(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】バイオベースのカーボンフォーム
(51)【国際特許分類】
C04B 38/06 20060101AFI20231017BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20231017BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20231017BHJP
【FI】
C04B38/06 F
C08J9/36 CEP
C01B32/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519173
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 IB2021058783
(87)【国際公開番号】W WO2022064456
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マッソン, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】コクルカヤ, オルチ
(72)【発明者】
【氏名】フルト トロン, ダニエル
【テーマコード(参考)】
4F074
4G146
【Fターム(参考)】
4F074AA01
4F074AA02
4F074AA98
4F074CB52
4F074CC04Z
4F074CC42Z
4G146AA01
4G146AB05
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4G146AC01A
4G146AC22A
4G146AD11
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4G146BA32
4G146BA49
4G146BB04
4G146BB05
4G146BB07
4G146BC03
4G146BC23
4G146BC33A
4G146BC34A
(57)【要約】
本発明は、バイオベースのカーボンフォーム、それらの製造方法及びそれらの使用に関する。方法は、セルロース繊維及びバイオマス成分のスラリーを発泡させてバイオマス-セルロース繊維フォームを得ることと、前記バイオマス-セルロース繊維フォームの炭化と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10~80kg/m
3の密度及び0.5~10mmの平均孔径を有するによって特徴付けられる、バイオベースのカーボンフォーム。
【請求項2】
a)スラリーを得るために、液状媒体中にセルロース繊維及びバイオマス成分を懸濁させることであって、
バイオマス成分はリグニン及びリグノセルロース材料から選択される、
懸濁させることと、
b)前記スラリーを発泡させてバイオマス-セルロース繊維フォームを得ることと、
c)バイオマス-セルロース繊維フォームを炭化してバイオベースのカーボンフォームを得ることと、
を含む、バイオベースのカーボンフォームを調製するための方法。
【請求項3】
バイオマス成分のセルロース繊維に対する重量比が、乾材に基づく算出で3:1~1:3である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
セルロース繊維及びバイオマス成分を懸濁させるための液状媒体が水である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
スラリーが、スラリーの全重量に基づく算出で0.1~40重量%の全固形分濃度を有する、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
バイオマス成分が粒子の形態である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
バイオマス-セルロース繊維フォームが、所望の形状に鋳造される、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
バイオマス-セルロース繊維フォームが、それが炭化される前に乾燥される、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
バイオマス成分がリグニンである、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
炭化が、1つ又は複数の工程における温度を1~100℃/分の間の速度で、700~1500℃の範囲内の最高温度T
maxに到達するまで上昇させることにより実施される、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
