(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】多孔質膜を有する骨インプラントおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/02 20060101AFI20231017BHJP
A61L 27/04 20060101ALI20231017BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20231017BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20231017BHJP
A61K 6/58 20200101ALI20231017BHJP
A61F 2/28 20060101ALI20231017BHJP
A61C 8/00 20060101ALI20231017BHJP
C25D 11/26 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61L27/02
A61L27/04
A61L27/56
A61L27/40
A61K6/58
A61F2/28
A61C8/00 Z
C25D11/26 301
C25D11/26 303
C25D11/26 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519352
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2021120407
(87)【国際公開番号】W WO2022063243
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202011025357.7
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523108876
【氏名又は名称】北京▲華▼宇▲創▼新科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING HUAYU CHUANGXIN TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】15, LEYUAN STREET, YANXI DEVELOPMENT AREA, HUAIROU DISTRICT, BEIJING 101407, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】523108887
【氏名又は名称】北京▲華▼宇▲創▼新▲タン▼▲デイ▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING HUAYU CHUANGXIN TA‐NB SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】15, LEYUAN STREET, YANXI DEVELOPMENT AREA, HUAIROU DISTRICT, BEIJING 101407, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 寓中
【テーマコード(参考)】
4C081
4C089
4C097
4C159
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081AB06
4C081CF142
4C081CF22
4C081CG02
4C081CG06
4C081DB03
4C081DC03
4C081EA02
4C081EA12
4C089AA06
4C089BA01
4C089BA06
4C089BA20
4C089CA05
4C097AA01
4C159AA27
4C159AA30
(57)【要約】
本発明は多孔質タンタル酸リチウム膜を有する骨インプラントおよび前記骨インプラントを製造する方法に関する。骨インプラントは(1)基材、および(2)基材上に位置する多孔質膜、を含み、前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材およびチタン基材から選択され、かつ、前記多孔質膜は多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜および多孔質チタン酸化物膜から選択される。本発明の骨インプラントは以下の一項または複数項の有利な効果を有する。(1)前記骨インプラントは優れた耐食性を有する。(2)前記骨インプラントの弾性率はプロセス条件によってコントロールでき、これによって人体または動物骨(例えば歯槽骨および頭蓋骨)の弾性率とより高い生体適合性を有する。(3)前記骨インプラントの白色は骨そのものの色に近く、美的外観を有する。(4)前記骨インプラントは優れた抗菌性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)基材、および
(2)前記基材上に位置する多孔質膜、
を含み、
前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材およびチタン基材から選択され、好ましくは前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材およびタンタル-ニオブ合金基材から選択され、かつ
前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜および多孔質チタン酸化物膜から選択され、好ましくは前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜および多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜から選択される、
骨インプラント。
【請求項2】
(1)タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材、またはチタン基材、および
(2)前記タンタル基材上に位置し、タンタル酸化物を含有する多孔質タンタル酸リチウム膜、前記ニオブ基材上に位置し、ニオブ酸化物を含有する多孔質ニオブ酸リチウム膜、前記タンタル-ニオブ合金基材上に位置し、タンタル酸化物およびニオブ酸化物を含有する多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜、または前記チタン基材上に位置する多孔質チタン酸化物膜、
を含む、請求項1に記載の骨インプラント。
【請求項3】
前記多孔質タンタル酸リチウム膜、前記多孔質ニオブ酸リチウム膜、前記多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜または前記多孔質チタン酸化物膜は0.1-1μmの孔径を有する、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項4】
前記多孔質タンタル酸リチウム膜、前記多孔質ニオブ酸リチウム膜、前記多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜または前記多孔質チタン酸化物膜は1-20μm、好ましくは2-10μm、より好ましくは3-5μmの厚さを有する、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項5】
150GPa以上の弾性率を有する、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項6】
170GPa以上の弾性率を有する、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項7】
150-200GPaの弾性率を有する、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項8】
170-190GPaの弾性率を有する、請求項7に記載の骨インプラント。
【請求項9】
骨に近い色を有する、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項10】
骨プロテーゼ、デンタルインプラントおよび頭蓋骨を含む、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項11】
前記デンタルインプラントは義歯基台部、本体部および前記義歯基台部と前記本体部を連接するネック部を含む、請求項10に記載の骨インプラント。
【請求項12】
10-160GPaの弾性率、好ましくは20-150GPaの弾性率、より好ましくは30-140GPaの弾性率を有する、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項13】
前記タンタル基材、前記ニオブ基材または前記タンタル-ニオブ合金基材は多孔質である、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項14】
前記タンタル基材、前記ニオブ基材または前記タンタル-ニオブ合金基材は緻密質である、請求項1または2に記載の骨インプラント。
【請求項15】
(1)基材を提供すること、および
(2)前記基材上に多孔質膜を形成すること、
を含み、
前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材およびチタン基材から選択され、好ましくは前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材およびタンタル-ニオブ合金基材から選択され、かつ
前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜および多孔質チタン酸化物膜から選択され、好ましくは前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜および多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜から選択される、
請求項1~14のいずれか一項に記載の骨インプラントを製造する方法。
【請求項16】
(1)タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材、またはチタン基材を提供すること、および
(2)前記タンタル基材、ニオブ基材、もしくはタンタル-ニオブ合金基材上に多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、もしくは多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜を形成すること、または前記チタン基材上に多孔質チタン酸化物膜を形成すること、
を含み、
前記タンタル酸リチウム膜はタンタル酸化物を含有し、
前記ニオブ酸リチウム膜はニオブ酸化物を含有し、かつ
前記混合物膜はタンタル酸化物およびニオブ酸化物を含有する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(2)において、溶融塩電気化学法によって多孔質膜を形成する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
工程(2)の前に、タンタル基材上にTa
2O
5膜を形成する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
陽極酸化によって、タンタル基材上にアモルファスTa
2O
5膜を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
タンタル基材上にTa
2O
5膜を形成する工程において、タンタル基材を室温から380℃、好ましくは室温から300℃の酸素含有電解質溶液中に配置し、1~200mA/cm
2の昇圧電流密度で、3~800Vの陽極電圧を0.01~2時間一定に印加して、アモルファスTa
2O
5膜を形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(2)の前に、ニオブ基材上にNb
2O
5膜を形成する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項22】
陽極酸化によってニオブ基材上にアモルファスNb
2O
5膜を形成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ニオブ基材上にNb
2O
5膜を形成する工程において、ニオブ基材を室温から380℃、好ましくは室温から300℃の酸素含有電解質溶液中に配置し、1~200mA/cm
2の昇圧電流密度で、3~800Vの陽極電圧を0.01~2時間一定に印加して、アモルファスNb
