(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】フィーチャ画像に基づく3次元マスクシミュレーション
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231017BHJP
G06F 30/39 20200101ALI20231017BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20231017BHJP
G03F 1/70 20120101ALI20231017BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G06F30/39
G06F30/20
G03F1/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517378
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 US2021048761
(87)【国際公開番号】W WO2022060573
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】597035274
【氏名又は名称】シノプシス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SYN0PSYS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ ペン
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
5B146
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB02
2H195BB36
2H195CA22
2H197BA11
2H197CA10
2H197DA02
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA08
2H197GA23
2H197HA03
5B146DC01
5B146DJ11
5B146DL02
5B146GC23
(57)【要約】
リソグラフィマスクのレイアウト幾何学的形状が受信される。レイアウト幾何学的形状は、例えばライブラリから選択される複数のフィーチャ画像に分割される。ライブラリは、予め規定されたフィーチャ画像およびそれらの対応する事前計算されたマスク3D(M3D)フィルタを含む。フィーチャ画像についてのM3Dフィルタは、所与の光源照明についてそのフィーチャ画像の電磁散乱効果を表す。複数のフィーチャ画像のそれぞれからのマスク関数寄与は、フィーチャ画像をそのM3Dフィルタで畳み込むことによって計算される。マスク関数寄与は、光源照明によって照明されるリソグラフィマスクについてマスク関数を決定するために結合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィマスクのレイアウト幾何学的形状を受信すること、
前記レイアウト幾何学的形状を複数のフィーチャ画像に分割すること、
前記フィーチャ画像を対応するマスク3D(M3D)フィルタで畳み込むことによって、前記複数のフィーチャ画像のそれぞれからマスク関数(MF)寄与を、プロセッサによって計算することであって、フィーチャ画像に対応する前記M3Dフィルタは、前記フィーチャ画像の電磁散乱効果を表す、計算すること、および、
前記リソグラフィマスクについてのマスク関数を決定するために前記計算されたMF寄与を結合すること
を含む方法。
【請求項2】
光源照明によって照明される前記フィーチャ画像に基づいてマスク構造の前記散乱効果の厳密電磁シミュレーションによって前記M3Dフィルタを決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のフィーチャ画像は、予め規定されたフィーチャ画像および前記予め規定されたフィーチャ画像の対応する事前計算されたM3Dフィルタを含むライブラリから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
予め規定されたフィーチャ画像の前記ライブラリは、異なる次数の複雑度のフィーチャ画像を含み、前記方法は、
前記フィーチャ画像の複雑度に応じて或る次数で前記M3Dフィルタを事前計算することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
高次複雑度のフィーチャ画像について前記M3Dフィルタを決定することは、
前記高次フィーチャ画像に対応するマスク構造を決定すること、
前記マスク構造を前記高次フィーチャ画像および1つまたは複数の低次フィーチャ画像に分割すること、
前記マスク構造についてのマスク関数を予測するために、厳密電磁シミュレーションを実行すること、
前記複数の低次フィーチャ画像のそれぞれからの前記MF寄与を、前記それぞれの低次フィーチャ画像を前記低次フィーチャ画像の対応するM3Dフィルタで畳み込むことによって計算すること、および、
前記高次フィーチャ画像からの前記MF寄与を前記低次フィーチャ画像の前記MF寄与と組み合わせることに基づいて、前記高次フィーチャ画像についての前記M3Dフィルタを決定することであって、それにより、前記高次フィーチャ画像に対応する前記マスク構造について前記予測されたマスク関数をもたらす、決定すること
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ライブラリ内で前記予め規定されたフィーチャ画像を決定することをさらに含み、前記予め規定されたフィーチャ画像に基づいて、フィーチャ画像は前記リソグラフィマスクの前記レイアウト幾何学的形状内に存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
予め規定されたフィーチャ画像の前記ライブラリは、前記リソグラフィマスクの前記レイアウト幾何学的形状内に存在する高次フィーチャ画像によって補足されるフィーチャ画像の共通ベースを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マスクの前記レイアウト幾何学的形状は複数のポリゴンを含み、
前記レイアウト幾何学的形状を複数のフィーチャ画像に分割することは、周波数通過帯域内に不均一応答を有する低域通過ラスター化関数を使用して前記マスクポリゴンをラスター化することを含み、