炭化が不活性ガス下で実施される、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項2から11のいずれか一項に記載の方法で得られる、バイオベースのカーボンフォーム。
【請求項13】
ある密度を有する多孔質コアを含む請求項1又は12に記載のバイオベースのカーボンフォームであって、フォームは、その表面に近いほどより密になる、バイオベースのカーボンフォーム。
【請求項14】
インプラント、電気化学デバイスのための電極、大分子のための吸収剤、吸着剤、高温用途のための断熱材、航空宇宙部品、エネルギー貯蔵、触媒基質、及びステルス技術の少なくとも1つから選択される用途における請求項1及び12から13のいずれか一項に記載のバイオベースのカーボンフォームの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオベースのカーボンフォーム、それらの製造方法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の日常生活において、マクロ多孔性材料及びミクロ多孔性材料は様々な形状及び組成で使用されている。カーボンフォームは炭素原子の網目構造から形成される多孔性材料であり、非常に大きな比表面積及び高い吸着容量を有し得る。これらの材料は、軽量で、強固で耐性の高い材料を要する、電気化学デバイスのための電極、大分子のための吸収剤、航空宇宙部品のための断熱材、及び他の用途等のように現代技術に貢献することが期待されている。
【0003】
カーボンフォームを作製するための公知の技術は様々な前駆体の混合を伴う。最先端の前駆体は通常、ピッチ、イソシアネート、ポリオール、架橋剤、鎖延長剤及び界面活性剤等の化石ベースの化学品をベースとするが、さらに、触媒等は無機化合物をベースとする。それぞれの前駆体は、発泡プロセス中に異なる処理を要する。
【0004】
カーボンフォームを調製するための従来の方法は、テンプレートとして市販の開細胞ポリウレタンフォームの使用を含むテンプレートルートである。ポリウレタンフォームはフェノール類樹脂又はピッチ等のスラリーに含浸され、その後不活性ガス下で硬化させ、炭化されることで炭素-フォーム構造を形成する。この方法は簡易であり容易に量産可能であるが、テンプレート及び前駆体の両方は化石ベースである。もう一つの方法は直接的な発泡であり、前駆体及び発泡剤を含む液状のスラリーの内部の気泡の生成を伴う。気泡、通常CO2は発泡プロセスの第一の工程中で発泡剤の化学反応に起因して生成する。安定的な多孔性ネットワークが形成された際に、それが不活性ガス下で完全に乾燥して炭化する。直接的な発泡ルートは多量の化石ベースの前駆体を使用する。第三の方法は、前駆体スラリーを調製した後、断熱された反応器中で加圧下での窒素ガスの流通を伴う、間接的な発泡である。得られたフォームはその後乾燥され、炭化される。このプロセスは大きなスケールでは複雑であり高価である。
【0005】
再生可能な原材料資源の使用等、そして環境及びヒトの健康の側面で、化石ベースの化学品をより持続可能な代替物で置き換えることに関心が高まっている。セルロースは、地球上で最も豊富な再生可能な天然ポリマーであり、工業スケールで大量調製するための方法が利用可能であることから、特別な可能性を有する。セルロースベースの多孔性材料は通常、出発材料としてセルロース繊維の水スラリーを使用することにより製造される。水は、濡れた多孔性セルロース材料の乾燥中に崩壊又は収縮を起こさずに除去される必要がある。最近ではセルロースフォームは、WO2020/011587で記載されているように、バイオマス前駆体、バイオ発泡剤、水及び空気のみから調製されている。WO2020/049226は、リグノセルロース材料から得られるリグニン含有画分から調製される多孔性成形可能材料を開示している。公報US3894878は、リグニンの水溶液からの多孔性成形可能材料の調製を開示している。しかし、依然としてカーボンフォームを調製するための環境フレンドリーでかつ安価な方法に対する需要が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】(a)リグニン(●)のスラリー及びセルロース繊維(----)を調製すること、(b)スラリーを発泡させてリグニン-セルロース繊維フォームを提供すること、及び(c)リグニン-セルロース繊維フォームを炭化させてカーボンフォームを得ることによるリグニン-セルロースベースのカーボンフォームを調製するための工程を示す図である(
図1(c)では(○)は炭化したリグニンを表し、(-・-・)は炭化したセルロース繊維を表す)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の目的は、バイオベースの材料から作製されたカーボンフォームを提供することである。
