(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】分析物又はパラメータを監視するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20231018BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20231018BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20231018BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20231018BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/00 102A
A61B5/01 100
A61B10/00 E
G01N21/64 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514001
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 US2021048747
(87)【国際公開番号】W WO2022051423
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】カスカレス サンドヴァル ファン ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス コナー エル.
【テーマコード(参考)】
2G043
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043EA01
2G043EA02
2G043FA03
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA03
2G043LA02
2G043NA01
4C038KK04
4C038KL02
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX02
4C117XA01
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4C117XC21
4C117XD15
4C117XE23
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4C117XE80
(57)【要約】
センサシステムは、プローブ、及び、光子を前記プローブに向けて送るように構成された光子源を含む。前記プローブは、光子の受信に応答して光を放射することができる。前記センサシステムは、前記プローブから放射された前記光を検出するように構成された光検出器を含むことができ、前記光子源に、第1の周波数を持つ第1の経時変化強度プロファイルに従って光子を放射させるように構成される。前記コントローラは、前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく前記光検出器からの光学データを受信するように構成されることができる。前記光学データは、第2の周波数を持つ第2の経時変化強度プロファイルを含むことができる。前記第2の周波数は、前記第1の周波数と実質的に同じであることができる。前記コントローラは、前記第1の経時変化強度プロファイルと前記第2の経時変化強度プロファイルとの間の位相差を導出し、前記位相差に基づきレポートを生成するように構成されることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分析物に敏感であり、患者を監視するための少なくとも第1の動作範囲及び第2の動作範囲を有するプローブであって、光子源からの光子の受信に応答して光を放射するように構成されるプローブと、
光子を前記プローブに向けて送るように構成される前記光子源と、
前記プローブから放射された前記光を検出するように構成された光検出器と、
前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラと、
を備えるセンサシステムであって、
前記コントローラは、
前記光子源に第1の経時変化プロファイルに従って光子を前記プローブに向けて送らせて、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲に対して前記プローブを励起させて前記光子の受信に応答して前記光を放射させ、
前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲で動作している間に前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく前記光検出器からの光学データを受信し、前記光学データは、第2の経時変化プロファイルを含み、
前記第1の経時変化プロファイルと前記第2の経時変化プロファイルとの差を導出し、
前記第1の経時変化プロファイルと前記第2の経時変化プロファイルとの前記差に基づいて前記分析物に関連するパラメータを導出する、
ように構成されることを特徴とする患者を監視するセンサシステム。
【請求項2】
前記プローブは、それぞれが前記第1の動作範囲と前記第2の動作範囲とのうちいずれか1つを提供する、蛍光体又はリン光領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1の経時変化プロファイルの第1の特性を選択して前記第1の動作範囲に対して前記プローブを励起し、前記第1の経時変化プロファイルの第2の特性を選択して前記第2の動作範囲に対して前記プローブを励起するように更に構成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1の経時変化プロファイルを前記第1の特性から前記第2の特性に変更して、前記プローブを前記第1の動作範囲から前記第2の動作範囲に切り替えるように更に構成されることを特徴とする請求項3に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記第1の特性は、前記プローブの第1の蛍光体又はリン光領域を励起するように構成され、前記第2の特性は、前記プローブの第2のリン光体又はリン光領域を励起するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記コントローラは更に、前記光子源に、前記第1の経時変化プロファイルに従って光子を前記プローブに送らせて、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲に対して前記プローブを同時に励起させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記第1の経時変化プロファイルは、それぞれ、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲に対して前記プローブを励起するように構成された第1のサブ信号及び第2のサブ信号から形成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記第1のサブ信号及び前記第2のサブ信号は、周波数、波長、波形、期間、又は振幅のうち、少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項7に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲は、それぞれ、前記分析物に対する感度又は応答曲線を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲は、それぞれ、第1の及び第2の分析物に対するそれぞれの感度又は応答曲線を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項11】
センサシステムの動作範囲は、前記第1の動作範囲と前記第2の動作範囲の合計によって定義されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項12】
前記第1の経時変化プロファイルは、前記コントローラによって、複数の正弦波、方形波、三角波、のこぎり波、インパルス関数、又は非周期波を組み合わせることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、更に、前記第2の経時変化プロファイルの経時変化振幅波の振幅を導出し、位相差及び前記振幅に基づいて前記分析物の分圧を導出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項14】
前記分圧は第1の分圧であり、前記分圧を導出することは、
前記位相差に基づいて第2の分圧を導出すること、
前記振幅に基づいて第3の分圧を導出すること、
前記第2の分圧と前記第3の分圧を組み合わせて、前記第1の分圧を導出すること、
を含むことを特徴とする請求項13に記載のセンサシステム。
【請求項15】
前記第2の分圧を前記第3の分圧と組み合わせることは、前記第2の分圧を前記第3の分圧と平均化することを含み、前記平均化は加重平均を含むことを特徴とする請求項14に記載のセンサシステム。
【請求項16】
前記第1の経時変化プロファイルは、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲のそれぞれについて少なくとも1つを含む、第1の複数の周波数を含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項17】
前記第2の経時変化プロファイルは、第2の複数の周波数を含み、前記位相差を導出することは、前記コントローラが、
前記第1の複数の周波数及び対応する振幅に基づいて、第1の基準経時変化振幅波を導出すること、
前記第2の複数の周波数及び対応する振幅に基づいて、第2の基準経時変化振幅波を導出すること、
前記第1の複数の周波数及び前記第2の複数の周波数のそれぞれに対する前記第1の経時変化振幅波及び前記第2の経時変化振幅波との間の位相差を導出すること、
を含むことを特徴とする請求項16に記載のセンサシステム。
【請求項18】
前記第1の基準経時変化振幅波は、前記第1の複数の周波数及び対応する振幅のそれぞれを使用して統計的に抽出され、
前記第2の基準経時変化振幅波は、前記第2の複数の周波数及び対応する振幅のそれぞれを使用して統計的に抽出されることを特徴とする請求項17に記載のセンサシステム。
【請求項19】
前記第1の経時変化振幅波は、線形回帰を利用して統計的に抽出され、
前記第2の基準経時変化振幅波は、線形回帰を利用して統計的に抽出されることを特徴とする請求項18に記載のセンサシステム。
【請求項20】
前記プローブは、前記第1の動作範囲を有する第1のプローブ又はプローブ領域と、前記第2の動作範囲を有する第2のプローブ又はプローブ領域とを少なくとも含み、
前記コントローラは、更に、前記第1のプローブ又はプローブ領域及び前記第2のプローブ又はプローブ領域を別々にターゲットとするように構成された別個の特性を有する少なくとも2つの信号から前記第1の経時変化プロファイルを作成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項21】
前記コントローラは、前記光学データを処理して前記第2の経時変化プロファイルを前記第1の動作範囲に対して前記プローブを励起するように構成された第1のサブ信号及び前記第2の動作範囲に対して前記プローブを励起するように構成された第2のサブ信号に分離するように構成されていることを特徴とする請求項20に記載のセンサシステム。
【請求項22】
前記コントローラは、前記第2の経時変化プロファイルの前記第1のサブ信号を前記第1の経時変化プロファイルの第1のサブ信号と比較し、前記第2の経時変化プロファイルの前記第2のサブ信号を前記第1の経時変化プロファイルの第2のサブ信号と比較し、前記第1の経時変化プロファイルと前記第2の経時変化プロファイルとの間の差を導出するように構成されることを特徴とする請求項21に記載のセンサシステム。
【請求項23】
前記差は位相差であることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項24】
前記分析物は酸素を含む、又は、前記パラメータは分圧を含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項25】
前記プローブは、周囲環境から少なくとも部分的に密閉された前記患者のゾーンと接触、気体的に連通、又は流体的に連通しており、
前記ゾーンは前記患者の組織の一部の上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項26】
前記センサシステムは、更に、前記センサ、光検出器、前記ゾーン、又は前記ゾーンを画定する材料のうちの少なくとも1つと熱的に連通している温度センサを含むことを特徴とする請求項25に記載のセンサシステム。
【請求項27】
前記コントローラは、前記温度センサから温度値を受信するように更に構成され、
前記パラメータを導出することは、前記差に基づいて前記分圧を導出すること、及び前記温度センサから前記温度値を導出することを含むことを特徴とする請求項26に記載のセンサシステム。
【請求項28】
前記ゾーンを定義する基板を備え、
前記基板は、酸素拡散に対して半透過性のシートを備え、
前記シートは、前記ゾーンを定義し、
前記プローブは、前記基板に結合され、酸素に敏感であることを特徴とする請求項25に記載のセンサシステム。
【請求項29】
前記シートは、前記シートを前記患者の前記組織に接着するように構成された接着剤層を含むことを特徴とする請求項28に記載のセンサシステム。
【請求項30】
前記プローブは、
前記分析物の拡散に対して半透過性である層と、
光吸収、散乱、又は反射層であって、前記光吸収、散乱、又は反射層に向けて送られた光を吸収、散乱、又は反射するように構成された前記光吸収、散乱、又は反射層と、
を含み、
前記プローブは、前記シートと前記層との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項31】
前記センサシステムは、
第1の光学フィルタであって、前記第1の光学フィルタは前記光子源に光学的に結合され、前記光子源から放射され前記第1の光学フィルタを通過する光子をフィルタリングするように構成された前記第1の光学フィルタと、
第2の光学フィルタであって、前記第2の光学フィルタは前記光検出器に光学的に結合され、前記第2の光学フィルタを通過して前記光検出器に向かう光をフィルタリングするように構成された前記第2の光学フィルタと、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項32】
前記第1の光学フィルタは、実質的に500nmと実質的に900nmとの間に画定された阻止帯域を有する帯域阻止フィルタであり、
前記第2の光フィルタは、実質的に450nmのコーナー周波数を有するローパスフィルタであることを特徴とする請求項31に記載のセンサシステム。
【請求項33】
前記第2の光学フィルタは、前記光子源によって放射された光が前記光検出器によって受光されるのを阻止することを特徴とする請求項31に記載のセンサシステム。
【請求項34】
前記光子源は、青色発光ダイオード(LED)又は紫外線LEDの少なくとも1つであり、
前記光検出器は、分光計、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、又はフォトトランジスタのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項35】
前記パラメータは前記分析物の分圧を含み、
前記第1の動作範囲と前記第2の動作範囲は合わせて、実質的に0mmHgと160mmHgとの間の範囲全体に及ぶことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項36】
前記コントローラは、前記第2の経時変化プロファイルの特性に応じて、前記第1の経時変化プロファイルの波形の周波数を調整するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項37】
前記コントローラは、前記第2の経時変化プロファイルの特性に応じて、前記第1の経時変化プロファイルについて、プログラム可能な周波数の正弦波、プログラム可能な周波数の正弦波の和、又はプログラム可能な周波数の方形波から選択するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項38】
前記プローブはフォトルミネセンス性又はリン光性であることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項39】
前記プローブは、前記第1の動作範囲を有する第1のリン光材料と、前記第1のリン光材料とは異なる、前記第2の動作範囲を有する第2のリン光材料とを含み、
前記第1のリン光材料及び前記第2のリン光材料のそれぞれは、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲を画定する異なる分圧範囲に敏感であることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項40】
前記第1のリン光材料及び前記第2のリン光材料のそれぞれは、異なる拡散速度又はリン光消光定数を含むことを特徴とする請求項39に記載のセンサシステム。
【請求項41】
前記第1のリン光材料及び前記第2のリン光材料はポルフィリンを含むことを特徴とする請求項39に記載のセンサシステム。
【請求項42】
プローブと、
光子源と、
光検出器と、
前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラを備えるセンサシステムであって、
前記コントローラは、
少なくとも2つの第1のサブ信号の両方に対して前記プローブを励起するように構成された前記少なくとも2つの第1のサブ信号を含む第1の経時変化プロファイルを生成し、
前記光子源に、前記第1の経時変化プロファイルに従って前記プローブに光子に向けて送らせて、前記プローブに、前記光子の受信に応答して光を放射させ、
前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく前記光検出器からの光学データを受信し、
前記光学データから第2の経時変化プロファイルを導出し、少なくとも2つの第2のサブ信号を抽出し、
前記少なくとも2つの第1のサブ信号を前記少なくとも2つの第2のサブ信号と比較することにより、パラメータの条件を判定する
ように構成されることを特徴とするセンサシステム。
【請求項43】
前記少なくとも2つの第1のサブ信号は、異なる周波数、異なる波長、異なる波形、異なる周期、異なる時定数、又は異なる振幅を備えることを特徴とする請求項42に記載のセンサシステム。
【請求項44】
前記パラメータの前記条件を判定するために、前記コントローラは、更に、
前記少なくとも2つの第1のサブ信号、前記少なくとも2つの第2のサブ信号、のうち少なくとも2つの間の位相差、又は、
前記光子の前記放射と、前記光学データの前記受信と、の間の時間遅延、又は、
前記第2の経時変化プロファイルの時定数
のうち少なくとも1つを導出するように構成されることを特徴とする請求項42に記載のセンサシステム。
【請求項45】
前記コントローラは更に、
前記少なくとも2つの第1のサブ信号と前記少なくとも2つの第2のサブ信号との間の差に基づいて、前記プローブが敏感である分析物の分圧又は濃度を導出することにより前記パラメータの前記条件を判定するように構成されることを特徴とする請求項42に記載のセンサシステム。
【請求項46】
前記差は位相差を含むことを特徴とする請求項45に記載のセンサシステム。
【請求項47】
前記プローブは、第1の動作範囲を備える第1のプローブと第2の動作範囲を備える第2のプローブとから構成され、
前記第1の動作範囲と前記第2の動作範囲とは異なることを特徴とする請求項42に記載のセンサシステム。
【請求項48】
前記第1の動作範囲と前記第2の動作範囲とは合わせて、0mmHgから160mmHgの分圧の前記センサシステムの動作範囲を定義することを特徴とする請求項47に記載のセンサシステム。
【請求項49】
前記第1の経時変化プロファイルは、
前記光子を放射させるために前記光子源に印加される電気波形、又は、
前記光子源から放射され前記光検出器と直接相互作用する前記光子に基づき、前記光検出器から受信される追加的光学データ、
のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項42に記載のセンサシステム。
【請求項50】
前記電気波形は、正弦波、三角波、のこぎり波、又は方形波のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項49に記載のセンサシステム。
【請求項51】
前記プローブは、それぞれ異なる動作範囲を持つ少なくとも2つのリン光材料を含むことを特徴とする請求項42に記載のセンサシステム。
【請求項52】
それぞれのリン光材料は、異なる周波数、波長、波形、周期、又は振幅を持つ強度プロファイルで前記光子源によって励起されるように構成され、
前記少なくとも2つの第1のサブ信号のそれぞれは、異なる周波数、波長、波形、周期、又は振幅を提供することを特徴とする請求項51に記載のセンサシステム。
【請求項53】
前記プローブは、第1の酸素感受性リン光材料と、前記第1の酸素感受性リン光材料とは異なる第2の酸素感受性リン光材料と、を含む少なくとも2つのリン光材料を含み、
前記第1の及び第2の酸素感受性リン光材料のそれぞれは、異なる分圧範囲に敏感である、又は、
前記第1の及び第2の酸素感受性リン光材料のそれぞれは、異なる拡散速度、拡散定数、消光速度、又は消光定数を持つことを特徴とする請求項42に記載のセンサシステム。
【請求項54】
前記プローブは、多数のリン光材料を含み、
それぞれの前記リン光材料は、異なる分圧範囲に敏感であり、及び
それぞれの前記リン光材料は、異なる拡散速度、拡散定数、消光速度、又は消光定数を持つことを特徴とする請求項42に記載のセンサシステム。
【請求項55】
それぞれの前記リン光材料は、ポルフィリンを含むことを特徴とする請求項54に記載のセンサシステム。
【請求項56】
様々な動作範囲にわたって医療患者に関連付けられたパラメータの変化に敏感であるプローブと、
光子源と、
光検出器と、
前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラを備えるセンサシステムであって、
前記コントローラは、
前記光子源に、複数の第1のサブ信号から構成される第1の経時変化プロファイルに従って光子を前記プローブに向けて送らせ、
前記プローブに、前記複数の第1のサブ信号から構成され、前記複数の第1のサブ信号の両方に同時に応答する前記第1の経時変化プロファイルに基づいて、前記プローブに向けて送られた前記光子の受信に応答して光を放射させ、
前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく第2の経時変化プロファイルを含む光学データを前記光検出器から受信し、
複数の第2のサブ信号を構成する前記光学データからの応答情報を抽出し、
前記複数の第1のサブ信号と前記複数の第2のサブ信号との間の位相差、
前記複数の第1のサブ信号及び前記複数の第2のサブ信号に反映される時間遅延、又は
前記複数の第2のサブ信号の時定数
のうち少なくとも1つを導出し、
前記導出に基づいて、前記様々な動作範囲にわたって前記パラメータの条件についてのレポートを生成するように構成されることを特徴とするセンサシステム。
【請求項57】
前記パラメータは、バイオマーカーの分圧、pH、温度、湿度、又は濃度のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項56に記載のセンサシステム。
【請求項58】
前記プローブは、分子状酸素、二酸化炭素、一酸化窒素、又は、血漿若しくは組織中の溶存分析物、のうちいずれか1つに敏感であることを特徴とする請求項56に記載のセンサシステム。
【請求項59】
前記様々な動作範囲は、0mmHgの分圧から160mmHgの分圧までに広がることを特徴とする請求項56に記載のセンサシステム。
【請求項60】
前記コントローラは、更に、前記プローブの発光寿命の変化を追跡するように構成されることを特徴とする請求項56に記載のセンサシステム。
【請求項61】
患者の状態を監視する方法であって、
前記方法は、
分析物を監視するように前記患者の近くにプローブを配置し、
前記プローブを励起するように前記プローブに光子を届けるように光子源を配置し、
前記光子源によって励起されることに応答して、前記プローブによって放射された光を受信するように光検出器を配置し、
前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラを、
少なくとも2つの第1のサブ信号の両方に対して前記プローブを励起するように構成された前記少なくとも2つの第1のサブ信号を含む第1の経時変化プロファイルを生成し、
前記光子源に、前記第1の経時変化プロファイルに従って前記プローブに光子に向けて送らせて、前記プローブに、前記光子の受信に応答して光を放射させ、
前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく前記光検出器からの光学データを受信し、
前記光学データから第2の経時変化プロファイルを導出し、少なくとも2つの第2のサブ信号を抽出し、
前記少なくとも2つの第1のサブ信号を前記少なくとも2つの第2のサブ信号と比較することにより、前記分析物又は前記患者の状態についてのレポートを生成する
ように動作させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
前記光学データを受信すること、前記第2の経時変化プロファイルを導出すること、及び前記レポートを生成することは、前記第1の経時変化強度プロファイルの1つの周期(1/f)において行われることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記少なくとも2つの第1のサブ信号は、異なる周波数を持つことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記第2の経時変化プロファイルを導出することは、前記少なくとも2つの第1のサブ信号を分離する線形回帰アルゴリズムを実行して、前記少なくとも2つの第1のサブ信号のそれぞれから貢献を判定することを含み、
前記レポートを生成することは、
前記少なくとも2つの第1のサブ信号の異なる周波数によって同時にそれぞれ励起される前記プローブの複数の発光色素の寿命と強度情報を抽出することを含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2020年9月1日に出願された、「多色素周波数蛍光測定及びリン光測定の為のシステム及び方法」という題名の米国特許出願第63/073,426の優先権の利益を主張するものであり、その全ての内容は参照によりここに援用されているものとする。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
本発明は、米国国防総省の空軍科学研究局、特に米国国防総省の軍事医療フォトニクスプログラムによって交付されたFA9550-17-1-0277による政府の支援を受けて行われた。本発明は、軍医療転換技術コラボラティブのヘンリー・M・ジャクソン財団によって交付されたHU0001-17-2-009による政府の支援を受けて行われた。アメリカ政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ウェアラブル・デバイスは、近年、医療機器としてだけでなく、スポーツや健康追跡(health tracking)用の家電製品としても広く使用されている。例えば、パルスオキシメトリは、現在、血液中のヘモグロビンの酸素飽和度を測定するために使用されており、全身の酸素レベルを示すことができる。ただし、これらのデバイスは、組織内の酸素を直接測定する機能(例えば、経皮酸素モニタリング)を欠いているため、これらのデバイスは、創傷治癒の予測、切断レベル(例えば、手足の切断の最適位置)の決定、高圧酸素療法の監視、虚血の重症度の判定などには特に役立たない。従って、酸素検知の為の改良された携帯型/ウェアラブルシステム及び方法を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本開示の幾つかの実施形態は、患者を監視するためのセンサシステム又は方法を提供する。システム又は方法は、分析物などのパラメータを監視するためにプローブを利用することができる。プローブは、例えば、複数の動作範囲を有するように、又は複数の分析物を監視するように、又は分析物に関連する複数のパラメータを導出するように、構成することができる。コントローラは、複数の動作範囲、複数の分析物、又は複数のパラメータなどに対してプローブを励起できる経時変化プロファイルを作成、選択、又は導出できる。追加的又は代替的に、コントローラは、経時変化プロファイルを調整して、複数の動作範囲の間での切り替え、複数の分析物の間での切り替え、又は複数のパラメータの間での切り替えなどを行うことができる。
【0005】
本開示の一態様によれば、患者を監視するためのセンサシステムが提供される。システムは、少なくとも1つの分析物に敏感であり、患者を監視するための少なくとも第1の動作範囲及び第2の動作範囲を有するプローブであって、光子源からの光子の受信に応答して光を放射するように構成されるプローブと、光子を前記プローブに向けて送るように構成される前記光子源と、前記プローブから放射された前記光を検出するように構成された光検出器と、を備える。システムは、前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラを備える。前記コントローラは、前記光子源に第1の経時変化プロファイルに従って光子を前記プローブに向けて送らせて、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲に対して前記プローブを励起させて前記光子の受信に応答して前記光を放射させ、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲で動作している間に前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく前記光検出器からの光学データを受信し、前記光学データは、第2の経時変化プロファイルを含むように構成される。前記コントローラは、前記第1の経時変化プロファイルと前記第2の経時変化プロファイルとの差を導出し、前記第1の経時変化プロファイルと前記第2の経時変化プロファイルとの差に基づいて前記分析物に関連するパラメータを導出するように構成される。