前記M3Dフィルタは、前記不均一応答を補償する等化フィルタの効果を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アッベ結像モデルまたはホプキンス結像モデルへの入力として前記マスク関数を適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体、ならびに、予め規定されたフィーチャ画像および対応する事前計算されたマスク3D(M3D)フィルタを含むライブラリと、
前記コンピュータ可読記憶媒体に結合され、命令を実行するためのプロセッサとを備え、前記命令は、実行されると、前記プロセッサに、
リソグラフィマスクのレイアウト幾何学的形状を、前記ライブラリから選択される複数のフィーチャ画像に分割させ、
前記フィーチャ画像を前記ライブラリからの対応するM3Dフィルタで畳み込むことによって、前記複数のフィーチャ画像のそれぞれからマスク関数(MF)寄与を計算させ、
前記リソグラフィマスクについてのマスク関数を決定するために前記計算されたMF寄与を結合させる、システム。
【請求項11】
予め規定されたフィーチャ画像の前記ライブラリは、エリア画像、1つまたは複数の単一エッジ画像、および複数のマルチエッジ画像を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
予め規定されたフィーチャ画像の前記ライブラリは、それぞれが2つの平行エッジからなる複数のフィーチャ画像を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
予め規定されたフィーチャ画像の前記ライブラリは、それぞれが角部を形成する2つの垂直エッジからなる複数のフィーチャ画像を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
予め規定されたフィーチャ画像の前記ライブラリは、それぞれが45度の倍数でない角度で配向した単一エッジからなる複数のフィーチャ画像を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
予め規定されたフィーチャ画像の前記ライブラリは、それぞれが曲線エッジからなる複数のフィーチャ画像を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
予め規定されたフィーチャ画像の前記ライブラリは、エリア画像、1つまたは複数の単一エッジ画像、および複数の2エッジ画像からなる、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
命令が記憶されている非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
リソグラフィマスクのレイアウト幾何学的形状を複数のフィーチャ画像に分割させ、
前記フィーチャ画像についてのマスク3D(M3D)フィルタを使用して、前記複数のフィーチャ画像のそれぞれからマスク関数(MF)寄与を計算させ、
前記リソグラフィマスクについてのマスク関数を決定するために前記計算されたMF寄与を結合させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記M3Dフィルタは厳密電磁シミュレーションに基づく、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記レイアウト幾何学的形状はチップ全体についてのレイアウト幾何学的形状を含む、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記リソグラフィマスクの光源照明は、極端紫外線(EUV)または深紫外線(DUV)照明である、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年9月16日に出願された米国仮特許出願第63/079,067号「Three-Dimensional Mask Simulations Based on Feature Images」および2021年8月31日に出願された米国特許出願第17/463,075号「Three-Dimensional Mask Simulations Based on Feature Images」に対して米国特許法第119条(e)の下で優先権を主張する。上記の全ての主題は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、例えば、フルチップまたは大規模計算リソグラフィアプリケーションを含む、3次元マスクシミュレーションに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体ウェハの製造における1つの工程はリソグラフィを含む。典型的なリソグラフィプロセスにおいて、光源は、リソグラフィマスクを照明するために収集/照明光学系によって収集され方向付けられる光を生成する。投影光学系は、照明されたマスクによって生成されたパターンをウェハ上に中継し、照明パターンに従ってウェハ上のレジストを露光する。パターニングされたレジストは、その後、プロセス内で使用されて、ウェハ上に構造を作製する。
【0004】
種々の技術が、リソグラフィマスクの設計を含むリソグラフィプロセスを改善することを対象とする。計算リソグラフィにおいて、リソグラフィマスク設計は、3次元マスクモデルに対する入力として使用され、3次元マスクモデルは、光源によって照明されるマスクの電磁界散乱特性を記述するマスク関数を計算するために使用される。マスク関数は、その後、光学結像モデル(例えば、アッベ結像モデル(Abbe imaging model)またはホプキンス結像モデル(Hopkins imaging model))に対する入力として使用されて、レジストにおける被印刷パターンを予測することができる。3次元マスクモデルが正確であるうえに高速であることが重要である。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様において、リソグラフィマスクのレイアウト幾何学的形状が受信される。レイアウト幾何学的形状は、例えばライブラリから選択される複数のフィーチャ画像に分割される。ライブラリは、予め規定されたフィーチャ画像およびそれらの対応する事前計算されたマスク3D(M3D:mask 3D)フィルタを含む。フィーチャ画像についてのM3Dフィルタは、所与の光源照明についてそのフィーチャ画像の電磁散乱効果を表す。複数のフィーチャ画像のそれぞれからのマスク関数寄与は、フィーチャ画像をそのM3Dフィルタで畳み込むことによって計算される。マスク関数寄与は、光源照明によって照明されるリソグラフィマスクについてマスク関数を決定するために結合される。
