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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】水素化方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/52 20060101AFI20231018BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20231018BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C01B3/52
C01B3/38
B01J23/80 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511811
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 GB2021052374
(87)【国際公開番号】W WO2022074356
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】2016050.3
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ツイ、ヨウシン
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア、モニカ
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ポーリーン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】マクラウド、ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ミストリー、ニーティシャ
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン、マイケル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロロフ-スタンドリング、シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】スミス、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スタネス、ヘレン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】スタンウェイ、メラニー アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ウン ディン、カーミラ
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140AB03
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB32
4G140EB37
4G140FA02
4G140FB04
4G140FC04
4G140FE01
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA06A
4G169BA06B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC38A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC54A
4G169BC62A
4G169BC67A
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CB81
4G169CC26
4G169DA05
4G169FC08
(57)【要約】

水素の製造方法が記載され、本方法は、以下の工程、(a)合成ガス生成ユニットにおいて、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及び蒸気を含む合成ガスを生成すること、(b)水性ガスシフトユニット内の1つ以上の水性ガスシフト段階に合成ガスを供することによって、合成ガスの水素含有量を増加させ、一酸化炭素含有量を減少させ、水素富化ガスを提供すること、(c)水素富化ガスを冷却し、そこから凝縮水を分離すること、(d)得られた脱水された水素富化ガスを二酸化炭素分離ユニットに通して二酸化炭素ガス流及び水素ガス流を提供することを含み、工程(a)からの合成ガスは、一酸化炭素含有量の調節なしに、断熱的に又は冷却しながら、200~280℃の範囲の入口温度及び360℃未満の出口温度で操作され、酸化亜鉛、アルミナ及びシリカと組み合わされた、CuOとして表される、30~70重量%の銅を含む触媒を含有する水性ガスシフト反応器に供給され、当該触媒は、SiO2として表される、0.1~5.0重量%の範囲であるシリカ含有量を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の製造方法であって、以下の工程、(a)合成ガス生成ユニットにおいて、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及び蒸気を含む合成ガスを生成することと、(b)水性ガスシフトユニット内の1つ以上の水性ガスシフト段階に前記合成ガスを供することによって、前記合成ガスの水素含有量を増加させ、一酸化炭素含有量を減少させ、水素富化ガスを提供することと、(c)前記水素富化ガスを冷却し、そこから凝縮水を分離することと、(d)前記得られた脱水された水素富化ガスを二酸化炭素分離ユニットに通して二酸化炭素ガス流及び水素ガス流を提供することと、を含み、工程(a)からの前記合成ガスが、一酸化炭素含有量の調節なしに、断熱的に又は冷却しながら、200~280℃の範囲の入口温度及び360℃未満の出口温度で操作され、酸化亜鉛、アルミナ及びシリカと組み合わされた、CuOとして表される、30~70重量%の銅を含む触媒を含有する水性ガスシフト反応器に供給され、前記触媒が、SiOとして表される、0.1~5.0重量%の範囲であるシリカ含有量を有する、方法。
