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特表2023-544543ハイブリッドリソース状態を有するスケーラブルな光量子コンピューティング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ハイブリッドリソース状態を有するスケーラブルな光量子コンピューティング
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20231017BHJP
   G06F 7/38 20060101ALI20231017BHJP
   G06E 3/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G06N10/40
G06F7/38 510
G06E3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519193
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 CA2021051358
(87)【国際公開番号】W WO2022067431
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/084,994
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521489584
【氏名又は名称】ザナドゥ クアンタム テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラッサ,エリ
(72)【発明者】
【氏名】ツィツリン,イーラン
(72)【発明者】
【氏名】サバパシー,クリシュナクマール
(72)【発明者】
【氏名】ダウフィナイス,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ダンド,イシュ
(72)【発明者】
【氏名】グハ,サイカット
(72)【発明者】
【氏名】メニクッチ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】バラジオーラ,ベン
(72)【発明者】
【氏名】松浦 孝弥
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,ブレーニー
(57)【要約】
スケーラブルでありフォールトトレラントな光量子コンピューティング用のシステムが、複数の光回路、複数の光子数分解検出器(PNR)、マルチプレクサ、及び集積回路(IC)を含む。動作中、光回路は、ガウシアンボソンサンプリング(GBS)によって出力状態を生成し、PNRは、出力状態に基づいて量子ビットクラスタを生成する。マルチプレクサは、量子ビットクラスタを多重化し、空のモードをスクイーズド真空状態に置き換えて、複数のハイブリッドリソース状態を生成する。ICは、ハイブリッドリソース状態をステッチして、フォールトトレラントな量子計算のための状態を含む高次元クラスタ状態にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路を備える装置であって、前記集積回路が、
量子ビットソース及びクラスタソースを含む複数のソースと、
複数の制御Zゲートとを含み、前記複数の制御Zゲートからの各制御Zゲートが、前記複数のソースからの少なくとも2つのソースを接続し、
前記集積回路が、動作中、前記複数のソースからのソースのサブセットに順次通電し、前記複数のソースからのソース間の相互作用に基づいてRaussendorf格子を生成するように構成される、
装置。
【請求項2】
前記複数の制御Zゲートからの各制御Zゲートが2量子ビットゲートである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記クラスタソースが1Dクラスタソースである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記集積回路の動作中、前記量子ビットソースから放出された量子ビットが、前記量子ビットソースの少なくとも1つの空間的に隣接する量子ビットソースから放出された量子ビットとエンタングルされる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
ガウシアンボソンサンプリング(GBS)によって複数の出力状態を有する光を生成するように構成された複数の光回路と、
前記複数の光回路に動作可能に結合された複数の光子数分解検出器(PNR)であって、前記複数の出力状態に基づいて量子ビットクラスタを生成するように構成された複数の光子数分解検出器(PNR)と、
前記複数のPNRに動作可能に結合されたマルチプレクサであって、前記量子ビットクラスタの多重化を実行し、空のモードをスクイーズド真空状態に置き換えるように構成され、それにより、複数のハイブリッドリソース状態を有する光を生成するように構成されたマルチプレクサと、
前記マルチプレクサに動作可能に結合された集積回路であって、前記複数のハイブリッドリソース状態からのハイブリッドリソース状態を、フォールトトレラントな量子計算のための状態を含む高次元クラスタ状態にエンタングルするように構成された集積回路と
を備えるシステム。
【請求項6】
前記集積回路が、再構成可能な線形光学系を使用せずに、前記複数のハイブリッドリソース状態からの前記ハイブリッドリソース状態を、前記高次元クラスタ状態にエンタングルするように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記高次元クラスタ状態が、1つの時間次元及び2つの空間次元での3次元マクロノード格子構造を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記高次元クラスタ状態が3次元格子構造を含み、前記格子構造の複数のサイトからの各サイトが少なくとも4つのモードを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
集積回路を備える装置であって、前記集積回路が、
複数のマルチモードソースと、
前記複数のマルチモードソースに動作可能に結合された複数のビームスプリッタとを含み、前記複数のビームスプリッタからの各ビームスプリッタが、前記複数のマルチモードソースからの少なくとも2つのマルチモードソースを接続し、
前記集積回路が、動作中、前記複数のマルチモードソースからのマルチモードソースのサブセットに順次通電し、前記複数のマルチモードソースからのマルチモードソースと、少なくとも1つのホモダイン測定と間の相互作用に基づいてRaussendorf格子を生成するように構成される、
装置。
【請求項10】
前記Raussendorf格子が、第1のタイプの量子ビットのセットを含む第1の層と、前記第1のタイプとは異なる第2のタイプの量子ビットのセットを含む第2の層とを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記集積回路の動作中、前記複数のマルチモードソースから放出された量子ビットが、前記複数のマルチモードソースの少なくとも1つの空間的に隣接するマルチモードソースから放出された量子ビットとエンタングルされる、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記複数のマルチモードソースから放出された前記量子ビットが、前に放出されたモード及び後に放出されるモードとさらにエンタングルされる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
ホモダイン測定の入力ベクトルと、雑音モデルとを受信すること、
ホモダイン測定の前記入力ベクトル及び前記雑音モデルに基づいて、所定の閾値を超える雑音レベルを有する少なくとも1つの方向を識別すること、
前記識別された少なくとも1つの方向に基づいて、ホモダイン測定の前記入力ベクトルに対して基底の変更を実行して、第1の修正されたベクトルを生成すること、
前記第1の修正されたベクトルに、ビニング操作及び丸め操作を含む変換を適用して、第2の修正されたベクトルを生成すること、
前記第2の修正されたベクトルに基づいて、前記基底の変更を元に戻して、候補格子点を返すこと、及び
前記候補格子点に基づいて、解釈された量子ビット測定結果を表すバイナリ列を生成すること
を含む方法。
【請求項14】
前記ビニング操作が、ホモダイン測定結果からビット値へのマップに基づく、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基底の変更が、変換行列を使用して実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記丸め操作が、
【数1】
の整数倍への丸めを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ホモダイン測定の入力ベクトルを受信すること、
ホモダイン測定の前記入力ベクトルに対して基底の変更を実行して、第1の修正されたベクトルを生成すること、
前記第1の修正されたベクトルに、ビニング操作及び丸め操作を含む変換を適用して、第2の修正されたベクトルを生成すること、
前記第2の修正されたベクトルに基づいて、前記基底の変更が元に戻され、第3の修正されたベクトルを返すこと、
前記第3の修正されたベクトルの半整数値の成分を修正して、第4の修正されたベクトルnを生成すること、
n mod 2=sを取って、ビット値の列sを生成すること
を含む方法。
【請求項18】
前記ビニング操作が、ホモダイン測定結果からビット値へのマップに基づく、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基底の変更が、変換行列を使用して実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記丸め操作が、
【数2】
の整数倍への丸めを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年9月29日に出願された「ハイブリッドリソース状態を有するスケーラブルな光量子コンピューティング」という名称の米国仮特許出願第63/084,994号の優先権及び利益を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
分野
[0002] 本開示は、一般に光量子コンピューティングの分野に関し、より詳細には、ボソン量子ビット及びスクイーズド状態などの3次元リソース状態の生成に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 量子光パルスを保存し、コヒーレントに操作する機能は、長距離量子通信及び量子コンピューティングの開発に望ましい。これらの機能を、エンタングル光子源などの他の量子技術と共にフォトニックチップに統合することは、そのような用途の実装に向けた重要な実用ステップである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
[0004] 本明細書で述べる1つ又は複数の実施形態は、ボソン量子ビット及びスクイーズド状態を含む3次元リソース状態の生成に関する。いくつかの実施形態では、スケーラブルでありフォールトトレラントな光量子コンピューティング用のシステムが、複数の光回路、複数の光子数分解検出器(PNR)、マルチプレクサ、及び集積回路(IC)を含む。動作中、光回路は、ガウシアンボソンサンプリング(GBS)によって出力状態を生成し、PNRは、出力状態に基づいて量子ビットクラスタを生成する。マルチプレクサは、量子ビットクラスタを多重化し、空のモード(empty mode)をスクイーズド真空状態に置き換えて、複数のハイブリッドリソース状態を生成する。ICは、(例えば、ハイブリッドリソース状態をステッチすることによって)ハイブリッドリソース状態を変換して、フォールトトレラントな量子計算に適した状態を含む高次元クラスタ状態にする。
【0005】
図面の簡単な説明
[0005] 図面は、主に例示目的であり、本明細書に記載する主題の範囲を限定することを意図されていない。図面は、必ずしも一律の縮尺では描かれていない。いくつかの場合には、様々な特徴の理解を容易にするために、図面において、本明細書に開示される開示主題の様々な態様が誇張又は拡大されて示されていることがある。図面において、同様の参照符号は、概して同様の特徴(例えば機能的に同様及び/又は構造的に同様の要素)を指す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0006]一実施形態による、ハイブリッドクラスタ状態を生成するためのシステムを示すシステム図である。
図2A】[0007]非ガウス状態のガウシアンボソンサンプリング(「GBS」)ベースの準備を実装する集積フォトニックデバイスを示す図である。
図2B】[0008]単一のGBSデバイスの単純化された表現を示す図である。
図2C】[0009]一実施形態による、空間領域及び/又は時間領域で多重化されたGBSデバイスを含む状態準備デバイスを示す図である。
図3A】[0010]一実施形態による、時間領域における1D量子ビットクラスタの生成を示す図である。
図3B】[0010]一実施形態による、時間領域における1D量子ビットクラスタの生成を示す図である。
図3C】[0011]図3Aの1D量子ビットクラスタ生成器の単純化された表現を示す図である。
図4】[0012]出力が1Dクラスタ状態であることを示す、図3Aの1D量子ビットクラスタ生成器に関する時間領域等価回路である。
