(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】コンバーチブル整形外科用インプラントシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/40 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A61F2/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521636
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 US2021053692
(87)【国際公開番号】W WO2022076504
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514290052
【氏名又は名称】アースレックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARTHREX, INC.
【住所又は居所原語表記】1370 Creekside Blvd, Naples, FL 34108, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ディー・パターソン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA11
4C097BB01
4C097CC04
4C097DD06
4C097DD09
4C097EE02
4C097EE11
4C097FF05
4C097SC08
4C097SC09
(57)【要約】
本開示は、整形外科用インプラントシステム、及び関節の機能を回復させるための方法に関する。本明細書に開示されるインプラントシステムは、後に続く外科手術処置中にインプラントシステムの変換を促進し得るオフセット配設を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的肩関節置換のためのインプラントであって、前記インプラントが、
グレノイドの中又は上に埋め込まれるように構成されたベースプレートと、
上腕骨又は上腕骨のインプラントと接合するように構成されたパッドであって、前記パッドの中心が、前記グレノイドの上下方向に対して前記ベースプレートの中心を越えて上方に延在するように構成されている、パッドと、
を備える、インプラント。
【請求項2】
前記ベースプレートが、円形である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記パッドが、長楕円形である、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記パッドの面積及び/又は前記パッドの長さの少なくとも25%が、前記上下方向に対して前記ベースプレートよりも上に延在する、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記ベースプレートの質量中心が、前記パッドの質量中心よりも下にオフセットされる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記ベースプレートに取り外し可能に固定されたグレノスフィアを更に備える、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記ベースプレートに対する前記グレノスフィアの横方向オフセット及び/又は角度オフセットを確立するように寸法決定されたスペーサーを更に備える、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合する、肩関節置換のためのコンバーチブル整形外科用インプラントシステムであって、
グレノイドの中又は上に少なくとも部分的に埋め込まれるように構成されたプレート本体を含み、前記プレート本体が、前面と後面との間に厚さ方向に延在する、ベースプレートと、
関節運動面と骨接触面との間に前記厚さ方向に延在するパッド本体を含むパッドであって、前記パッド本体が、前記パッド本体の周囲を確立する周辺壁の対向する側面の間に縦方向に第1の長さで延在し、前記関節運動面が、前記上腕骨と関連付けられた前記対向する関節面と接合するように寸法決定されている、パッドと、
を備え、
前記ベースプレートが、前記骨接触面に隣接する前記パッドに解放可能に固定されており、
基準面上に投影された前記プレート本体の周囲が、第1のセントロイドと関連付けられた第1のプレート面積を画定し、前記基準面上に投影された前記パッド本体の前記周囲が、第2のセントロイドと関連付けられた第2のプレート面積を画定し、前記パッド本体は、前記第2のセントロイドが前記縦方向に対して前記第1のセントロイドから第1の距離だけオフセットされるように寸法決定されている、コンバーチブル整形外科用インプラントシステム。
【請求項9】
前記パッドが、金属材料を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プレート本体の前記周囲が、実質的に円形であり、前記パッド本体の前記周囲が、長楕円形である、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記パッドが、モノリシック構造を有し、かつ非金属材料を含み、前記プレート本体が、金属材料を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の距離を前記第1の長さで割ったオフセット比が、少なくとも1:4であり、そのため、前記第2のセントロイドが、前記グレノイドの上下方向に対して前記第1のセントロイドから上方にオフセットされ、
前記パッドの面積を前記プレートの面積で割った面積比が、1.5:1以上であり、かつ/又は、
前記プレート本体の前記周囲にわたる最大幅と、前記パッド本体の前記周囲にわたる最小幅との比が、0.5:1以上である、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記プレート本体が、前記ベースプレートを骨に固定するためにそれぞれの締め具を受容するように構成された複数の周辺開口を含み、
前記ベースプレートが、ステム軸に沿って前記プレート本体の前記後面から外向きに延在するアンカーリングステムを含み、前記アンカーリングステムが、前記ベースプレートを固定するために、骨穴内に少なくとも部分的に挿入されるように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プレート本体の前記第1のセントロイドが、前記ステム軸の突出部と実質的に整列している、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記周辺開口が、前記プレート本体の中央開口の周りに円周方向に分布しており、前記中央開口が、前記ステム軸の突出部に沿って延在し、かつ
前記パッドが、前記骨接触面から外向きに延在する第1及び第2のペグを含み、前記第1のペグが、前記中央開口内に受容されるように構成されており、前記第2のペグが、前記周辺開口のうちのそれぞれの1つ内に受容されて、前記ステム軸に対する前記プレート本体と前記パッド本体との間の相対的回転を制限するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
略凸状の形状を有する関節運動面を含むグレノスフィアを更に備え、前記グレノスフィアが、前記ベースプレートに解放可能に固定されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項17】
前記パッド及び前記グレノスフィアのうちの1つが、金属材料を含み、前記パッド及び前記グレノスフィアのうちの別の1つが、非金属材料を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記パッドが、金属材料を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記パッドが、非金属材料を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記グレノスフィアが、前記プレート本体を少なくとも部分的に受容するように寸法決定された凹部を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記プレート本体の前記周囲が、前記凹部の周囲と協動して、前記ベースプレートと前記グレノスフィアとの間の相対的移動を制限するモールステーパ接続を確立するように寸法決定されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記グレノスフィアが前記プレート本体から所定の距離だけ離隔されるように、前記プレート本体及び前記グレノスフィアと接合するように構成されたスペーサーを更に備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記スペーサーは、前記グレノスフィアの後面が前記プレート本体の前記前面に対して横方向に角度付けられるように寸法決定されている、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記プレート本体が、複数のプレート開口を含み、
前記スペーサーが、前記プレート開口のうちのそれぞれの1つ内に挿入するように構成された1つ以上のペグを含み、