【0006】
本開示の他の態様によれば、プローブと、光子源と、光検出器と、前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラと、を含むセンサシステムが提供される。前記コントローラは、第1の経時変化プロファイルを生成するように構成され、前記第1の経時変化プロファイルは、少なくとも2つの第1のサブ信号を含み、前記少なくとも2つの第1のサブ信号は、前記少なくとも2つの第1のサブ信号の両方に対して前記プローブを励起し、前記光子源に、前記第1の経時変化プロファイルに従って光子を前記プローブに向けて送らせ、前記プローブに、前記光子を受信することに応答して光を放射させるように構成される。前記コントローラは、また、前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく光学データを前記光検出器から受信し、前記光学データから第2の経時変化プロファイルを導出し、少なくとも2つの第2のサブ信号を抽出し、前記少なくとも2つの第1のサブ信号を前記少なくとも2つの第2のサブ信号と比較することにより、パラメータの条件を判定するように構成される。
【0007】
本開示の更に他の態様によれば、様々な動作範囲にわたって医療患者に関連付けられたパラメータの変化に敏感であるプローブと、光子源と、光検出器とを含むセンサシステムが提供される。前記システムは、また、前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラを含む。前記コントローラは、前記光子源に、複数の第1のサブ信号から構成される第1の経時変化プロファイルに従って光子を前記プローブに向けて送らせ、前記プローブに、前記複数の第1のサブ信号から構成され、前記複数の第1のサブ信号の両方に同時に応答する前記第1の経時変化プロファイルに基づいて、前記プローブに向けて送られた前記光子の受信に応答して光を放射させるように構成される。前記コントローラは、更に、前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく第2の経時変化プロファイルを含む光学データを前記光検出器から受信するように構成される。前記コントローラは、複数の第2のサブ信号を構成する前記光学データからの応答情報を抽出し、前記複数の第1のサブ信号と前記複数の第2のサブ信号との間の位相差、前記複数の第1のサブ信号及び前記複数の第2のサブ信号に反映される時間遅延、又は前記複数の第2のサブ信号の時定数のうち少なくとも1つを導出するように構成される。前記コントローラは、更に、前記導出に基づいて、前記様々な動作範囲にわたって前記パラメータの条件についてのレポートを生成するように構成される。
【0008】
本開示の他の態様によれば、患者の状態を監視する方法が提供される。前記方法は、分析物を監視するように前記患者の近くにプローブを配置し、前記プローブを励起するように前記プローブに光子を届けるように光子源を配置し、前記光子源によって励起されることに応答して、前記プローブによって放射された光を受信するように光検出器を配置することを含む。前記方法は、更に、前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラを、少なくとも2つの第1のサブ信号の両方に対して前記プローブを励起するように構成された前記少なくとも2つの第1のサブ信号を含む第1の経時変化プロファイルを生成し、前記光子源に、前記第1の経時変化プロファイルに従って前記プローブに光子に向けて送らせて、前記プローブに、前記光子の受信に応答して光を放射させるように励起させる。前記コントローラは、更に、前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく前記光検出器からの光学データを受信し、前記光学データから第2の経時変化プロファイルを導出し、少なくとも2つの第2のサブ信号を抽出し、前記少なくとも2つの第1のサブ信号を前記少なくとも2つの第2のサブ信号と比較することにより、前記分析物又は前記患者の状態についてのレポートを生成するように動作させられる。
【0009】
本開示の前述及び他の態様及び利点は、以下の説明から明らかになるであろう。説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照し、図面には、1つ又は複数の例示的なバージョンが例示として示されている。これらのバージョンは、必ずしも開示の全範囲を表すものではない。
【0010】
以下の図面は、本開示の非限定的な例のさまざまな特徴を説明するのに役立つように提供されており、本開示の範囲を限定したり、代替の実装を除外したりすることを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、センサシステムのブロック図の概略図を示す。
【
図3A】
図3Aは、単一のタイプのフォトルミネセンス材料を有する単一のフォトルミネセンス領域に対応するシュテルン・フォルマー曲線の例のグラフを示す。
【
図3B】
図3Bは、それぞれが異なる拡散定数を有するフォトルミネセンス領域に対応する、複数のシュテルン・フォルマー曲線のグラフを示す。
【
図4】
図4は、他のセンサシステムの概略図を示す。
【
図5】
図5は、見やすくする為にセンサシステムのセンサヘッドの一部が取り除かれた、
図4のセンサシステムの基板の断面図を示す。
【
図8】
図8は、別のセンサシステムのブロック図の概略図を示す。
【
図9】
図9は、センサシステムのブロック図の模式図を示す。
【
図10】
図10は、本開示に従って被験者を監視するためのプロセスのフローチャートを示す
【
図11】
図11は、通気性の高い検知フィルムのリン光発光に基づく経皮モニタリング用の光学ワイヤレス・ウェアラブル・プロトタイプを示す。プロトタイプは、検知フィルム、センサヘッド、及び制御電子回路で構成されている。ブロック図は、制御電子回路とセンサヘッド回路を表す。
【
図12】
図12は、室内空気及び純粋な窒素雰囲気中の検知フィルムのリン光の指数関数的減衰のグラフ、及び二重指数関数的減衰へのフィットを示す。
【
図13a】
図13aは、パネルaを示す。パネルaは、励起及び集光光学フィルタの光学密度のグラフを示す。
【
図13b】
図13bは、パネルbを示す。パネルbは、パルスLEDの光スペクトルを示しており、検知ポルフィリンの発光スペクトルと重なる不要なリン光を示す。
【
図13c】
図13cは、パネルcを示す。パネルcは、発光学フィルタがLEDからの不要な光をうまく除去していることを示す光スペクトルのグラフを示す。
【
図14a】
図14a~
図14dは、較正実行中のpO
2及び温度に対する検知フィルムの応答を示す。特に、
図14aは、パネルaを示す。パネルaは、窒素と空気を異なる比率で混合することによって酸素分圧を変化させる、較正中の密閉チャンバ内の温度(センサヘッドのサーミスターで測定)とpO
2(市販の酸素センサで測定)の変化を示す。
【
図14b】
図14a~
図14dは、較正実行中のpO
2及び温度に対する検知フィルムの応答を示す。特に、
図14bは、パネルbを示す。パネルbは、キャリブレーション中の様々な時点でのフォトダイオードと基準信号チャネルのADC出力を示す。フォトダイオード信号は、酸素(及び温度の程度は低い)の変化中に、酸素検知フィルムのリン光が基準信号に対して振幅と位相でどのように変化するかを明らかにする。
【
図14c】
図14a~
図14dは、較正実行中のpO
2及び温度に対する検知フィルムの応答を示す。特に、
図14cは、パネルcを示す。パネルcは、時間に対する、較正期間中の基準信号とフォトダイオード信号の位相(t=0での初期値を引いたもの)を示す。フォトダイオードと基準信号との間の相対位相θ=θ
p-θ
rは、生理学的範囲全体でpO
2の変化に対して高い感度を示す。
【
図14d】
図14a~
図14dは、較正実行中のpO
2及び温度に対する検知フィルムの応答を示す。特に、
図14dは、パネルdを示す。パネルdは、時間に対する放射Iの振幅を示しており、位相に対する応答に近いものとなっている。位相と振幅は、パネルbのデータから多重線形回帰アルゴリズムを使用して取得される。
【
図15】
図15は、インデックスI及びオフセットβ
0の対数で割った各高調波の位相の較正の為の、時間に対するプロット、及び高調波振幅I
iを示す。
【
図16】
図16は、密閉チャンバ内の加熱ステージ上へのセンサヘッドの較正セットアップ及び取り付けを示す。
【
図17a】
図17a~
図17fは、温度依存シュテルン・フォルマー式のフィットを示す。特に、
図17aは、パネルaを示す。パネルaは、寿命データのシュテルン・フォルマー・プロットと、その温度依存シュテルン・フォルマー式へのフィットを示す。このモデルは、酸素分圧と温度の変化に伴う測定寿命の変化を説明することができる。
【
図17b】
図17a~
図17fは、温度依存シュテルン・フォルマー式のフィットを示す。特に、
図17bは、パネルbを示す。パネルbは、温度に対する補完的な寿命データを示している。温度による寿命の依存性は、温度に依存する二次多項式としてケフ(K
eff)をモデル化することによって説明される。
【
図17c】
図17a~
図17fは、温度依存シュテルン・フォルマー式のフィットを示す。特に、
図17cは、パネルcを示す。パネルcは、測定値の95%信頼区間(CI)と共に、開発されたデバイスと市販の基準センサによって測定されたpO
2の比較を示す。寿命データから推定されたpO
2は、基準pO
2データで観察されたすべての特徴を再現しているが、センサ速度と温度補償の不一致に起因するわずかな違いがある。
【
図17d】
図17a~
図17fは、温度依存シュテルン・フォルマー式のフィットを示す。特に、
図17dは、パネルdを示す。パネルdは、同様の機能を明らかにする強度データについての、パネルaの同等のプロットを示す。
【
図17e】
図17a~
図17fは、温度依存シュテルン・フォルマー式のフィットを示す。特に、
図17eは、パネルeを示す。パネルeは、同様の機能を明らかにする強度データについての、パネルbの同等のプロットを示す。
【
図17f】
図17a~
図17fは、温度依存シュテルン・フォルマー式のフィットを示す。特に、
図17fは、パネルfを示す。パネルfは、同様の機能を明らかにする強度データについての、パネルcの同等のプロットを示す。
【
図18a】
図18a~
図18cは、ブタモデルにおける酸素検知プロトタイプのインビボ試験を示す。特に、
図18aは、パネルaを示す。パネルaは、実験装置の図を示す。ヨークシャー豚の前肢の血流は、肘関節に止血帯を適用して閉塞され、組織の酸素化の変化を誘発した。ウェアラブルは、上肢の皮膚の剃った部分に装着された。
【
図18b】
図18a~
図18cは、ブタモデルにおける酸素検知プロトタイプのインビボ試験を示す。特に、
図18bは、パネルbを示す。パネルbは、実験中の温度とpO
2(寿命と強度から推定)を示す。pO
2と温度の両方の推定値に見られるように、デバイスは、完全閉塞中の四肢への血流の低下による生理学的変化に敏感である。
【
図18c】
図18a~
図18cは、ブタモデルにおける酸素検知プロトタイプのインビボ試験を示す。特に、
図18cは、パネルcを示す。パネルcは、両方の酸素分圧推定値の時間導関数を示しており、止血帯の適用と取り外しに続く数分間の局所酸素化の変化率がより早くなることを示している。
【
図19】
図19は、LEDリークの温度依存性を示す。これは、ブランク・コントロール・フィルムを使用したフォトダイオードで測定される。左のグラフは、測定中にセンサヘッドが到達した温度値を経時的に示す。右のグラフは、バックグラウンドの変化率(線形回帰のβ
0)と基本周波数の強度を示す。バックグラウンドの値はI
OFFで得られた値と一致するが、基本モードで観察されるLED漏れは、このデバイスで測定された寿命と分光光度計で測定された寿命との違いを説明する。シュテルン・フォルマー・フィットにLED振幅の線形依存性を含めても、フィットの質は向上せず、得られた係数は無視できる値であった。
【
図20a】
図20a~
図20eは、電子回路図を示す。例えば、
図20aは、パネルaを示す。パネルaは、基準信号調整回路の回路図を示す。
【
図20b】
図20a~
図20eは、電子回路図を示す。例えば、
図20bは、パネルbを示す。パネルbは、LEDを駆動する3.3Vの平均値を持つ最終基準信号による、オシロスコープで測定されたパネルaの異なるノードでの信号を示す。
【
図20d】
図20a~
図20eは、電子回路図を示す。例えば、
図20dは、パネルdを示す。パネルdは、リボンケーブル接続の回路図を示す。
【
図21a】
図21aは、トランスインピーダンス増幅回路のDC及びAC伝達関数のグラフを示す。
【
図21b】
図21bは、トランスインピーダンス増幅回路のDC及びAC伝達関数のグラフを示す。
【
図22】
図22は、オシロスコープによって測定された、基準(一番上の曲線)及びフォトダイオード(一番下の曲線)に対する、ADCへの入力信号を示す。
【
図23】
図23は、モジュロ演算の前(左)及び後(右)における、基準及びフォトダイオードチャネルに対するADCの出力ビットのグラフを示す。
【
図25a】
図25aは、パネルaを示す。パネルaは、5kHzでサンプリングされたf
r=796Hzのフォトダイオードと基準信号を示す。
【
図25b】
図25bは、パネルbを示す。パネルbは、フォトダイオードと基準信号がそれぞれ1000ポイントでサンプリングされ、時間が1/f
r(基準信号の周期)を基数とするモジュロとしてプロットされていることを示す。信号はこのタイムスケール(0.2秒)では変化しないため、これらの信号から単一の共振を非常に詳細に構成することができる。
【
図25c】
図25cは、パネルcを示す。パネルcは、基準信号とフォトダイオード信号の高速フーリエ変換を示す。基準信号は、ローパスフィルタを介してPWM出力から漏れる奇数高調波の存在を明らかにする。フォトダイオード信号には偶数高調波も含まれているが、これはLEDの非線形性に起因する可能性がある。
【
図26a】
図26a~26dは、サインの線形結合によるフォトダイオード及び基準のフィッティングを示す。基準周波数は、基本周波数と高調波3f、5f、及び7fにフィットされ、フォトダイオードは、適切なフィットのために追加の2f高調波を必要とする。
【
図26b】
図26a~26dは、サインの線形結合によるフォトダイオード及び基準のフィッティングを示す。基準周波数は、基本周波数と高調波3f、5f、及び7fにフィットされ、フォトダイオードは、適切なフィットのために追加の2f高調波を必要とする。
【
図26c】
図26a~26dは、サインの線形結合によるフォトダイオード及び基準のフィッティングを示す。基準周波数は、基本周波数と高調波3f、5f、及び7fにフィットされ、フォトダイオードは、適切なフィットのために追加の2f高調波を必要とする。
【
図26d】
図26a~26dは、サインの線形結合によるフォトダイオード及び基準のフィッティングを示す。基準周波数は、基本周波数と高調波3f、5f、及び7fにフィットされ、フォトダイオードは、適切なフィットのために追加の2f高調波を必要とする。
【
図28】
図28は、製剤に使用したPt(II)-アルキン-ポルフィリン(左)及びPt(II)-ピバロイル-ポルフィリン(右)の分子構造を示す。
【
図29】
図29は、プロトタイプデバイス(10×11cm、重さ200g)の概略図を示す。
図29は、また、パネルa、b、及びcを示す。パネルaは、ポルフィリンPPMAでコーティングされたファイバを含む針/カテーテルを示し、パネルbは、シリコーンで再コーティングした後の針/カテーテルを示し、パネルcは、ファイバの隣の針の内側に配置された熱電対を示す。得られたスペクトルは、発光(赤)と励起ピーク(青)と共に右側に示されている。375nm励起光は400nmロングパス・フィルタで部分的にブロックされ、スペクトルに見られるピークは、フィルタによってブロックされなかったLEDからの励起光のテールである。
【
図30】
図30は、ブタモデルにおける実験を示す。最初の実験では、ヨークシャー豚の心臓機能の喪失に続いて四肢の酸素化が測定された。酸素測定は後肢(大腿二頭筋)で行った。その後、針を筋肉組織、皮下組織に挿入し、再び筋肉組織に挿入した。2番目の実験では、ターニケットを配置した後の四肢の酸素化が2頭の豚で測定された。酸素センサは、前肢の尺骨手根屈筋に挿入された。ターニケットは、上腕三頭筋と上腕筋の上にある肘関節の上に適用された。右下の図は、豚の実験に使用された2つの異なるバージョンのデバイスを示す。
【
図31】
図31は、PPMA被覆ファイバ中のPt(II)-ピバロイルから得られた2D較正を示す。Iはリン光(赤/青)の強さであり、I
0は酸素ゼロでのリン光であり、Tは温度であり、TCは1Dキャリブレーションからのキャリブレーション温度であり、k
0とk
Tは、それぞれ、温度非依存及び温度依存のシュテルン・フォルマー消光定数であり、fは、消光剤(quencher)がアクセスできないポルフィリン分子からのリン光を説明する。
【
図32】
図32は、異なるマトリックスについて抽出されたシュテルン・フォルマー分布の比較を示す:TEOSゾル-ゲル中の50μMPt(II)-ピバロイル+1.4wt.%トリトンX-100、0.025mg/μL PEMA及び0.025mg/μL PPMA中のキャビロン(Cavilon(商標))フィルム製剤中の50μMPt(II)-ピバロイル。
【
図33】
図33は、異なる時点での、イソプロピルアルコールによる洗浄を含むインボビでの使用後の、Pt(II)-ピバロイル-PPMAコーティングを備えた同じセンサのキャリブレーションから抽出されたシュテルン・フォルマー分布を示す。全体的な信号強度Iは時間とともに減少したが、相対感度I
0/Iは増加した。
【
図34】
図34は、ヨークシャー豚における心機能喪失後の四肢酸素化を示す。死後1分後から、後肢(大腿二頭筋)の酸素測定を開始した。続いて、
図30に示されるように、針を筋肉組織、皮下組織、そして再び筋肉組織に挿入した。
【
図35】
図35は、ブタ1(ハンプシャー種)に止血帯を配置し、針を用いた測定を行った後の四肢の酸素化を示す。
【
図36】
図36は、豚2(ヨークシャー種)で止血帯を配置した後の四肢の酸素化、及びカテーテルに基づく測定を示す。
【
図37】
図37は、臨床試験中の典型的な測定を示しており、ここで、p
Tは、寿命から導出されたpO
2であり、強度から導出されたp
Iである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
幾つかの典型的な経皮酸素モニタは、酸素感受性材料のフォトルミネセンス消光特性に依存する。例えば、プローブとして機能する酸素感受性材料に励起光が向けて送られると、酸素感受性材料は、応答して(例えば、より低いエネルギーで)光を放射する。酸素感受性プローブによって放射される光の量は、酸素感受性プローブを取り囲む(そして酸素感受性プローブに拡散する)酸素の分圧に依存する。従って、酸素感受性プローブによって受け取られた光の強度値を使用して、酸素分圧を導出することができる。ただし、これらの厳密に強度に基づくアプローチには欠点がある。まず、強度に基づくアプローチは、酸素感受性プローブの適切な向き(又は配置)に大きく依存する。例えば、異なる方向と位置(較正された方向と比較して)は、真の酸素分圧からの誤差につながる可能性がある(例えば、酸素感受性プローブが正しい量の励起光を受信しない、又は光検出器が正しい量の放射光を受信しない、など)。第二に、振幅に基づくアプローチは、不変の環境条件に依存する。例えば、周囲光(又は他のフォトルミネセンス材料を含む他の光源)は、強度値(そして、導出された酸素分圧)に望ましくない影響を与える可能性がある。別の例として、湿度、温度、汗などは、それぞれ、振幅値(そして、導出された酸素分圧)に望ましくない影響を与える可能性がある。更に別の例として、時間の経過とともに、酸素感受性材料は劣化する可能性があり(例えば、光退色(photobleaching)する可能性があり)、この場合、フォトルミネセンス材料が励起光に応答して光を放射する能力を失って、(例えば、強度値が低い為に)実際の分圧値よりも低くなることがある。
【0013】
後述するように、本開示は、これらの欠点を克服するさまざまなシステム及び方法を提供する。例えば、センサシステムが提供される。センサシステムは、1つ又は複数のプローブと、光子を1つ又は複数のプローブに向けて送るように構成された光子源とを含むことができる。1つ又は複数のプローブは、光子源から光子を受け取ることに応答して光を放射することができる。光子源は、1つ又は複数の周波数、波長、波形、周期、振幅などから構成できる経時変化プロファイルによって励起することができる。従って、プローブは、パラメータ(例えば、波形、波長、周期、振幅、及び周波数)の組み合わせから形成される経時変化プロファイルを使用して駆動できる。パラメータの組み合わせは、同時に適用することができ、又は、プローブの異なる動作範囲を選択する為又は異なる分析物をターゲットにする為など、経時的に調整することができる。
【0014】
例えば、パラメータの各セット(例えば、波形、波長、周期、振幅、及び/又は周波数)を選択して、特定の検知プローブからの情報の読み出しを特に対象とすることができる。これは、これらのプローブ(例えば、蛍光体/リン光領域)のそれぞれが異なる特性又は構成(例えば、感度又は応答曲線)を持つように構成することができ、これによって、これらの複数を測定することで、プローブを1つだけ使用したり一度に又は一つの場所で1つのプローブを使用したりする場合よりも高い、例えば感度や精度などの、全体的な動作範囲が得られる。
【0015】
他の実施形態では、同じ光子源によって励起された複数のプローブ(例えば、蛍光体/フルオロフォア)の発光応答は、それぞれ異なる分析物(例えば、酸素、二酸化炭素、一酸化窒素など)に応答しうる。このようにして、複数のプローブから形成されたプローブは、複数の分析物の読み取りをもたらすように制御され、これは同時に発生する、又は分析物の切り替えによって発生する可能性がある。
【0016】
前記センサシステムは、プローブから放射された前記光を検出するように構成された光検出器と、光子源及び光検出器と通信するコントローラを含むことができる。コントローラは、光子源に、第1の周波数を有する第1の経時変化強度プロファイルに従って光子をプローブに向けて送らせるように構成することができる。プローブは、光子の受信に応答して光を放射できる。コントローラは、プローブから放射された光と光検出器との間の相互作用に基づく光検出器からの光学データを受信するように構成することができる。光学データは、第2の周波数を有する第2の経時変化強度プロファイルを含むことができる。第2の周波数は、第1の周波数と実質的に同じ、又は完全に同じでありうる。また、第2の周波数は第1の周波数とは異なりうる。周波数は、時間によって変化する場合もあれば、位相が変化する場合もある。他の周波数も使用できる。この場合、第1の及び第2の経時変化プロファイルの分析は、個々の周波数に対して実行することができる。コントローラは、光学データを分析して、所定のパラメータ又は関心のある情報を決定するように構成することができる。例えば、コントローラは、第1の経時変化強度プロファイルと第2の経時変化強度プロファイルとの間の位相差を決定し、パラメータ、例えば、位相差に基づいて酸素分圧を導出するように構成することができる。
【0017】
本開示の幾つかの実施形態は、酸素検知のための改善されたシステム及び方法を提供することによって、これらの問題(及びその他の問題)を有する酸素モニタに対して利点を提供する。例えば、幾つかの実施形態は、プローブを含むことができる酸素センサを含むことができる酸素センサシステムを提供する。酸素センサは、プローブから光を発し、光学データの形で光を受け取ることができる。この光学データは、時間遅延、位相差、又は時定数を含む応答情報を導出するために使用できる。この応答情報は、プローブの三重項励起状態の寿命に関連しており、酸素分圧を決定するために使用できる。応答情報は、プローブの受信光からの振幅値とは殆ど無関係であるため、このアプローチは、厳密に振幅に基づくアプローチについての上記説明した問題の多くを排除する。更に、応答情報は振幅値に大きく依存しないため、酸素分圧測定値の精度に望ましくない影響を与える条件の変化に基づいて酸素センサを頻繁に較正する必要はない。寧ろ、最初の較正は、エンドユーザーが実施するよりもはるかに長く続く可能性があり、専門家(工場など)が行うことができる。
【0018】
図1は、センサシステム100のブロック図の概略図を示す。センサシステム100は、センサ102と、センサ102と通信するコントローラ104とを含むことができる。センサ102は、1つ又は複数の光子源106、1つ又は複数の光検出器108、プローブ110、光学フィルタ112、114、及び1つ又は複数の温度センサ116を含むことができる。光子源106は、1つ又は複数の光子源(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ)を含むことができ、ある場合には、1つ又は複数の光子源106は単一の光子源を含むことができる。各光子源106は、プローブ110に光学的に結合することができ、プローブ110に向かってそれぞれの光118を放射するように構成することができ、これにより、プローブ110は、光118の吸収に応答して光120を放射する。例えば、光118は、プローブ110のフォトルミネセンス材料と相互作用して、フォトルミネセンス光を発することができる。より具体的な例として、光118は、プローブ110のリン光材料と相互作用して、リン光を放射することができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、光118は、光118の振幅(例えば、光118の強度)が経時的に変化するように放射することができる。例えば、光118は、経時変化強度プロファイルに従って放射することができる。加えて又は代替として、経時変化プロファイルは、単一の周波数を有することができる(例えば、単一の基本周波数を有することができる)、又は複数の異なる周波数を有する(例えば、基本周波数の複数の高調波及び基本周波数を含む複数の高調波を有する)ことができる。幾つかの場合には、経時変化プロファイルは、正弦波、方形波、インパルス関数(デルタ関数など)、又はこれらのそれぞれの一部などで構成できる。幾つかの構成では、経時変化プロファイルは周期的な波(例えば、正弦波など)の場合もあれば、非周期的な波(例えば、正弦波の一部、単一の方形パルスなど)の場合もある。加えて、後述するように、経時変化プロファイル、つまり、光118によって生成される励起場は、これらの特性(例えば、強度、周波数、波形、周期など)の組み合わせで駆動することができる。例えば、光118によって生成される励起場は、波形及び周波数の組み合わせで駆動することができ、波形及び/又は周波数の各セットは、特定の検知プローブから読み出した情報、又は1つのプローブ又は1つのプローブを形成する複数のプローブの動作範囲から読み出した情報を特にターゲットにする。これは、これらのプローブ(例えば、蛍光体/リン光領域)のそれぞれが異なる感度又は応答曲線を持ち、これらの複数を測定することで、1つのプローブを使用するよりも又は一度に又は一つの場所で1つのプローブを使用するよりも、感度又は精度の範囲が広いデバイスが得られるように構成できる。他の実施形態では、異なるタイプのプローブ(蛍光体/リン光)は、それぞれ異なる分析物(例えば、酸素、二酸化炭素、一酸化窒素など)に敏感であるが、同じ光子源によって励起されるため、複数のプローブによる1回の測定で、複数の分析物の同時読取を提供するデバイスを可能にする。
【0020】
幾つかの構成では、コントローラ104(又は酸素センサ102)は、経時変化強度プロファイルに従って各光子源106を駆動するための電気波形を出力するように構成された関数発生器を含むことができる。例えば、波(例えば、正弦波)を定義する電気波形を光子源106に印加して、光子源106に、経時変化強度プロファイル(例えば、正弦波)に従って光118を放射させることができる。幾つかの場合には、光子源106が複数の光子源を含む場合を含め、関数発生器(又は複数の関数発生器)はそれぞれ、それぞれの電気波形をそれぞれの光子源106に出力することができ、光子源106のそれぞれは互いに異なりうる(例えば、各光子源106に異なる経時変化強度プロファイルを有する光118を放射させる)。別の例として、酸素センサ102は、各光子源106に光学的に結合することができる(又は各光変調器をそれぞれの光子源106に光学的に結合することができる)光変調器(又は複数の光変調器)を含むことができる。このようにして、コントローラ104は、光118の振幅が、光変調器によって設定された波に従って経時的に変化するように、光変調器を制御することができる。従って、幾つかの場合には、(例えば、実質的に一定の電圧値によって駆動されることによって)経時的に実質的に一定の(すなわち、そこから10%未満だけ逸脱する)振幅を有する光子源106によって放射される光を、光変調器によって変調することができ、光変調器は、経時変化強度プロファイルに従って時間とともに変化する振幅を有する。幾つかの場合には、各光変調器は、電気光学変調器(例えば、コントローラ104によって制御可能)とすることができる。幾つかの場合には、光子源から放射される光の振幅は、光子源自体又は外部から印加される電圧又は電流によって直接制御できる。幾つかの実施形態では、光子源106は、異なる方法で実施することができる。例えば、光子源106は、レーザー、ランプ(例えば、ハロゲンランプ)、紫外、可視、近赤外光源などを含む発光ダイオード(「LED」)でありうる。
【0021】
幾つかの実施形態では、コントローラ104(又は1つ又は複数の光子源106)は、1つ又は複数の光子源106に駆動信号を提供できる電源を含むことができる。この駆動源はAC電源であってもよい。このようにして、光子源106から放射された光118は、AC電源に従うことができる。換言すれば、光118の経時変化強度プロファイルの形状は、AC駆動信号の形状に実質的に対応することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、酸素センサ102は、1つ又は複数の光子源106に光学的に結合できる(例えば、1つ又は複数の光子源106の前に配置される)光学フィルタ112を含むことができる。光学フィルタ112は、プローブ110によって放射されたフォトルミネセンス光(例えば、光120)を含む波長範囲の光を遮断することができる。例えば、プローブ110が実質的に620nmから実質的に750nmまでの波長範囲の光を放射する場合、光学フィルタ112は、この波長内の光がフィルタ112を通過してプローブ110に向かうのを遮断することができる(例えば、光検出器108が光子源106によって放射された光を検知することを制限することによって、信号対雑音比を増加させる。)幾つかの場合には、光学フィルタ112は、実質的に500nmから実質的に700nmまでに規定される阻止帯域を有する帯域阻止フィルタ(例えば、ノッチフィルタ)でありうる。幾つかの場合には、プローブ110のフォトルミネセンス材料は、(例えば、光学フィルタ112が帯域阻止フィルタである場合)光学フィルタ112の阻止帯域内に位置するピーク発光波長(例えば、645nmである)を有することができる。光学フィルタ112が1枚の光学フィルタとして