図5A】[0013]一実施形態による、複数の1Dクラスタ生成器を使用する(1+1)Dクラスタ状態の生成を示す図である。
図5B】[0014]一実施形態による、(2+1)Dクラスタ生成器に関する例示的な2Dチップレイアウトである。
図5C】[0015]一実施形態による、図5Bのレイアウトを有する2Dチップを使用して生成された3D立方格子を示す図である。
図6A】[0016]Raussendorf格子の2つの層の例示的な表現を個別に示す図である。
図6B】[0017]図6AのRaussendorf格子の2つの層の合成された表現である。
図6C】[0018]図6AのRaussendorf格子を生成するための、複数の制御Z(「CZ」)ゲートを含む例示的なチップレイアウトを示す図である。
図7】[0019]一実施形態による、CZゲートの代わりにビームスプリッタを使用する状態生成器の実装のためのノードタイプを示す図である。
図8】[0020]一実施形態による、図7に示されるノードを含む、状態を生成するためのパッシブシステム構成チップレイアウトの概略図である。
図9】[0021]一実施形態による、一般的なグラフ状態のパッシブ構成に関する例示的なグラフ変換を示す図である。
図10A】[0022]一実施形態による、図8に示される状態に関する等価回路を示す図である。
図10B】[0022]一実施形態による、図8に示される状態に関する等価回路を示す図である。
図11A】[0023]一実施形態による、図8に示される様々なタイプのエンタングル状態に関する等価回路を示す図である。
図11B】[0023]一実施形態による、図8に示される様々なタイプのエンタングル状態に関する等価回路を示す図である。
図11C】[0023]一実施形態による、図8に示される様々なタイプのエンタングル状態に関する等価回路を示す図である。
図12】[0024]いくつかの実施形態による、3Dハイブリッドペアマクロノードクラスタ状態の主単位セル、及びそれを生成するためのステップを示す図である。
図13】[0025]一実施形態による、2モードエンタングル状態と2モードクラスタ状態との間の等価性を裏付ける恒等式を示す図である。
図14】[0026]図13の恒等式から得られる、CZゲートを用いた場合と用いない場合とに生成される2モードクラスタ状態の等価性を示す図である。
図15】[0027]一実施形態による、単一のマクロノードに関連付けられたビームスプリッタネットワークの回路表現、及びそのマクロノードと隣接するマクロノードとの関係を、その等価な回路表現と共に示す図である。
図16】[0028]一実施形態による、ハイブリッドマクロノード3Dクラスタ状態のモードの配置及びエッジの曖昧性の解消(disambiguation)を示す図である。
図17】[0029]いくつかの実施形態による、GBS生成チップのシステム構成のモジュール性を示す図である。
図18】[0030]いくつかの実施形態による、ハイブリッドクラスタ状態を生成するための第1の方法を示す流れ図である。
図19】[0031]いくつかの実施形態による、ハイブリッドクラスタ状態を生成するための第2の方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
[0032] フォールトトレラントな光量子コンピューティングは活発な研究分野であるが、既知のシステムは、コスト、サイズ、及び/又は複雑さにより、実装が実用的でないことが実証されている。例えば、いくつかの既知の量子コンピューティングシステムは、非ガウス状態のほぼ決定論的な生成を実行するが、それを行う際、非常に高い実験コストを招き、望ましいレベルの信頼性を実現するには実用的でない数のデバイスが必要とされる。他の既知の量子コンピューティングシステムは、符号化された量子ビットクラスタの直接生成を実行するが、多重化が難しく、実装にコストがかかる。
【0008】
[0033] 本明細書に記載する実施形態は、ボソン量子ビットとスクイーズド真空状態との両方を含む3次元リソース状態を生成及び操作することによって上述した既知のシステムの課題を克服する光量子コンピューティング用のシステム構成を含む。いくつかの実施形態では、ボソン量子ビットの非決定論的生成の既知の方法が活用され、それと同時に、例えばスクイーズド状態を使用するクリフォードゲートの実装によって、連続変数量子コンピューティングの利点を提供する。本明細書に記載されるいくつかのシステム構成は、1つの時間次元及び2つの空間次元で量子ビットクラスタ状態を生成する集積フォトニックチップの2次元回路を使用して実装される。2次元回路は、異なるフォトニックチップを所望のコンピューティングプロトコルの様々な側面に合わせて最適化することができるので、量子コンピューティングへのモジュール手法を容易にする。いくつかのそのような実装形態では、量子コンピュータのスケーラブルな製造及び動作を実現することができるように、周囲条件での動作のために主要な計算チップを使用することができる。
【0009】
導入
[0034] スケーラブルでありフォールトトレラントな量子コンピュータを構築する過程で、フォトニクスでは、競合するプラットフォームに比べていくつかの利点が見込まれる。これらの利点には以下のものが含まれることがある。(i)室温計算の可能性。これは、既知のシリコンエレクトロニクス及びフォトニクス技術を(最小限の変更で)採用することによって、多数の量子ビットへのスケールアップを可能にする。(ii)通信技術との固有の互換性。それにより、他のプラットフォームの雑音の多い変換ステップを用いずに、複数のモジュール(すなわち、フォトニック又はその他の複数の量子コンピューティング回路)間で高忠実度の接続を行うことができる。(iii)フォールトトレランスへの過程での、時間的な自由度を使用する高次元符号を含む、誤り訂正符号の選択における固有の柔軟性。これらの利点は、光量子計算システム構成を真剣に検討する動機となる。
【0010】
[0035] 既知の光量子コンピューティングシステム構成は、2つの主要なクラスを含むものと見ることができる。システム構成の第1のクラスは、符号化された量子ビットと共に連続変数(CV)クラスタ状態を使用することに基づいており、スクイーズド光からのCVクラスタ状態の生成が(既知の技術に比べて)比較的容易であることを利用する。そのようなシステム構成では、量子情報は、ボソン量子ビット、例えばGottesman、Kitaev、及びPreskillによって提案されるタイプのボソン量子ビット(本明細書では以後、「GKP」量子ビット)で符号化され、クリフォード演算及び非クリフォード演算は、それぞれCVクラスタ及び非ガウスリソースを使用して実装される。GKP符号化に関するさらなる詳細は、“Encoding a Qubit in an Oscillator” D. Gottesman, et al., Physical Review Letters A (64), 012310 (2001)で見ることができる。このクラスは、2層正方格子(BSL)、二重BSL、修正BSLなど様々な格子におけるCVクラスタ状態の設計及び生成を含む。第1のクラス内のシステム構成の既知の実装は、情報を符号化するため、非クリフォードゲートとして作用するため、及びCV誤りを訂正するための、非ガウス状態のほぼ決定論的な生成に依拠することが多い。非ガウス状態のほぼ決定論的な生成へのこの依拠は、法外に高い実験コストにつながる可能性がある。非決定論的な状態生成手順を多重化して、ほぼ1の確率1-pで状態を生成することは、状態生成デバイスの数が1/pとしてスケーリングされることを示唆し、これはp→0となるにつれて非常に大きくなる。
【0011】
[0036] システム構成の第2のクラスは、符号化された量子ビットのクラスタを直接生成することに基づく。このクラスは、デュアルレール符号化、キャットベース(cat-basis)符号化、及びGKP符号化用に開発されたスキームを含む。これらのスキームは、符号化された量子ビットの非決定論的な状態生成、及びクラスタ状態を構築するために使用される非決定論的ゲートによく適しているという点で、第1のクラスのスキームとは異なる。しかし、これらのスキームの課題は、各ゲートが、符号化された量子ビットを消費することによって最終的に実装されることであり、これは、非決定論的な性質により複雑な多重化要件を有し、したがって、決定論的に生成されるCVクラスタ状態のノードよりもはるかに多くの実験リソースを消費する。
【0012】
[0037] 上記の観点から、例えば、符号化された量子ビットの非決定論的生成との互換性を依然として保ちながら、CVリソースを使用してクリフォード演算を実装することによって、光量子コンピューティングシステム構成の両方のクラスの利点を活用するハイブリッドスキームを考案することが望ましい。本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態は、まさにそのようなスキームを提示する。
【0013】
[0038] 上述した利点に加えて、本開示の光量子コンピューティングシステム構成は、スケーラビリティにとって望ましいいくつかの特徴を示す。1つのそのような望ましい特徴は、典型的には自由空間実装のために最適化されているCV光量子計算用の既知のシステムとは対照的に、システム構成が完全なオンチップ実装に適している可能性があることである。完全なオンチップ実装は、本開示の1つ又は複数の光量子コンピューティングシステム構成の平面的な性質によって容易にされ、例えば、各量子ビットが、少数の一定数の隣接する量子ビットに接続され、量子ビットあたりに一定数の交差するチャネルが存在する。別の望ましい特徴は、システム構成がモジュール式であり、集積フォトニックチップのサイズ及び数が、所望の回路の深さに依存しないことである。さらに、本開示の個々のモジュールの1つ又は複数は、見たところ互換性のない技術の組合せを含む既知の光量子コンピューティングシステム構成(例えば、デュアルレール量子ビット用のシステム構成)とは異なり、他の技術との互換性を保証するように特殊化することができる。一例として、極低温状態において低損失で高速の再構成可能な光スイッチングを実現するという課題を考える。光量子コンピューティングシステム構成の1つ又は複数の実施形態によれば、状態生成モジュールは、低損失であるが再構成可能ではないことがある;多重化モジュールは、あまり厳しくない損失制約を提示することができ、したがって再構成可能にすることができる;計算モジュールは、室温で比較的大きい損失(例えば0.1dB~10dBの損失)の再構成可能なスイッチに対応することができる。さらに、計算モジュールは、周囲温度及び圧力での動作を可能にし、したがって製造スケーラビリティを実現することができる(例えば相補型金属酸化物半導体(CMOS)プロセスによる)。
【0014】
[0039] 理論的な観点から、本開示の1つ又は複数の実施形態は、少なくとも2つの新規の特徴を包含する。第1に、CV符号化量子ビットを使用するRaussendorfモデルでの測定ベースの量子コンピューティングに関する平面システム構成について述べる(以下の「モジュールシステム構成」のセクションを参照)。第2に、ハイブリッドリソース状態を用いたフォールトトレラントな量子コンピューティングのための方法を述べる。この方法では、いくつかのサイト(すなわち、所与の時点での、量子システムチップの所与の位置での光パルス)がボソン量子ビットであり、他のサイトはスクイーズド真空である。そのようなリソースは、比較的少ない実験リソースを使用して生成することができる。以下の「量子誤り訂正」のセクションにおいて、フォールトトレラントな量子計算のための例示的なモデルを詳述し、関連する技術的利点は、以下の「技術的利点」のセクションで論じる。
【0015】
システム構成の概要
[0040] いくつかの実施形態では、光量子コンピューティングシステム構成は、集積フォトニックチップの2次元回路を使用して、2つの空間次元及び1つの時間次元で計算リソース状態を生成するようにまとめて構成された3つのモジュールを含む。各リソース状態は、符号化された量子ビット(例えばGKP量子ビット)の1つ又は複数のクラスタ、マジック状態、及びハイブリッド「クラスタ状態」にステッチされたCVノードを含む。本明細書で使用するとき、「ステッチ」とは、異なる状態間のエンタングルメントの作成/付加を表す。例えば、2次元回路の動作中に、非決定論的に生成された符号化された量子ビットとマジック状態とを、(いくつかのランダムな位置サブセットで生成され、他の位置では生成されないことによって)ランダムであるが既知のサイトサブセットにステッチすることができ、残りのサイトは、決定論的に生成されたスクイーズド真空状態で占有される。ある位置がサイトサブセット内にあるか否かの標示は、マルチプレクサに記憶される。符号化された量子ビットは、量子情報を運び、CV誤り訂正に使用される。マジック状態は、望みに応じて非クリフォード演算を実装するために使用され、クリフォード演算は、近くのCVノードが利用可能である場合にクラスタ状態のCVノードを使用して実行される。本明細書で使用するとき、「マジック状態」とは、パウリ演算子の置換に影響を与える要素を有するクリフォード群からの演算と共に使用されるときに、ユニバーサル量子計算を容易にする状態を表す。例えば、π/4ゲートの固有状態はマジック状態である。
【0016】