【請求項2】
前記合成ガス生成が、断熱予備改質、燃焼又はガス加熱改質器における接触蒸気改質、自己熱改質、及び接触部分酸化から選択される1つ以上の工程を含み、これらの工程が、天然ガス、ナフサ又は製油所オフガスなどのガス状又は気化炭化水素に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成ガス生成が、石炭、バイオマス又は都市廃棄物などの炭素質原料の非触媒部分酸化又はガス化を含み、任意選択的に、その後に接触蒸気改質又は自己熱改質の1つ以上の段階が続く、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記合成ガス生成ユニットが、上流の断熱予備改質器又は燃焼蒸気改質器若しくはガス加熱改質器から得られた改質合成ガスが供給される自己熱改質器を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記水性ガスシフト反応器に供給される前記合成ガスの水素含有量が、湿潤ガス基準で30~50体積%の範囲であり、前記水性ガスシフト反応器に供給される前記合成ガスの一酸化炭素含有量が、湿潤ガス基準で6~20体積%の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性ガスシフトユニットが、中温シフト又は等温シフト段階、好ましくは等温シフト段階、及び任意選択的に、下流の低温シフト段階を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、CuOとして表される、45~65重量%の範囲の銅含有量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、ZnOとして表される、20~50重量%、好ましくは20~40重量%の範囲の亜鉛含有量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、Alとして表される、5~40重量%、好ましくは8~25重量%の範囲のアルミニウム含有量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、0.1~5重量%の範囲の量で存在する、Mg、Co、Mn、V、Ti、Zr又は希土類の酸化物から選択される1つ以上の促進剤金属酸化物を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、SiOとして表される、0.1~2.0重量%、好ましくは0.2~1.0重量%の範囲のシリカ含有量を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記二酸化炭素除去段階が、物理的洗浄システム又は反応性洗浄システム、好ましくは反応性洗浄システム、特にアミン洗浄システムを用いて行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記二酸化炭素除去ユニット流の1つ以上が、前記水素富化ガス流と熱交換して加熱される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記水素ガス流を精製ユニットに通して、精製された水素ガスを提供することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記精製ユニットが、圧力スイング吸着ユニット又は温度スイング吸着ユニット、好ましくは圧力スイング吸着ユニットである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の製造方法、特に、銅触媒を用いて行われる水性ガスシフト段階を含む水素の製造方法に関する。
【0002】
水素の製造方法は公知であり、典型的には、水素、二酸化炭素、一酸化炭素及び蒸気を含む合成ガスを製造するための天然ガスの接触蒸気改質、続いて合成ガスの水素含有量を増加させ、一酸化炭素を二酸化炭素に変換するための接触水性ガスシフト、続いて吸収による二酸化炭素の除去を含む。水性ガスシフト反応は発熱性であり、適切に低い一酸化炭素出口濃度を達成するために、従来、2段階で行われ、第1に、一酸化炭素含有量を低減する鉄触媒高温シフト触媒を使用し、冷却後は、銅触媒を使用する後続の低温シフト段階である。
【0003】
方法には、より高い効率への推進力があり、中温シフト条件下で断熱的に、又は冷却しながら、より高い入口温度で銅触媒を使用して水性ガスシフト段階を行う試みがなされてきた。しかしながら、銅触媒は熱劣化を受けやすく、より高い入口温度及びより高い一酸化炭素含有量の供給原料で使用される銅触媒の寿命は比較的短く、水素化方法をより頻繁に停止することが必要となる。本出願人らは、銅触媒をシリカで改質することにより、より厳しい条件下で銅触媒の寿命を改善することができ、その結果、水素化方法の効率が向上することを発見した。
【0004】
