(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(54)【発明の名称】SARS-COV-2ワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/215 20060101AFI20231017BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231017BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231017BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231017BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231017BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20231017BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20231017BHJP
C12N 15/50 20060101ALN20231017BHJP
【FI】
A61K39/215
A61K39/00 G ZNA
A61P31/14
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K35/15
C12N5/0784
C12N15/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521821
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2021078178
(87)【国際公開番号】W WO2022079029
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521209236
【氏名又は名称】アール.ジー.シー.シー. ホールディングス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パパソティリウ,イオアンニス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
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4B065AC14
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4C085AA03
4C085BA71
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4C085GG02
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4C087ZB33
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、ヒト又は動物被験体に3つの別個の用量で順次投与されるべき、3つの異なるSARS-CoV-2ペプチドを負荷した活性化自己樹状細胞を含む3つの組成物を含む、ヒト又は動物被験体におけるウイルス性疾患に対するワクチンとして使用される医薬製品に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を含む医薬製品であって、前記第1、第2及び第3の組成物の各々が、単一のヒト又は動物被験体からの活性化自己樹状細胞の3つの異なる集団のうちの1つを含む、前記医薬製品において、前記3つの集団の各々の前記活性化自己樹状細胞が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はエンベロープタンパク質の異なるペプチドを提示することを特徴とする、医薬製品。
【請求項2】
- 前記第1の組成物が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質、好ましくはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第1のペプチドで活性化された活性化自己樹状細胞の第1の集団を含み、
- 前記第2の組成物が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質の第2のペプチドで活性化された活性化自己樹状細胞の第2の集団を含み、前記第2のペプチドは、前記第1のペプチドとは異なり、
- 前記第3の組成物が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質、好ましくはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第3のペプチドで活性化された活性化自己樹状細胞の第3の集団を含み、前記第3のペプチドは、前記第1のペプチド及び前記第2のペプチドとは異なる、
請求項1記載の医薬製品。
【請求項3】
ワクチンとして使用され、好ましくはヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患に対するワクチンとして使用される、請求項1又は2記載の医薬製品。
【請求項4】
SARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患の治療に使用され、好ましくはCOVID-19の治療に使用され、前記3つの組成物は、前記ヒト又は動物被験体に互いに別々に、3つの異なる時点で順次投与され、前記第1の組成物は、前記ヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの1週目、好ましくは1日目に、好ましくは注射によって投与され、前記第2の組成物は、前記ヒト又は動物被験体に前記ワクチン接種スケジュールの2週目、好ましくは8日目に、好ましくは注射によって投与され、前記第3の組成物は、前記ヒト又は動物被験体に前記ワクチン接種スケジュールの3週目、好ましくは15日目に、好ましくは注射によって投与され、好ましくは各組成物は、前記ヒト又は動物被験体に部分的に静脈注射によって、及び部分的に皮下注射によって投与される、請求項1又は2記載の医薬製品。
【請求項5】
請求項1又は2記載の医薬製品を含む、ヒト又は動物被験体におけるワクチンとして使用されるパーツキット。
【請求項6】
ヒト又は動物被験体におけるワクチンとして使用され、好ましくはSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患に対するワクチンとして使用され、より好ましくはCOVID-19に対するワクチンとして使用されるパーツキットであって、前記パーツキットが、第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を含み、前記第1、第2及び第3の組成物の各々が、単一のヒト又は動物被験体からの活性化自己樹状細胞の3つの異なる集団のうちの1つを含み、前記3つの集団の各々の前記活性化自己樹状細胞が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質の異なるペプチドを提示する、パーツキット。
【請求項7】
前記パーツキットが、第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を含み、
- 前記第1の組成物が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第1のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第1の集団を含み、
- 前記第2の組成物が、前記第1のペプチドとは異なるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質の第2のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第2の集団を含み、
- 前記第3の組成物が、前記第1のペプチド及び前記第2のペプチドとは異なるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第3のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第3の集団を含む、
請求項6記載のパーツキット。
【請求項8】
- 前記第1の組成物が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)を細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第1の集団を含み、
- 前記第2の組成物が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)及びSARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)からなる群から選択される1つのペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第2の集団を含み、
- 前記第3の組成物が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)を細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第3の集団を含む、
請求項7記載のパーツキット。
【請求項9】
前記3つの組成物は、前記ヒト又は動物被験体に互いに別々に、3つの異なる時点で順次、好ましくは注射によって、より好ましくは静脈注射と皮下注射との組合せによって投与され、好ましくは各組成物の50~90%が静脈注射され、それぞれの組成物の残りの10~50%が皮下注射され、より好ましくは約4~5.4mlの各組成物が静脈注射され、さらに0.6~2mlが皮下注射され、最も好ましくは約5mlの各組成物が静脈注射され、約1mlの各組成物が皮下注射される、請求項6~8のいずれか1項記載のパーツキット。
【請求項10】