【0006】
他の態様は、コンポーネント、デバイス、システム、機能強化、方法、プロセス、アプリケーション、コンピュータ可読媒体、および上記の任意のものに関連する他の技術を含む。
【0007】
本開示は、以下に与えられる詳細な説明からおよび本開示の実施形態の添付図からより完全に理解されるであろう。図は、本開示の実施形態の知識および理解を提供するために使用され、本開示の範囲をこれらの特定の実施形態に限定しない。さらに、図は、必ずしも一定比例尺に従って描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本開示の実施形態と共に使用するのに適する極端紫外線(EUV)リソグラフィプロセスを示す図である。
【
図1B】マスクからの散乱を計算するためのフローチャートである。
【
図2】マスクレイアウト幾何学的形状を複数のフィーチャ画像に分割することを示す図である。
【
図3】ライブラリ内のフィーチャ画像を示す図である。
【
図4A】フィーチャ画像についてのM3Dフィルタを計算するためのフローチャートである。
【
図5】フィーチャ画像のライブラリを開発するためのフローチャートである。
【
図6】本明細書で説明するアプローチを他のアプローチと比較する結果を示す図である。
【
図7】本開示の幾つかの実施形態による、集積回路の設計および製造中に使用される種々のプロセスのフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態が働くことができる例のコンピュータシステムのダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の態様は、フィーチャ画像に基づく3次元マスクシミュレーションに関する。ウェハ上のレジストを露光する照明パターンは、とりわけ、リソグラフィマスクの幾何学的レイアウトおよび光源照明に依存する。リソグラフィプロセスのシミュレーションは、リソグラフィマスクに入射する光源照明によって生成された電磁界の正確な予測に依存する。この電磁界は、回折および散乱効果を説明するマクスウェルの方程式の厳密な3次元シミュレーションを使用して予測することができる。しかしながら、そのようなシミュレーションは、計算集約的であり、長い実行時間を有する。結果として、多くの場合、チップ全体をカバーするマスクエリアについて厳密3次元シミュレーションを実行することは法外に高くつく。
【0010】
本開示の態様は、フィーチャ画像(フィーチャベクトルとしても知られる)および対応するフィルタ(マスク3DまたはM3Dフィルタと呼ばれる)のセットを使用することによって、マスク関数(MF:mask function)によって表される、電磁界回折および散乱特性を計算することに関する。フィーチャ画像は、マスク内に存在することができる基本的幾何学的形状を表し、対応するM3Dフィルタは、フィーチャ画像に由来する散乱効果を表す。M3Dフィルタは、光源照明が与えられた場合にフィーチャ画像の散乱効果の厳密電磁シミュレーションに基づいて決定することができる。
【0011】
1つのアプローチにおいて、フィーチャ画像は、予め規定されたフィーチャ画像およびそれらの対応する事前計算されたマスク3D(M3D)フィルタのライブラリから選択される。ライブラリ内のフィーチャ画像は、
・ 0エッジフィーチャ画像:バルクエリア(エッジなし)
・ 1エッジフィーチャ画像:異なる配向の複数のエッジ
・ 2エッジフィーチャ画像:異なる配向および互いに対する空間的関係を有する2つのエッジの組み合わせ
・ 3+エッジフィーチャ画像:3つ以上のエッジ(例えば、ポリゴン形状)の組み合わせ
を含むが、それに限定されない。
【0012】
本開示の利点は、以下を含むがそれに限定されない。本発明は、機械学習(ML:machine learning)と非MLの両方のフレームワークと共に使用するのにより適し、同様に、グラフィクス処理ユニット(GPU:graphics processing units)用により適している可能性がある。十分に厳密なシミュレーションと比較して、アプローチは、モデル生成、訓練、および較正についてより計算効率がよく、ランタイムもまた、マスク関数について正確な結果を依然として生成しながら低減される。結果得られるマスク関数は、リソグラフィシミュレーションにおける次のステップとすることができるホプキンスとアッベの両方の結像モデルにおいて効率的に使用されることができる。
【0013】
より詳細に、
図1Aは、本開示の実施形態と共に使用するのに適するEUVリソグラフィプロセスを示す。このシステムにおいて、光源102は、マスク110を照明するために収集/照明光学系104によって収集され方向付けられるEUV光を生成する。投影光学系116は、照明されたマスクによって生成されたパターンをウェハ118上に中継し、照明パターンに従ってウェハ上のレジストを露光する。露光されたレジストは、その後、現像され、ウェハ上にパターニングされたレジストを生成する。これは、例えば、堆積、ドーピング、エッチング、または他のプロセスを通して、ウェハ上に構造を作製するために使用される。
【0014】
図1Aにおいて、光は、約13.5nmまたは13.3~13.7nm範囲内のEUV波長範囲内にある。これらの波長において、成分は、典型的には、透過型ではなく反射型である。マスク110は反射型マスクであり、光学系104、116は、同様に反射型でありかつオフアクシスである。これは単なる例である。深紫外線(DUV)を含む他の波長において、透過型マスクおよび/または光学系を使用すること、および、ポジティブまたはネガティブレジストを使用することを含む、他のタイプのリソグラフィシステムも使用されうる。
【0015】
図1Bは、マスク110からの散乱を計算するためのフローチャートである。マスク110からの回折および散乱は、マスク関数(MF)190によって表される。
図1Bのプロセスは、マスクの記述115およびライブラリ120を使用して、マスクについてマスク関数190を計算する。ライブラリは、予め規定されたフィーチャ画像125およびマスク3D(M3D)フィルタと呼ばれることになる対応するフィルタ127を含む-なぜなら、それらが、所与の光源照明について、そのタイプのフィーチャ画像からのマスク関数全体に対する寄与を表すからである。M3Dフィルタ127は、光源照明の効果を含む。
【0016】
図1Bに示すように、マスクのレイアウト幾何的形状は、受信され130、複数のフィーチャ画像に分割される140。各フィーチャ画像からのマスク関数(MF)寄与は、フィーチャ画像125をその対応するM3Dフィルタ127で畳み込むこと150によって計算される。マスクおよび所与の光源照明についての集計マスク関数は、個々のフィーチャ画像からのMF寄与を結合する(例えば、合計する)160ことによって決定される。