特開2000126597号は、20~65%の酸化銅、10~70重量%の酸化亜鉛及び0.5~5重量%の酸化ケイ素を含む低温シフトに適した触媒を開示しており、これは長期安定性を有すると主張されている。しかしながら、水性ガスシフト段階が、合成ガスの一酸化炭素含有量の事前調整なしに断熱又は冷却中温シフト条件下で操作される水素化方法は開示されていない。
【0005】
したがって、本発明は、以下の工程、(a)合成ガス生成ユニットにおいて、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及び蒸気を含む合成ガスを生成すること、(b)水性ガスシフトユニット内の1つ以上の水性ガスシフト段階に合成ガスを供することによって、合成ガスの水素含有量を増加させ、一酸化炭素含有量を減少させ、水素富化ガスを提供すること、(c)水素富化ガスを冷却し、そこから凝縮水を分離すること、(d)得られた脱水された水素富化ガスを二酸化炭素分離ユニットに通して二酸化炭素ガス流及び水素ガス流を提供することを含む、水素の製造方法を提供し、工程(a)からの合成ガスは、一酸化炭素含有量の調節なしに、断熱的に又は冷却しながら、200~280℃の範囲の入口温度及び360℃未満の出口温度で操作され、酸化亜鉛、アルミナ及びシリカと組み合わされた、CuOとして表される、30~70重量%の銅を含む触媒を含有する水性ガスシフト反応器に供給され、当該触媒は、SiOとして表される、0.1~5.0重量%の範囲であるシリカ含有量を有する。
【0006】
工程(a)で供給される水素、一酸化炭素、二酸化炭素及び蒸気を含む合成ガスは、任意の適切な手段によって生成することができる。合成ガス生成は、断熱予備改質、燃焼又はガス加熱改質器における接触蒸気改質、自己熱改質、及び接触部分酸化から選択される1つ以上の工程を含むことができ、これらの工程は、天然ガス、ナフサ又は製油所オフガスなどのガス状又は気化炭化水素に適用される。あるいは、合成ガス生成は、石炭、バイオマス又は都市廃棄物などの炭素質原料の非触媒部分酸化又はガス化を含み、任意選択的に、その後に接触蒸気改質又は自己熱改質の1つ以上の段階が続くことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、合成ガス生成ユニットは、上流の断熱予備改質器又は燃焼蒸気改質器若しくはガス加熱改質器から得られた改質合成ガスが供給される自己熱改質器を含む。
【0008】
断熱予備改質では、炭化水素と蒸気との混合物を、典型的には1~4の範囲の蒸気対炭素比で、300~620℃の範囲の入口温度及び10~80bar absの範囲の圧力でペレット状のNi含有予備改質触媒の固定床に通す。そのような触媒は、典型的には、アルミナ及び促進剤化合物、例えばシリカ及びマグネシアと共に、40重量%以上のNi(NiOとして表される)を含む。
【0009】
燃焼蒸気改質器及びガス加熱改質器では、炭化水素と蒸気の混合物が複数の外部加熱触媒充填チューブに供給される。燃焼式又はガスヒーター式改質装置で使用される改質触媒は、典型的には、αアルミナ、アルミン酸マグネシウム又はアルミン酸カルシウムなどの成形された耐火性酸化物上に担持された5~30重量%の範囲のレベルのニッケルを含む。あるいは、形成された金属又はセラミック構造上にコーティング層としてニッケル又は貴金属触媒が設けられた構造化触媒が使用されてもよく、又は触媒がチューブの中に配置された複数の容器中に設けられてもよい。蒸気改質反応は、350℃を超える温度で蒸気改質触媒上のチューブで行われ、典型的には、チューブを出るプロセス流体は、650~950℃の範囲の温度である。チューブは、900~1300℃の範囲の温度を有し得るチューブの外側を流れる熱交換媒体によって加熱される。燃焼改質装置では、この熱は燃料ガスと空気との燃焼によって供給される。ガス加熱改質器では、熱は煙道ガスによって提供されてもよいが、好ましくは自己熱改質合成ガスである。チューブ内の圧力は、10~80bar absの範囲であってもよい。
【0010】
自己熱改質器では、供給ガスは、通常、改質器の頂部近くに取り付けられたバーナー装置において部分的に燃焼される。次いで、部分的に燃焼したガスを、バーナー装置の下に配置された蒸気改質触媒の床に断熱的に通過させて、ガス組成を平衡に近づける。吸熱性蒸気改質反応のための熱は、高温の部分的に燃焼した改質ガスによって供給される。部分的に燃焼された改質ガスが蒸気改質触媒に接触すると、吸熱性蒸気改質反応によって900~1100℃の範囲の温度に冷却される。二次改質器内の蒸気改質触媒床は、典型的には、成形された耐火性酸化物上に担持された5~30重量%の範囲のレベルのニッケルを含むが、最上部の触媒層がジルコニア担体上にPt又はRhなどの貴金属を含む層状床を使用することもできる。このような蒸気改質装置及び触媒は市販されている。
【0011】
好ましい方法では、合成ガス生成段階は、炭化水素、特に天然ガスをガス加熱改質器内で改質して、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及び蒸気を含むガス流を生成する段階と、改質されたガスを自己熱改質器内で酸素を用いて更に改質して、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及び蒸気を含む合成ガス流を提供する自己熱改質段階とを含む。
【0012】