前記第1の組成物は、前記ヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの1週目、好ましくは1日目に投与され、前記第2の組成物は、前記ヒト又は動物被験体に前記ワクチン接種スケジュールの2週目、好ましくは8日目に投与され、前記第3の組成物は、前記ヒト又は動物被験体に前記ワクチン接種スケジュールの3週目、好ましくは15日目に投与される、請求項6~9のいずれか1項記載のパーツキット。
【請求項11】
ヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患を治療又は予防する方法であって、以下の工程:
- SARS-CoV-2のタンパク質の第1のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第1の集団を含む第1の組成物を投与する工程、
- SARS-CoV-2のタンパク質の第2のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第2の集団を含む第2の組成物を投与する工程、
- SARS-CoV-2のタンパク質の第3のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第3の集団を含む第3の組成物を投与する工程
を含み、
- 前記第1、第2及び第3の組成物の各々が、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の3つの異なる集団のうちの1つを含み、活性化自己樹状細胞の前記3つの集団の各々において、前記活性化自己樹状細胞が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はエンベロープタンパク質の異なるペプチドを細胞表面に提示する、
ヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患を治療又は予防する方法。
【請求項12】
- 前記第1の組成物が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第1のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第1の集団を含み、好ましくは前記第1の組成物が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)を細胞表面に提示する活性化自己樹状細胞の第1の集団を含み、
- 前記第2の組成物が、前記第1のペプチドとは異なるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質の第2のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第2の集団を含み、好ましくは前記第2の組成物が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)及びSARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)からなる群から選択される1つのペプチドを細胞表面に提示する活性化自己樹状細胞の第2の集団を含み、
- 前記第3の組成物が、前記第1のペプチド及び前記第2のペプチドとは異なるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第3のペプチドを細胞表面に提示する、前記ヒト又は動物被験体の活性化自己樹状細胞の第3の集団を含み、好ましくは前記第3の組成物が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)を細胞表面に提示する活性化自己樹状細胞の第3の集団を含む、
請求項11記載の、ヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患を治療する方法。
【請求項13】
前記第1、第2及び第3の組成物を前記ヒト又は動物被験体に互いに別々に、3つの異なる時点で順次投与し、好ましくは前記第1の組成物を前記ヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの1週目、好ましくは1日目に投与し、前記第2の組成物を前記ヒト又は動物被験体に前記ワクチン接種スケジュールの2週目、好ましくは8日目に投与し、前記第3の組成物を前記ヒト又は動物被験体に前記ワクチン接種スケジュールの3週目、好ましくは15日目に投与する、請求項11又は12記載の、ヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患を治療する方法。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項記載の医薬製品の調製又は請求項5~10のいずれか1項記載のパーツキットの調製のためのウイルス抗原ペプチド、好ましくはSARS-CoV-2ペプチド、より好ましくは以下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)及びSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)からなる群から選択されるペプチドを提示するヒト又は動物の自己樹状細胞の集団を得る方法であって、以下の工程:
a.) 前記ヒト又は動物被験体のPBMCから単離された単球を培養する工程であって、前記単球を、好ましくは密度勾配遠心分離、又はNH
4Clによる赤血球溶解及び磁気ビーズ単離によって単離する、培養する工程と、
b.) 工程a.)の付着単球をGM-CSF及びIL-4とともに、好ましくは10%熱不活性化FBS及び1%グルタミンを含むRPMI 1640培地中で、好ましくは6日間培養して、未成熟樹状細胞の集団を得る工程と、
c.) 工程b.)の前記未成熟樹状細胞を、好ましくは培養6日目に抗原ペプチドにより、好ましくは10μg/mlの最終濃度でパルスするとともに、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)又はSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)の場合、好ましくは4~24時間、好ましくはβ2ミクログロブリンの存在下にて、好ましくは3μg/mlのβ2ミクログロブリンの最終濃度でインキュベートして、前記ウイルス抗原ペプチドを提示する負荷樹状細胞の集団を得る工程と、好ましくは、
d.) 前記負荷樹状細胞をさらに使用するまで凍結保存する工程と、任意に工程d.)の前に、
e.) 前記ウイルス抗原ペプチドを提示する工程c.)の前記負荷樹状細胞をインキュベーション、好ましくは37℃及び5%CO
2で48時間のインキュベーションによってサイトカインカクテルによって成熟させる工程と
を含む、方法。
【請求項15】
薬剤を製造する方法であって、以下の工程:
a.) ヒト又は動物被験体のPBMCから単離された単球を培養する工程であって、前記単球を、好ましくは密度勾配遠心分離、又はNH
4Clによる赤血球溶解及び磁気ビーズ単離によって単離する、培養する工程と、
b.) 工程a.)の付着単球をGM-CSF及びIL-4とともに、好ましくは10%熱不活性化FBS及び1%グルタミンを含むRPMI 1640培地中で、好ましくは6日間培養して、未成熟樹状細胞の集団を得る工程と、
c.) 工程b.)の前記未成熟樹状細胞を、好ましくは培養6日目に、以下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)及びSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)からなる群から選択される第1の抗原ペプチドにより、好ましくは10μg/mlの最終濃度でパルスするとともに、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)又はSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)の場合、好ましくは4~24時間、好ましくはβ2ミクログロブリンの存在下にて、好ましくは3~10μg/mlのβ2ミクログロブリンの最終濃度でインキュベートして、前記ウイルス抗原ペプチドを提示する負荷樹状細胞の集団を得る工程と、
工程a.)~c.)を2回繰り返す工程であって、工程b.)により、未成熟樹状細胞の第1、第2及び第3の集団をそれぞれ獲得し、工程c.)において、未成熟樹状細胞の前記第1、第2及び第3の集団をそれぞれ、第1の抗原ペプチドと、それぞれ前記第1の抗原ペプチドとは異なり、それぞれ以下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)及びSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)からなる群から選択される第2及び第3の抗原ペプチドとにより、好ましくは10μg/mlの最終濃度でそれぞれパルスするとともに、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)又はSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)の場合、好ましくは4~24時間インキュベートし、前記第3の抗原ペプチドは、前記第2の抗原ペプチドとは異なる、繰り返す工程と、
好ましくは、
d.) 工程c.)で得られた前記負荷樹状細胞をさらに使用するまで凍結保存する工程と、任意に工程c.)の後、好ましくは工程d.)の前に、
e.) 前記第1、第2又は第3のウイルス抗原ペプチドを提示する工程c.)の前記負荷樹状細胞をインキュベーション、好ましくは37℃及び5%CO
2で48時間のインキュベーションによってサイトカインカクテルで成熟させる工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞免疫学及び免疫療法の分野に関する。より具体的には、本発明は、ヒト又は動物被験体において免疫応答を誘導する方法、並びに免疫応答を誘導するための医薬組成物及びかかる組成物を含むパーツキットに関する。さらに、本発明は、医薬組成物をin vitroで製造する方法、及び医薬組成物又は免疫応答を誘導する方法におけるプライム樹状細胞の使用に関する。本発明は、より具体的には、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス、細菌、真菌及び寄生生物等の病原体は、疾患を引き起こす恐れがある生物であり、一部の病原体は、罹患した宿主における深刻な影響及び犠牲の原因となることが見出されている。
