(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】バイオプロセスおよび医薬用途の流体を調製するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20231017BHJP
B01F 33/452 20220101ALI20231017BHJP
A61J 1/20 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61J1/10 330Z
B01F33/452
A61J1/20 314Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517861
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 US2021051374
(87)【国際公開番号】W WO2022066668
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522306435
【氏名又は名称】アルフィニティ ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALPHINITY USA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ガニエ,マイケル シー.
【テーマコード(参考)】
4C047
4G036
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047BB13
4C047BB14
4C047BB17
4C047BB20
4C047BB22
4C047CC15
4G036AC22
(57)【要約】
バイオプロセスや医薬用途の流体を調製するためのシステムは、1または複数の可撓性バッグを使用し、その中に、様々な緩衝液/培地/生理学的流体成分の固体錠剤が予め充填される。例えば、塩、酸、塩基、防腐剤、タンパク質、アミノ酸、成長因子、小分子、薬剤などが含まれる。可撓性バッグは、可撓性バッグの内部に水を加えるために使用されるとともに、可撓性バッグから流体を除去するために使用される1または複数の密封された開口部または密封可能な開口部を含む。また、1または複数の密封された開口部は、可撓性バッグから流体(例えば、緩衝液)を除去するための出口としても使用することができる。可撓性バッグは、可撓性バッグの保管および/または搬送を助けるために、収縮状態で保管することができる。複数の可撓性バッグは、マニホールドに結合することができ、マニホールドは、可撓性バッグを選択的に充填および排出するためのバルブを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオプロセスおよび医薬用途の流体を生成するためのデバイスであって、
内部ボリュームを規定し、かつ少なくとも1の入口および出口を有する可撓性バッグを備え、前記可撓性バッグが、前記内部ボリュームに複数の錠剤を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記複数の錠剤が、異なる組成の錠剤を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記複数の錠剤が、塩、酸または塩基のうちの1または複数を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記複数の錠剤が、細胞の増殖培地または維持培地を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記可撓性バッグが、前記可撓性バッグの表面に位置する充填マークを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記可撓性バッグが、前記内部ボリュームを滅菌または無菌にする滅菌剤に曝されたものであることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記可撓性バッグが、1または複数の密封された開口部または密封可能な開口部を有することを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記可撓性バッグが、真空密封されていることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記可撓性バッグが、前記内部ボリュームに磁気攪拌機を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のデバイスを使用する方法であって、
前記可撓性バッグを予め設定された量の水で満たすステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
バイオプロセスおよび医薬用途の流体を生成するためのシステムであって、
可撓性チューブのセグメントを取り囲む第1および第2の半部を有するマニホールドであって、前記可撓性チューブのセグメントが、マニホールドを貫通して延びる主ラインと、この主ラインに結合された複数の分岐ラインとを有する、マニホールドと、
前記複数の分岐ラインに固定された複数の可撓性バッグであって、各可撓性バッグが、内部ボリュームを含み、かつ少なくとも1の入口および出口を有し、さらに複数の可撓性バッグの各々の内部ボリュームに複数の錠剤を含む、複数の可撓性バッグと、
前記マニホールド上に配置された複数のピンチバルブであって、1または複数の位置に沿って前記主ラインを挟み込むとともに、前記複数の可撓性バッグに固定された複数の分岐ラインを挟み込むように構成された複数のピンチバルブと