2O
5膜を形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程(2)の前に、タンタル-ニオブ合金基材上にTa
2O
5-Nb
2O
5混合物膜を形成する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項25】
陽極酸化によってタンタル-ニオブ合金基材上にアモルファスTa
2O
5-Nb
2O
5混合物膜を形成する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
タンタル-ニオブ合金基材上にTa
2O
5-Nb
2O
5混合物膜を形成する工程において、タンタル-ニオブ合金基材を室温から380℃、好ましくは室温から300℃の酸素含有電解質溶液中に配置し、1~200mA/cm
2の昇圧電流密度で、3~800Vの陽極電圧を0.01~2時間一定に印加して、アモルファスTa
2O
5-Nb
2O
5混合物膜を形成する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記酸素含有電解質溶液は水溶液、非水溶液、または水溶液電解質と有機化合物の混合物である、請求項20、23および26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記溶融塩電気化学法は溶融リチウム塩電気化学法である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材を、250℃~650℃の酸素含有無機リチウム塩または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、1~1000mA/cm
2の昇圧電流密度で、1~66Vの陽極電圧を0.01~200時間一定に印加して、リチウム含有化合物を含む膜層を形成する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項30】
工程(2)において、タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材を、440℃~600℃の酸素含有無機リチウム塩または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、5~20mA/cm
2の昇圧電流密度で、10~30Vの陽極電圧を5分間~10時間一定に印加して、リチウム含有化合物を含む膜層を形成する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
工程(2)において、タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材を、570℃~598℃の酸素含有無機リチウム塩または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、5~20mA/cm
2の昇圧電流密度で、10~20Vの陽極電圧を8分間~30分間一定に印加して、リチウム含有化合物を含む膜層を形成する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記酸素含有無機リチウム塩はLiNO
3である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
工程(c)において、超音波発生器を前記混合溶融物または前記混合溶融液中に設置する、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材に対して、窒化処理または浸炭処理を行う、請求項15または16に記載の方法。
【請求項35】
医療用材料における骨インプラントの用途であって、前記骨インプラントは請求項1~14のいずれか一項記載されたものであり、または請求項15~34のいずれか一項に記載の方法によって製造される、用途。
【請求項36】
前記医療用材料はデンタルインプラントまたは頭蓋骨である、請求項35に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質膜を有する骨インプラント(インプラント)および前記骨インプラントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料は優れた総合的な機械的性質および耐疲労性を有し、整形外科用インプラント材料として特に適している。材料学の常に変化しつつある発展にしたがって、整形外科用インプラント材料は、ステンレス、コバルトクロム合金、チタン合金の発展過程を通じ、そして、比較的に良い結果を得た。しかし、複雑な人体の中の環境は、材料の腐食を引き起こし得、それが有毒な元素の放出につながり、これは、特定の金属材料の生体適合性の低下につながる。さらに、先行技術中の材料、例えばステンレス、コバルトクロム合金、チタン合金の色が濃く、黒まであり、材料の美的性能に影響し、かつ、応用範囲を制限する。上記のような欠点は金属材料の医用生物材料としての応用に対して一定の悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多孔質タンタルは近年出現した一種の比較的に理想な整形外科用インプラント材料であり、これは耐火金属の一種であり、融点は3000℃近くあり、外観はダークグレーの色を呈し、表面は滑らかであり、現有の医療用金属材料と比べて、タンタルは主として二つの利点がある。(1)タンタルはより優れた耐食性を有する。(2)タンタルの生体適合性がベターであり、多孔質タンタルの弾性率は比較的に低い。しかし、タンタルはダークグレーの色を呈するため、特にデンタルインプラントに用いる場合、美的外観に影響することがある。
【0004】
多孔質タンタルは比較的に理想な整形外科用インプラント材料であるが、文献に記載されたタンタルで作製された整形外科材料の弾性率は皮質骨および海綿骨の間にあり、しかし、多孔質タンタルの弾性率は人体の海綿骨の弾性率の方に近いが、皮質骨の弾性率より大幅に低い。一方、人体の負荷に耐える骨組織は主に皮質骨であり、動物実験および臨床応用の効果から言うと、骨インプラントの弾性率は人体の皮質骨により近づけるべきであり、高過ぎると応力遮蔽が発生しやすく、低すぎる場合も力の伝達に向かない。本発明は異なるフィルムコーティング条件下で選択に応じて低い弾性率から高い弾性率まで提供できる。
【0005】
しかし、デンタルインプラントについては、生体力学の観点から、デンタルインプラントの弾性率は骨界面の応力分布に影響があり、通常デンタルインプラントの弾性率が高いほど、ネック付近の骨の内部応力が小さくなるが、根端付近の骨の内部応力が大きくなる。デンタルインプラント弾性率が低いほど、デンタルインプラントと骨界面の相対変位運動が大きくなる。デンタルインプラントの弾性率が皮質骨、海綿骨に近い場合、生体力学的適合性が比較的に良い。高い弾性率がベターであり、適宜なデンタルインプラントの弾性率は70~200GPaにあると提唱する学者もおり、皮質骨の弾性率は約18GPaであると報道した資料もある。
【0006】
しかし、頭蓋骨(頭骨)インプラントについては、弾性率に対する要求は異なる場合がある。
【0007】
デンタルインプラントは、チタン合金またはその他の材料で柱体または錐体を作成し、その後、外表面にネジ山を形成し、その目的は人体の骨がネジ山の中に成長することを可能にし、インプラントと人体の骨とを一体に結合させることにあり、よってインプラントと人体の適合性および強固さを強化する。しかし、ネジ山の深さに限度があり、深すぎるとインプラントの強度に影響することがある。
【0008】
したがって、一種の美的外観および/またはより高い生体適合性を有する骨インプラント、特にデンタルインプラントおよび頭蓋骨(頭骨)インプラント、を探す必要性がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の内容)
そのため、本発明は、
(1)基材、および
(2)前記基材上に位置する多孔質膜、
を含み、
前記基材はタンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材およびチタン基材から選択され、かつ
前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜および多孔質チタン酸化物膜から選択される、
骨インプラントまたは複合体を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、
(1)タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材、またはチタン基材、および
(2)前記タンタル基材上に位置し、タンタル酸化物を含有する多孔質タンタル酸リチウム膜、前記ニオブ基材上に位置し、ニオブ酸化物を含有する多孔質ニオブ酸リチウム膜、前記タンタル-ニオブ合金基材上に位置し、タンタル酸化物およびニオブ酸化物を含有する多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜、または、前記チタン基材上に位置する多孔質チタン酸化物膜、
を含む、骨インプラントまたは複合体を提供する。
【0011】
本発明はまた、
(1)基材を提供すること、および
(2)前記基材上に多孔質膜を形成すること、
を含み、
前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材およびチタン基材から選択され、かつ
前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜および多孔質チタン酸化物膜から選択される、
前記骨インプラントまたは複合体を製造する方法を提供する。
【0012】
さらに本発明は、
(1)タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材、またはチタン基材を提供すること、および
(2)タンタル基材、ニオブ基材、もしくはタンタル-ニオブ合金基材上に多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、もしくは多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜を形成すること、またはチタン基材上に多孔質チタン酸化物膜を形成すること、
を含み、
前記タンタル酸リチウム膜はタンタル酸化物を含有し、
前記ニオブ酸リチウム膜はニオブ酸化物を含有し、かつ
前記混合物膜はタンタル酸化物およびニオブ酸化物を含有する、
前記骨インプラントまたは複合体を製造する方法を提供する。
【0013】
本発明はまた前記複合体の医療用材料例えばデンタルインプラントにおける用途に関する。
【0014】
本発明の骨インプラントは以下の一項または複数項の有利な効果を有する。(1)提供される金属化合物膜は多孔質であり、人体の骨の進入を誘導し、インプラントの適合性および強固さを強化することに有利である。同時に、該化合物膜層はセラミック体に近いようであり、絶縁および断熱効果を有し、急な熱が人体に対する刺激を軽減する。(2)前記膜層は溶液中のイオン堆積によって生成されるものではなく、インプラントの金属が電気化学反応に参加して生成されるものであり、かつ、性能推移層を有し、膜層と基材が強固に結合し、前記骨インプラントは優れた耐食性を有する。(3)前記骨インプラントの弾性率はプロセス条件によって制御でき、よって人体または動物骨(例えば、歯槽骨)の弾性率とより高い生体適合性を有することが可能になる。(4)前記骨インプラントの白色は骨そのものの色に近く、美的外観を有する。