(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】懸濁液濃縮物分散剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/04 20060101AFI20231017BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20231017BHJP
A01N 43/824 20060101ALI20231017BHJP
A01N 43/80 20060101ALI20231017BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20231017BHJP
【FI】
A01N25/04 102
A01P13/00
A01N43/824 B
A01N43/80 102
C09K23/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521184
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2021077598
(87)【国際公開番号】W WO2022074064
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506352278
【氏名又は名称】クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン ナイト
(72)【発明者】
【氏名】エイミー スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ フラベル
【テーマコード(参考)】
4D077
4H011
【Fターム(参考)】
4D077AB17
4D077AC05
4D077DD06X
4D077DD10X
4D077DD14X
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4H011AA02
4H011AA03
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4H011BC16
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4H011DG11
4H011DH02
4H011DH03
(57)【要約】
アクリル酸、疎水性モノマー、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレート、及び随意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体のコポリマーを含むコポリマー分散剤:アクリル酸エステルとオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマー:並びに水媒体中において分散している疎水性固体農薬活性物質から選択される、補助剤を含む新たな懸濁型水媒体農薬製剤。製剤を形成するのに適した濃縮物も提供される。コポリマーの組み合わせは、懸濁液濃縮物の水媒体中において疎水性固体農薬活性物質のための分散性を提供する。農薬製剤中における、疎水性固体農薬活性剤のための分散剤としての前記コポリマーの使用、及び製剤を又は製剤の希釈濃縮形態を、植生に又は周辺環境に施用することによって、有害生物を防除するために植生を処理する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)アクリル酸と、疎水性モノマーと、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレートと、随意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体とのコポリマーを含んでいるコポリマー分散剤:
ii)アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマー:及び
iii)補助水媒体において分散する、少なくとも1種の疎水性固体農薬活性物質(hydrophobic solid agrochemical actives):
を含む、懸濁型水溶媒農薬製剤(suspension type water medium agrochemical formulation)。
【請求項2】
前記アクリル酸モノマーが、
(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、C1-6-アルキル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート又はヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、置換C1-6-アルキル(メタ)アクリレート、ジ(C1-4-アルキルアミノ)C1-6-アルキル(メタ)アクリレート、
C1-6アルキルアミン、置換C1-6-アルキル-アミンから形成されたアミドから選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記アクリル酸モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、又はそれらの混合物である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記疎水性モノマーが、疎水性アルキル(メタ)アクリレート、スチレン類、及びビニル化合物、並びにビニル芳香族モノマーから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記疎水性モノマーが、スチレン又はアルキル置換スチレンから選択されるビニル芳香族モノマーである、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレートが、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸の強酸誘導体が、アクリルアミドメチルプロピルスルホネート(AMPS)又は(メタ)アクリル酸イセチオネートから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの前記非イオン性グラフトコポリマーの分子量が、5000~40000である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの前記非イオン性グラフトコポリマーが、非イオン性ポリエチレンオキシドグラフトコポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記疎水性固体農薬活性物質が、除草剤フルフェナセット、又はメトリブジン:アゾール系殺菌剤ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、プロチオコナゾール:又は殺虫剤ブプロフェジン若しくはアゾキシストロビンから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項の記載に従い、農薬製剤を製造するのに適した濃縮製剤であって、
i)アクリル酸と、疎水性モノマーと、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキ ルアクリレートと、随意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体とのコポリマーを含むコポリマー分散剤:及び