合成ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気を含み、少量の未反応メタン、及び窒素及びアルゴンなどの少量の不活性ガスを含有し得る。合成ガスの水素含有量は、湿潤ガス基準で、すなわち蒸気を考慮して、30~50体積%の範囲であってもよい。合成ガスの一酸化炭素含有量は、湿潤ガス基準で、6~20体積%の範囲であってもよい。合成ガスの組成は、乾燥ガス基準で表されてもよい。合成ガスの水素含有量は、乾燥ガス基準で、すなわち蒸気を考慮しないで、60~80体積%の範囲であってもよい。合成ガスの一酸化炭素含有量は、乾燥ガス基準で、10~30体積%の範囲であってもよい。
【0013】
この方法では、合成ガス混合物の水素含有量は、合成ガス混合物を1つ以上の水性ガスシフト段階に供し、それによって水素富化ガスを生成し、同時に改質ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に変換することによって増加される。反応は以下のように示すことができる:
CO+HO⇔CO+H
【0014】
水性ガスシフトユニットへの供給物中の蒸気対乾燥ガスのモル比は、0.7~2.0:1、好ましくは0.7~1.2:1、より好ましくは0.7~1.0:1の範囲であってよい。合成ガス生成が過剰な蒸気で行われる場合、水性ガスシフト反応に十分な蒸気が利用可能であることを確実にするために、合成ガス混合物に蒸気を添加する必要はない。しかしながら、必要に応じて追加の蒸気を加えてもよい。
【0015】
合成ガスを、水性ガスシフトユニット内で1つ以上の水性ガスシフト段階に供して、水素富化ガス流又は「シフト」ガス流を形成してもよい。
【0016】
本発明では、水性ガスシフトユニットは、断熱的に操作される中温シフト(MTS)段階、又は冷却を伴う(いわゆる等温シフト、ITS)段階の少なくとも1つの段階を含む。したがって、本発明では、水性ガスシフトユニットは、断熱的に、又は200~280℃の範囲の入口温度及び360℃未満の出口温度で冷却して運転される少なくとも1つの反応器を含む。従来の方法とは対照的に、この水性ガスシフト段階は、従来の高温シフト段階の下流で操作されない。したがって、本発明では、水素及び一酸化炭素を含有する合成ガスは、200~280℃の範囲の入口温度に冷却され、一酸化炭素含有量の事前調整なしに、断熱的に又は冷却しながら、触媒床を通過する。
【0017】
熱を除去する熱交換面と接触して触媒床上において発熱性反応が起こるように、等温シフト段階、すなわちシフトコンバータでの熱交換を用いることは、合成ガス流を非常に効率的な様式に使用する可能性を提供する。「等温」という用語は、冷却シフトコンバータを説明するために使用されるが、一方で入口と出口との間でガスの温度が比較的わずかに上昇する可能性があることで、等温シフトコンバータの出口における水素富化ガス流の温度は、入口温度よりも摂氏1~25度高くなり得る。等温シフト反応器の入口温度は、断熱反応器よりも高くてもよく、例えば、等温シフト反応器の入口温度は、230~250℃の範囲であってもよい。冷却剤は、簡便には、部分的又は完全な沸騰が起こるような圧力下における水であってもよい。水は、触媒に囲まれたチューブ内にあってもよく、また逆であってもよい。得られた蒸気は、例えば、例として電力のためにタービンを駆動するために、又は本方法へ供給するための処理蒸気を提供するために使用することができる。好ましい実施形態では、等温シフト段階によって生成された蒸気は、蒸気改質で使用される蒸気を補うために使用される。これにより、方法の効率が向上する。
【0018】
必要に応じて、断熱低温シフト段階を等温シフト段階の下流に含めて、二酸化炭素除去段階の上流の水素富化を最大にすることができる。しかしながら、本発明者らは、単一の等温シフトコンバータによって優れた効率が提供され得ることを見出した。
【0019】
MTS又はITS条件下で操作される反応器において使用される触媒は、酸化亜鉛、アルミナ及びシリカと組み合わされた、CuOとして表される30~70重量%の銅を含み、当該触媒は、SiOとして表される、0.1~5.0重量%の範囲のシリカ含有量を有する。
【0020】
CuOとして表される銅含有量は、好ましくは45~65重量%である。Cu:Znの重量比(CuO:ZnOとして表される)は、1.4:1~3.0:1の範囲内であってもよい。ZnOとして表される亜鉛含有量は、20~50重量%、好ましくは20~40重量%の範囲であってもよい。Alとして表されるアルミニウム含有量は、5~40重量%、好ましくは8~25重量%の範囲であってもよい。Mg、Co、Mn、V、Ti、Zr又は希土類の酸化物から選択される1つ以上の促進剤金属酸化物は、任意選択的に、0~5重量%の範囲の量で存在してもよい。促進剤は、銅を安定化させるか、又は支持相の特性を高めることができる。マグネシウム及びジルコニウム化合物は0.1~5重量%が好ましい。
【0021】
触媒はシリカを含有し、Si:Alの原子比は、0.004~0.2:1の範囲を有することができる。触媒中のシリカの量は、Si:Alの原子比が0.03~0.09:1の範囲である場合が最適と思われる。したがって、触媒中のシリカの量は比較的少なく、焼成触媒中に0.1~5.0重量%、好ましくは0.1~2.0重量%、より好ましくは0.2~1.0重量%の範囲の量で存在し得る。
【0022】
本方法によって製造された触媒は、40m/g触媒を超える、好ましくは50m/g触媒以上、より好ましくは55m/g触媒以上、最も好ましくは60m/g触媒以上の銅表面積を有し得る。最大で約70m/g触媒の銅表面積を実現することができる。銅表面積は、例えば欧州特許第0202824(A)号に記載されているように、リアクティブフロンタルクロマトグラフィーによって容易に得ることができる。
【0023】