図1に示されているが、幾つかの場合には、光学フィルタ112は、複数の光学フィルタを定義することができ、各光学フィルタは(様々な波長にわたって)異なる光学密度応答を有する。従って、複数の光学フィルタは、光学フィルタ112の光学密度応答をまとめて定義することができる。
【0023】
光子源106と同様に、光検出器108は、1つ以上の光検出器(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ)を含むことができ、そして、幾つかの場合には、光検出器108は、単一の光検出器を含むことができる。各光検出器108は、プローブ110に光学的に結合することができ、(例えば、プローブ110のフォトルミネセンス材料と相互作用する励起光に応答して)プローブ110によって放射される光120を受け取るように構成することができる。例えば、プローブ110(例えば、特にプローブ110のフォトルミネセンス材料)は、光118と相互作用することができ、相互作用に基づいて、光118に対してより低いエネルギーレベル(例えば、より高い波長)でありうる光120を放射することができる。次に、光120を1つ又は複数の光検出器108に向けて送ることができ、1つ又は複数の光検出器108と相互作用し、それによって光学データを生成することができる(例えば、光120が光検出器108内で光電流を発生させる)。この光学データは、コントローラ104によって受信され、それに応じて処理されることができる。幾つかの実施形態では、各光検出器108は、異なる方法で実装することができる。例えば、光検出器108は、光学分光計、分光光度計、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、フォトトランジスタなどでありうる。幾つかの構成では、アバランシェフォトダイオードである光検出器108は、アバランシェフォトダイオードが、例えば、他のフォトダイオードよりも受光に対してはるかに敏感でありうるという点で有利でありうる。例えば、アバランシェフォトダイオードは、一部のフォトダイオードよりも光子検出に対する感度が桁違いに高い場合がある。
【0024】
幾つかの実施形態では、センサ102は、1つ又は複数の光検出器108に光学的に結合された光学フィルタ114を含むことができ、光学フィルタ112と同様の方法で実装することができる。例えば、光学フィルタ114は、単一の光学フィルタであってもよいし、光学フィルタ114を形成する複数の光学フィルタであってもよい。それにもかかわらず、光学フィルタ114は、光子源106によって放射された光を含む波長範囲内の光(例えば、光118)が1つ又は複数の光検出器108によって受け取られないように遮断することができる。幾つかの場合には、光学フィルタ114は、実質的に450nmのカットオフ周波数を有するローパスフィルタとすることができる。幾つかの場合には、光学フィルタ114は、実質的に400nmから1,000nmまで、又はより具体的には、実質的に600nmから実質的に850nmまでに定義された通過帯域を有するバンドパスフィルタでありうる。幾つかの場合には、プローブ110のフォトルミネセンス材料は、光学フィルタ114の通過帯域内に位置することができるピーク発光波長を有することができる(例えば、光学フィルタ114がバンドパスフィルタである場合)。
【0025】
幾つかの実施形態では、プローブ110は、パラメータ、変数などの変化に応答することができる。例えば、パラメータは、分析物の濃度、酸素分圧、pH、温度、湿度、バイオマーカーの濃度、ガスの濃度、分子状酸素の濃度、二酸化炭素の濃度、一酸化窒素の濃度、血漿(又は組織)などに溶解した分析物の濃度でありうる。幾つかの実施形態では、プローブ110は、パラメータ、変数などの異なる値に対して異なる寿命値を有することができる。例えば、プローブ110は、パラメータ(例えば、x軸上)及び寿命値(例えば、y軸上)を含むシュテルン・フォルマー曲線に従って光120を発することができる。更に、光120の強度は、パラメータの変更に関して変更することができる。従って、光120の強度(例えば、強度値)は、パラメータ値に対応することができる。他の構成では、経時変化強度応答(例えば、時間値又は位相値)の時間差又は位相差は、パラメータ値に対応することができる。
【0026】
幾つかの特定の構成では、プローブ110は、プローブ110の非限定的な一例である、酸素プローブ(例えば、酸素感受性プローブ)として実装することができる。この場合、センサ102は酸素センサとすることができる。また、プローブ110は、例えば、異なる変数に応答するために、異なる方法で実施することができるが、以下の例では、プローブ110を、異なる酸素濃度(例えば、酸素分圧)を検知できる酸素プローブとして説明する。従って、酸素感受性プローブとして実施されるプローブ110は、それぞれが異なる変数に応答する他の複数のプローブ110に関する。この非限定的な例について説明を続ける。プローブ110は、異なる分子酸素圧(例えば、異なる酸素分圧レベル)を検知するように構成することができる。例えば、プローブ110は、プローブ110のフォトルミネセンス特性を提供できるフォトルミネセンス材料を含むことができる(例えば、フォトルミネセンス材料は、異なる酸素分圧レベルに対して異なる応答をすることができる)。より具体的な例として、フォトルミネセンス材料は、プローブ110のリン光特性を提供できるリン光材料(例えば、ポルフィリン、金属ポルフィリン)であることができる(例えば、リン光材料は、異なる酸素分圧レベルに対して異なる応答をすることができる)。幾つかの場合には、プローブ110は、複数の異なるフォトルミネセンス材料を含むことができ、特に、複数の異なるリン光材料を含むことができる。幾つかの場合には、各フォトルミネセンス材料(又はリン光材料)は、分子状酸素(例えば、O2)のレベルに対して異なる酸素拡散速度又は異なる消光応答を持つことができる。例えば、各フォトルミネセンス材料(又はリン光材料)は、酸素に対して異なる検知範囲を有することができる(例えば、異なるO2範囲に対して異なるシュテルン・フォルマー曲線を有する)。幾つかの場合には、単一の材料は、分子状酸素のレベルに対してそれぞれ異なる消光応答を示す異なるリン光分子成分を含むことができる(例えば、異なるO2範囲に対して異なるシュテルン・フォルマー曲線を有する)。より具体的な例として、ポリマー材料は、材料中の酸素に対する消光定数がすべて異なる、異なる蛍光体を含むことができる。別の特定の例として、材料は同じ蛍光体の複数の配合物を含むことができ、蛍光体の各配合物は異なる消光応答(例えば、異なるシュテルン・フォルマー曲線)を有する。
【0027】
幾つかの実施形態では、酸素感受性でありうるプローブ110は、プローブ110内にある他のガス(例えば、異なる酸素分圧レベル)に対する分子状酸素の異なるパーセンテージに応答して、異なる量の光120を放射することができる。例えば、酸素の量が多いと、フォトルミネセンス材料が消光され、それにより、受け取る光120の量が少なくなる。幾つかの場合には、プローブ110内の酸素分圧レベルは、(例えば、その後プローブ110内に拡散する)周囲環境中の酸素の量、組織を通って拡散する酸素の量(例えば、プローブ110が組織と連通している(例えば、組織と接触している、気体的に連通している、流体的に連通している、又はその他、組織に関する情報を取得している)と仮定する)、フォトルミネセンス材料の量、プローブ110の温度などを含む、多くの要因に基づくことができる。従って、光120の量は、酸素分圧(例えば、組織を通って拡散する酸素の量)を示すことができるが、振幅に基づく測定値のみを使用することは、特に(上述のように)より長い期間にわたって、精度が低くなる可能性がある。
【0028】
例えば、フォトルミネセンス材料は、時間の経過とともに劣化する可能性があり(例えば、光退色(photobleaching)する可能性があり)、フォトルミネセンス材料の一部(例えば、分子)がもはやフォトルミネセンス性(photoluminescent)ではなくなる(例えば、受光に応答して発光しなくなる)。これにより、酸素検知の精度が低下する可能性があり(例えば、予想よりも放射される光が少ないために、酸素分圧が実際のレベルよりも高く検出されるなど)、又は、これにより、強度に基づく検出アプローチを使用する場合、これらの現象を説明するために頻繁な較正が必要になる可能性がある。幾つかの実施形態では、しかしながら、酸素センサシステム100は、プローブ110のフォトルミネセンス寿命の決定、又はフォトルミネセンス寿命を示す情報に依存することによって、酸素レベル(例えば、酸素分圧レベル)などのパラメータを有利に検知することができる(例えば、光120の経時変化強度プロファイルの位相、光118の放射と光検出器108からの光120の受信との間の時間遅延、光120の経時変化強度プロファイルの時定数など)。幾つかの構成では、厳密に強度に基づくアプローチとは異なり、このアプローチは、この情報が時間の経過に伴うフォトルミネセンス材料の劣化(例えば、フォトルミネセンス材料のいくつかの原子が光退色する)から比較的独立している可能性があるという点で有利である。
【0029】
幾つかの場合には、プローブ110の物理的寸法は、所望の分析物又はパラメータ(例えば、酸素分圧)の測定に影響を与える可能性があるため、プローブが例えば酸素分圧などの分析物又はパラメータの変化に適切に迅速に応答できるように、プローブ110のサイズを制限することが重要でありうる。この例の説明を続ける。酸素検知材料は、例えば、酸素検知材料の酸素レベルを酸素検知材料が接触又は近接している組織の酸素レベルと平衡にすることによって、組織内の酸素を検知する。酸素検知材料の物理的寸法が大きいほど、この平衡化プロセスに時間がかかる。更に、酸素検知材料は分子状酸素を含む(又は保持する)ことができ、その放射キネティクスは速くても遅くてもよい。酸素センサの物理的寸法が大きくなればなるほど、平衡化のために拡散又は離脱しなければならない材料内の酸素が多くなる。換言すれば、プローブ110が大きいほど、プローブ110の平衡時間が長くなり、したがって、プローブ110が酸素を測定する速度が遅くなる。従って、プローブ110のサイズを小さくすることによって、プローブ110は、酸素分圧レベルの変化により迅速に応答することができ、酸素検知速度を高めることができる。例えば、プローブ110は、2mm3未満の体積を有することができる。別の例として、プローブ110は、6mm未満の幅、0.05mm未満の高さ、6mm未満の長さなどを有することができる。
【0030】
図1に示されるように、プローブ110は、センサ102のゾーン122内に部分的に(又は全体的に)配置することができ、又は異なる構成においては、ゾーン122の外側に配置することができる(しなしながら、例えば、ゾーンと接触する、気体的に連通する、流体的に連通する、又はゾーンに関する情報を取得できる)。監視される被験者の組織124は、ゾーン122が組織124を取り囲むように配置することができる。例えば、センサ102は、ゾーン122を画定することができる基板を含むことができる。この基板は、組織124が基板の境界内に配置されるように(例えば、接着剤を使用して)被験者に結合することができる。理想的な状況は、基板が皮膚を覆い、ゾーン内の皮膚とセンサ102との間に閉じ込められた空気を残さないことである。幾つかの場合には、ゾーン122を画定する材料は、酸素が周囲環境からゾーン122に拡散できるように(又は逆に酸素がゾーン122から周囲環境に拡散できるように)、酸素に対して半透過性であることができる。このようにして、組織124は、空気からの酸素拡散を完全には遮断されず(これは、例えば、組織124を損傷する可能性がある)、同時にゾーン122は周囲環境から部分的に密閉される(これにより、例えば、センサ102が単純に周囲環境の酸素分圧を測定しない)。従って、以下に説明するように、センサ102は、ゾーン122を画定する材料の酸素透過性、及び大気中の酸素の分圧に対して較正することができる。他の場合では、ゾーンを画定する材料は酸素不透過性でありうる。
【0031】
幾つかの実施形態では、センサシステム100は、経皮酸素モニタとして機能することができ、したがって、皮膚でありうる組織124からの酸素分圧を検知することができる。しかしながら、他の場合には、センサシステム100は、他の組織の酸素レベルを検知することができる。例えば、ゾーン122を省略することができ、プローブ110を、筋肉、血液、皮下組織(例えば、皮下脂肪)などでありうる組織124に挿入することができる。幾つかの場合には、プローブ110は、被験者の開口部、被験者の血管などに挿入することができる。他の場合には、酸素センサシステムは、組織の領域内に挿入又は埋め込むことができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、センサシステム100は、1つ以上の温度センサ116(例えば、1つ、2つ、3つ、4つなどの温度センサ)を含むことができる。幾つかの場合には、第1の温度センサ116は、組織124と熱伝達することができる。例えば、温度センサ116は、ゾーン122内に配置することができ、組織124に接触することができ、ゾーン122を画定する材料に結合(及び接触)することができ、光ファイバに結合(及び接触)することができる。それにも関わらず、第1の温度センサ116は、センサ102によって検知された酸素分圧レベルに影響を与える可能性がある温度の変化を補償するために使用することができる、組織124の温度(又は温度を示す指標)を検知することができる。例えば、温度が上昇するにつれて、酸素の拡散も増加するため、検知された酸素分圧は、(例えば、センサ102が較正された温度に基づく)予想よりも高く(又は低く)なりうる。
【0033】
幾つかの実施形態では、センサシステム100は、光子源106と熱的に連通することができる第2の温度センサを含むことができる。幾つかの場合には、光子源106(例えば、LEDとして実施される場合)は、LEDの温度の変化に基づいて、放射された振幅の変化によって影響を受ける可能性がある。例えば、より高い動作温度では、光子源106は(例えば、より低い温度で動作する光子源106とは対照的に)減少した光出力を有することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、センサシステム100は、プローブ110内の酸素検知材料と熱的に連通することができる別の温度センサを含むことができる。このセンサは、分子状酸素センサが存在する温度を測定できるため、酸素の拡散速度、したがって温度に依存するリン光の消光速度を計算するのに役立つ。従って、温度センサからの温度検知は、光検出器108で受信された光学データを補償するために使用することができる。例えば、光学データの各強度値の各振幅、又は各寿命値の各寿命は、温度センサによって受信された温度値に基づいて調整することができる。代替構成では、センサ102は、プローブ110によって放射された光を受け取るように構成された第1の光検出器108と、温度の変化(又はその他の条件)を補償するために光子源106から放射された光を受け取るように構成された第2の光検出器108とを含むことができる。この構成では、(例えば、光子源106に印加される電気波形などに基づいて推定されるのではなく)光子源106によって放射される光が直接測定されるため、プローブ110から光を受け取るように構成された光検出器108によって生成された光学データは、光子源に関して補償する必要はない(例えば、プローブ110を励起するための光入力が直接知られているため)。
【0035】
幾つかの実施形態では、コントローラ104は、必要に応じて、酸素センサシステム100の構成要素の一部又は全部、コンピューティングデバイス126(例えば、サーバ、スマートフォン、タブレット、コンピュータなどを含む無線通信デバイス)、及びその他のコンピューティングデバイスと通信(例えば、双方向通信)することができる。例えば、コントローラ104は、光子源106、光検出器108、温度センサ116などと通信することができる。このようにして、コントローラ104は、コントローラ104と通信する構成要素のそれぞれからデータにデータ(例えば、命令)を送信し、データを受信する。例えば、コントローラ104は、各光子源106に光を放射させることができ、各光検出器108から光学データを受け取ることができ、各温度センサ116から温度データを受け取ることができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、コントローラ104は、無線通信デバイス(例えば、スマートフォン)とすることができるコンピューティングデバイス126にデータを送信することができる。例えば、コントローラ104は、例えば、コンピューティングデバイス126にデータを送信する(又はコンピューティングデバイス126からデータを受信する)ために、Bluetooth(登録商標)無線通信プロトコルに従ってコンピューティングデバイス126と通信することができる。
【0037】
コントローラ104(例えば、電子コントローラ)は、異なる方法で実装することができる。例えば、コントローラ104は、プロセッサ、メモリ、ディスプレイ、入力(例えば、キーボード、マウス、グラフィカルユーザインターフェース、タッチスクリーンディスプレイなど)、通信デバイスなどのような使用される典型的なコンポーネントを含むことができる。幾つかの場合には、コントローラ104は、プロセッサ(例えば、プロセッサ装置)として単純に実施することができる。他の場合では、コントローラ104は、マイクロコントローラ、システムオンチップ(SoC)、又はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)に基づくシステムとすることができる。幾つかの特定の場合には、コントローラ104は、ラップトップ・コンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、タブレット、スマートフォン、スタンドアロン・コンピュータ・システム、サーバ、マイクロコントローラなどとすることができる。構成に関係なく、コントローラ104は、必要に応じて、下記に説明するプロセスの一部又は全てを実装することができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、コントローラ104はディスプレイを含むことができるが、他の場合には、ディスプレイはコントローラ104から分離することができる(例えば、コントローラ104がディスプレイと通信する)。しかしながら、コントローラ104は、酸素分圧レベル、温度データ、光学データ(例えば、経時変化強度値、光学データからの周波数情報、光学データの光学スペクトルなど)、位相情報、結果など含む、情報をディスプレイ上に提示することができる。幾つかの実施形態では、コントローラ104は、光学データ、温度データなどを含む受信したデータを処理、分析などすることができる。例えば、コントローラ104は、(例えば、光学データへのフーリエ変換、光学データへの高速フーリエ変換などの適用によって、時間領域における関数フィッティングを行って)光学データから周波数情報を導出することができる。別の例として、コントローラ104は、光学データをデジタル的にフィルタリングして、例えば、関心のある所望の周波数を分離することができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、コントローラ104(又は各光検出器108)は、様々なデータソースの適切な受信、修正等を容易にするために、適切なゲイン、レギュレータなどを備えた増幅器(例えば、トランスインピーダンス増幅器)を含むことができる。更に、コントローラ104(又は各光検出器108)は、特定の所望の周波数を分離するために、固定又はプログラム可能な電子フィルタを含むことができる。他の実施形態では、コントローラ104は、酸素検知システムの要素から受け取った信号をデジタイザするためのアナログ・デジタル変換器を含むことができる。このようにして、コントローラ104は、データを処理し、酸素レベルを決定するために、アルゴリズムのアプローチ又は技術を利用することができる。
【0040】
図2Aは、プローブ130の概略図を示す。
図2Bは、
図2Aの線2B-2Bに沿った、プローブ130の断面図である。プローブ130は、プローブ110の特定の実装であることができ、従って、プローブ130はプローブ110に関連する(又は逆にプローブ110はプローブ130に関連する)。
図2Aに示されるように、プローブ130は、半径及び厚さを有する円筒として形成されるが、プローブ130は、例えば、立方体、角柱などであることを含む、異なる様態で形成することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、プローブ130は、本体132と、本体132に結合又は配置されたフォトルミネセンス領域134、136、138、140とを含むことができる(例えば、本体132内に統合される)。各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、1つ以上のフォトルミネセンス材料を含むことができ、その各々はリン光材料であることができる。幾つかの場合には、各フォトルミネセンス材料(例えば、ポルフィリン)は、フォトルミネセンス材料を励起する分析物(例えば、酸素)及び光(例えば、光118)の存在に応答して消光することができる。従って、各フォトルミネセンス材料は、酸素などの分析物の異なる濃度に対して異なる反応を示すことができる。幾つかの場合には、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、異なる分析物検知範囲に調整することができる。例えば、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、それぞれが異なるシュテルン・フォルマー曲線を有する、異なるフォトルミネセンス材料を含むことができる。幾つかの構成では、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、異なるピーク発光波長を有することができる(例えば、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140から放射される光に対応する光学データを互いに分離することができる)。
【0042】
他の場合では、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、実質的に同じ種類及び量のフォトルミネセンス材料(例えば、同じポルフィリン)を有することができ、各領域は、シュテルン・フォルマー式に関して異なる拡散定数「K」を有することができる。従って、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、同じ種類及び量のフォトルミネセンス材料を有することができるが、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、酸素などの分析物又はパラメータの異なる濃度に関して異なる寿命を有することができる。このようにして、フォトルミネセンス領域134、136、138、140のシュテルン・フォルマー曲線の組み合わせからの組み合わせ応答曲線は、単一領域と比較して、より高い感度を有し、より大きな酸素分圧範囲に及ぶことができる。従って、位相差の変化(例えば、2つの経時変化強度プロファイルの間)は、単一の領域のみよりも(例えば、単一のフォトルミネセンス領域と比較して)、大きな酸素分圧によって同等に敏感である可能性がある。幾つかの場合には、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140に異なる拡散定数をもたらすために、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、異なる厚さの半透過性材料(例えば、ポリマー)の層によってカプセル化することができ、これは拡散抵抗として機能する(例えば、層が厚いほど拡散定数が大きくなる)。例えば、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140は、実質的に同じ体積(及び濃度)の(例えば、ポリマーなどの材料内に組み込むことができる)フォトルミネセンス材料を有することができる。この量のフォトルミネセンス材料は、半透過性材料の層によってカプセル化することができ、層の厚さによって拡散定数が決まる(例えば、厚さが大きくなると拡散定数が増加し、又は逆に拡散定数が増加すると厚さが大きくなる)。これにより、それぞれが異なるシュテルン・フォルマー曲線を有する、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140となる。
【0043】
幾つかの実施形態では、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140、特に各領域内のフォトルミネセンス材料は、異なる波長の光によって励起することができる。このようにして、例えば、各光子源は、フォトルミネセンス領域134、136、138、140の1つを選択的に励起することができ、それにより、どのフォトルミネセンス領域134、136、138、140から光学データを受信するかを選択する。他の構成では、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140、特に各領域内のフォトルミネセンス材料は、同じ波長によって励起されることができ(又は複数の波長を含むことができる光118によって励起されることができ)、そして、それぞれが異なる波長を有するそれぞれの光を放射することができる。このようにして、コントローラは、それぞれの領域134、136、138、140から放射された光を受信し、異なる領域から放射された光の受信を最小限(又は皆無)にするように構成された光検出器から光学データを受信することができる。換言すれば、各光検出器は、1つの領域134、136、138、140から放射される光を許容する一方で、他の領域134、136、138、140(例えば、他の3つの領域)からの光が検出器を通過するのを阻止するように構成されたそれぞれの光学フィルタを含むことができる。他の構成では、同じ波長によって励起された異なる領域内のフォトルミネセンス材料は、全て同じ波長を有するそれぞれの光を発することができ、フォトルミネセンス材料はそれぞれ、
図3に示されるように異なる応答寿命を有する。このようにして、コントローラは、全ての領域から光を受け取るように構成された光検出器から光学データを受け取ることができるが、それらの領域の固有の寿命を介して、各領域からエンコードされた信号とパラメータを区別できる。
【0044】
幾つかの構成では、各フォトルミネセンス領域134、136、138、140、特に各フォトルミネセンス材料は、異なる分析物の変化に応答するように構成することができる。例えば、フォトルミネセンス領域134は、部分酸素レベルの変化に応答することができ、フォトルミネセンス領域136は、pHの変化に応答することができ、フォトルミネセンス領域138は、分析物(例えば、異なる分析物)の変化に応答することができる。
【0045】
別の実施形態では、本体132は、酸素などの分析物に応答して十分に異なる寿命又は消光定数を生成するように分子特性がそれぞれ異なる多数の蛍光体を含む。非限定的な例として、酸素が分析物として記載される。上記とは異なり、この実施形態では、リン光分子は本体132全体に均等に広がることができる。単一の蛍光体単独よりも大きな酸素分圧に対応する酸素化データを得るために、寿命又は消光定数の範囲を提供するのは、それらの個々の分子特性である。蛍光体消光定数を定義する分子特性には、蛍光体の構造と組成(例えば、異なる分子構造)、異なる挿入された金属(例えば、白金とパラジウム)、異なる周辺基又は装飾基(例えば、ポルフィリンのみに対して、ポルフィリンデンドリマー)が含むことができる。これらのさまざまな特性は例として挙げられており、酸素に対する様々な寿命、消光速度、消光定数応答を生成するために使用できる、全ての可能な分子特性を構成するわけではない。このように構成されたフォトルミネセンス材料は、同じ波長によって励起することができ、各蛍光体は、全て同じ波長を有するそれぞれの光を放射することができる。材料はそれぞれ、異なる応答寿命、分析物の拡散速度、又は消光定数を持つ。このようにして、コントローラは、全ての蛍光体からの光を受信するように構成された光検出器から光学データを受信できるが、それらの蛍光体の固有の寿命を介して、各蛍光体からエンコードされた信号とパラメータを区別できる。
【0046】
図3Aは、単一のタイプのフォトルミネセンス材料を有する単一のフォトルミネセンス領域に対応するシュテルン・フォルマー曲線の例のグラフを示す。
図3Aに示されるように、単一の曲線がある。
図3Bは、それぞれが異なる拡散又は消光定数を有するフォトルミネセンス領域、又は異なる拡散又は消光定数を有する異なるフォトルミフォ(photolumiphor)に対応する、複数のシュテルン・フォルマー曲線のグラフを示す。
図3Bに示されるように、シュテルン・フォルマー曲線のそれぞれが縦軸(例えば、寿命軸)に沿ってシフトしている。
図3Bには示されていないが、
図3Bのシュテルン・フォルマー曲線の各々は、異なる位置で酸素分圧軸を横切る(例えば、シュテルン・フォルマー曲線はそれぞれ異なるx切片を持っている)。酸素濃度による寿命の変化が最も大きい時、酸素濃度の変化に対する感度が最も高くなる。したがって、
図3Aにおいて、例示的なシステムの感度は、曲率変化が高い時に低酸素で最大になり、指数曲線が平坦である時に低くなる。
図3Bのように、単一のセンサに複数のシュテルン・フォルマー応答を有することによって、酸素検知システムの感度は、より広い範囲にわたって改善され、この広い範囲は、個々の応答曲線を一緒に分析することで得られる。
【0047】
幾つかの実施形態では、寿命はリン光減衰の時定数に関連しているため(例えば、励起デルタ又は方形パルスの後)、位相差(例えば、励起正弦波パルスの後)、そして、時定数又は位相差が導出されると、(例えば、シュテルン・フォルマー曲線を介して)酸素分圧が導出される。
【0048】