ii)アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマー:及び
iii)補助水媒体において分散する、少なくとも1種の疎水性固体農薬活性物質
を含む濃縮製剤。
【請求項12】
疎水性固体農薬活性物質を含む農薬製剤における分散剤としての、アクリル酸、疎水性モノマー、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレートと、任意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体のコポリマー:及び
アクリル酸エステルとオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマー:
を組み合わせた使用。
【請求項13】
有害生物を防除するために植生を処理する方法であって、第1の態様の製剤及び/又は第2の態様の希釈濃縮製剤を、前記植生に又は前記植生の周辺環境に施用することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性固体農薬活性物質(hydrophobic solid agrochemical actives)を含む懸濁型農薬製剤(suspension-type agrochemical formulations)のためのポリマー分散剤、及び前記農薬製剤において分散性を提供する方法に関する。本発明はまた、前記製剤で作物を処理する方法も含む。
【背景技術】
【0002】
農薬製剤は、典型的には、例えば活性物質(actives)などの溶解又は分散した成分を含み、これらの成分の分散を助けるために製剤にしばしば添加剤又は分散剤が添加される。
【0003】
規制により、水ベースの系(water based system)が増える傾向にあり、そのため、水溶性があまり高くない(疎水性で難溶性の)活性物質の場合に問題が生じている。さらに、しばしば、より多くの活性物質が製剤に含まれる場合、これは好ましくない結晶成長をもたらしうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農薬製剤の特定の問題は、活性物質の分散がますます困難になることであり、溶解性の低い又は難溶性の活性物質を使用する傾向があるため、これは特に問題である。より親水性の高い活性物質を使用する傾向の結果、それらは分散しにくくなる。これらの活性物質は、オストワルド熟成及び/又は結晶成長の可能性を高めうる。
【0005】
結晶成長や凝結は、ファンデルワールス力による微粒子同士の絶え間ない相互衝突によって引き起こされると考えられている。微粒子が凝集する可能性があり、結果として粘土のように沈降する。その段階で、凝集体の分散が困難になる。
【0006】
農薬が溶解する懸濁型農薬製剤を調製する際に、安定剤としていくつかの溶媒を使用することは、解決策ではない。これらの種類の溶媒は、農薬活性物質の結晶成長の加速にもつながる可能性がある。
【0007】
従って、疎水性の難溶性活性物質を含む懸濁型の形成を可能にし、製剤の結晶成長及び不安定性を完全に又は実質的に減少させる分散剤を見出す必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、農薬製剤において、分散剤として用いるのに適した化合物を提供しようとするものであり、前記分散剤は上記の問題を克服することができる。さらに、本発明は、例えば懸濁型製剤における疎水性固体活性物質の分散性などの、望ましい特性を有する分散剤を提供しようとするものである。本発明は、また、前記分散剤を含む農薬濃縮物(agrochemical concentrates)及び希釈製剤の使用を提供しようとするものである。本発明はまた、製剤に効果的な立体安定性及び静電的安定性を提供しようとするものである。
【0009】
本発明は、水系溶媒において、疎水性固体農薬の微粒子を分散させることによって調製される懸濁型農薬製剤を提供し、凝集及び軟凝集を低減かつ/又は防止するのを助ける。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、
i)アクリル酸と、疎水性モノマーと、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレートと、随意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体とのコポリマーを含むコポリマー分散剤:及び
ii)アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマー:及び
iii)補助水媒体において分散する、少なくとも1種の疎水性固体農薬活性物質:
を含む、懸濁型水溶媒農薬製剤(suspension type water medium agrochemical formulation)が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の農薬製剤を製造するのに適した濃縮製剤(concentrate formulation)を提供する。ここで、この濃縮製剤は下記を含む:
i)アクリル酸と、疎水性モノマーと、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレートと、随意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体とのコポリマーを含むコポリマー分散剤:及び
ii)アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマー:及び
iii)補助水媒体において分散する、少なくとも1種の疎水性固体農薬活性物質:
【0012】
本発明の第3の態様によれば、下記の組み合わせの使用が提供される:
アクリル酸、疎水性モノマー、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレート、及び随意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体とのコポリマー:並びに
アクリル酸エステルとオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマー
疎水性固体農薬活性物質を含む農薬製剤における分散剤として、上記組み合わせの使用が提供される。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、有害生物(pests)を防除するために植生を処理する方法であって、第1の態様の製剤、及び/又は、希釈された第2の態様の濃縮製剤を、前記植生に又は前記植生の周辺環境に施用することを含む方法が提供される。
【0014】
アクリル酸と、疎水性モノマーと、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレートと、随意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体とから形成されたポリマーの組み合わせは、アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマーと共に、疎水性固体農薬活性物質を有する懸濁型農薬製剤において使用された場合に、望ましい分散特性を提供し、結晶成長は著しく減少することが見出された。