【0008】
第一の態様において、本発明は、密度が10から80kg/m3、又は10から60kg/m3であり、平均孔径が0.5から10mm、又は1から10mmであることを特徴とする、バイオベースのカーボンフォームに関する。
【0009】
本発明によるカーボンフォームは、軽量で、不燃性であり、化学物質に耐性があり、高温耐性があり、ガス及び液体が透過可能であり、また、音及び照射を吸収する利点を有する。
【0010】
第二の態様において、本発明は、
a)液状媒体中にセルロース繊維及びバイオマス成分を懸濁させてスラリーを得ることであって、
バイオマス成分は、リグニン及びリグノセルロース材料から選択されることと、
b)前記スラリーを発泡させてバイオマス-セルロース繊維フォームを得ることと、
c)バイオマス-セルロース繊維フォームを炭化させてバイオベースのカーボンフォームを得ることと、
を含む、バイオベースのカーボンフォームを調製するための方法に関する。
【0011】
工程(a)におけるスラリーは、液状媒体中に乾燥セルロース繊維を浸漬させることに続いて、標準セルロース分離装置を使用してそれをバイオマス成分と共に混合することにより調製してもよい。任意で、バイオマス成分も混合前に乾燥セルロース繊維と共に浸漬させてもよい。バイオマス成分は、セルロース繊維の添加前に液状媒体中に懸濁させる、セルロース繊維と共に懸濁させる、又はセルロース繊維を懸濁させた後に液状媒体中に懸濁させてもよい。バイオマス成分を添加する前に液状媒体においてセルロース繊維を分離し、その後混合することは、スラリー中のバイオマス成分の均一な分散を容易とする。スラリー中に均一に分散されたバイオマス成分は、次の工程における均一なフォームの提供を可能とする。セルロース繊維及びバイオマス成分を懸濁させるために用いられる液状媒体は、水溶液又は水であってもよく、好ましくは水である。液状媒体中のセルロース繊維及びバイオマス成分の懸濁液は、10から50℃、15から50℃、又は20から50℃の温度で実施してもよい。スラリーは、スラリーの合計重量に基づく算出で固形分濃度の合計が0.1から40重量%、又は0.1から5重量%、又は0.2から2重量%であってもよい。
【0012】
本発明による方法において使用されるバイオマス成分は、リグニン;並びに木粉、パルプ、及び木材繊維、例えば乾燥したリグノセルロース繊維、木材粉、ファインカットセルロースパルプ、おがくず、及びリグニン粉末等のリグノセルロース材料;並びにそれらの異なる組み合わせから選択される。バイオマス成分はリグニンであることが好ましい。工程(a)におけるスラリーの調製で使用されるリグニンは粒子の形態であってもよい。平均粒子径は、0.1μm~20μm、0.1~10μm、0.1μm~5μm、又は0.1~1μmの範囲内であってもよい。バイオマス成分のセルロース繊維に対する重量比は、乾材に基づく算出で3:1~1:3、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは1:1である。
【0013】
スラリーを乾燥させる際に様々な条件を用いることは、均一なフォーム、又は多孔性内核を有し、その外側境界又は表面に向かって高密度化する等の一体型フォームが得られる可能性等、最終的なバイオベースのカーボンフォームの形態に影響する可能性がある。バイオマス成分の量は、カーボンフォームにおける炭化収率及び炭素含有量に影響を与え、さらにはカーボンフォームの孔径、孔の特徴及び最終的な化学組成の調整も可能とし得る。バイオマス成分、そして特にリグニンも、炭化中のフォームの収縮を防止する。
【0014】
本発明による方法において、添加剤はバイオマス-セルロース繊維スラリーに添加することができる。添加剤は、バイオマス成分及びセルロース繊維の添加前に液状媒体中に懸濁させる、バイオマス成分及びセルロース繊維と共に懸濁させる、又はバイオマス成分及びセルロース繊維のうちの1つ又は両方を懸濁させた後にスラリー中に添加してもよい。添加剤は発泡剤、増粘剤、又は可塑剤であってもよく、添加剤はバイオベースの添加剤であることが好ましい。バイオベースの発泡剤の例としては、グルテン、カゼイン、ハイドロフォビン及びゼラチン等のタンパク質が挙げられる。添加剤は、バイオマス-セルロース繊維スラリーに粉末で、あるいは混合物で添加することで、スラリーの合計重量に基づく算出で固形分濃度の合計が0.1~40重量%又は0.1~5重量%、又は0.2~2重量%であるバイオマス成分、セルロース繊維及び添加剤のスラリーを得てもよい。セルロース繊維及びバイオマス成分の添加剤に対する比率は、セルロース繊維の凝集及び分離の度合いに影響し得る。
【0015】