前記スペーサーは、前記ベースプレートを固定するために、それぞれの締め具が前記ベースプレート及びスペーサー開口の各それぞれの対を通して、かつ前記グレノイド内に挿入可能であるように、前記プレート開口のうちのそれぞれの1つと実質的に整列する、1つ以上のスペーサー開口を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合するコンバーチブル整形外科用インプラントシステムを設置する方法であって、
グレノイドのグレノイド面に対してベースプレートを位置付けることであって、前記ベースプレートが、前面と後面との間で厚さ方向に延在するプレート本体を含み、前記ベースプレートが、1つ以上のプレート開口を含む、位置付けることと、
前記ベースプレートを前記グレノイドに固定するために、少なくとも1つの締め具を、前記プレート開口のうちのそれぞれの1つに位置付けることと、
パッドを前記ベースプレートに解放可能に固定することと、
を含み、
前記パッドが、関節運動面と骨接触面との間で前記厚さ方向に延在するパッド本体を含み、前記パッド本体が、前記パッド本体の周囲を確立する周辺壁の対向する側面の間に第1の長さで延在し、前記関節運動面が、前記上腕骨と関連付けられた前記対向する関節面と接合するように寸法決定されており、前記骨接触面が、前記グレノイドに沿って骨に接触し、
前記プレート本体は、第1の質量中心を画定し、前記パッド本体は、第2の質量中心を画定し、前記パッド本体は、前記パッドを固定するステップに応答して、前記第2の質量中心が前記グレノイドの上下方向に対して第1の距離だけ前記第1の質量中心から上方にオフセットされるように寸法決定されている、方法。
【請求項26】
アンカーリングステムが、ステム軸に沿って前記プレート本体の前記後面から外向きに延在し、
前記ベースプレートを位置付けるステップが、前記グレノイド内に凹部を形成することと、前記プレート本体の少なくとも一部分を前記凹部内に位置付けることと、前記アンカーリングステムを前記凹部から内向きに延在する骨穴内に少なくとも部分的に位置付けることと、を含み、
前記パッドを固定する前記ステップは、前記骨接触面が前記グレノイド面の輪郭に従うように、前記パッド本体を位置付けることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記パッドを固定する前記ステップは、前記第1の距離を前記第1の長さで割ったオフセット比が少なくとも1:4となるように行われ、
基準面上に投影された前記プレート本体の周囲が、第1のプレート面積を画定し、前記基準面上に投影された前記パッド本体の前記周囲が、第2のプレート面積を画定し、前記パッドの面積を前記プレートの面積で割った面積比が、1.5:1以上である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記パッドを固定する前記ステップは、前記パッドの面積の少なくとも25%及び前記パッド本体の前記第1の長さの少なくとも25%が前記上下方向に対して前記プレート本体の前記第1の質量中心から上方にオフセットされるように行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記面積比が、2:1~3:1であり、
前記グレノイド面が、前記上下方向に対する上方領域と、中間領域と、下方領域と、を含む、3つの等しい領域に分割され、前記中間領域が、前記上方領域と前記下方領域との間にあり、
前記ベースプレートを位置付ける前記ステップは、前記プレート本体の前記第1の質量中心が前記下方領域に位置するように行われ、
前記パッドを固定する前記ステップは、前記パッド本体の前記第2の質量中心が前記中間領域に位置するように行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
アンカーリングステムが、ステム軸に沿って前記プレート本体の前記後面から外向きに延在し、前記プレート本体の前記第1の質量中心が、前記ステム軸の突出部と実質的に整列しており、
前記ベースプレートを位置付ける前記ステップが、前記グレノイド内に凹部を形成することと、前記プレート本体の少なくとも一部分を前記凹部内に位置付けることと、前記ステム軸が前記下方領域に位置付けられるように、前記アンカーリングステムを前記凹部から内向きに延在する骨穴内に少なくとも部分的に位置付けることと、を含み、
前記パッドを固定する前記ステップは、前記骨接触面が前記グレノイド面の輪郭に従うように、前記パッド本体を位置付けることを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記パッドを固定する前記ステップに続いて、前記パッドを前記ベースプレートから取り外すことと、
前記パッドを取り外すステップに続いて、グレノスフィアを原位置で前記ベースプレートに固定することであって、前記グレノスフィアが、上腕骨インプラントと接合するように寸法決定される略凸状の形状を有する関節運動面を含む、固定することと、を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記グレノスフィアが前記グレノイドの外側内側方向に対して所定の距離だけ前記プレート本体から外側方向に離隔されるように、前記ベースプレートと前記グレノスフィアとの間にスペーサーを固定することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記スペーサーは、前記スペーサーを固定するステップに応答して、前記グレノスフィアの後面が前記プレート本体の前記前面に対して横方向に角度付けられるように寸法決定されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合するコンバーチブル整形外科用インプラントシステムを設置する方法であって、
グレノイドに対して第1の位置でベースプレートからパッドを取り外すステップであって、前記ベースプレートが、前面と後面との間で厚さ方向に延在するプレート本体を含み、前記パッドが、関節運動面と骨接触面との間で前記厚さ方向に延在するパッド本体を含み、前記プレート本体が、第1の質量中心を画定し、前記パッド本体が、第2の質量中心を画定し、前記パッド本体は、前記第2の質量中心が前記第1の位置の上下方向に対して第1の距離だけ前記第1の質量中心から上方にオフセットされるように寸法決定されている、取り外すステップと、
前記パッドを取り外す前記ステップに続いて、グレノスフィアを原位置で前記ベースプレートに固定するステップであって、前記グレノスフィアが、上腕骨インプラントと接合するように寸法決定される略凸状の形状を有する関節運動面を含む、固定するステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
前記グレノスフィアが前記グレノイドの外側内側方向に対して所定の距離だけ前記プレート本体から外側方向に離隔されるように、前記ベースプレートと前記グレノスフィアとの間にスペーサーを固定するステップを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記スペーサーは、前記スペーサーを固定するステップに応答して、前記グレノスフィアの後面が前記プレート本体の前記前面に対して横方向に角度付けられるように寸法決定されている、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2020年10月9日に出願された米国仮特許出願第63/089,878号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本開示は、整形外科処置に関し、より具体的には、整形外科用インプラントシステム及び骨欠損を修復し、関節の機能を回復させるための方法に関する。
【0003】
ヒト筋骨格系の多くの骨は、関節面を含む。関節面は、協働して、異なる種類及び程度の関節の動きを促進する。関節面は、使用又は摩耗が繰り返されることにより、経時的に摩滅する又は骨損失を被る、又は外傷性衝撃の結果、骨折し得る。これらの種類の骨欠損は、関節の不安定性及び疼痛を引き起こす可能性がある。
【0004】
骨欠損は、グレノイド骨の関節面に沿って生じることがある。一部の技術は、関節表面を修復するためにインプラントを利用する。インプラントは、1つ以上の締め具を利用して、グレノイドに固定され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、整形外科用インプラントシステム、及び関節の機能を回復させるための方法に関する。インプラントシステムは、同じ外科手術部位に沿った異なる外科手術処置の間に、第1の構成と第2の構成との間でコンバーチブルであり得る。
【0006】
本開示の解剖学的肩関節置換のためのインプラントは、グレノイドの中又は上に埋め込まれるように構成されたベースプレート、及び上腕骨又は上腕骨のインプラントと接合するように構成されたパッドを含み得る。パッドは、グレノイドの上下方向に対して、ベースプレートを越えて上方に延在するように構成され得る。
【0007】