(5)膜層は高温下(400℃以上)でのコーティング処理から得られたため、前記骨インプラント優れた抗菌性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされていない純タンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図1b】多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされていない純タンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図1c】多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされていない純タンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図2a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図2b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図2c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図2d】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図3a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図3b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図3c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図4a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図4b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図4c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図5a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図5b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図5c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図6a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図6b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図6c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図7a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図7b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図7c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図7d】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図8a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図8b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図8c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図9】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図10】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図11】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図12】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図13】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板およびタンタルデンタルインプラントの外観写真を示す。
【
図14】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板およびタンタルデンタルインプラントの外観写真を示す。
【
図14a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされた多孔質タンタルデンタルインプラントの外観写真を示す。
【
図15a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図15b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図15c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図15d】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図15e】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図15f】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図15g】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図16a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図16b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図17a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図17b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図18a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図18b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図19a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図19b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図20a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図20b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図21a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図21b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図22a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図22b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図23a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図23b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図23c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図23d】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図23e】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図23f】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図23g】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図23h】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図23i】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の外観写真を示す。
【
図24a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図24b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図25a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図25b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図26a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図26b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図27a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図27b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図28a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図28b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図29a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図29b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図30a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図30b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図31a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図31b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図32a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図32b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板のSEM画像を示す。
【
図33a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル頭蓋骨の外観写真を示す。
【
図33b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル頭蓋骨の断面図を示す。
【
図33c】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル頭蓋骨の上面図を示す。
【
図34】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜でコーティングされたタンタル-ニオブ合金薄板の外観写真を示す。
【
図35a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜でコーティングされたタンタル-ニオブ合金薄板のSEM画像を示す。
【
図35b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜でコーティングされたタンタル-ニオブ合金薄板のSEM画像を示す。
【
図36】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜でコーティングされたタンタル-ニオブ合金薄板の外観写真を示す。
【
図37a】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜でコーティングされたタンタル-ニオブ合金薄板のSEM画像を示す。
【
図37b】本発明の一実施形態による多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜でコーティングされたタンタル-ニオブ合金薄板のSEM画像を示す。
【
図38】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板の外観写真を示す。
【
図39a】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板のSEM画像を示す。
【
図39b】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板のSEM画像を示す。
【
図40】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板の外観写真を示す。
【
図41】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ頭蓋骨の外観写真を示す。
【
図42a】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板のSEM画像を示す。
【