【0017】
図2は、マスクレイアウト幾何学的形状を複数のフィーチャ画像に分割することを示す。
図2は、レイアウト幾何学的形状からの2つの形状210および220ならびに形状210の複数のフィーチャ画像への分割を示す。形状210は、以下のフィーチャ画像:1つのエリア画像、6つのエッジ画像、6つの角部画像、および2つのエッジ・トゥー・エッジ(E2E:Edge-to-Edge)画像に分割される。形状210は、マスクレイアウト内に存在する異なるフィーチャを識別するルールに基づいてフィーチャ画像に分割することができる。この例において、ポリゴン形状210の内部エリアおよびマスク関数に対するその寄与は、エリア1フィーチャ画像によって表される。これは、マスクのどのエリアが、透過型または反射型に対して不透過型であるかを規定する。エッジフィーチャ画像(エッジ1~エッジ6)は、エッジにおける電磁波の回折および散乱を説明する。
【0018】
残りのフィーチャ画像は、2つのエッジ間に相互作用が存在することになる2つのエッジの組み合わせに基づく。角部フィーチャ画像(角部1~角部6)は、2つのエッジの単なる個々の寄与を超える、角部における相互作用を説明する。
図2において、角部が内側角部と外側角部の両方を含むことに留意されたい。エッジ・トゥー・エッジ(E2E)フィーチャ画像は、平行エッジ間の相互作用を説明する。E2E 1は、エッジ1と3との間の相互作用を説明する。E2E 2は、エッジ2と形状220の左エッジとの間の相互作用を説明する。
【0019】
フィーチャ画像のそれぞれは画像である。例えば、エリア画像は形状210のポリゴンとすることができる。エッジ画像のそれぞれは、関連エッジのフィルタリング済みバージョンとすることができる。幾つかの場合、ラスター化フィルタは、フィーチャ画像を生成するために適用される。
【0020】
レイアウト幾何学的形状の分割は、ライブラリ120からの予め規定されたフィーチャ画像125を使用する。ライブラリ内のフィーチャ画像は、散乱の理解およびどのタイプの幾何学的フィーチャが散乱に寄与するかに基づいて選択することができる。
【0021】
図3は、ライブラリ内のフィーチャ画像の幾つかの例を示す。
図3のフィーチャ画像は、フィーチャ画像内のエッジの数に従って分類される。一番上の列のフィーチャ画像は0エッジを有し、次の列のフィーチャ画像は、1エッジ、そして2エッジ、そして3+エッジを有する。これらは、単に例であり、網羅的でない。
【0022】
一番上の例において、エリアフィーチャ画像は、マスクのどのエリアが、透過型または反射型に対して不透過型であるかを決定する。エリアフィーチャ画像の実際の事例は、マスクに関する形状の幾何学的レイアウトに応じて、異なる形状、サイズ、および場所を有することができる。エリアフィーチャ画像に対応するM3Dフィルタは、無限大エリアを仮定するエリア内の各ポイントによって生成される散乱を表す、すなわち、幾何学的レイアウトのバルクエリア内の各ポイントからのマスク関数に対する寄与はいずれのエッジ効果も無視する。したがって、エリアフィーチャ画像(例えば、
図2のエリア1)の事例を用いたM3Dフィルタの畳み込みは、マスク内のその形状のバルクエリアからのMF寄与をもたらす。
【0023】
第2の列において、エッジフィーチャ画像は、フィーチャ画像の別の重要なクラスである-なぜなら、電磁波の回折または散乱がエッジで起こるからである。
図3は、1つのエッジフィーチャ画像を示すが、ライブラリは、多くのタイプのエッジ画像を有することができる。マンハッタン幾何学的形状のみを有するマスクの場合、マンハッタン幾何学的形状内のエッジの考えられる4つの配向に対応する4つのエッジフィーチャ画像が、ライブラリに含まれる。幾つかのマスクは、45度の倍数でのまたはさらに任意の角度でのエッジを可能にすることもできる。エッジフィーチャ画像に対応するM3Dフィルタは、無限長エッジを仮定するエッジに沿う各ポイントによって生成される散乱を表す
【0024】
第3の列は、2つのエッジの組み合わせであるフィーチャ画像の別の重要なクラスを示す。2つのエッジが十分に近くなると、2つのエッジ間に相互作用が存在することになる。幾つかの例は
図3に示される。最初の2つの例において、2つのエッジは平行である。これは、一般にエッジ・トゥー・エッジ(
図2においてE2Eとラベル付けされる)と呼ばれる。
図3は、2つのエッジ間のエリアがマスク材料によって満たされているか否かに応じて、2つの異なる極性を示す。2つの異なる極性に加えて、ライブラリは、エッジ間の異なる分離を有し、エッジが異なる角度で(水平に、垂直に、45度の倍数等で)配向する状態の、エッジ・トゥー・エッジフィーチャ画像を含むこともできる。
【0025】
第3の列の最後の2つの例において、2つのエッジは互いに垂直である。これらは、角部フィーチャ画像:極性に応じた内側角部および外側角部である。ライブラリは、異なる角度で配向した角部を含むことができる。他の2つのエッジフィーチャ画像も可能である。例えば、2つのエッジは互いに異なる角度にあるとすることができる。2つのエッジは、分離されるが、互いに平行でないとすることができる。そのため、2つのエッジは、ゆっくり収束または発散することになる。90度以外の角度での角部も可能である。
【0026】
一番下の列は、3つ以上のエッジを有するフィーチャ画像を示す。最初の2つの例は、両極性の先端である。ライブラリは、異なる幅のそして異なる角度配向のバージョンを含むことができる。次の2つの例は、両極性の穴またはバイアである。異なるバージョンは、異なる幅、高さ、および角度配向を有することができる。最後の例は、湾曲エッジを示す。
【0027】
フィーチャ画像のそれぞれは、フィーチャ画像からのMF寄与を生成するために使用される対応するフィルタを有する。すなわち、フィーチャ画像の散乱効果は、M3Dフィルタによって捕捉される。1つのアプローチにおいて、厳密シミュレーションはフィーチャ画像について実施され、厳密結果は、M3Dフィルタを決定するために使用される。
【0028】
M3Dフィルタは、低次効果で始めることによって計算することができる。エリア画像(0次フィーチャ画像)の効果は、問題のエリアの透過または反射にのみ依存する。厳密シミュレーションにおいて、このフィーチャ画像についてのマスク構造は一定値の平面である。M3Dフィルタは、厳密シミュレーションから計算された透過または反射に等しい不変数である。
【0029】