本開示の上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合する肩関節置換のためのコンバーチブル整形外科用インプラントシステムは、グレノイドの中又上に少なくとも部分的に埋め込まれるように構成され得るプレート本体を含む、ベースプレートであって、プレート本体が、前面と後面との間で厚さ方向に延在する、ベースプレートと、関節運動面と骨接触面との間で厚さ方向に延在するパッド本体を含むパッドであって、パッド本体が、パッド本体の周囲を確立する周辺壁の対向する側面の間に縦方向に第1の長さで延在し、関節運動面が、上腕骨と関連付けられた対向する関節面と接合するように寸法決定されている、パッドと、を含み得る。ベースプレートは、骨接触面に隣接するパッドに解放可能に固定され得る。基準面上に投影されたプレート本体の周囲は、第1のセントロイドと関連付けられた第1のプレート面積を画定し得、基準面上に投影されたパッド本体の周囲は、第2のセントロイドと関連付けられた第2のプレート面積を画定し得、パッド本体は、第2のセントロイドが縦方向に対して第1のセントロイドから第1の距離だけオフセットされるように寸法決定され得る。
【0008】
本開示の上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合するコンバーチブル整形外科用インプラントシステムを設置する方法は、グレノイドのグレノイド面に対してベースプレートを位置付けることであって、ベースプレートが、前面と後面との間で厚さ方向に延在するプレート本体を含み、ベースプレートが、1つ以上のプレート開口を含む、位置付けることと、ベースプレートをグレノイドに固定するために、少なくとも1つの締め具を、プレート開口のうちのそれぞれの1つに位置付けることと、パッドをベースプレートに解放可能に固定することと、を含み得、パッドは、関節運動面と骨接触面との間で厚さ方向に延在するパッド本体を含み、パッド本体は、パッド本体の周囲を確立する周辺壁の対向する側面の間に第1の長さで延在し、関節運動面は、上腕骨と関連付けられた対向する関節面と接合するように寸法決定され得、骨接触面は、グレノイドに沿って骨に接触し得る。プレート本体は、第1の質量中心を画定し得、パッド本体は、第2の質量中心を画定し得、パッド本体は、パッドを固定するステップに応答して、第2の質量中心がグレノイドの上下方向に対して第1の距離だけ第1の質量中心から上方にオフセットされるように寸法決定され得る。
【0009】
本開示の上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合するコンバーチブル整形外科用インプラントシステムを設置する方法は、グレノイドに対して第1の位置でベースプレートからパッドを取り外すことであって、ベースプレートが、前面と後面との間で厚さ方向に延在するプレート本体を含み、パッドが、関節運動面と骨接触面との間で厚さ方向に延在するパッド本体を含む、取り外すことを含み得る。プレート本体は、第1の質量中心を画定し得、パッド本体は、第2の質量中心を画定し得、パッド本体は、第2の質量中心が第1の位置の上下方向に対して第1の距離だけ第1の質量中心から上方にオフセットされるように寸法決定され得る。方法は、パッドを取り外すステップに続いて、グレノスフィアを原位置でベースプレートに固定することを含み得、グレノスフィアは、上腕骨インプラントと接合するように寸法決定される略凸状の形状を有する関節運動面を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の構成のベースプレート及びパッドを含む、例示的なインプラントシステムの斜視図である。
【
図2】第2の構成のベースプレート及びグレノスフィアを含む、インプラントシステムの斜視図である。
【
図4】
図3のインプラントシステムの選択された部分の平面図である。
【
図5】
図3のベースプレート及びパッドの断面図である。
【
図6】外科手術部位に対して位置するベースプレート及びパッドの断面図である。
【
図7】
図2のインプラントシステムの分解図である。
【
図8】整形外科用インプラントシステムを外科手術部位に設置する例示的な方法を示す図である。
【
図9】外科手術部位に沿って位置付けられたベースプレート及びパッドを含む、インプラントシステムを示す図である。
【
図10】
図9のベースプレート及び外科手術部位に沿って位置付けられたグレノスフィアを含む、インプラントシステムを示す図である。
【
図11】
図9のベースプレート及び外科手術部位に沿って位置付けられたグレノスフィアを含む、インプラントシステムを示す図である。
【
図12】
図9のベースプレート及び外科手術部位に沿って位置付けられたグレノスフィアを含む、インプラントシステムを示す図である。
【
図13】解剖学的ショルダー構成のインプラントシステムを示す図である。
【
図14】リバースショルダー構成の
図13のインプラントシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、整形外科用インプラントシステム、及び骨欠損を修復し、関節の機能を回復させるための方法に関する。本明細書に記載のインプラントシステムは、関節形成処置中に利用されてもよく、進行性の軟骨疾患を有する肩の機能を回復させるための人工肩関節に組み込まれてもよい。開示されたインプラントシステムは、1つ以上の共通の構成要素を利用して、同じ患者の解剖学的及びリバースショルダー処置に利用されてもよく、これは治癒の改善につながる可能性がある。様々な構成要素は、グレノイド面の上方/下方(S/I)方向に対してなど、互いにオフセットされて、その後の処置を容易にし得る。
【0012】
本開示の例示的な態様による解剖学的肩関節置換のためのインプラントは、グレノイドの中又は上に埋め込まれるように構成されたベースプレート、及び上腕骨又は上腕骨のインプラントと接合するように構成されたパッドを含み得る。パッドの中心は、グレノイドの上下方向に対して、ベースプレートの中心を越えて上方に延在するように構成され得る。
【0013】
一部の実施形態では、ベースプレートは、円形である。
【0014】
一部の実施形態では、パッドは、長楕円形である。
【0015】
一部の実施形態では、パッドの面積及び/又はパッドの長さの少なくとも25%は、上下方向に対してベースプレートよりも上に延在する。
【0016】
一部の実施形態では、ベースプレートの質量中心は、パッドの質量中心よりも下にオフセットされている。
【0017】
一部の実施形態では、グレノスフィアは、ベースプレートに取り外し可能に固定されている。
【0018】
一部の実施形態では、スペーサーは、ベースプレートに対するグレノスフィアの横方向オフセット及び/又は角度オフセットを確立するために寸法決定されている。
【0019】
本開示の例示的な態様による上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合する肩関節置換のためのコンバーチブル整形外科用インプラントシステムは、グレノイドの中又は上に少なくとも部分的に埋め込まれるように構成され得るプレート本体を含む、ベースプレートであって、プレート本体が、前面と後面との間で厚さ方向に延在する、ベースプレートと、関節運動面と骨接触面との間で厚さ方向に延在するパッド本体を含むパッドであって、パッド本体が、パッド本体の周囲を確立する周辺壁の対向する側面の間に縦方向に第1の長さで延在し、関節運動面が、上腕骨と関連付けられた対向する関節面と接合するように寸法決定されている、パッドと、を含み得る。ベースプレートは、骨接触面に隣接するパッドに解放可能に固定され得る。基準面上に投影されたプレート本体の周囲は、第1のセントロイドと関連付けられた第1のプレート面積を画定し得、基準面上に投影されたパッド本体の周囲は、第2のセントロイドと関連付けられた第2のプレート面積を画定し得、パッド本体は、第2のセントロイドが縦方向に対して第1のセントロイドから第1の距離だけオフセットされるように寸法決定され得る。
【0020】
一部の実施形態では、プレート本体の周囲は、実質的に円形であり得、パッド本体の周囲は、長楕円形であり得る。
【0021】
一部の実施形態では、パッドは、モノリシック構造を有し得、かつ非金属材料を含み得、プレート本体は、金属材料を含み得る。
【0022】
一部の実施形態では、第1の距離を第1の長さで割ったオフセット比は、少なくとも1:4であり得、そのため、第2のセントロイドが、グレノイドの上下方向に対して第1のセントロイドから上方にオフセットされる。パッド面積をプレート面積で割った面積比は、1.5:1以上であり得る。プレート本体の周囲にわたる最大幅と、パッド本体の周囲にわたる最小幅との比は、0.5:1以上であり得る。
【0023】
一部の実施形態では、プレート本体は、ベースプレートを骨に固定するためにそれぞれの締め具を受容するように構成された複数の周辺開口を含み得る。ベースプレートが、ステム軸に沿ってプレート本体の後面から外向きに延在するアンカーリングステムを含み得、アンカーリングステムは、ベースプレートを固定するために、骨穴内に少なくとも部分的に挿入されるように構成され得る。
【0024】
一部の実施形態では、プレート本体の第1のセントロイドは、ステム軸の突出部と実質的に整列し得る。
【0025】
一部の実施形態では、周辺開口は、プレート本体の中央開口の周りに円周方向に分布し得、中央開口は、ステム軸の突出部に沿って延在し得る。パッドは、骨接触面から外向きに延在する第1及び第2のペグを含み得、第1のペグは、中央開口内に受容されるように構成され得、第2のペグは、周辺開口のうちのそれぞれの1つ内に受容されて、ステム軸に対するプレート本体とパッド本体との間の相対的回転を制限するように構成され得る。
【0026】
一部の実施形態では、グレノスフィアは、略凸状の形状を有する関節運動面を含み得、グレノスフィアは、ベースプレートに解放可能に固定され得る。
【0027】