[0041] いくつかの実施形態では、ハイブリッドクラスタ状態の生成は、状態準備モジュール、多重化モジュール、及びメイン計算モジュールの3つのモジュールを使用して実行される。状態準備モジュールは、ボソン量子ビット及びマジック状態を生成するように構成される(例えばプログラム又はハードワイヤードされる)。多重化モジュールは、ボソン量子ビットの多重化を実行して量子ビット生成速度を上げ、空のモード(例えば、多重化量子ビット生成が失敗した)をスクイーズド真空状態に置き換えるように構成される(例えばプログラム又はハードワイヤードされる)。本明細書で使用するとき、「多重化」は、複数の非決定論的量子ビット生成デバイスを並列に使用すること、及びこれらのデバイスのいずれかで生成された量子ビットを出力にルーティングすることを表す。複数の量子ビット生成デバイスのうちの少なくとも1つの量子ビット生成デバイスが成功する確率は、単一の(多重化されていない)デバイスが成功する確率に比べて高くなる(すなわち「ブーストされる」)。メイン計算モジュールは、ユニバーサルフォールトトレラントな量子計算のためにハイブリッドリソース状態をステッチし(又は「エンタングル」し)、生成されたリソース状態に対して再構成可能な測定を実行して計算を完了するように構成される(例えばプログラム又はハードワイヤードされる)。これらのステップは以下でより詳細に述べる。
【0017】
[0042] 図1に示されるように、一実施形態による、ハイブリッドクラスタ状態を生成するための例示的なシステム100は、状態ファクトリ102、時間ステッチ104、空間ステッチ106、光量子処理ユニット(QPU)108、及びQPUコントローラ112を含む。状態ファクトリ102、時間ステッチ104、空間ステッチ106、フォトニックQPU108、及びQPUコントローラ112はそれぞれ、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組合せを使用して実装することができる論理機能を表す。本明細書で使用するとき、(例えばシステム100の)「アクティブ」なシステム実装は、インラインスクイーザを含み/インラインスクイージングを実行し、したがって、追加のスクイーズド状態及びホモダイン測定を使用する実装を表し、(例えばシステム100の)「パッシブ」なシステム実装は、インラインスクイーザを含まない/インラインスクイージングを実行しない、及び/又はビームスプリッタでスティッチングを実行する実装を表す。
【0018】
[0043] 状態ファクトリ102は、時間ステッチ104に動作可能に結合され、時間ステッチ104は、空間ステッチ106に動作可能に結合され、空間ステッチ106は、フォトニックQPU108に動作可能に結合される。状態ファクトリ102のコンポーネントは、GKP状態を生成し、GKP状態を時間ステッチ104に出力し、時間ステッチ104は、遅延線ループを実装し、量子ビットが受信されると量子ビットをつなぎ合わせる。空間ステッチ106のコンポーネントは、時間ステッチ104からの出力を空間領域で多重化して、多次元のハイブリッドリソース状態を生成する。フォトニックQPU108は、QPUコントローラ112によって制御されて、本明細書で論じるように、複数のハイブリッドリソース状態からのハイブリッドリソース状態を、フォールトトレラントな量子計算のための状態を含む高次元クラスタ状態にエンタングルする。QPUコントローラ112は、フォトニックQPU108から直交読み出し111を受信することができ、位相更新109をフォトニックQPU108に送信することができる。また、QPUコントローラ112は、プログラム116に関連する命令115を受信することができ、結果114を出力することができる。
【0019】
モジュールシステム構成
多重ガウシアンボソンサンプリング(「GBS」)デバイスを使用するボソン量子ビットの生成
[0044] 単一ボソン量子ビットの状態を含む光の非ガウス状態の生成は、研究者によって提案、分析、及び開発されてきた。単一のGBSデバイスからの高忠実度の状態生成は非決定論的であるが、GBSデバイスを多重化して、高速で高忠実度の状態生成を得ることができ、より多量のハードウェアリソースを使用して、生成される状態の速度及び忠実度を高めることができる。GBSデバイスの多重化は、光子数分解検出器(PNR)の非ガウスリソースを活用するために使用することができ、GKPやキャットベースの状態など、ボソン符号化のための任意の論理単一量子ビット状態を生成することができる。図2A~2Cは、そのような多重化された状態生成の一例を示す。
【0020】
[0045] 図2Aは、非ガウス状態のガウシアンボソンサンプリング(「GBS」)ベースの準備を実装する単一の集積フォトニックデバイスを示す図である。図2Aでは、1つの出力ポートから放出された光は、残りの出力ポートに接続されたPNR検出器(図2A~2Bの「D」形のオブジェクト)で正しいクリックパターン{n}を得ることを条件として、選択された非ガウス状態にある。二重線は、放出ポートでスイッチをトリガするために使用される古典的な(すなわち非量子)論理を表す。図2Bは、単一のGBSデバイスの単純化された表現を示す図であり、図2Cは、一実施形態による、古典的論理を使用する、空間領域及び/又は時間領域で多重化されるGBSデバイスを含む状態準備デバイスを示す図である。
【0021】
1Dクラスタの時間領域生成
[0046] 本開示のいくつかの実施形態によれば、クラスタ状態は、1つ又は複数の光学遅延線を使用し、GKP量子ビット又はスクイーズド真空状態のいずれかを生成するソースを使用して、1つの時間次元(「1D」)で生成される。図3A(後述)は、1Dクラスタ状態の生成のためのセットアップの一例を示す。代替として、又は追加として、クラスタ状態は、他のボソン量子ビットを使用して生成することができる(例えば、フォトニック制御Z(「CZ」)ゲートの使用を含む)。CZゲートは、2量子ビット演算を実行する2量子ビットゲートである。CZゲートに関する真理値表は以下のようである。
【0022】
【表1】
【0023】
[0047] いくつかの実施形態では、集積フォトニックチップ回路は、光源(例えば図2A~2Cの集積フォトニックデバイス)から放出され、GBS状態準備を使用して生成された光を入力として受信する。より具体的には、放出されるモードは、
|+>GKP(マルチプレクサが成功した場合)、又は運動量スクイーズド状態(マルチプレクサが|+>GKPを生成しない場合に注入される)のいずれかでよい。第1のモードは、干渉計(その動作は、図3Bを参照して以下に図示して説明する)を使用して光学遅延線にスワップされ、その長さは、後続の光パルス間の距離に等しくなるように設定される。次いで、この第1のモードは干渉計に戻り、干渉計によって実装されたCZゲートで後続のモードと相互作用する(図3Bを参照)。この相互作用は、入射するモードごとに繰り返される。有効な光回路は、図4に示される等価な空間表現としてより容易に視覚化することができる。動作の最終ステップ中、干渉計を使用してスワップを実装することによって、循環する光が遅延線から追い出される。したがって、1次元GKPクラスタ状態が生成される。1次元クラスタを生成するための完全な例示的デバイスが図3Cに示されている。
【0024】
[0048] 図3A~3Bは、一実施形態による、時間領域における1D量子ビットクラスタの生成を示す図である。図3Aの左側で、多重化されたGBSデバイス302A~302Dを備えるソース300が、パルスシーケンスを生成するために使用され、各パルスは、選ばれた複数の選択された量子ビットの|+>状態にある。GBSデバイスに関する追加の詳細は、例として、2020年8月19日に出願された「非ガウス状態からガウス状態を生成するための装置及び方法」という名称の米国特許出願第16/997,601号、及び“Conversion of Gaussian States to Non-Gaussian States Using Photon-Number-Resolving Detectors,” Phys. Rev. A, 100 (2019)で見ることができ、各文献の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0025】
[0049] 第1の量子ビットが、スワップ操作を使用してループに送信される(図3Bの右上)。第2の量子ビットが第1の量子ビットに続き、CZゲートで第1の量子ビットと相互作用する(図3Bの右下)。出力パルスは、時間領域で1D量子ビットクラスタ状態にある。図3Aでの干渉計310は、使用される設定に応じて、スワップゲート又はCZゲートとして機能することができる。スクイーザ(図3A~3Bで「Sq」で表されている)をオフにし、移相器(図3A~3Bで「PS」で表されている)をπに設定すると、完全反射性を有するマッハツェンダ干渉計が有効化される(図3Bの右上)。移相器がオフであり、スクイーザがオンにされる場合、CZゲート(図3Bの右下)が有効化される。図3Aに記載されたNサイト1Dクラスタの生成は、第1のクロックサイクル中にスワップを実行し、最後のクロックサイクルを除く残りのクロックサイクル中にCZを実行することを含み、最後のクロックサイクルは(第1のクロックサイクル中のように)スワップを実行して光をループから追い出す。図3Cは、図3Aの1D量子ビットクラスタ生成器の単純化された表現である。
【0026】
2+1次元のGKPクラスタ
[0050] いくつかの実施形態では、上述した1次元ハイブリッド時間クラスタ状態は、フォールトトレラントな量子計算を実行するために使用することができる状態を含む高次元クラスタ状態にステッチすることができる。高次元のハイブリッド格子の生成は、例えば、複数の1次元ハイブリッドクラスタ生成器からのパルスとCZゲートとの相互作用によって達成することができる。一実施形態では、1Dクラスタ及び量子ビットソースの空間格子に作用する1つ又は複数のCZゲートを使用して、高次元のハイブリッド格子が生成される。
【0027】
[0051] いくつかの実施形態では、複数のクラスタ生成器の1Dチェーンを使用して、図5Aに示されるように、1つの空間次元及び1つの時間次元で(1+1)D(すなわち2D)立方クラスタ状態を生成する。生成された2D立方クラスタ状態は、1つ又は複数の遅延線に記憶することができ、例えば、特に事後選択されるゲートが使用される場合に、フィードフォワードベースの測定のための時間を確保する。
【0028】
[0052] 他の実施形態では、図5B及び5Cに示されるように、2次元チップを使用して、2つの空間次元及び1つの時間次元で3D立方クラスタ状態を生成することができる。より具体的には、図5Aは、複数の1Dクラスタ生成器を使用した(1+1)Dクラスタ状態の生成を示す。同時に到着する他の量子ビットとCZ相互作用によって相互作用する量子ビットは、立方格子に(1+1)Dクラスタ状態を生じる。図5Bは、一実施形態による、(2+1)Dクラスタ生成器に関する例示的な2Dチップレイアウトである。図5Bの2Dチップレイアウトは、1Dチップに類似しており、ただしソースがチップ上に2D格子として配置されている。図5Cは、一実施形態による、図5Bのレイアウトを有する2Dチップを使用して生成された3D立方格子を示す。図5Cで見られるように、
GKP|+>状態(黒い点)と運動量スクイーズド状態(白い点)とを反映する2つのタイプの点が存在する。いくつかの実装形態では、使用される正確なクラスタに応じて、他のノードがマジック状態になることもある。
【0029】
ハイブリッドRaussendorf-Harrington-Goyal(「RHG」)格子の生成
[0053] 一実施形態に従って、例示的なクラスタ、すなわち(パラダイム的な例としての)Raussendorf格子の生成について以下に論じる。Raussendorf格子の代わりに、又はそれに加えて、フォールトトレラントな量子計算に有用な1つ又は複数の他の格子(例えば非葉状格子)を、量子誤り訂正符号の選択に応じて選択し、本明細書に記載されるスキームを使用して生成することもできる。
【0030】
[0054] 図6Aは、一実施形態による、Raussendorf格子の2つの層の例示的な表現を別々に示す。より具体的には、図6Aは、Raussendorf格子の交互の偶数層と奇数層を示す。ドットは、個々の計算量子ビットを表し、ドット間の接続は、エンタングルメントを表す。図6Aの左側のサブ図は、Raussendorf格子の偶数層を表し、図6Aの右側のサブ図は、Raussendorf格子の奇数層を表す。図6Bは、図6AのRaussendorf格子の2つの層の合成された表現である。「A」で表されるドットは、各層に存在し、次の層及び前の層の対応する量子ビットに接続されている一種の量子ビットを表す。「B」で表されるドット(量子ビット)及び「b」で表される結合は、奇数層にのみ存在する。「C」で表されるドット(量子ビット)及び「c」で表される結合は、奇数偶数層にのみ存在する。
【0031】
[0055] 図6Cは、図6AのRaussendorf格子を生成するための、複数の制御Z(「CZ」)ゲート(黒い点/ノードの対を結ぶ直線)を含む例示的なチップレイアウトを示す。図6Cのチップは、例えば、図1のフォトニックQPU108を含むことができる。図6Cのレイアウトは、量子ビットソース(図2Cに示されるものなど)と1Dクラスタソース(図3Cに示されるものなど)との2つのタイプのソースを含む。図6Cのチップの動作中、量子ビットソースから放出された量子ビットは、それらの空間的に隣接する量子ビット、すなわち同時に放出された量子ビットとのみエンタングルされる。クラスタソースから放出された量子ビットは、2つの空間的に隣接する量子ビットだけでなく、前及び後に放出されたモードともエンタングルされる。交互の時間ステップで量子ビットソースの半分をオン及びオフにすることによって、Raussendorf格子を生成することができる。この格子は、以下でさらに論じるように、フォールトトレラントな量子計算を実行するためのリソースとして機能することができる。
【0032】