【0015】
本明細書で使用される場合、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「例えば・・・など(such as)」又は「を包含する(including)」という用語は、より一般的な主題をさらに明確にする例を紹介することを意味する。特に明記しない限り、これらの例は、本開示に示される用途を理解するための助けとしてのみ提供されており、どのようなことであれ限定することを意図するものではない。
【0016】
置換基における炭素原子の数を説明するとき(例えば、「C1~C6アルキル」)、この数は、任意の分岐基において任意に存在するものを含む、置換基において存在する炭素原子の総数を指すことが理解されよう。さらに、例えば脂肪酸中の炭素原子の数を説明する場合、これは、カルボン酸に位置するもの及び任意の分岐基に任意に存在するものを含む炭素原子の総数を指す。
【0017】
コポリマー分散剤は、アクリル酸、疎水性モノマー、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレート、及び随意に(メタ)アクリル酸の強酸誘導体のコポリマーを含む。
【0018】
コポリマーを形成するために用いられるアクリル酸モノマーは、(メタ)アクリル酸又 はその塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、C1-6-アルキル(メタ)アクリレート、例えばエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート又はヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど、置換C1-6-アルキル(メタ)アクリレート、例えばグリシジルメタクリレート及びアセトアセトキシエチルメタクリレートなど、ジ(C1-4-アルキルアミノ)C1-6-アルキル(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノエチルアクリレート又はジエチルアミノエチルアクリレートなど、C1-6-アルキルアミン、置換C1-6-アルキルアミンから形成されたアミド、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム塩など、又はジ(C1-4-アルキル-アミノ)C1-6-アルキルアミン、並びにそれらの(メタ)アクリル酸及びそれらのC1-4-アルキルハライド付加物から選択してよい。
【0019】
好ましくは、アクリル酸モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、又はそれらの混合物であってよい。より好ましくは、モノマーはアクリル酸である。
【0020】
疎水性モノマーは、非水溶性である任意のモノマーから選択してよい。特に、疎水性モノマーは、疎水性アルキル(メタ)アクリレート、スチレン類、並びにビニル化合物及びビニル芳香族モノマーから選択してよい。
【0021】
特に、ビニル芳香族モノマーが好ましい場合がある。
【0022】
ビニル芳香族モノマーは、スチレンそれ自体、又は置換スチレン、特にヒドロカルビル置換スチレン、望ましくはアルキル置換スチレンであることができ、かつ望ましくはそれらであり、これらにおいて、置換基がスチレンのビニル基上又は芳香環上にあるもの、例えば、α-メチルスチレン及びビニルトルエン。
【0023】
好適なビニル芳香族モノマーは、好ましくは8~20個の炭素原子、最も好ましくは8~14個の炭素原子を含んでよい。スチレン類及び置換スチレン類が好ましく、置換基が存在する場合、置換基はC1-C6アルキル基である。
【0024】
ビニル芳香族モノマーの例は、置換スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、α-メチルスチレン、及びハロゲン化スチレンを包含するスチレン類である。
【0025】
スチレンモノマーは、強酸性の置換基、特にスルホン酸置換基を包含するスチレンモノマーであることができるか、又はそれらを含んでいてもよい。存在する場合、かかる強酸変性モノマーは、通常、コポリマー中のスチレンモノマーの1~30モル%、より通常は2~20モル%、望ましくは5~15モル%を形成する。
【0026】
好ましくは、疎水性モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、又はそれらの組み合わせであってよい。より好ましくは、疎水性モノマーはスチレンであってよい。
【0027】
モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレートは、好ましくは、非イオン性の親水性モノマーであってよい。
【0028】
アルキルアクリレート又はモノアルキル基の一部としてのアルキル基は、C1-C6アルキル、及び特にC1-C3アルキルから独立して選択してよい。アルキル基は、好ましくは、メチル、エチル、n-ブチル、又はt-ブチルから選択してよい。好ましくは、アルキル基はメチルである。
【0029】
モノアルキルポリエチレングリコール(すなわち、モノアルキルポリエチレングリコールのPEG鎖のみであり、アルキルアクリレート全体ではない)の数平均分子量は、少なくとも300ダルトン、好ましくは350~900ダルトンに及び、より好ましくは400~600ダルトンに及ぶことができる。
【0030】
本発明の初期材料として使用されるモノアルキルポリエチレングリコールのいくつかは、商業的に生じる。したがって、総分子量が500及び550であり、それぞれ商業的にメトキシポリエチレングリコール550及びメトキシポリエチレングリコール750として呼ばれているメチルエーテルが市場で入手可能である。
【0031】
好ましくは、モノアルキルポリエチレングリコールのアルキルアクリレートは、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)であり、より具体的には、メトキシポリエチレングリコール500メタクリレートである。
【0032】
(メタ)アクリル酸の強酸誘導体としては、硫酸基又はスルホン酸基(又はそれらの塩)を含む強酸が挙げられてよい。かかるモノマーの例としては、アクリルアミドメチルプロピルスルホネート(AMPS)及び(メタ)アクリル酸イセチオネートが挙げられる。
【0033】
存在する場合、かかる強酸変性モノマーは、通常、コポリマー中のアクリル酸モノマーの1~30モル%、より通常は2~20モル%、望ましくは5~15モル%を形成する 。
【0034】
ポリマーは、疎水性モノマーから形成されたものであってよく、水溶性ポリマーであってよい。前記溶解性は、ポリマーの中和の結果として生じる。
【0035】
本開示で用いられる「コポリマー」という用語は、2種の成分を有するポリマーや、ターポリマー及びテトラポリマー、並びに、一般的に、2種又は3種以上の成分を有する任意のポリマーを包含することが理解されよう。コポリマーは、好ましくは、ランダムなターポリマー又はテトラポリマーであってよく、随意に、(メタ)アクリル酸モノマーの強酸誘導体を有してもよい。
【0036】
コポリマーは、任意の適切な方法によって形成することができ、かかる方法としては、フリーラジカル溶液重合又は制御されたリビング重合が挙げられる。上記の複数のモノマーは、適切な開始剤を用いて、制御された様式で一定期間中、同時に添加することができる。
【0037】