一部の実施形態では、グレノスフィアは、プレート本体を少なくとも部分的に受容するように寸法決定された凹部を含み得る。
【0028】
一部の実施形態では、プレート本体の周囲は、凹部の周囲と協動して、ベースプレートとグレノスフィアとの間の相対的移動を制限するモールステーパ接続を確立するように寸法決定され得る。
【0029】
一部の実施形態では、スペーサーは、グレノスフィアがプレート本体から所定の距離だけ離隔されるように、プレート本体及びグレノスフィアと接合するように構成され得る。
【0030】
一部の実施形態では、スペーサーは、グレノスフィアの後面がプレート本体の前面に対して横方向に角度付けられるように寸法決定され得る。
【0031】
一部の実施形態では、プレート本体は、複数のプレート開口を含み得る。スペーサーは、プレート開口のうちのそれぞれの1つ内に挿入するように構成された1つ以上のペグを含み得る。スペーサーは、ベースプレートを固定するために、それぞれの締め具がプレート及びスペーサー開口の各それぞれの対を通して、かつグレノイド内に挿入可能であるように、プレート開口のうちのそれぞれの1つと実質的に整列する、1つ以上のスペーサー開口を含み得る。
【0032】
本開示の例示的な態様による上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合するコンバーチブル整形外科用インプラントシステムを設置する方法は、グレノイドのグレノイド面に対してベースプレートを位置付けることであって、ベースプレートが、前面と後面との間で厚さ方向に延在するプレート本体を含み、ベースプレートが、1つ以上のプレート開口を含む、位置付けることと、ベースプレートを、グレノイドに固定するために、少なくとも1つの締め具を、プレート開口のうちのそれぞれの1つに位置付けることと、パッドをベースプレートに解放可能に固定することと、を含み得、パッドは、関節運動面と骨接触面との間で厚さ方向に延在するパッド本体を含み、パッド本体は、パッド本体の周囲を確立する周辺壁の対向する側面の間に第1の長さで延在し、関節運動面は、上腕骨と関連付けられた対向する関節面と接合するように寸法決定され得、骨接触面は、グレノイドに沿って骨に接触し得る。プレート本体は、第1の質量中心を画定し得、パッド本体は、第2の質量中心を画定し得、パッド本体は、パッドを固定するステップに応答して、第2の質量中心がグレノイドの上下方向に対して第1の距離だけ第1の質量中心から上方にオフセットされるように寸法決定され得る。
【0033】
一部の実施形態では、アンカーリングステムは、ステム軸に沿ってプレート本体の後面から外向きに延在し得る。ベースプレートを位置付けるステップは、グレノイド内に凹部を形成することと、プレート本体の少なくとも一部分を凹部内に位置付けることと、アンカーリングステムを凹部から内向きに延在する骨穴内に少なくとも部分的に位置付けることと、を含み得る。パッドを固定するステップは、骨接触面がグレノイド面の輪郭に従うように、パッド本体を位置付けることを含み得る。
【0034】
一部の実施形態では、パッドを固定するステップは、第1の距離を第1の長さで割ったオフセット比が少なくとも1:4となるように発生し得る。基準面上に投影されたプレート本体の周囲は、第1のプレート面積を画定し得、基準面上に投影されたパッド本体の周囲は、第2のプレート面積を画定し得、パッド面積をプレート面積で割った面積比は、1.5:1以上であり得る。
【0035】
一部の実施形態では、パッドを固定するステップは、パッド面積の少なくとも25%及びパッド本体の第1の長さの少なくとも25%が上下方向に対してプレート本体の第1の質量中心から上方にオフセットされるように発生し得る。
【0036】
一部の実施形態では、面積比は、2:1~3:1であり得る。グレノイド面は、上下方向に対する上方領域と、中間領域と、下方領域とを含む、3つの等しい領域に分割され得、中間領域は、上方領域と下方領域との間にある。ベースプレートを位置付けるステップは、プレート本体の第1の質量中心が下方領域に位置するように発生し得る。パッドを固定するステップは、パッド本体の第2の質量中心が中間領域に位置するように発生し得る。
【0037】
一部の実施形態では、アンカーリングステムは、ステム軸に沿ってプレート本体の後面から外向きに延在し得、プレート本体の第1の質量中心は、ステム軸の突出部と実質的に整列している。ベースプレートを位置付けるステップは、グレノイド内に凹部を形成することと、プレート本体の少なくとも一部分を凹部内に位置付けることと、ステム軸が下方領域に位置付けられるように、アンカーリングステムを凹部から内向きに延在する骨穴内に少なくとも部分的に位置付けることと、を含み得る。パッドを固定するステップは、骨接触面がグレノイド面の輪郭に従うように、パッド本体を位置付けることを含み得る。
【0038】
一部の実施形態では、方法は、パッドを固定するステップに続いて、パッドをベースプレートから取り外すことと、パッドを取り外すステップに続いて、グレノスフィアを原位置でベースプレートに固定することと、を含み得る。グレノスフィアは、上腕骨インプラントと接合するように寸法決定される略凸状の形状を有する関節運動面を含み得る。
【0039】
一部の実施形態では、方法は、グレノスフィアがグレノイドの外側内側方向に対して所定の距離だけプレート本体から外側方向に離隔されるように、ベースプレートとグレノスフィアとの間にスペーサーを固定することを含み得る。
【0040】
一部の実施形態では、スペーサーは、スペーサーを固定するステップに応答して、グレノスフィアの後面がプレート本体の前面に対して横方向に角度付けられるように寸法決定され得る。
【0041】
本開示の例示的な態様による上腕骨と関連付けられた対向する関節表面と接合するコンバーチブル整形外科用インプラントシステムを設置する方法は、グレノイドに対して第1の位置でベースプレートからパッドを取り外すことであって、ベースプレートが、前面と後面との間で厚さ方向に延在するプレート本体を含み、パッドが、関節運動面と骨接触面との間で厚さ方向に延在するパッド本体を含む、取り外すことを含み得る。プレート本体は、第1の質量中心を画定し得、パッド本体は、第2の質量中心を画定し得、パッド本体は、第2の質量中心が第1の位置の上下方向に対して第1の距離だけ第1の質量中心から上方にオフセットされるように寸法決定され得る。方法は、パッドを取り外すステップに続いて、グレノスフィアを原位置でベースプレートに固定することを含み得、グレノスフィアは、上腕骨インプラントと接合するように寸法決定される略凸状の形状を有する関節運動面を含み得る。
【0042】
一部の実施形態では、方法は、グレノスフィアがグレノイドの外側内側方向に対して所定の距離だけプレート本体から外側方向に離隔されるように、ベースプレートとグレノスフィアとの間にスペーサーを固定することを含み得る。
【0043】
一部の実施形態では、スペーサーは、スペーサーを固定するステップに応答して、グレノスフィアの後面がプレート本体の前面に対して横方向に角度付けられるように寸法決定され得る。
【0044】
図1及び
図2は、例示的なコンバーチブル整形外科用インプラントシステム20を示す。システム20は、関節の機能を回復させるための関節形成処置などの様々な外科手術処置用に利用することができる。例えば、システム20は、人工肩関節に組み込まれてもよく、肩関節置換処置においてグレノイドに沿って関節表面を修復するために利用され得る。インプラントシステム20は、コンバーチブルであってもよく、同じ患者の解剖学的及びリバースショルダー置換処置の両方で利用され得る。本明細書に開示されるシステム及び方法は、主に解剖学的及びリバースショルダー再構成を指すが、開示されたシステムは、膝及び股関節などの患者の他の場所に機能性を復元するために利用され得る。
【0045】
インプラントシステム20は、第1の構成と第2の構成との間でコンバーチブルである。第1の構成は、解剖学的なショルダー置換処置若しくは配置に対応し得、第2の構成は、リバースショルダー置換の処置又は配置に対応し得、又はその逆であり得る。例えば、
図1のシステム20の構成は、第1の構成に対応し得、
図2のシステム20の構成は、第2の構成に対応し得る。
【0046】
図1及び
図2を参照すると、システム20は、ベースプレート22、パッド24(例えば、ベアリング部材)、及びグレノスフィア26を含む。パッド24は、
図1に示すように、第1のインプラントを確立するためにベースプレート22に取り外し可能に固定される。グレノスフィア26は、
図2に示すように、第2の異なるインプラントを確立するためにベースプレート22に取り外し可能に固定される。ベースプレート22は、パッド24及びグレノスフィア26の両方に共通であり得る。一般的なベースプレート22は、第1の外科手術処置の間に外科手術部位に沿って位置付けられてもよく、第2の、その後の外科手術処置の間、手術部位に沿って同じ位置に留まることができ、治癒を改善し得る。
【0047】
図1を引き続き参照し、
図3を参照すると、ベースプレート22は、パッド24を装着するように構成されたプレート本体28を含む。プレート本体28は、外科手術部位Sの関節表面AS(例示的な目的のために
図3の破線で示される)上に、若しくはその中に少なくとも部分的に埋め込まれるように構成されてもよく、又はプレート本体28は、関節表面AS上に置かれるように構成され得る。一部の実装形態では、外科手術部位Sは、患者のグレノイド又は別の関節接合部であり得る。
【0048】