【0003】
ワクチン接種又は抗生物質の投与は、病原体に起因する疾患の予防又は対処に有用であり得る。人体の免疫系は、幾つかの一般的な病原体に対する防御を提供する。病原体は、宿主の免疫系によって認識され得るタンパク質、いわゆる抗原を含む。抗原は、多くの異なる化学的分類に属することがあり、ウイルス又は細菌のタンパク質、脂質、炭水化物又はこれらの組合せ、例えばリポタンパク質又は糖タンパク質に由来し得る。
【0004】
適応免疫系は、2つの主要な免疫機構を含む:第一に、免疫系が感染細胞の外側の自由に循環する病原性抗原に対処する液性免疫では、B細胞は、ヘルパーT細胞及び抗原提示細胞によって、特定の抗原に対する抗体産生形質B細胞へと分化する。次いで、これらの抗体が病原性抗原に結合して中和するか、又は溶解若しくは食作用を引き起こす。第二に、感染細胞内で起こる細胞性免疫では、病原性抗原が感染細胞の表面又は抗原提示細胞(APC)上に発現する。ヘルパーT細胞は、活性化CD8+T細胞が感染細胞のMHC抗原複合体に結合するのを助けるサイトカインを放出し、CD8+T細胞を、身体の他の細胞を高度に特異的に死滅させる能力を有する白血球である細胞傷害性Tリンパ球(CTL)へと分化させる。CTLは、病的細胞上の主要組織適合性複合体クラスI(MHC I)が提示するペプチドによって刺激されたCD8+T細胞である。CTLは、刺激後に身体の組織を移行し、特定の抗原を有する標的細胞を見つけて死滅させる。抗原特異的CTLは増殖し、親細胞と同じ抗原特異性を有する娘細胞を生じる。活性化CTLの細胞分裂により、体内のこれらの抗原特異的CTLの総数が増加する。より重要なことには、液性免疫(形質細胞)及び細胞性免疫(CTL)の両方からの細胞の一部が、続いてメモリー形質細胞又はメモリーT細胞へと分化する。これらは長命の細胞であり、体内を巡回し、その後の同じ病原体による侵入に警戒する。メモリー細胞は、防御免疫又はワクチン接種の基礎となる。
【0005】
樹状細胞(DC)は、T細胞の活性化に必要とされるシグナルを出し、免疫系における強力なAPCである。APC上に存在するMHC I又はIIタンパク質又はペプチドが提示する抗原とT細胞受容体/CD3複合体との間の相互作用が、免疫応答の特異性に関与する。この相互作用は、T細胞活性化に必要とされるが、十分ではない。APC及びT細胞の受容体-リガンド対の間の相互作用は、エフェクターT細胞機能の誘導及びT細胞の完全増殖をもたらし得る共刺激シグナルを生成する。
【0006】
T細胞は、宿主MHCタンパク質とタンパク質抗原に由来する小ペプチドフラグメントとの間の物理的複合体を認識する抗原特異的受容体であるTCRを有する。ペプチドとMHC分子との間の相互作用は、高度に特異的である。MHC I分子は、CD8+T細胞にペプチド抗原を提示し、MHC II分子は、CD4+ヘルパーT細胞にペプチドを提示する。結合し得るこれらのペプチドの大きさは、8~10アミノ酸である。
【0007】
病原体関連抗原の免疫認識は、MHC I分子に結合しているペプチドと相互作用する特定のCD8+細胞傷害性Tリンパ球によって行われる。その相互作用のin vitro刺激は、APC、特にDCによるこれらの分子の提示によって行うことができる。「プライミング」又は「パルシング」は、樹状細胞が初めに抗原と接触し、次いでそれぞれの抗原で「プライム」又は「負荷」され、すなわち、そのMHC I分子上に抗原ペプチドを提示するin vitro工程である。これは、その後のCD4+又はCD8+T細胞への抗原提示、すなわちT細胞活性化に不可欠な工程である。APCによって活性化されたCD8+T細胞(本願の範囲では、上記活性化CD8+T細胞をCTLと称する)は、標的細胞、すなわち病原体感染細胞上の同じMHC/ペプチド複合体を認識し、それらを死滅させるように誘発され得る。
【0008】
したがって、免疫療法は、抗原を提示する細胞を認識し、死滅させるように被験体自身の免疫系を活性化する。ヒト疾患の治療のための成功戦略の開発には、病原性状態の制御に関与する免疫細胞の応答の理解が必要とされる。免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージ等の非特異的エフェクター細胞、γδT細胞のような抗原認識の多様性が限られたエフェクター細胞、並びに抗体産生B細胞及びαβT細胞等の抗原認識に膨大な多様性を有する高度に特異的なエフェクター細胞であり得る。
【0009】
エピトープの同定は多くの場合、既知のタンパク質データベースに基づき、病原体タンパク質から重複ペプチドライブラリーを導出し、試験することを含む。病原体関連エピトープを予測するアルゴリズムの開発及び改良、並びに自己免疫疾患又は感染症に対する感受性と関連するMHCタンパク質の好ましいペプチド結合特性の定義は、免疫原性の高いエピトープの選択にとって重要なツールであった。
【0010】
免疫応答を誘導し、それを長期間維持するための抗原の投与が課題であった。in vitroでは、例えば特許文献1に開示されているように、例えばMHC I分子に合成ペプチドを外部から(ex vivo、in vitroで)負荷して、CTL応答を誘発することができる。同様に、MHC II分子に合成ペプチドを外部から負荷して、形質細胞へのB細胞の分化及び抗体生成を誘発することもできる。
【0011】
現在のCovid-19パンデミックのため、SARS-CoV-2ウイルスに対するワクチンを見出すことが急務となっている。本発明は、樹状細胞上に提示されたSARS-CoV-2のそれぞれ1つのペプチドを3つの用量にて3つの異なる時点で順次投与することを含むワクチンを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1448229号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明は、最終的にメモリー細胞の形成、すなわちメモリー形質細胞及びセントラル/エフェクターメモリーT細胞の両方の形成をもたらす、SARS-CoV-2の特定のペプチドを認識するように免疫細胞を刺激することによるSARS-CoV-2に対するワクチンに関する。ワクチンは、単核細胞から生成された活性化自己樹状細胞(DC)の3つの集団を含有する。活性化のために、DCの各集団を異なるSARS-CoV-2ペプチドによってin vitroで「パルス」する。このため、このDCベースのワクチンは、3つの用量で投与され、用量1は、第1のSARS-CoV-2ペプチドで活性化された活性化自己DCを含み、1週目に投与される。用量2は、4つの異なるペプチドの群から選択された第2のSARS-CoV-2ペプチドで活性化された活性化自己DCを含み、2週目に投与される。用量3は、第3のSARS-CoV-2ペプチドで活性化された活性化自己DCを含み、3週目に投与される。
【0014】
本発明は、第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を含む医薬製品であって、第1、第2及び第3の組成物の各々が、単一のヒト又は動物被験体からの活性化自己DCの3つの異なる集団のうちの1つを含む、医薬製品に関する。3つの集団の各々の活性化自己DCは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はエンベロープタンパク質の異なるペプチドを提示する。
【0015】
第1の好ましい実施形態によると、第1の組成物は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質、好ましくはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第1のペプチドで活性化された活性化自己DCの第1の集団を含む。それぞれの医薬製品の第2の組成物は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質の第2のペプチドで活性化された活性化自己DCの第2の集団を含み、第2のペプチドは、第1のペプチドとは異なる。それぞれの医薬製品の第3の組成物は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質、好ましくはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第3のペプチドで活性化された活性化自己DCの第3の集団を含み、第3のペプチドは、第1のペプチド及び第2のペプチドとは異なる。
【0016】
本発明は、さらに、ワクチンとして使用され、好ましくはヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患に対するワクチンとして使用される、上述の医薬製品に関する。
【0017】
本発明は、さらに、SARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患の治療に使用され、好ましくはCOVID-19の治療に使用され、上記の3つの組成物が、ヒト又は動物被験体に互いに別々に、3つの異なる時点で順次投与される、医薬製品に関する。好ましくは、第1の組成物は、ヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの1週目、好ましくは1日目に、好ましくは注射によって投与され、第2の組成物は、ヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの2週目、好ましくは8日目に、好ましくは注射によって投与され、第3の組成物は、ヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの3週目、好ましくは15日目に、好ましくは注射によって投与される。有利には、各組成物は、ヒト又は動物被験体に部分的に静脈注射によって、及び部分的に皮下注射によって投与される。これは、注射すべきそれぞれの組成物を含む、投与すべきそれぞれの用量の一部が最初に静脈注射され、それぞれの組成物を含むそれぞれの用量の残りが皮下注射されると解釈すべきである。