ポリマー中に存在するアクリル酸モノマーの量は、10質量%~90質量%の範囲内であることができる。好ましくは、15質量%~60質量%である。より好ましくは、20質量%~50質量%である。最も好ましくは、30質量%~40質量%である。
【0038】
ポリマー中に存在するビニル芳香族モノマーの量は、10質量%~90質量%の範囲内であることができる。好ましくは、15質量%~60質量%である。より好ましくは、15質量%~40質量%である。最も好ましくは、20質量%~30質量%である。
【0039】
ポリマー中に存在するポリエチレングリコールモノマーのアルキルアクリレートの量は、10質量%~90質量%の範囲内であることができる。好ましくは、15質量%~60質量%である。より好ましくは、20質量%~50質量%である。最も好ましくは、30質量%~40質量%である。
【0040】
存在する場合、かかる強酸変性モノマーは、通常、コポリマー中のアクリル酸モノマーの1~30モル%、より通常は2~20モル%、望ましくは5~15モル%を構成する。
【0041】
他のモノマー、例えば酸性モノマー、例えばイタコン酸若しくはマレイン酸若しくはそれらの無水物など:強酸性モノマー、例えばメタリルスルホン酸(若しくは塩)など:又は非酸性アクリルモノマー、例えば、アルキルエステル、特にC1~C6アルキルエステル、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル又はアクリル酸ブチルなど、又はヒドロキシアルキルエステル、特にC1~C6ヒドロキシアルキルエステル、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸エステル:又はビニルモノマー、例えば酢酸ビニルなどを包含することができる。典型的には、かかる他のモノマーの割合は、使用される全モノマーの約10モル%以下、通常は約7モル%以下、より通常は約5モル%以下である。
【0042】
ポリマー分散剤中に強酸性置換基を有するモノマーを含めることにより、硬水中、特に500ppmを超える、例えば最大で1,000ppm、最大で2,000ppm、さらには最大で5,000ppmの硬度を有する水中に分散させたときに、農薬製剤の固体粒状の形態の分散の改善をもたらしうる。
【0043】
ポリマーは、500,000ダルトン未満の分子量を有してよい。好ましくは、100,000ダルトン未満である。より好ましくは、75,000ダルトン未満である。当該分子量は5000~75,000ダルトンの範囲内であってよい。より好ましくは、10,000~60,000ダルトンの範囲内である。さらに好ましくは、15,000~50,000ダルトンの範囲内である。最も好ましくは、20,000~40,000ダルトンの範囲内である。
【0044】
ポリマーは、遊離酸又は塩として用いることができる。実際には、製剤中に存在する形態は、製剤の酸性度によって決定される。望ましくは、製剤はほぼ中性であり、従ってほとんどの酸基は塩として存在するであろう。任意のかかる塩におけるカチオンは、アルカリ金属、特にナトリウム及び/若しくはカリウム、アンモニウム、又は、例えばエタノールアミン、 特にトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンを包含するアミンであることができる。特に、安定化ポリマーのナトリウム又はカリウム塩形態が好ましい。
【0045】
中和度は少なくとも70%、好ましくは75%~85%である。ナトリウムによる中和 が好ましい。
【0046】
ポリマーのpHは4.0~11.0の範囲内であってよい。より好ましくは、5.0~10.0の範囲内である。さらに好ましくは、5.5~9.0の範囲内である。最も好ましくは、6.0~8.0の範囲内である。
【0047】
製剤は、アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの非イオン性グラフトコポリマーを含む。
【0048】
アクリル酸エステルは、非酸性アクリルモノマー、例えば、アルキルエステル、特にC1~C6アルキルエステルから選択されうるアクリル酸エステルであってよい。
【0049】
好ましくは、前記アルキルエステルはメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート又はブチルアクリレートから選択されうる。最も好ましくは、メチルメタクリレートである。
【0050】
(ポリ)アクリル酸エステル鎖中のアクリル酸エステルモノマー残基の数は、好ましくは2~50、より好ましくは5~40、特に10~30の範囲である。
【0051】
オキシアルキレン基は、化学式-(CyH2yO)-基から選択することができ、yは2、3又は4から選択される整数である。好ましくは、yは2又は3である。
【0052】
オキシアルキレン基は、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン、又はオキシテトラメチレンから選択されうる。好ましくは、オキシアルキレン基は、オキシエチレン(EO)及び/又はオキシプロピレン(PO)から選択される。
【0053】
オキシアルキレン鎖がホモポリマーである場合、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドのホモポリマーが好ましい。より好ましくは、酸化エチレンのホモポリマーが特に好ましい。
【0054】
2つ以上のオキシアルキレン基が存在し(すなわち、nが2又はそれ以上)、少なくとも2つが同じオキシアルキレン鎖の一部である場合、オキシアルキレン基は同一であってよい、又は前記オキシアルキレン鎖に沿って異なっていてよい。この実施形態において、オキシアルキレン鎖は、異なるオキシアルキレン基のブロック又はランダムコポリマーであってよい。
【0055】
通常、エチレン及びプロピレンオキシド単位のコポリマー鎖が用いられる場合、用いられるエチレンオキシド単位のモル比率は少なくとも50%、及びより通常は少なくとも70%である。
【0056】
(ポリ)アルキレンオキシド鎖中のアルキレンオキシド残基の総数は、好ましくは2から50、より好ましくは5から40、及び特に10から25の範囲である。
【0057】
アクリル酸エステルとオキシアルキレンとの非イオン性グラフトコポリマーの分子量は、典型的には5000~40000、特に7000~30000、さらに特に8000~25000、及びその中でも約9000~18000である。
【0058】
アクリル酸エステル及びオキシアルキレンの任意の非イオン性グラフトコポリマーを用いてよい。好ましくは、コポリマーは、非イオン性ポリメチルメタクリレート-ポリエチレンオキシドグラフトコポリマーであってよい。
【0059】
本発明による製剤において用いるための農薬活性物質(agrochemical actives)は、疎水性固体農薬活性物質(hydrophobic solid agrochemical active)である。これらは、室温で固体の農薬活性化合物(agrochemically active compounds)である。
【0060】
農業化学において、2つの溶媒中、それぞれオクタノール中の及び水中の、イオン化されていない溶質の濃度比の対数は、農薬(pesticide)の親油性の指標として用いられ、オクタノール/水係数、logPとして知られている。農薬活性のあるものは、2.5を超えるlogP値を有しうる。より好ましくは、2.5から4.5の範囲内である。
【0061】