プレート本体28は、前面30と、前面30とは反対の後面32との間の厚さ方向Tに延在する。後面32は、設置された位置で骨に接触するように構成され得る。後面32は、一般的に、患者の内側に対応し得、前面30は、例えば、外科手術部位に移植されたときに、一般的に、患者の横方向に対応し得る。一部の実装形態では、プレート本体28は、約2.0ミリメートル(mm)~約6.0mm、例えば約4.5mmの厚さを有する。
【0049】
プレート本体28のプレート周囲36を確立するように、周辺壁34が前面30と後面32との間の厚さ方向Tに延在する。プレート周囲36は、前面30及び後面32を囲むように寸法決定される。プレート周囲36は、様々な形状を有し得る。一部の実装形態では、プレート周囲36は、
図4に示すように、実質的に円形又は楕円形の形状を有する。本開示の目的のためには、「約」、「およそ」、及び「実質的に」という用語は、別途指示されていない限り、記載された値又は関係の±5%を意味する。略円形状は、リーミング幅、及びベースプレート22を受け入れるために、外科手術部位を作成する複雑さを低減し得る。
【0050】
ベースプレート22は、骨に埋め込まれてベースプレート22を固定するように構成された少なくとも1つの突起部38(例えば、ポスト又はキール)を含み得る。突起部38は、それぞれのステム軸SAに沿ってプレート本体28の後面32から外向きに延在するアンカーリングステムであり得る。アンカーリングステム38は、略円筒形状を有し得る。アンカーリングステム38は、外科手術部位Sに沿ってベースプレート22を固定するために、骨穴又はくぼみに少なくとも部分的に挿入されるように構成され得る。ステム軸SAは、ベースプレート22の中心軸を確立し得る。アンカーリングステム38は、プレート本体28と一体的に形成されてもよく、又はプレート本体28に機械的に取り付けられるか、若しくはそうでなければ固定される、別個の異なる構成要素であり得る。一部の実装形態では、アンカーリングステム38は、約8mm~約10mmの直径であり、約10mm~約20mm、例えば約15mmの長さを有する。
【0051】
プレート本体28は、
図3及び
図4に示すように、複数のプレート開口40を含み得る。プレート開口40は、それぞれの通路を確立するために、プレート本体28の前面30から後面32に延在するように寸法決定され得る。プレート周囲36は、プレート開口40を囲むように寸法決定される。プレート開口40は、中央開口40C及び複数の周辺開口40Pを含み得る。中央開口40Cは、ステム軸SAの突出部に沿って延在し得る。周辺開口40Pは、中央開口40C及びステム軸SAの周りに円周方向に分布し得る。プレート本体28は、
図4に示すように、ステム軸SAの周りに円周方向に分布する4つの周辺開口40Pを画定し得る。当然のことながら、1つの周辺開口40Pのみなど、4つより少ない、又は4つより多い周辺開口40Pが利用され得る。
【0052】
各周辺開口40Pは、手術部位Sに沿って、ベースプレート22を骨に貼り付けるか、又はそうでなければ固定するために、それぞれの締め具F(説明の目的で
図3及び
図4の破線で示される締め具F)を受容するように構成され得る。締め具Fは、アンカー又は圧縮ねじを含み得る。開口40は、締め具Fの頭部がベースプレート22と同一平面になるか、又はベースプレート22内に陥凹することを可能にするために皿状であり得る。
【0053】
パッド24は、関節運動面44と関節運動面44に対向する骨接触面46との間に厚さ方向Tに延在する、パッド本体42を含む。ベースプレート22は、
図3に示すように、骨接触面46に隣接するパッド24に取り外し可能に固定され得る。プレート本体は、外科手術部位Sに沿って、完全に又は部分的に関節表面AS内に象嵌され得る。パッド本体42は、関節表面ASの上部に象嵌され得、又は関節表面AS内に(部分的又は完全に)象嵌され得る。
【0054】
関節運動面44は、対向する関節表面と接合するように寸法決定される、略凹形状を有し得る。対向する関節表面は、関節表面AS-1(
図9)によって示されるように、上腕骨と関連付けられてもよい。関節表面AS-1は、上腕骨若しくは上腕骨インプラントの一部分、又は別の関節の関節表面であり得る。
【0055】
骨接触面46は、グレノイドに沿った関節表面輪郭など、外科手術部位Sの輪郭に実質的に従う寸法の略凸状の形状を有し得る。骨接触面46は、実質的に平面形状など、他の形状を有し得る。
【0056】
パッド本体42のパッド周囲50を確立するように、パッド24の周辺壁48が、関節運動面44と骨接触面46との間の厚さ方向Tに延在する。パッド周囲50は、関節運動面44及び骨接触面46を囲むように寸法決定される。パッド周囲50は、様々な形状を有し得る。パッド周囲50の形状は、同じであってもよく、又はプレート周囲36とは異なる場合がある。一部の実装形態では、パッド周囲50及びプレート周囲36は両方とも、実質的に楕円形の形状を有し得る。パッド周囲50は、
図5に示すように、パッド周囲50を横切るパッド本体42の最大距離が長さ方向Lに確立されるように、略長方形又は楕円形であり得る。パッド周囲50の距離は、
図5に示すように、パッド周囲50がプレート周囲36を実質的に取り囲むように、プレート周囲36の距離より大きくてもよい。
【0057】
パッド24は、ベースプレート22に対するパッド24の配向を制約するために寸法決定された1つ以上の配向ペグ52を含み得る。各ペグ52は、
図3に示すように、骨接触面46から外向きに延在し得る。ペグ52は、中央(例えば、第1の)ペグ52C及び周辺(例えば、第2の)ペグ52P(
図3に示され、例示的な目的のために
図4の破線で示される)を含み得る。
【0058】
中央ペグ52Cは、中央開口40Cに少なくとも部分的に受容されるように構成され得る。周辺ペグ52Pは、
図3及び
図4に示すように、周辺開口40Pのうちのそれぞれの1つ内に少なくとも部分的に受容されるように構成され得る。中央ペグ52C及び周辺ペグ52Pは、それぞれの中央開口40C及び周辺開口40Pを実質的に相補する形状を有するように寸法決定され得る。配向ペグ52は、設置位置にあるときに、プレート本体28とパッド本体42との間の、ステム軸SAに対する相対的回転を制限するように寸法決定されてもよく、これは、外科手術部位Sに沿った所定の位置に対するパッド24の関節運動面44の整列を改善し得る。一部の実装形態では、周辺ペグ52Pは、別の締め具Fがそれぞれの周辺開口40P内に位置するように、省略されるか、又は寸法決定される。
【0059】
パッド24は、外科手術部位Sに沿ってパッド24を固定するための少なくとも1つの突起部54を含み得る。突起部54は、溝付きアンカーリングペグであり得る。アンカーリングペグ54は、ペグ軸PAに沿って骨接触面46から外向きに延在し得る。アンカーリングペグ54は、アンカーリングペグ54の周辺から外向きに延在する1つ以上のリブ55を含み得る。リブ55は、アンカーリングペグ54をそれぞれの骨穴内に固定するために、少なくとも部分的に変形可能であり得る。
【0060】
アンカーリングペグ54は、
図3に示すように、長さ方向Lにオフセットされてもよく、又はそうでなければ、ベースプレート22から設置位置に離隔され得る。アンカーリングステム38及びアンカーリングペグ54のオフセット配設は、外科手術部位Sに沿ったパッド24の安定性を改善し得る、比較的大きな固定面積を提供し得る。
【0061】
パッド24をベースプレート22に取り外し可能に固定又は付着するために、様々な技術が利用され得る。パッド本体42は、骨接触面46から内向きに延在する凹部56を画定し得る(例示の目的で
図4の破線でも示される)。凹部56は、パッド本体42の厚さを部分的に貫通して延在するように寸法決定され得、
図3に示すように、プレート本体28を少なくとも部分的に受容するように寸法決定され得る。凹部56の高さは、例えば、約1.5mmなど、約0.5mm~約2.0mmとし得る。
【0062】
凹部56の凹部周囲57及びプレート本体28のプレート周囲36は、
図3~
図5に示すように、相補的な形状を有し得る。プレート周囲36は、凹部周囲57と協働して、ベースプレート22とパッド24との間の相対的移動を制限するモールステーパ接続を確立するように寸法決定され得る。パッド24は、モールステーパ接続が、パッド24を外科手術部位Sに固定するための干渉嵌合を確立するように、ベースプレート22上に影響され得る。
【0063】
図3を引き続き参照して、
図5を参照すると、パッド本体42は、縦方向Lに第1の長さL1を延在し得、周辺壁48の対向する側面の間の幅方向Wに第1の幅W1を延在し得る。第1の長さL1及び第1の幅W1はそれぞれ、
図5に示すように、周囲50を確立する周辺壁48の対向する側の間のパッド本体42の最大長さ及び最大幅を確立し得る。一部の実装形態では、第1の幅W1は、約33mm~約42mmなど、約24mm以上である。
【0064】
プレート本体28は、縦方向Lに第2の長さL2を延在し得、周辺壁34の対向する側の間の幅方向Wに第2の幅W2を延在し得る。第2の長さL2及び第2の幅W2はそれぞれ、
図5に示すように、プレート周囲36を確立する周辺壁34の対向する側の間のプレート本体28の最大長さ及び最大幅を確立し得る。プレート周囲36は、第2の長さL2及び第2の幅W2が実質的に等しくなるように、実質的に円形であり得る。一部の実装形態では、第2の長さL2及び/又は第2の幅W2は、約20.0mm以上であるか、又はより狭くは約22.0mm~約32.0mm、例えば約24.0mmである。
【0065】