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記可撓性バッグの少なくとも一部における複数の錠剤が、異なる組成の錠剤を含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記可撓性バッグの少なくとも一部における複数の錠剤が、塩、酸または塩基のうちの1または複数を含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記可撓性バッグの少なくとも一部における複数の錠剤が、細胞の増殖培地または維持培地を含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記可撓性バッグが、それぞれの可撓性バッグの表面に位置する充填マークをそれぞれ含むことを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記可撓性バッグが、前記可撓性バッグの内部ボリュームを滅菌または無菌にする滅菌剤に曝されたものであることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記可撓性バッグの各々が、1または複数の密封された開口部または密封可能な開口部を有することを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記可撓性バッグが、真空密封されていることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項11に記載のシステムを使用する方法において、
複数のバルブのうちの1または複数を作動させて、主ラインから少なくとも1の分岐ラインを通って1または複数の可撓性バッグ内に入る入口流路を形成するステップと、
予め設定された量の水を、前記主ラインを経由して前記1または複数の可撓性バッグ内に流すステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムを使用する方法において、
前記1または複数の可撓性バッグを前記マニホールドから取り外すステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムを使用する方法において、
前記入口流路に沿って前記1または複数の可撓性バッグ内に追加の水を流すことによって、前記1または複数の可撓性バッグの中身を出すと同時に希釈し、前記主ラインに再接続する出口流路を介して前記1または複数の可撓性バッグの内容物を取り除くステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
バイオプロセスおよび医薬用途の流体を生成する方法であって、
可撓性バッグを選択するステップであって、前記可撓性バッグが、内部ボリュームを規定し、かつ少なくとも1の入口および出口を有し、前記可撓性バッグが、前記内部ボリュームに複数の錠剤を含み、選択された可撓性バッグが、流体内に含まれる溶質の特定の濃度に対応する、ステップと、
前記可撓性バッグに既知の量の水を入れるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記錠剤が、緩衝溶質錠剤を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、
前記錠剤が、細胞の増殖培地または維持培地を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法において、
既知の量の水で満たされた可撓性バッグの内容物をさらに希釈するステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、概して、バイオプロセスおよび医薬用途のための流体を調製するためのシステムおよび方法に関する。特に、この技術分野は、固形錠剤などが予め装填された可撓性コンテナ(例えば、可撓性バッグ)の使用に関する。この可撓性コンテナに水を入れて固形錠剤を溶解させ、既知の濃度を有する溶液を作成する。所望の濃度を有する大量の液体を容易に作成することができる。
【0002】
関連出願
本出願は、2020年9月22日に出願された米国仮特許出願第63/081,737号の優先権を主張するものであり、その内容は引用により本明細書に援用されるものとする。優先権は、米国特許法第119条および他の適用可能な法令に従って主張される。
【背景技術】
【0003】
緩衝剤およびこれを含む溶液は、多くの用途で必要とされている。例えば、緩衝液は、多くの医薬品およびバイオ医薬品の操作で使用されている。緩衝液は、薬物および他の医薬品の調製に使用されている。例えば、緩衝液は、様々な洗浄、捕捉および溶出操作で使用されることがある。また、緩衝液は、増殖または維持培地の一部として、バイオプロセス操作で使用される細胞や他の生物を維持するためにも使用されている。また、生理学的溶液も、しばしば緩衝化されるか、または緩衝化された溶液を含む。乳酸リンゲル液は、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムを水に混合した生理食塩液としてよく知られている。低血圧や低血液量の人の電解質の水分補給に使われる。
【0004】
緩衝種を含む緩衝液および他の溶液は、しばしば大量に必要とされる。例えば、バイオ医薬品用途では、実行される様々な処理操作中に、しばしば様々な緩衝液が大量に必要とされることがある。従来、緩衝液は濃縮液として手作業で調製され、必要に応じて希釈される。先ず、濃縮された緩衝液は、手作業で作る必要があり、それには特殊な器具と知識を持つ個人(例えば、濃縮緩衝液の形成に必要な天秤や実験器具の使用)が必要であるが、それらを常に利用できるとは限らない。例えば、リソースが限られている環境では、そのような原液の作成に使用できる実験器具や訓練を受けた作業員が存在しないことが多い。さらに、濃縮緩衝液は手作業で作られるため、その過程で人的ミスが生じる可能性がある。最後に、緩衝液や他の生理学的溶液の調製には、大量の緩衝剤や原材料を保管する必要がある。さらに、場合によっては、最終的な緩衝液または他の生理学的溶液(例えば、リソースが限られた地域で必要とされる生理学的溶液)は、所望の濃度に後で希釈することができる自らの濃縮溶液を確実に生成するための十分なローカルリソースを持たない遠隔地において必要とされる。
【0005】