[0056] 図6Cに示されるように、3種類のソースがチップ上にまとめられている。「D」で表されるボックスは、ハイブリッド1Dクラスタ状態のソースであり、エンタングルされた量子ビットのシーケンスが時間遅延τで放出される。「H」で表されるボックスは、ハイブリッド量子ビットソースである。「B」及び「C」で表される点は、2τの時間遅延でのみ発射する量子ビットソースであり、「B」ソースは、(2n-1)τの時点でのみ発射し、「C」ソースは、(2n)τの時点でのみ発射する。図6Cのチップ上のラインは、CZゲートを表す。「b」で表されるCZゲートは、奇数時間にのみオンにされ、「c」で表されるCZゲートは、偶数時間にのみオンにされる。これらの量子ビットとCZゲートとが合わさって、Raussendorf格子の様々な層、及びそれらの層の間の接続を生成する。
【0033】
システム構成のパッシブバージョン
[0057] ロバストであり安定な光量子情報は、ハイブリッド連続変数(CV)及び離散変数(DV)アーキテクチャで、GKP量子ビットと、測定ベースの量子計算(MBQC)によって実装された量子ビット量子誤り訂正符号とを組み合わせることによって生成することができる。しかし、このタイプの最もよく知られているアーキテクチャは、CZゲートの回路ベース又は測定ベースの実装でのインラインスクイージングが雑音をもたらすという点で、依然として重大な課題がある。さらに、決定論的なGKPソースの使用により、多重化に関連する高い計算コストが生じる可能性があり、線形光学ネットワークでの迅速な再構成の要求により、ICへの大きな負荷がもたらされる可能性がある。前述の要素はそれぞれ、各光子がシステムを通過する際に遭遇する光学コンポーネントの数をさらに増加させ、それによって損失を悪化させる。損失は、光量子コンピュータで最も有害な欠陥である。
【0034】
[0058] 本明細書に記載されるいくつかの実施形態によれば、GKP量子ビットの確率的ソースの出力は、インラインスクイージングを使用せずに、及び/又は再構成可能な線形光学系を使用せずに、MBQCのためのフォールトトレラントなリソース状態にエンタングルすることができる。本開示のアーキテクチャは、1つの時間次元及び2つの空間次元で3次元マクロノード格子構造を生成することができ、格子構造内の各サイトが、4つのモードを含む(又はいくつかの実装形態では、それらからなる)。いくつかの実装形態では、生成回路は、シングルモードソース、バランスの取れたビームスプリッタの深さ4の静的回路、シングル時間ステップ遅延線、及びホモダイン検出器のみからなることがある。生成されたリソース状態は、CV/DVハイブリッド化されたRHGクラスタ状態と同様に使用することができるが、プロセスは、他の量子ビット符号に一般化可能である。さらに、生成回路の対称性により、ビームスプリッタネットワーク全体にわたる有限スクイージング雑音と均一な光子損失との両方が、各検出器の前の局所ガウス雑音と等価になり得る。
【0035】
[0059] 外(量子ビット)符号の論理誤り率を、GKP状態生成の様々な失敗確率にわたって、様々なレベルの有限スクイージング及び光子損失について計算した。ソースがGKP状態の生成に失敗した場合、スクイーズド真空状態が生成されていると仮定される。例えば、15dBのスクイージング及び無損失で、本開示のアーキテクチャは、50%を超えるGKP失敗率を許容し、既知のシステムのノードごとの状態準備モジュール及びマルチプレクサのサイズを大幅に縮小することができることが分かった。さらに、決定論的なGKP状態生成の条件下では、既知のシステムがCZゲート内のインラインスクイージングからの雑音を無視しているにもかかわらず、約10dBのスクイージング閾値が見つかった(既知のシステムで見つかった値よりも低い)。所与のGKP失敗率に関する、許容可能な有限スクイージング雑音と均一な光子損失率との間のトレードオフについては以下で論じる。
【0036】
[0060] 量子ビットは、GKP符号化によって光ボソンモードに符号化することができ、理想的な論理0及び1符号語は以下のように定義される。
【数1】
【0037】
[0061] ここで、μは、値0又は1に関するプレースホルダであり、
【数2】
は、論理GKP状態を示し、nは、全ての整数にわたる指数であり、|・>|・>は、位置固有状態である。本明細書で提示されるように、GKP符号空間内のシングルモード状態は、オーバーバーで示される。シングルモードスクイーザを
【数3】
とし、ここで、S(ξ)は、スクイージングパラメータξを有するスクイージングユニタリゲートの数学的表現であり、
【数4】
は、量子調和振動子の直交演算子(位置/運動量)であるとすると、使用される追加の状態は、運動量固有状態|0>、センサ状態
【数5】
、及び
【数6】
などのマジック状態を含むことができ、ここで
【数7】
であり、マジック状態は、非クリフォード演算を実装するために使用される。
【0038】
[0062] 有限スクイージングの効果は、理想的な|0>p及び|φ>状態に加法的ガウシアンボソンチャネルを適用することによりモデル化することができる。
【数8】
ここで、ρは、単一ボソンモードの量子状態の密度行列を示し、
【数9】
及び
【数10】
は、それぞれ位置及び運動量位相空間方向に沿った変位である。
【0039】
[0063] 50:50ビームスプリッタは、
【数11】
として定義され、モードjからkへの矢印で表される(図13の式(3)を参照)。移相器は、
【数12】
として定義され、R(π/2)は位相空間でのフーリエ変換に対応し、GKPアダマールゲートを実装する。ホモダイン検出器は、直交演算子の線形結合を測定し、
【数13】
、及び
【数14】
測定は、それぞれGKPパウリZ、X、及びY測定を実装する。シングルモードスクイーズド真空状態は、S(ξ)|0>によって与えられ、lnξ→±∞が、|0>p(q)である。CV CZゲートは、
【数15】
として定義され、CV CXゲートは、
【数16】
として定義される。これらは、それぞれGKP CZ及びCXゲートを実装する。ここで、それぞれ制御モードjで黒丸と白丸を使用することによって、CXjk
【数17】
から区別される(例えば、図13を参照)。最後に、GKPパウリX及びZ演算子は、それぞれq及びp直交位相における
【数18】
の任意の奇数整数倍の変位によって実現される。
【0040】
3Dハイブリッドマクロノードアーキテクチャ
[0064] 確率論的GKP状態ソースと互換性があるRHG格子状態に関して、一定深さ生成回路が提案されている。しかし、この提案は、インラインスクイージング(CZゲートに存在)と時変回路(すなわち、偶数時間ステップと奇数時間ステップとで異なるゲート配置)の使用を伴うため、依然として実験的に難しい。前述の問題はそれぞれ、RHG格子ターゲット状態を計算的に等価なマクロノードクラスタ状態に置き換えることによって回避することができ、各ノードは、マルチモード測定を受ける複数のモードを有する。
【0041】
[0065] 図12は、挿入図(A)に、3Dハイブリッドペアクラスタ状態の主単位セルを示し、挿入図(B)~(C)は、いくつかの実施形態に従って、それを生成するためのステップを示す。図12の挿入図(B)~(D)は、導波路を通る光の伝播方向と一致するZ方向に積層された導波路層の断面として示されている。3D格子は、2つの空間(X,Y)次元及び1つの時間次元で存在する。時間次元は、幅ΔTの離散時間ビンに分割される。色(緑色は「G」、青色は「B」、黄色は「Y」、赤色は「R」、黒色は「K」で表されている)が図12に含まれ、ソースと最終状態との関係を示す。黄色と青色は、偶数時間又は奇数時間シグネチャを示す。青色の形状の上にあるマクロノードは、挿入図(A)の青色のマクロノードに対応する。黄色の形状の上にあるマクロノードは、(A)での黄色のマクロノードに対応する。緑色の形状の上にあるマクロノードは、挿入図(A)の緑色の領域(すなわち、部分的に青色、部分的に黄色)に対応する。赤色の矢印(「R」で表される)は、空間的な接続を表し、黒色の矢印(「K」で表される)は時間的な接続を表す。図12の挿入図(B)は、第1の層での導波路構成を示し、各ノードが、ΔT幅の時間ビンごとにソースから入力を受信する。黒丸のノードの時間ビンは、白丸のノードに対してΔT/2だけオフセットされる。矢印で示されているように、50:50のビームスプリッタがモードのペアの間に適用され、これらはエンタングルされたペアを生成する(以下の式(7)を参照)。黒色の矢印で示されたビームスプリッタは、状態をZ方向に接続するエンタングルされたペアを作成する。図12の挿入図(C)では、Xは、ΔT/2時間遅延線の適用を示し、斜線は、π/2位相遅延の適用を示す。図12の挿入図(D)では、各マクロノードを構成する4つのモード間に4つの追加のビームスプリッタを適用することによって、状態がマクロノードクラスタ状態に接続される。点線で示されたビームスプリッタは、実線で示されたビームスプリッタの後に適用される。時間遅延線により、特定のノードの時間シグネチャが変化することに留意されたい。
【0042】
[0066] いくつかの実施形態では、3Dハイブリッドペアクラスタ状態の基本構築ブロックは、一種の2モードエンタングル状態であり、これは、最初にGKP又は運動量スクイーズド真空のいずれかであるモードペアを生成し、50:50ビームスプリッタを介してモードペアを送信することによって生成することができる。構成モードはビームスプリッタによってのみ結合されるが、結果として得られるペアは、図13(式3~6)に示される恒等式によって明らかにされるように、2モードのクラスタ状態に相当し、ここで、
|φ>は、任意の状態でよい。これらの恒等式から、|ψ>と|φと>の両方が
【数19】
である、又は状態|ψ>、|φ>の少なくとも一方が|0>であると仮定して、図14に示される状態図を得ることができる。|φ>又は|0>のいずれかにランダムにしかアクセスできない場合でも、ハイブリッドCV-GKP量子ビットクラスタの単位として機能するエンタングル状態が常に得られる。|ψ>又は|φ>を|+T>などのマジック状態にし、もう一方を|0>にすることによって、マジック状態をこのアーキテクチャに挿入することができる。(2モード)GKP EPR状態及びGKP/CVエンタングル状態の作成に関する追加の詳細は、例として、“Continuous-Variable Gate Teleportation and Bosonic-Code Error Correction,” B. Walshe, et al., Physical Review A (102), December 2020で見ることができ、その内容全体を、あらゆる目的で参照により本明細書に援用する。
【0043】
[0067] いくつかの実装形態では、エンタングルされたペアは、図12の挿入図(A)に示されるように、3D構成で配置される。これを実現するために、一定間隔で、確率1-pswapで|φ>を放出し、確率pswapで運動量スクイーズド状態を放出するソースの2Dアレイから始める。所望の確率pswapが、有効なソースごとに複数のGBSソースの多重化により生じ得ると仮定する。各ソースが長さΔTの時間ステップごとに入力モードを生成することを指定することができるが、ソースの半分のタイミングは、図12の挿入図(B)での2Dレイアウトにおけるその位置に従ってΔT/2だけオフセットすることができる。図12の挿入図(B)及び(C)でのビームスプリッタ、遅延線、及び位相遅延は、(2+1)次元でのペア状態の所望の配置を生成する。
【0044】
[0068] 完全に接続された3Dリソース状態を作成するために、図12の挿入図(D)に示されるように、クワッドレール格子構造と同様に、各マクロノード内に4つの50:50ビームスプリッタを適用することができる。結果として得られる状態の詳細な図的表現は、以下の「エンタングルメント構造」のセクションで述べる。その後、各モードは、ホモダイン検出器に送信される。
【0045】
正準ハイブリッドクラスタ状態との等価性
[0069] いくつかの実施形態では、ノードごとに1つのモードがあり、その生成はCZゲートを伴うので、ハイブリッドRHGクラスタ状態が正準RHG格子状態として使用される。図12の回路によって生成される状態は、この状態のマクロノードバージョンである。サテライトモードと呼ばれる3つのモードを常に測定する場合が、
【数20】
基底でのマクロノード内で考慮される。このとき、中央モードと呼ばれる残りのモードが正準RHG格子状態を生成する。これは、図15を参照して以下に論じるように、回路の恒等式によって示すことができる。
【0046】
[0070] 図15の挿入図(A)は、中央モードがトップワイヤである場合における、単一のマクロノード0に関連するビームスプリッタネットワークの回路表現を示す。また、ビームスプリッタによる隣接するマクロノードへの接続性も示されている。回路規則は、図15の凡例に示されている。最後の4つのビームスプリッタは、図12の挿入図(D)でのビームスプリッタに対応する。図15の挿入図(B)は、挿入図(A)に対する等価回路を示し、これは、図14の恒等式の適用により導かれる。Xは、変位X((m+m/2)を表す。Sはスクイージングゲートであり、その効果は、ホモダイン結果を再スケーリングすることである。図12の挿入図(C)は、挿入図(B)と等価な回路を示し、これは、CZゲートを測定に向けて移行させる回路の恒等式から導かれる。交換された
CXゲートは、回路入力に自明に作用するので、点線で描かれている。変位Z;…,は、隣接するマクロノードでのサテライトモードの測定結果に依存する。
【0047】