パッド24は、ベースプレート22の周囲36を超えて延在するように構成され得る。ベースプレート22及びパッド24は、第1の幅W1が第2の幅W2よりも大きいように、及び/又は第1の長さL1が第2の長さL2よりも大きいように寸法決定され得る。ベースプレート22及びパッド24は、第2の幅W2と第1の幅W1との比が約0.5:1以上であるか、又はより狭くは、約0.8:1以上であるように寸法決定され得る。
【0066】
ベースプレート22及びパッド24は、患者の解剖学的構造に対して様々な配向に位置付けられてもよい。縦方向Lは、設置位置の上方/下方(S/I)方向に対応するか、又はその中の主要な構成要素を有し得る。幅方向Wは、システム20が設置位置にあるときに、患者の後方/下方(P/I)方向に対応するか、又はその中の主要な構成要素を有し得る。厚さ方向Tは、システム20が設置位置にあるときに、患者の横方/内側(L/M)方向に対応するか、又はその中の主要な構成要素を有し得る。
【0067】
システム20は、ベースプレート22及びパッド24がオフセット配設を確立するように寸法決定されてもよく、これにより、解剖学的な肩構成とリバースショルダー構成との間のシステム20の変換が促進され得る。パッド24の中心は、グレノイドのS/I方向に対して、ベースプレート22の中心を越えて上方に延在するように構成され得る。パッド本体42の一部分は、グレノイドのS/I方向に対して、プレート本体28を越えて上方に延在するように構成され得る。本明細書に開示されるオフセット配設の様々なパラメータは、解剖学的ショルダー処置の前及び/又は間に、外科医によって選択されて、後日の外科手術をリバースショルダー構成に修正するときに、システム20の再構成を容易にする方法で解剖学的ショルダー構成を確立することができる。初期処置中のパラメータの選択は、後の処置における外科手術部位の変化を減少させてもよく、これは患者の治癒を改善し得る。解剖学的ショルダー構成におけるベースプレート22及びパッド24のオフセット配設は、グレノスフィア26がグレノイドGから比較的より外向きに延在し得、かつベースプレート22によってより直角に支持され得る、システム20のリバースショルダー構成とは異なる場合がある。
【0068】
プレート周囲36は、プレート面積AP1を確立するために基準面REF上に投影され得、パッド周囲50は、基準面REF上に投影されて、パッド面積AP2を確立し得る(説明のために破線で示されるREF、AP1及びAP2)。基準面REFは、長さ方向L、及び幅方向Wに延在し得る。プレート面積A1及びパッド面積AP2は、それぞれの最大長さL1、L2及び最大幅W1、W2と関連付けられ得る。プレート本体28及びパッド本体42は、プレート面積AP1で割ったパッド面積AP2の面積比AP2:AP1が約1.5:1以上となるように寸法決定され得る。面積比AP2:AP1は、約2:1~約3:1の間など、約4:1以下であり得る。
【0069】
プレート本体28のプレート面積AP1は、基準面REFに沿って第1のセントロイドC1を画定し得る。第1のセントロイドC1は、
図5に示すように、ステム軸SAの突出部と実質的に整列又は同心であり得る。パッド本体42のパッド面積AP2は、基準面REFに沿って第2のセントロイドC2を画定し得る。パッド本体42は、
図5に示すように、第2のセントロイドC2が、第1のセントロイドC1から縦方向Lに対して第1の距離D1だけオフセットされるように寸法決定され得る。第1の距離D1は、S/I方向に対して画定され得る。第1の距離D1は、約1mm又は3mm以上であり得る。第1の距離D1は、約5mm、8mm、又は10mm以上であり得る。
【0070】
ベースプレート22及びパッド24は、第1の長さL1で割った第1の距離D1として画定される、オフセット比D1:L1を確立するように構成され得る。オフセット比D1:L1は、約1:4以上、又はより狭く約1:3若しくは約1:2以上であり得る。オフセット比D1:L1は、
図6に示すように、第2のセントロイドC2が、S/I方向に対して第1のセントロイドC1から上方にオフセットされるように確立され得る。オフセット比D1:L1は、
図5に示すように、第2のセントロイドC2がプレート本体28の周囲36によって囲まれるように確立され得る。一部の実装形態では、第2のセントロイドC2が
図5の第2のセントロイドC2’によって示されるように、プレート本体28の周囲36の外側に位置付けられるように、オフセット比D1:L1が確立される。
【0071】
図5を引き続き参照して、
図6を参照すると、グレノイドGのグレノイド面GFは、S/I方向に対して上方領域R1、中間領域R2、及び下方領域R3を含む、3つの実質的に等しい領域R1~R3に分割され得る。中間領域R2は、上位領域R1と下方領域R3との間に確立される。上方領域R1は、グレノイドGの上グレノイド結節TSから延在し得、下方領域R3は、グレノイドGの下グレノイド結節TIから延在し得る。
【0072】
ベースプレート22及びパッド24のオフセット構成は、プレート本体28及びパッド本体42の質量中心に対して確立され得る。プレート本体28は、第1の質量中心M1を画定し得る。プレート面積AP1は、第1の質量中心M1と関連付けられてもよい。パッド本体42は、第2の質量中心M2を画定し得る。パッド面積AP2は、第2の質量中心M2と関連付けられてもよい。
【0073】
パッド本体42は、
図6に示すように、第2の質量中心M2が、設置位置のS/I方向に対して第1の距離D1だけ第1の質量中心M1から上方にオフセットされるように寸法決定され得る。第1の質量中心M1は、
図5及び
図6に示すように、第1のセントロイドC1と実質的に一致し得、第2の質量中心M2は、第2のセントロイドC2と実質的に一致し得る。一部の実装形態では、第2の質量中心M2は、
図5の第2の質量中心M2’によって示されるように、プレート本体28の周囲36の外側に位置付けられている。第2の質量中心M2’は、
図5に示すように、第2のセントロイドC2’と実質的に一致し得る。他の実装形態では、第1及び/又は第2のセントロイドC1、C2、C2’は、それぞれの質量中心M1、M2、M2’からオフセットされる。質量中心M1、M2は、ベースプレート22のアンカーリングステム38及びパッド24のペグ52、54など、それぞれのプレート本体及びパッド本体42から外向きに延在する突起部を除外する。
【0074】
図2を引き続き参照して、
図7を参照すると、システム20は、少なくとも1つのグレノスフィア26を含み得る。グレノスフィア26は、関節運動面58と、関節運動面58に対向する後面60と、を含む。関節運動面58は、略凸状の形状を有し得る。
【0075】
グレノスフィア26は、
図12に示すように直接的に、又は
図10に示すようにスペーサー66(例えば、テーパアダプタ)を介して間接的に、ベースプレート22と選択的に接合するように寸法決定され得る。スペーサー66の選択は、外科手術部位に対してグレノスフィア26を横方向に又はそうでなければ位置付けるための、外科医の異なる選択肢を提供し得る。
【0076】
様々な技術を利用して、グレノスフィア26をベースプレート22に対して直接的又は間接的に取り外し可能に固定又は付着し得る。グレノスフィア26は、後面60から内向きに延在する凹部62を含み得る。凹部62は、
図12に示すように、プレート本体28を少なくとも部分的に受容するように寸法決定され得る。プレート周囲36は、凹部62の周囲64と協働して、ベースプレート22とグレノスフィア26との間の相対的移動を制限するモールステーパ接続を確立するように寸法決定され得る。組立中、グレノスフィア26は、プレート本体28上に衝突されて、モールステーパ接続を確立し得る。
【0077】
各スペーサー66は、前面70と、前面70とは反対の後面72との間の厚さ方向Tに延在する、スペーサー本体68を含む。前面70は、グレノスフィア26に当接するように寸法決定され得、後面72は、ベースプレート22に当接するように寸法決定され得る。周辺壁73は、前面70と後面72との間の厚さ方向Tに延在し、スペーサー周囲75を確立する。スペーサー周囲75は、前面70及び後面72を囲むように寸法決定され得る。スペーサー周囲75は、凹部62の幾何学的形状を補完する、実質的に円形又は楕円の幾何学的形状などの様々な幾何学的形状を有し得る。一部の実装形態では、パッド本体42の凹部56及び/若しくはグレノスフィア26の凹部64が省略される、かつ/又はそれぞれの凹部がプレート本体28内に確立されて、パッド本体28の一部分を受容する、かつ/又はそれぞれの凹部がスペーサー本体68内に確立されて、グレノスフィア26の一部分を受容して、それぞれの構成要素を固定する、反対の構成が確立される。
【0078】
各スペーサー66は、グレノスフィア26が所定の距離D2(
図10)だけプレート本体28からオフセット又は離隔されるように、プレート本体28及びグレノスフィア26と接合するように寸法決定され得る。所定の距離D2は、スペーサー66の厚さに対応し得、グレノイドのL/M方向に延在し得る。インプラントシステム20は、異なる厚さを有する複数のスペーサー66を含んでもよく、それにより、異なる所定の距離D2に対応する横方向オフセットの範囲を提供する。所定の距離D2は、例えば、約0mm、2mm、4mm、及び6mmなどの様々な増分であり得る。
【0079】