図42b】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板のSEM画像を示す。
【
図43】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板の外観写真を示す。
【
図44a】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板のSEM画像を示す。
【
図44b】本発明の一実施形態による多孔質ニオブ酸リチウム膜でコーティングされたニオブ薄板のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態において、本発明は、
(1)タンタル基材、および
(2)前記タンタル基材上に位置し、タンタル酸化物を含有する多孔質タンタル酸リチウム膜、
を含む、骨インプラントまたはタンタル複合体を提供する。
【0017】
一実施形態において、本発明は、
(1)ニオブ基材、および
(2)前記ニオブ基材上に位置し、ニオブ酸化物を含有する多孔質ニオブ酸リチウム膜、
を含む、骨インプラントまたはニオブ複合体を提供する。
【0018】
一実施形態において、本発明は、
(1)タンタル-ニオブ合金基材、および
(2)前記タンタル-ニオブ合金基材上に位置し、タンタル酸化物およびニオブ酸化物を含有する多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜、
を含む、骨インプラントまたはタンタル-ニオブ合金複合体を提供する。
【0019】
一実施形態において、本発明は、
(1)チタン基材、および
(2)前記チタン基材上に位置する多孔質チタン酸化物膜、
を含む、骨インプラントまたはチタン複合体を提供する。
【0020】
一実施形態において、前記骨インプラントまたはタンタル複合体は、(1)タンタル基材、および(2)タンタル基材の少なくとも一部の表面上に位置する多孔質タンタル酸リチウム膜であって、0.1-1μmの孔径を有する多孔質タンタル酸リチウム膜、を含む。亀裂状の孔について、その長さは約40μmに達することがある。
【0021】
一実施形態において、前記骨インプラントまたはニオブ複合体は、(1)ニオブ基材、および(2)ニオブ基材の少なくとも一部の表面上に位置する多孔質ニオブ酸リチウム膜であって、0.1-1μmの孔径を有する多孔質ニオブ酸リチウム膜、を含む。亀裂状の孔について、その長さは約40μmに達することがある。
【0022】
一実施形態において、前記骨インプラントまたはタンタル-ニオブ合金複合体は、(1)タンタル-ニオブ合金基材、および(2)タンタル-ニオブ合金基材の少なくとも一部の表面上に位置する多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜であって、0.1-1μmの孔径を有する混合物膜、を含む。亀裂状の孔について、その長さは約40μmに達することがある。
【0023】
一実施形態において、前記骨インプラントまたはチタン複合体は、(1)チタン基材、および(2)チタン基材の少なくとも一部の表面上に位置する多孔質チタン酸化物膜であって、0.1-1μmの孔径を有する多孔質チタン酸化物膜、を含む。亀裂状の孔について、その長さ約40μmに達することがある。
【0024】
本発明の文脈において、前記孔は円孔に限らず、不規則な形状を有する孔、例えば亀裂状の孔、であって良い。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラントまたは複合体30%以上の孔隙率を有し、例えば50-80%の孔隙率を有し、または60-90%の孔隙率を有する。
【0026】
本発明の文脈において、骨インプラント、複合体および複合材料は相互に置き替えて使用することができる。
【0027】
本発明に適用するタンタル基材は、純タンタル基材およびタンタル合金基材を含み、そのうち、タンタル合金基材は好ましくはタンタル-ニオブ合金基材である。
【0028】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラント、例えばデンタルインプラントは、150GPa以上の弾性率を有する。
【0029】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えばデンタルインプラントは、170GPa以上の弾性率を有する。
【0030】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えばデンタルインプラントは、150-200GPaの弾性率を有する。
【0031】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えばデンタルインプラントは、170-190GPaの弾性率を有する。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラント、例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントは、ナノインデンテーション法によって測定される10-160GPaの弾性率を有する。
【0033】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントは、ナノインデンテーション法によって測定される20-150GPaの弾性率を有する。
【0034】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントは、ナノインデンテーション法によって測定される30-140GPaの弾性率を有する。
【0035】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントは、ナノインデンテーション法によって測定される40-130GPaの弾性率を有する。
【0036】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントは、ナノインデンテーション法によって測定される50-120GPaの弾性率を有する。
【0037】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントは、ナノインデンテーション法によって測定される60-110GPaの弾性率を有する。
【0038】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントは、ナノインデンテーション法によって測定される70-100GPaの弾性率を有する。
【0039】
本発明のさらなる一実施形態において、前記骨インプラント、例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントは、ナノインデンテーション法によって測定される80-90GPaの弾性率を有する。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記タンタル基材の全体表面がすべて多孔質タンタル酸リチウム膜で覆われている。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記ニオブ基材の全体表面がすべて多孔質ニオブ酸リチウム膜で覆われている。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記タンタル-ニオブ合金基材の全体表面がすべて多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜で覆われている。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記チタン基材の全体表面がすべて多孔質チタン酸化物膜で覆われている。
【0044】
生体力学の観点から、デンタルインプラントの弾性率は骨界面の応力分布に影響する。通常、デンタルインプラントの弾性率が高いほど、ネック付近の骨の内部応力は小さくなるが、根端付近の骨の内部応力は大きくなる。デンタルインプラント弾性率が低いほど、デンタルインプラントと骨界面の相対変位運動が大きくなる。デンタルインプラントの弾性率は皮質骨、海綿骨に近い場合、生体力学的適合性は比較的に悪い。適切なデンタルインプラント弾性率は70GPa以上である。本発明の、デンタルインプラントを含む骨インプラントは、150GPa以上の弾性率を有する。したがって、本発明のデンタルインプラントの非常に適切な弾性率は、優れた生体力学的適合性を有する。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラントは、例えば頭蓋骨およびデンタルインプラントである骨プロテーゼを含む。
【0046】
本発明の一実施形態において、
図33aに示すタンタル頭蓋骨および
図41に示すニオブ頭蓋骨のように、頭蓋骨は多孔質である。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記デンタルインプラントは義歯基台部、本体部および前記義歯基台部と前記本体部を連接するネック部を含む。デンタルインプラントの製造方法に関しては、当業者に知られており、例えば中国特許出願公開第109758245号明細書、中国特許出願公開第109965996号明細書および中国特許出願公開第110610046号明細書を参考できる。
【0048】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記デンタルインプラントは、義歯基台部、本体部および前記義歯基台部と前記本体部を連接するネック部を含み、そのうち、前記本体部の外表面に歯槽骨と接触する雄ネジ山が設けられている。
【0049】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラントは骨に近い色を有する。本発明の一つの好ましい実施形態において、前記骨インプラント、特に義歯基台部については、白色である。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記基材は多孔質である。多孔質基材は優れた機械的性質および組織適合性を有する。人体組織の再建、骨移植、置換などはすべて多孔質材料を利用して骨欠損部へインプラントすることができ、骨は多孔質孔隙および宿主界面に沿って内部へ成長でき、多孔質材料を十分に骨組織と強固に結合させかつ一体化させる。足場材料として人体にインプラントした後、その優れた組織適合性によって多孔質材料は人体内での分解を必要とせず、よって除去するための再手術の必要もない。多孔質金属のテクスチャーが頑丈であり、耐磨耗性、耐疲労性はともに海綿骨、セラミック製品、フリーズドライ骨チップより優れ、十分な生理的負荷を提供できる。
【0051】
タンタル、ニオブ、タンタル-ニオブ合金およびチタンは耐火金属に属し、前記多孔質金属は通常耐火金属の製造方法を採用する。例えば、既知の方法を採用して粉末焼結によって多孔質タンタルを製造してもよく、蒸着方法によって多孔質タンタルを製造してもよい。本分野における多孔質タンタルを製造するその他の方法も利用できる。
【0052】
本発明の一実施形態において、使用されるタンタルは緻密質である。先行技術はすべて多孔質タンタルを医療用整形外科材料として使用するものであり、緻密タンタル金属を医療用整形外科材として使用することに関する言及がない。デンタルインプラントについて、生体力学の観点から、デンタルインプラントの弾性率は骨界面の応力分布に対して影響があり、通常デンタルインプラントの弾性率が高いほど、ネック付近の骨の内部応力が小さくなるが、根端付近の骨の内部応力が大きくなる。デンタルインプラントの弾性率が低いほど、デンタルインプラントと骨界面の相対変位運動が大きくなる。デンタルインプラントの弾性率が皮質骨、海綿骨に近いとき、生体力学的適合性は比較的に悪い。適宜のデンタルインプラントの弾性率は70GPa以上である。デンタルインプラントは噛むという機能を頻繁に行うため、負荷が非常に大きく、多孔質タンタルの引張強度および弾性率はこの負荷の要求を満たすことができない。緻密金属タンタルの引張強度および弾性率はともに比較的に大きく、よりデンタルインプラントに用いられることに適する。
【0053】
本発明の一実施形態は多孔質タンタルデンタルインプラント上に多孔質タンタル酸リチウム膜を一層コーティングすることであり、これによってデンタルインプラントの機械的性質、例えば引張強度および弾性率、を高める。
【0054】
本発明の一実施形態は多孔質ニオブデンタルインプラント上に多孔質ニオブ酸リチウム膜を一層コーティングすることであり、これによってデンタルインプラントの機械的性質、例えば引張強度および弾性率、を高める。
【0055】