他の実施形態では、酸素検知システムの測定された寿命応答は、酸素濃度の関数として測定できる。単一又は複数の蛍光体又はリン光領域の測定された寿命は酸素濃度に依存するため、これらの酸素寿命応答はルックアップテーブルとして記録できる。そして、このルックアップテーブルを使用して、酸素検知システムによって測定された寿命のセットによって酸素濃度の尺度が得られるようにすることができる。更に他の実施形態では、酸素検知システムの測定された寿命応答を酸素濃度の関数として測定して、経験式を生成することができる。そして、酸素検知システムによって測定された一連の寿命によって酸素濃度の尺度が得られるように、この経験式を使用することができる。更に他の実施形態では、酸素検知システムの測定された寿命応答を、酸素濃度の関数として測定して、機械学習モデルを訓練することができる。そして、この機械学習モデルを使用して、酸素検知システムによって測定された一連の寿命によって酸素濃度の尺度が得られるようにすることができる。
【0049】
図4は、酸素センサシステム150の概略図を示す。酸素センサシステム150は、酸素センサシステム100の特定の実装であることができ、従って、酸素センサシステム100は酸素センサシステム150に関する(又は逆に酸素センサシステム150は酸素センサシステム100に関する)。
図4に示されるように、酸素センサシステム150は、酸素センサ152及びコントローラ154を含むことができる。酸素センサ152は、光子源158、160、光検出器162、164、及び温度センサ166を含むことができるセンサヘッド156を含むことができる。幾つかの場合には、光検出器162は、光子源158、160の間に配置することができ、これによって、光検出器162を周囲光から遮蔽できるという点で有利でありうる(例えば、信号対雑音比を減少させる)。幾つかの構成では、光検出器164は、光子源158、160の上(又は下)に配置することができる。幾つかの場合には、光検出器162は、プローブから放射された光を検知するように構成することができ、光検出器164は、各光子源158、160から放射された光を検知するように構成することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、酸素センサシステム150は、センサヘッド156の構成要素をコントローラ154に電気的に接続する電気ケーブル168を含むことができる。例えば、電気ケーブル168の一端を光子源158、160、光検出器162、164、及び温度センサ166に電気的に接続することができ、電気ケーブル168の他端をコントローラ154に電気的に接続することができる。幾つかの場合には、電気ケーブル168は、1本以上の電線を含むことができ、各電線は、一端において、光子源158、160、光検出器162、164、又は温度センサ166のそれぞれ1つに電気的に接続され、他端において、コントローラ154に電気的に接続されるように構成されている(例えば、コントローラ154のピン)。他の場合では、電気ケーブル168は、センサとコントローラとの間のシリアルインターフェースを介して通信することができる。幾つかの場合には、電気ケーブル168により、センサヘッド156(従って酸素検知能力)をコントローラ154に対して異なる位置に配置することが可能になり、これにより、コントローラ154がセンサヘッドよりも大きいサイズになることができる(例えば、被験者に固定するのが難しい)。例えば、センサヘッド156は、電気ケーブル168を介して、例えば、被験者の背中、被験者の肩などを含め、コントローラ154に対して異なる位置及び向きに配置することができる(例えば、電気ケーブル168が柔軟であるため)。幾つかの特定の場合には、電気ケーブルはリボンケーブルにすることができる。他の実施形態では、酸素センサ150全体を単一のハウジングに収容することができ、センサヘッド156及びコントローラ154は同じ物理的装置の一部である。そのような実施形態では、センサヘッド156及びコントローラ154は、物理的構成要素を共有しうる(例えば、両方とも同じ回路基板169から構築されうる)ものであり、電気ケーブル168が回路基板169上の単なるパターンとなる。
【0051】
或いは、
図5を参照すると、幾つかの実施形態では、酸素センサシステム100は、ハウジング170及び基板172を含むことができる。ハウジング170は、コントローラ154を支持することができるコントローラ154に結合することができる。幾つかの場合には、
図4又は
図5に示されていないものの、酸素センサシステム100は、ハウジング170に結合されたバンド、ストラップなどを含み、ハウジング170を被験者の付属肢(例えば、腕、脚、手首など)又は身体の他の部分に対して固定することができる。幾つかの場合には、バンド、ストラップなどは、被験者のさまざまなサイズの部分に対応するように調整できる。例えば、ハウジング170は、異なるサイズに対応するために、バンド、ストラップなどに取り外し可能に連結されるクラップ、クリップなどを含むことができる。幾つかの場合には、そして、ハウジング170は、時計(又は他のウェアラブル電子デバイス)と同様の方法で固定することができる。幾つかの場合には、ハウジングは、例えばシリコーンなどの柔軟な材料で作ることができ、接着パッチとして被験者に貼り付けることができる。他の場合では、ハウジング170はまた、基板172を取り囲み、
図5に示されるように、同じユニットの一部を形成することができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、基板172は、センサヘッド156に結合することができ、被験者と係合することができ、基板172と被験者の組織との間にシールを提供する。基板は複数の層を含むことができる。例えば、基板172は層174、176、178、180を含むことができ、これらは
図5の基板172の断面図に示されている。層174は、そこを通る酸素拡散に対して半透過性であり、層174が被験者の異なる表面に適合するように柔軟であることを可能にする材料のシートであることができる。層174が
図4に正方形として示されているが、層174は、例えば、円形、楕円形などを含む他の形状を有することができる。幾つかの構成では、層174は、層174の外面(例えば、基板172が被験者と係合したときに組織に面する面)に配置された接着剤層を含むことができる。幾つかの場合には、この接着剤層は、層174の外面に沿って部分的又は全体に広がることができる。例えば、接着剤層は、層174の周縁部に近接する領域に広がることができる。幾つかの場合には、層174は、周囲環境に面することができる層174の内面(又は層174の外面)に結合された散乱層、反射層、又は光吸収層を有することができる。このようにして、反射層は、もし反射層が無ければプローブと望ましくない相互作用をする可能性がある、周囲光を反射又は吸収することができる。
【0053】
層174と178との間に配置することができる層176は、前述のプローブとすることができる。幾つかの場合には、層176の位置決め(例えば、層176の挟み込み)は、層176を隔離し、従って、プローブが患者に直接接触するのを防ぐことができる。このようにして、プローブから浸出する可能性のある望ましくない物質が、患者との接触から有利に遮断される。層178は、層176の上及び層176の側面に配置することができ、層178は、層176の上部及び側面の大気を遮断し、検知されるO2のほとんどは皮膚から層174を通って来る。層178は、層174よりも酸素の透過性が低い材料から形成することができる。このようにして、層178を通過してプローブ(例えば、層176)に入る周囲環境からの酸素が低く保たれ、ゾーン182のより正確な酸素分圧測定が可能になる(例えば、ゾーン182に由来しない外部酸素がプローブに拡散しない)。層178は、光子源158、160のそれぞれからの光、及びプローブによって放射された光を含む光を通過させることができる。従って、層178は透明にすることができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、層180は、層174の下に配置することができ(例えば、層174に結合され)、光が層180を通過するのをブロックしながら、層180に向けられた光を散乱させるように構成することができる。従って、例えば、層180は、光散乱層又は光反射層として定義することができる。幾つかの場合には、層180は、光検出器162と位置合わせすることができ、これは、(例えば、ゾーン182から発生する)任意の周囲光が層180を直接通過して光検出器162に到達するのを遮断するのに有利でありうる。むしろ、周辺光は、層180に向けて送られた後に散乱又は反射される。酸素検知層176のルミネセンスは、全方向に放射され、これによって、組織(ゾーン182)に向けて送られた光は組織に入り、検出されない。層180の散乱又は反射の性質は、もし層180が無ければ失われていただろう放射光の一部を、光検出器162に向けて送り返し、その光が検出されるように作用する。非限定的な一例では、層180は、反射するためにマイラーを含んでもよい。別の非限定的な例では、層180は、機能的散乱を提供するために、白い、例えば、シリコーンを含んでもよい。従って、層180がない場合と比較して、プローブによって放射される光をより多く光検出器162に送ることができ、周囲光が遮断され、それによって、収集される総信号及び信号対雑音比が改善される。幾つかの場合には、層180の幅は、層180の周縁近くの周囲光が光検出器162に向けて送られないようにするために、光検出器162の幅より大きくすることができる。幾つかの場合には、光子源158、160、及び光検出器162、164はそれぞれ、層180と位置合わせすることができる。幾つかの構成では、層180は、ゾーン182からの光が各光検出器162、164に到達するのを遮断することができ、各光子源158、160からの光がゾーン182に到達するのを遮断することができる。幾つかの構成では、層180は、酸素検知層のルミネセンスを特異的に反射又は散乱するように構成することができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、基板172の各層174、176、178、180は、
図5に示されるように一緒に結合されているように示されている。他の構成では、層174、176、178、180は異なる構造にすることができる。例えば、層176は、層174内に統合することができ、又は層178内に統合することができる。更に、層176は、層174、176によって部分的に(又は完全に)カプセル化することができる。
【0056】
図5に示されるように、基板172(及び特に層174)は、ゾーン182を画定することができ、ゾーン182は、被験体の組織(例えば、基板172が係合している組織)と、直接接触又は流体的に連通を含む、連通することができる。ゾーン182は、周囲環境(例えば、基板172を取り囲む領域)から少なくとも部分的に密閉されており、酸素は、層174の拡散特性に従って、層174を通ってゾーン182に拡散することができる(又は逆も同様に可能である)。更に、組織からの酸素はゾーン182内に(又はゾーン182から)拡散することができる。従って、プローブに拡散する(及びプローブによって検知される)酸素は、部分的に組織に由来する可能性があり、組織の酸素分圧を導出するために使用できる。幾つかの実施形態では、温度センサ166は、基板172、特に層174と熱的に連通することができる。このようにして、温度センサ166からの温度データは、ゾーン182の温度(従ってその中の酸素)を示すことができ、温度変化を補償するために使用することができる。
【0057】
図6は、基板172に類似している基板200の断面図を示す。従って、基板200は、酸素センサシステム150を実装することができる。基板200は、層202、204、206を含むことができる。
図6に示されるように、層202は、層204内に統合することができるプローブとすることができる。他の場合では、層202は、層204内にネストすることができる。例えば、層204は空洞を含むことができ、層202は空洞内に挿入することができる。幾つかの場合には、層202の外面は、層204の外面と面一であることができ、これは
図6に示されている。幾つかの場合には、層204は、それを通る酸素拡散に対して半透過性であるか、又はそれを通る酸素拡散に対して実質的に不透過性でありうる。構成に関係なく、層202は、層204によって囲まれ、周囲環境から層204を通って層202への酸素拡散が低減される。幾つかの場合には、層178と同様に、光子源及びプローブからの光は、層204を通過することができる。従って、層204は透明であることができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、層206は、層202の下に配置することができる(そして、層206に結合することができる)。層206は、それを通る酸素拡散に対して半透過性であるか、それを通る酸素拡散に対してより透過性でありうる。このようにして、層202は、側面210とは対照的に、側面208からより多くの酸素を受け取る。幾つかの構成では、層206は、層206に向けられて送られて周囲光を散乱又は反射することができ、(例えば、信号対雑音比を低下させる可能性がある)周囲光が光検出器に到達するのを防ぐことができる。幾つかの構成では、基板200は、層206の下に配置された(及び層206に結合された)層212を含むことができ、層212に向けられて送られる光を反射又は散乱することができる。
【0059】
図7Aは、酸素センサシステム150のセンサヘッド156に類似しうるセンサヘッド220の概略図を示す。従って、センサヘッド156は、センサヘッド220と交換することができ、又は本明細書に記載の異なる酸素センサシステム内に統合することができる。
図220に示されるように、センサヘッド220は、被験者の組織224と係合するように構成されたハウジング222を含むことができる。
【0060】
図7Bは、
図7Aの線7B-7Bに沿ったセンサヘッド220の断面図を示す。
図7Bに示されるように、ハウジング222は、組織224と接触、気体的に連通、流体的に連通、又は他の方法で組織224に近接することができるゾーン226を画定することができる。更に、ハウジング222は組織224と係合することができ、これによって、ハウジング222が組織224と(一時的に)シールし、それによってゾーン226を周囲環境から(部分的に)隔離する。幾つかの場合には、ハウジング222は、そこを通って拡散する酸素に対して半透過性でありうる。例えば、図示されていないが、ハウジング222は、ハウジング222を通って導かれる1つ以上のチャネル(例えば、マイクロチャネル)を含むことができる。幾つかの実施形態では、センサヘッド220は、ゾーン226と接触、気体的に連通、又は流体的に連通することができるプローブ228を含むことができ、ゾーン226は、組織224を受容するように、好ましくは空隙の形成を回避するように設計される。この目的のために、ゾーン226は、窪みのないプローブ228を提供することができる。例えば、プローブ228は、ゾーン226内に配置することができ、ハウジング222に結合することができる。
【0061】
幾つかの場合には、センサヘッド220は、プローブ228に光学的に結合された、光子源230、232、及び光検出器234を含むことができる。例えば、
図7Bに示されるように、各光子源230、232、及び光検出器234は、プローブ228と接触、気体的に連通、又は流体的に連通するハウジング222の凹部236内に配置することができる。このようにして、光検出器234は、ハウジング222によって周囲光から遮蔽することができる。更に、ハウジング222は、光が周囲環境からゾーン226に通過するのを遮断することができる。
【0062】
図8は、酸素センサシステム100の特定の実装でありうる、酸素センサシステム250のブロック図の概略図を示す。従って、酸素センサシステム100は酸素センサシステム250に関する(又は逆に酸素センサシステム250は酸素センサシステム100に関する)。
図8に示されるように、酸素センサシステム250は、光子源252、光検出器254、温度センサ256、光ファイバ258、260、262、ツリーカプラ264、及びプローブ266を含むことができる。プローブ266は、光ファイバ258に光学的に結合することができる。例えば、プローブ266は、光ファイバ258の端部に結合することができる。幾つかの場合には、プローブ266は、光ファイバ258上に配置されるコーティングであり得る。
【0063】
幾つかの実施形態では、光ファイバ258の他端は、ツリーカプラ264の出力に結合することができる。それに対応して、光ファイバ260の一端は、ツリーカプラ264の第1の入力に結合することができ、光ファイバ260の他端は、光子源252に光学的に結合することができる。更に、光ファイバ262の一端をツリーカプラ264の第2の入力に結合することができ、光ファイバ262の他端を光検出器254に光学的に結合することができる。このようにして、光子源252からの光は、光ファイバ260内に放射され、ファイバ260、ツリーカプラ264、光ファイバ258を通り、プローブ266に向けて送られることができる(例えば、プローブ266を励起する)。それに対応して、(例えば、光子源252からの光に応答して)プローブ266から放射された光は、光ファイバ258を通って、ツリーカプラ264を通って、光ファイバ262を通って光検出器254に戻ることができる.
【0064】
幾つかの実施形態では、温度センサ256は、プローブ266と熱伝達することができ、従って、温度センサ256からの温度データは、プローブ266が配置される環境の温度を示すことができる。例えば、温度センサは、遠位ファイバ先端でプローブ266と熱伝達することができる。別の例では、温度センサ256は、光ファイバ258と熱的に連通することができる。他の場合では、温度センサ256は、プローブ266に近接する組織と熱伝達することができる。例えば、温度センサ256は、組織に近接する被験者内に配置することができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、光ファイバ258は、医療装置268のチャネル270に挿入されるように構成される。例えば、医療装置268のチャネル270の直径(又は幅)は、500μm未満であることができ、光ファイバ258は、チャネル270の直径よりも小さい(例えば、光ファイバ258の直径は200μm以下である)。幾つかの場合には、光ファイバ258は、プローブ266の一部(又は全体)がチャネル270の外(例えば、チャネル270の遠位端)に配置されるまで、チャネル270を通って前進することができる。幾つかの構成では、医療装置は、針、カテーテルなどを有する注射器とすることができる。他の場合では、医療装置は内視鏡とすることができ、チャネル270は内視鏡の作業チャネルとすることができる。
【0066】
酸素センサシステム250は1つのプローブ266を有するものとして示されているが、他の構成では、酸素センサシステム250は複数のプローブを含むことができ、それぞれが光ファイバ258に沿って長手方向において異なる位置に配置される。幾つかの場合には、光ファイバ258は、光がそれぞれのプローブ266に放射され、それぞれのプローブ266から受信されることを確実にするために、プローブ266の長手方向における各位置にクラック、スコアなどを含むことができる。
【0067】
幾つかの構成では、プローブ266は、複数の層から形成することができる。例えば、第1の層を光ファイバ258に結合することができ、第2の層を第1の層に結合することができ、それ以外の層も同様に結合できる。これによって、プローブ266を形成することができる。各層はフォトルミネセンス材料を含むことができる。この構造は、プローブ266のサイズを大幅に減少させることができる、プローブ266用の薄膜をもたらすことができ、それによって酸素検知速度を大幅に高めることができる(例えば、プローブは酸素分圧の変化に迅速に応答する)。
【0068】
幾つかの構成では、プローブ266は、医療装置268に結合することができる。例えば、プローブ266及び光ファイバ258を医療装置268のチャネル270に挿入し、(例えば、エポキシ、接着剤などを使用して)チャネル270内で医療装置268に結合することができる。このようにして、例えば医療装置268が針である場合、針は、対象に被験者に(例えば、被験者の筋肉領域)挿入することができ、プローブ266をその後に医療装置268内に配置する必要なく、これによって時間を節約できる。別の例では、医療装置が患者に挿入された後、光ファイバを医療装置268に挿入又は繰り返し再挿入することができる。このようにして、特定の時間又は必要なときに、プローブは使用できる。
【0069】
酸素センサシステム250は、2本の光ファイバ260、262を有するものとして示されているが、他の構成では、酸素センサシステム205は、追加の光ファイバを含むことができ、それぞれの光ファイバがツリーカプラ264のそれぞれの入力に結合される。各光ファイバは、光子源252又は光検出器254に光学的に結合することができる。
【0070】
図9は、酸素センサシステム100の特定の実装でありうる、酸素センサシステム280のブロック図の概略図を示す。従って、酸素センサシステム100は酸素センサシステム280に関する(又は逆に酸素センサシステム280は酸素センサシステム100に関する)。
図9に示されるように、酸素センサシステム280は、光子源282、光検出器284、温度センサ286、光ファイバ288、プローブ290、及びビームスプリッタ292を含むことができる。
図9に示されるように、光子源282から放射された光は、ビームスプリッタ292を通過し、光ファイバ288を通って光ファイバ288に入り、プローブ290に向けられて送られる(例えば、プローブ290を励起するため)。それに対応して、プローブ290から放射された光は、光ファイバ288に放射され、光ファイバ288を通り、ビームスプリッタ292によって光検出器284に向けて送られる。
【0071】
図10は、本開示に従って患者を監視するためのプロセス300のフローチャートを示す。302において、プロセス300は、被験者の組織と通信するようにプローブを配置することを含むことができる。本明細書で使用されるように、連通することは、被験者の組織と接触すること、気体連通すること、流体的に連通すること、又は対象の組織に関する情報を取得するように配置されることを含み得る。例えば、これは、プローブを含む基板を被験者の皮膚に結合することを含み得る。別の例として、プローブが光ファイバに結合され、光ファイバ(プローブを含む)が医療機器(例えば、カテーテル、針など)に挿入される場合を含め、医療装置は被験者に(例えば、被験者の筋肉、開口部、管腔などに)挿入することができる。上述のように、プローブは、それぞれの動作範囲を有し、それぞれの信号に基づいて励起されるように構成された複数のプローブを含むことができる。
【0072】
304において、プロセス300は、オプションとして、センサシステムを較正する、又は(例えば、コンピューティングデバイスのメモリから)較正値を受信するコンピューティングデバイスを含むことができる。幾つかの場合には、これには、(例えば、温度応答曲線と分析物濃度とのデータなどの)例えば温度データに基づいて、較正曲線を受信するコンピューティングデバイスを含めることができる。幾つかの場合には、較正曲線はシュテルン・フォルマー曲線である場合がある。較正手順は、以下でより詳細に説明される。
【0073】
306で、プロセス300は、1つ又は複数の光子源に光子を放射させるアナログ又はコンピューティングデバイスを含むことができる。これは、全体として、プローブを励起するように設計された、経時変化プロファイルを作成することによって実現できる。上述のように、プローブは、それぞれの動作特性又は動作範囲を有し、それぞれの信号に基づいて励起されるように構成された複数のプローブ又はプローブ構成要素又はゾーンを含むことができる。この目的のために、経時変化プロファイルは、2つ以上のサブ信号を組み合わせることによって形成され、それぞれのサブ信号は、複数のプローブ構成要素又はゾーンのそれぞれを励起するように設計されうる。
【0074】
例えば、それぞれの経時変化プロファイルは、時間で変化する強度を有してもよく(例えば、光子源によって放射される光の総強度が時間とともに変化しうる)、異なる周波数であるそれぞれのサブ信号から構成されてもよく、異なる周波数のそれぞれは、複数のプローブ構成要素又はゾーンのうち1つをターゲットにするように設計される。非限定的な一例では、コンピューティングデバイスは、第1のサブ信号に従って第1の光子源に光子を放射させ、第2のサブ信号に従って第2の光子源に光子を放射させ、それによって、複数のプローブ構成要素又はゾーンのうち2つを励起する。従って、幾つかの場合には、各経時変化強度プロファイルは周期的であり、複数の周波数を含むことができる。例えば、経時変化強度プロファイルは、正弦波の合計になりうるものであり(例えば、それぞれのプローブ構成要素又はゾーンを励起するように構成された異なるサブ信号にそれぞれ対応する複数の異なる正弦波)、これによって、経時変化強度プロファイルは、複数の異なる周波数を持つことができる。
【0075】
それぞれ異なる周波数を有するサブ信号から経時変化プロファイルを作成することは、非限定的な一例に過ぎない。幾つかの場合には、経時変化プロファイルは非周期的である可能性がある。例えば、経時変化プロファイルは、インパルス(又は言い換えると、デルタ関数)、パルス(例えば、方形パルス、矩形パルスなど)などでありうる。
【0076】
加えて、経時変化プロファイル及び/又はサブ信号は、経時的に変化し得る。例えば、経時変化プロファイルは、例えば測定された酸素濃度の変化に応答して、経時的に変化することができる。この変更には、例えば、基本周波数を変更したり、正弦波を追加又は削除したりするための波形の変更が含まれる可能性があり、これらは、例えば、複数のプローブ構成要素又はゾーンについての、感度、正確さ、精度、動作範囲、又は機能を動的に変更するために使用できる可能性があり、これによって、検出システム全体についての、全体的な感度、正確さ、精度、動作範囲、又は機能を調整する。このフィードバック制御方法を使用して、特定の範囲、例えば酸素濃度の範囲に対してセンサの全体的な機能を最適化することができる。
【0077】
光子源が経時変化プロファイル(従って、経時変化プロファイルを形成するために使用されるサブ信号)に基づいて光を放射すると、308で、プローブが励起される。分析物を監視するように設計されたプローブの非限定的な例、及び分析物としての酸素の非限定的な例では、酸素感受性プローブと1つ又は複数の光子源からの光子との間の相互作用により、プローブは光を放射する。この場合、プローブから放射される光は、経時変化プロファイルを持ち、これは、1つ又は複数の光子源から放射された光子の経時変化プロファイルに対応することができる(例えば、ブロック306で)。少なくとも、これは、プローブからの光子がプローブを励起し、それによってプローブが光を放射するためである。このようにして、光源は第1の経時変化プロファイルに従って動作し、プローブは第2の経時変化プロファイルに従って光を放射する。幾つかの場合には、プローブによって放射される光は、1つ又は複数の光子源から放射される光子の波長よりも長い波長を有することができる。例えば、プローブから放射される光の波長は、赤色光可視範囲内にありうるものであり、一方、1つ又は複数の光子源から放射される光子の波長は、青色光可視範囲(又は紫外範囲)にありうるものである。
【0078】
310において、プロセス300は、プローブから放射された光と1つ又は複数の光検出器との間の相互作用に基づく1つ又は複数の光検出器からの光学データを受信するコンピューティングデバイスを含むことができる。幾つかの場合には、光学データは、プローブから放射された光と第1の光検出器との間の相互作用に基づく第1の光検出器からの第1の光学データを含むことができる。更に、光学データは、プローブから放射された光と第2の光検出器との間の相互作用に基づく第2の光検出器からの第2の光学データを含むことができる。幾つかの場合には、光学データは、1つ以上の光子源から放射された光子の経時変化強度プロファイルに対応することができる(例えば、光学データの強度値によって表される)経時変化強度プロファイルを含むことができる。例えば、光学データの第2の経時変化プロファイルの一部(又は全体)の形状は、1つ又は複数の光子源から放射された光子の第1の経時変化プロファイルの一部(又は全体)の形状に対応することができる(例えば、実質的に同じであることができる)。
【0079】
312において、プロセス300は、コンピューティングデバイスが光学データ(例えば、光学データのもう1つのセット)を使用して応答情報を導出することを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイス又はコントローラは、第1の経時変化プロファイルと第2の経時変化プロファイルを比較又は分析することができる。同様に又は追加で、コンピューティングデバイス又はコントローラは、第1の経時変化プロファイルを作成するために使用されるサブ信号を分析又は比較し、第2の経時変化プロファイルからサブ信号の成分を抽出することができる。幾つかの場合には、そのような比較又は分析では、1つ又は複数の時間遅延、1つ又は複数のフェーズ、1つ又は複数の時定数(例えば、寿命である時定数)を考慮することができる。例えば、1つ又は複数の光子源から放射された光子の経時変化プロファイルがインパルスである場合を含めて、コンピューティングデバイスは、光子が1つ又は複数の光子源から放射され始める最初の時間を(例えば、タイムスタンプを使用して)導出することができる。次いで、コンピューティングデバイスは、光学データからの1つ以上の強度値が閾値(例えば、ノイズであり得る背景光に対応する)を超える(例えば、より大きい)第2の時間を導出することができる。これに対応して、コンピューティングデバイスは、第2の時間から第1の時間を減算することによって時間遅延を導出することができる。幾つかの場合には、コンピューティングデバイスは、上記のプロセスを使用して、最初に異なる開始時間を使用し、2回目の時間を導出するために異なる閾値を使用して、複数の時間遅延を導出できる。これは、経時変化プロファイル及び/又はサブ信号を使用して行うことができる。
【0080】
別の例として、コンピューティングデバイスは、2つの経時変化プロファイル又はサブ信号間の位相差を導出することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、1つ又は複数の光子源から放射された光子に対応する第1の経時変化振幅プロファイルから周波数を有する第1の経時変化振幅波を導出することができ、光学データの第2の経時変化振幅プロファイルから、第2の周波数を有する第2の経時変化振幅波を導出することができる。幾つかの場合には、1つ又は複数の光子源から放射された光子に対応する経時変化振幅プロファイルは、1つ又は複数の光子を駆動するために使用される電気波形からのデータ、又は、1つ又は複数の光検出器(例えば、UV光を受信する光検出器)と直接相互作用する1つ又は複数の光子源(例えば、UV光)からの光子に基づいて1つ又は複数の光検出器によって受信される光学データでありえる。幾つかの場合には、第1の周波数は、第2の周波数と実質的に同様(又は同一)でありうる。次いで、コンピューティングデバイスは、第1の経時変化振幅波と第2の経時変化振幅波との間の位相差を導出することができる。