[0071] 測定後の状態の記述を節約するために、各マクロノードでの中央モードは、可能であれば常に、GKP状態で準備されている入力を有するワイヤから選択することができる。量子回路によって状態生成及び測定を表すと、中央モードが図15の挿入図(A)に示されるトップワイヤであるとみなされる場合にさらに節約することができる。最後に測定ベースを置換することによって、他の場合もこの場合と同等にすることができるからである。式(3)及び(7)を使用して、ビームスプリッタを、CX(†)ゲート及びスクイーザで置き換えることができる。測定側では、ゲートX(a)、S(ξ)、及びCXjk間の交換関係と、ホモダイン測定に関する恒等式<m|X(a)=<m-a|,<m|S(ξ)∝<m/ξ|,及び
【数21】
を適用することによって、図15の挿入図(B)に示される等価回路が得られる。次に、関係
【数22】
を使用して、全てのCZゲートが、測定に向かってCXゲートを横切って交換される。これは追加のCZゲートを生成するが、サテライトモードでのサポートを伴うものを、恒等式
【数23】
による変位により置き換えることができる。これらの変化は、図15の挿入図(C)に示されている。
【0048】
[0072] 中央モードは、符号化されたGKP状態
【数24】
であり、プラス状態又はマジック状態であると想定されるので、マクロノードが少なくとも1つのGKP状態を含む場合、式(5)及び
【数25】
を使用することによって、図15の挿入図(C)での回路の最初に作用する
【数26】
ゲートを除去することができる。それにより、サテライトモードはエンタングルメント構造から切り離され、各マクロノードの中央モードのみでサポートされる状態は、影響を後処理で除去することができるスクイージング(S(2))及び変位演算子(X0及びZ1~Z4)まで、ハイブリッドRHG格子と同一である。ここまで、有限スクイージング及び光子損失の影響は考慮されていないが、以下のセクションで取り扱う。
【0049】
雑音モデル
[0073] 真空状態の位相空間平均を保存する任意のシングルモードガウシアンボソンチャネルεは、以下の式を満たす。
【数27】
【0050】
[0074] さらに、εが、位相空間直交位相に関して等方性でもある場合、次式が成り立つ。
R(θ)(ε(・))R(θ)=ε(R(θ))(・)R(θ) (10)
【0051】
[0075] これらの恒等式から、図12の挿入図(B~D)でのビームスプリッタ層の直前で発生する均一な光子損失を、図15の挿入図(A)でのホモダイン検出器の層の直前で作用するように結合して交換することができる。ηは、各検出器の前に作用する累積損失の合計透過係数を表す。ホモダイン結果を
【数28】
で再スケーリングすることによって、累積損失チャネルを分散
【数29】
を有するガウスランダム変位チャネルで置き換えることができる。ソースの行出力に作用する式(2)に示される
【数30】
を有するガウスランダム変位としてモデル化された有限スクイージング雑音は、全ての光学要素にわたって交換することができ、有限スクイージング雑音は、ホモダイン検出器の前に作用する。損失と有限スクイージング雑音との複合効果が、分散
【数31】
を有する正規分布から導かれる不確かさを有するホモダイン結果をもたらす。
【0052】
[0076] 光子損失と有限スクイージング雑音とが測定データでのガウスランダム雑音として考慮に入れられると、上述した正準RHG格子状態への縮小を適用することができるようになる。しかし、この雑音の多い測定データを再解釈して、図15の挿入図(C)での中央モードで条件付き変位(別名、副生成物演算子)を元に戻すことは、中央モードのホモダイン結果をさらに歪める。
【0053】
閾値計算
[0077] マクロノードリソース状態に関する訂正可能な領域は、モンテカルロシミュレーションによって見つけることができ、各試行は、次の3つのステップを含む。図12で準備された完全なマクロノードRHG格子をシミュレートすること、それを正準格子に縮小すること、及び縮小された格子に対して誤り訂正を実行すること。
【0054】
[0078] マクロノード格子の雑音の多いホモダイン結果は、最初に(理想的な)直交位相をサンプリングし、エンタングルゲートを適用し、次いでそれらを共分散行列
【数32】
を有する正規分布の平均として使用することによって生成される。このモデルは、均一ガウス検出前雑音に対応する。上述した減少手順に従って、中央モードでの雑音は、生成回路と副生成物演算子との両方から生じる。次いで、条件付き量子ビットレベル誤り確率を推定し、例えば最小重み完全マッチングを使用して、より高いレベルの符号のデコードに使用することができる。
【0055】
[0079] 全てのモードがGKP状態にある場合、スワップアウト確率pswapの閾値は、10.1dBであることが判明した。あらゆるマクロノードが正確に1つのGKP状態を有するという追加の制限により、閾値は13.6dBになる。パッシブアーキテクチャのスワップアウト許容度の著しい向上があり、いくつかの既知のアクティブアーキテクチャに関する約24%とは対照的に、約71%である。
【0056】
[0080] 理論に束縛されることは望まないが、本発明者らは、観察された向上について2つの主な理由を仮定している。第1に、GKPモードと運動量スクイーズド状態とのスワップは、その隣接するものの間で相関される雑音を導入する。縮小前のマクロノードでの4つのモード全てがスワップされた場合にのみ、縮小された格子が有効な運動量スクイーズド状態を有することが分析から明らかになっている。したがって、マクロノード格子の冗長性により、スワップアウトに対する許容度がより大きくなる。第2に、隣接するGKP状態の測定を条件とする副生成物演算子がビニングされ、したがってガウス雑音を伝播しない。実際、所与のマクロノードに存在するあらゆる追加のGKP状態は、追加の度合いの局所GKP誤り訂正を提供する。
【0057】
[0081] 既知の研究において、利用可能なスクイージングが十分に高いという条件で、GKP量子ビットの確率的ソースを用いた光量子計算のために量子誤り訂正(トポロジー的に保護されたクラスタ状態の形式で)を使用することができることが示されている。しかし、そのような研究は、インラインスクイーズと時変ビームスプリッタとの両方を備えたシステムを想定しており、どちらも、所望の雑音レベルで実装するのは難しい。マクロノード格子を生成するために静的線形光回路を使用することによって、いくつかの実施形態による本明細書で述べるアーキテクチャは、そのような障害を回避し、それにより、望ましい(すなわち最適に低い)雑音レベルでトポロジー誤り訂正を実装することを実現可能にする。
【0058】
[0082] いくつかの実施形態では、本明細書で述べるハイブリッドクラスタ状態を生成するためのシステムは、実験的に要求の高いCZゲートを使用しない。そのようなCZゲートは、以前は研究者の間で理想的であると考えられていたが、状態の質を実質的に劣化させることが示されている。そのような劣化の原因は、インラインスクイージングであると考えられている。本明細書で述べる実施形態は、回路恒等式を用いて、全てのスクイージングを回路の入力に(状態準備に吸収することができる)、又は出力に(ホモダイン測定結果の従来的な処理として現れる)移行することによって、そのような劣化を回避する。さらに、Z方向での接続性を有するサイトでモードの数を倍化することによって、クラスタ状態生成回路での光学要素の再構成可能性の必要をなくすことができる。残りの再構成可能なコンポーネントは、個々のGKP状態の多重化されたソース(スイッチが使用される場合)、及び各ホモダイン検出器の局所発振器フェーズのみにある。
【0059】
[0083] リソース生成回路の対称性を利用することによって、均一な損失効果と有限スクイージング効果との両方を、各検出器に関連付けられた複合ガウス雑音に統合することができる。そのようなモデルは、有限スクイージング雑音と光子損失とを対等に処理することができ、前例のない雑音の減少を促すことが分かっている。
【0060】
[0084] 回路恒等式は、生成回路の置換対称性から生じる、本明細書で述べるリソース状態のサテライトモードによって提供される組込みの冗長性を表す。マクロノードごとに複数のGKP状態を有することは、GKP誤り訂正の追加のラウンドと同等であり、全GKPの場合に閾値を約10dBに保つ。しかし、マクロノードにGKP状態を1つだけでも与えることは、各サイトでの符号化状態がGKP状態のように挙動することを意味し、スワップアウトに対する許容度が大幅に高くなる。15dB、すなわち(バルク光学系におけるスクイーズド真空に関して)観察された現在報告されている最高レベルの光スクイージングで、本明細書に記載の実施形態は、運動量スクイーズド状態によるそのGKP状態の半分を超える置き換えに対応することができる。これは、クラスタのモード数の増加が、各ノードでの確率的状態ソースの数の対応する減少によってバランスを取られることを意味し、これにより、多重化の要件が大幅に緩和される。まとめると、本開示のシステムによって実現可能な結果は、フォールトトレラントでありスケーラブルな光量子コンピュータの実現を実質的に促す。
【0061】
エンタングルメント構造
[0085] 生成回路と生成状態のエンタングルメント構造との関係を以下に述べる。図12の挿入図(C)及び(D)に示される状態生成段階の後、モードのアレイは、図16の挿入図(A)に示されるようなものになる。図16は、ハイブリッドマクロノード3Dクラスタ状態のグラフを示す。図16の挿入図(A)は、2Dモードレイアウトを示し、図12の挿入図(C)及び(D)と一致するΔT/2オフセットモードを有する。すなわち、黒丸のノードでのモードは、白丸のノードでのモードに対してΔT/2だけ時間的にオフセットされる。各マクロノードは、1~4で表される4つのモードからなる。図16の挿入図(B)は、4モードマクロノードの3次元配置を示す。わかりやすくするために、A~Fの文字を付された標識は、所与の文字に対応する色を有しており、より深い層ほど薄い色になっている(X及びY方向には緑色、Z方向には赤色;薄い緑色は「LG」で表され、濃い緑色は「DG」で表され、薄い赤色は「LR」で表され、濃い赤色は「DR」で表されている)。単位セルから、立方体の背面に対応する5つのモードが省かれている。XY平面での接続性は、前面と同一である。図16の挿入図(C)は、挿入図(B)での各結合に関するマクロノードグラフエッジを示す。上の6つの構成は、重みが1のCZゲートに対応し、図12の挿入図(A)におけるようにモードのペアをつなぐ。下の6つの構成は、重みが±1/4のCZゲートに対応し(より濃いエッジが正であり、より薄いエッジが負である)、図12での挿入図(D)に示される段階後のモードの接続性を示す。
【0062】
[0086] 図12での黒丸のノードは、これらの格子サイトが時間モードで存在し、白丸のノードの格子サイトと比較してΔT/2だけオフセットされていることを示していることを想起されたい。マクロノードへのモードのグループ化は、黄色(青色)の正方形と長方形で示され、これらのマクロノードがΔT/2だけオフセットされている(オフセットされていない)ことも示す。図12での段階CとDの間の点までリソースが構築されるとき、図12の挿入図(A)に示されているように、CV/DV RHGクラスタ状態に関する射影エンタングルペア状態(PEPS)に相当する。グラフノードによる導波路モードの正確な識別は、図16に示されている。
【0063】
[0087] 本明細書で述べるように、各マクロノードごとのモードの4対1の減少は、4つのビームスプリッタ及び3つのホモダイン測定を実施するのと等価な射影作用素の適用に相当し得る。同様に、ビームスプリッタの後で他の測定を実行することもできる(正準格子で実現することができるものよりも一般的な操作をもたらす)。ビームスプリッタ後であるが、ホモダイン測定前の状態に関する4層グラフが、図16の挿入図(C)に示されている。濃い/薄いエッジ色付けは、全てのモードが最初にスクイーズド状態である場合に、ガウス純粋状態に関するグラフィカル計算から生じる、状態の実数値隣接行列でのプラス/マイナス記号と整合性がある。
【0064】
[0088] 上述したパッシブシステム構成のいくつかの実装形態では、パッシブ格子は、次元2(例えば、2、4、8、16)の格子に関して決定することができる。パッシブ実装形態に関する追加の詳細は、例えば、https://arxiv.org/abs/2104.03241で閲覧可能な“Fault-Tolerant Quantum Computations with Static Linear Optics,” I.Tzitrin, et al.に記載されており、その内容全体を、あらゆる目的で参照により本明細書に援用する。
【0065】
[0089] 上述したように、図6A~6Cは、一実施形態による、Raussendorf格子を生成することができる方法を表す。各ノードは、シングルモードソースの出力を表し(各時間ステップで、GKPプラス状態又は運動量スクイーズド状態のいずれかを放出する)、各リンク/エッジは、CZゲートの適用を表す(例えば、2つのビームスプリッタの間に挟まれた1対のスクイーザを使用して実装される)。しかし、いくつかの例では、生成手順でのCZゲートの使用は、例えば測定ベースのスクイージング及びフィードフォワードゲートを使用してアクティブスクイージング要素が実装されるときに、アーキテクチャ的に難しいことがある。したがって、いくつかの実施形態では、図6A~6Cでのリンク/エッジによって表されるCZゲートの全てが50:50ビームスプリッタで置き換えられ(例えば、測定ベースのスクイージング及びフィードフォワードゲートは、フォトニクスチップ上の追加の高速電子回路を必要とすることがあり、不要な雑音を光に投入する可能性があるので、50:50ビームスプリッタは、実験的に実装するのがより簡単であり得る)、図6Bでの各ノードは以下のように変更される:「B」及び「C」ノードは、4つの追加のビームスプリッタを介して送られるスクイーズド光/GKPプラス状態の4つの別個の光源を含むように変更され;「A」ノードは、6つの追加のビームスプリッタを介して送られるスクイーズド光/GKPプラス状態の6つの別個の光源を含むように変更される。そのような変更の一例が図7に示されており、関連するパッシブシステム構成チップレイアウト全体の一例が図8に示されている。