本発明の一実施形態は多孔質タンタルニオブデンタルインプラント上に多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜を一層コーティングすることであり、これによってデンタルインプラントの機械的性質、例えば引張強度および弾性率、を高める。
【0056】
本発明のさらなる一実施形態は緻密金属タンタル上に多孔質タンタル酸リチウム膜を一層コーティングすることであり、その引張強度および弾性率をより大きくし、デンタルインプラントの引張強度および弾性率の要件をよりよく満たすのみならず、さらに、タンタル基材の表面上において多孔質タンタル酸リチウム膜を有することにより、当該デンタルインプラントは人体生物組織とよりよく適合でき、これによって人体生物組織は多孔質タンタル酸リチウム膜を通じてタンタル基材と結合でき、これによってタンタル材料を十分に人体組織例えば歯槽骨と強固に結合させかつ一体化させる。
【0057】
本発明の一実施形態において、骨インプラント例えばデンタルインプラントの露出しない部分について、タンタル酸リチウム膜層をコーティングしなくてもよく、純タンタル材料のみを採用する。義歯基台部およびネック部については、好ましくはタンタル酸リチウム膜をコーティングし、よって美的外観を強化する。
【0058】
緻密タンタル材料の製造方法は当業者にとって既知であり、例えば鋳造、圧延などの方法によって得ることができる。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラントを製造する方法は、(1)タンタル基材を提供すること、および(2)タンタル基材上に多孔質タンタル酸リチウム膜を一層形成すること、を含む。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラントを製造する方法は、(1)ニオブ基材を提供すること、および(2)ニオブ基材上に多孔質ニオブ酸リチウム膜を一層形成すること、を含む。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラントを製造する方法は、(1)タンタル-ニオブ合金基材を提供すること、および(2)タンタル-ニオブ合金基材上に多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜を一層形成すること、を含む。
【0062】
本発明の一実施形態において、前記骨インプラントを製造する方法は、(1)チタン基材を提供すること、および(2)チタン基材上に多孔質チタン酸化物膜を一層形成すること、を含む。
【0063】
本発明の一実施形態において、前記基材は、骨インプラントに必要な形状、例えばデンタルインプラントおよび頭蓋骨の形状を有する。
【0064】
本発明の一つの好ましい実施形態において、骨インプラントに必要な形状を有するタンタル基材上において多孔質タンタル酸リチウム膜を一層コーティングする。
【0065】
本発明のさらなる一実施形態において、骨インプラントに必要な形状を有するタンタル基材上において多孔質タンタル酸リチウム膜を一層コーティングし、そして切削または研削の方法によって骨インプラント上の不要な多孔質タンタル酸リチウム膜を除去し、よって該骨インプラントの部分表面上にのみ多孔質タンタル酸リチウム膜を保留する。具体的に言うと、まずは多数の製造された外観寸法が合格だが内孔はまだ加工されていない連合体に対しタンタル酸リチウム膜コーティング処理を行い、その後内孔を加工する。こうすると内孔がフィルムコーティング処理されないことを保持できる。
【0066】
本発明の一つの好ましい実施形態において、骨インプラントに必要な形状を有するタンタル基材の部分表面上において多孔質タンタル酸リチウム膜を一層コーティングする。
【0067】
本発明の一実施形態において、前記多孔質膜は1-20μm、好ましくは2-10μm、より好ましくは3-5μmの厚さを有する。
【0068】
工程(2)において、前記多孔質タンタル酸リチウム膜は溶融塩電気化学法によって形成される。
【0069】
本発明の一実施形態において、工程(2)において、タンタル基材を、250℃~650℃の酸素含有無機リチウム塩(例えばLiNO3)または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、1~1000mA/cm2の昇圧電流密度で、1~66Vの陽極電圧を0.01~200時間一定に印加して、多孔質タンタル酸リチウム膜を形成する。
【0070】
本発明のさらなる一実施形態において、工程(2)において、タンタル基材を440℃~600℃の酸素含有無機リチウム塩(例えばLiNO3)または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、1~1000mA/cm2の昇圧電流密度で、10~30Vの陽極電圧を5分間~10時間一定に印加して、多孔質タンタル酸リチウム膜を形成する。
【0071】
本発明のさらなる一実施形態において、工程(2)において、タンタル基材を570℃~598℃の酸素含有無機リチウム塩(例えばLiNO3)または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、5~20mA/cm2の昇圧電流密度で、10~20Vの陽極電圧を8分間~30分間一定印加して、多孔質タンタル酸リチウム膜を形成する。
【0072】
一つの好ましい実施形態において、工程(2)において、超音波発生器を前記混合溶融物または前記混合溶融液中に設置してもよい。
【0073】
好ましくは、工程(2)において、溶融塩電気化学法は溶融リチウム塩電気化学法である。
【0074】
工程(2)の前に、タンタル基材に対して陽極酸化の工程を行うことができる。
【0075】
前記陽極酸化工程において、タンタル基材上にTa2O5膜、例えばアモルファスTa2O5膜を形成する。孔のないものはタンタルキャパシタ上の使用に適する。
【0076】
Ta2O5膜は多孔質であってもよく、多孔質タンタル酸リチウム膜の作製により有利である。具体的には、インプラントを濃硫酸中に配置し、190℃~245℃において(すなわち、98%の濃硫酸中において多孔質のTa2O5膜を形成する)行う。
【0077】
本発明の一実施形態において、前記陽極酸化工程において、陽極酸化によってタンタル基材上にアモルファスTa2O5膜を一層形成する。特に、前記陽極酸化工程において、タンタル基材を、室温から380℃、好ましくは室温から300℃の酸素含有電解質溶液中に配置し、1~200mA/cm2の昇圧電流密度で、3~800Vの陽極電圧を0.01~2時間一定に印加して、一層のアモルファスTa2O5膜を形成する。
【0078】
前記陽極酸化工程において、溶液の温度が高い場合には、印加する電圧を低くすべきであり、逆の場合は高くしてもよい。例えば、室温下の0.01%H3PO4溶液については、最高で600Vの電圧を印加できる。どんな溶液であっても、加える電圧は該溶液のフラッシュオーバー電圧以下であるべきである。
【0079】
前記陽極酸化工程において、前記酸素含有電解質溶液は、水溶液、非水溶液、または水溶液電解質と有機化合物の混合物、であってよい。
【0080】
水溶液酸素含有電解質は、例えば酸、塩基、塩の水溶液であってよい。溶液温度は室温(約25℃)~95℃であり、陽極電圧は5~600Vであり、電圧一定時間は60~90分間以内である。温度が高すぎると、水分の揮発速度が過剰になる。溶液温度が比較的に高い場合、陽極電圧は比較的に低くあるべきである。
【0081】
非水溶液酸素含有電解質は無水濃硫酸または溶融塩または溶融塩と塩基類の混合物であってよく、例えば硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸リチウム、またはこれらとリチウム、ナトリウム、カリウムなど塩基の混合物。
【0082】
他の一類の酸素含有電解質溶液は水溶液電解質と有機化合物、例えばエタノール、エチレングリコール、n-ブタノールなどの混合物であってよい。水溶液の温度は95℃以下であるべきであり、そうでなければ水の揮発は迅速になり、制御は容易でない。
【0083】
本発明の一実施形態において、本発明の製造方法は予めタンタル基材に対して窒化または浸炭処理を行うことを含む。しかし、窒化または浸炭処理を行わなくてもよい。比較的に高い硬度を得るために、窒化または浸炭処理を採用できる。
【0084】
一つの好ましい実施形態において、イオン窒化炉を使用し、タンタル基材をカソードとし、炉温度は500-1000℃であり、炉圧は20-2000Paであり、充填ガスは窒素、水素であり、窒素:水素=2:1~1:10、0.5-6時間窒化し、タンタル基材の表面に窒化層を形成させ、かつ、タンタル基材の窒化後の硬度がHV180~480の間にあるように制御する。
【0085】
本発明の一実施形態によると、
1)直径サイズが適切なタンタル棒、またはニオブ棒、タンタル-ニオブ合金棒、またはチタン棒を選択すること、
2)加工済みの円柱体または円錐形のインプラント(雄ネジ山および内孔ネジ山等を加工すること、インプラントと配合する連接体および基台を提供することを含む)を提供すること、
3)リチウム含有塩溶融体中に電気化学フィルムコーティング処理を行うこと、
を含み、
タンタル、ニオブ、タンタル-ニオブ合金インプラントの表面に白色のタンタル酸リチウム膜、ニオブ酸リチウム膜、またはタンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜を生成でき、チタンインプラントの表面に一層の多孔質酸化チタン膜を生成する、
デンタルインプラントを製造する方法を提供する。
【0086】
本発明は適切な孔でネジ山を代替することを提案する。この孔はインプラントの内壁まで貫通でき、すなわち穿孔であり、一方インプラントの強度に影響しない。この方案のメリットはインプラントと人体の骨の接触面を増加し、インプラントの適合性および強固さを増加できることにある。
【0087】
当然、外孔が穿孔しなくてもよく、一定の厚さをキープし、よってインプラント内孔スレッドを加工でき、連接体または基台の固定に有利である。
【0088】
本発明の一実施形態によると、
1)デンタルインプラントブランクを提供する、およびパンチングパラメーターを設計すること、
すなわち、円柱または円錐インプラントの寸法を確定し、円柱の外直径および内孔の直径を含み、その後、孔を有する円柱体を平面図に展開し、孔の大きさ、孔の間隔または孔の分布、および孔のパンチング深さ、孔の形、すなわちストレートの孔またはテーパー状の孔、を設計し確定すること、
2)孔をパンチングすること、
すなわち、紡糸口金をパンチングする方法またはレーザパンチングを用いて、設計要件に沿ってパンチングすること、
3)研磨すること、
すなわち、パンチングの後に研磨の方法を用いて表面の余分な材料を除去すべきである。例えばレーザパンチングを用いる場合は一般的に孔の周囲に余分な材料はなく、研磨は比較的に容易である、
4)パンチング後研磨済みのタンタル薄板を、アルゴンアークまたはレーザを用いて、もともとの設計した円柱または円錐インプラントになるように溶接し、そして、必要な修理および雌ネジ山の加工などを行うこと、
5)電気化学法を用いて多孔質体インプラントおよび基台において前記表面処理を行い、よってインプラント金属と対応する複合体多孔質膜を生成し、孔を有するフィルムコーティングデンタルインプラントを得ること、
を含む、デンタルインプラントを製造する方法を提供する。
【0089】
本発明の一実施形態によると、
1)入口、すなわち人体の骨と接触する予定のある一面の孔を穿孔すること。孔の直径サイズを0.08~0.30mm、好ましくは0.16~0.22mmにコントロールする、
2)出口、すなわち孔とインプラント内孔と相互に連接する一端の孔。直径を0.28~0.06、好ましくは0.22~0.13mmにコントロールする。孔の形状はテーパー状の孔またはストレートな孔であってよい。テーパー状の孔は人体の骨をインプラント内に成長するように誘導することにより有利でありうる、
を含む、インプラントを穿孔する方法を提供する。
【0090】
本発明の一実施形態によると、穿孔しないインプラントのデザインを提供し、デンタルインプラントの中心孔の内壁の、基台連接体を設置するためにその加工が必要となったネジ山などの加工を保証する、インプラント上の孔を0.6~0.8mmキープし、そうでなければ穿孔しない、これよって内孔のネジ山の加工を容易にする。
【0091】
在本発明の文脈において、ニオブおよびタンタル-ニオブ合金基材は同様にタンタル基材に関する実施形態に適用できる。
【0092】
特に明記されない限り、引張強度および弾性率はGB/T22315-2008の規格に沿って測定される。
【0093】
以下に説明する具体的な実施形態は、当業者の本発明を理解することを助けるものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0094】
1.
