049】
実施例17(予想例):磁性ビーズのストレプトアビジン表面修飾
ジャケット付き真空容器内で不活性窒素雰囲気下、25℃で、撹拌しながら3-アミノプロピルトリエトキシシラン(CAS番号919-30-2)1.0kgを実施例9の材料5.0kgに添加する。撹拌を続けながら、次いで混合物の温度を110℃に上げ、1時間一定のままにした。撹拌を続け、温度を110℃に維持しながら、真空にしてエタノール反応生成物を除去した。得られた材料は、カップリング剤としてグルタルアルデヒドを使用して、ストレプトアビジンでさらに表面官能基化する。
【0050】
実施例18(予想例):ポリマーマトリックス中の単磁区ガンマ酸化鉄磁性ナノ粒子の分散体の形成
ジャケット付き真空容器内で不活性窒素雰囲気下、25℃で、撹拌しながらテトラエトキシシラン(CAS番号78-10-4)0.446kg、[3-(2,3-エポキシプロポキシ)-プロピル]-トリメトキシシラン(CAS番号2530-83-8)0.542kg、及びα,ω-シラノール末端ポリ(ジメチルシロキサン)(CAS番号70131-67-8)0.05kgを実施例2の粉末5.00kgに添加した。撹拌を続けながら、次いで混合物の温度を110℃に上げ、1時間一定のままにした。撹拌を続け、温度を110℃に維持しながら、真空にしてエタノール及びメタノール反応生成物を除去し、続いて粉末を温度50℃にする。得られた材料を、米国特許第9,139,737号明細書及び同第10,590,278号明細書に記載されるクロスポリマー組成物の反応性変形体で10重量%被覆する。この材料は、アニオン性又はカチオン性触媒のいずれかを使用して、触媒的単独重合によりその材料自体とさらに反応させて、高度に凝集した粉末を生成してもよく、これを、実施例9及び実施例10に記載される方法を使用してポリマー被覆磁性ミクロビーズに変換してもよい。あるいは、この材料を適切なポリフェノール、アミン、無水物、又はチオールとさらに反応させ、硬化させて大きな固体樹脂凝集体としてもよく、これを、実施例9及び実施例10に記載される方法を使用してポリマー被覆磁性ミクロビーズに変換してもよい。
【0051】
実施例19(予想例):トップダウン処理を用いたハイスループットでの複合ガラス磁性ビーズの形成
SiO2 70.67mol%、B2O3 14.33mol%、Al2O3 5.00mol%、K2O 4.0mol%、及びCaO 2.00mol%の最終組成をもたらし、実施例2の粉末を90%、及び米国特許出願公開第2005/0266462号明細書のガラス組成物成分を10%含む、磁性ガラスビーズ組成物前駆体懸濁液を、米国特許出願公開第2005/0266462号明細書に記載のように調製する。次いでこの前駆体懸濁液を噴霧乾燥させて、25~100ミクロンの粒径を有し、50ミクロンが典型サイズであるガラスビーズを形成する。噴霧乾燥は、米国特許出願公開第2005/0266462号明細書に開示されるものよりも有意に大きな粒子をもたらす、従来のハイスループット噴霧ノズル技術を用いて行う。このタイプの噴霧乾燥技術を使用することにより、10ミクロン未満の粒子を生成する際のよく知られた顕著な生成物速度限界が克服され、特殊な噴霧器の設計は必要ない。得られた粉末は、任意に、米国特許出願公開第2005/0266462号明細書に記載のように焼結させてもよい。次いで得られた粉末を、実施例9及び10に記載されるオービタルジェットミルの大規模型に移し、同様の条件下で処理して、工業規模の数トン量の全体処理量で生産された、1~5ミクロンの平均サイズを有する磁性ミクロビーズを生成する。得られた磁性ビーズは、任意に、米国特許出願公開第2005/0266462号明細書に記載のように焼結させて、ビーズの形状を制御してもよい。
【0052】
実施例20:核酸の分離及び精製のための磁性ビーズの分析
実施例9の磁性ビーズをエタノール50%及び水50%の溶液中に分散させ、これを市販のキット及びプラットフォームに対して比較した(以降、「実施例9のビーズ」と呼ぶ)。試験用の第1の市販のキットは、MAGMAX(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit(THERMO FISHER SCIENTIFIC(登録商標)社、番号AM1840)であった。このキットは、その普遍的な用途(「ウイルス、血液、及び細菌試料を含む多様な試料からのRNA及びゲノムDNA」)により選択した。第2のキットは、MagNA Pure 24 Total NA Isolation Kit(ROCHE(登録商標)社、番号07658036001)であった。MAGMAX(商標)キットと同様に、MagNA Pure 24 Total NA Isolationキットは、様々な試料材料及び様々な試料容積から核酸(NA、nucleic acid)を単離するためのその幅広い有用性により選択した。