本発明の方法においてセルロース繊維及びバイオマス成分は、スラリーを発泡させる前にスラリーに混合することで、バイオマス成分の均一な分布を有するフォームの形成を可能とする。スラリーの発泡はスラリー中へのガスの導入により実施できる。ガスは、泡立て又は強い撹拌により、発泡剤の添加により、ガスを用いてスラリーを加圧することにより、又はガスの直接的な導入により、スラリーに導入することができる。スラリーに導入されるガスは二酸化炭素、窒素、及び不活性ガス、又は空気、又はそれらの混合物から選択してもよい。好ましくは、ガスは空気である。空気は泡立て又は強い撹拌により導入することができ、これはフォームを作り出すのに安価で直接的な方法である。発泡は、高い圧力を加えた後に圧力を開放することにより実施することもでき、例えば、102~500kPa、又は102~300kPaの範囲内の圧力を加えることにより実施できる。発泡は、5~100℃、10~100℃、10~80℃、10~60℃、10~40℃、20~60℃、又は20~40℃の温度で実施してもよい。スラリーの体積は、発泡した際に、セルロースの乾燥重量の量に応じて、数100パーセント、例えば200%超、又はさらには最大1000%以上の増大をし得る。得られたバイオマス-セルロース繊維フォームは、例えば板状、3D構造、薄層等の所望の形状に鋳造してもよい。
【0016】
バイオマス-セルロース繊維フォームを炭化させる前に、バイオマス-セルロース繊維フォームの合計重量に基づく算出で液状媒体の含有量を例えば15重量%未満、又は10重量%未満の液状媒体の含有量に減らすために、バイオマス-セルロース繊維フォームを乾燥させてもよい。バイオマス-セルロース繊維フォームの乾燥は、濡れたセルロース-バイオマス繊維フォーム中とは異なる多孔構造を提供し、例えば、孔径が大きくなる。バイオマス-セルロース繊維フォームの乾燥は、対流乾燥により、又は15~30℃、もしくは15~25℃等の室温での照射により、又はバイオマス-セルロース繊維フォームを20℃超の温度、例えば25~125℃、30~100℃、30~80℃、又は50~80℃の高温に付す等の各種方法により実施してもよい。高温はフォームを乾燥させるための時間を短縮できる。本発明による方法に関する利点は、乾燥したバイオマス-セルロース繊維を含有するフォームを得るためには適度な加熱のみ要求される、あるいは加熱が全く要求されないことである。バイオマス-セルロース繊維フォームを乾燥させるための滞留時間は4~60時間、又は4~48時間、又は4~24時間、又は4~12時間であってもよいが、使用した乾燥方法に応じて調節してもよい。焼付オーブン、硬化オーブン、乾燥オーブン又は工業のためのバッチ式オーブン、及び連続式オーブン等の各種オーブンを使用してもよい。マイクロ波又はマイクロ波と熱流との組み合わせの使用により、バイオマス-セルロース繊維フォームをその内部から加熱すると、乾燥時間をさらに早めることができる。バイオマス-セルロース繊維フォームの安定性によっては、低温も高温も使用することができる。しかし、あまりに高い温度は、バイオマス-セルロース繊維フォームを不均一にし、又はフォームを損傷させて剥離又は構造の崩壊を生じさせる等のおそれもある。乾燥温度は乾燥中に変更することもでき、例えば、低い初期温度と、経時的な温度上昇とを用いることができる。液状媒体は溶媒交換により除去することもでき、例えば水は、エタノールを用いた溶媒交換により除去することができる。
【0017】
本発明による方法において、バイオマス-セルロース繊維フォームの炭化は、1つ又は複数の工程における温度を、1~100℃/分の間の速度で、700~1500℃の範囲内の最高温度Tmaxに到達するまで上昇させることにより実施でき、最高温度は800~1300℃であることがより好ましく、最高温度は950~1150℃であることが最も好ましい。連続式の炉では、加熱及び冷却は静的なバッチ式オーブンにおいてよりもより高速で実施できる。冷却を含む炭化のための合計時間は5~20時間、10~20時間、又は15~20時間であってもよい。炭化は窒素、ヘリウム、ネオン、又はアルゴン、又はそれらの混合物等の不活性ガス下で実施できる。乾燥したバイオマス-セルロース繊維フォームの炭化は、原理上は乾燥したバイオマス-セルロース繊維フォームと同じ多孔構造を有するカーボンフォームを提供する。別の実施形態において、炭化は濡れたバイオマス-セルロース繊維フォーム上で実施してもよい。
【0018】
湿ったバイオマス-セルロース繊維フォームは、後の使用のために、又はモールド内に充填する、もしくは任意の他の方法により所望の形状に形成するために回収して保管することができ、炭化後に所定の形状を有するカーボンフォームの調製を可能とする。このように、本発明の方法の1つの実施形態は、成形されたカーボンフォームを提供するための成形されたバイオマス-セルロース繊維フォームの炭化を包含する。
【0019】