【0018】
本発明は、上記の医薬製品を含む、ヒト又は動物被験体におけるワクチンとして使用されるパーツキットにさらに関する。
【0019】
上記パーツキットは、特に、SARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患に対するワクチンとして使用され、より好ましくはCOVID-19に対するワクチンとして使用されることが意図される。上記パーツキットは、第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を含み、第1、第2及び第3の組成物の各々が、単一のヒト又は動物被験体からの活性化自己DCの3つの異なる集団のうちの1つを含み、3つの集団の各々の活性化自己DCが、好ましくは1つ以上の細胞表面分子、好ましくはMHC複合体上に、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質の異なるペプチドを提示する。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施形態によるパーツキットは、第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物を含み、
- 第1の組成物は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第1のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第1の集団を含み、
- 第2の組成物は、第1のペプチドとは異なるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質の第2のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第2の集団を含み、
- 第3の組成物は、第1のペプチド及び第2のペプチドとは異なるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第3のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第3の集団を含む。
【0021】
好ましくは、第1の組成物は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)を細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第1の集団を含む。
【0022】
第2の組成物は、好ましくは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)及びSARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)からなる群から選択される1つのペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第2の集団を含む。
【0023】
第3の組成物は、好ましくは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)を細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第3の集団を含む。
【0024】
用量/組成物の投与順序を変更することもできる。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施形態によるパーツキットの3つの組成物は、ヒト又は動物被験体に互いに別々に、3つの異なる時点で順次投与される。好ましくは、3つの組成物は、ヒト又は動物被験体に注射によって、より好ましくは静脈注射と皮下注射との組合せによって投与される。好ましくは、各用量/組成物の50~90%が静脈注射され、それぞれの用量/組成物の残りの10~50%が皮下注射される。
【0026】
好ましくは、第1の組成物は、ヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの1週目、好ましくは1日目に投与され、第2の組成物は、同じヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの2週目、好ましくは8日目に投与され、第3の組成物は、同じヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの3週目、好ましくは15日目に投与される。
【0027】
本発明は、さらに、ヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患を治療又は予防する方法であって、以下の工程:
- SARS-CoV-2のタンパク質の第1のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第1の集団を含む第1の組成物を投与する工程、
- SARS-CoV-2のタンパク質の第2のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第2の集団を含む第2の組成物を投与する工程、
- SARS-CoV-2のタンパク質の第3のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第3の集団を含む第3の組成物を投与する工程
を含み、
- 第1、第2及び第3の組成物の各々が、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの3つの異なる集団のうちの1つを含み、活性化自己DCの3つの集団の各々において、活性化自己DCが、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はエンベロープタンパク質の異なるペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患を治療又は予防する方法に関する。
【0028】
ヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患を治療する好ましい方法では、
- 第1の組成物は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第1のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第1の集団を含み、好ましくは、第1の組成物は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)を細胞表面に提示する活性化自己DCの第1の集団を含み、
- 第2の組成物は、第1のペプチドとは異なるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はSARS-CoV-2のエンベロープタンパク質の第2のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第2の集団を含み、好ましくは第2の組成物は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)及びSARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)からなる群から選択される1つのペプチドを細胞表面に提示する活性化自己DCの第2の集団を含み、
- 第3の組成物は、第1のペプチド及び第2のペプチドとは異なるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の第3のペプチドを細胞表面に提示する、ヒト又は動物被験体の活性化自己DCの第3の集団を含み、好ましくは第3の組成物は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)を細胞表面に提示する活性化自己DCの第3の集団を含む。
【0029】
ヒト又は動物被験体においてSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患を治療するさらに好ましい方法によると、第1、第2及び第3の組成物が、ヒト又は動物被験体、すなわち同じヒト又は動物被験体に互いに別々に、3つの異なる時点で順次投与される。好ましくは、第1の組成物は、ヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの1週目、好ましくは1日目に投与され、第2の組成物は、同じヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの2週目、好ましくは8日目に投与され、第3の組成物は、同じヒト又は動物被験体にワクチン接種スケジュールの3週目、好ましくは15日目に投与される。
【0030】
本発明は、さらに、ウイルス抗原ペプチド、好ましくはSARS-CoV-2ペプチドを提示するヒト又は動物の自己樹状細胞(DC)の集団を得る方法に関する。好ましくは、それぞれのペプチドは、上記の医薬製品の調製又は上記のパーツキットの調製のために、以下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)及びSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)からなる群から選択され、以下の工程:
a.) ヒト又は動物被験体のPBMCから単離された単球を培養する工程であって、前記単球を、好ましくは密度勾配遠心分離、例えばBiocoll/Ficoll分離、又はNH4Clによる赤血球溶解及び磁気ビーズ単離(単球濃縮キット)によって単離する、培養する工程と、
b.) 工程a.)の付着単球をGM-CSF及びIL-4とともに、好ましくは10%熱不活性化FBS及び1%グルタミンを含むRPMI 1640培地中で、好ましくは6日間培養して、未成熟DCの集団を得る工程と、