窒素物理吸着(ASTM法D3663-03による)によって決定される触媒のBET表面積は、75m/g以上であってもよく、好ましくは100m/g以上である。最大で約140m/gのBET表面積を実現することができる。BET表面積は、粉砕ペレットについて適切に求められる。
【0024】
触媒は、CuO及びZnOを含み、XRDで測定したZnO由来ピーク対CuO由来ピークの最大強度比が0.26:1以上、好ましくは0.30:1以上であってもよい。これらの結晶学的特性は、組成物及び触媒調製方法の組み合わせから生じる。
【0025】
触媒中で、酸化亜鉛、アルミナ及びシリカは、水性ガスシフト方法の条件下では実質的に金属に還元されず、概ね、触媒中に酸化物として存在する。対照的に、銅は、より容易に活性元素形態に還元される。銅は、使用の前にエクソサイチュ又はインサイチュのいずれかで還元され得、触媒活性を有する銅金属結晶を形成する。
【0026】
触媒は、様々なシリカ前駆体を用いて単一沈殿法又は二重沈殿法によって調製することができ、シリカ前駆体は、触媒の調製中に1つ以上の時点で添加することができる。
【0027】
一実施形態では、触媒は、(i)水性媒体中で、銅及び亜鉛化合物の共沈物を含む均質な混合物を、アルミナ及びシリカと形成する工程であって、アルミナがアルミナゾルによって供給される、工程と、(ii)均質な混合物を回収し、洗浄し、乾燥させて乾燥組成物を形成する工程と、(iii)乾燥組成物を焼成し成形して触媒を形成する工程を含む方法によって調製され得る。
【0028】
共沈物は、適切な比の銅及び亜鉛化合物を含有する酸性水溶液を混合し、この酸性水溶液をアルカリ沈殿剤水溶液と合わせることによって調製することができる。銅及び亜鉛化合物は、好ましくは硝酸塩である。アルカリ沈殿剤は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、又はこれらの混合物であってもよい。アルカリ沈殿剤は、好ましくはアルカリ金属炭酸塩を含む。カリウム又はナトリウム沈殿剤を使用することができるが、沈殿した組成物からナトリウムよりも容易に洗浄によって除去されることが認められたため、カリウム沈殿剤が好ましい。酸性溶液中の銅及び亜鉛化合物とアルカリ沈殿剤との反応により、銅-亜鉛混合共沈物の沈殿が生じる。沈殿は、10~80℃の範囲の温度で行うことができるが、好ましくは、焼成後により高い銅表面積を与える小さな結晶子を生成することが認められたことから、高温、すなわち、40~80℃、より好ましくは50~80℃、特に60~80℃の範囲で行われる。
【0029】
酸性溶液及びアルカリ性溶液は、沈殿容器内の一方に他方を加えてもよいが、好ましくは、沈殿容器内のpHが6~9、好ましくは6~7に維持されるように沈殿容器に同時に加え、その後、得られた共沈物のスラリーを好ましくは別のエージング容器中で、10~80℃、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~80℃、特に60~80℃の範囲の温度でエージングして、銅及び亜鉛の結晶性化合物、好ましくは結晶性ヒドロキシ炭酸塩化合物を形成する。共沈及びエージングは、好ましくは、XRDによって求められ得るマラカイト[Cu(CO)(OH)]、菱亜鉛鉱[ZnCO]及び/又は亜鉛マラカイト[(Cu/Zn)(CO)(OH)]相を生成するように行われる。
【0030】
触媒は、アルミナゾルを使用して調製され得る。アルミナゾルは、ベーマイト及び擬ベーマイトを含む水酸化アルミニウムの水性コロイド分散液である。分散液のpHは<7が好適であり、好ましくは3~4の範囲であり得る。好適には、アルミナゾルを沈殿容器に加え得る。アルミナゾルは、それにより触媒の特性が向上することが認められたことから、好ましくは、酸性金属溶液又はアルカリ沈殿剤水溶液とは別に沈殿容器に加える。アルミナゾルは市販されており、又は既知の方法によって調製してもよい。ゾル中のアルミナ濃度は、30~200g/リットルであり得る。特に好適なアルミナゾルとしては、分散したときに5~200nm、好ましくは5~100nm、より好ましくは5~50nmの範囲のD50平均粒径を有するコロイド状に分散したベーマイトの分散液が挙げられる。そのようなゾルは市販されている。
【0031】
触媒はシリカを含有する。シリカゾルをシリカ供給源として使用する場合、それは酸性金属溶液に加えてもよく、及び/又は沈殿容器及び/又はエージング容器及び/又はアルミナゾルに加えてもよい。特に好適なシリカゾルとしては、10~20nmの範囲の粒径を有するコロイド状に分散したシリカの水性分散液が挙げられる。分散液のpHは<7であり、好ましくは2~4の範囲であり得る。ゾル中のシリカ濃度は、100~400g/リットルであり得る。そのようなゾルは、例えば、日産化学のスノーテックス-O及びGraceのLudox HSAとして市販されている。
【0032】
アルカリ金属ケイ酸塩などの水溶性ケイ酸塩をシリカ供給源として使用する場合、それはアルカリ沈殿剤水溶液、及び/又はアルミナゾル、及び/又は沈殿容器及び/又はエージング容器に加えてもよい。好適なアルカリ金属ケイ酸塩は、可溶性ケイ酸ナトリウム及び可溶性ケイ酸カリウムである。そのようなアルカリケイ酸塩は、例えば、PQ CorporationのKasil 1、PQ CorporationのKasolv 16又はZaclon LLCのZacsil 18として市販されている。アルカリ金属ケイ酸塩を触媒中のシリカ供給源として使用する場合、それにより、触媒の洗浄、回収、及び廃棄溶液の大量での再処理が改善されることから、好ましくは、アルカリ金属ケイ酸塩中のアルカリ金属は、沈殿剤溶液中のアルカリ金属と同じである。アルカリ金属ケイ酸塩溶液中のSiOとして表されるケイ素の量は、15~30重量%の範囲であり得る。