次に、エッジフィーチャ画像を考える。レイアウト幾何学的形状におけるエッジは、エリアフィーチャ画像プラスエッジフィーチャ画像に分割される。エッジ散乱の厳密シミュレーションは、その後、エリアフィーチャ画像からのMF寄与プラスエッジフィーチャ画像からのMF寄与によってモデル化される。エリアフィーチャ画像からのMF寄与は既に決定されているため、エッジフィーチャ画像からのマスク関数寄与および対応するM3Dフィルタが、その後、決定されることができる。
【0030】
全ての単一エッジフィーチャ画像が考慮された後、2つのエッジからなるフィーチャ画像を考える。
図4Aは、低次フィーチャ画像から高次フィーチャ画像まで進行するフィーチャ画像についてのM3Dフィルタを計算するためのフローチャートである。
図4Bは、
図3に示す2エッジ・ギャップフィーチャ画像について例のM3Dフィルタ計算を示す。
【0031】
図4Bの例において、0エッジおよび1エッジフィーチャ画像についてのM3Dフィルタは、既に計算されており、プロセスは、より複雑なフィーチャ画像:2エッジフィーチャ画像に移動する405。特定の間隔Δを有するギャップフィーチャ画像が、次に考えられる410。ギャップフィーチャ画像についてのマスク構造は、間隔Δだけ分離された2つのエッジであると決定される420。厳密3次元シミュレーションは、このマスク構造について実行することができ430、このマスク構造についてのマスク関数をもたらす。
【0032】
このマスク構造についての幾何学的レイアウトは、低次フィーチャ画像:関心の、エリアフィーチャ画像+2エッジフィーチャ画像+ギャップフィーチャ画像に分割される440。これは、
図4Bの一番上の列に絵を用いて示される。厳密電磁シミュレーションによって計算された集計マスク関数は、各フィーチャ画像からのMF寄与の合計に等しい。
【数1】
ここで、I
iはフィーチャ画像であり、K
iは対応するM3Dフィルタであり、
【数2】
は畳み込み演算子であり、Nはフィーチャ画像の数である。MFはマスク関数であり、マスク関数は、この場合、厳密シミュレーションからわかっている。低次フィーチャ画像についてのMF寄与は、それらの画像について、前もって計算されたM3Dフィルタを使用して計算することができる450。これは、
図4Bの一番下に絵を用いて示された、方程式1における1つの未知数を残す。それは、ギャップフィーチャ画像についてのM3Dフィルタであり、そのM3Dフィルタは、その後、計算することができる460。幾つかの場合、これは、ライブラリ120内のM3Dフィルタ127として使用することができる。フィーチャ画像は、画像の疎サンプリングを可能にするフィーチャのグレースケール表現とすることができる。例えば、エッジは、無限大周波数成分を有し、100%忠実度で表現するために無限大帯域幅を必要とすることになる。しかしながら、エッジは、代わりに、エッジの低域通過フィルタリングされたバージョンによって表すことができ、それは、グレースケールぼけエッジに似ている。マスクにおけるポリゴン形状は、低域通過ラスター化関数を使用してラスター化することができる。この関数は、フィーチャの高周波数成分を除去し、低周波数成分のみを保持する。この関数は許容可能である-なぜなら、投影光学系が、実際には低域通過システムであるため、高(空間)周波数成分を、当然、フィルタリングして除去することになるからである。ラスター化演算において関数をよりコンパクトに、したがってより速くするために、低域通過ラスター化フィルタは、sincまたはsinc様関数の均一応答と比較して、周波数通過帯域において不均一応答を有するように設計される。低域通過ラスター化関数がその周波数通過帯域内で不均一応答を有する限りにおいて、等化フィルタ470は、不均一応答を補償するために付加することができる。M3Dフィルタ490は、その後、電磁散乱と等化の結合体である。
【0033】
上記で説明したアプローチは、例えば、1nmの増分で、異なる間隔Δを有するギャップフィーチャ画像について反復することができる。アプローチは、異なる配向および極性について反復することもできる。アプローチは、他の2エッジの、およびより複雑なフィーチャ画像について反復することもできる。
【0034】
方程式1は、直接畳み込みを使用して空間ドメイン内で計算し解くことができる。しかしながら、方程式1は、空間周波数ドメイン内で処理することもできる。量は、空間周波数ドメインに変換され、畳み込みは生成物になる。そして、等価方程式は、
【数3】
であり、ここで、FT{}はフーリエ変換である。
【0035】
幾つかの場合、ライブラリに含まれるフィーチャ画像は、マスクのレイアウト幾何学的形状に依存する。
図5は、フィーチャ画像のライブラリを開発するためのフローチャートである。ライブラリ120は、共通フィーチャ画像のベースセットで始まることができ、共通フィーチャ画像は、その後、リソグラフィマスクのレイアウト幾何学的形状内にどのフィーチャ画像が存在するかに基づいて補足される。
図5において、マスクレイアウトが受信される510。レイアウト幾何学的形状は、ライブラリ内に既にあるフィーチャ画像と比較される520。ライブラリが不適切である場合、例えば、或るフィーチャがマスク内に現れるが、ライブラリ内に対応するフィーチャ画像がない場合、ライブラリは、さらなるフィーチャ画像によって補足することができる530。これらのフィーチャ画像についてのM3Dフィルタは、上記で説明したように計算することができる。
【0036】
空間ドメイン(上記方程式1)または空間周波数ドメイン(上記方程式2)のいずれかで計算を行うことに加えて、計算は、並列にまたは順次に実施することもできる。完全並列アプローチにおいて、全てのフィーチャ画像は、対応するM3Dフィルタで並列に畳み込まれる。結果は、その後、合計される。
【0037】
本明細書で説明するアプローチの種々の実施形態は、以下の特徴および利益を有することもできる。アプローチは、機械学習(ML)と非MLの両方のフレームワークのためと同様に、グラフィクス処理ユニット(GPU:graphics processing units)のために使いやすい実装態様とすることができる。上記で示したように、モデル形成は、フィーチャ画像とM3Dフィルタとの間の畳み込みに基づき、それは、一般的なMLフレームワーク(例えば、テンソルフロー(TensorFlow))およびGPUに適合する。したがって、モデルは、これらのフレームワーク内に直接実装されて、リソグラフィアプリケーション(例えば、リソグラフィモデル較正/微調整、マスクレイアウト最適化、照明源最適化等)のためにこれらのMLフレームワークによって提供される能力(例えば、最適化エンジン、ハードウェア加速等)を利用することができる。