【0053】
DNA結合アッセイ
実施例9のビーズ並びにMAGMAX(商標)及びMagNAキットの磁性ビーズのDNA結合及び回収特性を評価した。磁性ビーズを評価するため、ビーズを公知の濃度のDNA(初濃度)と組み合わせた。磁性ビーズが核酸に結合し、磁性ビーズを洗浄し、DNAを磁性ビーズから溶液中に溶出させる。溶出したDNAを定量して、回収されたDNAの初濃度の百分率を決定する。初濃度は、QUBIT(商標)dsDNA DNA BR Assay Kit(THERMO FISHER SCIENTIFIC(登録商標)社、番号Q32850)を使用して測定した。これらの初濃度は段階希釈を用いて作成した。アッセイ用に選んだDNAは、アガロースゲル電気泳動用途のラダーとして典型的に使用されるDNAの市販の溶液、1kb DNA Ladder(New England Biolabs社、番号N3232L)であった。この製品は、広い範囲のDNA長(500~10,000塩基対)を含有し、それぞれの長さのDNAの濃度が既知であり、これによって多様なサイズの溶出DNAをゲル電気泳動により測定することが可能となるため選んだ。
【0054】
実施例9のビーズ及びMAGMAX(商標)ビーズを、MAGMAX(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kitで提供される成分(具体的には、結合、洗浄1、洗浄2、及び溶出バッファー)を使用して等しく処理し、但し、MAGMAX(商標)ビーズはDNA試料に曝す前に「結合促進」溶液で処理した。この結合促進剤のMSDSは、結合促進剤がグリセロール及びプロテイナーゼKを含有することを示しているが、その両方の濃度は未掲載であり、これらの添加剤の目的は述べられていない。全ての反応は、96ウェルプレートアッセイと適合するように容積を縮小し、全ての測定はレプリケートで行った。各反応において、実施例9のビーズ又はMAGMAX(商標)ビーズのいずれかの合計2μLを使用した。ROCHE(登録商標)社のMagNAキットは後で含め、同じプロトコルを使用してMagNAバッファーを用いて試験した。
【0055】
DNA結合、洗浄、及び溶出の後、QUBIT(商標)dsDNA DNA BR Assay Kit(THERMO FISHER SCIENTIFIC(登録商標)社、番号Q32850)及びQUBIT 4(商標)Fluorometer(THERMO FISHER SCIENTIFIC(登録商標)社、番号Q33238)を使用して、試料のDNA濃度を測定した。このアッセイは、その高い感度、二本鎖DNAへの高い特異性、及び100pg/μL~1,000ng/μLの広い作用範囲により選んだ。インプットDNA濃度は、3桁(10ng~10μg超)にわたるものであり、MAGMAX(商標)ビーズを飽和するように設計した。各インプットDNA濃度での平均収率は、以下の表1に示されている。
図1及び
図2に示されているように、実施例9のビーズは、インプットDNAが0.108μg以上で、MAGMAX(商標)ビーズよりもインプットDNAの回収量(収率%)が高いことが観察された。しかしながら、試験した最も低いDNAインプット(0.022μg及び0.049μg)において、実施例9のビーズから結合は観察されなかった。対照的に、MagMAX(商標)ビーズは、0.049μgにおいて2レプリケートで、及び0.022μgにおいて1レプリケートでDNAを回収することができた。重要なことに、QUBIT(商標)アッセイを使用してDNAが検出されなかった試料は、それでもなお、診断用途でしばしば使用されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような方法によって回収及び増幅することができるDNAを有しうる。驚くことに、MagNAキットは、試験した全3種のビーズのうち最も悪い性能であり、高いインプットDNA濃度でのみ精製を示した。
【0056】
【0057】
RNA結合アッセイ
市販のssRNAラダー(New England Biolabs、番号N0362S)をアッセイインプットとして選んだ。このラダーは、サイズが9000塩基対から下は500までの範囲の7種の一本鎖直鎖状RNA分子からなる。
【0058】
精製前に、65℃に設定したヒートブロックで5分間加熱することにより、ラダーを変性させた。ビーズ2μLを使用した初めの小規模試験で不十分な収率が示された(データ示さず)後、使用したビーズの容積は4μLであった。MAGMAX(商標)及び実施例9のビーズはMAGMAX(商標)洗浄及び溶出バッファーで洗浄して溶出させ、MagNA PureビーズはMagNA Pureバッファーで洗浄して溶出させた。