スペーサー66は、スペーサー本体68から外向きに延在する1つ以上のスペーサーペグ74を含み得る。スペーサーペグ74は、ベースプレート22のそれぞれのプレート開口40内に挿入するように構成され得る。スペーサーペグ74は、ベースプレート22の中央開口40Cに少なくとも部分的に挿入可能である、中央スペーサーペグ74Cを含み得る。スペーサーペグ74は、ベースプレート22の周辺開口40Pのうちのそれぞれの1つに少なくとも部分的に挿入可能である、少なくとも1つの周辺スペーサーペグ74Pを含み得る。周辺スペーサーペグ74Pは、スペーサーペグ74C、74Pのそれぞれの開口40C、40Pへの挿入が、設置位置でのベースプレート22とスペーサー66との間の相対回転を制限するように、中央スペーサープレート74Cからオフセットされ得る。一部の実装形態では、周辺スペーサーペグ74Pは、省略されるか、又は別の締め具Fがそれぞれの周辺開口40P内に位置するように寸法決定される。
【0080】
スペーサー66は、
図10に示すように、ベースプレート22を固定するために、プレート開口のそれぞれの対及びスペーサー開口40、76を通して、かつグレノイドGに沿って骨B内に、締め具Fが挿入可能になるように、それぞれのプレート開口40と実質的に整列するように各々が寸法決定される、1つ以上のスペーサー開口76を含んでもよい。開口76は、締め具Fのヘッドがスペーサー66と同一平面になるか、又はスペーサー66内に陥凹することを可能にするために皿状であり得る。
【0081】
システム20は、
図10及び
図11に示すように、ベースプレート22とグレノスフィア26との間に異なる配向を確立する、複数のスペーサー66、166を含み得る。システム20は、
図10に示すように、グレノスフィア26の後面60が設置位置のベースプレート22の前面30と実質的に平行になるように、後面72と実質的に平行な前面70を有する少なくとも1つのスペーサー66を含み得る。
【0082】
システム20は、
図11に示すように、グレノスフィア26の後面60が設置位置のベースプレート22の前面30に対して横方向になるように、後面172に対して横方向である前面170を有する少なくとも1つのスペーサー166を含み得る。前面170は、スペーサー166の後面172に対して横方向に配設され、角度αを確立する。角度αは、例えば、約5度以上、又はより狭く約10度~約45度の間であり得る。本明細書に開示されるスペーサー66、166は、関節の可動性を改善し得る、リバースショルダー処置における上腕骨インプラントの関節運動面により密接にグレノスフィア26を位置付け及び/又は配向するために利用され得る。
【0083】
様々な材料を利用して、システム20の構成要素を形成することができる。ベースプレート22、パッド24、スペーサー66、166、及びグレノスフィア26の材料は、同一であってもよく、又は異なっていてもよく、外科手術グレードの金属及び金属合金、非金属材料、並びにそれらの組み合わせなどの金属材料を含んでもよい。1つ以上のコーティング又は層78は、ベースプレート22の表面に沿って堆積され得る(例示の目的で
図3の破線で示される)。例示のコーティング78は、リン酸カルシウム(CaP)又は骨の内成長を促進するための生体材料を含み得る。一部の実装形態では、ベースプレート22の1つ以上の表面は、ベースプレート22への骨の内生を促進するように、テクスチャであるか、又は多孔性構造を有する。パッド24は、例えば、ポリエチレン、ナイロン、又はセラミック化合物などの非金属材料で形成され得る。システム20の構成要素の各々は、モノリシック構造を有し得、又は複数の別個の異なる構成要素を各々含み得る。
【0084】
図8は、フローチャート280にコンバーチブル整形外科用インプラントシステムを設置する方法を示す。方法280は、例えば、進行性の軟骨疾患を有する肩の機能を回復させるための関節形成術を実施するために利用され得る。方法280は、インプラントシステム20、120を含む、本明細書に開示される整形外科用インプラント及びインプラントシステムのうちのいずれかで利用され得る。方法280は、インプラントシステム20、120を第1の構成と第2の構成との間で変換するための1つ以上のステップを含み得る。第1の構成は、解剖学的なショルダー処置若しくは配置に対応し得、第2の構成は、リバースショルダー処置又は配置に対応し得、又はその逆であり得る。ステップ280I~280Kは、解剖学的なショルダー処置で実施され得、ステップ280L~280Rは、例えば、リバースショルダー処置で実施され得る。以下に列挙されるよりも少ない又はそれに追加のステップが、本開示の範囲内で実施され得、列挙されるステップの順序は、本開示を限定することを意図しない。
【0085】
開示されたインプラントシステムは、キットとして外科医に提供され得る。キットには、1つ以上のベースプレート、パッド、グレノスフィア、並びに様々な形状及びサイズのスペーサーが含まれ得る。特定の構成要素は、患者の解剖学的構造に従ってキットから選択され得る。
【0086】
図8を引き続き参照して、
図9を参照すると、外科手術部位Sは、ステップ280Aで準備され得る。1つ以上の手術は、外科手術部位Sの所望の形状を構成するために、1つ以上のリーミング、フライス加工及びドリル加工などの外科手術部位Sを準備して実施され得る。ステップ280Aは、ステップ280Bで外科手術部位Sに沿って骨Bなどの組織を除去することによって凹部Rを形成することを含み得る。
【0087】
凹部Rは、グレノイド面GFなどの関節の関節表面に形成され得る。ステップ280Aは、ステップ280Cで1つ以上の骨穴Hを形成することを含み得る。各骨穴Hは、凹部R又はグレノイド面GFから内向きに延在し得る。実装形態では、ステップ280Aは、ステップ280B、280Cで骨Bの一部分を取り外すことによってその後形成される凹部R及び骨穴Hの位置及び/又は配向を選択するために、外科手術部位Sに沿ってベースプレート22及び/又はパッド24のトライアルを暫定的に配置することを含み得る。
【0088】
ステップ280Dで、ベースプレート22は、グレノイド面GFに沿ってなど、外科手術部位Sに沿って位置付けられてもよい。ステップ280Dは、ベースプレート22を方向D3に移動させること、及びステップ280Eで少なくとも部分的に凹部R内にプレート本体28を位置付けることを含み得る。他の実装形態では、ステップ280Dは、グレノイド面GFに沿って外面上に座るようにプレート本体28を位置付けることを含む。ステップ280Dは、ステップ280Fで、それぞれの骨穴Hに少なくとも部分的にベースプレート22のアンカーリングステム38を位置付けることを含み得る。ステップ280Fは、ステム軸SAが、グレノイドGの下方領域R3に位置付けられるように発生し得る。グレノイドG上のベースプレート22のより下の場所、及びS/I方向に対してベースプレート22よりも上に延在するためのパッド24の形状は、対向する関節表面AS-1(
図9)に対するパッド24の配置に影響を与えることなく、グレノスフィアのその後の取り付けのためのより適切なベースプレート22の場所を提供し得る。ベースプレート22の固定にはグレノイドGのより小さな面積を使用し得、パッド24の骨接触面46は、外科手術部位に沿ってパッド24のセキュリティを維持するために、グレノイド面GF又はグレノイドGの別の表面に対して当接するように構成され得る。
【0089】
ステップ280Gで、ベースプレート22は、外科手術部位Sに固定され得る。ステップ280Gは、例えば、1つ以上の締め具Fをそれぞれのプレート開口40内に位置付けて、ベースプレート22をグレノイドGに沿って骨に固定することを含み得る。締め具Fは、ベースプレート22と骨との間で圧縮する及びそれを維持し得、相対的動きを減少させ、またそうでなければ、ベースプレート22と骨の接触表面との間の間隔によって生じ得る組織形成を減少させ得る、圧縮ねじであり得る。
【0090】
ステップ280Iで、パッド24は、ベースプレート22に取り外し可能に固定又は付着される。ステップ280Iは、ステップ280Jでパッド24を方向D3に移動させることに応答して、パッド24をベースプレート22及びグレノイドGに対して位置付けることを含み得る。パッド24は、ベースプレート22上に衝撃を受けて、モールステーパ接続を介して干渉嵌合を確立し得る。ステップ280Jは、パッド24の骨接触面46が、グレノイド面GFに隣接するグレノイドGに沿って骨と接触し、こうした骨接触面46がグレノイド面GFの輪郭に実質的に従うように発生し得る。ステップ280Iは、プレート本体28とパッド本体42との間の相対的移動が、少なくともグレノイドGのS/I方向に制限されるように発生し得る。
【0091】
パッド本体42は、グレノイド面GFなどの関節表面に対して異なる奥行きに配置され得る。一部の実装形態では、パッド24は、
図9に示すように、パッド本体42がグレノイド面GF上に位置するように、かつ骨接触面46がグレノイド面GFの輪郭に従うようにオーバーレイ位置に配置される。他の実装形態では、ステップ280Jでパッド24を位置付けることは、グレノイド面GF’、GF”によってそれぞれ示されるように、グレノイド面GFに沿って凹部R’にパッド本体42を少なくとも部分的に又は完全に象嵌することを含む。
【0092】
ステップ280Iは、パッド24の1つ以上の配向ペグ52を、中央ペグ52C及び周辺ペグ52Pなどの、ベースプレート22のそれぞれのプレート開口40内に位置付けることを含み得る。ステップ280Iでペグ52を位置付けることは、ベースプレート22とパッド24との間の相対的回転を制限し得る。
【0093】
ステップ280Dでベースプレート22を位置付けることは、
図6及び