様々な緩衝液の生成を自動化する試みがなされている。例えば、様々な異なる緩衝液を調製するために、濃縮された少量の単一成分の原液から緩衝液が調製されるインラインコンディショニングを使用して、緩衝液が調製されている。その一例が、GE Healthcare社のインラインバッファコンディショニングシステムである。このシステムは、酸、塩基および塩の原液を注射用の水で希釈して操作する。自動制御システムは、様々なフィードバックセンサを使用して、所望の最終緩衝剤濃度を達成するために原液の流量を調整する。GE社のインラインバッファコンディションシステムで使用される自動制御システムは、最終的に望まれる緩衝液が正しい組成であることを保証するために、フィードバックモニタリングに使用される多数のセンサ(例えば、pH、導電率、流量センサ)を必要とする。残念ながら、それらセンサは誤動作したり、読取値が正しくない可能性があり、それは緩衝液が意図した組成にならないことを意味する。さらに、インラインバッファの制御は、混合の問題に悩まされており、それにより仕様外の生成物をもたらす可能性がある。さらに、制御システムは、複雑で高価なハードウェアと、システム全体を制御するための専用の制御ソフトウェアを必要とする高価なものである。そのため、バイオプロセスや医薬用途の流体を調製するための代替的なシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、バイオプロセスおよび医薬用途の流体を調製するためのシステムが、1または複数の可撓性コンテナ(例えば、バッグ)を使用し、その中に、様々な緩衝剤/培地/生理学的流体成分の固体錠剤が予め装填される。それらには、塩、酸および塩基、防腐剤、タンパク質、アミノ酸、成長因子、小分子、薬剤、または固体で保存可能な他の成分が含まれる場合がある。可撓性コンテナは、例えばガンマ線によって滅菌される。可撓性コンテナは、可撓性コンテナの内部に水を加えるのに加えて、可撓性コンテナから流体を除去するために使用される1または複数の密封された開口部または密封可能な開口部を含む。また、1または複数の密封された開口部または密封可能な開口部は、可撓性コンテナから流体を除去するための出口として使用されることもある。可撓性コンテナは、可撓性コンテナの保管および/または搬送を補助するために、収縮状態で保管することができる。
【0007】
可撓性コンテナは、可撓性コンテナに加えるべきレベルまたは水を示す充填マーク、マークまたは他の表示(またはそのような複数のライン、マークまたは表示)を有することができる。充填マーク、マークまたは他の表示は、充填マークに達するまで可撓性コンテナを水で満たすだけでよいため、使用を容易にする。他の実施形態では、充填マークを省略することができ、可撓性コンテナの実質的に全容積を流体で充填することができる。何れの実施形態においても、可撓性コンテナは、可撓性コンテナを水で満たすために使用される規定された充填容積を有する。各可撓性コンテナは、既知の量の固体緩衝剤成分(または他の流体、例えば、増殖培地、生理学的流体などのための成分)を含むため、得られる溶液の濃度を簡単に求めることができる。粉末または他の添加物は、すでに可撓性コンテナ内に存在するため、それらを計量または測定する必要はない。当然のことながら、可撓性コンテナに収容されている錠剤は溶解する必要がある。錠剤は、時間の経過とともに溶解して溶液になることがある。攪拌または他の混合手段も、錠剤の溶解を助けるために使用され得る。例えば、可撓性コンテナは、錠剤の溶解をさらに助けるために使用することができる磁気攪拌機(例えば、磁気攪拌棒)などを内部に含むこともできる。
【0008】
可撓性コンテナには、1または複数の錠剤が予め装填される。錠剤は、好ましくは、可撓性コンテナの形成中または形成直後に、可撓性コンテナの内部に装填される。一実施形態では、すべての錠剤が同じタイプである。別の実施形態では、錠剤が複数の異なるタイプを含む。好ましい一実施形態では、最終的な緩衝液または他の溶液を形成するために必要とされる特定のレシピまたは成分は、単に可撓性コンテナ内に配置される錠剤の数および/またはタイプを知るだけでよい。例えば、ある緩衝液は、タイプAの4つの錠剤、タイプBの2つの錠剤、およびタイプCの5つの錠剤を必要とするレシピを有することができる。これにより、可撓性コンテナに必要な錠剤を事前に容易に入れておくことができ、それら錠剤により、溶解すると最終的な緩衝液または他の溶液を得ることができる。この場合、異なるタイプの錠剤を特定の数だけ加えるだけでよい。このプロセスは、手作業で行うことも、自動化することもできる。錠剤計数機は、よく知られており、製造プロセス中または後に可撓性コンテナ内に錠剤を自動的に分配するために使用することができる。
【0009】
可撓性コンテナに必要な錠剤を装填した後、可撓性コンテナおよび内容物を(まだ密封されていない場合に)密封することができる。その後、可撓性コンテナおよび内容物は、ガンマ線照射(または可撓性コンテナを滅菌するための他の照射プロセス)を受けることができる。その後、可撓性コンテナは、使用のために所望の場所に出荷または搬送することができる。ユーザは、可撓性コンテナを必要な量の水で満たすことができる。錠剤は溶解して最終的な緩衝液または他の溶液を生成する。可撓性コンテナは、いくつかの実施形態では、可撓性コンテナに形成された対応する開口を通るフックなどを使用して保持することができる。可撓性コンテナは、トロリー、カートなどに収容されるか、またはそれらから吊り下げるか、または自立することができる。可撓性コンテナの容積は変えることが可能であるが、典型的には、100mLより大きく、最大約2000Lであり、より典型的には、約2L~500Lのサイズ範囲である。
【0010】
一実施形態では、上述した複数の可撓性コンテナが、可撓性コンテナへの水の選択的な流れを可能にするマニホールドとともに使用される。錠剤からの溶解種を含む流体の流れは、可撓性コンテナから流出させることもできる。例えば、一実施形態では、複数の可撓性コンテナが導管またはチューブを介してマニホールドに流体接続され、マニホールドの各分岐がバルブ(例えば、ピンチバルブ)を有し、それにより、水が可撓性コンテナ内に流入するか否か、および溶解した錠剤の内容物を含む緩衝液が可撓性バッグから除去されるか否かを制御することができる(すなわち、可撓性バッグあたり二つのピンチバルブがあり、一つが可撓性コンテナ内に入る流体用、もう一つが可撓性コンテナから除去される流体用となる)。他の実施形態では、マニホールドが、様々な可撓性コンテナに水を供給するためにのみ使用され、可撓性バッグの別の出口が、(例えば、重力送りまたはそれに接続されたポンプを使用して)緩衝液を引き出すために使用される。マニホールドに接続される複数の可撓性コンテナは、特定の望ましい緩衝液に合わせた異なる錠剤組成を有することができる。この点に関して、共通の水源に結合された単一のマニホールドを使用して、適切な可撓性コンテナを選択的に充填することにより、複数の異なるタイプの緩衝液を生成することができる。当然のことながら、複数の可撓性コンテナは、より多量の緩衝液を調製することができるように、同じ錠剤レシピであってもよい。