【0033】
式中のRがC1~C4アルキルである式Si(OR)のアルキルシリケートなどの有機ケイ酸塩をシリカ供給源として使用する場合、それは水と接触したときに加水分解されるため、アルミナゾル又は沈殿及び/又はエージング容器に加えることが好ましい。
【0034】
共沈及びエージングの後、均質な混合物は、例えば、濾過、デカント、又は遠心分離などの既知の方法を使用して母液を分離して回収し、洗浄して残留する可溶性の塩を除去する。
【0035】
均質な混合物の洗浄は、プレートフレームフィルタプレスなどの従来の装置を使用して、例えば、塩を含まない水で1回以上混合物を再スラリー化して、又は回収前にArtisan増粘剤若しくはShriver増粘剤を使用した動的クロスフロー濾過によって行われ得る。
【0036】
回収した均質な混合物を乾燥させて、乾燥組成物を形成する。乾燥は、湿った混合物を、最高温度に達するまで段階に分けて、又は長時間にわたって連続的に加熱することを含み得る。乾燥工程は、オーブン、回転乾燥機、噴霧乾燥機などの従来の乾燥装置又は同様の装置を使用して、空気又は不活性ガス下で90~150℃、好ましくは90~130℃の範囲の温度で行われ得る。
【0037】
乾燥組成物は、概ね粉末の形態である。乾燥組成物は、銅及び亜鉛の1つ以上のヒドロキシ炭酸塩、並びにアルミナ及びシリカを含み得る。
【0038】
乾燥組成物を焼成し、成形して触媒を形成する。乾燥組成物を、成形する前に、例えば加熱して焼成し、銅及び亜鉛化合物、並びに任意の促進剤化合物を、それらのそれぞれの酸化物に変換してもよく、また、あまり好ましくはないが、乾燥組成物を、焼成する前に成形ユニットに形成してもよい。この後者の方法は、成形ユニットの焼成によって概ねそれらの強度が低下し、また、ペレットの密度の制御がより困難になるため、あまり好ましくない。好ましくは、焼成は、250~500℃、好ましくは、280~450℃の範囲の温度で行うことができる。
【0039】
成形ユニットは、好ましくはペレットである。したがって、任意選択的に粉末をペレット化プロセスを改善することができる予備圧縮した後に、乾燥又は焼成した粉末をペレット化する。ペレットは、好適には円筒形ペレットであり得る。炭素酸化物変換プロセス用の円筒形ペレットは、好適には、2.5~10mm、好ましくは3~10mmの範囲の直径、及び0.5~2.0の範囲のアスペクト比(すなわち、長さ/直径)を有する。あるいは、成形ユニットはリングの形態であってもよい。特に好適な実施形態では、成形ユニットは、その長さに沿って走る2本以上、好ましくは3~7本の溝を有する円筒の形態である。1本以上の縦溝を有する好適なドーム構造を持つ円筒形が、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010/029325号に記載されている。
【0040】
ペレット、特に平坦な又は上記のようにドーム状の端部を有する円筒形ペレットは、望ましくは、ペレットの密度が1.8~2.5g/cm、好ましくは1.9~2.4g/cmの範囲で作製される。ペレットの密度は、ペレットの寸法から体積を計算し、その重量を測定することによって容易に求められ得る。密度が増加するにつれて、成形ユニット内の格子間の容積が減少し、それにより反応ガスの透過性が低下する。したがって、密度>2.5g/cmでは、銅含有量が高体積であるにもかかわらず、触媒の反応性は最適よりも低い。密度<1.8g/cmでは、圧縮強度が、現代の炭素酸化物変換方法における長期間の使用には不十分であり得る。
【0041】
別の実施形態では、触媒は、以下の工程、(a)第1の沈殿工程において、酸性銅含有溶液をアルカリ金属炭酸塩溶液と合わせて第1の沈殿物を形成すること、(b)第2の沈殿工程において、銅化合物、亜鉛化合物及び促進剤化合物から選択される1つ以上の金属化合物を更に含む、酸性アルミニウム含有溶液を塩基性沈殿剤溶液と合わせて第2の沈殿物を形成すること、(c)更なる混合工程において、第1及び第2の沈殿物を一緒に接触させて触媒前駆体を形成すること、並びに(d)触媒前駆体を洗浄、乾燥及び焼成して銅含有触媒を形成することを含む方法によって調製されてもよく、シリカ前駆体は、第1の沈殿工程、第2の沈殿工程又は沈殿物混合工程に含まれる。洗浄、乾燥、焼成及び成形は、上記のように実施することができる。
【0042】
更に別の実施形態では、触媒は、以下の工程、(a)第1の沈殿工程において、酸性銅含有溶液を塩基性沈殿剤溶液と合わせて、第1の沈殿物を形成すること、(b)第2の沈殿工程において、アルカリ金属アルミン酸溶液を酸性溶液と合わせて、第2の沈殿物を形成すること、(c)更なる沈殿物混合工程において、第1及び第2の沈殿物を一緒に接触させて、触媒前駆体を形成すること、並びに(d)触媒前駆体を洗浄、乾燥、及び焼成して銅含有触媒を形成することを含む方法によって調製されてもよく、触媒中の銅の少なくとも70重量%は、第1の沈殿物中に存在し、シリカ前駆体は、第1の沈殿工程、第2の沈殿工程又は沈殿物混合工程に含まれる。洗浄、乾燥、焼成及び成形は、上記のように実施することができる。
【0043】
1つ以上のシフト段階に続いて、水素富化ガスは、例えば、熱回収ユニットにおいて、蒸気が凝縮するように露点未満の温度に冷却される。次いで、液体凝縮水は、1つ以上の気液分離器を用いて分離することができ、気液分離器はそれらの間に1つ以上の更なる冷却段階を有してもよい。任意の冷却剤を使用してもよい。好ましくは、水素富化ガス流の冷却は、処理凝縮物と熱交換して最初に行われる。その結果、蒸気改質に必要な蒸気の一部又は全部を供給するために使用され得る加熱水の流れが形成され得る。したがって、一実施形態では、水素富化ガスから回収された凝縮物を使用して、蒸気改質のための蒸気の少なくとも一部を提供する。凝縮物は、アンモニア、メタノール、シアン化水素、及びCOを含有し得るので、凝縮物を蒸気に戻すことは、水素及び炭素を本方法に戻す有用な方法を提供する。