【0081】
幾つかの場合には、第1の経時変化プロファイルが第1の複数の周波数を含み、第2の経時変化振幅プロファイルが第2の複数の周波数を含む場合を含め、コンピューティングデバイスは、第1の基準周波数を有する第1の基準経時変化振幅波と、第2の基準周波数を有する第2の基準経時変化振幅波とを導出することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、第1の複数の周波数(例えば、基本周波数、基本周波数の1つ又は複数の高調波など)を(例えば、重回帰アプローチを使用することによって)組み合わせて、第1の基準経時変化振幅波とすることができる。言い換えると、コンピューティングデバイスは、複数の周波数(例えば、基本周波数と高調波)をそれらの振幅と位相と組み合わせて、(例えば、多重線形回帰などの統計的アプローチを使用して)1つのシグネチャにできる。同様に、コンピューティングデバイスは、第2の複数の周波数(例えば、基本周波数、基本周波数の1つ又は複数の高調波など)を(例えば、重回帰アプローチを使用することによって)組み合わせて、第2の基準経時変化振幅波とすることができる。幾つかの場合には、第1の基準周波数は、第2の基準周波数と実質的に類似(又は同一)でありうる。次いで、コンピューティングデバイスは、第1の基準経時変化振幅波と第2の基準経時変化振幅波に含まれる周波数間の差、例えば位相差を導出することができる。幾つかの構成では、複数の周波数成分を持つ第1の基準経時変化振幅波を使用することにより、単一の周波数のみが使用された場合(例えば、異なる寿命を持つ複数の発光色素を測定する場合、又は単一の色素の寿命が増加又は減少する可能性があり異なる測定周波数が必要になる場合)よりも、又は、より大きな動作範囲又はダイナミックレンジにおいて、ルミネセンスの検出がより堅牢(例えば、より正確)になる可能性がある。
【0082】
幾つかの実施形態では、コンピューティングデバイス(又は電子フィルタ)は、各経時変化振幅プロファイルをフィルタ処理して、上記の周波数の1つ又は複数を分離できる。幾つかの場合には、これには、時間領域又は周波数領域で経時変化振幅プロファイルを(例えば、フーリエ変換(FT)、高速フーリエ変換(FFT)などを使用することにより)デジタルフィルタリングすることが含まれる。幾つかの場合には、周波数領域でフィルタリングする場合、結果の周波数情報を時間領域に変換して戻して、位相の差を導出できる。
【0083】
さらに別の例として、コンピューティングデバイスは、例えば、1つ又は複数の光子源から放射された光子の経時変化強度プロファイルがインパルスである場合1つ又は複数の光検出器によって受信された光学データの経時変化強度プロファイルから1つ又は複数の時定数を導出することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、時定数を決定するために光学データに指数関数的減衰関数をフィットすることができる。幾つかの場合には、指数関数的減衰関数は、単一の時定数を持つ単一の指数関数的減衰にすることも、複数の時定数を持つ複数の指数関数的減衰にすることもできる。後者の場合、コンピューティングデバイスは、複数の指数関数的減衰から各時定数を導出することができ、時定数の1つ又は複数を利用することができ、又は各時定数を組み合わせて結果の時定数を導出することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、異なる拡散定数を有する異なる領域に埋め込まれた酸素検知色素の異なる寿命を抽出することができる。
【0084】
幾つかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、経時変化強度プロファイルから時定数をスペクトル的に導出できる。例えば、十分に速いデータサンプリングにより、コンピューティングデバイスは、(例えば、経時変化強度プロファイルのFT又はFFTを使用する周波数領域で)経時変化強度プロファイルをスペクトル的に分析することができ、第1の及び第2の基準経時変化強度プロファイルの所与の周波数における(例えば、基本周波数又は高次高調波における)振幅及び位相を導出する。次に、所与の周波数における第1の及び第2の基準経時変化強度プロファイルの間の相対位相は、位相の差によって得ることができ、例えば、tan(θ)=2πτf(ただし、θは相対位相、fは所与の周波数、τは寿命を示す)の関係による正弦波変調の場合、相対位相は寿命を導出するのに使える。
【0085】
314において、プロセス300は、オプションとして、1つ又は複数の温度センサから温度データを受信するコンピューティングデバイスを含むことができる。幾つかの場合には、温度データは、組織と熱的に連通している第1の温度センサからの第1の温度データ、酸素センサと熱的に連通している第2の温度センサからの第2の温度データ、及び1つ又は複数の光子源と熱的に連通している第2の温度センサからの第3の温度データのうち少なくとも1つを含みうる。
【0086】
316で、上記の分析からパラメータを導出することができる。一例として、モニタリングは分析物を検知することを含むことができ、従って、パラメータは分析物に関連してもよい。非限定的な一例として、分析物は酸素であり、監視は、酸素分圧などを介した(例えば、対象の組織の)酸素レベルであってもよく、これは、本明細書に記載の酸素センサシステムを使用して実施することができる。従って、プロセス300は、応答情報に基づいて酸素分圧を決定するコンピューティングデバイスを含むことができる。例えば、これは、位相差、時間遅延、又は時定数のうちの少なくとも1つに基づいて酸素分圧を導出することを含みうる。特に、位相差は、酸素分圧を導出するために位相差と酸素分圧とを関連付ける較正曲線(例えば、シュテルン・フォルマー曲線)と比較することができる。同様に、遅延時間は、酸素分圧を導出するために遅延時間と酸素分圧を関連付ける較正曲線(例えば、シュテルン・フォルマー曲線)又は所定のルックアップテーブルの少なくとも1つと比較することができる。更に、時定数(又は言い換えれば寿命)は、時定数又は位相差を酸素分圧に関連付ける較正曲線(例えば、シュテルン・フォルマー曲線)と比較することができる。
【0087】
幾つかの場合には、応答情報に加えて、温度データ(例えば、ブロック314で受信される)を使用して、酸素分圧を導出することができる。例えば、較正曲線(例えば、シュテルン・フォルマー曲線)は、温度依存性を含む可能性があり、従ってコンピューティングデバイスは、応答情報とともに、組織と熱的に連通する温度センサからの温度データを使用することができ、酸素分圧を導出する。
【0088】
318で、プロセス300はレポートを生成及び/又は伝達することができる。この場合、コンピューティングデバイスは、コントローラ及び/又は別個のコンピューティングデバイスであり得る。非限定的な一実施形態では、デバイスは、波形を測定し、コントローラに組み込まれたアルゴリズムを有し、オンボード処理を行い、それに接続された電話又はコンピュータに、測定したpO2を単に伝える。別の非限定的な例示的実施形態では、装置は波形を電話又はコンピュータに送信し、電話又はコンピュータ上で信号を分析してpO2値を取得する。幾つかの場合には、コンピューティングデバイスが、酸素分圧が閾値を超えていると判断した場合、コンピューティングデバイスは、例えば、アラームを起動したり、ディスプレイにグラフィックを表示したりすることにより、ユーザ(例えば、医者)に警告するか、又は別の方法で通知することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、酸素分圧が閾値未満であることに基づいて組織の虚血の存在を決定することができ、コンピューティングデバイスはそれに従ってユーザに通知することができる。別の例として、コンピューティングデバイスは、酸素分圧が閾値を超えていることに基づいて酸素中毒の存在を決定することができ、コンピューティングデバイスはそれに従ってユーザに通知することができる。従って、別の非限定的な例では、プロセス300を使用して、組織(例えば、酸素センサと係合している)の虚血(例えば、血液の欠乏)の存在を判定するか、又は超生理学的な酸素濃度(supraphysioglical oxygen concentration)の存在(例えば、組織が高圧治療を受けている場合)を判定することができる。
【0089】
幾つかの場合には、ブロック318のレポートに関係なく、プロセス300は、プロセス300の1つ又は複数のブロックの結果を(例えば、レポートの形式で)表示するコンピューティングデバイスを含むことができる。例えば、コンピューティングデバイスは、応答情報、1つ又は複数の経時変化強度プロファイル、酸素分圧などを表示できる。幾つかの場合には、プロセス300は、ブロック306に戻って被験者の酸素分圧値を継続的に監視することができる。これは、たとえばリアルタイムで実行できる。
【0090】
上述のように、プロセス300は、必要に応じて、1つ又は複数のコンピューティングデバイス(例えば、コントローラ)を使用して実施することができる。プロセス300は、必要に応じて、1つ又は複数のコンピューティングデバイス(例えば、コントローラ)を使用して実施することができる。酸素分圧を監視する非限定的な例では、酸素分圧の導出は、例えば、アルゴリズム(複数の線形回帰、非線形回帰、ロックイン検出、FFTなど)によって、ルミネセンスの寿命及び強度の推定を通じて行うことができる。他の非限定的な例において、寿命及び強度は、機械学習を通じて得ることができる。更に他の非限定的な例では、酸素分圧は、例えば、較正・ルックアップテーブル、経験式に基づくモデル、又は機械学習によって、寿命及び強度から計算することができる。
【0091】
上述のように、プロセス300は、較正曲線(例えば、シュテルン・フォルマー曲線)又は1つ以上の較正値を導出することを含むことができる。幾つかの場合には、プローブは、被験体の組織と接触、気体的に連通、又は流体的に連通、又は別の方法で被験体の組織に関する情報を取得できるように配置されるのではなく、複数の酸素分圧(及び温度)の既知の条件に配置することができる。次に、各酸素分圧値(及び各温度値)についてブロック306~314を完了することができる。次に、コンピューティングデバイスが、既知の酸素分圧値(及び既知の温度値)、対応する応答情報(例えば、時間遅延、位相差、時定数など)、及び(必要に応じて)対応する温度データに基づいて、較正曲線を作成する。幾つかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、作成された較正曲線を別の較正曲線(例えば、理想的なシュテルン・フォルマー曲線などの理想的な較正曲線)と比較することに基づいて、1つ又は複数の較正値を導出できる。例えば、これらの曲線のそれぞれの点の間の差を導出し、導出された酸素分圧を改良するために(例えば、ブロック316で)使用することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、対応する較正値を使用して、導出された酸素分圧を増加(又は減少)させ、より精密な分圧とすることができる。
【0092】
実施例
以下の実施例は、本開示の態様をさらに説明するために提示されたものであり、決して本開示の範囲を限定することを意味するものではない。以下の実施例は、本開示の例であることを意図しており、これら(及び本開示の他の態様)は理論的に拘束されるものではない。
【0093】
実施例1
ウェアラブル・デバイスは、近年、医療機器としてだけでなく、スポーツや健康追跡(health tracking)用の家電製品としても広く使用されている。現在利用可能な技術で見過ごされがちな健康の測定基準は、細胞エネルギー生産の重要な要素である生体組織の酸素分子の直接測定である。ここで、本開示は、通気性の高い酸素検知フィルム内に埋め込まれた金属ポルフィリンの酸素依存性リン光の定量化に基づく、経皮酸素モニタリング用のワイヤレス・ウェアラブル・プロトタイプの開発について報告する。このデバイスは完全に自己完結型で、重量は30グラム未満で、オンボードの信号解析を実行し、コンピュータやスマートフォンと通信できる。ウェアラブル・デバイスは、酸素の存在下で退色を起こすリン光の寿命と強度を検出することにより、皮膚表面での組織の酸素化を測定する。モーション・アーチファクトの影響を受けないだけでなく、温度や湿度に関連する変化する大気条件でも堅牢で信頼性の高い測定を提供する。ブタの虚血モデルでの予備的なイン・ビボ・テストでは、四肢灌流の減少を誘発すると、生理学的範囲内の組織の酸素化の変化に、ウェアラブルが非常に敏感であることが示される。
【0094】
生理学的変数の継続的なモニタリングを提供するウェアラブル・デバイスは、近年、医療機器としてだけでなく、スポーツや健康追跡(health tracking)用の家電製品としても広く使用されている。市販のデバイスは、心拍数や呼吸数、血中酸素飽和度、運動、力、温度、筋肉の活性化など、さまざまな変数を測定できる。ただし、市販のウェアラブルには、いくつかの重要な生理学的パラメータを測定するための基本的な機能がまだない。
【0095】
酸素濃度は、細胞のエネルギー生産機構の重要な構成要素であるにもかかわらず、測定されないことが多い非常に重要なパラメータである。皮膚表面での組織の酸素分圧又は酸素分圧(tissue oxygen tension又はoxygen partial pressure、pO2)の知識は、火傷、四肢の損傷、及び外科的介入における診断アプリケーションにとって決定的なものになる可能性がある。この目的のために、血中酸素飽和度測定(stO2)法がよく使用される。ただし、これらの飽和測定は組織酸素含有量の間接的な測定であり、血流が損なわれている場合は正確な測定値を提供しない。対照的に、経皮酸素分圧測定(TCOM)は、細胞によって代謝される準備ができている組織で利用可能な酸素の直接測定であり、血液による酸素供給や下にある組織の毛細血管床の状態だけに依存するわけではない。TCOMデバイスは、組織の局所的な酸素化を測定し、pO2の測定がそれぞれ組織の虚血又は酸素中毒の開始を示す可能性があるため、ターニケット又は高圧治療の適用などの状況で有利になる可能性がある。一方、血中酸素飽和度は、それぞれの場合で0%又は100%の値に達すると、これらのシナリオの更なる変化を測定する能力を失う。
【0096】
酸素飽和度を測定するデバイスと比較した場合の利点にもかかわらず、pO2と酸素分圧の測定は、広く利用されていない。なぜならば、従来のTCOM技術は、かさばる機器の使用、時間のかかる頻繁なベッドサイドの較正、正確な配置、及び十分に訓練されたオペレーターの使用を伴うためである。組織の酸素化モニタリングのためのポータブル技術を達成するための本明細書に記載のアプローチは、酸素によるリン光が起きる金属ポルフィリン分子に基づく光学ツールを作成することである。この原理を利用することで、透明フィルム内に組み込まれた酸素検知蛍光体の寿命の変化に対応できる経皮酸素測定用センサを作成できる。ただし、リン光寿命を検出する機能は、通常、面倒な実験技術と大型のベンチトップ機器を必要とするため、多くの場合代償を伴う。TCOM技術の移植性、使いやすさ、及びデータ収集機能を改善するための初期の試みには、研究における酸素検知分子の使用が含まれており、この研究においては、改造されたデジタルカメラで発光強度画像を収集することにより組織の局所酸素化及び酸素消費率の2Dマップが生成された。強度に基づくアプローチは、制御された実験条件又は設定を使用して、特定のシナリオで優れたパフォーマンスを発揮できる。例えば、ペイント・オン(paint-on)の酸素検知包帯を使った研究では、酸素化の経皮モニタリングが四肢の虚血を検出できることが分かった。ラットモデルで動脈結紮が行われたとき、経皮酸素化が組織の健康を測定するための非侵襲的な代替手段になり得ることが証明された。一方、本明細書に記載されているリン光寿命に敏感な技術は、通常、強度に基づく方法の問題となる可能性のあるセンサの形状、励起源の強度、光退色などの変化による信号の変動の影響を受けないため、顕著に有利である。低電力エレクトロニクス、通信、及び材料工学における現在の進歩は、TCOMウェアラブルの開発に貢献しているが、これらは嵩張る(例えば、大型の外部読み取り電子回路に依存する)か、侵襲的なコンポーネント又は手順を伴う。
【0097】
この実施例では、イン・ハウスで開発された金属ポルフィリンに基づいて、組織の酸素化を継続的に監視することを目的とした、ワイヤレスで非侵襲的なウェアラブルプロトタイプが開発され、金属ポルフィリンは、ポリマーフィルム内に容易に埋め込むことができるため、生理学的なpO2範囲全体で明るい発光を示す材料が得られる。
【0098】
図11は、通気性の高い検知フィルムのリン光発光に基づく経皮モニタリング用の光学ワイヤレス・ウェアラブル・プロトタイプを示す。プロトタイプは、検知フィルム、センサヘッド、及び制御電子回路で構成されている。ブロック図は、制御電子回路とセンサヘッド回路を表す。
【0099】
レスポンスと較正
ウェアラブル・デバイスは、通気性の高い多層酸素検知フィルムのリン光発光の寿命τと強度Iの変化を検出することにより、皮膚表面での組織の酸素化を測定する。このフィルムは、pO
2が0~160mmHgの範囲において明るい発光を示し、発光ピークは650nmである。室内空気(pO
2=160mmHg)で約15μs、酸素ゼロで約96μsの寿命が得られる(
図12を参照)。酸素検知フィルムは、以下の幾つかの層で構成されている(フィルムの向きについては
図11を参照):大気中の酸素から皮膚を部分的に隔離する半透過性の透明なメンブレン、金属ポルフィリンが埋め込まれたポリ(プロピルメタクリレート)(PPMA)フィルム、透明で通気性のあるメンブレン、及び外部光源からの光絶縁としても機能しながら、後方散乱によって収集された放射を増加させる、スピンコーティングされた白い通気性のある層。フィルムは相対湿度の変化に影響されず、これらの酸素検知材料を人間のパフォーマンスを監視するウェアラブル・デバイスに実装する際に直面する重要な課題の1つを解決する。汗は、気候条件や体の位置によって大きく変化する可能性がある。
【0100】
図11に示されるように、装置は無線対応マイクロコントローラを中心に構築され、小さなセンサヘッドと主制御電子回路を備える。粘着性の酸素検知フィルムは、直径14mm、厚さ3mmのセンサヘッドに貼り付けられ、3Dプリントされたケース内のフレキシブルプリント回路基板(PCB)で構成されている。PCBは、以下の幾つかの小さな表面実装電子回路のホストとなる:385nmにピーク波長を持ち蛍光体分子を励起し酸素検知フィルムからの放射を生成する2つの高出力UVA LED(ルミレッズ(Lumileds)、オランダアムステルダム)、放射を検出するPINフォトダイオード(オスラム(Osram)、ミュンヘン、ドイツ)、及び温度を測定するサーミスタ(TDK、東京、日本)。LED励起は、2つの超薄型フレキシブル光学ノッチフィルター(エドモンド・オプティクス(Edmund Optics)、米国ニュージャージー州バーリントン)を積み重ねることによってフィルタ処理される。これは、対象範囲で400nmショートパスフィルタとして機能する(
図13参照)。LED発光をブロックする500nmロングパス・コレクション・フィルタは、柔軟な405nmロングパス・フィルタ(エドモンド・オプティクス(Edmund Optics)、米国ニュージャージー州バーリントン)とポリアミドフィルム(デュポン(DuPont)、米国デラウェア州ウィルミントン)を組み合わせることによって製造される(
図13参照)。センサヘッドは、細くて柔軟なリボンケーブルを介して制御電子回路に取り付けられている。フレキシブルコネクタとセンサヘッドを制御電子回路ケースの下に折りたたむことで、センサヘッドと酸素検知フィルムが機械的ストレスから保護される。この設計は、センサヘッドを保護し、接着を提供するだけでなく、皮膚上のpO
2検知フィルムについて気密で安定したシールを提供するのに役立つ(
図11を参照)。このデバイスは、完全に自己完結型であり、オンボードで信号分析を実行し、重量がわずか約30gであるという点で、真のウェアラブルである。
【0101】
図11のブロック図と
図14(例えば、パネルb)に示されるアナログ・デジタル変換器(ADC)の出力波形に示されるように、デバイスは、正弦波状の基準信号(f
r=796Hz)で励起LEDを駆動し、同じく正弦波である、基準信号と放射信号の間のマイクロ秒の遅延又は位相(θ)を測定することにより、酸素検知蛍光体のリン光寿命の変化を検出する。放射に存在する寿命が1つだけの場合、位相は式tan(θ)=2πτf
rによって寿命に関連付けることができる。フィルムには、分子の97%が同じ寿命を示す単一のリン光色素が含まれているため(
図12を参照)、リン光寿命を完全に特徴付けるには正弦波基準信号で十分である。以下で説明するように、これにより、マイクロコントローラなどの計算能力が制限されたデバイスのオンボードで実行できる単純な信号解析アプローチが可能になる。寿命τの変化は、発光の強度Iにも反映される。これは、pO
2の変化に応答し、駆動周波数で測定された信号の振幅から得られる。マトリックス形式の多重線形回帰に基づくアルゴリズムが開発され、放射の寿命と強度が抽出された。
【0102】
測定された変数Xの依存性、つまり、pO
2によるτ又はIは、シュテルン・フォルマー関係から修正された次の式によって支配される。
X = X
0/(1 + K
eff * pO
2) + X
OFF (1)
但し、X
0は酸素が無い場合のXの値であり、X
OFFは測定システムから生じる酸素に依存しないオフセットである。動的消光及び拡散制御プロセスの場合、シュテルン・フォルマー消光定数、K
effは多層膜の酸素拡散係数の尺度である。K
effは、主にポルフィリンの衝突消光速度のために温度依存性であり、依存の程度は低いものの、ポリマー層の酸素拡散パラメータの変化に依存し、以下に見られるように、エイジングによる変化も影響する可能性がある。温度に対するK
effの2次依存性(K
eff = K
0 + K
1 *(T-32) + K
2* (T-32)
2)が見つかった。これは、
図1に見られる最終設計で製造された試作品で測定されたデータで観察された傾向を説明するものである。異なる3Dプリント材料が使用されたデバイスの上記説明では、ごくわずかな二次項が生成された。これは、表1(下記)に示すデータで見ることができ、センサの形状の僅かな違い、フォトダイオード信号へのLED漏れ、及びセンサヘッドの熱特性によって説明される。
【0103】
図15は、インデックスI及びオフセットβ
0の対数で割った各高調波の位相の較正の為の、時間に対する強度のプロット、及び高調波振幅I
iを示す。例えば、左のグラフは時間に対する各高調波の位相変化を示し、中央のグラフは時間に対する各高調波の高調波振幅の対数を示し、右のグラフは時間に対する発光強度を示す。
同じ酸素検知フィルムの3つの異なる較正の寿命と強度較正パラメータ:初期較正、センサヘッドのフィルムを取り外して再配置した後に実行される較正、及びデバイスをフィルム付きで3か月間保管した後の最終セット。各パラメータのパーセント変化は、以前に測定された値に関連する。K
2値は、フィッティングの結果としてゼロに近い値が得られたため、表示されない。
【表1】
【0104】
試作品の性能を評価するために、センサヘッドに酸素検知フィルムを装着し、デバイスを密閉された較正チャンバに挿入した(
図16を参照)。較正中の温度と酸素分圧の変化を
図14(例えば、パネルA)に示す。この間、pO
2の最初のスイープは高い体温で実施され、2回目のスイープは室温で実施される。
図14のパネルb及びcに見られるように、pO
2が大気値(160mmHg)と純粋な窒素雰囲気(0mmHg)との間で徐々に掃引されるにつれて、θpは単調に増加した。測定中、室温(24℃)と皮膚温度(32℃)の間で温度を変化させた。θ
pとθ
rはどちらも同様の変動を示す。これは、PWM出力が「オン」になってから、ADCサンプリングが開始するまでの経過時間におけるpO
2測定値の僅かな違いに起因する。θpの変動は、例えば、θ=θ
p-θ
r(以降、位相と呼ぶ)のように、フォトダイオードと基準信号の間の相対的な位相変化を計算することによって除去できる。
図14のパネルdに見られるように、放射の強度は、非常によく似た応答を示す。寿命信号と強度信号の両方が高い信号対雑音比(それぞれ29dBと31dB)を示し、生理学的範囲全体で良好な信号コントラストを達成するために平滑化やフィルタリングを必要としない。これらの結果は、複数の試作品とO
2検知フィルムで一貫していた。
【0105】
図17のパネルa及びb(及びパネルd及びe)は、それぞれpO
2及び温度の変化による寿命及び強度データの特徴が、温度依存のシュテルン・フォルマー式によって十分に記述されることを示す。
図17のパネルc及びdに示される、寿命及び強度データから得られたpO
2の推定は、それぞれ、基準用の市販のpO
2センサで測定されたものとほぼ一致しており、その差異は、両方のデバイスの応答時間の違いと、各センサがチャンバ内の位置によって異なる温度勾配を経験していることと、が原因である可能性がある。
【0106】
検知フィルムの配置に関連する較正パラメータの再現性をテストするために、既に較正された酸素検知フィルムをデバイスから取り外し、センサヘッドに再度取り付けた。その後の較正では、寿命について得られたすべてのフィッティング・パラメータ(表1を参照)が以前の値とほとんど変わらないことが示された。ただし、強度のフィッティング・パラメータは、酸素検知フィルムの以前の位置に対して変化することが観察された。センサの配置に対する寿命パラメータの不変性は、方向に大きく依存する強度に基づくアプローチに対しての、寿命に基づく測定の重要な優位性を強調する。
【0107】
フィルムを取り付けたデバイスを、部屋の照明からは保護されたが、周囲条件の変化からは保護されないように、3か月間保管することにより、フィルムの経年劣化も経時的にテストされた(表1を参照)。フィルムの較正により、θ0及びθOFFパラメータは以前の較正と比較して変更されていないことが明らかになったが、K0とK1は大幅に減少した。これは、フィルムの酸素拡散特性が時間の経過とともに変更されたことを示している可能性がある。強度パラメータは明確な傾向を示さなかった。
【0108】
インビボ・ブタモデルにおける組織酸素化の検知
生理学的変化中の組織の酸素化を監視するデバイスの応答を評価するために、ブタモデル(ヨークシャー豚)でインビボ試験が行われた。ブタの解剖学、特にその皮膚は人間の皮膚(構造、厚さなど)と非常に似ているため、ブタモデルは生理的酸素化の変化を経皮的に監視するのに適している。
図18のパネルaに示すように、30分間の間、肘関節の上(上腕三頭筋、上腕筋、及び上腕筋)に止血帯を適用することによりブタモデルの前肢への血流を遮断することにより、組織の酸素化の変化を誘発した。30分間の待機期間は、デバイスが皮膚pO
2に平衡化できるように、以前の研究に基づいて選択された。動物手術プロトコルは、マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)の施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee, IACUC)によって審査及び承認された。
【0109】
関心領域を準備するために、豚の前部上肢の10cm×10cmの領域を石鹸水で洗浄し、全ての毛が除去されるまで剃毛した。剃毛後、イソプロパノールで皮膚を拭いた。
図18のパネルbに見られるように、酸素検知フィルムをセンサヘッド上に予め固定し、デバイスを皮膚に適用する前に、基準として大気中のpO
2を数分間サンプリングした。開始温度(19℃)が較正中に考慮された温度範囲(23~32℃)の外にあったため、基準読取値は160mmHgとは異なった。データに見られるように、寿命pO
2は、温度が較正範囲(T23℃)内にある場合、160mmHgに近い室内空気値を示した。この問題は、較正温度範囲を拡大することで簡単に解決できる。デバイスを豚の皮膚に装着すると、質量が小さいため、センサヘッドは約3分で熱平衡に達した。リン光の寿命と強度から得られるpO
2の両方の推定値は、フィルムと組織の間に閉じ込められた初期酸素、血液によって供給される酸素と筋肉や皮膚によって消費される酸素とのバランスである組織の酸素化、皮膚による大気中の酸素摂取量、皮膚の酸素透過性、及び医療用接着剤層を介した大気中の酸素透過性によって、指数関数的に減衰する傾向を示した。
【0110】
30分間の平衡期間の後、止血帯が適用され、寿命と強度の両方のpO
2メトリクスが、より速い速度で減少することにより、損なわれた血流に即座に応答することが観察された(
図18のパネルbを参照)。これは、
図18のパネルcに示されるpO
2の時間導関数をプロットすることによって明らかに見られる。これは止血帯のシナリオでの酸素消費率を示している。データは、ターニケットの適用(閉塞)の約5分後に最大値に達し、加速度的に減少するpO
2勾配を明らかにした。血流の不足により、手足の温度は元のベースライン温度から2.5℃も低下した。止血帯は30分後に解放され、四肢の温度がベースラインに戻るのが観察されたが、pO
2は再び約5分間減衰率の増加を示した。四肢の皮膚の激しい白化とともに発生したこの更なる腐敗は、ターニケットの配置による不可逆的な組織損傷の存在を示している可能性がある。
【0111】
これらの予備的な結果は、生体組織の酸素化を監視するアプリケーションに対するデバイスの大きな可能性を示す。創傷治癒の予測、切断レベルの決定、高圧酸素療法、虚血の重症度などの診断又は監視ツールとしての機能が強化されているにもかかわらず、組織の酸素化を直接測定するデバイスは、扱いにくいツール、複雑な較正手順、広範なユーザトレーニングの必要性などの問題が原因となり、広く使用されていない。開発されたウェアラブル・デバイスは、コンピュータやスマートフォンなどの複数のデバイスと簡単に接続できる、容易に入手できる低電力の電子コンポーネントを使用することで、これらの問題を克服している。デバイスに必要なコンポーネントは非常に少なく、商用アプリケーションではサイズを大幅に縮小できる。そのため、ここで説明する技術は消費者向けデバイスに確実に応用できるため、ポイント・オブ・ケアでの組織酸素の評価が可能になるだけでなく、リソースが少ない環境でも利用できるようになる。更に、時系列から寿命と強度を抽出するために開発されたプロセスは、最小限のメモリ要件で単純な行列演算を行うため、計算能力の低い組み込みデバイスでの実装に適する。