【0066】
[0090] 図7では、各リンク/エッジは、(CZゲートではなく)50:50ビームスプリッタを表す。4つの異なるタイプのノードが図7に示され、それぞれが、4つのモード又は6つのモードのいずれかを放出するように構成される。図7での表現は、図6Bと同様である。「A」ノード(及び「a」リンク/エッジ)は、状態生成器の各層で実装され、「B」ノード及び「b」リンク/エッジは、状態生成器の奇数層で実装され、「C」ノード及び「c」リンク/エッジは、状態生成器の偶数層で実装される。図7の各パネルでの矢印は、最も右側のビームスプリッタの相互作用が次に実装されることを示す。図7の最も右側の図での二重線は、実線で示されているビームスプリッタと同時には実装することができないビームスプリッタを示すが、実線/二重線のビームスプリッタの順序は、最も右側の図において交換可能である。言い換えると、任意の特定のマクロノード(すなわち、図7での4つの「B」及び/又は「C」モードの集合)は、4つの状態のみによって占有される。生成された状態はより多くのモードを含み、より複雑なエンタングルメント構造を有するが、局所ホモダイン測定に基づいてRaussendorf-Harrington-Goyal(「RHG」)格子に縮小することができる。
【0067】
[0091] 上述したように、図8は、一実施形態による、図6に示されるようなノードを含む、状態を生成するためのパッシブシステム構成チップレイアウトの概略図である。図8では、モードペア「P」のそれぞれにおける1つのモードは、(図10Bにも示されるように)異なる時間ステップでの層を接続するためにΔtだけ時間的に遅延される。図8の各モードペアにおいて、
【数33】
は、前の層へのリンク/エッジに対応し、
【数34】
は、次の層へのリンク/エッジに対応する。「e」で表されるリンク/エッジは、偶数時間ステップごとに、単一の時間ステップで同時に発生するリンク/エッジを示し、「o」で表されるリンク/エッジは、奇数時間ステップを示す(偶数又は奇数の選択は任意であり、単位時間ステップでの交互配置を説明するためにここで選択されていることに留意されたい)。任意の所与の時間ステップで、特定の時間ステップ(奇数又は偶数)に対応する全ての矢印が、モードペアPをつなぐリンク/エッジと共に実装される。モードペアPをつなぐリンク/エッジは、全ての時間ステップで実装され、矢印は
【数35】
モードから
【数36】
モードを指す。図8では、4つのタイプの2モードエンタングル状態があり、それぞれがビームスプリッタリンク/エッジによって接続される(図11を参照して以下でさらに論じる):(1)偶数時間ステップで実装される「e」で表されるエンタングル状態(ダンベル形状)、(2)奇数時間ステップで実装される「o」で表されるエンタングル状態(ダンベル形状)、(3)前の時間ステップに入る他のモードとのエンタングル状態に対応する
【数37】
、及び(4)次の時間ステップに入る第2のモードとのエンタングル状態に対応する
【数38】
図10Bで説明するように、
【数39】
又は
【数40】
に対応するエンタングル状態はそれぞれ、2つの連続する時間ステップごとに1回発射し、これらの発射は互いに交互にされることに留意されたい。任意の時間ステップで、各マクロノード(又はジャンクション)は、正確に4つの状態によって占有される。各マクロノードに適切なホモダイン測定を適用することによって、構成全体を、前述したRaussendorf格子の構成に縮小することができる。
【0068】
[0092] 図8の回路の構成要素に関する凡例を、図10A~10Bを参照して示して述べる。図10Aは、図8のダンベル形状のエンタングル状態を示し、各エンタングル状態が、ビームスプリッタで相互作用する2つのモードを含む。使用される2つのモードの選択に応じて(それぞれのダンベル形状のエンタングル状態の終端にある小さな円)、様々な異なるエンタングル状態を実装することができ、その例は図11に列挙する。図10Bは、
【数41】
及び
【数42】
エンタングル状態に関する凡例である。
【数43】
は、図10Aのものと同様のエンタングル状態に対応するが、時間遅延が存在する点が異なる。例えば、第2のモードが時間ステップ「t」で測定された場合、第1のモードは、時間ステップ「t-1」で測定されており、これは十字の記号で表される。しかし、第1のモードが時間「t」で測定された場合、遅延されるモードは、時間ステップ「t+1」で測定される。
【数44】
も、時間遅延を有するエンタングル状態に対応するが、第1のモードが時間ステップ「t」で測定され、第2のモードが時間ステップ「t+1」で測定される。交互の奇数エンタングル状態と偶数エンタングル状態とを有するこれらの時間遅延ノードのインターリーブにより、図8に示される動作が生じる。図10A及び10Bのビームスプリッタは、所与の用途に望まれることがあるので追加の移相器を含むことができる。
【0069】
[0093] 図8に示される各エンタングル状態は、以下の少なくとも3つのタイプのうちの1つであり得る:(a)両方のモードが適切なスクイーズド状態である;(b)1つのモードがスクイーズド状態であり、1つのモードが、選択されたGKP状態である;又は(c)両方のモードが、選択されたGKP状態である。図11A~11Cは、一実施形態による、これらの異なるタイプの各エンタングル状態に関する等価回路をそれぞれ示す。
【0070】
パッシブアーキテクチャの一般化-一般的なグラフ状態のパッシブな構築
[0094] いくつかの実施形態では、N個のベルペアの集合を取得し、干渉計及びそれに続く破壊測定によって、それらのN個のベルペアの半分を単一の頂点に結合し、N個のエッジが各対の残りの半分をもたらすようにするための一般的なアルゴリズムが定義される。問題の単一ユニットは、図9に示されるグラフ変換として書くことができ、円「C」は、干渉計と相互作用するモードを示す。
【0071】
[0095] いくつかの既知のビームスプリッタネットワークは、クラスタ状態を構築するために4つのスプリッタを使用する。そのような方法は、別の4つのモードで手順を繰り返し、モード1をモード1に接続し、モード2をモード2に接続し、以下同様に接続する別の一連のビームスプリッタを追加することによって、8モードのマクロノードに拡張することができる。このパターンは、サイズ2のマクロノードをエンタングルすることができる一般化されたビームスプリッタネットワークにスケーリングし続けることができる。様々なサイズの符号に対応するために、追加の補助状態を使用してマクロノードのサイズを人為的に増やすことができ、その後、それらの追加モードを位置測定によって削除することができる。4スプリッタを使用するクラスタ状態の構築に関する追加の詳細は、例として、https://arxiv.org/abs/2104.03241で閲覧可能な“Blueprint for a Scalable Photonic Fault-Tolerant Quantum Computer,” by Bourassa, E.J., et al., Quantum (5), February 2021, and in “Fault-Tolerant Quantum Computation with Static Linear Optics,” by Tzitrin, I., et al.に記載されており、それぞれの開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0072】
[0096] いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、任意の形状及び任意のサイズのベースグラフからマクロノード構築を実装する。例えば、一実装形態では、アルゴリズムは、超立方体状態を実装するように構成されることがあり、別の実装形態では、アルゴリズムは、非超立方体状態を実装するように構成されることがある。
【0073】
[0097] 離散フーリエ変換(「DFT」)に基づく既知の干渉計は、図9の外部モード間でグラフに複素加重エッジを導入することができ、それにより、出力グラフ状態はもはや真のクラスタ状態ではなくなる。既知のユニバーサルNモードマルチポート干渉計法は、かなりの量の冗長性を含むので、望ましくないことがある。光ネットワークで使用される光学要素の数を最小限に抑えることによって、ネットワーク内で損失及び雑音を減少することができる。
【0074】
[0098] いくつかの実装形態では、所望の出力を含み、必要な光学要素を最小限にする、図9に示されるグラフ変換を実行するユニタリに関する最小基準は、1行又は1列のエントリが
【数45】
に等しくなるようなものであり、ここで、Nは、相互作用モードの数である。NxNユニタリ行列は、以下のように書くことができる。
【数46】
ここで、行列の他の要素は、任意の実数定数でよい。
【0075】
[0099] 式(11)の構造を有するユニタリ行列は、ビームスプリッタネットワークを用いて構成することができる。
【数47】
ここで、
【数48】
は、移相器によって行われるフーリエ変換(位相空間内でのπ/2回転)である。
【数49】
【0076】
[0100] 添え字は、演算子が作用するモードを表し、積は、左から右への演算子の順序に従う(i=1~i=N-1)。このネットワークは、N-1個のビームスプリッタのみを使用する。
【0077】
[0101] このセクションで述べた構成のいくつかの実装形態では、パッシブ格子は、次元6、10、12、14、18などの格子に関して決定することができる。
【0078】
量子誤り訂正
[0102] 以下では、いくつかの実施形態に従って、誤りの存在時に、計算に誤り訂正手順を適用する例を提示する。第1の例では、有限スクイージング誤りが対処され、確率的符号状態生成が考慮される。以下の方法1では、いくつかの実施形態に従って、フォールトトレラントな計算を実行するためのステップが提示される。方法1は、入力として、量子コンピュータで実行され、ユーザによって指定される特定の計算タスクを受け取る。計算タスクのサブルーチンは、論理演算の実装とインターリーブされる量子誤り訂正のラウンドの実装を含む。量子誤り訂正手順については、方法2でさらに詳述する。量子誤り訂正手順は、論理演算を実行するために実現されている測定結果を入力として受け取り、信頼できるシンドロームデータを出力する。本明細書で使用するとき、「シンドロームデータ」は、誤りが発生しているかどうか、発生している場合にはどのサイトが誤りを有するかを決定するために実行された測定の結果を表す。「信頼できる」とは、そのような測定を複数回実行し、測定の不備に対する結果の感度を低下させるために結果をポーリングすることによって得られる結果を表す。誤り訂正手順は、測定データを処理するためのデコーダの使用を含む。内部(ボソン)デコーダ及び外部(量子ビット)デコーダを含むデュアルデコーダの一例については、以下の方法3及び4で説明する。
【0079】
方法1:フォールトトレラントな量子計算を実行するための手順
入力:計算タスク及び問題への入力
1.コンパイル。計算タスク及び問題への入力に基づいて、演算の層を含む適切な論理回路を決定し、適切な量子誤り訂正符号及びデコーダを選択する。
2.状態の初期化。選択された量子誤り訂正符号及び論理回路に基づいてクラスタ状態を生成する。生成される状態の一例は、モードの既知のサブセットにGKP量子ビットを含み、残りのモードにスクイーズド真空状態を含むことができる。
3.論理回路の実装。論理回路を使用して論理演算/測定の層を繰り返し適用し、誤り訂正を実行する。
(a)量子計算と、選択された量子誤り訂正符号と、前の誤り訂正及び論理演算ラウンドからの測定結果とに適切であるように、適切な(例えば所定の)基底内でサイトのサブセットを測定することによって、論理演算の1つの層を実行する。測定は、例えば、光モードでのホモダイン測定を含むことができる。
(b)前のステップで得られた測定結果に対して、方法2を使用して誤り訂正を実行する。
4.測定結果の処理。論理測定結果を処理して、計算タスクに関する出力を得る。
出力:所与の入力に関する計算タスクの出力。
【0080】
方法2:量子誤り訂正を実装するための手順
入力:(1)論理演算の実行による測定結果、例えば、実数値のホモダイン測定結果、及び(2)どのサイトがGKP量子ビット及びスクイーズド真空を含むかに関する情報。
1.デコーダの実行。例示的なデコーダは、以下のように2ステップの手順を実装する。
(a)内部デコーダ:実数値のホモダイン測定結果を処理して、方法3によって得られたローカル及びグローバル情報を使用してビット値を表すバイナリ結果を得る。どのサイトがどの状態を含むかに関する情報を使用する。
(b)外部デコーダ及び誤り訂正:前のステップによって提供された追加情報を用して、方法4を使用して外符号誤り訂正を適用する。
出力:信頼できるシンドローム結果。
【0081】
方法3:例示的な内部デコーダ
入力:
【数50】
及び雑音モデルを用いた、ホモダイン測定結果のベクトルp=(p,…,p)。
1.雑音の多い方向と雑音の少ない方向とを識別する。
2.適切な基底の変更を実行する。
3.結果の自己一貫性(例えばパリティ)を考慮しながら、新たな方向に沿ってビニングを適用して、結果を最も近い理想的なピーク位置に丸める。
4.基底の変更を元に戻して、候補格子点
【数51】
を返す。
5.