【0011】
典型的には、可撓性コンテナ内で形成される最終的な緩衝液は、使用前に水でさらに希釈される。例えば、可撓性コンテナ内で作り出される緩衝液は、約5~10倍希釈で濃縮され得る。この緩衝液は、その後、さらに希釈されて(例えば、5倍希釈)、1倍~2倍の範囲の最終緩衝希釈液に生成され得る。一実施形態では、この更なる希釈は、別の容器またはコンテナで行われる。しかしながら、可撓性コンテナがマニホールドに結合されている間に、この更なる希釈を達成することができる。例えば、5~10倍の緩衝液を含む可撓性コンテナに追加の水を加えて、望ましい約1~2倍希釈またはその付近でマニホールドを出る最終緩衝液を生成することができる。
【0012】
現在のシステムの重要な利点は、濃度緩衝液の作成において人的ミスの可能性が回避されることである。後で溶解させる試薬を計量するプロセスは製造現場で既に行われているため、現地の担当者は、それを行う必要がない。これは、実験設備および/または訓練されたスタッフが存在しないような、リソースが限られた場所で特に有利になる。さらに、濃縮された緩衝液を必要に応じて必要なだけ作ることができるため、事前に濃縮された緩衝液を大量に保管する必要がない。これにより、保管および搬送のコストを削減することができる。また、(故障または誤った結果をもたらして緩衝液が所望の濃度またはプロファイルを有しない結果となる可能性のある)様々なフィードバックセンサに依存するインライン調整を行うために使用される複雑で高価な機器も必要ない。
【0013】
一実施形態では、バイオプロセスおよび医薬用途の流体を生成するためのデバイスが可撓性バッグを含み、この可撓性バッグが内部ボリュームを規定し、かつ少なくとも1の入口および出口を有し、この可撓性バッグが、内部ボリュームに複数の錠剤を含む。可撓性バッグを使用するために、可撓性バッグは、予め設定された量の水で満たされる。予め設定された量の水は、可撓性バッグ上に位置する充填マークによって判定することができる。
【0014】
別の実施形態では、バイオプロセスおよび医薬用途の流体を生成するためのシステムが、可撓性チューブのセグメントを取り囲む第1の半部および第2の半部を有するマニホールドを含み、可撓性チューブのセグメントが、マニホールドを通って延びる主ラインと、主ラインに結合された複数の分岐ラインとを有する。複数の可撓性バッグは複数の分岐ラインに固定され、各可撓性バッグは、内部ボリュームを含み、かつ少なくとも1の入口および出口を有し、さらに複数の各可撓性バッグの内部ボリュームに複数の錠剤を含む。複数のピンチバルブが、マニホールド上に配置され、1または複数の場所に沿って主ラインを挟み込み、複数の可撓性バッグに固定された複数の分岐ラインを挟み込むように構成されている。システムを使用するには、複数のバルブのうちの1または複数を作動させて、主ラインから少なくとも1の分岐ラインを通って1または複数の可撓性バッグ内に入る入口流路を形成する。次いで、予め設定された量の水を、主ラインを介して1または複数の可撓性バッグ内に(例えば、水位が充填マークに達するまで)流入させる。
【0015】
別の実施形態では、バイオプロセスおよび医薬用途の流体を生成するための方法が、可撓性バッグを選択する操作を含み、可撓性バッグが、内部ボリュームを規定し、かつ少なくとも1の入口および出口を有し、可撓性バッグが、内部ボリュームに複数の錠剤を含み、選択される可撓性バッグが、流体内に含まれる溶質の特定の濃度に対応する。可撓性バッグは、既知の量の水で満たされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る可撓性バッグの態様の可撓性コンテナを示している。また、タイプ#1の3つの錠剤、タイプ#2の4つの錠剤、およびタイプ#3の1つの錠剤を含む緩衝液Aのレシピも示されている。錠剤は、可撓性バッグの内部に示されている。可撓性バッグは、充填マークを含む。
【
図2】
図2は、折り畳まれた状態の
図1の可撓性バッグを示している。折り畳まれたバッグは、最小限のスペースで済み、保管および輸送に有用である。
【
図3】
図3は、複数の可撓性バッグへの流入および流出を制御するために使用される、一実施形態に係るマニホールドを示している。個々の可撓性バッグに流体を装填し、かつ/または可撓性バッグ内に存在する錠剤からの溶解種を含む流体を除去することができるように、バルブ閉鎖点が示されている。チューブまたは導管の主セグメントまたは中央セグメントは、マニホールドを通って延び、流体を可撓性バッグにまたは可撓性バッグから移送するために使用される。
【
図4】
図4は、
図3に示すタイプのマニホールドの側面図を示している。しかしながら、この実施形態では、マニホールドが、分岐ラインの片側に結合された4つの可撓性バッグを有する。
【
図5】
図5Aは、可撓性バッグに形成することができるポートの一例を示している。
図5Bは、可撓性バッグに形成することができるポートの別の例を示している。
【
図6】
図6は、所望の緩衝液濃度を作り出す際に使用するために、本明細書に開示のタイプの可撓性バッグを選択するために使用される操作のシーケンスを示している。
【
図7】