【0112】
測定は、デバイスと較正間で一貫して再現可能であり、温度と湿度の変化に対して堅牢である。pO
2の測定は寿命検出に基づいているため、このデバイスは、バックグラウンドノイズ、励起源の変動、光退色などの要因による不安定性を示す可能性がある純粋な強度に基づく測定よりも重要な利点を示す。これらの主張は、フィルムの再配置に関係なく一定のままである寿命較正パラメータによってサポートされており、寿命に基づく測定が動きに対してより耐性がある。これらの主張は、フィルムの再配置に関係なく一定のままである寿命較正パラメータによってサポートされており、寿命に基づく測定が動きに対してより耐性があす。加えて、寿命はフィルムの配置やLED強度などのパラメータの影響を受けないため、開発されたデバイスは、K
eff定数を通じて透過性の変化を追跡することにより、ポリマーフィルムの経年変化に関連する影響を検出して補正することができる。一方、表1に見られるように、酸素による強度の全体的な応答がフィルムの老化に伴って変化し、他の要素の中でも特にフィルムの乾燥と凝集に影響を与えたため、このような情報は強度較正パラメータからは取得できなかった。更に、開発された安価で小型のデバイスから推定された寿命は、最先端の分光計(FLS1000定常状態及びリン光寿命分光計、エディンバラ・イントゥルメンツ(Edinburgh Instruments)、英国リビングストン)を使って、酸素検知フィルムで実施された寿命の特性評価とよく一致しており、デバイスの24℃での大気及びゼロ酸素の値は10及び80μsであり、分光計で得られた値は15及び96μsである。違いは、検出器に漏れる励起光(
図19を参照)又は2つ以上の寿命種の存在(
図12を参照)による可能性があり、これにより、より低い平均寿命が検出される可能性がある。これらの寄与は、寿命をより適切に推定するための適切なモデルで考慮に入れることができるが、我々は、プロジェクトの主な目的である位相とpO
2との間の再現可能な関係を得ることができる。
【0113】
この例はまた、ブタの閉塞モデルでのインビボ測定におけるデバイスの適用の実現可能性を証明している。生理学的変化を誘発した後、このデバイスは、皮膚表面の組織pO2の変動を監視し、局所酸素化の変化に迅速に反応することができた。温度、湿度、皮膚の白化などの変数の変化は、リン光の酸素消光に基づくpO2測定を混乱させる可能性があり、文献では見過ごされたり無視されたりすることが多く、新生児ケアなどでそのようなツールの適用を禁止する加熱要素を追加することで克服される。ここで提示されたデバイスは、測定がこれらの変数の影響を受けることなく、生体内実験中に組織の酸素化の変化を追跡することができた。温度補正されていないシステムの場合、温度の上昇はpO2の上昇と誤解される可能性がある。インビボ試験中、pO2は止血帯の装着と取り外しの両方でより速く減少することが観察されたが、これは四肢温度の変化だけでは説明できない。インビボ研究に使用されたフィルムの較正中に、より低い温度は考慮されなかったが、代わりに、より暖かい体温のような温度に焦点が当てられた。将来の研究でこれに対処するために、センサは、較正チャンバ、ホットプレート、氷/水の混合物などを使用して、より広い範囲の温度をスイープすることで簡単に再較正できる。
【0114】
デバイスは、通常数分のタイムスケールで発生する生理学的変化を検出するための理想的な応答時間を示す。デバイスの各コンポーネントが生体適合性(又は皮膚に優しく(skin-friendly))になるように設計されているという事実は、このウェアラブルツールが最初の人間の臨床研究に持ち込まれるにつれて、移行のペースを加速させるであろう。測定は皮膚表面で行われ、皮膚と筋肉の両方が信号に寄与し、四肢の虚血を評価するために経皮測定を使用する方法には均一性がほとんどないため、経皮酸素測定の解釈は複雑で困難であり、今日まだよく理解されていない信号に寄与する可能性のある生理学的要因がある。
【0115】
酸素検知フィルム
化学薬品及び接着剤:酸素検知フィルム内に埋め込まれたピバロイル末端白金ポルフィリンは、以前のプロトコルに従って調製された。ポリ(プロピルメタクリレート)(PPMA)は、サイエンティフィック・ポリマー・プロダクト(Scientific Polymer Product)から購入した。半透過性メンブレン(3M(商標)医療用テープ(Medical Tape)1513、両面透明ポリエステル、80#ライナー、コンフィギュアラブル(Configurable))及び通気性メンブレン(3M(商標)医療用転写接着剤(Medical Transfer Adhesive)1524、ファイバ充填ポリエステル(Fiber Filled Polyester)、60#ライナー、コンフィギュアラブル(Configurable))に使用される接着剤は、3Mから購入した。TiO2白色顔料濃縮物及び(45~55%メチルヒドロシロキサン)-ジメチルシロキサン共重合体(HMS)はゲレスト(Gelest)から購入した。白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液(白金触媒)はシグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)から購入した。
【0116】
酸素検知PPMA層:0.5mg/μl PPMAのジクロロメタン溶液を小さくて清潔なエッペンドルフ試験管で調製した。最終溶液中のメタロポルフィリンの濃度が30μMになるように、ピバロイル・プラチナ・ポルフィリンの原液からのアリコートをPPMA溶液に加え、ボルテックスによって完全に混合した。ポルフィリン/PPMA溶液20μlを、スライド・ガラス上にPDMSで作成した直径8mmの円形型に入れた。フード内で30分間乾燥させた後、PPMA酸素検知フィルムをガラススライドから取り除いた。
【0117】
白色散乱層:1gの白色顔料濃縮物を3μlの白金触媒と秤量ボートで完全に混合した。混合物をガラススライドに加え、1,500rpmで1分間スピンコーティングした。0.1gのHMS共重合体を白色顔料フィルムの上に加え、750rpmで1分間スピンコーティングした。白色散乱層を一晩完全に硬化させた。
【0118】
センサヘッド:フレキシブルPCBは、KiCadソフトウェアで設計され、ポリイミドフレキシブル基板(OSH Park、米国オレゴン州ポートランド)で製造された。ケーシングは、医療用途に適した生体適合性フォトポリマー樹脂を利用して、解像度25μmのフォームラボ(Formlabs)のForm 3B 3Dプリンタで製造された。製造された部品は、90~100%のイソプロピルアルコール(IPA)浴で20分間洗浄され、磁気的に結合されたインペラーによって攪拌され、60℃で30分間、405nmの波長でLED/熱硬化された。硬化後、製造された部品は化学的に又はオートクレーブで滅菌できる。このコンポーネントは、励起フィルタと発光学フィルタを取り付けるための光学マスクとして機能した。また、LEDをフォトダイオードから光学的に分離し、酸素検知フィルムを配置する肌に優しい(skin-friendly)平らな表面としても機能した。最適な形状は、LEDとフォトダイオードの平面構成であり、コンポーネントをできるだけ近づけることであることがわかった。ケーシングは、UV硬化エポキシ(ソーラボ(Thorlabs)、米国ニュージャージー州ニュートン)でPCBに取り付けられ、励起及び発光光信号の伝播に機械的安定性と光透過性を提供した。加えて、エポキシは、O2検知フィルムと電子回路(LED、フォトダイオード、温度センサ)の間の熱リンクとして機能し、これは、センサヘッドのサイズと質量が小さいため、迅速な熱平衡を可能にし、短い応答時間で皮膚表面、フィルム、及びLEDの正確な局所温度を読み取ることができる。
【0119】
制御電子回路:PCBはKiCadソフトウェアで設計され、標準のグラスファイバ基板で製造された(OSH Park、米国オレゴン州ポートランド)。柔軟なリボンケーブル(モレックス(Molex)、米国イリノイ州ライル)はセンサヘッドを制御電子回路に接続する。制御電子回路は、Bluetooth Low Energy(BLE)及び/又はWiFi接続を備え充電式リチウムポリマーバッテリーを搭載する、パーティクルフォトン(Particle Photon)又はアルゴン(Argon)マイクロコントローラボード(パーティクル(Particle)、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)の周りに構築された電子回路を備えたカスタム設計のPCBを備える(
図11を参照)。マイクロコントローラは、I2Cを介して12ビットのアナログ-デジタルコンバータ(ADC)(テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)、米国テキサス州ダラス)と通信し、ADCは、3つの差動電圧チャネルを介して基準信号、フォトダイオード信号、及びサーミスタ電圧をサンプリングする。提供される5V基準により、ADCは1.2mV/ビットの分解能を達成する。LEDは、プログラム可能な周波数(f
r)の正弦波電圧信号(基準信号)によって変調される。この研究では、f
r=796Hzの基準周波数が使用された。基準信号は、マイクロコントローラによって供給される方形波(PWM)出力をローパス(LP)フィルタリング(コーナー又はロールオフ周波数f
c=f
rを有する4極)及び増幅(ゲイン×2)することによって得られる(
図20パネルa及びbを参照)。フィルタとゲインは、LEDの最適な深度変調を達成するために選択された。これにより、非常に低い最小出力と高い輝度最大値で、高コントラストの正弦波のような放射が生成される。LPフィルタのアプローチは、受動部品のみを使用して正弦波のような基準信号を取得する簡単な方法として選択された。関数発生器を使用して、LEDは1kHz未満の周波数でより明るい発光を生成することがわかった。加えて、
図13のパネルcに示されるように、LEDはまた、酸素検知色素が発光するスペクトル領域で幅広いリン光を示し、青色発光とリン光の比率は、より遅い周波数で最も高かった。796Hzの値は、R=5kΩ、C=0.1μF、f
c=1/(2πRC)を使用して計算される。
【0120】
フォトダイオード信号は、トランスインピーダンス増幅回路(トランスインピーダンスアンプ又はTIAなど)によって増幅される。TIAゲインは、センサヘッドの形状、ポルフィリン濃度、及び基準信号周波数が固定された後、ADCのダイナミックレンジを最大限に活用するように選択された(例えば、ADCカウントは高いが、最大リン光信号で飽和しない)。この抵抗を2.5MΩに固定し、C=0.1pFのフィードバックキャパシタを使用すると、636kHzの帯域幅が達成される。TIAのDC及びACの特徴付け、並びにADCの入力及び出力に関するさらなる情報は、
図20~23に見出すことができる。
【0121】
温度は、R
1=10kΩでB値が3650のサーミスタ(
図24を参照)と基準抵抗(R
2=5kΩ)で構成される2抵抗回路によって、スタインハート(Steinhart-Hart)サーミスタ式を使用して測定された。3Dプリントされたケーシング(
図11を参照)は、電子回路を収容し、弾性バンド又はストラップを介して手足にデバイスをしっかりと固定できるように設計された。
【0122】
較正:較正は、
図16に示すように、ホットプレートによって、及びガスミキサーに供給される窒素と空気ガスの混合を変化させることによって、温度及びpO
2を制御することができる密封された較正チャンバ内で実施された。チャンバ内の酸素分圧は、市販の酸素センサ(PreSens、ドイツ国レーゲンスブルク)で測定した。
【0123】
データ収集:pO
2の単一測定値を取得するために、変調されたLEDが約0.2秒間点滅する。その間、1000回の時間測定が行われ、基準信号とフォトダイオード信号の両方の電圧ペアが記録される。時間はマイクロ秒単位で測定される。LEDの点滅時間は、ADCのサンプリングレートと取得したデータポイントの数によって決まる。データポイントの数(1000)が選択されたのは、位相と強度の値を正確に抽出するために必要な詳細量を提供するためである。モジュロ演算子を使用することにより、時間変数t’=mod(t,T)をT=1/f
rとともに使用する。これにより、基準信号とフォトダイオード信号の単一共振を効果的に高い時間分解能で再構築できる(
図22、23、及び25)。データは、USBシリアルポート又はBluetoothを介して、PC上のPythonスクリプトを介して収集された。
【0124】
データ分析:位相と強度の抽出。
基準信号は基本周波数の正弦波によって支配されるが、方形波PWMソースから完全には除去されないより高次の奇数高調波(3f、5f、7f、…)が信号に寄与する。基準信号の高速フーリエ変換(FFT)をプロットすると(
図25のパネルcを参照)、高調波3f、5f、7fの振幅が基本周波数の振幅のわずか2.3%、0.8%、0.3%であることを示す。7fまでの項を含めると、フィッティングの精度が向上し、高い精度と再現性で位相を導出できることがわかった。理解されるように(
図25のパネルcを参照)、フォトダイオード信号は偶数高調波(2f、4f、…)も含める必要があるが、これらはLEDの非線形性によりリン光に存在するからである。
【0125】
次の関数は、行列形式で多重線形回帰を使用して基準信号とフォトダイオード信号にフィットする。
【数1】
但し、cos (2πft + θ) = cos θ cos 2πft - sin θ sin 2πft
最小二乗係数βiにより、基本周波数の強度(I)と位相(θ)を計算できる。
【数2】
【0126】
フィッティングの結果は、
図26a~26dで見ることができる。データ分析はグヌー・オクターブ(GNU Octave)を使用して実行され、デバイスがオンボードで計算を実行できるようにC++に書き直された。
【0127】
誤差計算:最小二乗係数の標準誤差は、フィッティング・パラメータの分散共分散行列から取得される。θとIの標準誤差は、誤差伝搬によって計算される。位相測定と強度測定の両方から得られたpO2値の95%信頼区間(95%C.I.)は、シュテルン・フォルマー式と誤差伝播を使用してpO2の標準誤差を推定することによって計算された。
【0128】
当社の酸素検知フィルムの寿命は、室内空気(pO2=160mmHg)及び室温での脱酸素状態で、エディンバラ・イントゥルメンツ(Edinburgh Instruments)光分光計の空気測定で測定され、蛍光体の97%がτ=14.92μsを持ち、残りの3%がτ=57μsをもたらした。3%は酸素の変化から保護されている。脱酸素測定では二重指数減衰をフィッティングすることで得られるため、τ=95.73μsを持つエミッターの100%の部屋には2つの異なる寿命があることがわかる。
【0129】
回路設計と特性評価。回路図。
図20は、パネルaにおいて、基準信号調整回路の回路図を示し(及びパネルbにおいて、オシロスコープによって測定されたノード信号を示し)、パネルbにおいて、ADC接続を示し、及びパネルdにおいて、制御電子回路PCBとの間のリボンケーブル接続を示し、パネルeにおいて、センサヘッドを示す。
【0130】
信号調整回路に関しては、4極ローパスフィルタのキャパシタは0.1μFに固定され、LPフィルタのカットオフ周波数がPWM信号の基本周波数を中心とするように抵抗器が選択された。従って、fc=1/(2πRC)であり、R=2πfc*Cとなり、796Hzの変調周波数に対して5kΩになる。
【0131】
グランドとVINはマイクロコントローラによって提供され、マイクロコントローラは、パーティクルフォトン(Particle Photon、USB及びWi-Fi)又はパーティクルアルゴン(Particle Argon、USB、Wi-Fi、BLE、及びオンボード信号解析を実行するのに十分なRAM)のいずれかであった。マイクロコントローラへの電力は、マイクロコントローラボードの適切な電源ピンに接続されたUSB又はLi-Poバッテリーによって供給された。
【0132】
トランスインピーダンス増幅回路。
TIAアプリケーションノートの増幅範囲は1MHZに固定されている。ゲイン抵抗は、ADCの使用範囲を完全に最大化するように選択されたので、(0mmHgで)最大リン光信号によりビット数は多くなるが、ADCチャネルが飽和することはない。この抵抗を2.5MΩに固定し、必要な増幅範囲を1MHzとすると、必要なキャパシタはC≦2π1から得られ、C≦0.06pFとなる。我々は、C=0.1pFを見つけることができた。これは、帯域幅が636.6kHzであり、変調周波数(796Hz)よりも3桁高いことを意味する。TIAのDC及びAC伝達関数を更に下に示し、回路のゲインと帯域幅を示す。
【0133】
TIAの特性評価:次の測定は、デバイスのPCBを設計する前に回路が最初に構築されたプロトタイピングボードで実行された。DC伝達関数を特徴付けるために、一定の光源をフォトダイオード上で徐々に短い距離に移動させた。フォトダイオードによって生成された電流は、電流計をフォトダイオードと直列に配置することによって測定され、TIAの出力は電圧計によって測定された。
【0134】
図21は、TIA実験のプロットを示し、これは、光電流に対する出力電圧の予想される線形依存性を示している。線形フィットにより、TIAの電圧オフセットが0.130V(設計ごとに100mV)であり、V/Aゲインが2.4MΩであり、回路図のR6抵抗の値に近いことがわかる。
【0135】
帯域幅に関しては、このデバイスの1MHzフォトダイオードアンプの特性を再現するために、以前の設計に従いました。これを行うために、センサヘッドが最適な形状(LEDがフォトダイオードにできるだけ近い)で構築されたら、ゲイン抵抗は回路上で微調整され、(基準の53.6kΩに対して)RG=2.5MΩのゲイン抵抗で酸素検知フィルムからの光信号を検出できるようになった。これにより、1.92μAの電流が4.9Vに増幅される。fp=1MHzで-3dB帯域幅を維持するために、低酸素(高信号)で増幅器を飽和させないように室内空気(低信号)が必要であった。キャパシタC=1/(2πRG fp)=0.06pF。fp=636.6kHzをもたらすように、0.01pFが購入された。AC伝達関数を特徴付けるには、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)のアプリケーションノートの14ページにある回路図に従い、テクトロニクス(Tektronix)のオシロスコープを内蔵されている関数発生器とフォトダイオードシミュレータとともに使用し、2MΩの抵抗を選択して、ピークツーピークの振幅が1Vになるような駆動周波数で0.25μAの電流を生成した。TIAの出力信号の振幅は、オシロスコープで測定され、式dB=20log10(VOUT/IIN)、但し、IIN=0.25μA、を使い、
図21のパネルbにdbで示される。図からわかるように、fp=636.6kHz(赤い点でマーク)よりも高い周波数では、伝達関数の大きさが急激に低下する。
【0136】
ADC入力及び出力。
ADCへの入力信号は、シロスコープで測定され、
図22に見ることができる。ここで、基準信号は黄色で、フォトダイオード信号は青色で示される。
【0137】
出力に関しては、分析がデバイスのオンボードで行われない場合、次のJSON文字列をシリアルポート経由で読み取ることができる(我々のケースでは、Pythonで行われた)。
{"temp":[28.35], "time":[1,282,564,845,1127,1412,1694,1975,2256,2544,2826,3107,
...,281619] "voltage":[821,61,1061,2284,1607,118,379,2005,2200,634,71,1247,2307,1435,86,
...,979] "tclk":[142,423,705,986,1267,1553,1834,2116,2397,2685,2966,3247,3529,3810,
...,281759] "clk":[3072,3192,3756,3843,3321,3034,3492,3873,3579,3040,3245,3815,3803,3258,
...,3]}
JSON文字列が解析されて、温度の値と、tREF、VADC、及びtPIN、VADCの配列が抽出される。
parsed_json = json.loads(line) temp = parsed_json['temp'];
t = parsed_json['time'];
tclk = parsed_json['tclk'];
pin = parsed_json['voltage'];
clk = parsed_json['clk'];
【0138】
Yスケールのビットとして示される信号は、
図23にプロットされている(左右)。
【0139】
消費電力を測定するために、電流経路を遮断し、電流を測定する電流計を含むようにUSB電源ケーブルを改造した。デバイスがUSB(V=5.17Vの定電圧源)によって給電されている場合、LEDがOFFの時の電流IOFF=38mA、LEDがONの時のION=108mAが測定され、従って、POFF=V*IOFF=196μW及びPON=V*ION=558μWとなる。測定がtS=5秒ごとに行われ、LEDが測定ごとにtLED=0.2秒間点滅する場合、平均電力は、P={(tS-tLED)*POFF+tLED*PON}/tS=211mWとなる。
【0140】
このデバイスは、回路スキームが原理の証明のために設計されているため、電力消費に対して最適化されていない。しかし、このデバイスのエネルギー使用量は、Garmin Edge 800 GPSサイクルコンピュータ(1200mAh及び15時間のバッテリー寿命、P=296mW)又はPolar V800トライアスロンウォッチ(350mAh及び13時間のバッテリー寿命、P=100mW)などの、市販のウェアラブル・デバイスやポータブルデバイスに匹敵する。
【0141】
図25のパネルaは、5kHzでサンプリングされたf
r=796Hzのフォトダイオードと基準信号を示している。
図25のパネルbは、それぞれ1000ポイントでサンプリングされているフォトダイオードと基準信号を示しており、時間は基数1/f
r(基準信号の周期)のモジュロとしてプロットされる。信号はこのタイムスケール(0.2秒)では変化しないため、単一の振動を信号に対して非常に詳細に再構成することができた。
図25のパネルcは、基準信号及びフォトダイオード信号の高速フーリエ変換を示す。基準信号は、奇数高調波の存在を明らかにし、これは、ローパスフィルタを介してPWM出力から漏れる。フォトダイオード信号には偶数高調波も含まれているが、これはLEDの非線形性に起因する可能性がある。
【0142】
信号処理に関しては、基準信号の調整(例:4極ローパスフィルタとx2ゲイン増幅ステージ)が説明され、回路図が上に示されている。フォトダイオード信号はTIA入力に直接供給され、ハードウェアでフィルタリングされない。
図14にプロットされた信号は、フォトダイオードと基準信号のADC出力チャネルに対応し、この数値データはソフトウェアによって何らフィルタリングされない。寿命と強度を抽出するプロセス(行列形式の線形回帰)と、寿命と強度からpO
2を予測するプロセスが説明されており、この単純さにこのアプローチの美しさ(又は見込み)がある。
【0143】
信号解析を実行するために使用されるOctave又はC++コードは、他の要素を使用しない。生の波形、モジュロ演算子を使用した単一周期の再構成、及び信号の高調波成分が、
図25に示されている。フィッティングの結果を
図26に示す。
【0144】
フォトダイオード信号から位相と振幅を抽出するOctaveコードのスニペットを次に示す。
t=mod(t,T); time modulo period T = 1/f_ref; [t,I] = sort(t); sort time ascending
x=x(I); sort photodiode voltage wrt time multiple linear regression in matrix form y=x; ones=zeros(1,length(x))+1;
w=2*pi*ref_freq;
x1=cos(w*t-0.0*pi);
x2=sin(w*t-0.0*pi);
x3=cos(3*w*t);
x4=sin(3*w*t);
x5=cos(5*w*t);
x6=sin(5*w*t);
x7=cos(2*w*t);
x8=sin(2*w*t); M=[ones;x1;x2;x3;x4;x5;x6;x7;x8]’;
p = inv(M’*M)*M’*y’; fitting coefficients b0=[sqrt(p(2)^2+p(3)^2),sqrt(p(4)^2+p(5)^2),sqrt(p(6)^2+p(7)^2),sqrt(p(8)^2+p(9)^2)]; amplitude of each harmonic phase=[acos(p(2)/b0(1)),acos(p(4)/b0(2)),acos(p(6)/b0(3)),acos(p(8)/b0(4))]; phase of each harmonic fitting function fit=p(1)+p(2)*x1+p(3)*x2+p(4)*x3+p(5)*x4+p(6)*x5+p(7)*x6+p(8)*x7+p(9)*x8;
【0145】
サーミスタのB値又はベータ値は、負温度係数(NTC)サーミスタの抵抗と温度の関係を表す曲線の形状を示す。
【0146】
サーミスタは、2つの温度の間の定数Bによって定義され、製造元によって指定され、シュテルン・フォルマー式によって与えられる。この場合、B=3650、T1=25C+273.15=298.15K、及びR(T1)=10kΩであるため、抵抗を測定することにより、T2での抵抗を測定することで温度を知ることができる。
【0147】
サーミスタの抵抗は、
図24に示すように、定電圧と直列の2つの抵抗器(基準抵抗器R1及びサーミスタR2)を有する回路に電力を供給し、サーミスタの電圧降下を測定することによって測定される。電圧が既知で1つの抵抗が固定されているので、オームの法則を使用してサーミスタの抵抗を計算できる。T1=25.0+273.15、R1=5kΩ基準抵抗、R25℃=10kΩ、V=5Vが知られているので、サーミスタのV2を測定すると、我々は、シュテルン・フォルマー式のR2(T2)=VV2をT2に代入して、温度を計算できる。
【0148】
BLE通信
前述のように、多重線形回帰アルゴリズムはマイクロコントローラに実装されている。これにより、デバイスに搭載された信号の位相と振幅を計算できる。このコードは、MatrixMath.h Arduino ライブラリを使用して、上記で説明したOctaveと同じ計算を実行する。
【0149】
次に、pO2がサンプリングされるたびに、カスタムBLE GATTプロトコルを使用して3つの量{TEMPERATURE, PHASE, AMPLITUDE}をPCに送信する。これは、Bleakライブラリを使用し、デバイスのBluetooth MACアドレスとカスタムBLEサービスのUUIDをプラグインするPythonスクリプトによって行われる。これらの3つの変数を使用し、使用中の酸素検知フィルムのキャリブレーションを事前に実行しておけば、温度に依存するシュテルン・フォルマー式を使用してmmHg単位のpO2が計算される。
【0150】
この手法は、デバイスのファームウェアにシュテルン・フォルマー式を実装することで更に洗練され、デバイスに温度とpO2の値を直接出力させることができるが、これらの実験中に位相と振幅の値を保存することが望まれた。ただし、ほとんどのアプリケーションでは、「生の」波形を測定するために、USBが使用された、それを保存することができた。
【0151】
実施例2
コンパートメント症候群及びその他の低酸素関連状態の評価を改善するための携帯型酸素検知装置
【0152】
筋肉内酸素の測定は、急性コンパートメント症候群の早期診断に重要な役割を果たす可能性がある。急性コンパートメント症候群は、虚血や横紋筋融解症、四肢喪失、死亡などの長期的な結果につながる重度の外傷の後に発生する一般的な状態である。しかし、今日まで、そのような目的で承認された既存の酸素センサはない。コンパートメント症候群の評価を改善する必要性に対処するために、筋肉内酸素測定用のポータブル光ファイバ装置が開発された。このデバイスはリン光消光に基づいており、光ファイバの先端は、明るく発光するPt(II)コアポルフィリンを含むポリ(プロピルメタクリレート)(PPMA)マトリックスでコーティングされている。光電子回路は移植性が高く、マイクロスペクトロメータとスマートフォンで読み取ったマイクロコントローラに基づく。インビボのターニケットのブタモデルの結果は、センサが0~80mmHgの生理的酸素分圧範囲にわたって感度が高く、筋肉内酸素の変化に対して適切かつ再現可能な応答を示すことを示す。寿命測定に基づく市販の実験用酸素センサは、期待どおりに応答しなかった。
【0153】
図27は、異なるレベルの分子内酸素に(例えば、コンパートメント圧力の変化の関数として)応答するプローブを有する酸素センサシステムの概略図を示す。
【0154】
急性コンパートメント症候群(ACS)は、様々な形態の外傷から生じる重度の損傷の結果として筋肉虚血が発生する状態である。以前の研究では、交通事故又はスポーツ事故後の脛骨骨折、軟部組織損傷、橈骨骨折が一般市民におけるACSの主な原因であることがわかっているが、出血性疾患や糖尿病などの非偶発的な原因の後に発生することもある。ACSは、多発性外傷、爆発による鈍的又は圧壊性損傷、止血帯の使用後に発生する場合、軍事医療においても重要な役割を果たす。この状態は主に35歳未満の若い男性に影響を及ぼし、男性患者10万人中7.3人に対し、女性患者10万人中0.7人の発生率である。
【0155】
ACSの病態生理は、コンパートメントの限られた空間内の圧力の上昇として説明されている。圧力が上昇すると灌流圧が低下し、血液の供給と排出が損なわれ、組織の低酸素症、組織の壊死、及び神経の損傷が起こる。組織壊死は低酸素血症後6~12時間以内に起こるため、ACSは診断後すぐに治療する必要がある。6~12時間の時間枠の後に治療を受けたACS患者は、機能の喪失、四肢の切断、又は生命を脅かす状態などのより悪い臨床転帰を発症するリスクが高いことが示された。これは、この状態の早期診断の重要性を強調する。
【0156】
現在、コンパートメント症候群の臨床標準治療は、深い切開を行って圧力を解放する筋膜切開術であり、その結果、重度の瘢痕化と慢性的な痛みが生じる。ACSの現在の診断基準は、痛み、蒼白、感覚異常、脈なし、麻痺の5つの臨床徴候に基づく神経血管の完全性評価に重点を置いている。不釣り合いな痛みが最も重要な臨床徴候であることが観察された。ただし、痛みはACSに固有のものではなく、他の損傷から発生する可能性がある。また、意識のない患者では激しい痛みの伝達が不可能であることも注目に値する。
【0157】