【0059】
RNA初濃度は3桁を超えてわたり、5000ng~8ngのインプットの範囲であった。40ng以下のインプットRNAを使用した場合ビーズは機能しなかったが、8ngのインプット濃度でMAGMAX(商標)ビーズの外れ値レプリケート1つが、ほぼ20ngの収量を示した。これはインプットよりも多く、よっておそらく精製又は定量プロセスのどこかの時点での汚染の結果である。MAGMAX(商標)及び実施例9のビーズは、200ng以上の濃度で同様の性能であり、このインプットレベルを超えると全レプリケートが定量可能なRNAを回収し、それ未満では1レプリケート(MAGMAX(商標)、8ngのインプット)のみがQUBIT(商標)で定量可能なRNAを回収した。この外れ値は、回収された量(662ng)がインプット量よりもはるかに多かったため、ほぼ確実に機器誤差又は試料汚染である。これらのビーズは両方ともMagNA Pureビーズよりも良好な性能であり、MagNA Pureビーズは、200ngのインプットにおいて1レプリケートで、検出可能量のRNAを低い(6%)回収率で回収することができるのみであった。初期インプットの百分率としての平均収率は、以下の表2に示されている。結果は
図3及び
図4に示されており、それぞれ、インプットRNAの百分率としての平均収率、及びng単位のRNAの平均回収量が示されている。
【0060】
【0061】
DNA結合-qPCRアッセイ
低い核酸濃度においてビーズの感度が高いため、ビーズの性能の分析のための定量PCRを用いて分析を行った。定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR,quantitative polymerase chain reaction)は、増幅産物の蓄積を直接的又は間接的にのいずれかで、リアルタイムで蛍光により追跡する一群の関連アッセイに対する包括的な用語である。鋳型としてSARS-CoV-2 N遺伝子のPCR増幅断片、並びにN2 TAQMAN(商標)プライマー及びプローブ(Integrated DNA Technologies社、番号10006713)を用いる、TAQMAN(商標)をベースとするqPCRプロトコルを開発した。インプットとして10及び1ngの増幅N遺伝子を、2レプリケートの0ngインプット対照と共に使用し、実施例9のビーズ及びMagNA Pureビーズについて3レプリケートで試験を行った。QUBIT(商標)アッセイで確立したプロトコルとほぼ同一にビーズを洗浄して溶出させたが、但し、キャリア核酸を溶解/結合バッファーに添加した。TAQMAN(商標)Gene Expression Master Mix/N2 Primer Set 9μLに溶出液1μLを添加し、50℃のアニーリングを15秒、次いで68℃の伸長を15秒の50サイクルに設定したChaiBio社Open qPCRで実行した。
【0062】
インプットなしの陰性対照のいずれにおいてもN遺伝子は検出されず、キャリアNAはプライマーのテンプレートとして作用しないことが示された。QUBIT(商標)データと同様に、実施例9のビーズはMagNA Pureビーズよりも性能が優れ、Cq値(曲線がバックグラウンド超えに増幅される、増幅サイクル)が一貫してより低かった。Cq値がより低いということは、溶出溶液のDNA濃度がより高いことを示し、なぜなら、DNAの開始量がより多いということは、DNAをバックグラウンド超えの量に増幅するのに必要なサイクル数がより少ないことを意味するからである。両方のビーズのセットは、QUBIT(商標)により検出可能なアウトプットを有する最も低い濃度よりもはるかに低い1ngの低さのインプットまで、確実にDNAを回収することができた。このデータは
図5及び
図6に示されている。
【0063】
RNA結合-RT-qPCR結合アッセイ
上記のqPCRを逆転写qPCR(RT-qPCR,reverse transcription qPCR)プロトコルに適合させた。SARS-CoV-2 N遺伝子断片を増幅するのに使用したフォワードプライマーはT7プロモーターを含有し、T7 RNAポリメラーゼ(New England Biolabs社、番号E2040S)を使用した上記のPCR産物のインビトロでの転写が可能であった。この反応の結果は、カプセル化されてはいないが、患者試料に存在すると考えられるものと同様のN遺伝子の直鎖状一本鎖RNA断片である。
【0064】