(1)基材、および
(2)前記基材上に位置する多孔質膜、
を含み、
前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材およびチタン基材から選択され、好ましくは前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材およびタンタル-ニオブ合金基材から選択され、かつ
前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜および多孔質チタン酸化物膜から選択され、好ましくは前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜および多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜から選択される、
骨インプラント。
【0095】
2.
(1)タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材、またはチタン基材、および
(2)前記タンタル基材上に位置し、タンタル酸化物を含有する多孔質タンタル酸リチウム膜、前記ニオブ基材上に位置し、ニオブ酸化物を含有する多孔質ニオブ酸リチウム膜、前記タンタル-ニオブ合金基材上に位置し、タンタル酸化物およびニオブ酸化物を含有する多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜、または、前記チタン基材上に位置する多孔質チタン酸化物膜、
を含む、実施形態1に記載の骨インプラント。
【0096】
3.前記多孔質タンタル酸リチウム膜、前記多孔質ニオブ酸リチウム膜、前記多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜または前記多孔質チタン酸化物膜は0.1-1μmの孔径を有する、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0097】
4.前記多孔質タンタル酸リチウム膜、前記多孔質ニオブ酸リチウム膜、前記多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜または前記多孔質チタン酸化物膜は1-20μm、好ましくは2-10μm、より好ましくは3-5μmの厚さを有する、実施形態1または2に記載の骨インプラント、
【0098】
5.150GPa以上の弾性率を有する、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0099】
6.170GPa以上の弾性率を有する、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0100】
7.150-200GPaの弾性率を有する、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0101】
8.170-190GPaの弾性率を有する、実施形態7に記載の骨インプラント。
【0102】
9.骨に近い色を有する、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0103】
10.骨プロテーゼ、デンタルインプラントおよび頭蓋骨を含む、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0104】
11.前記デンタルインプラントは義歯基台部、本体部および前記義歯基台部と前記本体部を連接するネック部を含む、実施形態10に記載の骨インプラント。
【0105】
12.10-160GPaの弾性率、好ましくは20-150GPaの弾性率、より好ましくは30-140GPaの弾性率を有する、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0106】
13.前記タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材は多孔質である、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0107】
14.前記タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材は緻密質である、実施形態1または2に記載の骨インプラント。
【0108】
15.
(1)基材を提供すること、および
(2)前記基材上に多孔質膜を形成すること、
を含み、
前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材およびチタン基材から選択され、好ましくは前記基材は、タンタル基材、ニオブ基材およびタンタル-ニオブ合金基材から選択され、かつ
前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜および多孔質チタン酸化物膜から選択され、好ましくは前記多孔質膜は、多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜および多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜から選択される、
実施形態1-14のいずれか一項に記載の骨インプラントを製造する方法。
【0109】
16.
(1)タンタル基材、ニオブ基材、タンタル-ニオブ合金基材、またはチタン基材を提供すること、および
(2)前記タンタル基材、ニオブ基材、もしくはタンタル-ニオブ合金基材上に多孔質タンタル酸リチウム膜、多孔質ニオブ酸リチウム膜、もしくは多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜を形成すること、またはチタン基材上に多孔質チタン酸化物膜を形成すること、
を含み、
タンタル酸リチウム膜はタンタル酸化物を含有し、
ニオブ酸リチウム膜はニオブ酸化物を含有し、かつ
混合物膜はタンタル酸化物およびニオブ酸化物を含有する、
実施形態15に記載の方法。
【0110】
17.工程(2)において、溶融塩電気化学法によって多孔質膜を形成する、実施形態15または16に記載の方法。
【0111】
18.工程(2)の前に、タンタル基材上にTa2O5膜を形成する、実施形態15または16に記載の方法。
【0112】
19.陽極酸化によってタンタル基材上にアモルファスTa2O5膜を形成する、実施形態18に記載の方法。
【0113】
20.タンタル基材上にTa2O5膜を形成する工程において、タンタル基材を、室温から380℃、好ましくは室温から300℃の酸素含有電解質溶液中に配置し、1~200mA/cm2の昇圧電流密度で、3~800Vの陽極電圧を0.01~2時間一定に印加して、アモルファスTa2O5膜を形成する、実施形態19に記載の方法。
【0114】
21.工程(2)の前に、ニオブ基材上にNb2O5膜を形成する、実施形態15または16に記載の方法。
【0115】
22.陽極酸化によってニオブ基材上にアモルファスNb2O5膜を形成する、実施形態21に記載の方法。
【0116】
23.ニオブ基材上にNb2O5膜を形成する工程において、ニオブ基材を、室温から380℃、好ましくは室温から300℃の酸素含有電解質溶液中に配置し、1~200mA/cm2の昇圧電流密度で、3~800Vの陽極電圧を0.01~2時間一定に印加して、アモルファスNb2O5膜を形成する、実施形態22に記載の方法。
【0117】
24.工程(2)の前に、タンタル-ニオブ合金基材上にTa2O5-Nb2O5混合物膜を形成する、実施形態15または16に記載の方法。
【0118】
25.陽極酸化によってタンタル-ニオブ合金基材上にアモルファスTa2O5-Nb2O5混合物膜を形成する、実施形態24に記載の方法。
【0119】
26.タンタル-ニオブ合金基材上にTa2O5-Nb2O5混合物膜を形成する工程において、タンタル-ニオブ合金基材を、室温から380℃、好ましくは室温から300℃の酸素含有電解質溶液中に配置し、1~200mA/cm2の昇圧電流密度で、3~800Vの陽極電圧を0.01~2時間一定に印加して、アモルファスTa2O5-Nb2O5混合物膜を形成する、実施形態25に記載の方法。
【0120】
27.前記酸素含有電解質溶液は水溶液、非水溶液、または水溶液電解質と有機化合物の混合物である、実施形態20、23および26のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
28.前記溶融塩電気化学法は溶融リチウム塩電気化学法である、実施形態27に記載の方法。
【0122】
29.タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材を、250℃~650℃の酸素含有無機リチウム塩または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、1~1000mA/cm2の昇圧電流密度で、1~66Vの陽極電圧を0.01~200時間一定に印加して、リチウム含有化合物を含む膜層を形成する、実施形態15または16に記載の方法。
【0123】
30.工程(2)において、タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材を、440℃~600℃の酸素含有無機リチウム塩または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、5~20mA/cm2の昇圧電流密度で、10~30Vの陽極電圧を5分間~10時間一定に印加して、リチウム含有化合物を含む膜層を形成する、実施形態29に記載の方法。
【0124】
31.工程(2)において、タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材を、570℃~598℃の酸素含有無機リチウム塩または酸素含有無機リチウム塩と水酸化リチウムの混合溶融物中、または塩と水酸化リチウムの混合溶融液またはリチウム塩と酸素含有塩の混合溶融液中、に配置し、5~20mA/cm2の昇圧電流密度で、10~20Vの陽極電圧を8分間~30分間一定に印加して、リチウム含有化合物を含む膜層を形成する、実施形態29に記載の方法。
【0125】
32.前記酸素含有無機リチウム塩はLiNO3である、実施形態29に記載の方法。
【0126】
33.工程(c)において、超音波発生器を前記混合溶融物または前記混合溶融液中に設置する、実施形態29に記載の方法。
【0127】
34.タンタル基材、ニオブ基材またはタンタル-ニオブ合金基材に対して、窒化処理または浸炭処理を行う、実施形態15または16に記載の方法。
【0128】
35.医療用材料における骨インプラント用途であって、そのうち、前記骨インプラントは実施形態1-14のいずれか一項に記載されたものであり、または実施形態15-34のいずれか一項に記載の方法によって製造される、用途。
【0129】
36.前記医療用材料はデンタルインプラントまたは頭蓋骨である、実施形態35に記載の用途。
【実施例】
【0130】
本発明の性質および目的は、実施形態によって、および添付の図面と併せて以下にさらに理解されるが、これらの実施形態は例示的な目的のためだけであり、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解される。
【0131】
実施例1
工程1:金属タンタルを緻密なタンタル薄板に加工した。
【0132】