【0038】
アプローチは、モデル作成、訓練、および較正にとってデータ効率的であるとすることもできる。従来のMLベースM3Dモデルは、データから学習することによってフィーチャ画像およびフィルタを生成するために機械に依存し、学習することは、非常に経験的であり、過剰適合を回避し予測安定性を保証するために、一般に、大量のデータを必要とする。従来モデルは、必要とされる量のデータを生成するために、計算コストが高くかつ時間がかかる。本明細書で説明するアプローチにおいて、フィーチャ画像およびM3Dフィルタは、より安定しておりかつ大幅に少ないデータを必要とする物理的洞察に基づいて生成される。
【0039】
本アプローチはランタイムを改善することができる。フィーチャ画像生成は、マスクポリゴンをグレースケール画像にラスター化することを含む。慣例的に、マスクポリゴンは、薄マスク透過関数にラスター化され、薄マスク透過関数は、通過帯域内で均一周波数応答を保証するためsinc(またはsinc様)ラスター化関数が薄マスク透過関数計算のために使用されなければならないため、計算効率が低い。本明細書で説明するアプローチにおいて、sinc(またはsinc様)関数よりコンパクトであり、したがって、計算効率がより高い特別なラスター化関数が設計されることができる。この新しいラスター化関数は、通過帯域において均一周波数応答を有する必要はない。M3Dフィルタは、修正されて(
図4Aのステップ470)、フィーチャ画像と修正済みM3Dフィルタとの間の畳み込みにおいて、必要とされる周波数応答を回復する。
【0040】
本アプローチは、ホプキンスとアッベの両方の結像モデルについて計算効率が高い可能性がある。1つのMFのみがホプキンス結像シミュレーションにおいて必要とされるが、複数のMF(入射電磁界角度につき1つ)がアッベ結像シミュレーションにおいて必要とされ、アッベ結像シミュレーションは、従来のアッベベースアプローチが使用される場合、MFが複数回計算されるため、ランタイムを大幅に増加させる。本明細書で説明するアプローチにおいて、フィーチャ画像は、入射電磁界角度に独立であるとすることができ、したがって、1回計算される必要があるだけである。M3Dフィルタの複数セットおよび畳み込み(入射電磁界角度について1つ)が使用されるが、フィルタは、事前計算されることができ、畳み込みは、FFT法を使用して効率的に行われることができる。
【0041】
計算効率およびランタイムのこれらの増加は、チップのマスクレイアウト全体を妥当な期間内でシミュレートすることを実現可能にすることができる。
【0042】
図6は、上記で説明したアプローチを他のアプローチと比較する結果を示す。これらの実験は、マスク上に異なるタイプのパターンを有するEUVマスクをシミュレートする。
図6は、3つの他のアプローチに対してこのアプローチを使用して予測した光学像におけるCD(critical dimension、臨界寸法)誤差の2乗平均平方根を示す。
図6において、クロスハッチングされたバーは本明細書で説明するアプローチであり、白色バーは他のアプローチである。4つのバーの左群は-60nmのデフォーカスにおいてであり、中央群は-20nmのデフォーカスにおいてであり、右群は+20nmのデフォーカスにおいてである。全ての場合で、本明細書で説明するアプローチは、より低いRMS(root-mean-square)誤差を有する。
【0043】
図7は、集積回路を表現する設計データおよび命令を変換し検証するための、集積回路等の製造品の設計、検証、および作製中に使用されるプロセス700の例のセットを示す。これらのプロセスのそれぞれは、複数のモジュールまたは演算として構築され有効にされることができる。用語「EDA(Electronic Design Automation)」は、用語「電子設計自動化」を意味する。これらのプロセスは、設計者によって供給される情報を有する製品アイデア710の作成で始まり、その情報は、EDAプロセス712のセットを使用する製造品を作成するために変換される。設計が終了すると、設計はテープアウトされ734、テープアウトされるのは、集積回路用のアートワーク(例えば、幾何学的パターン)が、マスクセットを製造する作製施設に送られるときであり、アートワークは、その後、集積回路を製造するために使用される。テープアウト後に、半導体ダイは、作製され736、パッケージングおよび組み立てプロセス738は、完成集積回路740を生産するために実施される。
【0044】
回路または電子構造についての仕様は、低レベルトランジスタ材料レイアウトから高レベル記述言語に及ぶことができる。高レベルの抽象化は、VHDL、Verilog、SystemVerilog、SystemC、MyHDL、またはOpenVera等のハードウェア記述言語(「HDL(hardware description language)」)を使用して、回路およびシステムを設計するために使用することができる。HDL記述は、論理レベルレジスタ転送レベル(「RTL(register transfer level)」)記述、ゲートレベル記述、レイアウトレベル記述、またはマスクレベル記述に変換することができる。より低く抽象的な記述であるより低い各抽象化レベルは、より有用な詳細、例えば、記述を含むモジュールについてのより多くの詳細を設計記述内に付加する。より低く抽象的な記述である抽象化のより低レベルは、コンピュータによって生成される、設計ライブラリから導出される、または別の設計自動化プロセスによって作成されることができる。より詳細な記述を指定するためのより低レベルの抽象化言語における仕様言語の例はSPICEであり、SPICEは、多くのアナログコンポーネントを有する回路の詳細記述のために使用される。抽象化の各レベルにおける記述は、その層の対応するツール(例えば、フォーマル検証ツール)によって使用するために有効にされる。設計プロセスは、
図7に示すシーケンスを使用することができる。記述されるプロセスは、EDA製品(またはツール)によって有効にされることができる。
【0045】
システム設計714中に、製造される集積回路の機能が指定される。設計は、電力消費、性能、面積(物理的および/またはコード行数)およびコストの減少等の所望の特性について最適化することができる。異なるタイプのモジュールまたはコンポーネントへの設計の分割は、この段階(stage)で起こりうる。
【0046】