図7は、可撓性バッグ内の流体を排出および/または再循環させるために使用することができるポンプおよび/または混合デバイスに固定された可撓性バッグを示している。錠剤(例えば、緩衝錠剤)を中に含む一回使用の可撓性バッグである。水が可撓性バッグに加えられ、そこでそれらが溶解して、濃縮された緩衝液が形成される。流体は、混合を助けるために可撓性バッグ内に再循環させたり、更なる希釈または処理のためにポンプで排出したりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る可撓性バッグ10の形態の可撓性コンテナを示している。可撓性バッグ10は、典型的には、ポリマーまたは樹脂材料から作られ、任意の数の形状およびサイズを有することができる。可撓性バッグ10は、複数の層または単一の層から形成され得る。可撓性バッグ10は、サイズに応じて、トロリー、ドリー、クレードル、カート、ホルダ、または流体で満たされたときに可撓性バッグ10を保持するための他の支持コンテナで運ぶことができる。可撓性バッグ10は、内部ボリュームを規定し、典型的には、1または複数の別個の表面を有する。例えば、可撓性バッグ10は、典型的には、底面12、上面14、および1または複数の側面16を有する(例えば、様々な形状が想定されるが、
図1には4つの側面が示されている)。
【0018】
一実施形態では、可撓性バッグ10は、1または複数のポリマーまたは樹脂材料から作られる。例えば、クラスVI規格に準拠した医療グレードの樹脂を使用することができる。追加の例として、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE))または超低密度ポリエチレン(ULDPE)またはポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EFA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)なども考えられる。いくつかの実施形態では、可撓性バッグ10を複数の層から形成することができる。例えば、流体と接触する内層は、LDPEから作ることができる。ポリ酢酸ビニル(PVA)または可撓性ポリ塩化ビニル(PVC)の第2の層は、中間層として使用することができる。LDPEまたはPETの外層は、機械的強度を提供することができる。本明細書で説明する実施形態は、可撓性バッグ10に使用される任意の数の異なる構造タイプ、材料および層とともに使用され得ることを理解されたい。
【0019】
可撓性バッグ10は、典型的には100mLより大きく、最大で約2000Lのサイズの内部ボリュームを有する。しかしながら、より典型的には、可撓性バッグ10の容積サイズは約2L~500Lである。可撓性バッグ10は、流体が可撓性バッグ10内に流入/流出するためのアクセスを提供する1または複数のポート18または開口部を含む。例えば、
図1は、2つのそのようなポート18a、18bを示しており、一方のポート18aが、可撓性バッグ10の内部に供給される水に(すなわち、入口として)使用され、第2のポート18bが、可撓性バッグ10から流体溶液を取り除くために(すなわち、出口として)使用される(別の実施形態では単一のポート18が入口および出口として使用されるものであってもよい)。使用され得る水は、典型的には、注射用水(WFI)、高度精製水(HPW)、または精製水(PW)を含む。それらの水のタイプは、典型的には、医薬品およびバイオプロセス用途で使用される。水は、ポンプなどを用いて可撓性バッグ10内に送り込むことができ、または重力で供給することができる。ポート18は、可撓性バッグ10との間で流体を移送するために使用される導管またはチューブに結合され得る。ポート18は、可撓性バッグ10に一体化され、
図5Aおよび
図5Bに示すポートのように、チューブまたは導管(例えば、分岐ライン42)を可撓性バッグ10に容易に接続することを可能にするコネクタ、フランジまたは端部を含むことができる。例えば、ニップル、バーブ(
図5A)、または当業者に公知の無菌コネクタを有するポート18(例えば、
図5Bに示すトリクランプ(TC))を使用することができる。
【0020】
図1に見られるように、可撓性バッグ10の内部は、1または複数の錠剤22を含む。錠剤22という用語は、塩、酸および塩基、防腐剤、タンパク質、アミノ酸、成長因子、小分子、薬剤、または固体若しくは半固体の形態で保存可能な他の分子および化合物に限定されるものではないが、そのような成分を含む別個の固体または半固体(例えば、ゲル)材料を包含することを意味する。錠剤22は、従来の錠剤に類似していても、類似していなくてもよい。固体成分は、結合剤(例えば、デンプンやガムのような天然ポリマー、合成ポリマー、または糖類)および/または保存料のような賦形剤と組み合わせて、錠剤22を形成することができる。そのような賦形剤は、医薬用の錠剤の形成においてよく知られている。錠剤22は、典型的には水である溶媒に溶解する1または複数の溶質を含む。錠剤22はそれぞれ、既知の量(例えば、質量または体積)の物質を中に含む。異なる「タイプ」の錠剤22は、所望の正しい最終濃度を達成するために、異なるサイズを有することができる。錠剤22は、使用前に可撓性バッグ10内に予め装填される。すなわち、錠剤22は、製造プロセス中に、または可撓性バッグ10が形成された後に、可撓性バッグ10の内部に配置される。可撓性バッグ10に収容される錠剤22の数および性質は、可撓性バッグ10内で形成されることが望まれる最終溶液の組成に応じて変化する。例えば、錠剤22は、緩衝剤成分、すなわち、弱い共役酸塩基対を含むことができる。望まれる緩衝剤の選択は、可撓性バッグ10内に配置される錠剤22のタイプおよび数のレシピと関連付けられる。異なる成分から作られた異なる錠剤22は、異なる形状および/または色を有することができる。これは、例えば、錠剤22が可撓性バッグ10内に手作業で加えられる場合に有利であり得る。
【0021】
図1の例では、エンドユーザが緩衝液「A」を作りたいと考えている。緩衝液Aは、錠剤タイプ#1の3つの錠剤22、錠剤タイプ#2の4つの錠剤22、および錠剤タイプ#3の1つの錠剤22を含むレシピ(
図1の表で見られる)と関連付けられている。各錠剤22は、異なる成分を含むことができる。例えば、錠剤タイプ#1は、塩に関連する化合物を含むことができ、錠剤タイプ#2は、酸または塩基を形成するために使用される化合物に関連している。重要なことは、必要な錠剤22のすべてが製造プロセスの一部として既に可撓性バッグ10の内部に予め装填されているため、エンドユーザは可撓性バッグ10を作るために使用される特定のレシピを知る必要はなく、気にする必要さえないことである。エンドユーザは、緩衝剤タイプ「A」に関連する可撓性バッグ10を選択するだけで済む。これは、ユーザが緩衝液Aを作るために必要な可撓性バッグ10を容易に識別することができるように、ラベリング、マーキング、カラーコード、バーコード、QRコードなどを用いて可撓性バッグ10自体にマークが付けられる。