実施例9のビーズ及びMagNA Pure 24ビーズについて、2種のインプット濃度(10ng及び50ngのRNA)を3レプリケートで試験し、0ngインプットの陰性対照を2レプリケートで試験した。RNA QUBIT(商標)アッセイ用に調製した試料向けと同じプロトコルを、溶解/結合バッファーへのキャリア核酸の添加と共に行った。DNAと比較してRNAへの結合能が低下することが前の実験で示されたため、各ビーズ4μLを使用した。試料は、そのビーズのそれぞれのキットの溶出バッファー30μLに溶出させた。
【0065】
LUNASCRIPT(登録商標)RT SuperMix Kit(New England Biolabs社、番号E3010L)を使用して、溶出液5μLからのRNAをDNAに逆転写し、次いでDNA試験に使用したqPCRアッセイの大規模(10μLではなく20μL)版に逆転写ミックス2μLを供した。TAQMAN(商標)Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems社、番号4370048)及びIntegrated DNA Technologies社製のN2プライマー/プローブセットをアッセイで使用した。試料の蛍光、したがって増幅がバックグラウンドを超えたサイクル数を計算するための機器ソフトウェアを使用して、ChaiBio社Open qPCRで反応を実行した。PCR効率100%を仮定すると、Cq値の1の増加は、試料のDNAが半分であることを示す。前の結果と同様に、実施例9のビーズはMagNA Pureビーズよりも良好にRNAを精製することができた。得られたCq値は、DNA精製で取得されたものよりも概して高く、このことは、試験した全てのビーズでRNA精製がDNA精製よりも低効率である(QUBIT(商標)アッセイの結果から支持される)か、逆転写酵素ステップが非効率であるか、又はその両方であることを示している。実施例9のビーズについての0ngインプットでの測定のうちの1つは、約55のCq値を示し、マイクロプレート精製中におそらく汚染が生じたことを示唆している。さらに、実施例9の精製のうちの1つは、精製プロセス中の誤りにおそらく起因する、約55のCq値を有した。これらの外れ値を除くと、10ngインプットは、実施例9のビーズではCq値46.0で、MagNA Pureでは49.6で回収され、50ngインプットは、実施例9のビーズではCq値45.0で、MagNA Pureでは49.3で回収された。このデータは
図7及び
図8に示されている。
【0066】
実施例21:磁性ビーズの比表面積
磁性ビーズは、実施例8に記載される方法に従って、ビーズ中のSiO2の百分率を変えて調製し、2つの異なる架橋温度、T1及びT2における処理後に試験した。以下の表3において、T1は温度85℃に対応し、T2は温度115℃に対応する。磁性ビーズの比表面積(SSA)はBET法を用いて測定した。ビーズの比表面積は、SiO2の百分率が増加するに従って増加した。より高い温度で架橋を行うと、およそ20%の表面積の減少があった。T2での表面積の低下は、おそらく、より高い温度で架橋が増加することに起因する。いずれの温度でも加熱による飽和磁化の減少はなかった。これらのビーズ組成物のサイズは、所望の用途向けに、所望のビーズサイズに改変してもよい。
【0067】
【0068】
(参考文献)
1. Majetich, S.A. et al. “Magnetic nanoparticles”MRS Bulletin 38, pp. 899-903 (Nov. 2013).
2. 欧州特許出願公開第0757,106号明細書
3. 米国特許出願公開第2005/0266462号明細書
4. Shang, H., et al. “Synthesis and Characterization of Paramagnetic Microparticles through Emulsion-Templated Free Radical Polymerization”Langmuir 22, pp. 2516-2522 (2006).
5. 米国特許第5,973,138号明細書
6. MagMAXTM Total Nucleic Acid Isolation Kit User Guide, Thermo Fisher Scientific, 2018.
7. 米国特許第6,451,220号明細書
8. 米国特許出願公開第2003/0096987号明細書
9. 米国特許出願公開第2012/247150号明細書
10. 米国特許出願公開第2003/096987号明細書
11. Ogi, T. et al., “recent progress in nanoparticle dispersion using bead mill”, Kona Powder and Particle Journal, vol. 34, pp. 1-21 (2016).
【国際調査報告】