農薬活性物質とは、本発明の文脈において植物保護剤である殺生物剤を指し、より具体的には、例えば医薬、農業、林業及び蚊駆除などの分野において用いられる様々な形態の生物を殺すことができる化学物質である殺生物剤を指す。殺生物剤のグループには、いわゆる植物成長調整剤も包含される。
【0062】
本発明の農薬製剤において用いられる殺生物剤は、典型的には2つのサブグループに分けられる:
・農薬(pesticides)で、殺菌剤(fungicides)、除草剤、殺虫剤、殺藻剤、殺軟体動物剤、殺ダニ剤、及び殺鼠剤が挙げられる、及び
・抗微生物剤で、殺菌薬(germicides)、抗生物質、抗バクテリア剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗原虫剤及び抗寄生虫剤が挙げられる。
【0063】
特に、殺虫剤、殺菌剤(fungicides)又は除草剤から選択される殺生物剤が特に好ましい場合がある。
【0064】
本発明において、疎水性固体農薬とは、水に非常に溶けにくいか、又はほとんど溶けないものを意味する。
【0065】
本発明において用いるための典型的な農薬には下記が挙げられる:
除草剤で、例えば、フルフェナセット(flufenacet)、オクタン酸ブロモキシニル(bromoxynil octanoate)、トリフルラリン(trifluralin)、ベンフルラリン(benfluralin)、イソウロン(isouron)、メトリブジン(metribuzin)、ダイムロン(daimuron)、アメトリン(ametryn)、ジクロバニル(dichlobanil)、アラクロール(alachlor)、リニュロン(linuron)、ジウロン(diuron)などである:
殺菌剤で、例えば、イソプロチオラン(isoprothiolane)、クロロタロニル(chlorothalonil)など:アゾール系殺菌剤で、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、ペンコナゾール(penconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、メトコナゾール(metconazole)、トリアジメノール(triadimenol)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、フルトリアゾール(flutriazole)、トリフルミゾール(triflumizole)から選択されるもの:フェンブコグループで、ナゾール(nazole)、ブロムコナゾール(bromconazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、アザコナゾール(azaconazole)、トリチコナゾール(triticonazole)、トリアジメフォン(triazimephone)、及びイミベンコナゾール(imibenconazole)から成るもの:ストロビルリン類似体で、例えば、クレソキシム-メチル(kresoxim-methyl)及びピラクロストルビン(pyraclostorubin)など: マネブ(maneb)、マンコザブ(mancozeb)、ジラム(ziram)、チラム(thiram):
殺虫剤で、例えば、ジメチルエチルスルフィニルイソプロピルチオホスフェート(dimethylethylsulfinyl isopropylthiophosphate)、メトルカルブ(metolcarb)、ホサロン(phosalone)、ブプロフェジン(buprofezin)、アゾキシストロビン(azoxystrobin)、イソチオシアン酸メチル(methyl isothiocyanate)など:
及びそれらの混合物。
【0066】
最も好ましくは、本発明の農薬製剤において存在する活性物質は、下記から選択される:除草剤で、例えば、フルフェナセット(flufenacet)、又はメトリブジン(metribuzin)など:アゾール系殺菌剤で、例えば、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)など:又は殺虫剤で、例えば、ブプロフェジン(buprofezin)若しくはアゾキシストロビン(azoxystrobin)など。
【0067】
特に、例えばアゾキシストロビン(azoxystrobin)などの活性物質と、シプロコナゾール(cyproconazole)及び/又はジフェノコナゾール(difenoconazole)との組み合わせが好ましい場合がある。
【0068】
殺虫剤及び殺菌剤が挙げられる農薬活性化合物は、活性化合物が植物/標的生物によって取り込まれることを可能にする製剤を必要とする。
【0069】
本明細書で用いられる「農薬製剤(agrochemical formulation)」という用語は、活性農薬(active agrochemical)を含む組成物を指し、濃縮物及び噴霧製剤を含むあらゆる形態の組成物を包含することを意図している。特に明記しない限り、本発明の農薬製剤は、濃縮物、希釈された濃縮物(diluted concentrate)、又は噴霧可能な製剤の形態でありうる。
【0070】
本発明の分散剤は、少なくとも1つの農薬活性物質を含む農薬製剤を形成するために、他の成分と組み合わせてよい。
【0071】
本発明の製剤は、水性懸濁型製剤である。濃縮形態において、これらの製剤は、分散液が水相中に直に存在するか、又は固体支持体に吸収若しくは吸着されているか、又は活性物質のマイクロカプセル化された液体若しくは溶液として、一般に水不溶性活性成分を分散させるために用いられる。これらは、活性化合物が固体として存在する、懸濁濃縮物(suspension concentrates:SC)として一般に知られている。
【0072】
これらの水性農薬濃縮物は、水(又は水性液体)で希釈して、対応する噴霧製剤を形成するように設計された農薬組成物である。
【0073】
噴霧製剤は、植物又はそれらの環境に施用することが望まれる全ての成分を包含する水性農薬製剤である。噴霧製剤は、望ましい成分 (水以外) を含む濃縮物の単純な希釈によって形成することができる。
【0074】
これにより、分散剤は、農薬活性化合物の製剤(in-can/built-in製剤)に組み込むことができる。
【0075】
顧客のニーズに応じて、このように形成された濃縮物は、典型的には95質量%までの農薬活性物質を含みうる。前記濃縮物は、使用のために希釈することができ、約0.5質量%~約1質量%の農薬活性濃度を有する希釈組成物をもたらす。前記希釈組成物(例えば、噴霧施用率が10~500l・ha-1でありうる噴霧製剤)において、農薬活性濃度は、噴霧された全製剤の約0.001質量%~約1質量%の範囲でありうる。
【0076】
本発明のコポリマー分散剤は、典型的には、製剤中の活性農薬の量に比例する量で用いられる。農薬製剤濃縮物において、分散剤の割合は、液体キャリヤー中の成分の溶解度に依存する。典型的には、そのような濃縮物中のコポリマー分散剤の濃度は、1質量%から20質量%である。好ましくは、1.5質量%から10質量%である。より好ましくは、2質量%~5質量%である。
【0077】
典型的には、そのような濃縮物中のグラフトコポリマーの濃度は、1質量%から20質量%である。好ましくは、1.5質量%から10質量%である。より好ましくは、2質量%~5質量%である。
【0078】
濃縮物中のグラフトコポリマーに対する分散剤の質量比は、好ましくは約0.7:1~約4:1である。より好ましくは、それぞれ約0.8:3.5~約3.5:1である。特に、グラフトコポリマーに対する分散剤の質量比は3:1~1:1であってよい。