【0022】
可撓性バッグ10は、生理学的溶液だけでなく、バイオ医薬品プロセスで使用される任意の数の異なるタイプの溶液を作成するために使用することができる。例としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン(トリス)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、pH調整剤(例えば、HClおよびNaOH)などが挙げられる。例示的なリン酸塩緩衝剤としては、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)が含まれる。酢酸塩の例としては、エタン酸、酢酸、酢酸ナトリウムが挙げられる。クエン酸塩の例としては、クエン酸が挙げられる。また、錠剤22は、生細胞(例えば、真核細胞、細菌または酵母)を支持するために用いられる増殖または維持培地にも使用され得る。
【0023】
図1をさらに参照すると、可撓性バッグ10は、可撓性バッグ10に加えられるべきレベルまたは水を示すマーキング、ラインまたは他の指標を含むことができる充填マーク20を有することができる。充填マーク20は、可撓性バッグ10の側面16の1つまたはすべてに配置され得る。充填マーク20は、充填マーク20に達するまで可撓性バッグ10を水で満たすだけでよいため、使用を容易とする。他の実施形態では、充填マーク20を省略することができ、可撓性バッグ10の実質的に全容積を流体で満たすことができる。何れの実施形態においても、可撓性バッグ10は、可撓性バッグ10を水で満たすために使用される予め設定された充填容積を有する。いくつかの実施形態では、可撓性バッグ10が、水を加えたら可撓性バッグ10を後の使用のために保管することができるように、密封可能なポート18を含むことができる。密封可能なポート18は、キャップ、ピンチライン、自己密封バルブ、手動バルブ、膜、プラグなどを含むことができる。可撓性バッグ10に配置される1または複数の密封ポート18は、可撓性バッグ10から流体を除去するための排出口として使用することもできる。ポート18は、可撓性バッグ10の異なる面に配置されるものであってもよい。
図1は、上面14に位置する開口部またはポート18a、18bを示しているが、それらポート18を他の面に設けることも可能であることが理解されよう。例えば、重力排出のために、出口ポート18を可撓性バッグ10の底面12に配置することもできる。
【0024】
図2は、折り畳まれた状態の可撓性バッグ10を示している。折り畳み状態では、可撓性バッグ10が占める体積が小さくなるため、折り畳み状態は可撓性バッグ10の保管および運搬に役立つ。いくつかの実施形態では、可撓性バッグ10の内部に真空を適用して、可撓性バッグ10の内部ボリュームまたは空間内に含まれる空気または他の気体を実質的に除去することができる。錠剤22は、
図1および
図2に示すように、可撓性バッグ10の内部に予め装填されている。このプロセスは、手作業で行うことも、自動化することもできる。錠剤計数機は周知であり、製造プロセス中または製造プロセス後に可撓性バッグ10の内部に錠剤22を自動的に分配するために使用することができる。錠剤計数機は、コンピュータ制御され、製造された可撓性バッグ10に関連する特定の流体タイプ(例えば、緩衝液)のレシピを含むことができる。
【0025】
例えば、
図1および
図2の例では、可撓性バッグ10に、錠剤タイプ#1の3つの錠剤22、錠剤タイプ#2の4つの錠剤22、および錠剤タイプ#3の1つの錠剤22が自動的に供給される。任意選択的には、製造プロセス中に、可撓性バッグ10の内部に磁気攪拌機(例えば、磁気攪拌棒など)を追加することができる。例えば、可撓性バッグ10の内部に位置する攪拌棒を回転させて、錠剤22の溶解を助けることができる磁気攪拌機の上に、可撓性バッグ10を配置することができる。
【0026】
可撓性バッグ10に必要な錠剤22を装填した後、可撓性バッグ10および内容物を(まだ密封されていない場合に)密封することができる。その後、一実施形態では、可撓性バッグ10および内容物が、ガンマ線照射(または可撓性バッグ10を滅菌するための別の照射プロセス)を受けることができる。その後、可撓性バッグ10を、使用のために所望の場所に出荷または搬送することができる。その後、ユーザは、可撓性バッグ10に必要な量の水を(例えば、充填マーク20まで)充填することができる。錠剤22は溶解して、最終的な所望の溶液(例えば、緩衝液、生理学的溶液、細胞用の培地溶液など)を作り出すことができる。いくつかの実施形態では、可撓性バッグ10に形成された対応する開口を通り抜けるフックなどを用いて、可撓性バッグ10を保持することができる。また、可撓性バッグ10は、トロリー、カートなどに収容または吊り下げることができ、または自立することができる。可撓性バッグ10の容積は多様であるが、典型的には100mLより大きく、最大で約2000Lであり、より典型的には、約2L~500Lのサイズ範囲である。
【0027】
図3および
図4は、複数の可撓性バッグ10に対する流入および流出を調節するために使用されるマニホールド30を示している。マニホールド30は、ハウジング32の2つの半部32a、32bの間に介在する可撓性チューブまたは導管36を取り囲む剛性の二部分ハウジング32(
図4に最もよく見える)を含む。ハウジング32は、金属または硬質ポリマーから作ることができる。可撓性チューブまたは導管36は、非強化シリコーンまたは他のポリマー材料、例えば、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ゴム(TPR)などを含むことができる。マニホールド半部32a、32bは、対向面を含み、それら対向面には、マニホールド半部32a、32bが1または複数の留め具38を介して互いに固定されたときに可撓性チューブまたは導管36を収容してそれを円形に取り囲む半環状凹部が形成されている。留め具38は、ラッチ、クリップ、ボルト、ネジなどを含むことができる。これに関して、二部分マニホールド30は、可撓性チューブまたは導管36の周りにピッタリと嵌る。チューブまたは導管36は、一方の端部がマニホールド30を通って、反対の端部から出る主ライン40またはセグメントを含み、主ライン40から延びる多数の分岐ライン42(例えば、本明細書に記載の分岐ライン42a、42b)を含む。水は、