工程2:該タンタル薄板に対して、570℃の溶融硝酸リチウム溶液中において10Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0133】
図2a-2dは実施例1のサンプルのSEM画像を示す。
【0134】
【0135】
実施例2
工程1:金属タンタルを緻密なタンタル薄板に加工した。
【0136】
工程2:該タンタル薄板に対して、580℃の溶融硝酸リチウム溶液中において10Vの陽極電圧を印加し、25分間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0137】
図3a-3cは実施例2のサンプルのSEM画像を示す。
【0138】
【0139】
実施例3
工程1:金属タンタルを緻密なタンタル薄板に加工した。
【0140】
工程2:該タンタル薄板に対して、598℃の溶融硝酸リチウム溶液中において10Vの陽極電圧を印加し、10分間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0141】
図4a-4cは実施例3のサンプルのSEM画像を示す。
【0142】
【0143】
実施例4
工程1:金属タンタルを緻密なタンタル薄板に加工した。
【0144】
工程2:該タンタル薄板に対して、体積比がエチレングリコール:0.01%H3PO4=2:1である溶液を採用し、溶液温度は90℃であり、60Vの陽極電圧を印加し、3時間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄した。
【0145】
工程3:工程(2)で得たタンタル薄板に対して、598℃の溶融硝酸リチウム溶液中において10Vの陽極電圧を印加し、8分間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0146】
図5a-5cは実施例4のサンプルのSEM画像を示す。
【0147】
【0148】
実施例5
工程1:金属タンタルを緻密なタンタル薄板に加工した。
【0149】
工程2:該タンタル薄板に対して、体積比がエチレングリコール:0.01%H3PO4=2:1である溶液を採用し、溶液温度は90℃であり、143Vの陽極電圧を印加し、3時間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄した。
【0150】
工程3:工程(2)で得たタンタル薄板に対して、482℃の溶融硝酸リチウム溶液中において28Vの陽極電圧を印加し、6.5時間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0151】
図6a-6cは実施例5のサンプルのSEM画像を示す。
【0152】
実施例6
工程1:金属タンタルを緻密なタンタル薄板に加工した。
【0153】
工程2:該タンタル薄板に対して、440℃の溶融硝酸リチウム溶液中において33Vの陽極電圧を印加し、12時間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0154】
図7a-7dは実施例6のサンプルのSEM画像を示す。
【0155】
実施例7
工程1:金属タンタルを緻密なタンタル薄板に加工した。
【0156】
工程2:該タンタル薄板に対して、体積比がエチレングリコール:0.01%H3PO4=2:1である溶液を採用し、溶液温度は90℃であり、60Vの陽極電圧を印加し、3時間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄した。
【0157】
工程3:工程(2)で得たタンタル薄板に対して、598℃の溶融硝酸リチウム溶液中において10Vの陽極電圧を印加し、10分間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0158】
図8a-8cは実施例7のサンプルのSEM画像を示す。
【0159】
実施例8
工程1:金属タンタルをそれぞれ、緻密なタンタル薄板およびタンタルデンタルインプラントに加工した。
【0160】
工程2:該タンタル薄板およびタンタルデンタルインプラント(直径が6mmであるネジ山付きタンタル棒、直径2mmの孔を有する)のそれぞれに対して、580℃の溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中において10Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板およびタンタルデンタルインプラント上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0161】
【0162】
実施例9
工程1:金属タンタルをそれぞれ、緻密なタンタル薄板およびタンタルデンタルインプラント(直径が6mmであるネジ山付きタンタル棒、直径2mmの孔を有する)に加工した。
【0163】
工程2:該タンタル薄板およびタンタルデンタルインプラントのそれぞれに対して、まず、90℃下で0.05重量%H3PO4水溶液中において60Vの陽極電圧を印加し、1.5時間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄した。
【0164】
工程3:工程(2)で得たタンタル薄板およびタンタルデンタルインプラントに対して、598℃の溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)中において10Vの陽極電圧を印加し、8分間にわたって電圧を一定にして反応し、タンタル薄板およびタンタルデンタルインプラント上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成した。
【0165】
【0166】
実施例9a
多孔質のタンタルデンタルインプラント上において、580℃の溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)中において10Vの陽極電圧を印加し、25分間にわたって電圧を一定にして反応した。
【0167】
【0168】
比較例1
金属タンタルを緻密なタンタル薄板に加工したが、タンタル薄板上に多孔質タンタル酸リチウム膜層を形成する工程を行わなかった。
【0169】
図1a-1cは比較例1のサンプルのSEM画像を示す。
【0170】
【表1】
【表2】
注:表2において、各サンプルのフィルムコーティング後の膜の厚さが約10μmであるため、膜の下の推移層も約30μmであり、してみるとそれが粗大なタンタル試験片に占める割合がとても小さいことがわかる。よって測定されたデータは純タンタルにとても近いであり、表2の検測データは基本的に純タンタル弾性率に近いであり、本発明のサンプルのフィルムコーティングの表層の弾性率を示すことができない。一方、ナノインデンテーション法例えば機器型番TI-950によって測定した値は、本発明の異なるフィルムコーティングプロセスの弾性率の変化を示すことができる。
【0171】
表1および表2のデータから、以下のことがわかる。多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板は多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされていないタンタル薄板と比べて、その引張強度、弾性率が共に大きく向上でき、特にその弾性率は、デンタルインプラントの作製に必要な70GPaである弾性率より遥かに大きく、これは非常に有利である。
【0172】
多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板と多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされていないタンタル薄板のSEM画像を比較することによって、以下のことがわかる。本発明の多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板は、孔径が約1-30マイクロメートルの範囲にある開孔を多く有し、そして表面が粗く、これらの孔隙および凸凹して平らでない粗い表面は、細胞の付着および組織の嵌合に有利であり、骨インプラント例えばデンタルインプラントと骨組織の連結強度を強化でき、これによって骨インプラントは人体生物組織と、多孔質タンタル酸リチウム膜とタンタル基材を介してより良く結合でき、タンタル基材が十分に人体組織例えば歯槽骨、とより強固に結合できかつ一体化できる。一方、多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされていないタンタル薄板は相対的に非常に少ない孔を有し、表面が滑らかであって平坦であり、タンタル基材と人体組織例えば歯槽骨が一緒に強固に結合することに不利である。
【0173】
加えて、SEM画像から見ると、多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の孔隙の最小ディメンションにおける寸法は約10ナノメートル~1マイクロメートルの範囲にあり、該寸法は細菌の寸法(通常は5マイクロメートルより大である)より遥かに小さい。よって、本発明の多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされた骨インプラントは細菌の侵入をとても良く抑制でき、一定な抗菌作用を有する。
【0174】
図9-12から、多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板は白色を呈し、美的外観を有し、特別にデンタルインプラントの作製に適することがわかる。
【0175】
実施例10
タンタル薄板上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成するプロセス条件は表3に示す。
【0176】
【0177】
図16a-16bは実施例10のサンプルのSEM画像を示す。
【0178】
実施例11
タンタル薄板およびタンタル頭蓋骨基材のそれぞれの上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0179】
図15b(タンタル薄板)、
図33a(頭蓋骨)は実施例11のサンプルの外観写真を示す。
【0180】
図17a-17bは実施例11のサンプルのSEM画像を示す。
【0181】
実施例12
タンタル薄板上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0182】
【0183】
図18a-18bは実施例12のサンプルのSEM画像を示す。
【0184】
実施例13
タンタル薄板上において、まず、体積比がエチレングリコール:0.01重量%H3PO4=2:1の溶液を採用し、溶液温度は90℃であり、60Vの陽極電圧を印加し、1.5時間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0185】
【0186】
図19a-19bは実施例13のサンプルのSEM画像を示す。
【0187】
実施例14
タンタル薄板上において、まず、体積比がエチレングリコール:0.01重量%H3PO4=2:1の溶液を採用し、溶液温度は90℃であり、60Vの陽極電圧を印加し、1.5時間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0188】
【0189】