論理設計および機能検証716中に、回路内のモジュールまたはコンポーネントは1つまたは複数の記述言語で指定され、仕様は機能正確度についてチェックされる。例えば、回路のコンポーネントは、設計される回路またはシステムの仕様の要件に一致する出力を生成することを検証されることができる。機能検証は、シミュレータおよびテストベンチ生成器、スタティックHDLチェッカ、およびフォーマル検証機等の他のプログラムを使用することができる。幾つかの実施形態において、「エミュレータ(emulator)」または「プロトタイピングシステム(prototyping system)」と呼ばれるコンポーネントの特別なシステムが、機能検証を加速するために使用される。
【0047】
テストのための合成および設計718中に、HDLコードはネットリストに変換される。幾つかの実施形態において、ネットリストはグラフ構造とすることができ、グラフ構造のエッジは回路のコンポーネントを示し、グラフ構造のノードはコンポーネントがどのように接続されているかを示す。HDLコードとネットリストは共に、階層的製造品であり、階層的製造品は、EDA製品によって使用されて、集積回路が、製造されると、指定された設計に従って働くことを検証することができる。ネットリストは、ターゲット半導体製造技術について最適化することができる。さらに、完成集積回路は、集積回路が仕様の要件を満たすことを検証するためにテストされることができる。
【0048】
ネットリスト検証720中に、ネットリストは、タイミング制約の順守およびHDLコードとの対応についてチェックされる。設計プラニング722中に、集積回路についての全体フロアプランが構築され、タイミングおよびトップレベルルーティングについて解析される。
【0049】
レイアウトおよび物理的実装724中に、物理的配置(トランジスタまたはキャパシタ等の回路コンポーネントの位置決め)およびルーティング(複数の導体による回路コンポーネントの接続)が行われ、特定の論理機能を有効にするためのライブラリからのセルの選択が実施されることができる。本明細書で使用するとき、用語「セル(cell)」は、ブール論理機能(例えば、AND、OR、NOT、XOR)または記憶機能(例えば、フリップフロップまたはラッチ)を提供する、トランジスタ、他のコンポーネント、および相互接続のセットを指定することができる。本明細書で使用するとき、回路「ブロック(block)」は、2つ以上のセルを指すことができる。セルおよび回路ブロックは共に、モジュールまたはコンポーネントと呼ばれることができ、両方の物理的構造としておよびシミュレーションにおいて有効にされる。サイズ等のパラメータは、選択されたセル(「標準的セル(standard cell)」に基づく)について指定され、EDA製品による使用のためにデータベースにおいてアクセス可能にされる。
【0050】
解析および抽出726中に、回路機能は、レイアウトレベルで検証され、それが、レイアウト設計の微調整を可能にする。物理的検証728中に、レイアウト設計は、DRC制約、電気的制約、リソグラフィ制約等の製造制約が正しいこと、および、回路部機能がHDL設計仕様に一致することを保証するためにチェックされる。解像度向上730中に、レイアウトの幾何学的形状は、回路設計が製造される方法を改善するために変換される。
【0051】
テープアウト中に、データが、リソグラフィマスクの生産のため(適切である場合、リソグラフィ向上が適用された後に)使用されるために作成される。マスクデータ準備732中に、「テープアウト」データは、完成集積回路を生産するために使用されるリソグラフィマスクを生産するために使用される。
【0052】
コンピュータシステム(
図8のコンピュータシステム800等)の記憶サブシステムは、本明細書で説明するEDA製品、および、ライブラリ用のならびにライブラリを使用する物理的および論理的設計用のセルの開発のために使用される製品の一部または全てによって使用されるプログラムおよびデータ構造を記憶するために使用することができる。
【0053】
図8は、コンピュータシステム800の例の機械を示し、その機械内で、本明細書で論じる方法のうちの任意の1つまたは複数の方法を機械に実施させるための命令のセットの実行が可能である。代替の実装態様において、機械は、LAN、イントラネット、エクストラネット、および/またはインターネット内で他の機械に接続(例えば、ネットワークで接続)することができる。機械は、クライアントサーバネットワーク環境内でサーバまたはクライアント機械の能力内で、ピア・トゥー・ピア(または分散)ネットワーク環境内でピア機械として、または、クラウドコンピューティング・インフラストラクチャまたは環境内で、サーバまたはクライアント機械として動作することができる。
【0054】
機械は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、サーバ、ネットワークルータ、スイッチまたはブリッジ、あるいは、その機械によってとられる行動を指定する命令のセットを(順次にまたはその他の方法で)実行することが可能な任意の機械とすることができる。さらに、単一機械が示されるが、用語「機械(machine)」は、本明細書で論じられる方法のうちの任意の1つまたは複数の方法を実施するために、命令のセット(または複数のセット)を個々にまたは連携して(jointly)実行する機械の任意の集合体を含むと考えられるものともする。
【0055】
例のコンピュータシステム800は、処理デバイス802、主メモリ804(例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、シンクロナスDRAM(SDRAM)等のダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックメモリ806(例えば、フラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)等))、および、バス830を介して互いに通信するデータ記憶デバイス818を含む。
【0056】
処理デバイス802は、マイクロプロセッサ、中央処理ユニット、または同様なもの等の1つまたは複数のプロセッサを示す。より詳細には、処理デバイスは、複雑命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、ベリーロング命令ワード(VLIW)マイクロプロセッサ、あるいは、他の命令セットを実装するプロセッサまたは命令セットの組み合わせを実装するプロセッサとすることができる。処理デバイス802は、1つまたは複数の専用処理デバイス、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ、または同様なものとすることもできる。処理デバイス802は、本明細書で説明する演算およびステップを実施するための命令826を実行するように構成することができる。