【0079】
濃縮物及び希釈された濃縮農薬製剤中の活性農薬に対する分散剤及びグラフトコポリマーの質量比は、好ましくは約0.05:1~約0.2:1である。より好ましくは、約0.7:1~約0.15:1である。この比率の範囲は、一般に、製剤の濃縮形態(例えば、アジュバントが分散性液体濃縮物(dispersible liquid concentrate)又は分散性固体粒製剤(dispersible solid granule formulation)に含まれる場合)及び噴霧製剤において維持される。
【0080】
濃縮物(固体又は液体)が活性農薬及び/又は分散剤及びグラフトコポリマーの供給源として用いられるとき、濃縮物は、典型的には、噴霧製剤を形成するために希釈される。希釈は、噴霧製剤を形成するために、濃縮物の総重量の1~10000倍、特に10~1000倍の水を用いるというものであり得る。
【0081】
農薬活性物質が水性の最終用途製剤中に固体粒子として存在する場合、ほとんどの場合、それは主に活性農薬の粒子として存在する。ただし、望ましい場合、活性農薬を固体キャリヤー、例えばシリカ又はケイソウ土上に担持することができ、固体キャリヤーは、上記のような固体支持体、フィラー又は希釈剤材料であることができる。
【0082】
噴霧製剤は、典型的には、中程度の酸性(例えば、約3)から中程度のアルカリ性(例えば、約10)までの範囲内のpH、特に中性に近い(例えば、約5~8)pHを有する。より濃縮された製剤は、同程度の酸性度/アルカリ性を有するが、それらはほとんどが非水性である可能性があるため、pHは必ずしもこれの適切な尺度ではない。
【0083】
特に問題となるのは、結晶成長であり、例えば比較的短期間の貯蔵中の活性成分の「オストワルド熟成」による結晶成長である。「オストワルド熟成」による結晶成長は、一般に、小さな結晶(大きな結晶よりも表面積が大きい)が水相に溶解し、材料が連続相を介して、大きな結晶の核形成地点に輸送されるときに発生する。その結果、活性成分の結晶が凝集かつ沈降することがあり、製剤が不均一になる:施用中、噴霧装置のフィルター及びノズルが目詰まりし、生物学的効果が低下する場合がある。水性懸濁濃縮物において、分散剤の目的は、結晶サイズの過度な増加を防ぐことである。
【0084】
驚くべきことに、本発明の分散剤の組み合わせは、「オストワルド熟成」を通じた結晶成長の傾向を有する活性成分における結晶成長を、減速かつ/又は停止する効果を有することも見出された。
【0085】
特に、分散剤の組み合わせは、特定の親油性活性物質(すなわち、疎水性で分散しにくい活性物質)のための結晶成長阻害に役立つ。農業化学において、2つの溶媒中、それぞれオクタノール中の及び水中の、イオン化されていない溶質の濃度比の対数は、農薬(pesticide)の親油性の指標として用いられ、オクタノール/水係数、Ko/w又はlogPとして知られている。本発明のポリマーは、-1.5~+6のlogPを有する少なくとも一種の農薬を、50~1100g/L含む水性農薬製剤の調製に応じる。
【0086】
パラメーターKo/w又はlogPの評価により、結晶化のリスクを予測できる。このリスクは、具体的には、5mlのEC又はEWを、95mlの水で希釈し、冷蔵庫(1℃)において保管したとき、7日後にエマルジョンを5μmのフィルターに通した後に起きることを指す。これらの実験パラメーターは、主に、水又はオクタノールへの可溶化の優先傾向(オクタノール/水分配係数、Ko/w又はlogPとして知られる)を指す。本発明が有効であるlogPの値の範囲は、2.5及び4.5との間のlogPを有する農薬(pesticide)をカバーする。
【0087】
製剤はまた、色素、染料、微量栄養素、農薬活性物質、増量剤、及びそれらの組み合わせから選択される追加の成分を含んでもよい。
【0088】
農薬製剤は、第1アジュバント及びコアジュバントと関連して、例えばモノプロピレングリコールなどの溶媒(水以外)、植物油又は鉱油、例えば噴霧油であることができる油(非界面活性剤アジュバントとして噴霧製剤に含まれる油)などを含むことができる。用いられる場合、かかる溶媒は、典型的には、分散剤の質量基準で5質量%~500質量%、望ましくは10質量%~100質量%の量で含まれる。そのような組み合わせは、例えば塩化アンモニウム及び/若しくは安息香酸ナトリウムなどの塩、並びに/又は、ゲル抑制助剤(gel inhibiti on aids)としての尿素を含んでもよい。
【0089】
農薬製剤はまた、必要に応じて他の成分を含んでもよい。これらの他の成分は、以下を含むものから選択してよい:
・結合剤、特に、容易に水に溶解し、高結合剤濃度で低粘度溶液を与える結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン:ポリビニルアルコール:カルボキシメチルセルロース:アラビアゴム:糖類、例えばスクロース又はソルビトールなど:デンプン:エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スクロース及びアルギン酸塩など:
・希釈剤、吸収剤又はキャリヤー、例えばカーボンブラック:タルク:ケイソウ土:カオリン:ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウム:トリポリリン酸ナトリウム:四ホウ酸ナトリウム:硫酸ナトリウム:ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、及びケイ酸ナトリウム-ケイ酸アルミニウム混合体:安息香酸ナトリウムなど:
・崩壊剤、例えば界面活性剤、水中で膨潤する材料、例えばカルボキシメチルセルロース、コロジオン、ポリビニルピロリドン及びミクロクリスタリンセルロース膨潤剤:塩類、例えば酢酸ナトリウム又は酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又はセスキ炭酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、及びリン酸水素二カリウムなど:
・湿潤剤、例えばアルコールエトキシレート及びアルコールエトキシレート/プロポキシレート湿潤剤など:
・分散剤、例えばスルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物及びアクリル酸コポリマー、例えばポリアクリル酸骨格にキャップドポリエチレングリコール側鎖を有する櫛型コポリマーなど:
・乳化剤、例えばアルコールエトキシレート、ABAブロックコポリマー、ヒマシ油エトキシレートなど:
・消泡剤、例えばポリシロキサン消泡剤、典型的には製剤の0.005質量%~10質量%の量で:
・粘度調整剤、例えば市販の水溶性又は混和性ガム、例えば、キサンタンガム、及び/又はセルロース系材料、例えば、カルボキシ-、メチル-、エチル-若しくはプロピル-セルロースなど:及び/又は
・防腐剤及び/又は抗微生物剤、例えば有機酸又はそれらのエステル若しくは塩、例えばアスコルビン酸系のもの、例えばパルミチン酸アスコルビル、ソルビン酸系のもの、例えばソルビン酸カリウム、安息香酸系のもの、例えば安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸メチル及び4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、プロピオン酸系のもの、例えばプロピオン酸ナトリウム、フェノール系のもの、例えば2-フェニルフェネートナトリウム:1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン:又はホルムアルデヒド自体又はパラホルムアルデヒド:又は、無機材料、例えば亜硫酸及びその塩、典型的には製剤の0.01質量%~1質量%の量で。