幾つかの場合には、神経血管評価は、コンパートメント圧(CP)又は灌流圧(Δp)の測定で補完される。CP測定は、単純な動脈ライン・トランスデューサー又は独自のデバイスを使用して行うことができる。例えば、C2Dx STIC圧力モニタ(以前は、ストライカー(Stryker)モニタ)やミラー・ソリッドステート圧力センサ(Millar Solid State Pressure Sensor)などである。実際には、CP測定は、独自のデバイスに伴う高コストと、大きな(18ゲージ)針の挿入に起因する痛みのために、広く使用されていない。更に、Δp<30mmHgの場合、CPのACSに対する特異性はわずか65%と低いことが示された。従って、筋膜切開術はしばしば予防的に行われ、不必要な外傷につながるため、新しい診断ツールの必要性が強調されている。
【0158】
以前の研究では、ACSの診断を改善することを目的とした多くの技術がまとめられており、現在調査中である。これには、局所酸素化の監視、局所灌流の監視、局所代謝分析(グルコース、pH)、及び血清バイオマーカーに基づく全身生理学が含まれる。言及された全ての方法の中で、局所的な酸素化のモニタリングはかなりの注目を集めた。原則として、興味深い変数は2つある。酸素分圧、つまり間質腔内の酸素分圧(pO2)と、酸素飽和度、つまり血液中の総ヘモグロビンに対する酸素を運ぶヘモグロビンの割合である。酸素飽和度を測定するために、非侵襲的近赤外分光法が広く使用されており、ACSについて評価されたが、浸透深度が浅く、皮膚の色の変化による悪影響があるため、厳しい制限を受けることがわかった。一方、pO2のモニタリングは、マウス及びイヌモデルのコンパートメント症候群の診断において、圧力の測定よりも一定の利点があることがわかった。以前に研究されたイヌのモデルは、pO2の測定がコンパートメント症候群の診断に高い特異性と感度を持っていることを示した。ある臨床研究では、脛骨骨折患者の筋肉内酸素測定を評価し、pO2が不要な筋膜切開術の数を減らすための優れた測定基準になる可能性があることがわかった。適切な臨床用筋肉内酸素プローブが入手できないため、人間のデータは非常に限られている。現在承認されており(筋肉内測定用ではない)、臨床使用に利用できる唯一のプローブは、クラーク(Clark)タイプの電極である。これは、長いウォームアップ時間(緊急の設定には適していない)と頻繁な再キャリブレーションによって厳しく制限されている。それらは信じられないほど壊れやすい一方で、新しい臨床筋肉内酸素プローブの緊急の必要性を強調している。
【0159】
組織内の酸素分圧は、リン光消光として知られる方法を使用して測定できる。この方法では、酸素と特定のリン光分子との衝突を使用して酸素濃度を定量化できる。多数の酸素検知分子が合成されており、ポルフィリンは組織の酸素分圧の測定とイメージングに特に役立つ。明るく発光する金属ポルフィリン酸素センサが最近合成され、高感度の酸素分圧測定が可能になった。青色(λ=377nm)又は緑色(λ=531nm)の光で励起すると、これらのPt(II)コアポルフィリンは赤色リン光(λ=645nm)を示し、これは、シュテルン・フォルマーの関係に従ってpO2に反比例する。ここで、kはシュテルン・フォルマー消光定数、I0は消光剤(酸素)が存在しない場合のリン光の強度である。これらの新しいポルフィリンからの真っ赤な光は、肉眼で見ることができ、携帯用画像機器の助けを借りて定量化することができる。これらの新しいポルフィリンは、創傷治癒の評価のための液体包帯の一部として臨床的に検証されており、パフォーマンスモニタリング用のウェアラブル・デバイスに組み込まれている。
【0160】
コンパートメント症候群に関連する深部組織の酸素化の喪失を検知するためのツールキットへの上記のポータブル技術のさらなる開発が、本明細書に記載されている。これは、酸素検知材料を光ファイバ及び皮下注射針又はカテーテルと統合することによって達成された。
【0161】
今日まで、筋肉内酸素の臨床測定に利用できる医療機器は無い。これは、ほとんどの既存のセンサが臨床環境で生理学的条件下で酸素を測定するように設計されておらず、高価で特大の読み出しデバイスが必要であり、これらのセンサの多くは、限られたインビボのモデルを超えて評価されていない、という事実による可能性がある。例えば、World Precision InstrumentsのOXY-MICRO-AOTは、外科的に露出した精巣上体脂肪パッドで評価されたが、PreSensの酸素マイクロセンサはニワトリ胚の絨毛尿膜メンブレン上の腫瘍で評価された。また、製造中止になったパラトレンド(Paratrend)などの血管内センサは、センサに挿入力が加えられる筋肉内酸素測定に直接適用することはできない。ここで説明する酸素検知デバイスは、ACSだけでなく、血管疾患、糖尿病性創傷、火傷、癌、低酸素症につながる組織pO2の減少をもたらす可能性がある外傷などの他の病理学的状態を評価するのに特に役立つ可能性がある。
【0162】
材料
光ファイバベースの深部組織酸素検知に最適な性能の材料を合成するために、様々な化合物と製剤がテストされた。主な目標は、金属ポルフィリン分子と化学的に適合し、凝集を回避できる、生体適合性のあるホストマトリックス材料を見つけることであった。結果として得られる酸素検知材料は、湿度の高い条件下で0~80mmHgの生理学的範囲で高いpO2感度を示す必要があるが、pHの変化には影響されない。また、細径光ファイバの先端への密着性も求められた。患者の不快感を最小限に抑えるために可能な限り最小のゲージの針を最終的に使用することが目標であったため、小さなファイバ径に適合する材料とコーティングプロセスを開発することが重要であった。更に、軍事患者と民間患者の両方に装置を迅速に移植できるようにするために、ファイバの前処理をできる限り単純にすることが重要であった。この目的のために、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)ゾルゲル、3M キャビロン(Cavilon、商標)(フィルム配合、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、及びポリ(プロピルメタクリレート)(PPMA)の4つの異なるマトリックス材料を調査した。
【0163】
ポルフィリンとの互換性が高く、湿度に敏感でないため、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)ゾルゲルは有力な候補材料である。TEOS含有マトリックスは、市販のルテニウム及び白金錯体を使用して、スピンコーティングならびにファイバに基づく酸素センサを製造するために以前に使用されてきた。ただし、これらの参考文献で使用されているファイバはすべて、xが550μm以上の大きな直径を持っていたため、小口径の針とは適合しなかった。又は、ファイバの先端が、たとえば信号強度を高めるために先細りにするなどしてさらに処理されました。更に、ルテニウム錯体は毒性があるため、インビボのアプリケーションには適していない。現在の作業では、以前に社内で開発された50μMのアルキン末端Pt(II)ポルフィリンを含むTEOS製剤が、以前の手順と同様の方法で調製された。社内で合成されたポルフィリン誘導体は、さまざまな材料での特性と性能に精通しているため、この作業に選択された。更に、それらの誘導体化のための合成プロトコルは、化学結合又は光架橋のいずれかによって、マトリックス材料内の将来の固定化に使用できることが確立されている。その分子構造が
図28に示されているアルキン末端ポルフィリンが合成された。
【0164】
TEOS、1-オクタノイル-rac-グリセロール(ポリオールと呼ばれる)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)は、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)から購入した。エチルアルコールと塩酸は、フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific)から購入した。pH1での50μLのTEOS/ポルフィリン配合物のために、TEOSの溶液、並びにポリオール及びポルフィリンの溶液を、2つの別々の小さなエッペンドルフ試験管で調製した。第1の試験管では、12.5μLのTEOS(25重量%)を15μLのDMSOに添加し、続いて1.7μLの1M塩酸のエタノール溶液を添加した。ここでは、表面張力を高めるためにエタノールの代わりにDMSOを使用した。2番目の試験管では、5mgの1-オクタノイル-rac-グリセロール(10wt.%ポリオール)を、ジクロロメタン(DCM)中のアルキニルメタロポルフィリンストック溶液のアリコートと混合し、エタノールを加えて、両方の試験管の合計容量を50μLにした。ボルテックス後、ポリオール溶液をTEOS試験管に加え、再度ボルテックスし、15~20分間静置した。ひび割れを減らすために、異なる量の界面活性剤(Triton X-100及びTween-20が1.4及び2.8wt.%)を加えた追加の配合を調製した。
【0165】
光ファイバをコーティングする目的で調査された2番目の材料は、ターポリマーベースの3M キャビロン(Cavilon、商標)の低刺激バリアフィルム(No Sting Barrier Film)であった。3M キャビロン(Cavilon、商標)フィルムは、FDAが承認した液体包帯であり、耐水性であり、様々な表面によく接着し、通気性がある。キャビロン(Cavilon、商標)フィルムの製剤には、ヘキサメチルジシロキサン、イソオクタン、アクリレートテルポリマー、及びポリフェニルメチルシロキサン共重合体が含まれる。キャビロン(Cavilon、商標)フィルムは疎水性であるため、アルキン末端のポルフィリンとは混じり合わないことがわかった。代わりに、はるかに疎水性のピバロイル末端誘導体が使用され、それは良好な混和性を示した。Pt(II)-ピバロイル末端ポルフィリンが合成された。最終溶液では、エッペンドルフ試験管において、3M キャビロン(Cavilon、商標)フィルム製剤をピバロイル末端ポルフィリン(pivaloyl-terminated porphyrin)でボルテックスした。
【0166】
Teosソルゲル及びキャビロン(Cavilon、商標)フィルムに加えて、PEMAとPPMAは、ピバロイル終端したポルフィリン(pivaloyl-terminated porphyrin)での使用について調査されました。これらのアクリル酸ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)とともに、480μmファイバ酸素センサのテーパー状の先端をコーティングする目的で、以前に調査した。これらは、PPMAがPEMA及びPMMAよりも高い感度とより速い応答時間を持っていることを示した。以前の構成では、PtOEP蛍光体とPEMAを組み合わせて、600μM光ファイバをコーティングした。
【0167】
この出版物で説明されているセンサを生成するために200μmファイバをコーティングするために、以下のようなソリューションを作成した。エッペンドルフ試験管で、0.25mg/μlのPEMA又はPPMA(シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)及びScientific Polymer Productsから購入)をDCMに溶解した。ボルテックス後、50μMの濃度でピバロイル末端ポルフィリン(pivaloyl-terminated porphyrin)を添加し、溶液を再びボルテックスした。PEMA及びPPMAについてより高い濃度とより低い濃度もテストされたが、0.25mg/μLの濃度の溶液から作られたコーティング材料は、最大の酸素検知反応を示すことがわかった。
【0168】
酸素検知材料が体液に直接接触することを防ぎ、外部光から材料を保護するために、すべてのファイバの先端は、通気性で反射性の白色層で更にコーティングされた。コーティングには、後方反射により測定されたポルフィリン放射信号が増加し、エチレンオキシド(EtO)を使用した将来の滅菌プロセス中に酸素検知層が保護されるという利点があった。EtO滅菌は、ポリマーコーティングやシリカファイバーに悪影響を及ぼさないことが示されているため、バイオメディカルセンサを滅菌する標準的な方法として使用されている。酸素センサの保護コーティングには、40%の二酸化チタンとシリコーンをベースにした白色顔料が含まれていた。それを調製するために、0.1gのジメチルシロキサンコポリマー(ゲレスト(Gelest)、CAS 68037-59-2)と1gの白色顔料濃縮物(ゲレスト(Gelest)、PGWHT01)をエッペンドルフ試験管で混合した。その後、約0.3gの硬化遅延剤(ゲレスト(Gelest)、Utensil R1)と少量の白金触媒(シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、CAS 68478-92-2)を加え、溶液を激しく攪拌した。硬化遅延剤と触媒の組み合わせにより、固化するまで約10分間持続する混合物が得られ、ファイバの先端をコーティングするのに十分な時間が得られた。
【0169】
ファイバセンサの製作
200μmコアのマルチモード・シリカファイバ(ソーラボ(Thorlabs)、FP200URT)をイソプロピルアルコールで洗浄し、端を剥がして切断した。TEOSベースのコーティングの場合、コーティングの直前にプラズマ処理(BD-20ACプラズマ処理装置)又はシラン処理(水溶液中の1重量%のアミノプロピルトリエトキシシラン)によってファイバ先端を官能化して、TEOSゾルゲル層の接着性を改善した。ファイバをシラン溶液に10分間浸漬し、次いで120℃で2時間乾燥させた。続いて、ファイバ先端を手でTEOS溶液に浸した(1~5回)。ファイバを数回浸漬すると、層の厚さが増し、信号強度が向上した。浸漬後、ファイバを一晩乾燥させ、翌朝高真空下に2~3時間置いた。
【0170】
キャビロン(Cavilon、商標)フィルム処方並びにPEMA及びPPMAマトリックスについては、ファイバはコーティング前に官能化されていなかった。ポルフィリンマトリックス溶液の一滴をエッペンドルフ試験管からポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)フィルムの表面に移し、ファイバをポルフィリンマトリックス溶液に手で浸した。ファイバを一晩乾燥させた後、高真空下に2~3時間置いた。酸素検知層でコーティングした後、ファイバを白色のシリコーンコーティングに浸し、100℃の熱風で10~15秒間乾燥させ、最後に室内空気で48時間放置して乾燥させた。シリコーン層の接着を強化し、ファイバからの剥離を防ぐために、3M キャビロン(Cavilon、商標)フィルムの保護層をファイバにコーティングした。
【0171】
装置とデータ取得
図29に示されるように、光学及び電子ハードウェアは、10×11×4.5cm
3の3D印刷されたボックス内に取り付けられた。リン光強度の変化による酸素濃度の測定では、浜松ホトニクスC12880MA-10マイクロスペクトロメータをカスタム印刷された回路基板(PCB)に接続して、読み取りとLED光源(ソーラボ(Thorlabs)、LED375L)の駆動を行った。PCBはパーティクルフォトン(Particle Photon)のマイクロコントローラと外部12V電源に接続され、安定した電圧を提供する。USBベースの電源だけでは、LEDのパルスと顕微分光計の読み取りの両方を同時に行うと、安定しないことがわかった。フォトンのマイクロコントローラのファームウェアは、Arduinoサンプルコードに基づいてカスタムビルドされた。
【0172】
リン光寿命の変化による酸素濃度の測定には、アバランシェフォトダイオードを使用でき、ファイバによって輸送される放射リン光を検出することが示されている。アバランシェフォトダイオード(ソーラボ(Thorlabs)APD130A又はAPD440Aなど)にはファイバカプラが装備されており、ファイバの端は赤いリン光を検出するためにアバランシェフォトダイオードに直接結合される。可変ゲインのアバランシェフォトダイオードも使用できる。更に、前の例で説明したような柔軟な光学フィルタをシステムに追加して、リン光帯域外の光をフィルタで除去するか、同じ効果のために光ファイバフィルタ(例えば、ブラッググレーティング)を実装することができる。UVA LEDからの励起光は、直径3/32インチのガラスビーズを介してファイバに結合される。
【0173】
375nmの励起光と650nmのリン光は、1×2光ファイバカプラ(ソーラボ(Thorlabs)TH200R5S1B)を介して導かれた。カプラの検出器側では、エドモンド・オプティクス(Edmund Optics)製のフレキシブルなUVフィルタ(#39-426、400nmロングパス)をSMAコネクタに接着して、分光計を飽和させていた青色光の影響を減らした。SMA-to-FC/PC嵌合スリーブ(ソーラボ(Thorlabs)ADAFCSMA1)は、光ファイバセンサが接続されているボックスの壁に取り付けられた。
【0174】
光ファイバセンサのベースは、200μmコア及び0.5NA(FP200URT)を備えたソーラボ(Thorlabs)のFC/PCコネクタ付きカスタム光ファイバパッチケーブルであった。パッチケーブルを切断し、チューブを片側から取り外し、前述のように準備してコーティングした。24ゲージの熱電対(IT-24P、フィジテンプ(Physitemp))とともに、コーティングされたファイバはデバイスの2つの異なるバージョンに統合された。最初のバージョンでは、ファイバは、
図30に示される、18ゲージの針(BD PrecisionGlide)に接着された。周囲の組織との適切な平衡を可能にするために、ファイバの先端から5mm上の位置に2つの1mmのサイドポートをドリルで開けた。穴は同じ高さにあり、180°離れていた。繊維の先端が組織に挿入されたときに破損するのを防ぐために、針の先端は光硬化型医療機器用接着剤(Loctite 3321)を使用して閉じられた。1mlシリンジ本体(HSW Norm-Ject Tuberkulin)を使用して、ファイバセンサを安定させ、取り扱いを容易にした。尚、200μmファイバは、将来、より小さなゲージの針に適合する可能性がある。18ゲージの針は、サイドポートの穴を正確に作成するためにのみ選択された。デバイスの2番目のバージョンでは、ファイバが外径0.6mmの柔軟なポリエチレンチューブに組み込まれ、ルアーコネクタが追加されて、標準のカテーテルにしっかりと取り付けられた。チューブの長さは、ルアーが所定の位置にロックされたときに、酸素検知部分が標準の20ゲージカテーテル(Exel Safeletカテーテル、20G×1 1/4インチ)の先端から突出するように選択された。
【0175】
LEDのパルス時間と測定間の時間は、ソフトウェア設定を使用して、さまざまなコーティングの信号強度に合わせて調整された。最終的なデバイスでは、5ミリ秒のパルス時間と15秒の測定間隔が使用された。マイクロコントローラは、スマートフォンを使用してUSBケーブルを介して読み取られた。無線接続ではなくUSB接続が選択され、臨床データを扱う際のデータの安全性を更に高めることができた。Androidスマートフォンアプリケーションは、GoogleのFlutterソフトウェア開発キット(SDK)とAndroid Studioの助けを借りて開発された。アプリケーションは、パルス時間、測定間隔、出力ファイル名、及びpO2キャリブレーションなどの設定を変更するオプションを提供した。現在のスペクトルに加えて、アプリケーションはpO2タイムラインを表示し、スマートフォンのSDカードにデータファイルをテキスト形式で保存するオプションを提供した。
【0176】
キャリブレーションとテストの目的で、酸素センサは、チャンバpO2の独立した読み取りを提供する市販の実験室酸素センサ(プロファイリング酸素マイクロセンサ(Profiling Oxygen Microsensor)PM-PSt7、PreSens)と並べて小さなガスチャンバに配置された。ガスチャンバの温度は、ホットプレートを使って調整した。チャンバ内の酸素分圧は、ガスミキサーを使用して窒素と空気の相対流量を変更することにより、0mmHgと160mmHgとの間で調整された。加湿器により、システムを乾燥状態と湿潤状態の間で切り替えることができた。
【0177】
データからpO
2を抽出するために、非線形最小二乗フィットが使用された。これは、温度に対する線形依存性を含む2次元のシュテルン・フォルマー関係に基づく。ここで、fは消光剤によってアクセスできないポルフィリン分子からのリン光を説明し、kTは温度依存クエンチング定数、TCはキャリブレーションが実行された室温である。強度Iは、赤のスペクトル範囲を統合し、それを青の励起光に正規化することにより、スペクトルから抽出された。直線的な温度依存性は、pO
2の固定値で温度を掃引することによって検証された。pO
2と温度は両方向に変化したが、有意なヒステリシス効果は観察されなかった。
【数3】
【0178】
PPMAマトリックスでコーティングされたファイバについて得られた2次元較正プロットが
図31に示されている。適合パラメータI0、k0、及びkTを抽出し、較正温度TCを知ることにより、pO
2は式5から推定された。対応するpO
2誤差は、ガウス誤差伝搬とパラメータフィッティング誤差を使用して同じ式から計算された。実験室の酸素センサの誤差は3%で、温度センサの誤差は1℃であった。
【0179】
結果として得られたpO2応答は、誤差が5%未満であった0~80mmHgの生理学的範囲で設計要件と一致した。より高いpO2値では、誤差は約6%に増加した。ポルフィリン発光強度はpO2の増加とともに減少するため、これは予想されていた。将来的には、これは、pO2のより高い値でより敏感になるように調整された2番目のポルフィリン又はポルフィリン含有材料を追加することによって改善される可能性がある。
【0180】
ブタモデル
現実的な条件下でのセンサの性能を評価するために、ヨークシャー豚2頭とハンプシャー豚1頭で2セットのインビボ実験を行った。豚はすべてメスであった。豚と人間の間の同様の解剖学的スケールにより、豚モデルは筋肉内酸素化の生理学的変化を研究するのに特に適したモデルになる。動物プロトコルは、マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)の施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって審査及び承認され、すべての手順はKnight Surgical Facility内で行われた。実施された研究はパイロット研究であり、意味のあるデータを収集することを目的とし、統計的に有意であることは意図していない。全てのブタに対して、筋肉内テラゾール(4.4mg/kg)及びアトロピン(0.4mg/kg)で麻酔を導入し、続いてイソフルラン(1~3%)吸入を行った。手順全体で、マサチューセッツ総合病院の豚に対する標準的な手順である、吸入中酸素濃度(FiO2)1で、豚を換気した。以前の実験では、低FiO2での換気は、これらの動物の麻酔下での浅い呼吸による血中酸素飽和度の低下につながることが見られた。低酸素関連の状態を防ぐために、FiO2=1での標準プロトコルが使用された。現在の研究のための豚は、別のプロトコルからテーブル上で移動され、それ以前には、異なるレーザー皮膚治療に関連する手順(実験)が行われていた。
【0181】
最初の実験では、心機能の喪失に続く四肢の酸素化が豚で測定された。ペントバルビタール安楽死溶液(Fatal Plus)の投与による安楽死の1分後に、
図30に示されるように、酸素検知針プロトタイプをブタの後肢の大腿二頭筋のいくつかの領域に連続的に挿入した。
【0182】
2番目のインビボ実験では、ターニケットを配置した後の四肢の酸素化が2頭の豚で測定されました。
図30に示すように、止血帯を30分間、2頭の豚の前肢の肘関節から上腕三頭筋及び上腕筋の上に適用した。円錐形と豚の足の短さのため、標準の加圧止血帯は使用できなかった。代わりに、ゴム製止血帯(SWAT-T)の上にRATS GEN 2止血帯を装着し、手で締めた。
【0183】
止血帯を適用する前に、酸素センサを尺骨手根屈筋に挿入した(
図30に赤い点で示されている)。1匹の豚では、酸素センサは針に基づくものであったが、2番目の豚では酸素センサのカテーテルバージョン(
図30の右下に示されている)が使用された。プロトタイプの酸素センサに加えて、実験室グレードの酸素センサ(プロファイリング酸素マイクロセンサ(Profiling Oxygen Microsensor)PM-PSt7、PreSens)が両方の実験で近くにカテーテルと共に挿入された。全ての酸素化測定値は、付属の熱電対を使用して温度補正されている。
【0184】
酸素応答
材料選択プロセスでは、リン光シグナルの強度を室温で様々なレベルのpO
2について測定し、近づきにくい分子の係数fで修正した1次元シュテルン・フォルマー関係に当てはめた。得られたシュテルン・フォルマー分布を
図32に示す。明確に理解されるように、キャビロン(Cavilon、商標)フィルムマトリックスのピバロイルポルフィリンは、k = 0.0742, f = 0.0893, I0 = 2.2で測定された、pO
2範囲全体で最も感度が高かった。PEMAコーティングは、k = 0.0442, f = 0.0771, I0 = 1.2で最も感度が低かった。TEOSゾルゲルとPPMAの感度は同等であった。TEOSゾルゲルは非常に低いpO
2でわずかに優れており、PPMAは高いpO
2で優れていた。PPMAのフィッティング・パラメータは、k = 0.0593, f = 0.0784, I
0 = 1.9であり、TEOSのフィッティング・パラメータは、k = 0.0731, f = 0.16, I0 = 2.2であった。従って、TEOSゾルゲルマトリックスは、アクセスできないポルフィリンの割合が最も高かった。TEOSゾルゲル材料のコーティング品質は、異なる繊維間でかなり異なり、一般に、TEOSゾルゲルは十分に接着しなかった。これは、重大な亀裂に起因する可能性があり、以前の研究においてすでに観察されていた。ファイバ先端に最小限の力だけを加えると、酸素検知層が失われた。界面活性剤の添加により、より高い発光シグナルが得られた(TEOSゾルゲル+1.4wt.%Triton X-100において最良の結果)。ただし、TEOSゾルゲルはまだファイバの先端にうまく付着していなかった。
【0185】
湿度感度
使用中、酸素センサは血液やその他の体液にさらされるため、湿度に敏感でないことが重要である。湿度感度は、0mmHgでの乾燥及び湿潤(>90%)条件下での発光ピークの信号の比率を計算することによって測定された。純粋なTEOSゾルゲルマトリックスは、2.1の乾湿比で湿度に敏感であることがわかった。湿度感受性を示さないTEOSベースのゾルゲルは以前に報告されていたが、この作業で使用された材料は、DMSOと界面活性剤を含む製剤から作られた。異なる組成のTEOSゾルゲルでコーティングされたファイバの追加測定では、繊維の湿度感受性は主にTEOS配合物へのDMSOの添加の結果であることが示された。支持基板上のコーティングの均一性も重要な役割を果たす。界面活性剤を添加すると、ファイバ上にコーティングされたゾルゲルのクラックの形成が最小限に抑えられ、性能が向上することがわかっている。
【0186】
界面活性剤を添加するとTEOSの湿度感受性は低下し、乾湿比は1.3~2に達した。これは、純粋なTEOSコーティングがかなり多くのクラックを示したため、コーティングに水が侵入する可能性が高くなったために発生した可能性がある。アクリレートポリマーベースのコーティングは、疎水性に起因する重大な湿度感受性を示さなかった。
【0187】
光退色
酸素検知材料からのリン光発光の強度を経時的に測定して、光退色速度を導出した。この一連の実験では、LEDは合計1.5時間、15秒ごとにパルスするように設定された。酸素検知材料上のLEDからの放射照度は、160nW/cm2と推定された。
【0188】
TEOSゾルゲルは5.0%h-1で最も高い漂白率を示し、次にPEMAが2.9%、キャビロン(Cavilon、商標)フィルムが1.8%でした。PPMAの漂白率は最も低く、わずか0.2%であった。コンパートメント症候群に必要な検知ツールは、最大10時間にわたって1回だけ使用されるため、この最小限のレベルの光退色は、全体的な明るさのわずかな変化につながり、使用中の高い精度を保証する。更に、配信されたLEDパルスの総数を慎重にカウントすることにより、低い光退色率が調整され説明された。
【0189】
光退色率が低く、湿度に敏感でないため、深部組織酸素センサに最適なマトリックス材料としてPPMAが選択されました。PPMAマトリックス内のピバロイルポルフィリンは、エディンバラ・イントゥルメンツ(Edinburgh Instruments、英国リビングストン)のFLS1000定常状態及びリン光寿命分光計を使用して、リン光強度スペクトル及び寿命減衰を取得することによってさらに評価された。PPMAマトリックス内で得られた寿命は、98μsと導出された。これは、DCMでの寿命(τ0=101μs)とほぼ同じであり、酸素検知分子とマトリックス材料の良好な適合性を示す。
【0190】
pH感受性
最も低い光退色率と湿度非感受性の材料であるPPMAのpH感受性を調査した。これは、センサの適用にとって特に重要であった。筋肉損傷の間、筋肉内のpHは、pH7以上からpH5.2以下に低下すると予想される。従って、このpH範囲での安定性は非常に重要である。pH感度を測定するために、酸素センサを40mmHg pO2でpH7.5の緩衝溶液に浸し、2M塩酸を滴下してpHをゆっくりと下げた。関心のあるpO2範囲の中間にあるため、40mmHgの酸素分圧が選択された。pH依存性は検出できなかった。
【0191】
再利用性の評価
全てのセンサは、通常、製造後48時間以内に使用された。従って、センサの老化は、この研究で得られた測定値にとって重要ではなかった。センサの挿入、取り外し、及びクリーニングの影響を理解するために、インビボでの最初の使用から3か月以上経過した後、イソプロピルアルコールですすいだ後、センサを再評価した。センサの全体的なシグナル強度は、約30%減少することが見出されたが、相対感度は、
図33に見られるように、経時的に増加した。更なる調査により、ドリフトはリン光強度の測定でのみ顕著であり、寿命測定では顕著ではなく、3か月間で5%未満であることが示された。これは、強度のドリフトが、酸素検知分子自体ではなく、散乱などのマトリックスの光学特性の変化に起因していることを示す。将来的に生涯ベースの読み出しに移行すると、潜在的な再利用性が大幅に向上する。
【0192】
応答時間
シリコーンコーティングを施した最終的なPPMAベースのセンサは、160mmHgから0mmHgに移行する時に1/eに到達するまでに35秒の応答時間があった。応答時間は、主にシリコーン層を介した酸素の拡散と、シリコーン層での酸素の物理的な吸収によって制限されると考えられてる。コンパートメント症候群は30分から数時間かけて進行し、酸素レベルははるかに短い間隔で変化するため、この応答は意図した用途には十分すぎることに注意することが重要である。