【0057】
コンピュータシステム800は、ネットワーク820を通じて通信するネットワークインターフェースデバイス808をさらに含むことができる。コンピュータシステム800は、ビデオディスプレイユニット810(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT))、英数字入力デバイス812(例えば、キーボード)、カーソル制御デバイス814(例えば、マウス)、グラフィクス処理ユニット822、信号発生デバイス816(例えば、スピーカ)、グラフィクス処理ユニット822、ビデオ処理ユニット828、およびオーディオ処理ユニット832を含むこともできる。
【0058】
データ記憶デバイス818は、命令826の1つまたは複数のセットあるいは本明細書で説明する方法または機能のうちの任意の1つまたは複数を具現化するソフトウェアが記憶される機械可読記憶媒体824(非一時的コンピュータ可読媒体としても知られる)を含むことができる。命令826は、機械可読記憶媒体を同様に構成するコンピュータシステム800、主メモリ804、および処理デバイス802による命令の実行中に、主メモリ804内におよび/または処理デバイス802内に、完全にまたは少なくとも部分的に存在することもできる。
【0059】
幾つかの実装態様において、命令826は、本開示に対応する機能を実装する命令を含む。機械可読記憶媒体824が、例の実装態様において単一媒体であると示されるが、用語「機械可読記憶媒体(machine-readable storage medium)」は、命令の1つまたは複数のセットを記憶する単一媒体または複数媒体(例えば、集中または分散データベースおよび/または関連するキャッシュおよびサーバ)を含むと考えられるべきである。用語「機械可読記憶媒体」は、機械による実行のための命令のセットを記憶またはエンコードすることが可能であり、本開示の方法のうちの任意の1つまたは複数の方法を機械および処理デバイス802に実施させる、任意の媒体を含むとも考えられるものとする。用語「機械可読記憶媒体」は、固体メモリ、光媒体、および磁気媒体を含むが、それに限定されないと考えられるものとする。
【0060】
先行する詳細な説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する演算のアルゴリズムおよびシンボリック表現によって提示されてきた。これらのアルゴリズム記述および表現は、データ処理分野の専門家の作業の趣旨を他の専門家に最も効率的に伝えるためにデータ処理分野の専門家によって使用される方法である。アルゴリズムは、所望の結果をもたらす演算のシーケンスとすることができる。演算は、物理量の物理的操作を必要とする演算である。そのような量は、記憶される、結合される、比較される、そしてその他の方法で操作されることが可能な電気または磁気信号の形態をとることができる。そのような信号は、ビット、値、要素、シンボル、キャラクタ、期間、数字、または同様なものとして参照されることができる。
【0061】
しかしながら、これらのおよび同様の用語の全てが、適切な物理量に関連付けられ、これらの量に適用された好都合なラベルに過ぎないことが留意されるべきである。別段に具体的に述べられない限り、本開示から明らかなように、説明全体を通して、特定の用語が、コンピュータシステムのレジスタおよびメモリ内の物理(電子)量として表されるデータを操作し、コンピュータシステムメモリまたレジスタあるいは他のそのような情報記憶デバイス内の物理量としても表される他のデータに変換する、コンピュータシステムまたは同様な電子コンピューティングデバイスの行動およびプロセスを指すことが認識される。
【0062】
本開示は、本明細書の演算を実施するための装置にも関する。この装置は、意図される目的のために特別に構築することができる、または、この装置は、コンピュータ内に記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に起動または再構成されるコンピュータを含むことができる。そのようなコンピュータプログラムは、限定はしないが、それぞれがコンピュータシステムバスに結合された、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、および磁気光ディスクを含む任意のタイプのディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気または光カード、あるいは、電子命令を記憶するのに適する任意のタイプの媒体等の、コンピュータ可読記憶媒体に記憶することができる。
【0063】
本明細書で提示されるアルゴリズムおよびディスプレイは、任意の特定のコンピュータまたは他の装置に本質的に関連しない。種々の他のシステムは、本明細書の教示に従うプログラムと共に使用することができる、または、方法を実施するためにより専用の装置を構築することが好都合であることがわかる場合がある。さらに、本開示は、任意の特定のプログラミング言語を参照して説明されない。種々のプログラミング言語が、本明細書で説明する本開示の教示を実装するために使用することができることが認識されるであろう。
【0064】
本開示は、命令が記憶されている機械可読媒体を含むことができるコンピュータプログラム製品またはソフトウェアとして提供することができ、命令は、本開示によるプロセスを実施するためコンピュータシステム(または他の電子デバイス)をプログラムするために使用することができる。機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)によって読み取り可能な形態で情報を記憶するための任意の機構を含む。例えば、機械可読(例えば、コンピュータ可読)媒体は、読み出し専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス等のような機械(例えば、コンピュータ)可読記憶媒体を含む。
【0065】
上記開示において、本開示の実装態様は、その特定の例の実装態様を参照して説明された。添付特許請求項に述べられる本開示の実装態様のより幅広い趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の修正が実装態様に対して行われることができることが明らかであることになる。本開示が単数の意味で幾つかの要素を参照する場合、2つ以上の要素が図に示されることができ、同様な要素は、同様の数字をラベル付けされる。本開示および図面は、それにより、制限的な意味ではなく、例証的な意味で考えられる。
【国際調査報告】