【0044】
1つ以上の更なる冷却段階が望ましい。冷却は、脱塩水(demineralised water)、空気、又はこれらの組み合わせを用いて、1つ以上の段階で熱交換において実施してもよい。好ましい実施形態では、冷却は、CO分離ユニット内の1つ以上の液体と熱交換して行われる。特に好ましい構成では、水素富化ガス流は、凝縮物と熱交換して冷却され、続いてCOリボイラ液で冷却される。次いで、冷却されたシフトガスは第1の気液分離器に供給されてもよく、分離されたガスは水及び/又は空気で更に冷却されて第2の分離器に供給され、その後、水及び/又は空気で更に冷却され、第3の分離器に供給される。第2段階又は第3段階の凝縮物分離が好ましい。凝縮物の一部又は全部は、蒸気改質のための蒸気を産生するために使用されてもよい。蒸気を産生するために使用されない任意の凝縮物は、排出物として水処理に送られてもよい。
【0045】
典型的には、水素富化ガス流は、(乾燥基準で)10~30体積%の二酸化炭素を含有する。本方法では、凝縮水を分離した後、得られた脱水された水素富化ガス流から二酸化炭素を分離する。
【0046】
二酸化炭素分離段階は、物理的洗浄システム又は反応性洗浄システム、好ましくは反応性洗浄システム、特にアミン洗浄システムを用いて行われてもよい。二酸化炭素は、酸性ガス回収(acid gas recovery:AGR)法によって分離してもよい。l AGR法では、脱水された水素富化ガス流(すなわち、脱水されたシフトガス)を、好適な吸着液、例えばアミン、特にメチルジエタノールアミン(methyl diethanolamine:MDEA)溶液などの流れと接触させることで、二酸化炭素が液体によって吸着されて、二酸化炭素の含有量が減少した積載吸着液及びガス流が得られる。次いで、積載された吸収液は、加熱によって再生されて、二酸化炭素を脱着させ、かつ再生された吸収液を得て、これは、次いで二酸化炭素吸着段階へとリサイクルされる。あるいは、アミンと同様の様式で二酸化炭素を捕捉するために、メタノール又はグリコールを使用してもよい。好ましい構成では、この加熱の少なくとも一部は、水素富化ガス流と熱交換される。二酸化炭素分離工程が単一の圧力方法として操作される場合、すなわち、吸着工程及び再生工程において本質的に同じ圧力が採用される場合、リサイクルされた二酸化炭素の再圧縮は、わずかしか必要とされない。
【0047】
例えばAGRから回収された二酸化炭素は、圧縮され、化学物質の製造に使用されてもよく、又は貯蔵若しくは隔離に送られてもよく、又は石油増進回収(enhanced oil recovery:EOR)法で使用されてもよい。
【0048】
二酸化炭素を分離する際、本方法は粗水素ガス流を提供する。粗水素流は、90~99体積%の水素、好ましくは95~99体積%の水素を含むことができ、残りはメタン、一酸化炭素、二酸化炭素、及び不活性ガスを含む。メタン含有量は、0.25~1.5体積%、好ましくは0.25~0.5体積%の範囲内であってもよい。一酸化炭素含有量は、0.5~2.5体積%、好ましくは0.5~1.0体積%の範囲内であってもよい。二酸化炭素含有量は、0.01~0.5体積%、好ましくは0.01~0.1体積%の範囲内であってもよい。
【0049】
この水素ガス流は多くの動作責務に十分に純粋であってもよいが、水素が精製ユニットに送られて、精製された水素ガス及び燃料ガスを提供することが望ましく、その結果、方法からのCO排出を最小限に抑えるために、外部燃料源の代替として燃料ガスを方法で使用することができる。
【0050】
精製ユニットは、膜システム、温度スイング吸着システム、又は圧力スイング吸着システムを好適に備え得る。そのようなシステムは市販されている。精製ユニットは圧力スイング吸着ユニットであることが好ましい。そのようなユニットは、水素以外のガスを選択的に捕捉し、それによってそれを精製する、再生可能な多孔質吸着剤材料を含む。精製ユニットは、好ましくは99.5体積%を超える、より好ましくは99.9体積%を超える純度を有する純水素流を生成し、これは、例えば、ガスタービン(gas turbine:GT)内の燃料として用いることによって、又は家庭用若しくは産業用ネットワークガス配管システムへの注入によって、下流の動力又は加熱方法で圧縮及び使用してもよい。純粋な水素はまた、下流化学合成方法で使用されてもよい。したがって、純水素流を使用して、アンモニア合成ユニット内で窒素との反応によってアンモニアを生成してもよい。あるいは、純粋な水素を二酸化炭素含有ガスと共に使用して、メタノール生成ユニット内でメタノールを製造してもよい。あるいは、純粋な水素を一酸化炭素含有ガスと共に使用して、フィッシャー・トロプシュ生成ユニット内で炭化水素を合成してもよい。任意の公知のアンモニア、メタノール、又はフィッシャー・トロプシュ生成技術を使用してもよい。あるいは、水素は、例えば炭化水素精製所での炭化水素の水素化処理若しくは水素化分解によって、又は純粋な水素が使用され得る任意の他の方法において、炭化水素を向上するために使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明は、添付の図面を参照することによって説明される:
図1】本発明の一実施形態の概略フローシートである。
【0052】