図3の矢印A(および
図4については矢印B)の方向に主ライン40を通って流れる。
【0028】
図3に最もよく見られるように、2つの分岐ライン42a、42bは、別個の各可撓性バッグ10に流体的に結合される。第1の分岐ライン42aは、主ライン40からの水で可撓性バッグ10を満たすために使用される。第2の分岐ライン42bは、可撓性バッグ10から流体(例えば、緩衝液)を引き出すために使用され、この実施形態では、引き出した流体が主ライン40に入る。この実施形態では、第2の分岐ライン42bが、可撓性バッグ10から流体を除去するために使用される。他の実施形態では、第2の分岐ライン42bを完全に省略することができる。例えば、可撓性バッグ10に接続された別のポート18を用いて、可撓性バッグ10から流体を取り除くこともできる。例えば、可撓性バッグ10の底面12の開口部を使用して、(重力供給を介して、あるいは付属のポンプを使用して)可撓性バッグ10から流体を取り出すこともできる。
図3および
図4の実施形態では、可撓性バッグ10に出入りする流体の流れを選択的に制御するために、バルブ50が使用される。バルブ50は、分岐ライン42a、42bに配置され、主ライン40に沿って配置される。主ライン40に沿ったバルブ50は、特定の可撓性バッグ10への/からの流れを分離することができるように、異なる可撓性バッグ10用の分岐ライン42a、42bの間に配置される。
図3は、個別の各可撓性バッグ10(または複数の可撓性バッグ10への/からの流れ)を分離するために使用され得るバルブ50のための様々なバルブ閉鎖点52を示している。すなわち、バルブ50は、マニホールド30のチューブまたは導管36に結合された様々な可撓性バッグ10との間に異なる流路を作り出すために作動される。
【0029】
好ましい一実施形態では、マニホールド30上に位置するピンチバルブ50が、バルブ閉鎖点52で可撓性チューブまたは導管36を選択的に挟み込むために使用される。ピンチバルブ50は、自動制御バルブ50(例えば、流体圧バルブ)を含むことができ、または、ボンネットなどの回転によって制御される手動操作ピンチバルブ50を含むことができる。ピンチバルブ50は、作動時に可撓性チューブまたは導管36を挟み、1または複数のバルブ閉鎖点52で流体の流れを止めるために軸方向に延びるステムを含む。ピンチバルブ50のステムを反対方向に動かすことにより、可撓性チューブまたは導管36が開いて、流体が流れるようになる。ピンチバルブ50は、主ライン40または分岐ライン42に配置することができる。
【0030】
図3の実施形態では、10個の可撓性バッグ10がマニホールド30の分岐ライン42に流体結合されているが、より少ないまたはより多い可撓性バッグ10が存在し得ることを理解されたい。一実施形態では、マニホールド30に連結される可撓性バッグ10が、異なる緩衝液のために設計され得る。例えば、この特定の実施形態では、単一のマニホールド30(各可撓性バッグ10が異なる錠剤22の組合せを内部に有する)を使用して、10種類の緩衝液を生成することができる。代替的には、可撓性バッグ10の一部またはすべてを使用して、同じ緩衝液を作成するようにしてもよい。例えば、マニホールド30は、同じ緩衝剤を含む複数の可撓性バッグ10を作るために使用されるようにしてもよい。当然のことながら、マニホールド30に結合される可撓性バッグ10のタイプに応じて様々な組合せが可能であることを理解されたい。マニホールド30に流体結合される様々な可撓性バッグ10は、いくつかの実施形態では、可撓性バッグ10が充填されるとマニホールド30から取り外すことができるように、無菌コネクタを介して接続することができる。それらは、トリクランプ(TC)コネクタを含むことができるが、雄/雌コネクタ、フランジコネクタなどの他の衛生的なコネクタ(専用コネクタを含む)を使用することができることを理解されたい。
図4は、マニホールドハウジング32の二部分ハウジング32a、32bと、その中に含まれる、異なる可撓性バッグ10につながる分岐ラインとを示すマニホールド30の側面図を示している。様々な分岐ラインにおける流れを制御するために使用されるピンチバルブが、マニホールド上に示されている。
【0031】
図3を参照すると、マニホールド30は、それに取り付けられた様々な可撓性バッグ10を選択的に充填する(かつそこから流体を除去する)ために使用することができる。例えば、
図3においてBag#1と記された可撓性バッグ10は、流入する分岐ライン42aに位置するバルブ50を開放することによって、水で満たすことができる。水は、充填マーク20に達するまで(または可撓性バッグ10が完全に充填されるまで)可撓性バッグ10に充填される。本実施例では、錠剤22が緩衝錠剤である。可撓性バッグ10に含まれる緩衝錠剤22は、時間の経過後、または混合若しくは撹拌補助(例えば、磁気攪拌棒)によって溶解する。錠剤22が溶解したら、生成された緩衝液を可撓性バッグ10から除去することができる。これは、いくつかの異なる方法で行うことができる。一実施形態では、可撓性バッグ10をマニホールド30から取り外した後、そこに含まれる流体をさらに希釈することができる。別の実施形態では、可撓性バッグ10は、出口ポート18を(例えば、底面12に)含むことができ、緩衝液は、重力流を使用してまたはポンプで補助されて、可撓性バッグ10から排出される。別の実施形態では、水は、主ライン40からの流れを使用して可撓性バッグ10に入力され、その後、可撓性バッグ10に結合された開いた分岐ライン42a内に送られる。出口分岐ライン42bは開いており、緩衝液を可撓性バッグ10から取り出して主ライン40内に送り、マニホールド30から矢印Bの方向に(または別の結合プロセスまたは操作に向けて下流に)排出することができる。水が可撓性バッグ10に加えられているため、そこに含まれる緩衝液は、除去されると同時に希釈されることに留意されたい。