図9に示すように、アンカーリングステム38が下方領域R3に位置し、プレート本体28の第1のセントロイドC1及び/若しくは第1の質量中心M1が下方領域R3に位置し、かつ/又はステム軸SAの突出部と実質的に整列するように発生し得る。ステップ280Iでパッド24を固定することは、
図6及び
図9に示すように、パッド本体42の第2のセントロイドC2及び/又は第2の質量中心M2が中間領域R2内に位置するように発生し得る。質量中心M1、M2、及び/又はアンカーリングステム38は、
図6に示すように、上グレノイド結節TSの下に位置付けられてもよく、グレノイドGの下グレノイド結節TIの上に位置付けられてもよい。
【0094】
パッド24は、
図9に示すように、第1の位置にあるときに、グレノイドGのS/I方向に対して、第1の距離D1だけ、パッド24のアンカーリングペグ54及び/又は第2の質量中心M2が、ベースプレート22の第1の質量中心M1から上方にオフセットされるように、ステップ280Iでベースプレート22に固定され得る。第1の質量中心M1は、第1の位置のS/I方向に対して第2の質量中心M2よりも下にオフセットされ得る。パッド24は、第1及び第2の質量中心M1、M2が異なる領域R1~R3に位置するように、ステップ280Iでベースプレート22に固定され得る。例えば、第1の質量中心M1は、下方領域R3に沿って位置し得、第2の質量中心M2は、
図9に示すように、中間領域R2に沿って位置し得る。
【0095】
ベースプレート22及びパッド24は、本明細書に開示されるオフセット比のうちのいずれかに従って、第1の距離D1を確立するように配設され得る。ステップ280Iでパッド24を固定することは、
図9に示すように、パッド面積AP2の少なくとも25%及び/又はパッド本体42の第1の長さL1(
図5)の少なくとも25%が、質量M1の第1の中心からS/I方向に対して上方にオフセットされるように発生し得る。
【0096】
ステップ280Lで、パッド24は、ステップ280Iでパッドを固定した後に発生し得る、グレノイドGなどの外科手術部位Sに対する第1の位置で、ベースプレート22から取り外され得る。締め具Fのうちの1つ以上は、ステップ280Mでベースプレート22から取り外され得る。ベースプレート22のうちの1つ以上の部分は、骨の成長を促進するための多孔性構造及び/又はコーティング78(
図3)を含み得る。骨内成長は、締め具Fを取り外した後に、ベースプレート22が凹部Rに沿って骨Bに取り付けられたままであることを容易にし得る。
【0097】
図8を引き続き参照して、
図10を参照すると、スペーサー66は、ステップ280Nでベースプレート22に対して位置付けられ得る。スペーサー66は、ベースプレート22から所定の横方向化及び/又は角度オフセットを提供するために選択され得る。スペーサーペグ74C、74Pは、中央及び周辺開口40C、40Pのうちのそれぞれの1つ内に位置付けられて、ベースプレート22とスペーサー66との間の相対回転を制限し得る。ステップ280Nは、
図11に示すように、スペーサー166の後面172に対して前面170が横方向に配置されて角度αを確立するように、ベースプレート22に対してスペーサー166を位置付けることを含み得る。角度αは、本明細書に開示される値のうちのいずれかを含み得る。選択されたスペーサー66、166は、ベースプレート22上に衝撃を受けて、モールステーパ接続を介して干渉嵌合を確立し得る。
【0098】
ステップ280Pで、スペーサー66は、1つ以上の締め具F(例示の目的で示されるもの)でベースプレート22に固定され得る。ステップ280Qで、1つ以上の締め具Fを、プレート開口40及びスペーサー開口76のそれぞれの対に位置付けて、スペーサー66及びベースプレート22を外科手術部位Sに固定し得る。
【0099】
ステップ280Rで、グレノスフィア26は、ステップ280Lでパッド24を取り外した後に発生し得る、ベースプレート22に固定される。グレノスフィア26の関節運動面58は、対向する関節表面と接合するように寸法決定される、略凸状の形状を有し得る。対向する関節表面は、関節表面AS-2(例示的な目的のために
図10~
図12の破線で示される)によって図示されるように、上腕骨と関連付けられてもよい。関節表面AS-2は、グレノスフィア26の関節運動面58の形状を補完する略凹形状を有し得る。関節表面AS-2は、上腕骨若しくは上腕骨インプラントの一部分、又は別の関節の関節表面であり得る。
図3及び
図10~
図12の関節表面AS-1、AS-2は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。
【0100】
選択されたスペーサー66は、
図10に示すように、グレノスフィア26がグレノスフィアGのL/M方向に対して所定の距離D2だけベースプレート22から横方向に離隔されるように、ベースプレート22とグレノスフィア26との間に固定され得る。選択されたスペーサー166は、
図11に示すように、グレノスフィア26の後面60がベースプレート22の前面30に対して横方向に配向されるように、ステップ280Nに位置付けられ、かつステップ280Rに固定され得る。スペーサー166は、凹部62を画定するグレノスフィア126の一部分が、スペーサー本体168の少なくとも最小の厚さだけベースプレート22から離隔されるように寸法決定され得る。グレノスフィア26は、選択されたスペーサー66、166上に衝撃を受けて、モールステーパ接続を介して干渉嵌合を確立し得る。
【0101】
ステップ280Rは、グレノスフィア26を位置付ける前に外科手術部位Sを準備することを含み得る。パッド24が、グレノイド面GF’/GF”に少なくとも部分的に又は完全に象嵌される一部の実装形態では、材料Mは、ステップ280Lでパッド24を取り外した後、それぞれの凹部R’に配置され得る(例示の目的で、Mは
図10の破線で示されている)。材料Mは、例えば、骨移植又は骨スラリーであり得る。材料Mは、隣接するグレノイド面GF’/GF”と実質的に同一平面であり得る。
【0102】
図13は、外科手術部位Sに対して位置するベースプレート222及びパッド224を含む、システム220を示す。外科手術部位Sは、グレノイドG及び上腕骨Hを含む、肩関節であり得る。パッド224は、上腕骨Hの上腕骨頭HHの関節表面ASと協働し得る。
【0103】
図14は、外科手術部位Sに隣接するベースプレート222に固定されたグレノスフィア226及びスペーサー366を含む、システム220を示す。グレノスフィア226は、上腕骨頭HHに隣接して位置する上腕骨インプラントHIと協働する。上腕骨頭HHの一部分HPは、骨切り術を実施することによって切除され得る(HPは、例示の目的で
図14の破線で示されている)。
【0104】
本開示の新規のインプラントシステム及び方法は、関節に機能を回復させる多用途性を提供し得る。本開示のインプラントシステムの様々な構成要素は、同じ患者の解剖学的処置及びリバースショルダー処置の両方で利用される共通のベースプレートなど、後続する関節形成術の間、そのままにすることができ、これは治癒を改善し、部品数を低減することができる。本明細書に開示される技術を利用して、パッドをベースプレートに対してオフセットすることは、後で解剖学的ショルダー構成からリバースショルダー構成に外科手術を修正することを容易にすることができ、これは、患者における肩甲上腕関節疾患の進行により、より適切している場合がある。開示されたオフセット技術は、リバースショルダー構成で再利用された共通のベースプレートに対して、より適切な位置を提供し得る。ベースプレートの固定には、グレノイドのより小さな面積を使用し得るが、ベースプレートの外向きにパッドの骨接触面を当接することで、グレノイドに沿ったパッドの安定化が改善され得る。付着したグレノスフィアは、グレノイドの準備中に肩甲骨のノッチング目を避けるために、より適切に配置され得る。
【0105】
異なる非限定的な実施形態が、特定の構成要素又はステップを有するものとして例示されているが、本開示の実施形態は、それらの特定の組み合わせに限定されない。非限定的な実施形態のいずれかからの構成要素又は特徴のいくつかを、他の非限定的な実施形態のいずれかからの特徴又は構成要素と組み合わせて使用することが可能である。
【0106】
同様の参照番号は、いくつかの図面全体にわたって、対応する又は同様の要素を識別すると理解されたい。これらの例示的な実施形態では、特定の構成要素の配置が開示され、例示されるが、他の配置もまた、本開示の教示から利益を得ることができると更に理解されたい。
【0107】
前述の説明は、例示的であって、いかなる限定的な意味でも解釈されないものとする。当業者は、特定の修正が、本開示の範囲内であり得ると理解するだろう。
【符号の説明】
【0108】
20 インプラントシステム
22 ベースプレート
24 パッド
26 グレノスフィア
28 プレート本体
30 前面
32 後面
34 周辺壁
36 周囲
38 突起部
40 開口
42 パッド本体
44 関節運動面
46 骨接触面
48 周辺壁
50 周囲
52 配向ペグ
54 突起部
55 リブ
56 凹部
57 凹部周囲
58 関節運動面
60 後面
62 凹部
64 周囲
64 凹部
66 スペーサー
68 スペーサー本体
70 前面
72 後面
73 周辺壁
74 スペーサーペグ
75 スペーサー周囲
76 スペーサー開口
78 層、コーティング
120 インプラントシステム
126 グレノスフィア
166 スペーサー
168 スペーサー本体
170 前面
172 後面
220 システム
222 ベースプレート
224 パッド
226 グレノスフィア
366 スペーサー
【国際調査報告】