本発明の方法により調製されるカーボンフォームは、疎水剤、活性化ガス、被覆層又は他の化学物質等の追加の成分で改質してもよく、熱的な後処理により、又はこれらの組み合わせで改質してもよい。カーボンフォームは、特定の吸収物性又は向上した比表面積等の所望の物性を有するフォームを提供するために活性化させてもよい。活性化は、活性化化学物質を用いてフォームを処理し、400~800℃の温度で加熱することにより、又は約800~1100℃の温度でガスを用いてフォームを処理することにより実施することができる。好適な活性化化学物質は、アルカリ塩、リン酸、塩化亜鉛及び硫酸又はそれらの混合物から選択される。活性化化学物質は、材料から残留水分を除去するのを補助することができる。活性化のための好適なガスは、水蒸気及び二酸化炭素又はそれらの混合物から選択される。
【0020】
本発明は、リグニン及びセルロース繊維を液体中に懸濁させてスラリーを得ることと、スラリーを発泡させてリグニン-セルロース繊維フォームを得ることと、任意でフォームを板状、3D構造、薄層等、又は他の形状に鋳造することと、リグニン-セルロース繊維フォームを乾燥させることと、フォームの炭化と、を含むバイオベースのカーボンフォームを調製するための方法を特に包含する。
【0021】
本発明の方法に関する利点は、環境フレンドリーであり、簡易な技術を伴い、そして容易に量産可能であることである。方法において使用されている主成分はバイオベースであり再生可能である。液状媒体は水溶液又は水であってもよい。さらなる利点は、バイオマス-セルロース繊維フォーム中に生じる空孔は、炭化中に保たれ得ることから、低密度カーボンフォームを提供することである。発泡前にセルロース繊維及びバイオマス成分を混合することは、フォーム中でのバイオマス成分の均一な分布を可能とする。均一なバイオマス-セルロース繊維混合物も混合物全体中で均一に発泡しているため、最終的な炭化したフォームも均一になることを可能とする。カーボンフォームを調製するためのプロセスにおいてバイオマス成分及びセルロース繊維を含むスラリーから調製されたフォームを使用するさらなる効果は、しなやかで弾力性のあるカーボンフォームを作製する機能である。
【0022】
第三の態様において、本発明は、本発明の第二の態様による方法を用いて得られたカーボンフォームに関する。本発明のさらなる態様は、密度を有する多孔性コアを含む一体型カーボンフォームであり、フォームはその表面に近いほど密度が高くなる。一体型構造は哺乳類の骨の構造に類似しているため、骨インプラント材料及び骨形成原細胞のための足場として使用することができる。
【0023】
さらにもう一つの態様は、インプラント、電気化学デバイスのための電極、大分子のための吸収剤、吸着材、高温用途のための断熱材、航空宇宙部品、エネルギー貯蔵、触媒基質、及びステルス技術における本発明によるバイオベースのカーボンフォームの使用である。
【0024】
本出願で使用される全ての語及び略称は、別途指示がない限り、関連技術においてそれらに通常与えられた意味を有すると解釈されるべきである。しかし、明確化のため、いくつかの語句は下記に具体的に定義される。
【0025】
本開示において、語句「バイオベースの材料」は、生きている、又は一度生きていた、生物体、植物に由来する物質から作製されたあらゆる材料に用いられ、例えば、木材から得られる材料、リグノセルロース材料、セルロース繊維、リグニン、デンプン、タンパク質、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0026】
セルロースは、全ての植物の細胞壁中の主成分である。それは、植物の種類又は部位に応じて異なる成分で生じ得る。木材においては、例えば、セルロースはリグニンとヘミセルロースと共に生じる。葉において、セルロースは、リグニンなしで生じるが、豊富な量のヘミセルロースと共に生じる。綿の種子毛において、セルロースは、リグニンを含まないほとんど純粋な形態で生じる。本発明によるカーボンフォームを調製するために好適なセルロース繊維は、針葉樹材又は広葉樹材等の木材、葉又は繊維作物(綿、亜麻及び麻等)に由来するものであってもよい。好適なセルロース繊維はまた、レーヨン及びリヨセル等の再生されたセルロースに由来するものであってもよい。好ましくはセルロース繊維は木材に由来し、セルロース繊維は木材マトリックスから繊維を遊離させるパルピングプロセスにより得られたパルプ繊維であることがより好ましい。パルプ繊維は、サーモメカニカルパルプ(TMP)又はケモサーモメカニカルパルプ(CTMP)等のメカニカルパルプを得るメカニカルパルピングにより、又はクラフトパルプもしくは亜硫酸プロセス、ソーダプロセスもしくはオルガノソルブパルピングプロセスにより得られたパルプ等のケミカルパルピングにより遊離させることができる。