c.) 工程b.)の未成熟DCを、好ましくは培養6日目に抗原ペプチドにより、好ましくは10μg/mlの最終濃度でパルスするとともに、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)又はSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)の場合、好ましくは4~24時間、好ましくはβ2ミクログロブリンの存在下にて、好ましくは3~10μg/mlのβ2ミクログロブリンの最終濃度でインキュベートして、ウイルス抗原ペプチドを提示する負荷樹状細胞の集団を得る工程と、好ましくは、
d.) 負荷DCをさらに使用するまで凍結保存する工程と、任意に工程c.)の後、好ましくは工程d.)の前に、
e.) ウイルス抗原ペプチドを提示する工程c.)の負荷DCをサイトカインカクテルとのインキュベーション、好ましくは37℃及び5%CO2で48時間のインキュベーションによってMHC Iまで成熟させる工程と
を含む、方法にさらに関する。
【0031】
工程c.)で得られた負荷DCがMHC I上にウイルス抗原ペプチドを提示する場合、任意の工程e.)において、成熟させる工程を、好ましくはIL-6、好ましくは10ng/mlの濃度のIL-6、IL-1β、好ましくは25ng/mlの濃度のIL-1β、TNF-α、好ましくは50ng/mlの濃度のTNF-α、及びPGE2、好ましくは10-6Mの濃度のPGE2を含むサイトカインカクテルによって行う。この場合、負荷DCが被験体の体内のT細胞を活性化して、CTLへと変化させ、これが感染細胞を死滅させる。
【0032】
工程c.)で得られた負荷DCがMHC II上にウイルス抗原ペプチドを提示する場合、任意の工程e.)において、成熟させる工程を、好ましくはGM-CSF、IL-4、TNF-α、sCD40L、IL-6、IL-21、IL-10及び抗ヒトIgMを含むサイトカインカクテルによって行う。この場合、好ましくは以下の濃度範囲:1~200ng/mlのGM-CSF、1~200ng/mlのIL-4、1~200ng/mlのTNF-α、1~100μg/mlのsCD40L、1~200ng/mlのIL-6、1~200ng/mlのIL-21、1~200ng/mlのIL-10、1~100μg/mlの抗ヒトIgMが用いられる。この場合、負荷DCがTヘルパー細胞を活性化し、これがB細胞を活性化して、抗体分泌形質細胞へと変化させる。
【0033】
好ましくは、負荷DCが本発明による医薬製品に含まれ、未成熟形態で、すなわち工程c.)の後、又は凍結保存が所望若しくは必要とされる場合には工程d.)の後に注射される。この場合、負荷DCの成熟は、ワクチン接種されたヒト又は動物被験体の体内で行われる。代替的には、負荷DCが本発明による医薬製品に含まれ、上記の工程e.)で説明される成熟プロセスを経た後に成熟形態で注射される。
【0034】
負荷樹状細胞を含む3つの組成物を含むワクチン又はパーツキットの製造において、ウイルス抗原ペプチドを提示するヒト又は動物の自己樹状細胞の集団を得る上記の方法、すなわち、負荷樹状細胞の集団を得る方法は、工程b.)において選択された個々のペプチドを用いて別個に行われ、これにより自己負荷樹状細胞の3つの別個の組成物が得られ、3つの組成物のそれぞれにおいて、負荷DCが異なるペプチドを提示する。
【0035】
したがって、本発明は、さらに、薬剤を製造する方法であって、以下の工程:
a.) ヒト又は動物被験体のPBMCから単離された単球を培養する工程であって、前記単球を、好ましくは密度勾配遠心分離(例えばBiocoll/Ficoll分離)、又はNH4Clによる赤血球溶解及び磁気ビーズ単離(単球濃縮キット)によって単離する、培養する工程と、
b.) 工程a.)の付着単球をGM-CSF及びIL-4とともに、好ましくは10%熱不活性化FBS及び1%グルタミンを含むRPMI 1640培地中で、好ましくは6日間培養して、未成熟樹状細胞の集団を得る工程と、
c.) 工程b.)の未成熟樹状細胞を、好ましくは培養6日目に、以下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)及びSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)からなる群から選択される第1の抗原ペプチドにより、好ましくは10μg/mlの最終濃度でパルスするとともに、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)又はSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)の場合、好ましくは4~24時間、好ましくはβ2ミクログロブリンの存在下にて、好ましくは3μg/mlのβ2ミクログロブリンの最終濃度でインキュベートして、ウイルス抗原ペプチドを提示する負荷樹状細胞の集団を得る工程と、
負荷樹状細胞の第2及び第3の集団を生成するために、工程a.)~c.)をいずれの場合にも異なるペプチドで2回繰り返す工程であって、工程b.)により、未成熟樹状細胞の第1、第2及び第3の集団をそれぞれ獲得し、工程c.)において、未成熟樹状細胞の第1、第2及び第3の集団をそれぞれ、第1の抗原ペプチドと、第2及び第3の抗原ペプチドであって、それぞれ第1の抗原ペプチドとは異なるとともに互いに異なり、第1、第2及び第3の抗原ペプチドはそれぞれ、以下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)及びSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)からなる群から選択される、第2及び第3の抗原ペプチドとにより、好ましくは10μg/mlの最終濃度でそれぞれパルスする、繰り返す工程と
を含む、方法に関する。
【0036】
工程c.)に続いて、いずれの場合にも、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)又はSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)の場合、好ましくは4~24時間のインキュベーションを行う。
【0037】
好ましくは、工程c.)及び必要に応じてその後のインキュベーションに続いて、
d.)工程c.)で得られた負荷樹状細胞をさらに使用するまで凍結保存する工程と、任意に工程d.)の前に、
e.)第1、第2又は第3のウイルス抗原ペプチドをそれぞれ提示する工程c.)の負荷樹状細胞をインキュベーション、好ましくは37℃及び5%CO2で48時間のインキュベーションによって、好ましくはIL-6、好ましくは10ng/mlの濃度のIL-6、IL-1β、好ましくは25ng/mlの濃度のIL-1β、TNF-α、好ましくは50ng/mlの濃度のTNF-α、及びPGE2、好ましくは10-6Mの濃度のPGE2を含むサイトカインカクテルで成熟させる工程と
を行う。
【0038】
本願の文脈における「ワクチン」又は「ワクチン治療」という用語は、特定のワクチン接種スケジュールに従った後に免疫応答、特にSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性疾患に対する免疫応答がヒト又は動物被験体の体内で活性化される予防的治療と解釈すべきである。本発明による医薬製品を含む本発明のワクチンによって、免疫応答の発生が誘発される。被験体が既に免疫応答を生じているが、ウイルスの排除には不十分な応答である場合、この応答を本発明のワクチンによって増大させることができる。
【0039】
「1/2/3週目」という用語は、それぞれ、好ましくは第1のペプチド(配列番号1)を負荷したDCを含むワクチンの用量1をワクチン接種スケジュールの1日目に投与することと解釈すべきである。用量1の約1週間後、好ましくはワクチン接種スケジュールの8日目に、4つのペプチド(配列番号2~5)の群から選択される第2のペプチドを負荷したDCを含む用量2を同じ被験体に投与し、用量2の約1週間後、好ましくはワクチン接種スケジュールの15日目に、第3のペプチド(配列番号6)を負荷したDCを含む用量3を投与する。しかしながら、投与日の間の時間は、個々の被験体の免疫系の状態に応じて変化させることができる。用量1~3の投与の順序も、例えば用量1-2-3、1-3-2、2-1-3、2-3-1、3-1-2又は3-2-1のように変更することができる。
【0040】
「プライム/パルス/負荷/活性化された樹状細胞」という用語は、細胞表面分子、すなわちMHC I/II上にそれぞれのペプチドを提示する樹状細胞と解釈すべきである。
【0041】
本発明の更なる実施形態は、従属請求項に記載される。
【0042】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明するが、図面は本発明の現在の好ましい実施形態を説明するためのものであり、これを限定するためのものではない。図面において、
図1~
図11は、組成物1、すなわち用量1の投与後38日目(D38)、76日目(D76)、120日目(D120)、180日目(D180)、260日目(D260)及び365日目(D365)の多数のワクチン接種者の分析の結果を示す。ノンパラメトリック検定には、対数値を用いた。
図1~
図2及び
図3~
図4は、それぞれ形質細胞及びメモリー形質細胞(非特異的液性免疫)の分析に関する。
図5は、血清IgGによって測定されるSARS-COV-2ペプチド特異的液性免疫に関する。
図6~
図11は、それぞれ分泌されたIFN-γ、IL-2及びTNF-αによって測定されるSARS-COV-2ペプチド特異的細胞性免疫に関する。
【0043】
図12は、非感染/ワクチン非接種者において分泌されたIFN-γ、IL-2及びTNF-αによって測定されるSARS-COV-2ペプチド特異的細胞性免疫に関する。
【0044】
図13は、ワクチン接種者及びワクチン非接種者におけるCD4及びCD8細胞の細胞内IFN-γによって測定されるSARS-COV-2ペプチド特異的細胞性及び液性免疫に関する。
【0045】
図14は、1人の感染者、本発明に従ってワクチン接種を受けた、それぞれ38日目及び180日目に決定した2人の個体、及び2人の非感染者に使用した3つのペプチドに特異的なCD8陽性細胞、3つのペプチドに特異的なメモリー形質細胞及び3つのペプチドに特異的なメモリーT細胞によって測定されるSARS-COV-2ペプチド特異的細胞性及び液性免疫に関する。