【0193】
浸出研究
材料とファイバコーティングの生体適合性を評価するために、材料からのポルフィリン分子の浸出を、コーティングされたファイバへの曝露後のサンプルに見られる総白金含有量を測定することによって分析した。この目的のために、ファイバは、上記のプロセスを使用して、ポルフィリン、PPMA、及びシリコーン再コーティングのさまざまな組み合わせでコーティングされた。乾燥後、ファイバを1mLの新鮮な全豚血を含むK2EDTA採血管に入れ、7時間浸漬したままにした。加えて、針の繊維をブタの組織サンプル(皮膚と筋肉)に挿入し、組織内に7時間放置した。浸出研究の直前に、血液及び組織を採取した。繊維を含む血液及び組織サンプルは、浸出研究の全期間中、36℃に保たれ、繊維が除去された直後に凍結された。誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して(Brooks Applied Labs, Bothell, WA)、サンプルの白金含有量を分析した。全てのサンプルの結果は誤差範囲内であり、純粋な豚の血液/組織の参照サンプルと同じであり、有意な浸出がないことを示す。
【0194】
インビボの結果
心機能喪失後の四肢酸素化測定の結果を
図34に示す。
【0195】
特定の組織の酸素圧は、血管系を介した供給と、細胞呼吸中の酸素の消費を介した需要の両方のバランスである。筋肉組織は、分子状酸素を非常にゆっくりと利用する皮膚などの組織とは対照的に、酸素を急速に消費することが知られている。Fatal Plusの過剰摂取は心停止を誘発し、拍動性血流の停止を引き起こし、組織への灌流を引き起こす。プローブが筋肉に挿入されると、以前の研究で観察されたものと同様に、酸素圧の指数関数的減衰が測定されると予想されていた。
【0196】
大腿二頭筋の最初の挿入位置で測定されたpO2は、130mmHgで安定していることがわかった。この値は一見高いように見えるが、FiO2が1と高いことで説明できる。また、針のゲージが18と大きく、穴が開けられているために針が滑らかではなかったため、針の挿入がスムーズではなかった。挿入部位で出血を誘発し、観察された高いpO2レベルをもたらした可能性がある。
【0197】
約30分間測定した後、針を動かして大腿二頭筋の上の皮膚に挿入した。ゆっくりと酸素を消費する皮膚内で、プロトタイプの酸素センサは90mmHgの安定した酸素圧を測定した。これは、豚の皮下酸素化を測定した以前の研究と一致する値である。
【0198】
8分間の測定の後、針を大腿筋の別の場所に再挿入した。この2番目の位置で、酸素分圧が20分間かけてゆっくりと減少し、最終値は約60mmHgになることが観察された。このpO2の減少はセンサの平衡時間よりもはるかに遅かったため、この減衰は、筋肉組織の遅い代謝速度とペントバルビタール注射後の残留心臓活動に起因していた。
【0199】
筋肉内pO2は単一の筋肉内で不均一であり、個人間で異なり、FiO2に強く依存することが示されていることはよく知られている。正常に灌流された組織では、以前の研究では、0.5のFiO2で犬のモデルで60mmHgから80mmHgの間の値が測定された。以前のいくつかの研究では、筋肉内pO2が4.0mmHgから50.6mmHgの間で測定され、FiO2が不明な場合、平均差は19.9mmHgであった。他のいくつかの以前の研究では、ラットモデルの筋肉内pO2にFiO2=0.21(室内空気)とFiO2=1との間で有意差を測定しており、それぞれpO2=30~45及び120~220mmHgとなった。結果は、それぞれラットとマウスで他の人によっても発見された。これらの値は、死亡直後のFiO2=1でのブタの筋肉の測定値と一致している。尚、大型動物の外科スタッフとの会話により、これらの調査結果が確認された。
【0200】
インビボ止血帯モデルからの結果は、
図35及び36に示されている。両方のブタで、止血帯装着前に130mmHgのpO
2値が測定された。これは、最初の実験の測定値及びFiO
2=1のラットモデルでの測定値と一致している。両方の豚で、止血帯を適用すると、pO
2は1分以内にそれぞれ65mmHgと15mmHgに低下した。最初の豚では、pO
2は止血帯の解放後すぐに初期値に戻ったが、2番目の豚では、pO
2は15分間で約10~20mmHgしか増加しなかった。
【0201】
ターニケットの適用中と適用後に2頭の豚で測定された異なるpO2レベルは、ターニケットが適用された異なる力によって説明できる。2番目の豚のわずか20mmHgという低いpO2は、加えられた力による重度の組織損傷を示していた。これは、観察された皮膚の色の変化とも一致しており、これは2 番目の豚でより劇的であった。
【0202】
両方の豚で、市販の酸素センサはプロトタイプセンサで測定された結果を十分に再現しなかった。商用センサがこの動作を示す理由は明らかではない。尚、筋肉内又は生体内での用途向けに設計されたものではなく、血液と相互作用したり、損傷したり、ファウリングにより不活性になった可能性がある。
【0203】
深部組織の酸素化を測定するために、この研究は、繊維ベースの携帯用筋肉内酸素検知装置の開発、構築、及び検証に焦点を当てていた。TEOSゾルゲル、3M キャビロン(Cavilon、商標)フィルム、PEMA、及びPPMAは、明るく発光するポルフィリン酸素センサをホストするマトリックス材料として評価された。PPMA中のPt(II)-ピバロイルポルフィリンは、湿度やpHに依存しないことが示され、光退色率が低く、筋肉内強度ベースのpO2測定に不可欠であった。
【0204】
PPMAプロトタイプセンサは、2つの異なるブタモデルでテストされ、酸素化の変化に対して適切かつ再現可能な応答を示した。皮下測定は、ラットモデルでの以前の測定と一致していた。センサの挿入直後の筋肉の酸素化は約130mmHgであると測定された。これは、1という高いFiO2と針の挿入による追加の出血によって説明できる。将来的には、より小さなゲージの針を使用するか、超音波ガイドを使用して針/カテーテルを適切に配置することにより、出血を減らすことができる。両方のプロトタイプセンサは、止血帯の適用後にpO2の急速な変化を示した。ターニケットの解放後、最初の豚の筋肉内pO2はターニケット前のレベルまで急速に上昇したが、2番目の豚ではpO2が約 10mmHgだけゆっくりと上昇した。これは、おそらく2頭目のブタのターニケットを締めすぎたことによる組織損傷が原因であった。将来的には、これは四肢閉塞圧よりも40~100mmHg高い空気圧止血帯を適用することで制御できる可能性がある。ただし、筋肉にアクセスしながら止血帯を豚の脚の形に合わせるのは簡単ではない。並行して使用される市販の酸素センサは、はるかに安定した寿命測定に基づいてpO2を特に決定するが、生体内で期待どおりに応答しなかった。
【0205】
振り返ってみると、FiO
2のより低い(又は幾つかの)値を調査することは興味深いことであったが、センサの性能はFiO
2によって大きく影響を受けないことに注意する必要がある。加えて、より低いFiO
2を使用する場合、組織pO
2は、
図31に示されるように、センサがより高い感度及び精度を示す値まで減少すると予想される。
【0206】
現在のプロトタイプの針ベースのバージョンは、その柔軟性により、単一点測定に適しているように見えるが、カテーテルベースのバージョンは、組織内に長時間放置することができる。従って、全体的な値ではなく、酸素の傾向を測定できるように、pO2値を長期間にわたって取得できる。筋肉内酸素化はコンパートメント内で不均一であると予想されるため、これは有利である可能性がある。更に、ACSの診断を改善するためにpO2の分布を理解するために、単一の測定は、グリッド内に空間的に、プローブに沿って縦方向に、又はその両方に、配置された追加のセンサによって強化され、局所組織pO2マップを取得できる。
【0207】
組織の酸素化は、全圧よりも組織の健康に生理学的に関連する測定値であると思われるが、コンパートメント症候群の評価のためのデバイスの利点を理解するには、大型動物コンパートメント症候群モデルでのさらなる調査が必要である。更に、コンパートメント症候群モデルは、酸素分圧測定に対する全圧の変化の影響についてさらに洞察を与える。窒素と空気の比率を一定に保ちながら全圧を変化させたチャンバで測定した結果、全圧の変化が酸素分圧の変化に直接関係することがわかった。ただし、このモデルは、コンパートメント症候群中の生理学の完全な複雑さを反映していないことに注意する必要があり、全圧とpO2の相互作用を評価するには、追加のインビボ研究が必要である。
【0208】
人間が初めて使用する場合、デバイスは、挿入時の不快感を軽減するために、針のゲージをさらに小型化する必要がある。試作品で使用されている200μmの小さな光ファイバは、これに最適であり、サイドポートを備えた小さなゲージの針は、商業生産者によってカスタムメイドできる。破損の可能性を減らすために、針内のファイバの周りの空きスペースをエポキシ樹脂で満たして、ファイバの先端がエポキシ樹脂の表面内に平らに取り付けられるようにすることができる。更に、サイドポートは、多孔質のハウジング材料で置き換えることができる。
【0209】
センサのファイバ部分は使い捨てデバイスになるが、人間に安全に使用するには、滅菌条件下でのプローブの製造又は製造後の酸素センサの滅菌が必要になる場合がある。前述のように、EtOを使用した滅菌プロセスは、ファイバベースのセンサやポリマーコーティングに対して安全であることが示されているため、適している。プロトタイプの繊維と酸素検知コーティングへの影響は、まだ調査する必要がある。細胞毒性アッセイは、この酸素センサの生体適合性をさらに評価するために使用できる。この実施例で導入されたデバイスは、ACSの早期かつ適切な診断に対する満たされていない必要性に対処するために特別に開発された。将来的には、全圧センサを同じデバイスに追加して、圧力を測定することができる。また、これにより、医師は現在の診断基準と直接比較できるようになる。この病気を全体的に理解するには、同じデバイスで並行してpHや乳酸レベルなどの追加パラメータを測定することが有益な場合もある。これらのパラメータを並行して測定することは、他の低酸素症関連疾患の監視と診断にさらなる有用性をもたらす可能性がある。
【0210】
実施例3
寿命と強度から導出されたpO
2推定値の融合
図37は、臨床試験中の典型的な測定を概略的に示しており、ここで、p
Tは寿命から導き出されたpO
2であり、p
Iは強度から導き出されたpO
2である。
図37において、矢印は下記を示す。1.大気圧で測定を開始する。2.デバイスを皮膚に適用する。3.寿命ではなく強度での運動アーティファクトの観察。4.両方の指標における血流の変化によるpO
2の変化の観察。5.モーション・アーチファクトの強度。6.血流の変化によるpO
2の変化。7.デバイスを皮膚から取り外す。8.大気pO
2に戻る平衡。
【0211】
典型的に見られるのは、pTがpIよりもわずかにノイズが多いことであるが、除去後は確実に大気中のpO2に戻る。pIは、pO2の変更中に詳細を示すが、モーション・アーチファクトの影響を受けやすく、リン光分子の光退色が原因である可能性が高く、常に大気中のpO2に戻るとは限らない。
【0212】
理想的には、pTの定量的(緩やかな傾向)値とpIの感度を維持したいと考えられている。我々は、次のアプローチのいくつかを使用して、両方のpO2メトリックを組み合わせることができる。これらのアプローチは、これらの信号を平均化、結合、又は相関させる方法の説明的な例として機能し、すべての可能なアルゴリズム方法の網羅的なリストではない。
1.キャリブレーション後、線形回帰係数pI=m*pT+bを取得し、組み合わせたpO2メトリックを計算する。
pO2 = (pI-b)/m
2.pTの長期移動平均を、pIの長期移動平均をpIに減算することによって得られるpIの瞬間的な変化と組み合わせる。これは、ローパスフィルタリングpT(つまりLP(pT))、又は、ハイパスフィルタリングpI(HP(pI))若しくはpI-LP(pI)によって行うことができる。結合された出力は次のようになる。
pO2 = LP(pT)+HP(pI).
3.例えば、相関、相互相関関数によって、pTとpIの間の相関関係、時間に関する導関数などを反映する[0,1]の間の係数を定義し、pIとpTを異なる重みで組み合わせたpO2メトリックを生成する。重みは、両方の曲線に現れる特徴が共通しているかどうか(信号間に相関関係があるかどうか)を考慮して、各信号のどれだけが各時点で結合されたpO2メトリックを構成するかを導出する。例えば、
C=abs(corr(pT, pI)), C=abs(corr(d pT /dt,d pI /dt))
であり、可能な組み合わせられたpO2の定義は次のとおりである。
pO2 = C*pI + (1-C)*pT又は
pO2 = sqrt( C^2*pI^2 + (1-C)^2* pTT^2 )
【0213】
本開示は、1つ又は複数の好ましい実施形態を説明してきたが、明示的に述べられたものとは別に、多くの等価物、代替物、変形、及び修正が可能であり、本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0214】
本開示は、その適用において、以下の説明に記載されるか、又は以下の図面に示される構造の詳細及び構成要素の配置に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践又は実施することができる。また、本明細書で使用される語句及び専門用語は、説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。本明細書における「含む」(including)、「備える」(comprising)、又は「有する」(having)及びそれらのバリエーションの使用は、その後に列挙される項目及びその等価物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。特に指定又は限定されていない限り、「取り付けられた」(mounted)、「接続された」(connected)、「サポートされた」(supported)、及び「結合された」(coupled)という用語、及びそれらのバリエーションは広く使用され、直接的及び間接的の両方の取り付け、接続、サポート、及び結合を含む。更に、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。
【0215】
本明細書で使用されるように、別段の制限又は定義がない限り、特定の方向の議論は、特定の実施形態又は関連する図に関して、例としてのみ提供される。例えば、「上」、「前」、又は「後」の特徴の議論は、一般に、特定の例又は図の基準フレームに対するそのような特徴の方向のみを説明することを意図している。これに対応して、例えば、幾つかの構成又は実施形態では、「上部」の特徴が「下部」の特徴の下に配置されることもある(他も同様)。更に、特定の回転又は他の動き(例えば、反時計回りの回転)への言及は、一般に、特定の例の図において、参照されるフレームに対する動きのみを説明することを意図している。
【0216】
幾つかの実施形態では、本開示による方法のコンピュータ化された実装を含め、開示の態様は、プロセッサデバイス(例えば、シリアル又はパラレルの汎用又は専用プロセッサチップ、シングル又はマルチコアチップ、マイクロプロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、制御ユニット、算術論理ユニット、及びプロセッサレジスタの様々な組み合わせ、等)、コンピュータ(例えば、メモリに動作可能に結合されたプロセッサデバイス)、又は本明細書で詳述される態様を実装するための他の電子的に動作するコントローラを制御するためのソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの任意の組み合わせを生成する標準的なプログラミング又はエンジニアリング技術を使用して、システム、方法、装置、又は製品として実装できる。従って、例えば、本開示の実施形態は、コンピュータ可読媒体からの命令の読み取りに基づいてプロセッサ装置が命令を実装できるように、非一時的なコンピュータ可読媒体上で具体的に具現化された一連の命令として実装することができる。本開示のいくつかの実施形態は、自動化デバイス、様々なコンピュータハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなどを含む専用又は汎用コンピュータなどの制御デバイスを含む(又は利用する)ことができ、以下の議論と一致する。特定の例として、制御デバイスは、プロセッサ、マイクロコントローラ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、プログラマブル論理コントローラ、論理ゲート、及び適切な機能を実装するための当技術分野で知られている他の典型的な構成要素(例えば、メモリ、通信システム、電源、ユーザインターフェイス、その他の入力など)を含むことができる。
【0217】
本明細書で使用される「製品」という用語は、任意のコンピュータ可読デバイス、キャリア(例えば、非一時的な信号)、又はメディア(例えば、非一時的なメディア)からアクセス可能なコンピュータプログラムを包含することを意図している。例えば、コンピュータ可読媒体には、磁気記憶装置(ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストリップなど)、光学ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)など)、スマートカード、及びフラッシュメモリデバイス(例えば、カード、スティックなど)を含むことができるが、それらには限定されない。更に、搬送波は、電子メールの送受信、又はインターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワークへのアクセスに使用されるような、コンピュータで読み取り可能な電子データを運ぶために使用できるということが理解されるべきである。当業者は、特許請求される主題の範囲又は精神から逸脱することなく、これらの構成に対して多くの修正を加えることができることを認識するであろう。
【0218】
本開示による方法、又はそれらの方法を実行するシステムの特定の動作は、図面に概略的に示されているか、又は本明細書で説明されているかもしれない。別段の指定又は限定がない限り、特定の空間的順序での特定の操作の図面での表現は、特定の空間的順序に対応する特定の順序でそれらの操作を実行することを必ずしも必要としない場合がある。それに対応して、図面に示される、又は本明細書に開示される特定の動作は、本開示の特定の実施形態に適切であるように、明示的に図示又は説明される順序とは異なる順序で実行することができる。更に、いくつかの実施形態では、専用の並列処理デバイス、又は大規模システムの一部として相互運用するように構成された別個のコンピューティングデバイスによるものを含め、特定の動作を並列に実行することができる。
【0219】
コンピュータ実装の文脈で本明細書において使用される場合、特に指定又は限定されない限り、「コンポーネント」、「システム」、「モジュール」などの用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、又は実行中のソフトウェアを含むコンピュータ関連システムの一部又は全部を含むことが意図されている。例えば、コンポーネントは、プロセッサ装置、プロセッサ装置によって実行される(又は実行可能である)プロセス、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、コンピュータプログラム、又はコンピュータであり得るが、これらに限定されない。例として、コンピュータ上で実行されているアプリケーションとコンピュータの両方がコンポーネントになることができる。1つ又は複数のコンポーネント(又はシステム、モジュールなど)は、実行のプロセス又はスレッド内に存在する場合があり、1台のコンピュータにローカライズされている場合があり、2台以上のコンピュータ又は他のプロセッサデバイス間で分散される場合があり、別のコンポーネント(又はシステム、モジュールなど)に含まれている場合がある。
【0220】
いくつかの実装では、本明細書で開示されるデバイス又はシステムは、本開示の態様を具現化する方法を使用して利用又はインストールすることができる。それに応じて、デバイス又はシステムの特定の機能、能力、又は意図された目的の本明細書における説明は、意図された目的のためにそのような機能を使用する方法、そのような機能を実装する方法、及びこれらの目的又は機能をサポートするために開示された(又は既知の)コンポーネントをインストールする方法の開示を本質的に含むことを一般的に意図する。同様に、別段の指示又は限定がない限り、デバイス又はシステムの設置を含む、特定のデバイス又はシステムを製造又は使用する方法に関する本明細書での議論は、本開示の実施形態として、そのようなデバイス又はシステムの使用された機能と実装された機能の開示を本質的に含むことを意図している。
【0221】
本明細書で使用されるように、別段の定義又は制限がない限り、序数は、開示の関連部分について特定の構成要素が示される順序に一般的に基づいて、参照の便宜のために本明細書で使用される。これに関して、例えば、「第1の」、「第2の」などの呼称は、一般に、関連する構成要素が議論のために導入される順序のみを示し、一般に、特定の空間的配置、機能的又は構造的な優位性又は順序を示したり、要求したりしない。
【0222】
本明細書で使用されるように、別段の定義又は制限がない限り、方向を示す用語は、特定の図又は例の議論のための参照の便宜のために使用される。例えば、下方向(又は他の)方向又は上(又は他の)位置への参照は、特定の例又は図の側面を説明するために使用される場合があるが、必ずしも全ての設置又は構成で同様の向き又は形状を必要とするわけではない。
【0223】
この議論は、当業者が本開示の実施形態を作成及び使用できるようにするために提示される。図示された例に対する様々な変更は当業者には容易に明らかであり、本明細書の一般的な原理は、本明細書に開示された原理から逸脱することなく他の例及び用途に適用することができる。従って、本開示の実施形態は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び特徴並びに以下の特許請求の範囲と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。以下の詳細な説明は、図を参照して読まれるべきであり、異なる図における同様の要素は同様の参照番号を有する。必ずしも縮尺どおりではない図は、選択された例を示しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。当業者は、本明細書に提供される例が多くの有用な代替物を有し、本開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0224】
本開示の様々な特徴及び利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【図】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分析物に敏感であり、患者を監視するための少なくとも第1の動作範囲及び第2の動作範囲を有するプローブであって、光子源からの光子の受信に応答して光を放射するように構成されるプローブと、
光子を前記プローブに向けて送るように構成される前記光子源と、
前記プローブから放射された前記光を検出するように構成された光検出器と、
前記光子源及び前記光検出器と通信するコントローラと、
を備えるセンサシステムであって、
前記コントローラは、
前記光子源に第1の経時変化プロファイルに従って光子を前記プローブに向けて送らせて、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲に対して前記プローブを励起させて前記光子の受信に応答して前記光を放射させ、
前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲で動作している間に前記プローブから放射された前記光と前記光検出器との間の相互作用に基づく前記光検出器からの光学データを受信し、前記光学データは、第2の経時変化プロファイルを含み、
前記第1の経時変化プロファイルと前記第2の経時変化プロファイルとの差を導出し、
前記第1の経時変化プロファイルと前記第2の経時変化プロファイルとの前記差に基づいて前記分析物に関連するパラメータを導出する、
ように構成されることを特徴とする患者を監視するセンサシステム。
【請求項2】
前記プローブは、それぞれが前記第1の動作範囲と第2の動作範囲とのうちいずれか1つを提供する、蛍光体又はリン光領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1の経時変化プロファイルの第1の特性を選択して前記第1の動作範囲に対して前記プローブを励起し、前記第1の経時変化プロファイルの第2の特性を選択して前記第2の動作範囲に対して前記プローブを励起するように更に構成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記コントローラは更に、前記光子源に、前記第1の経時変化プロファイルに従って光子を前記プローブに送らせて、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲に対して前記プローブを同時に励起させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記第1の経時変化プロファイルは、それぞれ、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲に対して前記プローブを励起するように構成された第1のサブ信号及び第2のサブ信号から形成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲は、それぞれ、分析物に対する感度又は応答曲線を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記センサシステムの動作範囲は、前記第1の動作範囲と前記第2の動作範囲の合計によって定義されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記第1の経時変化プロファイルは、前記コントローラによって、複数の正弦波、方形波、三角波、のこぎり波、インパルス関数、又は非周期波を組み合わせることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、更に、前記第2の経時変化プロファイルの経時変化振幅波の振幅を導出し、位相についての前記差及び前記振幅に基づいて前記分析物の分圧を導出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記第1の経時変化プロファイルは、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲のそれぞれについて少なくとも1つを含む、第1の複数の周波数を含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記プローブは、前記第1の動作範囲を有する第1のプローブ又はプローブ領域と、第2の動作範囲を有する第2のプローブ又はプローブ領域とを少なくとも含み、
前記コントローラは、更に、前記第1のプローブ又はプローブ領域及び前記第2のプローブ又はプローブ領域を別々にターゲットとするように構成された別個の特性を有する少なくとも2つの信号から前記第1の経時変化プロファイルを作成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項12】
前記差は位相差であることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項13】
前記分析物は酸素を含む、又は、前記パラメータは分圧を含むことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項14】
前記プローブは、周囲環境から少なくとも部分的に密閉された前記患者のゾーンと接触、気体的に連通、又は流体的に連通しており、
前記ゾーンは患者の組織の一部の上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項15】
前記プローブは、
前記分析物の拡散に対して半透過性である層と、
光吸収、散乱、又は反射層であって、前記光吸収、散乱、又は反射層に向けて送られた光を吸収、散乱、又は反射するように構成された前記光吸収、散乱、又は反射層と、
を含み、
前記プローブは、前記シートと前記層との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項16】
前記センサシステムは、
前記光子源に光学的に結合され、前記光子源から放射され前記第1の光学フィルタを通過する前記光子をフィルタリングするように構成された第1の光学フィルタと、
前記光検出器に光学的に結合され、前記第2の光学フィルタを通過して前記光検出器に向かう光をフィルタリングするように構成された第2の光学フィルタと、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項17】
前記パラメータは前記分析物の分圧を含み、
前記第1の動作範囲と前記第2の動作範囲は合わせて、実質的に0mmHgと160mmHgとの間の範囲全体に及ぶことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記第2の経時変化プロファイルの特性に応じて、前記第1の経時変化プロファイルの波形の周波数を調整するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項19】
前記コントローラは、前記第2の経時変化プロファイルの特性に応じて、前記第1の経時変化プロファイルについて、プログラム可能な周波数の正弦波、プログラム可能な周波数の正弦波の和、又はプログラム可能な周波数の方形波から選択するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項20】
前記プローブは、前記第1の動作範囲を有する第1のリン光材料と、前記第1のリン光材料とは異なる、前記第2の動作範囲を有する第2のリン光材料とを含み、
前記第1のリン光材料及び前記第2のリン光材料のそれぞれは、前記第1の動作範囲及び前記第2の動作範囲を画定する異なる分圧範囲に敏感であることを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【国際調査報告】