より好ましくは、セルロース繊維は、ケミカルパルピングプロセスにより遊離したパルプ繊維である。さらにより好ましくは、セルロース繊維は針葉樹材クラフトパルプ又は溶解パルプから得られる。本発明で使用されるセルロース繊維は、リグニン及びヘミセルロースを含まないものであってもよい。各セルロースの様々な特性は、最終的なカーボンフォームの物性に影響することになる。セルロース繊維は、幅よりも長さの方が圧倒的に長い。セルロース繊維の平均幅は0.01~0.05mmであってもよい。針葉樹材の平均繊維長は2.5~4.5mmであってもよく、一方で広葉樹材の平均繊維長は0.7~1.6mm、そしてユーカリの場合は0.7~1.5mmであってもよい。しかし、繊維長は様々な生長箇所等で大きく異なる可能性がある。本開示で開示されているカーボンフォームの調製に使用されているセルロース繊維は0.1mm~65mm、0.1mm~10mm、又は0.5mm~65mm、又は0.5mm~10mm、又は0.5mm~7mmの平均繊維長を有していてもよい。様々な繊維長は、材料に様々な機械的特性を与え得る。繊維の長さのため、それらは互いに絡み合うことができ、フォーム構造に強度をもたらす繊維-繊維間結合を付与する。本発明によるカーボンフォームの調製に使用されるセルロース繊維のアスペクト比、すなわち繊維長の繊維幅に対する比率は、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、又は少なくとも100であってもよく、乾燥手順中にフォーム構造を保持させ、かつ安定化させる。アスペクト比は最大6500、又は好ましくは最大2000であってもよい。
【0027】
セルロース繊維の高アスペクト比、すなわち長さの幅に対する比率は最終的なバイオベースのカーボンフォームに対して柔軟性を与え得る。セルロース繊維の支配的な配向は、炭化中のガス放出及びそれに起因する炭化反応速度論に影響し得るフォーム中の様々なマクロ構造の形成を可能とし、このため、最終的なバイオベースのカーボンフォームの物性に影響を与える可能性がある。
【0028】
リグニンは、特に木材及び樹皮における細胞壁の形成において、セルロース、ヘミセルロース、及びペクチン成分の間の細胞壁における空間を充填するという点で剛性を与える、架橋されたフェノール性ポリマーである。ポリマーは定義された主構造を有さず、リグニンの正確な化学物質の組成は種ごとに異なるが、比較的疎水性であり、芳香族サブユニットを豊富に含む。リグニンは、セルロースの製造における望ましくない副生成物であることが多く、セルロースの次に世界で最も大きい再生可能な炭素源である。本方法における使用のためのリグニンの特定の平均粒子径は、0.1~10μmの範囲内であることが好ましい。好ましい径の範囲内の粒子はセルロース繊維に対して良好な密着性を与える。いくつかの用途に対しては、リグニンの灰分含有量は好ましくは可能な限り低くあるべきである。
【0029】
カーボンフォームの密度は方程式(1)を用いて決定することができる:
(式中、mはカーボンフォームの断片の質量であり、Vはカーボンフォームの前記断片の体積である。)
【0030】
本発明によるカーボンフォーム中の空隙空間は、本発明による多孔性材料の空隙空間の合計容積の少なくとも50%、少なくとも70%、又は少なくとも80%が相互的に繋がっている孔を含み得るように、相互的に繋がっている孔状であってもよい。平均孔径及び孔容積は、顕微鏡法を用いた画像解析による方法等の従来の方法により測定することができる。カーボンフォームの間隙率は50~99%の範囲内であってもよい。語句「間隙率」φは、孔の合計容積VPと、カーボンフォームの合計体積Vとの間の比率に使用される。間隙率は、顕微鏡法を用いた画像解析による方法等の従来の方法により測定することができる。
【0031】
「比表面積」は、単位質量あたりの固体材料の合計の表面積を表し、ピクノメトリーにより決定することができる。本発明によるカーボンフォームは500~1500m2/gの比表面積を有していてもよい。
【0032】
本発明の態様及び/又は実施形態の1つの文脈に記載されている実施形態及び/又は特徴及び/又は利点は、本発明の全ての他の態様及び/又は実施形態にも準用できることに留意すべきである。
【実施例】
【0033】
実施例1:セルロースのバイオマス成分に対する異なる比率を有する炭化したリグニン/セルロースフォーム
水性溶媒中で、セルロース繊維とリグニンとを各種比率で混合することにより複数のスラリーを調製する。機械的な泡立てにより各スラリーを発泡させることでリグニン-セルロース繊維フォームが得られる。各リグニン-セルロース繊維フォームを乾燥させてその後炭化させることでカーボンフォームが得られる。得られたカーボンフォームは、平均孔径及び密度等の各種物性を測定することにより特徴付けられる。
【国際調査報告】