【0046】
図15は、ワクチン接種者及びワクチン非接種者の唾液中の3つのSARS-COV-2ペプチドに対するIgAレベルに関する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】D0と比較した、用量1の投与後のD38,D76,D120,D180,D260及びD365での形質細胞の差の中央値の統計的有意性を示す図である。比較はペアワイズ(ウィルコクソンの符号付きノンパラメトリック検定、p<0.05)とした。
【
図2】D0と比較した、用量1の投与後のD38及びD76での形質細胞の平均差の統計的有意性を示す図である。比較は多重(フリードマンのノンパラメトリック検定p=0.00089、テューキー-クレーマー基準、D38 p=0.0086;D76 p=0.0015)とした。
【
図3】0日目と比較した、用量1の投与後のそれぞれD38,D76,D120,D180,D260及びD365でのメモリー形質細胞の差の中央値の統計的有意性を示す図である。比較はペアワイズ(ウィルコクソンの符号付きノンパラメトリック検定、p<0.05)とした。
【
図4】D0と比較した、用量1の投与後のD38及びD76でのメモリー形質細胞の平均差の統計的有意性を示す図である。比較は多重(フリードマンのノンパラメトリック検定p=0.0045、テューキー-クレーマー基準、D38 p=0.0495;D76 p=0.0044)とした。
【
図5】用量1の投与後のD38,D76,D120,D180,D260及びD365でのDCのパルシングに使用した3つのペプチドに対する血清IgGレベルの増加の統計的有意性を示す表である(対応のあるt検定、p<0.05)。
【
図6】少なくとも1つのペプチド、同時に全てのペプチド、ペプチド1、ペプチド2及びペプチド6のそれぞれについての各時点でのIFN-γ分泌の増加を示す図である。
【
図7a】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIFN-γ分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図7b】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIFN-γ分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図7c】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIFN-γ分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図7d】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIFN-γ分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図7e】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIFN-γ分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図7f】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIFN-γ分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図8】少なくとも1つのペプチド、同時に全てのペプチド、ペプチド1、ペプチド2及びペプチド6のそれぞれについての各時点でのIL-2分泌の増加を示す図である。
【
図9a】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIL-2分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図9b】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIL-2分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図9c】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIL-2分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図9d】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIL-2分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図9e】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIL-2分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図9f】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のIL-2分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図10】少なくとも1つのペプチド、同時に全てのペプチド、ペプチド1、ペプチド2及びペプチド6のそれぞれについての各時点でのTNF-α分泌の増加を示す図である。
【
図11a】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のTNF-α分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図11b】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のTNF-α分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図11c】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のTNF-α分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図11d】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のTNF-α分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図11e】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のTNF-α分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図11f】フリードマンのノンパラメトリック検定(多重比較、テューキー-クレーマー基準、p<0.05)に基づく、非処理の細胞と各ペプチドで処理した細胞との間の同じ個体に由来する細胞のTNF-α分泌の統計的平均差のp値を示す図である。
【
図12a】IL-2分泌に関してDCのパルシングに使用した3つのペプチドに対する細胞媒介性免疫が統計的に増加した非感染/ワクチン非接種者の割合を示す表である。
【
図12b】IFN-γ分泌に関してDCのパルシングに使用した3つのペプチドに対する細胞媒介性免疫が統計的に増加した非感染/ワクチン非接種者のパーセンテージを示す表である。
【
図12c】TNF-α分泌に関してDCのパルシングに使用した3つのペプチドに対する細胞媒介性免疫が統計的に増加した非感染/ワクチン非接種者のパーセンテージを示す表である。
【
図13】ワクチン接種者とワクチン非接種者との間のCD4陽性細胞の細胞内IFN-γ及びCD8陽性細胞の細胞内IFN-γの差を示す図である。
【
図14】パルシングに使用したSARS-COV-2ペプチドに対する免疫の特異性を示す表である。使用した3つのペプチドに特異的なCD8陽性細胞、使用した3つのペプチドに特異的なメモリー形質細胞及び使用した3つのペプチドに特異的なメモリーT細胞を1人の感染者、本発明に従ってワクチン接種を受けた、それぞれ38日目及び180日目に決定した2人の個体、及び2人の非感染者において決定した。
【
図15a】ワクチン接種者及びワクチン非接種者の唾液において決定されたSARS-COV-2特異的IgAの差を示す図である。
【
図15b】ワクチン接種者及びワクチン非接種者の唾液において決定されたSARS-COV-2特異的IgAの差を示す図である。
【
図15c】ワクチン接種者及びワクチン非接種者の唾液において決定されたSARS-COV-2特異的IgAの差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
ペプチドは、免疫系を活性化する能力に応じて選択した。ペプチドの配列設計のために、多数の一般公開されているT細胞エピトープ予測ツールを使用した。これらのツールは、Sanchez-Trincado et al, 2017 (J.L. Sanchez-Trincado, M. Gomez-Perosanz, P. A. Reche, “Fundamentals and Methods for T- and B-Cell Epitope Prediction”, Journal of Immunology Research, vol. 2017, Article ID 2680160)に従って選択した。
【0049】
1週目に投与すべきSARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)を含む第1の組成物を含むワクチンの用量1、及び3週目に投与すべきSARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)を含む第3の組成物を含むワクチンの用量3は、細胞性、すなわちCTL媒介性免疫を活性化するように設計した。SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)及びSARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)からなる群から選択される1つのペプチドを含む第2の組成物を含むワクチンの用量2は、液性、すなわち抗体媒介性免疫を活性化するように設計した。用量2の4つのペプチドは全て、免疫原性決定に用いられるアルゴリズムによってMHC IIを介した免疫の活性化に免疫原性であることが見出された。