【0090】
本発明による農薬製剤はまた、成分を含んでもよい。上記界面活性剤には、界面活性剤型分散剤が含まれ得る。
【0091】
他のアジュバント、例えば界面活性剤アジュバントなどを、本発明の組成物及び製剤並びに本発明において用いられる組成物及び製剤に含まれてもよい。例にとして、アルキル多糖類(より適切にはアルキルオリゴ糖類と呼ばれる):脂肪アミンエトキシレート、例えばココナッツアルキルアミン2EO:及びアルキル(アルケニル)コハク酸無水物の誘導体、特に国際公開第WO94/00508号及びWO96/16930号において記載されているものが挙げられる。
【0092】
製剤は、少なくとも1つの栄養素を含みうる。栄養素とは、植物の成長を促進又は改善するために望ましい又は必要な化学元素及び化合物を指す。栄養素は、一般に、多量栄養素又は微量栄養素として説明される。本発明による濃縮物において用いるのに適した栄養素は、微量栄養素化合物であり、好ましくは、室温で固体であるか、又は部分的に可溶性であるものである。
【0093】
微量栄養素は、典型的には、微量金属又は微量元素を指し、低用量で施用されることがよくある。適切な微量栄養素としては、亜鉛、ホウ素、塩素、銅、鉄、モリブデン、及びマンガンから選択される微量元素が挙げられる。本発明の分散剤は、全てのタイプの微量栄養素に幅広い適用性を有することが想定される。
【0094】
微量栄養素は、可溶性形態であってよく、又は不溶性固体として含まれていてもよく、塩又はキレートの形態であってもよい。好ましくは、微量栄養素は、炭酸塩又は酸化物の形態である。
【0095】
好ましくは、微量栄養素は、亜鉛、カルシウム、モリブデン若しくはマンガン、又はマグネシウムから選択されうる。本発明で用いるのに特に好ましい微量栄養素は、酸化亜鉛、炭酸マンガン、酸化マンガン、又は炭酸カルシウムから選択されうる。
【0096】
濃縮物中の微量栄養素の量は、典型的には、濃縮物全体の質量に基づいて、5質量%~40質量%、より通常は10質量%~35質量%、特に15質量%~30質量%である。
【0097】
典型的には、製造中に製剤に混合されるとき、固体農薬の平均粒子サイズは50μm~100μmであるが、製剤は、典型的には、平均粒子サイズを1μm~10μm、より好ましくは1μm~5μmに減少させるために、混合後に湿式粉砕される。
【0098】
本発明の製剤はまた、少なくとも1つの多量栄養素を含んでもよい。多量栄養素は、典型的には、窒素、リン、及びカリウムを含むものを指し、肥料、例えば硫酸アンモニウムなど、及び水調整剤が挙げられる。適切な多量栄養素としては、肥料及び他の窒素、リン又は硫黄含有化合物、並びに水調整剤が挙げられる。
【0099】
適切な肥料には、例えば窒素、リン、カリウム、又は硫黄などの栄養素を提供する無機肥料が挙げられる。そのような肥料の例は下記に挙げられる:
栄養素としての窒素の場合:硝酸塩及び/又は硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩(尿素との組み合わせを含む)。例えばウラン(uran)タイプの材料、硝酸カルシウムアンモニウム、硝酸硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、特にリン酸-アンモニウム、リン酸二アンモニウム及びポリリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、並びにあまり一般的でなく用いられる硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム及び塩化アンモニウム:
栄養素としてのリンの場合:例えばリン酸、ピロリン酸又はポリリン酸などの酸形態のリンであるが、より通常は塩の形態、例えばリン酸アンモニウム、特にリン酸-アンモニウム、リン酸二アンモニウム及びポリリン酸アンモニウムなど、リン酸カリウム、特にリン酸二水素カリウム及びポリリン酸カリウムなど:
栄養素としての硫黄の場合:硫酸アンモニウム及び硫酸カリウム、例えばマグネシウムとの混合硫酸塩。
【0100】
生物刺激剤(biostimulants)は、代謝又は生理学的な過程、例えば呼吸、光合成、核酸の取り込み、イオンの取り込み、栄養素の送達、又はそれらの組み合わせなどを増進させうる。生体刺激剤の非限定的な例としては、海藻抽出物(例えば、アスコフィラム・ノドサム(ascophyllum nodosum))、フミン酸(例えば、フミン酸カリウム)、フルボ酸、ミオイノシトール、グリシン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
本発明はさらに、第1の態様の製剤を用いて植物を処理する方法を含む。
【0102】
従って、本発明は、下記を含む使用方法をさらに含む:
・植生(vegetation)に、又は植生の周辺環境、例えば植物の周りの土壌に、少なくとも一種の分散相農薬及び第1の態様のアジュバントを含む噴霧製剤を施用することにより、植生を殺す又は抑制する方法:及び/又は
・植物に、又は植物の周辺環境、例えば植物の周囲の土壌に、1種又は2種以上の農薬、例えば殺虫剤、殺菌剤又は殺ダニ剤である少なくとも1種の分散相農薬及び第1の態様のアジュバントを含む噴霧製剤を施用することによって、植物の有害生物を殺す又は抑制する方法。
【0103】
本明細書で用いられる場合、「分散剤」又は「分散性」という用語は、農薬製剤に添加するとき、農薬の望ましい効果を改善する化合物を指す。分散剤は、希釈剤、混合物、活性物質、又は対象に、活性物質の性能の向上によって影響を与えうる。
【0104】
好ましくは、本発明の分散剤は、農薬濃縮物(pesticide concentrates)に直接処方されるとき、唯一の成分又は主要な分散機能剤のいずれかとしての使用を見出してよい。
【0105】
本発明の材料は、農業用濃縮物(agricultural concentrates)中でより容易に希釈され、濃縮物において又は噴霧前に水に希釈されると、水性系においてより低い流体粘度を発現する。この挙動により、それらを含む製品の製造時及び希釈時の両方において、使いやすさ、特に冷水中において使いやすさの向上が提供される。泡安定性の低下も観察され、これにより泡制御剤の必要性が減少する。本発明の分散剤は、望ましくない増粘又は不安定化なしに農薬製剤に添加しうる。
【0106】
分散は、水溶解度の低い固体の粒子を含み、これにより、粒子サイズ及び分布が、分散の安定性を反映する因子であることが認められよう。長期間にわたって分散の安定性を確保するために、粒子が均一に分布していることが重要である。さらに、効果的な分散剤は、粒子がまとまらないよう、かつ相分離を引き起こさないようにする。従って、粒子サイズが小さく、粒子分布が均一で、粒子サイズの経時的な成長が制限されている分散は、より安定した分散である可能性がある。
【0107】
粒子サイズの分布の形態で、粒子は、メジアン体積粒子直径値(median volume particle diameter value)を有する。メジアン体積粒子直径は、母集団を正確に2等分する分布上の点に対応する球相当直径を指すことが理解されよう。これは、すべての粒子の体積の50%に対応する点であり、体積百分率を粒子の直径に関連付ける累積分布曲線において読み取られる。すなわち、分布の50%がこの値を上回り、50%が下回る。この値は、「D(v,0.5)」値と呼ばれ、本明細書に記載されるように決定される。