図20a-20bは実施例14のサンプルのSEM画像を示す。
【0190】
実施例15
タンタル薄板上において、まず、体積比がエチレングリコール:0.01重量%H3PO4=2:1である溶液を採用し、溶液温度は90℃であり、143Vの陽極電圧を印加し、1.5時間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0191】
【0192】
図21a-22bは実施例15のサンプルのSEM画像を示す。
【0193】
実施例16
タンタル薄板上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。プロセス条件は表3に示す。
【0194】
【0195】
図22a-22bは実施例16のサンプルのSEM画像を示す。
【0196】
実施例17
タンタル薄板上において、まず、98%濃H2SO4溶液中において、温度は220℃であり、150Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄し乾燥した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0197】
【0198】
図24a-24bは実施例17のサンプルのSEM画像を示す。
【0199】
実施例18
タンタル薄板上において、まず、98%濃H2SO4溶液中において、温度は220℃であり、150Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄し乾燥した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0200】
【0201】
図25a-25bは実施例18のサンプルのSEM画像を示す。
【0202】
実施例19
タンタル薄板上において、まず、98%濃H2SO4の溶液中において、温度は220℃であり、150Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄し乾燥した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0203】
【0204】
図26a-26bは実施例19のサンプルのSEM画像を示す。
【0205】
実施例20
タンタル薄板上において、まず、98%濃H2SO4の溶液中において、温度は220℃であり、82Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄し乾燥した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0206】
【0207】
図27a-27bは実施例20のサンプルのSEM画像を示す。
【0208】
実施例21
タンタル薄板上において、まず、98%濃H2SO4の溶液中において、温度は210℃であり、82Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄し乾燥した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0209】
【0210】
図28a-28bは実施例21のサンプルのSEM画像を示す。
【0211】
実施例22
タンタル薄板上において、まず、98%濃H2SO4の溶液中において、温度は210℃であり、82Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄し乾燥した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層形成したプロセス条件は表3に示す。
【0212】
【0213】
図29a-29bは実施例22のサンプルのSEM画像を示す。
【0214】
実施例23
タンタル薄板上において、まず、98%濃H2SO4溶液中において、温度は210℃であり、82Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄し乾燥した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム膜層を形成した。タンタル酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0215】
【0216】
図30a-30bは実施例23のサンプルのSEM画像を示す。
【0217】
実施例24
タンタル薄板上において、98%濃H2SO4の溶液中において陽極酸化を行い、温度は220℃であり、150Vの陽極電圧を印加し、30分間にわたって電圧を一定にした。表3に示す。
【0218】
【0219】
図31a-31bは実施例24のサンプルのSEM画像を示す。
【0220】
実施例25
チタン薄板上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中において陽極酸化を行いチタン酸化物膜層を形成した。チタン酸化物膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0221】
【0222】
図32a-32bは実施例25のサンプルのSEM画像を示す。
【0223】
表3のデータから、多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル複合体は適切な弾性率を有し、それは例えば作製頭蓋骨(頭骨)インプラントの作製に適することがわかる。
【0224】
多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板と多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされていないタンタル薄板のSEM画像を比較することによって、以下のことがわかる。本発明の多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板は、孔径が約0.1-30マイクロメートルの範囲にある開孔、さらにはハニカム状の開孔、を多く有し、そして表面が粗く、これらの孔隙および凸凹した平でない粗い表面は、細胞の付着および組織の嵌合に有利であり、骨インプラント例えばデンタルインプラントと骨組織例えば頭蓋骨(頭骨)の連結強度を強化でき、よって骨インプラントが人体生物組織とは多孔質タンタル酸リチウム膜とタンタル基材を介してより良く結合でき、タンタル基材が十分に人体組織とより強固に結合できかつ一体化できる。一方、多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされていないタンタル薄板は比較的にとても少ない孔を有し、表面は滑らかであり、タンタル基材と人体組織例えば歯槽骨および頭蓋骨(頭骨)などが一緒に強固に結合することに不利である。
【0225】
実施例25製造したチタン酸化物膜層を有するチタン薄板は適切な弾性率を示し、かつそのSEM画像は、膜層が繊維状の多孔質インタラクティブネットワークを有することを示し(
図32b参照)、細胞の付着および組織の嵌合に有利であり、骨インプラント例えば骨組織(例えば頭蓋骨(頭骨))の連結強度を強化でき、これによって骨インプラントは人体生物組織とは多孔質チタン酸化物膜層とチタン基材を介してより良く結合でき、チタン基材が十分に人体組織とより強固に結合できかつ一体化できる。
【0226】
加えて、SEM画像から見ると、多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされたタンタル薄板の孔隙は最小ディメンションにおける寸法が約10ナノメートル~1マイクロメートルの範囲にあり、該寸法は細菌の寸法(通常、5マイクロメートルより大きいである)より遥かに小さい。したがって、本発明多孔質タンタル酸リチウム膜でコーティングされた骨インプラントは細菌の侵入を非常に良く抑制でき、一定な抗菌作用を有する。
【0227】
実施例26
タンタル-ニオブ合金薄板上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜層を形成した。タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0228】
【0229】
図35a-35bは実施例26のサンプルのSEM画像を示す。
【0230】
実施例27
タンタル-ニオブ合金薄板上において、まず、体積比がエチレングリコール:0.01重量%H3PO4=2:1の溶液を採用し、溶液温度は90℃であり、143Vの陽極電圧を印加し、1.5時間にわたって電圧を一定にし、その後洗浄した。その後、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてタンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜層を形成した。タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0231】
【0232】
図37a-37bは実施例27のサンプルのSEM画像を示す。
【0233】
実施例28
ニオブ薄板上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてニオブ酸リチウム膜層を形成した。ニオブ酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0234】
【0235】
図39a-39bは実施例28のサンプルのSEM画像を示す。
【0236】
実施例29
ニオブ薄板およびニオブ頭蓋骨基材上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてニオブ酸リチウム膜層を形成した。ニオブ酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0237】
図40(ニオブ薄板)および
図41(ニオブ頭蓋骨)は実施例29のサンプルの外観写真を示す。
【0238】
図42a-42bは実施例29のサンプルのSEM画像を示す。
【0239】
実施例30
ニオブ薄板上において、溶融硝酸リチウム:硝酸カリウム(重量比1:1)溶液中においてニオブ酸リチウム膜層を形成した。ニオブ酸リチウム膜層を形成したプロセス条件は表3に示す。
【0240】
【0241】
図44a-44bは実施例31のサンプルのSEM画像を示す。
【0242】
表3 サンプルの製造および弾性率(ナノインデンターTI-950、NHT、Hysitron、USから、によって測定)
【表3】
表3中の弾性率はUS、HysitronのナノインデンターTI-950、NHTによって測定した。
【0243】
表3のデータから、多孔質タンタル酸リチウム-ニオブ酸リチウム混合物膜でコーティングされた複合体、および多孔質ニオブ酸リチウム膜を有する複合体は、適切な弾性率を有し、それは例えば頭蓋骨(頭骨)インプラントの作製に適する、ことがわかる。
【0244】
本発明の特定の実施形態が示され、説明されているが、他の改良、代替、およびオプションが当業者に知られていることを理解されたい。そのような改良、代替およびオプションの実施形態は、添付の請求項によって決定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得る。本発明の様々な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】