【0050】
樹状細胞の生成
実施例1:
初期サンプルは、ヒト被験体の50mlの末梢血からなるものであった。40mlの全血をNH4Clで溶解した。次いで、細胞をPBSで洗浄した。上清を捨て、細胞ペレットを、単球の選択に特異的な抗体とコンジュゲートした磁気ビーズを含む、Monocyte Enrichment Set(558454、BD)の100μlのMonocyte Enrichment Cocktailに再懸濁した。細胞を15分間インキュベートした。インキュベーション期間後に細胞ペレットを5mlのPBSに再懸濁し、5分間、200×gの遠心分離によって洗浄した。なお、「×g」は重力の倍数(相対遠心力(RCF)の単位)を表す。上清を捨て、細胞ペレットを同じMonocyte Enrichment Setの100μlのStreptavidin Particles Plusとともにインキュベートした。次いで、細胞ペレットを30分間インキュベートした。インキュベーション期間後に1mlのPBSを添加し、チューブをエッペンドルフチューブ用の磁気分離ラックに10分間置いた。インキュベーション後に上清、すなわち単核細胞を含有する陰性画分を回収し、10mlのPBSに添加し、200×gで5分間の遠心分離によって洗浄した。上清を捨て、10%FBS、200mM L-グルタミン、GM-CSF及びIL-4、好ましくは1~200ng/mlのGM-CSF及び1~200ng/mlのIL-4を添加した15mlのRPMIに細胞ペレットを再懸濁した。細胞を含有する15mlの培地を3つのT-25培養フラスコ(別個のペプチドのうちの1つを用いた各用量の生成/活性化につき1つ)に37℃、5%CO2で6日間分けておいた。培養期間の途中で培地を補充した。
【0051】
実施例2:
実施例1の樹状細胞の生成の代わりに、採取したばかりの血液サンプルから末梢血単核細胞(PBMC)をEDTAの入ったバキュテナーに単離した。密度勾配遠心分離(例えばBiocoll又はFicoll分離)を用いてPBMCを単離した。10%FBS及び200mM L-グルタミンを添加したRPMIに細胞ペレットを再懸濁し、単球が付着するまで2時間放置した。残りの細胞を捨て、付着した細胞を10%FBS、200mM L-グルタミン、GM-CSF及びIL-4、好ましくは1~200ng/mlのGM-CSF及び好ましくは1~200ng/mlのIL-4を添加した10mlの新鮮RPMI(例えばRPMI 1640)の存在下で培養した。
【0052】
実施例1と同様に、細胞を含有する15mlの培地を3つのT-25培養フラスコ(別個のペプチドのうちの1つを用いた各用量の生成/活性化につき1つ)に37℃、5%CO2で6日間分けておいた。培養期間の途中で培地を補充した。
【0053】
DCのパルシング
6日後に、上記実施例1又は実施例2に記載の方法の1つに従ってDCを単離し、培養した後、以下のペプチドのうちの1つを10μg/ml添加して4~24時間パルスした。
【0054】
ペプチド1:SARS-CoV-2スパイクタンパク質(84~92)LPFNDGVYFペプチド(配列番号1)
ペプチド2:SARS-CoV-2スパイクタンパク質(326~340)IVRFPNITNLCPFGEペプチド(配列番号2)
ペプチド3:SARS-CoV-2スパイクタンパク質(718~726)FTISVTTEIペプチド(配列番号3)
ペプチド4:SARS-CoV-2スパイクタンパク質(449~463)YNYLYRLFRKSNLKP(配列番号4)
ペプチド5:SARS-CoV-2エンベロープタンパク質(2~10)YSFVSEETGペプチド(配列番号5)
ペプチド6:SARS-CoV-2スパイクタンパク質(1185~1200)RLNEVAKNLNESLIDLペプチド(配列番号6)
【0055】
ペプチド1は、ワクチンの用量1の調製におけるDCのパルシングに使用されことになっている。ペプチド2は、ワクチンの用量2の調製におけるDCのパルシングに選択し、ペプチド6は、ワクチンの用量3の調製におけるDCのパルシングに使用した。
【0056】
ペプチド1及び6の場合、いずれの場合も1~10μg/mlのb2ミクログロブリンをパルシング工程のためにDCに添加した。これは、ペプチド1及び6が、それぞれDCの細胞表面上のMHC I複合体によって提示され、T細胞の活性化(細胞性免疫)をもたらすという事実のためである。ペプチド2,3,4及び5は、DCのMHC II複合体によって提示され、B細胞の活性化(液性免疫)をもたらす。ミクログロブリンは、MHC I複合体によって提示されるペプチドにのみ添加した。
【0057】
パルスされたDCは未成熟のままであり、すなわち、成熟は注射後にin vivoで起こる。
【0058】
パルシング後に、各フラスコからDCを回収し、さらに使用するまで凍結保存した。
【0059】
ワクチンの用量1/2/3の注射
使用、すなわち注射のために、選択された第1、第2又は第3の用量のDCを融解し、PBSで洗浄した。細胞ペレットを注射前に6mlの0.45%NaClに再懸濁した。このため、各用量は6mlの容量を有していた。この容量のうち、いずれの場合も、各用量につき1mlのそれぞれの組成物をヒト被験体(個体1~10)に皮下注射し、組成物の注射容量の残りの5mlを続いて同じそれぞれの被験体に静脈注射した。
【0060】
活性化自己DCの集団を含む1つの組成物をそれぞれ含むワクチンの3つ全ての用量を、いずれの場合も投与用量の間に約1週間空けて同じヒト被験体に注射した。
【0061】
フォローアップ
初回注射の38日目、76日目、180日目、260日目及び364日目(約1ヶ月後、2~3ヶ月後、6ヶ月後、8.5ヶ月後及び12ヶ月後)にフォローアップ血液サンプルを採取し、免疫を評価した。指定の時点で採取した血液サンプルの分析により、ワクチン接種後の免疫状態に関する情報が得られる。実施した試験は以下を含む。
【0062】
1.) 5mlの全血をRBC溶解のためにNH4Clで処理した。細胞ペレットを10mlのPBSで5分間、200×gで洗浄した。細胞ペレットを1.5mlのPBSに再懸濁し、100μlの懸濁液を11本のフローサイトメトリーチューブのそれぞれに添加した。細胞を以下の抗体:CD19、CD138、CD27、IgG、IgM、CD62L、CD197、CD45ROで染色した。上記のチューブの分析から未成熟B細胞、形質細胞、メモリー形質細胞、ナイーブT細胞、エフェクターT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、IgG陽性細胞及びIgM陽性細胞のパーセンテージを決定することができる。
【0063】
2.) 5mlの全血をRBC溶解のためにNH4Clで処理した。細胞ペレットを10mlのPBSで5分間、200×gで洗浄した。10%FBSを添加した8mlのRPMIに細胞ペレットを再懸濁した。細胞含有培地を、それぞれ2mlの細胞懸濁液が入った4つのウェルに添加した。ウェル1には何も添加しなかった。ウェル2には10μg/mlのペプチド用量1を添加した。ウェル3には10μg/mlのペプチド用量2を添加した。ウェル4には10μg/mlのペプチド用量3を添加した。細胞をインキュベーター内で一晩放置した。翌日、上清を回収し、ELISAを用いてIL-2、IFN-γ及びTNF-αを決定した。簡潔に述べると、96ウェルプレートを一次抗体(IL-2 eBioscienceの14-7029-81、TNF-a Invitrogenの14-7348-85、IFN-g InvitrogenのBMS1018)で被覆し、一晩放置して付着させた。翌日、非特異的結合部位をブロッキング液でブロックした後、4つのウェルの上清を添加し、一晩放置した。翌日、ウェルを洗浄し、二次ビオチン化抗体を添加した(IL-2 eBioscienceの13-7028-85、TNF-a eBioscienceの13-7349-85、IFN-g Mabtechの3420-6-250)。1時間のインキュベーション後にウェルをPBSで5回洗浄し、100μlのTMBを10分間又は発色するまで添加した。100μlの停止バッファーの添加によって反応を停止させた。吸光度は、uQuantマイクロプレート分光光度計を用いて450nmで決定した。
【0064】
3.) 5mlの全血を血清分離のために遠心分離した。血清を回収し、-20℃で保管した。さらに、単離した血清から、DCのパルシングに使用したペプチドに特異的なIgG及びIgMの存在を決定した。これは、2μg/mlのペプチドを100μl/ウェル用いるペプチドベースELISAを用いて達成した。24時間のインキュベーション後にウェルをPBSで5回洗浄し、比較のために、それぞれの現在のフォローアップ及び以前の日付のフォローアップからの100μlの血清とともにインキュベートした(例えばD0対D38、D38対D76、D76対D180、D180対D260、D260対D365)。データを統計的結果のために正規化した。24時間後にウェルをPBSで5回洗浄し、HRP又は抗ヒトIgM抗体とコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体とともにインキュベートした。1時間のインキュベーション後にウェルをPBSで5回洗浄し、100μlのTMBを10分間又は発色するまで添加した。100μlの停止バッファーの添加によって反応を停止させた。吸光度は、uQuantマイクロプレート分光光度計を用いて450nmで決定した。
【0065】
4.) 13人のワクチン接種者及び11人のワクチン非接種者(対照)からの5mlの全血をRBC溶解のためにNH4Clで処理した。細胞ペレットを10mlのPBSで5分間、200×gで洗浄した。細胞ペレットを3本のチューブに分けた。チューブ1は、ペプチドを添加せずにインキュベートし、チューブ2及び3は、10μg/mlの3つのペプチド1、2及び6の全ての混合物とともにインキュベートした。2時間のインキュベーション後にチューブをPBSで洗浄し、細胞外抗体を添加した。より具体的には、チューブ1には抗体を添加しなかった。チューブ2にはCD3/CD4抗体(Beckman CoulterのA07733)を添加した。チューブ3にはCD3/CD8抗体(Beckman CoulterのA07734)を添加した。細胞を抗体とともに30分間インキュベートした後、PBSで洗浄した。次いで、細胞を固定し、透過処理した。IFN-γ-ビオチン抗体(Mabtechの3420-6-250)を添加した。30分後に細胞をPBSで洗浄し、ストレプトアビジン-PE/Cy5(Biolegend、405205)を30分間添加した。次いで、細胞を再び洗浄し、細胞内IFN-γ決定を含むCD4及びCD8細胞のフローサイトメトリー分析のためにPBSに再懸濁した。