【数52】
を取ることによってバイナリ列を取得する。
出力:解釈された量子ビット測定結果。
【0082】
方法4:例示的な外部デコーダ:最小重み完全マッチング(「MWPM」)
入力:方法3からの量子ビット測定結果
1.シンドローム識別:入力量子ビット測定結果から、関連のスタビライザ測定結果を構築する。
2.マッチンググラフの構築:以下のものを使用して完全なグラフを構築する。
・満たされていないシンドロームのペアを含む頂点(特定の境界条件が望まれる場合には、追加の頂点を伴う)。「満たされていない」シンドロームは、誤りが検出された測定を表す。
・頂点の全てのペアを接続するエッジ。
・エッジに割り当てられ、満たされていないシンドロームのペアを生じた可能性が最も高い誤りの確率を反映する重み。
3.マッチング方法:前のステップからのマッチンググラフに対して例えばEdmondsのアルゴリズムを実行することによって、最小重み完全マッチングを見つける。
4.回復操作:マッチングするグラフからの1つ又は複数の回復操作を推測する。
5.訂正:回復操作を考慮して、シンドローム結果を解釈する。
出力:信頼できるシンドローム結果。
【0083】
例示的な分析
雑音モデル
[0103] いくつかの実施形態では、生成されるクラスタ状態は、本明細書で前述した2つのタイプの状態、すなわちGKP符号化|+>状態及び運動量スクイーズド状態によって占有される。理想的なGKP状態の位置波動関数は以下のようである。
【数53】
ここで、|・>は、位置固有状態に対応する。状態初期化誤りをモデル化するために、ガウスホワイト雑音チャネルを次式によって与えることができる。
【数54】
ここで、Yは雑音行列であり、Weyl-Heisenberg変位演算子が
【数55】
として定義され、ここで、単一モードに関して
【数56】
であり、Ωは、逆対称シンプレクティックメトリックであり、
【数57】
である。GKP状態及び運動量状態に関して、対応する雑音行列は次式によって与えられる。
【数58】
【0084】
[0104] 代替として、状態初期化誤りをモデル化するために、理想的なGKP|+>gkp状態を仮定して、それぞれ確率1-p及びpでの雑音チャネルNYgkp又はNYpを理想的なGKP|+>gkp状態に適用することができる。この方法は、位置ベースでは現実の運動量状態によく近似するが、運動量空間では周期構造を有する(以下で再検討する)。
【0085】
[0105] 式(16)及び(17)のガウスホワイト雑音チャネルを使用して状態準備誤りをモデル化するためのいくつかの理由がある。例えば、多くのCVゲートは、ガウスホワイト雑音チャネルとしてモデル化された欠陥に性質上つながる測定ベースのスクイージング操作を使用する。さらに、このタイプの雑音は、純粋な損失と密接に関連しており、逆強度の増幅器による純粋な損失チャネルをたどることでガウスホワイト雑音チャネルがもたらされる。測定の不備の際など、損失をこのように扱うことができる状況では、この関係が重要な役割を果たし得る。
【0086】
[0106] ガウスホワイト雑音チャネルは、ハイゼンベルク描像を使用して容易に記述される。Nモードの直交演算子を考え、ここで
【数59】
とする。各モードでの雑音チャネルは、以下のように記述することができる。
【数60】
ここで、Ξ=(ξq1q2,・・・ξqN, ξp1q2,・・・ξpNは、状態初期化誤りに関連付けられる対応する正規分布から全て導き出された確率変数である。初期平均は全てゼロに設定されている、すなわち
【数61】
であると仮定する。実際の波動関数ではなく変位誤差のみがシミュレートされることが多いので、この図は有用である。したがって、変位誤差を追跡することで、システムをシミュレートするための直接的で効率的な方法を提供することができる。
【0087】
クラスタ状態の初期化
[0107] 前のサブセクションで論じたように、長さ2Nのベクトルを最初に初期化して(ここでNはモードの数)、各モードに関するq及びp直交位相の平均を記憶することができる。最初は、全ての直交位相の平均が0である。各モードに関して、確率pで運動量スクイーズド状態が準備され、確率(1-p)でGKP|+>状態が準備される。次に、CZゲート(例えば「完全な」又は「理想的な」CZゲート)が、クラスタ状態の構造に従って、すなわち格子内の2つのノード間にエッジがある場合には常に適用される。CZゲートのいくつかは、CVトーリック符号規則(toric code convention)に合致するように反転されることがある。
【0088】
[0108] (q,q,p,p)基底順序でのCZゲートのシンプレクティック変換は次式によって与えられることを想起されたい。
【数62】
【0089】
[0109] Aは、2つのモードに関する隣接行列であることに留意されたい。すなわち、Aは、2つのモードがエッジによって接続されている場合には第ijのエントリが1であり、それ以外の場合には0である対称バイナリマトリックスである。CZの適用に関しては、A→-Aと推定される。(注:所与のゲートに関する表記†は、そのエルミタン共役を表す)。したがって、全ての光学モードのクラスタ状態への接続に対応するシンプレクティック行列は、次式によって与えられる。
【数63】
ここで、Aは、対応するグラフのN×N隣接行列であり、ただし、CZが適用される場合には-1を有する。全てのモードに関する初期雑音マトリックスは次式のようである。
【数64】
ここで、Σは、モードがそれぞれp-スクイーズド状態であるかGKP状態であるかに応じて、要素δ-1又はδを有する対角行列である。したがって、完全な雑音行列は次のように展開される。
【数65】
【0090】
[0110] 最後に、運動量値が測定される。この場合、次式によって与えられる雑音行列の運動量成分のみが考慮される。
【数66】
【0091】
内部デコーダ
[0111] いくつかの実施形態では、ホモダイン測定結果からビット値への標準マップは、元のGKP状態の並進対称性、すなわちq及びp方向での完全な周期性から導出されるビニング関数である。文脈上明確である場合、添え字「gkp」は省かれる。|+>及び
|->状態は、運動量がそれぞれ
【数67】
周期的であるが、互いに対して
【数68】
だけシフトしている。したがって、ホモダイン結果は、幅
【数69】
のビンに配置することができ、偶数のビンに入る結果は|+>に関連付けられ、他の全ての値は|->に関連付けられる。このビニング手順はGKP状態の元の対称性を使用するが、CZゲートによって導入される雑音行列の相関、及びp-スクイーズド状態の存在を考慮に入れていない。この情報の一部はRHGデコーダに組み込むことができるが、式(9)での雑音行列を認識する改良されたCVデコーダ又はトランスレータを識別することには価値があり得る。トランスレータ
【数70】
は、CVモードが量子ビットであるかのように、CVデータを受け取り、バイナリデータを出力する関数であることに留意されたい。すなわち、
【数71】
【0092】
[0112] そのようなトランスレータの重要性を説明するために、4つのGKP状態によって囲まれた主面の中心での運動量スクイーズド状態の例を考える。大きさδ-1の大量のCV雑音が、運動量状態のq直交位相から、接続されたGKP状態のp直交位相に対称的に分布される。しかし、GKP状態の周期性により、正味の効果は、周囲のGKP状態全てに適用される恒等ゲート又はZゲートのいずれかであり、これは、RHG格子でのスタビライザと交換する。
【0093】
[0113] トランスレータは、計算の符号化フェーズを考慮に入れるハイブリッドシステム構成に望まれる。これは、計算の後続の論理演算に関係なく同じであるからである。言い換えると、どのモードがGKP状態及びp-スクイーズド状態であるかが分かり、クラスタ状態を形成するためにCZゲートがどこで適用されたかが分かる。数値例が示すように、p-ホモダイン結果の分布がこの段階で調べられた場合、p-ホモダイン結果は、ガウス分布の周期的な構成からサンプリングされ、各ガウス分布が共分散Σを有し、各ガウスは点
【数72】
を中心とし、ここでnは、量子ビットの理想的な状態に対応するセットからの整数値ベクトルである。
【0094】
[0114] ホモダイン測定後に値pが得られたとする。上記の議論から、pを生成した可能性のある候補分布は、共分散Σを有し、格子点
【数73】
を中心とするガウス分布関数であると仮定される。結果pに関する所与の格子点の寄与は、次式によって与えられる。
【数74】
【0095】
[0115] したがって、点pを生成した可能性が最も高い格子点は、次式によって与えられる。
【数75】
ここで、添え字IQPは、これが整数二次計画法、すなわち整数領域上の2次関数の最小化であることを示すために選択される。簡単にするために、GKP状態での全てのピークが等しい重みを有する標準近似が使用される。ピークに異なる重みを付けたエンベロープを含めることもでき、この場合、この情報も寄与の計算に含めることができる。一般に、IQPはNP困難であり、したがって、ヒューリスティック戦略は計算上扱いやすいものにすべきである。そのような戦略の概要は方法3に示され、単一のスワップアウトの完全な例は方法5に示されている。
【0096】
外部デコーダ
[0116] ホモダイン測定の結果を取得してビニングした後、量子ビット外符号に関する誤り訂正を実行することができる。誤り訂正問題の詳細は、復号化アルゴリズムの特定の(例えば一般的な)選択、すなわち最小重み完全マッチング(MWPM)に関して方法4で要約した。しかし、無数の他のデコーダを使用することができることに留意されたい。
【0097】
[0117] 重み割当てステップでは、アナログCV情報(完全なホモダイン測定結果)を、格子内のp-スクイーズド状態の位置と共に含めることができる。
【0098】
数値例
[0118] 本開示のヒューリスティックトランスレータは、いくつかのGKP状態をpスクイーズド状態で置き換え、続いてCZゲートを適用して、選択した符号に対応するクラスタ状態に符号化することにより、他のものよりも大幅に多くの雑音を有するp空間内の方向を識別することができる。これらの雑音の多い方向に直交する空間には、少量の雑音がある。基底の変更を実行して、様々なレベルの雑音でこれらの方向に沿ってCVデータを決定することができる。これらの方向は、元のモードの線形結合を表し、理想的なケースでは、依然として整数値の結果をもたらす。整数線形結合の自己一貫性を考慮して適切なビニングを用いて、この基底で結果を決定することができる。基底の変更を元に戻すことで、符号格子に関する整数値ベクトルに戻り、mod2を取った後、量子ビットレベル結果を表すビット列が返される。
【0099】
[0119] ヒューリスティックトランスレータが、4つのGKP状態によって囲まれたp-スクイーズド状態の場合に関してどのように動作するかの一例を、いくつかの実施形態に従って以下に示し、この例は、ビット列を5つのホモダイン結果に割り当てることを含む。
【0100】
方法5:GKP状態によって囲まれた1つのp-スクイーズド状態に関する例示的な内部デコーダ
入力:
【数76】
での、ホモダイン測定結果のベクトルp=(p,・・・,p
1.以下の基底の変更Tp=p’を適用する。ここで、
【数77】
2.p’の最初の成分を、
【数78】
の最も近い整数倍にビニングし、
【数79】
を返す。
3.p’の最後の3つの成分のうち、
【数80】
の整数倍n’に最も近い成分iを見つける。P’
【数81】
に丸める。
4.