【0032】
典型的には、可撓性バッグ10内に形成される最終的な緩衝液は、使用前に水でさらに希釈される。例えば、可撓性バッグ10内で作成される緩衝液は、約5~10倍希釈で、濃縮することができる。この緩衝液は、その後、さらに希釈されて(例えば、5倍希釈)、1倍~2倍の範囲の最終緩衝液希釈物を生成することができる。一実施形態では、この更なる希釈は、別の容器またはコンテナで行われる。しかしながら、この更なる希釈は、上述したように可撓性バッグ10がマニホールド30に結合されている間に、水が可撓性バッグ10に加えられるときに達成することが可能である。例えば、望まれる約1~2倍希釈またはその付近でマニホールド30を出る最終緩衝液を生成するために、5~10倍で緩衝液を含む可撓性バッグ10に追加の水を加えることができる。
【0033】
図6は、本明細書に記載の可撓性バッグ10を使用してエンドユーザが実行する操作の例示的なフローチャートまたはシーケンスを示している。この例では、エンドユーザは、操作200に見られるように、作成することが望まれる溶液のタイプ(例えば、緩衝液タイプB)を特定する。例えば、エンドユーザは、100mMリン酸緩衝液を作ることを望むかもしれない。この例では、ユーザは、100mMリン酸緩衝液を生成するための錠剤レシピで特別に設計された可撓性バッグ10を選ぶ。これは、
図6の操作210に見られる。ユーザは、可撓性バッグ10上で見付けられるラベリング、マーキング、カラーコード、バーコード、QRコードなどに基づいて、使用する可撓性バッグ10を特定することができる(例えば、ユーザは緑色の可撓性バッグ10を選ぶことができる)。その後、ユーザは、操作220で見られるように、充填マーク20に達するまで(または、可撓性バッグ10が完全に充填されるまで)、可撓性バッグ10を水で満たす。その後、可撓性バッグ10に含まれる錠剤22が溶解して、100mMリン酸塩緩衝液が生成される。その後、濃度100mMの緩衝液タイプBを含むこの可撓性バッグ10を直接使用することができ(操作230)、代替的には、例えば、溶液を別の容器またはコンテナに移してさらに水を加えることによって、そこに含まれる緩衝液をさらに希釈することができる。この更なる希釈は、水が可撓性バッグ10の内容物を同時に排出および希釈するために使用される前述したようにマニホールド30を使用して実行することもできる。この更なる希釈操作は、
図6の操作240に示されている。例えば、5倍希釈は、20mMリン酸緩衝液を作成するために実行することができる。このさらに希釈された緩衝液は、その後、操作250に見られるように使用することができる。
【0034】
上述したように、エンドユーザは、初期の濃縮緩衝液を作るために、どの緩衝材料も計量する必要がないことに留意されたい。また、錠剤は既に可撓性バッグ10内に予め装填されているため、エンドユーザは可撓性バッグ10に錠剤22を加える必要もない。エンドユーザは、所望の100mMリン酸緩衝液濃度を得るために使用する適切な可撓性バッグ10を見付けるだけで済む。このステップでは、ユーザは、100mMリン酸緩衝液濃度に関連付けられた可撓性バッグ10を特定するだけでよく、この操作は、最小限の訓練を受けた人または全く訓練を受けていない人でも行うことができる。更なる希釈も、上述と同様に容易に行うことができる。以上から分かるように、高価な実験器具は必要なく、錠剤22が既に可撓性バッグ10内に予め装填されているため、固体材料の秤量に誤りが生じる可能性もない。
【0035】
図7は、可撓性バッグ10内の流体を排出および/または再循環させるために使用できるポンプおよび/または混合デバイス60に固定された一回使用の可撓性バッグ10を示している。ポンプおよび/または混合デバイス60は、可撓性バッグ10の底面12に固定することができる。ポンプおよび/または混合デバイス60は、
図5Bに開示のポート18などを使用して可撓性バッグ10に固定することができる。ポンプおよび/または混合デバイス60の一例は、引用により援用される国際特許出願公開WO2021/158448A1(PCT/US2021/015917)において見出すことができる。ポンプおよび/または混合デバイス60は、クランプなどを介してポート18に固定され得る嵌合フランジを有することができる。この実施形態におけるポート18は、可撓性バッグ10に含まれる流体の出口として機能し、その流体は、その後ポンプおよび/または混合デバイス60の入口に入る。ポンプおよび/または混合デバイス60は、流体が出る1または複数の出口62を有する。出口62は、流体ラインまたは導管64に結合することができる。
図7に見られるように、そのような出口62の一つは、ポート18を介して可撓性バッグ10内に流体を再循環させるために使用される。そのような別の出口62は、流体を更なるプロセス(例えば、更なる希釈)に送るために使用される。
図7は、可撓性バッグ10の周りに固定される取り外し可能なクリップ66を示している。取り外し可能なクリップ66は、錠剤22を溶解させるために水が加えられる間、可撓性バッグ10の周りに固定される。錠剤22が十分に溶解した後、取り外し可能なクリップ66を取り外すことができ、それによって、流体がポンプおよび/または混合デバイス60にアクセスできるようになる。この例では、その後、濃縮緩衝液を形成するために、水が可撓性バッグ10に加えられて緩衝錠剤22が溶解し、それにより緩衝錠剤が溶解して濃縮緩衝液を形成する。流体は、可撓性バッグ10内に再循環して戻すか、または更なる希釈またはプロセスのためにポンプで送り出すことができる。
【0036】
本発明の実施形態を開示および説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることが可能である。例えば、本願では緩衝液に注目してきたが、任意の数のタイプの流体を可撓性バッグ10内で作成できることを理解されたい。それには、細胞を支持するための増殖流体または維持流体が含まれる。また、対象に投与されるIV溶液(例えば、リンゲル液)などの生理学的溶液も含まれ得る。このため、本発明は、以下の請求項およびそれらの均等物を除き、限定されるべきではない。
【国際調査報告】