【0066】
5.) 3人のワクチン接種者及び3人のワクチン非接種者から唾液を採取し、3つのペプチドに対するIgAの存在について試験した。これは、2μg/mlのペプチドを100μl/ウェル用いるペプチドベースELISAを用いて達成した。24時間のインキュベーション後にウェルをPBSで5回洗浄し、100μlの唾液とともにインキュベートした。24時間後にウェルをPBSで5回洗浄し、抗ヒトIgA-HRPとともにインキュベートした。1時間のインキュベーション後にウェルをPBSで5回洗浄し、100μlのTMBを10分間又は発色するまで添加した。100μlの停止バッファーの添加によって反応を停止させた。吸光度は、uQuantマイクロプレート分光光度計を用いて450nmで決定した。
【0067】
6.) 1人のSARS-COV-2感染者、2人のワクチン接種者(それぞれ第1の用量の投与後、1人は38日目に決定され、もう1人は180日目に決定された)、及び2人のワクチン非接種の非感染「健常」ボランティアからの全血を、テキサスレッド蛍光色素とコンジュゲートした3ペプチドミックスとともに2時間インキュベートした。次いで、コンジュゲートしたペプチドを特異的に認識するCTL、形質メモリー及びメモリーT細胞をフローサイトメトリーによって決定した。より具体的には、細胞をペプチド陽性CTLの検出についてはCD3/CD8(Beckman CoulterのA07734)、又はペプチド陽性メモリー形質細胞についてはCD19(eBioscienceの11-0199-42)及びCD27(Biolegendの302838)、ペプチド陽性メモリーT細胞についてはCD45RO(Biolegendの30420)とともにインキュベートした。
【0068】
フォローアップの分析:
図1に上記の試験1.)の結果を示し、形質細胞はD0と比較して全ての時点で有意に増加している。より具体的には、D38では、61/83人で形質細胞が増加していた(73.49%の増加)。D76では、39/58人で形質細胞が増加していた(67.24%の増加)。D120では、28/40人で形質細胞が増加していた(70.00%の増加)。D180では、18/26人で形質細胞が増加していた(69.00%の増加)。D260では、8/8人で形質細胞が増加していた(100%の増加)。D365では、6/6人で形質細胞が増加していた(100%の増加)。結果から非特異的液性免疫の増加が示される。
【0069】
製品が投与された集団全体のうち、48人でD38及びD76についての分析が完了した。これらの個体では、D38及びD76の両方の平均差を考慮に入れた多重比較を行った。D0と比較してD38及びD76で形質細胞が統計的に増加していることが見出された(
図2)。上述の試験1.)のこれらの結果から非特異的液性免疫の増加が示される。
【0070】
試験1.)の更なる結果を反映する
図3では、用量1投与後のD38,D76及びD120でメモリー形質細胞が有意に増加していることが分かる。より具体的には、D38では、60/83人でメモリー形質細胞が増加していた(72.29%の増加)。D76では、39/58人でメモリー形質細胞が増加していた(67.24%の増加)。D120では、29/40人でメモリー形質細胞が増加していた(72.5%の増加)。結果からD120までの非特異的液性免疫の増加が示される。D180,D260及びD365での増加は、統計的に有意ではなく、時間とともに消失する免疫の指標である。
【0071】
製品が投与された集団全体のうち、48人でD38及びD76についての分析が完了した。これらの個体では、D38及びD76の両方を考慮に入れた多重比較を行った。D0と比較してD38及びD76でメモリー形質細胞が統計的に増加していることが見出された(
図4)。結果から非特異的液性免疫の増加が示される。
【0072】
上記の試験3.)の結果を反映する
図5に示されるように、D38及びD76でSARS-COV-2特異的液性免疫が増加した。より具体的には、3つ全てのペプチドについて、IgGレベルはD0と比較してD38で有意に増加し、ペプチド1及び6については、0日目と比較して76日目で統計的増加が認められた。結果からD76までのSARS-COV-2特異的液性免疫の増加が示される。D120,D180,D260及びD365での増加は、統計的に有意ではなかった。
【0073】
図6~
図11は、試験2.)の更なる結果を反映している。
図6は、使用したペプチドでPBMCをチャレンジした後にIFN-γ分泌の増加を示した個体のパーセントを示す。これはSARS-COV-2特異的細胞性免疫の測定である。結果は少なくとも1つのペプチド(2列目)、全てのペプチド(3列目)、及び3つのペプチドのうちのそれぞれ1つ(4列目のペプチド1、5列目のペプチド2、6列目のペプチド6)に対するIFN-γ分泌のパーセンテージを示す。
【0074】
図7a~
図7fから分かるように、D38でのペプチド1、D120を除く全ての時点でのペプチド2、及びD365を除く全ての時点でのペプチド6についてIFN-γ分泌の有意な増加が観察された。結果からSARS-COV-2特異的細胞性免疫の増加が示される。
【0075】
図8は、使用したペプチドでPBMCをチャレンジした後にIL-2分泌が増加した個体のパーセンテージを示す。これはSARS-COV-2特異的細胞性免疫の測定である。結果は少なくとも1つのペプチド(2列目)、全てのペプチド(3列目)、及び3つのペプチドのうちのそれぞれ1つ(4列目のペプチド1、5列目のペプチド2、6列目のペプチド6)に対するIL-2分泌のパーセンテージを示す。
【0076】
図9a~
図9fから分かるように、D38,D76及びD120でのペプチド1、D38,D76,D120,D180でのペプチド2、並びにD365を除く全ての時点でのペプチド6についてIL-2分泌の有意な増加が観察された。これらの結果からSARS-COV-2特異的細胞性免疫の増加が示される。
【0077】
図10は、使用したペプチドでPBMCをチャレンジした後にTNF-α分泌が増加した個体のパーセンテージを示す。これはSARS-COV-2特異的細胞性免疫の測定である。結果は、少なくとも1つのペプチド(2列目)、全てのペプチド(3列目)、及び3つのペプチドのうちのそれぞれ1つ(4列目のペプチド1、5列目のペプチド2、6列目のペプチド6)に対するTNF-α分泌のパーセンテージを示す。
【0078】
図11a~
図11fから分かるように、D180でのペプチド1、D38,D76,D120,D180でのペプチド2、及びD365を除く全ての時点でのペプチド6についてTNF-α分泌の有意な増加が観察された。これらの結果からSARS-COV-2特異的細胞性免疫の増加が示される。
【0079】
図12に示す表は、SARS-COV-2に対する細胞媒介性免疫の決定が、それぞれIL-2、IFN-ガンマ及びTNF-アルファの測定によって、どの程度特異的であるかを示している。
図12aに示す表は、3つのペプチド1,2及び6がいずれも、IL-2決定によると非感染ボランティアにおいて有意でない細胞媒介性免疫を引き起こさなかったことを示している。
図12bに示す表は、ペプチド1及び2が、IFN-γ決定によると非感染ボランティアにおいて有意でない細胞媒介性免疫を引き起こさなかったことを示している。ペプチド6は、非感染者においてIFN-γ分泌を誘導した。
図12cに示す表は、3つのペプチド1,2及び6がいずれも、TNF-α決定によると非感染ボランティアにおいて有意でない細胞媒介性免疫を引き起こさなかったことを示している。
【0080】
SARS-COV-2特異的細胞性及び液性免疫をフローサイトメトリーによる細胞内IFN-γの決定によって測定した。10人のワクチン接種者及び9人のワクチン非接種者からのPBMCを、パルシングに使用した3つのペプチドとともにインキュベートした。次いで、CD4及びCD8細胞の両方で細胞内IFN-γを染色し、決定した。上述の試験4.)の結果を反映する
図13に示されるように、ワクチン接種者では、CD4及びCD8細胞の両方でIFN-γのレベルが増加し、3つのペプチドに対する細胞性及び液性の両方の活性化が示されることが見出された。
【0081】
上記の試験6.)の結果を反映する
図14に示す表は、3つのペプチドに対して活性化したCD8陽性細胞、メモリー形質細胞及びT細胞の決定による、IST-12製剤に使用される3つのペプチドに対する免疫応答の特異性を示している。3つのペプチドのミックスにテキサスレッド蛍光色素をコンジュゲートした。1人のSARS-COV-2感染者、2人のワクチン接種者(それぞれ第1の用量の投与後、1人は38日目に決定され、もう1人は180日目に決定された)、及び2人のワクチン非接種の非感染「健常」ボランティアからの全血を蛍光ペプチドミックスとともに2時間インキュベートした。次いで、コンジュゲートしたペプチドを特異的に認識するCTL、形質メモリー及びメモリーT細胞を決定した。ワクチン接種者では、使用した3つのペプチドに特異的な形質メモリー細胞のレベルが増加していることが見出された。感染者は、液性メモリー免疫を獲得するのに十分な時間がなかった。2人のワクチン非接種の非感染ボランティアでは、使用した3つのペプチドに特異的な形質メモリー細胞のレベルが非常に低かった。しかしながら、感染者及び2人のワクチン接種者では、2人のワクチン非接種の非感染ボランティアと比較して、使用した3つのペプチドに特異的なメモリーT細胞のレベルが増加していた。
【0082】
上記の試験5.)の結果を反映する
図15a~
図15cの箱ひげ図に示されるように、ワクチン接種者では、ワクチン非接種者と比較して唾液中の使用した3つのペプチドに特異的なIgAのレベルが統計的に有意に増加していた。
【配列表】
【国際調査報告】