図面は図式的であり、また、商業用プラントにおいて、還流ドラム、ポンプ、真空ポンプ、温度センサ、圧力センサ、圧力逃がし弁、制御弁、フローコントローラ、レベルコントローラ、保持タンク、貯蔵タンクなどの装置の更なる品目が必要とされ得ることが、当業者には理解されるであろう。このような装置の付属品を提供することは、本発明の一部を形成せず、従来の化学工学的実施に従うものである。
【0053】
図1において、メタン含有流10、蒸気12及び酸素流14は、ガス加熱改質器及び自己熱改質器を含む合成ガス生成ユニット16に供給される。天然ガスは、外部から加熱される触媒充填チューブにおいて蒸気で蒸気改質され、改質ガスは、自己熱改質器において酸素で自己熱改質されて、水素、二酸化炭素、一酸化炭素及び蒸気を含む合成ガス混合物を生成する。合成ガス混合物は、水との熱交換で所望の入口温度まで冷却されて蒸気を生成し(図示せず)、ライン18を介して、本明細書に記載の水性ガスシフト触媒床を含有する等温シフト反応器からなる水性ガスシフトユニット20に供給されて、水素及び二酸化炭素含量が増加し、蒸気及び一酸化炭素含有量が減少した水素富化ガス混合物を生成する。任意選択的に、水素富化ガスは、等温シフト反応器の下流の水性ガスシフトユニットに含まれる低温シフト反応器に供給されてもよい。水素富化ガス混合物は、水性ガスシフトユニット20からライン22を介して熱回収ユニット24に供給され、熱回収ユニット24は、水素富化ガスを冷却して蒸気を凝縮する。凝縮物は、1つ以上の気液分離器で分離され、ユニット24からライン26を介して回収される。凝縮物は、ライン26を介して合成ガス生成ユニット16にリサイクルされ、ガス加熱改質器及び/又は自己熱改質器のための蒸気を生成する。脱水された水素富化ガスは、熱回収ユニット24からライン28を介して、反応性吸収によって動作する二酸化炭素除去ユニット30に供給される。二酸化炭素流は、ライン32によって分離ユニット30から回収される。水素流は、ライン34を介して二酸化炭素除去ユニット30から回収され、膜システム、温度スイング吸着システム、又は圧力スイング吸着システムを含む任意の水素精製ユニット36に送られ、そこで水素中の不純物が除去されて、99.5体積%超のHを含む高純度水素流38が提供される。
【0054】
以下の実施例を参照して、本発明を更に説明する。
【0055】
実施例1
CuO/ZnO/Al/MgO/SiO配合物は、pH6.3~6.8及び65~70℃の温度で炭酸カリウム溶液に対して、硝酸Cu、Zn及びMgを含有する混合金属硝酸塩溶液を沈殿させると同時に、ベーマイト及びシリカの両方を含有する混合コロイド分散液(スノーテックスST-O)を、以下の表1に示す最終組成を達成するのに必要な流量及び濃度で添加することによって製造した。沈殿後、得られたスラリーを65~70℃で最大2時間エージングさせ、濾過し、洗浄し、乾燥させ、350℃で焼成した。最後に、焼成した粉末を2.32g/mlの最終ペレット密度までペレット化した。
【0056】
X線回折(XRD)パターンを、ゲーベルミラー、リンクスアイ検出器及び銅X線チューブを備えたBruker D8回折計を使用して、粉末触媒について得た。Bruker EVA v5.1.0.5ソフトウェアを使用して相同定を完了した。得られた回折パターンを図2に示す。約32.5°のZnOピークと35°のCuOピークの強度比は0.47:1である。
【0057】
比較例1
コロイド分散液がスノーテックスST-Oを含有しなかったことを除いて、実施例1の方法を繰り返した。
【0058】
【表1】
【0059】
触媒試験は、断熱的に操作されるMicro-Berty反応器を使用して行った。合成ガス流を、マスフローコントローラを介して反応器に供給した。充填された気化器容器中で乾燥ガスを水供給物と混合し、加熱されたラインを介して加熱され撹拌された反応器に湿潤ガスを移した。反応器の下流の凝縮器システムは、ガス流から過剰の水を除去した。乾燥ガスのブリードを、CO、CO及びH濃度を測定する較正済みIR分析器に供給した。
【0060】
触媒還元。各試験において、0.8gの触媒を反応器バスケットに充填した。試験は31bargで行った。触媒還元のために、窒素中2%水素を100l/h及び120℃で導入し、次いで反応器を14時間かけて280℃まで昇温し、次いで6時間保持した。
【0061】
試験。還元後、乾燥ガス組成を71%H、17%CO、12%COに設定し、100l/hの流量を維持した。同時に、水の添加を開始して、蒸気:乾燥ガスのモル比を0.8:1にし、CO転化率を監視しながら触媒を280℃で120時間試験した。得られた結果を図3に示し、X/Xの比を各触媒についてプロットし、ここで、Xは、各場合において測定された初期CO転化率として定義され、Xは、オンラインの特定の期間後の対応する転化率である。E1は実施例1であり、CE1は比較例1である。このプロットは、少量のシリカを含有する触媒の安定性の改善を明確に示している。
【0062】
更なる試験では、上記の方法を、280℃で5日間の初期エージング期間、続いて300℃で5日間の更なるエージング期間で繰り返してエージングを促進した。この場合、第1及び第2のエージング期間の両方の終了時に、変換対流量曲線を作成するために、両方の触媒上で220℃でフロースキャンを実施した。次いで、これらの曲線を使用して、特定の転化率を達成するために各触媒上で必要とされる流量の比をとることによって相対活性を推定した。得られた結果を表2に要約する。
【0063】
【表2】
【0064】
この試験はまた、シリカを含有する触媒の改善された性能を明らかに実証している。
図1
図2
図3
【国際調査報告】