【0108】
さらに、「D(v,0.9)」値とも呼ばれ、この値は、すべての粒子の体積の90%に対応する球相当直径であり、体積百分率を粒子の直径に関連付ける累積分布曲線において読み取られる。すなわち、それらは、それぞれ分布の10%がこの値を上回り、90%が値を下回る点である。
【0109】
D(v,0.5)値及びD(v,0.9)値を決定するために用いられる、粒子サイズ値は、本明細書でさらに詳細に説明する技術及び方法によって測定される。以下に定義される粒子サイズ値は、実施例に示されるように、合計が4.82質量%である分散剤及びグラフトコポリマーに基づくことが理解されよう。
【0110】
望ましい特性を有する分散を得るためには、1~10μmの粒子サイズが好ましいことが一般に知られている。
【0111】
初期
本発明の分散剤中に存在する粒子は、初期D(v,0.5)値を、0日間で2.5μmから8.0μmの範囲内において有しうる。好ましくは、3.0μmから7.0μmの範囲内においてである。より好ましくは、3.2μmから6.0μmの範囲内においてである。最も好ましくは、3.3μmから6.0μmの範囲内においてである。
【0112】
本発明の分散剤中に存在する粒子は、D(v,0.9)値を、0日間で5.0μmから14.0μmの範囲内において有しうる。好ましくは、5.5μmから12.0μmの範囲内においてである。より好ましくは、6.0μmから11.0μmの範囲内においてである。
【0113】
54℃において
本発明の分散剤中に存在する粒子は、D(v,0.5)値を、7日間で及び54℃で、1.0μmから20.0μmの範囲内において有しうる。好ましくは、2.0μmから18.0μmの範囲内内においてである。より好ましくは、3.0μmから15.0μmの範囲内においてである。最も好ましくは、3.5μmから13.0μmの範囲においてである。
【0114】
本発明の分散剤中に存在する粒子は、D(v,0.9)値を、7日間で及び54℃で、5.0μmから75.0μmの範囲内において有しうる。好ましくは、6.0μmから65.0μmの範囲内においてである。より好ましくは、7.0μmから62.0μmの範囲内においてである。最も好ましくは、9.0μmから60.0μmの範囲内においてである。
【0115】
本発明の分散剤中に存在する粒子は、54℃で維持されたときに、0日間及び7日間の間で、150%以下のD(v,0.5)及びD(v,0.9)のいずれか又は両方における変化を有し、 好ましくは130%以下、最も好ましくは110%以下である。
【0116】
これにより、本発明の分散剤は、エマルション濃縮物に対して望ましい範囲内において、良好な粒子サイズ及び粒子サイズ分布を提供する。加えて、本発明のエマルションは、経時貯蔵下において望ましい粒子サイズ及び粒子サイズ分布を維持する。
【0117】
本明細書に記載されている全ての特徴は、任意の組み合わせにおいて、任意の上記の態様と組み合わせてよい。
【0118】
本発明をより容易に理解できるようにするために、ここで、例として、以下の記載を参照する。
【0119】
ここに記載されている全ての試験及び物理的特性は、本書に別段の記載がない限り、又は参照されている試験方法及び手順に別段の記載がない限り、大気圧及び室温(25℃)で決定されたものであることが理解されよう。
【0120】
以下の試験方法を用いて、アジュバント組成物の性能を決定した。
【0121】
実施例
製剤は、室温(RT)で24時間保存した後において、並びに54℃で7日間及び14日間貯蔵した後において、試験し、以下について評価した:
-分離の目視評価
-pH(原液のまま)
-粘度(原液のまま、ブルックフィールド粘度、10rpm及び100rpm)
-粒子サイズ分布(PSD、Malvern Mastersizer、ウォーターセルSM200)
-懸濁率(CIPAC MT 180)
-顕微鏡による検査(10%希釈、Olympus B51顕微鏡、20倍の倍率で偏光)
【0122】
蓄熱後に分離したサンプルは、テストを完了する前に約15分間圧延された(60rpm、ベンチトップローラー)。さらに、1日目及び14日目のサンプルのレオロジー性能も評価した(TA Discovery DHR-3 レオメーター、DIN コンセントリックシリンダー、振動、クリープ、流動)。
【0123】
以下の材料が実施例において使用された。
【0124】
分散剤
コポリマー分散剤-D1-MPEG-MA、AMPS、アクリル酸及びスチレンのコポリマー
非イオン性グラフトコポリマー-D2-メタクリル酸を含むメタクリル酸メチルポリマー及びメトキシポリオキシエチレンメタクリレート
【0125】
その他の物質
フルフェナセット(Flufenacet)- 活性物質(Glentham Life Science)
Silcolapse 5020 - 消泡剤
Pricerine 9091 - 不凍液
Proxel GXL - 殺生物剤
Kelzan RD - レオロジー調整剤
【0126】
形成された製剤
活性物質に対する全界面活性剤負荷量の15%を3:1の比率(分散剤:湿潤剤)で用いた。分散剤、湿潤剤及び水を合わせ、完全に可溶化するまで混合した(低せん断混合、500rpm)。他のすべての成分を加え、溶け出させるためにスパチュラを用いて手で混合した。
【0127】
製剤を高せん断で2分間混合した(Ultra Turrax、13500rpm)。望ましい粒子サイズd0.9<10μmを獲得するまで、製剤を粉砕した(Eiger Mini Mill、3000rpm)。これは、製剤を約10分間粉砕することによって獲得された。
【0128】
キサンタンガムは、10%の水相とPricerineを用いて別のバイアルにおいて製造され、粉砕後に混合物に均質化された。
【0129】
以下の製剤を製造し、これによるA1及びA2は比較製剤であり、C1及びC2は本発明の製剤であった。
【0130】
C1はグラフトコポリマーに対するコポリマー分散剤の比率が1:1であり、C2はグラフトコポリマーに対するコポリマー分散剤の比率が3:1である。
【0131】
【0132】
結果
表1の濃縮製剤について以下の結果が得られた。
【0133】
【0134】
ここで、stは分離(separation)、PSDは粒子サイズ分散(particle size dispersion)、D1は1日間、D14は14日間、RTは室温、54は54℃である。
【0135】
表2は、室温で14日間、及び高温で14日間の両方で、製剤における分散性能及び遅い結晶成長(PSDのより小さな増加)に関する相乗的改善を示す。C1及びC2は、比較製剤とは対照的に、懸濁性の減少を、たとえあったとしてもほとんど示さず、より良好な粒子サイズ制御を示す。
【0136】
結晶成長結果
次いで、表1の濃縮物を希釈し、粒子サイズ分散を、低温及び高温で7日間にわたって再度測定した。粒子サイズ分散の結果を表2に示す。
【0137】
【0138】
表3は、試験した全ての製剤の結晶成長結果を示す。結果は、本発明の製剤(A2)が7日間にわたって良好な粒子サイズ分散を有し、これにより良好な結晶成長抑制を有することを明確に示している。これは、原液を5%に希釈しても結晶成長抑制効果が見られることを示す。
【0139】
本発明は、単に例として記載した上記の実施形態の詳細に限定されるべきではなく、多くのバリエーションが可能であることが理解されるべきである。
【国際調査報告】