n’が偶数(奇数)である場合、p’0とp’i以外の残りの3つの成分を、各成分ごとに最も近い
【数82】
の偶数(奇数)整数倍に丸める。これにより、
【数83】
が得られる。
5.整数値ベクトルT-1n’=vの基底の変更を元に戻す。
6.νの最後の4つの成分は、整数値又は半整数値である。それらが半整数値である場合、各成分に1/2を追加する。これは、5成分の整数値ベクトルnを生成する。
7.n mod 2=sを、5成分のバイナリ列出力とする。
出力:5つのビット値の列s。
【0101】
[0120] 図17は、いくつかの実施形態による、GBS生成チップのシステム構成のモジュール性を示す。いくつかの実装形態では、GBS生成チップは再構成可能である。他の実装形態では、GBS生成チップは再構成可能であるが、損失を抑えるために統合されたPNRを含む。本開示のGBS生成チップは、極低温環境内に部分的又は完全に保管されることがあり、及び/又は極低温環境内で動作することがある。例えば、いくつかの実施形態では、状態生成はクライオスタット内で実行され、その後の計算は室温で実行される。各GBS生成チップは、任意に再構成可能でないことがある高速スイッチを備えたアクティブスイッチングシステムを含む。用途に応じて、生成フェーズとスイッチングフェーズとの間のいくらかの遅延が有益であり得る。
【0102】
技術的な利点
モジュール性
[0121] ここで述べる計算の様々な側面(状態準備、多重化、クラスタ生成、及び測定)は、異なる関連のハードウェア仕様を有する。これらのハードウェア仕様は、異なるチップで異なるタスクを実行することができるモジュール設計を容易にする。例えば、ボソン符号化状態の生成は、オンチップPNRを備える再構成不可能な回路を使用して実行することができる。クラスタステッチングも、再構成不可能なチップで実行することができる。生成されたクラスタの測定は、他のホモダイン検出器での測定からフィードフォワードされた再構成可能なホモダイン検出を使用して実行することができる。
【0103】
最小限の極低温要件
[0122] 本明細書で述べる状態生成チップは、静的統合プラットフォームに低損失の再構成不可能な回路を含むことができ、したがってオンチップPNRを使用することができ、任意選択でチップ全体がクライオスタットに配置され、システムの残りの部分(例えば状態生成用のスイッチングネットワーク)を室温で動作させることができる。
【0104】
[0123] スイッチングネットワークを室温に保つことは、クライオスタットから光を抽出するときに導入される遅延を利用する助けとなり得る。クラスタ操作は、フィードフォワードを有効化するために、再構成可能なホモダイン検出及び遅延線を使用して実行することができる。したがって、クラスタの生成及び操作は、チップ上で実行することができる。オンチップホモダイン検出は、超伝導検出器を使用した検出よりも高速である可能性があり、したがって、クラスタ操作段階に存在する遅延線に関連する損失を減少することができる。
【0105】
ホモダイン検出が時間スケールを設定
[0124] いくつかの実施形態では、クラスタ生成及びクラスタ操作に関する時間スケールは、ホモダイン検出の時間スケールによって(又は、最終生成手順中に存在し得る任意の他のより遅いプロセスによって)設定される。ホモダイン検出は、多重化手順中のPNR検出よりも、及び/又はデュアルレール符号化中の閾値検出器よりもはるかに高速であり得るので、これは有利であり得る。より速い時間スケールは、クラスタ生成遅延線がより短くなり、したがってより低い損失を生じることを意味し得る。図2A、2C、及び4Cにおいて、例えば、図2A及び2Cにおいてτで表された遅延線が、既知のフォトニックシステムと比較して、本明細書に記載のシステム設計においてより短いという点で、これらの利点を観察することができる。
【0106】
[0125] 図18は、いくつかの実施形態による、ハイブリッドクラスタ状態を生成するための第1の方法を示す流れ図である。図18に示されているように、方法1800は、1802で、ホモダイン測定の入力ベクトル及び雑音モデルを受信することを含む。1804で、ホモダイン測定の入力ベクトル及び雑音モデルに基づいて、所定の閾値を超える雑音レベルを有する少なくとも1つの方向が識別される。1806で、識別された少なくとも1つの方向に基づいて、ホモダイン測定の入力ベクトルに対して基底の変更が実行され(例えば変換行列を使用して)、第1の修正されたベクトルを生成し、1808で、第1の修正されたベクトルに変換が適用されて、第2の修正されたベクトルを生成する。ビニング操作は、例えば、ホモダイン測定結果からビット値へのマップに基づくことができる。代替として、又は追加として、丸め操作は、
【数84】
の整数倍への丸めを含むことができる。変換は、ビニング操作及び丸め操作を含むことができる。方法1800はまた、第2の修正されたベクトルに基づいて、1810で、基底の変更を元に戻して、候補格子点を返すことを含む。1812で、候補格子点に基づいてバイナリ列が生成され、バイナリ列は、解釈された量子ビット測定結果を表す。
【0107】
[0126] 図19は、いくつかの実施形態による、ハイブリッドクラスタ状態を生成するための第2の方法を示す流れ図である。図19に示されるように、方法1900は、1902でホモダイン測定の入力ベクトルを受信し、1904でホモダイン測定の入力ベクトルに対して基底の変更を実行して、第1の修正されたベクトルを生成することを含む。1906で、第1の修正されたベクトルに変換が適用されて、第2の修正されたベクトルを生成する。変換は、ビニング操作及び丸め操作を含むことができる。ビニング操作は、例えば、ホモダイン測定結果からビット値へのマップに基づくことができる。代替として、又は追加として、丸め操作は、
【数85】
の整数倍への丸めを含むことができる。1908で、第2の修正されたベクトルに基づいて、基底の変更が元に戻され、第3の修正されたベクトルを返す。1910mで、第3の修正されたベクトルの半整数値成分が修正され、第4の修正されたベクトルnを生成し、n mod 2=sを取ることによってビット値の列sが生成される。
【0108】
[0127] 様々な実施形態を本明細書で説明及び図示してきたが、機能を実行するため、及び/又は結果及び/又は本明細書で述べた利点の1つ又は複数を得るための様々な他の手段及び/又は構造、並びにそのような各変形及び/又は修正が可能である。より一般的には、本明細書で述べる全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は、例であることを意図され、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、本開示が使用される1つ又は複数の特定の用途に依存する。前述の実施形態は、例としてのみ提示されており、他の実施形態は、具体的に述べて特許請求されている以外の方法で実施することもできることを理解されたい。本開示の実施形態は、本明細書で述べる個々の機能、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。さらに、そのような機能、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾していない場合、そのような機能、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の2つ以上の任意の組合せが、本開示の発明範囲内に含まれる。
【0109】
[0128] また、様々な概念が1つ又は複数の方法として具現化されることがあり、その一例が提供されている。方法の一部として実行されるアクションは、任意の適切な方法で順序付けすることができる。したがって、例示的な実施形態では順次のアクションとして示されているが、例示とは異なる順序でアクションが実行される実施形態を構築することができ、いくつかのアクションを同時に実行することを含むこともある。
【0110】
[0129] 本明細書で定義及び使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書内での定義、及び/又は定義された用語の通常の意味よりも優先されるものと理解されるべきである。
【0111】
[0130] 本明細書で使用するとき、「モジュール」は、例えば、特定の機能の実行に関連する動作可能に結合された電気コンポーネントの任意のアセンブリ及び/又はセットでよく、例えば、メモリ、プロセッサ、電気トレース、光コネクタ、ソフトウェア(ハードウェアに記憶されて実行される)などを含むことができる。
【0112】
[0131] 本明細書及び特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、別段に明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0113】
[0132] 「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、そのようにつながれた要素の「いずれか又は両方」を意味する、すなわち、いくつかの場合には連言的に存在し、他の場合には選言的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」で列挙される複数の要素も、同様に解釈すべきであり、すなわちそのようにつながれた要素の「1つ又は複数」と解釈すべきである。「及び/又は」の句によって具体的に識別される要素以外の他の要素は、それらの具体的に識別される要素に関連するか関連しないかにかかわらず、任意選択で存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などオープンエンドの(open-ended)文言と併せて使用されるとき、例えば、一実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む)を表し;別の実施形態ではBのみ(任意選択でA以外の要素を含む)を表し;さらに別の実施形態ではAとBとの両方(任意選択で他の要素を含む)を表すことができる。
【0114】
[0133] 本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、「又は」は、上で定義した「及び/又は」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト内の要素を区切るとき、「又は」又は「及び/又は」は包括的であると解釈されるものとする。すなわち、いくつかの要素又は要素のリストの少なくとも1つ(或いは2つ以上)と、任意選択で、リストにない追加の項目とを含む。「~の1つだけ」又は「~の正確に1つ」、又は特許請求の範囲で使用されるときの「~からなる」など、逆に明確に示されている用語のみが、いくつかの要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを表す。一般に、「又は」という用語は、本明細書で使用するとき、「いずれか」、「~の1つ」、「~の1つだけ」、又は「~の正確に1つ」など排他的な言葉が付いているときには、排他的択一(すなわち「一方又は他方、しかし両方でない」)を示すものとのみ解釈されるものとする。「~から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用するとき、特許法の範囲内で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0115】
[0134] 本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、1つ又は複数の要素のリストを参照した「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素の任意の1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に特に列挙されたあらゆる要素を少なくとも1つ含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外しないものと理解すべきである。また、この定義により、「少なくとも1つ」という語句が表す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定される要素に関連しているか関連していないかに関係なく任意選択で存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、例えば、一実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で2つ以上のAを含み、Bは存在しない(及び任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で2つ以上のBを含み、Aは存在しない(及び任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で2つ以上のA、及び少なくとも1つ、任意選択で2つ以上のB(及び任意選択で他の要素を含む)を表すことができる。
【0116】
[0135] 特許請求の範囲及び上記の明細書において、「含む」、「備える」、「所持する」、「有する」、「含む」、「関与する」、「保持する」、「構成される」などの全ての移行句は、オープンエンドの(open-ended)用語と理解され、すなわち、含むが限定はしないことを意味すると理解されるべきである。米国特許庁の特許審査便覧、セクション2111.03に記載されているように、「~からなる」及び「本質的に~からなる」という移行句のみが、それぞれクローズドエンドの(closed)又はほぼクローズドエンドの(semi-closed)移行句であるものとする。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16(A)】
図16(B)】
図16(C)】
図17
図18
図19
【国際調査報告】